金属キレートおよび、時間分解蛍光測定におけるその使用方法
β-ジケトン蛍光タグ、特に、近可視および可視スペクトルの励起エネルギーを利用できるようなβ-ジケトン蛍光タグを開示する。場合によっては、これらのタグには、費用対効果の高い励起装置、たとえばLEDを使用することができる。この化合物は、ランタニド(III)希土類金属イオン(たとえば、Eu3+)と蛍光キレート(錯体)を形成する。蛍光錯体は、ラテックス微粒子、たとえばスチレンラテックス粒子に包含させることができる。錯体は、理想的には、360 nm以上の吸収極大λを有し、化合物は、pKaが9.0未満であることを特徴とする。標的分子を検出するキットおよび方法(たとえば免疫測定法)も開示する。こうした方法およびキットでは、通常、標的分子に結合させるリガンドと、このリガンドに結合させた標識剤を使用する。上述の蛍光錯体は、このうち、少なくとも標識剤を構成する。サンプルから蛍光を検出する装置は、360 nm以上の照射エネルギーλを生成する照射エネルギー源と、サンプルからの蛍光を検出するよう配置された検出装置と、照射エネルギー源で照射できる位置にサンプルを保持するサンプル・ホルダーとを備えている。照射エネルギー源としては、発光ダイオードを使用することが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術背景
本発明は、一般に、蛍光錯体の分野に関するものであり、より詳細には、キレート化金属イオンを有する蛍光錯体に関するものである。また、本発明は、合成の分野、およびキレート化合物および金属イオン錯体の使用、たとえば、測定時に、(機器等による)検出を可能とするタグとしての使用の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術
化合物の存在を検出する際には、蛍光を利用するのが望ましいことが多い。たとえば、各種測定法(たとえば、免疫測定法)では、検出対象化合物に付随する蛍光タグが放出する蛍光エネルギーを検出することによって読みとりを行うことができる。蛍光タグは、比較的使用しやすく、放射性タグで必要とされるような各種の危険や操作を回避することができる。蛍光を利用した検出の用途としては、細胞のイメージング、フローサイトメトリー、免疫組織化学的分析、免疫測定法などを挙げることができるが、用途はこれらに限定されるものであはない。従来より使用されている蛍光色素としては、フルオレセイン、ローダミン、テキサス・レッドなどを挙げることができる。
【0003】
蛍光を利用した測定では、測定に使用するサンプルまたは試薬中のバックグラウンドの蛍光による干渉が問題となることが多い。こうしたバックグラウンドの蛍光は、半減期が極めて短く、ストークスシフトが低いことも多いので、ストークスシフトが大きいまたは半減期が長い蛍光タグを使用すると(時間分解蛍光測定)、バックグランドが高くても、少量のタグを検出することが可能となる。時間分解蛍光タグ標識法の一方法では、(有機キレート剤を使用して)キレート化したランタニド金属を使用する。(1〜6)現在利用できるランタニド・キレート化錯体は、紫外線(たとえば、340 nm未満のものであることが多い(11〜15))を用いて励起せねばならないので、複雑かつ相対的に高価な光源、たとえば窒素レーザーの使用が必要となる。ランタニド時間分解蛍光測定を利用した市販の製品としては、パーキンエルマーのDELFIA(登録商標)およびLANCE(商標)の製品(マサチューセッツ州ボストン、Perkin Elmer Bioproducts)2種を挙げることができる。Eu標識剤であるDELFIA(登録商標)は、Eu3+でキレート化したN1-(p-イソチオシアナトベンジル)-ジエチレントリアミン-N1,N2,N3,N4-テトラ酢酸(DTTA)から構成されている。DTTA基が、ユウロピウムとともに安定した錯体を形成し、イソシアネート基が、タンパク質上の遊離アミノ基と反応して、安定した共有チオ尿素結合を形成する。キレートの水溶性および安定性が高く、また、イソチオシアネート反応のカップリング条件が緩やかなので、10〜20Eu/IgG以下の抗体を標識することができる。LANCE(商標)の製品も、イソシアネート(ITC)系のキレート製品である。
【0004】
文献では、もっと長波長で励起可能な他のキレートも報告されている。これらのキレートは、場合によっては、比較的低い量子収量および/または非効率的なキレート化合物から金属イオンへのエネルギー移動を示す。たとえば、Eu(III)シッフ塩基錯体は、吸収極大が長めの波長で生じる場合には、量子収量が比較的低い。(16)キレートによっては、蛍光が、実質的に有機溶媒に限定されており、生物学用途での魅力または実用性に欠ける。Martinusらには、極大が414 nmで生じる、Euのミヒラーケトン[4,4'-bis(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン](「MK」)とのキレートが記載されている。この場合も、錯体の形成は、非配位性溶媒で生じ、水分子が、ランタニド配位部位をめぐってMKと競合する可能性がある。(17)
【0005】
Steemersらは、ユウロピウムおよびテルビウムの一連のカリックス[4]アレーンとの錯体の製造に成功し、励起波長を少なくとも350 nmまで延ばすことができた。報告された量子収量は比較的低く、エネルギー移動は比較的低効率である。これは、励起種の相当部分が、分子酸素によって捕捉され、発光に寄与することなく消光したためと考えられる。(18)Wertsらは、ランタニドと、フルオレキソン(4’,5’ビス[N,Nビス(カルボキシメチル)アミノメチル]フルオレセイン)との錯体について記載しており、この錯体は、可視光で励起可能である。(19)しかし、これらのキレートの量子収量は、非放射性不活性化のために比較的低いことが報告されている(1.7〜8.9×10-4)。
【0006】
芳香族1,3-ジケトンである2-ナフトイルトリフルオロアセトン(NTA、下記の化合物1)の陰イオン(下記の化合物1a)は、水性溶媒中で、相乗剤であるトリ-n-オクチル-ホスフィンオキシド(TOPO)の存在下で、高度に蛍光性のEuキレートを形成する。(20、21)
【0007】
【発明の開示】
【0008】
概要
本発明は、以下の特徴、すなわち、長い寿命、細いバンド幅、大きなストークスシフト、高い量子収量、および光褪色または自己消光といった有害な現象の回避といった特徴の1以上を、所望の組み合わせで備えた蛍光タグに関するものである。本発明では、好ましくは、近可視および可視スペクトルの励起エネルギーの使用が可能となっており、その結果、発光ダイオードまたはダイオードレーザーのような費用対効果の高い励起装置を使用することが可能となり、商用利用での技術の実用性が改善されている。
【0009】
本発明は、概述すると、請求項1に記載した式A、B、またはCのいずれかを有するβ-ジケトン化合物に関するものである。このβ-ジケトン化合物は、好ましくは、ランタニド(III)希土類金属イオン(たとえばEu3+)とともに蛍光キレートを形成するものであり、したがって、本発明は、β-ジケトン化合物のそうしたイオンとの錯体にも関するものである。本発明は、非蛍光キレート剤、たとえば、トリ-n-オクチル-ホスフィンオキシド(TOPO)またはNH3を、組成物中で、上記の蛍光キレート剤とともに使用することにも関するものである。希土類金属イオンは、こうした組成物中に含有させておくことも、その後の工程で加えることもできる。
【0010】
一態様では、蛍光錯体を、微粒子、たとえばスチレン・ラテックス粒子またはコロイド状金粒子に包含させる。錯体は、360 nm以上のλ吸収極大を有するものとし、化合物は、pKa < 9.0であるものとするのが好ましく、この場合、錯体は、生理的なpHで安定となる。
【0011】
この錯体は、標的分子を検出するタグとして特に有用であり、本発明は、こうした検出用のキットおよび方法も提供するものである。こうした方法およびキットでは、通常、標的分子結合用のリガンドと、リガンドに結合した標識物質を利用する。上述の蛍光錯体は、少なくとも、標識物質の一部を構成する。標的分子を、錯体で標識したリガンドと反応させ、標的の存在を、360 nm以上のエネルギーλで照射し、標的分子の存在の指標となる蛍光錯体からの発光を検出することによって検出する。
【0012】
サンプルからの蛍光を検出する装置は、360 nm以上の照射エネルギーλを生成する照射エネルギー源と、照射エネルギー源でサンプルを照射できるよう、サンプルを所定位置に保持するサンプル・ホルダーと、サンプルからの蛍光を検出するよう配置された検出装置と、蛍光を瞬時に、または時間分解して検出する検出回路とを備えている。本発明では、照射エネルギー源として、半導体光源、たとえば発光ダイオードまたはレーザーダイオードを使用することができる。
【0013】
請求項1の式の化合物として特に好ましい化合物は、式中で、
Ar1が、ナフチル、アントラセニル、またはフェナントレニル基、または置換ナフチル(たとえば、2’ナフチル)、アントラセニル、またはフェナントレニル基であり、
Ar2およびAr3が、置換フェニル基、たとえば-F、-CF3、-N(CH3)2の1以上によって置換されたフェニル基であり、
置換基が、C1-C5アルキル、C1-C5アルケニル、C1-C5アルキニル基、または置換C1-C5アルキル、C1-C5アルケニル、C1-C5アルキニル基をはじめとする置換基であるような化合物である。
【0014】
本発明の1以上の態様の詳細を、添付図面および以下の記載にて説明するが、本発明の他の特徴、目的、利点については、記載および図面、そして請求の範囲から明らかとなるなずである。
【0015】
詳細な説明
NTA(1)のトリフルオロメチル基を、フェニル環で置換したもの(フェニル-3-ナフチル-1,3-プロパンジオン、化合物2または「PNPD」)と、ナフチル環で置換したもの(1,3-ジ-ナフチル-1,3-プロパンジオン、化合物3または「NNPD」)の2種の化合物を設計した。これらの化合物および対応するエノラートの構造を以下に示す。
【0016】
【0017】
1’-アセトナフトンから出発して化合物2および3を合成し、その構造を、下記のようにして調べた。塩化ユウロピウム(III)の蛍光キレートを、0.1 Mのホウ酸緩衝液(pH9.0)中にて、TOPOの存在下で、2および3のそれぞれを用いて作製し、励起スペクトルおよび発光スペクトルを、パーキン・エルマーの蛍光分光装置(モデルLS 50)で記録し、NTA(化合物1)のスペクトルと比較した。スペクトルの結果(図2)からは、化合物2および3の励起波長のピークが、それぞれ、390 nmと400 nmとにあり、双方とも、化合物1のピークである330 nmから相当シフトしており、半導体光源で励起可能であることがわかる。化合物は、いずれも、類似した消光および蛍光強度を示す。これらの化合物は、量子収量が高く、酸素含有溶媒中で安定であり、配位子から金属への十分なエネルギー移動が生じたことが示唆された。
【0018】
これらの知見にもとづいて、化合物2の誘導体を製造した。その構造を図3に示し、合成および特性解析について、下記に記載する。
【0019】
図3に示す化合物は、いずれも、TOPOの存在下で、塩化ユウロピウム(III)と蛍光キレートを形成可能である。興味深いことに、環の置換基が異なり、たとえばフッ素、シアノ、メトキシ、カルボキシメチルで置換された誘導体では、PNPDのような、スペクトルの有意なシフトが観察されなかった。しかし、カルボニル基のpKaの有意な変化は観察された。上述したように、金属との錯体の形成を生じさせるためには、ジカルボニル化合物のエノラートを形成することが必要である。非置換化合物2の場合には、エノール炭素のpKaは、約pH9.0なので、錯体を形成してその安定性を保つうえでは、こうした高いpHを維持することが必要となる。この点は、キレートを、後述のラテックス粒子に成功裏に担持させるうえでの制限となる。しかし、蛍光誘導体のpKaは、いずれもこれより有意に低いので、ある程度のpH範囲で作業を進めることができる。たとえば、化合物4のpKaは約4.2であり、この化合物を使用した場合には、pH4.5超で安定したキレートを形成することができた。生理学的な測定条件でキレートが安定であるためには、pHは、9.0未満とするのが(普遍的というわけではないが)通常は望ましい。
【0020】
後述する方法でラテックス粒子に担持させた場合のPNPDのN,N-ジメチルアミノ誘導体(図3の化合物14)蛍光キレートの励起波長は、さらに可視スペクトル側にシフトし、極大は、約455 nmに位置していた。
【0021】
混合物である(化合物2+TOPO)および(化合物2+塩化ユウロピウム)を、塩化ユウロピウム(III)とTOPOの標準溶液で、それぞれ滴定し、蛍光強度を測定した。結果から、金属、配位子、TOPOが化学量論比1:3:3となることで、蛍光キレートが形成されていることが示唆された。しかし、フェニル環が置換された化合物、たとえば化合物4または8(図3)の場合、化学量論比は1:2:3となった。特定の機構に拘束されることを望むものではないが、これらのキレートのいくつかは、水溶液中でTOPOまたはNH3非蛍光キレート剤とともに、ビスキレート剤として作用するようである。すなわち、蛍光キレート形成分子2つが、金属イオン1つと、非蛍光キレート剤3つとともに、1:2:3のモル比で錯体を形成する。さらに、アリール部分の1つを、ジケトン置換基に隣接して、さらに別のキレート部分で置換した場合には、水分子による水和を防止することもできる。具体的には、図4がこの可能性を図示しており、この場合、アリール部分の一つが
O-CX-R
で置換されている。
(式中のXは、SまたはO、Rは、O-R1またはS-R1であり、ここで、R1は、C1-C5アルキル、C1-C5アルケニル、C1-C5アルキニル基、または置換C1-C5アルキル、C1-C5アルケニル、C1-C5アルキニル基である。好ましくは、アリールのさらなる置換基は、-CO-O-アルキル、たとえば-CO-OCH3である。図4では、Mは金属イオン、Pは非蛍光キレート剤であり、酸素分子を介してキレート化された有機キレート化分子の式を示す。H2Oは、錯体が水和していることを示す。
【0022】
以上では、所望の特性を示す安定したキレートを作製したが、以下に記載するようにしてカルボキシ・ラテックスにキレートを担持する単純な方法を使用することにより、これらのキレートが、免疫測定法で蛍光プローブとしても用いうるものであることも例証した。この新規な方法は、各種サイズ(34、60、104、190、200、300、および400 nm)および各種専有面積(7、50、90Å2/カルボキシル基、等)の各種カルボキシ・ラテックスならびに各種サイズの単味ポリスチレンに、各種のPNPD誘導体で形成したキレートを担持する際に、成功裏に使用することができた。カルボキシ・ラテックス粒子に担持することで、ユウロピウムキレートの光学特性には、励起極大が、10〜20 nm長めの波長に移動したこと以外は、有意な変化は観察されなかった。後述するように、ビオチン標識BSAを、キレート(カルボキシ・ラテックス粒子がすでに担持されたキレート)に受動的に吸着させ、その後、NeutrAvidin(Pierce Biotechnology、ロックフォード、イリノイ州)を結合させた。
【0023】
NeutrAvidinで被覆したキレート担持カルボキシ・ラテックスを使用して、イヌ糸状虫(HTWM)の不均一系でのサンドイッチ免疫測定法を実施した。測定での必須の過程は、以下とおりであった。すなわち、ポリスチレンのウェルをウサギ抗HTWM抗体で被覆し、その後、BSAでブロッキングして非特異的結合を防止し、HTWM抗原の血清による段階稀釈液を、これらのウェル(パネル番号10での最低濃度は、約0.03 ngr/ml)でインキュベートし、その後、ビオチン標識ニワトリ抗HTWM抗体を加えた。その後、ウェルを洗浄し、最後に、neutrAvidine被覆蛍光カルボキシ・ラテックスとともにインキュベートした。結合しなかった粒子をよく洗浄除去した後、連続および時間分解モードで蛍光を読み取った。結果を図5に示す。
【0024】
これらのneutrAvidine被覆キレートを担持したカルボキシ・ラテックスを使用したネコ白血病(FeLV)抗原についての不均一系でのサンドイッチ免疫測定法も実施した。測定での必須の過程は、以下とおりであった。すなわち、ポリスチレンのウェルをモノクローナル抗FeLV抗体で被覆し、その後、BSAでブロッキングして非特異的結合を防止、FeLV抗原パネルの各希釈液をこれらのウェルでインキュベートした。その後、ビオチン標識したモノクローナル抗FeLV抗原を加えた。その後、ウェルを洗浄し、最後に、NeutrAvidin被覆蛍光カルボキシ・ラテックスとともにインキュベートした。結合しなかった粒子をよく洗浄除去した後、連続および時間分解モードで蛍光を読み取った。結果を図6に示す。
【0025】
抗体/タンパク質被覆コロイド状金は、免疫学的診断、組織化学、細胞化学で広くプローブとして使用されている21。代表的な免疫測定法では、コロイド状金は、目視または定量的な測定を行う際の標識として利用されている22。蛍光コロイド状金粒子の概念を用いると、金粒子を、標的の(色の目視観察による)定性的検出ならびに(蛍光の測定による)定量的検出に利用できると推量した。こうした方向で、コロイド状金粒子をユウロピウム・キレートで成功裏に被覆することのできる方法をはじめて開発した。後述するように、PNPDのEuキレートおよびその蛍光類似体を、コロイド状金粒子に被覆し、得られた蛍光金粒子の光学特性を、図8に示すようにして調べた。また、蛍光金粒子を抗体で成功裏に被覆して、免疫測定用プローブとして利用できることも示した。
【0026】
図7に示すように、カルボキシル基を導入したPNPDの誘導体を、さらに3種成功裏に合成して、新規な配位子のタンパク質との直接の結合を可能とした。1-フェニル-3(6-カルボキシメトキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオン(17)を、方法に関して上述したようにして、2,6-ジメチル-ナフタレイン-ジカルボキシレートとアセトフェノンから合成した。対応するカルボン酸(18)を超音波条件下でメチルエステルを加水分解することによって得た。カルボン酸誘導体(20および21)も、同様の合成方法および適当な出発物質を使用することによって合成した。カルボン酸化合物のN-ヒドロキシコハク酸イミドエステルは、タンパク質中のアミノ基と反応して、対応する結合物を形成することが知られている。1-フェニル-3(6-カルボキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオン(19)のNHSエステルを合成し、BSAおよびニワトリおよびウサギαHTWM抗体の双方に成功裏に結合して、配位子標識タンパク質を得た。標識タンパク質の吸収スペクトルは、新規配位子の十分に画定されたピーク特性を示し、極大は360 nmとなり、成功裏に結合したことが示された。標識タンパク質は、塩化ユウロピウムおよびTOPO溶液と混合すると、蛍光キレートを形成した。これらのキレート標識抗体を使用することにより、ラテックス粒子を使用せずに、サンドイッチ免疫測定法を実施することができた。可溶性キレート標識抗体は、ラテックス粒子に通常伴う拡散関連の問題を回避しうる可能性を有している。この技術の感度を増大させるために、後述するように、複数のアミノ基を持つポリマー、たとえばポリアリルアミンおよびリシン-アスパラギン酸ポリペプチドも成功裏に標識した。標識ポリマーをさらに抗体に結合すると、複数のキレート標識を持つ可溶性のタンパク質-ポリマー結合物を生じるはずである。同様の化学的過程により、1-(3,5-F2-フェニル)-3(6-カルボキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオンのNHSエステルも合成し、このNHSエステルを使用することにより、タンパク質とポリマーの双方を成功裏に標識した。
【0027】
1-フェニル-3-ナフチル-1,3-プロパンジオン(2)の合成: 磁性の撹拌棒および冷却器が装着された250 ml入りの丸底フラスコ中で、9.5 gグラムのナトリウムアミドの50%スラリーを、100 mlの無水エーテルに懸濁した。この懸濁液に、10.2 grの固体アセトナフトンを加え、室温にて5分間撹拌を続けた。5分後に、8.16 grの安息香酸メチルを1ロットで無溶媒液として加えた。この時点で、反応フラスコを、油浴に移し、浴温を上昇させて、内容物を、エーテル中にて3時間穏やかに還流させた。その後、内容物を、300 grの固体状氷に加え、撹拌しながら、濃HClでpHを7.0とした。エーテル層を分離し、水層を、150 mlずつのエーテルで2回抽出した。エーテル層を合わせ、無水硫酸ナトリウム床上で乾燥し、濃縮機(Rotavaper)で約100 mlに濃縮し、室温に静置した。再結晶した固形物を濾別し、エーテルで乾燥し、10.6 grの固体状のジケトンを得た。
【0028】
1,3-ジナフチル-1,3-プロパンジオン(3)の合成: 磁性の撹拌棒および冷却器が装着された250 ml入りの丸底フラスコ中で、4.75 grのナトリウムアミドの50%スラリーを、150 mlの無水エーテルに懸濁した。この懸濁液に、5.1 grの固体アセトナフトンを加え、室温にて5分間撹拌を続けた。5分後に、5.58 grのメチル-2-ナフトエートを1ロットで加えた。この時点で、反応フラスコを油浴に移し、浴温を上昇させて、内容物をエーテル中にて、3時間おだやかに還流させた。その後、内容物を、300 grの固体状の氷に加えた。濃HClで酸性としたところ、固体状生成物が析出した。この固体状生成物を濾別し、エーテル/メタノール混合物から再結晶させた。
【0029】
1-[(3,5-F2-フェニル]-3-ナフチル-1,3-プロパンジオン(4)の合成: 磁性の撹拌棒および冷却器が装着された100 ml入り丸底フラスコ中で、2.135 grのナトリウムアミドの50%スラリーを、50 mlの無水エーテルに懸濁した。この懸濁液に、4.936 grの固体アセトナフトンを加え、室温にて5分間撹拌を続けた。5分後に、5 grの3,5-ジフルオロ安息香酸メチルを1ロットで加えた。この時点で、反応フラスコを油浴に移し、浴温を上昇させて、内容物をエーテル中にて、3時間おだやかに還流させた。その後、内容物を、100 gの固体状の氷に加え、撹拌しながら、濃HClで酸性とした。エーテル層を分離し、水層を、100 mlのエーテルで、2回抽出した。エーテル層を合わせて無水硫酸ナトリウム床上で乾燥させ、濃縮機で濃縮して、淡黄色の固形物を得た。この固形物を、最小量のエーテルに溶解し、濾過した。濾液を4℃に保持して、結晶状生成物を得た。TLCを行ったところ、混入物のないきれいな単一のスポットが得られた。
【0030】
3,5-F2-PNPD-Euキレートの、104 nm のカルボキシ・ラテックスへの担持: 9.3 mgの3,5-F2-PNPDの30 mlのジオキサンへの溶液、17.415 mgのTOPOの45 mlのメタノールへの溶液、および15 mlの1 mM 塩化Eu(III)を、100 mlのメタノールと混合した。5分後、この混合物を100 mlの脱イオン水で希釈し、振盪機で30分間振盪して、キレートを完全に形成させた。この間に、2 mlの104 nm CMLラテックス(Seradyne、固形分10%、lot番号C98 1838)を20μlの6NのNaOH溶液および2 mlのメタノールと混合し、30分間インキュベートした。30分後、キレート溶液と粒子を80μlの6N NaOHとともに混合し、室温にて4時間振盪機で振盪した。4時間後、混合物を、濃縮機で、減圧下にて45℃で約47 mlに濃縮した。濃縮粒子溶液を、塩化ナトリウムの脱イオン水への10 mM溶液6 Lに対し、透析液を1日2回交換しながら3日間にわたり透析した。
【0031】
BSAのビオチン標識: 10%BSA溶液(3 gr/脱イオン水30 ml)を、0.2μのフィルターで濾過し、4 Lの脱イオン水に対して透析した。1 mlの透析BSA (63.5 mg/ml)を、7 mlの50 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)で希釈し、NHS-X-ビオチン(Pierce Chemical Company)の無水DMFへの溶液(20 mg/ml)0.5 mlと混合し、撹拌しながら3時間反応を進行させた。3時間後、反応混合物を、6 Lの20 mM TRIS(pH7.4)に対して透析して、未反応のビオチンを除去した。
【0032】
蛍光粒子のビオチン-BSAによる被覆: ポリプロピレン製チューブ中で、3 mlの粒子(固形分0.4%)の、NaClの脱イオン水への10 mM溶液への懸濁液を、60μlの1M TRIS(pH7.4)、および2.5 mlのビオチン/BSA(20mM TRIS(pH7.4)への7.15 mg/ml溶液)と混合し、4℃で一晩回転装置にかけた。翌朝、粒子を15K rpmで30分間遠心した。ペレットを、2 mlの20 mMのTRIS(pH7.4)に再懸濁し、再遠心した。この手順を2回繰り返した。
【0033】
最後に、粒子を、2 mlのmMのTRIS(pH7.4)に懸濁させた。
【0034】
ビオチン-BSA被覆粒子のNeutrAvidineによる被覆: 2 mlの上記ビオチン-BSA被覆粒子の20 mM TRIS(pH7.4)への懸濁液を、0.4 mlのneutrAvidineの同じ緩衝液への10 mg/ml溶液と混合し、4℃で48時間回転装置にかけた。48時間後、未結合タンパク質を、ビオチン-BSA被覆過程と同様にして除去し、粒子を、最後に、20 mMのTRIS(pH7.4)に懸濁させた。
【0035】
neutrAvidine被覆蛍光粒子を使用したHTWM抗原の測定: ウサギ抗HTWM抗体で被覆したウェルを、100 mlのHTWM抗原のパネル0〜10とともに、30分間インキュベートした。その後、ウェルを、市販のHTWMプレート洗浄液(IDEXX Laboratories、Inc.、メイン州ウェストブルック)で3回洗浄し、さらに、ビオチン標識ニワトリ抗HTWM抗体のHTWM結合物希釈液(IDEXXの製品)への5 pg/ml溶液とともに30分間インキュベートした。ウェルを7回洗浄し、その後neutrAvidine被覆蛍光粒子とともに1時間インキュベートした。1時間後に、ウェルを7回洗浄し、連続および時間分解モードで蛍光を読み取った。図5に、連続および時間分解蛍光を使用したこの測定の結果を示す。
【0036】
1-フェニル-3(6-カルボキシメトキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオンの合成: ナトリウムアミド(トルエンへの50%懸濁液1.56 gr)の無水THFへの懸濁液に、無溶媒のアセトフェノン(2.88 gr)を加え、磁性の撹拌棒および冷却器が装着された500 ml入りの丸底フラスコ中にて、室温にて3分間撹拌した。3分後、固体状の2,6-ジメチル-ナフタレイン-ジカルボキシレートをフラスコに懸濁させ、油浴の温度を上昇させてTHFを乾留させた。4時間後、反応混合物を、過剰の氷冷水に加えて、生成物を沈殿させた。生成物を、濾別し、エタノールから再結晶させてた。
【0037】
1-フェニル-3(6-カルボキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオンの合成: 1 gの1-フェニル-3(6-カルボキシメトキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオンを、40 mlの1N NaOHに懸濁し、プローブ超音波処理装置で、10回(30秒のパルス)、超音波処理した。不溶の固形分を濾別し、さらなる超音波サイクルに使用した。透明な濾液を濃HClで酸性として、カルボン酸生成物を沈殿させた。生成沈殿物を、凍結乾燥器に一晩連結することによって乾燥した。TLCおよび質量スペクトル分析で、カルボン酸が生成していることを確認した。
【0038】
1-フェニル-3(6-カルボキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオンのNHSエステルの合成: 1-フェニル-3(6-カルボキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオン(29.26 mg)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(59.95 mg)、およびN-ヒドロキシスクシンイミド(31.77 mg)を、一緒に、磁性の撹拌棒が装着された暗色のガラス製バイアル中で、1 mlの無水DMFに懸濁し、室温にて一晩撹拌した。翌朝、不溶の沈殿物を濾別し、生成したNHS-エステルのDMF溶液を、窒素を充填した暗色のガラス製バイアルで貯蔵し、さらなる精製を行うことなく、タンパク質との結合に使用した。
【0039】
BSAの、1-フェニル-3(6-カルボキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオンのNHSエステルとの結合: 小型磁性ペレット入りのガラス製バイアル中で、BSAの50 mM SPB(pH8.0)への7.82 gr/mlの溶液2 mlを、上記のストックNHSエステル溶液3μlの2部分と混合し、室温にて75分間撹拌した。75分後、反応混合物を、50 mMのホウ酸緩衝液(pH9.0)で平衡化したサイズ排除カラムに通し、280 nmでの吸収にしたがって、タンパク質分画を集めた。
【0040】
ニワトリαHTWM抗体およびウサギαHTWM抗体の、1-フェニル-3(6-カルボキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオンのNHSエステルとの結合: 小型磁性ペレット入りのガラス製バイアル中で、抗体の50 mM SPB(pH8.0)への6 mg/mlの溶液1 mlを、6μlのNHSエステルのストック溶液のDMF溶液と混合し、室温にて75分間撹拌した。75分後、反応混合物を、50 mMのホウ酸緩衝液(pH9.0)で平衡化したサイズ排除カラムに通し、280 nmでの吸収にしたがって、タンパク質分画を集めた。
【0041】
ポリアリルアミンの、1-フェニル-3(6-カルボキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオンのNHSエステルとの結合: 小型磁性ペレット入りの暗色ガラス製バイアル中で、ポリアリルアミンの50 mM SPB(pH8.0)への6 mg/mlの溶液2 mlを、ストックNHSエステル溶液のDMFへの溶液20μlで処理し、室温にて75分間撹拌した。75分後、反応混合物を、サイズ排除カラムに通し、非結合リガンドを分離した。
【0042】
Eu-PNPDキレート被覆コロイド状金: 10 mlのコロイド状金溶液(BB International Gold Colloidal、40 nm、CAT番号EM. GC 40、バッチ番号2862)を、800 rpmで15分間遠心し、ペレットを回収した。次に、この金ペレットを、50 ml入りのガラス製三角フラスコに入った20 mlの0.1 Mホウ酸緩衝液(pH9.0)に溶かした。このコロイド状金溶液に、10% Tween 20の脱イオン水溶液、そしてその後、1 mM PNPD溶液を400 mlずつ加えた。混合物を、振盪機で10分間振盪した。10分後、1 mM TOPO溶液、そして次に塩化ユウロピウムを400 mlずつ加えた。最後に、混合物を一晩振盪機で振盪した。翌日、溶液を、8000 rpmで20分間遠心し、ペレットを回収した。ペレットを、20 mlのホウ酸緩衝液に再度溶解し、8K rpmで20分間遠心した。最後に、ペレットを2 mlのホウ酸緩衝液に溶解して、蛍光コロイド状金溶液を得た。
【0043】
Eu-3,5-F2-PNPDキレート被覆コロイド状金: ホウ酸緩衝液のかわりに脱イオン水を使用した以外は、Eu-PNPDキレートと同じ手順を繰り返した。
【0044】
ウサギαHTWM抗体のキレート被覆コロイド状金への結合: 119μlの4.5 mg/mlウサギαHTWM溶液を、881μlのキレート被覆コロイド状金溶液と混合し、室温で15分間インキュベートした。15分後に、内容物を、8000 rpmで12分間遠心した。ペレットを、1 mlの0.1 Mホウ酸塩(pH9.0)に溶解し、8000 rpmでさらに12分間遠心した。金ペレットを最終的に1 mlの0.1 Mホウ酸塩(pH9.0)に溶解した。上清中の抗体を測定し、タンパク質がキレート被覆金と結合したことを確認した。以上では、本発明のいくつかの態様について記載してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、各種の変更を加えることが理解されるはずである。キレート系のさらなる結合を行うこともできる。化合物2の陰イオン形態(2a)の場合には、さらに3つのフェニル環の二重結合によって結合を拡張することができ、化合物3aの陰イオン形態の場合には、5つのナフチル環の二重結合によって結合を拡張することができる。たとえば、本発明にしたがって、いくつもの他の潜在的キレート化合物を評価することができる。具体的には、上述したように、可視または近可視スペクトルに吸収極大のある化合物が好適である。水溶性とすることも、好適である。置換基は、pKa値が9.0未満となるよう選択することが、特にラテックス粒子を使用する場合には好適である。
【0045】
ランタニド系の金属のみならず、Tr、Se、およびRu、特に後者をはじめとして、他の遷移金属を使用することもできる。
【0046】
本発明の蛍光化合物を使用することによって、他の免疫測定法も実施することができる。こうした免疫測定法としては、HIV、FIV、肝炎、エールリヒア症、ボレリア・ブルグドルフェリ(ライム病)、パルボウイルス、リーシュマニア、hCG、インスリン、c-ペプチドおよびT4について調べる測定法を挙げることができる。
【0047】
したがって、請求の範囲の範囲には、他の態様も含まれるものである。
【0048】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】Eu3+キレート錯体の放射プロセスの模式図である。
【図2】NTA、PNPD、およびNNPDの励起および発光スペクトルを示す。
【図3】化合物2の各種の誘導体の構造を示す。
【図4】特定の化合物を配位した金属(M+)の図である。
【図5】上述した時間分解蛍光分析と連続蛍光分析の比較である。
【図6】ネコ白血病ウイルスに対する免疫測定法の結果を示す。
【図7】カルボキシ基を導入したPNPD誘導体を合成し、この誘導体をタンパク質と結合するスキームである。
【図8】Eu-PNPDキレート被覆コロイド状金の励起および発光スペクトルである。
【技術分野】
【0001】
技術背景
本発明は、一般に、蛍光錯体の分野に関するものであり、より詳細には、キレート化金属イオンを有する蛍光錯体に関するものである。また、本発明は、合成の分野、およびキレート化合物および金属イオン錯体の使用、たとえば、測定時に、(機器等による)検出を可能とするタグとしての使用の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術
化合物の存在を検出する際には、蛍光を利用するのが望ましいことが多い。たとえば、各種測定法(たとえば、免疫測定法)では、検出対象化合物に付随する蛍光タグが放出する蛍光エネルギーを検出することによって読みとりを行うことができる。蛍光タグは、比較的使用しやすく、放射性タグで必要とされるような各種の危険や操作を回避することができる。蛍光を利用した検出の用途としては、細胞のイメージング、フローサイトメトリー、免疫組織化学的分析、免疫測定法などを挙げることができるが、用途はこれらに限定されるものであはない。従来より使用されている蛍光色素としては、フルオレセイン、ローダミン、テキサス・レッドなどを挙げることができる。
【0003】
蛍光を利用した測定では、測定に使用するサンプルまたは試薬中のバックグラウンドの蛍光による干渉が問題となることが多い。こうしたバックグラウンドの蛍光は、半減期が極めて短く、ストークスシフトが低いことも多いので、ストークスシフトが大きいまたは半減期が長い蛍光タグを使用すると(時間分解蛍光測定)、バックグランドが高くても、少量のタグを検出することが可能となる。時間分解蛍光タグ標識法の一方法では、(有機キレート剤を使用して)キレート化したランタニド金属を使用する。(1〜6)現在利用できるランタニド・キレート化錯体は、紫外線(たとえば、340 nm未満のものであることが多い(11〜15))を用いて励起せねばならないので、複雑かつ相対的に高価な光源、たとえば窒素レーザーの使用が必要となる。ランタニド時間分解蛍光測定を利用した市販の製品としては、パーキンエルマーのDELFIA(登録商標)およびLANCE(商標)の製品(マサチューセッツ州ボストン、Perkin Elmer Bioproducts)2種を挙げることができる。Eu標識剤であるDELFIA(登録商標)は、Eu3+でキレート化したN1-(p-イソチオシアナトベンジル)-ジエチレントリアミン-N1,N2,N3,N4-テトラ酢酸(DTTA)から構成されている。DTTA基が、ユウロピウムとともに安定した錯体を形成し、イソシアネート基が、タンパク質上の遊離アミノ基と反応して、安定した共有チオ尿素結合を形成する。キレートの水溶性および安定性が高く、また、イソチオシアネート反応のカップリング条件が緩やかなので、10〜20Eu/IgG以下の抗体を標識することができる。LANCE(商標)の製品も、イソシアネート(ITC)系のキレート製品である。
【0004】
文献では、もっと長波長で励起可能な他のキレートも報告されている。これらのキレートは、場合によっては、比較的低い量子収量および/または非効率的なキレート化合物から金属イオンへのエネルギー移動を示す。たとえば、Eu(III)シッフ塩基錯体は、吸収極大が長めの波長で生じる場合には、量子収量が比較的低い。(16)キレートによっては、蛍光が、実質的に有機溶媒に限定されており、生物学用途での魅力または実用性に欠ける。Martinusらには、極大が414 nmで生じる、Euのミヒラーケトン[4,4'-bis(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン](「MK」)とのキレートが記載されている。この場合も、錯体の形成は、非配位性溶媒で生じ、水分子が、ランタニド配位部位をめぐってMKと競合する可能性がある。(17)
【0005】
Steemersらは、ユウロピウムおよびテルビウムの一連のカリックス[4]アレーンとの錯体の製造に成功し、励起波長を少なくとも350 nmまで延ばすことができた。報告された量子収量は比較的低く、エネルギー移動は比較的低効率である。これは、励起種の相当部分が、分子酸素によって捕捉され、発光に寄与することなく消光したためと考えられる。(18)Wertsらは、ランタニドと、フルオレキソン(4’,5’ビス[N,Nビス(カルボキシメチル)アミノメチル]フルオレセイン)との錯体について記載しており、この錯体は、可視光で励起可能である。(19)しかし、これらのキレートの量子収量は、非放射性不活性化のために比較的低いことが報告されている(1.7〜8.9×10-4)。
【0006】
芳香族1,3-ジケトンである2-ナフトイルトリフルオロアセトン(NTA、下記の化合物1)の陰イオン(下記の化合物1a)は、水性溶媒中で、相乗剤であるトリ-n-オクチル-ホスフィンオキシド(TOPO)の存在下で、高度に蛍光性のEuキレートを形成する。(20、21)
【0007】
【発明の開示】
【0008】
概要
本発明は、以下の特徴、すなわち、長い寿命、細いバンド幅、大きなストークスシフト、高い量子収量、および光褪色または自己消光といった有害な現象の回避といった特徴の1以上を、所望の組み合わせで備えた蛍光タグに関するものである。本発明では、好ましくは、近可視および可視スペクトルの励起エネルギーの使用が可能となっており、その結果、発光ダイオードまたはダイオードレーザーのような費用対効果の高い励起装置を使用することが可能となり、商用利用での技術の実用性が改善されている。
【0009】
本発明は、概述すると、請求項1に記載した式A、B、またはCのいずれかを有するβ-ジケトン化合物に関するものである。このβ-ジケトン化合物は、好ましくは、ランタニド(III)希土類金属イオン(たとえばEu3+)とともに蛍光キレートを形成するものであり、したがって、本発明は、β-ジケトン化合物のそうしたイオンとの錯体にも関するものである。本発明は、非蛍光キレート剤、たとえば、トリ-n-オクチル-ホスフィンオキシド(TOPO)またはNH3を、組成物中で、上記の蛍光キレート剤とともに使用することにも関するものである。希土類金属イオンは、こうした組成物中に含有させておくことも、その後の工程で加えることもできる。
【0010】
一態様では、蛍光錯体を、微粒子、たとえばスチレン・ラテックス粒子またはコロイド状金粒子に包含させる。錯体は、360 nm以上のλ吸収極大を有するものとし、化合物は、pKa < 9.0であるものとするのが好ましく、この場合、錯体は、生理的なpHで安定となる。
【0011】
この錯体は、標的分子を検出するタグとして特に有用であり、本発明は、こうした検出用のキットおよび方法も提供するものである。こうした方法およびキットでは、通常、標的分子結合用のリガンドと、リガンドに結合した標識物質を利用する。上述の蛍光錯体は、少なくとも、標識物質の一部を構成する。標的分子を、錯体で標識したリガンドと反応させ、標的の存在を、360 nm以上のエネルギーλで照射し、標的分子の存在の指標となる蛍光錯体からの発光を検出することによって検出する。
【0012】
サンプルからの蛍光を検出する装置は、360 nm以上の照射エネルギーλを生成する照射エネルギー源と、照射エネルギー源でサンプルを照射できるよう、サンプルを所定位置に保持するサンプル・ホルダーと、サンプルからの蛍光を検出するよう配置された検出装置と、蛍光を瞬時に、または時間分解して検出する検出回路とを備えている。本発明では、照射エネルギー源として、半導体光源、たとえば発光ダイオードまたはレーザーダイオードを使用することができる。
【0013】
請求項1の式の化合物として特に好ましい化合物は、式中で、
Ar1が、ナフチル、アントラセニル、またはフェナントレニル基、または置換ナフチル(たとえば、2’ナフチル)、アントラセニル、またはフェナントレニル基であり、
Ar2およびAr3が、置換フェニル基、たとえば-F、-CF3、-N(CH3)2の1以上によって置換されたフェニル基であり、
置換基が、C1-C5アルキル、C1-C5アルケニル、C1-C5アルキニル基、または置換C1-C5アルキル、C1-C5アルケニル、C1-C5アルキニル基をはじめとする置換基であるような化合物である。
【0014】
本発明の1以上の態様の詳細を、添付図面および以下の記載にて説明するが、本発明の他の特徴、目的、利点については、記載および図面、そして請求の範囲から明らかとなるなずである。
【0015】
詳細な説明
NTA(1)のトリフルオロメチル基を、フェニル環で置換したもの(フェニル-3-ナフチル-1,3-プロパンジオン、化合物2または「PNPD」)と、ナフチル環で置換したもの(1,3-ジ-ナフチル-1,3-プロパンジオン、化合物3または「NNPD」)の2種の化合物を設計した。これらの化合物および対応するエノラートの構造を以下に示す。
【0016】
【0017】
1’-アセトナフトンから出発して化合物2および3を合成し、その構造を、下記のようにして調べた。塩化ユウロピウム(III)の蛍光キレートを、0.1 Mのホウ酸緩衝液(pH9.0)中にて、TOPOの存在下で、2および3のそれぞれを用いて作製し、励起スペクトルおよび発光スペクトルを、パーキン・エルマーの蛍光分光装置(モデルLS 50)で記録し、NTA(化合物1)のスペクトルと比較した。スペクトルの結果(図2)からは、化合物2および3の励起波長のピークが、それぞれ、390 nmと400 nmとにあり、双方とも、化合物1のピークである330 nmから相当シフトしており、半導体光源で励起可能であることがわかる。化合物は、いずれも、類似した消光および蛍光強度を示す。これらの化合物は、量子収量が高く、酸素含有溶媒中で安定であり、配位子から金属への十分なエネルギー移動が生じたことが示唆された。
【0018】
これらの知見にもとづいて、化合物2の誘導体を製造した。その構造を図3に示し、合成および特性解析について、下記に記載する。
【0019】
図3に示す化合物は、いずれも、TOPOの存在下で、塩化ユウロピウム(III)と蛍光キレートを形成可能である。興味深いことに、環の置換基が異なり、たとえばフッ素、シアノ、メトキシ、カルボキシメチルで置換された誘導体では、PNPDのような、スペクトルの有意なシフトが観察されなかった。しかし、カルボニル基のpKaの有意な変化は観察された。上述したように、金属との錯体の形成を生じさせるためには、ジカルボニル化合物のエノラートを形成することが必要である。非置換化合物2の場合には、エノール炭素のpKaは、約pH9.0なので、錯体を形成してその安定性を保つうえでは、こうした高いpHを維持することが必要となる。この点は、キレートを、後述のラテックス粒子に成功裏に担持させるうえでの制限となる。しかし、蛍光誘導体のpKaは、いずれもこれより有意に低いので、ある程度のpH範囲で作業を進めることができる。たとえば、化合物4のpKaは約4.2であり、この化合物を使用した場合には、pH4.5超で安定したキレートを形成することができた。生理学的な測定条件でキレートが安定であるためには、pHは、9.0未満とするのが(普遍的というわけではないが)通常は望ましい。
【0020】
後述する方法でラテックス粒子に担持させた場合のPNPDのN,N-ジメチルアミノ誘導体(図3の化合物14)蛍光キレートの励起波長は、さらに可視スペクトル側にシフトし、極大は、約455 nmに位置していた。
【0021】
混合物である(化合物2+TOPO)および(化合物2+塩化ユウロピウム)を、塩化ユウロピウム(III)とTOPOの標準溶液で、それぞれ滴定し、蛍光強度を測定した。結果から、金属、配位子、TOPOが化学量論比1:3:3となることで、蛍光キレートが形成されていることが示唆された。しかし、フェニル環が置換された化合物、たとえば化合物4または8(図3)の場合、化学量論比は1:2:3となった。特定の機構に拘束されることを望むものではないが、これらのキレートのいくつかは、水溶液中でTOPOまたはNH3非蛍光キレート剤とともに、ビスキレート剤として作用するようである。すなわち、蛍光キレート形成分子2つが、金属イオン1つと、非蛍光キレート剤3つとともに、1:2:3のモル比で錯体を形成する。さらに、アリール部分の1つを、ジケトン置換基に隣接して、さらに別のキレート部分で置換した場合には、水分子による水和を防止することもできる。具体的には、図4がこの可能性を図示しており、この場合、アリール部分の一つが
O-CX-R
で置換されている。
(式中のXは、SまたはO、Rは、O-R1またはS-R1であり、ここで、R1は、C1-C5アルキル、C1-C5アルケニル、C1-C5アルキニル基、または置換C1-C5アルキル、C1-C5アルケニル、C1-C5アルキニル基である。好ましくは、アリールのさらなる置換基は、-CO-O-アルキル、たとえば-CO-OCH3である。図4では、Mは金属イオン、Pは非蛍光キレート剤であり、酸素分子を介してキレート化された有機キレート化分子の式を示す。H2Oは、錯体が水和していることを示す。
【0022】
以上では、所望の特性を示す安定したキレートを作製したが、以下に記載するようにしてカルボキシ・ラテックスにキレートを担持する単純な方法を使用することにより、これらのキレートが、免疫測定法で蛍光プローブとしても用いうるものであることも例証した。この新規な方法は、各種サイズ(34、60、104、190、200、300、および400 nm)および各種専有面積(7、50、90Å2/カルボキシル基、等)の各種カルボキシ・ラテックスならびに各種サイズの単味ポリスチレンに、各種のPNPD誘導体で形成したキレートを担持する際に、成功裏に使用することができた。カルボキシ・ラテックス粒子に担持することで、ユウロピウムキレートの光学特性には、励起極大が、10〜20 nm長めの波長に移動したこと以外は、有意な変化は観察されなかった。後述するように、ビオチン標識BSAを、キレート(カルボキシ・ラテックス粒子がすでに担持されたキレート)に受動的に吸着させ、その後、NeutrAvidin(Pierce Biotechnology、ロックフォード、イリノイ州)を結合させた。
【0023】
NeutrAvidinで被覆したキレート担持カルボキシ・ラテックスを使用して、イヌ糸状虫(HTWM)の不均一系でのサンドイッチ免疫測定法を実施した。測定での必須の過程は、以下とおりであった。すなわち、ポリスチレンのウェルをウサギ抗HTWM抗体で被覆し、その後、BSAでブロッキングして非特異的結合を防止し、HTWM抗原の血清による段階稀釈液を、これらのウェル(パネル番号10での最低濃度は、約0.03 ngr/ml)でインキュベートし、その後、ビオチン標識ニワトリ抗HTWM抗体を加えた。その後、ウェルを洗浄し、最後に、neutrAvidine被覆蛍光カルボキシ・ラテックスとともにインキュベートした。結合しなかった粒子をよく洗浄除去した後、連続および時間分解モードで蛍光を読み取った。結果を図5に示す。
【0024】
これらのneutrAvidine被覆キレートを担持したカルボキシ・ラテックスを使用したネコ白血病(FeLV)抗原についての不均一系でのサンドイッチ免疫測定法も実施した。測定での必須の過程は、以下とおりであった。すなわち、ポリスチレンのウェルをモノクローナル抗FeLV抗体で被覆し、その後、BSAでブロッキングして非特異的結合を防止、FeLV抗原パネルの各希釈液をこれらのウェルでインキュベートした。その後、ビオチン標識したモノクローナル抗FeLV抗原を加えた。その後、ウェルを洗浄し、最後に、NeutrAvidin被覆蛍光カルボキシ・ラテックスとともにインキュベートした。結合しなかった粒子をよく洗浄除去した後、連続および時間分解モードで蛍光を読み取った。結果を図6に示す。
【0025】
抗体/タンパク質被覆コロイド状金は、免疫学的診断、組織化学、細胞化学で広くプローブとして使用されている21。代表的な免疫測定法では、コロイド状金は、目視または定量的な測定を行う際の標識として利用されている22。蛍光コロイド状金粒子の概念を用いると、金粒子を、標的の(色の目視観察による)定性的検出ならびに(蛍光の測定による)定量的検出に利用できると推量した。こうした方向で、コロイド状金粒子をユウロピウム・キレートで成功裏に被覆することのできる方法をはじめて開発した。後述するように、PNPDのEuキレートおよびその蛍光類似体を、コロイド状金粒子に被覆し、得られた蛍光金粒子の光学特性を、図8に示すようにして調べた。また、蛍光金粒子を抗体で成功裏に被覆して、免疫測定用プローブとして利用できることも示した。
【0026】
図7に示すように、カルボキシル基を導入したPNPDの誘導体を、さらに3種成功裏に合成して、新規な配位子のタンパク質との直接の結合を可能とした。1-フェニル-3(6-カルボキシメトキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオン(17)を、方法に関して上述したようにして、2,6-ジメチル-ナフタレイン-ジカルボキシレートとアセトフェノンから合成した。対応するカルボン酸(18)を超音波条件下でメチルエステルを加水分解することによって得た。カルボン酸誘導体(20および21)も、同様の合成方法および適当な出発物質を使用することによって合成した。カルボン酸化合物のN-ヒドロキシコハク酸イミドエステルは、タンパク質中のアミノ基と反応して、対応する結合物を形成することが知られている。1-フェニル-3(6-カルボキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオン(19)のNHSエステルを合成し、BSAおよびニワトリおよびウサギαHTWM抗体の双方に成功裏に結合して、配位子標識タンパク質を得た。標識タンパク質の吸収スペクトルは、新規配位子の十分に画定されたピーク特性を示し、極大は360 nmとなり、成功裏に結合したことが示された。標識タンパク質は、塩化ユウロピウムおよびTOPO溶液と混合すると、蛍光キレートを形成した。これらのキレート標識抗体を使用することにより、ラテックス粒子を使用せずに、サンドイッチ免疫測定法を実施することができた。可溶性キレート標識抗体は、ラテックス粒子に通常伴う拡散関連の問題を回避しうる可能性を有している。この技術の感度を増大させるために、後述するように、複数のアミノ基を持つポリマー、たとえばポリアリルアミンおよびリシン-アスパラギン酸ポリペプチドも成功裏に標識した。標識ポリマーをさらに抗体に結合すると、複数のキレート標識を持つ可溶性のタンパク質-ポリマー結合物を生じるはずである。同様の化学的過程により、1-(3,5-F2-フェニル)-3(6-カルボキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオンのNHSエステルも合成し、このNHSエステルを使用することにより、タンパク質とポリマーの双方を成功裏に標識した。
【0027】
1-フェニル-3-ナフチル-1,3-プロパンジオン(2)の合成: 磁性の撹拌棒および冷却器が装着された250 ml入りの丸底フラスコ中で、9.5 gグラムのナトリウムアミドの50%スラリーを、100 mlの無水エーテルに懸濁した。この懸濁液に、10.2 grの固体アセトナフトンを加え、室温にて5分間撹拌を続けた。5分後に、8.16 grの安息香酸メチルを1ロットで無溶媒液として加えた。この時点で、反応フラスコを、油浴に移し、浴温を上昇させて、内容物を、エーテル中にて3時間穏やかに還流させた。その後、内容物を、300 grの固体状氷に加え、撹拌しながら、濃HClでpHを7.0とした。エーテル層を分離し、水層を、150 mlずつのエーテルで2回抽出した。エーテル層を合わせ、無水硫酸ナトリウム床上で乾燥し、濃縮機(Rotavaper)で約100 mlに濃縮し、室温に静置した。再結晶した固形物を濾別し、エーテルで乾燥し、10.6 grの固体状のジケトンを得た。
【0028】
1,3-ジナフチル-1,3-プロパンジオン(3)の合成: 磁性の撹拌棒および冷却器が装着された250 ml入りの丸底フラスコ中で、4.75 grのナトリウムアミドの50%スラリーを、150 mlの無水エーテルに懸濁した。この懸濁液に、5.1 grの固体アセトナフトンを加え、室温にて5分間撹拌を続けた。5分後に、5.58 grのメチル-2-ナフトエートを1ロットで加えた。この時点で、反応フラスコを油浴に移し、浴温を上昇させて、内容物をエーテル中にて、3時間おだやかに還流させた。その後、内容物を、300 grの固体状の氷に加えた。濃HClで酸性としたところ、固体状生成物が析出した。この固体状生成物を濾別し、エーテル/メタノール混合物から再結晶させた。
【0029】
1-[(3,5-F2-フェニル]-3-ナフチル-1,3-プロパンジオン(4)の合成: 磁性の撹拌棒および冷却器が装着された100 ml入り丸底フラスコ中で、2.135 grのナトリウムアミドの50%スラリーを、50 mlの無水エーテルに懸濁した。この懸濁液に、4.936 grの固体アセトナフトンを加え、室温にて5分間撹拌を続けた。5分後に、5 grの3,5-ジフルオロ安息香酸メチルを1ロットで加えた。この時点で、反応フラスコを油浴に移し、浴温を上昇させて、内容物をエーテル中にて、3時間おだやかに還流させた。その後、内容物を、100 gの固体状の氷に加え、撹拌しながら、濃HClで酸性とした。エーテル層を分離し、水層を、100 mlのエーテルで、2回抽出した。エーテル層を合わせて無水硫酸ナトリウム床上で乾燥させ、濃縮機で濃縮して、淡黄色の固形物を得た。この固形物を、最小量のエーテルに溶解し、濾過した。濾液を4℃に保持して、結晶状生成物を得た。TLCを行ったところ、混入物のないきれいな単一のスポットが得られた。
【0030】
3,5-F2-PNPD-Euキレートの、104 nm のカルボキシ・ラテックスへの担持: 9.3 mgの3,5-F2-PNPDの30 mlのジオキサンへの溶液、17.415 mgのTOPOの45 mlのメタノールへの溶液、および15 mlの1 mM 塩化Eu(III)を、100 mlのメタノールと混合した。5分後、この混合物を100 mlの脱イオン水で希釈し、振盪機で30分間振盪して、キレートを完全に形成させた。この間に、2 mlの104 nm CMLラテックス(Seradyne、固形分10%、lot番号C98 1838)を20μlの6NのNaOH溶液および2 mlのメタノールと混合し、30分間インキュベートした。30分後、キレート溶液と粒子を80μlの6N NaOHとともに混合し、室温にて4時間振盪機で振盪した。4時間後、混合物を、濃縮機で、減圧下にて45℃で約47 mlに濃縮した。濃縮粒子溶液を、塩化ナトリウムの脱イオン水への10 mM溶液6 Lに対し、透析液を1日2回交換しながら3日間にわたり透析した。
【0031】
BSAのビオチン標識: 10%BSA溶液(3 gr/脱イオン水30 ml)を、0.2μのフィルターで濾過し、4 Lの脱イオン水に対して透析した。1 mlの透析BSA (63.5 mg/ml)を、7 mlの50 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)で希釈し、NHS-X-ビオチン(Pierce Chemical Company)の無水DMFへの溶液(20 mg/ml)0.5 mlと混合し、撹拌しながら3時間反応を進行させた。3時間後、反応混合物を、6 Lの20 mM TRIS(pH7.4)に対して透析して、未反応のビオチンを除去した。
【0032】
蛍光粒子のビオチン-BSAによる被覆: ポリプロピレン製チューブ中で、3 mlの粒子(固形分0.4%)の、NaClの脱イオン水への10 mM溶液への懸濁液を、60μlの1M TRIS(pH7.4)、および2.5 mlのビオチン/BSA(20mM TRIS(pH7.4)への7.15 mg/ml溶液)と混合し、4℃で一晩回転装置にかけた。翌朝、粒子を15K rpmで30分間遠心した。ペレットを、2 mlの20 mMのTRIS(pH7.4)に再懸濁し、再遠心した。この手順を2回繰り返した。
【0033】
最後に、粒子を、2 mlのmMのTRIS(pH7.4)に懸濁させた。
【0034】
ビオチン-BSA被覆粒子のNeutrAvidineによる被覆: 2 mlの上記ビオチン-BSA被覆粒子の20 mM TRIS(pH7.4)への懸濁液を、0.4 mlのneutrAvidineの同じ緩衝液への10 mg/ml溶液と混合し、4℃で48時間回転装置にかけた。48時間後、未結合タンパク質を、ビオチン-BSA被覆過程と同様にして除去し、粒子を、最後に、20 mMのTRIS(pH7.4)に懸濁させた。
【0035】
neutrAvidine被覆蛍光粒子を使用したHTWM抗原の測定: ウサギ抗HTWM抗体で被覆したウェルを、100 mlのHTWM抗原のパネル0〜10とともに、30分間インキュベートした。その後、ウェルを、市販のHTWMプレート洗浄液(IDEXX Laboratories、Inc.、メイン州ウェストブルック)で3回洗浄し、さらに、ビオチン標識ニワトリ抗HTWM抗体のHTWM結合物希釈液(IDEXXの製品)への5 pg/ml溶液とともに30分間インキュベートした。ウェルを7回洗浄し、その後neutrAvidine被覆蛍光粒子とともに1時間インキュベートした。1時間後に、ウェルを7回洗浄し、連続および時間分解モードで蛍光を読み取った。図5に、連続および時間分解蛍光を使用したこの測定の結果を示す。
【0036】
1-フェニル-3(6-カルボキシメトキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオンの合成: ナトリウムアミド(トルエンへの50%懸濁液1.56 gr)の無水THFへの懸濁液に、無溶媒のアセトフェノン(2.88 gr)を加え、磁性の撹拌棒および冷却器が装着された500 ml入りの丸底フラスコ中にて、室温にて3分間撹拌した。3分後、固体状の2,6-ジメチル-ナフタレイン-ジカルボキシレートをフラスコに懸濁させ、油浴の温度を上昇させてTHFを乾留させた。4時間後、反応混合物を、過剰の氷冷水に加えて、生成物を沈殿させた。生成物を、濾別し、エタノールから再結晶させてた。
【0037】
1-フェニル-3(6-カルボキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオンの合成: 1 gの1-フェニル-3(6-カルボキシメトキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオンを、40 mlの1N NaOHに懸濁し、プローブ超音波処理装置で、10回(30秒のパルス)、超音波処理した。不溶の固形分を濾別し、さらなる超音波サイクルに使用した。透明な濾液を濃HClで酸性として、カルボン酸生成物を沈殿させた。生成沈殿物を、凍結乾燥器に一晩連結することによって乾燥した。TLCおよび質量スペクトル分析で、カルボン酸が生成していることを確認した。
【0038】
1-フェニル-3(6-カルボキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオンのNHSエステルの合成: 1-フェニル-3(6-カルボキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオン(29.26 mg)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(59.95 mg)、およびN-ヒドロキシスクシンイミド(31.77 mg)を、一緒に、磁性の撹拌棒が装着された暗色のガラス製バイアル中で、1 mlの無水DMFに懸濁し、室温にて一晩撹拌した。翌朝、不溶の沈殿物を濾別し、生成したNHS-エステルのDMF溶液を、窒素を充填した暗色のガラス製バイアルで貯蔵し、さらなる精製を行うことなく、タンパク質との結合に使用した。
【0039】
BSAの、1-フェニル-3(6-カルボキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオンのNHSエステルとの結合: 小型磁性ペレット入りのガラス製バイアル中で、BSAの50 mM SPB(pH8.0)への7.82 gr/mlの溶液2 mlを、上記のストックNHSエステル溶液3μlの2部分と混合し、室温にて75分間撹拌した。75分後、反応混合物を、50 mMのホウ酸緩衝液(pH9.0)で平衡化したサイズ排除カラムに通し、280 nmでの吸収にしたがって、タンパク質分画を集めた。
【0040】
ニワトリαHTWM抗体およびウサギαHTWM抗体の、1-フェニル-3(6-カルボキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオンのNHSエステルとの結合: 小型磁性ペレット入りのガラス製バイアル中で、抗体の50 mM SPB(pH8.0)への6 mg/mlの溶液1 mlを、6μlのNHSエステルのストック溶液のDMF溶液と混合し、室温にて75分間撹拌した。75分後、反応混合物を、50 mMのホウ酸緩衝液(pH9.0)で平衡化したサイズ排除カラムに通し、280 nmでの吸収にしたがって、タンパク質分画を集めた。
【0041】
ポリアリルアミンの、1-フェニル-3(6-カルボキシ-ナフチル)-1,3-プロパンジオンのNHSエステルとの結合: 小型磁性ペレット入りの暗色ガラス製バイアル中で、ポリアリルアミンの50 mM SPB(pH8.0)への6 mg/mlの溶液2 mlを、ストックNHSエステル溶液のDMFへの溶液20μlで処理し、室温にて75分間撹拌した。75分後、反応混合物を、サイズ排除カラムに通し、非結合リガンドを分離した。
【0042】
Eu-PNPDキレート被覆コロイド状金: 10 mlのコロイド状金溶液(BB International Gold Colloidal、40 nm、CAT番号EM. GC 40、バッチ番号2862)を、800 rpmで15分間遠心し、ペレットを回収した。次に、この金ペレットを、50 ml入りのガラス製三角フラスコに入った20 mlの0.1 Mホウ酸緩衝液(pH9.0)に溶かした。このコロイド状金溶液に、10% Tween 20の脱イオン水溶液、そしてその後、1 mM PNPD溶液を400 mlずつ加えた。混合物を、振盪機で10分間振盪した。10分後、1 mM TOPO溶液、そして次に塩化ユウロピウムを400 mlずつ加えた。最後に、混合物を一晩振盪機で振盪した。翌日、溶液を、8000 rpmで20分間遠心し、ペレットを回収した。ペレットを、20 mlのホウ酸緩衝液に再度溶解し、8K rpmで20分間遠心した。最後に、ペレットを2 mlのホウ酸緩衝液に溶解して、蛍光コロイド状金溶液を得た。
【0043】
Eu-3,5-F2-PNPDキレート被覆コロイド状金: ホウ酸緩衝液のかわりに脱イオン水を使用した以外は、Eu-PNPDキレートと同じ手順を繰り返した。
【0044】
ウサギαHTWM抗体のキレート被覆コロイド状金への結合: 119μlの4.5 mg/mlウサギαHTWM溶液を、881μlのキレート被覆コロイド状金溶液と混合し、室温で15分間インキュベートした。15分後に、内容物を、8000 rpmで12分間遠心した。ペレットを、1 mlの0.1 Mホウ酸塩(pH9.0)に溶解し、8000 rpmでさらに12分間遠心した。金ペレットを最終的に1 mlの0.1 Mホウ酸塩(pH9.0)に溶解した。上清中の抗体を測定し、タンパク質がキレート被覆金と結合したことを確認した。以上では、本発明のいくつかの態様について記載してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、各種の変更を加えることが理解されるはずである。キレート系のさらなる結合を行うこともできる。化合物2の陰イオン形態(2a)の場合には、さらに3つのフェニル環の二重結合によって結合を拡張することができ、化合物3aの陰イオン形態の場合には、5つのナフチル環の二重結合によって結合を拡張することができる。たとえば、本発明にしたがって、いくつもの他の潜在的キレート化合物を評価することができる。具体的には、上述したように、可視または近可視スペクトルに吸収極大のある化合物が好適である。水溶性とすることも、好適である。置換基は、pKa値が9.0未満となるよう選択することが、特にラテックス粒子を使用する場合には好適である。
【0045】
ランタニド系の金属のみならず、Tr、Se、およびRu、特に後者をはじめとして、他の遷移金属を使用することもできる。
【0046】
本発明の蛍光化合物を使用することによって、他の免疫測定法も実施することができる。こうした免疫測定法としては、HIV、FIV、肝炎、エールリヒア症、ボレリア・ブルグドルフェリ(ライム病)、パルボウイルス、リーシュマニア、hCG、インスリン、c-ペプチドおよびT4について調べる測定法を挙げることができる。
【0047】
したがって、請求の範囲の範囲には、他の態様も含まれるものである。
【0048】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】Eu3+キレート錯体の放射プロセスの模式図である。
【図2】NTA、PNPD、およびNNPDの励起および発光スペクトルを示す。
【図3】化合物2の各種の誘導体の構造を示す。
【図4】特定の化合物を配位した金属(M+)の図である。
【図5】上述した時間分解蛍光分析と連続蛍光分析の比較である。
【図6】ネコ白血病ウイルスに対する免疫測定法の結果を示す。
【図7】カルボキシ基を導入したPNPD誘導体を合成し、この誘導体をタンパク質と結合するスキームである。
【図8】Eu-PNPDキレート被覆コロイド状金の励起および発光スペクトルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式A、B、またはC:
を有するJβ-ジケトン含有化合物
[式中、Ar1は、置換芳香族基、複素環式芳香族基、または置換複素環式芳香族基であり、
Ar2およびAr3は、それぞれ独立に、単環アリール基、多環アリール基から選択されるものである。]。
【請求項2】
置換とは、C1-C5アルキル、C1-C5アルケニル、C1-C5アルキニル基、または置換C1-C5アルキル、C1-C5アルケニル、C1-C5アルキニル基によって置換されていることを意味するものである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Ar1が、ナフチル、アントラセニル、またはフェナントレニル基、または置換ナフチル、アントラセニル、またはフェナントレニル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
Ar2が、置換フェニル基である、請求項1または3記載の化合物。
【請求項5】
Ar2が、-F、-CF3、-N(CH3)2の1以上によって置換されたフェニル基である、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
Ar1もしくはAr2またはその双方が、ジケトン置換基に対して2'の位置で、式:
O-CX-R
を有する部分によって置換される、請求項1記載の化合物
[式中、Xは、SまたはO、Rは、O-R1またはS-R1であり、R1は、C1-C5アルキル、C1-C5アルケニル、C1-C5アルキニル基、または置換C1-C5アルキル、C1-C5アルケニル、C1-C5アルキニル基である。]。
【請求項7】
A1が、2'ナフチル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のJβ-ジケトン化合物、および、非蛍光キレート剤を含む組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のJβ-ジケトン化合物の、ランタニド(III)希土類金属イオンとの錯体。
【請求項10】
請求項9記載の錯体、および、非蛍光キレート剤を含む組成物。
【請求項11】
非蛍光キレート剤が、トリ-n-オクチル-ホスフェンオキシド(TOPO)またはNH3である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
ランタニド(III)希土類金属イオンが、Eu3+である、請求項9記載の錯体。
【請求項13】
請求項9記載の錯体を含む、ラテックス微粒子。
【請求項14】
ラテックスが、スチレンラテックスである、請求項13記載のラテックス微粒子。
【請求項15】
錯体のSでの吸収極大が、360 nm以上であることを特徴とする、請求項9記載の錯体。
【請求項16】
マルチケトン化合物が、pKa<9.0であることを特徴とする、請求項9または15記載の錯体。
【請求項17】
錯体が、水溶性である、請求項9記載の錯体。
【請求項18】
金属イオンが、Eu3+である、請求項17記載の錯体。
【請求項19】
錯体が、非蛍光キレート剤を含み、化学量論比が1:2:3(金属イオン:蛍光化合物:非蛍光キレート剤)のビスキレートである、請求項18記載の錯体。
【請求項20】
標的分子に対するリガンド、および、標識剤を含むキットであって、標識剤が請求項9記載の錯体を含む、キット。
【請求項21】
以下の検出を行う方法:
標的分子を、請求項9記載の錯体を含む標識剤と反応させることによる、標的分子の存在の検出;
360 nm以上のエネルギーλで錯体を照射することによる錯体の検出;および
標識錯体からの発光の検出。
【請求項22】
発光を時間分解蛍光として検出する、請求項21の方法。
【請求項23】
請求項9記載の錯体を含む混合物を形成し、ポリマーを混合物で被覆することによって、ポリマーを標識する方法。
【請求項24】
請求項9記載の錯体によって標識されたポリマー。
【請求項25】
請求項24記載の標識ポリマーを含む特異的結合物質によって標識されたタンパク質。
【請求項26】
結合性物質に結合された、請求項9記載の錯体を含む検出試薬。
【請求項27】
担体分子または粒子に結合された、請求項26記載の検出試薬。
【請求項28】
タンパク質またはポリマーに結合された、請求項9記載の錯体。
【請求項29】
抗体または抗原に結合された、請求項9記載の錯体。
【請求項30】
錯体が、タンパク質またはポリマーと共有結合されている、請求項9記載の錯体。
【請求項31】
共有結合が、9-ジケトン含有化合物上の官能基によるものである、請求項30記載の錯体。
【請求項32】
共有結合された官能基が、カルボキシル基である、請求項31記載の錯体。
【請求項33】
以下を含む、サンプルから蛍光を検出する装置:
360 nm以上の照射エネルギーλを生成する照射エネルギー源;
サンプルから蛍光を検出するよう配置された検出装置;および
エネルギー源の照射を受ける場所でサンプルを保持するサンプル・ホルダー。
【請求項34】
照射エネルギー源が、半導体光源である、請求項33記載の装置。
【請求項35】
照射エネルギー源が、発光ダイオードである、請求項34記載の装置。
【請求項36】
照射エネルギー源が、レーザーダイオードである、請求項34記載の装置。
【請求項1】
下記の式A、B、またはC:
を有するJβ-ジケトン含有化合物
[式中、Ar1は、置換芳香族基、複素環式芳香族基、または置換複素環式芳香族基であり、
Ar2およびAr3は、それぞれ独立に、単環アリール基、多環アリール基から選択されるものである。]。
【請求項2】
置換とは、C1-C5アルキル、C1-C5アルケニル、C1-C5アルキニル基、または置換C1-C5アルキル、C1-C5アルケニル、C1-C5アルキニル基によって置換されていることを意味するものである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Ar1が、ナフチル、アントラセニル、またはフェナントレニル基、または置換ナフチル、アントラセニル、またはフェナントレニル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
Ar2が、置換フェニル基である、請求項1または3記載の化合物。
【請求項5】
Ar2が、-F、-CF3、-N(CH3)2の1以上によって置換されたフェニル基である、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
Ar1もしくはAr2またはその双方が、ジケトン置換基に対して2'の位置で、式:
O-CX-R
を有する部分によって置換される、請求項1記載の化合物
[式中、Xは、SまたはO、Rは、O-R1またはS-R1であり、R1は、C1-C5アルキル、C1-C5アルケニル、C1-C5アルキニル基、または置換C1-C5アルキル、C1-C5アルケニル、C1-C5アルキニル基である。]。
【請求項7】
A1が、2'ナフチル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のJβ-ジケトン化合物、および、非蛍光キレート剤を含む組成物。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のJβ-ジケトン化合物の、ランタニド(III)希土類金属イオンとの錯体。
【請求項10】
請求項9記載の錯体、および、非蛍光キレート剤を含む組成物。
【請求項11】
非蛍光キレート剤が、トリ-n-オクチル-ホスフェンオキシド(TOPO)またはNH3である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
ランタニド(III)希土類金属イオンが、Eu3+である、請求項9記載の錯体。
【請求項13】
請求項9記載の錯体を含む、ラテックス微粒子。
【請求項14】
ラテックスが、スチレンラテックスである、請求項13記載のラテックス微粒子。
【請求項15】
錯体のSでの吸収極大が、360 nm以上であることを特徴とする、請求項9記載の錯体。
【請求項16】
マルチケトン化合物が、pKa<9.0であることを特徴とする、請求項9または15記載の錯体。
【請求項17】
錯体が、水溶性である、請求項9記載の錯体。
【請求項18】
金属イオンが、Eu3+である、請求項17記載の錯体。
【請求項19】
錯体が、非蛍光キレート剤を含み、化学量論比が1:2:3(金属イオン:蛍光化合物:非蛍光キレート剤)のビスキレートである、請求項18記載の錯体。
【請求項20】
標的分子に対するリガンド、および、標識剤を含むキットであって、標識剤が請求項9記載の錯体を含む、キット。
【請求項21】
以下の検出を行う方法:
標的分子を、請求項9記載の錯体を含む標識剤と反応させることによる、標的分子の存在の検出;
360 nm以上のエネルギーλで錯体を照射することによる錯体の検出;および
標識錯体からの発光の検出。
【請求項22】
発光を時間分解蛍光として検出する、請求項21の方法。
【請求項23】
請求項9記載の錯体を含む混合物を形成し、ポリマーを混合物で被覆することによって、ポリマーを標識する方法。
【請求項24】
請求項9記載の錯体によって標識されたポリマー。
【請求項25】
請求項24記載の標識ポリマーを含む特異的結合物質によって標識されたタンパク質。
【請求項26】
結合性物質に結合された、請求項9記載の錯体を含む検出試薬。
【請求項27】
担体分子または粒子に結合された、請求項26記載の検出試薬。
【請求項28】
タンパク質またはポリマーに結合された、請求項9記載の錯体。
【請求項29】
抗体または抗原に結合された、請求項9記載の錯体。
【請求項30】
錯体が、タンパク質またはポリマーと共有結合されている、請求項9記載の錯体。
【請求項31】
共有結合が、9-ジケトン含有化合物上の官能基によるものである、請求項30記載の錯体。
【請求項32】
共有結合された官能基が、カルボキシル基である、請求項31記載の錯体。
【請求項33】
以下を含む、サンプルから蛍光を検出する装置:
360 nm以上の照射エネルギーλを生成する照射エネルギー源;
サンプルから蛍光を検出するよう配置された検出装置;および
エネルギー源の照射を受ける場所でサンプルを保持するサンプル・ホルダー。
【請求項34】
照射エネルギー源が、半導体光源である、請求項33記載の装置。
【請求項35】
照射エネルギー源が、発光ダイオードである、請求項34記載の装置。
【請求項36】
照射エネルギー源が、レーザーダイオードである、請求項34記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2006−503902(P2006−503902A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548421(P2004−548421)
【出願日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/033518
【国際公開番号】WO2004/040534
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(505153960)アイデックス ラボラトリーズ インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/033518
【国際公開番号】WO2004/040534
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(505153960)アイデックス ラボラトリーズ インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】
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