説明

金属キレート化剤としてのデスアザデスフェリチオシンポリエーテル類似体の新規の塩及び多形体

本明細書で開示されるのは、デスアザデスフェリチオシンポリエーテル(DADFT−PE)類似体の新規の塩及び多形体、並びに疾患を治療するための、それらを含む医薬組成物及び金属キレート化剤としてのその応用である。金属の過負荷及び毒性を治療するために、ヒト対象又は動物対象において鉄及びそのほかの金属をキレート化する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年7月14日に出願された米国特許仮出願第61/080,572号及び2009年2月13日に出願された同第61/152,572号の優先権の利益を主張し、その開示は、その全体にてあたかも本明細書で記述されるかのように参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
本明細書で開示されるのは、デスアザデスフェリチオシンポリエーテル(DADFT−PE)類似体の新規の塩及び多形体、並びに疾患を治療するための、それらを含む医薬組成物及び金属キレート化剤としてのそれらの応用である。金属の過負荷及び毒性を治療するために、ヒト対象又は動物対象において鉄及びそのほかの金属をキレートする方法も提供する。
【背景技術】
【0003】
金属イオンは生体系の適切な機能に決定的である。ほんの数例を挙げれば、Fe3+、Zn2+、Cu2+、Ca2+及びCo3+のような金属イオンは、既知の酵素及びそのほかの機能的タンパク質の3分の1を超える、たとえば、RNAポリメラーゼ、DNA転写因子、チトクロームP450、ヘモグロビン、ミオグロビン、及びビタミンB12のような補酵素の活性部位に見い出すことができる。そこで、これらの金属は、酸化還元反応を促進し、電荷分布を安定化する又は遮蔽する、及び反応のために基質を配向させるように役立つ。
【0004】
しかしながら、生体は金属を吸収し、排泄する限られた能力しか有さず、過剰なものは毒性をもたらし得る。一例として、過剰な鉄は、ベータサラセミアメジャーのような症状で必要とされる慢性的に輸血された赤血球細胞に由来しようと、遺伝性ヘモクロマトーシスのような食物鉄の吸収増大に由来しようと、たとえば、Hのような反応性の酸素種の鉄による生成を介して毒性となり得る。Fe2+の存在下で、Hは、フェントン反応として知られる過程である、非常に反応性の高い種であるヒドロキシルラジカル(HO)に還元される。このヒドロキシルラジカルは、種々の細胞構成成分と非常に迅速に反応し、DNAや膜を損傷すると共に発癌を生じる遊離のラジカル及びラジカルが介在する連鎖過程を開始し得る。臨床的な結末は、有効な治療を行わなければ、生体の鉄は肝臓、心臓、膵臓及びそのほかへの沈着によって徐々に増加することである。鉄の蓄積は、(i)肝硬変に進行する可能性がある肝疾患、(ii)鉄が誘導する膵臓のβ細胞の分泌低下と肝臓のインスリン耐性の双方に関係する糖尿病、及び(iii)輸血の鉄過負荷に伴うベータサラセミアメジャー及びそのほかの貧血における死の主な原因である心疾患を生じる可能性がある。
【0005】
別の例として、内因性の機能がほとんどない又は全くないイオンが生体に入るのが見い出され、損傷を起こし得る。たとえば、Hg2+のような重金属は、メタロタンパク質におけるZn2+のようなイオンに取って代わることができ、それを不活性にし、その結果、最終的には患者の死又は患者の子供の出生異常を招くことができる重篤な急性の又は慢性の毒性を生じる。さらにもっと重大なことに、ランタニド系及びアクチニド系の放射性同位元素は、口、空気又は皮膚の接触によってそれらに暴露された個体に重篤な病気をもたらす。そのような暴露は、核爆弾又は核廃棄物で構成される「ダーティ爆弾」の爆発だけでなく、原子力発電所の破壊からも生じ得る。
【0006】
生きている生物における金属イオンのキレート化及び排出のための剤は以前から開示されており、臨床で使用されている。たとえば、種々の配位子がFe3+、Pu4+、Th4+、Am4+、Eu3+及びU4+を結合することが示されている。従来の標準療法には、非常に有効な金属キレート化剤であるデフェロキサミン(DFO、N’−[5−(アセチル−ヒドロキシ−アミノ)ペンチル]−N−[5−[3−(5−アミノペンチル−ヒドロキシ−カルバモイル)プロパノイルアミノ]ペンチル]−N−ヒドロキシ−ブタンジアミド)のような剤の使用が挙げられる。DFOは残念ながら、経口では生体利用できないので、非経口で、IV、IP又はSCにて投与しなければならず、いったん血流に入るとその半減期は非常に短い。ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)はランタニド及びアクチニドの中毒の治療での使用が認可されているが、これも経口では投与できず、理想的には汚染の直後に与えるべきであり、いくつかの副作用が示されている。これらの理由で、これらの剤の連続輸液が求められることが多く、特に慢性障害の場合、患者のコンプライアンスが問題となり得る。公に利用可能な技術の徹底的な見直しは、有効なキレート化剤が何十年にもわたって利用可能ではあるが、続く次世代の剤では、経口での生体利用能が歴史的に望ましい特性であることを示すであろう。
【0007】
つい最近、金属過負荷の治療での使用に経口で活性のある剤が利用可能になった。デフェリプロン(3−ヒドロキシ−1,2−ジメチルピリジン−4(1H)−オン)は、ベータサラセミア及びそのほかの障害の設定で輸血の鉄過負荷の治療のために経口剤としてヨーロッパ及びそのほかの国々で使用されているが、米国及びカナダでは使用について薬剤は認可されておらず、顆粒球減少症を始めとする報告された副作用によって多くの症例でそれは第2選択の療法に格下げされている。デフェラシロックス(エクスジャード、[4−[(3Z,5E)−3,5−ビス(6−オキソ−1−シクロヘキサ−2,4−ジエニリデン)−1,2,4−トリアゾリジン−1−イル]安息香酸、ノバルティス)が現在、キレート療法について米国で認可されている唯一の経口剤である。さらに未だに、腎不全を招く腎毒性及び血球減少が、デフェラシロックスの経口懸濁錠剤に対する副作用として食品医薬品局によって報告されている。さらに、これら剤のいずれもがキレート化剤としてDFOほど有効ではない。明らかに、輸血および過剰な腸からの吸収に続発する鉄の過負荷及びそのほかの金属の過負荷障害を治療するための、長持ちする、経口で活性のある毒性の少ない金属キレート化剤に対するニーズが当該技術に依然として存在する。
【0008】
デスフェリチオシンの類似体、又は[(S)−4,5−ジヒドロ−2−(3−ヒドロキシ−2−ピリジニル)4−メチル−4−チアゾ]カルボン酸(DFT)は、Fe3+及びTh4+と共に2:1の六座配位の錯体を形成することが示されている。これらの配位子は、げっ歯類、イヌ及び霊長類に皮下(SC)又は経口(PO)のいずれかで投与した場合、非常に効率的に鉄を除去し、SC、PO又は腹腔内に与えた場合、げっ歯類からウランを排出させ、特に、腎臓にて顕著な効果を伴うことが示されている。DFTそれ自体の開発は腎毒性のために中断されたが、これらの配位子のうちの1つ、(S)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)4,5−ジヒドロ−4−メチル−4−トリアゾールカルボン酸、又は(S)−4’−(HO)−DADFTは、経口利用が可能であるという追加の利益と共に有効なキレート化剤であることが判明し、現時点で臨床試験に入っていると考えられる。極めて最近の論文では、3’、4’及び5’位でポリエーテル基によって置換されたDADFT類似体の設計及び試験が開示されている(Bergeron RJ et al., J Med Chem. 2007 Jul 12;50(14):3302-13)。ポリエーテル類似体は、げっ歯類及び非ヒト霊長類で最も有望な除鉄効率(ICE)を示す3’−DADFT−PE類似体(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−3−(3,6,9−トリオキサデシルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸と共に、げっ歯類における及び血清アルブミン結合試験におけるポリエーテル類似体の相当する親型配位子よりも均一に高い除鉄効率(ICE)を有した。
【0009】
化合物の部類としてのDADFTポリエーテルは改善された金属キレート化剤の検索で有望であると思われるものの、ヒトでの使用に好適な化合物の性状分析、開発及び選択には作業が山積みである。患者や医師が使い易い安全で効果的な化合物を提供する目的で、ICE、生物利用能、好都合な毒性及びそのほかの特性の最適なバランスを有する類似体及びその塩の設計において改善の余地は依然として明らかである。さらに、一般に多数の因子が医薬剤としての化合物の好適性にさらに影響する。製造及び流通に好適であるには、化合物は収率と純度で製造することが可能であるべきであり、又は副産物から精製することが可能であるべきである。そのような化合物は安定でもあるはずであり、すなわち、時間が経てば潜在的に不活性又は毒性の化合物に分解すべきではなく、又はさらに、異なった及び潜在的に相当に関連する溶解、吸収及びそのほかの特性を有する代替の結晶性形態に変換すべきではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Bergeron RJ et al., J Med Chem. 2007 Jul 12;50(14):3302-13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本明細書で開示されるのは、これらポリエステル類似体及びそれらの誘導体の新規の塩及び多形体である。これらの塩及び多形体を含む医薬製剤も開示されると共に、ヒト及び動物の体内での急性又は慢性の過剰な金属の結果である毒性に関連する疾患及び症状を治療する方法も開示される。本明細書で開示される特定の塩は安定であり、純度が高く、可溶性であり、有望な生体利用能を示す。
【課題を解決するための手段】
【0012】
特定の実施態様では、構造式I:
【化1】

を有する塩又はその多形体が提供され、
式中、R、R、R、R及びRは、独立して水素、ヒドロキシ、アルキル、アリールアルキル、アルコキシ及びCHO((CHO)から選択され、そのいずれもが任意で置換され、R、R及びRは、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル及び低級アルコキシから選択され、mは0〜8の整数であり、nは0〜8の整数であり、Xは対イオンである。
【0013】
本明細書で開示される特定の化合物、塩及び多形体は、有用な金属キレート活性を持ってもよく、金属の過負荷又は毒性が積極的役割を担う疾患又は症状の治療又は予防に使用されてもよい。従って、広い態様では、特定の実施態様はまた、薬学上許容可能なキャリアと一緒に本明細書で開示される1以上の化合物、塩又は多形体を含む医薬組成物、並びにそれらの化合物、塩及び多形体及びそれらの組成物を作製し、使用する方法も提供する。特定の実施態様は、生命系において金属をキレートする方法を提供する。ほかの実施態様は、本明細書で開示されるような化合物又は組成物、又はその塩若しくは多形体の治療上有効量を患者に投与することを含む、そのような治療を必要とする前記患者にて金属毒性に関係する障害及び症状を治療する方法を提供する。また、提供されるのは、金属のキレート又は排出によって改善される疾患又は症状の治療のための薬物を製造することにおける使用のための、本明細書で開示される特定の化合物、塩及び多形体の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の(S)−3’−(OH)−DADFT−PEの塩:亜鉛塩、カリウム塩、ピペラジン塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、及びカルシウム塩(上から下へ)のXRPDパターンを示す図である。横軸上の度θ−2θを縦軸上の任意のY値に対してプロットする。
【図2】本発明の形態A多形体(上のスペクトル)、形態B多形体(真ん中のスペクトル)及び形態C多形体(下のスペクトル)の塩として単離された(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのカリウム塩の物理的安定性試験を示す図である。横軸上の度θ−2θを縦軸上の任意のY値に対してプロットする。
【図3】本発明の(S)−3’−(OH)−DADFT−PEの亜鉛塩のORTEP図を示す図である。原子は、50%の確率の異方性熱楕円体によって表される。
【図4】本発明の(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのカリウム塩形態Aの動的蒸気吸着/脱着の等温線を示す図である。
【図5】本発明の(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのカリウム塩形態Bの動的蒸気吸着/脱着の等温線を示す図である。
【図6】本発明の(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのカリウム塩形態BのDSCの温度記録図を示す図である。
【図7】本発明の(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩:非晶質形態及び形態A(上から下へ)のXRPDパターンを示す図である。横軸上の度θ−2θを縦軸上の任意のY値に対してプロットする。
【図8】本発明の(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩:形態BのXRPDパターンを示す図である。横軸上の度θ−2θを縦軸上の任意のY値に対してプロットする。
【図9】本発明の(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩:形態CのXRPDパターンを示す図である。横軸上の度θ−2θを縦軸上の任意のY値に対してプロットする。
【図10】本発明の(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩:形態BのDSCの温度記録図を示す図である。
【図11】本発明の(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩:形態Bの動的蒸気吸着/脱着の等温線を示す図である。
【図12】本発明の(S)−4’−(OH)−DADFT−PEの塩:アルギニン塩A、カルシウム塩A、カルシウム塩B、マグネシウム塩A、ナトリウム塩A及びHCl塩(上から下へ)のXRPDパターンを示す図である。横軸上の度θ−2θを縦軸上の任意のY値に対してプロットする。
【図13】本発明の(S)−4’−(OH)−DADFT−PEの塩:リジン塩A、ピペラジン塩A,NMG塩A及びトロメタミンA塩(上から下へ)のXRPDパターンを示す図である。横軸上の度θ−2θを縦軸上の任意のY値に対してプロットする。
【図14】本発明の(S)−4’−(OH)−DADFT−PEの塩:カルシウム塩A、マグネシウム塩A、リジン塩A、NMG塩A及びトロメタミンA塩(上から下へ)のXRPDパターンを示す図である。横軸上の度θ−2θを縦軸上の任意のY値に対してプロットする。
【図15】本発明の(S)−4’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩のDSCスペクトルを示す図である。
【図16】本発明の(S)−4’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩の動的蒸気吸着/脱着の等温線を示す図である。
【図17】本発明の(S)−4’−(OH)−DADFT−PEのNMG塩のDSCスペクトルを示す図である。
【図18】本発明の(S)−4’−(OH)−DADFT−PEのNMG塩の動的蒸気吸着/脱着の等温線を示す図である。
【図19】本発明の(S)−4’−(OH)−DADFT−PEのトロメタミン塩のDSCスペクトルを示す図である。
【図20】本発明の(S)−4’−(OH)−DADFT−PEのトロメタミン塩の動的蒸気吸着/脱着の等温線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
特定の実施態様では、式Iの塩は固体である。
【0016】
さらなる実施態様では、式Iの塩は結晶性である。
【0017】
特定の実施態様では、Xは、ベタイン、水酸化コリン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、ヒドロキシエチルモルフォリン、ヒドロキシエチルピロリジン、イミダゾール、N−メチル−d−グルカミン(NMG)、N,N’−ジベンジル−エチレンジアミン、N,N’−ジエチル−エタノールアミン、ピペラジン、トリエタノールアミン、トロメタミン、Ca(OH)、L−リジン、L−アルギニン、Mg(OH)、酢酸マグネシウム、KOH、NaOH、Zn(OH)、酢酸亜鉛、Zn(OH)/Mg(OH)、EDA、L−ヒスチジン、4−(2−ヒドロキシエチルモルフォリン)、1−(2−ヒドロキシエチルピロリジン)、1−(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジン、2−エチルヘキサン酸カリウム、NaOAc、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、1,2−EDSA、HCl、HSO、MSA及びp−TSA一水和物から選択される。
【0018】
特定の実施態様では、塩は構造式Iaを有する:
【化2】

式中、R、R、R、R及びRは、独立して水素、ヒドロキシ、アルキル、アリールアルキル、アルコキシ及びCHO((CHO)から選択され、そのいずれもが任意で置換され、R、R及びRは、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル及び低級アルコキシから選択され、mは0〜8の整数であり、nは0〜8の整数であり、Xは対イオンである。
【0019】
特定の実施態様では、塩は、対イオンXがリジン、N−メチル−D−グルカミン(NMG)、トロメタミン、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛及びピペラジンから選択される式Iのものである。
【0020】
特定の実施態様では、Rは水素及びメチルから選択される。
【0021】
さらなる実施態様では、R及びRは独立して水素及びメトキシから選択される。
【0022】
さらなる実施態様では、Rはヒドロキシである。
【0023】
さらなる実施態様では、R、R、R及びRは独立して水素及びCHO((CHO)から選択される。
【0024】
さらなる実施態様では、塩及びその多形体は構造式II:
【化3】

を有する。
【0025】
さらなる実施態様では、塩及びその多形体は構造式IIa:
【化4】

を有する。
【0026】
さらなる実施態様では、対イオンXは、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛及びピペラジンから選択される。
【0027】
さらなる実施態様では、mは2であり、nは3である。
【0028】
さらなる実施態様では、塩はマグネシウム塩又はその多形体である。
【0029】
さらなる実施態様では、塩は、マグネシウム3’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテルヒドロキシド又はその多形体である。
【0030】
さらなる実施態様では、マグネシウム3’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテルヒドロキシドの前記多形体は形態Aである。
【0031】
さらなる実施態様では、前記形態Aは、図7で示されるものと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%同一であるX線粉末回折パターンを有する。
【0032】
そのほか実施態様では、マグネシウム3’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテルヒドロキシドの前記多形体は形態Bである。
【0033】
さらなる実施態様では、前記形態Bは、図8で示されるものと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%同一であるX線粉末回折パターンを有する。
【0034】
さらなる実施態様では、前記形態Bは、図10で示されるものと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%同一である示差走査熱量測定(DSC)の温度記録図を有する。
【0035】
さらなる実施態様では、前記形態Bは、図11で示されるものと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%同一である動的蒸気吸着/脱着(DVS)スペクトルを有する。
【0036】
そのほか実施態様では、マグネシウム3’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテルヒドロキシドの前記多形体は形態Cである。
【0037】
さらなる実施態様では、前記形態Cは、図9で示されるものと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%同一であるX線粉末回折パターンを有する。
【0038】
そのほか実施態様では、提供されるのはマグネシウム3’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテルヒドロキシドの非晶質形態である。
【0039】
さらなる実施態様では、前記非晶質形態は、図7で示されるものと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%同一であるX線粉末回折パターンを有する。
【0040】
さらなる実施態様では、塩又はその多形体は、生理的pHに近いpHにて0.3mg/mL〜70mg/mLの間の水溶解度を有する。
【0041】
さらなる実施態様では、塩又はその多形体は、生理的pHに近いpHにて≧40mg/mLの水溶解度を有する。
【0042】
さらなる実施態様では、塩又はその多形体は、生理的pHに近いpHにて≧50mg/mLの水溶解度を有する。
【0043】
さらなる実施態様では、塩又はその多形体は、模擬胃液のpHで0.05mg/mL〜250mg/mLの水溶解度を有する。
【0044】
さらなる実施態様では、塩又はその多形体は、生理的pHに近いpHにて0.3mg/mL〜70mg/mLの間の水溶解度を有し、模擬胃液のpHで0.05mg/mL〜250mg/mLの水溶解度を有する。
【0045】
さらなる実施態様では、塩はカリウム塩又はその多形体である。
【0046】
さらなる実施態様では、提供されるのは、図2の上の曲線で示されるものに実質的に類似するXRPDパターンを有する、(S)−3’−DADFT−PEのカリウム塩の形態A多形体である。
【0047】
さらなる実施態様では、塩はカリウム塩又はその多形体である。
【0048】
さらなる実施態様では、カリウム塩は、約6.0、7.1、12.0、14.6、20.0、20.3、21.3、22.0、23.3、24.4、26.3、27.3、28.5及び29.6度2θ±0.2度2θにてピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする。
【0049】
さらなる実施態様では、塩は、カリウム(S)−3’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテル(KOH’(S)−3’−DADFT−PE)である。
【0050】
そのほか実施態様では、塩は亜鉛塩又はその多形体である。
【0051】
さらなる実施態様では、塩は、亜鉛(S)−3’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテル(ZnOH・(S)−3’−DADFT−PE)又はその多形体である。
【0052】
さらなる実施態様では、塩は図3におけるように特徴付けられたSC−XRD構造を有する。
【0053】
特定の実施態様では、塩及びその多形体は構造式III:
【化5】

を有する。
【0054】
さらなる実施態様では、塩及びその多形体は構造式IIIa:
【化6】

を有する。
【0055】
さらなる実施態様では、Xはリジン、NMG、トロメタミン、カルシウム及びマグネシウムから選択される。
【0056】
さらなる実施態様では、提供されるのは、多形体が、ナトリウム塩の化学量論的な水和物である式IIIの塩の多形体である。
【0057】
さらなる実施態様では、前記多形体は一水和物である。
【0058】
さらなる実施態様では、前記多形体は二水和物である。
【0059】
さらなる実施態様では、提供されるのは、トロメタミン4’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテルヒドロキシド又はその多形体である。
【0060】
さらなる実施態様では、式IIIの塩は、図13で示されるものと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%同一であるX線粉末回折パターンを有する。
【0061】
さらなる実施態様では、式IIIの塩は、図19で示されるものと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%同一である示差走査熱量測定の温度記録図を有する。
【0062】
さらなる実施態様では、式IIIの塩は、図20で示されるものと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%同一である動的蒸気吸着/脱着(DVS)スペクトルを有する。
【0063】
さらなる実施態様では、式IIIの塩は、生理的pHに近いpHにて0.3mg/mL〜150mg/mLの間の水溶解度を有する。
【0064】
特定の実施態様では、塩及びその多形体は、構造式IV:
【化7】

を有する。
【0065】
さらなる実施態様では、塩及びその多形体は、構造式IVa:
【化8】

を有する。
【0066】
特定の実施態様では、塩及びその多形体は、構造式V:
【化9】

を有する。
【0067】
さらなる実施態様では、塩及びその多形体は、構造式Va:
【化10】

を有する。
【0068】
特定の実施態様では、塩及びその多形体は、構造式VI:
【化11】

又は同等に、マグネシウム(S)−3’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテル(Mg(OH)・3’−DADFT−PE)、又はマグネシウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−)2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレートヒドロキシドを有する。
【0069】
式VIの化合物は、以後形態A〜Cと呼ぶ3つの実質的に結晶性の多形体形態、同様に非晶質形態で存在してもよく、それらは、安定性、物理化学的特性及びスペクトル特性で互いに異なる。
【0070】
従って、これらの多形体形態は、粉末X線回折(XRPD)パターン、示差蒸気吸着/脱着(DVC)、熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量測定(DSC)によって特徴付けることができる。
【0071】
式IVの化合物の新規の多形体形態Aも提供される。
【0072】
本明細書で開示される特定の実施態様では、X線粉末回折(XRPD)パターンによって得られるような式VIの化合物の形態Aに関する特徴的なデータは図7に示される。
【0073】
式VIの化合物の新規の非晶質形態も提供される。
【0074】
本明細書で開示される特定の実施態様では、X線粉末回折(XRPD)パターンによって得られるような式VIの化合物の非晶質形態に関する特徴的なデータは図7に示される。
【0075】
式VIの化合物の新規の多形体形態Bも提供される。
【0076】
本明細書で開示される特定の実施態様では、X線粉末回折(XRPD)パターンによって得られるような式VIの化合物の形態Bに関する特徴的なデータは図8に示される。
【0077】
さらなる実施態様では、示差走査熱量測定(DSC)の温度記録図によって得られるような式VIの化合物の形態Bに関する特徴的なデータは図10に示される。
【0078】
一層さらなる実施態様では、動的蒸気吸着/脱着(DVS)スペクトルによって得られるような式VIの化合物の形態Bに関する特徴的なデータは図11に示される。
【0079】
式VIの化合物の新規の多形体形態Cも提供される。
【0080】
本明細書で開示される特定の実施態様では、X線粉末回折(XRPD)パターンによって得られるような式VIの化合物の形態Cに関する特徴的なデータは図9に示される。
【0081】
特定の実施態様では、塩又はその多形体は構造式VII:
【化12】

又は同等に、トロメタミン(S)−3’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテル(トロメタミン−4’−DADFT−PE)、又は1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレートを有する。
【0082】
特定の実施態様では、X線粉末回折(XRPD)パターンによって得られるような式VIIの化合物に関する特徴的なデータは図13に示される。
【0083】
特定の実施態様では、示差走査熱量測定(DSC)の温度記録図によって得られるような式VIIの化合物に関する特徴的なデータは図19に示される。
【0084】
特定の実施態様では、動的蒸気吸着/脱着(DVS)スペクトルによって得られるような式VIIの化合物関する特徴的なデータは図20に示される。
【0085】
特定の実施態様では、提供されるのは、生理的pHに近いpHにて0.3mg/mL〜70mg/mLの間の水溶解度を有する構造式IIの塩及びその多形体である。
【0086】
特定の実施態様では、提供されるのは、生理的pHに近いpHにて≧40mg/mLの水溶解度を有する構造式IIの塩及びその多形体である。
【0087】
特定の実施態様では、提供されるのは、生理的pHに近いpHにて≧50mg/mLの水溶解度を有する構造式IIの塩及びその多形体である。
【0088】
特定の実施態様では、提供されるのは、模擬胃液のpHで0.05mg/mL〜250mg/mLの水溶解度を有する構造式IIの塩及びその多形体である。
【0089】
特定の実施態様では、提供されるのは、生理的pHに近いpHにて0.3mg/mL〜70mg/mLの間の水溶解度を有し、模擬胃液のpHで0.05mg/mL〜250mg/mLの水溶解度を有する構造式IIの塩及びその多形体である。
【0090】
特定の実施態様では、提供されるのは、生理的pHに近いpH(約7.4)にて0.3mg/mL〜70mg/mLの間の水溶解度を有し、模擬胃液のpH(約pH1)で0.05mg/mL〜250mg/mLの水溶解度を有する構造式IIの塩及びその多形体である。
【0091】
特定の実施態様では、提供されるのは、生理的pHに近いpH(約7.4)にて0.3mg/mL〜150mg/mLの間の水溶解度を有する構造式IIIの塩及びその多形体である。
【0092】
また提供されるのは、少なくとも1つの薬学上許容可能な賦形剤と一緒に、本明細書で開示される塩又はその多形体を含む医薬組成物である。
【0093】
特定の実施態様では、医薬組成物は、構造式II:
【化13】

を有する塩又はその多形体を含み、式中、mは2であり、nは3であり、対イオンXは、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛及びピペラジンから選択される。
【0094】
さらなる実施態様では、提供されるのは、少なくとも1つの薬学上許容可能な賦形剤と一緒に、マグネシウム3’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテルヒドロキシド(Mg(OH)・3’−DADFT−PE)又はその多形体を含む医薬組成物である。
【0095】
特定の実施態様では、医薬組成物は、構造式III:
【化14】

を有する塩又はその多形体を含み、式中、mは2であり、nは3であり、対イオンXは、リジン、NMG、トロメタミン、カルシウム、マグネシウムから選択される。
【0096】
さらなる実施態様では、提供されるのは、少なくとも1つの薬学上許容可能な賦形剤と一緒に、トロメタミン4’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテルヒドロキシド(トロメタミン4’−DADFT−PE)又はその多形体を含む医薬組成物である。
【0097】
特定の実施態様では、医薬組成物は、少なくとも1つの薬学上許容可能な賦形剤と一緒に、マグネシウム3’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテルヒドロキシド(Mg(OH)・3’−DADFT−PE)又はその多形体を含む。
【0098】
特定の実施態様では、医薬組成物は、少なくとも1つの薬学上許容可能な賦形剤と一緒に、トロメタミン4’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテルヒドロキシド(トロメタミン4’−DADFT−PE)又はその多形体を含む。
【0099】
特定の実施態様では、提供されるのは、本明細書1で開示されるような塩又は多形体の治療上有効な量を対象に投与することを含む、対象において三価の金属のキレート化、金属封鎖又は排除に関与する病態を治療する方法である。
【0100】
さらなる実施態様では、前記三価の金属は鉄である。
【0101】
さらなる実施態様では、前記病態は鉄の過負荷である。
【0102】
さらなる実施態様では、前記病態は、体内における鉄の不均衡配分又は再配分の結果である。
【0103】
さらなる実施態様では、前記病態は、無トランスフェリン血症、無セルロプラスミン血症及びフリードライヒ失調症から選択される。
【0104】
さらなる実施態様では、前記病態は、輸血の鉄過負荷の結果である。
【0105】
さらなる実施態様では、前記病態は、ベータサラセミアメジャー及びインターメディア、鎌状赤血球貧血、ダイヤモンド−ブラックファン貧血、鉄芽球性貧血、慢性溶血性貧血、治療不実施白血病、骨髄移植及び骨髄異形成症候群から選択される。
【0106】
さらなる実施態様では、前記病態は、食物中の鉄の過剰吸収をもたらす遺伝性の症状である。
【0107】
さらなる実施態様では、前記病態は、遺伝性ヘモクロマトーシス及び晩発性皮膚ポルフィリン症から選択される。
【0108】
さらなる実施態様では、前記病態は糖尿病である。
【0109】
さらなる実施態様では、前記病態は、過剰な食物中の鉄の吸収をもたらす後天性の疾患である。
【0110】
さらなる実施態様では、前記病態は肝疾患である。
【0111】
さらなる実施態様では、前記疾患は肝炎である。
【0112】
さらなる実施態様では、前記病態はランタニド又はアクチニドの過負荷である。
【0113】
さらなる実施態様では、鉄又は三価の金属の体外排泄を誘導する、本明細書で開示されるような塩又はその多形体の治療上有効な量は、対象において0.2mg/kg/日を上回る。
【0114】
さらなる実施態様では、本明細書で開示されるような塩又はその多形体の治療上有効な量は、腎臓、骨髄、胸腺、肝臓、脾臓、心臓又は副腎に臨床的に明らかな毒性効果を及ぼすことなく少なくとも10mg/kg/日の用量で与えることができる。
【0115】
本明細書で使用されるとき、以下の用語は、指示された意味を有する。
【0116】
値の範囲が開示される場合、n1からn2までという表示が使用され、nとnは数であり、特定されない限り、この表示は、数自体及びそれらの間の範囲を含むことが意図される。この範囲は、端部の値の間及びそれらを含めて整数であり、あるいは連続的である。例証として、範囲「2から6までの炭素」は、炭素が整数単位で供給されるので、2、3、4、5、6の炭素を含むことが意図される。例証として比較すると、範囲「1から3μM(マイクロモル)」は、1μM、3μM及び有効数字の任意の数までの1μMと3μM間にあるすべて(たとえば、1.255μM、2.1μM、2.9999μMなど)を含むことが意図される。
【0117】
用語「約」は、本明細書で使用されるとき、加減する数値を定量することが意図され、誤差の限界の範囲内での変数のような値を示す。チャート又は表のデータにある平均値に対する標準偏差のような、誤差の特定の限界が言及されない場合、用語「約」は、言及された値を包含する範囲、及び有効数字を考慮に入れて、同様にその数字に四捨五入することによって含められる範囲を意味するように理解されるべきである。
【0118】
用語「アシル」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、アルケニル、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、又は任意のそのほかの部分に連結されるカルボニルを指し、カルボニルに連結される原子は炭素である。「アセチル」基は−C(O)CH基を指す。「アルキルカルボニル」基又は「アルカノイル」基は、カルボニル基を介して親分子部分に連結されるアルキル基を指す。そのような基の例には、メチルカルボニル及びエチルカルボニルが挙げられる。アシル基の例にはホルミル、アルカノイル及びアロイルが挙げられる。
【0119】
用語「アルケニル」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、1以上の二重結合を有し、2〜20の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を指す。特定の実施態様では、前記アルケニルは2〜6の炭素原子を含む。用語「アルケニレン」は、たとえば、エチレン[(−CH=CH−),(−C::C−)]のような2以上の位置で連結される炭素−炭素二重結合を指す。好適なアルケニル基の例には、エテニル、プロペニル、2−メチルプロペニル、1,4−ブタジエニルなどが挙げられる。特に指定されない限り、「アルケニル」は「アルケニレン」基を含んでもよい。
【0120】
用語「アルコキシ」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、用語アルキルが以下で定義されるようであるアルキルエーテル基を指す。好適なアルキルエーテル基の例には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。
【0121】
用語「アルキル」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、1〜20の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を指す。特定の実施態様では、前記アルキルは1〜6の炭素原子を含む。アルキル基は本明細書で定義されるように任意で置換されてもよい。アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチル、ノニルなどが挙げられる。用語「アルキレン」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、たとえば、メチレン(−CH−)のように2以上の位置で連結される直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素に由来する飽和脂肪族基を指す。特に指定されない限り、用語「アルキル」基は「アルキレン」基を含んでもよい。
【0122】
用語「アルキルアミノ」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、アミノ基を介して親分子部分に連結されるアルキル基を指す。好適なアルキルアミノ基は、たとえば、N−メチルアミノ、N−エチルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−エチルメチルアミノなどのようなモノアルキル化又はジアルキル化された形成基であってもよい。
【0123】
用語「アルキニル」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、1以上の三重結合を有し、2〜20の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を指す。特定の実施態様では、前記アルキニルは2〜6の炭素原子を含む。さらなる実施態様では、前記アルキニルは2〜4の炭素原子を含む。用語「アルキニレン」は、たとえば、エチニレン(−C:::C−、−C≡C−)のような2つの位置で連結される炭素−炭素三重結合を指す。アルキニレン基の例には、エチニル、プロピニル、ヒドロキシプロピニル、ブチン−1−イル、ブチン−2−イル、ペンチン−1−イル、3−メチルブチン−1−イル、ヘキシン−2−イルなどが挙げられる。特に指定されない限り、用語「アルキニル」基は「アルキニレン」基を含んでもよい。
【0124】
用語「アミド」及び「カルバモイル」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、カルボニル基を介して親分子部分に連結される以下に記載されるようなアミノ基を指し、逆もまた同様である。用語「C−アミド」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、本明細書で定義されるようなRを伴った−C(=O)−NR基を指す。用語「N−アミド」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、本明細書で定義されるようなRを伴った−RC(=O)NH基を指す。用語「アシルアミド」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、アミノ基を介して親分子部分に連結されるアシル基を包含する。「アシルアミノ」基の例は、アセチルアミノ(CHC(O)NH−)である。
【0125】
用語「アミノ」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、R及びR’が独立して、そのいずれもが任意で置換されてもよい水素、アルキル、アシル、ヘテロアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール及びヘテロシクロアルキルから選択される−NRR’を指す。さらに、そのいずれかが任意で置換されてもよいR及びR’は結合してヘテロシクロアルキルを形成してもよい。
【0126】
用語「アリール」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、1,2又は3の環を含有する炭素環式芳香族系を意味し、そのような多環式の環系は一緒に縮合する。用語「アリール」は、たとえば、フェニル、ナフチル、アントラセニル及びフェナントリルのような芳香族基を包含する。
【0127】
用語「ベンゾ」及び「ベンズ」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、ベンゼンに由来する二価の基C=を指す。例には、ベンゾチオフェン及びベンズイミダゾールが挙げられる。
【0128】
用語「カルボニル」は、本明細書で使用されるとき、単独では、ホルミル[−C(O)H]を含み、組み合わせでは−C(O)−基である。
【0129】
用語「カルボキシル」又は「カルボキシ」は、本明細書で使用されるとき、−C(O)OH又はカルボン酸塩におけるように相当する「カルボン酸」アニオンを指す。「O−カルボキシ」基はRC(O)O−基を指し、Rは本明細書で定義されるとおりである。「C−カルボキシ」基は−C(O)OR基を指し、Rは本明細書で定義されるとおりである。
【0130】
用語「シアノ」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、CNを指す。
【0131】
用語「シクロアルキル」又は代わりに「炭素環」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、各環部分が3〜12の炭素原子の環員を含有し、本明細書で定義されるように任意で置換されてもよい、任意でベンゾ縮合環系であってもよい飽和又は部分飽和の単環式、二環式又は三環式のアルキル基を指す。特定の実施態様では、前記シクロアルキルは5〜7の炭素原子を含む。そのようなシクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、オクタヒドロナフチル、2,3−ジヒドロ−1H−インデニル、アダマンチルなどが挙げられる。「二環式」及び「三環式」は、本明細書で使用されるとき、たとえば、デカヒドロナフタレン、オクタヒドロナフタレンのような縮合環系、同様に多環式(多中心)飽和又は部分飽和の型の双方を含むことが意図される。異性体の後者の型は、一般にビシクロ[1,1,1]ペンタン、カンファー、アダマンタン及びビシクロ[3,2,1]オクタンによって例示される。
【0132】
用語「エステル」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、炭素原子で連結される2つの部分を架橋するカルボキシ基を指す。
【0133】
用語「エーテル」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、炭素原子で連結される2つの部分を架橋するオキシ基を指す。
【0134】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0135】
用語「ハロアルコキシ」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、酸素原子を介して親分子部分に連結されるハロアルキル基を指す。
【0136】
用語「ハロアルキル」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、1以上の水素がハロゲンで置き換えられる上記で定義されるような意味を有するアルキル基を指す。具体的に包含されるのは、モノハロアルキル基、ジハロアルキル基及びポリハロアルキル基である。モノハロアルキル基は、たとえば、基の中に1つのヨウ素、臭素、塩素又はフッ素の原子を有してもよい。ジハロアルキル基及びポリハロアルキル基は、2以上の同一のハロ原子又は異なったハロ基の組み合わせを有してもよい。ハロアルキル基の例には、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ジフルオロクロロメチル、ジクロロフルオロメチル、ジフルオロエチル、ジフルオロプロピル、ジクロロエチル及びジクロロプロピルが挙げられる。「ハロアルキレン」は、2以上の位置で連結されるハロアルキル基を指す。例にはフルオロメチレン(−CFH−)、ジフルオロメチレン(−CF−)、クロロメチレン(−CHCl−)などが挙げられる。
【0137】
用語「ヘテロアルキル」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、完全に飽和され、又は1〜3程度の不飽和を含有し、定まった数の炭素原子とO、N及びSから選択される1〜3のヘテロ原子から成る安定な直鎖又は分枝鎖又は環状の炭化水素基を指し、窒素原子及びイオウ原子は任意で酸化されてもよく、窒素へテロ原子は任意で四級化されてもよい。ヘテロ原子O、N及びSは、ヘテロアルキル基の任意の内部の位置に置かれてもよい。2つまでのヘテロ原子は、たとえば、−CH−NH−OCHのように連続してもよい。
【0138】
用語「ヘテロアリール」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、少なくとも縮合環の1つが芳香族であり、O、S及びNから選択される少なくとも1つの原子を含有する3〜7員環の不飽和へテロ単環式の環、又は縮合した単環式、二環式又は三環式の環系を指す。特定の実施態様では、前記へテロアリールは5〜7の炭素原子を含む。本用語はまた、複素環の環がアリール環と縮合する、ヘテロアリールの環がそのほかのヘテロアリールの環と縮合する、ヘテロアリールの環が複素環アルキルの環と縮合する、又はヘテロアリールの環がシクロアルキルの環と縮合する縮合多環式の基も包含する。ヘテロアリール基の例には、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、ピラニル、フリル、チエニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾピラニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾロピリダジニル、テトラヒドロイソキノリニル、チエノピリジニル、フロピリジニル、ピロロピリジニルなどが挙げられる。例となる三環式の複素環基には、カルバゾリル、ベンジドリル、フェナントロリニル、ジベンゾフラニル、アクリジニル、フェナントリジニル、キサンテニルなどが挙げられる。
【0139】
用語「ヘテロシクロアルキル」及び相互交換可能に「複素環」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、それぞれ、少なくとも1つのヘテロ原子を環員として含有する飽和、部分不飽和又は完全不飽和の単環式、二環式又は三環式の複素環基を指し、前記へテロ原子はそれぞれ独立して窒素、酸素及びイオウから選択されてもよい。特定の実施態様では、前記へテロシクロアルキルは環員として1〜4のヘテロ原子を含む。さらなる実施態様では、前記へテロシクロアルキルは環員として1〜2のヘテロ原子を含む。特定の実施態様では、前記へテロシクロアルキルは環員として3〜8のヘテロ原子を含む。さらなる実施態様では、前記へテロシクロアルキルは環員として3〜7のヘテロ原子を含む。一層さらなる実施態様では、前記へテロシクロアルキルは環員として5〜6のヘテロ原子を含む。「ヘテロシクロアルキル」及び「複素環」は、三級窒素環員のスルホン、スルホキシド、N−オキシド、並びに炭素環縮合の及びベンゾ縮合の環系を含むことが意図され;さらに、双方の用語は、複素環の環が本明細書で定義されるようなアリール基、又は追加の複素環基と縮合する系も含む。複素環基の例には、アジリジニル、アゼチジニル、1,3−ベンゾジオキソリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロイソキノリニル、ジヒドロシンノリニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロ[1,3]オキサゾロ[4,5−b]ピリジニル、ベンゾチアゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピリジニル、1,3−ジオキサニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、イソインドリニル、モルフォリニル、ピペラジニル、ピロリジニル、テトラヒドロピリジニル、ピペリジニル、チオモルフォリニルなどが挙げられる。これらの複素環基は、特に禁じられない限り、任意で置換されてもよい。
【0140】
用語「ヒドロキシ」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、−OHを指す。
【0141】
用語「ヒドロキシアルキル」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、アルキル基を介して親分子部分に連結されるヒドロキシ基を指す。
【0142】
語句「主鎖にて」は、本明細書で開示される式のいずれか1つの化合物への基の連結の点にて出発する、最長の接触する又は隣接する炭素原子の鎖を指す。
【0143】
用語「低級」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、特に定義されなければ、1〜6の炭素原子を含有すること及び含むことを意味する。
【0144】
用語「オキシ」又は「オキサ」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、−O−を指す。
【0145】
用語「オキソ」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、=Oを指す。
【0146】
用語「ペルハロアルコキシ」は、水素原子すべてがハロゲン原子で置き換えられたアルコキシ基を指す。
【0147】
用語「ペルハロアルキル」は、水素原子すべてがハロゲン原子で置き換えられたアルキル基を指す。
【0148】
用語「チア」及び「チオ」は、本明細書で単独で又は組み合わせて使用されるとき、酸素がイオウで置き換えられる−S−基又はエーテルを指す。チオ基の酸化された誘導体、すなわち、スルフィニル及びスルホニルは、チア及びチオの定義に含められる。
【0149】
本明細書の定義は、ほかの定義と組み合わせて用い、複合の構造基を説明してもよい。変換によって、そのような定義の追跡する要素は、親部分に連結するものである。たとえば、複合基アルキルアミノは、アミノ基を介して親分子に連結されるアルキル基を表し、用語アルコキシアルキルは、アルキル基を介して親分子に連結されるアルコキシ基を表す。
【0150】
基が「無い」と定義される場合、その意味は、前記基が存在しないということである。
【0151】
用語「任意で置換される」は、先行する基が置換されてもよく、又は非置換であってもよいことを意味する。置換される場合、「任意で置換される」基の置換基は、限定しないで、単独の若しくは組み合わせの以下の基または特定の指定されたセットの基から選択される、1以上の置換基が挙げられてもよく:低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルカノイル、低級へテロアルキル、低級へテロシクロアルキル、低級ハロアルキル、低級ハロアルケニル、低級ハロアルキニル、低級ペルハロアルキル、低級ペルハロアルコキシ、低級シクロアルキル、フェニル、アリール、アリールオキシ、低級アルコキシ、低級ハロアルコキシ、オキソ、低級アシルオキシ、カルボニル、カルボキシル、低級アルキルカルボニル、低級カルボキシエステル、低級カルボキシアミド、シアノ、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、アリールアミノ、アミド、ニトロ、チオール、低級アルキルチオ、低級ハロアルキルチオ、低級ペルハロアルキルチオ、アリールチオ、スルホネート、スルホン酸、三置換シリル、N,SH、SCH、C(O)CH、COCH、COH、ピリジニル、チオフェン、フラニル、低級カルバメート及び低級尿素。2つの置換基が一緒に連結して、たとえば、メチレンジオキシ又はエチレンジオキシを形成する、0〜3のヘテロ原子から成る縮合5−、6−又は7−員環の炭素環式又は複素環式の環を形成してもよい。任意で置換される基は、非置換(たとえば、−CHCH)であってもよく、完全に置換されてもよく(たとえば、−CFCF)、一置換されてもよく(たとえば、−CHCHF)、又は完全置換と一置換の間のいずれかのレベルで置換されてもよい(たとえば、CHCF)。置換に関して限定なしで置換基が言及される場合、置換された形態及び非置換の形態の双方が包含される。置換基が「置換される」と限定される場合、置換された形態が特に意図される。さらに、特定の部分に対する任意の置換基の異なったセットが必要に応じて定義されてもよく、これらの場合、任意の置換は、定義されるようにすぐ接して語句「によって任意に置換される」に続いていることが多い。
【0152】
単独で現れ、数指定を伴わない用語R又は用語R’は、特に定義されない限り、そのいずれも任意で置換されてもよい水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクロアルキルから選択される部分を指す。そのようなR基及びR’基は本明細書で定義されるように、任意で置換されるように理解されるべきである。R基が数指定を有そうが有すまいがR、R’及びR(n=(1,2,3、・・・n))を含むあらゆるR、あらゆる置換基、及びあらゆる用語は、基からの選択という点で他のすべてと無関係であると理解されるべきである。任意の変数、置換基又は用語(たとえば、アリール、複素環、Rなど)が式又は一般構造にて2回以上存在するならば、各存在でのその定義は、他のすべての存在での定義とは無関係である。当業者は、特定の基が親分子に連結されてもよく、又は書かれたようにいずれかの端部からの元素の鎖において位置を占めてもよいことをさらに認識するであろう。従って、例証のみとして、たとえば、−C(O)N(R)−のような非対称の基が、炭素又は窒素のいずれかにて親部分に連結されてもよい。
【0153】
本明細書で開示される化合物には不斉中心が存在する。これらの中心は、不斉炭素原子付近の置換基の配置によって記号「R」又は「S」によって示される。本発明は、ジアステレオマー、エナンチオマー及びエピマーの形態、並びにd−異性体、l−異性体及びそれらの混合物を含む化学量論的は異性体形態すべてを包含する。化合物の個々の立体異性体は、不斉中心を含有する市販の出発材料から合成的に調製することができ、又はエナンチオマー生成物の調製、次いでジアステレオマーの混合物への変換のような分離、次いで分離若しくは再結晶化、クロマトグラフィ法、キラルクロマトグラフィカラム上でのエナンチオマーの直接分離、又は当該技術で既知のそのほかの適当な方法によって調製することができる。特定の立体化学の出発化合物は市販されているか又は当該技術で既知の技法によって作製し、分離することができる。さらに、本明細書で開示される化合物は幾何異性体として存在してもよい。本発明は、シス、トランス、合成の、抗、反対側の(E)、及び同一側(Z)の異性体、並びにそれらの適当な混合物のすべてを包含する。さらに、化合物は、互変体として存在してもよく、互変異性体はすべて本発明によって提供される。さらに、本明細書で開示される化合物は、非溶媒和の形態で存在してもよく、同様に水やエタノールなどのような薬学上許容可能な溶媒との溶媒和形態で存在してもよい。一般に、溶媒和された形態は、非溶媒和の形態と同等であるとみなされる。
【0154】
用語「結合」は、結合によって連結される原子がさらに大きな基礎構造の一部であるとみなされる場合、2つの原子又は2つの部分び間の共有結合を指す。結合は特に指定されない限り、単結合、二重結合又は三重結合であってもよい。分子の図面における2つの原子の間の破線はその位置で追加の結合が存在してもよく、又は非存在であってもよいことを示す。
【0155】
用語「疾患」は、本明細書で使用されるとき、すべて、正常な機能を損傷するヒト又は動物の体又はその一部の異常な症状を反映するという点で用語「障害」及び「症状」(医学症状のような)と一般に同義であり、相互交換可能に使用され、兆候及び症状を識別することによって通常明らかにされ、ヒト又は動物に生命の持続期間又は質の低下をもたらす原因となる。
【0156】
用語「併用療法」は、本開示に記載される治療的な症状又は障害を治療するための2以上の治療剤の投与を意味する。そのような投与は、有効成分の固定比を有する単一のカプセルで、又は各有効成分のための複数の別々のカプセルで実質的に同時方式におけるこれら治療剤の同時投与を包含する。加えて、そのような投与はまた、順次方式における各種の治療剤の使用も包含する。いずれの場合も、治療計画は、本明細書で開示される症状又は障害を治療することにおいて薬剤併用の有益な効果を提供する。
【0157】
語句「治療上有効な」は、疾患又は障害の治療で使用される有効成分の量に条件を付けることが意図される。この量は、前記疾患又は障害を軽減する又は排除する目標を達成する。
【0158】
用語「キレート化」は、本明細書で使用されるとき、配位させる(金属イオンにおけるように)及び不活化することを意味する。キレート化はまた、それ自体キレート化及び排泄を包含する用語である排出を含む。
【0159】
用語「除鉄効率(ICE)」は、本明細書で使用されるとき、生体又は臓器の1つ又はその一部から鉄を除くことにおけるキレート化剤の所与の濃度の有効性を指す。有効性は、言い換えれば、時間の単位で標的系(体全体、臓器1つ又はそのほかであってもよい)から除去される鉄の量に関係する。3つの臨床状況:鉄の摂取又は注入に由来する急性の鉄毒性のために;輸血又は過剰な鉄吸収に伴う生体の総鉄を減らすために;生体の総鉄を満足に減らした後、日常の食物中の鉄を排泄することだけを必要とする際の鉄バランスを維持するために、キレート化剤が必要とされる。従って、実践的な用語では、輸血に伴う慢性的な鉄の過負荷については、推奨は、1日当たり患者の体重kg当たり0.3〜0.5mgのFeを排泄することが必要であることである。維持治療については、0.25〜1mg/kg/日が十分である。
【0160】
用語「治療上許容可能な」は、過度の毒性、刺激及びアレルギー反応なしで患者の組織への接触に使用するのに好適であり、理に適った利益/リスクの比と釣り合った、及びその用途に有効である化合物(又は塩、多形体、プロドラッグ、互変体、両性イオンの形態など)を指す。
【0161】
本明細書で使用されるとき、患者の「治療」への参照は、予防を含むことが意図される。用語「患者」は、ヒトを含む哺乳類を意味する。患者の例には、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタ及びウサギが挙げられる。好ましくは患者はヒトである。
【0162】
用語「プロドラッグ」は、生体内でさらに活性を持つようにされる化合物を指す。本明細書で開示される特定の化合物は、Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism:Chemistry,Biochemistry,and Enzymology (Testa, Bernard and Mayer, Joachim M. Wiley-VHCA, Zurich, Switzerland 2003)に記載されたようなプロドラッグとして存在してもよい。本明細書で記載される化合物のプロドラッグは、生理的条件下で容易に化学変化を受けて化合物を提供する、化合物の構造的に修飾された形態である。さらに、プロドラッグは、生体外環境での化学的方法又は生化学的方法によって化合物に変換することができる。たとえば、プロドラッグは、好適な酵素又は化学試薬と共に経皮貼付剤リザーバに置かれた場合、化合物にゆっくり変換することができる。プロドラッグは、場合によっては化合物や親薬剤よりも投与しやすいので、有用である場合が多い。たとえば、それらは、経口投与によって生体利用能であってもよいが、親薬剤はそうではない。プロドラッグは、親薬剤を上回って医薬組成物にて改善された溶解度も有してもよい。たとえば、プロドラッグの加水分解開裂又は酸化的活性化を基にするもののような、多種多様なプロドラッグ誘導体が当該技術で既知である。プロドラッグの一例は、限定しないで、エステル(「プロドラッグ」)として投与されるが、次いで有効実体であるカルボン酸に代謝的に加水分解される化合物である。追加の例には、化合物のペプチジル誘導体が挙げられる。
【0163】
本明細書で開示される化合物は治療上許容可能な塩として存在することができる。そのような塩は普通、薬学上許容可能である。しかしながら、薬学上許容可能ではない塩の塩は当該化合物の調製及び精製で有用であってもよい。塩基付加塩も形成されてもよく、薬学上許容可能であってもよい。塩の調製及び選択のさらに完全な議論については、Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use(Stahl, P. Heinrich. Wiley-VCHA, Zurich, Switzerland, 2002)を参照のこと。
【0164】
用語「治療上許容可能な塩」は、本明細書で使用されるとき、水溶性又は油溶性又は分散可能である、本明細書で開示されるように治療上許容可能である本明細書で開示される化合物の塩又は両性イオンの形態を表す。これらの塩は、化合物の最終的な単離及び精製の間に調製することができ、又は遊離の塩基の形態での適当な化合物を好適な酸と反応させることによって別に調製することができる。代表的な酸付加塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、L−アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシレート)、ビスルホン酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、蟻酸塩、フマル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオネート)、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、DL−マンデル酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、L−酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、パラトルエンスルホン酸塩(p−トシレート)及びウンデカン酸が挙げられる。また、本明細書で開示される化合物における塩基性基は、塩化、臭化及びヨウ化メチル、エチル、プロピル、及びブチル;硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミル;塩化、臭化及びヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチル及びステリル;並びに臭化ベンジル及びフェネチルによって四級化することができる。採用されて治療上許容可能な付加塩を形成することができる酸の例には、たとえば、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸のような無機酸、並びに、たとえば、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸及びクエン酸のような有機酸が挙げられる。アルカリ金属又はアルカリ土類イオンとの化合物の配位によっても塩を形成することができる。従って、本発明は、本明細書で開示される化合物のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩及びカルシウム塩などを熟考する。
【0165】
塩基付加塩は、化合物の最終的な単離及び精製の間に、多くは、たとえば、金属イオンの水酸化物、炭酸塩又は重炭酸塩のような好適な塩基と、又はアンモニア、若しくは有機1級、2級若しくは3級のアミンとカルボン酸を反応させることによって調製することができる。治療上許容可能な塩のカチオンには、リチウム、ナトリウム(たとえば、NaOH)、カリウム、(たとえば、KOH)、カルシウム(Ca(OH)を含む)、マグネシウム(Mg(OH)及び酢酸マグネシウムを含む)、亜鉛(Zn(OH)及び酢酸亜鉛を含む)、及びアルミニウム、並びに非毒性の四級アミンカチオン、たとえば、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルフォリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N−ジベンジルフェネチルアミン、1−エフェナミン及びN,N”−ジベンジルエチレンジアミンが挙げられる。塩基付加塩の形成に有用なそのほかの代表的な有機アミンには、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、水酸化コリン、ヒドロキシエチルモルフォリン、ヒドロキシエチルピロリドン、イミダゾール、n−メチル−d−グルカミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエタノールアミン、N,N’−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン及びトロメタミンが挙げられる。L−グリシンやL−アルギニンのような塩基性アミノ酸、及びたとえば、ベタイン(N,N,N−トリメチルグリシン)のような中性pHで両性イオンであってもよいアミノ酸も熟考される。
【0166】
特定の実施態様では、塩には、本明細書で開示される化合物のリジン塩、N−メチルグルタル酸塩(NMG)、トロメタミン塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、亜鉛塩、及びピペラジン塩が挙げられてもよい。
【0167】
本明細書で開示される塩は1:1のモル比で結合してもよく、実際、このことは、それらが当初どのように合成されるかであることが多い。しかしながら、そのほかに対する塩におけるイオン1つの化学量論がそうでなくてもよいことが当業者によって認識されるであろう。本明細書で示される塩は、表示の便宜上、1:1の比で示されてもよく;可能性のある化学量論的配置はすべて本発明の範囲によって包含される。
【0168】
語句「Xは対イオンである」が、本明細書の構造式I、II、III、IV、V及びVIで使用され、明白なイオン性を示して化合物も対イオンも描かれない場合、そのようなイオン性が推論されてもよく、各部分における相当する電荷は存在する又は非存在であると想定されてもよい。たとえば、XがMg(OH)のような一価のカチオンであるならば、式Iが定位置にプロトンすべてを明白に示して描かれているにもかかわらず、結合した化合物はプロトンを失ってXとのイオン結合を形成することが推論されてもよい。同様に、Xがアニオンである場合、結合した化合物はカチオン性を獲得する。X線結晶回折のような大掛かりな物理的性状分析がなければ、対イオンが化合物のどこに結合しているかを正確に知るのは不可能なことが多いので、電荷の配置と比率に関する表示は意図的にあいまいなままである。さらに、対イオンと化合物は不均一なモル比で結合して固体の塩を形成してもよい。
【0169】
用語「多形体」及び「多形形態」及び本明細書で関連する用語は、同一分子の結晶形態を指し、異なった多形体は、たとえば、融解温度、融合の熱、溶解度、溶解速度及び/又は結晶格子における分子の配置又は立体配置の結果としての振動スペクトルのような異なった物性を有してもよい。多形体によって示される物性における差異は、たとえば、保存安定性、圧縮性及び密度(製剤化及び製品製造で重要)及び溶解速度(生体利用能で重要な因子)のような薬学上のパラメータに影響を及ぼす。安定性における差異は、化学的反応性の変化(たとえば、別の多形体から構成される場合よりも一方の多形体から構成される場合の方が剤形が迅速に変色するような、示差酸化)又は機械的変化(たとえば、動力学的に好都合な多形体が熱力学的にさらに安定な多形体に変換するので、錠剤は保存中崩れる)又は両方(たとえば、一方の多形体の錠剤は、高湿度で崩壊にさらに感受性である)から生じる。溶解性/溶解の差異の結果、極端な場合、一部の多形体の変遷が結果的に効能の損失を生じ、ほかの極端な場合、毒性を生じる。加えて、結晶の物性は加工に重要であってもよく、たとえば、多形体の1つが溶媒和物を形成する可能性が高く、又は不純物なしで濾過し、洗浄するのが困難であり得る(すなわち、粒子の形状及びサイズ分布が多形体間で異なり得る)。
【0170】
本明細書で記載されるのは、たとえば、形態A、形態B、形態C、非晶質などのような種々の多形形態である。これらの用語(形態A、形態Cなど、場合によって)は、本明細書に記載されるものに実質的に類似する多形体を包含する。この文脈で、「実質的に類似する」は、当業者が、本明細書で物理的に特徴付けられたようなそれら多形体、又は本明細書で記載される1以上の特性を有するそれら多形体とは些細にしか異ならない多形体を認識することを意味する。例証として、用語形態Aによって包含される多形体は、形態AについてのX線粉末回折(XRPD)で示されるものと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%同一であるXRPDのスペクトルを有する。たとえば、包含される多形体は開示された形態Aと少なくとも80%共通するピークを有してもよい(図7に示される)。或いは、XRPDのスペクトルが、2,3の主なピークによってのみ特定されるのなら、包含される多形体はXRPDスペクトルで示されるものと少なくとも80%同一の主なピークを有してもよい。或いは、包含される多形体は、本明細書で示されるものの80〜120%以内である水溶解度を有してもよい。
【0171】
当該技術で既知であるようないくつかの方法によって分子の多形体を得ることができる。そのような方法には、融解再結晶化、融解冷却、溶媒再結晶化、脱溶媒和、迅速蒸発、迅速冷却、緩慢冷却、蒸気拡散、及び昇華が挙げられるが、これらに限定されない。
【0172】
多形体を特徴付ける技法には、示差走査熱量測定(DSC)、X線粉末回折(XRPD)、熱重量分析(TGA)、動的蒸気吸着/脱着(DVS)、単一結晶X線回折測定、振動分光法、たとえば、IR分光法及びラマン分光法、固相NMR、ホットステージ光学顕微鏡、走査電子顕微鏡(SEM)、電子結晶学及び定量分析、粒度分析(PSA)、表面積分析、溶解度試験及び溶解試験が挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
用語「溶媒和物」は、本明細書で使用されるとき、溶媒を含有する物質の結晶形態を指す。用語「水和物」は溶媒が水である溶媒和物を指す。
【0174】
用語「脱溶媒和された溶媒和物」は、本明細書で使用されるとき、溶媒和物から溶媒を除くことによってのみ作製することができる物質の結晶形態を指す。
【0175】
用語「非晶質形態」は、本明細書で使用されるとき、物質の非結晶性形態を指す。
【0176】
用語「溶解度」は一般に、用語「水溶解度」と同義であることが意図され、生理的条件下で見い出されてもよいような、水、又は水性の溶媒若しくは緩衝液に溶解する化合物の能力又は能力の程度を指す。水溶解度はそれ自体で及び独りでに、有用な定量測定であるが、当業者に明らかである経口生体利用能の一部の制限との相関及び予測値として追加の有用性を有する。実際には、可溶性化合物が一般に望ましく、可溶性であればあるほど良好である。注目に値する例外があり;たとえば、蓄積注射として投与されることが意図される特定の化合物は、長期にわたって安定であれば、低溶解度が注射部位から血漿への緩慢放出を助け得るので実際、低溶解度から恩恵を受けてもよい。溶解度は通常mg/mLで報告されるが、ほかの測定値、たとえば、g/gを用いてもよい。通常許容可能であると判断される溶解度は1mg/mLから何百又は何千mg/mLに及んでもよい。
【0177】
溶解度は変化する条件下で測定されてもよい。たとえば、胃液pH、生理的pH又は生理的pHに近いpHのような生体で見い出されるものに類似する条件下で測定してもよい。「胃液pH」は、本明細書で使用されるとき、約pH1を意味する。「生理的pHに近いpH」は、本明細書で使用されるとき、たとえば、血液及び血漿又は細胞質のような生体組織及び体液の典型的なpH、一般的には約7.4を指す。
【0178】
本明細書で使用されるとき、塩形態を指す場合の「固形物」は、室温での相対的な固形物、及び/又は実質的な量の固形物を含有することを意味する。固形物は、形態において非晶質であってもよく、及び/又は若干の量の溶媒分子の残留物又は配位物を伴った溶媒和された固形物であってもよい。結晶性の塩は固形物の例である。例証として蝋は固形物とみなしうるが、油はそうではない。
【0179】
「固形組成物」には、本明細書で使用されるとき、化合物の塩、又はその多形体若しくは非晶質固形物形態が挙げられる。
【0180】
本明細書で開示される化合物、塩及び多形体をそのままの化学物質として投与することが可能であってもよい一方で、それらを医薬製剤として提示することも可能である。従って、本明細書で提供されるのは、本明細書で開示される1以上の特定の化合物、塩及び多形体、又は1以上薬学上許容可能なその塩、エステル、プロドラッグ、アミド又はそれらの溶媒和物、それらと一緒に1以上の薬学上許容可能なそれらのキャリア、並びに任意で1以上のそのほかの治療成分を含む医薬製剤である。製剤のそのほかの成分と相溶性であり、その受容者に有害ではないという意味でキャリアは「許容可能」でなければならない。適切な製剤は、選択される投与経路に左右される。当該技術、たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesで好適であり、理解されるように、周知の技法、キャリア及び賦形剤のいずれも使用してもよい。本明細書で開示される医薬組成物は、当該技術で既知の任意の方法で、たとえば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、製粉、乳化、内包、捕捉又は圧縮の方法によって製造されてもよい。
【0181】
最も好適な経路は、たとえば、受容者の症状及び障害に左右され得るが、製剤には、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、関節内、及び髄質内を含む)、腹腔内、経粘膜、経皮、鼻内、直腸及び局所(皮膚、頬内、舌下及び眼内を含む)の投与に好適であるものが挙げられる。製剤は好都合に単位投与形態で提示されてもよく、製薬学の技術で周知の方法のいずれかによって調製されてもよい。通常、これらの方法には、化合物又は薬学上許容可能なその塩、エステル、アミド、プロドラッグ若しくは溶媒和物(「有効成分)を、1以上の付属成分を構成するキャリアと会合させる工程を含む。一般に、有効成分を液体キャリア又は微細分割した固体キャリア又は両方と均一に且つ密に会合させ、次いで必要に応じて生成物を所望の製剤に成形することによって製剤が調製される。
【0182】
経口投与に好適な、本明細書で開示される化合物、塩及び多形体の製剤は、個々の単位として、たとえば、それぞれ所定の量の有効成分を含有するカプセル剤、カシェ剤又は錠剤として;粉末若しくは顆粒として;水性液体若しくは非水性液体における溶液若しくは懸濁液として;又は水中油液体エマルジョン若しくは油中水液体エマルジョンとして提示されてもよい。有効成分はまた、ボーラス、舐剤又はペーストとして提示されてもよい。
【0183】
経口で使用することができる医薬調製物には、錠剤、ゼラチン製の押し込み型カプセル、ならびにゼラチンと可塑剤、たとえば、グリセロール又はソルビトールで作られた密封軟質カプセルが挙げられる。錠剤は、任意で1以上の付属成分と共に圧縮又は成形によって作製されてもよい。圧縮錠剤は、たとえば、任意で結合剤、不活性希釈剤、又は潤滑剤、表面活性剤又は分散剤と混合した、粉末又は顆粒のような流れるように動く形態での有効成分を好適な機械にて圧縮することによって調製されてもよい。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を好適な機械にて成形することによって作製されてもよい。これらの錠剤は任意で被覆されてもよく又は溝を付けられてもよく、その中での活性成分の緩慢な又は制御された放出を提供するように製剤化されてもよい。経口投与用の製剤はすべてそのような投与に好適な投与量であるべきである。押し込み型カプセルは、ラクトースのような充填剤、デンプンのような結合剤及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、及び任意で安定剤との混合物にて有効成分を含有することができる。軟質カプセルでは、有効化合物、塩及び多形体が、たとえば、脂肪油、流動パラフィン、又は液状ポリエチレングリコールのような好適な液体に溶解されてもよく、又は懸濁されてもよい。さらに、安定剤を加えてもよい。糖衣錠の芯には好適なコーティングが提供される。この目的で、濃縮糖溶液を使用してもよく、それは任意でアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を含有してもよい。有効成分の用量の異なった組み合わせを識別するために又は特徴付けるために染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠のコーティングに加えてもよい。
【0184】
注射による、たとえば、ボーラス注射又は連続注入による非経口投与のために化合物、塩及び多形体を製剤化してもよい。注射用製剤は、単位投与形態にて、たとえば、添加した保存剤と共にアンプルで又は複数用量の容器にて提示されてもよい。これらの組成物は、油性又は水性の媒体において懸濁液、溶液又はエマルジョンのような形態を取ってもよく、たとえば、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤のような製剤化剤を含有してもよい。これらの製剤は、単位用量用の又は複数用量の容器にて、たとえば、目盛の付いたアンプル又はバイアルで提示されてもよく、使用直前にたとえば、生理食塩水又は無菌で発熱物質を含まない水のような無菌の液体キャリアの添加のみを必要とする粉末形態又は凍結乾燥された(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即席注射の溶液及び懸濁液は、前に記載された種類の無菌の粉末、顆粒及び錠剤から調製されてもよい。
【0185】
非経口投与用の製剤には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤及び意図された受容者の血液と製剤を等張にする溶質を含有してもよい有効化合物、塩及び多形体の水性及び非水性(油性)の無菌の注射用溶液、並びに懸濁剤及び増粘剤を含んでもよい水性及び非水性の無菌の懸濁液が挙げられる。好適な親油性の溶媒又は媒体には、ゴマ油のような脂肪油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。水性の注射用懸濁液は、その懸濁液の粘度を高める物質、たとえば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール又はデキストランを含有してもよい。任意で、該懸濁液はまた、好適な安定剤、又は化合物、塩及び多形体の溶解度を高めて高い濃度の溶液の調製を可能にする剤も含有してもよい。
【0186】
上述の製剤に加えて、本明細書で開示される化合物、塩又は多形体をデポー調製物としても製剤化してもよい。そのような長く作用する製剤は、埋め込み(たとえば、皮下に若しくは筋肉内に)又は筋肉内注射によって投与されてもよい。従って、たとえば、それらの化合物、塩及び多形体は、好適なポリマー材料又は疎水性材料(たとえば、許容可能な油におけるエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂、又はやや溶けにくい誘導体、たとえば、やや溶けにくい塩と共に製剤化されてもよい。
【0187】
頬内又は舌下の投与については、組成物は、従来の方法で製剤化される錠剤、薬用キャンデー、トローチ又はゲルの形態を取ってもよい。そのような組成物は、ショ糖及びアカシア又はトラガカントのような風味基剤に有効成分を含んでもよい。
【0188】
化合物、塩及び多形体はまた、たとえば、ココナツバター、ポリエチレングリコール又はそのほかのグリセリドのような従来の座薬基剤を含有する座薬又は滞留浣腸剤のような直腸組成物で製剤化されてもよい。
【0189】
本明細書で開示される特定の化合物、塩及び多形体は、非全身性投与による、局所で投与されてもよい。これには、化合物が有意に血流に入らないように、外用に本明細書で開示される化合物を表皮又は口腔に適用すること並びに耳、眼及び鼻に滴下することが挙げられる。それに対して、全身性投与は、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与及び筋肉内投与を指す。
【0190】
局所投与に好適な製剤には、皮膚を介して炎症部位に浸透するのに好適な液体又は半液体、たとえば、ゲル、塗布薬、ローション、クリーム、軟膏又はペースト、及び眼、耳若しくは鼻への投与に好適な滴下剤が挙げられる。局所投与用の有効成分は、該製剤のたとえば、0.001%〜10%w/w(重量)を構成してもよい。特定の実施態様では、該有効成分は10%w/wと同程度を構成する。ほかの実施態様では、それは5%w/w未満を構成する。特定の実施態様では、該有効成分は2%w/w〜5%w/wを構成してもよい。ほかの実施態様では、それは製剤の0.1〜1%w/wを構成してもよい。
【0191】
吸入による投与については、化合物、塩及び多形体は、吸入器、噴霧器加圧パック又はエアゾール噴霧を送達するそのほかの好都合な手段から好都合に送達されてもよい。加圧パックは、たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又はそのほかの好適な気体のような好適な高圧ガスを含んでもよい。加圧エアゾールの場合、投与量単位は、計量された量を送達するための弁を提供することによって決定されてもよい。或いは、吸入又は吸い込みによる投与については、本明細書で開示される化合物、塩及び多形体は、乾燥粉末組成物、たとえば、化合物とラクトース又はデンプンのような好適な粉末基剤の粉末ミックスの形態を取ってもよい。該粉末組成物は、吸入器又は吸い込み器の助けを借りてそれから粉末が投与されてもよい単位投与形態にて、たとえば、カプセル、カートリッジ、ゼラチン又はブリスター包装で提示されてもよい。
【0192】
鼻内送達は、特に化合物をCNSに送達するのに有用であってもよい。鼻内薬剤投与は、血管脳関門(BBB)を迂回して神経栄養因子及びそのほかの治療剤を脳及び脊髄に送達する非侵襲性の方法であることが示されている。鼻からCNSへの送達は、嗅覚経路と三叉神経経路の双方に沿って数分以内に生じる。鼻内送達は細胞外経路によって生じ、薬剤が受容体に結合する又は軸索輸送を受けることを必要としない。鼻内投与はまた鼻に関連するリンパ組織(NALT)及び深頚部リンパ節を標的とする。加えて、鼻内に投与された治療剤は、脳血管の血管壁及び血管周囲の空間に高いレベルで認められる。動物モデルにてこの鼻内法を用いて、研究者らは、卒中の損傷を軽減し、アルツハイマーの神経変性を覆し、不安を軽減し、記憶を改善し、脳の神経形成を刺激し、脳腫瘍を成功裏に治療した。ヒトでは、鼻内インスリンが、正常な成人及びアルツハイマー病の患者において記憶を改善することが示されている。Hanson LR and Frey WH,2nd,J.Neuroimmune Pharmacol.2007,Mar;2(1):81−6.Epub,2006,Sep 15。
【0193】
好ましい単位投与量の製剤は、有効成分の、本明細書で以下に言及されるような有効用量、又はその適当な分画を含有するものである。
【0194】
特に上述された成分に加えて、上述された製剤は、当該製剤の種類を考慮する当該技術で従来のそのほかの剤を含んでもよく、たとえば、経口投与に好適なものは香味剤を含んでもよいことが理解されるべきである。
【0195】
化合物、塩及び多形体は、0.1〜500mg/kg/日の用量にて経口で又は注射を介して投与されてもよい。成人ヒトの用量範囲は一般に、5mg〜2g/kgである。個々の単位で提供される錠剤又は提示のそのほかの形態は、そのような投与量にて又はその複数投与量として、たとえば、5mg〜500mg、普通約10mg〜200mgを含有する単位にて有効である量の1以上の化合物、塩及び多形体を好都合に含有してもよい。
【0196】
キャリア材料と組み合わせて単一投与形態を生成してもよい有効成分の量は、治療される宿主及び投与の特定の方式によって変化する。
【0197】
前記化合物、塩及び多形体は、種々の方式において、たとえば、経口、局所又は注射によって投与することができる。患者に投与される化合物の正確な量は、主治医の責任である。特定の患者に対する特定の用量レベルは、採用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全身状態、性別、食事、投与の時間、投与の経路、排泄率、薬剤の併用、治療される正確な障害、及び治療される適応又は症状の重症度を含む種々の因子に左右される。また、投与の経路は症状及びその重症度によって変化してもよい。
【0198】
特定の例では、本明細書で開示される化合物、塩及び多形体(又は薬学上許容可能なその塩、エステル、若しくはプロドラッグ)の少なくとも1つを別の治療剤との併用で投与することが十分に理解されてもよい。例証のみとして、アクチニド中毒の治療のために本明細書の化合物の1つを服用する際、患者によって経験される副作用の1つが、適切な機能のために生体によって要求される必須微量鉱物の枯渇であるのならば、そのときは、適切な機能のために生体によって要求される必須微量鉱物、たとえば、亜鉛及びマグネシウムの補完と併用した強力なキレート化剤を投与して、キレート療法に対して不注意に損失するであろうものを元に戻すことが十分に理解されてもよい。又は、例証のみとして、本明細書に記載される化合物の1つの治療有効性が、アジュバントの投与によって高められてもよい(すなわち、アジュバント単独では最小の治療利益のみを有し得るが、ほかの治療剤との併用で、患者に対する全体的な治療利益が高められる)。又は、例証のみとして、患者によって経験される利益が、治療利益も有する別の治療剤(治療計画も含む)と共に本明細書に記載される化合物の1つを投与することによって高められてもよい。例証のみとして、本明細書に記載される化合物の1つの投与を含むサラセミアの治療において、高められた治療利益は、サラセミアに対する別の治療剤、たとえば、デフェロキサミンを患者に提供することによって結果的に生じてもよい。治療される疾患、障害又は症状にかかわらず、どんな場合でも、患者によって経験される全体的な利益は、2つの治療剤の単に相加的であってもよいし、又は患者は相乗的利益を経験してもよい。
【0199】
可能性のある併用剤の具体的な非限定例には、デフェラシロックス、デフェリプロン、デフェロキサミン、DTPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸)、EGTA(エチレングリコールテトラ酢酸)、EDTA(エチレンジアミンテトラ酢酸)、DMSA(ジメルカプトコハク酸)、DMPS(ジメルカプト−プロパンスルホネート)、BAL(ジメルカプロール)、BAPTA(アミノフェノキシエタン−テトラ酢酸)、D−ペニシルアミン及びαリポ酸と共に、本明細書で開示されるような特定の塩及び多形体を使用することが挙げられる。
【0200】
どんな場合も、複数の治療剤(その少なくとも一方が本明細書で開示される化合物である)を任意の順序で又は同時でさえ投与してもよい。同時に投与するのであれば、複数の治療剤は、単一の、1つにまとめた形態、又は複数の形態(例証のみとして単一の丸薬として若しくは2つの別々の丸薬として)にて提供されてもよい。これらの治療剤の一方が複数回用量で与えられてもよく、又は双方が複数回用量として与えられてもよい。同時ではないのであれば、複数回投与の間のタイミングは、数分から4週間に及ぶ継続時間であってもよい。
【0201】
従って、別の態様では、特定の実施態様は、当該技術で既知である障害の治療のための少なくとも1つの追加の剤との併用で、対象における前記障害を軽減する又は予防するのに有効な量の本明細書で開示される化合物を前記対象に投与することを含む、そのような治療を必要とするヒト又は動物の前記対象にて金属毒性に関係する障害及び症状を治療する方法を提供する。関連する態様では、特定の実施態様は、金属毒性に関係する障害及び症状の治療のための1以上の追加の剤との併用で、本明細書で開示される化合物を少なくとも1つ含む治療組成物を提供する。
【0202】
本明細書で開示される化合物、組成物及び方法によって治療される具体的な疾患には、たとえば、無トランスフェリン血症、無セルロプラスミン血症又はフリードライヒ失調症のような生体における鉄の過負荷、鉄の不均等配分又は再配分;たとえば、ベータサラセミアメジャー及びインターメディア、鎌状赤血球貧血、ダイヤモンド−ブラックファン貧血、鉄芽球性貧血、慢性溶血性貧血、治療不実施白血病、骨髄移植及び骨髄異形成症候群のような輸血の鉄過負荷;たとえば、遺伝性ヘモクロマトーシス及び晩発性皮膚ポルフィリン症のような遺伝的条件の結果生じる食物中の鉄の過剰吸収;たとえば、肝炎のような過剰な食物鉄の吸収を生じる後天性疾患;並びにそのほかの肝疾患;ランタニド又はアクチニドの急性中毒又は慢性の過負荷が挙げられる。
【0203】
ヒトの治療に有用であることに加えて、本明細書で開示される特定の化合物及び製剤は、また、哺乳類、げっ歯類などを含む愛玩動物、外来動物及び家畜の獣医治療にも有用であってもよい。さらに好ましい動物にはウマ、イヌ及びネコが挙げられる。
【0204】
本出願で引用される参考文献、米国又は外国の特許又は出願はすべて、その全体が本明細書に記述されているかのように参照によって本明細書に組み入れられる。矛盾が生じる場合、本明細書で文字通り開示される資料が制御する。
化合物を調製するための一般的な合成方法
【0205】
本明細書で開示されるような塩及び多形体がそれから形成されてもよい特定の化合物は、Bergeron,RJ et al.,“Design,Synthesis,and Testing of Non−Nephrotoxic Desazadesferrithiocin Polyether Analogues,”J Med Chem.2008,51(13),3913−23に記載されるように合成することができる。
【0206】
以下の方法を用いて本発明を実践することができる。
実験方法
塩の選抜実験
【0207】
以下に示される
【化15】




(S)−3’−(OH)−DADFT−PE及び(S)−4’−(OH)−DADFT−PEの塩の選抜は、典型的なガラス器具にて手動で行った。塩の選抜実験は、1:1比の4’−(OH)−DADFT−PE又は3’−(OH)−DADFT−PEと塩形成体を通常用いて実施した。水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを塩形成体として利用した場合、1:2の比を時には用いた。遊離の酸と塩基を含有する溶媒の直接混合によって実験を行った。様々な比率での異なった溶媒における溶液及びその添加、加熱、撹拌、冷却、緩慢及び/又は高速蒸発、任意でN雰囲気下、高温及び準常温、回転蒸発、スラリー形成及びスラリーホイールの使用、上清の単離及び後処理、粉砕並びに濾過を含むが、これらに限定されない、塩の形成及び単離についての常法を適用した。これらの方法を適用して式Iの化合物の塩を見つけ出すことができた。
【0208】
単離に続いて、次いで、X線粉末回折(XRPD)、単一結晶X線回折(SC−XRD又はXRD)、核磁気共鳴(NMR)、溶解度分析、及び水分吸着/脱着ストレス分析による安定性試験、及び示差走査熱量測定(DSC)を含むが、これらに限定されない1以上の常法によって塩を特徴付けた。
【0209】
実験プロトコール全体を通して、以下の略記を使用してもよい。以下のリストは便宜上提供され、包括的であるこは意図されない。
【表1】

【0210】
特定されたモル濃度の塩形成体と4’−(OH)−DADFT−PE又は3’−(OH)−DADFT−PEを混合する際に常温にて溶液を生成した。ピンホールを含有するアルミホイルで覆った(緩慢蒸発、SE)又は高速蒸発(FE)のために開けたままにしたバイアルからこの溶液を乾燥するまで蒸発させた。固形物が形成されなかった場合、追加の結晶化法を用いた。
回転蒸発
【0211】
特定されたモル濃度の塩形成体と4’−(OH)−DADFT−PE又は3’−(OH)−DADFT−PEを混合する際に常温にて溶液を生成した。次いで常温又は高温にて回転エバポレータ(RE)を用いて溶媒を除いた。膜が生じた場合、追加の結晶化法を用いた。
冷却実験
【0212】
特定されたモル濃度の塩形成体と4’−(OH)−DADFT−PE又は3’−(OH)−DADFT−PEを混合する際に常温又は高温にて溶液又は懸濁液を生成した。常温で調製した溶液又は懸濁液をさらなる処理のために温めた。それらを常温の撹拌プレートに置く(高速冷却、FC)、又は加熱装置のスイッチを切る(緩慢冷却、SC)によって、得られた混合物を常温に冷却した。形成された固形物を真空濾過によって単離した。固形物が回収されなかった場合、追加の結晶化法を用いた。
蒸気拡散
【0213】
特定されたモル濃度の塩形成体と4’−(OH)−DADFT−PE又は3’−(OH)−DADFT−PEを混合する際に常温にて溶液を生成した。適当な逆溶媒を伴った20mLのシンチレーションバイアルに、試料溶液を伴ったバイアル(通常、1ドラム)をフタをしないで入れた。次いで20mLのバイアルにフタをして、特定された時間量の間、試料を静置した。固形物が形成されなかった場合、追加の結晶化法を用いた。
スラリー実験
【0214】
追加の結晶化法としてスラリー実験を用いた。溶媒を加え、次いで混合物を密封バイアルにて常温で撹拌した。所与の時間量の後、真空濾過によって固形物を単離した。
概算溶解度
【0215】
室温にて、秤量した試料を試験溶媒のアリコートで処理した。添加の間に通常試料を超音波処理して溶解を円滑にした。各溶媒における試験物質の完全な溶解は、視覚的検査によって判定した。完全な溶解を提供するのに使用した溶媒の総体積に基づいて溶解度を概算した。溶媒の増分添加と物質の溶解の動力学のために実際の溶解度は算出された値よりも大きい可能性がある。実験中、溶解が生じなかったら、溶解度は「未満」として表す。最初のアリコートの添加の後、溶解が生じたら、溶解度は、「未満」として表す。
X線粉末回折(XRPD)
【0216】
120°の2θ範囲を持つ曲線部分感受性の検出器を備えたInel XRG−3000回折計を用いてXRPDパターンを収集した。CuKα放射線(40kV、30mA)の入射ビームを用いて0.03°2θの解像でリアルタイムでデータを収集した。解析に先立って、シリコン標準(NIST SRM640c)を解析してSi111のピーク位置を検証した。壁の薄いガラスのキャピラリーに試料を詰めることによって解析のために試料を調製した。各キャピラリーを角度計のヘッドに搭載し、データ獲得の間、回転させた。モノクロメータのスリットを5mm×160μmで設定し、試料を300秒間解析した。
【0217】
PANalytical X’Pert Pro回折計を用いてXRPDパターンを収集した。長い微細な焦点源及びニッケルフィルターを伴ったセラミック管を用いてCuKα線の入射ビームを生成した。反射ステージと手動で操作するスピナーを伴った対称Bragg−Brentanoジオメトリーを用いてその回折計を設定した。データを収集し、X’Pert Pro Data Collectorソフトウエア(v.2.2b)を用いて解析した。その解析に先立ってシリコン検体(NIST SRM640c)を解析してSi111のピーク位置を検証した。バックグラウンドがゼロのシリコン基材上に中心を置いた薄い円形の層としてその検体を調製した。散乱防止スリットを用いて空気散乱によって生成されるバックグラウンドをできるだけ抑えた。入射し、回折されるビームに対してソーラスリットを用いて軸ビームの開きをできるだけ抑えた。その検体から240mmに置いた走査位置感受性検出器(X’Celerator)を用いて回折パターンを収集した。
示差走査熱量測定
【0218】
TAインスツルメンツ示差走査熱量計Q2000を用いて示差走査熱量測定(DSC)を行った。各試料をアルミニウムのDSC皿に入れ、重量を正確に記録した。反転したフタで皿を覆い、端を曲げた。試料セルを30℃で平衡化し、窒素パージ下で10℃/分の速度で250℃の最終温度まで加熱した。較正標準としてインジウム金属を用いた。
熱重量分析
【0219】
TAインスツルメンツQ5000と2590熱重量分析計を用いて熱重量分析(TG)を行った。各試料をアルミニウムの試料皿に入れ、TG炉に挿入した。窒素下にて10℃/分の速度で350℃の最終温度にTG炉を加熱した。較正標準としてニッケル及びアルメルを用いた。
水分吸着分析
【0220】
VTI SGA−100蒸気吸着分析計にて水分吸着/脱着(DVS)データを収集した。窒素パージ下にて相対湿度(RH)5〜95%の範囲にわたってRH10%の間隔で吸着及び脱着のデータを収集した。分析に先立って試料を乾燥させなかった。重量基準が合わなければ、分析に用いた平衡基準は、最大3時間の平衡時間で、5分間では0.0100重量%未満の変化だった。試料の最初の水分含量についてはデータを収集しなかった。較正標準としてNaCl及びPVPを用いた。
核磁気共鳴分光法(NMR)
【0221】
Varian UNITYINOVA−400分光計によってSSCIにて溶液H−NMRスペクトルを獲得した。試料はすべて重水素を含むジメチルスルホキシド(EMSO)中で調製した。データの項で提示される、各試料についての検体の最初のプロットでデータ獲得のパラメータが利用可能である。
【0222】
以下の実施例によって本発明をさらに説明する。
実施例1
(S)−3’−(OH)−DADFT−PEの塩を製造する試み
【0223】
代表的な化合物(S)−3’−(OH)−DADFT−PEの塩の最初の選抜の結果を表1にて以下で示す。およそ52の実験を行った。
【表2−1】


【表2−2】


【表2−3】


【表2−4】


【表2−5】


【表2−6】


【表2−7】


【表2−8】


【表2−9】


【表2−10】


【表2−11】


【表2−12】


【表2−13】


【表2−14】


【表2−15】


【表2−16】


【表2−17】


【表2−18】


実施例2
【0224】
(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのカルシウム塩:等モル比のAPIのメタノール溶液をMeOH/HO(7.3:1、v/v)における塩基スラリーと混合することによってX線非晶質のカルシウム塩を生成した。N下で、濾過した上清を緩慢に蒸発させ、その後、回転蒸発によって蒸発させた。3日間75%RHに暴露した場合、残ったカルシウム塩は物理的に不変であったが、室温で15日間保存した場合、色変化が認められた。カルシウム塩の水溶解度は非常に低く、2mg/mL未満だった。
実施例3
【0225】
(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩:等モル比のAPIのメタノール溶液をMeOH/HO(11:1、v/v)における塩基スラリーと混合することによって部分的結晶性のマグネシウム塩を生成した。N下で、濾過した上清を緩慢に蒸発させ、その後、回転蒸発によって蒸発させた。エーテルにおける逆溶媒沈殿によって固形物を生成した。等モル比のAPIのメタノール溶液をメタノール/水における塩基懸濁液と混合することによってマグネシウムの大規模調製を行った。濾過した上清を高速蒸発させ、次いでN下にて乾燥させた。エーテルにおける逆溶媒沈殿によって固形物を生成した。
【0226】
マグネシウム塩の溶液のプロトンのNMRスペクトルは、APIの化学構造に合致する。API構造におけるプロトンすべてについて有意なピークのシフトが認められたということは、塩の形成を意味する。約3.3ppmにおける鋭いピークは水に割り当てられた。溶媒DMSOは約2.5ppmで認められた。
【0227】
マグネシウム塩は非吸湿性である思われる。それは、75%のRHに8日間暴露された場合潮解しなかったし、XRPDのパターンは不変のままだった。この塩は水において相対的に高い溶解度(≧48mg/ml)を示す。
【0228】
マグネシウム塩形態B(図10)のDSC温度記録曲線は、2つの広い吸熱を示す。約79℃での主要な吸熱は、水の気化のせいである可能性が高く、約16%のTGの重量損失に関係する。この重量損失は、形態Aで認められるよりも有意に高い。約153°での主要でない吸熱の性質は分からないが、相転移に関係するのかも知れない。2.2%のTGの重量損失は、この事象に関係する。
【0229】
DVSのデータ(図11)は、形態Bが吸湿性であることを示唆している。5%RHでの平衡でこの物質は10.8%の重量損失を示す。吸着工程の間、この物質は、5%〜65%RHで5.7%の重量増加を示し、平衡重量に達成することなく、65%を上回るRHで追加の21.2重量%を示す。このことはさらに高い重量増加が可能であってもよいことを示す。脱着では26.6%の重量損失が認められた。
【0230】
(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩の非晶質形態の最初の多形体選抜結晶化実験の結果は、以下の表2に示され、その際、EFは高速蒸発を表し、SEは緩慢蒸発を表し、LCは低い結晶性を表す。
【表3】

【0231】
(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩の形態Aの最初の多形体選抜結晶化実験の結果は、表3にて以下に示され、FEは高速蒸発を表し、SEは緩慢蒸発を表す。
【表4】

【0232】
(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩の形態Aの逆溶媒沈殿実験の結果を表4にて以下に示す。
【表5】

【0233】
(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩の形態Aの緩慢冷却結晶化実験の結果を表5にて以下に示すが、SCは緩慢冷却を表し、RTは室温を表し、LCは低結晶性を表し、ISは不十分な固形物を表す。
【表6】

【0234】
非晶質(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩の常温溶液実験の結果を表6にて以下に示すが、LCは低結晶性を表す。
【表7】

【0235】
(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩の形態Aのスラリー実験の結果を表7にて以下で示すが、dは日を表し、ISは不十分な固形物を表す。
【表8】

【0236】
非晶質(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩の蒸気ストレス実験の結果を表8にて以下に示すが、LCは低結晶性を表し、ISは不十分な固形物を表す。
【表9】

【0237】
非晶質(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩の蒸気拡散実験の結果を表9にて以下に示すが、LCは低結晶性を表す。
【表10】

【0238】
(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩の形態Aの溶媒粉砕実験の結果を表10にて以下に示すが、LCは低結晶性を表す。
【表11】


実施例4
【0239】
(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのナトリウム塩:等モル比のAPIのエタノール溶液を塩基の水溶液と混合することによってX線非晶質のナトリウム塩を生成した。緩慢に蒸発させた試料をさらに真空オーブンにて乾燥させた。
【0240】
このナトリウム塩のプロトンNMRスペクトルは、APIの完全性を裏付けた。芳香族プロトンについてピークの有意なシフトおよび広がりが認められた。ピークのシフトは、−COOH基の近傍のプロトンについても認められ、塩の形成を暗示した。約3.3ppmでの鋭いピークを水に割り当てた。溶媒DMSOも約2.5ppmで認められた。
【0241】
このナトリウム塩は吸湿性ではないと思われる。75%RHに3日間暴露した際、それは物理的に不変のままだった。
実施例5
【0242】
(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのピペラジン塩:等モル比のAPIのエタノール溶液を塩基のエタノール溶液と混合し、次いでN下で緩慢及び高速の蒸発を行うことによって低結晶性のピペラジン塩を生成した。このピペラジン塩は吸湿性であると思われる。75%RHに3日間暴露した際、それは潮解した。
実施例6
【0243】
S)−3’−(OH)−DADFT−PEのカリウム塩:等モル比のAPIのメタノール溶液を塩基のメタノール溶液と混合することによってカリウム塩の形態Aを生成した。エーテルにおける逆溶媒沈殿によって固形の塩を回収した。
【0244】
カリウム塩の形態A(図4)のDVSデータは、このカリウム塩が極端に吸湿性であることを示唆している。その物質は、5%〜95%RHの吸着の間、67.7%の重量増加を示し、95%〜5%RHの脱着の間、63.4%の重量損失を示し、吸湿性の物質(粘着性で黄色のゲル様固形物)を生じた。API当たり2モルの水に相当する、8.7%の重量損失の平均比率と共に、45〜65%RHの間の吸収曲線においてプラトーが観察された。
【0245】
DVS測定の間に潮解が認められた。75%RHに3日間暴露した場合、完全な潮解も認められた。53%RHに11日間暴露した際、DVS後の試料は、形態Bと呼ばれる新しい形態に再結晶した。
【0246】
カリウム塩の形態Aは、相対的に高い水溶解度(≧48mg/ml)及びそのほかの試験溶媒を示す。
【0247】
上述のように53%RHに暴露したDVS後の試料からカリウム塩の形態Bを得た。形態Bは室温ににて形態Aを53%RHに11日間暴露することによっても得られた。形態Bは、表11にて以下に示すように、RTから冷蔵庫への高速冷却又は60℃からRTへの高速冷却によってメタノール/水の混合物(54%RH)から直接的にも生成された。
【表12】

【0248】
カリウム塩の形態BのDVSデータ(図5)は、形態Bが極度に吸湿性である(図4)ことを示唆している。その物質は、5%〜95%RHの吸着の間、約70%の重量増加を示し、95%〜5%RHの脱着の間、約66%の重量損失を示し、潮解した物質を生じた。API当たり2モルの水に相当する、約8%の重量損失の平均比率と共に、35〜65%RHの間の吸収曲線においてプラトーが観察された。
【0249】
形態Bは不安定であると思われる。低湿度(P)又は高温(40℃)に暴露した場合、形態変換が生じた。Pに6日間暴露すると、形態Bは形態Cと呼ばれる新しい形態に変換した。40℃に6日間暴露した場合、それは、形態Aとの混合物に脱溶媒和した。
【0250】
形態Cは、形態BをPに6日間暴露することによって得られた。この形態に関するさらなる性状分析データはない。
実施例7
(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのカリウム塩の簡潔化した多形体の選抜
【0251】
カリウム塩の形態Aを手短な多形体の選抜に供した。大規模調製を行って簡潔化した多形体の選抜のために塩を生成した。3’−DADFT−PE−KOHをアセトニトリル、酢酸エチル/水、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、又はテトラヒドロフランのいずれか1つに溶解し、室温にて又は、室温から80℃の温度までの対流オーブン若しくは真空オーブンでの20日までの溶媒蒸発(乾燥)に供した。対流オーブンにおける40℃でのアセトニトリルからの緩慢蒸発の試みは感知できる固形物を得る唯一の方法であった。結果を表12にて以下に示す。
【表13】


実施例8
(S)−3’−(OH)−DADFT−PEのカリウム塩の示差走査熱量測定分析
【0252】
カリウム塩形態Bの温度記録図を図6に示す。DSC曲線は、約53℃でシグナルの最大値を持つ鋭い吸熱を示し、それは、約6.0%の総重量損失を伴ったTG曲線で見られた2段階重量損失に相当する。この重量損失は、形態Aから形態Bへの変換の間に見られた6.7%の重量増加に合致する。
実施例9
【0253】
(S)−3’−(OH)−DADFT−PEの亜鉛塩:結晶性の亜鉛塩は、等モル比のAPIのメタノール溶液をMeOH/HO(8:1、v/v)における塩基スラリーと混合することによって生成した。
【0254】
この亜鉛塩のプロトンNMRスペクトルはAPIの完全性を裏付けた。芳香族プロトン及び−COOH基の近傍のプロトンについて有意なピークのシフトが認められ、塩の形成を暗示した。約3.3ppmでの鋭いピークを水に割り当てた。溶媒DMSOも約2.5ppmで認められた。
【0255】
該亜鉛塩は吸湿性ではないと思われる。75%RHに3日間暴露した際、それは物理的に不変のままだった。
【0256】
該亜鉛塩は、約1mg/mlの低い水溶解度を示す。
実施例10
単一結晶X線回折測定による(S)−3’−(OH)−DADFT−PEの亜鉛塩の構造決定
【0257】
可能性のある(S)−3’−(OH)−DADFT−PEの亜鉛塩の結晶をSSCI社で調製し、単一結晶構造解析に提示した。パーデュ大学結晶学研究室で実施された単一結晶X線回折解析によってその構造を決定した。cGMPの仕様書に従って、単一結晶データの収集、構造解析及び精製を行わなかった。
【0258】
得られた構造の質は、0.054(5.4%)のR値によって示されるように高い。普通、0.02〜0.06の範囲でのR値が、確実に決定された構造のほとんどについて引用される。単一結晶構造の不斉単位で見られる分子は、スキーム1で提供される提案された分子構造に一致する。図3に示す不斉単位は、2つの(S)−3’−(OH)−DADFT−PE分子と、2つの亜鉛アニオンと、2つの水和の水を含有する。
【0259】
亜鉛イオンは、フェノール基と、アミン基と、酸基から成るポケットの中にある(図3)。酸基が2つの亜鉛分子を架橋しており、第5の配座部位が水分子によって満たされる。
【0260】
構造を解析した後、Flackのパラメータの転換識別力についてデータの質が評価されるべきであり、これは、Flackのパラメータの標準不確実性試験によって行われ、それは、強力な転換識別力として分類される。化合物の光学純度は高く、結晶構造から直接、絶対的な構造を評価することができる。
【0261】
従って、図3におけるモデルの絶対的な立体配置は正しい。この構造は、S配置として割り当てられているC33(図3のORTEP図を参照)に位置する単一の不斉中心を含有する。これは提案された立体配置と一致する。追加の明細は表13にて以下で示す。
【表14−1】


【表14−2】

実施例11
種々の溶媒における塩の溶解度
【0262】
視覚検査に基づいて溶液を提供するのに用いられる総溶媒に基づいて概算溶解度を算出する。少量の溶媒を撹拌しながら、秤量した試料に加える。利用された溶媒部分の体積又は溶解の遅い速度のために実際の溶解度は大きい可能性がある。溶解度は最も近いmg・mLに報告される。模擬胃液(SGF)は、ペプシンを除いて2008USP、No.1817ページに従って調製した。
【表15】


実施例12
(S)−4’−(OH)−DADFT−PEの塩を製造する試み
【0263】
代表的な化合物、(S)−4’−(OH)−DADFT−PEの塩の最初の選抜の結果を表15にて以下に示す。上記の方法を適用して式Iの任意の化合物を塩を見い出すことができた。採用したこれらの方法により以下の塩を製造してもよい:1−カルボキシ−4−グアニジノブタン−1−アミニウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート、カルシウムビス[(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート]、カルシウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレートヒドロキシド、コリン(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート、2,6−ジアンモニオヘキサノエート(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート、2−ヒドロキシエタンアミニウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート、2−アミノエタンアミニウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート、2−アンモニオ−3−(1H−イミダゾール−3−イウム−4−イル)プロパノエート(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート、4−(2−ヒドロキシエチル)モルフォリン−4−イウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジニウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジニウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート、マグネシウムビス(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート、マグネシウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレートヒドロキシド、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシ−N−メチルヘキサン−1−アミニウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート、ピペラジン−1−イウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート、カリウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート、カリウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート2−エチルヘキサン酸、ナトリウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート2−エチルヘキサン酸、ナトリウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート酢酸、ナトリウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート、1,3−ジヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−2−アミニウム(S)−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−4−カルボキシレート、(S)−4−カルボキシ−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−3−イウム2−スルホエタンスルホネート、(S)−4−カルボキシ−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−3−イウムヒドロクロリド、(S)−4−カルボキシ−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−3−イウムハイドロジェンサルフェート、(S)−4−カルボキシ−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−3−イウムメタンスルホネート及び(S)−4−カルボキシ−2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)フェニル)−4−メチル−4,5−ジヒドロチアゾール−3−イウム4−メチルベンゼンスルホネート。
【表16−1】


【表16−2】


【表16−3】


【表16−4】


【表16−5】


【表16−6】


【表16−7】


【表16−8】


【表16−9】


【表16−10】


【表16−11】


【表16−12】


【表16−13】


【表16−14】


【表16−15】


【表16−16】


実施例13
(S)−4’−(OH)−DADFT−PEのカルシウム塩
【化16】

【0264】
ACN:水(4:1)にAPIを溶解し、固形の塩を加え、37℃にて一晩懸濁液を超音波処理した。真空濾過を介して固形物を回収し、真空オーブンで乾燥させた。このカルシウム塩は、マグネシウム塩候補と比べてより高い秩序を持った不規則物質と合致した。カルシウムAと表される物質は、極わずかな水溶解度を示した。約75%RHのストレスに際して明らかな潮解は認められなかった。
【0265】
このカルシウム塩のXRPDデータが2つの低い角度のピークを示したということは、マグネシウム塩候補と比べてより高い秩序を示唆している(図13)。4’−(OH)−DADFT−PEに対して1:1比の水酸化カルシウムを利用してカルシウム塩の候補を調製した。可能性のあるカルシウム塩の溶液H−NMRデータは、有機溶媒におけるその低い溶解度のために獲得されなかった。
実施例14
(S)−4’−(OH)−DADFT−PEのリジン塩
【化17】

【0266】
EtOH中のAPIに塩基水溶液を加えて透明な溶液を形成し、それを冷蔵庫に保持した。高速蒸発に続いて、イソプロピルアルコールを添加し、次いで超音波処理を行って濁った粘着性のゲルを得た。その物質を約65℃に加熱し、イソプロピルアルコールを加えた。真空濾過によって固形物を得、P上で保存した。リジン塩の候補は、約1:1のリジンとAPIの比を持つ(S)−4’−(OH)−DADFT−PEの結晶性の幾分不規則なリジン塩と合致した。その物質は極わずかな水溶解度を示した。約75%相対湿度のストレスに際して明らかな潮解は認められなかったが、その塩が油状になったということは、その吸湿性を示唆している。
【0267】
XRPD及び溶液H−NMR分光法によってリジン塩候補を特徴付けた。全体として、その物質のデータは、約1:1のリジンとAPIの比を持つ(S)−4’−(OH)−DADFT−PEの結晶性の幾分不規則なリジン塩と合致した。XRPDパターンは、(S)−4’−(OH)−DADFT−PEのリジンA塩に一致する若干の無秩序を持つ結晶性物質を示すピークの分解能を示した(図13)。
【0268】
溶液H−NMRのデータは、約8ppmに中心を持つピーク、約3.2ppmと約2.7ppmにおけるピークに基づいて、リジンに起因する約1.8〜1.3ppmの範囲内にて(S)−4’−(OH)−DADFT−PEのリジン塩と合致した。整数値は、その塩が4’−(OH)−DADFT−PEの1モル当たりおよそ1モルのリジンを含有することを示唆している。約2.50ppmでのピークは部分的に重水素を含むDMSOと関係する。
実施例15
(S)−4’−(OH)−DADFT−PEのマグネシウム塩
【化18】

【0269】
ACN:水(4:1)にAPIを溶解し、固形の塩を加え、得られたスラリーを37℃にて一晩超音波処理した。真空濾過を介して固形物を回収し、約55〜約80℃の間で回転蒸発を介して濾液を減らした。得られたマグネシウム塩候補は、(S)−4’−(OH)−DADFT−PEの非晶質又は中間相の一水和物と合致する。その物質は実質的な水溶解度(約60mg/mL)を示した。約75%RHのストレスに際して明らかな潮解は認められなかったが、相対湿度が約5%から約95%RHに上昇する際、その塩が有意な水の取り込み(約42.7重量%)を示したということは、その吸湿性を示唆している。
【0270】
4’−(OH)−DADFT−PEに対して1:1の比の水酸化マグネシウムを用いてマグネシウム塩候補を調製した。XRPD、熱重量分析(TG)、示差走査熱量測定(DSC)、水分吸着分析及びH−NMR分光法によってそれを特徴付けた。全体として、その物質のデータは、おそらく水和された又は水を含有する4’−(OH)−DADFT−PEの非晶質又は中間相の塩と合致する。相対湿度が約5%から約95%RHに上昇する際、その塩が有意な水の取り込み(約42.7重量%)を示したということは、その吸湿性を示唆している。
【0271】
XRPDのデータは、マグネシウムA塩と一致する無秩序なパターンを明らかにした。このパターンが単一の低い角度のピークを示したということは、非晶質又は中間相の物質を示唆している。
【0272】
溶液H−NMRのデータは、そのスペクトル全体にわたる有意な変化に基づいて4’−(OH)−DADFT−PE塩の形成と合致する。約8〜6ppm、約4.2〜3.0ppm及び約1.6〜1.3ppmの範囲で相当なピークのシフトが認められたが、遊離の4’−(OH)−DADFT−PEに比べて約14〜12ppmにはピークは検出されなかった。多分特定されていない不純物のために、追加の小さなピーク(約6.6ppm、約2.3ppm、約1.9ppm、及び約1.6〜1.5ppm)が認められた。このスペクトルはまた、水に関係する約3.34ppmでのピークも示した。約2.50ppmにおけるピークは、部分的に重水素を含むDMSOに関係する。約2.54ppmにおける小さなピークは重水素を含まないDMSOに起因して認められた。
【0273】
熱のデータは、溶媒和した物質又は溶媒を含有する物質と合致する。TGのデータは、約36〜約137℃の間で約4.0%の重量損失を明らかにした。その重量損失は、調製条件及びH−NMRのデータの基づいて、APIのモル当たりおよそ1モルの水の損失におそらく起因する。エタノール:水(1:1)の混合物で調製された物質のH−NMRスペクトルは、エタノールに関係するピークを示さなかったが、水に起因するピークは検出された。約137℃〜約195℃の間でのさらに小さい約1.6%の損失、それに続く約280℃(始まり)での鋭い重量損失が、おそらく分解のために認められた。
【0274】
示差走査熱量測定(DSC)曲線は、約85.0℃での最大ピークと共に、約39.2℃〜約133.6℃の間で広い吸熱を明らかにした。その事象は、約4.0%のTG損失と同時に認められ、おそらく脱溶媒和に関係する。おそらく物質の分解に伴った融解のために、約161.2℃における広がった吸熱、それに続く約173.7℃における小さな吸熱事象(最大ピーク)が検出された(図15)。
【0275】
水分吸着データは、約5%RHでの平衡に際して約0.7重量%の損失を示した。約85%RH未満では有意な約22.0%の増加が認められたが、それを超えると、その物質は追加の約20.2重量%を獲得し、合計で42.7%重量を獲得した。約85%〜約95%RHの間で平衡に達しなかったということは、さらに高い水分の取り込みが可能であることを示している。部分的な脱着は、相対湿度が約5%まで低下した際、小さなヒステリシスと共に生じた(約95%〜約5%の間で約41.2%の損失)。
実施例16
(S)−4’−(OH)−DADFT−PEのN−メチル−D−グルカミン(NMG)塩
【化19】

【0276】
APIのエタノール性溶液を塩基に加え、次いで超音波処理して透明な溶液を得た。緩慢蒸発によって粘着性物質を得て、それを横切ってN(g)を吹き込むことによって乾燥させた。MeOHを加えた。超音波処理に続いて、EtOAcを添加することによって若干の沈殿物を得た。約5.5時間スラリーにすることによって粘性の物質を得、それをEtOAcで洗浄し、真空濾過を介して単離した。NMG塩の候補は、NMGとAPIの約1:1の比を持つ4’−(OH)−DADFT−PEの不規則で溶媒和されていないNMG塩と合致する。その物質は実質的な水溶解度(約60mg/mL)を示した。約75%RHのストレスに際して明らかな潮解は認められなかったが、その塩は油状になった。この塩は、相対湿度が約5%から約95%RHに上昇する際、有意な水の取り込み(約61.7%)を示したということは、その吸湿性を示唆している。
【0277】
その物質は少量の遊離のN−メチル−D−グルカミンを含有した。X線粉末回折(XRPD)、熱重量分析(TG)、示差走査熱量測定(DSC)、水分吸着分析及びH−NMR分光法によってその塩を特徴付けた。この塩は、相対湿度が約5%から約95%RHに上昇する際、有意な水の取り込み(約61.7%)を示したということは、その吸湿性を示唆している。
【0278】
XRPDのパターンは、4’−(OH)−DADFT−PEのNMG塩に合致する不規則物質を示すピークの分解能を示した(図13)。試料のXRPDパターンはまた、遊離のNMGに関係する追加のピークも示した。
【0279】
H−NMRデータは、約3.9〜3.8ppmと約3.0〜2.8ppmに範囲におけるピーク、約4.7ppmを中心とするピーク、及びNMGに起因する約3.10ppmと約2.48ppmにおけるピークに基づいて4’−(OH)−DADFT−PEのNMG塩に合致する。整数値は、この塩が4’−(OH)−DADFT−PEの1モル当たりおよそ1モルのN−メチル−D−グルカミンを含有することを示唆している。約1.9ppmにおける追加の小さなピークが、おそらく特定されていない不純物のために観察された。約2.50ppmにおけるピークは部分的に重水素を含むDMSOと関係する。
【0280】
熱のデータは、溶媒和していない物質に合致する。TGのデータは約222℃を超えて極わずかな重量損失を明らかにした。約222℃(始まり)における鋭い重量損失はおそらく分解が原因で認められた。DSC曲線は、約92.3℃で小さな吸熱、それに続く約109.5℃での吸熱(最大ピーク)を示した。この2つの連続した事象は、その塩の融解と直後の、その塩に存在する遊離のN−メチル−D−グルカミンの融解及び/又は融解を伴った可能性のある再結晶に関係し得る。約180℃で始まる熱変動はおそらく分解が原因で認められた(図17)。
【0281】
水分吸着データは、約5%RHにおける平衡の際、約0.5重量%の損失を示した。約85%RH未満では約34.7重量%の有意な獲得が認められ、それを超えると、その物質は追加の約27.0重量%を獲得し、合計約61.7%を獲得した。約65〜約95%RHの間で平衡に達しなかったということは、さらに高い水分の取り込みが可能であることを示している。部分的な脱着は、相対湿度が約5%まで低下する際、小さなヒステリシスと共に生じた(約95%〜約5%の間で約60.6重量%の損失)。
実施例17
(S)−4’−(OH)−DADFT−PEのトロメタミン塩
【化20】

【0282】
APIのエタノール性溶液に塩基を加えた。室温にて約3時間撹拌することによって透明な溶液が得られた。この溶液の高速蒸発によってAPIのトロメタミン塩が得られた。トロメタミン塩の候補は、トロメタミンとAPIの約1:1の比を持つ4’−(OH)−DADFT−PEの結晶性の溶媒和していないトロメタミン塩と合致する。その塩は有意な水溶解度(約124mg/mLを超える)を示し、約75%RHストレスの際、明らかな潮解を示さなかった。この塩は、約65%RH未満では小さな水の取り込み(約1.5重量%)を示したが、それを超えると50.3重量%を獲得し、マグネシウム塩及びNMG塩の候補と比べて低い吸湿性を示した。
【0283】
X線粉末回折(XRPD)、熱重量分析(TG)、示差走査熱量測定(DSC)、水分吸着分析及びH−NMR分光法によってその塩を特徴付けた。2つの試料のXRPDパターンは、4’−(OH)−DADFT−PEのトロメタミンA塩に合致する結晶性物質を示すピークの分解能を示した。
【0284】
H−NMRのデータは、トロメタミンに起因する約3.42ppmを中心とする追加のピークに基づいて4’−(OH)−DADFT−PEのトロメタミン塩に合致する。整数値は、この塩がAPIの1モル当たりおよそ1モルのトロメタミンを含有することを示唆している。おそらく特定されていない不純物のために、約1.9ppmにおける追加の小さなピークが観察された。そのH−NMRスペクトルはそれぞれ、水及び部分的に重水素を含むDMSOに起因する約3.33ppm及び約2.50ppmにおけるピークも示した。
【0285】
熱のデータは溶媒和していない物質に合致する。DSC曲線は、おそらく融解による吸熱に先立った小さな肩部分を伴った約110.1℃における鋭い非対称性の吸熱を明らかにした。約203.5℃における広い吸熱はおそらく物質の分解に関係する(図19)。
【0286】
水分吸着データは、約5%RHにおける平衡の際、約0.7重量%の小さな損失を示した。約65%RH未満では約1.5重量%の小さな獲得が認められ、それを超えると、物質は約50.3重量%を獲得し、合計約51.8%を獲得した。約75%RHを超えて平衡に達しなかったということは、さらに高い水分の取り込みが可能であることを示している。部分的な脱着は、相対湿度が約5%まで低下する際、小さなヒステリシスと共に生じた(約95%〜約5%の間で約48.4重量%の損失)。
【0287】
トロメタミン塩の水和形態を調製する試みで、追加の実験を行った。トロメタミンA塩の候補を1日の相対湿度ストレスに供した。高温での約75%RHストレスの際、それが油状になることが示された。しかしながら、乾燥剤上での1時間の乾燥によってトロメタミンAと合致する結晶性物質を結果的に生じた。
実施例18
種々の溶媒における塩の溶解度
【0288】
視覚検査に基づいた溶液を提供するのに使用された総溶媒に基づいて概算溶解度を算出する。撹拌しながら、秤量した試料に溶媒の小さなアリコートを加える。利用される溶媒部分の体積及び遅い溶解速度のために実際の溶解度はさらに大きくなる可能性がある。表16にて最も近いmg/mLに溶解度を報告する。
【表17】

実施例19
DADFTポリエステルの除鉄効率
【0289】
Cebus apellaサルをWorld Wide Primates(フロリダ州、マイアミ)から入手した。オスSprague−DawleyラットはHarlan Sprague−Dawley(インディアナ州、インディアナポリス)から購入した。超高純度の塩はJohnson Matthey Electronics(英国、ロイストン)から入手した。血液学的試験及び生化学的試験はすべてAntech Diagnostics(フロリダ州、タンパ)によって行われた。
【0290】
鉄を過負荷していないラットにおける胆管へのカニューレ挿管:カニューレ挿管は以前、Bergeron,RJ et al.,Blood 1993,81,2166−2173及びBergeron,RJ et al.,Ann.N.Y Acad.Sci.1990,612,378−393に記載されている。胆汁試料は、オスSprague−Dawleyラット(400〜450g)から3時間間隔で24時間回収した。尿試料は24時間目に採取した。試料の回収及び取扱は以前記載された57’58のとおりである。
【0291】
薬剤の調製及び投与:除鉄実験では、単回50、150又は300モル/kg用量の薬剤が、po及び/又はscでラットに与えられた。これらの化合物は、300モル/kg用量のみ水溶液として、又は(2)当該化合物の一ナトリウム塩(1当量のNaOHへの遊離の酸の付加によって調製された)として投与された。キレート化剤は、150tmol/kgの用量でpo及びscでサルに与えられた。ラットに関して薬剤が調製され;2は水溶液としてpo及びscで与えられた。
【0292】
除鉄効率の計算:所与の化合物によって除かれる実際の鉄の量を除かれるべきである理論的な量で割ることによってICEを算出する。キレート化剤の理論的な鉄排出量は、2:1の配位子:鉄の錯体に基づいて生成した。Bergeron,RJ et al.,J.Med.Chem.1999,42,2432−2440に示されたようにラット及びサルにおける効率を算出した。データは、平均値+平均値の標準誤差として表し;p値は、不均等な変動が想定されるスチューデントの片側t検定を介して生成し、0.05未満のp値を有意とみなした。
【0293】
鉄を過負荷していないげっ歯類におけるキレート化剤が誘導する鉄のクリアランス及び除鉄効率:用量反応試験:いつでも動物でキレート可能で利用可能な鉄の量は限られているので、鉄のクリアランス、及び故に配位子の除鉄効率は飽和可能である。この現象を管理する鍵は配位子の鉄動態及び用量反応特性に見つけ出すことができる。この点で、鉄を過負荷していない胆管にカニューレ挿管したげっ歯類モデルにて、poで与えられる各化合物の相当する鉄動態と共に用量反応を評価した。結果を表17にて以下に示す。
【表18】

【0294】
鉄を過負荷していないげっ歯類及び鉄を過負荷した霊長類における除鉄効率:経口投与対皮下投与:同様のプロトコールを実施して結果の一貫性を確認し、種を越えた化合物の効果を比較した。群当たり3〜8匹のCebus apellaサルとオスSprague−Dawleyラットを用いた。結果を表18にて以下に示す。
【表19】

【0295】
上記のプロトコールとデータは、Bergeron,RJ et al.,“Design, Synthesis, and Testing of Non−Nephrotoxic Desazadesferrithiocin Polyether Analogues,”J.Med.Chem.2008,51(13),3913−23から引き出した。組織分布、毒性及び薬物動態に関する追加のデータは本出版物に見い出すことができる。
実施例20
ランタニド及びアクチニドのキレート化剤としてのDADFTポリエステルの塩
【0296】
当業者に明らかな適応を任意で伴って、Rao L,Choppin GR及びBergeron RJ,Radiochim.Acta.88,851−856(2000)にて採用されたプロトコールを用いてランタニド及びアクチニドのキレート化剤としての本発明に係る化合物の活性を確認し得る。式Iの塩及び多形体は、このアッセイで有効性を示すことが期待される。
【0297】
当該技術で既知であり、上述された方法を用いて以下の化合物が一般に作製される。これらの化合物は作製されると、上述の実施例で作製されたものに類似する活性を有することが予想される。。
【0298】
以下の表記はイオン性の配置を意図的に含まず、塩は塩基と対を成す酸化合物として示される。この方法では、各構造は、所与の条件のセットのもと、たとえば、水溶液において形成される相当するイオンを表すように意図される。通常、塩基は1以上の化合物のカルボキシル基とイオン結合し、1モル当量以上の水を放出する。特定の状況下では、窒素が酸塩形成の部位であってもよい。当業者が認識するように、各イオンの好ましい酸化状態、塩の形成条件(溶媒を含む)などに基づいた1:1、2:1及び3:1を含む対イオンの異なった比によって、安定な配置及び固体形態を形成してもよい。そのような形態すべてがここでは熟考される。
【化21】







【0299】
前述の記載から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、その精神と範囲から逸脱することなく、本発明の種々の変更と改変を行ってその種々の用途及び条件に適合させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの固形組成物又はその多形体:
【化1】

(式中、R、R、R、R及びRは、独立して水素、ヒドロキシ、アルキル、アリールアルキル、アルコキシ及びCHO((CHO)から選択され、そのいずれもが置換されていてもよく、R、R及びRは、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル及び低級アルコキシから選択され、mは0〜8の整数であり、nは0〜8の整数であり、Xは対イオンである)。
【請求項2】
Xが、ベタイン、水酸化コリン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、ヒドロキシエチルモルフォリン、ヒドロキシエチルピロリジン、イミダゾール、N−メチル−d−グルカミン(NMG)、N,N’−ジベンジル−エチレンジアミン、N,N’−ジエチル−エタノールアミン、ピペラジン、トリエタノールアミン、トロメタミン、Ca(OH)、L−リジン、L−アルギニン、Mg(OH)、酢酸マグネシウム、KOH、NaOH、Zn(OH)、酢酸亜鉛、Zn(OH)/Mg(OH)、EDA、L−ヒスチジン、4−(2−ヒドロキシエチルモルフォリン)、1−(2−ヒドロキシエチルピロリジン)、1−(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジン、2−エチルヘキサン酸カリウム、NaOAc、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、1,2−EDSA、HCl、HSO、MSA及びp−TSA一水和物から選択される請求項1に記載の固形組成物。
【請求項3】
前記対イオンXが、リジン、N−メチル−D−グルカミン(NMG)、トロメタミン、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛及びピペラジンから選択される請求項2に記載の固形組成物。
【請求項4】
が水素及びメチルから選択される請求項3に記載の固形組成物。
【請求項5】
及びRが独立して水素及びメトキシから選択される請求項4に記載の固形組成物。
【請求項6】
がヒドロキシである請求項5に記載の固形組成物。
【請求項7】
、R、R及びRが、水素及びCHO((CHO)から選択される請求項6に記載の固形組成物。
【請求項8】
構造式II
【化2】

を有する請求項7に記載の固形組成物。
【請求項9】
前記対イオンXが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛及びピペラジンから選択される請求項8に記載の固形組成物。
【請求項10】
mが2であり、nが3である請求項9に記載の固形組成物。
【請求項11】
前記対イオンがマグネシウム塩又はその多形体である請求項10に記載の固形組成物。
【請求項12】
マグネシウム3’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテルヒドロキシド又はその多形体。
【請求項13】
前記多形体が形態Aである請求項12に記載の多形体。
【請求項14】
前記形態Aが、図7に示されるものと少なくとも80%同一であるX線粉末回折のパターンを有する請求項13に記載の多形体。
【請求項15】
前記多形体が形態Bである請求項12に記載の多形体。
【請求項16】
前記形態Bが、図8に示されるものと少なくとも80%同一であるX線粉末回折のパターンを有する請求項15に記載の多形体。
【請求項17】
図10に示されるものと少なくとも80%同一である示差走査熱量測定(DSC)の温度記録図を有する請求項12に記載の固形組成物。
【請求項18】
図11に示されるものと少なくとも80%同一である動的蒸気吸着/脱着(DVS)スペクトルを有する請求項17に記載の固形組成物。
【請求項19】
前記多形体が形態Cである請求項12に記載の多形体。
【請求項20】
前記形態Cが、図9に示されるものと少なくとも80%同一であるX線粉末回折パターンを有する請求項19に記載の多形体。
【請求項21】
請求項12に記載の塩の非晶質形態。
【請求項22】
図7に示されるものと少なくとも80%同一であるX線粉末回折パターンを特徴とする請求項21に記載の非晶質形態。
【請求項23】
生理学的pHに近いpHにて0.3mg/mL〜70mg/mLの間の水溶解度を有する請求項12に記載の固形組成物。
【請求項24】
生理学的pHに近いpHにて≧40mg/mLの水溶解度を有する請求項23に記載の固形組成物。
【請求項25】
生理学的pHに近いpHにて≧50mg/mLの水溶解度を有する請求項24に記載の固形組成物。
【請求項26】
模擬胃液pHにて0.05mg/mL〜250mg/mLの水溶解度を有する請求項12に記載の固形組成物。
【請求項27】
生理学的pHに近いpHにて0.3mg/mL〜70mg/mLの間の水溶解度を有し、模擬胃液pHにて0.05mg/mL〜250mg/mLの水溶解度を有する請求項12に記載の固形組成物。
【請求項28】
構造式III
【化3】

を有する請求項7に記載の固形組成物。
【請求項29】
前記対イオンXがリジン、NMG、トロメタミン、カルシウム、マグネシウムから選択される請求項28に記載の固形組成物。
【請求項30】
mが2であり、nが3である請求項28に記載の固形組成物。
【請求項31】
前記多形体が前記ナトリウム塩の化学量論的水和物である請求項28に記載の塩の多形体。
【請求項32】
前記多形体が一水和物である請求項31に記載の多形体。
【請求項33】
前記多形体が二水和物である請求項31に記載の多形体。
【請求項34】
トロメタミン4’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテルヒドロキシド又はその多形体。
【請求項35】
図13に示されるものと少なくとも80%同一であるX線粉末回折のパターンを有する請求項34に記載の固形組成物。
【請求項36】
図19に示されるものと少なくとも80%同一である示差走査熱量測定の温度記録図を有する請求項34に記載の固形組成物。
【請求項37】
図20に示されるものと少なくとも80%同一である動的蒸気吸着/脱着(DVS)のスペクトルを特徴とする請求項34に記載の固形組成物。
【請求項38】
生理学的pHに近いpHにて0.3mg/mL〜150mg/mLの間の水溶解度を有する請求項28に記載の固形組成物。
【請求項39】
少なくとも1つの薬学上許容可能な賦形剤と一緒に請求項1に記載の固形組成物を含む医薬組成物。
【請求項40】
固形組成物が、構造式II:
【化4】

を有し、式中、mが2であり、nが3であり、Xがカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及びピペラジンから選択される請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
少なくとも1つの薬学上許容可能な賦形剤と一緒に、マグネシウム3’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテルヒドロキシド又はその多形体を含む医薬組成物。
【請求項42】
固形組成物が、構造式III
【化5】

を有し、式中、mが2であり、nが3であり、Xがリジン、NMG、トロメタミン、カルシウム、マグネシウムから選択される請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
少なくとも1つの薬学上許容可能な賦形剤と一緒に、トロメタミン4’−デスアザデスフェリチオシンポリエーテルヒドロキシド又はその多形体を含む医薬組成物。
【請求項44】
請求項1に記載の固形組成物の治療上有効な量を対象に投与することを含む、対象において三価の金属のキレート化、金属イオン封鎖又は除去に関与する病態を治療する方法。
【請求項45】
前記三価の金属が鉄である請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記病態が鉄の過負荷である請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記病態が、生体における鉄の不均等配分又は再配分の結果である請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記病態が、無トランスフェリン血症、無セルロプラスミン血症及びフリードライヒ失調症から選択される請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記病態が輸血の鉄の過負荷の結果である請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記病態が、ベータサラセミアメジャー及びインターメディア、鎌状赤血球貧血、ダイヤモンド−ブラックファン貧血、鉄芽球性貧血、慢性溶血性貧血、治療不実施白血病、骨髄移植並びに骨髄異形成症候群から選択される請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記病態が、食物中の鉄の過剰吸収を生じる遺伝性の症状である請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記病態が、遺伝性ヘモクロマトーシス及び晩発性皮膚ポルフィリン症から選択される請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記病態が、糖尿病である請求項45に記載の方法。
【請求項54】
前記病態が、過剰な食物中の鉄の吸収を生じる後天性の疾患である請求項44に記載の方法。
【請求項55】
前記病態が、肝疾患である請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記疾患が肝炎である請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記病態がランタニド又はアクチニドの過負荷である請求項44に記載の方法。
【請求項58】
鉄又はそのほかの三価の金属の体外排泄を誘導する、請求項1に記載の固形組成物の治療上有効な量が、前記対象における0.2mg/kg/日より多い請求項44に記載の方法。
【請求項59】
腎臓、骨髄、胸腺、肝臓、脾臓、心臓又は副腎に臨床的に明らかな毒性効果を及ぼすことなく、少なくとも10mg/kg/日の用量にて、請求項1に記載の固形組成物の治療上有効な量を与えることができる請求項44に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2011−528037(P2011−528037A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518838(P2011−518838)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/050532
【国際公開番号】WO2010/009120
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(511012879)フェロキン・バイオサイエンシーズ・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】FerroKin Biosciences, Inc.
【Fターム(参考)】