説明

金属ガスケット

【解決手段】 金属ガスケット1は第1ガスケット基板11と第2ガスケット基板21とを備えており、第1ガスケット基板に、円周方向に連続して燃焼室孔3を囲む断面コ字形の段差ストッパー12と、該段差ストッパーの外周側で円周方向に連続して該段差ストッパーを囲む第1ボアビード13とを形成している。他方、第2ガスケット基板には、上記段差ストッパーと重合する位置に円周方向に連続するサブビード23を形成している。
【効果】 安定して優れたシール性を確保し、しかも構成が複雑となるのを可及的に防止すると共に、安価に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属ガスケットに関し、より詳しくは2枚のガスケット基板を備えた金属ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン用の金属ガスケットとして、1枚のガスケット基板に、円周方向に連続して燃焼室孔を囲む断面コ字形の段差ストッパーを形成するとともに、当該段差ストッパーの外周側に円周方向に連続して該段差ストッパーを囲むボアビードを形成したものが知られている(特許文献1)。
また従来、2枚のガスケット基板に、互いに重合する位置に円周方向に連続して燃焼室孔を囲むボアビードをそれぞれ形成するとともに、両ガスケット基板の間に、円周方向に連続して燃焼室孔を囲む断面コ字形の段差ストッパーを形成した副板を介在させたものも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−110825号公報
【特許文献2】特開平10−339372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前者の金属ガスケットは1枚のガスケット基板で構成していたため、エンジンの種類によってはシリンダヘッドとシリンダブロックとの隙間に対する追従性が不足してしまい、良好なシール性を得ることができない場合があった。
他方、後者の金属ガスケットは少なくとも2枚のガスケット基板とその中間の副板とを備えているので、シリンダヘッドとシリンダブロックとの隙間に対する追従性を向上させることができるが、構成が複雑となって高価となる欠点がある。
【0005】
このような欠点を改善するため、2枚のガスケット基板のそれぞれに燃焼室孔を囲む断面コ字形の段差ストッパーを形成し、両段差ストッパーを重合させる試みが行なわれた。かかる構成によれば、金属ガスケットは2枚のガスケット基板を備えているので1枚のガスケット基板に比較して良好な追従性が確保でき、しかも構成が複雑となるのを可及的に防止することができるという利点がある。
しかしながら、2つの段差ストッパーを重合させる場合には、両段差ストッパーが僅かに位置ずれするだけで大きく面圧が変動してしまい、シール性が安定しないという問題があった。そして、その位置ずれを防ぐには段差ストッパーの寸法を厳密に管理しなければならず、かつ2枚の基板の組付に際しても細心の注意を払わなければならないため、ガスケットの製造コストが高くなるという問題があった。
したがって本発明は、安定して優れたシール性を確保でき、しかも構成が複雑となるのを防止することができると共に、安価に製造することができる金属ガスケットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1の発明による金属ガスケットは、シリンダヘッドとシリンダブロックとの間に挟持される第1ガスケット基板と第2ガスケット基板とを備え、各ガスケット基板のそれぞれにシリンダボアに合わせて燃焼室孔を穿設した金属ガスケットにおいて、
上記第1ガスケット基板に、円周方向に連続して上記燃焼室孔を囲む断面コ字形の段差ストッパーを形成するとともに、該段差ストッパーの外周側に円周方向に連続して該段差ストッパーを囲む第1ボアビードを形成し、また上記第2ガスケット基板に、上記段差ストッパーと重合する位置に円周方向に連続するサブビードを形成したことを特徴とするものである。
【0007】
請求項1の発明によれば、第1ガスケット基板の段差ストッパーに第2ガスケット基板のサブビードを当接させているので追従性を向上させることができ、第1ガスケット基板に形成した第1ボアビードによるシール効果と相まって、良好なシール性を得ることができる。
しかも上記段差ストッパーは、同様な構成を有する段差ストッパーではなくサブビードと当接するようになるので、該段差ストッパーとサブビードとが位置ずれしても段差ストッパー同志の接触のようにその部分の面圧が大きく変動することがなく、安定したシール性を確保することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明の金属ガスケットによれば、安定して優れたシール性を確保し、しかも構成が複雑となるのを可及的に防止すること共に、安価に製造することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の金属ガスケットを示す平面図。
【図2】本発明の第1実施例を示す図1のA−A線に沿う拡大断面図。
【図3】本発明の第2実施例を示す断面図。
【図4】本発明の第3実施例を示す断面図。
【図5】本発明の第4実施例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1、図2において、金属ガスケット1は第1ガスケット基板11と第2ガスケット基板21とを備えており、第1ガスケット基板11は第2ガスケット基板12の上に重合された状態で、図示しないシリンダヘッドとシリンダブロックとの間に挟持されてそれらの間をシールするようになっている。このとき、第1ガスケット基板11が上方側の図示しないシリンダヘッドに当接し、第2ガスケット基板21が下方側の図示しないシリンダブロックに当接するようになっている。
上記各ガスケット基板11、21は、シリンダブロックのシリンダボアに合わせて穿設した複数の燃焼室孔3と、図示しない締結ボルトを挿通するための複数のボルト孔4と、潤滑油を流通させる油孔5および冷却水を流通させるための水孔6とをそれぞれ備えており、それぞれプレス加工によって成形されている。
上記第1ガスケット基板11には燃焼室孔3を囲繞してその上方側に突出する円周方向に連続した無端状の段差ストッパー12が形成されるとともに、該段差ストッパー12の外周側に段差ストッパー12を囲む円周方向に連続した無端状の第1ボアビード13が形成されている。この第1ボアビード13は、上記段差ストッパー12と同方向に突出している。
上記段差ストッパー12は断面コ字形に形成されており、燃焼室孔3側となる内側壁部12Aと、燃焼室孔3の反対側に形成された外側壁部12Bと、さらに内側壁部12Aと外側壁部12Bとを連結する頂部12Cとを備えている。また、この段差ストッパー12の高さは段差ストッパー12にかかる面圧によって設定され、エンジンの種類などによって調整されるようになっている。
他方、第2ガスケット基板21には段差ストッパー12と同方向に突出する環状のサブビード23が形成されており、このサブビード23は段差ストッパー内に収容されている。そしてサブビード23の内周側と外周側は平坦面21Aに形成されている。
また段差ストッパー12の内側壁部12Aと外側壁部12Bはこの平坦面21Aに重合するようになっている。
【0011】
上記構成を有する第1実施例によれば、段差ストッパー12がシリンダヘッドとシリンダブロックによって圧縮された際には、サブビード23の頂部に段差ストッパー12の頂部12Cが接触してサブビード23にも弾性応力が発生するので、シリンダヘッドとシリンダブロックの隙間に対する追従性が向上するようになり、良好なシール性を確保することができる。
また、サブビード22の内周側と外周側に平坦面21Aが成形され、段差ストッパー12の内側壁部12Aおよび外側壁部12Bがその平坦面21Aに当接しているので、段差ストッパー12と平坦面21Aとの間にずれが生じたとしてもシール性に悪影響が生じることがない。
【0012】
なお上述した各ビード13、22、23は、段差ストッパー12のように断面コ字形に形成されているのではなく、したがって段差ストッパー12の内側壁部12Aや外側壁部12Bのように例えば平坦面21Aを含む平面に対して実質的に垂直となる部分を備えていない。
したがって、第1ガスケット基板11と第2ガスケット基板21とをシリンダヘッドとシリンダブロックとの間に挟持した際に、各ビード13、22、23の基部すなわち平坦面21Aとの接続部分が上記内側壁部12Aや外側壁部12Bのように局部的に高い面圧を発生することがなく、第1ボアビード13と第2ボアビード22との位置ずれは殆ど問題とならない。
この観点からすればサブビード23における内周側の基部の部分と外周側の基部の部分とが段差ストッパー12の内側壁部12Aと外側壁部12Bとに重合していてもよい。
【0013】
次に、図3は本発明の第2実施例を示したもので、本実施例では上記第1実施例の構成をそのまま有しており、かつ第2ガスケット基板21に、第1ボアビード13と重合する位置に円周方向に連続する第2ボアビード22が形成されている。そして第1ボアビード13と第2ボアビード22とは各頂部が互いに離隔する方向に突出するように形成されている。
【0014】
上記構成を有する第2実施例によれば、図2で示した金属ガスケット1と同様に、段差ストッパー12とサブビード23によって高い追従性を得ることができる。
また、2つのボアビード13、22を相互に重合させてあるので、従来の1枚のガスケット基板に段差ストッパーとボアビードを設けた金属ガスケットよりも追従性が増すことになり、高いシール性を得ることができる。
【0015】
図4は本発明の第3実施例を示したもので、本実施例は図3の第2実施例とは逆に、第2ガスケット基板21に形成した第2ボアビード22を第1ボアビード13と同一の方向に形成している。この第2ボアビード22は第1ボアビード13よりも半径方向の幅を小さくしてあり、それによって第2ボアビード22を第1ボアビード13内に収容するようにしてある。
【0016】
上記構成を有する第3実施例によれば、図2で示した金属ガスケット1と同様に、段差ストッパー12とサブビード23によって高い追従性を得ることができ、さらに第1ボアビード13がシリンダヘッドとシリンダブロックとの間に挟持された際に、第2ボアビード22の頂部に第1ボアビード13が接触して第2ボアビード22にも弾性応力が発生するので、シリンダヘッドとシリンダブロックの隙間変動に対して高い追従性を得ることができるようになる。
【0017】
図5は本発明の第4実施例を示したもので、本実施例は図3に示した構成を基礎として、第1ガスケット基板11の上下を逆にしたものである。すなわち、第1ガスケット基板11の段差ストッパー12の頂部12Cと第1ボアビード13の頂部は下方側に向いている。
他方、第2ガスケット基板21の第2ボアビード22とサブビード23とは上方に向いており、したがって段差ストッパー12とサブビード23が互いに向き合うとともに、また第1ボアビード13と第2ボアビード22も互いに向き合っている。
このとき、本実施例においてもサブビード23の内周側と外周側にはそれぞれ平坦面21Aを形成してあり、各平坦面21Aは段差ストッパー12の内側壁部12Aと外側壁面12Bと重合するようになっている。
【0018】
上記構成を有する第4実施例によれば、段差ストッパー12とサブビード23とが当接することで双方に弾性応力が生じ、シリンダヘッドとシリンダブロックの隙間の形状に対する追従性が向上する。また、図2の金属ガスケット1と同様に、第1ボアビード13と第2ボアビード22も良好な追従性を有するようになる。
そしてサブビード22の内周側と外周側に形成した平坦面21Aにより、段差ストッパー12と平坦面21Aとの間にずれが生じたとしてもシール性に悪影響が生じることがない。
【符号の説明】
【0019】
1 金属ガスケット 3 燃焼室孔
11 第1ガスケット基板 12 段差ストッパー
12A 内側壁部 12B 外側壁部
13 第1ボアビード 21 第2ガスケット基板
22 第2ボアビード 23 サブビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドとシリンダブロックとの間に挟持される第1ガスケット基板と第2ガスケット基板とを備え、各ガスケット基板のそれぞれにシリンダボアに合わせて燃焼室孔を穿設した金属ガスケットにおいて、
上記第1ガスケット基板に、円周方向に連続して上記燃焼室孔を囲む断面コ字形の段差ストッパーを形成するとともに、該段差ストッパーの外周側に円周方向に連続して該段差ストッパーを囲む第1ボアビードを形成し、また上記第2ガスケット基板に、上記段差ストッパーと重合する位置に円周方向に連続するサブビードを形成したことを特徴とする金属ガスケット。
【請求項2】
上記第2ガスケット基板に、上記サブビードに連続する内周側部分および外周側部分に平坦面をそれぞれ形成し、各平坦面を上記段差ストッパーの断面コ字形における内側壁部および外側壁部にそれぞれ重合させたことを特徴とする請求項1に記載の金属ガスケット。
【請求項3】
上記サブビードは段差ストッパーと同じ方向に突出して段差ストッパー内に収容されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の金属ガスケット。
【請求項4】
上記第2ガスケット基板に、上記第1ボアビードと重合する位置に円周方向に連続する第2ボアビードが形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の金属ガスケット。
【請求項5】
上記第1ボアビードと第2ボアビードとは各頂部が互いに離隔する方向に突出していることを特徴とする請求項4に記載の金属ガスケット。
【請求項6】
上記第1ボアビードと第2ボアビードとは各頂部が互いに向き合う方向に突出して相互に当接していることを特徴とする請求項4に記載の金属ガスケット。
【請求項7】
上記第2ボアビードは第1ボアビードと同じ方向に突出して第1ボアビード内に収容されていることを特徴とする請求項4に記載の金属ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−242977(P2010−242977A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162757(P2010−162757)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【分割の表示】特願2001−211971(P2001−211971)の分割
【原出願日】平成13年7月12日(2001.7.12)
【出願人】(000207791)大豊工業株式会社 (152)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000230261)日本メタルガスケット株式会社 (27)
【Fターム(参考)】