説明

金型設計方法、金型設計システム、金型設計プログラムおよび金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体

【課題】金型成立性を満たしつつ一定の基準に従ってパーティング面を作成することが可能な金型設計方法、金型設計システム、金型設計プログラムおよび金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【解決手段】パーティングモデル50およびその製品抜き角度に基づいてパーティングモデル50に対応するパーティングライン60上の特徴点を抽出する特徴点抽出部132と、特徴点の特徴毎に予め定められたパーティング面の要素面の作成ルールに従って作成された要素面を合わせてパーティングモデル50に対応するパーティング面70を作成するパーティング面作成部133と、を具備したCADシステム101を用いて金型を設計する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型のパーティング面を作成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製品を成形するための金型を設計する方法としては、特許文献1に記載の型設計支援方法が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の型設計支援方法は、以下の四つのステップを具備する。
第一のステップでは、過去の製品の金型をCADソフトウェアを利用して設計する手順のうち、「スケーリングモデルを生成する工程」、「パーティングモデルを生成する工程」および「金型の各構成部品の設計データを生成する工程」のそれぞれの工程の設計手順、並びに当該設計手順に付随するCADデータをマスター型データとしてコンピュータに記憶する。
第二のステップでは、新たな製品の金型を設計するときに「過去の製品に係るスケーリングモデルを生成する工程の設計手順」および「新たな製品の設計データ」に基づいて新たな製品に係るスケーリングモデルを生成する。
第三のステップでは、「過去の製品に係るパーティングモデルを生成する工程の設計手順」および「新たな製品に係るスケーリングモデル」に基づいて新たな製品に係るパーティングモデルを生成する。
第四のステップでは、「過去の製品に係る金型の各構成部品の設計データを生成する工程の設計手順」、「新たな製品に係るパーティングモデル」、および標準レイアウト(製品の種類に応じて最適と思われる金型の構成部品のモデルおよびそのレイアウトを定めたレイアウトモデル)に基づいて新たな製品の金型の各構成部品の設計データを生成する。
【0004】
特許文献1に記載の型設計支援方法は、新たな製品の金型を設計する際に過去の製品の金型を設計する工程の設計手順を活用することにより、例えば製品の三次元形状に矛盾が生じないこと、金型により製品を成形するとともに金型から製品を取り出すことが可能であること(金型成立性)、あるいは極力アンダーカット部を少なくして金型の製造コストを抑えること、といった過去の製品の金型の設計時に検討された種々の事項を新たな製品の金型の設計にフィードバックすることを容易にし、ひいては金型の設計期間の短縮(設計コストの削減)を可能とするとともに経験が浅い作業者による金型設計を容易にする。
【0005】
特許文献1に記載の型設計支援方法は、結果として過去の製品に係るパーティングラインおよびパーティング面を参照して新たな製品に係るパーティングラインおよびパーティング面を生成することとなるが、そもそも過去の製品に係るパーティングラインおよびパーティング面を生成する具体的な手順を開示していない。
【0006】
金型のパーティングラインを自動生成する方法としては、特許文献2に記載の金型作成方法および特許文献3に記載の工具経路作成方法が知られている。
【0007】
特許文献2に記載の金型作成方法は、成形品の三次元データ上に複数のパーティングラインの候補線を表示し、これら複数のパーティングラインの候補線から一つの候補線を選択し、これをパーティングラインとして設定する工程を含む。
しかし、特許文献2に記載の金型作成方法は、複数のパーティングラインの候補線を生成するための具体的な手順を開示していない。
また、特許文献2に記載の金型作成方法は作業者が複数のパーティングラインの候補線から一つの候補線をパーティングラインとして選択するが、作業者が複数のパーティングラインの候補線のうちのいずれかを選択するための基準は明らかになっていない。
【0008】
特許文献3に記載の工具経路作成方法は、三次元形状モデルをデジタイズして得られるデジタイズデータの凹角点(折れ点)を検出することによりパーティングラインを自動検出する。
しかし、特許文献3に記載の工具経路作成方法は、その実施例において接触子(スタイラス)を三次元形状モデルの表面に接触させつつ走査することによりデジタイズデータを取得する構成であり、三次元形状モデルの形状がアンダーカット部分を有する場合には精度の良いデジタイズデータを取得することが困難であるという問題を有する。
また、特許文献3に記載の工具経路作成方法は、検出されたパーティングラインに基づくパーティング面(金型の合わせ面)を作成するための具体的な手順を開示していない。
【0009】
予め製品の形状をいくつかのパターンに分類するとともに各パターンに適した金型構造を設定することにより金型設計を支援する方法としては、特許文献4に記載の金型設計方法が知られている。
【0010】
特許文献4に記載の金型設計方法は、既存の製品を形状の特徴によって複数の製品形状パターンに分類する製品形状パターン化ステップと、パターン化された製品形状を成形する上での金型構造を複数の金型構造パターンに分類する金型構造パターン化ステップと、金型を製造する際の工場における稼働状態に関する情報および金型製作条件を評価することによってパターン化された金型構造を優先順位付けする金型構造優先順位付けステップと、を含み、金型構造の設計を支援するための情報として金型構造パターンの優先順位情報を生成するものである。
しかし、特許文献4に記載の金型設計方法は、パーティングラインおよびパーティング面を作成する具体的な手順を開示していない。
【0011】
製品形状および製品抜き方向(金型を構成する可動型の移動方向)に基づいて、パーティングライン近傍における製品の表面と製品抜き方向との成す角度(抜き勾配)を求める方法としては、特許文献5に記載の形状データ作成方法が知られている。
しかし、特許文献5に記載の形状データ作成方法は、パーティングラインおよびパーティング面を作成する具体的な手順については開示されていない。
【0012】
製品形状および製品面の面法線方向に基づいてパーティングラインおよびパーティング面を作成する方法としては、特許文献6に記載の形状データ作成方法が知られている。
特許文献6に記載の形状データ作成方法は、製品形状および製品面の面法線方向に基づいてパーティングラインを作成し、パーティングラインを製品抜き方向に直交する面上においてパーティングラインの接線の法線方向(外側)に向かって所定長さだけオフセットした線(オフセット線)を作成し、パーティングラインとオフセット線とに基づいてパーティング面を作成する。
しかし、特許文献6に記載の形状データ作成方法は、パーティングラインから所定距離の領域に係るパーティング面の作成についてのみ開示しており、特に金型の成立性の観点から重要となる製品抜き方向から見た製品形状の特異点(急峻な凸部あるいは凹部)の近傍におけるパーティング面の作成方法については開示していない。
【0013】
このように、従来の方法を単独で適用しても、あるいは従来の方法の幾つかを組み合わせて適用しても、金型成立性を満たしつつ一定の基準に従って効率よくパーティング面を作成することは困難である。
【特許文献1】特許第3629439号公報
【特許文献2】特開2006−240183号公報
【特許文献3】特開平5−100727号公報
【特許文献4】特開2006−79205号公報
【特許文献5】特開平5−303413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、金型成立性を満たしつつ一定の基準に従ってパーティング面を作成することが可能な金型設計方法、金型設計システム、金型設計プログラムおよび金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0016】
即ち、請求項1においては、
製品を成形する金型を設計する金型設計方法であって、
製品のパーティングモデルおよび製品抜き角度に基づいて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティングライン上の特徴点を抽出する特徴点抽出工程と、
前記特徴点の特徴毎に予め定められたパーティング面の要素面の作成ルールに従って、前記各特徴点に対応する前記要素面を作成し、作成された要素面を合わせて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティング面を作成するパーティング面作成工程と、
を具備するものである。
【0017】
請求項2においては、
前記特徴点抽出工程は、
前記製品のパーティングモデルが予め設定された複数のパーティングモデルの類型のいずれに該当するかを判定する類型判定工程と、
前記類型判定工程における判定結果および前記複数のパーティングモデルの類型のそれぞれについて予め設定されたパーティングライン上の特徴点の分布を示すデータに基づいて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティングライン上の特徴点を抽出する抽出工程と、
を具備するものである。
【0018】
請求項3においては、
前記特徴点は、
パーティングライン上においてパーティングラインに隣接するキャビティ面と製品抜き方向との成す角度が変化する点である抜き角変化点、パーティング面とキャビティ面との干渉を回避するために必要となる点である干渉回避点、前記抜き角変化点と干渉回避点とで挟まれる位置に配置される点である中間点、並びに、前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点のそれぞれに対応するパーティング面の要素面を合わせたときにパーティング面が不連続となる部分に対応する点である不連続点を含むものである。
【0019】
請求項4においては、
前記パーティング面作成工程において、
前記特徴点が前記抜き角変化点である場合には、当該抜き角変化点を起点として前記製品抜き方向に直交する第一直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線、並びに当該抜き角変化点を起点として前記製品抜き方向および前記第一直交方向に直交する第二直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線、の二本の直線を含む平面として当該抜き角変化点に対応するパーティング面の要素面を作成するものである。
【0020】
請求項5においては、
前記パーティング面作成工程において、
前記特徴点が前記干渉回避点である場合には、当該干渉回避点を起点として前記製品抜き方向から見て前記第一直交方向および前記第二直交方向と異なる干渉回避方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を前記パーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該干渉回避点に対応するパーティング面の要素面を作成するものである。
【0021】
請求項6においては、
前記パーティング面作成工程において、
前記特徴点が前記中間点である場合には、当該中間点を起点として前記第一直交方向または前記第二直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を前記パーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該中間点に対応するパーティング面の要素面を作成するものである。
【0022】
請求項7においては、
前記パーティング面作成工程において、
前記特徴点が不連続点である場合には、当該不連続点を起点として前記パーティングモデルに干渉することなく離間する二つの異なる方向に延びた二本の直線を含む平面として、隣接する前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点に対応する要素面と繋がるように当該不連続点に対応するパーティング面の要素面を作成するものである。
【0023】
請求項8においては、
製品を成形する金型を設計する金型設計システムであって、
製品のパーティングモデルおよび製品抜き角度に基づいて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティングライン上の特徴点を抽出する特徴点抽出部と、
前記特徴点の特徴毎に予め定められたパーティング面の要素面の作成ルールに従って、前記各特徴点に対応する前記要素面を作成し、作成された要素面を合わせて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティング面を作成するパーティング面作成部と、
を具備するものである。
【0024】
請求項9においては、
前記特徴点抽出部は、
前記製品のパーティングモデルが予め設定された複数のパーティングモデルの類型のいずれに該当するかを判定する類型判定部と、
前記類型判定部による判定結果および前記複数のパーティングモデルの類型のそれぞれについて予め設定されたパーティングライン上の特徴点の分布を示すデータに基づいて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティングライン上の特徴点を抽出する抽出部と、
を具備するものである。
【0025】
請求項10においては、
前記特徴点は、
パーティングライン上においてパーティングラインに隣接するキャビティ面と製品抜き方向との成す角度が変化する点である抜き角変化点、パーティング面とキャビティ面との干渉を回避するために必要となる点である干渉回避点、前記抜き角変化点と干渉回避点とで挟まれる位置に配置される点である中間点、並びに、前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点のそれぞれに対応するパーティング面の要素面を合わせたときにパーティング面が不連続となる部分に対応する点である不連続点を含むものである。
【0026】
請求項11においては、
前記パーティング面作成部は、
前記特徴点が前記抜き角変化点である場合には、当該抜き角変化点を起点として前記製品抜き方向に直交する第一直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線、並びに当該抜き角変化点を起点として前記製品抜き方向および前記第一直交方向に直交する第二直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線、の二本の直線を含む平面として当該抜き角変化点に対応するパーティング面の要素面を作成するものである。
【0027】
請求項12においては、
前記パーティング面作成部は、
前記特徴点が前記干渉回避点である場合には、当該干渉回避点を起点として前記製品抜き方向から見て前記第一直交方向および前記第二直交方向と異なる干渉回避方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を前記パーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該干渉回避点に対応するパーティング面の要素面を作成するものである。
【0028】
請求項13においては、
前記パーティング面作成部は、
前記特徴点が前記中間点である場合には、当該中間点を起点として前記第一直交方向または前記第二直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を前記パーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該中間点に対応するパーティング面の要素面を作成するものである。
【0029】
請求項14においては、
前記パーティング面作成部は、
前記特徴点が不連続点である場合には、当該不連続点を起点として前記パーティングモデルに干渉することなく離間する二つの異なる方向に延びた二本の直線を含む平面として、隣接する前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点に対応する要素面と繋がるように当該不連続点に対応するパーティング面の要素面を作成するものである。
【0030】
請求項15においては、
製品を成形する金型を設計する金型設計プログラムであって、
コンピュータに、
製品のパーティングモデルおよび製品抜き角度に基づいて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティングライン上の特徴点を抽出する特徴点抽出機能と、
前記特徴点の特徴毎に予め定められたパーティング面の要素面の作成ルールに従って、前記各特徴点に対応する前記要素面を作成し、作成された要素面を合わせて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティング面を作成するパーティング面作成機能と、
を実現させるためのものである。
【0031】
請求項16においては、
前記特徴点抽出機能は、
前記製品のパーティングモデルが予め設定された複数のパーティングモデルの類型のいずれに該当するかを判定する類型判定機能と、
前記類型判定機能による判定結果および前記複数のパーティングモデルの類型のそれぞれについて予め設定されたパーティングライン上の特徴点の分布を示すデータに基づいて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティングライン上の特徴点を抽出する抽出機能と、
を具備するものである。
【0032】
請求項17においては、
前記特徴点は、
パーティングライン上においてパーティングラインに隣接するキャビティ面と製品抜き方向との成す角度が変化する点である抜き角変化点、パーティング面とキャビティ面との干渉を回避するために必要となる点である干渉回避点、前記抜き角変化点と干渉回避点とで挟まれる位置に配置される点である中間点、並びに、前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点のそれぞれに対応するパーティング面の要素面を合わせたときにパーティング面が不連続となる部分に対応する点である不連続点を含むものである。
【0033】
請求項18においては、
前記パーティング面作成機能は、
前記特徴点が前記抜き角変化点である場合には、当該抜き角変化点を起点として前記製品抜き方向に直交する第一直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線、並びに当該抜き角変化点を起点として前記製品抜き方向および前記第一直交方向に直交する第二直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線、の二本の直線を含む平面として当該抜き角変化点に対応するパーティング面の要素面を作成するものである。
【0034】
請求項19においては、
前記パーティング面作成機能は、
前記特徴点が前記干渉回避点である場合には、当該干渉回避点を起点として前記製品抜き方向から見て前記第一直交方向および前記第二直交方向と異なる干渉回避方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を前記パーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該干渉回避点に対応するパーティング面の要素面を作成するものである。
【0035】
請求項20においては、
前記パーティング面作成機能は、
前記特徴点が前記中間点である場合には、当該中間点を起点として前記第一直交方向または前記第二直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を前記パーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該中間点に対応するパーティング面の要素面を作成するものである。
【0036】
請求項21においては、
前記パーティング面作成機能は、
前記特徴点が不連続点である場合には、当該不連続点を起点として前記パーティングモデルに干渉することなく離間する二つの異なる方向に延びた二本の直線を含む平面として、隣接する前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点に対応する要素面と繋がるように当該不連続点に対応するパーティング面の要素面を作成するものである。
【0037】
請求項22においては、
製品を成形する金型を設計する金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
コンピュータに、
製品のパーティングモデルおよび製品抜き角度に基づいて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティングライン上の特徴点を抽出する特徴点抽出機能と、
前記特徴点の特徴毎に予め定められたパーティング面の要素面の作成ルールに従って、前記各特徴点に対応する前記要素面を作成し、作成された要素面を合わせて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティング面を作成するパーティング面作成機能と、
を実現させるためのものである。
【0038】
請求項23においては、
前記特徴点抽出機能は、
前記製品のパーティングモデルが予め設定された複数のパーティングモデルの類型のいずれに該当するかを判定する類型判定機能と、
前記類型判定機能による判定結果および前記複数のパーティングモデルの類型のそれぞれについて予め設定されたパーティングライン上の特徴点の分布を示すデータに基づいて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティングライン上の特徴点を抽出する抽出機能と、
を具備するものである。
【0039】
請求項24においては、
前記特徴点は、
パーティングライン上においてパーティングラインに隣接するキャビティ面と製品抜き方向との成す角度が変化する点である抜き角変化点、パーティング面とキャビティ面との干渉を回避するために必要となる点である干渉回避点、前記抜き角変化点と干渉回避点とで挟まれる位置に配置される点である中間点、並びに、前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点のそれぞれに対応するパーティング面の要素面を合わせたときにパーティング面が不連続となる部分に対応する点である不連続点を含むものである。
【0040】
請求項25においては、
前記パーティング面作成機能は、
前記特徴点が前記抜き角変化点である場合には、当該抜き角変化点を起点として前記製品抜き方向に直交する第一直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線、並びに当該抜き角変化点を起点として前記製品抜き方向および前記第一直交方向に直交する第二直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線、の二本の直線を含む平面として当該抜き角変化点に対応するパーティング面の要素面を作成するものである。
【0041】
請求項26においては、
前記パーティング面作成機能は、
前記特徴点が前記干渉回避点である場合には、当該干渉回避点を起点として前記製品抜き方向から見て前記第一直交方向および前記第二直交方向と異なる干渉回避方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を前記パーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該干渉回避点に対応するパーティング面の要素面を作成するものである。
【0042】
請求項27においては、
前記パーティング面作成機能は、
前記特徴点が前記中間点である場合には、当該中間点を起点として前記第一直交方向または前記第二直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を前記パーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該中間点に対応するパーティング面の要素面を作成するものである。
【0043】
請求項28においては、
前記パーティング面作成機能は、
前記特徴点が不連続点である場合には、当該不連続点を起点として前記パーティングモデルに干渉することなく離間する二つの異なる方向に延びた二本の直線を含む平面として、隣接する前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点に対応する要素面と繋がるように当該不連続点に対応するパーティング面の要素面を作成するものである。
【発明の効果】
【0044】
本発明は、金型成立性を満たしつつ一定の基準に従ってパーティング面を作成することが可能である、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下では、図1を用いて本発明に係る金型設計システムの第一実施形態であるCAD(Computer Aided Design)システム101の概略構成について説明する。
【0046】
図1に示す如く、CADシステム101は自動車用バンパーを成形する金型を設計するものであり、CAD端末装置110、記憶装置120および制御装置130を具備する。
CAD端末装置110と記憶装置120との間、CAD端末装置110と制御装置130との間、および記憶装置120と制御装置130との間はそれぞれ接続され、互いにデータを送信および受信することが可能である。
【0047】
CAD端末装置110は制御装置130に数値あるいは指示を入力するとともに、制御装置130による演算結果(例えば、作成されたパーティング面の形状を表す画像)等を表示する装置である。
CAD端末装置110は専用品でも良く、市販されているパーソナルコンピュータあるいはワークステーション等の汎用品(キーボード、マウスおよびディスプレイを含む)を用いて実現しても良い。
【0048】
記憶装置120は種々のデータを記憶するとともに、CAD端末装置110あるいは制御装置130に記憶されたデータを出力するものである。
記憶装置120は専用品でも良く、市販されているHDD(Hard Disc Drive)、CD−ROM、DVD−ROM等を用いて実現しても良い。
【0049】
制御装置130は、記憶装置120に記憶されているデータおよびCAD端末装置110により入力された数値および指示に基づいて、格納されているプログラムによる所定の演算を行う装置である。
制御装置130は、実体的にはCPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)、RAM(Random Access Memory;ランダムアクセスメモリ)、ROM(Read−Only Memory;読み出し専用メモリ)あるいはHDD等がバスで接続されている構成でもよく、ワンチップのLSI(Large Scale Integration;大規模集積回路)で実現されている構成でも良い。
制御装置130は専用品でも良く、市販されているパーソナルコンピュータあるいはワークステーション等の汎用品(キーボード、マウス、光学式ドライブおよびディスプレイを含む)を用いて実現しても良い。
【0050】
作業者(本実施形態では、金型の設計者)がCAD端末装置110を操作することにより数値あるいは指示を入力すると、当該数値あるいは指示に係るデータが記憶装置120および制御装置130に送信される。
記憶装置120はCAD端末装置110から送信されてきたデータ(作業者が入力した数値および指示)を適宜記憶する。
制御装置130はCAD端末装置110から送信されてきたデータ(作業者が入力した数値および指示)および記憶装置120に記憶されているデータに基づき、制御装置130に予め格納されているプログラムに従って所定の演算を行うとともに、当該演算結果をCAD端末装置110および記憶装置120に送信する。
CAD端末装置110は制御装置130から送信された演算結果を表示する。記憶装置120は制御装置130から送信された演算結果を適宜記憶する。
【0051】
以下では、図2を用いて本発明に係る金型設計システムの第二実施形態であるCADシステム102の概略構成について説明する。
図2に示す如く、CADシステム102は複数のCAD端末装置110・110・・・、記憶装置120および制御装置130を具備する。
CAD端末装置110と記憶装置120との間、CAD端末装置110と制御装置130との間、および記憶装置120と制御装置130との間はそれぞれネットワーク140により接続され、互いにデータを送受信することが可能である。ネットワーク140の具体例としては、インターネット、イントラネット等が挙げられる。
【0052】
CADシステム102は、複数のCAD端末装置110・110・・・を具備し、複数の作業者がそれぞれ別のCAD端末装置110を同時に操作して制御装置130に数値あるいは指示を入力する(金型の設計を行う)とともに制御装置130による演算結果(例えば、作成されたパーティング面の形状を表す画像)等を表示することが可能である点において図1に示すCADシステム101と相違するが、その他の点については基本的にはCADシステム101と同様である。
【0053】
なお、図1に示すCADシステム101および図2に示すCADシステム102はいずれもCAD端末装置110、記憶装置120および制御装置130がそれぞれ別体であるが、これらを一台のパーソナルコンピュータあるいはワークステーション等で実現しても良い。
【0054】
本実施形態のCADシステム101およびCADシステム102は樹脂製の自動車用バンパー(特に、自動車前部に取り付けられるバンパー)を成形する金型を設計するものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、溶融状態の材料(例えば、樹脂材料あるいは金属材料)を充填して凝固させることにより所定形状の製品を成形する金型を設計する用途、あるいは粉粒体(例えば、粉状の金属材料、樹脂材料あるいはセラミックス)を充填して加圧(あるいは加熱)することにより所定形状の製品を成形する金型を設計する用途に広く適用可能である。
【0055】
以下では、図1から図7を用いて制御装置130の詳細について説明する。
図1に示す如く、制御装置130は機能的にはCAD機能処理部131、特徴点抽出部132、パーティング面作成部133およびキャビティ面作成部134を具備する。
【0056】
CAD機能処理部131は二次元形状あるいは三次元形状に係る製図機能、およびCAD端末装置110と制御装置130との間のインターフェース機能を有する。
実体的には、制御装置130が、制御装置130に格納されたCADソフトウェアに従って所定の演算を行うことにより、CAD機能処理部131としての機能を果たす。
なお、CADソフトウェアは市販されているものでも良い。
【0057】
特徴点抽出部132は本発明に係る特徴点抽出部の実施の一形態であり、製品たる自動車用バンパーのパーティングモデル50(より詳細には、パーティングモデル50の形状)および製品抜き角度に基づいてパーティングモデル50に対応するパーティングライン60上の特徴点を抽出するものである。
実体的には、制御装置130が、制御装置130に格納された金型設計プログラムに従って所定の演算を行うことにより、特徴点抽出部132としての機能を果たす。
【0058】
「パーティングモデル」は製品の形状(三次元形状)を製品の原材料の収縮率(または膨張率)に基づいて補正したものであり、通常は製品を成形する金型のキャビティ面の形状に略一致する。
【0059】
「キャビティ」は、金型の内部に形成される空間であって、金型により成形される製品の原材料(例えば、樹脂材料あるいは金属材料)を溶融したものが供給される空間を指す。
「キャビティ面」は、金型においてキャビティに対向する面を指す。
【0060】
「パーティング面」は、金型の合わせ面、すなわち固定型および可動型を具備する金型において当該金型を閉じたときに固定型と可動型とが当接する面を指す。パーティング面は単数または複数の要素面からなる。
「要素面」は平面でも曲面でも良い。また、パーティング面が複数の要素面からなる場合、当該複数の要素面は平面のみでも良く、曲面のみでも良く、平面および曲面が混在していても良い。
【0061】
「パーティングライン」は、固定型および可動型を具備する金型においてパーティング面とキャビティ面との境界を成す線を指す。
パーティングラインは通常、パーティングモデルの外表面上に沿って途中で交差することなく描かれる無端状の輪となる。
【0062】
CADシステム101およびCADシステム102においては、パーティングモデル50の表面において自動車用バンパーの外装面(自動車の本体に取り付けたときに自動車の外部から見える面)に対応する部分または外装面と内装面(自動車の本体に取り付けたときに自動車の外部から見えない面)との境界に対応する部分に沿ってパーティングライン60が作成される。
【0063】
「製品抜き方向」は、金型から製品を取り出す方向を指す。製品抜き方向は通常、固定型および可動型を具備する金型において固定型に対する可動型の移動方向(開閉方向)に一致する。
「製品抜き角度」は、キャビティ面と製品抜き方向との成す角度を指す。
「キャビティ面と製品抜き方向との成す角度」は、キャビティ面の法線および製品抜き方向を含む切断面上において、キャビティ面およびキャビティ面の法線の交点を通過するキャビティ面の接線と、製品抜き方向と、の成す角度を指す。
【0064】
CADシステム101およびCADシステム102においては、予め製品たる自動車用バンパーの三次元形状に係るデータに基づいてパーティングモデル50(すなわち、当該自動車用バンパーを成形するための金型のキャビティ面の形状)に係るデータが作成され、記憶装置120に記憶される。
また、CADシステム101およびCADシステム102においては、パーティングモデル50に基づいてパーティングモデル50に対応する製品抜き方向が設定されるとともにパーティングモデル50に対応するパーティングライン60が作成され、設定された製品抜き方向および作成されたパーティングライン60に係るデータが記憶装置120に予め記憶される。
このとき、パーティングモデル50の形状に基づいてアンダーカット部の発生箇所の数あるいはアンダーカット部の発生箇所に係るキャビティ面の面積が極力小さくなるように製品抜き方向が設定されるとともに、製品抜き角度が所定の角度以上(本実施形態の場合、2°以上)となるようにパーティングラインが作成される。
【0065】
「アンダーカット部」は、キャビティ(またはパーティングモデル)において製品抜き方向と異なる方向に突出または退避しているために、製品抜き方向から見てパーティング面と重複する(干渉する)部分を指す。
【0066】
アンダーカット部が発生している場合には、そのままでは(製品を変形させずに)製品を金型から取り出すことが出来ないので、金型のアンダーカット部に対応する部分に製品抜き方向と異なる方向に突出および退避可能な部材であるスライドコアを別途設ける必要があり、金型の製造コスト上昇の原因となる。
【0067】
また、アンダーカット部が発生していない場合であっても、キャビティ面において製品抜き角度が小さい(本実施形態の場合、2°未満)部分が多い場合には、金型から製品(本実施形態においては自動車用バンパー)を取り出す際の抵抗(摩擦抵抗)が大きくなり、金型から製品を取り出す作業が困難となるとともに、製品の表面にキズが発生する場合がある。
【0068】
CADシステム101およびCADシステム102においては、図3に示す如き「類型・特徴点分布データテーブル」が記憶装置120に記憶される。
「類型・特徴点分布データテーブル」は、予め自動車用バンパーの形状をその正面視形状および側面視形状に基づいて計24の類型に分類し、各類型のパーティングライン上の特徴点の分布を示すデータテーブルである。
【0069】
「類型・特徴点分布データテーブル」において、自動車用バンパーの正面視形状は「ストレート型(自動車用バンパーの上端が左右方向に真っ直ぐに延びている形状)」、「U字型(自動車用バンパーの上端中央部が下向きに窪んだ形状)」、「ツノ型(自動車用バンパーの上端の右半部および左半部にそれぞれ上方に延びた突起を有する形状)」および「ガクブチ型(自動車用バンパーの上端の中央部にガクブチ状の突起を有する形状)」の四種類に分類される。
「類型・特徴点分布データテーブル」において、自動車用バンパーの側面視形状は「ストレート型(自動車用バンパーの上端が前後方向に真っ直ぐに延びている形状)」、「逆J字型(自動車用バンパーの上端の前半部が下向きに窪んだ形状)」および「J字型+Z字型(自動車用バンパーの上端の後半部が下向きに窪んだ形状)」の三種類に分類される。
「類型・特徴点分布データテーブル」において、自動車用バンパーの側面視形状はホイールアーチ(自動車用バンパーの後端部であり、自動車の前輪に対向する部分)の形状に関してさらに「ストレート型(自動車用バンパーの上端の後端部が後方に向かって真っ直ぐ延びている形状)」および「斜め型(自動車用バンパーの上端の後端部が下方に傾斜した形状)」の二種類に分類される。
その結果、「類型・特徴点分布データテーブル」において、自動車用バンパーの形状は計24種類(=4×3×2)の類型に分類される。
【0070】
図3および図4に示す如く、自動車用バンパーの形状の各類型には、それぞれ複数の特徴点が予め設定される。
「特徴点」は、パーティングライン上において当該パーティングラインに隣接するキャビティ面の形状(パーティングモデルの表面形状)または製品抜き角度が変化する点を指す。
図4に示す如く、CADシステム101およびCADシステム102においては、計19種類の特徴点(特徴点(1)〜特徴点(19))が予め設定される。
【0071】
図3および図4に示す特徴点(1)および特徴点(2)は「抜き角変化点」である。
「抜き角変化点」は、パーティングライン上においてパーティングラインに隣接するキャビティ面と製品抜き方向との成す角度が変化する点を指す。
より詳細には、抜き角変化点は、(a)パーティングラインに接するキャビティ面の製品抜き角度の変化量(パーティングラインの長さ方向の変位量に対する製品抜き角度の変化量)が大きい点、および(b)パーティングラインに接するキャビティ面の製品抜き角度が不連続となる点、を指す。
【0072】
図3および図4に示す特徴点(3)、特徴点(10)、特徴点(13)および特徴点(15)は「干渉回避点」である。
「干渉回避点」はパーティングラインに隣接して作成されるパーティング面とキャビティ面との干渉を回避するために必要となる点である。
【0073】
図3および図4に示す特徴点(4)、特徴点(6)、特徴点(8)、特徴点(9)、特徴点(16)、特徴点(17)、特徴点(18)および特徴点(19)は「中間点」である。
「中間点」は、パーティング面の連続性を維持する観点から抜き角変化点と干渉回避点とで挟まれる位置に配置される点である。
【0074】
図3および図4に示す特徴点(5)、特徴点(7)、特徴点(11)および特徴点(14)は「不連続点」である。
「不連続点」は、抜き角変化点、干渉回避点および中間点にそれぞれ対応するパーティング面の要素面を所定の「要素面の作成ルール」に従って作成し、当該作成された要素面を合わせたときに、要素面の間で不連続となる(隣り合う要素面が繋がらない)部分に対応する点である。
【0075】
図3および図4に示す特徴点(12)は「抜き角変化点+不連続点」である。
「抜き角変化点+不連続点」は上記抜き角変化点としての特徴と不連続点としての特徴とを併せ持つ点を指す。
【0076】
各類型のパーティングライン上の特徴点の配置は、後述する特徴点毎のパーティング面の要素面の作成ルールに従って要素面を作成し、これらの要素面を繋ぎ合わせて各類型に対応するパーティング面を作成したときに金型成立性を満たすように設定される。
【0077】
特徴点抽出部132は類型判定部132aおよび抽出部132bを具備する。
【0078】
類型判定部132aは本発明に係る類型判定部の実施の一形態であり、パーティングモデル50が予め設定された複数のパーティングモデルの類型のいずれに該当するかを判定するものである。
実体的には、制御装置130が、制御装置130に格納された金型設計プログラムに従って所定の演算を行うことにより、類型判定部132aとしての機能を果たす。
類型判定部132aは、記憶装置120に記憶されたパーティングモデル50および「類型・特徴点分布データテーブル(図3参照)」をCAD端末装置110に表示させる。
【0079】
作業者は、CAD端末装置110に表示されたパーティングモデル50と「類型・特徴点分布データテーブル」とを比較する(見比べる)ことにより、パーティングモデル50が「類型・特徴点分布データテーブル」に含まれる24種類の類型のいずれに該当するかを判定する。
作業者は、CAD端末装置110を操作することにより、パーティングモデル50の類型の判定結果(24種類の類型のいずれに該当するか)を入力する。
入力されたパーティングモデル50の類型の判定結果は制御装置130および記憶装置120に送信される。
記憶装置120はパーティングモデル50の類型の判定結果を記憶する。
【0080】
図5に示すパーティングモデル50の場合、パーティングモデル50は「類型・特徴点分布データテーブル」に含まれる24種類の類型のうち、「類型19(正面視形状がガクブチ型、側面視形状がストレート型、かつホイールアーチ形状がストレート型となる類型)」に該当すると判定される。
【0081】
抽出部132bは本発明に係る抽出部の実施の一形態であり、類型判定部132aによるパーティングモデル50の類型の判定結果および「類型・特徴点分布データテーブル(図3参照)」に基づいて自動車用バンパーのパーティングモデル50に対応するパーティングライン60上の特徴点を抽出するものである。
【0082】
抽出部132bは、記憶装置120に記憶されたパーティングモデル50(の形状)、パーティングモデル50の類型の判定結果および「類型・特徴点分布データテーブル(図3参照)」をCAD端末装置110に表示させる。
【0083】
作業者は、CAD端末装置110に表示されたパーティングモデル50(の形状)、パーティングモデル50の類型の判定結果および「類型・特徴点分布データテーブル(図3参照)」を見ながら、CAD端末装置110に表示されたパーティングモデル50の表面に描かれたパーティングライン60上の点を指定することにより特徴点を抽出する。抽出された特徴点に係るデータは記憶装置120に記憶される。
図5に示すパーティングモデル50の場合、作業者がCAD端末装置110に設けられたマウスを操作し、CAD端末装置110に表示されたパーティングモデル50の表面に描かれたパーティングライン60上において特徴点(1)、特徴点(2)、特徴点(3)、特徴点(4)、特徴点(14)および特徴点(15)に相当する位置に順次カーソルを合わせ、クリックすることにより、各特徴点が抽出される。
【0084】
なお、CADシステム101およびCADシステム102は、特徴点抽出部132の類型判定部132aが作業者にパーティングモデル50(キャビティ面の三次元形状)および「類型・特徴点分布データテーブル」を提示し、作業者がCAD端末装置110に表示されたパーティングモデル50および製品の類型を示すデータテーブルを比較することによりキャビティ面の三次元形状がどの類型に該当するかを判定し、特徴点抽出部132の抽出部132bが作業者にパーティングモデル50の形状、パーティングモデル50の類型の判定結果および「類型・特徴点分布データテーブル」を提示し、作業者が特徴点を指定(画面上でクリック)することにより特徴点を抽出する構成であるが、本発明に係る金型設計システムはこれに限定されず、例えばパーティングモデル50の形状を示す画像に適宜画像処理を施すことにより、特徴点抽出部132が図3に示す「類型・特徴点分布データテーブル」に基づいてどの類型に該当するかを判定するとともに特徴点を抽出する(作業者による類型の判定および特徴点の指定を必要としない)構成としても良い。
【0085】
パーティング面作成部133は本発明に係るパーティング面作成部の実施の一形態であり、特徴点の特徴毎に予め定められた「パーティング面の要素面の作成ルール」に従って、自動車用バンパーのパーティングモデル50に対応するパーティング面70を作成するものである。
実体的には、制御装置130が、制御装置130に格納された金型設計プログラムに従って所定の演算を行うことにより、パーティング面作成部133としての機能を果たす。
【0086】
CADシステム101およびCADシステム102においては、予め特徴点の特徴毎に「パーティング面の要素面の作成ルール」(図4参照)が定められ、記憶装置20に記憶される。
パーティング面作成部133は、特徴点抽出部132により抽出され記憶装置120に記憶された特徴点に係るデータ、および記憶装置120に記憶された「パーティング面の要素面の作成ルール」に従って、各特徴点に対応するパーティング面の要素面を作成する。
【0087】
パーティング面作成部133は、特徴点が「抜き角変化点」である場合には、「当該抜き角変化点を起点として製品抜き方向(本実施形態では、図5および図6におけるL方向)に直交する第一直交方向(本実施形態では、図5および図6におけるH方向)のうちパーティングモデルとの干渉が起こらない方向に延びた直線」、および「当該抜き角変化点を起点として製品抜き方向に直交するとともに第一直交方向に平行でない第二直交方向(本実施形態では、図5および図6におけるW方向)のうちパーティングモデルとの干渉が起こらない方向に延びた直線」、の二本の直線を含む平面として当該抜き角変化点に対応するパーティング面の要素面を作成する。
【0088】
図5に示すパーティングモデル50の場合、パーティング面作成部133は「左側の特徴点(1)を起点として上方向に延びた直線」および「左側の特徴点(1)を起点として左方向に延びた直線」の二本の直線を含む平面として、抜き角変化点である左側の特徴点(1)に対応する要素面71Lを作成する。
パーティング面作成部133は「右側の特徴点(1)を起点として上方向に延びた直線」および「右側の特徴点(1)を起点として右方向に延びた直線」の二本の直線を含む平面として、抜き角変化点である右側の特徴点(1)に対応する要素面71Rを作成する。
パーティング面作成部133は「左側の特徴点(2)を起点として下方向に延びた直線」および「左側の特徴点(2)を起点として左方向に延びた直線」の二本の直線を含む平面として、抜き角変化点である左側の特徴点(2)に対応する要素面72Lを作成する。
パーティング面作成部133は「右側の特徴点(2)を起点として下方向に延びた直線」および「右側の特徴点(2)を起点として右方向に延びた直線」の二本の直線を含む平面として、抜き角変化点である右側の特徴点(2)に対応する要素面72Rを作成する。
【0089】
パーティング面作成部133は、特徴点が「干渉回避点」である場合には、「当該干渉回避点を起点として製品抜き方向(本実施形態では、図5および図6におけるL方向)から見て第一直交方向(本実施形態では、図5および図6におけるH方向)および第二直交方向(本実施形態では、図5および図6におけるW方向)と異なる干渉回避方向においてパーティングモデルに干渉することなく離間する方向(本実施形態では、左上後方または右上後方)に延びた直線」をパーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該干渉回避点に対応するパーティング面の要素面を作成する。
【0090】
図5に示すパーティングモデル50の場合、パーティング面作成部133は「左側の特徴点(15)を起点として左上後方に延びた直線」をパーティングライン60に沿って左側の特徴点(14)まで走査したときの軌跡からなる曲面として、干渉回避点である左側の特徴点(15)に対応する要素面73Lを作成する。
パーティング面作成部133は「左側の特徴点(15)を起点として左上後方に延びた直線」をパーティングライン60に沿って左側の特徴点(3)まで走査したときの軌跡からなる曲面として、干渉回避点である左側の特徴点(15)に対応する要素面74Lを作成する。
パーティング面作成部133は「左側の特徴点(3)を起点として左上後方に延びた直線」をパーティングライン60に沿って左側の特徴点(4)まで走査したときの軌跡からなる曲面として、干渉回避点である左側の特徴点(3)に対応する要素面75Lを作成する。
パーティング面作成部133は「右側の特徴点(15)を起点として右上後方に延びた直線」をパーティングライン60に沿って右側の特徴点(14)まで走査したときの軌跡からなる曲面として、干渉回避点である右側の特徴点(15)に対応する要素面73Rを作成する。
パーティング面作成部133は「右側の特徴点(15)を起点として右上後方に延びた直線」をパーティングライン60に沿って右側の特徴点(3)まで走査したときの軌跡からなる曲面として、干渉回避点である右側の特徴点(15)に対応する要素面74Rを作成する。
パーティング面作成部133は「右側の特徴点(3)を起点として右上後方に延びた直線」をパーティングライン60に沿って右側の特徴点(4)まで走査したときの軌跡からなる曲面として、干渉回避点である右側の特徴点(3)に対応する要素面75Rを作成する。
【0091】
本実施形態では、「左側の特徴点(15)を起点として左上後方に延びた直線」は、製品抜き方向(本実施形態では、図5および図6におけるL方向)から見て、第一直交方向の正の方向(本実施形態では、図5および図6における上方向)と成す角度が45°となるとともに、第二直交方向の正の方向(本実施形態では、図5および図6における左方向)と成す角度が45°となる方向であり、「右側の特徴点(15)を起点として右上後方に延びた直線」は、製品抜き方向(本実施形態では、図5および図6におけるL方向)から見て、第一直交方向の正の方向(本実施形態では、図5および図6における上方向)と成す角度が45°となるとともに、第二直交方向の負の方向(本実施形態では、図5および図6における右方向)と成す角度が45°となる方向であるが、本発明に係る干渉回避方向はこれに限定されず、パーティングモデルの形状に応じて適宜設定することが可能である。
また、本実施形態では要素面73L・73R・74L・74R・75L・75Rはいずれも曲面であるが、本発明はこれに限定されず、直線状のパーティングラインに沿って干渉回避点である特徴点を起点とする直線が走査する場合には、作成される要素面が平面となる。
【0092】
パーティング面作成部133は、特徴点が「中間点」である場合には、「当該中間点を起点として第一直交方向(本実施形態では、図5および図6におけるH方向)または第二直交方向(本実施形態では、図5および図6におけるW方向)においてパーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線」をパーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該中間点に対応するパーティング面の要素面を作成する。
【0093】
図5に示すパーティングモデル50の場合、パーティング面作成部133は「左側の特徴点(4)を起点として上方向に延びた直線」をパーティングライン60に沿って左側の特徴点(1)まで走査したときの軌跡からなる曲面として、中間点である左側の特徴点(4)に対応する要素面76Lを作成する。
パーティング面作成部133は「右側の特徴点(4)を起点として上方向に延びた直線」をパーティングライン60に沿って右側の特徴点(1)まで走査したときの軌跡からなる曲面として、中間点である右側の特徴点(4)に対応する要素面76Rを作成する。
【0094】
本実施形態では要素面76L・76Rはいずれも曲面であるが、本発明はこれに限定されず、直線状のパーティングラインに沿って中間点である特徴点を起点とする直線が走査する場合には、作成される要素面が平面となる。
【0095】
パーティング面作成部133は、特徴点が「不連続点」である場合には、「当該不連続点を起点としてパーティングモデルに干渉することなく離間する二つの異なる方向に延びた二本の直線を含む平面として、隣接する抜き角変化点、干渉回避点および中間点に対応する要素面と繋がるように当該不連続点に対応するパーティング面の要素面を作成する。
【0096】
図5に示すパーティングモデル50の場合、パーティング面作成部133は「左側の特徴点(14)を起点として上方向に延びた直線」、並びに、「左側の特徴点(14)を起点として干渉回避点である左側の特徴点(15)および左側の特徴点(3)を挟んで反対側に位置する中間点である左側の特徴点(4)を通る直線」、の二つの直線を含む平面として、左側の特徴点(14)に対応する要素面77Lを作成する。
パーティング面作成部133は「右側の特徴点(14)を起点として上方向に延びた直線」、並びに、「右側の特徴点(14)を起点として干渉回避点である右側の特徴点(15)および右側の特徴点(3)を挟んで反対側に位置する中間点である右側の特徴点(4)を通る直線」、の二つの直線を含む平面として、右側の特徴点(14)に対応する要素面77Rを作成する。
【0097】
パーティング面作成部133は、抜き角変化点、干渉回避点、中間点および不連続点に対応する要素面を作成した後、パーティングライン60においてまだ要素面が作成されていない部分については、当該部分上の点を起点として第一直交方向(本実施形態では、図5および図6におけるH方向)または前記第二直交方向(本実施形態では、図5および図6におけるW方向)においてパーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を当該部分に沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該部分に対応する要素面を作成する。
【0098】
図5に示すパーティングモデル50の場合、パーティング面作成部133は「左側の特徴点(14)を起点として上方向に延びた直線」をパーティングライン60に沿って右側の特徴点(14)まで走査したときの軌跡からなる曲面として、パーティングライン60において左側の特徴点(14)および右側の特徴点(14)で挟まれた部分に対応する要素面78を作成する。
パーティング面作成部133は「左側の特徴点(2)を起点として下方向に延びた直線」をパーティングライン60に沿って右側の特徴点(2)まで走査したときの軌跡からなる曲面として、パーティングライン60において左側の特徴点(2)および右側の特徴点(2)で挟まれた部分に対応する要素面79を作成する。
パーティング面作成部133は「左側の特徴点(1)を起点として左方向に延びた直線」をパーティングライン60に沿って左側の特徴点(2)まで走査したときの軌跡からなる曲面として、パーティングライン60において左側の特徴点(1)および左側の特徴点(2)で挟まれた部分に対応する要素面80Lを作成する。
パーティング面作成部133は「右側の特徴点(1)を起点として右方向に延びた直線」をパーティングライン60に沿って右側の特徴点(2)まで走査したときの軌跡からなる曲面として、パーティングライン60において右側の特徴点(1)および右側の特徴点(2)で挟まれた部分に対応する要素面80Rを作成する。
【0099】
本実施形態では要素面78・79・80L・80Rはいずれも曲面であるが、本発明はこれに限定されず、パーティングラインの直線状の部分に沿って当該部分上の点を起点とする直線が走査する場合には、作成される要素面が平面となる。
【0100】
パーティング面作成部133は、要素面71L、要素面71R、要素面72L、要素面72R、要素面73L、要素面73R、要素面74L、要素面74R、要素面75L、要素面75R、要素面76L、要素面76R、要素面77L、要素面77R、要素面78、要素面79、要素面80Lおよび要素面80Rを合わせる(隣り合う要素面同士を繋ぎ合わせる)ことにより、パーティング面70を作成する。
記憶装置120はパーティング面作成部133により作成されたパーティング面70を記憶する。
【0101】
キャビティ面作成部134はパーティングモデル50に基づいて金型のキャビティ面を作成するものである。
より詳細には、キャビティ面作成部134は以下(α)、(β)、(γ)、(δ)、(ε)、(ζ)および(η)の手順に従って金型のキャビティ面を作成する。
【0102】
(α)キャビティ面作成部134は、パーティングモデル50を製品抜き方向および第一直交方向を含む複数の断面(本実施形態の場合、図5および図6におけるW方向に垂直な複数の断面)、並びに製品抜き方向および第二直交方向を含む複数の断面(本実施形態の場合、図5および図6におけるH方向に垂直な断面)で格子状に切断するときの当該断面の間隔を設定する。
本実施形態の場合、作業者が断面の間隔をCAD端末装置110により入力すると、キャビティ面作成部134は当該断面の間隔の入力値を断面の間隔の設定値とする。
なお、記憶装置120に予め断面の間隔の設定値を記憶しておくことにより、作業者が断面の間隔を入力する作業を省略することも可能である。
【0103】
(β)キャビティ面作成部134は、(α)において設定された断面の間隔に基づいて、パーティングモデル50を製品抜き方向および第一直交方向を含む複数の断面(本実施形態の場合、図5および図6におけるW方向に垂直な複数の断面)、並びに製品抜き方向および第二直交方向を含む複数の断面(本実施形態の場合、図5および図6におけるH方向に垂直な断面)で切断した切断面を作成する。
このとき、パーティングモデル50の切断面がパーティングライン60上の特徴点を通るように切断面の位置が設定される。
図7の(a)、(b)、(c)および(d)にパーティングモデル50の切断面の例を示す。図7に示すパーティングモデル50の切断面は、製品抜き方向および第一直交方向を含む断面(W方向に垂直な断面)であって、自動車用バンパーのガクブチ部分を通過する。
【0104】
(γ)キャビティ面作成部134は、製品抜き方向および第一直交方向を含む複数の断面(本実施形態の場合、図5および図6におけるW方向に垂直な複数の断面)、並びに製品抜き方向および第二直交方向を含む複数の断面(本実施形態の場合、図5および図6におけるH方向に垂直な断面)で切断したときのパーティングモデル50の切断面の交線上かつパーティングモデル50の表面上となる点を「交点」として抽出する。
図7の(a)に示すパーティングモデル50の切断面の場合、交点20から交点48までの計29個の「交点」が抽出される。
なお、本実施形態の場合、自動車用バンパーのガクブチ部分で囲まれる部分等、自動車用バンパーに設けられた開口部に対応する領域を切断面が通過する場合には、パーティングモデル50の切断面の交線上にパーティングモデル50の表面上となる点が存在しない。
このような場合には、当該交線上であって予め設定された所定の製品抜き方向の座標を有する位置に別途「離間部交点」が設定される。本実施形態の場合、交点34および交点35がこれに相当する。
【0105】
(δ)キャビティ面作成部134は、パーティングモデル50の表面においてパーティングモデル50の表面の法線と製品抜き方向との成す角度が小さい(本実施形態では、成す角度が2°以下)領域に存在する交点については、当該交点が連続して並んでいる場合にその一部を「間引き点」として間引く(削除する)。
図7の(b)に示すパーティングモデル50の切断面の場合、交点24、交点26、交点28、交点39、交点41および交点43が「間引き点」として間引かれる。
なお、本実施形態では「離間部交点」が連続している部分は、パーティングモデル50の表面の法線と製品抜き方向との成す角度が小さい領域の対象とはならない。
【0106】
(ε)キャビティ面作成部134は、「離間部交点」の製品抜き方向の座標を、同一断面上において隣接する交点の製品抜き方向の座標と同じ値に補正する。
図7の(c)に示すパーティングモデル50の切断面の場合、交点33の製品抜き方向(L方向)の座標が隣接する交点32の製品抜き方向(L方向)の座標と同じ値となるように補正される。また、交点34の製品抜き方向(L方向)の座標が隣接する交点33の補正後の製品抜き方向(L方向)の座標と同じ値となるように補正される。
【0107】
(ζ)キャビティ面作成部134は、間引かれずに残った交点および製品抜き方向の座標が補正された離間部交点を順に直線で繋いだものとして「キャビティ近似線」を作成する。
図7の(d)に示すパーティングモデル50の切断面の場合、間引かれずに残った交点および製品抜き方向の座標が補正された離間部交点を順に直線で繋いだキャビティ近似線49が作成される。
【0108】
(η)キャビティ面作成部134は、各切断面において作成されたキャビティ近似線を、直交する断面の交線上の同一の交点が重なるように繋ぎ合わせることによりキャビティ近似面のフレームモデルを作成する。
キャビティ近似面のフレームモデルは第一直交方向において隣接する交点間を繋ぐ直線および第二直交方向において隣接する交点間を繋ぐ直線で囲まれた矩形の格子の集合体となる。
キャビティ面作成部134は、キャビティ近似面のフレームモデルを構成する格子の周縁部を成す四本の直線が同一平面上に含まれる場合、当該四本の直線を四辺とする矩形の平面として当該格子に対応するキャビティ要素面を作成する。
キャビティ面作成部134は、フレームモデルを構成する格子の周縁部を成す四本の直線が同一平面上に含まれない場合、当該格子のうち対角を成す二つの頂点を結ぶ対角線を設け、当該格子において当該対角線および対角線を基準として同じ側に位置する格子の二辺を合わせて三辺とする二つの三角形の平面の集合体として当該格子に対応するキャビティ要素面を作成する。
キャビティ面作成部134は、上記の手順で作成されたキャビティ要素面を繋ぎ合わせることにより、キャビティ近似面を作成する。このようにして作成されたキャビティ近似面は、パーティングモデル50の表面に比べて記憶装置120に記憶するときのデータ量が小さいという利点を有する。
記憶装置120はパーティングモデル50に対応するキャビティ近似面を記憶する。
【0109】
なお、(α)において設定された切断面の間隔が狭い場合にはキャビティ要素面の数が多くなり、その分だけキャビティ近似面の形状がパーティングモデルの表面の形状に近似するが、キャビティ近似面のデータ量が大きくなる。
従って、(α)において設定される切断面の間隔は、要求されるキャビティ近似面の面精度(パーティングモデルの表面の形状にどれだけ近似しているか)とキャビティ近似面のデータ量の大きさとを比較考量して設定される必要がある。
【0110】
金型面作成部135はパーティング面作成部133により作成されたパーティング面70およびキャビティ面作成部134により作成されたパーティングモデル50に対応するキャビティ近似面(キャビティ面)に基づいて金型面を作成する。
ここで「金型面」は、パーティング面およびキャビティ面を合わせたものであり、可動型および固定型からなる金型の場合、可動型における固定型に対向する面および固定型における可動型に対向する面が金型面に相当する。
金型面作成部135はパーティング面作成部133により作成されたパーティング面70およびキャビティ面作成部134により作成されたパーティングモデル50のキャビティ近似面を繋ぎ合わせることにより、金型面を作成する。
【0111】
以上の如く、CADシステム101は、
自動車用バンパーを成形する金型を設計する金型設計システムであって、
パーティングモデル50およびその製品抜き角度に基づいてパーティングモデル50に対応するパーティングライン60上の特徴点を抽出する特徴点抽出部132と、
特徴点の特徴毎に予め定められたパーティング面の要素面の作成ルールに従って、各特徴点に対応する要素面71L、要素面71R、要素面72L、要素面72R、要素面73L、要素面73R、要素面74L、要素面74R、要素面75L、要素面75R、要素面76L、要素面76R、要素面77L、要素面77R、要素面78、要素面79、要素面80Lおよび要素面80Rを作成し、作成されたこれらの要素面を合わせてパーティングモデル50に対応するパーティング面70を作成するパーティング面作成部133と、
を具備する。
このように構成することにより、金型成立性を満たしつつ一定の基準に従ってパーティング面70を作成することが可能である。
【0112】
また、CADシステム101の特徴点抽出部132は、
パーティングモデル50が予め設定された複数のパーティングモデルの類型のいずれに該当するかを判定する類型判定部132aと、
類型判定部132aによる判定結果および複数のパーティングモデルの類型のそれぞれについて予め設定されたパーティングライン上の特徴点の分布を示すデータに基づいてパーティングモデル50に対応するパーティングライン60上の特徴点を抽出する抽出部132bと、
を具備する。
このように構成することにより、製品がどの類型に該当するかを判定するだけで、金型成立性を満たしつつ当該製品を成形するための金型を設計することが可能であり、ひいては金型の設計が容易となる。
【0113】
また、CADシステム101の特徴点抽出部132が抽出する特徴点は、
パーティングライン60上においてパーティングライン60上に隣接するキャビティ面と製品抜き方向との成す角度が変化する点である抜き角変化点、パーティング面70とキャビティ面との干渉を回避するために必要となる点である干渉回避点、抜き角変化点と干渉回避点とで挟まれる位置に配置される点である中間点、並びに、抜き角変化点、干渉回避点および中間点のそれぞれに対応するパーティング面の要素面を合わせたときにパーティング面70が不連続となる部分に対応する点である不連続点を含む。
このように構成することにより、作業者が金型を設計する際に、当該金型の金型成立性を満たすために着目すべき部分を特徴点の形で抽出することが可能であり、ひいては金型の設計を容易にすることが可能である。
【0114】
また、CADシステム101のパーティング面作成部133は、
特徴点が抜き角変化点である場合には、当該抜き角変化点を起点として製品抜き方向に直交する第一直交方向においてパーティングモデル50に干渉することなく離間する方向に延びた直線、並びに当該抜き角変化点を起点として製品抜き方向および第一直交方向に直交する第二直交方向においてパーティングモデル50に干渉することなく離間する方向に延びた直線、の二本の直線を含む平面として当該抜き角変化点に対応するパーティング面70の要素面71L・71R・72L・72Rを作成し、
特徴点が干渉回避点である場合には、当該干渉回避点を起点として製品抜き方向から見て第一直交方向および第二直交方向と異なる干渉回避方向においてパーティングモデル50に干渉することなく離間する方向に延びた直線をパーティングライン60に沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該干渉回避点に対応するパーティング面70の要素面73L・73R・74L・74R・75L・75Rを作成し、
特徴点が中間点である場合には、当該中間点を起点として第一直交方向または第二直交方向においてパーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線をパーティングライン60に沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該中間点に対応するパーティング面70の要素面76L・76Rを作成し、
特徴点が不連続点である場合には、当該不連続点を起点としてパーティングモデル50に干渉することなく離間する二つの異なる方向に延びた二本の直線を含む平面として、隣接する抜き角変化点、干渉回避点および中間点に対応する要素面と繋がるように当該不連続点に対応するパーティング面70の要素面77L・77Rを作成する。
このように構成することにより、パーティング面70の要素面71L・71R・72L・72R・73L・73R・74L・74R・75L・75R・76L・76R・77L・77Rは、各類型に対応する特徴点および特徴点毎に対応する要素面の作成ルールを設定する段階で金型成立性を満足することが確認されているため、その後作業者が当該要素面の作成ルールに従って要素面を作成する度に金型成立性を満足するか否かを検討する必要が無く、金型設計を容易にすることが可能である。
【0115】
以下では、図8および図9を用いて本発明に係る金型設計方法の実施の一形態について説明する。
本発明に係る金型設計方法の実施の一形態は、CADシステム101を用いて自動車用バンパーを成形する金型を設計する方法であり、主として特徴点抽出工程S1100、パーティング面作成工程S1200、キャビティ面作成工程S1300および金型面作成工程S1400を具備する。
【0116】
特徴点抽出工程S1100はパーティングモデル50およびその製品抜き角度に基づいてパーティングモデル50に対応するパーティングライン60上の特徴点を抽出する工程である。
特徴点抽出工程S1100は類型判定工程S1110および抽出工程S1120を具備する。
【0117】
類型判定工程S1110はパーティングモデル50が予め設定された複数のパーティングモデルの類型のいずれに該当するかを判定する工程である。
類型判定工程S1110が終了したら、抽出工程S1120に移行する。
【0118】
抽出工程S1120は類型判定工程S1110におけるパーティングモデル50の類型の判定結果および「類型・特徴点分布データテーブル(図3参照)」に基づいて自動車用バンパーのパーティングモデル50に対応するパーティングライン60上の特徴点を抽出する工程である。
抽出工程S1120が終了したら、特徴点抽出工程S1100は終了する。
特徴点抽出工程S1100が終了したら、パーティング面作成工程S1200に移行する。
【0119】
パーティング面作成工程S1200は特徴点の特徴毎に予め定められた「パーティング面の要素面の作成ルール」に従って作成された要素面を合わせて自動車用バンパーのパーティングモデル50に対応するパーティング面70を作成する工程である。
【0120】
パーティング面作成工程S1200において、パーティング面作成部133は特徴点が抜き角変化点である場合には、「当該抜き角変化点を起点として製品抜き方向に直交する第一直交方向においてパーティングモデル50に干渉することなく離間する方向に延びた直線」、並びに「当該抜き角変化点を起点として製品抜き方向および第一直交方向に直交する第二直交方向においてパーティングモデル50に干渉することなく離間する方向に延びた直線」、の二本の直線を含む平面として、当該抜き角変化点に対応するパーティング面70の要素面71L・71R・72L・72Rを作成する。
【0121】
パーティング面作成工程S1200において、パーティング面作成部133は特徴点が干渉回避点である場合には、「当該干渉回避点を起点として製品抜き方向から見て第一直交方向および前記第二直交方向と異なる方向(干渉回避方向)においてパーティングモデル50に干渉することなく離間する方向に延びた直線」をパーティングライン60に沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として、当該干渉回避点に対応するパーティング面70の要素面73L・73R・74L・74R・75L・75Rを作成する。
【0122】
パーティング面作成工程S1200において、パーティング面作成部133は特徴点が中間点である場合には、「当該中間点を起点として第一直交方向または第二直交方向においてパーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線」をパーティングライン60に沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として、当該中間点に対応するパーティング面70の要素面76L・76Rを作成する。
【0123】
パーティング面作成工程S1200において、パーティング面作成部133は特徴点が不連続点である場合には、「当該不連続点を起点としてパーティングモデル50に干渉することなく離間する二つの異なる方向に延びた二本の直線」を含む平面として、隣接する前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点に対応する要素面と繋がるように当該不連続点に対応するパーティング面70の要素面77L・77Rを作成する。
【0124】
パーティング面作成工程S1200において、パーティング面作成部133は抜き角変化点、干渉回避点、中間点および不連続点に対応する要素面を作成した後、パーティングライン60においてまだ要素面が作成されていない部分については、「当該部分上の点を起点として第一直交方向または前記第二直交方向においてパーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線」を当該部分に沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として、当該部分に対応する要素面78・79・80L・80Rを作成する。
パーティング面作成工程S1200が終了したら、キャビティ面作成工程S1300に移行する。
【0125】
キャビティ面作成工程S1300はパーティングモデル50に基づいて金型のキャビティ面を作成する工程である。
図9に示す如く、キャビティ面作成工程S1300は主として断面間隔設定工程S1310、断面作成工程S1320、交点抽出工程S1330、交点間引き工程S1340、離間部交点座標補正工程S1350、キャビティ近似線作成工程S1360およびキャビティ近似面作成工程S1370を具備する。
【0126】
断面間隔設定工程S1310はパーティングモデル50を製品抜き方向および第一直交方向を含む複数の断面(本実施形態の場合、図5および図6におけるW方向に垂直な複数の断面)、並びに製品抜き方向および第二直交方向を含む複数の断面(本実施形態の場合、図5および図6におけるH方向に垂直な断面)で格子状に切断するときの当該断面の間隔を設定する工程である。
断面間隔設定工程S1310が終了したら断面作成工程S1320に移行する。
【0127】
断面作成工程S1320は断面間隔設定工程S1310において設定された断面の間隔に基づいて、パーティングモデル50を製品抜き方向および第一直交方向を含む複数の断面(本実施形態の場合、図5および図6におけるW方向に垂直な複数の断面)、並びに製品抜き方向および第二直交方向を含む複数の断面(本実施形態の場合、図5および図6におけるH方向に垂直な断面)で切断した切断面を作成する工程である。
断面作成工程S1320が終了したら交点抽出工程S1330に移行する。
【0128】
交点抽出工程S1330は製品抜き方向および第一直交方向を含む複数の断面(本実施形態の場合、図5および図6におけるW方向に垂直な複数の断面)、並びに製品抜き方向および第二直交方向を含む複数の断面(本実施形態の場合、図5および図6におけるH方向に垂直な断面)で切断したときのパーティングモデル50の切断面の交線上かつパーティングモデル50の表面上となる点を交点として抽出する工程である。
交点抽出工程S1330が終了したら交点間引き工程S1340に移行する。
【0129】
交点間引き工程S1340はパーティングモデル50の表面におけるパーティングモデル50の表面の法線と製品抜き方向との成す角度が小さい領域に存在する交点について、当該交点が連続して並んでいる場合にその一部を「間引き点」として間引く工程である。
交点間引き工程S1340が終了したら離間部交点座標補正工程S1350に移行する。
【0130】
離間部交点座標補正工程S1350は「離間部交点」の製品抜き方向の座標を、同一断面上において隣接する交点の製品抜き方向の座標と同じ値に補正する工程である。
離間部交点座標補正工程S1350が終了したらキャビティ近似線作成工程S1360に移行する。
【0131】
キャビティ近似線作成工程S1360は交点間引き工程S1340において間引かれずに残った交点および離間部交点座標補正工程S1350において製品抜き方向の座標が補正された離間部交点を順に直線で繋いだものとしてパーティングモデル50のキャビティ近似線を作成する工程である。
キャビティ近似線作成工程S1360が終了したらキャビティ近似面作成工程S1370に移行する。
【0132】
キャビティ近似面作成工程S1370はキャビティ近似線作成工程S1360において作成されたパーティングモデル50のキャビティ近似線に基づいてパーティングモデル50のキャビティ近似面を作成する工程である。
キャビティ近似面作成工程S1370が終了したらキャビティ面作成工程S1300が終了する。
キャビティ面作成工程S1300が終了したら、金型面作成工程S1400に移行する。
【0133】
金型面作成工程S1400はパーティング面作成部133により作成されたパーティング面70およびキャビティ面作成部134により作成されたパーティングモデル50に対応するキャビティ近似面(キャビティ面)に基づいて金型面を作成する工程である。
【0134】
以上の如く、本発明に係る金型設計方法の実施の一形態は、
自動車用バンパーを成形する金型を設計する金型設計方法であって、
パーティングモデル50およびその製品抜き角度に基づいてパーティングモデル50に対応するパーティングライン60上の特徴点を抽出する特徴点抽出工程S1100と、
特徴点の特徴毎に予め定められた「パーティング面の要素面の作成ルール」に従って、各特徴点に対応する要素面71L、要素面71R、要素面72L、要素面72R、要素面73L、要素面73R、要素面74L、要素面74R、要素面75L、要素面75R、要素面76L、要素面76R、要素面77L、要素面77R、要素面78、要素面79、要素面80Lおよび要素面80Rを作成し、作成されたこれらの要素面を合わせて自動車用バンパーのパーティングモデル50に対応するパーティング面70を作成するパーティング面作成工程S1200と、
を具備する。
このように構成することにより、金型成立性を満たしつつ一定の基準に従ってパーティング面70を作成することが可能である。
【0135】
また、本発明に係る金型設計方法の実施の一形態の特徴点抽出工程S1100は、
パーティングモデル50が予め設定された複数のパーティングモデルの類型のいずれに該当するかを判定する類型判定工程S1110と、
類型判定工程S1110における判定結果および複数のパーティングモデルの類型のそれぞれについて予め設定されたパーティングライン上の特徴点の分布を示すデータに基づいてパーティングモデル50に対応するパーティングライン60上の特徴点を抽出する抽出工程S1120と、
を具備する。
このように構成することにより、製品がどの類型に該当するかを判定するだけで、金型成立性を満たしつつ当該製品を成形するための金型を設計することが可能であり、ひいては金型の設計が容易となる。
【0136】
また、本発明に係る金型設計方法の実施の一形態の特徴点抽出工程S1100において抽出される特徴点は、
パーティングライン60上においてパーティングライン60上に隣接するキャビティ面と製品抜き方向との成す角度が変化する点である抜き角変化点、パーティング面70とキャビティ面との干渉を回避するために必要となる点である干渉回避点、抜き角変化点と干渉回避点とで挟まれる位置に配置される点である中間点、並びに、抜き角変化点、干渉回避点および中間点のそれぞれに対応するパーティング面の要素面を合わせたときにパーティング面70が不連続となる部分に対応する点である不連続点を含む。
このように構成することにより、作業者が金型を設計する際に、当該金型の金型成立性を満たすために着目すべき部分を特徴点の形で抽出することが可能であり、ひいては金型の設計を容易にすることが可能である。
【0137】
また、本発明に係る金型設計方法の実施の一形態は、
パーティング面作成工程S1200において、
特徴点が抜き角変化点である場合には、当該抜き角変化点を起点として製品抜き方向に直交する第一直交方向においてパーティングモデル50に干渉することなく離間する方向に延びた直線、並びに当該抜き角変化点を起点として製品抜き方向および第一直交方向に直交する第二直交方向においてパーティングモデル50に干渉することなく離間する方向に延びた直線、の二本の直線を含む平面として当該抜き角変化点に対応するパーティング面70の要素面71L・71R・72L・72Rを作成し、
特徴点が干渉回避点である場合には、当該干渉回避点を起点として製品抜き方向から見て第一直交方向および第二直交方向と異なる干渉回避方向においてパーティングモデル50に干渉することなく離間する方向に延びた直線をパーティングライン60に沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該干渉回避点に対応するパーティング面70の要素面73L・73R・74L・74R・75L・75Rを作成し、
特徴点が中間点である場合には、当該中間点を起点として第一直交方向または第二直交方向においてパーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線をパーティングライン60に沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該中間点に対応するパーティング面70の要素面76L・76Rを作成し、
特徴点が不連続点である場合には、当該不連続点を起点としてパーティングモデル50に干渉することなく離間する二つの異なる方向に延びた二本の直線を含む平面として、隣接する抜き角変化点、干渉回避点および中間点に対応する要素面と繋がるように当該不連続点に対応するパーティング面70の要素面77L・77Rを作成する。
このように構成することにより、パーティング面70の要素面71L・71R・72L・72R・73L・73R・74L・74R・75L・75R・76L・76R・77L・77Rは、各類型に対応する特徴点および特徴点毎に対応する要素面の作成ルールを設定する段階で金型成立性を満足することが確認されているため、その後作業者が当該要素面の作成ルールに従って要素面を作成する度に金型成立性を満足するか否かを検討する必要が無く、金型設計を容易にすることが可能である。
【0138】
本実施形態は特徴点抽出工程S1100→パーティング面作成工程S1200→キャビティ面作成工程S1300の順に作業を行う構成としたが、本発明はこれに限定されず、キャビティ面作成工程S1300→特徴点抽出工程S1100→パーティング面作成工程S1200の順に作業を行う構成としても良い。
【0139】
以下では、本発明に係る金型設計プログラムの実施の一形態について説明する。
本発明に係る金型設計プログラムの実施の一形態は、図1に示すCADシステム101の制御装置130に格納されたものであり、
自動車用バンパーを成形する金型を設計する金型設計プログラムであって、
コンピュータ(本実施形態では制御装置130)に、
自動車用バンパーのパーティングモデル50および製品抜き角度に基づいて自動車用バンパーのパーティングモデル50に対応するパーティングライン60上の特徴点を抽出する特徴点抽出機能と、
「特徴点の特徴毎に予め定められたパーティング面の要素面の作成ルール」に従って、各特徴点に対応する要素面71L、要素面71R、要素面72L、要素面72R、要素面73L、要素面73R、要素面74L、要素面74R、要素面75L、要素面75R、要素面76L、要素面76R、要素面77L、要素面77R、要素面78、要素面79、要素面80Lおよび要素面80Rを作成し、作成されたこれらの要素面を合わせて自動車用バンパーのパーティングモデル50に対応するパーティング面70を作成するパーティング面作成機能と、
を実現させるためのものである。
このように構成することにより、金型成立性を満たしつつ一定の基準に従ってパーティング面70を作成することが可能である。
【0140】
以下では、本発明に係る金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の実施の一形態について説明する。
本発明に係る金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の実施の一形態は、CADシステム101の制御装置130に格納された金型設計プログラムをコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶したものであり、
自動車用バンパーを成形する金型を設計する金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
コンピュータ(本実施形態では制御装置130)に、
自動車用バンパーのパーティングモデル50および製品抜き角度に基づいて自動車用バンパーのパーティングモデル50に対応するパーティングライン60上の特徴点を抽出する特徴点抽出機能と、
「特徴点の特徴毎に予め定められたパーティング面の要素面の作成ルール」に従って、各特徴点に対応する要素面71L、要素面71R、要素面72L、要素面72R、要素面73L、要素面73R、要素面74L、要素面74R、要素面75L、要素面75R、要素面76L、要素面76R、要素面77L、要素面77R、要素面78、要素面79、要素面80Lおよび要素面80Rを作成し、作成されたこれらの要素面を合わせて自動車用バンパーのパーティングモデル50に対応するパーティング面70を作成するパーティング面作成機能と、
を実現させるためのものである。
このように構成することにより、金型成立性を満たしつつ一定の基準に従ってパーティング面70を作成することが可能である。
「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体」の具体例としては、フレキシブルディスクカートリッジ、メモリーカード、CD−ROM、DVD−ROM、HDD等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明に係る金型設計システムの第一実施形態を示す図。
【図2】本発明に係る金型設計システムの第二実施形態を示す図。
【図3】類型・特徴点分布データテーブルを示す図。
【図4】特徴点毎のパーティング面の要素面の作成ルールを示す図。
【図5】自動車用バンパーのパーティングモデルを示す図。
【図6】自動車用バンパーのパーティングモデルのパーティング面を示す図。
【図7】自動車用バンパーのパーティングモデルの断面を示す図。
【図8】本発明に係る金型設計方法の実施の一形態を示す図。
【図9】本発明に係る金型設計方法の実施の一形態におけるキャビティ面作成工程の詳細を示す図。
【符号の説明】
【0142】
50 パーティングモデル
60 パーティングライン
70 パーティング面
101 CADシステム(金型設計システム)
132 特徴点抽出部
133 パーティング面作成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を成形する金型を設計する金型設計方法であって、
製品のパーティングモデルおよび製品抜き角度に基づいて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティングライン上の特徴点を抽出する特徴点抽出工程と、
前記特徴点の特徴毎に予め定められたパーティング面の要素面の作成ルールに従って、前記各特徴点に対応する前記要素面を作成し、作成された要素面を合わせて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティング面を作成するパーティング面作成工程と、
を具備する金型設計方法。
【請求項2】
前記特徴点抽出工程は、
前記製品のパーティングモデルが予め設定された複数のパーティングモデルの類型のいずれに該当するかを判定する類型判定工程と、
前記類型判定工程における判定結果および前記複数のパーティングモデルの類型のそれぞれについて予め設定されたパーティングライン上の特徴点の分布を示すデータに基づいて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティングライン上の特徴点を抽出する抽出工程と、
を具備する請求項1に記載の金型設計方法。
【請求項3】
前記特徴点は、
パーティングライン上においてパーティングラインに隣接するキャビティ面と製品抜き方向との成す角度が変化する点である抜き角変化点、パーティング面とキャビティ面との干渉を回避するために必要となる点である干渉回避点、前記抜き角変化点と干渉回避点とで挟まれる位置に配置される点である中間点、並びに、前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点のそれぞれに対応するパーティング面の要素面を合わせたときにパーティング面が不連続となる部分に対応する点である不連続点を含む請求項1または請求項2に記載の金型設計方法。
【請求項4】
前記パーティング面作成工程において、
前記特徴点が前記抜き角変化点である場合には、当該抜き角変化点を起点として前記製品抜き方向に直交する第一直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線、並びに当該抜き角変化点を起点として前記製品抜き方向および前記第一直交方向に直交する第二直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線、の二本の直線を含む平面として当該抜き角変化点に対応するパーティング面の要素面を作成する請求項3に記載の金型設計方法。
【請求項5】
前記パーティング面作成工程において、
前記特徴点が前記干渉回避点である場合には、当該干渉回避点を起点として前記製品抜き方向から見て前記第一直交方向および前記第二直交方向と異なる干渉回避方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を前記パーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該干渉回避点に対応するパーティング面の要素面を作成する請求項4に記載の金型設計方法。
【請求項6】
前記パーティング面作成工程において、
前記特徴点が前記中間点である場合には、当該中間点を起点として前記第一直交方向または前記第二直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を前記パーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該中間点に対応するパーティング面の要素面を作成する請求項5に記載の金型設計方法。
【請求項7】
前記パーティング面作成工程において、
前記特徴点が不連続点である場合には、当該不連続点を起点として前記パーティングモデルに干渉することなく離間する二つの異なる方向に延びた二本の直線を含む平面として、隣接する前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点に対応する要素面と繋がるように当該不連続点に対応するパーティング面の要素面を作成する請求項6に記載の金型設計方法。
【請求項8】
製品を成形する金型を設計する金型設計システムであって、
製品のパーティングモデルおよび製品抜き角度に基づいて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティングライン上の特徴点を抽出する特徴点抽出部と、
前記特徴点の特徴毎に予め定められたパーティング面の要素面の作成ルールに従って、前記各特徴点に対応する前記要素面を作成し、作成された要素面を合わせて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティング面を作成するパーティング面作成部と、
を具備する金型設計システム。
【請求項9】
前記特徴点抽出部は、
前記製品のパーティングモデルが予め設定された複数のパーティングモデルの類型のいずれに該当するかを判定する類型判定部と、
前記類型判定部による判定結果および前記複数のパーティングモデルの類型のそれぞれについて予め設定されたパーティングライン上の特徴点の分布を示すデータに基づいて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティングライン上の特徴点を抽出する抽出部と、
を具備する請求項8に記載の金型設計システム。
【請求項10】
前記特徴点は、
パーティングライン上においてパーティングラインに隣接するキャビティ面と製品抜き方向との成す角度が変化する点である抜き角変化点、パーティング面とキャビティ面との干渉を回避するために必要となる点である干渉回避点、前記抜き角変化点と干渉回避点とで挟まれる位置に配置される点である中間点、並びに、前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点のそれぞれに対応するパーティング面の要素面を合わせたときにパーティング面が不連続となる部分に対応する点である不連続点を含む請求項8または請求項9に記載の金型設計システム。
【請求項11】
前記パーティング面作成部は、
前記特徴点が前記抜き角変化点である場合には、当該抜き角変化点を起点として前記製品抜き方向に直交する第一直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線、並びに当該抜き角変化点を起点として前記製品抜き方向および前記第一直交方向に直交する第二直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線、の二本の直線を含む平面として当該抜き角変化点に対応するパーティング面の要素面を作成する請求項10に記載の金型設計システム。
【請求項12】
前記パーティング面作成部は、
前記特徴点が前記干渉回避点である場合には、当該干渉回避点を起点として前記製品抜き方向から見て前記第一直交方向および前記第二直交方向と異なる干渉回避方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を前記パーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該干渉回避点に対応するパーティング面の要素面を作成する請求項11に記載の金型設計システム。
【請求項13】
前記パーティング面作成部は、
前記特徴点が前記中間点である場合には、当該中間点を起点として前記第一直交方向または前記第二直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を前記パーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該中間点に対応するパーティング面の要素面を作成する請求項12に記載の金型設計システム。
【請求項14】
前記パーティング面作成部は、
前記特徴点が不連続点である場合には、当該不連続点を起点として前記パーティングモデルに干渉することなく離間する二つの異なる方向に延びた二本の直線を含む平面として、隣接する前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点に対応する要素面と繋がるように当該不連続点に対応するパーティング面の要素面を作成する請求項13に記載の金型設計システム。
【請求項15】
製品を成形する金型を設計する金型設計プログラムであって、
コンピュータに、
製品のパーティングモデルおよび製品抜き角度に基づいて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティングライン上の特徴点を抽出する特徴点抽出機能と、
前記特徴点の特徴毎に予め定められたパーティング面の要素面の作成ルールに従って、前記各特徴点に対応する前記要素面を作成し、作成された要素面を合わせて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティング面を作成するパーティング面作成機能と、
を実現させるための金型設計プログラム。
【請求項16】
前記特徴点抽出機能は、
前記製品のパーティングモデルが予め設定された複数のパーティングモデルの類型のいずれに該当するかを判定する類型判定機能と、
前記類型判定機能による判定結果および前記複数のパーティングモデルの類型のそれぞれについて予め設定されたパーティングライン上の特徴点の分布を示すデータに基づいて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティングライン上の特徴点を抽出する抽出機能と、
を具備する請求項15に記載の金型設計プログラム。
【請求項17】
前記特徴点は、
パーティングライン上においてパーティングラインに隣接するキャビティ面と製品抜き方向との成す角度が変化する点である抜き角変化点、パーティング面とキャビティ面との干渉を回避するために必要となる点である干渉回避点、前記抜き角変化点と干渉回避点とで挟まれる位置に配置される点である中間点、並びに、前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点のそれぞれに対応するパーティング面の要素面を合わせたときにパーティング面が不連続となる部分に対応する点である不連続点を含む請求項15または請求項16に記載の金型設計プログラム。
【請求項18】
前記パーティング面作成機能は、
前記特徴点が前記抜き角変化点である場合には、当該抜き角変化点を起点として前記製品抜き方向に直交する第一直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線、並びに当該抜き角変化点を起点として前記製品抜き方向および前記第一直交方向に直交する第二直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線、の二本の直線を含む平面として当該抜き角変化点に対応するパーティング面の要素面を作成する請求項17に記載の金型設計プログラム。
【請求項19】
前記パーティング面作成機能は、
前記特徴点が前記干渉回避点である場合には、当該干渉回避点を起点として前記製品抜き方向から見て前記第一直交方向および前記第二直交方向と異なる干渉回避方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を前記パーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該干渉回避点に対応するパーティング面の要素面を作成する請求項18に記載の金型設計プログラム。
【請求項20】
前記パーティング面作成機能は、
前記特徴点が前記中間点である場合には、当該中間点を起点として前記第一直交方向または前記第二直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を前記パーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該中間点に対応するパーティング面の要素面を作成する請求項19に記載の金型設計プログラム。
【請求項21】
前記パーティング面作成機能は、
前記特徴点が不連続点である場合には、当該不連続点を起点として前記パーティングモデルに干渉することなく離間する二つの異なる方向に延びた二本の直線を含む平面として、隣接する前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点に対応する要素面と繋がるように当該不連続点に対応するパーティング面の要素面を作成する請求項20に記載の金型設計プログラム。
【請求項22】
製品を成形する金型を設計する金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
コンピュータに、
製品のパーティングモデルおよび製品抜き角度に基づいて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティングライン上の特徴点を抽出する特徴点抽出機能と、
前記特徴点の特徴毎に予め定められたパーティング面の要素面の作成ルールに従って、前記各特徴点に対応する前記要素面を作成し、作成された要素面を合わせて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティング面を作成するパーティング面作成機能と、
を実現させるための金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項23】
前記特徴点抽出機能は、
前記製品のパーティングモデルが予め設定された複数のパーティングモデルの類型のいずれに該当するかを判定する類型判定機能と、
前記類型判定機能による判定結果および前記複数のパーティングモデルの類型のそれぞれについて予め設定されたパーティングライン上の特徴点の分布を示すデータに基づいて前記製品のパーティングモデルに対応するパーティングライン上の特徴点を抽出する抽出機能と、
を具備する請求項22に記載の金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項24】
前記特徴点は、
パーティングライン上においてパーティングラインに隣接するキャビティ面と製品抜き方向との成す角度が変化する点である抜き角変化点、パーティング面とキャビティ面との干渉を回避するために必要となる点である干渉回避点、前記抜き角変化点と干渉回避点とで挟まれる位置に配置される点である中間点、並びに、前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点のそれぞれに対応するパーティング面の要素面を合わせたときにパーティング面が不連続となる部分に対応する点である不連続点を含む請求項22または請求項23に記載の金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項25】
前記パーティング面作成機能は、
前記特徴点が前記抜き角変化点である場合には、当該抜き角変化点を起点として前記製品抜き方向に直交する第一直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線、並びに当該抜き角変化点を起点として前記製品抜き方向および前記第一直交方向に直交する第二直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線、の二本の直線を含む平面として当該抜き角変化点に対応するパーティング面の要素面を作成する請求項24に記載の金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項26】
前記パーティング面作成機能は、
前記特徴点が前記干渉回避点である場合には、当該干渉回避点を起点として前記製品抜き方向から見て前記第一直交方向および前記第二直交方向と異なる干渉回避方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を前記パーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該干渉回避点に対応するパーティング面の要素面を作成する請求項25に記載の金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項27】
前記パーティング面作成機能は、
前記特徴点が前記中間点である場合には、当該中間点を起点として前記第一直交方向または前記第二直交方向において前記パーティングモデルに干渉することなく離間する方向に延びた直線を前記パーティングラインに沿って走査したときの軌跡からなる平面または曲面として当該中間点に対応するパーティング面の要素面を作成する請求項26に記載の金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項28】
前記パーティング面作成機能は、
前記特徴点が不連続点である場合には、当該不連続点を起点として前記パーティングモデルに干渉することなく離間する二つの異なる方向に延びた二本の直線を含む平面として、隣接する前記抜き角変化点、干渉回避点および中間点に対応する要素面と繋がるように当該不連続点に対応するパーティング面の要素面を作成する請求項27に記載の金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−181333(P2009−181333A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19692(P2008−19692)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】