金属の単結晶を製造する方法
【課題】寸法の大きい金属の単結晶を製造する方法を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させ、前記タンニン層の表面に前記金属の単結晶を析出させる工程を含む、金属の単結晶を製造する方法。前記金属としては、Au、Ag、Pt、Pd、Co、NiおよびCuからなる群から選択される1以上が好ましい。また、前記エポキシ樹脂硬化層が、エポキシ樹脂と硬化剤とを混合し、加熱して得られた層であるのが好ましい。
【解決手段】エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させ、前記タンニン層の表面に前記金属の単結晶を析出させる工程を含む、金属の単結晶を製造する方法。前記金属としては、Au、Ag、Pt、Pd、Co、NiおよびCuからなる群から選択される1以上が好ましい。また、前記エポキシ樹脂硬化層が、エポキシ樹脂と硬化剤とを混合し、加熱して得られた層であるのが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の単結晶を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の単結晶には、各種エレクトロニクス技術に有用な装置または素子において、様々な用途が見出されており(例えば、特許文献1参照)、金属単結晶の製造方法についても研究が進められている。例えば金のナノ粒子の製造方法としては、溶液中、金イオンを還元することにより金ナノ粒子を得る方法が知られている。この製造方法によれば、得られる金ナノ粒子は溶液中に分散しているため、他の材料表面に前記金ナノ粒子を固定化するのが容易であるという利点がある。また、金の板状単結晶の製造方法としては、金の塩(例えばHAuCl4)の水溶液にクエン酸水溶液を低温で添加し、数日間で結晶を成長させる方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この製造方法によれば、数μmの大きさの金の単結晶が得られている。別の板状の金の単結晶の製造方法としては、アンモニウム型ポリマー存在下に金の塩の水溶液を100℃で加熱することにより、5μm程度の大きさの金の板状単結晶を得ている(例えば、非特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−136551号公報
【非特許文献1】ダミンダ(Daminda)H.ら、「光学的に透明なAU[111]基板:高分解能走査トンネル顕微鏡用平坦な金なの粒子プラットフォーム(Optically Transparent Au[111] Substrates: Flat Gold Nanoparticle Platforms for High-Resolution Scanning Tunneling Microscopy)」、J.Am.Chem.Soc.,2006年、128号、p.6052−6053。
【非特許文献2】ヨンラン・ルー(Yonglan Luo)、「単結晶金ナノプレートの大スケール合成(Large-scale preparation of single-crystalline gold nanoplates)」、Mat.Lett.,2007年、61号、p.1346−1349。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来は、基板上に金属単結晶を製造する方法は知られていなかった。本発明は、基板上に金属の単結晶を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、金属の単結晶を製造する方法であって、エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させ、前記タンニン層の表面に前記金属の単結晶を析出させる工程を含む。
【発明の効果】
【0005】
本発明の製造方法により、基板上に金属の単結晶を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の製造方法において、金属とは、例えば元素の周期律表において、第9族、第10族または第11族の元素であり、Au、Ag、Pt、Pd、Co、NiおよびCuからなる群から選択される1以上であるのが好ましく、Au、Ag、Pt、PdおよびCuからなる群から選択される1以上であるのがより好ましい。
【0007】
本発明の製造方法において、まず、エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層を準備する。
【0008】
前記エポキシ樹脂硬化層としては、例えば、エポキシ樹脂と硬化剤とを混合し、加熱して得られた層が挙げられる。このエポキシ樹脂硬化層は、熱硬化性エポキシ樹脂(例えば二液型の一般用接着剤)と硬化剤と、任意に溶媒とを混合し、例えば基板の支持体上に塗布し、それを加熱して前記支持体上に前記エポキシ硬化層(基板)を形成して得ることができる。得られた支持体とエポキシ硬化層(基板)との積層体は、そのまま、次の工程において用いてもよい。また、前記エポキシ硬化層を前記積層体から剥がして得た、前記エポキシ硬化層(基板)の単層を、次の工程において用いてもよい。前記支持体上へのエポキシ樹脂と硬化剤との混合物の塗布は、手作業で、または機械を用いて、例えばスピンコーティング等によって行ってもよい。前記塗布を手作業で行うと、得られる金属の単結晶の大きさは小さくなる傾向がみられる。また、前記塗布をスピンコーティングで行うと、得られる金属の単結晶の大きさは大きくなる傾向がみられる。前記支持体は、例えば、前記エポキシ樹脂と硬化剤との混合物を塗布し、かつ、加熱に適する材料の基材が挙げられる。前記支持体は、例えば、ガラス板、ガラスファイバー板、ポリエチレン、ポリプロピレン、PETなどのプラスチック基材、ステンレス等の金属板、石英、雲母等の板が挙げられる。
【0009】
前記エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック樹脂、トリス−ヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、含複素環エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられ、中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。前記エポキシ樹脂は、取り扱いが容易になる観点から、室温において液体である樹脂が好ましい。
【0010】
前記室温において液体であるエポキシ樹脂としては、例えば、jER(登録商標)(旧エピコート)825、同827、同828、同828EL、同828XA、同834、同801、同801P、同802、同802XA、同815、同815XA、同816A、同819、同806、同806L、同807(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製)、アラルダイト(登録商標)CY−182、同192、同184(ハンツマン・インターナショナルLLC社製)等が挙げられる。
【0011】
前記硬化剤は、例えば、脂肪族アミン(例えば、未変性脂環式アミン、変性脂環式アミンなど)、芳香族アミン(例えば、ポリアミドアミンなど)などが挙げられ、中でも変性脂環式アミンまたはポリアミドアミンであるのが好ましい。
【0012】
前記変性脂環式アミンとしては、エポメート(登録商標)B001、エポメート(登録商標)B002、エポメート(登録商標)B002W、エポメート(登録商標)B002R、エポメート(登録商標)C002、エポメート(登録商標)N001、エポメート(登録商標)N002、エポメート(登録商標)P002、エポメート(登録商標)RX2(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製)等が挙げられる。
【0013】
前記エポキシ樹脂と硬化剤と任意に混合する溶媒としては、例えば、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤とを溶解することが可能な溶媒である。そのような溶媒としては、例えば有機溶媒であり、具体的には、ケトン類(例えば、アセトン)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール等)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル等)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)が挙げられる。
【0014】
前記タンニン層に含まれるタンニンとしては、カシワ、ナラなど(ブナ科)の樹皮、ハゼ、ルルデ、ウルシなど(ウルシ科)のは、カリロク(熱帯アジア産、シフンシ科)の果実などに存在し、多数のフェノール性水酸基を持つ芳香族化合物の総称で、水で処理したとき、水溶液は収斂性を示す物質である。前記タンニンとしては、ピロガロール系の加水分解型タンニンと、カテコール系の縮合型タンニンとが含まれ、縮合型タンニンが好ましい。また、前記タンニンとしては、低分子量および高分子量のいずれのタンニンであってもよい。前記低分子量のタンニンとしては、例えば、タンニン酸(加水分解型タンニン)等が挙げられ、前記高分子量のタンニンとしては、例えば、ケブラチョタンニン、ミモザタンニン、ワットルタンニン等の心材や樹皮に含まれる高分子量タンニン;バナナ、リンゴ、カキ等の未熟果実に含まれる高分子量タンニン;キャブロ豆、ブドウ等の未熟なサヤや種子に含まれる高分子量タンニンが挙げられる。これらのタンニンは1種類でも2種類以上を併用して用いてもよい。
【0015】
前記タンニンは、原料から抽出後、乾燥して粉末として用いてもよい。または、原料から抽出して得られた抽出液を、そのままタンニン水溶液として用いてもよい。また、前記タンニンは、酸性(例えば、過塩素酸を用いて酸性化)水に溶解して溶液を調製し、それをタンニン水溶液として用いてもよい。
【0016】
原料として樹皮を用いる場合、その樹木の生産地は特に限定されない。例えばミモザの生産地としては、南アフリカ共和国、東アフリカ地域、ブラジル、中国等が挙げられ、南アフリカ共和国が好ましい。例えばケブラチョの生産地としては、南米が挙げられ、アルゼンチン北部からパラグアイ西部が好ましい。
【0017】
前記エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層は、例えば、前記エポキシ樹脂硬化層を、タンニンの溶液中に浸漬させ、その後乾燥させることにより、製造することができる。前記浸漬は、例えば室温〜加熱条件下、25〜90℃で行うのが好ましい。また、前記浸漬は、例えば3時間以上、12〜48時間行うのが好ましい。なお、前記浸漬の後、乾燥の前に、前記エポキシ樹脂硬化層を、水洗してもよい。前記エポキシ樹脂硬化層の表面に固定されていないタンニンを取り除くことができるため、好ましいからである。または、前記エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層は、例えば、前記エポキシ樹脂硬化層の上に、タンニンの溶液を塗布し、乾燥させることにより製造してもよい。
【0018】
本発明の製造方法においては、前記のように、エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の表面に、金属を含む塩の溶液を接触させ、前記タンニン層の表面に前記金属の単結晶を析出させる工程を含む。
【0019】
前記金属を含む塩としては、前記金属がAuの場合、HAuCl4、AuCl3、AuCl、AuBr3等が挙げられ、前記金属がAgの場合、AgNO3、CH3CO2Ag、AgBr、AgCl、Ag2CO3等が挙げられ、前記金属がPtの場合、PtCl、PtBr、Pt2O等が挙げられ、前記金属がPdの場合、PdBr2、PdCl2、Pd(CH3CO2)2等が挙げられ、前記金属がCoの場合、CoCl2、CoBr2、(CH3CO2)2Co等が挙げられ、前記金属がNiの場合、NiCl2、CoBr2、(CH3CO2)2Co等が挙げられ、前記金属がCuの場合、CuCl2、CuCl、CuBr2、CuBr、(CH3CO2)2Cu、CH3CO2Cu等が挙げられる。
【0020】
前記金属を含む塩の溶液の溶媒は、例えば、前記金属を含む塩を溶解させることが可能な溶媒である。具体的には、前記溶媒は、水、緩衝液、アルコール(例えば、エチレングリコール等)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、イオン液体類(例えば、N−メチル−N−ブチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート等)等が挙げられる。前記金属を含む塩の溶媒が水または緩衝液である場合、前記金属を含む塩の溶液のpHは、例えば1〜6の範囲であり、好ましくは1〜5の範囲である。前記溶液のpHを調整するため、前記金属を含む塩の溶液の溶媒が水の場合、前記溶媒は、酸(例えば、酢酸、塩化水素、過塩素酸等)を含む水、塩基(例えば、水酸化ナトリウム等)を含む水であってもよい。また、前記金属を含む塩の溶液の溶媒が緩衝液の場合、前記溶媒は、適切なpHを有する緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液等)であってもよい。
【0021】
前記金属を含む塩の溶液の濃度は、例えば、0.01〜500mM、好ましくは0.05〜300mM、より好ましくは0.1〜100mMである。具体的には、前記金属を含む塩の前記金属がAuである場合、例えば、0.01〜50mM、好ましくは0.05〜30mM、より好ましくは0.1〜20mMである。前記金属を含む塩の前記金属がAuである場合、濃度が高くなると、得られる金属の単結晶が、分岐状になる傾向がある。また、前記金属を含む塩の前記金属がAgである場合、例えば、0.03〜500mM、好ましくは0.05〜300mM、より好ましくは0.1〜100mMである。前記金属を含む塩の前記金属がAgである場合、濃度が高くなると、得られる金属の単結晶の形状が均一にならない傾向がある。
【0022】
前記タンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させる工程は、前記溶液中に前記エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層を浸漬させたり、前記エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の上に前記溶液を塗布したりして、行うことができる。
【0023】
前記溶液中に前記エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層を浸漬させる場合、前記接触は、例えば室温〜加熱条件下、25〜120℃で行うのが好ましい。具体的には、前記金属を含む塩の前記金属がAuである場合、前記接触の温度は、例えば25〜90℃、好ましくは35〜80℃である。また、前記金属を含む塩の前記金属がAgである場合、前記接触の温度は、例えば25〜120℃、好ましくは30〜100℃である。前記浸漬は、例えば1分以上、10分〜48時間行うのが好ましい。
【0024】
本発明の方法においては、前記タンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させ、金属の単結晶を析出させる。金属の単結晶を析出させる従来知られた方法は、前記のように、水溶液中で金属を還元させ、析出させている。これに対し、本発明は、固体と液体の界面を利用した新規な方法である。
【0025】
さらに本発明は、金属を回収する方法であって、エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させ、前記タンニン層の表面に前記金属の単結晶を析出させる工程を含む。
【0026】
前記回収方法における、前記エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させる工程は、前記金属の単結晶を析出させる方法における、前記エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させる工程と同様に行うことができる。前記回収方法によれば、金属を容易に回収することが可能であり、好ましい。
【0027】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例により限定されない。
本明細書の記載において、以下の略語を使用する。
SEM:走査電子顕微鏡
TME:透過電子顕微鏡
XRD: X線回折計
SAED:制限視野電子回折図形
AFM:原子間力顕微鏡
CLSM:共焦点レーザー顕微鏡
UV:紫外線
【0028】
本明細書において物性を測定するため、以下の機器を用いた。
SEM:日立走査電子顕微鏡S−3000N(日立製作所製)
TEM:日立透過電子顕微鏡8100−T(日立製作所製)
顕微鏡:顕微鏡BX−RL2(オリンパス製)
FT−IR:スペクトルワン(パーキンエルマー社製)
XRD:マルチフフレックス(株式会社リガク製)
AFM:原子間力顕微鏡SPA−400(SII製)
CLSM:共焦点レーザー顕微鏡VK−9510(キーエンス製)
UV−vis:U−2810(日立ハイテクロノジーズ製)
【実施例1】
【0029】
エポキシ樹脂(急速硬化エポキシ系強力接着剤アラルダイト(登録商標)ラピッド主剤、ハンツマン・インターナショナルLLC社、1g)とポリアミドアミン(急速硬化エポキシ系強力接着剤アラルダイト(登録商標)ラピッド硬化剤、ハンツマン・インターナショナルLLC社、、1g)とを無水アセトン(1mL)中に溶解させ、得られた溶液を7分間真空下で脱気した。この溶液(1mL)を、ピペットを用いてガラススライド(2.6cm×7.6cm)上に一面にのばした。溶液が塗布されたガラススライドを、30℃で24時間、次いで、60℃で4時間加熱して、ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を得た。このガラススライドを1.25cm×3cmに切断した。
【0030】
一方、タンニン(ミモザタンニン)の10%(飽和)水溶液を過塩素酸を用いてpHを1に調整した。pH調整後、ろ過して不溶物を溶液から除去した。このタンニン溶液中に、ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を、60℃で24時間浸漬した。次いで、前記ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を水で洗浄し、60℃で1時間乾燥した。これにより、前記ガラススライド上に形成されたエポキシ樹脂硬化層の上に、タンニン層が形成された積層体を得た。
【0031】
5mMのHAuCl4水溶液(pHを過塩素酸により調整。pH1、15mL)に、前記ガラススライド上に形成されたエポキシ樹脂硬化層の上にタンニン層が形成された積層体を60℃で24時間浸漬した。前記積層体の前記タンニン層上には、Auの単結晶が析出していた。Auの単結晶が析出した前記積層体の写真を図1(a)に示す。
【実施例2】
【0032】
5mMのHAuCl4水溶液(pH1)の代わりに5mMのHAuCl4水溶液(希水酸化ナトリウム水溶液によりpHを調整。pH5、15mL)を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。Auの単結晶が析出した前記積層体の写真を図1(b)に示す。
【実施例3】
【0033】
溶液が塗布されたガラススライドを、30℃で24時間、次いで、60℃で4時間加熱する代わりに、30℃で24時間、次いで、150℃で4時間加熱した以外は、実施例1と同様にして行った。Auの単結晶が析出した前記積層体の写真を図1(c)に示す。
【実施例4】
【0034】
5mMのHAuCl4水溶液の溶媒を水の代わりに酢酸緩衝液を用い、pHを5にし、かつ、溶液が塗布されたガラススライドを、30℃で24時間、次いで、60℃で4時間加熱する代わりに、30℃で24時間、次いで、150℃で4時間加熱した以外は、実施例1と同様にして行った。Auの単結晶が析出した前記積層体の写真を図1(d)に示す。
【0035】
[Au単結晶のFT−IR]
実施例1中で作製したガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体の前記エポキシ樹脂硬化層のFT−IRを図2(a)に、実施例1で得られたAuの単結晶が析出した前記積層体の前記Au単結晶のFT−IRを図2(b)に示す。図2(b)に示すように、実施例1のIRスペクトル中に1725cm-1のピークが出現した。この波長のピークは、Auに由来するピークであると考えられることから、実施例1では、Auが析出していることが確認できた。また、実施例1でAuの単結晶が析出した前記積層体のSEM写真を図3(a)〜(d)に、光学顕微鏡写真を図3(e)および(f)に示す。図3に示すように手作業でエポキシ樹脂硬化層を製造すると、得られるAu単結晶のサイズが小さくなることが確認できた。また、このAu単結晶には、褶曲表面が確認できた。
【実施例5】
【0036】
エポキシ樹脂と硬化剤との混合物を、ピペットを用いて塗布する代わりに、エポキシ樹脂と硬化剤との混合物(0.3mL)をガラススライド(18mm×18mm)上に置き、スピンコーティング(3000回転/分)により塗布した以外は、実施例1と同様にして行った。Auの単結晶が析出した前記積層体のSEM写真を図4(a)〜(d)に、光学顕微鏡写真を図4(e)および(f)に示す。図4に示すように、スピンコーティング法を用いてエポキシ樹脂硬化層を製造すると、得られるAu単結晶のサイズが大きくなることが確認できた。また、このAu単結晶には、褶曲表面が見られないことも確認できた。
【実施例6】
【0037】
5mMのHAuCl4水溶液の溶媒を水の代わりに0.1M酢酸溶液を用い、pHを2.9にした以外は、実施例1と同様にして行った。Auの単結晶が析出した前記積層体のSEM写真を図5(a)〜(d)に、光学顕微鏡写真を図5(e)〜(h)に示す。図5に示すように、pH2.9のHAuCl4溶液を用いた場合、透明なAuの薄板状単結晶が析出することを確認できた。
【実施例7】
【0038】
エポキシ樹脂と硬化剤とアセトンとの混合物を用いる代わりに、エポキシ樹脂と硬化剤との混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。Auの単結晶が析出した前記積層体のSEM写真を図6(a)〜(b)に示す。図6に示すように、エポキシ樹脂硬化層を、溶媒を用いずにエポキシ樹脂と硬化剤とから形成した場合であっても、Au単結晶が析出することを確認した。
【0039】
(比較例1)
タンニン層を形成しない以外は、実施例1と同様にして行った。得られたAu結晶のSEM写真を図7(a)に示す。
【0040】
(比較例2)
タンニン層を形成しない以外は、実施例3と同様にして行った。得られたAu結晶のSEM写真を図7(b)に示す。
【0041】
実施例1および3で得られたAu単結晶のSEM写真を、それぞれ図7(c)および(d)に示す。図7(a)〜(d)に示すように、エポキシ樹脂硬化膜の上にタンニン層が配置されていない比較例においては、ほとんど金属の結晶が析出していないことが確認できた。一方、エポキシ樹脂硬化層の上にタンニン層が配置されている実施例においては、金属の単結晶が析出していることが確認できた。
【0042】
[Au単結晶のXRDパターン]
実施例1で得られたAu単結晶のXRDパターンを図8(a)に、比較例1で得られたAu結晶のXRDパターンを図8(b)に示す。図8に示すように、実施例1においては{111}結晶が形成していることが確認できた。また、エポキシ樹脂硬化膜の上にタンニン層が配置されている実施例1の場合には、{111}結晶を示すピーク強度が大きく、すなわち高品質の単結晶が形成していることが確認できた。
【0043】
[Au単結晶のTEM]
実施例1〜3のそれぞれで得られたAu単結晶のTEMを図9(a)、(b)および(c)のそれぞれに示す。また、実施例1のSAEDパターンを図9(d)に示す。図9(a)〜(c)に示すように、得られたAu単結晶が透明であることを確認できた。また、図9(d)に示される六角形の対象回折パターンから、得られたAu単結晶が平らな{111}結晶面の金単結晶であることが確認できた。更に実施例2と3のナノ結晶についても同様の結晶形態であることが確認できた。
【実施例8】
【0044】
HAuCl4水溶液の濃度を5mMの代わりに20mMにした以外は、実施例1と同様にして行った。Auの単結晶が析出した前記積層体のSEM写真(低拡大率)を図10(a)および(b)に、SEM写真(高拡大率)を図10(c)および(d)に示す。図10(a)〜(d)に示すように、Auを含む塩の溶液の濃度を高くすると、分岐状のAuの単結晶が得られることが確認できた。
【実施例9】
【0045】
HAuCl4水溶液の濃度を5mMの代わりに3mMにし、HAuCl4水溶液中の浸漬温度を60℃の代わりに室温にした以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図11(a)に、XRDパターンを図12(a)に示す。
【実施例10】
【0046】
HAuCl4水溶液の濃度を5mMの代わりに3mMにし、HAuCl4水溶液中の浸漬温度を60℃の代わりに40℃にした以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図11(b)に、XRDパターンを図12(b)に示す。
【実施例11】
【0047】
HAuCl4水溶液の濃度を5mMの代わりに3mMにした以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図11(c)に、XRDパターンを図12(c)に示す。
【実施例12】
【0048】
HAuCl4水溶液の濃度を5mMの代わりに3mMにし、HAuCl4水溶液中の浸漬温度を60℃の代わりに80℃にした以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図11(d)に、XRDパターンを図12(d)に示す。
【0049】
図11および図12に示すように、金属を含む塩がHAuCl4の場合、HAuCl4水溶液中の浸漬温度は60℃が好ましいことが確認できた。
【実施例13】
【0050】
HAuCl4水溶液の濃度を5mMの代わりに3mMにした以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図13(a)に、XRDパターンを図14(a)に示す。
【実施例14】
【0051】
5mMのHAuCl4水溶液(pH1)の代わりに3mMのHAuCl4水溶液(希水酸化ナトリウム水溶液によりpH調整。pH5)を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図13(b)に、XRDパターンを図14(b)に示す。
【実施例15】
【0052】
HAuCl4水溶液の濃度を5mMの代わりに3mMにし、HAuCl4水溶液のpHを1の代わりに6にした(pHを希水酸化ナトリウム水溶液により調整)以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図13(c)に、XRDパターンを図14(c)に示す。
【実施例16】
【0053】
HAuCl4水溶液の濃度を5mMの代わりに3mMにし、HAuCl4水溶液のpHを1の代わりに7にした(pHを希水酸化ナトリウム水溶液により調整)以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図13(d)に、XRDパターンを図14(d)に示す。
【0054】
図13および図14に示すように、金属を含む塩がHAuCl4の場合、HAuCl4水溶液中のpHが6以下で金単結晶が生成することが確認できた。
【実施例17】
【0055】
ガラススライドの代わりにグラスファイバー(寸法:1.5cm×2cm、直径15μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。グラスファイバー上に配置されたエポキシ樹脂硬化層の光学顕微鏡写真を図15(a)に、エポキシ硬化樹脂層上に配置されたタンニン層の光学顕微鏡写真を図15(b)に、前記タンニン層上に析出したAu単結晶の光学顕微鏡写真を図15(c)に示す。図15に示すように、グラスファイバー上に金単結晶を製造できることが確認できた。
【0056】
[Au単結晶の高さ]
実施例1および2で得られたAu単結晶の高さを、AFMにより測定した。実施例1で得られたAu単結晶のAFM測定結果を図16に示す。図16(a)は、測定したAu単結晶と、測定した断面の取り方を示す。図16(a)中の「a」の線に沿って測定したAFM測定結果を図16(b)に、「b」の線に沿って沿って測定したAFM測定結果を図16(c)に示す。図16(d)は、得られたAu単結晶の全体像を示す。図16(b)および図16(c)に示すように、単結晶の高さは120nmと40nmであることが確認できた。また、図16(d)に示すように、ガラススライド上に薄いAu薄膜があり、その上に透明な板状Au単結晶が析出していることが確認できた。
【0057】
また、実施例2で得られたAu単結晶のAFM測定結果を図17および図18に示す。図17(a)は、測定したAu単結晶と、測定した断面の取り方を示す。図17(a)中の「a」の線に沿って測定したAFM測定結果を図17(b)に、「b」の線に沿って沿って測定したAFM測定結果を図17(c)に示す。また、図18(a)中の「a」の線に沿って測定したAFM測定結果を図18(b)に、「b」の線に沿って沿って測定したAFM測定結果を図18(c)に示す。図17(b)より単結晶の高さは78nm、図17(c)より単結晶の高さは28nmであることが確認できた。また、図18(b)より単結晶の高さは75nmと40nm、図18(c)より単結晶の高さは70nmと65nmであることが確認できた。
【0058】
[Au単結晶の共焦点レーザー顕微鏡で測定した高さ]
実施例1で得られたAu単結晶について、CLSM測定した。その結果、得られたAu単結晶の平均高さは、100±10nmであった。
【0059】
[Au単結晶のUV特性]
実施例3で得られたAu単結晶のUV特性を測定した。得られたUV特性を図19に示す。図19に示すように、得られたAu単結晶は、可視光において光を透過することが確認できた。
【実施例18】
【0060】
5mMのHAuCl4水溶液(pH1)の代わりに0.2mMのHAuCl4水溶液(pH1)を用い、HAuCl4水溶液中にタンニン層が形成された積層体を浸漬する時間を24時間の代わりに48時間にした以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図20に示す。
【0061】
[Au単結晶のUV特性]
実施例18で得られたAu単結晶のUV特性を測定した。得られたUV特性を図21に示す。図21に示すように、得られたAu単結晶は、可視光において光を透過することが確認できた。
【実施例19】
【0062】
エポキシ樹脂(エピコート(登録商標)828、ジャパンエポキシレジン株式会社、1g)とポリアミン(エポメート(登録商標)B002、ジャパンエポキシレジン株式会社、1g)とを無水アセトン(0.5mL)中に溶解させ、得られた溶液を7分間真空下で脱気した。この溶液(1mL)を、ピペットを用いてガラススライド(1.25cm×3cm)上に一面にのばした。溶液が塗布されたガラススライドを、30℃で24時間、次いで、150℃で4時間加熱して、ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を得た。
【0063】
一方、タンニン(ミモザタンニン)の10%(飽和)水溶液を過塩素酸を用いてpHを1に調整した。pH調整後、ろ過して不溶物を溶液から除去した。このタンニン溶液中に、ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を、60℃で24時間浸漬した。次いで、前記ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を水で洗浄し、60℃で1時間乾燥した。これにより、前記ガラススライド上に形成されたエポキシ樹脂硬化層の上に、タンニン層が形成された積層体を得た。
【0064】
100mMのAgNO3のエチレングリコール溶液(pH調整なし。15mL)に、前記ガラススライド上に形成されたエポキシ樹脂硬化層の上にタンニン層が形成された積層体を80℃で24時間浸漬した。前記積層体の前記タンニン層上には、青色のAgの単結晶が析出していた。Agの単結晶が析出した前記積層体の顕微鏡写真を図22(a)および(b)に示す。また、前記Ag単結晶のSEM写真を図22(c)に、Ag単結晶のXRDパターンを図22(d)に示す。図22に示すように、青色の銀単結晶を製造できることが確認できた。
【実施例20】
【0065】
100mMのAgNO3のエチレングリコール溶液の代わりに、AgNO3を水およびエチレングリコールの混合物(容積比は、水:エチレングリコール=1:1)に溶解させた、100mMのAgNO3のエチレングリコールおよび水溶液を用いた以外は、実施例18と同様にして行った。緑色のAgの単結晶が析出した前記積層体の写真を図23(a)および(b)に示す。また、Ag単結晶のXRDパターンを図23(c)に示す。図23に示すように、緑色の銀単結晶を製造できることが確認できた。
【実施例21】
【0066】
エポキシ樹脂(急速硬化エポキシ系強力接着剤アラルダイト(登録商標)ラピッド主剤、ハンツマン・インターナショナルLLC社、1g)とポリアミドアミン(急速硬化エポキシ系強力接着剤アラルダイト(登録商標)ラピッド硬化剤、ハンツマン・インターナショナルLLC社、、1g)とを無水アセトン(1mL)中に溶解させ、得られた溶液を7分間真空下で脱気した。この溶液(1mL)を、ピペットを用いてガラススライド(2.6cm×7.6cm)上に一面にのばした。溶液が塗布されたガラススライドを、30℃で24時間、次いで、60℃で4時間加熱して、ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を得た。このガラススライドを1.25cm×3cmに切断した。
【0067】
一方、タンニン(ミモザタンニン)の10%(飽和)水溶液を過塩素酸を用いてpHを1に調整した。pH調整後、ろ過して不溶物を溶液から除去した。このタンニン溶液中に、ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を、60℃で24時間浸漬した。次いで、前記ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を水で洗浄し、60℃で1時間乾燥した。これにより、前記ガラススライド上に形成されたエポキシ樹脂硬化層の上に、タンニン層が形成された積層体を得た。
【0068】
50mMのAgNO3の水溶液(pHを過塩素酸により調整。pH1、15mL)に、前記ガラススライド上に形成されたエポキシ樹脂硬化層の上に、タンニン層が形成された積層体を80℃で24時間浸漬した。前記積層体の前記タンニン層上には、Agの単結晶が析出していた。Agの単結晶が析出した前記積層体の写真を図24(a)および(b)に示す。また、Ag単結晶のXRDパターンを図24(c)に示す。図24に示すように、銀単結晶を製造できることが確認できた。
【実施例22】
【0069】
50mMのAgNO3の水溶液の代わりに、100mMのAgNO3エチレングリコール溶液を用い、AgNO3溶液に、前記ガラススライド上に形成されたエポキシ樹脂硬化層の上にタンニン層が形成された積層体を浸漬する温度を、80℃の代わりに100℃にし、浸漬時間を24時間の代わりに10分にした以外は、実施例21と同様にして行った。Agの単結晶が析出した前記積層体の写真を図25(a)〜(c)に示す。また、Ag単結晶のXRDパターンを図25(d)に示す。図25に示すように、銀単結晶を製造できることが確認できた。
【実施例23】
【0070】
50mMのAgNO3の水溶液の代わりに、100mMのAgNO3エチレングリコール溶液を用い、AgNO3溶液に、前記ガラススライド上に形成されたエポキシ樹脂硬化層の上にタンニン層が形成された積層体を浸漬する温度を、80℃の代わりに120℃にし、浸漬時間を24時間の代わりに10分にした以外は、実施例21と同様にして行った。Agの単結晶が析出した前記積層体の写真を図26(a)〜(c)に示す。また、Ag単結晶のXRDパターンを図26(d)に示す。図26に示すように、銀単結晶を製造できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の方法は、金属の回収方法への適用が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、Au単結晶の写真である。(a)は実施例1のAu単結晶、(b)は実施例2のAu単結晶、(c)は実施例3のAu単結晶、(d)は実施例4のAu単結晶の写真である。
【図2】図2は、FT−IRのチャートである。(a)は、実施例1中で作製したガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体の前記エポキシ樹脂硬化層のFT−IRであり、(b)は、実施例1で得られたAuの単結晶が析出した前記積層体の前記Au単結晶のFT−IRである。
【図3】図3は、実施例1で得られたAu単結晶のSEM写真および光学顕微鏡写真である。(a)〜(d)はSEM写真であり、(e)および(f)は光学顕微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例5で得られたAu単結晶のSEM写真および光学顕微鏡写真である。(a)〜(d)はSEM写真であり、(e)および(f)は光学顕微鏡写真である。
【図5】図5は、実施例6で得られたAu単結晶のSEM写真および光学顕微鏡写真である。(a)〜(d)はSEM写真であり、(e)〜(h)は光学顕微鏡写真である。
【図6】図6は、実施例7で得られたAu単結晶のSEM写真である。
【図7】図7は、Au結晶のSEM写真である。(a)は比較例1のAu結晶、(b)は比較例2のAu結晶、(c)は実施例1のAu単結晶、(d)は実施例3のAu単結晶のSEM写真である。
【図8】図8は,Au結晶のXRDパターンである。(a)は実施例1で得られたAu単結晶のXRDパターン、(b)は比較例1で得られたAu結晶のXRDパターンを示す。
【図9】図9は、Au単結晶のTEM写真である。(a)は実施例1の、(b)は実施例2の、(c)は実施例3のAu単結晶のTEM写真である。(d)は実施例1のAu単結晶のSAEDパターンである。
【図10】図10は、実施例8のAu単結晶のSEM写真である。(a)および(b)は低拡大率の、(c)および(d)は高拡大率のSEM写真である。
【図11】図11は、Au単結晶のSEM写真である。(a)は実施例9の、(b)は実施例10の、(c)は実施例11の、(d)は実施例12のAu単結晶のSEM写真である。
【図12】図12は、Au単結晶のXRDパターンである。(a)は実施例9の、(b)は実施例10の、(c)は実施例11の、(d)は実施例12のAu単結晶のXRDパターンである。
【図13】図13は、Au単結晶のSEM写真である。(a)は実施例13の、(b)は実施例14の、(c)は実施例15の、(d)は実施例16のAu単結晶のSEM写真である。
【図14】図14は、Au単結晶のXRDパターンである。(a)は実施例13の、(b)は実施例14の、(c)は実施例15の、(d)は実施例16のAu単結晶のXRDパターンである。
【図15】図15は、実施例17中の光学顕微鏡写真である。(a)はグラスファイバー上に配置されたエポキシ樹脂硬化層の光学顕微鏡写真、(b)はエポキシ硬化樹脂層上に配置されたタンニン層の光学顕微鏡写真、(c)は前記タンニン層上に析出したAu単結晶の光学顕微鏡写真を示す。
【図16】図16は、実施例1で得られたAu単結晶のAFM測定結果である。(a)は、測定したAu単結晶と、測定した断面の取り方を示す。(b)は、図16(a)中の「a」の線に沿って測定したAFM測定結果、(c)は、「b]の線に沿って沿って測定したAFM測定結果である。(d)は、得られたAu単結晶の全体像である。
【図17】図17は、実施例2で得られたAu単結晶のAFM測定結果である。(a)は、測定したAu単結晶と、測定した断面の取り方を示す。(b)は、図17(a)中の「a」の線に沿って測定したAFM測定結果、(c)は、「b」の線に沿って沿って測定したAFM測定結果である。
【図18】図18は、実施例2で得られた別のAu単結晶のAFM測定結果である。(a)は、測定したAu単結晶と、測定した断面の取り方を示す。(b)は、図18(a)中の「a」の線に沿って測定したAFM測定結果、(c)は、「b」の線に沿って沿って測定したAFM測定結果である。
【図19】図19は、実施例3で得られたAu単結晶のUV−visチャートを示す。
【図20】図20は、実施例18で得られたAu単結晶のSEM写真である。
【図21】図21は、実施例18で得られたAu単結晶のUV−visチャートを示す。
【図22】図22は、実施例19で得られたAg単結晶に関するデータである。(a)および(b)は、実施例19で得られたAg単結晶の顕微鏡写真、(c)は実施例19で得られたAg単結晶のSEM写真、(d)は実施例19で得られたAg単結晶のXRDパターンである。
【図23】図23は、実施例20で得られたAg単結晶に関するデータである。(a)および(b)は、実施例20で得られたAg単結晶の顕微鏡写真、(c)は実施例20で得られたAg単結晶のXRDパターンである。
【図24】図24は、実施例21で得られたAg単結晶に関するデータである。(a)および(b)は、実施例21で得られたAg単結晶の顕微鏡写真、(c)は実施例21で得られたAg単結晶のXRDパターンである。
【図25】図25は、実施例22で得られたAg単結晶に関するデータである。(a)〜(c)は、実施例22で得られたAg単結晶の顕微鏡写真、(d)は実施例22で得られたAg単結晶のXRDパターンである。
【図26】図26は、実施例23で得られたAg単結晶に関するデータである。(a)〜(c)は、実施例23で得られたAg単結晶の顕微鏡写真、(d)は実施例23で得られたAg単結晶のXRDパターンである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の単結晶を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の単結晶には、各種エレクトロニクス技術に有用な装置または素子において、様々な用途が見出されており(例えば、特許文献1参照)、金属単結晶の製造方法についても研究が進められている。例えば金のナノ粒子の製造方法としては、溶液中、金イオンを還元することにより金ナノ粒子を得る方法が知られている。この製造方法によれば、得られる金ナノ粒子は溶液中に分散しているため、他の材料表面に前記金ナノ粒子を固定化するのが容易であるという利点がある。また、金の板状単結晶の製造方法としては、金の塩(例えばHAuCl4)の水溶液にクエン酸水溶液を低温で添加し、数日間で結晶を成長させる方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この製造方法によれば、数μmの大きさの金の単結晶が得られている。別の板状の金の単結晶の製造方法としては、アンモニウム型ポリマー存在下に金の塩の水溶液を100℃で加熱することにより、5μm程度の大きさの金の板状単結晶を得ている(例えば、非特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−136551号公報
【非特許文献1】ダミンダ(Daminda)H.ら、「光学的に透明なAU[111]基板:高分解能走査トンネル顕微鏡用平坦な金なの粒子プラットフォーム(Optically Transparent Au[111] Substrates: Flat Gold Nanoparticle Platforms for High-Resolution Scanning Tunneling Microscopy)」、J.Am.Chem.Soc.,2006年、128号、p.6052−6053。
【非特許文献2】ヨンラン・ルー(Yonglan Luo)、「単結晶金ナノプレートの大スケール合成(Large-scale preparation of single-crystalline gold nanoplates)」、Mat.Lett.,2007年、61号、p.1346−1349。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来は、基板上に金属単結晶を製造する方法は知られていなかった。本発明は、基板上に金属の単結晶を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、金属の単結晶を製造する方法であって、エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させ、前記タンニン層の表面に前記金属の単結晶を析出させる工程を含む。
【発明の効果】
【0005】
本発明の製造方法により、基板上に金属の単結晶を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の製造方法において、金属とは、例えば元素の周期律表において、第9族、第10族または第11族の元素であり、Au、Ag、Pt、Pd、Co、NiおよびCuからなる群から選択される1以上であるのが好ましく、Au、Ag、Pt、PdおよびCuからなる群から選択される1以上であるのがより好ましい。
【0007】
本発明の製造方法において、まず、エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層を準備する。
【0008】
前記エポキシ樹脂硬化層としては、例えば、エポキシ樹脂と硬化剤とを混合し、加熱して得られた層が挙げられる。このエポキシ樹脂硬化層は、熱硬化性エポキシ樹脂(例えば二液型の一般用接着剤)と硬化剤と、任意に溶媒とを混合し、例えば基板の支持体上に塗布し、それを加熱して前記支持体上に前記エポキシ硬化層(基板)を形成して得ることができる。得られた支持体とエポキシ硬化層(基板)との積層体は、そのまま、次の工程において用いてもよい。また、前記エポキシ硬化層を前記積層体から剥がして得た、前記エポキシ硬化層(基板)の単層を、次の工程において用いてもよい。前記支持体上へのエポキシ樹脂と硬化剤との混合物の塗布は、手作業で、または機械を用いて、例えばスピンコーティング等によって行ってもよい。前記塗布を手作業で行うと、得られる金属の単結晶の大きさは小さくなる傾向がみられる。また、前記塗布をスピンコーティングで行うと、得られる金属の単結晶の大きさは大きくなる傾向がみられる。前記支持体は、例えば、前記エポキシ樹脂と硬化剤との混合物を塗布し、かつ、加熱に適する材料の基材が挙げられる。前記支持体は、例えば、ガラス板、ガラスファイバー板、ポリエチレン、ポリプロピレン、PETなどのプラスチック基材、ステンレス等の金属板、石英、雲母等の板が挙げられる。
【0009】
前記エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック樹脂、トリス−ヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、含複素環エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられ、中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。前記エポキシ樹脂は、取り扱いが容易になる観点から、室温において液体である樹脂が好ましい。
【0010】
前記室温において液体であるエポキシ樹脂としては、例えば、jER(登録商標)(旧エピコート)825、同827、同828、同828EL、同828XA、同834、同801、同801P、同802、同802XA、同815、同815XA、同816A、同819、同806、同806L、同807(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製)、アラルダイト(登録商標)CY−182、同192、同184(ハンツマン・インターナショナルLLC社製)等が挙げられる。
【0011】
前記硬化剤は、例えば、脂肪族アミン(例えば、未変性脂環式アミン、変性脂環式アミンなど)、芳香族アミン(例えば、ポリアミドアミンなど)などが挙げられ、中でも変性脂環式アミンまたはポリアミドアミンであるのが好ましい。
【0012】
前記変性脂環式アミンとしては、エポメート(登録商標)B001、エポメート(登録商標)B002、エポメート(登録商標)B002W、エポメート(登録商標)B002R、エポメート(登録商標)C002、エポメート(登録商標)N001、エポメート(登録商標)N002、エポメート(登録商標)P002、エポメート(登録商標)RX2(以上、ジャパンエポキシレジン株式会社製)等が挙げられる。
【0013】
前記エポキシ樹脂と硬化剤と任意に混合する溶媒としては、例えば、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤とを溶解することが可能な溶媒である。そのような溶媒としては、例えば有機溶媒であり、具体的には、ケトン類(例えば、アセトン)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール等)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル等)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)が挙げられる。
【0014】
前記タンニン層に含まれるタンニンとしては、カシワ、ナラなど(ブナ科)の樹皮、ハゼ、ルルデ、ウルシなど(ウルシ科)のは、カリロク(熱帯アジア産、シフンシ科)の果実などに存在し、多数のフェノール性水酸基を持つ芳香族化合物の総称で、水で処理したとき、水溶液は収斂性を示す物質である。前記タンニンとしては、ピロガロール系の加水分解型タンニンと、カテコール系の縮合型タンニンとが含まれ、縮合型タンニンが好ましい。また、前記タンニンとしては、低分子量および高分子量のいずれのタンニンであってもよい。前記低分子量のタンニンとしては、例えば、タンニン酸(加水分解型タンニン)等が挙げられ、前記高分子量のタンニンとしては、例えば、ケブラチョタンニン、ミモザタンニン、ワットルタンニン等の心材や樹皮に含まれる高分子量タンニン;バナナ、リンゴ、カキ等の未熟果実に含まれる高分子量タンニン;キャブロ豆、ブドウ等の未熟なサヤや種子に含まれる高分子量タンニンが挙げられる。これらのタンニンは1種類でも2種類以上を併用して用いてもよい。
【0015】
前記タンニンは、原料から抽出後、乾燥して粉末として用いてもよい。または、原料から抽出して得られた抽出液を、そのままタンニン水溶液として用いてもよい。また、前記タンニンは、酸性(例えば、過塩素酸を用いて酸性化)水に溶解して溶液を調製し、それをタンニン水溶液として用いてもよい。
【0016】
原料として樹皮を用いる場合、その樹木の生産地は特に限定されない。例えばミモザの生産地としては、南アフリカ共和国、東アフリカ地域、ブラジル、中国等が挙げられ、南アフリカ共和国が好ましい。例えばケブラチョの生産地としては、南米が挙げられ、アルゼンチン北部からパラグアイ西部が好ましい。
【0017】
前記エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層は、例えば、前記エポキシ樹脂硬化層を、タンニンの溶液中に浸漬させ、その後乾燥させることにより、製造することができる。前記浸漬は、例えば室温〜加熱条件下、25〜90℃で行うのが好ましい。また、前記浸漬は、例えば3時間以上、12〜48時間行うのが好ましい。なお、前記浸漬の後、乾燥の前に、前記エポキシ樹脂硬化層を、水洗してもよい。前記エポキシ樹脂硬化層の表面に固定されていないタンニンを取り除くことができるため、好ましいからである。または、前記エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層は、例えば、前記エポキシ樹脂硬化層の上に、タンニンの溶液を塗布し、乾燥させることにより製造してもよい。
【0018】
本発明の製造方法においては、前記のように、エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の表面に、金属を含む塩の溶液を接触させ、前記タンニン層の表面に前記金属の単結晶を析出させる工程を含む。
【0019】
前記金属を含む塩としては、前記金属がAuの場合、HAuCl4、AuCl3、AuCl、AuBr3等が挙げられ、前記金属がAgの場合、AgNO3、CH3CO2Ag、AgBr、AgCl、Ag2CO3等が挙げられ、前記金属がPtの場合、PtCl、PtBr、Pt2O等が挙げられ、前記金属がPdの場合、PdBr2、PdCl2、Pd(CH3CO2)2等が挙げられ、前記金属がCoの場合、CoCl2、CoBr2、(CH3CO2)2Co等が挙げられ、前記金属がNiの場合、NiCl2、CoBr2、(CH3CO2)2Co等が挙げられ、前記金属がCuの場合、CuCl2、CuCl、CuBr2、CuBr、(CH3CO2)2Cu、CH3CO2Cu等が挙げられる。
【0020】
前記金属を含む塩の溶液の溶媒は、例えば、前記金属を含む塩を溶解させることが可能な溶媒である。具体的には、前記溶媒は、水、緩衝液、アルコール(例えば、エチレングリコール等)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、イオン液体類(例えば、N−メチル−N−ブチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート等)等が挙げられる。前記金属を含む塩の溶媒が水または緩衝液である場合、前記金属を含む塩の溶液のpHは、例えば1〜6の範囲であり、好ましくは1〜5の範囲である。前記溶液のpHを調整するため、前記金属を含む塩の溶液の溶媒が水の場合、前記溶媒は、酸(例えば、酢酸、塩化水素、過塩素酸等)を含む水、塩基(例えば、水酸化ナトリウム等)を含む水であってもよい。また、前記金属を含む塩の溶液の溶媒が緩衝液の場合、前記溶媒は、適切なpHを有する緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液等)であってもよい。
【0021】
前記金属を含む塩の溶液の濃度は、例えば、0.01〜500mM、好ましくは0.05〜300mM、より好ましくは0.1〜100mMである。具体的には、前記金属を含む塩の前記金属がAuである場合、例えば、0.01〜50mM、好ましくは0.05〜30mM、より好ましくは0.1〜20mMである。前記金属を含む塩の前記金属がAuである場合、濃度が高くなると、得られる金属の単結晶が、分岐状になる傾向がある。また、前記金属を含む塩の前記金属がAgである場合、例えば、0.03〜500mM、好ましくは0.05〜300mM、より好ましくは0.1〜100mMである。前記金属を含む塩の前記金属がAgである場合、濃度が高くなると、得られる金属の単結晶の形状が均一にならない傾向がある。
【0022】
前記タンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させる工程は、前記溶液中に前記エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層を浸漬させたり、前記エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の上に前記溶液を塗布したりして、行うことができる。
【0023】
前記溶液中に前記エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層を浸漬させる場合、前記接触は、例えば室温〜加熱条件下、25〜120℃で行うのが好ましい。具体的には、前記金属を含む塩の前記金属がAuである場合、前記接触の温度は、例えば25〜90℃、好ましくは35〜80℃である。また、前記金属を含む塩の前記金属がAgである場合、前記接触の温度は、例えば25〜120℃、好ましくは30〜100℃である。前記浸漬は、例えば1分以上、10分〜48時間行うのが好ましい。
【0024】
本発明の方法においては、前記タンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させ、金属の単結晶を析出させる。金属の単結晶を析出させる従来知られた方法は、前記のように、水溶液中で金属を還元させ、析出させている。これに対し、本発明は、固体と液体の界面を利用した新規な方法である。
【0025】
さらに本発明は、金属を回収する方法であって、エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させ、前記タンニン層の表面に前記金属の単結晶を析出させる工程を含む。
【0026】
前記回収方法における、前記エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させる工程は、前記金属の単結晶を析出させる方法における、前記エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させる工程と同様に行うことができる。前記回収方法によれば、金属を容易に回収することが可能であり、好ましい。
【0027】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例により限定されない。
本明細書の記載において、以下の略語を使用する。
SEM:走査電子顕微鏡
TME:透過電子顕微鏡
XRD: X線回折計
SAED:制限視野電子回折図形
AFM:原子間力顕微鏡
CLSM:共焦点レーザー顕微鏡
UV:紫外線
【0028】
本明細書において物性を測定するため、以下の機器を用いた。
SEM:日立走査電子顕微鏡S−3000N(日立製作所製)
TEM:日立透過電子顕微鏡8100−T(日立製作所製)
顕微鏡:顕微鏡BX−RL2(オリンパス製)
FT−IR:スペクトルワン(パーキンエルマー社製)
XRD:マルチフフレックス(株式会社リガク製)
AFM:原子間力顕微鏡SPA−400(SII製)
CLSM:共焦点レーザー顕微鏡VK−9510(キーエンス製)
UV−vis:U−2810(日立ハイテクロノジーズ製)
【実施例1】
【0029】
エポキシ樹脂(急速硬化エポキシ系強力接着剤アラルダイト(登録商標)ラピッド主剤、ハンツマン・インターナショナルLLC社、1g)とポリアミドアミン(急速硬化エポキシ系強力接着剤アラルダイト(登録商標)ラピッド硬化剤、ハンツマン・インターナショナルLLC社、、1g)とを無水アセトン(1mL)中に溶解させ、得られた溶液を7分間真空下で脱気した。この溶液(1mL)を、ピペットを用いてガラススライド(2.6cm×7.6cm)上に一面にのばした。溶液が塗布されたガラススライドを、30℃で24時間、次いで、60℃で4時間加熱して、ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を得た。このガラススライドを1.25cm×3cmに切断した。
【0030】
一方、タンニン(ミモザタンニン)の10%(飽和)水溶液を過塩素酸を用いてpHを1に調整した。pH調整後、ろ過して不溶物を溶液から除去した。このタンニン溶液中に、ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を、60℃で24時間浸漬した。次いで、前記ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を水で洗浄し、60℃で1時間乾燥した。これにより、前記ガラススライド上に形成されたエポキシ樹脂硬化層の上に、タンニン層が形成された積層体を得た。
【0031】
5mMのHAuCl4水溶液(pHを過塩素酸により調整。pH1、15mL)に、前記ガラススライド上に形成されたエポキシ樹脂硬化層の上にタンニン層が形成された積層体を60℃で24時間浸漬した。前記積層体の前記タンニン層上には、Auの単結晶が析出していた。Auの単結晶が析出した前記積層体の写真を図1(a)に示す。
【実施例2】
【0032】
5mMのHAuCl4水溶液(pH1)の代わりに5mMのHAuCl4水溶液(希水酸化ナトリウム水溶液によりpHを調整。pH5、15mL)を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。Auの単結晶が析出した前記積層体の写真を図1(b)に示す。
【実施例3】
【0033】
溶液が塗布されたガラススライドを、30℃で24時間、次いで、60℃で4時間加熱する代わりに、30℃で24時間、次いで、150℃で4時間加熱した以外は、実施例1と同様にして行った。Auの単結晶が析出した前記積層体の写真を図1(c)に示す。
【実施例4】
【0034】
5mMのHAuCl4水溶液の溶媒を水の代わりに酢酸緩衝液を用い、pHを5にし、かつ、溶液が塗布されたガラススライドを、30℃で24時間、次いで、60℃で4時間加熱する代わりに、30℃で24時間、次いで、150℃で4時間加熱した以外は、実施例1と同様にして行った。Auの単結晶が析出した前記積層体の写真を図1(d)に示す。
【0035】
[Au単結晶のFT−IR]
実施例1中で作製したガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体の前記エポキシ樹脂硬化層のFT−IRを図2(a)に、実施例1で得られたAuの単結晶が析出した前記積層体の前記Au単結晶のFT−IRを図2(b)に示す。図2(b)に示すように、実施例1のIRスペクトル中に1725cm-1のピークが出現した。この波長のピークは、Auに由来するピークであると考えられることから、実施例1では、Auが析出していることが確認できた。また、実施例1でAuの単結晶が析出した前記積層体のSEM写真を図3(a)〜(d)に、光学顕微鏡写真を図3(e)および(f)に示す。図3に示すように手作業でエポキシ樹脂硬化層を製造すると、得られるAu単結晶のサイズが小さくなることが確認できた。また、このAu単結晶には、褶曲表面が確認できた。
【実施例5】
【0036】
エポキシ樹脂と硬化剤との混合物を、ピペットを用いて塗布する代わりに、エポキシ樹脂と硬化剤との混合物(0.3mL)をガラススライド(18mm×18mm)上に置き、スピンコーティング(3000回転/分)により塗布した以外は、実施例1と同様にして行った。Auの単結晶が析出した前記積層体のSEM写真を図4(a)〜(d)に、光学顕微鏡写真を図4(e)および(f)に示す。図4に示すように、スピンコーティング法を用いてエポキシ樹脂硬化層を製造すると、得られるAu単結晶のサイズが大きくなることが確認できた。また、このAu単結晶には、褶曲表面が見られないことも確認できた。
【実施例6】
【0037】
5mMのHAuCl4水溶液の溶媒を水の代わりに0.1M酢酸溶液を用い、pHを2.9にした以外は、実施例1と同様にして行った。Auの単結晶が析出した前記積層体のSEM写真を図5(a)〜(d)に、光学顕微鏡写真を図5(e)〜(h)に示す。図5に示すように、pH2.9のHAuCl4溶液を用いた場合、透明なAuの薄板状単結晶が析出することを確認できた。
【実施例7】
【0038】
エポキシ樹脂と硬化剤とアセトンとの混合物を用いる代わりに、エポキシ樹脂と硬化剤との混合物を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。Auの単結晶が析出した前記積層体のSEM写真を図6(a)〜(b)に示す。図6に示すように、エポキシ樹脂硬化層を、溶媒を用いずにエポキシ樹脂と硬化剤とから形成した場合であっても、Au単結晶が析出することを確認した。
【0039】
(比較例1)
タンニン層を形成しない以外は、実施例1と同様にして行った。得られたAu結晶のSEM写真を図7(a)に示す。
【0040】
(比較例2)
タンニン層を形成しない以外は、実施例3と同様にして行った。得られたAu結晶のSEM写真を図7(b)に示す。
【0041】
実施例1および3で得られたAu単結晶のSEM写真を、それぞれ図7(c)および(d)に示す。図7(a)〜(d)に示すように、エポキシ樹脂硬化膜の上にタンニン層が配置されていない比較例においては、ほとんど金属の結晶が析出していないことが確認できた。一方、エポキシ樹脂硬化層の上にタンニン層が配置されている実施例においては、金属の単結晶が析出していることが確認できた。
【0042】
[Au単結晶のXRDパターン]
実施例1で得られたAu単結晶のXRDパターンを図8(a)に、比較例1で得られたAu結晶のXRDパターンを図8(b)に示す。図8に示すように、実施例1においては{111}結晶が形成していることが確認できた。また、エポキシ樹脂硬化膜の上にタンニン層が配置されている実施例1の場合には、{111}結晶を示すピーク強度が大きく、すなわち高品質の単結晶が形成していることが確認できた。
【0043】
[Au単結晶のTEM]
実施例1〜3のそれぞれで得られたAu単結晶のTEMを図9(a)、(b)および(c)のそれぞれに示す。また、実施例1のSAEDパターンを図9(d)に示す。図9(a)〜(c)に示すように、得られたAu単結晶が透明であることを確認できた。また、図9(d)に示される六角形の対象回折パターンから、得られたAu単結晶が平らな{111}結晶面の金単結晶であることが確認できた。更に実施例2と3のナノ結晶についても同様の結晶形態であることが確認できた。
【実施例8】
【0044】
HAuCl4水溶液の濃度を5mMの代わりに20mMにした以外は、実施例1と同様にして行った。Auの単結晶が析出した前記積層体のSEM写真(低拡大率)を図10(a)および(b)に、SEM写真(高拡大率)を図10(c)および(d)に示す。図10(a)〜(d)に示すように、Auを含む塩の溶液の濃度を高くすると、分岐状のAuの単結晶が得られることが確認できた。
【実施例9】
【0045】
HAuCl4水溶液の濃度を5mMの代わりに3mMにし、HAuCl4水溶液中の浸漬温度を60℃の代わりに室温にした以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図11(a)に、XRDパターンを図12(a)に示す。
【実施例10】
【0046】
HAuCl4水溶液の濃度を5mMの代わりに3mMにし、HAuCl4水溶液中の浸漬温度を60℃の代わりに40℃にした以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図11(b)に、XRDパターンを図12(b)に示す。
【実施例11】
【0047】
HAuCl4水溶液の濃度を5mMの代わりに3mMにした以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図11(c)に、XRDパターンを図12(c)に示す。
【実施例12】
【0048】
HAuCl4水溶液の濃度を5mMの代わりに3mMにし、HAuCl4水溶液中の浸漬温度を60℃の代わりに80℃にした以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図11(d)に、XRDパターンを図12(d)に示す。
【0049】
図11および図12に示すように、金属を含む塩がHAuCl4の場合、HAuCl4水溶液中の浸漬温度は60℃が好ましいことが確認できた。
【実施例13】
【0050】
HAuCl4水溶液の濃度を5mMの代わりに3mMにした以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図13(a)に、XRDパターンを図14(a)に示す。
【実施例14】
【0051】
5mMのHAuCl4水溶液(pH1)の代わりに3mMのHAuCl4水溶液(希水酸化ナトリウム水溶液によりpH調整。pH5)を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図13(b)に、XRDパターンを図14(b)に示す。
【実施例15】
【0052】
HAuCl4水溶液の濃度を5mMの代わりに3mMにし、HAuCl4水溶液のpHを1の代わりに6にした(pHを希水酸化ナトリウム水溶液により調整)以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図13(c)に、XRDパターンを図14(c)に示す。
【実施例16】
【0053】
HAuCl4水溶液の濃度を5mMの代わりに3mMにし、HAuCl4水溶液のpHを1の代わりに7にした(pHを希水酸化ナトリウム水溶液により調整)以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図13(d)に、XRDパターンを図14(d)に示す。
【0054】
図13および図14に示すように、金属を含む塩がHAuCl4の場合、HAuCl4水溶液中のpHが6以下で金単結晶が生成することが確認できた。
【実施例17】
【0055】
ガラススライドの代わりにグラスファイバー(寸法:1.5cm×2cm、直径15μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして行った。グラスファイバー上に配置されたエポキシ樹脂硬化層の光学顕微鏡写真を図15(a)に、エポキシ硬化樹脂層上に配置されたタンニン層の光学顕微鏡写真を図15(b)に、前記タンニン層上に析出したAu単結晶の光学顕微鏡写真を図15(c)に示す。図15に示すように、グラスファイバー上に金単結晶を製造できることが確認できた。
【0056】
[Au単結晶の高さ]
実施例1および2で得られたAu単結晶の高さを、AFMにより測定した。実施例1で得られたAu単結晶のAFM測定結果を図16に示す。図16(a)は、測定したAu単結晶と、測定した断面の取り方を示す。図16(a)中の「a」の線に沿って測定したAFM測定結果を図16(b)に、「b」の線に沿って沿って測定したAFM測定結果を図16(c)に示す。図16(d)は、得られたAu単結晶の全体像を示す。図16(b)および図16(c)に示すように、単結晶の高さは120nmと40nmであることが確認できた。また、図16(d)に示すように、ガラススライド上に薄いAu薄膜があり、その上に透明な板状Au単結晶が析出していることが確認できた。
【0057】
また、実施例2で得られたAu単結晶のAFM測定結果を図17および図18に示す。図17(a)は、測定したAu単結晶と、測定した断面の取り方を示す。図17(a)中の「a」の線に沿って測定したAFM測定結果を図17(b)に、「b」の線に沿って沿って測定したAFM測定結果を図17(c)に示す。また、図18(a)中の「a」の線に沿って測定したAFM測定結果を図18(b)に、「b」の線に沿って沿って測定したAFM測定結果を図18(c)に示す。図17(b)より単結晶の高さは78nm、図17(c)より単結晶の高さは28nmであることが確認できた。また、図18(b)より単結晶の高さは75nmと40nm、図18(c)より単結晶の高さは70nmと65nmであることが確認できた。
【0058】
[Au単結晶の共焦点レーザー顕微鏡で測定した高さ]
実施例1で得られたAu単結晶について、CLSM測定した。その結果、得られたAu単結晶の平均高さは、100±10nmであった。
【0059】
[Au単結晶のUV特性]
実施例3で得られたAu単結晶のUV特性を測定した。得られたUV特性を図19に示す。図19に示すように、得られたAu単結晶は、可視光において光を透過することが確認できた。
【実施例18】
【0060】
5mMのHAuCl4水溶液(pH1)の代わりに0.2mMのHAuCl4水溶液(pH1)を用い、HAuCl4水溶液中にタンニン層が形成された積層体を浸漬する時間を24時間の代わりに48時間にした以外は、実施例1と同様にして行った。析出したAuの単結晶のSEM写真を図20に示す。
【0061】
[Au単結晶のUV特性]
実施例18で得られたAu単結晶のUV特性を測定した。得られたUV特性を図21に示す。図21に示すように、得られたAu単結晶は、可視光において光を透過することが確認できた。
【実施例19】
【0062】
エポキシ樹脂(エピコート(登録商標)828、ジャパンエポキシレジン株式会社、1g)とポリアミン(エポメート(登録商標)B002、ジャパンエポキシレジン株式会社、1g)とを無水アセトン(0.5mL)中に溶解させ、得られた溶液を7分間真空下で脱気した。この溶液(1mL)を、ピペットを用いてガラススライド(1.25cm×3cm)上に一面にのばした。溶液が塗布されたガラススライドを、30℃で24時間、次いで、150℃で4時間加熱して、ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を得た。
【0063】
一方、タンニン(ミモザタンニン)の10%(飽和)水溶液を過塩素酸を用いてpHを1に調整した。pH調整後、ろ過して不溶物を溶液から除去した。このタンニン溶液中に、ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を、60℃で24時間浸漬した。次いで、前記ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を水で洗浄し、60℃で1時間乾燥した。これにより、前記ガラススライド上に形成されたエポキシ樹脂硬化層の上に、タンニン層が形成された積層体を得た。
【0064】
100mMのAgNO3のエチレングリコール溶液(pH調整なし。15mL)に、前記ガラススライド上に形成されたエポキシ樹脂硬化層の上にタンニン層が形成された積層体を80℃で24時間浸漬した。前記積層体の前記タンニン層上には、青色のAgの単結晶が析出していた。Agの単結晶が析出した前記積層体の顕微鏡写真を図22(a)および(b)に示す。また、前記Ag単結晶のSEM写真を図22(c)に、Ag単結晶のXRDパターンを図22(d)に示す。図22に示すように、青色の銀単結晶を製造できることが確認できた。
【実施例20】
【0065】
100mMのAgNO3のエチレングリコール溶液の代わりに、AgNO3を水およびエチレングリコールの混合物(容積比は、水:エチレングリコール=1:1)に溶解させた、100mMのAgNO3のエチレングリコールおよび水溶液を用いた以外は、実施例18と同様にして行った。緑色のAgの単結晶が析出した前記積層体の写真を図23(a)および(b)に示す。また、Ag単結晶のXRDパターンを図23(c)に示す。図23に示すように、緑色の銀単結晶を製造できることが確認できた。
【実施例21】
【0066】
エポキシ樹脂(急速硬化エポキシ系強力接着剤アラルダイト(登録商標)ラピッド主剤、ハンツマン・インターナショナルLLC社、1g)とポリアミドアミン(急速硬化エポキシ系強力接着剤アラルダイト(登録商標)ラピッド硬化剤、ハンツマン・インターナショナルLLC社、、1g)とを無水アセトン(1mL)中に溶解させ、得られた溶液を7分間真空下で脱気した。この溶液(1mL)を、ピペットを用いてガラススライド(2.6cm×7.6cm)上に一面にのばした。溶液が塗布されたガラススライドを、30℃で24時間、次いで、60℃で4時間加熱して、ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を得た。このガラススライドを1.25cm×3cmに切断した。
【0067】
一方、タンニン(ミモザタンニン)の10%(飽和)水溶液を過塩素酸を用いてpHを1に調整した。pH調整後、ろ過して不溶物を溶液から除去した。このタンニン溶液中に、ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を、60℃で24時間浸漬した。次いで、前記ガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体を水で洗浄し、60℃で1時間乾燥した。これにより、前記ガラススライド上に形成されたエポキシ樹脂硬化層の上に、タンニン層が形成された積層体を得た。
【0068】
50mMのAgNO3の水溶液(pHを過塩素酸により調整。pH1、15mL)に、前記ガラススライド上に形成されたエポキシ樹脂硬化層の上に、タンニン層が形成された積層体を80℃で24時間浸漬した。前記積層体の前記タンニン層上には、Agの単結晶が析出していた。Agの単結晶が析出した前記積層体の写真を図24(a)および(b)に示す。また、Ag単結晶のXRDパターンを図24(c)に示す。図24に示すように、銀単結晶を製造できることが確認できた。
【実施例22】
【0069】
50mMのAgNO3の水溶液の代わりに、100mMのAgNO3エチレングリコール溶液を用い、AgNO3溶液に、前記ガラススライド上に形成されたエポキシ樹脂硬化層の上にタンニン層が形成された積層体を浸漬する温度を、80℃の代わりに100℃にし、浸漬時間を24時間の代わりに10分にした以外は、実施例21と同様にして行った。Agの単結晶が析出した前記積層体の写真を図25(a)〜(c)に示す。また、Ag単結晶のXRDパターンを図25(d)に示す。図25に示すように、銀単結晶を製造できることが確認できた。
【実施例23】
【0070】
50mMのAgNO3の水溶液の代わりに、100mMのAgNO3エチレングリコール溶液を用い、AgNO3溶液に、前記ガラススライド上に形成されたエポキシ樹脂硬化層の上にタンニン層が形成された積層体を浸漬する温度を、80℃の代わりに120℃にし、浸漬時間を24時間の代わりに10分にした以外は、実施例21と同様にして行った。Agの単結晶が析出した前記積層体の写真を図26(a)〜(c)に示す。また、Ag単結晶のXRDパターンを図26(d)に示す。図26に示すように、銀単結晶を製造できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の方法は、金属の回収方法への適用が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、Au単結晶の写真である。(a)は実施例1のAu単結晶、(b)は実施例2のAu単結晶、(c)は実施例3のAu単結晶、(d)は実施例4のAu単結晶の写真である。
【図2】図2は、FT−IRのチャートである。(a)は、実施例1中で作製したガラススライド上にエポキシ樹脂硬化層が形成された積層体の前記エポキシ樹脂硬化層のFT−IRであり、(b)は、実施例1で得られたAuの単結晶が析出した前記積層体の前記Au単結晶のFT−IRである。
【図3】図3は、実施例1で得られたAu単結晶のSEM写真および光学顕微鏡写真である。(a)〜(d)はSEM写真であり、(e)および(f)は光学顕微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例5で得られたAu単結晶のSEM写真および光学顕微鏡写真である。(a)〜(d)はSEM写真であり、(e)および(f)は光学顕微鏡写真である。
【図5】図5は、実施例6で得られたAu単結晶のSEM写真および光学顕微鏡写真である。(a)〜(d)はSEM写真であり、(e)〜(h)は光学顕微鏡写真である。
【図6】図6は、実施例7で得られたAu単結晶のSEM写真である。
【図7】図7は、Au結晶のSEM写真である。(a)は比較例1のAu結晶、(b)は比較例2のAu結晶、(c)は実施例1のAu単結晶、(d)は実施例3のAu単結晶のSEM写真である。
【図8】図8は,Au結晶のXRDパターンである。(a)は実施例1で得られたAu単結晶のXRDパターン、(b)は比較例1で得られたAu結晶のXRDパターンを示す。
【図9】図9は、Au単結晶のTEM写真である。(a)は実施例1の、(b)は実施例2の、(c)は実施例3のAu単結晶のTEM写真である。(d)は実施例1のAu単結晶のSAEDパターンである。
【図10】図10は、実施例8のAu単結晶のSEM写真である。(a)および(b)は低拡大率の、(c)および(d)は高拡大率のSEM写真である。
【図11】図11は、Au単結晶のSEM写真である。(a)は実施例9の、(b)は実施例10の、(c)は実施例11の、(d)は実施例12のAu単結晶のSEM写真である。
【図12】図12は、Au単結晶のXRDパターンである。(a)は実施例9の、(b)は実施例10の、(c)は実施例11の、(d)は実施例12のAu単結晶のXRDパターンである。
【図13】図13は、Au単結晶のSEM写真である。(a)は実施例13の、(b)は実施例14の、(c)は実施例15の、(d)は実施例16のAu単結晶のSEM写真である。
【図14】図14は、Au単結晶のXRDパターンである。(a)は実施例13の、(b)は実施例14の、(c)は実施例15の、(d)は実施例16のAu単結晶のXRDパターンである。
【図15】図15は、実施例17中の光学顕微鏡写真である。(a)はグラスファイバー上に配置されたエポキシ樹脂硬化層の光学顕微鏡写真、(b)はエポキシ硬化樹脂層上に配置されたタンニン層の光学顕微鏡写真、(c)は前記タンニン層上に析出したAu単結晶の光学顕微鏡写真を示す。
【図16】図16は、実施例1で得られたAu単結晶のAFM測定結果である。(a)は、測定したAu単結晶と、測定した断面の取り方を示す。(b)は、図16(a)中の「a」の線に沿って測定したAFM測定結果、(c)は、「b]の線に沿って沿って測定したAFM測定結果である。(d)は、得られたAu単結晶の全体像である。
【図17】図17は、実施例2で得られたAu単結晶のAFM測定結果である。(a)は、測定したAu単結晶と、測定した断面の取り方を示す。(b)は、図17(a)中の「a」の線に沿って測定したAFM測定結果、(c)は、「b」の線に沿って沿って測定したAFM測定結果である。
【図18】図18は、実施例2で得られた別のAu単結晶のAFM測定結果である。(a)は、測定したAu単結晶と、測定した断面の取り方を示す。(b)は、図18(a)中の「a」の線に沿って測定したAFM測定結果、(c)は、「b」の線に沿って沿って測定したAFM測定結果である。
【図19】図19は、実施例3で得られたAu単結晶のUV−visチャートを示す。
【図20】図20は、実施例18で得られたAu単結晶のSEM写真である。
【図21】図21は、実施例18で得られたAu単結晶のUV−visチャートを示す。
【図22】図22は、実施例19で得られたAg単結晶に関するデータである。(a)および(b)は、実施例19で得られたAg単結晶の顕微鏡写真、(c)は実施例19で得られたAg単結晶のSEM写真、(d)は実施例19で得られたAg単結晶のXRDパターンである。
【図23】図23は、実施例20で得られたAg単結晶に関するデータである。(a)および(b)は、実施例20で得られたAg単結晶の顕微鏡写真、(c)は実施例20で得られたAg単結晶のXRDパターンである。
【図24】図24は、実施例21で得られたAg単結晶に関するデータである。(a)および(b)は、実施例21で得られたAg単結晶の顕微鏡写真、(c)は実施例21で得られたAg単結晶のXRDパターンである。
【図25】図25は、実施例22で得られたAg単結晶に関するデータである。(a)〜(c)は、実施例22で得られたAg単結晶の顕微鏡写真、(d)は実施例22で得られたAg単結晶のXRDパターンである。
【図26】図26は、実施例23で得られたAg単結晶に関するデータである。(a)〜(c)は、実施例23で得られたAg単結晶の顕微鏡写真、(d)は実施例23で得られたAg単結晶のXRDパターンである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の単結晶を製造する方法であって、
エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させ、前記タンニン層の表面に前記金属の単結晶を析出させる工程を含む方法。
【請求項2】
前記金属が、Au、Ag、Pt、Pd、Co、NiおよびCuからなる群から選択される1以上である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶液の溶媒が水または緩衝液であり、前記溶液のpHが、1〜6の範囲である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶液の接触が、25〜120℃の範囲の温度で行われる請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂硬化層が、エポキシ樹脂と硬化剤とを混合し、加熱して得られた層である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記硬化剤が、ポリアミンまたはポリアミドアミンである請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
金属を回収する方法であって、
エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させ、前記タンニン層の表面に前記金属の単結晶を析出させる工程を含む方法。
【請求項1】
金属の単結晶を製造する方法であって、
エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させ、前記タンニン層の表面に前記金属の単結晶を析出させる工程を含む方法。
【請求項2】
前記金属が、Au、Ag、Pt、Pd、Co、NiおよびCuからなる群から選択される1以上である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶液の溶媒が水または緩衝液であり、前記溶液のpHが、1〜6の範囲である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶液の接触が、25〜120℃の範囲の温度で行われる請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂硬化層が、エポキシ樹脂と硬化剤とを混合し、加熱して得られた層である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記硬化剤が、ポリアミンまたはポリアミドアミンである請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
金属を回収する方法であって、
エポキシ樹脂硬化層の上に配置されたタンニン層の表面に、前記金属を含む塩の溶液を接触させ、前記タンニン層の表面に前記金属の単結晶を析出させる工程を含む方法。
【図2】
【図6】
【図8】
【図12】
【図14】
【図19】
【図21】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図6】
【図8】
【図12】
【図14】
【図19】
【図21】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2010−13336(P2010−13336A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177093(P2008−177093)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
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