金属ガスケット
【課題】弾性シール材のシール性能の劣化防止、さらにはガスケット自体の寿命を向上する。
【解決手段】基板1に対し、燃焼室孔2等が開口すると共に、シールラインに沿ってビードが形成され、そのビードの少なくとも一部は、基板1を屈曲してなる金属ビード14と、その金属ビード14の凸部側表面に固着すると共に凸部裏側の凹部に充填されて上記金属ビード14と共にバネ力を発生可能な弾性シール材24a、24bからなるゴムビードとの合成ビードで構成される金属ガスケットである。上記弾性シール材24a、24bの表面は、冷却水およびオイルに対し耐性を有する被覆膜26a、26bで被覆されている。
【解決手段】基板1に対し、燃焼室孔2等が開口すると共に、シールラインに沿ってビードが形成され、そのビードの少なくとも一部は、基板1を屈曲してなる金属ビード14と、その金属ビード14の凸部側表面に固着すると共に凸部裏側の凹部に充填されて上記金属ビード14と共にバネ力を発生可能な弾性シール材24a、24bからなるゴムビードとの合成ビードで構成される金属ガスケットである。上記弾性シール材24a、24bの表面は、冷却水およびオイルに対し耐性を有する被覆膜26a、26bで被覆されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、内燃機関を構成するシリンダブロックとシリンダヘッドとの接合面間に介挿して該接合面間をシールする金属ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
金属ガスケットとしては、例えば特許文献1に記載のガスケットがある。
この金属ガスケットは、ステンレス鋼板や軟鋼板などの薄肉金属板から基板を構成し、その基板に対し燃焼室孔、ボルト孔、オイル孔、水孔等の各種の孔を開口し、更に、シールが必要な孔の周囲をシールラインに沿って凸状のフルビードやステップ状のハーフビードからなる金属ビードで囲繞し更に、その金属ビードの上下両面に耐熱性と弾力性を有する弾性シール材を配置して、金属ビードと弾性シール材によるゴムビードとからなる合成ビードの合成バネ力でシールしている。そして、合成バネでシールすることで基板の剛性や締付けトルクの低減を図ることが出来る結果、エンジンの小型化やアルミ化に有効に対応することが出来る。
【0003】
また、燃焼室孔の外周を囲繞するように、基板に板を積層して増厚する増厚部を配置する。その増厚部は、ボア内の高圧の燃焼ガスをシールすると共に当該増厚部より外側を囲繞するビードの過圧縮を制限する役目を有している。
また、基板の片面又は両面に減摩剤を塗布してエンジン材質の違いによる熱膨張差やエンジン稼動による爆発力での振動でガスケットとエンジンとの度重なるズレによってフレッチングが起るのを防止する場合もある。
【特許文献1】国際公開WO2003/085294
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記弾性シール材は、シリコンゴムを始めフッ素ゴム、NBR(ニトリル)ゴム等が使用されている。この弾性シール材は、オイル孔を通過するオイルや冷却水孔を通過する冷却水と接触が繰り返され、その接触するオイルや冷却水に接触する部分の弾性シール材が侵食される結果、シールラインを確保している弾性シール材の弾力が経時的に減衰することがある。
また、長期間の使用中においてはオイルや冷却水の劣化も有り又指定商品で無い粗悪品が使われることもあり、これらの商品に弾性シール材が侵されて徐々に弾性シール材の弾力性を低下させることもある。
【0005】
なお、エンジンの種類により、温度、冷却水の種類、オイルの種類等が異なり、更にエンジンのシリンダブロックの材質とシリンダヘッドの材質の違いによる熱膨張差や爆発時に発生する脈動で面圧の高い増厚部上で横滑り現象が発生してフレッチングが起こることに鑑み、基板の片面又は両面に減摩材が塗布されることがあり、この場合に、減摩材は弾性シール材の表面にも塗布されることもあるが、この減摩材は、弾性シール材を保護する目的のものでは無い。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、弾性シール材のシール性能の劣化防止、さらにはガスケット自体の寿命を向上することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、薄肉金属板からなる基板に対し、燃焼室孔、ボルト孔、冷却水孔、オイル孔が開口すると共に、シールラインに沿ってビードが形成され、そのビードの少なくとも一部は、基板を屈曲してなる金属ビードと、その金属ビードの凸部側表面に固着すると共に凸部裏側の凹部に充填されて上記金属ビードと共にバネ力を発生可能な弾性シール材からなるゴムビードとの合成ビードで構成される金属ガスケットであって、
上記弾性シール材の表面のうち、少なくとも上記冷却水孔を通過する冷却水若しくはオイル孔を通過するオイルと接触する可能性のある部位を被覆する被覆膜を設け、その被覆膜は、上記冷却水及びオイルに対し耐性を有する素材からなることを特徴とするものである。
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、シリンダブロックとシリンダヘッドとの接合面間に介挿される金属ガスケットであって、
上記弾性シール材表面を覆う被覆膜は、少なくとも上記接合面と対向している基板表面の全体を覆っていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、弾性シール材のオイルや冷却水に対する耐久性が向上し、その結果、金属ガスケットの寿命が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る金属ガスケット10を示す部分平面図である。図2は、図1のA−A線での断面図である。
(構成)
本実施形態の金属ガスケット10は、多気筒を有する内燃機関のシリンダヘッドとシリンダブロックとの対向する接合面間に介挿される金属ガスケット10の例である。
【0009】
その金属ガスケット10の基板1の素材としては、例えばステンレス鋼板または軟鋼板、アルミニウム板等の金属薄板を適宜、採用可能であるが、ここでは、ビードとして後述のような合成ビードを採用する結果、剛性の低い軟鋼板を使用することができる。
その基板1の中央部には、図1に示すように、長手方向に沿って、複数個の燃焼室孔2が配列している。また、燃焼室孔2よりも基板1の外周側には複数個のボルト孔3,水孔4、及びオイル孔5が開口している。
【0010】
各燃焼室孔2の開口端部全周は、上方に折り返されて最も肉厚の厚い増厚部6が形成され、これにより、他の基板1部分との間に板厚差が設けられてビードに対し過圧縮を制限するストッパとなる。各増厚部6は対応する燃焼室孔2の外縁全周を個別に囲繞している。また、基板1の外周側に、第2の増厚部7が形成されている。
【0011】
また、上記燃焼室孔2及び増厚部6を囲繞するように内側シールラインL1が設定されると共に、基板1の外周側やオイル孔5などを囲むように外側シールラインL2が設定される。そして、各シールラインL1,L2に沿って、図2に示すように、基板1を板厚方向に屈曲成形して形成された凸状のフルビードからなる金属ビード14,15が形成されている。また、上記金属ビード14,15の凸部側の基板1表面に弾性シール材24a、25aが固着すると共に、各凸部側の裏側に位置する凹部内にも同様の弾性シール材24b、25bが充填されている。上記弾性シール材24a、25a,24b、25bは、例えばフッ素ゴム、NBR、シリコンゴムなどのゴム材料や樹脂材料など、耐熱性及び弾性を有する素材からなる。
【0012】
上記金属ビードの各凸部側に固着された弾性シール材24a、25aは、金属ビード14,15の凸部表面の両側を覆うと共に若干凸部に連続する平坦部も覆うように設定されている。すなわち、本実施形態では、凸部側の弾性シール材24a、25aの幅は、金属ビード14,15の幅よりも若干広めに設定されている。もっとも、金属ビード14,15の幅と同等の幅に設計しても良い。また、当該弾性シール材24a、25aの高さは、金属ビード14,15の高さと略々と高さとされている。ここで、上述のように金属ビード14,15の凸部に連続する基板1の平坦部にも、金属ビード14,15の高さ相当の弾性シール材24a、25aを設けても良いが、弾性シール材24a、25aからなるゴムビームの幅が金属ビード14,15の幅の1.5倍程度以下に収まるようにすることが好ましい。また、金属ビード14,15及び弾性シール材24a、25aの高さは、増厚部6の厚さまで圧縮された時に、両面に設けられた弾性シール材24a、25aの圧縮率が例えば40%以内に収まるように設定されて、当該弾性シール材24a、25a,24b、25bが圧縮破壊することを防止する。
【0013】
さらに、本実施形態では、上記上下の弾性シール材24a、25a,24b、25bの各表面を完全に被覆するよう、塗布などによって被覆膜26a、26b、27a、27bが形成されている。この被覆膜26a、26b、27a、27bは、耐熱性と共に、対象とするエンジンの冷却水やオイルに対し耐水性及び耐油性を有する素材から構成されている。例えば、フッ化樹脂系又はボリアミド系等耐薬品性の高い素材から構成する。
【0014】
(作用・効果)
上記弾性シール材24a、25a,24b、25bは、被覆膜26a、26b、27a、27bを介して、冷却水はオイルと接触する。
ここで、内燃機関は長期間使用されるものであるが、上記冷却水やオイルは、長時間の使用中に受ける冷熱の繰り返しや、不純物の混入等で成分変化を起し徐々に劣化していく。このとき、上記劣化していく冷却水やオイルが、直接、弾性シール材24a、25a,24b、25bに接触する場合には、当該接触している弾性シール材24a、25a,24b、25bの部分が、徐々に侵食膨潤され、徐々にシール面圧が低下することになる。
【0015】
これに対し、上記オイルや冷却水に対し耐油性、耐冷却水性に優れた被覆膜26a、26b、27a、27bで弾性シール材表面に覆うことで、当該シール力を発揮する弾性シール材24a、25a,24b、25bの表面が直接オイルや冷部水に接触することが防止される結果、弾性シール材24a、25a,24b、25bを含めた合成ビードのシール力の経時的劣化が抑えられる。
【0016】
ここで、上記金属ガスケット10を搭載したエンジンに使用されるオイルや冷却水は、エンジンを開発している時は条件も安定しているが、車体に搭載して市場に出た場合には、異なった条件、環境で使用され、又長期間の使用で自然と徐徐に劣化は免れられない。時には定期メンテナンスを忘れられ、また純正品以外の粗悪品を使用することも有る。このような状況下でも、ガスケット10には、エンジン性能確保と保全の役目を担うエンジンオイルや冷却水には長期間の完全シールが要求される。本実施形態の金属ガスケット10は、このような条件下でも長期間、弾性シール材24a、25a,24b、25bが劣化したオイルや冷部水からの侵食が防止され、長期的にガスケット性能を確保することが可能となる。
【0017】
なお、上記実施形態では、燃焼室孔2側の端部を折り返すことで、基板1に板を積層して増厚部6を形成する場合を例示しているが、基板1に別の板を積層して溶接などで固定するなどによって上方若しくは下方に増厚するように、増厚部6を形成しても良い。基板1の燃焼室孔2周りの厚さが厚くなるように鍛造で形成しても良い。
【0018】
(別例1)
図3は、金属ビード14,15の一部をハーフビードで形成した場合の例である。この場合であっても、金属ビード14,15の両面に形成する弾性シール材24a、25a,24b、25bの表面を被覆するように被覆膜26a、26b、27a、27bを形成すればよい。
(別例2)
図4及び図5は、被覆膜26aを、金属ビード14,15の凸部側の弾性シール材24a、25aの表面、及びそれに連続する基板1上面全体に形成したものである。
【0019】
基板1下面は全面が接合面に押し付けられ、凹部側の弾性シール材24b、25bがオイルや冷却水との接触が凸部側の弾性シール材24a、25aよりも少ないことに鑑み、上面側にのみ被覆を設けた例である。
また、基板1上面に被覆膜26aを設けることで、基板1の材料が、安価な軟鉄等、条件によっては腐食を起すような場合に、腐食防止効果となる。更に、弾性シール材24a、25aに被覆膜26aを基板1全体に塗布することにより、弾性シール材24aの保護と基板1の防錆効果が同時に達成でき、更に部分的に塗布するより生産効率アップになる。また、基板1である金属自体の腐食や汚れによるメッキ剥離による金属の侵食を防止出来る。
【0020】
さらにシール面圧の高い第一増厚部面上は基材のみの場合、エンジン接合面加工粗さが直接接触する為に燃焼ガスが微小に漏れることがある。仮に微小の圧漏れがあっても第一増厚部の外側近傍にある金属ビード14,15とビードに成型した弾性シール材24aのビードが完全シールは可能であるが。たとえ微小でもガス漏れが継続することは長期的には影響が出る事も予想されるので被覆する方が望ましい。
【0021】
以下の別例でも同様な効果を得る。
(別例3)
図6及び図7は、基板1の上下両面の全体を被覆膜26a、26bで覆う場合の例である。
(別例4)
ガスケット10は、図8〜図11のように、複数の基板1を積層して構成されたり、積層した基板1間に副板20を介挿して構成されたりする。
この場合に、図8〜図11のように、接合面に対向する基板1の表面に位置する弾性シール材表面を覆うように被覆膜26aを配置してもよい。なお、図8及び図9は、弾性シール材の部分だけを覆う例であり、図10及び図11は、基板1表面の全体を覆う例である。
もちろん、図12のように、各基板1の上下両面全体を被覆膜26aで覆っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る金属ガスケットを示す部分平面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】別例1を説明する断面図である。
【図4】別例2を説明する断面図である。
【図5】別例2を説明する断面図である。
【図6】別例3を説明する断面図である。
【図7】別例3を説明する断面図である。
【図8】別例4を説明する断面図である。
【図9】別例4を説明する断面図である。
【図10】別例4を説明する断面図である。
【図11】別例4を説明する断面図である。
【図12】別例4を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 基板1
2 燃焼室孔
3 ボルト孔
4 水孔
6 増厚部
14,15 金属ビード
10 金属ガスケット
20 副板
24a、24b、25a、25b 弾性シール材
25a、25b、27a、27b 被覆膜
L1 内周側シールライン
L2 外周側シールライン
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、内燃機関を構成するシリンダブロックとシリンダヘッドとの接合面間に介挿して該接合面間をシールする金属ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
金属ガスケットとしては、例えば特許文献1に記載のガスケットがある。
この金属ガスケットは、ステンレス鋼板や軟鋼板などの薄肉金属板から基板を構成し、その基板に対し燃焼室孔、ボルト孔、オイル孔、水孔等の各種の孔を開口し、更に、シールが必要な孔の周囲をシールラインに沿って凸状のフルビードやステップ状のハーフビードからなる金属ビードで囲繞し更に、その金属ビードの上下両面に耐熱性と弾力性を有する弾性シール材を配置して、金属ビードと弾性シール材によるゴムビードとからなる合成ビードの合成バネ力でシールしている。そして、合成バネでシールすることで基板の剛性や締付けトルクの低減を図ることが出来る結果、エンジンの小型化やアルミ化に有効に対応することが出来る。
【0003】
また、燃焼室孔の外周を囲繞するように、基板に板を積層して増厚する増厚部を配置する。その増厚部は、ボア内の高圧の燃焼ガスをシールすると共に当該増厚部より外側を囲繞するビードの過圧縮を制限する役目を有している。
また、基板の片面又は両面に減摩剤を塗布してエンジン材質の違いによる熱膨張差やエンジン稼動による爆発力での振動でガスケットとエンジンとの度重なるズレによってフレッチングが起るのを防止する場合もある。
【特許文献1】国際公開WO2003/085294
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記弾性シール材は、シリコンゴムを始めフッ素ゴム、NBR(ニトリル)ゴム等が使用されている。この弾性シール材は、オイル孔を通過するオイルや冷却水孔を通過する冷却水と接触が繰り返され、その接触するオイルや冷却水に接触する部分の弾性シール材が侵食される結果、シールラインを確保している弾性シール材の弾力が経時的に減衰することがある。
また、長期間の使用中においてはオイルや冷却水の劣化も有り又指定商品で無い粗悪品が使われることもあり、これらの商品に弾性シール材が侵されて徐々に弾性シール材の弾力性を低下させることもある。
【0005】
なお、エンジンの種類により、温度、冷却水の種類、オイルの種類等が異なり、更にエンジンのシリンダブロックの材質とシリンダヘッドの材質の違いによる熱膨張差や爆発時に発生する脈動で面圧の高い増厚部上で横滑り現象が発生してフレッチングが起こることに鑑み、基板の片面又は両面に減摩材が塗布されることがあり、この場合に、減摩材は弾性シール材の表面にも塗布されることもあるが、この減摩材は、弾性シール材を保護する目的のものでは無い。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、弾性シール材のシール性能の劣化防止、さらにはガスケット自体の寿命を向上することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、薄肉金属板からなる基板に対し、燃焼室孔、ボルト孔、冷却水孔、オイル孔が開口すると共に、シールラインに沿ってビードが形成され、そのビードの少なくとも一部は、基板を屈曲してなる金属ビードと、その金属ビードの凸部側表面に固着すると共に凸部裏側の凹部に充填されて上記金属ビードと共にバネ力を発生可能な弾性シール材からなるゴムビードとの合成ビードで構成される金属ガスケットであって、
上記弾性シール材の表面のうち、少なくとも上記冷却水孔を通過する冷却水若しくはオイル孔を通過するオイルと接触する可能性のある部位を被覆する被覆膜を設け、その被覆膜は、上記冷却水及びオイルに対し耐性を有する素材からなることを特徴とするものである。
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、シリンダブロックとシリンダヘッドとの接合面間に介挿される金属ガスケットであって、
上記弾性シール材表面を覆う被覆膜は、少なくとも上記接合面と対向している基板表面の全体を覆っていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、弾性シール材のオイルや冷却水に対する耐久性が向上し、その結果、金属ガスケットの寿命が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る金属ガスケット10を示す部分平面図である。図2は、図1のA−A線での断面図である。
(構成)
本実施形態の金属ガスケット10は、多気筒を有する内燃機関のシリンダヘッドとシリンダブロックとの対向する接合面間に介挿される金属ガスケット10の例である。
【0009】
その金属ガスケット10の基板1の素材としては、例えばステンレス鋼板または軟鋼板、アルミニウム板等の金属薄板を適宜、採用可能であるが、ここでは、ビードとして後述のような合成ビードを採用する結果、剛性の低い軟鋼板を使用することができる。
その基板1の中央部には、図1に示すように、長手方向に沿って、複数個の燃焼室孔2が配列している。また、燃焼室孔2よりも基板1の外周側には複数個のボルト孔3,水孔4、及びオイル孔5が開口している。
【0010】
各燃焼室孔2の開口端部全周は、上方に折り返されて最も肉厚の厚い増厚部6が形成され、これにより、他の基板1部分との間に板厚差が設けられてビードに対し過圧縮を制限するストッパとなる。各増厚部6は対応する燃焼室孔2の外縁全周を個別に囲繞している。また、基板1の外周側に、第2の増厚部7が形成されている。
【0011】
また、上記燃焼室孔2及び増厚部6を囲繞するように内側シールラインL1が設定されると共に、基板1の外周側やオイル孔5などを囲むように外側シールラインL2が設定される。そして、各シールラインL1,L2に沿って、図2に示すように、基板1を板厚方向に屈曲成形して形成された凸状のフルビードからなる金属ビード14,15が形成されている。また、上記金属ビード14,15の凸部側の基板1表面に弾性シール材24a、25aが固着すると共に、各凸部側の裏側に位置する凹部内にも同様の弾性シール材24b、25bが充填されている。上記弾性シール材24a、25a,24b、25bは、例えばフッ素ゴム、NBR、シリコンゴムなどのゴム材料や樹脂材料など、耐熱性及び弾性を有する素材からなる。
【0012】
上記金属ビードの各凸部側に固着された弾性シール材24a、25aは、金属ビード14,15の凸部表面の両側を覆うと共に若干凸部に連続する平坦部も覆うように設定されている。すなわち、本実施形態では、凸部側の弾性シール材24a、25aの幅は、金属ビード14,15の幅よりも若干広めに設定されている。もっとも、金属ビード14,15の幅と同等の幅に設計しても良い。また、当該弾性シール材24a、25aの高さは、金属ビード14,15の高さと略々と高さとされている。ここで、上述のように金属ビード14,15の凸部に連続する基板1の平坦部にも、金属ビード14,15の高さ相当の弾性シール材24a、25aを設けても良いが、弾性シール材24a、25aからなるゴムビームの幅が金属ビード14,15の幅の1.5倍程度以下に収まるようにすることが好ましい。また、金属ビード14,15及び弾性シール材24a、25aの高さは、増厚部6の厚さまで圧縮された時に、両面に設けられた弾性シール材24a、25aの圧縮率が例えば40%以内に収まるように設定されて、当該弾性シール材24a、25a,24b、25bが圧縮破壊することを防止する。
【0013】
さらに、本実施形態では、上記上下の弾性シール材24a、25a,24b、25bの各表面を完全に被覆するよう、塗布などによって被覆膜26a、26b、27a、27bが形成されている。この被覆膜26a、26b、27a、27bは、耐熱性と共に、対象とするエンジンの冷却水やオイルに対し耐水性及び耐油性を有する素材から構成されている。例えば、フッ化樹脂系又はボリアミド系等耐薬品性の高い素材から構成する。
【0014】
(作用・効果)
上記弾性シール材24a、25a,24b、25bは、被覆膜26a、26b、27a、27bを介して、冷却水はオイルと接触する。
ここで、内燃機関は長期間使用されるものであるが、上記冷却水やオイルは、長時間の使用中に受ける冷熱の繰り返しや、不純物の混入等で成分変化を起し徐々に劣化していく。このとき、上記劣化していく冷却水やオイルが、直接、弾性シール材24a、25a,24b、25bに接触する場合には、当該接触している弾性シール材24a、25a,24b、25bの部分が、徐々に侵食膨潤され、徐々にシール面圧が低下することになる。
【0015】
これに対し、上記オイルや冷却水に対し耐油性、耐冷却水性に優れた被覆膜26a、26b、27a、27bで弾性シール材表面に覆うことで、当該シール力を発揮する弾性シール材24a、25a,24b、25bの表面が直接オイルや冷部水に接触することが防止される結果、弾性シール材24a、25a,24b、25bを含めた合成ビードのシール力の経時的劣化が抑えられる。
【0016】
ここで、上記金属ガスケット10を搭載したエンジンに使用されるオイルや冷却水は、エンジンを開発している時は条件も安定しているが、車体に搭載して市場に出た場合には、異なった条件、環境で使用され、又長期間の使用で自然と徐徐に劣化は免れられない。時には定期メンテナンスを忘れられ、また純正品以外の粗悪品を使用することも有る。このような状況下でも、ガスケット10には、エンジン性能確保と保全の役目を担うエンジンオイルや冷却水には長期間の完全シールが要求される。本実施形態の金属ガスケット10は、このような条件下でも長期間、弾性シール材24a、25a,24b、25bが劣化したオイルや冷部水からの侵食が防止され、長期的にガスケット性能を確保することが可能となる。
【0017】
なお、上記実施形態では、燃焼室孔2側の端部を折り返すことで、基板1に板を積層して増厚部6を形成する場合を例示しているが、基板1に別の板を積層して溶接などで固定するなどによって上方若しくは下方に増厚するように、増厚部6を形成しても良い。基板1の燃焼室孔2周りの厚さが厚くなるように鍛造で形成しても良い。
【0018】
(別例1)
図3は、金属ビード14,15の一部をハーフビードで形成した場合の例である。この場合であっても、金属ビード14,15の両面に形成する弾性シール材24a、25a,24b、25bの表面を被覆するように被覆膜26a、26b、27a、27bを形成すればよい。
(別例2)
図4及び図5は、被覆膜26aを、金属ビード14,15の凸部側の弾性シール材24a、25aの表面、及びそれに連続する基板1上面全体に形成したものである。
【0019】
基板1下面は全面が接合面に押し付けられ、凹部側の弾性シール材24b、25bがオイルや冷却水との接触が凸部側の弾性シール材24a、25aよりも少ないことに鑑み、上面側にのみ被覆を設けた例である。
また、基板1上面に被覆膜26aを設けることで、基板1の材料が、安価な軟鉄等、条件によっては腐食を起すような場合に、腐食防止効果となる。更に、弾性シール材24a、25aに被覆膜26aを基板1全体に塗布することにより、弾性シール材24aの保護と基板1の防錆効果が同時に達成でき、更に部分的に塗布するより生産効率アップになる。また、基板1である金属自体の腐食や汚れによるメッキ剥離による金属の侵食を防止出来る。
【0020】
さらにシール面圧の高い第一増厚部面上は基材のみの場合、エンジン接合面加工粗さが直接接触する為に燃焼ガスが微小に漏れることがある。仮に微小の圧漏れがあっても第一増厚部の外側近傍にある金属ビード14,15とビードに成型した弾性シール材24aのビードが完全シールは可能であるが。たとえ微小でもガス漏れが継続することは長期的には影響が出る事も予想されるので被覆する方が望ましい。
【0021】
以下の別例でも同様な効果を得る。
(別例3)
図6及び図7は、基板1の上下両面の全体を被覆膜26a、26bで覆う場合の例である。
(別例4)
ガスケット10は、図8〜図11のように、複数の基板1を積層して構成されたり、積層した基板1間に副板20を介挿して構成されたりする。
この場合に、図8〜図11のように、接合面に対向する基板1の表面に位置する弾性シール材表面を覆うように被覆膜26aを配置してもよい。なお、図8及び図9は、弾性シール材の部分だけを覆う例であり、図10及び図11は、基板1表面の全体を覆う例である。
もちろん、図12のように、各基板1の上下両面全体を被覆膜26aで覆っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る金属ガスケットを示す部分平面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】別例1を説明する断面図である。
【図4】別例2を説明する断面図である。
【図5】別例2を説明する断面図である。
【図6】別例3を説明する断面図である。
【図7】別例3を説明する断面図である。
【図8】別例4を説明する断面図である。
【図9】別例4を説明する断面図である。
【図10】別例4を説明する断面図である。
【図11】別例4を説明する断面図である。
【図12】別例4を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 基板1
2 燃焼室孔
3 ボルト孔
4 水孔
6 増厚部
14,15 金属ビード
10 金属ガスケット
20 副板
24a、24b、25a、25b 弾性シール材
25a、25b、27a、27b 被覆膜
L1 内周側シールライン
L2 外周側シールライン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄肉金属板からなる基板に対し、燃焼室孔、ボルト孔、冷却水孔、オイル孔が開口すると共に、シールラインに沿ってビードが形成され、そのビードの少なくとも一部は、基板を屈曲してなる金属ビードと、その金属ビードの凸部側表面に固着すると共に凸部裏側の凹部に充填されて上記金属ビードと共にバネ力を発生可能な弾性シール材からなるゴムビードとの合成ビードで構成される金属ガスケットであって、
上記弾性シール材の表面のうち、少なくとも上記冷却水孔を通過する冷却水若しくはオイル孔を通過するオイルと接触する可能性のある部位を被覆する被覆膜を設け、その被覆膜は、上記冷却水及びオイルに対し耐性を有する素材からなることを特徴とする金属ガスケット。
【請求項2】
シリンダブロックとシリンダヘッドとの接合面間に介挿される金属ガスケットであって、
上記弾性シール材表面を覆う被覆膜は、少なくとも上記接合面と対向している基板表面の全体を覆っていることを特徴とする請求項1に記載した金属ガスケット。
【請求項1】
薄肉金属板からなる基板に対し、燃焼室孔、ボルト孔、冷却水孔、オイル孔が開口すると共に、シールラインに沿ってビードが形成され、そのビードの少なくとも一部は、基板を屈曲してなる金属ビードと、その金属ビードの凸部側表面に固着すると共に凸部裏側の凹部に充填されて上記金属ビードと共にバネ力を発生可能な弾性シール材からなるゴムビードとの合成ビードで構成される金属ガスケットであって、
上記弾性シール材の表面のうち、少なくとも上記冷却水孔を通過する冷却水若しくはオイル孔を通過するオイルと接触する可能性のある部位を被覆する被覆膜を設け、その被覆膜は、上記冷却水及びオイルに対し耐性を有する素材からなることを特徴とする金属ガスケット。
【請求項2】
シリンダブロックとシリンダヘッドとの接合面間に介挿される金属ガスケットであって、
上記弾性シール材表面を覆う被覆膜は、少なくとも上記接合面と対向している基板表面の全体を覆っていることを特徴とする請求項1に記載した金属ガスケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−198472(P2007−198472A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16573(P2006−16573)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000230261)日本メタルガスケット株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000230261)日本メタルガスケット株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
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