説明

金型装置、成形機及び成形方法

【課題】成形品に成形不良が発生するのを防止することができ、成形サイクルを十分に短くすることができるようにする。
【解決手段】第1の金型と、第2の金型と、第1、第2の金型のうちの一方に取り付けられた転写プレート24とを有する。第1、第2の金型のうちの少なくとも一方の金型に、他方の金型と対向する面に臨ませて形成され、熱制御媒体によって、断熱領域及び熱放出領域として選択的に機能させられる熱制御部を備えるので、キャビティ空間C1、C2内の成形材料の温度を、転写が行われている間、高くすることができる。したがって、成形品に成形不良が発生するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型装置、成形機及び成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、成形機、例えば、射出成形機においては、加熱シリンダ内において加熱され溶融させられた樹脂が、金型装置内のキャビティ空間に充填され、該キャビティ空間内において冷却され、固化させられて成形品が成形されるようになっている。
【0003】
前記射出成形機は、前記金型装置、型締装置及び射出装置を有し、該射出装置は、前記加熱シリンダ、該加熱シリンダの前端に取り付けられ、溶融させられた樹脂を射出する射出ノズル、前記加熱シリンダ内において回転自在に、かつ、進退自在に配設されたスクリュー等を備える。そして、前記金型装置は固定金型及び可動金型を備え、前記型締装置によって可動金型を進退させることにより、金型装置の型閉じ、型締め及び型開きが行われ、型締めに伴って、前記固定金型と可動金型との間にキャビティ空間が形成される。
【0004】
そして、計量工程において、前記スクリューが回転させられると、加熱シリンダ内に供給された樹脂が溶融させられてスクリューの前方に溜められ、それに伴って、スクリューが後退させられ、この間に、金型装置の型閉じ及び型締めが行われる。続いて、射出工程において、前記スクリューが前進させられ、該スクリューの前方に溜められた樹脂が射出ノズルから射出され、キャビティ空間に充填される。次に、冷却工程において、前記キャビティ空間内の樹脂が冷却され固化されて、成形品が成形される。続いて、型開きが行われ、前記成形品が取り出される。
【0005】
ところで、該成形品として、例えば、導光板、位相フィルム等を成形する場合、固定金型及び可動金型のうちの一方の金型に転写プレートが取り付けられ、前記キャビティ空間に熱可塑性の樹脂を充填して供給し、転写プレートの転写面に形成された微細な凹凸から成るパターンを前記樹脂に高精度に転写することによって成形品を得るようにしている。
【0006】
この場合、金型装置に冷却媒体流路が形成され、該冷却媒体流路に水を流すことによって、転写プレート及び金型装置の温度が低く設定される。これにより、樹脂を冷却し、固化させるのに必要な時間が短くされるので、成形サイクルを短くすることができる。
【0007】
ところが、一般的に、射出ノズルから射出された樹脂が、キャビティ空間内に進入し、転写プレート及び金型装置の表面に接触すると、スキン層(表面固化層)が一瞬にして成長するので、前述されたように、転写プレート及び金型装置の温度を低く設定すると、前記スキン層が発達し、良好な成形が阻害され、成形品にウェルド、転写不良等の成形不良が発生してしまう。
【0008】
そこで、転写プレートの裏側に、熱伝導率の低い断熱材料から成る断熱層を形成するようにした金型装置が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
この場合、キャビティ空間内に充填された樹脂の熱が金型装置に逃げるのを一瞬遅らせることができ、スキン層が発達するのを防止することができるとともに、その間に、転写面のパターンの転写を終了することができる。したがって、キャビティ空間の内周面と接触する部分において良好な成形を行うことができ、成形品にウェルド、転写不良等の成形不良が発生するのを防止することができる。
【特許文献1】特許第3686251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の金型装置においては、断熱層が転写プレートの裏側のキャビティ空間の近傍に形成されるのに対して、前記冷却媒体流路はキャビティ空間から離れた箇所に形成されるので、樹脂を冷却する効率が低く、樹脂の冷却速度を十分に低くすることができない。したがって、成形サイクルを十分に短くすることができない。
【0011】
本発明は、前記従来の金型装置の問題点を解決して、成形品に成形不良が発生するのを防止することができ、成形サイクルを十分に短くすることができる金型装置、成形機及び成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのために、本発明の金型装置においては、第1の金型と、該第1の金型と対向させて、かつ、進退自在に配設された第2の金型と、前記第1、第2の金型のうちの一方の金型におけるキャビティ空間に臨む面に取り付けられた転写プレートとを有する。
【0013】
そして、前記第1、第2の金型のうちの少なくとも前記一方の金型に、他方の金型と対向する面に臨ませて形成され、熱制御媒体によって、断熱領域及び熱放出領域として選択的に機能させられる熱制御部を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金型装置においては、第1の金型と、該第1の金型と対向させて、かつ、進退自在に配設された第2の金型と、前記第1、第2の金型のうちの一方の金型におけるキャビティ空間に臨む面に取り付けられた転写プレートとを有する。
【0015】
そして、前記第1、第2の金型のうちの少なくとも前記一方の金型に、他方の金型と対向する面に臨ませて形成され、熱制御媒体によって、断熱領域及び熱放出領域として選択的に機能させられる熱制御部を備える。
【0016】
この場合、第1、第2の金型のうちの少なくとも前記一方の金型に、他方の金型と対向する面に臨ませて形成され、熱制御媒体によって、断熱領域及び熱放出領域として選択的に機能させられる熱制御部を備えるので、キャビティ空間内の成形材料の温度を、転写が行われている間、高くすることができる。したがって、成形品に成形不良が発生するのを防止することができる。
【0017】
また、キャビティ空間内の成形材料は熱制御媒体によって冷却されるので、成形材料の冷却速度を十分に低くすることができ、成形サイクルを十分に短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、成形機としての射出成形機について説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態における金型装置の断面図である。
【0020】
図において、11は成形品、例えば、導光板等を成形するための断熱金型としての金型装置、12は第1の金型としての固定金型、13は該固定金型12と対向させて、かつ、進退自在に配設された第2の金型としての可動金型である。そして、図示されない型締装置(プレス機構)によって、可動金型13が前進(固定金型12に向けて移動)させられて型閉じが行われ、可動金型13が前記固定金型12に所定の型締力によって押圧させられて型締めが行われ、これに伴って固定金型12と可動金型13との間に、所定の形状、本実施の形態においては、矩形の形状を有するキャビティ空間C1、C2が形成され、可動金型13が後退(固定金型12から離反)させられて型開きが行われる。
【0021】
また、15は固定金型12に形成されたスプルーであり、該スプルー15の先端とキャビティ空間C1、C2とがゲートg1、g2を介して連通させられる。
【0022】
そして、前記固定金型12は、第1の金型要素としての型板16、該型板16の上方に配設され、型板16を受ける第2の金型要素としての受け板17、及び前記型板16における可動金型13と対向する面を被う第3の金型要素としての前板18を備え、前記可動金型13は、第1の金型要素としての型板21、該型板21の下方に配設され、型板21を受ける第2の金型要素としての受け板22、及び前記型板21における固定金型12と対向する面を被う第3の金型要素としての前板25を備える。なお、前記型板16及び受け板17によって第1の型部材が、型板21及び受け板22によって第2の型部材が構成される。
【0023】
前記型板16における可動金型13と対向する面に臨ませて、所定の形状、本実施の形態においては、螺旋状に連続させて、所定の幅、所定の深さの溝33が形成され、型板16を前記前板18によって被うことにより、密閉された第1の熱制御部としての流路34が形成される。また、前記型板21における固定金型12と対向する面に臨ませて、所定の形状、本実施の形態においては、螺旋状に連続させて、所定の幅、所定の深さの溝35が形成され、型板21を前記前板25によって被うことにより、密閉された第2の熱制御部としての流路36が形成される。
【0024】
そして、前記固定金型12及び可動金型13のうちの一方、本実施の形態においては、可動金型13における前記キャビティ空間C1、C2に臨む面に転写プレート24が取り付けられる。該転写プレート24における固定金型12と対向する面に転写面が形成され、該転写面には、サブミクロン等の微細な凹凸から成る所定のパターンが形成される。
【0025】
なお、前記固定金型12及び可動金型13は、剛性を保つためにステンレス鋼によって形成され、転写プレート24は、加工性を良好にするためにニッケル電鋳によって形成される。
【0026】
また、前記受け板17に第1の温調用流路としての冷却媒体流路51が、受け板22に第2の温調用流路としての冷却媒体流路52が形成され、各冷却媒体流路51、52に温調媒体、例えば、水を流すことによって、金型装置11、転写プレート24及びキャビティ空間C1、C2内の成形材料としての樹脂が冷却され、かつ、金型装置11及び転写プレート24の冷却温度が低く設定される。
【0027】
前記型締装置は、第1のプラテンとしての固定プラテン、ベースプレートとしてのトグルサポート、前記固定プラテンとトグルサポートとの間に架設されたタイバー、固定プラテンと対向させて、かつ、タイバーに沿って進退自在に配設された第2のプラテンとしての可動プラテン、該可動プラテンとトグルサポートとの間に配設されたトグル機構、型締用の駆動部としての型締用モータ等を備える。そして、前記固定プラテン及び可動プラテンに、互いに対向させて前記固定金型12及び可動金型13がそれぞれ取り付けられる。
【0028】
また、前記固定プラテンと対向させて図示されない射出装置が配設される。該射出装置は、シリンダ部材としての加熱シリンダ、該加熱シリンダ内において、回転自在に、かつ、進退自在に配設された射出部材としてのスクリュー、前記加熱シリンダの前端に取り付けられた射出ノズル、前記加熱シリンダの後端の近傍に配設されたホッパ、前記スクリューと連結された計量用の駆動部としての計量用モータ、前記スクリューと連結された射出用の駆動部としての射出用モータ等を備える。そして、前記金型装置11、型締装置、射出装置等によって射出成形機が構成される。
【0029】
次に、前記構成の射出成形機の動作について説明する。
【0030】
前記型締装置において、型締用モータを駆動すると、トグル機構が伸展させられ、可動プラテンが前進させられて型閉じが行われ、可動金型13が固定金型12に当接させられる。続いて、型締用モータを更に駆動すると、トグル機構において型締力が発生させられて型締めが行われ、前記型締力で可動金型13が固定金型12に押し付けられる。
【0031】
一方、前記射出装置においては、計量用モータを駆動し、スクリューを回転させると、計量が行われ、ホッパから供給された樹脂が、加熱シリンダ内において加熱されて溶融させられ、前方に移動して、スクリューの前方に溜められる。これに伴って、スクリューは、所定の位置まで後退させられる。
【0032】
また、型締めが行われた状態の金型装置11の前記スプルー15に、前記射出ノズルを押し当て、射出用モータを駆動し、スクリューを前進させると、射出が行われ、スクリューの前方に溜められた樹脂は、射出ノズルから射出され、ゲートg1、g2を介して前記キャビティ空間C1、C2に充填される。続いて、射出用モータを駆動し続けることによって保圧が行われ、キャビティ空間C1、C2内の樹脂の圧力が保持される。
【0033】
また、金型装置11において冷却が行われ、各キャビティ空間C1、C2内の樹脂は、前記水によって冷却され、固化させられ、このとき、前記転写プレート24の転写面のパターンが樹脂に転写され、導光板が成形される。
【0034】
続いて、前記型締用モータを逆方向に駆動すると、トグル機構が屈曲させられ、可動プラテンが後退させられ、型開きが行われる。そして、図示されないエジェクタ装置によって、熱制御媒体としての圧縮空気が導光板に向けて噴射され、突出しが行われ、導光板を得ることができる。
【0035】
ところで、前述されたように、射出ノズルから射出された樹脂が、キャビティ空間C1、C2内に進入し、転写プレート24及び金型装置11の表面に接触すると、スキン層(表面固化層)が一瞬にして成長するが、本実施の形態のように、金型装置11及び転写プレート24の温度が低く設定されている場合に前記スキン層が発達すると、良好な成形が阻害され、導光板にウェルド、転写不良等の成形不良が発生してしまう。
【0036】
この場合、キャビティ空間C1、C2内に充填された樹脂の熱が金型装置11に逃げるのを抑制するのが好ましいが、それに伴って、樹脂の冷却速度が低くなると、成形サイクルが長くなってしまう。
【0037】
そこで、本実施の形態においては、前記流路34、36を断熱領域及び熱放出領域として選択的に機能させるようにしている。
【0038】
なお、59は熱制御媒体供給口としての入口ポート、60は熱制御媒体排出口としての出口ポートである。
【0039】
図2は本発明の実施の形態における熱制御装置のブロック図、図3は本発明の実施の形態における成形サイクルの工程図、図4は本発明の実施の形態におけるキャビティ空間に充填される樹脂の性向を表すタイムチャートである。
【0040】
図2において、34、36は流路、61は前記圧縮空気を供給する供給源としての圧縮機、62は前記圧縮空気の流れを制御する制御弁、53は制御部、54は計時部材としてのタイマ、57は、前記圧縮機61と金型装置11とを連結し、圧縮機61から供給された圧縮空気を流路34、36に供給する熱制御媒体供給路としての管路、58は、前記金型装置11と制御弁62とを連結し、圧縮空気を流路34、36から排出する熱制御媒体排出路としての管路、59は入口ポート、60は出口ポートである。
【0041】
前記制御部53は、演算装置としてのCPU、記憶装置としてのRAM及びROMを備え、前記CPUは前記RAM及びROMに記録されたプログラム、データ等によってコンピュータとして機能する。なお、本実施の形態においては、前記エジェクタ装置において導光板を突き出すために圧縮空気が使用される。したがって、前記圧縮機61は、エジェクタ装置の圧縮空気を供給する供給源として使用されるものを利用することができる。その結果、金型装置11のコストを低くすることができる。
【0042】
この場合、キャビティ空間C1(図1)、C2に充填される樹脂の温度Tsは、300〔℃〕以上、かつ、400〔℃〕以下にされ、成形が開始される時点、すなわち、樹脂のキャビティ空間C1、C2への充填が開始される時点の転写プレート24及び金型装置11の温度(以下「初期温度」という。)は、成形に使用される樹脂のガラス転移点Tgより低い温度に設定される。
【0043】
次に、前記熱制御装置の動作について説明する。
【0044】
まず、制御部53の図示されない計量処理手段(計量処理部)は、計量処理を行い、計量用モータを駆動して計量を開始し、スクリューヘッドの前方に溶融させられた樹脂を溜める。この間、制御部53の図示されない断熱制御処理手段(断熱制御処理部)は、断熱制御処理を行い、前記圧縮機61を駆動し、かつ、制御弁62を閉鎖し、流路34、36内に圧縮空気を滞留させる。
【0045】
続いて、タイミングt0で、制御部53の図示されない射出処理手段(射出処理部)は、射出処理を行い、射出用モータを駆動して射出を開始し、スクリューヘッドの前方の樹脂を射出ノズルを介して射出し、キャビティ空間C1、C2に充填する。
【0046】
そして、樹脂がキャビティ空間C1、C2内に進入すると、転写プレート24及び金型装置11の表面(キャビティ空間C1、C2の内周面)の温度は、急激に上昇し、これに伴って、金型装置11によって多くの熱が奪われ、その後、直ちに低下させられる。このとき、前記流路34、36内に圧縮空気が滞留させられているので、流路34、36は断熱領域として機能し、金型装置11によって樹脂の熱が奪われるのを一瞬抑制する。
【0047】
したがって、初期温度が低くされても、転写プレート24の表面の温度及びキャビティ空間C1、C2内の樹脂の温度を、転写が行われている間、高くすることができる。そして、タイミングt1で転写が終了しても、転写を良好に行うことができる温度の下限値、すなわち、転写適正温度下限値Trより高くすることができ、その間に、樹脂への転写面のパターンの転写を終了することができる。なお、転写適正温度下限値Trはガラス転移点Tgより高い。
【0048】
その結果、スキン層が成長した後、発達するのを防止することができるので、樹脂におけるキャビティ空間C1、C2の内周面と接触する部分において良好な成形を行うことができ、導光板にウェルド、転写不良等の成形不良が発生するのを防止することができる。
【0049】
ところで、前記冷却媒体流路51、52はキャビティ空間C1、C2から離れた箇所に形成されるので、前記冷却媒体流路51、52による樹脂を冷却する効率が低い。そこで、本実施の形態において、転写が終了した後、樹脂の温度Tsが、ガラス転移点Tgより低くなり、固化が開始される熱変形温度Taになるタイミングt2で、前記制御部53の図示されない熱放出処理手段(熱放出処理部)は、熱放出処理を行い、制御弁62を開放する。これにより、圧縮空気は、流路34、35内を流され(流動を開始し)、制御弁62を介して大気中に放出される。このとき、圧縮空気は、冷却媒体として機能し、キャビティ空間C1、C2内の樹脂の熱を吸収し、大気中に放出される。
【0050】
なお、前記タイミングt0でキャビティ空間C1、C2に樹脂が充填されてからタイミングt2で樹脂の温度Tsが熱変形温度Taになるまでの時間τ1(0.5〔ms〕以上、かつ、2.0〔ms〕以下)はあらかじめ測定され、本実施の形態においては、タイミングt0でタイマ54による計時を開始し、前記測定された時間τ1が経過すると、前記熱放出処理手段は、制御弁62を開放する。
【0051】
このように、キャビティ空間C1、C2内の樹脂は圧縮空気によって冷却されるので、樹脂の冷却速度が高くなり、成形サイクルを短くすることができる。
【0052】
また、樹脂の熱だけでなく、転写プレート24及び金型装置11の熱も圧縮空気によって吸収され、大気中に放出されるので、転写プレート24及び金型装置11の温度を低くすることができる。したがって、樹脂の熱がその分金型装置11に逃げるので、樹脂の冷却速度が一層高くなり、成形サイクルを一層短くすることができる。
【0053】
本実施の形態において、樹脂の温度Tsは、タイミングt2で圧縮空気による冷却が開始された後、タイミングt3で十分に低くなり、導光板を金型装置11から取り出すことができる温度、すなわち、取出温度Tbになる(従来の断熱層を形成するようにした金型装置においては、タイミングt3より遅いタイミングt4で樹脂の温度Tsが取出温度Tbになる。)ので、エジェクタ装置によって導光板を突き出すことができる。
【0054】
なお、成形サイクルにおいては、前記タイミングt3の直前に、金型装置11の型開きが行われる。
【0055】
また、本実施の形態において、圧縮空気は、タイミングt2からタイミングt3までの間は流路34、36内を流れ、タイミングt2からタイミングt3までの間以外は流路34、36内を流れないようになっているが、温調媒体は、各冷却媒体流路51、52内を常時流れる。
【0056】
そして、本実施の形態においては、転写プレート24が配設される可動金型13に流路36が形成されるだけでなく、転写プレート24が配設されない固定金型12にも流路34が配設されるようになっているが、固定金型12には流路34を形成しないようにすることもできる。
【0057】
また、本実施の形態において、流路34、36において熱を吸収した圧縮空気は、制御弁62を通過した後、大気中に放出されるようになっているが、制御弁62を通過した後、図示されない冷却装置、熱交換器等によって冷却し、圧縮機61に送ることができる。
【0058】
さらに、本実施の形態において、圧縮空気は、流動性が高く、流路34、36における前板18、25との間の熱伝達率が高いことから、熱制御媒体として圧縮空気を使用するようになっているが、該圧縮空気に代えて各種の液体、気体等を使用することができる。
【0059】
本実施の形態においては、成形品として導光板を成形する場合について説明しているが、本発明を、成形品として、導光板のほかに位相フィルム、ディスク基板等を成形する場合に適用することができる。
【0060】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態における金型装置の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における熱制御装置のブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態における成形サイクルの工程図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるキャビティ空間に充填される樹脂の性向を表すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0062】
11 金型装置
12 固定金型
13 可動金型
24 転写プレート
34、36 流路
53 制御部
C1、C2 キャビティ空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の金型と、
(b)該第1の金型と対向させて、かつ、進退自在に配設された第2の金型と、
(c)前記第1、第2の金型のうちの一方の金型におけるキャビティ空間に臨む面に取り付けられた転写プレートとを有するとともに、
(d)前記第1、第2の金型のうちの少なくとも前記一方の金型に、他方の金型と対向する面に臨ませて形成され、熱制御媒体によって、断熱領域及び熱放出領域として選択的に機能させられる熱制御部を備えることを特徴とする金型装置。
【請求項2】
(a)前記熱制御媒体は圧縮空気であり、
(b)前記熱制御部は圧縮空気を流すための流路である請求項1に記載の金型装置。
【請求項3】
前記流路は螺旋状に形成される請求項2に記載の金型装置。
【請求項4】
(a)前記請求項1に記載の金型装置と、
(b)前記キャビティ空間に成形材料を充填した後の所定のタイミングまでの間、前記熱制御媒体を熱制御部に滞留させる断熱制御処理手段と、
(c)前記タイミングになると、熱制御部内において前記熱制御媒体を流す熱放出処理手段とを有する成形機。
【請求項5】
第1の金型、該第1の金型と対向させて、かつ、進退自在に配設された第2の金型、前記第1、第2の金型のうちの一方の金型におけるキャビティ空間に臨む面に取り付けられた転写プレート、並びに前記第1、第2の金型のうちの少なくとも前記一方の金型に、他方の金型と対向する面に臨ませて形成され、熱制御媒体によって、断熱領域及び熱放出領域として選択的に機能させられる熱制御部を備えた金型装置の成形方法において、
(a)前記キャビティ空間に成形材料を充填した後の所定のタイミングまでの間、前記熱制御媒体を熱制御部に滞留させ、
(b)前記所定のタイミングになると、熱制御部内において前記熱制御媒体を流すことを特徴とする成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−137014(P2009−137014A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312184(P2007−312184)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】