説明

金属−ホスフィン・アミノホスフィン坦持触媒

本発明は、坦持体、固着剤及び、実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィン配位子の金属錯体を含む、再使用可能で安定な坦持触媒である。得られる触媒は、非対称触媒反応、例えば非対称水素化反応に有用である。また、その坦持触媒錯体を製造する方法及び非対称触媒反応へのその使用も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い反応性、安定性及び非対称触媒反応に対する選択性を発揮する、再使用可能で高度に安定な坦持錯体に関する。更に詳しくは、本発明は、坦持体、固着剤(anchoring agent)及び、実質的に鏡像異性体的に(enantiomerically)純粋なホスフィン・アミノホスフィン配位子の金属錯体を含む、実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィン配位子の坦持金属錯体に関する。本発明はまた、坦持触媒錯体の新規な製造方法及びそれらの非対称触媒反応への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
非対称触媒反応は、高度に鏡像異性体的な純度を有する生成物を生産するための最も効果的な方法であり、そこでは触媒の非対称性がキラル生成物の生産の間中、何回でも増殖される(multiplied)。これらのキラル生成物は、ある種の農薬においてはもとより、単一の鏡像異性体薬剤の構成単位として多くの用途を見出してきた。採用される非対称触媒は、本来、酵素であることができ、又は合成のものであることができる。後者のタイプの触媒は、適用できる反応のタイプに遥かに大きな許容範囲があるので、前者よりも遥かに有望である。合成非対称触媒は、通常、有機配位子によって囲まれた金属の反応中枢から構成されている。その配位子は、通常、高度に鏡像異性体的な純度で生産されたものであり、非対称性を誘発する作用因子である。これらの配位子は、一般に、製造が難しく、それ故高価である。更にこれらの配位子は、例えば回収が困難であり、再単離時に不安定であるため、通常、再利用することができない。
【0003】
均一な触媒を坦持体に添着させるための主要な戦略(例えばそれを不均質化するなど)は、配位子を変性して、それがポリマーマトリックス中に組み込まれ得るようにすることである。あいにく、そのような方法は、通常、元の可溶性触媒に比べて、活性及び選択性の両方の重大な喪失を示すような物質をもたらす。更に、不均一な種の活性は、再使用が試みられたとき、しばしば急速に劣化する。特許文献1〜3においてTanielyanらにより記載された坦持触媒は、キラル配位子の共有結合による変性を含まない新たな固定様式を利用している。これらの坦持種は、一般に、均一な対応品に比べて選択性を発揮し、そして多数回の再使用に亘ってそれらの触媒活性を維持する。
【0004】
非対称触媒のための、実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィン配位子の金属錯体の製造及びその使用は、Boazらによって特許文献4に記載された。ホスフィン・アミノホスフィン配位子の金属錯体の不均一化については何らの報告もなかった。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,005,148号明細書
【特許文献2】米国特許第6,025,295号明細書
【特許文献3】米国特許第6,136,746号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0065417号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の新規な坦持触媒は、坦持体、固着剤及び、実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィン配位子の金属錯体を含む。
【発明の効果】
【0007】
これらの種は、非対称触媒反応、特に非対称水素化に有用である。これらの坦持触媒は、良好な活性を有し、高い鏡像異性体選択性を提供し、そして意外にも、触媒活性をほとんど喪失することなく再使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上記のように、本発明には、坦持体、固着剤及び、実質的に鏡像異性的に純粋なホスフィン・アミノホスフィン配位子の金属錯体を含んでなる坦持触媒が含まれる。「実質的に鏡像異性的に純粋な」なる用語は、その配位子が前記鏡像異性体の90%超の鏡像異性的超過(ee)を特徴とすることを示す意味である。
【0009】
本発明に用いられる坦持体は、固着剤の均一分散を促進するのに十分な表面積を有する、不溶性で、粒状の非晶性又は結晶性物質により構成される。適当な坦持体には、容易に及び一般的に購入できるか、又は当業者に公知の技法により製造され得るものが含まれる。適切な坦持体物質の具体例には、これらに限定するものではないが:金属酸化物、例えばアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ランタナ、ゼオライト類及びクレイ類と共に、炭素、樹脂、ポリマー等が含まれる。
【0010】
坦持体はそのままで(例えば購入され、又は製造されたそのままで)使用されてもいいし、また触媒錯体全体の活性に悪影響を及ぼす望ましくない種を除去するために、使用に先立ち更に処理されてもよい。例えば坦持体は、使用に先立って、空気中で又は不活性な雰囲気中で焙焼により処理されることができる。同様に坦持体は、固着剤の接着を促進するため、変性剤により処理されることもできる。使用され得る適当な変性剤には、それらに限定されるものではないが:金属アルコキシド、例えばチタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、シランアルコキシド、バナジウムアルコキシド等;ポリイソシアネート、ヒドロキシエポキシド、シアノエポキシド及びその他の機能化された有機物質が含まれる。
【0011】
固着剤又は固着媒体は、ヘテロポリ酸又はアニオンである。本明細書で用いる「ヘテロポリ酸」(又はアニオン)なる用語は、通常、適当な数の酸素原子と結合し、且つ酸素原子を共有することにより結合した八面体のオキソ金属種である、球に近似した殻により囲周された中核イオンからなる、いずれかの多プロトン性混合酸化物を意味する。中核原子即ち「ヘテロ原子」は、典型的には酸化状態の+3〜+5を有するカチオン、例えばP(+5)、As(+5)、Si(+4)、又はMn(+4)である。その八面体と会合した金属の種は、通常、Mo、W又はVである。ヘテロポリ酸の殻における八面体は均一な組成であることができ、又は異なる金属種を含むこともできる。適当なヘテロポリ酸は、これらに限定するものではないが:リンタングステン酸(PTA)、リンモリブデン酸(PMA)、珪タングステン酸(STA)等;ドーソン種(Dawson species);ウォー(Waugh)種;アンダーソン(Anderson)種;シルバートン(Silverton)種;それらの格子状物(lacunar)及び、その他の結晶又は非結晶形態;及びそれらのアニオンを含む。ヘテロポリアニオンが用いられるとき、その対イオンは、適当なヘテロポリアニオンを容易に提供するような、いずれかの種であることができる。適当な対イオン(即ちカチオン)には、それらに限定されるものではないが:アルカリイオン、アルカリ土類イオン、又は第四級アンモニウムイオンが含まれる。
【0012】
実質的に鏡像異性的に純粋なホスフィン・アミノホスフィン配位子の金属錯体は、IIB族、IVB族、VB族、VIIB族、VIII族、IB族又はIIB族の金属の1種又はそれ以上の錯体であり、そして実質的に鏡像異性的に純粋なビスホスフィン化合物は、2つのホスフィン残基に結合した実質的に鏡像異性的に純粋なキラル主鎖を含んでおり、その一方のホスフィン残基が3つのリン−炭素結合を有し、他方のホスフィン残基が2つのリン−炭素結合と1つのリン−窒素結合とを有しており、その窒素はキラル主鎖の一部である。主題である配位子と共に用いられる好ましい金属の実例には、VIII族金属、例えばロジウム、イリジウム又はルテニウムなどが含まれる。
【0013】
実質的に鏡像異性的に純粋な化合物(即ち主題である配位子)の実例には、一般式1又は2(1の鏡像異性体)を有するホスフィノメタロセニル−アミノホスフィン類が含まれる:
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、Rは、置換及び非置換、分枝鎖及び直鎖のC1〜C20アルキル、置換及び非置換のC3〜C8シクロアルキル、置換及び非置換のC6〜C20炭素環アリール並びに、ヘテロ原子が硫黄、窒素及び酸素から選ばれる、置換及び非置換のC4〜C20ヘテロアリールから選ばれ;
1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素、置換及び非置換、分枝鎖及び直鎖のC1〜C20アルキル、置換及び非置換のC3〜C8シクロアルキル、置換及び非置換のC6〜C20炭素環アリール並びに、ヘテロ原子が硫黄、窒素及び酸素から選ばれる、置換及び非置換のC4〜C20ヘテロアリールから選ばれ;
nは0〜3であり;
mは0〜5であり;そして
MはIVB族、VB族、VIB族、VIIB族及びVIII族の金属から選ばれる。)
【0016】
それぞれ、R、R1、R2、R3、R4及びR5で表されるアルキル基は、炭素原子約20以下の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基であることができ、そして、例えばC1〜C6アルコキシ、シアノ、C2〜C6アルコキシカルボニル、C2〜C6アルカノイルオキシ、ヒドロキシ、アリール及びハロゲンから選ばれる1〜3の基で置換されることができる。「C1〜C6アルコキシ」、「C2〜C6アルコキシカルボニル」及び「C2〜C6アルカノイルオキシ」なる用語は、それぞれ−OR6、−CO26及び−OCOR6なる構造に対応する基を表すために用いられるものであり、ここでR6はC1〜C6アルキル又は置換C1〜C6アルキルである。「C3〜C8シクロアルキル」なる用語は、炭素原子3〜8を有する飽和炭素環炭化水素基を表すために用いられるものである。R、R1、R2、R3、R4及びR5のそれぞれが表すことのできるアリール基は、フェニル、ナフチル又はアントラセニルと、C1〜C6アルキル、置換C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、置換C6〜C10アリール、C1〜C6アルコキシ、ハロゲン、カルボキシ、シアノ、C1〜C6アルカノイルオキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6アルキルスルホニル、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、C2〜C6アルコキシカルボニル、C2〜C6アルカノイルアミノ、並びに−O−R7、S−R7、−SO2−R7、−NHSO27及び−NHCO27(ここでR7はフェニル、ナフチル又は、C1〜C6アルキル、C6〜C10アリール、C1〜C6アルコキシ及びハロゲンから選ばれる1〜3の基で置換されたフェニルもしくはナフチルである)から選ばれる1〜3の基で置換されたフェニル、ナフチル又はアントラセニルを含む。
【0017】
前記ヘテロアリール基は、酸素、硫黄及び窒素から選ばれるヘテロ原子1〜3を含む、5員又は6員の芳香族環を含む。そのようなヘテロアリール基の具体例としては、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ベンズオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、インドリル等があげられる。ヘテロアリール基は、例えばC1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、置換C1〜C6アルキル、ハロゲン、C1〜C6アルキルチオ、アリール、アリールチオ、アリールオキシ、C2〜C6アルコキシカルボニル及びC2〜C6アルカノイルアミノなどの3つまでの基で置換されていてもよい。ヘテロアリール基はまた縮合環系、例えばベンゾ又はナフト残基で置換されていてもよいが、その縮合環系は、非置換であってもよく、また上記の文中に記載された、例えば3つまでの基で置換されていてもよい。ここで用いられる「ハロゲン」なる用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含む。
【0018】
本発明の好ましい配位子の具体例は、式1又は2を有し、そこでRはC1〜C6アルキル;R1は水素又はC1〜C6アルキル;R2はアリール(好ましくはフェニル)、エチル、イソプロピル又はシクロヘキシル;R3はアリール、最も好ましくはフェニル;R4及びR5は水素;Mは鉄、ルテニウム又はオスミウムであり、最も好ましくは鉄である。前記の配位子−金属錯体は、更に1種又はそれ以上のアキラル配位子を含むことができ、それらには、それらに限定されるものではないが:シクロペンタジエン、一酸化炭素、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン、及び第四級ホスフィンなどの種が含まれる。
【0019】
本発明はまた、上記の坦持触媒錯体の製造を提供する。坦持触媒を製造する方法は、坦持体を、ヘテロポリ酸固着剤又はヘテロポリアニオン固着剤に、ヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオン含有坦持体を形成するのに効果的な条件下で接触させ、次いで実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィンの金属錯体を、ヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオン含有坦持体に、坦持触媒を形成するのに効果的な条件下で接触させることを含むことができる。
【0020】
更に本発明の坦持触媒は、予め作製した坦持体及び固着媒体の結合体を、実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィン配位子の金属錯体と接触させることにより製造することができる。固着媒体−坦持体の作製は、Tanielyanらの特許文献1〜3に記載されており、これらの開示は、引用により本明細書に組み入れるものとする。同様に、ホスフィン・アミノホスフィン配位子及びその金属錯体は、Boazらの特許文献4に記載されており、その開示も引用により本明細書に組み入れるものとする。
【0021】
配位子―金属錯体と、坦持体―定着媒体の結合体との接触は、典型的には、溶媒中、約−25℃〜約250℃の温度で、約1分〜約50時間の間起こさせる。好ましくは、この接触は約25℃〜約50℃の温度で、約1時間〜約24時間の間に起こる。一般に、配位子―金属錯体は、金属錯体:ヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオン固着物質のモル比が約0.1:1〜約6:1、より好ましくはそのモル比が約0.5:1〜約1.5:1となるような濃度で使用する。使用される溶媒は金属錯体を溶解することができるものである。好ましい溶媒には、低級アルコール類(C1〜C5)、エーテル類、エステル類、ケトン類及び、脂肪族もしくは芳香族炭化水素又はそれらの混合物が含まれる。
【0022】
得られる固形物である本発明の坦持触媒は、次いで、必要に応じて、当業者には公知の技法、例えばデカンテーション、濾過又は遠心分離などを用いて回収することができる。固体の坦持触媒はそのままで使用してもよく、また使用に先立ち、いくらかの坦持されていない物質を除去するため、必要に応じて、上記の溶媒の1つで洗浄してもよい。
【0023】
本発明の固体触媒の別の製造方法は、先ず、固着剤を、実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィンの配位子―金属錯体に接触させて、混合物を作製することを含み、次いでその混合物を坦持物質に接触させる。その前記混合物は懸濁液又は溶液の形態をとることができる。
【0024】
固着剤と、実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィンの金属錯体との接触は、典型的には、溶媒中で、且つ約−25℃〜約250℃の温度で、約1分〜約50時間の間起こさせる。好ましくは、この接触は約25℃〜約50℃の温度で、約1時間〜約24時間の間に起こさせる。一般に、本発明において、その金属錯体は、金属錯体:ヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオンのモル比が約0.1:1〜約6:1、より好ましくはそのモル比が約0.5:1〜約1.5:1となるような濃度で使用する。
【0025】
得られる、固着剤と金属錯体とを含む混合物は、そのまま坦持物質と接触させることができ、又は、その代わりに、得られた溶液又は懸濁液を乾燥し、次いで、上記の坦持物質の1つと接触させる前に、類似の溶媒中にスラリーすることができる。この接触は、一般に、溶媒中で、且つ約−25℃〜約250℃の温度で、約1分〜約50時間の間に起こさせる。好ましくは、この接触は約25℃〜約50℃の温度で、約3時間〜約12時間の間に起こさせる。本発明のこの側面に関していえば、固着剤と金属錯体の溶液又は懸濁液は、この接触工程で使用される坦持体の約0.01重量%〜約150重量%存在する。この態様のいずれかの工程で使用し得る溶媒には、低級アルコール類(C1〜C5)、エーテル類、エステル類、ケトン類及び、脂肪族もしくは芳香族炭化水素又はそれらの混合物が含まれる。
【0026】
本発明の固体坦持触媒は、次いで、必要に応じて、当業者には公知の技法、例えばデカンテーション、濾過又は遠心分離などを用いて回収することができる。固体の坦持触媒はそのままで使用してもよく、また使用に先立ち、いくらかの坦持されていない物質を除去するため、必要に応じて、上記の溶媒の1つで洗浄してもよい。
【0027】
本発明の更なる態様において、坦持触媒錯体は、坦持触媒先駆体を、実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィン配位子と接触させることにより製造される。金属を含む坦持触媒先駆体は、前に明示したTanielyanらの米国特許に記載されている。製造されるとすぐに、坦持触媒先駆体は、次いで、上記のように、実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィン配位子と接触させて坦持触媒錯体を形成する。
【0028】
ここで用いるための坦持触媒先駆体には、坦持体、固着剤及び、それにより触媒的に活性な本体を製造し得る金属塩又は金属錯体を含む。触媒先駆体物質の具体例は、ロジウムシクロオクタジエンダイマー、ビス(シクロオクタジエン)ロジウムテトラフルオロボレート、ビス(シクロオクタジエン)ロジウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(ノルボルナジエン)ロジウムテトラフルオロボレート、ルテニウムシクロオクタジエンダイマー、アリルパラジウムクロリドダイマー及びロジウムクロリドを含む。
【0029】
坦持触媒先駆体に付加される、実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィン配位子の濃度は、典型的には、坦持触媒先駆体物質のミリモル当たり約1〜約6ミリモルである。坦持触媒先駆体の、実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィン配位子での処理は、典型的には、溶媒中、約−25℃〜約250℃、好ましくは約25℃〜約50℃の温度で、約1分〜約50時間の間に生じる。この態様での好ましい溶媒には、低級アルコール類(C1〜C5)、エーテル類、エステル類、ケトン類及び脂肪族もしくは芳香族炭化水素又はそれらの混合物が含まれる。
【0030】
本発明の固体坦持触媒は、次いで、必要に応じて、当業者には公知の技法、例えばデカンテーション、濾過又は遠心分離などを用いて回収することができる。固体の坦持触媒はそのままで使用してもよく、また使用に先立ち、いくらかの坦持されていない物質を除去するため、必要に応じて、前記の溶媒の1つで洗浄してもよい。
【0031】
本発明のこれら坦持錯体は、非対称触媒反応を実施するために使用することができる。そのような反応の具体例には、これらに限定するものではないが:非対称水素化、非対称還元、非対称ヒドロホウ素化、非対称オレフィン異性化、非対称ヒドロ珪素化、非対称アリル化、非対称ヒドロホルミル化及び非対称有機金属付加が含まれる。本発明の好ましい態様は、非対称水素化反応への坦持錯体の使用であり、その一例には、プロキラル置換−α,β−不飽和の酸もしくはエステル又はその他のプロキラル基質の触媒非対称水素化があり、飽和キラル対応品を提供する。本発明で採用する水素化条件は、そのような反応を遂行するために、当業者により典型的に採用されるものである。
【0032】
使用される坦持触媒錯体の量は、反応体化合物に基づいて、0.000005〜0.5当量の間で変わり、錯体が多ければ多いほど反応速度はそれだけ速くなる。反応の雰囲気は水素であるが、その反応条件に対して不活性なその他の気体又は物質を含んでいてもよい。前記反応は大気圧又は高圧、一般にはゲージ圧約0.5〜約200バール(barg)で実施することができる。前記反応は妥当な転化速度を与える温度で実施し、それは−50℃程度の低温であってもよいが、通常は、周囲温度と、反応混合物の最も低い沸点の成分の沸点(即ち高圧での見掛けの沸点)との間である。反応は、脂肪族炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン等、芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン等、環式又は非環式エーテル、例えばt−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等、低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等、ハロゲン化脂肪族又は芳香族炭化水素、例えばジクロロメタン、テトラクロロエチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等、エステル類、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、酢酸イソプロピル等、ジアルキルケトン、例えばアセトン、2−ブタノン、3−ペンタノン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等、もしくは極性非プロトン性溶媒、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等、又はそれらの混合物から選ばれる溶媒の存在下で実施してもよい。そのような反応の生成物は、一般に、高い鏡像異性的超過(85%ee超)で得られる。
【0033】
前述のように、ここに記載された坦持触媒は、実質的に触媒活性又は鏡像異性体選択性を失うことなく、多数回再使用することができる。当業者は、ホスフィン・アミノホスフィン触媒が坦持体に添着され得たとしても、連続使用の間のアミノホスフィンの窒素−リン結合の開裂によって、それが劣化し又は不活性化するものと予期しているので、本発明の坦持触媒を再使用できるという能力は、驚くべきものであり予期し得ないものである。このことは、そのようなホスフィン・アミノホスフィン触媒がアルコール溶媒に曝されるとき、まさに然りである。窒素−リン結合の開裂は、明らかに触媒活性及び鏡像異性体選択性の喪失をもたらすことになったであろう。
【実施例】
【0034】
本発明により提供される新規な化合物及び方法を、以下の実施例によって、更に詳説する。
例1
脱ガスされた無水エタノール15mLをカニューレで添加する前に、Al23/PTA坦持体(0.4221g)を含む反応器を、数回、脱気しアルゴンで充填した。この添加の後、カニューレを取り除き、約10分間又は発泡が観察されなくなるまで脱気させた。この間に、ビス(ノルボルナジエン)ロジウムテトラフルオロボレート(0.0075g;20ミクロモル)及び(R)−N−ジフェニルホスフィノ−1−[(S)−2−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル」エチルアミン(式1,R=R1=CH3,R2=R3=Ph,n=m=0,M=Fe)(0.0122g;20ミクロモル)を計量し、10mLメスフラスコに移した。そのフラスコの内容物を約5分間脱気した後、その内容物は無水エタノールで標線まで希釈して、25分間超音波処理した。このフラスコの内容物は、次いでカニューレを介して、低速で(約10分)反応器に添加した。全部添加後、カニューレを除き、反応器を、少なくとも3回、脱気し、アルゴン充填し、次いで、一夜、攪拌しながら(約550rpm)、水浴(37℃)中に置いた。翌日、この坦持体を3〜4回無水エタノールで洗浄し、次いで減圧下で乾燥した。
【0035】
例2
脱ガスされた無水エタノール15mLをカニューレで添加する前に、Al23/PTA坦持体(0.4221g)を含む反応器を、数回、脱気し、アルゴン充填した。この添加の後、カニューレを取り除き、約10分間又は発泡が観察されなくなるまで脱気した。この間に、ビス(シクロオクタジエン)ロジウムテトラフルオロボレート(0.0081g;20ミクロモル)を計量し、10mLメスフラスコに移した。そのフラスコの内容物を約5分間脱気した後、その内容物は無水エタノールで標線まで希釈した。このフラスコの内容物は、次いでカニューレを介して、低速で(約10分)反応器に添加した。全部添加してカニューレを除いたとき、反応器は、少なくとも3回、脱気し、アルゴン充填し、次いで、一夜、攪拌しながら(約550rpm)水浴(37℃)中に置いた。翌日、坦持体は2回無水エタノールで洗浄した。この時点で、坦持体は更なる使用のために乾燥するか、又は無水エタノール15mLに再懸濁させた。(R)−N−ジフェニルホスフィノ−1−[(S)−2−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル」エチルアミン(式1,R=R1=CH3,R2=R3=Ph,n=m=0,M=Fe)20ミクロモル(0.0122g)を含む溶液がその坦持体に滴下により添加し、その内容物は37℃で一夜攪拌した。翌日、坦持体は3〜4回無水エタノールで洗浄し、次いで減圧乾燥した。
【0036】
例3
例1に記載された坦持錯体を水素ラインに結合し、その坦持体を、水素に暴露する前に、装置全体を8回脱気した。水素に暴露されると直ちに変色(オレンジから赤オレンジに)が観察された。この時点で、15%トルエン/無水エタノール15mLがシリンジを介して添加し、次いで所望量のイタコン酸ジメチル(3000ターンオーバー数反応では8.5mL)を添加した。水素化反応は、周囲温度、水素圧50psigで実施し、続いて水素の捕捉(uptake)吸収が起こった。この反応の完了後、上澄み液を取り除き、その反応器には、上記のような溶媒と基材(substrate)の2回目のバッチを充填した。坦持錯体は合計7回の実施に使用した。これらの実施からの速度データは図1にグラフ表示し、ターンオーバー頻度と生成物の鏡像異性体的超過を表Iに示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表IのTONは合計の坦持触媒ターンオーバー数である。TOFは、反応初期段階での時間当たり坦持触媒ターンオーバー頻度である。
例4
例2に記載した坦持錯体を水素ラインに結合し、その坦持体を水素に暴露する前に装置全体を8回脱気した。水素に暴露するとすぐに変色(オレンジから赤オレンジに)が観察された。この時点で、15%トルエン/無水エタノール15mLをシリンジを介して添加し、次いで所望量のイタコン酸ジメチル(3000ターンオーバー数反応では8.5mL)を添加した。水素化反応は、周囲温度、水素圧50psigで実施し、続いて水素の捕捉が起こった。反応の完了後、上澄み液を取り除き、反応器に、前述のような溶媒と基材(substrate)の2回目のバッチを充填した。坦持錯体は合計4回の実施に使用した。これらの実施からの速度のデータは図2のグラフに示し、ターンオーバー数と生成物の鏡像異性体的超過は表IIに示す。
【0039】
【表2】

【0040】
表IIのTONは合計の坦持触媒ターンオーバー数である。TOFは、反応初期段階での時間当たり坦持触媒ターンオーバー頻度である。
例5
炭素坦持リンタングステン酸(0.164g;リンタングステン酸10ミクロモル含有)及び1,5−シクロオクタジエンロジウム−(R)−N−ジフェニルホスフィノ−1−[(S)−2−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル」エチルアミン(10ミクロモル)を、アルゴン雰囲気下、5%トルエンメタノール15mL中で組合せた。その混合物は一夜攪拌して坦持触媒の懸濁液を得た。上澄み液をカニューレを介して取り除き、その固体は洗浄液が無色になるまで洗浄した。これにアルゴンで脱ガスされた3%トルエンメタノール40mLを加えた。この懸濁液を攪拌し、新たに精製されたイタコン酸ジメチル(14.1mL;100ミリモル;S:C10,000)を加えた。反応混合物は40℃まで加熱し、アルゴン雰囲気を水素75psigで置きかえた。この反応混合物を攪拌して、引き続いて水素の捕捉が認められた。反応完了後、上澄み液を取り除き、反応器に、上記のような溶媒と基材の2回目のバッチを充填した。坦持錯体は合計5回の実施に使用した。これらの実施からの速度のデータは図3のグラフに示し、ターンオーバー数と生成物の鏡像異性体的超過を表IIIに示す。
【0041】
【表3】

【0042】
例6
炭素坦持リンタングステン酸(0.082g;リンタングステン酸5ミクロモル含有)及び1,5−シクロオクタジエンロジウム−(R)−N−ジフェニルホスフィノ−1−[(S)−2−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセニル」エチルアミン(5ミクロモル)を、アルゴン雰囲気下、5%トルエンメタノール15mL中で組合せた。この混合物を一夜攪拌して坦持触媒の懸濁液を得た。上澄み液をカニューレを介して取り除き、その固体は洗浄液が無色になるまで洗浄した。これにアルゴンで脱ガスされたメタノール120mLを加えた。懸濁液を攪拌し、新たに精製されたイタコン酸ジメチル(100mL;708ミリモル;S:C141,600)を加えた。反応混合物は50℃まで加熱し、アルゴン雰囲気を水素75psigで置きかえた。この反応混合物は、イタコン酸ジメチルが完全に消費されるように約15時間攪拌して、コハク酸ジメチル−(R)−2−メチルを、88%ee、時間当たり12,500ターンオーバーの触媒活性で得た。
【0043】
本発明を、その好ましい態様を具体的に参照して詳しく記載してきたが、本発明の精神及び範囲内において、様々な変更や修正がもたらされうるということは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、坦持体、固着剤及び、実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィンの金属錯体から製造された、金属−ホスフィン・アミノホスフィン坦持触媒を用いての、イタコン酸ジメチルの水素化速度を図示したものである。この図面は、同一の坦持触媒が7回の使用に亘って同等の触媒活性を示している。図1は例3の実施を反映するものである。
【図2】図2は、坦持触媒先駆体及び、実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィンから製造された、坦持された金属−ホスフィン・アミノホスフィンを用いての、イタコン酸ジメチルの水素化速度を図示したものである。この図面は、同一の坦持触媒が4回の使用に亘って同等の触媒活性を示している。図2は例4の実施を反映するものである。
【図3】図3は、坦持触媒先駆体及び、実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィンから製造された、坦持された金属−ホスフィン・アミノホスフィンを用いての、イタコン酸ジメチルの水素化速度を図示したものである{例えば、S:C10,000におけるC/PTA/Rh−(R)−1を用いたイタコン酸ジメチルの水素化反応}。この図面は、同一の坦持触媒が5回の使用に亘って同等の触媒活性を示している。図3は例5の実施を反映するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
坦持体、固着剤及び実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィン配位子の金属錯体を含んでなる坦持触媒。
【請求項2】
前記坦持体が金属酸化物、炭素、樹脂及びポリマーよりなる群から選ばれる請求項1に記載の坦持触媒。
【請求項3】
金属酸化物がアルミナ、シリカ、チタニア、ランタナ、ゼオライト類及びクレイ類よりなる群から選ばれる請求項2に記載の坦持触媒。
【請求項4】
坦持体が焼成により処理されるか、又は変性剤と接触させられる請求項2に記載の坦持触媒。
【請求項5】
変性剤がチタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、シランアルコキシド又はバナジウムアルコキシドから選ばれる金属アルコキシドである請求項4に記載の坦持触媒。
【請求項6】
固着剤がケギン型、ドーソン型、アンダーソン型もしくはシルバートン型又はそれらの混合物から選ばれるヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオンである請求項1に記載の坦持触媒。
【請求項7】
ヘテロポリ酸がリンタングステン酸、リンモリブデン酸、珪タングステン酸又はそれらのアニオンである請求項6に記載の坦持触媒。
【請求項8】
前記金属錯体がIIIB族、IVB族、VB族、VIIB族、IB族又はIIB族からの金属を含む請求項1に記載の坦持触媒。
【請求項9】
前記金属がVIII族金属である請求項1に記載の坦持触媒。
【請求項10】
実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィンが式1:
【化1】

(式中、Rは置換及び非置換、分枝鎖及び直鎖のC1〜C20アルキル、置換及び非置換のC3〜C8シクロアルキル、置換及び非置換のC6〜C20炭素環アリール並びに、ヘテロ原子が硫黄、窒素及び酸素から選ばれる、置換及び非置換のC4〜C20ヘテロアリールから選ばれ;
1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素、置換及び非置換、分枝鎖及び直鎖のC1〜C20アルキル、置換及び非置換のC3〜C8シクロアルキル、置換及び非置換のC6〜C20炭素環アリール並びに、ヘテロ原子が硫黄、窒素及び酸素から選ばれる、置換及び非置換のC4〜C20ヘテロアリールから選ばれ;
nは0〜3であり;
mは0〜5であり;そして
MはIVB族、VB族、VIB族、VIIB族及びVIII族の金属から選ばれる)
を有する請求項1に記載の坦持触媒。
【請求項11】
実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィンが式2:
【化2】

(式中、Rは置換及び非置換、分枝鎖及び直鎖のC1〜C20アルキル、置換及び非置換のC3〜C8シクロアルキル、置換及び非置換のC6〜C20炭素環アリール並びに、ヘテロ原子が硫黄、窒素及び酸素から選ばれる、置換及び非置換のC4〜C20ヘテロアリールから選ばれ;
1、R2、R3、R4及びR5は、独立して、水素、置換及び非置換、分枝鎖及び直鎖のC1〜C20アルキル、置換及び非置換のC3〜C8シクロアルキル、置換及び非置換のC6〜C20炭素環アリール並びに、ヘテロ原子が硫黄、窒素及び酸素から選ばれる、置換及び非置換のC4〜C20ヘテロアリールから選ばれ;
nは0〜3であり;
mは0〜5であり;そして
MはIVB族、VB族、VIB族、VIIB族及びVIII族の金属から選ばれる)
を有する請求項1に記載の坦持触媒。
【請求項12】
(a)坦持体を、ヘテロポリ酸固着剤又はヘテロポリアニオン固着剤に、ヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオン含有坦持体を形成するのに効果的な条件下で接触させ;そして
(b)実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィンの金属錯体を、ヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオン含有坦持体に、坦持触媒を形成するのに効果的な条件下で接触させる;
ことを含んでなる請求項1に記載の坦持触媒の製造方法。
【請求項13】
工程(a)が、溶媒中、約−25℃〜約250℃の温度で、約1分〜約50時間の間に起こる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)が、溶媒中、約−25℃〜約250℃の温度で、約1分〜約50時間の間に起こる請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記金属錯体が、ヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオンに、金属錯体:ヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオンのモル比が約0.1:1〜約6:1を与える濃度で接触する請求項13に記載の方法。
【請求項16】
(a)ヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオンを、実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィンの金属錯体に、ヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオンと金属錯体とを含む混合物を形成するのに効果的な条件下で接触させ;そして
(b)坦持体を工程(a)で形成された混合物に、坦持触媒を形成するのに効果的な条件下で接触させる;
ことを含んでなる請求項1に記載の坦持触媒の製造方法。
【請求項17】
工程(a)が、溶媒中、約−25℃〜約250℃の温度で、約1分〜約50時間の間に起こる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
金属錯体が、ヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオンに、金属錯体:ヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオンのモル比が約0.1:1〜約6:1を与える濃度で接触する請求項16に記載の方法。
【請求項19】
工程(b)が、溶媒中、約−25℃〜約250℃の温度で、約1分〜約50時間の間に起こる請求項16に記載の方法。
【請求項20】
ヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオンと金属錯体が、工程(b)で使用される坦持体に対して、重量比約0.1:1〜約20:1で存在する請求項16に記載の方法。
【請求項21】
(a)坦持体を、ヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオンに、ヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオン含有坦持体を形成するのに効果的な条件下で接触させ;
(b)前記ヘテロポリ酸又はヘテロポリアニオン含有坦持体を、触媒先駆体物質に、坦持触媒先駆体を形成するのに効果的な条件下で接触させ;そして
(c)前記坦持触媒先駆体を、実質的に鏡像異性体的に純粋なホスフィン・アミノホスフィン配位子と接触させて坦持触媒を与える;
ことを含んでなる請求項1に記載の坦持触媒の製造方法。
【請求項22】
工程(a)に使用される坦持体を、使用に先立って、焼成するか又は金属アルコキシドで処理する請求項21に記載の方法。
【請求項23】
金属アルコキシドがチタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、シランアルコキシド及びバナジウムアルコキシドよりなる群から選ばれる請求項22に記載の坦持触媒。
【請求項24】
工程(a)が、溶媒中、約−25℃〜約250℃の温度で、約1分〜約50時間の間に起こる請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記触媒先駆体物質が、それから触媒的活性体を調製し得る金属塩又は金属錯体である請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記触媒先駆体の金属塩又は金属錯体がロジウムシクロオクタジエンダイマー、ビス(シクロオクタジエン)ロジウムテトラフルオロホウ酸塩、ビス(シクロオクタジエン)ロジウムトリフルオロメタンスルホン酸塩、ビス(ノルボルナジエン)ロジウムテトラフルオロホウ酸塩、ルテニウムシクロオクタジエンダイマー、アリルパラジウムクロリドダイマー及びロジウムクロリドよりなる群から選ばれる請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程(b)が、溶媒中、約−25℃〜約250℃の温度で、約1分〜約50時間の間に起こる請求項21に記載の方法。
【請求項28】
工程(c)が、溶媒中、約−25℃〜約250℃の温度で、約1分〜約50時間の間に起こる請求項21に記載の方法。
【請求項29】
工程(c)において、坦持触媒先駆体物質のミリモル当たり、約1ミリモル〜約6ミリモルの配位子を使用する請求項21に記載の方法。
【請求項30】
プロキラル性α,β−不飽和の酸又はエステルを、請求項1に記載の坦持触媒及び水素と、水素化温度及び圧力条件下で接触させることを含むα,β−不飽和酸又はエステルの水素化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−526504(P2006−526504A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515240(P2006−515240)
【出願日】平成16年6月7日(2004.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/017935
【国際公開番号】WO2004/108651
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【出願人】(505449586)シートン ホール ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】