説明

金属インク組成物、導電性パターン、方法および素子

堆積および処理時に導電性金属膜および金属線を形成するように適合させた金属錯体を提供する。該金属錯体は共有結合錯体であってよく、第1および第2の配位子を含みうる。低温処理を使用して該錯体を金属に変換することができる。該金属膜および金属線は純金属と同様の低い抵抗率および仕事関数を有しうる。貨幣金属を使用することができる(例えばAg、Au、Cu)。該配位子は、アミン、非対称アミンを含む供与結合配位子およびカルボキシレート配位子でありうる。硫黄錯体を使用することができる。カルボキシレート配位子を使用することができる。該錯体は高濃度の金属を有し得、芳香族炭化水素溶媒に可溶性でありうる。十分に揮発するように配位子を適合させることができる。インクジェット印刷を行うことができる。高導電率と共に高収率の金属を実現することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年11月9日に出願の米国仮出願第61/259,614号の優先権を主張するものであり、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
序論
一部の情報源によれば、プリンテッドエレクトロニクスは今後7〜10年以内に数10億ドルのビジネスになり、インクだけでドル金額の10〜15%を構成すると見込まれている。ケイ素系技術に対する急成長中の代替案としてのプリンタブルエレクトロニクスへの関心の増大は、大面積、フレキシブル、軽量および低コストな素子が見込まれることで特に促進されている。
【0003】
より具体的には、例えば銅、銀および金などの金属を印刷するためのより良好な方法の必要性が存在する。これらの金属は、相互接続から有機電界効果トランジスタのソース電極およびドレイン電極に及ぶ重要なチップ成分である。一般に、金属構造を生成するための改善された組成物および方法が、特に商業用途およびインクジェット印刷向けに求められている。例えば、米国特許第7,270,694号; 同第7,443,027号; 同第7,491,646号; 同第7,494,608号(譲受人: Xerox); 米国特許出願公開第2010/0163810号(「Metal Inks」); 米国特許出願公開第2008/0305268号(「Low Temperature Thermal Conductive Inks」); および米国特許出願公開第2006/0130700号(「Silver Containing Inkjet Inks」)(特許文献1〜7)を参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,270,694号
【特許文献2】米国特許第7,443,027号
【特許文献3】米国特許第7,491,646号
【特許文献4】米国特許第7,494,608号
【特許文献5】米国特許出願公開第2010/0163810号
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/0305268号
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0130700号
【発明の概要】
【0005】
概要
組成物、素子、組成物および素子を作製する方法、ならびに組成物および素子を使用する方法が特に本明細書において提供される。
【0006】
一態様(態様A)は、例えば、少なくとも1つの金属と少なくとも2つの配位子とを含む少なくとも1つの金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子が、該金属へのσドナーであり、かつ該金属錯体を加熱する際に揮発し、第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2の配位子もまた、該金属錯体を加熱する際に揮発し、該金属錯体が25℃の溶媒に可溶性である、組成物を提供する。この組成物を作製、調合および使用する方法も、態様Aおよびその部分態様について提供される。
【0007】
一態様では、金属は銀、金、銅、白金、またはルテニウムである。
【0008】
一態様では、金属は銀、金または銅である。
【0009】
一態様では、金属は銀または金である。
【0010】
一態様では、金属錯体は金属中心を1つだけ含む。
【0011】
一態様では、金属は(I)または(II)の酸化状態である。
【0012】
一態様では、第1の配位子は単座配位子である。
【0013】
一態様では、第1の配位子は二座配位子である。
【0014】
一態様では、第1の配位子は三座配位子である。
【0015】
一態様では、第1の配位子は、少なくとも2個の窒素を含むアミン化合物である。
【0016】
一態様では、第1の配位子は、少なくとも2個の窒素を含む非対称アミン化合物である。
【0017】
一態様では、第1の配位子はテトラヒドロチオフェンまたはアミンである。
【0018】
一態様では、第1の配位子はチオエーテルである。チオエーテルは環状または直鎖状でありうる。
【0019】
一態様では、第1の配位子はホスフィンではない。
【0020】
一態様では、第2の配位子はカルボキシレートである。
【0021】
一態様では、第2の配位子は、アルキル基を含むカルボキシレートである。
【0022】
一態様では、第2の配位子は、-OOC-Rで表されるカルボキシレートであり、Rはアルキル基であり、Rは10個以下の炭素原子を有する。
【0023】
一態様では、第2の配位子は、OOC-Rで表されるカルボキシレートであり、Rはアルキル基であり、Rは5個以下の炭素原子を有する。
【0024】
一態様では、組成物はナノ粒子を実質的に含まない。
【0025】
一態様では、組成物はナノ粒子を全く含まない。
【0026】
一態様では、組成物は、200℃未満の温度で始まる急な分解遷移を有する。
【0027】
一態様では、組成物は、150℃未満の温度で始まる急な分解遷移を有する。
【0028】
一態様では、組成物は、金属(0)の実質的堆積を伴わずに約25℃で少なくとも100時間貯蔵可能である。
【0029】
一態様では、組成物は錯体用の少なくとも1つの溶媒をさらに含む。
【0030】
一態様では、組成物は少なくとも1つの芳香族炭化水素溶媒をさらに含む。
【0031】
一態様では、組成物は少なくとも1つの溶媒をさらに含み、錯体の濃度は約200mg/mLまたはそれ未満である。
【0032】
一態様では、溶媒は芳香族炭化水素溶媒である。
【0033】
一態様では、金属錯体は少なくとも25重量%の金属を含む。
【0034】
一態様では、金属錯体は少なくとも50重量%の金属を含む。
【0035】
一態様では、金属錯体は少なくとも70重量%の金属を含む。
【0036】
一態様では、第2の配位子はカルボキシレートであり、第1の配位子は多座アミンであり、金属は銀、金または銅である。
【0037】
一態様では、第2の配位子はカルボキシレートであり、第1の配位子は多座非対称アミンであり、金属は銀または金であり、溶媒はトルエンである。
【0038】
別の態様(態様B)は、少なくとも1つの金属と少なくとも2つの配位子とを含む少なくとも1つの金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子が硫黄含有配位子であり、第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2の配位子がカルボキシレートであってよく、該金属錯体が25℃の溶媒に可溶性である、組成物を提供する。この組成物を作製、調合および使用する方法も、態様Bおよびその部分態様について提供される。組成物はナノ粒子を実質的に含まないことがある。
【0039】
一態様では、第2の配位子はカルボキシレートであり、すなわち、カルボキシレートは任意ではない。
【0040】
一態様では、錯体中の金属の含有量は少なくとも50重量%である。
【0041】
一態様では、硫黄含有配位子はチオエーテル配位子である。チオエーテルは環状または直鎖状でありうる。
【0042】
一態様では、硫黄含有配位子はテトラヒドロチオフェンである。
【0043】
一態様では、硫黄含有配位子はジアルキルチオエーテルである。
【0044】
一態様では、硫黄含有配位子はジチアアルカンである。
【0045】
一態様では、硫黄含有配位子はジチオオクタンである。
【0046】
一態様では、硫黄含有配位子は1個または2個の硫黄原子を含む。
【0047】
一態様では、硫黄含有配位子は二座配位子である。
【0048】
一態様では、硫黄含有配位子は6個以下の炭素、または4個以下の炭素、または2個以下の炭素を有する。
【0049】
別の態様(態様C)は、少なくとも1つの金属と少なくとも2つの配位子とを含む少なくとも1つの金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子がアミノ配位子であり、第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2の配位子がカルボキシレートであってよく、該金属錯体が25℃の溶媒に可溶性である、組成物を提供する。この組成物を作製、調合および使用する方法も、態様Cおよびその部分態様について提供される。組成物はナノ粒子を実質的に含まないことがある。
【0050】
別の態様は、錯体中の金属の含有量が少なくとも50重量%であると規定する。
【0051】
別の態様は、第2の配位子がカルボキシレートであると規定する。
【0052】
別の態様は、金属が銀、金、銅、白金、またはルテニウムであると規定する。
【0053】
別の態様は、金属錯体が金属中心を1つだけ含むと規定する。
【0054】
別の態様は、金属が(I)または(II)の酸化状態であると規定する。
【0055】
別の態様は、第1の配位子が単座配位子であると規定する。
【0056】
別の態様は、第1の配位子が二座配位子であると規定する。
【0057】
別の態様は、第1の配位子が三座配位子であると規定する。
【0058】
別の態様は、第1の配位子が、少なくとも2個の窒素を含む非対称アミノ配位子であると規定する。
【0059】
別の態様は、第1の配位子が、少なくとも2個の窒素を含む非対称アミノ配位子であると規定する。
【0060】
別の態様(態様D)は、(I)または(II)酸化状態の少なくとも1つの金属と少なくとも2つの配位子とを含む少なくとも1つの中性金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子が、該金属への中性σドナーであり、かつ該金属錯体を150℃未満の温度まで加熱する際に揮発し、第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2のアニオン性配位子もまた、該金属錯体を150℃未満の温度まで加熱する際に揮発し、任意で該金属錯体が25℃の溶媒に可溶性である、組成物を提供する。この組成物を作製、調合および使用する方法も、態様Dおよびその部分態様について提供される。
【0061】
別の態様は、第1の配位子が硫黄含有配位子であると規定する。
【0062】
別の態様は、第1の配位子がテトラヒドロチオフェンであると規定する。
【0063】
別の態様は、第1の配位子がチオエーテルであると規定する。チオエーテルは環状または直鎖状でありうる。
【0064】
別の態様は、第1の配位子が少なくとも2個の硫黄を含むと規定する。
【0065】
別の態様は、第1の配位子が6個以下の炭素原子を有すると規定する。
【0066】
別の態様は、第1の配位子が4個以下の炭素原子を有すると規定する。
【0067】
別の態様は、第1の配位子が2個以下の炭素原子を有すると規定する。
【0068】
別の態様は、第1の配位子第2の配位子がカルボキシレートであると規定する。
【0069】
別の態様は、錯体中の炭素原子の数が12以下であると規定する。
【0070】
別の態様は、本明細書に記載の組成物を含むインクを表面上に堆積させる工程、および該インクを加熱または照射することによって導電性金属膜を生成する工程を含む、方法を提供する。
【0071】
一態様では、生成する工程は加熱することによって行われる。
【0072】
一態様では、生成する工程は照射することによって行われる。
【0073】
一態様では、インクは、態様Aおよびその部分態様に記載の組成物を含む。
【0074】
一態様では、インクは、態様Bおよびその部分態様に記載の組成物を含む。
【0075】
一態様では、インクは、態様Cおよびその部分態様に記載の組成物を含む。
【0076】
一態様では、インクは、態様Dおよびその部分態様に記載の組成物を含む。
【0077】
一態様では、金属は金、銀または銅である。
【0078】
一態様では、インクは堆積前にナノ粒子を実質的に含まない。
【0079】
一態様では、インクは堆積後にナノ粒子を実質的に含まない。
【0080】
一態様では、堆積させる工程はインクジェット堆積によって行われる。
【0081】
一態様では、生成する工程は約250℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われる。
【0082】
一態様では、生成する工程は約200℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われる。
【0083】
一態様では、生成する工程は約150℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われる。
【0084】
一態様では、膜は線の形態であり、線は少なくとも1,000S/cmの導電率を有する。
【0085】
一態様では、膜は線の形態であり、線は少なくとも5,000S/cmの導電率を有する。
【0086】
一態様では、膜は線の形態であり、線は少なくとも10,000S/cmの導電率を有する。
【0087】
一態様では、膜は線の形態であり、線は、純金属の仕事関数の25パーセント以内の仕事関数を有する。
【0088】
一態様では、膜は線の形態であり、線は、純金属の仕事関数の10パーセント以内の仕事関数を有する。
【0089】
一態様では、膜は線の形態であり、線は、純金属の仕事関数の5パーセント以内の仕事関数を有する。
【0090】
別の態様は、堆積物を形成するためにインクを表面上に堆積させる工程、該堆積物を、純金属の仕事関数の25パーセント以内の仕事関数を示す金属膜に変換する工程を含む、方法を提供する。
【0091】
一態様では、堆積物は加熱される。
【0092】
一態様では、堆積物は照射される。
【0093】
一態様では、インクは、本明細書に記載の態様に記載の組成物を含む。
【0094】
一態様では、インクは、態様Aおよびその部分態様に記載の組成物を含む。
【0095】
一態様では、インクは、態様Bおよびその部分態様に記載の組成物を含む。
【0096】
一態様では、インクは、態様Cおよびその部分態様に記載の組成物を含む。
【0097】
一態様では、インクは、態様Dおよびその部分態様に記載の組成物を含む。
【0098】
一態様では、金属は金、銀または銅である。
【0099】
一態様では、インクは堆積前にナノ粒子を実質的に含まない。
【0100】
一態様では、インクは堆積後にナノ粒子を実質的に含まない。
【0101】
一態様では、堆積させる工程はインクジェット堆積によって行われる。
【0102】
一態様では、変換する工程は約250℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われる。
【0103】
一態様では、変換する工程は約200℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われる。
【0104】
一態様では、変換する工程は約150℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われる。
【0105】
一態様では、膜は線の形態であり、線は少なくとも1,000S/cmの導電率を有する。
【0106】
一態様では、膜は線の形態であり、線は少なくとも5,000S/cmの導電率を有する。
【0107】
一態様では、膜は線の形態であり、線は少なくとも10,000S/cmの導電率を有する。
【0108】
一態様では、膜は線の形態であり、線は、純金属の仕事関数の10パーセント以内の仕事関数を有する。
【0109】
一態様では、膜は線の形態であり、線は、純金属の仕事関数の5パーセント以内の仕事関数を有する。
【0110】
別の態様は、少なくとも1つの金属と少なくとも2つの配位子とを含む少なくとも1つの金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子が、該金属へのσドナーであり、かつ該金属錯体を加熱する際に揮発し、少なくとも1つの第2の配位子もまた、該金属錯体を加熱する際に揮発し、該金属錯体が25℃の溶媒に可溶性である、組成物を提供する。
【0111】
一態様では、第1の配位子および第2の配位子は同一の配位子である。
【0112】
一態様では、第1の配位子および第2の配位子は異なる配位子である。
【0113】
一態様では、金属は銅である。他の態様では、金属は例えば銀、金、白金、またはルテニウムであってもよい。
【0114】
一態様では、第1の配位子は少なくとも1個の窒素原子および少なくとも2個の酸素原子を含む。
【0115】
一態様では、第1の配位子および第2の配位子は同一の配位子であり、第1の配位子は少なくとも1個の窒素原子および少なくとも2個の酸素原子を含む。
【0116】
一態様では、第1の配位子および第2の配位子は同一の配位子であり、第1の配位子は少なくとも1個の窒素原子および少なくとも2個の酸素原子ならびに少なくとも1個のフッ素を含む。
【0117】
一態様では、第1の配位子は三座配位子である。
【0118】
一態様では、第1の配位子は三座シッフ塩基配位子である。
【0119】
一態様では、第1の配位子は少なくとも1個の第二級アミン基、少なくとも1個のカルボニル基および少なくとも1個のエーテル基を含む。
【0120】
他の態様では、組成物は、本明細書に記載の要素および成分から本質的になる。
【0121】
別の態様は、少なくとも1つの金属と少なくとも2つの配位子とを含む少なくとも1つの金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子が、該金属へのσドナーであり、かつ該金属錯体を約250℃またはそれ未満の温度まで加熱する際に揮発し、第1の配位子と異なっていてもよい少なくとも1つの第2の配位子もまた、該金属錯体を約250℃またはそれ未満の温度まで加熱する際に揮発する、組成物を提供する。
【0122】
一態様では、金属錯体は150℃またはそれ未満の温度まで加熱される。
【0123】
一態様では、金属錯体は25℃で可溶性である。
【0124】
一態様では、組成物は、加熱の際に、純金属の仕事関数の25パーセント以内の仕事関数を有する金属を与える。
【0125】
一態様では、組成物は、加熱の際に、少なくとも1,000S/cmの導電率を有する金属組成物を与える。
【0126】
別の態様は、堆積物を形成するためにインクを表面上に堆積させる工程、該堆積物を、少なくとも1,000S/cmの導電率を示す金属膜に変換する工程を含む、方法を提供する。
【0127】
別の態様は、導電率が少なくとも5,000S/cmであると規定する。
【0128】
別の態様は、導電率が少なくとも10,000S/cmであると規定する。
【0129】
別の態様では、変換する工程が、約200℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われると規定する。
【0130】
別の態様では、変換する工程が、約150℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われると規定する。
【0131】
さらに、別の態様は、少なくとも1つの金属と該金属に結合した少なくとも2つの配位子とから本質的になる少なくとも1つの金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子が、該金属への中性ドナーであり、かつ該金属錯体を加熱する際に揮発し、第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2の配位子が、該金属錯体を加熱する際に同じく揮発し、かつ負に荷電している、組成物である。
【0132】
別の態様は、第1の配位子が窒素および/または硫黄から本質的になると規定する。
【0133】
別の態様は、第2の配位子がカルボキシレートから本質的になると規定する。
【0134】
別の態様は、錯体がトルエンに可溶性であると規定する。
【0135】
別の態様は、金属、第1の配位子、および第2の配位子から本質的になる前記錯体が、中性に荷電していると規定する。
【0136】
少なくとも1つの態様の少なくとも1つの利点は、高品質の有用な導電性金属線および金属膜を作製する能力である。少なくとも1つの態様の少なくとも1つのさらなる利点は、導電性金属への変換の低温度性である。少なくとも1つの態様の少なくとも1つのさらなる利点は、金属インクの高金属含有量である。少なくとも1つの態様の少なくとも1つのさらなる利点は、金属膜の高導電率である。さらに、少なくとも1つの態様の少なくとも1つのさらなる利点は、インクジェット印刷される能力である。
【0137】
少なくともいくつかの態様の他の利点は、以下に記載の局面を含む。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】一態様を示し、金錯体の回折由来の分子構造を示す。
【図2】一態様を斜視図に示し、トリフェニルホスフィンオキシドマトリックス中の十分に分離されたAuナノ粒子のAFM画像を示す。
【図3】一態様を示し、金錯体の熱重量分析を示す。
【図4】一態様を示し、複核銀錯体の回折由来の分子構造を示す。
【図5】一態様を示し、単核銀錯体の回折由来の分子構造を示す。
【図6】一態様を示し、65mg/mLトルエン溶液からSi/SiO2上の2つの金電極パッド間に描線された(DEED)Ag(イソブチレート)線の対数抵抗率対温度プロットを示す。
【図7】一態様を上面図に示し、堆積した金属銀の走査型電子顕微鏡画像を示す。
【図8】一態様を示し、堆積した金属銀のエネルギー分散型X線分光法を示す。
【図9】一態様を上面図に示し、銀インクのインクジェット堆積を示す。
【図10】一態様を示し、65mg/mLトルエン溶液からSi/SiO2上の2つの金電極パッド間に描線された(DEED)Ag(シクロプロペート)線の対数抵抗率(任意単位)対温度プロット(℃)を示す。
【図11】一態様を示し、65mg/mLトルエン溶液からSi/SiO2上の2つの金電極パッド間に描線された(PMDEA)Ag(イソブチレート)線の対数抵抗率(任意単位)対温度(℃)プロットを示す。
【図12】一態様を示し、銅錯体の対数抵抗率(任意単位)対温度(℃)プロットを示す。
【図13】一態様を上面図に示し、SiO2基板上に描線された銅線の走査型電子顕微鏡画像を示す。
【図14】一態様を示し、SiO2基板上に描線された銅線のエネルギー分散型X線分光法を示す。
【図15】一態様を示し、銀錯体の回折由来の分子構造を示す。
【図16】一態様を示し、前駆体溶液から形成されたAu膜のXPS、ならびにスパッタリング洗浄工程による進捗をAu4f、Ag3d、C1sおよびO1sについて示す。
【図17】一態様を示し、前駆体からのAuの仕事関数(4.9eV)を示す。
【図18】一態様を示し、銀錯体の回折由来の分子構造を示す。
【図19】一態様を示し、2つの金電極パッド間に描線された銀線の対数抵抗率(任意単位)対温度(℃)プロットを示す。
【図20】一態様を上面図に示し、2つの金電極パッド間に描線された銀線の図を示す。
【図21】一態様を示し、金錯体を合成する手順を示す。
【図22】一態様を斜視図に示し、マイクロキャスティング構成を示す。
【図23】一態様を示し、金溶液の金属化の対数抵抗率(任意単位)対温度(℃)プロットを示す。
【図24】一態様を上面図に示し、リソグラフィーによって調製された2つの金電極パッド間に描線された金線の(低解像度)走査型電子顕微鏡画像を示す。
【図25】一態様を示し、2つの金電極パッド間に描線された金線のエネルギー分散型X線分光法を示す。
【図26】一態様を上面図に示し、インクジェット印刷金線を示す。
【図27】一態様を示し、(A)前駆体溶液から調製されたAu膜および(B)スパッタ堆積を使用して調製されたAu膜のXPS Auピークを比較する。
【図28】一態様を示し、液体金からの導電率を示す。
【図29】一態様を示し、三核金錯体の回折由来の分子構造を示す。
【0139】
図面は、いくつかの場合ではカラー図面およびカラー特徴を含み、カラー特徴は、本開示の一部を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0140】
詳細な説明
序論
2009年11月9日出願の優先権米国仮出願第61/259,614号は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0141】
微細加工、印刷、インクジェット印刷、電極、およびエレクトロニクスは、例えばMadou, Fundamentals of Microfabrication, The Science of Miniaturization, 2nd Ed., 2002に記載されている。
【0142】
有機化学の方法および構造は例えばMarch's Advanced Organic Chemistry, 6th Ed., 2007に記載されている。
【0143】
印刷プロセスおよび他の用途において高まる要求を可能にすることに役立つように、例えば銅膜、銀膜および金膜を含む貨幣金属膜を含む導電性金属膜の溶液ベースの堆積用の新規金属含有インクが本明細書において提供される。本明細書において提供されるインク金属化アプローチは、配位化学、および、例えば加熱または光化学照射されることで金属膜を与えることができる自己還元性配位子に基づく。
【0144】
インクジェット印刷を例えば含むパターン形成方法を使用して、具体的な所定のパターンで金属インクを堆積させることができ、低温加熱を含むレーザー加熱または単純加熱を使用して、このインクを例えば回路に直接変換することができる。
【0145】
このアプローチの汎用性は、種々の基板上に種々のデザインおよびパターンを印刷することを、従来の堆積方法よりもはるかに安価で、リソグラフィーを必要とせずに可能にする。
【0146】
本明細書において、組成物は、少なくとも1つの金属錯体、ならびに、溶媒を例えば含む任意的な他の成分を含みうる。一態様では、組成物はポリマーを含まない。一態様では、組成物は界面活性剤を含まない。一態様では、組成物は金属錯体および溶媒のみを含む。
【0147】
組成物の調合において、必須の合成基準の例としては例えば以下が挙げられる: (1)化合物が空気および水分に安定であること、(2)化合物が長寿命を示すことができ、長期間または無期限に貯蔵可能であること、(3)化合物の合成を安価かつ高収率でありながら大規模化する余地があること、(4)化合物が、インクジェットおよびパッチピペットなどの印刷プロセスに適合性のあるトルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素に可溶性であること、ならびに/あるいは、(5)化合物をクリーンに卑金属に熱分解または光化学分解すべきであること。
【0148】
金属錯体
金属錯体は金属膜の前駆体でありうる。金属有機化合物および遷移金属化合物、金属錯体、金属、ならびに配位子は、例えばLukehart, Fundamental Transition Metal Organometallic Chemistry, Brooks/Cole, 1985; Cotton and Wilkinson, Advanced Inorganic Chemistry: A Comprehensive Text, 4th Ed., John Wiley, 2000に記載されている。金属錯体はホモレプチックまたはヘテロレプチックでありうる。金属錯体は単核、複核、三核およびそれ以上でありうる。金属錯体は共有結合錯体でありうる。
【0149】
金属錯体は金属-炭素結合を含まないことがある。
【0150】
金属錯体は、金属中心に直接結合していない対イオンが存在しないように、全体として非荷電でありうる。例えば、一態様では、金属錯体は、金属錯体およびその配位子がカチオンである[M]+[A]-で表されない。一態様では、金属錯体は、L1およびL2がそれぞれ第1および第2の金属配位子であるML1L2で表すことができる。ここでMは正の電荷を有し得、これはL1またはL2からの負の電荷によって平衡される。
【0151】
金属錯体は、ハロゲン化物、水酸化物、シアン化物、亜硝酸、硝酸、ニトロキシル、アジド、チオシアネート、イソチオシアネート、テトラアルキルホウ酸、テトラハロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、トリフレート、トシレート、硫酸および/または炭酸などのアニオンを含まないことがある。
【0152】
一態様では、金属錯体は、特に銀錯体および金錯体についてフッ素原子を含まない。
【0153】
金属錯体を含む組成物は、粒子、微粒子およびナノ粒子を実質的にまたは完全に含まないことがある。特に、金属錯体を含む組成物は、金属ナノ粒子を含むナノ粒子を実質的にもしくは完全に含まないか、またはコロイド材料を実質的にもしくは完全に含まないことがある。導電性インクを形成するためのコロイド的アプローチについては例えば米国特許第7,348,365号を参照。例えば、ナノ粒子のレベルは0.1重量%未満、または0.01重量%未満、または0.001重量%未満でありうる。SEMおよびTEM、紫外可視を含む分光法、プラズモン共鳴などを例えば含む当業者に公知の方法を使用して、粒子の組成を検査することができる。ナノ粒子は例えば1nm〜500nm、または1nm〜100nmの直径を有しうる。
【0154】
また、金属錯体を含む組成物はフレークを含まないことがある。
【0155】
いくつかの態様では、組成物は少なくとも2つの異なる金属錯体を含みうる。
【0156】
ITOおよびZnOを含む酸化物および硫化物のような材料を形成することに使用されるように、金属錯体を適合させることもできる。
【0157】
一態様では、金属錯体は、銅アルコキシドなどのアルコキシドではない(例えばM-O-R結合が存在しない)。
【0158】
溶解性
金属錯体は可溶性であってよく、このことはさらなる加工を促進する。それは例えば、芳香族炭化水素溶媒を含む炭化水素などの非極性または低極性溶媒に可溶性でありうる。芳香族炭化水素溶媒としてはベンゼンおよびトルエンが挙げられる。別の例はキシレン、またはキシレンの混合物である。ポリアルキル芳香族化合物を使用することができる。
【0159】
金属錯体を含む組成物は、少なくとも1つの芳香族炭化水素溶媒を含む、錯体用の少なくとも1つの溶媒をさらに含みうる。水、アルコール、エチレングリコールを含むグリコール、ポリエーテル、アルデヒドなどを例えば含む酸素化溶媒は実質的または完全に除外されうる。
【0160】
金属錯体を含む組成物は、少なくとも1つの溶媒をさらに含み得、錯体の濃度は約200mg/mLまたはそれ未満、または約100mg/mLまたはそれ未満、または約50mg/mLまたはそれ未満でありうる。
【0161】
一態様では、金属錯体は溶媒なしで使用される。
【0162】
一態様では、組成物は水を含まないかまたは実質的に含まない。例えば、水の量は1重量%未満でありうる。あるいは、水の量は0.1重量%未満または0.01重量%未満でありうる。
【0163】
一態様では、組成物は酸素化溶媒を含まないかまたは実質的に含まない。例えば、酸素化溶媒の量は1重量%未満でありうる。あるいは、酸素化溶媒の量は0.1重量%未満または0.01重量%未満でありうる。
【0164】
金属中心
金属および遷移金属は当技術分野で公知である。例えばCottonおよびWilkinson前掲書を参照。銀、金および銅を含む貨幣金属を使用することができる。白金を使用することができる。ニッケル、コバルトおよびパラジウムを使用することができる。例えば鉛、鉄およびスズを使用することができる。ルテニウムを使用することができる。導電エレクトロニクスに使用される金属の他の例は公知であり、適宜使用することができる。金属錯体と異なる金属との混合物を使用することができる。合金を形成することができる。
【0165】
金属錯体は金属中心を1つだけ含みうる。あるいは、金属錯体は金属中心を1つまたは2つだけ含みうる。
【0166】
金属は(I)または(II)の酸化状態でありうる。
【0167】
金属中心は第1および第2の配位子と錯体形成することができる。第3、第4などのさらなる配位子を使用することができる。
【0168】
金属中心は複数の部位において錯体形成すること、例えば、3、4、5または6個の錯体形成部位と錯体形成することができる。
【0169】
金属中心は、導電線を形成するために有用な金属、特に半導体およびエレクトロニクス産業において使用されるそのような金属を含みうる。
【0170】
金属のさらに他の例としてはインジウムおよびスズが挙げられる。
【0171】
第1の配位子
第1の配位子は金属へのσ電子供与、または供与結合を与えることができる。σ供与は当技術分野で公知である。例えば米国特許第6,821,921号を参照。加熱される際に固体生成物の形成なしで揮発するように第1の配位子を適合させることができる。加熱は酸素の存在下または非存在下で行うことができる。第1の配位子は金属の還元剤でありうる。第1の配位子はアニオンでもカチオンでもなく中性状態でありうる。
【0172】
第1の配位子は、二座または三座配位子を例えば含む多座配位子でありうる。
【0173】
第1の配位子は、少なくとも2個の窒素を含むアミン化合物でありうる。配位子は対称でも非対称でもよい。
【0174】
第1の配位子は、少なくとも2個の窒素を含む非対称アミン化合物でありうる。
【0175】
例えば、第1の配位子は、テトラヒドロチオフェンなどの硫黄を含む配位子、またはアミンでありうる。アミン配位子は当技術分野で公知である。例えばCottonおよびWilkinson前掲書118頁を参照。また、ピリジンのような窒素複素環を使用することができる。
【0176】
第1の配位子は、アルキルアミンを含むアミンでありうる。アルキル基は直鎖状、分岐状または環状でありうる。架橋アルキレンを使用して複数の窒素を一緒に連結させることができる。アミンにおいて、炭素原子の数は例えば15以下、または10以下でありうる。
【0177】
アミンを含む第1の配位子の分子量は例えば約1,000g/mol以下、または約500g/mol以下、または約250g/mol以下でありうる。
【0178】
一態様では、第1の配位子はホスフィンではない。一態様では、第1の配位子はテトラヒドロチオフェンではない。一態様では、第1の配位子は、硫黄を含む配位子を含まない。一態様では、第1の配位子はアミンを含まない。一態様では、第1の配位子はフッ素含有配位子を含まない。
【0179】
第1の配位子の例は以下の実施例に見ることができる。
【0180】
第2の配位子
第2の配位子は第1の配位子と異なっており、金属錯体を加熱する際に揮発しうる。例えば、いくつかの態様では、それは二酸化炭素および揮発性小有機分子を放出しうる。加熱される際に固体生成物の形成なしで揮発するように第2の配位子を適合させることができる。加熱は酸素の存在下または非存在下で行うことができる。第2の配位子は、アニオン性電荷を有しかつ中性錯体を与えることができる最小数の原子を有するキレート剤でありうる。これにより、錯体は芳香族炭化水素溶媒に可溶性になりうる。第2の配位子はアニオン性でありうる。それは自己還元性でありうる。
【0181】
当技術分野で公知のように、第2の配位子はカルボキシレートでありうる。例えばCottonおよびWilkinson前掲書170〜172頁を参照。銀カルボキシレートを含むカルボキシレートは当技術分野で公知である。例えば米国特許第7,153,635号; 第7,445,884号; 第6,991,894号; および第7,524,621号を参照。
【0182】
第2の配位子は、例えばアルキル基などの炭化水素を含むカルボキシレートでありうる。
【0183】
第2の配位子は、OOC-Rで表されるカルボキシレートであってよく、Rはアルキル基であり、Rは10個以下の炭素原子、または5個以下の炭素原子を有する。Rは直鎖状、分岐状または環状でありうる。所望であれば、第2の配位子はフッ素化されていてもよく、例えばトリフルオロメチル基を含んでもよい。第2の配位子はカルボキシレートでありうるが脂肪酸カルボキシレートであることはない。第2の配位子は脂肪族カルボキシレートでありうる。第2の配位子はホルメート配位子であることはない。
【0184】
カルボキシレートを含む第2の配位子の分子量は例えば約1,000g/mol以下、または約500g/mol以下、または約250g/mol以下、または約150g/mol以下でありうる。
【0185】
一態様では、第2の配位子はフッ素含有配位子を含まない。
【0186】
第2の配位子の例は以下の実施例に見ることができる。
【0187】
さらなる態様
別の態様では、金属錯体は、第1および第2の配位子を含む少なくとも2つの配位子を含み得、配位子は同一でも異なっていてもよい。
【0188】
特に、別の態様は、少なくとも1つの金属と少なくとも2つの配位子とを含む少なくとも1つの金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子が、該金属へのσドナーであり、かつ該金属錯体を加熱する際に揮発し、少なくとも1つの第2の配位子もまた、該金属錯体を加熱する際に揮発する、組成物を提供する。金属錯体は25℃の溶媒に可溶性でありうる。
【0189】
一態様では、第1の配位子および第2の配位子は同一の配位子である。一態様では、第1の配位子および第2の配位子は異なる配位子である。
【0190】
一態様では、金属は銅である。他の態様では、金属は例えば銀、金、白金、またはルテニウムであってもよい。
【0191】
一態様では、第1の配位子は少なくとも1個の窒素原子および少なくとも2個の酸素原子を含む。
【0192】
一態様では、第1の配位子および第2の配位子は同一の配位子であり、第1の配位子は少なくとも1個の窒素原子および少なくとも2個の酸素原子を含む。
【0193】
一態様では、第1の配位子および第2の配位子は同一の配位子であり、第1の配位子は少なくとも1個の窒素原子および少なくとも2個の酸素原子ならびに少なくとも1個のフッ素を含む。例えば、フッ素はトリフルオロメチル基の一部でありうる。
【0194】
一態様では、第1の配位子は三座配位子である。一態様では、第1の配位子は三座シッフ塩基配位子である。
【0195】
一態様では、第1の配位子は少なくとも1個の第二級アミン基、少なくとも1個のカルボニル基および少なくとも1個のエーテル基を含む。
【0196】
例えば、このさらなる態様については、以下の実施例6、およびそこで第1および第2の配位子として使用される配位子を参照。
【0197】
金属錯体の特性
金属錯体は、250℃未満、または200℃未満、または150℃未満、または120℃未満の温度で始まる急な分解遷移を有しうる。
【0198】
組成物は、金属(0)の実質的堆積を伴わずに約25℃で少なくとも100時間、または少なくとも250時間、または少なくとも500時間、または少なくとも1,000時間、または少なくとも6ヶ月貯蔵可能である。この貯蔵は無溶媒または溶媒内で行ってよい。組成物を例えば25℃未満などのより低い温度で貯蔵することで、より長期の安定性を与えることができる。例えば、一部の組成物は0℃で非常に長期間、例えば少なくとも30日間、または少なくとも90日間、または少なくとも365日間貯蔵可能である。あるいは、例えば、一部の組成物は-35℃またはそれ未満で非常に長期間、例えば少なくとも30日間、または少なくとも90日間、または少なくとも365日間貯蔵可能である。
【0199】
錯体は例えば少なくとも25重量%の金属、または少なくとも50重量%の金属、または少なくとも60重量%の金属、または少なくとも70重量%の金属を含みうる。これは、金属の効率的な使用、および金属への変換時の良好な導電率を可能にする。
【0200】
商業的に有用であるために十分な安定性を示すだけでなく、低コストで高品質の製品を得るために十分な反応性があるように、金属錯体を適合させることができる。当業者は、特定の用途に求められるバランスを実現するように、第1および第2の配位子を適合させることができる。
【0201】
組成物を作製する方法
金属錯体は種々の方法によって作製することができる。一態様では、交換反応が生じるように金属または銀カルボキシレート前駆体とエステルとを反応させて新たな金属または銀カルボキシレート錯体を形成することによって、金属または銀カルボキシレート錯体を調製する。例えば、Rが、10個以下または5個以下の炭素原子を有するアルキル基を例えば含む直鎖状、分岐状または環状アルキルを含むアルキル基で例えばありうる、以下の反応(1)を参照。反応収率は例えば少なくとも50%、または少なくとも70%、または少なくとも90%でありうる。
【0202】
一態様では、Ag2Oを含む金属酸化物の使用なしで金属または銀カルボキシレート錯体を作製する。一態様では、固相反応の使用なしで金属または銀カルボキシレートを作製する。例えば以下の比較例反応(2)を参照。
【0203】
一態様では、やはりテトラヒドロチオフェンまたはホスフィンなどのσドナーと錯体形成している金クロリド錯体と、銀カルボキシレート錯体との反応によって、金錯体を調製する。結果は塩化銀の析出である。例えば以下の反応(3)、(4)および(5)を参照。
【0204】
一態様では、第1の配位子などの供与結合配位子を交換することによって金属錯体を調製する。例えば、テトラヒドロチオフェンをアミンに交換することができる。
【0205】
インクの堆積
スピンコーティング、ピペッティング、インクジェット印刷、ブレードコーティング、ロッドコーティング、ディップコーティング、リソグラフィーまたはオフセット印刷、グラビア、フレキソ印刷、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ドロップキャスティング、スロットダイ、ロールツーロール、吹付およびスタンピングを例えば含む当技術分野で公知の方法を使用してインクを堆積させることができる。インク調合物および基板を堆積方法に適合させることができる。前掲書Direct Write Technologiesも参照。例えば、第7章はインクジェット印刷を記載している。接触および非接触堆積を使用することができる。真空堆積を使用することはできない。液体堆積を使用することができる。
【0206】
インクの粘度を堆積方法に適合させることができる。例えば、粘度をインクジェット印刷に適合させることができる。粘度は例えば約500Cps以下でありうる。あるいは、粘度は例えば1,000Cps以上でありうる。インク中の固形分の濃度を適合させることもできる。インク中の固形分の濃度は例えば約500mg/mLまたはそれ未満、または約250mg/mLまたはそれ未満、または約100mg/mLまたはそれ未満、または約150mg/mLまたはそれ未満、または約100mg/mLまたはそれ未満でありうる。下限量は例えば約1mg/mL以上、または約10mg/mL以上であり得る。約1mg/mL〜約500mg/mLを例えば含むこれらの上限および下限の態様によって範囲を設定することができる。さらに、インクの湿潤性を適合させることができる。
【0207】
所望であれば、例えば界面活性剤、分散剤および/または結合剤などの添加剤を使用して1つまたは複数のインク特性を制御することができる。一態様では、添加剤を使用しない。一態様では、界面活性剤を使用しない。
【0208】
ノズルを使用して前駆体を堆積させることができ、ノズル直径は例えば100ミクロン未満、または50ミクロン未満でありうる。微粒子の非存在はノズルの目詰まりの防止に役立ちうる。
【0209】
堆積においては、溶媒を除去することができ、金属前駆体を金属に変換するための初期工程を開始することができる。
【0210】
前駆体を金属へと変換
金属錯体を含むインクおよび組成物を堆積させて、膜および線を含む金属構造に変換することができる。レーザー光を含む熱および/または光を使用することができる。金属膜の周囲の雰囲気を制御することができる。例えば、酸素を包含させるかまたは除外することができる。揮発性副生成物を排除することができる。
【0211】
堆積および硬化後の金属線
金属線および金属膜は凝集性かつ連続的でありうる。連続的な金属化が、粒子間の良好な結合性、および低い表面粗さと共に観察されうる。
【0212】
線幅は例えば1ミクロン〜500ミクロン、または5ミクロン〜300ミクロンでありうる。ナノスケールパターン形成方法を使用する場合、線幅は1ミクロン未満でありうる。
【0213】
ドットまたは円を作製することもできる。
【0214】
一態様では、相当量の金属粒子、微粒子またはナノ粒子の形成なしで、インク調合物を金属線および金属膜に変換することができる。
【0215】
スパッタリングのような他の方法によって調製される金属および線の特性を有する金属線および金属膜を調製することができる。
【0216】
金属線および金属膜は例えば少なくとも90重量%が金属、または少なくとも95重量%が金属、または少なくとも98重量%が金属でありうる。
【0217】
AFM測定によれば、金属線および金属膜は相対的に平滑でありうる。
【0218】
金属線および金属膜を使用して、電極または他の導電性構造などの構造を接合することができる。
【0219】
金属は、自然金属の仕事関数と実質的に同一の仕事関数を有しうる。例えば、差は25%以下、または10%以下でありうる。
【0220】
線および格子を形成することができる。多層および多成分金属特徴を調製することができる。
【0221】
基板
多種多様な固体材料を金属インクの堆積に供することができる。ポリマー、プラスチック、金属、セラミック、ガラス、ケイ素、半導体、および他の固体を使用することができる。有機および無機基板を使用することができる。ポリエステル型の基板を使用することができる。紙基板を使用することができる。プリント回路基板を使用することができる。本明細書に記載の用途に使用される基板を使用することができる。
【0222】
基板は、導電性または半導電性構造を含む電極および他の構造を含みうる。
【0223】
用途
インクジェット印刷を含む直接描画方法による堆積およびパターン形成は、例えばPique, Chrisey (Eds.), Direct-Write Technologies for Rapid Prototyping Applications, Sensors, Electronics, and Integrated Power Sources, Academic Press, 2002に記載されている。
【0224】
1つの用途は、トランジスタおよび電界効果トランジスタを含む半導体素子を形成することである。トランジスタは、共役または導電性ポリマーを含む有機成分を含みうる。
【0225】
用途としてはエレクトロニクス、プリンテッドエレクトロニクス、フレキシブルエレクトロニクス、太陽電池、ディスプレイ、スクリーン、軽量素子、LED、OLED、有機電子素子、触媒作用、燃料電池、RFID、およびバイオメディカルが挙げられる。
【0226】
堆積した金属は、例えば引き続く電気メッキで使用されるシード層として使用することができる。
【0227】
2Dおよび3D用途を含む他の技術用途は例えば"Flexible Electronics" by B.D. Gates, Science, vol 323, March 20, 2009, 1566-1567に記載されている。
【0228】
方法および用途を記載している特許文献の例としては、例えば米国特許出願公開第2008/0305268号; 第2010/0163810号; 第2006/0130700号; および米国特許第7,014,979号; 第7,629,017号; 第6,951,666号; 第6,818,783号; 第6,830,778号; 第6,036,889号; 第5,882,722号が挙げられる。
【実施例】
【0229】
実施例1
銀錯体
銀錯体および金錯体の両方の前駆体は銀カルボキシレートであった。それらの合成について、Ag2Oに基づく公知の方法(反応2)を、酢酸銀に基づくよりクリーンで安価な方法(反応1)と比較した。これらを以下に示し、2つの例示的なR基を示す。Ag2O法は固相反応に依存しており、完了に向かうことができず、分析的に純粋な材料を生じさせなかった。対照的に、カルボン酸と酢酸銀との間のメタセシス反応は完了に向かい、分析的に純粋な化合物を生じさせ、定量的収率で進行した。この反応(1)からの2つの銀錯体の元素分析は、イソブチレートおよびシクロプロペートについてそれぞれC、24.59; H、3.72およびC、24.68; H、2.56であった。理論値はイソブチレートおよびシクロプロペートについてそれぞれC、24.64; H、3.62およびC、24.90; H、2.61である。したがって、アプローチ(1)は(2)よりも優れている。

【0230】
銀錯体から、金属銀の膜、線および構造(下記参照)の生成に適したAg-カルボキシレートアミン化合物のライブラリーを調製することができた。
【0231】
実施例2
金錯体
実施例1からのカルボキシレート化合物は、R-Au-ClおよびAg-カルボキシレート(Rは供与結合σドナー、または孤立電子対である)の反応を介したR-Au-カルボキシレート錯体(金インク)の生成における重要な中間体でもある。この反応の推進力はAgCl析出物の形成であり、この析出物の低Ksp値および有機溶媒不溶性によってそれが反応平衡から除外されることで、全体的収率は85%超と相当に高くなる。
【0232】
R-Au-ClおよびAg-カルボキシレートの反応からの金カルボキシレート錯体の例としては以下が挙げられる。
Ph3PAuCl + AgOC(O)CH(CH3)2 → Ph3PAuOC(O)CH(CH3)2 + AgCl (反応3)
THTAuCl + AgOC(O)CH(CH3)2 → THTAuOC(O)CH(CH3)2 + AgCl (反応4)
THTAuCl + AgOC(O)(C3H5) → THTAuOC(O)(C3H5) + AgCl (反応5)
【0233】
略符号および構造は以下の通り。

【0234】
最初に、反応3に示すこの反応を介して、公知および未知の構造のトリフェニルホスフィン金カルボキシレート錯体を製作した。これまで未知の1つの種の結晶構造を図1に示す。これらは、トルエンおよび他の芳香族炭化水素中での優れた溶解性を示したが、十分に分離された金ナノ粒子を比較的小さい伝導路と共に生じさせうることから、熱処理時に均一膜を与えるには好ましくなかった。これはおそらく、加熱の際に、不揮発性トリフェニルホスフィンオキシドを形成することで絶縁性マトリックスを生じさせる、出発前駆体中の不揮発性トリフェニルホスフィンの存在が理由である。これらの金ナノ粒子のAFM(原子間力顕微鏡)画像を図2に示す。
【0235】
実施例3
THTを含む他の金錯体
トリフェニルホスフィン金カルボキシレート錯体によるナノ粒子形成および結果に従って、Au膜の製作についての異なる視点が開かれた。このアプローチは、例えば(a) 分子前駆体中の金属含有量を最大化し、(b) Au(I)をAu(0)に還元することが可能でありながら揮発性である配位子を使用し、(c) 前駆体錯体が依然として芳香族炭化水素溶媒に可溶性であるという前提を裏付け、かつ/または(d) 全体的な高収率で進行するように設計された。
【0236】
テトラヒドロチオフェン(THT)金錯体を調査した。この化学反応の開始は、例えば、公知のTHT-Au-Clを得るための市販のHAuCl4と2当量のTHTとの反応を通じてのものである。この分子から、Ag-カルボキシレートとTHT-Au-Clとの反応が不溶性AgCl副生成物の形成と共に進行し得、この副生成物を容易に濾去して所望で未知のTHT-Au-カルボキシレートを得ることができる(前頁の反応(4)および(5))。したがって、THT分子はAu(I)を還元し、カルボキシレートは開裂してCO2および小有機分子を放出し、小有機分子は溶媒から水素を分離する。
【0237】
金錯体(挿入図)のTGA(熱重量分析)を図3に示す。y軸を質量損失パーセントとし、x軸を温度とする。提示される構造の金残渣が約53%であるという理論値に基づいて、データが理論とよく一致していることを確認することができる。これは、仮定される構造が実際にTHT-Au-ClおよびAg-カルボキシレートの反応からの生成物の組成物であることをさらに裏づける。この段階において、急な遷移が約90℃で始まるにもかかわらず、THT-Au-カルボキシレート錯体がAu(0)を室温でゆっくりとメッキすること、および無溶媒油状物または芳香族炭化水素溶液として冷温貯蔵可能であることは注目に値する。
【0238】
THT-Au-カルボキシレートの合成後、トルエン前駆体溶液(濃度は変動するが200mg/mLまでの範囲)およびパッチピペットを使用して金膜を堆積させた。対数抵抗率対温度プロットから理解できるように、金属化の完了は110℃またはそれ未満で生じる。また、溶液が経時変化すると、金属化の開始温度はわずかに低下し始める。あるいは、UV/オゾン洗浄ガラスおよびSi/SiO2上に100mg/mL Au溶液を1000〜1300rpmでスピンコーティングした。2つの電極パッド間のAu線のAFM画像は、連続的な金属化を、粒子間の優れた結合性、および低い表面粗さと共に示す。SEM/EDXS測定は、Auが存在し、線が凝集性かつ連続的であることを明白に示す。
【0239】
実施例4
DEEDを含む金アミン錯体
THT-Au-シクロプロペート錯体のわずかな熱不安定性および減少した寿命が理由で、また部分的には銀アミン錯体が非常に高い性能を発揮することが理由で、2つの金錯体をN,N-ジエチルエチレンジアミン(DEED)と反応させた(以下参照)。(THT)Au(カルボキシレート)をトルエンに溶解させ、大過剰のDEEDを加えた。反応液を終夜攪拌し、翌日に溶液を減圧下で濾過および配置した。シクロプロペート錯体およびイソブチレート錯体の両方を類似の経路で合成した。それらの合成を以下に示す。いずれも金属化温度の増大を示した。これは安定性の向上を示唆している。
1) DEEDを有するTHT-Au-シクロプロペート

DEEDを有するTHT-Au-イソブチレート

【0240】
実施例5
TMEDAおよびDEEDを含む銀アミン錯体
Ag2OまたはAgO2C2H3(酢酸銀、新規方法)から合成した(前記参照)新規銀カルボキシレート化合物を、異なる多座アミンと無溶媒で反応させ、導電性インク材料としてのそれらの実用可能性について試験した。すべての反応を室温で終夜行い、溶液を重力濾過し、過剰のアミンを減圧除去した。アミン配位子は、Ag(I)からAg(0)への変換を実現する電子供与種(還元剤)として働く能力を有しうる。さらに、それらは、膜不純物を最小化する揮発性副生成物を生じさせることができる。他の配位子としてのカルボキシレートの選択は、アニオン性電荷を有する最小数の原子を有するキレート剤を選択することであり、これにより分子は中性になり、したがって芳香族炭化水素溶媒に可溶性になる。カルボキシレートはやはり開裂してCO2(ガス)および揮発性小有機分子を生じさせると想定された。
【0241】
銀シクロプロピオネートとN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)との間の反応を試みた。反応は成功したが、生成物は、銀親和性相互作用、分子内架橋カルボキシレートおよび分子間架橋TMEDAを有する複核銀錯体であった。TMEDAからの再結晶後に、また高金属含有量にもかかわらず、錯体はトルエンに不溶性でかつ吸湿性であることがわかった。
【0242】
1.) N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を有する銀(I)シクロプロペートの合成

図4は、上記反応からの複核錯体の回折由来の分子構造を示す。
【0243】
銀TMEDA系の2つの欠点は溶解性および水分感受性であった。比較的長いアルキル鎖をN末端に有する非対照二座アミン、および固相状態では有効に充填できない非環状カルボキシレートを使用することによって、溶解性の問題を改善することができると仮定された。後者に関して、水分感受性は弱い銀親和性相互作用(Ag-Ag結合)に由来しうると考えられ、この結合が周囲条件下で水分に曝露される際に加水分解されることによって、Ag配位圏内にH2O分子が配置される。したがって、銀イソブチレートを一方の出発原料として、N,N-ジエチルエチレンジアミン(DEED)を他方の反応物として使用することによって、Ag-Ag結合を有さない、より配位的に飽和し、可溶性で非吸湿性の単核分子を有望に得た。
【0244】
2) N,N-ジエチルエチレンジアミン(DEED)を有する銀(I)イソブチレートの合成

図5は、上記反応からの単核錯体の回折由来の分子構造を示す。
【0245】
単結晶X線構造(上記)から理解できるように、カルボキシレート、およびN,N-ジエチルを有する非対称二座アミンを含有する単核Ag(I)錯体が合成された。銀イオンの周囲の配位幾何構造は三方平面型であり、両方のアミン窒素は結合し、カルボキシレートの単一の酸素原子は配位している。この錯体は水分感受性ではなく、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素に可溶性である。したがって、それはいくつかの利点を与える。
【0246】
上記化合物の合成の成功に続いて、65〜75mg/mL濃度のトルエン溶液を作製し、線を2つの金電極パッド間に描線し、周囲条件下でアニールした。抵抗率の変化を温度関数として測定し、得られた金属を予備的に特性決定した。この目標に向けて以下のデータを得た。図6は、対数抵抗率(y軸)対温度(℃、x軸)の変化である。このデータから、190〜210℃で抵抗率の著しい損失(約7桁)が生じることは明らかである。得られた銀の組成および形態を試験するために、走査型電子顕微鏡法(SEM)およびエネルギー分散型X線分光法(EDXS)を行った。前者は高倍率で材料を可視化し、後者は元素組成に関する情報を与える。SEM画像は、金電極に付着した銀金属を明らかに示している。EDXSは、Ag、Si、OおよびCという4つの元素が存在することを示す。SiおよびOは基板から生じるものであり、考慮すべきではないが、AgおよびCは関連性がある。炭素は、表面に結合した汚染である可能性が最も高い。得られたAg(O)は金属である。
【0247】
図6は、対数抵抗率対温度グラフを示す。図7は上記Ag(I)錯体から堆積した金属銀のSEMを示し、図8はEDXSを示す。EDXSデータは、C、Si、OおよびAgのみが膜中に存在し、SiおよびOが基板より生じることを示した。
【0248】
パッチピペットからの溶液堆積(上記)を、Agインクを堆積させるために使用する最初の方法とした。しかし、これは、62.5mg/mLトルエンインクを使用する銀線のインクジェット堆積前の予備的実験の役割しか果たさなかった。図9において理解できるように、30μmノズルを使用して約200μm幅の線を得るインクジェット堆積は成功した。
【0249】
(DEED)Ag(イソブチレート)の成功を考慮し、カルボキシレートを取り替え、配位子としてのシクロプロペートアニオンを調査した。
【0250】
この錯体が類似の(DEED)Ag(イソブチレート)よりもわずかに高温で金属化されるということは、当初は多少なりとも驚くべきことであった。しかし、本発明は科学的理論によって限定されるものではないが、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)による銀(I)シクロプロペートの結晶充填によって、理論的根拠を明らかにすることができる。この構造においては、シクロプロピル基が互いに上に積層されることで分子構造が安定化するものであり、ここでは同様の挙動が想定される可能性がある。溶媒の蒸発後、この分子は、シクロプロピル基をジッパーとして整列することにより、得られた膜を熱安定化させて、より高い金属化温度を与えることができる。
DEEDを有する銀(I)シクロプロペート

【0251】
図10は、65mg/mLトルエン溶液からSi/SiO2上の2つの金電極パッド間に描線された(DEED)Ag(シクロプロペート)線の対数抵抗率対温度プロットである。この図に示すように、約190℃で出発する約50℃の範囲にわたって抵抗率が約7倍低下することがやはり理解される。興味深いことに、金属化は比較的高い温度で生じるものであり、このことは、著しい貯蔵寿命および寿命を有する製品において望ましいことである安定性の向上を示唆している。
【0252】
銀に関して、三座アミン(N,N,N',N',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、合成は以下の通り)を配位子として使用した。図示するように、三座アミンをすべてのその窒素ドナー原子を通じて配位することによって、四配位錯体を得る。図11もやはり、65mg/mLトルエン溶液からSi/SiO2上の2つの金電極パッド間に描線された(PMDEA)Ag(イソブチレート)線の対数抵抗率対温度プロットである。この錯体が前述の2つの銀錯体よりもさらに高い温度で金属化され、抵抗率の変化がほぼ同一で7倍であるということが理解できる。これは2つの要因が理由である可能性が最も高い。第一に、四配位Ag(I)は三配位カチオンよりも不安定性および移動性が低く、第二に、三座アミンは二座アミンよりもはるかに高い沸点を有するため、より揮発性が低くなり、より卑金属に分解されにくくなる。
1) N,N,N',N',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)を有する銀(I)シクロプロペート

【0253】
実施例6
銅錯体
部分フッ素化アセトアセトン誘導体とエタノールアミンとの反応によって三座シッフ塩基配位子を合成した。三座シッフ塩基を再結晶によって精製して約50%の生成物を得た。次にこの配位子をベンゼン中銅メトキシドCu(OMe)2と反応させ、終夜還流させた。対数抵抗率対温度プロットも示され(図12)、これは抵抗率が約4桁低下したことを示しており、銅金属の形成を示唆している。2つの金電極パッド間のSEM/EDXS(図13および14)によって、3つの元素Cu、SiおよびOの存在が確認される。SiおよびOはいずれも基板に由来し、一方、銅は錯体の熱分解に由来する。

【0254】
実施例7
さらなる構造情報
(DEED)Ag(イソブチレート)の成功を考慮し、シクロプロペートアニオンを配位子として使用した。回折由来の分子構造(図15)から理解できるように、この単核錯体は二座アミンおよびシクロプロピルカルボキシレートを含有する。四配位Ag1+イオンの周囲の幾何構造は四面体であり、両方のアミン窒素原子、およびカルボキシレートからの両方の酸素原子が結合している。対照的に、上述の既に示した(DEED)Ag(イソブチレート)においては、カルボキシレート酸素が1つだけ結合していた。2つのAg-O相互作用を有するこの化合物の異なる熱挙動(より高い金属化温度)は、(下記の充填要因のなかでも)これらが安定性の増大の原因でありうることを示唆している。
【0255】
実施例8
XPSおよび仕事関数を含むさらなる態様
原子間力顕微鏡法(AFM):AFM画像は、ガラス基板上に堆積(スピンキャスティング、100mg/mLトルエン溶液から1300rpm)されたAu(0)膜の存在を示した。この25μm2画像が証明するように、高さは約40〜60nmの範囲であり、低RMS表面粗さは7.90nmであった。膜は均一であってピンホール、欠損またはナノ粒子がなく、これらの観察は試料区域を通じて実質的に連続的であった。AFM測定の後で、試料の電気特性を調査した。これらを続けて記述する(下記参照)。
【0256】
導電率測定:(THT)Au-シクロプロペートに由来する薄膜について、周囲条件で標準的ばね押し圧力接触4点プローブ法によって導電率測定を行った。1000〜1300rpmでスピンキャスティングしたトルエン溶液から膜を形成した。次にホットプレート上にて約150℃の温度に約1分間加熱することによって膜の金属化を実現した。この方法によって、20〜50nmの範囲の厚さを有するAu膜が得られた。4点プローブステーションを使用して導電率を測定した。プローブによって作製した膜中の穿孔においてAFMによって膜厚を測定した。導電率[S・cm-1]は下記式に従って計算した。

式中、Rは(R = V/I)中の抵抗であり、lはcm単位の膜厚である。スピンキャスティングした金属インクから形成されたAuは平均約4 x 106 S cm-1の導電率を示すことがわかった。これはスパッタリングしたAu試料で観察されたものよりも1桁低いだけである。
【0257】
X線光電子分光法(XPS)および紫外光電子分光法(UPS):XPSおよびUPS測定を使用して界面を検査した。
【0258】
試料の調製
出発基板を高濃度ドーピング(n+)Siウェーハ(1.5 X 1.5インチ2)とした。Carnegie Mellon Universityのクラス100クリーンルーム内で緩衝酸化物エッチング液(BOE)でウェーハをエッチングして自然酸化物層を除去した。その後、最終試料を以下のように調製した。
スパッタリングAu膜: 5nmのTi(接着層)および50nmのAuをドーピングn+ Siウェーハ上にスパッタリングした。
金属前駆体溶液からのAu薄膜: n+ SiウェーハをUV-O3プラズマクリーナー内にて120℃で20分間洗浄した。次にウェーハを最初は室温でホットプレート上に配置した。その後、Au前駆体溶液を100mg/mLトルエン溶液としてウェーハ上に滴下した。次に温度を約150℃に増大させて溶媒を蒸発させ、金属膜を形成した。
【0259】
XPSおよびUPS測定
走査マルチプローブ表面分析システムPhi 5000 Versaprobeを使用して測定を行った。このシステムは、単色集束Al Kα X線(1486.7eV)源、He源および半球型分析器を含む。
XPS設定: 指定されない限り、X線ビームを試料に垂直に入射させ、発光した光電子を垂直試料に対して45°の発光角度で収集した。117.4eVの通過エネルギーを使用して広域走査データを収集した。23.5eVの通過エネルギーを使用して高分解能走査を得た。XPSスペクトルは、Cu 2p3/2の結合エネルギーを932.67±0.05eV、Au 4fの結合エネルギーを84.0±0.05eVとするエネルギースケールを基準とした。試験片の3mm x 3mm区域上で2kV Ar+スパッタリングを使用して試料のスパッタ洗浄を行った。公知の厚さを有するSiO2/Si基準材料を使用して、X線反射率法および偏光解析法によって、3mm X 3mmラスタ区域上の2kV Ar+のスパッタ速度は6.5nm/分であると決定される。
UPS設定: He I (hv=21.2eV)線を使用してUPS測定を行った。使用した通過エネルギーは0.585eVであった。UPS測定中、-5Vバイアスを試料に印加することで、試料および分析器の高結合エネルギーカットオフを分離した。
【0260】
PNNL(Pacific Northwest National Laboratory)が使用許可したCasaXPSソフトウェアを使用してXPSおよびUPSスペクトルを処理した。仕事関数値の決定をUPSスペクトルから、そのスペクトルの高および低結合エネルギーカットオフ(それぞれ二次カットオフ端およびフェルミ端)の線形フィット、ならびに結合エネルギー軸とのそれらの交点の決定によって行った。
【0261】
XPS結果
XPSは表面科学技術であり、その侵入深さ(試料上端での真空レベルからの試料採取深さ)は約50〜65Åである。それは薄膜の原子組成、ならびにそれらの近隣原子、酸化状態および相対存在量を調査することが可能である。すべての元素について、各コア原子軌道に関連する特徴的な結合エネルギーが存在し、すなわち、各元素は、光子エネルギーおよびそれぞれの結合エネルギーによって決定される運動エネルギーにおいて、X線光電子スペクトル中でのピークの特徴的なセットを生じさせる。
【0262】
したがって、特定のエネルギーにおけるピークの存在は、試験下の試料における特定の元素の存在を示し、さらに、ピークの強度は、試料領域内の元素の濃度に関連している。したがって、この技術は表面組成の定量的分析を与える。
【0263】
溶液から堆積され、100mg/mLトルエン溶液がnドーピングSi正方形上にドロップキャスティングされ、約150℃に加熱された金膜においては、Au、Ag、CおよびOという4つの元素が観察される。外来のAgは、Au前駆体合成(前記参照)の予想される結果であり、前駆体溶液のさらなる濾過または反応液の遠心分離とそれに続く再度の濾過によって除去することができる。しかし、この試料において、その存在は膜を通じて一定であった。CおよびOは、表面汚染(超高真空チャンバ内にロードロックする前に周囲条件下で試料を取り扱うことによってXPSで一般的に見られる)、または前駆体溶液の不完全な熱分解によって生じうる。スパッタリング実験によれば、これらの軽い元素は前者の汚染方法によって生じる可能性が最も高い。XPSスペクトルの深さプロファイリング(表面をゆっくりと浸食するAr+でスパッタリング。以下、用語「深さプロファイリング」)から理解できるように(図16)、AuおよびAgピークは依然として一定であり(CおよびOが衝突Ar+イオンによって除去される際にAuは実際には増大する)、一方、CおよびOピークはそれぞれ著しく減少するかまたは消失する。4分間(本発明者ら自身で実験を行った最大時間)スパッタリングした膜の元素組成は以下の通りである: Au(70.3%)、Ag(5.8%)、C(17.9%)およびO(5.9%)。Au 4fピークの結合エネルギー位置は、金がゼロ酸化状態にあり、したがって金属であると考えることができる(UPSによってさらに確認される)ことを明白に示す。CおよびO原子のピーク位置によれば、これらは互いに結合している可能性が最も高く、擬似大気汚染、または空気中の前駆体の不完全な燃焼によって生じるカーボネートまたはカルボキシレートとして存在する可能性が最も高い。
【0264】
重要なデータはUPSスペクトルである(図17)。UPSは、試料の最外側の1〜2個の単位セル(10Å)を調査する非常に表面感受性の高い技術である。このスペクトルから、Au膜が実際に金属であり、入射光子に対して金属として挙動すると決定することができる。それは、フェルミ準位エネルギー(EF)とカットオフエネルギー(ECO)との間の差に基づいて金の仕事関数(φAu)を計算することも可能にする。この計算に基づいて、前駆体溶液に由来する膜からφAuが4.9eVであると決定された。本発明者らの標準的比較例であるスパッタリング金試料では、φAuは4.7eVである。これは、本明細書に記載の金系が、薄膜トランジスタを製作するために使用される半導電性有機ポリマーに適合性があることを意味している。
【0265】
実施例9
さらなる態様、構造情報、銀チオエーテル
硫黄化合物が窒素に比べて良好な還元剤として働きうるという理論が立てられた。したがって、溶解性を確実にするために十分な側鎖を有する硫黄化合物を探した。市販の化合物3,6-ジチアオクタンが見出され、合成方法も文献で容易に入手可能であった。したがってジチオエーテル(B)は新規化合物ではない。前節に記載の銀イソブチレートをトルエン中3,6-ジチアオクタンと反応させ、終夜還流させた。次に溶液を濾過し、溶媒を減圧除去した。次に残りの黄色固体をその化学組成、およびAg(0)金属を形成するその能力について検査した。

【0266】
結晶を成長させ、分析に回し、図18に示す回折由来の構造を得た。銀親和性相互作用(すなわち銀中心の二量体化)および分子間架橋硫黄配位子に注目されたい。この構造は、既に伝えられた初期銀TMEDA錯体とまったく同様でありうる。しかし、この銀チオエーテル錯体は芳香族有機溶媒に相当に可溶性である。金属錯体の100mg/mLトルエン溶液およびパッチピペットを使用して、線を2つの金電極パッド間に描線し、周囲条件下でアニールし、熱安定性の予備分析を測定した。温度関数としての抵抗率の変化に目を向けると(図19)、すべての銀アミン錯体(100℃超)に比べてはるかに低い温度である約100℃で銀チオエーテル錯体が卑金属に分解されることが理解できる。この比較的低い金属化温度は、アミン配位子に比べて強いチオエーテルの還元力に起因する。
【0267】
図19は、対数抵抗率対温度グラフを示し、図20は、金属化後に金電極間に描線された銀線を示す。
【0268】
金属錯体も溶液中および結晶形態の両方で相当に安定であった。固体としてそれを冷蔵庫内で数週間、おそらくまたは十中八九無期限に、その外観または特性において見たところ全くまたはほとんど変化を示さずに貯蔵することができる。溶液中では、それはしばらくすると再結晶されるが、温水浴に容易に再溶解させて再度使用することができる。
【0269】
要するに、新規銀チオエーテル錯体の合成および特性決定を示し、その結晶構造を提示し、それを使用して銀金属を堆積させた。硫黄含有配位子の使用は、窒素性配位子に対する本発明者らのこれまでの取り組みからの逸脱を示すものであり、その優れた還元力が理由で、比較的低い金属化温度を与える。
【0270】
実施例10
ジメチルチオエーテル
THT-Au-カルボキシレート錯体は、低温(90〜100℃)で金属金を導く有望な金属化の結果を示したが、無期限にそれらが安定である温度-35℃で貯蔵しなければならないことから、それらの熱安定性は望ましい熱安定性よりもわずかに低かった。これは、THT配位子が与えた低い立体障害の結果であり得、硫黄原子に対してα位であるこの配位子のメチレン基はエタン架橋によってピン留めされていた。この欠点に対処するために、ジメチルチオエーテル(または硫化ジメチル)配位子を使用することによって金イオンの周囲のチオエーテルの立体効果を増大させようとした。

これにより、THT配位子に比べて2個の炭素原子および4個の酸素原子が除去され、したがって金属化に利用可能な金属含有量が増大する。合成を上記に示す。市販のC2H6SAuClを使用し、トルエン中室温で終夜攪拌して反応を行った。その推進力は、単純な重力濾過によって除去される不溶性AgCl析出物の形成である。Au原子の周囲の立体的かさ高さの増大が安定性の向上を与え、この錯体が0℃で無期限に安定になることから、この理論的根拠が正しいと証明された。驚くべきことに、それはTHT-Au-カルボキシレートと同様の温度で金属化され、例外的な導電率を有する高品質の金膜を与える。
【0271】
この錯体をトルエン溶液から結晶化し、X線回折に好適な結晶を同定した。回折由来の分子構造は、3つの独立したAu原子を、末端硫黄および架橋硫黄の両方、ならびに単結合したカルボキシレートと共に示す。金原子間の形式的な金親和性相互作用が存在する。回折由来の分子構造を図29に示す。
【0272】
実施例11
さらなる実施例
図21は、金属錯体の合成のさらなる局面を示す。唯一必要な精製工程は単純濾過である。反応は高い収率および分析純度で進行する。化合物は空気および水分に対して安定である。金の形成を減少させるために最終生成物を冷温貯蔵すべきである。
【0273】
図22は、マイクロマニピュレータアームによって最初に制御されるマイクロキャピラリーアプローチ、続いてピエゾスタックによる最終アプローチを示す。
【0274】
図23は、抵抗率対温度プロットに対する経時変化の影響を示す。
【0275】
図24は、描線された金線および金パッドを示す。
【0276】
図25は、金の高含有量を示すEDXデータを示す。
【0277】
図26は、金線のインクジェット印刷の実験を示し、THTAuシクロプロパネート10mg/乾燥キシレン溶液1mL、移動時間5mm/秒、1滴/0.04mm、SiO2上のプリントヘッド開口部30ミクロンとする。
【0278】
図27は、前駆体溶液アプローチをスパッタリングアプローチに対して比較する金ピークのXPSを示す。
【0279】
図28は、金膜のさらなる導電率および抵抗率データ、ならびにAFM画像を示す。
【0280】
米国仮出願第61/259,614号に記載の66個の態様
以下の66個の態様は米国仮出願第61/259,614号に記載されており、これはその全体が参照により組み入れられる。
態様1
少なくとも1つの金属と少なくとも2つの配位子とを含む少なくとも1つの金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子が、該金属へのσドナーであり、かつ該金属錯体を加熱する際に揮発し、第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2の配位子もまた、該金属錯体を加熱する際に揮発し、該金属錯体が25℃の溶媒に可溶性である、組成物。
態様2
金属が銀、金、銅または白金である、態様1記載の組成物。
態様3
金属が銀、金または銅である、態様1記載の組成物。
態様4
金属が銀または金である、態様1記載の組成物。
態様5
金属錯体が金属中心を1つだけ含む、態様1記載の組成物。
態様6
金属が(I)または(II)の酸化状態である、態様1記載の組成物。
態様7
第1の配位子が二座配位子である、態様1記載の組成物。
態様8
第1の配位子が三座配位子である、態様1記載の組成物。
態様9
第1の配位子が、少なくとも2個の窒素を含むアミン化合物である、態様1記載の組成物。
態様10
第1の配位子が、少なくとも2個の窒素を含む非対称アミン化合物である、態様1記載の組成物。
態様11
第1の配位子がチオフェンまたはアミンである、態様1記載の組成物。チオフェンはテトラヒドロチオフェンでありうる。
態様12
第1の配位子がホスフィンではない、態様1記載の組成物。
態様13
第2の配位子がカルボキシレートである、態様1記載の組成物。
態様14
第2の配位子が、アルキル基を含むカルボキシレートである、態様1記載の組成物。
態様15
第2の配位子が、-OOC-Rで表されるカルボキシレートであり、式中、Rがアルキル基であり、Rが10個以下の炭素原子を有する、態様1記載の組成物。
態様16
第2の配位子が、OOC-Rで表されるカルボキシレートであり、式中、Rがアルキル基であり、Rが5個以下の炭素原子を有する、態様1記載の組成物。
態様17
ナノ粒子を実質的に含まない、態様1記載の組成物。
態様18
ナノ粒子を全く含まない、態様1記載の組成物。
態様19
200℃未満の温度で始まる急な分解遷移を有する、態様1記載の組成物。
態様20
150℃未満の温度で始まる急な分解遷移を有する、態様1記載の組成物。
態様21
金属(0)の実質的堆積を伴わずに約25℃で少なくとも100時間貯蔵可能である、態様1記載の組成物。
態様22
錯体用の少なくとも1つの溶媒をさらに含む、態様1記載の組成物。
態様23
少なくとも1つの芳香族炭化水素溶媒をさらに含む、態様1記載の組成物。
態様24
組成物が少なくとも1つの溶媒をさらに含み、錯体の濃度が約200mg/mLまたはそれ未満である、態様1記載の組成物。
態様25
溶媒が芳香族炭化水素溶媒である、態様1記載の組成物。
態様26
金属錯体が少なくとも25重量%の金属を含む、態様1記載の組成物。
態様27
金属錯体が少なくとも50重量%の金属を含む、態様1記載の組成物。
態様28
金属錯体が少なくとも70重量%の金属を含む、態様1記載の組成物。
態様29
第2の配位子がカルボキシレートであり、第1の配位子が多座アミンであり、金属が銀、金または銅である、態様1記載の組成物。
態様30
第2の配位子がカルボキシレートであり、第1の配位子が多座非対称アミンであり、金属が銀または金であり、溶媒がトルエンである、態様1記載の組成物。
態様31
貨幣金属、カルボキシレート配位子およびテトラヒドロチオフェン配位子を含む錯体を含む、組成物。
態様32
テトラヒドロチオフェン金カルボキシレート錯体を含む組成物。
態様33
テトラヒドロチオフェン金イソブチレート錯体を含む組成物。
態様34
テトラヒドロチオフェン金シクロプロペート錯体を含む組成物。
態様35
約90℃を超えて加熱する際に金属金および揮発性非金属材料に変換されるテトラヒドロチオフェン金錯体を含む、組成物。
態様36
貨幣金属、カルボキシレート配位子、およびN,N-ジエチルを有する非対称二座アミンを含む錯体を含む、組成物。
態様37
N,N-ジエチルエチレンジアミン金カルボキシレート錯体を含む組成物。
態様38
N,N-ジエチルエチレンジアミン金イソブチレート錯体を含む組成物。
態様39
カルボキシレートおよびアミンと錯体形成した金を含む、組成物。
態様40
N,N-ジエチルエチレンジアミン金シクロプロペート錯体を含む組成物。
態様41
約90℃を超えて加熱する際に金属金および揮発性非金属材料に変換されるN,N-ジエチルエチレンジアミン金錯体を含む、組成物。
態様42
N,N-ジエチルエチレンジアミン銀カルボキシレート錯体を含む組成物。
態様43
N,N-ジエチルエチレンジアミン銀イソブチレート錯体を含む組成物。
態様44
N,N-ジエチルエチレンジアミン銀イソプロペート錯体を含む組成物。
態様45
約190℃を超えて加熱する際に金属銀および揮発性非金属材料に変換されるN,N-ジエチルエチレンジアミン銀錯体を含む、組成物。
態様46
貨幣金属、カルボキシレート、およびN,N,N',N',N''-ペンタメチルを有する三座アミンを含む錯体を含む、組成物。
態様47
N,N,N',N',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン銀カルボキシレート錯体を含む組成物。
態様48
N,N,N',N',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン銀イソブチレート錯体を含む組成物。
態様49
約90℃を超えて加熱する際に金属銀および揮発性非金属材料に変換されるN,N,N',N',N''-ペンタメチルジエチレントリアミン銀錯体を含む、組成物。
態様50
貨幣金属および三座シッフ塩基配位子を含む組成物。
態様51
銅および三座シッフ塩基配位子を含む組成物。
態様52
Cu(NH(CH2CH2OCH3)(C(CF3)CHCOCH3)を含む組成物。
態様53
約90℃を超えて加熱する際に金属銅および揮発性非金属材料に変換される、銅および三座シッフ塩基配位子を含む錯体を含む、組成物。
態様54
態様31〜53記載の組成物を含み、溶媒を任意でさらに含む、インク。
態様55
態様1〜54記載の組成物を含むインクを表面上に堆積させる工程、および該インクを加熱または照射することによって導電性金属膜を生成する工程を含む、方法。
態様56
堆積させる工程がインクジェット堆積によって行われる、態様55記載の方法。
態様57
生成する工程が約250℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われる、態様55記載の方法。
態様58
態様55〜57記載の方法に従って生成される導電性金属膜を含む、物品。
態様59
テトラヒドロチオフェン金クロリドと銀カルボキシレートとを反応させることによってテトラヒドロチオフェン金カルボキシレートおよび塩化銀を生成する工程を含む、方法。
態様60
テトラヒドロチオフェン金カルボキシレートとジアミンとを反応させることによってジアミン金カルボキシレート錯体を生成する工程を含む、方法。
態様61
銀カルボキシレートと非対称二座アミンとを反応させることによってアミン銀カルボキシレート錯体を生成する工程を含む、方法。
態様62
銀カルボキシレートと三座アミンとを反応させることによってアミン銀カルボキシレート錯体を生成する工程を含む、方法。
態様63
銅メトキシドと三座シッフ塩基とを反応させることによって、銅および該三座シッフ塩基を含む錯体を生成する工程を含む、方法。
態様64
態様59〜63記載の方法に従って生成される錯体を含む、組成物。
態様65
少なくとも1つの金属と少なくとも2つの配位子とを含む少なくとも1つの金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子がアミノ配位子であり、第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2の配位子がカルボキシレートであり、金属錯体が25℃の溶媒に可溶性であり、錯体中の金属の含有量が少なくとも50重量%である、組成物。
態様66
(I)または(II)酸化状態の少なくとも1つの金属と少なくとも2つの配位子とを含む少なくとも1つの中性金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子が、該金属への中性σドナーであり、かつ該金属錯体を150℃未満の温度まで加熱する際に揮発し、第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2のアニオン性配位子もまた、該金属錯体を150℃未満の温度まで加熱する際に揮発し、金属錯体が25℃の溶媒に可溶性である、組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの金属と少なくとも2つの配位子とを含む少なくとも1つの金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子が、該金属へのσドナーであり、かつ該金属錯体を加熱する際に揮発し、第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2の配位子もまた、該金属錯体を加熱する際に揮発し、該金属錯体が25℃の溶媒に可溶性である、組成物。
【請求項2】
該金属が銀、金、銅、白金、またはルテニウムである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該金属錯体が金属中心を1つだけ含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
該金属が(I)または(II)の酸化状態である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
第1の配位子が単座配位子である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
第1の配位子が二座配位子である、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
第1の配位子が三座配位子である、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
第1の配位子が、少なくとも2個の窒素を含むアミン化合物である、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
第1の配位子が、少なくとも2個の窒素を含む非対称アミン化合物である、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
第1の配位子がアミンである、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
第1の配位子が硫黄含有配位子である、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
第1の配位子がチオエーテルである、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
第1の配位子がホスフィンではない、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
第2の配位子がカルボキシレートである、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
第2の配位子が、アルキル基を含むカルボキシレートである、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
第2の配位子が、OOC-Rで表されるカルボキシレートであり、式中、Rがアルキル基であり、Rが5個以下の炭素原子を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
ナノ粒子を実質的に含まない、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
ナノ粒子を全く含まない、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
200℃未満の温度で始まる急な分解遷移を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
150℃未満の温度で始まる急な分解遷移を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
金属(0)の実質的堆積を伴わずに約25℃で少なくとも100時間貯蔵可能である、請求項1記載の組成物。
【請求項22】
前記錯体用の少なくとも1つの溶媒をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項23】
少なくとも1つの芳香族炭化水素溶媒をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも1つの溶媒をさらに含み、前記錯体の濃度が約200mg/mLまたはそれ未満である、請求項1記載の組成物。
【請求項25】
前記溶媒が芳香族炭化水素溶媒である、請求項1記載の組成物。
【請求項26】
前記金属錯体が少なくとも25重量%の金属を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項27】
前記金属錯体が少なくとも50重量%の金属を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項28】
前記金属錯体が少なくとも70重量%の金属を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項29】
第2の配位子がカルボキシレートであり、第1の配位子が多座アミンであり、前記金属が銀、金または銅である、請求項1記載の組成物。
【請求項30】
第2の配位子がカルボキシレートであり、第1の配位子が多座非対称アミンであり、前記金属が銀または金であり、前記溶媒がトルエンまたはキシレンである、請求項1記載の組成物。
【請求項31】
少なくとも1つの金属と少なくとも2つの配位子とを含む少なくとも1つの金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子が硫黄含有配位子であり、第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2の配位子がカルボキシレートであってよく、該金属錯体が25℃の溶媒に可溶性である、組成物。
【請求項32】
前記錯体中の金属の含有量が少なくとも50重量%であり、前記組成物がナノ粒子を実質的に含まない、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
前記硫黄含有配位子が環状または直鎖状チオエーテル配位子である、請求項31記載の組成物。
【請求項34】
前記硫黄含有配位子が環状チオエーテルである、請求項31記載の組成物。
【請求項35】
前記硫黄含有配位子がジアルキルチオエーテルである、請求項31記載の組成物。
【請求項36】
前記硫黄含有配位子がジチアアルカンである、請求項31記載の組成物。
【請求項37】
前記硫黄含有配位子がジチオオクタンである、請求項31記載の組成物。
【請求項38】
前記硫黄含有配位子が1個または2個の硫黄原子を含む、請求項31記載の組成物。
【請求項39】
前記硫黄含有配位子が二座配位子である、請求項31記載の組成物。
【請求項40】
前記硫黄含有配位子が6個以下の炭素を有する、請求項31記載の組成物。
【請求項41】
少なくとも1つの金属と少なくとも2つの配位子とを含む少なくとも1つの金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子がアミノ配位子であり、第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2の配位子がカルボキシレートであってよく、該金属錯体が25℃の溶媒に可溶性である、組成物。
【請求項42】
前記錯体中の金属の含有量が少なくとも50重量%であり、前記組成物がナノ粒子を実質的に含まない、請求項41記載の組成物。
【請求項43】
第2の配位子がカルボキシレートである、請求項41記載の組成物。
【請求項44】
前記金属が銀、金、銅、白金、またはルテニウムである、請求項41記載の組成物。
【請求項45】
前記金属錯体が金属中心を1つだけ含む、請求項41記載の組成物。
【請求項46】
前記金属が(I)または(II)の酸化状態である、請求項41記載の組成物。
【請求項47】
第1の配位子が単座配位子である、請求項41記載の組成物。
【請求項48】
第1の配位子が二座配位子である、請求項41記載の組成物。
【請求項49】
第1の配位子が三座配位子である、請求項41記載の組成物。
【請求項50】
第1の配位子が、少なくとも2個の窒素を含む非対称アミノ配位子である、請求項41記載の組成物。
【請求項51】
(I)または(II)酸化状態の少なくとも1つの金属と少なくとも2つの配位子とを含む少なくとも1つの中性金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子が、該金属への中性σドナーであり、かつ該金属錯体を150℃未満の温度まで加熱する際に揮発し、第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2のアニオン性配位子もまた、該金属錯体を150℃未満の温度まで加熱する際に揮発し、任意で該金属錯体が25℃の溶媒に可溶性である、組成物。
【請求項52】
第1の配位子が硫黄含有配位子である、請求項51記載の組成物。
【請求項53】
第1の配位子がテトラヒドロチオフェンである、請求項51記載の組成物。
【請求項54】
第1の配位子がチオエーテルである、請求項51記載の組成物。
【請求項55】
第1の配位子が少なくとも2個の硫黄を含む、請求項51記載の組成物。
【請求項56】
第1の配位子が6個以下の炭素原子を有する、請求項51記載の組成物。
【請求項57】
第1の配位子が4個以下の炭素原子を有する、請求項51記載の組成物。
【請求項58】
第1の配位子が2個以下の炭素原子を有する、請求項51記載の組成物。
【請求項59】
第1の配位子第2の配位子がカルボキシレートである、請求項51記載の組成物。
【請求項60】
前記錯体中の炭素原子の数が12以下である、請求項51記載の組成物。
【請求項61】
請求項1〜60のいずれか一項記載の組成物を含むインクを表面上に堆積させる工程、および
該インクを加熱または照射することによって導電性金属膜を生成する工程
を含む、方法。
【請求項62】
前記生成する工程が加熱することによって行われる、請求項61記載の方法。
【請求項63】
前記生成する工程が照射することによって行われる、請求項61記載の方法。
【請求項64】
前記インクが請求項1記載の組成物を含む、請求項61記載の方法。
【請求項65】
前記インクが請求項31記載の組成物を含む、請求項61記載の方法。
【請求項66】
前記インクが請求項41記載の組成物を含む、請求項61記載の方法。
【請求項67】
前記インクが請求項51記載の組成物を含む、請求項61記載の方法。
【請求項68】
前記金属が金、銀または銅である、請求項61記載の方法。
【請求項69】
前記インクが、堆積前にナノ粒子を実質的に含まない、請求項61記載の方法。
【請求項70】
前記インクが、堆積後にナノ粒子を実質的に含まない、請求項61記載の方法。
【請求項71】
前記堆積させる工程がインクジェット堆積によって行われる、請求項61記載の方法。
【請求項72】
前記生成する工程が約250℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われる、請求項61記載の方法。
【請求項73】
前記生成する工程が約200℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われる、請求項61記載の方法。
【請求項74】
前記生成する工程が約150℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われる、請求項61記載の方法。
【請求項75】
前記膜が線の形態であり、該線が少なくとも1,000S/cmの導電率を有する、請求項61記載の方法。
【請求項76】
前記膜が線の形態であり、該線が少なくとも5,000S/cmの導電率を有する、請求項61記載の方法。
【請求項77】
前記膜が線の形態であり、該線が少なくとも10,000S/cmの導電率を有する、請求項61記載の方法。
【請求項78】
前記膜が線の形態であり、該線が、純金属の仕事関数の25パーセント以内の仕事関数を有する、請求項61記載の方法。
【請求項79】
前記膜が線の形態であり、該線が、純金属の仕事関数の10パーセント以内の仕事関数を有する、請求項61記載の方法。
【請求項80】
前記膜が線の形態であり、該線が、純金属の仕事関数の5パーセント以内の仕事関数を有する、請求項61記載の方法。
【請求項81】
堆積物を形成するためにインクを表面上に堆積させる工程、該堆積物を、純金属の仕事関数の25パーセント以内の仕事関数を示す金属膜に変換する工程
を含む、方法。
【請求項82】
前記堆積物が加熱される、請求項81記載の方法。
【請求項83】
前記堆積物が照射される、請求項81記載の方法。
【請求項84】
前記インクが請求項1〜60のいずれか一項記載の組成物を含む、請求項81記載の方法。
【請求項85】
前記インクが請求項1記載の組成物を含む、請求項81記載の方法。
【請求項86】
前記インクが請求項31記載の組成物を含む、請求項81記載の方法。
【請求項87】
前記インクが請求項41記載の組成物を含む、請求項81記載の方法。
【請求項88】
前記インクが請求項51記載の組成物を含む、請求項81記載の方法。
【請求項89】
前記金属が金、銀または銅である、請求項81記載の方法。
【請求項90】
前記インクが、堆積前にナノ粒子を実質的に含まない、請求項81記載の方法。
【請求項91】
前記インクが、堆積後にナノ粒子を実質的に含まない、請求項81記載の方法。
【請求項92】
前記堆積させる工程がインクジェット堆積によって行われる、請求項81記載の方法。
【請求項93】
前記変換する工程が、約250℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われる、請求項81記載の方法。
【請求項94】
前記変換する工程が、約200℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われる、請求項81記載の方法。
【請求項95】
前記変換する工程が、約150℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われる、請求項81記載の方法。
【請求項96】
前記膜が線の形態であり、該線が少なくとも1,000S/cmの導電率を有する、請求項81記載の方法。
【請求項97】
前記膜が線の形態であり、該線が少なくとも5,000S/cmの導電率を有する、請求項81記載の方法。
【請求項98】
前記膜が線の形態であり、該線が少なくとも10,000S/cmの導電率を有する、請求項81記載の方法。
【請求項99】
前記膜が線の形態であり、前記金属膜が、純金属の仕事関数の10パーセント以内の仕事関数を示す、請求項81記載の方法。
【請求項100】
前記膜が線の形態であり、前記金属膜が、純金属の仕事関数の5パーセント以内の仕事関数を示す、請求項81記載の方法。
【請求項101】
少なくとも1つの金属と少なくとも2つの配位子とを含む少なくとも1つの金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子が、該金属へのσドナーであり、かつ該金属錯体を加熱する際に揮発し、少なくとも1つの第2の配位子もまた、該金属錯体を加熱する際に揮発し、該金属錯体が25℃の溶媒に可溶性である、組成物。
【請求項102】
第1の配位子および第2の配位子が同一の配位子である、請求項101記載の組成物。
【請求項103】
第1の配位子および第2の配位子が異なる配位子である、請求項101記載の組成物。
【請求項104】
前記金属が銅である、請求項101記載の組成物。
【請求項105】
第1の配位子が少なくとも1個の窒素原子および少なくとも2個の酸素原子を含む、請求項101記載の組成物。
【請求項106】
第1の配位子および第2の配位子が同一の配位子であり、第1の配位子が少なくとも1個の窒素原子および少なくとも2個の酸素原子を含む、請求項101記載の組成物。
【請求項107】
第1の配位子および第2の配位子が同一の配位子であり、第1の配位子が、少なくとも1個の窒素原子および少なくとも2個の酸素原子、ならびに少なくとも1個のフッ素を含む、請求項101記載の組成物。
【請求項108】
第1の配位子が三座配位子である、請求項101記載の組成物。
【請求項109】
第1の配位子が三座シッフ塩基配位子である、請求項101記載の組成物。
【請求項110】
第1の配位子が、少なくとも1個の第二級アミン基、少なくとも1個のカルボニル基、および少なくとも1個のエーテル基を含む、請求項101記載の組成物。
【請求項111】
少なくとも1つの金属と少なくとも2つの配位子とを含む少なくとも1つの金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子が、該金属へのσドナーであり、かつ該金属錯体を約250℃またはそれ未満の温度まで加熱する際に揮発し、第1の配位子と異なっていてもよい少なくとも1つの第2の配位子もまた、該金属錯体を約250℃またはそれ未満の温度まで加熱する際に揮発する、組成物。
【請求項112】
前記金属錯体が150℃またはそれ未満の温度まで加熱される、請求項111記載の組成物。
【請求項113】
前記金属錯体が25℃で可溶性である、請求項111記載の組成物。
【請求項114】
加熱の際に、純金属の仕事関数の25パーセント以内の仕事関数を有する金属を与える、請求項111記載の組成物。
【請求項115】
加熱の際に、少なくとも1,000S/cmの導電率を有する金属組成物を与える、請求項111記載の組成物。
【請求項116】
堆積物を形成するためにインクを表面上に堆積させる工程、該堆積物を、少なくとも1,000S/cmの導電率を示す金属膜に変換する工程
を含む、方法。
【請求項117】
前記導電率が少なくとも5,000S/cmである、請求項116記載の方法。
【請求項118】
前記導電率が少なくとも10,000S/cmである、請求項116記載の方法。
【請求項119】
前記変換する工程が、約200℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われる、請求項116記載の方法。
【請求項120】
前記変換する工程が、約150℃またはそれ未満の温度で加熱することによって行われる、請求項116記載の方法。
【請求項121】
少なくとも1つの金属と該金属に結合した少なくとも2つの配位子とから本質的になる少なくとも1つの金属錯体を含む、組成物であって、少なくとも1つの第1の配位子が、該金属への中性ドナーであり、かつ該金属錯体を加熱する際に揮発し、第1の配位子とは異なる少なくとも1つの第2の配位子が、該金属錯体を加熱する際に同じく揮発し、かつ負に荷電している、組成物。
【請求項122】
第1の配位子が窒素および/または硫黄から本質的になる、請求項121記載の組成物。
【請求項123】
第2の配位子がカルボキシレートから本質的になる、請求項121記載の組成物。
【請求項124】
前記錯体がトルエンに可溶性である、請求項121記載の組成物。
【請求項125】
前記金属、第1の配位子、および第2の配位子から本質的になる前記錯体が、中性に荷電している、請求項121記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公表番号】特表2013−510241(P2013−510241A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538066(P2012−538066)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/055874
【国際公開番号】WO2011/057218
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(504337958)カーネギー メロン ユニバーシティ (15)
【Fターム(参考)】