説明

金具

【課題】各種木構造において、柱と梁などの二部材を連結するために用い、誤って上下反転した状態で取り付けることを防止可能な金具を提供する。
【解決手段】幹部材31の側面と枝部材41の端面を連結する金具11について、幹部材31の側面に接触する前面板21と、この前面板21から突出して枝部材41のスリット43に差し込む側面板26と、で構成して、前面板21には、金具11を幹部材31に固定するボルト37を挿通する差込孔22を三個以上設ける。この差込孔22の配置を非点対称とすることで、金具11を誤って上下反転させて幹部材31に取り付けようとした場合、ボルト37を正しく差し込むことができず、誤りを直ちに認識でき、いわゆる「ポカヨケ」が実現する。なお差込孔22以外にも、前面板21から幹部材31に突出するホゾや凸部を設け、これらを非点対称に配置することでも、同様の機能が実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種木構造において、二部材を連結するために用いる金具に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築を始めとする各種木構造において、骨格となる部材同士の連結部は、十分な強度を確保する必要がある。特に国内の住宅などで広く導入されている木造軸組構法は、柱と梁などの部材同士を強固に連結して、耐震性を確保することが要求されており、強度に優れた様々な連結用の金具が開発されている。その具体例としては、下記特許文献1が挙げられ、柱に相当する主幹部材と、梁に相当する結合部材をコの字状の金具で接合している。
【0003】
特許文献1では、主幹部材の側面に結合部材の端面がT字状に接触しており、両部材の間に介在する金具は、大別して支持板と接合板で構成されている。支持板は、ボルトによって主幹部材の側面に密着する。また、支持板の両側端から突出する接合板は、結合部材の係合溝に差し込まれ、さらにボルトで結合部材と一体化する。なお支持板には、円柱状の突起部を形成してあり、これを主幹部材の側面に加工した嵌合孔に差し込むことで、経年による金具の位置ずれを防止している。
【0004】
また特許文献2は、二本の構造材を接合するホゾとホゾ穴に関する技術で、構造材の組み立てミスを防止するため、ホゾおよびホゾ穴の断面を二等辺三角形状としたことを特徴とする。ホゾおよびホゾ穴を、このような特異形状とすることで、二本の構造材を正しい姿勢に配置した場合のみ、ホゾをホゾ穴に差し込むことができ、組み立てミスを確実に防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−331260号公報
【特許文献2】特開平6−10417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の金具は、接合板の上面にのみ溝状の受け孔を形成してあり、施工の際、上下反転した状態で主幹部材に取り付ける可能性は少ない。しかし金具の中には、本願の図8のように、上下を反転させて使用することを想定して、ピン溝を上下両端面に設けたものが存在する。この図では、一本の柱に四本の梁を十字状に連結しており、柱と梁を連結する金具は、四個とも同一形状で、前面板と側面板で構成されている。さらに前面板には、柱に向けて突出するホゾを二個設けてあるが、ホゾは前面板の端寄りに偏って配置してある。そのため、対向する一対の金具を上下反転させると、図のようにホゾの高さが段違いとなり、金具を固定するボルト同士の干渉を防止できる。
【0007】
このように、上下反転させて使用することを想定した金具は、汎用性に優れており、様々な箇所で使用可能で、量産による販売価格の抑制や、在庫管理の簡素化などの利点を有する。しかしこの金具は、施工時、誤って上下反転した状態で柱に取り付けてしまい、梁の据え付け高さが狂う恐れがある。この取り付け誤りは、一見しただけでは気付くことが難しく、後工程で誤りが発見された場合、修正のため金具周辺を全て解体するなど、大掛かりな作業が必要になり、時間や費用の面で大きな損失が発生する。
【0008】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、誤って上下反転した状態で取り付けることを防止可能な金具の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、幹部材の側面と枝部材の端面とを連結するために用い、前記幹部材の側面に接触する前面板と、該前面板から突出し且つ前記枝部材に加工したスリットに差し込む側面板と、からなり、前記前面板と前記幹部材とを一体化するボルトを挿通するため、前記前面板には三個以上の差込孔を設け、また前記側面板と前記枝部材とを一体化するピン類を挿通するため、前記側面板にはピン孔およびピン溝を設け、前記差込孔の配置は、前記前面板を正面から見た状態において非点対称であることを特徴とする金具である。
【0010】
幹部材および枝部材は、柱や梁などの棒材を指しており、幹部材の側面に枝部材の端面を接触させることで、T字状またはL字状の連結部が構成され、幹部材で枝部材を支持する。また金具は、幹部材の側面に密着する前面板と、この前面板から突出して、枝部材の端部に加工したスリットに差し込む側面板と、で構成される。なお金具の形状は、前面板の両側端から側面板が突出するコの字状のほか、前面板の中央から一枚の側面板が突出するT字状など、自在である。
【0011】
差込孔は、前面板に設ける丸孔で、金具を幹部材に固定するボルトを差し込むためのもので、本発明では、最低でも三個設ける。またピン孔およびピン溝は、側面板に設ける丸孔および切り欠き状の溝で、枝部材を金具に固定する各種ピン類を受け止めるためのものである。なおピン溝は、金具を上下反転させて使用することを想定して、側面板の上下両端面に設ける。
【0012】
差込孔の配置に対応して、幹部材にはボルトを差し込むための下孔を加工しておく。仮に三個の差込孔が等間隔で並んでいれば、金具を上下反転させた際も、全ての差込孔と下孔を同心に揃えることができる。しかし三個の差込孔が等間隔ではなければ、金具を上下反転させた際、一部の差込孔と下孔を同心に揃えることができず、ボルトを差し込めない。そのため、金具の取り付け誤りを直ちに認識できる。
【0013】
このように、前面板に設ける差込孔の間隔を一部変化させることで、前面板を正面から見た状態において、差込孔の配置が点対称(金具を上下反転するように180度回転させた際も、差込孔の配置が同じ)にはならない。
【0014】
請求項中の「非点対称」とは、細長い矩形状の前面板を直立させた後、前面板を貫通する水平線を基準として、前面板を180度回転させた際、三個以上の差込孔の配置が回転前と回転後で異なることを意味する。ただし非点対称を考慮するのは、あくまでも複数の差込孔の配置であり、前面板の上下端の位置などは一切含めない。
【0015】
請求項2記載の発明は、幹部材の側面と枝部材の端面とを連結するために用い、前記幹部材の側面に接触する前面板と、該前面板から突出し且つ前記枝部材に加工したスリットに差し込む側面板と、からなり、前記前面板と前記幹部材とを一体化するボルトを挿通するため、前記前面板には差込孔を設け、また前記側面板と前記枝部材とを一体化するピン類を挿通するため、前記側面板にはピン孔およびピン溝を設け、さらに前記前面板において、前記差込孔から離れた位置には、前記幹部材の側面に加工したホゾ穴に嵌め込むホゾを設け、該ホゾには、前記前面板と前記幹部材とを一体化するボルトを挿通するための中孔を設け、前記差込孔と前記ホゾとからなる配置は、前記前面板を正面から見た状態において非点対称であることを特徴とする金具である。
【0016】
請求項2記載の発明は、基本的に請求項1記載の発明と同様だが、前面板に差込孔のほか、ホゾを設けた点が相違している。前面板には、ボルトを差し込むための差込孔を一個以上設けるほか、差込孔とは異なる位置に一個以上のホゾを設ける。ホゾは、前面板の一部を幹部材側に突出させた部位で、幹部材の側面には、このホゾが嵌まり込むホゾ穴を加工する。ホゾとホゾ穴は、断面形状を一致させてあり、金具の移動を規制する機能がある。なおホゾの中心には、金具を幹部材に固定するボルトを差し込むため、中孔を設けてあり、これに対応して、ホゾ穴の奥には下孔を加工する。
【0017】
この発明では、差込孔とホゾを合わせた配置を非点対称とする。具体例としては、前面板の上方に一個のホゾを設けて、下方に一個の差込孔を設けて、幹部材には、これに対応して、ホゾ穴などを加工する。この金具を上下反転させると、ホゾが下方になり、差込孔が上方になり、これらの配置は非点対称である。この状態では、ホゾをホゾ穴に嵌め込むことができず、金具の取り付け誤りを直ちに認識できる。
【0018】
請求項3記載の発明は、幹部材の側面と枝部材の端面とを連結するために用い、前記幹部材の側面に接触する前面板と、該前面板から突出し且つ前記枝部材に加工したスリットに差し込む側面板と、からなり、前記前面板と前記幹部材とを一体化するボルトを挿通するため、前記前面板には複数の差込孔を設け、また前記側面板と前記枝部材とを一体化するピン類を挿通するため、前記側面板にはピン孔およびピン溝を設け、さらに前記前面板において、前記差込孔から離れた位置には、前記幹部材の側面に加工した凹部に収容する凸部を設け、前記差込孔と前記凸部とからなる配置は、前記前面板を正面から見た状態において非点対称であることを特徴とする金具である。
【0019】
請求項3記載の発明は、基本的に請求項1記載の発明と同様だが、前面板に差込孔のほか、凸部を設けた点が相違している。前面板には、ボルトを差し込むための差込孔を二個以上設けるほか、差込孔とは異なる位置に凸部を設ける。凸部は、前面板の一部を幹部材側に突出させた部位で、幹部材の側面には、この凸部を余裕で収容できる凹部を加工する。凹部と凸部は、先のホゾとホゾ穴とは異なり、金具の移動を規制する機能はなく、単に金具の取り付け誤りを認識させるものである。よって凸部は、筒状や半球状や舌状など、形状を自在に決めることができる。
【0020】
この発明では、差込孔と凸部を合わせた配置を非点対称とする。具体例としては、前面板の上下に二個の差込孔を設けて、上方の差込孔の近傍に凸部を設けて、幹部材には、これらに対応して、下孔と凹部を加工する。この場合、金具を上下反転させると、凸部は下方に移動するため、差込孔と凸部を合わせた配置は、非点対称であり、凸部を凹部に収容することができず、金具の取り付け誤りを直ちに認識できる。なお凸部は、その性質上、複数を設ける必要はない。
【0021】
請求項4記載の発明は、幹部材の側面と枝部材の端面とを連結するために用い、前記幹部材の側面に接触する前面板と、該前面板から突出し且つ前記枝部材に加工したスリットに差し込む側面板と、からなり、前記前面板には、前記幹部材の側面に加工したホゾ穴に嵌め込むホゾを複数設け、該ホゾには、前記前面板と前記幹部材とを一体化するボルトを挿通するための中孔を設け、また前記側面板と前記枝部材とを一体化するピン類を挿通するため、前記側面板にはピン孔およびピン溝を設け、さらに前記前面板において、前記ホゾから離れた位置には、前記幹部材の側面に加工した凹部に収容する凸部を設け、前記ホゾと前記凸部とからなる配置は、前記前面板を正面から見た状態において非点対称であることを特徴とする金具である。
【0022】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明で示した差込孔の全てをホゾに置き換えて、さらに請求項3記載の発明と同様、前面板に凸部を設けたものである。ホゾは、先の請求項2記載の発明と同じもので、二個以上設け、金具を幹部材に固定するボルトを差し込むことができる。またホゾから離れた位置には、先の請求項3記載の発明と同様、凸部を設ける。そして幹部材の側面には、この凸部を余裕で収容できる凹部を加工する。
【0023】
この発明では、ホゾと凸部を合わせた配置を非点対称とする。具体例としては、前面板の上下に二個のホゾを設けて、上方の差込孔の近傍に凸部を設けて、幹部材には、これらに対応して、ホゾ穴と凹部を加工する。この場合、金具を上下反転させると、凸部は下方に移動するため、差込孔と凸部を合わせた配置は、非点対称であり、凸部を凹部に収容することができず、金具の取り付け誤りを直ちに認識できる。
【0024】
請求項5記載の発明は、幹部材の側面と枝部材の端面とを連結するために用い、前記幹部材の側面に接触する前面板と、該前面板から突出し且つ前記枝部材に加工したスリットに差し込む側面板と、からなり、前記前面板には、前記幹部材の側面に加工したホゾ穴に嵌め込むホゾを複数設け、該ホゾには、前記前面板と前記幹部材とを一体化するボルトを挿通するための中孔を設け、また前記側面板と前記枝部材とを一体化するピン類を挿通するため、前記側面板にはピン孔およびピン溝を設け、前記ホゾの配置は、前記前面板を正面から見た状態において非点対称であることを特徴とする金具である。
【0025】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明による差込孔の全てをホゾに置き換えたもので、例えば三個のホゾを上下に並べる場合、その間隔を変化させて非点対称とする。また二個のホゾを上下に並べる場合、その形状を上下で変更することで、ホゾの配置を非点対称とすることもできる。ホゾ穴はホゾに対応して加工するため、金具が誤って上下反転していると、ホゾ穴の形状違いにより、ホゾを嵌め込むことができない。そのため、金具の取り付け誤りを直ちに認識できる。
【0026】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、ホゾの形状を限定するもので、複数のホゾは全て円断面であり、その一部は、大径化または小径化してあることを特徴とする。このように全てのホゾを円断面として、その一部を大径化または小径化して、ホゾ穴もこれに対応して大径化または小径化することで、金具が誤って上下反転していると、ホゾ穴の形状違いにより、ホゾを嵌め込むことができない。そのため、金具の取り付け誤りを直ちに認識できる。
【発明の効果】
【0027】
各請求項に記載した発明のように、金具を前面板と側面板で構成して、前面板に設ける差込孔やホゾや凸部の配置を非点対称とすることで、金具を誤って上下反転した状態で幹部材に取り付けようとした場合、ボルトを差し込むことができない、またはホゾや凸部の接触で前面板を幹部材に密着できない、といった不具合が発生する。そのため作業者は、誤りを直ちに認識でき、金具を上下反転して取り付けてしまうことを確実に防止でき、いわゆる「ポカヨケ」が実現する。なお本発明において、幹部材に加工する下孔やホゾ穴や凹部は、プレカット工場などで正しい位置に加工してあることを前提とする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】金具の形状例を示す斜視図で、前面板には差込孔のみを設けてある。
【図2】金具の形状例を示す斜視図で、前面板にはホゾと差込孔を設けてある。
【図3】金具の形状例を示す斜視図で、前面板には差込孔と凸部を設けてある。
【図4】金具の形状例を示す斜視図で、前面板にはホゾと凸部を設けてある。
【図5】金具の形状例を示す斜視図で、前面板にはホゾのみを設けてある。
【図6】金具の形状例を示す斜視図で、前面板には直径の異なる二個のホゾを設けてある。
【図7】金具の形状例を示す斜視図で、前面板の中央から一枚の側面板が突出しているT字状で、前面板には差込孔のみを設けてある。
【図8】柱の側面に四本の梁を同じ高さに取り付ける方法を示す斜視図で、ここで使用している金具は、四個とも同一形状だが、一対を上下反転させている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明による金具の形状例を示している。この図は、柱の側面に梁の端面を接触させるT字状の連結部を描いており、柱と梁との間に金具11を介在させている。なお金具11は、柱と梁との連結以外にも汎用的に使用できるため、柱を幹部材31と称して、梁を枝部材41と称するものとする。枝部材41は、幹部材31によって架空に支持される。
【0030】
金具11は、鋼板を二箇所で折り曲げたコの字状で、中央に位置する前面板21と、前面板21の側端から直角に突出する二枚の側面板26と、からなり、前面板21は、幹部材31の側面に密着させ、対する側面板26は、枝部材41の端部から長手方向に延びる二列のスリット43に差し込む。また金具11は、三本のボルト37を介して幹部材31に固定するため、前面板21には上下に並ぶ三個の差込孔22を設けてある。差込孔22に対応して、幹部材31には、側面を貫通する下孔34を上下に三列加工してある。下孔34は、枝部材41の据え付け高さに応じた位置に加工してある。
【0031】
下孔34は、幹部材31の側面を貫通しているが、金具11と対向する面には、ワッシャ39とナット38を収容するため、内径を拡大した座グリ穴36を加工してある。施工の際は、幹部材31の側面に前面板21を接触させて、次に、二枚の側面板26の間からボルト37を差し込み、その先端を差込孔22から下孔34を経て座グリ穴36に到達させ、ワッシャ39を組み込み、ナット38を螺合する。そしてナット38を締め上げると、金具11が幹部材31に固定される。なお前面板21やボルト37頭部を収容するため、二列のスリット43の間には、段差部45を加工してある。
【0032】
枝部材41と金具11は、ドリフトピン47などの各種ピン類を介して固定する。そのため側面板26には、ドリフトピン47を差し込むため、ピン孔28を二組設けてあるほか、上下両端面にはドリフトピン47を受け止めるため、V字状に削り込んだピン溝27を設けてある。当然ながら、ピン孔28やピン溝27は、二枚の側面板26とも同じ配置である。そして、ピン孔28やピン溝27に対応して、枝部材41の側面には四列の横孔44を加工してある。施工の際は、金具11を幹部材31に固定した後、スリット43に側面板26を差し込み、ピン孔28やピン溝27を横孔44と同心に揃えた後、ドリフトピン47を打ち込む。
【0033】
施工の際、一番上の横孔44にはあらかじめドリフトピン47を打ち込んでおく。これによって、スリット43に側面板26を差し込む際、このドリフトピン47が上方のピン溝27で受け止められ、枝部材41を金具11に仮置きできる。なおドリフトピン47は、各種ピン類やボルトなどで代用することもできる。そのほか、幹部材31の下孔34や、枝部材41の横孔44などは、プレカット工場において、設計図に基づいて正確に加工してあることを前提としており、現地で都度加工するものではない。
【0034】
この図の金具11のように、上下両端面にピン溝27を設けて、上下反転させて使用することを想定している場合、誤って上下反転させて幹部材31に固定する恐れがある。しかし図の金具11は、差込孔22の位置を調整することで、このような誤りを防止できる。差込孔22は、上下に三個並んでいるが、その間隔は均等ではなく、上側が狭く、下側が広く、幹部材31の下孔34もこれに対応して加工してある。仮に金具11を上下反転させると、図の右下のように、差込孔22の間隔は、上側が広く、下側が狭くなる。この状態で金具11を幹部材31に固定しようとすると、差込孔22と下孔34が同心に揃わず、ボルト37を正しく差し込むことができず、誤りを直ちに認識できる。
【0035】
なお、差込孔22の配置が非点対称というのは、この図において、前面板21を貫通する水平線を基準として、前面板21を180度回転させた際、前面板21を正面から見て、回転の前後で差込孔22の配置が異なることを意味する。
【0036】
図2は、図1と同様、幹部材31と枝部材41との連結部を描いており、金具12は、前面板21と側面板26で構成されるコの字状で、ボルト37で幹部材31に固定され、ドリフトピン47で枝部材41を固定する点は図1と同じである。ただし金具12の前面板21の上方には、円柱状に突出するホゾ23を設けてある。ホゾ23は、幹部材31の側面に加工したホゾ穴33に嵌め込み、金具12の移動を規制する機能を有する。そのためホゾ23とホゾ穴33は、断面形状が一致している。なおホゾ23の中央には中孔24を設けてあり、金具12を幹部材31に固定するボルト37を差し込み可能で、ホゾ23内部には、ボルト37頭部やナットを収容できる。またボルト37に対応して、ホゾ穴33の先には下孔34と座グリ穴36を加工してある。
【0037】
一個のホゾ23の下方には、一個の差込孔22を設けてある。差込孔22は、単純にボルト37を差し込むためのもので、これに対応して幹部材31には下孔34を加工してある。この金具12において、ホゾ23と差込孔22とからなる配置は、前面板21を貫通する水平線を基準として、非点対称である。そのため、金具12を誤って上下反転させて幹部材31に取り付けようとすると、ホゾ23をホゾ穴33に嵌め込むことが不可能で、前面板21を幹部材31に密着できず、誤りを直ちに認識できる。
【0038】
図3は、図1と同様、幹部材31と枝部材41との連結部を描いており、金具13は、前面板21と側面板26で構成されるコの字状で、ボルト37で幹部材31に固定され、ドリフトピン47で枝部材41を固定する点は図1と同じである。ただし金具13の前面板21には、一個の凸部25を設けてあるほか、差込孔22は二個である。凸部25は、図2のホゾと同様、前面板21の一部を幹部材31側に突出させた部位だが、金具13の移動を規制する機能はなく、単に金具13の取り付け誤りを防止するもので、形状は自在である。なお幹部材31の側面には、凸部25に対応して凹部35を加工してある。前記の理由により、凹部35は、凸部25に対して若干の余裕があっても構わない。
【0039】
凸部25は、任意の位置に設けることはできず、差込孔22と凸部25とからなる配置は、必ず非点対称とする。なお図の凸部25は、上方の差込孔22に隣接している。仮に金具13を上下反転させると、凸部25が下方になり、差込孔22と凸部25とからなる配置は、非点対称である。そのため、金具13を誤って上下反転させて幹部材31に取り付けると、凸部25を凹部35に収容することが不可能で、前面板21を幹部材31に密着できず、誤りを直ちに認識できる。
【0040】
図4は、図1と同様、幹部材31と枝部材41との連結部を描いており、金具14は、前面板21と側面板26で構成されるコの字状で、ボルト37で幹部材31に固定され、ドリフトピン47で枝部材41を固定する点は図1と同じである。ただし金具14の前面板21には、図1などで示した差込孔22が一切なく、代わりに図2で示したホゾ23を二個設けてあり、さらに、図3で示した凸部25を設けてある。そして幹部材31の側面には、ホゾ23に対応してホゾ穴33を加工してあり、また凸部25に対応して凹部35を加工してある。
【0041】
凸部25は、任意の位置に設けることはできず、ホゾ23と凸部25とからなる配置は、必ず非点対称とする。なお図の凸部25は、上方のホゾ23に隣接している。仮に金具14を上下反転させると、凸部25が下方になり、ホゾ23と凸部25とからなる配置は、非点対称である。そのため、金具14を誤って上下反転させて幹部材31に取り付けると、凸部25を凹部35に収容することが不可能で、前面板21を幹部材31に密着できず、誤りを直ちに認識できる。
【0042】
図5は、図1と同様、幹部材31と枝部材41との連結部を描いており、金具15は、前面板21と側面板26で構成されるコの字状で、ボルト37で幹部材31に固定され、ドリフトピン47で枝部材41を固定する点は図1と同じである。ただし金具15の前面板21には、図1などで示した差込孔22が一切なく、代わりに図2などで示したホゾ23を三個設けてある。そして幹部材31の側面には、ホゾ23に対応して三個のホゾ穴33を加工してある。
【0043】
ホゾ23は、上下に三個並んでいるが、その間隔は均等ではなく、上側が狭く、下側が広い。仮に金具15を上下反転させると、図の右下のように、ホゾ23の間隔は、上側が広く、下側が狭くなる。この状態で金具15を幹部材31に固定しようとすると、一部のホゾ23をホゾ穴33に嵌め込めず、誤りを直ちに認識できる。
【0044】
図6は、図1と同様、幹部材31と枝部材41との連結部を描いており、金具16は、前面板21と側面板26で構成されるコの字状で、ボルト37で幹部材31に固定され、ドリフトピン47で枝部材41を固定する点は図1と同じである。ただし金具16の前面板21には、図1などで示した差込孔22が一切なく、代わりに図2などで示したホゾ23を二個設けてある。そして幹部材31の側面には、ホゾ23に対応して二個のホゾ穴33を加工してある。
【0045】
この図の二個のホゾ23のうち、上方のホゾを大径化しており、これに対応する上方のホゾ穴33も大径化している。よって金具16を上下反転させると、大径化したホゾ23が下方になり、二個のホゾ23の配置は非点対称である。そのため、金具16を誤って上下反転させて幹部材31に取り付けると、大径のホゾ23を下方のホゾ穴33に嵌め込むことが不可能で、前面板21を幹部材31に密着できず、誤りを直ちに認識できる。
【0046】
図7は、図1と同様、幹部材31と枝部材41との連結部を描いているが、金具17については、これまでのコの字状ではなくT字状である。金具17は、一枚の前面板21の中央から一枚の側面板26が突出するT字状で、これに対応して枝部材41のスリット43は一列となっている。ただし、側面板26にピン孔28とピン溝27を設けて、ドリフトピン47で枝部材41を固定する点は何ら変わりがない。
【0047】
前面板21には、ボルト37を差し込むための差込孔22を三箇所に設けてあり、さらにボルト37頭部を収容するため、枝部材41の端面には逃げ穴46を加工してある。なお三個の差込孔22の配置は、千鳥状で非点対称である。そのため、金具17を誤って上下反転させて幹部材31に取り付けると、差込孔22と下孔34の一部が同心に揃わず、ボルト37を正しく差し込むことができず、誤りを直ちに認識できる。
【0048】
本発明は、これまでの各図に示した形態に限定される訳ではなく、差込孔22やホゾ23や凸部25の配置が非点対称であれば、それらの個数や間隔などは、自在に決めることができる。
【符号の説明】
【0049】
11 金具(差込孔のみ)
12 金具(ホゾと差込孔)
13 金具(差込孔と凸部)
14 金具(ホゾと凸部)
15 金具(ホゾのみ)
16 金具(直径の異なるホゾ)
17 金具(T字状で差込孔のみ)
21 前面板
22 差込孔
23 ホゾ
24 中孔
25 凸部
26 側面板
27 ピン溝
28 ピン孔
31 幹部材(柱)
33 ホゾ穴
34 下孔
35 凹部
36 座グリ穴
37 ボルト
38 ナット
39 ワッシャ
41 枝部材(梁)
43 スリット
44 横孔
45 段差部
46 逃げ穴
47 ドリフトピン(ピン類)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹部材(31)の側面と枝部材(41)の端面とを連結するために用い、
前記幹部材(31)の側面に接触する前面板(21)と、該前面板(21)から突出し且つ前記枝部材(41)に加工したスリット(43)に差し込む側面板(26)と、からなり、
前記前面板(21)と前記幹部材(31)とを一体化するボルト(37)を挿通するため、前記前面板(21)には三個以上の差込孔(22)を設け、また前記側面板(26)と前記枝部材(41)とを一体化するピン類(47)を挿通するため、前記側面板(26)にはピン孔(28)およびピン溝(27)を設け、
前記差込孔(22)の配置は、前記前面板(21)を正面から見た状態において非点対称であることを特徴とする金具(11又は17)。
【請求項2】
幹部材(31)の側面と枝部材(41)の端面とを連結するために用い、
前記幹部材(31)の側面に接触する前面板(21)と、該前面板(21)から突出し且つ前記枝部材(41)に加工したスリット(43)に差し込む側面板(26)と、からなり、
前記前面板(21)と前記幹部材(31)とを一体化するボルト(37)を挿通するため、前記前面板(21)には差込孔(22)を設け、また前記側面板(26)と前記枝部材(41)とを一体化するピン類(47)を挿通するため、前記側面板(26)にはピン孔(28)およびピン溝(27)を設け、
さらに前記前面板(21)において、前記差込孔(22)から離れた位置には、前記幹部材(31)の側面に加工したホゾ穴(33)に嵌め込むホゾ(23)を設け、該ホゾ(23)には、前記前面板(21)と前記幹部材(31)とを一体化するボルト(37)を挿通するための中孔(24)を設け、
前記差込孔(22)と前記ホゾ(23)とからなる配置は、前記前面板(21)を正面から見た状態において非点対称であることを特徴とする金具(12)。
【請求項3】
幹部材(31)の側面と枝部材(41)の端面とを連結するために用い、
前記幹部材(31)の側面に接触する前面板(21)と、該前面板(21)から突出し且つ前記枝部材(41)に加工したスリット(43)に差し込む側面板(26)と、からなり、
前記前面板(21)と前記幹部材(31)とを一体化するボルト(37)を挿通するため、前記前面板(21)には複数の差込孔(22)を設け、また前記側面板(26)と前記枝部材(41)とを一体化するピン類(47)を挿通するため、前記側面板(26)にはピン孔(28)およびピン溝(27)を設け、
さらに前記前面板(21)において、前記差込孔(22)から離れた位置には、前記幹部材(31)の側面に加工した凹部(35)に収容する凸部(25)を設け、
前記差込孔(22)と前記凸部(25)とからなる配置は、前記前面板(21)を正面から見た状態において非点対称であることを特徴とする金具(13)。
【請求項4】
幹部材(31)の側面と枝部材(41)の端面とを連結するために用い、
前記幹部材(31)の側面に接触する前面板(21)と、該前面板(21)から突出し且つ前記枝部材(41)に加工したスリット(43)に差し込む側面板(26)と、からなり、
前記前面板(21)には、前記幹部材(31)の側面に加工したホゾ穴(33)に嵌め込むホゾ(23)を複数設け、該ホゾ(23)には、前記前面板(21)と前記幹部材(31)とを一体化するボルト(37)を挿通するための中孔(24)を設け、また前記側面板(26)と前記枝部材(41)とを一体化するピン類(47)を挿通するため、前記側面板(26)にはピン孔(28)およびピン溝(27)を設け、
さらに前記前面板(21)において、前記ホゾ(23)から離れた位置には、前記幹部材(31)の側面に加工した凹部(35)に収容する凸部(25)を設け、
前記ホゾ(23)と前記凸部(25)とからなる配置は、前記前面板(21)を正面から見た状態において非点対称であることを特徴とする金具(14)。
【請求項5】
幹部材(31)の側面と枝部材(41)の端面とを連結するために用い、
前記幹部材(31)の側面に接触する前面板(21)と、該前面板(21)から突出し且つ前記枝部材(41)に加工したスリット(43)に差し込む側面板(26)と、からなり、
前記前面板(21)には、前記幹部材(31)の側面に加工したホゾ穴(33)に嵌め込むホゾ(23)を複数設け、該ホゾ(23)には、前記前面板(21)と前記幹部材(31)とを一体化するボルト(37)を挿通するための中孔(24)を設け、また前記側面板(26)と前記枝部材(41)とを一体化するピン類(47)を挿通するため、前記側面板(26)にはピン孔(28)およびピン溝(27)を設け、
前記ホゾ(23)の配置は、前記前面板(21)を正面から見た状態において非点対称であることを特徴とする金具(15)。
【請求項6】
前記複数のホゾ(23)は全て円断面であり、その一部は、大径化または小径化してあることを特徴とする請求項5記載の金具(16)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−83121(P2013−83121A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225018(P2011−225018)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(501138161)
【Fターム(参考)】