説明

金属ストリップのコーティングにポリシラザンを使用する方法。

金属ストリップのコーティングにポリシラザンを使用する方法。
一般式1
-(SiR'R''-NR''')n- (1)
で表されるポリシラザンまたはポリシラザンの混合物を或る溶剤に溶かした溶液、および少なくとも1種の触媒を含む、金属コーティング用のコーティングであって、式中、R'、R''、R'''は、同一であるかまたは異なっており、そして、互いに独立して水素または場合により置換されたアルキル基、アリール基、ビニル基もしくは(トリアルコキシシリル)アルキル基であり、nは整数であって、前記ポリシラザンが150〜150000 g/molの数平均分子量を有するように定められる、前記のコーティング。さらに本発明は、前記コーティングの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、コイルコーティング工程における金属ストリップのコーティングにポリシラザンを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アルミニウム、スチールまたは亜鉛製の薄い金属ストリップは、通常、いわゆるコイルコーティング工程によりコーティングされる。この工程においては、ロールを通して、または、スプレーにより、塗料が金属ストリップに塗布され、乾燥セクションにおいて、該塗料が加熱硬化され、そしてその後、コーティングされたストリップが巻き取られる。
【0003】
このような塗料に課される要件は、金属ストリップは塗布の後においてのみ機械加工され、次の形態にされるので、まず第一に、機械的な変形性が高いこと、および、該ストリップは高速度でコイルコーティング装置を通り抜けるので、高温で塗料が急速に硬化すること、である。硬化は通常、200〜350℃のオーブン温度で行われ、PMT(Peak Metal Temperature:ピーク金属温度)は約160〜260℃に達する(非特許文献1)。
【0004】
通常、コイルコーティングに使用される塗料は、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、またはフルオロカーボン樹脂のような有機バインダー系を含み、時として、(特にコーティングの耐食性に関する)要件を満たすために、プライマーとしておよび上塗り塗料として異なる2種の塗料を使用しなければならない。
【0005】
公知の塗料の不利な点の1つは、これらの有機物特性のために耐候性が低いことであり、その結果、特に屋外で使用した場合に、バインダーマトリックスが時間の経過とともに分解してしまう。
【0006】
公知の塗料系の別の不利な点としては、これらの塗料に、金属ストリップを加工できるようにできるだけ柔軟性を持たせようとするために、引っかき抵抗性が低いことが挙げられる。
【0007】
屋外で使用した場合に、例えば、酸性雨または鳥の糞による汚染の結果として起こるように、これらが溶剤または酸もしくはアルカリ性物質と接触した場合においては、慣用のバインダー系の耐薬品性もまた十分ではない。
【0008】
ポリシラザンコーティングが金属を腐食から保護できることが文献により公知であるが、これまでは、長時間かけて硬化を行わなければならず、従って、コイルコーティング工程には適さないコーティング方法のみが開示されてきた。
【0009】
特許文献1には、高温での処理により二酸化ケイ素の塗膜に転化するポリシラザンを用いての、陽極酸化アルミニウムの表面保護が記載されている。実施例1では、詳細に特定されていないポリシラザンでアルミニウムを スプレーコートし、その後、80℃で30分間乾燥し、そして、引き続いて、400℃で2時間焼成する。この手間のかかる硬化工程および高い温度のために、この方法はコイルコーティングには適さないものである。
【0010】
特許文献2には、ポリシラザンを含み、防食を担保するコーティング系の使用方法が開示されている。この系は、ポリシラザンの異なる混合物を含む少なくとも2つの層を有する。そしてこの場合には、割れのないコーティングを得るために、ポリシラザンの混合比および層の構造を互いに調節することが重要である。記載されている実施例では、スピンコーティングにより層をスチール板上に塗布し、1つの層を塗布した後に、300℃で1時間硬化させる。このような方法は、硬化時間が長く、さらにはコーティング装置を複数回経ることが必要であるため、コイルコーティングによる金属の迅速なコーティングには適していない。
【0011】
特許文献3には、ポリシラザン溶液を種々の素地のコーティングに使用する方法が記載されている。そして、実施例7〜13には、アルミニウム上に防食層を製造する方法が記載されている。ポリシラザン溶液の塗付はフロー(Fluten)により行われ、そして、コーティングの硬化は120℃における1時間の加熱により行われる。従って、この方法は、金属ストリップのコイルコーティングへの使用には適していない。
【特許文献1】特開2001-172 795号公報
【特許文献2】米国特許第6,627,559号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/039 904号パンフレット
【非特許文献1】Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、コイルコーティング工程のためのコーティングを開発することを目的とし、該コーティングは、非常に良好な防食性を有し、高い耐光性および耐候性を有し、そしてさらに金属における引っかき傷を防ぐものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、高温での短い硬化により、ポリシラザンを用いてコイルコーティングによるコーティングが高品質に製造できることが見出され、このコーティングは、非常に丈夫であるにも拘わらず十分に柔軟であり、そして、機械的ストレス下でも非常に良好な金属ストリップ上への付着を示し、これらの要件を満たすものである。
【0014】
従って、本発明は、一般式1
-(SiR'R''-NR''')n- (1)
で表されるポリシラザンまたはポリシラザンの混合物を或る溶剤に溶かした溶液、および少なくとも1種の触媒を含む、金属コーティング用のコーティングを提供するものであり、式中、R'、R''、R'''は、同一であるかまたは異なっており、そして、互いに独立して水素または場合により置換されたアルキル基、アリール基、ビニル基もしくは(トリアルコキシシリル)アルキル基であり、nは整数であって、前記ポリシラザンが150〜150000 g/molの数平均分子量を有するように定められる。
【0015】
ポリシラザンであって、式中、R'、R''、R'''が互いに独立して水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、フェニル、ビニル、3-(トリエトキシシリル)-プロピル、および3-(トリメトキシシリルプロピル)からなる群から選択される基である、前記のポリシラザンが、特に好適である。
【0016】
1つの好ましい実施態様においては、式2
【0017】
【化1】

で表されるパーヒドロポリシラザンであって、nが整数であり、そして、nがポリシラザンが150〜150000 g/molの数平均分子量を有するように定められ、そして、溶剤および触媒を含有する、前記のパーヒドロポリシラザンが本発明のコーティングに使用される。
【0018】
別の好ましい実施態様においては、本発明のコーティングは、式(3)
-(SiR'R''-NR''')n-(SiR*R**-NR***)p - (3)
で表されるポリシラザンであって、
式中、R'、R''、R'''、R*、R**およびR***が互いに独立して水素または場合により置換されたアルキル基、アリール基、ビニル基もしくは(トリアルコキシシリル)アルキル基であり、nおよびpは整数であって、そして、nが、ポリシラザンが150〜150000 g/molの数平均分子量を有するように定められる、前記のポリシラザンを含む。
【0019】
以下:
- R'、R'''およびR***が水素であり、そして、R''、R*およびR**がメチルである;
- R'、R'''およびR***が水素であり、そして、R''、R*がメチルであり、そして、R**がビニルである;
- R'、R'''、R*およびR***が水素であり、そして、R''およびR**がメチルである、
化合物が特に好ましい。
【0020】
同様に、式(4)
-(SiR'R''-NR''')n-(SiR*R**-NR***)p -(SiR1R2-NR3)q- (4)
で表されるポリシラザンであって、
式中、R'、R''、R'''、R*、R**、R***、R1、R2およびR3が互いに独立して水素または場合により置換されたアルキル基、アリール基、ビニル基もしくは(トリアルコキシシリル)アルキル基であり、n、pおよびqは整数であって、そして、nが、ポリシラザンが150〜150000 g/molの数平均分子量を有するように定められる、前記のポリシラザンが好ましくは使用される。
【0021】
R'、R'''およびR***が水素であり、R''、R*、R**およびR2がメチルであり、R3が(トリエトキシシリル)プロピルであり、そして、R1がアルキルまたは水素である化合物が、特に好ましい。
【0022】
一般に、溶剤におけるポリシラザンの割合は、1〜50重量%、好ましくは3〜30重量%、特に好ましくは5〜20重量%のポリシラザンである。
【0023】
ポリシラザン調合物用に好適な溶剤には、特に、反応性基(例えば、ヒドロキシル基またはアミン基)を含まない無水の有機溶剤が含まれる。例えば、これらとしては、脂肪族または芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル(例えば、酢酸エチルまたは酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトンまたはメチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフランまたはジブチルエーテル)、並びに、モノ-およびポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(グライム)、またはこれらの溶剤の混合物が挙げられる。
【0024】
ポリシラザン調合物の別の成分は、例えば、調合物の粘性、素地の濡れ性(Untergrundbenetzung)、皮膜形成、もしくは蒸発挙動に影響を与える添加剤、または、例えば、SiO2、TiO2、ZnO、ZrO2またはAl2O3のような無機系ナノ粒子である。
【0025】
使用される触媒としては、例えば、有機アミン、酸、または金属もしくは金属塩、または、これらの化合物の混合物が挙げられる。
【0026】
触媒は、ポリシラザンの重量を基準として、好ましくは0.001〜10%、特に、0.01〜6%、特に好ましくは、0.1〜3%の量で使用される。
【0027】
アミン触媒の例としては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、アニリン、2,4-ジメチルピリジン、4,4-トリメチレンビス-(1-メチルピペリジン)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N-ジメチルピペラジン、シス-2,6-ジメチルピペラジン、トランス-2,5-ジメチルピペラジン、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、ステアリルアミン、1,3-ジ-(4-ピペリジル)プロパン、N,N-ジメチルプロパノールアミン、N,N-ジメチルヘキサノールアミン、N,N-ジメチルオクタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、1-ピペリジンエタノール、4-ピペリジノールが挙げられる。
【0028】
有機酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸が挙げられる。
【0029】
触媒としての金属および金属化合物の例としては、パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトネート、プロピオン酸パラジウム、ニッケル、ニッケルアセチルアセトネート、銀紛、銀アセチルアセトネート、白金、白金アセチルアセトネート、ルテニウム、ルテニウムアセチルアセトネート、ルテニウムカルボニル、金、銅、銅アセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネート、およびアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)が挙げられる。
【0030】
使用する触媒系に応じて、湿気または酸素の存在がコーティングの硬化において役割を果たし得る。例えば、適当な触媒系を選択することにより、急速な硬化が、高いもしくは低い雰囲気湿度において、または、高いもしくは低い酸素含有量において達成される。当業者であれば、これらの影響を認識し、適当な最適化方法によって雰囲気条件を調節するであろう。
【0031】
本発明はさらに、コイルコーティング工程により、ポリシラザン溶液を用いて金属ストリップをコーティングする方法を提供する。
【0032】
コイルコーティング工程は、例えば、「Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben, Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1998」に詳細に記載されている。この文献の記載事項は、参照することにより本明細書に組み込まれる。この工程の実施および最適化については、当業者によく知られている。従って、本発明においては、この工程のより詳細な説明については行わない。
【0033】
最後に、本発明は、本発明に従ってコーティングされた金属ストリップを提供する。
【0034】
本発明のポリシラザンに基づくコーティングは、通常のコイルコーティング工程により塗布され、すなわち、コイルへの塗布は、ロールを通して、スプレーにより行うか、または浸漬浴におけるコーティングにより行うかのいずれかによって行われる。塗布は、コイルの片面に行うか、または表面および裏面に同時に行うことができる。その後、ストリップが乾燥セクションに送られる。
【0035】
コーティングの塗布前に、最初にプライマーコートを塗布することができ、これにより、金属ストリップへのポリシラザン皮膜の付着が改善する。典型的なプライマーは、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル-メチルジメトキシシランのようなシランを基礎とするものである。
【0036】
ポリシラザンは、高温において非常に短時間で硬化させることができ、それにより、乾燥セクションにおいて十分な硬化が達成される。ポリシラザンは非常に温度安定性であるため、慣用の塗料系よりも高い硬化温度も可能である。この温度に関しては、通常、金属ストリップの熱変形性によって制限が課されるのみである。
【0037】
コイルコーティング工程におけるポリシラザンコーティングの硬化は、150〜500℃、より好ましくは180〜350℃、特に好ましくは200〜300℃のオーブン温度で行われる。乾燥時間は、皮膜の厚さに応じて通常10〜120秒である。金属ストリップの厚さおよび性質ならびに乾燥セクションの構成に応じて、ピーク金属温度(PMT)は、100〜400℃、好ましくは150〜300℃、特に好ましくは200〜260℃に達する。慣用の乾燥による硬化の他に、IRまたはNIR技術に基づく輻射型乾燥機(Trocknungsstrahlern)の使用も可能である。この場合には、12〜1.2マイクロメートルまたは1.2〜0.8マイクロメートルの波長領域において実施される。典型的な輻射強度は、5〜1000 kW/m2の範囲内である。
【0038】
ポリシラザン調合物を用いるコーティングの後に、さらに後処理を施すことができ、それによりコーティングの表面エネルギーを適合させる。これにより、親水性、疎水性または親油性のいずれかの表面が生じ、これは汚染傾向に影響を及ぼすものである。
【0039】
コーティングに使用される金属としては、例えば、アルミニウム、スチール、亜鉛めっきスチール、亜鉛、マグネシウム、チタン、またはこれらの金属の合金が好ましい。また、金属または金属ストリップは、例えば、クロメート処理、クロメートフリー前処理、陽極処理により、または金属酸化物皮膜での蒸着により、前処理を行うことができる。
【0040】
本発明のポリシラザンコーティングの結果、慣用のコイルコーティング塗料よりも顕著に薄い層でも十分である非常に良好な防食性が得られる。硬化ポリシラザンコーティングの層は、通常、0.1〜10、好ましくは0.5〜5、特に好ましくは1〜3マイクロメーターの厚さを有する。
【0041】
使用する溶剤の量が減少するために、この方法では材料の消費が減少し、生態学的に有利である。さらに、薄いポリシラザン層でも十分に高い保護効果を有するので、下塗り塗料の必要もない。
【0042】
そして、該コーティングの無機的な性質のために、UVおよび天気に対して顕著な抵抗性を示す。
【0043】
本発明に従ってコーティングされたコイルは、種々の用途、例えば、建築領域、車両の製造、または家庭用具の製造に使用することができる。これらは、例えば、天井または壁の素材、窓枠、ロール・シャッター、反射体、車体部品または家庭用具の部品である。
【実施例】
【0044】
使用したパーヒドロポリシラザンは、クラリアント・ジャパン社の製品である。使用した溶剤は、ジ-n-ブチルエーテル(表示:NL)である。溶液には、パーヒドロポリシラザンを基準として0.75重量%のプロピオン酸パラジウムが触媒として含まれる。
【0045】
実施例における硬化条件は、それらをコイルコーティング装置において比較できるように選択した。
【0046】
以下の実施例において、部およびパーセント表示は重量を基準とする。
【0047】
実施例1 (アルミニウム板のコーティング)
0.5 mmの厚さを有するアルミニウム板を、20%パーヒドロポリシラザン溶液NL120A-20(クラリアント・ジャパン製)を満たした浸漬装置中に浸漬し、120 cm/分の速度で引き上げる。コーティングの後に、250℃の温度に予熱された強制空気乾燥オーブン(Umlufttrockenschrank)に該板を直接導入し、そこで60秒間置く。ピーク金属温度(PMT)は240℃に達する。冷却後、澄んだ、透明の、そして、割れのないコーティングが生じる。
【0048】
実施例2 (アルミニウム板のコーティング)
0.5 mmの厚さを有するアルミニウム板を、10%パーヒドロポリシラザン溶液NL120A-10(クラリアント・ジャパン製)を満たした浸漬装置中に浸漬し、120 cm/分の速度で引き上げる。コーティングの後に、250℃の温度に予熱された強制空気乾燥オーブンに該板を直接導入し、そこで30秒間置く。ピーク金属温度(PMT)は240℃に達する。冷却後、澄んだ、透明の、そして、割れのないコーティングが生じる。
【0049】
実施例3:(陽極酸化されたアルミニウム板のコーティング)
0.5 mmの厚さを有する陽極酸化アルミニウム板を、20%パーヒドロポリシラザン溶液NL120A-20(クラリアント・ジャパン製)を満たした浸漬装置中に浸漬し、120 cm/分の速度で引き上げる。コーティングの後に、250℃の温度に予熱された強制空気乾燥オーブンに該板を直接導入し、そこで60秒間置く。ピーク金属温度(PMT)は240℃に達する。冷却後、澄んだ、透明の、そして、割れのないコーティングが生じる。
【0050】
実施例4:(表面が改質されたアルミニウム板のコーティング)
予め表面にTiO2およびSiO2の酸化物皮膜が塗布されており、0.5 mmの厚さを有するアルミニウム板を、20%パーヒドロポリシラザン溶液NL120A-20(クラリアント・ジャパン製)を満たした浸漬装置中に浸漬し、120 cm/分の速度で引き上げる。コーティングの後に、250℃の温度に予熱された強制空気乾燥オーブンに該板を直接導入し、そこで60秒間置く。ピーク金属温度(PMT)は240℃に達する。冷却後、澄んだ、透明の、そして、割れのないコーティングが生じる。
【0051】
実施例5: (IR硬化を用いるアルミニウム板の表面改質)
予め表面にTiO2およびSiO2の酸化物皮膜が塗布されており、0.5 mmの厚さを有するアルミニウム板を、10%パーヒドロポリシラザン溶液NL120A-20(クラリアント・ジャパン製)を満たした浸漬装置中に浸漬し、120 cm/分の速度で引き上げる。コーティングの後に直接、IR乾燥機(タングステンランプ)において、板に下面から50秒間照射する。この時にピーク金属温度(PMT)は240℃に達する。冷却後、澄んだ、透明の、そして、割れのないコーティングが生じる。
【0052】
実施例6 (亜鉛板のコーティング)
0.8 mmの厚さを有する亜鉛板を、10%パーヒドロポリシラザン溶液NL120A-10(クラリアント・ジャパン製)を満たした浸漬装置中に浸漬し、120 cm/分の速度で引き上げる。コーティングの後に、260℃の温度に予熱された強制空気乾燥オーブンに該板を直接導入し、そこで30秒間置く。ピーク金属温度(PMT)は230℃に達する。冷却後、澄んだ、透明の、そして、割れのないコーティングが生じる。
【0053】
実施例7 (亜鉛板のコーティング)
0.8 mmの厚さを有する亜鉛板を、20%パーヒドロポリシラザン溶液NL120A-20(クラリアント・ジャパン製)を満たした浸漬装置中に浸漬し、120 cm/分の速度で引き上げる。コーティングの後に、260℃の温度に予熱された強制空気乾燥オーブンに該板を直接導入し、そこで60秒間置く。ピーク金属温度(PMT)は240℃に達する。冷却後、澄んだ、透明の、そして、割れのないコーティングが生じる。
【0054】
実施例8 (亜鉛板のコーティング)
0.8 mmの厚さを有する亜鉛板を、20%パーヒドロポリシラザン溶液NL120A-20(クラリアントジャパン製)とミネラルスピリット(Petroleumbenzin)におけるポリメチルシラザン(米国特許第6,329,487号明細書の実施例1に記載される方法に従って製造)の10%溶液との混合物(比率は2.83:1)を満たした浸漬装置中に浸漬し、120 cm/分の速度で引き上げる。コーティングの後に、260℃の温度に予熱された強制空気乾燥オーブンに該板を直接導入し、そこで60秒間置く。ピーク金属温度(PMT)は240℃に達する。冷却後、澄んだ、透明の、そして、割れのないコーティングが生じる。
【0055】
実施例9 (腐食試験)
実施例3〜5から得られるコーティングされた亜鉛板の耐食性について、ISO 6270-4に従う凝縮水・気象テスト(Kondenswasser-Wechselklima-Test:KFW)により試験を行った。負荷を25サイクル継続した後にプローブの評価を行った。以下の結果が得られた。
【0056】
【表1】

実施例10 (引っかき抵抗性の測定)
引っかき抵抗性を、00番のスチールウールでの3Nの力による複数回の荷重(引っかきの往復回数5回)によって測定した。引っかき度について、以下の基準に従って視覚的に評価を行った:非常に良好(引っかき傷なし)、良好(わずかな引っかき傷)、良(明らかな引っかき傷)、可(激しい引っかき傷)、および不可(非常に激しい引っかき傷)。
【0057】
【表2】

実施例11(付着性)
コーティングの付着性を、DIN EN ISO 2409に従う碁盤目試験により測定した(付着性を0(最高スコア)〜5(最低スコア)の基準で評価)。
【0058】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1
-(SiR'R''-NR''')n- (1)
で表されるポリシラザンまたはポリシラザンの混合物を或る溶剤に溶かした溶液、および少なくとも1種の触媒を含む、金属コーティング用のコーティングであって、式中、R'、R''、R'''は、同一であるかまたは異なっており、そして、互いに独立して水素または場合により置換されたアルキル基、アリール基、ビニル基もしくは(トリアルコキシシリル)アルキル基であり、nは整数であって、前記ポリシラザンが150〜150000 g/molの数平均分子量を有するように定められる、前記のコーティング。
【請求項2】
R'、R''、R'''が互いに独立して水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、フェニル、ビニル、3-(トリエトキシシリル)-プロピル、および3-(トリメトキシシリルプロピル)からなる群から選択される基であることを特徴とする、請求項1記載のコーティング。
【請求項3】
ポリシラザンが式2
【化1】

で表されるパーヒドロポリシラザンであることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1つに記載のコーティング。
【請求項4】
ポリシラザンが、式(3)
-(SiR'R''-NR''')n-(SiR*R**-NR***)p - (3)
で表され、式中、R'、R''、R'''、R*、R**およびR***が互いに独立して水素または場合により置換されたアルキル基、アリール基、ビニル基もしくは(トリアルコキシシリル)アルキル基であり、nおよびpは整数であって、そして、nが、ポリシラザンが150〜150000 g/molの数平均分子量を有するように定められることを特徴とする、請求項1記載のコーティング。
【請求項5】
- R'、R'''およびR***が水素であり、そして、R''、R*およびR**がメチルであるか;
- R'、R'''およびR***が水素であり、そして、R''、R*がメチルであり、そして、R**がビニルであるか;または
- R'、R'''、R*およびR***が水素であり、そして、R''およびR**がメチルである、
ということを特徴とする、請求項4記載のコーティング。
【請求項6】
ポリシラザンが式(4)
-(SiR'R''-NR''')n-(SiR*R**-NR***)p -(SiR1R2-NR3)q- (4)
で表され、式中、R'、R''、R'''、R*、R**、R***、R1、R2およびR3が互いに独立して水素または場合により置換されたアルキル基、アリール基、ビニル基もしくは(トリアルコキシシリル)アルキル基であり、n、pおよびqは整数であって、そして、nが、ポリシラザンが150〜150000 g/molの数平均分子量を有するように定められることを特徴とする、請求項1記載のコーティング。
【請求項7】
R'、R'''およびR***が水素であり、R''、R*、R**およびR2がメチルであり、R3が(トリエトキシシリル)プロピルであり、そして、R1がアルキルまたは水素であることを特徴とする、請求項6記載のコーティング。
【請求項8】
ポリシラザン溶液が、1〜50重量%、好ましくは3〜30重量%、特に好ましくは5〜20重量%のポリシラザンを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1つに記載のコーティング。
【請求項9】
パーヒドロポリシラザン溶液が0.001〜10重量%の触媒を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1つに記載のコーティング。
【請求項10】
触媒として、有機アミン、酸、金属、金属塩、またはこれらの化合物の混合物が使用されることを特徴とする、請求項9記載のコーティング。
【請求項11】
溶剤として、反応性基を含まない無水の有機溶剤が使用されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1つに記載のコーティング。
【請求項12】
コイルコーティング工程による金属ストリップのコーティングに、請求項1〜11のいずれか1つに記載のコーティングを使用する方法。
【請求項13】
一般式1
-(SiR'R''-NR''')n- (1)
で表されるポリシラザンまたはポリシラザンの混合物を或る溶剤に溶かした溶液、および少なくとも1種の触媒を含む溶液であって、式中、R'、R''、R'''は、同一であるかまたは異なっており、そして、互いに独立して水素または場合により置換されたアルキル基、アリール基もしくは(トリアルコキシシリル)アルキル基であって、nは整数であって、ポリシラザンが150〜150000 g/molの数平均分子量を有するように定められる前記の溶液を、金属ストリップに塗布し、その後、150〜500℃の温度で、または、IRもしくはNIR照射を用いることによりコーティングを硬化させることを特徴とする、金属ストリップを連続的にコーティングする方法。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1つに記載のコーティングを用いてコーティングされた金属または金属ストリップ。
【請求項15】
金属がアルミニウム、スチール、亜鉛めっきスチール、亜鉛、マグネシウム、またはチタンの合金を含むことを特徴とする、請求項14記載の金属または金属ストリップ。
【請求項16】
コーティングの塗布の前に、金属ストリップがクロメート処理、クロメートフリーの前処理、陽極処理により、または金属酸化物皮膜での蒸着により前処理されていることを特徴とする、請求項14または15のいずれか1つに記載の金属または金属ストリップ。

【公表番号】特表2008−519870(P2008−519870A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540529(P2007−540529)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011426
【国際公開番号】WO2006/050813
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(398025878)クラリアント・インターナシヨナル・リミテッド (74)
【Fターム(参考)】