説明

金型検査装置、金型検査方法、防眩製品ヘイズ予測方法および防眩製品反射像鮮明度予測方法

【課題】防眩効果を奏する製品を成形するための金型に関して、たとえその金型によって製品を成形しなくても、製品に得られるであろう光学特性を推定することができるようにする。
【解決手段】金型検査装置101は、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形するための金型1の検査装置であって、金型1の被検査面1aに向けて投光するための投光ファイバ11と、被検査面1aからの反射光を受光するための1以上の受光ファイバ12と、1以上の受光ファイバ12が受光する光の強度を検出するための検出部20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形するための金型について用いることのできる金型検査装置、金型検査方法、防眩製品ヘイズ予測方法および防眩製品反射像鮮明度予測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防眩効果を持たせた製品を製造するためには、製品の表面に微細な凹凸形状を形成することが有効であることが知られている。そのような構成を備える防眩フィルムの一例が特開2006−53371号公報(特許文献1)に記載されている。この文献では、防眩フィルムを得るために、フィルムを成形するための金型の表面に微粒子を衝突させて凹凸形状を予め設けておくこととされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−53371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金型の表面に凹凸形状を形成し、その金型で製品を成形することによって、防眩効果を有する製品を得ようとする場合、凹凸形状形成処理を直接施す対象は金型であるにもかかわらず、その金型から得られる製品にどのような光学特性が表れるのかは、実際に製品を作製してみるまでわからない。したがって、従来は、金型を調製する際にその調整具合の適否を判断することができず不便であった。また、光学特性を確認するために製品を作製し、光学特性を確認した結果、不良であることが判明した場合は、その時点までに成形した製品は無駄になってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、防眩効果を奏する製品を成形するための金型に関して、金型の製造中または製造後に、たとえその金型によって製品を成形しなくても、製品に得られるであろう光学特性を推定することができるような金型検査装置、金型検査方法、防眩製品ヘイズ予測方法および防眩製品反射像鮮明度予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に基づく金型検査装置は、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形するための金型の検査装置であって、上記金型の被検査面に向けて投光するための投光ファイバと、上記被検査面からの反射光を受光するための1以上の受光ファイバと、上記1以上の受光ファイバが受光する光の強度を検出するための検出部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品の製品自体を検査する代わりに、そのような製品を成形するための金型を検査することとし、金型の被検査面に光を照射し、その反射光の強度を検出することとしているので、金型の製造中または製造後に、金型によって製品を成形することなく、製品に得られるであろう光学特性を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に基づく実施の形態1における金型検査装置の概念図である。
【図2】本発明に基づく実施の形態1における金型検査装置が備える光ファイバ束の測定側の端部の拡大斜視図である。
【図3】本発明に基づく実施の形態1に関連した具体的な実験の様子の説明図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態1における金型検査装置が備えるコリメートレンズユニットの端部の断面図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態2における金型検査装置の概念図である。
【図6】本発明に基づく実施の形態2における金型検査装置が備える光ファイバ束の断面図である。
【図7】本発明に基づく実施の形態2における金型検査装置の第1状態における光の進路の説明図である。
【図8】本発明に基づく実施の形態2における金型検査装置の第2状態における光の進路の説明図である。
【図9】本発明に基づく実施の形態2における金型検査装置の第1状態に対応する説明図である。
【図10】本発明に基づく実施の形態2における金型検査装置の第2状態に対応する説明図である。
【図11】本発明に基づく実施の形態3における金型検査装置の概念図である。
【図12】本発明に基づく実施の形態3における金型検査装置が備えるコリメートレンズユニットの端部の断面図である。
【図13】本発明に基づく実施の形態3における金型検査装置が備えるコリメートレンズユニットの端部の断面図である。
【図14】本発明に基づく実施の形態3における金型検査装置の具体的な構成の一例の概念図である。
【図15】本発明に基づく実施の形態4における金型検査方法のフローチャートである。
【図16】本発明に基づく実施の形態5における金型検査方法のフローチャートである。
【図17】本発明に基づく実施の形態6における金型検査方法のフローチャートである。
【図18】本発明に基づく実施の形態7における金型検査方法のフローチャートである。
【図19】本発明に基づく実施の形態8における金型検査方法のフローチャートである。
【図20】フィルムから求められたヘイズと、金型から求められた暫定ヘイズとの相関関係を示すグラフである。
【図21】フィルムから求められた反射像鮮明度と、金型から求められた暫定反射像鮮明度との相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
防眩製品の一種として防眩フィルム(「AG(Anti-Glare)フィルム」ともいう。)を挙げることができる。防眩フィルムの製造方法として、凹凸形状が形成された金型の表面形状をフィルム表面に転写することによって、フィルムに防眩処理を施すという方法がある。この方法においては、金型の製造中または金型の製造後に、将来その金型から得られるであろう製品の光学特性を推定する技術が求められる。特に、金型の加工中に、上記光学特性を推定する技術が強く望まれていた。しかし、金型の表面形状を分析し、得られるデータから、この金型を使用して作製される防眩フィルムの光学特性を推定する方法は、まだ確立されていない。そこで、発明者らは、金型の表面形状を何らかの方法で分析してデータを得て、作製される防眩製品の光学特性を評価することができるか否かについて検討し、試行錯誤の末に本発明に至った。
【0010】
まず、本発明に関係する構成要素について基本的な考え方を説明し、その後に各実施の形態について説明する。
【0011】
(防眩処理用金型)
「防眩処理用金型」とは、表面に数μm〜数mm程度の凹凸形状を有する金型である。この金型は、通常、フィルムへのUVエンボス法による転写や、成型加工の際に用いられ、加工対象物に防眩処理表面を形成する。防眩処理用金型としては、銅面にエッチングを施した後、硬質クロムメッキで耐擦傷性を持たせた形態のものが用いられうる。他に、ビーズショット法により、表面に細かな凹凸が形成された金属板なども防眩処理用金型として用いられる。金型の形状としては、板状やロールトゥロールプロセスで用いられるロール状の金型などがある。
【0012】
(投光ファイバ)
「投光ファイバ」とは、発光器により発せられた光を導き、1点から被検査面に向けて光を照射する役割を果たす光ファイバである。投光ファイバは、シングルモードまたはマルチモードの光ファイバの単線であってもよく、複数の光ファイバが束となった形態のものも考えられる。
【0013】
(受光ファイバ)
「受光ファイバ」は、被検査面から反射された光を検出部に導く役割を果たす光ファイバである。投光ファイバは、シングルモードまたはマルチモードの光ファイバの単線であってもよく、複数の光ファイバが束となった形態のものも考えられる。
【0014】
(光ファイバ)
投光ファイバまたは受光ファイバを複数の光ファイバの束によって構成する場合、束の断面形状は、円形であっても楕円形であってもよく、四角形、多角形、環状、線状などであってもよい。光ファイバの位置決めを容易にするために、光ファイバの束の全体としての断面形状は、回転対称性を有する形状が好ましく、特に円形が好ましい。検査対象物が、円筒形状の金型である場合のように、被検査面が何らかの曲率を有する曲面である場合には、その曲率に応じて、得られる反射光が円形に近くなるように、楕円形に束ねられた光ファイバの束を用いることが好ましい。検査対象物が円筒形状の金型である場合、その円筒形状の直径方向を長軸とし、円筒形状の中心軸方向を短軸とする楕円形の領域に光を照射すれば、得られる反射光は円形に近くなる。
【0015】
用いる光ファイバの直径に特に制約はないが、鮮明度と良好な相関が期待される光ファイバの直径としては0.125mm以上4mm以下とすることが好ましい。さらに、光ファイバの直径を0.125mm以上2mm以下とすることがより好ましい。投光ファイバまたは受光ファイバが光ファイバの単線である場合には、その単線の直径を前述した数値範囲内の値とすることが好ましく、投光ファイバまたは受光ファイバが光ファイバの束によって構成される場合には、その束の直径を前述した数値範囲内の値とすることが好ましい。また、投光ファイバと受光ファイバとが、受光ファイバの直径以下の間隔を介して、測定の妨げとなる水準のクロストークが生じない程度に近接して配置されていることが好ましい。さらに、投光ファイバを中心に配置し、受光ファイバを周辺に配置する構成では、投光ファイバの直径より小さな直径を有する受光ファイバを好ましく用いることができる。特に、好ましくは、投光ファイバの直径の約1/2である。
【0016】
(光源)
光源としては、ハロゲンランプ、タングステンランプ、水銀灯に代表される電球の他に、発光ダイオード(LED)、レーザ素子など、各種光源を用いることができる。光源としては、特に、ノイズ除去のために必要に応じて変調をかけることが容易であるLED、半導体レーザ素子、半導体励起レーザ素子といった固体光源を用いることが好ましい。
【0017】
電球やLEDなどを光源として用いた場合には、光ファイバから出射した光は広がりながら進行する。しかし、本発明においては、投光ファイバから出射された光は被検査面に到達するまでにほぼ平行な光とする必要がある。このため、光ファイバから出射した光が広がりながら進行する光である場合には適宜レンズを組み合わせて光を平行光に近い形に整えればよい。このような操作は、一般的に、凸レンズまたは凹面鏡により実現することができる。また、光ファイバから出射した光をほぼ平行な光とすることができるレンズが、ファイバセンサメーカから市販されている。このようなレンズとしては、たとえば、株式会社キーエンス製の型式F−3HAなどがある。このレンズと専用の光ファイバ(株式会社キーエンス製FU−35FZなど)とを組み合わせることによりレンズからおよそ20mm〜40mm前後の範囲において、ほぼ平行な光を実現することができる。F−3HAは、開口直径が約4.3mmであって、凸レンズを備えており、レンズ先端から0〜20mmの位置においてスポット径が約4mmの概略平行光となるように設計されている。
【0018】
(実施の形態1)
(構成)
図1〜図4を参照して、本発明に基づく実施の形態1における金型検査装置について説明する。本実施の形態における金型検査装置の概念図を図1に示す。金型検査装置101は、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形するための金型の検査装置であって、金型1の被検査面1aに向けて投光するための投光ファイバ11と、被検査面1aからの反射光を受光するための1以上の受光ファイバ12と、前記1以上の受光ファイバ12が受光する光の強度を検出するための検出部20とを備える。
【0019】
図1に示した金型検査装置101は、複数本の受光ファイバ12を備えている。検出部20は、ファイバセンサアンプユニット21とマイクロコントローラ22とを含む。投光ファイバ11と、1以上の受光ファイバ12とは、いずれもファイバセンサアンプユニット21に接続されている。ファイバセンサアンプユニット21は、マイクロコントローラ22に接続されている。
【0020】
金型検査装置101は、コリメートレンズユニット10を備える。図1ではコリメートレンズユニット10は斜め下を向いているが、斜め下とは限らず、いずれの向きであってもよい。コリメートレンズユニット10の端部を拡大したところを図2に示す。投光ファイバ11からの光が出射する投光領域11eが中心に配置され、その周囲を取り囲むように受光領域12eが配置された構成となっている。受光領域12eは環状となっている。受光領域12eは受光ファイバ12が光を受け入れるための領域である。
【0021】
具体的な実験の様子を図3に示す。架台25にコリメートレンズユニット10が固定されており、下方に配置された被検査面1aに向けて光が照射されている。コリメートレンズユニット10と被検査面1aとの距離は約20mmとした。被検査面1aはロール形状の金型1の表面である。照射された光は被検査面1aにおいて直径6mmのスポット2となっている。コリメートレンズユニット10の上端からは光ファイバ束13が延在しており、図3には表れていない検出部20へとつながっている。
【0022】
コリメートレンズユニット10の内部構造の概要を図4に示す。筐体15の内部に光ファイバ束13の端が配置されており、この端に対して焦点が合う位置にコリメートレンズ14が配置されている。コリメートレンズ14は筐体15によって保持されている。
【0023】
(作用・効果)
本実施の形態における金型検査装置では、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品の製品自体を検査する代わりに、そのような製品を成形するための金型を検査することとし、金型の被検査面に光を照射し、その反射光の強度を検出することとしているので、金型によって製品を成形することなく、製品に得られるであろう光学特性を推定することができる。したがって、検査のために成形した製品が無駄になる事態も極力避けることができる。
【0024】
(実施の形態2)
(構成)
図5〜図8を参照して、本発明に基づく実施の形態2における金型検査装置について説明する。図5に示すように、本実施の形態における金型検査装置102は、被検査面1aからの反射光を受光するための複数の受光ファイバ12を備える。複数の受光ファイバ12は投光ファイバ11を取り囲むように配置されている。投光ファイバ11と複数の受光ファイバ12とを合わせた光ファイバ束13は、投光ファイバ11から出射した光が被検査面1aで正反射したときの光の進路の延長上に複数の受光ファイバ12のいずれかが位置する第1状態と、被検査面1aに対して垂直な第2状態との少なくとも2通りをとりうるように構成されている。
【0025】
光ファイバ束13の断面を図6に示す。この例では、1本の投光ファイバ11の周りに6本の受光ファイバ12が配置されている。受光ファイバ12の本数は6本に限らず、他の本数であってもよい。たとえば、後に示す検証実験で用いた株式会社キーエンス製FU−35FZでは受光ファイバの本数は8本である。
【0026】
図5では、光ファイバ束13が被検査面1aに対して垂直となっていることから明らかなように第2状態を示している。金型検査装置102は、光ファイバ束13の第1状態と第2状態とを切り替えるための切替部16を備えている。切替部16は公知技術によって光ファイバ束13の向きを切り替えることができる。切替部16は光ファイバ束13に直接操作を加えるように接続されているとは限らず、図5に示したようにコリメートレンズユニット10の向きを操作することによって光ファイバ束13の状態を切り替えるものであってもよい。
【0027】
(作用・効果)
第1状態における光の進路を図7に示し、第2状態における光の進路を図8に示す。図7に示すように、第1状態においては、光ファイバ束13は被検査面1aに対して垂直からわずかに傾いた姿勢となっているので、投光ファイバ11から出射した光71のうち被検査面1aで正反射した成分は、反射光72となって複数の受光ファイバ12のいずれかに入射している。図8に示すように、第2状態においては、光ファイバ束13は被検査面1aに対して垂直となっているので、投光ファイバ11から出射した光71のうち被検査面1aで正反射した成分は、反射光72となって再び投光ファイバ11に入射している。第1状態、第2状態においても、光71が被検査面1aに入射した結果として、反射光72の他に、反射光72とは異なる角度で散乱光73が生じている。図8に示す第2状態においては受光ファイバ12に入射するのは主に散乱光73である。
【0028】
光71および反射光72は、実際には一定の断面積を有する光束として進行しているが、図7、図8では光束の中心線を矢印で表示している。各光束は一定の断面積を有しているので、反射光72が複数の受光ファイバ12のいずれかに入射する第1状態においても、反射光72のうち投光ファイバ11に入射する成分が全くないとは限らない。同様に、反射光72が投光ファイバ11に入射する第2状態においても、反射光72のうち複数の受光ファイバ12のいずれかに入射する成分が全くないとは限らない。
【0029】
図7、図8においては、説明の便宜のため、コリメートレンズ14による屈折を図示省略しているが、コリメートレンズ14によって反射光72が屈折することを考慮に入れても、屈折する角度は微小であるので、光ファイバ束13の傾きの違いによって上述のような2通りの状態の区別をすることができる。
【0030】
本実施の形態では、単一のコリメートレンズユニット10によって照射と受光とを兼ねているが、反射して折り返す光線を一直線上に表現し、さらに照射部としてのコリメートレンズユニット10と受光部としてのコリメートレンズユニット10を別々に表現したものを図9、図10に示す。
【0031】
図9は第1状態を示す。被検査面1aで正反射した反射光72はコリメートレンズ14によって受光ファイバ12の端面に集められ、受光ファイバ12に入射している。
【0032】
図10は第2状態を示す。被検査面1aで正反射した反射光72はコリメートレンズ14によって投光ファイバ11の端面に集められている。受光ファイバ12には反射光72の周辺を進んできた散乱光73が入射している。
【0033】
以上のように、本実施の形態では、第1状態と第2状態とでそれぞれ受光ファイバ12に入射する光の強度を検出することができる。すなわち、第1状態では、光71のうち被検査面1aで正反射した成分の強度を把握することができ、第2状態では、光71に起因する散乱光73の一部の成分の強度を把握することができる。
【0034】
これにより、本実施の形態では、金型の表面で正反射する成分の強度と、乱反射する成分の強度とをそれぞれ別個に検出することができる。このようにしてそれぞれ得られる強度の情報から光学特性を特定することができる。すなわち、金型によって製品を成形することなく、製品に得られるであろう光学特性を推定することができる。したがって、検査のために成形した製品が無駄になる事態も極力避けることができる。
【0035】
(実施の形態3)
(構成)
図11〜図13を参照して、本発明に基づく実施の形態3における金型検査装置について説明する。図11に示すように、本実施の形態における金型検査装置103は、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形するための金型の検査装置であって、金型1の被検査面1aに向けて投光するための投光ファイバ11と、被検査面1aからの反射光72を受光するための1以上の受光ファイバと、前記1以上の受光ファイバが受光する光の強度を検出するための検出部20とを備える。さらに、金型検査装置103は、被検査面1aからの反射光72を受光するための複数の受光ファイバによる受光ファイバ束17を備える。受光ファイバ束17は、中心に位置する第1受光ファイバ12fと、第1受光ファイバ12fの周囲を取り囲む複数の第2受光ファイバ12gとを含む。投光ファイバ11から出射した光71が被検査面1aで正反射したときの光の進路の延長上に第1受光ファイバ12fが位置するように、受光ファイバ束17が配置されている。
【0036】
受光ファイバ束17の断面を図12に示す。この例では、1本の第1受光ファイバ12fの周りに6本の第2受光ファイバ12gが配置されている。第2受光ファイバ12gの本数は6本に限らず、他の本数であってもよい。
【0037】
図11に示すように、投光ファイバ11の先端にはコリメートレンズユニット10が設けられているが、このコリメートレンズユニット10には投光ファイバ11以外の光ファイバも含まれていてもよい。コリメートレンズユニット10には少なくとも投光ファイバ11が含まれていればよい。一方、受光ファイバ束17の先端にはコリメートレンズユニット10iが設けられている。
【0038】
コリメートレンズユニット10iの内部構造の概要を図13に示す。筐体15の内部に受光ファイバ束17の端が配置されており、この端に対して焦点が合う位置にコリメートレンズ14が配置されている。コリメートレンズ14は筐体15によって保持されている。
【0039】
本実施の形態における金型検査装置103の具体的な構成の一例を図14に示す。光源としてのLED30から発せられた光は非球面コンデンサレンズ31を介して投光ファイバ11に入射する。投光ファイバ11の先端にはコリメートレンズユニット10が設置されている。コリメートレンズユニット10から出射し、被検査面1aで反射した光はコリメートレンズユニット10iに入射する。コリメートレンズユニット10iの先に接続されている受光ファイバ束17のうち第1受光ファイバ12fはフォトダイオード32fに光を伝達し、第2受光ファイバ12gはフォトダイオード32gに光を伝達する。検査部20は、LEDドライバ33とA/Dコンバータ34とを備える。LEDドライバ33はLED30に指示を送るものであり、A/Dコンバータ34はフォトダイオード32f,32gで検出された光量を信号化処理するものとなっている。図14では、LED30およびフォトダイオード32f,32gは検査部20の外にあるものとして示しているが、LED30およびフォトダイオード32f,32gのうち一部または全部は、検査部20の一部として設けられていてもよい。また、A/Dコンバータ34とフォトダイオード32f,32gとの間には、必要に応じて、電流/電圧変換回路(I/V変換回路)や、増幅回路が設けられていてもよい。これらの回路は、演算増幅器(operational amplifier)などによって容易に実現することができる。演算増幅器としては、たとえばMicrochip Technology Inc社製MCP6282−E/Pなどを採用することができる。
【0040】
なお、図14においてコリメートレンズユニット10に接続された光ファイバの一部が下方に延在してその先にX印が付されているのは、これらの光ファイバが不使用であることを意味する。コリメートレンズユニット10に保持された複数の光ファイバのうちでは投光ファイバ11のみが使用されている。
【0041】
(作用・効果)
本実施の形態では、光71が被検査面1aで正反射した成分である反射光72は、受光ファイバ束17のうちの第1受光ファイバ12fに入射し、光71が被検査面1aで乱反射した成分である散乱光73の一部は、受光ファイバ束17のうちの第2受光ファイバ12gに入射する。
【0042】
したがって、本実施の形態では、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。実施の形態2における金型検査装置102では、金型の表面で正反射する成分の強度と、乱反射する成分の強度とをそれぞれ求めるために、第1状態と第2状態とで合計2回の測定を行なう必要があったが、本実施の形態における金型検査装置103では、受光ファイバ束17が備わっているので1回の測定で済ませることができるという利点がある。
【0043】
実施の形態1〜3においては、前記投光ファイバにおいて光を外部へ出射するための開口部の径に比べて、前記1以上の受光ファイバにおいて外部から光を受け入れるための開口部の径は、同じまたはより小さくなっていることが好ましい。この構成を採用することにより、受光ファイバは所望の光の成分のみを受光しやすくなり、不所望の光の成分が混入して受光される確率を低くすることができる。また、この構成を採用することにより、受光ファイバに対して入射する光の量はわずかな角度の変化によって大きく変動することとなるので、光の強度の変化を敏感に検出することが可能となる。
【0044】
(実施の形態4)
(検査方法)
図15を参照して、本発明に基づく実施の形態4における金型検査方法について説明する。本実施の形態における金型検査方法のフローチャートを図15に示す。この金型検査方法は、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形するための金型の検査方法であって、前記金型の被検査面に向けて投光ファイバから投光する工程S1と、前記被検査面からの反射光を1以上の受光ファイバによって受光する工程S2と、前記1以上の受光ファイバが受光する光の強度を検出する工程S3とを含む。工程S1〜S3は、工程S1が完了してから工程S2が行なわれるという意味ではなく、工程S1を行ないながら並行して工程S2が行なわれるものであってよい。工程S2と工程S3についても、工程S1と工程S3についても同様である。
【0045】
この金型検査方法は、実施の形態1〜3のいずれかで説明した金型検査装置を用いて行なうことができる。その場合、工程S1では、投光ファイバ11から被検査面1aに向けて投光すればよい。工程S3では、受光ファイバ12、第1受光ファイバ12fまたは第2受光ファイバ12gが受光した光の強度を検出部20によって検出すればよい。
【0046】
(作用・効果)
本実施の形態における金型検査方法では、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品の製品自体を検査する代わりに、そのような製品を成形するための金型を検査することとし、金型の被検査面に光を照射し、その反射光の強度を検出することとしているので、金型によって製品を成形することなく、製品に得られるであろう光学特性を推定することができる。したがって、検査のために成形した製品が無駄になる事態も極力避けることができる。
【0047】
(実施の形態5)
(検査方法)
図16を参照して、本発明に基づく実施の形態5における金型検査方法について説明する。本実施の形態における金型検査方法のフローチャートを図16に示す。本実施の形態における金型検査方法は、実施の形態4で説明した金型検査方法においてさらに好ましい条件を採用したものである。本実施の形態における金型検査方法は、実施の形態2で説明した金型検査装置102を用いて実施することができるので、金型検査装置102の各符号(図5、図6参照)を用いて以下説明する。
【0048】
本実施の形態における金型検査方法においては、投光する工程S1は、投光ファイバ11の周りを複数の受光ファイバ12で取り囲むように配置した光ファイバ束13を用い、投光する工程S1は、投光ファイバ11から出射した光が被検査面1aで正反射したときの光の進路の延長上に前記複数の受光ファイバ12のいずれかが位置する第1状態となるように光ファイバ束13を配置して投光ファイバ11からの光の照射を行なう第1工程S11と、被検査面1aに対して垂直な第2状態となるように光ファイバ束13を配置して投光ファイバ11からの光の照射を行なう第2工程S12とを含み、受光する工程S2は、第1工程S11を行ないながら受光する第3工程S13と、第2工程S12を行ないながら受光する第4工程S14とを含み、検出する工程S3は、第3工程S13で受光した光の強度M1を検出する工程と、第4工程S14で受光した光の強度m1を検出する工程とを含む。第1状態で行なう第1工程S11と、第2状態で行なう第2工程S12とはいずれを先に行なってもよい。工程S1,S2は図16のフローチャートの上では先後関係であるかのように表示しているが、実際には光の照射および受光であるので、ほぼ同時に行なわれるものであってよい。また、工程S1と工程S2とでは行なわれる時間帯は重複してよい。
【0049】
(作用・効果)
本実施の形態における金型検査方法では、表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品の製品自体を検査する代わりに、そのような製品を成形するための金型を検査することとし、金型の被検査面に光を照射したときの、正反射光を主成分とする光の強度に相当するM1と、散乱光を主成分とする光の強度に相当するm1とを得ることができる。こうして得られる光の強度M1,m1に基づけば、製品に得られるであろう光学特性を推定することができる。したがって、金型によって製品を成形することなく、製品に得られるであろう光学特性を推定することができ、その結果、検査のために成形した製品が無駄になる事態も極力避けることができる。
【0050】
(実施の形態6)
(検査方法)
図17を参照して、本発明に基づく実施の形態6における金型検査方法について説明する。本実施の形態における金型検査方法のフローチャートを図17に示す。本実施の形態における金型検査方法は、実施の形態4で説明した金型検査方法においてさらに好ましい条件を採用したものである。本実施の形態における金型検査方法は、実施の形態3で説明した金型検査装置103を用いて実施することができるので、金型検査装置103の各符号(図11、図12参照)を用いて以下説明する。
【0051】
本実施の形態における金型検査方法においては、投光する工程S1は、被検査面1aに対して垂直でない方向に投光し、受光する工程S2は、中心に位置する第1受光ファイバ12fの周囲を複数の第2受光ファイバ12gが取り囲むように配置された受光ファイバ束17を用いて、投光ファイバ11から出射した光が被検査面1aで正反射したときの光の進路の延長上に第1受光ファイバ12fが位置するように受光ファイバ束17を配置して被検査面1aからの反射光を受光し、検出する工程S3は、第1受光ファイバ12fで受光した光の強度M1を検出する工程S31と、第2受光ファイバ12gで受光した光の強度m1を検出する工程S32とを含む。
【0052】
(作用・効果)
本実施の形態における金型検査方法においても、正反射光を主成分とする光の強度に相当するM1と、散乱光を主成分とする光の強度に相当するm1とを得ることができるので、実施の形態5と同様の効果を得ることができる。実施の形態5では、第1状態と第2状態とで装置の位置関係を切り替えて検出を2回行なわなければならなかったが、本実施の形態における金型検査方法によれば、第1状態と第2状態とで装置の位置関係を切り替える必要がなく、迅速にM1,m1を求めることができる。
【0053】
以下、実施の形態5,6で説明した金型検査方法に関して、さらに好ましい態様を述べる。
【0054】
上述の金型検査方法は、強度M1および強度m1を用いて、m1/(M1+m1)を暫定ヘイズとして求める工程をさらに含むことが好ましい。このようにすれば、金型から製造される製品を用いて所定の方法で求めることができるパラメータである「ヘイズ(haze)」に比例することが期待されるパラメータとして「暫定ヘイズ」を求めることができる。暫定ヘイズは、実際に金型から製品を試作しなくても金型そのものから求めることができるので、好都合である。
【0055】
上述の金型検査方法は、前記強度M1および前記強度m1を用いて、(M1−m1)/(M1+m1)を暫定反射像鮮明度として求める工程をさらに含むことが好ましい。このようにすれば、金型から製造される製品を用いて所定の方法で求めることができるパラメータである「反射像鮮明度」に近い意義を有するパラメータとして「暫定反射像鮮明度」を求めることができる。しかもこの暫定反射像鮮明度は、実際に金型から製品を試作しなくても金型そのものから求めることができるので、好都合である。
【0056】
上述の金型検査方法においては、前記投光ファイバにおいて光を外部へ出射するための開口部の径に比べて、前記1以上の受光ファイバにおいて外部から光を受け入れるための開口部の径は、同じまたはより小さくなっていることが好ましい。この条件が満たされていれば、受光ファイバは所望の光の成分のみを受光しやすくなり、不所望の光の成分が混入して受光される確率を低くすることができる。また、受光ファイバに対して入射する光の量はわずかな角度の変化によって大きく変動することとなるので、光の強度の変化を敏感に検出することができる。
【0057】
(実施の形態7)
(予測方法)
図18を参照して、本発明に基づく実施の形態7における防眩製品ヘイズ予測方法について説明する。本実施の形態における防眩製品ヘイズ予測方法のフローチャートを図18に示す。
【0058】
本実施の形態における防眩製品ヘイズ予測方法は、第1の金型を対象として、実施の形態5,6のいずれかで説明した金型検査方法を行ない、さらに上述の暫定ヘイズを求める工程を行なう工程S101と、前記第1の金型を用いて製品を成形する工程S102と、前記製品について、日本工業規格(以下「JIS」という。)K7136に定められた方法によりヘイズを求める工程S103と、前記ヘイズと前記暫定ヘイズとの比からヘイズ比例係数を求める工程S104と、第2の金型を対象として上述のように暫定ヘイズを求める金型検査方法を行なう工程S105と、前記第2の金型から得られた前記暫定ヘイズに対して、前記ヘイズ比例係数をかけて推定製品ヘイズを求める工程S106とを含む。
【0059】
(作用・効果)
本実施の形態における防眩製品ヘイズ予測方法によれば、第2の金型においては製品を成形しなくても、将来製作する製品のヘイズにきわめて近いパラメータである推定製品ヘイズを求めることができる。これにより、検査のために成形した製品が無駄になる事態も極力避けることができる。
【0060】
実際には、第1の金型を対象として工程S101〜S104を一旦行なってヘイズ比例係数を求めておけば、第2の金型を対象とした工程S105,S106は1種類の金型について行なうだけでなく、複数種類の金型を対象に行なうことができる。すなわち、第2の金型は複数存在してもよい。本実施の形態によれば、複数種類の金型について、各金型から実際に製品を製造しなくても、第1の金型から既に判明しているヘイズ比例係数に基づいて、推定製品ヘイズをそれぞれ求めることができるので好ましい。
【0061】
(実施の形態8)
(予測方法)
図19を参照して、本発明に基づく実施の形態8における防眩製品反射像鮮明度予測方法について説明する。本実施の形態における防眩製品反射像鮮明度予測方法のフローチャートを図19に示す。
【0062】
本実施の形態における防眩製品反射像鮮明度予測方法は、第1の金型を対象として、実施の形態5,6のいずれかで説明した金型検査方法を行ない、さらに上述の暫定反射像鮮明度を求める工程を行なう工程S201と、前記第1の金型を用いて製品を成形する工程S202と、前記製品について、JIS K7105に定められた方法により反射像鮮明度を求める工程S203と、前記反射像鮮明度と前記暫定反射像鮮明度との比から反射像鮮明度比例係数を求める工程S204と、第2の金型を対象として請求項9に記載の金型検査方法を行なう工程S205と、前記第2の金型から得られた前記暫定反射像鮮明度に対して、前記反射像鮮明度比例係数をかけて推定製品反射像鮮明度を求める工程S206とを含む。
【0063】
(作用・効果)
本実施の形態における防眩製品反射像鮮明度予測方法によれば、第2の金型においては製品を成形しなくても、将来製作する製品の反射像鮮明度にきわめて近いパラメータである推定製品反射像鮮明度を求めることができる。これにより、検査のために成形した製品が無駄になる事態も極力避けることができる。
【0064】
実際には、第1の金型を対象として工程S201〜S204を一旦行なって反射像鮮明度比例係数を求めておけば、第2の金型を対象とした工程S205,S206は1種類の金型について行なうだけでなく、複数種類の金型を対象に行なうことができる。すなわち、第2の金型は複数存在してもよい。本実施の形態によれば、複数種類の金型について、各金型から実際に製品を製造しなくても、第1の金型から既に判明している反射像鮮明度比例係数に基づいて、推定製品反射像鮮明度をそれぞれ求めることができるので好ましい。
【0065】
実施の形態7,8において、第1の金型は1種類でもよいが、異なる特性値を有する複数の金型を第1の金型として用いてそれぞれ比例係数を求めることが好ましい。複数の金型からそれぞれ得られた複数の比例係数から最終的に採用すべき1つの比例係数を求めるためには、たとえば最小二乗法を用いればよい。このとき仮定する式としては、たとえばy=a×xを用いることができる。ここで、yは暫定ヘイズまたは暫定反射像鮮明度、xはヘイズまたは反射像鮮明度であり、aは求める比例係数である。
【0066】
(検証実験)
実施の形態7,8で示した各予測方法によって金型から求められる推定製品ヘイズおよび推定製品反射像鮮明度が、その金型を用いて製造される製品から求められるヘイズおよび反射像鮮明度にどの程度一致しているかを確認するために、発明者らは以下の実験を行なった。
【0067】
(実験1)
実験1として、実施の形態2で説明した金型検査装置102(図5〜図8を参照)を用意して、金型に対して光を照射し、反射光を観測した。この実験では、投光ファイバ11として株式会社キーエンス製FU−35FZの中心側ファイバ、受光ファイバ12として株式会社キーエンス製FU−35FZの周辺側ファイバ、コリメートレンズユニット10として株式会社キーエンス製F−3HAを用いた。
【0068】
FU−35FZは、直径約1.1mmの円形領域の中心部に直径約0.05mmの多数の光ファイバを直径約0.5mmの円形に束ねた光ファイバ束を配置し、この光ファイバ束の周囲を直径約0.265mmの光ファイバ8本が取り囲む構成となっている。中心に配置された光ファイバ束を一体の光ファイバとみなせば、周辺部の光ファイバの直径は中心部に配置された光ファイバの直径よりも小さく、中心部に配置された光ファイバに比べて約1/2の直径を有することとなる。また、以上の情報から計算される中心部と周辺部との光ファイバの間隙は0.035mm以下である。中心部の光ファイバ束が投光ファイバ11に相当し、周辺部の8本の光ファイバが受光ファイバ12に相当する。コリメートレンズユニット10としてのF−3HAは、開口直径が約4.3mmであって、凸レンズを備えており、レンズ先端から0〜20mmの位置においてスポット径が約4mmの概略平行光となるように設計されている。
【0069】
まず第1状態を実現するために、コリメートレンズユニット10としてのF−3HAは、被検査面1aに正対する位置からわずかに角度をずらして設置した。この角度は、FU−35FZの中心に配置された投光ファイバ11から発せられた光に起因して測定対象としての被検査面1aから戻ってくる正反射光が、FU−35FZの周辺部に配置されたファイバ束すなわち複数の受光ファイバ12に入射するように設定したものである。投光ファイバ11は、株式会社キーエンス製ファイバアンプFS−V31Mの「投光」側に接続し、受光ファイバ12は同機の「受光」側に接続した。さらにFS−V31Mのアナログ出力(1V〜5V)を、12bitA/Dコンバータに接続した。A/DコンバータとしてはMicrochip Technology Inc社製マイクロコントローラdsPIC30F4013−30I/Pに搭載された12bitA/Dコンバータを用いた。アナログ入力のサンプリング時間は10μ秒とし、150回測定した平均値をdsPIC30F4013−30I/Pにより計算した。得られた12bit整数値を、同マイクロコントローラに搭載されているUART機能を用い、Analog Devices社製RS232Cレベル変換ICであるADM3202Aを介してパーソナルコンピュータのRS232Cシリアルポートへ送出した。この測定によって、強度M1の測定値を得た。
【0070】
次に、第2状態を実現するために、コリメートレンズユニット10としてのF−3HAは、測定対象面に正対して設置した。この姿勢においては、FU−35FZの中心に配置された投光ファイバ11から発せられた光に起因して測定対象としての被検査面1aから戻ってくる正反射光は、FU−35FZの中央部のファイバ束すなわち投光ファイバ11に戻る。投光ファイバ11、受光ファイバ12の接続関係は上述した第1状態におけるものと同じである。アナログ入力のサンプリング時間、パーソナルコンピュータへの送出方法も、第1状態におけるものと同じである。この測定によって、強度m1の測定値を得た。
【0071】
次に、得られた強度M1,m1を用いて、防眩処理金型に関して知りたい代表的な特性パラメータであるヘイズおよび反射像鮮明度の代わりの目安として暫定ヘイズおよび暫定反射像鮮明度を求めた。定義より、(M1−m1)/(M1+m1)が暫定反射鮮明度に相当し、m1/(M1+m1)が暫定ヘイズに相当する。
【0072】
実際にこの金型を用いてフィルムを作製した。金型を用いてフィルムを作製するということは金型の表面形状がフィルムの表面に転写されることを意味する。このように転写することによってフィルムの表面に防眩処理を施すことができる。実験において、凹凸形状の転写にはUVエンボス法を用いた。具体的には、光硬化性樹脂組成物GRANDIC 806T(大日本インキ化学工業株式会社製)を酢酸エチルにて溶解して、50重量%濃度の溶液とし、さらに、光重合開始剤であるルシリンTPO(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を、硬化性樹脂成分100重量部あたり5重量部添加して塗布液を調製した。その後、厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、この塗布液を乾燥後の塗布厚みが10μmとなるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、先に作製した金型の凹凸面に、光硬化性樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、強度20mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で200mJ/cm2となるように照射して、光硬化性樹脂組成物層を硬化させた。こうして硬化して得られた層を「硬化樹脂層」というものとする。この後、TACフィルムを硬化樹脂層ごと金型から剥離して、表面に凹凸を有する硬化樹脂層とTACフィルムとの積層体からなる透明な防眩フィルムを得た。
【0073】
このようにして得たフィルムからJIS K7105に定められた方法によりM,mを測定し、光学特性としての反射像鮮明度を導き出した。ここで、添え字「1」が付かないM,mというパラメータは、JIS K7105の中で規定されているパラメータである。ヘイズについては、JIS K7136に基づき、株式会社村上色彩技術研究所製のヘーズ・透過率計HM−150により測定した。詳しくは後述する。
【0074】
JIS K7105の規定内容について簡単に説明する。JIS K7105によれば、光源から発せられてスリットを透過した光をレンズで平行光とし、この平行光を試料に対して45°をなすように照射し、反射光を光学くしを通して受光することとされている。スリットの幅は0.03±0.005mmであるものとされている。光学くしは、暗部と明部との幅の比が1:1で、幅が0.125mm、0.5mm、1.0mm、2.0mmの4種類を用いることとされている。光学くしは約10mm/分の速度で移動させられる。まず、試料取付台には試料の代わりに黒ガラス基準面を取り付けた状態で光学くしを移動させて受光波形を記録し、この場合の光学くしの暗部における記録がゼロになるように調整する。次に、試料を試料取付台に設置し、光学くしを移動して記録した最高波高が記録紙上の適当な位置にくるように調整する。測定は、上述した4種類の光学くしを用い、光学くしを所定幅の範囲で移動させ、記録紙上から読み取れる最高波高をMとし、最低波高をmとする。これらのパラメータM,mを用いて、反射像鮮明度は(M−m)/(M+m)として求められる。反射像鮮明度は、JIS K7105に基づき、スガ試験機株式会社製の写像性測定器ICM−1Tによって測定した。
【0075】
ヘイズについては、金型から形状を転写された厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムを測定対象として、株式会社村上色彩技術研究所製のヘーズ・透過率計HM−150により、JIS K7136に基づいて測定した。この測定について説明する。
【0076】
JIS K7136によれば、ヘイズ(haze)は「試験片を透過する透過光のうち、前方散乱によって入射光から0.044rad(2.5°)以上それた透過光の百分率」として規定されている。すなわち、ヘイズとは全光線透過光量に占める散乱透過光量の百分率である。透明基材の表面に凹凸形状を設けることによって実現される防眩処理では、凹凸形状が形成された透明基材の屈折率により散乱光量が変化する。しかし、基材の屈折率がほぼ一定であり、ヘイズが凹凸形状によって発現すると仮定すれば、金型の凹凸形状による散乱光量が照射した全光量に占める割合を推定するパラメータにより、その系に適用できる比例係数を求めることでヘイズを推定することができると考えられる。金型に照射した全光線に対して散乱光が占める割合を推定する目的で、散乱光量に相当する量がm1であって、全光線光量に相当する量が(M1+m1)であるものとみなして、「暫定ヘイズ」をm1/(M1+m1)と定義した。このようにして定義された暫定ヘイズは、ほぼ一定の屈折率を有する透明基材の表面に凹凸形状を付与することにより実現された防眩製品のヘイズに比例すると考えられる。
【0077】
フィルムから求められたヘイズと、金型から求められた暫定ヘイズとの相関関係を図20に示す。フィルムから求められた反射像鮮明度と、金型から求められた暫定反射像鮮明度との相関関係を図21に示す。ここで、反射像鮮明度として示した値は、幅0.5mm、1.0mm、2.0mmの3通りの光学くしによるそれぞれの測定値の合計である。図20、図21から明らかなように、いずれも良好な相関を示すことがわかった。図20、図21の左上にそれぞれ記載されたR2は、相関係数を意味する。
【0078】
ヘイズと暫定ヘイズとの比からヘイズ比例係数を求めることができる。図20に示すように、金型から求められる暫定ヘイズは製品から求められるヘイズの0.3955倍であることがわかったので、ヘイズ比例係数は0.3955の逆数で2.528となる。
【0079】
反射像鮮明度と暫定反射像鮮明度との比から反射像鮮明度比例係数を求めることができる。図21に示すように、金型から求められる暫定反射像鮮明度は製品から求められる反射像鮮明度の0.0062倍であることがわかったので、反射像鮮明度比例係数は0.0062の逆数で161.29となる。
【0080】
金型から求められた暫定ヘイズおよび暫定反射像鮮明度と、フィルムから求められたヘイズおよび反射像鮮明度との間にはこのように相関があることがわかったので、今後は金型によって実際にフィルムを作製しなくても、金型において暫定ヘイズおよび暫定反射像鮮明度を求め、ヘイズ比例係数および反射像鮮明度比例係数のうちいずれか対応するものをかけることによって、製品に生じるであろうヘイズおよび反射像鮮明度を予測することが可能となった。こうして比例係数をかけて求められるパラメータが推定製品ヘイズおよび推定製品反射像鮮明度となる。
【0081】
以上のように、先端直径が約5mm程度と非常にコンパクトで簡便な光学系を用いるだけで防眩処理用金型の光学特性を測定することが可能であることが明らかとなった。
【0082】
(実験2)
実験2として、図14に示した装置を用意し、測定を行なった。実験1では第1状態と第2状態とで合計2回の測定が必要であったが、実験2では1回でM1,m1の測定が可能となる。
【0083】
株式会社キーエンス製のF−3HAと、株式会社キーエンス製FU−35FZとを組み合わせたものを受光ファイバ束17とした。中心に開口部を有するファイバ束が第1受光ファイバ12fに相当し、周辺部に開口部を有するファイバ束が第2受光ファイバ12gに相当する。コリメートレンズユニット10から照射された光が金型表面すなわち被検査面1aで反射された光が受光できる位置にコリメートレンズユニット10iを設置した。
【0084】
光源の役割を果たすLED30としては、Philips Lumileds Lighting Company社製の発光ダイオードLXHL−LE3Cを用いた。非球面コンデンサレンズ31としては、エドモンド・オプティクス・ジャパン株式会社から販売されている商品コード43987−K(非球面コンデンサレンズ、外径27mm、有効焦点距離13mm)を2枚用いた。非球面コンデンサレンズ31を経由して投光ファイバ11に光を導入した。
【0085】
投光ファイバ11から被検査面1aに向けて光を照射し、第1および第2受光ファイバ12f,12gにより伝えられる光の強度をOsram Opto Semiconductors Inc社製フォトダイオードSFH−213により検出した。
【0086】
第1受光ファイバ12fにより伝えられる光の強度をM1、第2受光ファイバ12gにより伝えられる光の強度をm1として測定した。A/D変換器によって12bit整数に変換した後、マイクロコントローラによってm1/(M1+m1)を計算して暫定ヘイズとし、(M1−m1)/(M1+m1)を計算して暫定反射像鮮明度とした。
【0087】
これらの値に実験1で求められたヘイズ比例係数および反射像鮮明度比例係数をそれぞれかけることにより、この防眩処理用金型によって作製される製品に生じるであろうヘヘイズおよび反射像鮮明度、すなわち、推定製品ヘイズおよび推定製品反射像鮮明度を知ることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 金型、1a 被検査面、2 スポット、10,10i コリメートレンズユニット、11 投光ファイバ、11e 投光領域、12 受光ファイバ、12e 受光領域、12f 第1受光ファイバ、12g 第2受光ファイバ、13 光ファイバ束、14 コリメートレンズ、15 筐体、16 切替部、17 受光ファイバ束、20 検出部、21 ファイバセンサアンプユニット、22 マイクロコントローラ、25 架台、30 LED、31 非球面コンデンサレンズ、32f,32g フォトダイオード、33 LEDドライバ、34 A/Dコンバータ、71 光、72 反射光、73 散乱光、101,102,103 金型検査装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形するための金型の検査装置であって、
前記金型の被検査面に向けて投光するための投光ファイバと、
前記被検査面からの反射光を受光するための1以上の受光ファイバと、
前記1以上の受光ファイバが受光する光の強度を検出するための検出部とを備える、金型検査装置。
【請求項2】
前記被検査面からの反射光を受光するための複数の受光ファイバを備え、前記複数の受光ファイバは前記投光ファイバを取り囲むように配置されており、
前記投光ファイバと前記複数の受光ファイバとを合わせた光ファイバ束は、
前記投光ファイバから出射した光が前記被検査面で正反射したときの光の進路の延長上に前記複数の受光ファイバのいずれかが位置する第1状態と、
前記被検査面に対して垂直な第2状態との少なくとも2通りをとりうるように構成されている、請求項1に記載の金型検査装置。
【請求項3】
前記被検査面からの反射光を受光するための複数の受光ファイバによる受光ファイバ束を備え、前記受光ファイバ束は、中心に位置する第1受光ファイバと、前記第1受光ファイバの周囲を取り囲む複数の第2受光ファイバとを含み、
前記投光ファイバから出射した光が前記被検査面で正反射したときの光の進路の延長上に前記第1受光ファイバが位置するように、前記受光ファイバ束が配置されている、請求項1に記載の金型検査装置。
【請求項4】
前記投光ファイバにおいて光を外部へ出射するための開口部の径に比べて、前記1以上の受光ファイバにおいて外部から光を受け入れるための開口部の径は、同じまたはより小さくなっている、請求項1から3のいずれかに記載の金型検査装置。
【請求項5】
表面に形成された凹凸形状によって防眩効果を奏する製品を成形するための金型の検査方法であって、
前記金型の被検査面に向けて投光ファイバから投光する工程と、
前記被検査面からの反射光を1以上の受光ファイバによって受光する工程と、
前記1以上の受光ファイバが受光する光の強度を検出する工程とを含む、金型検査方法。
【請求項6】
前記投光する工程は、前記投光ファイバの周りを複数の受光ファイバで取り囲むように配置した光ファイバ束を用い、
前記投光する工程は、
前記投光ファイバから出射した光が前記被検査面で正反射したときの光の進路の延長上に前記複数の受光ファイバのいずれかが位置する第1状態となるように前記光ファイバ束を配置して前記投光ファイバからの光の照射を行なう第1工程と、
前記被検査面に対して垂直な第2状態となるように前記光ファイバ束を配置して前記投光ファイバからの光の照射を行なう第2工程とを含み、
前記受光する工程は、前記第1工程を行ないながら受光する第3工程と、前記第2工程を行ないながら受光する第4工程とを含み、
前記検出する工程は、前記第3工程で受光した光の強度M1を検出する工程と、前記第4工程で受光した光の強度m1を検出する工程とを含む、請求項5に記載の金型検査方法。
【請求項7】
前記投光する工程は、前記被検査面に対して垂直でない方向に投光し、
前記受光する工程は、中心に位置する第1受光ファイバの周囲を複数の第2受光ファイバが取り囲むように配置された受光ファイバ束を用いて、前記投光ファイバから出射した光が前記被検査面で正反射したときの光の進路の延長上に前記第1受光ファイバが位置するように前記受光ファイバ束を配置して前記被検査面からの反射光を受光し、
前記検出する工程は、前記第1受光ファイバで受光した光の強度M1を検出する工程と、前記第2受光ファイバで受光した光の強度m1を検出する工程とを含む、請求項5に記載の金型検査方法。
【請求項8】
前記強度M1および前記強度m1を用いて、m1/(M1+m1)を暫定ヘイズとして求める工程をさらに含む、請求項6または7に記載の金型検査方法。
【請求項9】
前記強度M1および前記強度m1を用いて、(M1−m1)/(M1+m1)を暫定反射像鮮明度として求める工程をさらに含む、請求項6または7に記載の金型検査方法。
【請求項10】
前記投光ファイバにおいて光を外部へ出射するための開口部の径に比べて、前記1以上の受光ファイバにおいて外部から光を受け入れるための開口部の径は、同じまたはより小さくなっている、請求項5から9のいずれかに記載の金型検査方法。
【請求項11】
第1の金型を対象として請求項8に記載の金型検査方法を行なう工程と、
前記第1の金型を用いて製品を成形する工程と、
前記製品について、日本工業規格K7136に定められた方法によりヘイズを求める工程と、
前記ヘイズと前記暫定ヘイズとの比からヘイズ比例係数を求める工程と、
第2の金型を対象として請求項8に記載の金型検査方法を行なう工程と、
前記第2の金型から得られた前記暫定ヘイズに対して、前記ヘイズ比例係数をかけて推定製品ヘイズを求める工程とを含む、防眩製品ヘイズ予測方法。
【請求項12】
第1の金型を対象として請求項9に記載の金型検査方法を行なう工程と、
前記第1の金型を用いて製品を成形する工程と、
前記製品について、日本工業規格K7105に定められた方法により反射像鮮明度を求める工程と、
前記反射像鮮明度と前記暫定反射像鮮明度との比から反射像鮮明度比例係数を求める工程と、
第2の金型を対象として請求項9に記載の金型検査方法を行なう工程と、
前記第2の金型から得られた前記暫定反射像鮮明度に対して、前記反射像鮮明度比例係数をかけて推定製品反射像鮮明度を求める工程とを含む、防眩製品反射像鮮明度予測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−214976(P2011−214976A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82956(P2010−82956)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】