説明

金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液及びその製造方法

【課題】 安定で、かつ、金属濃度が高い金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液及びこのような金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液を効率よく製造することができる方法を提供する。
【解決手段】 金属ナノ粒子及び非水系有機溶媒を含む金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液であって、上記金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液は、固形分中の金属濃度が90質量%以上であり、上記非水系有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ、比重が0.9以上のエステル系、ケトン系、アルコール系又は高級カルボン酸系の有機溶媒であることを特徴とする金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒径が数nm〜数10nm程度の金属粒子が溶液中で均一に分散した状態で存在するいわゆる金属ナノ粒子溶液は、その特徴を活かして種々の分野で利用されており、例えば、金属薄膜の製造に用いられている。このような金属薄膜は、各種物品に対してめっき調の金属光沢を付与するために使用されるほか、導電性を有することを利用して、半導体基板、プリント基板、電子部品等における電極や配線等の導体回路を形成するために使用されている。
【0003】
このような導体回路の形成には、金属ナノ粒子溶液が使用される場合がある。そして、このような金属ナノ粒子溶液のなかでも、基板等に塗布して導電性薄膜を形成する際の作業性の点から、金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液が好適に用いられており、例えば、金属ナノ粒子、高分子顔料分散剤及び有機溶媒を含む溶液が提案されている。このような金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液を塗布して金属薄膜を形成する場合、金属ナノ粒子溶液中の高分子量顔料分散剤を分解又は揮発させ、金属同士を融着させる必要があることから、通常250〜500℃程度で数時間かけて焼成されている。
【0004】
近年、作業効率、コスト削減を考慮して、加熱条件を穏やかにした場合にも良好な金属薄膜を得ることができる金属ナノ粒子溶液の開発が求められており、このようなものを開発するためには、金属ナノ粒子溶液における固形分中の金属濃度をより高めることが考えられる。また、焼成後の導電回路のパターン形状を向上させるためにも、金属ナノ粒子溶液中の金属濃度をより高めることが望まれている。
【0005】
金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液を製造する方法として、(1)水系溶媒を留去して得られたゾルに、非水系有機溶媒を加える方法(例えば、特許文献1)、(2)水系溶媒/非水系溶媒の混合溶媒を用い、水系溶媒中で生成した金属ナノ粒子を非水系溶媒中に相間移動させる方法(例えば、特許文献2)が知られている。
【0006】
しかしながら、(1)の方法の場合には、金属ナノ粒子を非水系有機溶媒に再溶解する際に、金属ナノ粒子が凝集するおそれがあった。(2)の方法の場合には、用いる保護樹脂の量が(1)の方法と比べて多くなるため、金属ナノ粒子溶液中の金属濃度を充分に高めることができなかった。従って、金属含有量が90質量%以上のような高濃度の有機溶媒系の金属ナノ粒子溶液は未だに得られていなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−80647号公報
【特許文献2】特開平11−319538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記に鑑み、安定で、かつ、金属濃度が高い金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液及びこのような金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液を効率よく製造することができる方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、金属ナノ粒子及び非水系有機溶媒を含む金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液であって、上記金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液は、固形分中の金属濃度が90質量%以上であり、上記非水系有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ、比重が0.9以上のエステル系、ケトン系、アルコール系又は高級カルボン酸系の有機溶媒であることを特徴とする金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液である。
【0010】
上記非水系有機溶媒は、比重が1以上であることが好ましい。
上記金属ナノ粒子は、2種の金属M及びMからなる合金ナノ粒子であることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、上述の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液の製造方法であって、上記金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液の製造方法は、水と、水と非混和性であり、かつ、比重が0.9以上のエステル系、ケトン系、アルコール系又は高級カルボン酸系の非水系有機溶媒とを混合させた懸濁液中、保護コロイドの存在下で金属イオンを還元して、水相と非水系有機溶媒相とからなる溶液を得る工程(1)、及び、工程(1)により得られた溶液の水相と非水系有機溶媒相とを分離する工程(2)を含むことを特徴とする金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0012】
本発明の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液は、上記金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液に含まれる固形分100質量%中の金属濃度が90質量%以上である。
上記固形分中の金属濃度が90質量%以上であるため、固形分中の金属以外の成分(例えば、保護コロイド等)の濃度が10質量%以下のような少ない濃度となり、その結果、上記金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液を塗布し、焼成することにより金属薄膜を形成する場合、焼成により揮発する成分の量を少なくすることが可能となる。このため、得られる金属薄膜において、膜中のヘコミ、割れ等が生じることを防止することができる。
【0013】
また、公知の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液は、上記固形分中の金属濃度が90質量%未満であるため、金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液の塗布により金属薄膜を形成する場合に、加熱温度の低下及び/又は加熱時間の短縮を行った場合、安定して導電性を有する金属性被膜を得ることが困難であったが、本発明は、90質量%以上のものであるため、金属薄膜を形成する場合に、加熱温度の低下及び/又は加熱時間の短縮を行った場合にも安定して導電性を有する金属性被膜を形成することができる。好ましくは、固形分中の金属濃度が92質量%以上であり、より好ましくは、92〜98質量%である。
【0014】
本明細書において、固形分中の金属濃度とは、金属ナノ粒子溶液の固形分中に占める金属の質量%を意味する。固形分量及び金属量は、100〜150℃及び数100℃でそれぞれ加熱して得られる残分を測定することにより求めることができる。具体的には、TG−DTAを用いて、140℃まで10℃/分で昇温した後、30分間、140℃を維持して、まず固形分量を求める。その後、500℃まで再び10℃/分で昇温した後、30分間、500℃を維持して金属量を求める。本明細書における金属濃度の測定は、特に断りのない限り、この方法を用いて行ったものである。
【0015】
本発明の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液は、金属ナノ粒子及び非水系有機溶媒を含むものである。
本発明における金属ナノ粒子は、金属単体のナノ粒子であってもよく、2種の金属M及びMからなる合金ナノ粒子であってもよい。合金とは、2種類の金属が原子レベルから、層状、グラニュラー状、アモルファス状等のミクロなレベルで混合した状態になっていることを意味する。なお、上記混合は全体が同じ状態ではなく、ある部分は層状が支配的になっており、また、ある部分は、アモルファス状が支配的になっているといったように、部分部分でその構成が異なっているものと推察される。なお、上記金属ナノ粒子については、後述する製造方法で詳細に説明する。
【0016】
上記非水系有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ、比重が0.9以上のエステル系、ケトン系、アルコール系又は高級カルボン酸系の有機溶媒である。
本明細書中、水と非混和性の非水系有機溶媒とは、水と相溶せず、水と混合した場合には水相と非水系有機溶媒相とに分離するものをいう。非水系有機溶媒が水と相溶したり、比重が0.9未満であったりすると、後述する金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液の製造時に非水系有機溶媒が上層(水相)に移動する。これにより、下層は金属と保護コロイドの2成分のみからなることになり、保護コロイド量が少ないと金属をナノサイズで保持することができなくなる。このため、特開平11−319538号公報に記載されている方法では、固形分中の金属含有率を90質量%以上にすることができなかった。
【0017】
上記非水系有機溶媒の比重は、1以上であることが好ましく、1〜1.2であることがより好ましい。なお、本発明における非水系有機溶媒の比重は、20℃における比重である。
【0018】
本発明においては、非水系有機溶媒としてエステル系、ケトン系、アルコール系又は高級カルボン酸系の有機溶媒を用いる。例えば、四塩化炭素(比重1.59)、クロロホルム(比重1.489)等のハロゲン系溶媒の比重は0.9以上であるが、保護コロイドとの相溶性がよくないため、金属ナノ粒子と相溶せず、好適な性質を有する金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液とすることができない。本発明においては、通常、有機溶媒として使用されない高級カルボン酸を、上記非水系有機溶媒として使用することができる。
【0019】
上記エステル系溶媒としては、酢酸ベンジル(分子量150.18、沸点214.9℃、比重1.06)、酢酸イソボルネオール(分子量196.29、沸点227℃、比重0.98〜0.99)、酢酸テルピニル(分子量196.29、沸点220℃、比重0.956〜0.966)、安息香酸メチル(分子量136.15、沸点199℃、比重1.09)、安息香酸エチル(分子量150.18、沸点213〜215℃、比重1.05)、アントラニル酸メチル(分子量151.18、沸点237(256)℃、比重1.168)、N−メチルアントラニル酸メチル(分子量165.21、沸点256(255)℃、比重1.1348)等が挙げられる。
【0020】
上記ケトン系溶媒としては、アセトフェノン(分子量120.15、沸点202℃、比重1.03)、メチルアセトフェノン(分子量134.18、沸点226℃、比重1.00)等が挙げられる。
上記アルコール系の有機溶媒としては、テルピネオール(異性体含有)(分子量154.25、沸点217〜219℃、比重0.93)、ジヒドロテルピネオール(分子量156.27、沸点約200℃、比重0.907以上)等が挙げられる。
上記高級カルボン酸系の有機溶媒としては、ナフテン酸(比重0.978)、エチルヘキサン酸(分子量144.22、沸点227.6℃、比重0.906)等が挙げられる。上記非水系有機溶媒のなかでも、金属ナノ粒子の分散安定性を向上・維持できる点から、安息香酸メチル、安息香酸エチル、アントラニル酸メチル、N−メチルアントラニル酸メチル、ナフテン酸が好ましい。
【0021】
上記非水系有機溶媒は、金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液が使用される用途等に応じて適宜選択すればよい。例えば、金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液をスクリーン印刷やインジェクションにより基材に塗布する場合には、上記非水系有機溶媒は、沸点が200〜260℃のものを用いることが好ましい。この場合、溶剤が揮発しにくいため作業中に金属ナノ粒子溶液の粘度が上がらず、良好に作業を行うことができる。このような沸点の非水系有機溶媒としては、テルピネオール、ジヒドロテルピネオールが挙げられる。上記沸点は、200〜220℃であることがより好ましい。
【0022】
本発明の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液には、保護コロイドが含有されていることが好ましい。保護コロイドを含むことにより、非水系有機溶媒溶液中の金属ナノ粒子が安定化されることになる。
【0023】
上記保護コロイドとしては、疎水コロイドを安定化させる作用を有するものであれば使用可能であり、例えば、セルロース、デンプン、繊維等の天然高分子;ポリスチレン、ナイロン、ポリアセタール等の合成高分子;アルミナ、シリカ、粘土鉱物等の複合酸化物;界面活性剤、クエン酸、クエン酸の塩等を使用可能である。本発明においては、特に、高分子量顔料分散剤が好ましい。
【0024】
上記高分子量顔料分散剤は、高分子量重合体に顔料表面に対する親和性の高い官能基が導入されている両親媒性の共重合体である。このものは、塗料用等の樹脂組成物に対して充分な相溶性を有することから、有機顔料又は無機顔料の分散剤として好適であり、通常は、顔料ペーストの製造時に顔料分散剤として使用されているものである。
【0025】
上記高分子量顔料分散剤は、分散対象物である顔料粒子との相互作用に基づいて、その機能を発揮する。上記分散対象物である顔料粒子は、一般に、粒径が100μm〜数100μmの金属酸化物や有機化合物である。すなわち、上記高分子量顔料分散剤は、このような顔料粒子の特性に適合した分散機能性高分子である。一方、金属ナノ粒子の粒径は、数nm〜数10nmであり、その粒径は、顔料粒子のそれの約1000分の1〜100分の1であって、その体積は、顔料粒子の10−9〜10−6倍程度である。
【0026】
上記高分子量顔料分散剤としては特に限定されないが、以下に説明するものを好適に使用することができる。すなわち;
(1)顔料親和性基を主鎖及び/又は複数の側鎖に有し、かつ、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を有する櫛形構造の高分子
(2)主鎖中に顔料親和性基からなる複数の顔料親和部分を有する高分子
(3)主鎖の片末端に顔料親和性基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子
【0027】
ここで、上記顔料親和性基とは、顔料の表面に対して強い吸着力を有する官能基をいい、例えば、オルガノゾルにおいては、第3級アミノ基、第4級アンモニウム、塩基性窒素原子を有する複素環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基;ヒドロゾルにおいては、フェニル基、ラウリル基、ステアリル基、ドデシル基、オレイル基等を挙げることができる。本発明において、上記顔料親和性基は、金属表面に対して強い親和力を示す。上記高分子量顔料分散剤は、上記顔料親和性基を有することにより、金属の保護コロイドとして充分な性能を発揮することができる。
【0028】
上記櫛形構造の高分子(1)は、上記顔料親和性基を有する複数の側鎖とともに、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を主鎖に結合した構造のものであり、これらの側鎖があたかも櫛の歯のように主鎖に結合されているものである。本明細書中、上述の構造を櫛形構造と称する。上記櫛形構造の高分子(1)において、上記顔料親和性基は、側鎖末端に限らず、側鎖の途中や主鎖中に複数存在していてもよい。なお、上記溶媒和部分は、溶媒に親和性を有する構造をいう。上記溶媒和部分は、例えば、水溶性の重合鎖、親油性の重合鎖等から構成されている。
【0029】
上記櫛形構造の高分子(1)としては特に限定されず、例えば、特開平5−177123号公報に開示されている1個以上のポリ(カルボニル−C〜C−アルキレンオキシ)鎖を有し、これらの各鎖が3〜80個のカルボニル−C〜C−アルキレンオキシ基を有しかつアミド又は塩架橋基によってポリ(エチレンイミン)に結合されている構造のポリ(エチレンイミン)又はその酸塩からなるもの;特開昭54−37082号公報に開示されているポリ(低級アルキレン)イミンと、遊離のカルボン酸基を有するポリエステルとの反応生成物よりなり、各ポリ(低級アルキレン)イミン連鎖に少なくとも2つのポリエステル連鎖が結合されたもの;特公平7−24746号公報に開示されている末端にエポキシ基を有する高分子量のエポキシ化合物に、アミン化合物と数平均分子量300〜7000のカルボキシル基含有プレポリマーとを同時に又は任意順に反応させて得られる顔料分散剤等を挙げることができる。
【0030】
上記櫛形構造の高分子(1)は、顔料親和性基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではないおそれがある。3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となるおそれがあり、また、金属ナノ粒子の粒度分布が広くなるおそれがある。より好ましくは、25〜1500個である。
【0031】
上記櫛形構造の高分子(1)は、溶媒和部分を構成する側鎖が1分子中に2〜1000存在するものが好ましい。2未満であると、分散安定性が充分ではないおそれがある。1000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となるおそれがあり、また、金属ナノ粒子の粒度分布が広くなるおそれがある。より好ましくは、5〜500である。
【0032】
上記櫛形構造の高分子(1)は、数平均分子量が2000〜1000000であることが好ましい。2000未満であると、分散安定性が充分ではないおそれがある。1000000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となるおそれがあり、また、金属ナノ粒子の粒度分布が広くなるおそれがある。より好ましくは、4000〜500000である。
【0033】
上記主鎖中に顔料親和性基からなる複数の顔料親和部分を有する共重合体(2)は、複数の顔料親和性基が主鎖にそって配置されているものであり、上記顔料親和性基は、例えば、主鎖にペンダントしているものである。本明細書中、上記顔料親和部分は、上記顔料親和性基が1つ又は複数存在して、顔料表面に吸着するアンカーとして機能する部分をいう。
【0034】
上記共重合体(2)としては、例えば、特開平4−210220号公報に開示されているポリイソシアネートと、モノヒドロキシ化合物及びモノヒドロキシモノカルボン酸又はモノアミノモノカルボン酸化合物の混合物、並びに、少なくとも1つの塩基性環窒素とイソシアネート反応性基とを有する化合物との反応物;特開昭60−16631号公報、特開平2−612号公報、特開昭63−241018号公報に開示されているポリウレタン/ポリウレアよりなる主鎖に複数の第3級アミノ基又は塩基性環式窒素原子を有する基がペンダントした高分子;特開平1−279919号公報に開示されている水溶性ポリ(オキシアルキレン)鎖を有する立体安定化単位、構造単位及びアミノ基含有単位からなる共重合体であって、アミン基含有単量単位が第3級アミノ基若しくはその酸付加塩の基又は第4級アンモニウムの基を含有しており、該共重合体1g当たり0.025〜0.5ミリ当量のアミノ基を含有する共重合体;特開平6−100642号公報に開示されている付加重合体からなる主鎖と、少なくとも1個のC〜Cアルコキシポリエチレン又はポリエチレン−コプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる安定化剤単位とからなり,かつ、2500〜20000の質量平均分子量を有する両親媒性共重合体であって、主鎖は、30質量%までの非官能性構造単位と、合計で70質量%までの安定化剤単位及び官能性単位を含有しており、上記官能性単位は、置換されているか又は置換されていないスチレン含有単位、ヒドロキシル基含有単位及びカルボキシル基含有単位であり、ヒドロキシル基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とスチレン基及びヒドロキシル基とプロピレンオキシ基又はエチレンオキシ基との比率が、それぞれ、1:0.10〜26.1;1:0.28〜25.0;1:0.80〜66.1である両親媒性高分子等を挙げることができる。
【0035】
上記共重合体(2)は、顔料親和性基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではないおそれがある。3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となるおそれがあり、また、金属ナノ粒子の粒度分布が広くなるおそれがある。より好ましくは、25〜1500個である。
【0036】
上記共重合体(2)は、数平均分子量が2000〜1000000であることが好ましい。2000未満であると、分散安定性が充分ではないおそれがある。1000000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となるおそれがあり、また、金属ナノ粒子の粒度分布が広くなるおそれがある。より好ましくは、4000〜500000である。
【0037】
上記主鎖の片末端に顔料親和性基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子(3)は、主鎖の片末端のみに1つ又は複数の顔料親和性基からなる顔料親和部分を有しているが、顔料表面に対して充分な親和性を有するものである。
【0038】
上記直鎖状の高分子(3)としては特に限定されず、例えば、特開昭46−7294号公報に開示されている一方が塩基性であるA−Bブロック型高分子;米国特許第4656226号明細書に開示されているAブロックに芳香族カルボン酸を導入したA−Bブロック型高分子;米国特許第4032698号明細書に開示されている片末端が塩基性官能基であるA−Bブロック型高分子;米国特許第4070388号明細書に開示されている片末端が酸性官能基であるA−Bブロック型高分子;特開平1−204914号公報に開示されている米国特許第4656226号明細書に記載のAブロックに芳香族カルボン酸を導入したA−Bブロック型高分子の耐候黄変性を改良したもの等を挙げることができる。
【0039】
上記直鎖状の高分子(3)は、顔料親和性基が1分子中に2〜3000個存在するものが好ましい。2個未満であると、分散安定性が充分ではないおそれがある。3000個を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となるおそれがあり、また、金属ナノ粒子の粒度分布が広くなるおそれがある。より好ましくは、5〜1500個である。
【0040】
上記直鎖状の高分子(3)は、数平均分子量が1000〜1000000であることが好ましい。1000未満であると、分散安定性が充分ではないおそれがある。1000000を超えると、粘度が高すぎて取り扱いが困難となるおそれがあり、また、金属ナノ粒子の粒度分布が広くなるおそれがある。より好ましくは、2000〜500000である。
上記高分子顔料分散剤には、低極性のものと極性のものとがあるが、本発明では非水系有機溶媒を使用するため、低極性のものであることが好ましい。
【0041】
上記低極性高分子顔料分散剤の市販されているものとして、ディスパービック110、ディスパービックLP−6347、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック160、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック161、ディスパービック166、ディスパービック168、ディスパービック182、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2050、ディスパービック2150、ディスパービック2070、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S(以上ビックケミー社製)、ソルスパース24000、ソルスパース28000、ソルスパース32500、ソルスパース32550、ソルスパース32600、ソルスパース31845、ソルスパース26000、ソルスパース36600、ソルスパース37500、ソルスパース35100、ソルスパース38500(以上ルーブリゾール社製)、EFKA−1101、EFKA−1120、EFKA−1125、EFKA−4046、EFKA−4047、EFKA−4080、EFKA−4050、EFKA−4055、EFKA−4008、EFKA−4009、EFKA−4010、EFKA−4015、EFKA−4400、EFKA−4401、EFKA−4402、EFKA−4403、EFKA−4020(以上エフカ アディテブズ社製)、フローレンD−90、フローレンG−700、フローレンG−820、フローレンG−600、フローレンDOPA−15B、フローレンDOPA−17、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−33、フローレンDOPA−44、フローレンNC−500、フローレンTG−710(以上共栄社化学社製)、ディスパロン2150、ディスパロン1210(楠本化成製)、アジスパーPB711、アジスパーPA111、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPN411(味の素ファインテクノ社製)等を挙げることができる。
【0042】
また、上記極性高分子顔料分散剤の市販されているものとして、ディスパービックR、ディスパービック154、ディスパービック180、ディスパービック187、ディスパービック184、ディスパービック183、ディスパービック185、ディスパービック190、ディスパービック191、ディスパービック192、ディスパービック193(以上ビックケミー社製)、ソルスパース20000、ソルスパース27000、ソルスパース12000、ソルスパース40000、ソルスパース41090、ソルスパース44000、ソルスパースHPA34(以上ルーブリゾール社製)、EFKA−4500、EFKA−4510、EFKA−4530、EFKA−4540、EFKA−4550、EFKA−4560、EFKA−4570、EFKA−4580、EFKA−1501、EFKA−1502(以上エフカ アディテブズ社製)、フローレンTG−720W、フローレンTG−730W、フローレンTG−740W、フローレンTG−745W、フローレンTG−750W、フローレンTG−760W、フローレンG−700DMEA、フローレンG−700AMP、フローレンG−WK−10、フローレンG−WK−13E(以上共栄社製)、ディスパーエイドW−30、ディスパーエイドW−39(エレメンティス社製)、K−SPERSE XM2311(キング社製)、ネオレッツBT−24、ネオレッツBT−175(以上ゼネカ社製)、SMA1440H(アトケム社製)、オロタン731DP、オロタン963(ローム・アンド・ハース社製)、ヨネリン(米山化学製)、サンスパールPS−2(三洋化成製)、トライトンCF−10(ユニオンカーバイド社製)、ジョンクリル678、ジョンクリル679、ジョンクリル683、ジョンクリル611、ジョンクリル680、ジョンクリル682、ジョンクリル52、ジョンクリル57、ジョンクリル60、ジョンクリル63、ジョンクリル70、ジョンクリルHPD−71、ジョンクリル62(ジョンソンポリマー社製)サーフィノールCT−111(エアプロダクツ社製)等を挙げることができる。
【0043】
上記高分子量顔料分散剤は、顔料親和性基が側鎖に存在し、溶媒和部分を構成する側鎖を有するグラフト構造のもの〔上記櫛形構造の高分子(1)〕;主鎖に、顔料親和性基を有するもの〔上記共重合体(2)及び上記直鎖状の高分子(3)〕であるので、金属ナノ粒子の分散性が良好であり、金属ナノ粒子に対する保護コロイドとして好適である。
【0044】
上記高分子量顔料分散剤の含有量は、上記金属ナノ粒子100質量部に対して3〜10質量部が好ましい。3質量部未満であると、上記金属ナノ粒子の分散性が不充分であるおそれがある。10質量部を超えると、塗料や樹脂成型物に配合した際に、バインダー樹脂に対する高分子量顔料分散剤の混入量が多くなり、物性等に不具合が生じやすくなる。
【0045】
本発明の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記非水系有機溶媒以外の溶媒を含んでいてもよい。その他の溶媒としては、水溶性アルコール、水溶性ケトン、水溶性エステル、水溶性エーテル等が挙げられる。なかでも、水溶性アルコールを含むことが好ましく、水相中で金属イオンが反応して生成した金属粒子が油相中に相間移動するときに、金属粒子の大きさがナノサイズで安定化するのに有効に働くものとすることができる。
【0046】
上記水溶性アルコールとしては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、メトキシプロパノール、ブチルカルビトール等が挙げられる。上記水溶性アルコールの含有量としては、上記非水系有機溶媒と水溶性アルコールとの合計100質量%に対して75質量%未満とすることが好ましい。75質量%を超えると、金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液における固形分中の金属濃度を90%以上にすることができなくなるおそれがある。より好ましくは、50質量%未満である。
【0047】
本発明における金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液の製造方法としては、水と、水と非混和性であり、かつ、比重が0.9以上のエステル系、ケトン系、アルコール系又は高級カルボン酸系の非水系有機溶媒とを混合させた懸濁液中、保護コロイドの存在下で金属イオンを還元して、水相と非水系有機溶媒相からなる溶液を得る工程(1)、及び、工程(1)により得られた溶液の水相と非水系有機溶媒相とを分離する工程(2)を含む製造方法が好適である。このような金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液の製造方法も本発明の1つである。
【0048】
上記水と非混和性であり、かつ、比重が0.9以上のエステル系、ケトン系、アルコール系又は高級カルボン酸系の非水系有機溶媒としては、上述したものと同様であり、1種又は2種以上を用いることができる。
【0049】
上記工程(1)において、上記懸濁液中の水/水と非混和性の非水系有機溶媒の体積比は、2/98〜98/2であることが好ましい。より好ましくは40/60〜97/3である。すなわち、上記懸濁液は、水中に非水系有機溶媒の液滴が懸濁する場合であってもよく、その逆に非水系有機溶媒中に水が懸濁する場合であってもよい。
【0050】
上記保護コロイドとしては、上述したものと同様であり、1種又は2種以上を用いることができる。また、保護コロイドの配合量は、上述の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液で述べた量と同様である。
【0051】
上記懸濁液は、更に、水及び非水系有機溶媒以外にその他の溶媒を含んでいてもよい。上記その他の溶媒としては、上述の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液で述べたものと同様のものを挙げることができ、水溶性アルコールが好ましい。また、上記水溶性アルコールの含有量は、上述の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液で述べた量と同様である。
【0052】
本発明においては、上記金属としては特に限定されず、例えば、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、銅、ニッケル、ビスマス、インジウム、コバルト、亜鉛、タングステン、クロム、鉄、モリブデン、タンタル、マンガン、スズ、チタン等を挙げることができる。
【0053】
本発明において、合金ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液を製造する場合には、上記工程(1)において、保護コロイドの存在下で金属Mイオン及び金属Mイオンを含有する2種金属溶液から金属水酸化物類を析出させた後に、還元反応させることが好ましい。またこの場合、任意に選択した2種類の金属を使用して合金ナノ粒子含有溶液を調製することができるわけではなく、適した組み合わせの金属を使用することによって合金ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液を調製することができる。以下に、金属M及び金属Mとして選択することができる組み合わせについて述べる。
【0054】
上述した金属のうち、例えば、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、銅、ニッケル、ビスマス、スズのイオンは、高分子量顔料分散剤存在下で還元剤を使用することによって、金属水酸化物類を析出させた後、金属に還元される金属イオンである(以下、これらを単独還元性金属イオンという)。このような金属イオンを金属Mイオンとする場合、金属Mイオンは、金属Mとは異なる単独還元性金属イオンである。
【0055】
上記単独還元性金属イオンのなかでも、銀、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、ニッケル、コバルトのイオンは、還元された金属が、別の還元反応の触媒として機能する(以下、これらを単独還元性及び触媒作用性金属イオンという)。単独還元性及び触媒作用性金属イオンのなかの銀、パラジウム、ニッケルのイオンは、還元反応の触媒能において特に優れている。
【0056】
上記金属Mイオンが上記単独還元性及び触媒作用性金属イオンである場合、金属Mイオンとしては、上記単独還元性金属イオンに加えて、インジウム、亜鉛、タングステン、クロム、鉄、モリブデン、タンタル、マンガン、チタンのイオン(以下、これらをその他の金属イオンという)であってもよい。
【0057】
上記金属Mイオンが上記単独還元性及び触媒作用性金属イオンである場合の、金属Mイオンは、いずれも金属イオンから金属への還元反応の標準電位が−1.6V以上の値を示す金属イオンである。よって、例えばナトリウムやカリウム等のアルカリ金属やマグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属やセリウムやプラセオジムといったランタノイドやアルミニウムは、金属イオンから金属への還元反応の標準電位が−1.6Vよりも低いのでこれらを金属Mイオンとして使用することはできない。
【0058】
ここで、標準電位は酸化還元反応の方向性を判断する指標であって、イオン化傾向を定量化したものととらえることができる。すなわち、標準電位が高い値のイオンほど、還元反応が進行しやすいことを示す。標準電位はデータとして種々の書物に記載されているが、pH及びイオン価数により、その値は変化する。チタンはこれらの条件を選択することにより、標準電位が−1.6Vを超えることができるので、上記その他の金属に含まれる。
【0059】
上記金属イオンは、水に可溶性の金属化合物を溶解して調製することができる。上記金属化合物としては上記金属を含む水溶性のものであれば特に限定されない。上記金属化合物の例として、上記金属が金である場合にはテトラクロロ金(III)酸四水和物(塩化金酸)、銀である場合には硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀(IV)、白金である場合にはヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物(塩化白金酸)、塩化白金酸カリウム、パラジウムである場合には塩化パラジウム(II)二水和物、ロジウムである場合には三塩化ロジウム(III)三水和物、銅である場合には塩化銅(II)二水和物、酢酸銅(II)一水和物、硫酸銅(II)等をそれぞれ挙げることができる。
【0060】
また、上記金属がニッケルである場合、上記金属化合物の例として、塩化ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)六水和物、臭化ニッケル(II)、フッ化ニッケル(II)四水和物、ヨウ化ニッケル(II)n水和物等のハロゲン化物;硝酸ニッケル(II)六水和物、過塩素酸ニッケル(II)六水和物、硫酸ニッケル(II)六水和物、リン酸ニッケル(II)n水和物、塩基性炭酸ニッケル(II)等の鉱酸化合物;水酸化ニッケル(II)、酸化ニッケル(II)、酸化ニッケル(III)等のニッケル無機化合物;酢酸ニッケル(II)四水和物、乳酸ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)二水和物、酒石酸ニッケル(II)三水和物、クエン酸ニッケル(II)n水和物等のニッケル有機酸化合物等を挙げることができる。上記ニッケル有機酸化合物は、例えば、塩基性炭酸ニッケルと有機酸から調製することができる。なかでも、溶解性の高い酢酸ニッケル(II)四水和物、塩化ニッケル(II)六水和物、硝酸ニッケル(II)六水和物が好ましい。
【0061】
また、上記金属がビスマスである場合、上記金属化合物の例として、塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、臭化ビスマス、ケイ酸ビスマス、水酸化ビスマス、三酸化ビスマス、硝酸ビスマス、次硝酸ビスマス、オキシ炭酸ビスマス等の無機系ビスマス含有化合物;乳酸ビスマス、トリフェニルビスマス、没食子酸ビスマス、安息香酸ビスマス、クエン酸ビスマス、メトキシ酢酸ビスマス、酢酸ビスマス、ギ酸ビスマス、2,2−ジメチロールプロピオン酸ビスマス等の他、例えば、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス等の(塩基性)ビスマス化合物と有機酸とを水性媒体中で混合・分散することによって製造できるような有機酸変性ビスマス(国際公開WO99/31187号公報参照)等の有機系ビスマス含有化合物等を挙げることができる。なかでも、溶媒として水を含む場合には、水への溶解性の観点から、塩化ビスマスや硝酸ビスマスが好ましい。
【0062】
更に、上記金属がそれぞれ下記の金属である場合についての金属化合物の例を挙げると、インジウムの場合、塩化インジウム(III)、硝酸インジウム(III)三水和物、ヨウ化インジウム(I);コバルトの場合、塩化コバルト(II)六水和物、酢酸コバルト(II)四水和物、過塩素酸コバルト(II)六水和物、硝酸コバルト(II)六水和物;亜鉛の場合、塩化亜鉛(II)、酢酸亜鉛(II)二水和物、硝酸亜鉛(II)六水和物;タングステンの場合、タングステン酸(VI)ナトリウム二水和物、無水タングステン酸、タングステン酸;クロムの場合、塩化クロム(II)、塩化クロム(III)六水和物、硝酸クロム(III)九水和物;鉄の場合、塩化鉄(II)四水和物、塩化鉄(III)六水和物、硝酸鉄(III)九水和物、過塩素酸鉄(II)六水和物;モリブデンの場合、モリブデン(VI)酸ナトリウム二水和物、モリブデン酸、塩化モリブデン(V);タンタルの場合、タンタル酸(V)ナトリウム、塩化タンタル(V);マンガンの場合、塩化マンガン(II)四水和物、酢酸マンガン(II)四水和物、酢酸マンガン(III)二水和物、硝酸マンガン(II)六水和物;スズの場合、酢酸スズ(II)、塩化スズ(II)二水和物となる。
【0063】
上記金属化合物は、金属ナノ粒子が単体金属のナノ粒子である場合には、50mmol/l以上の濃度となるように水で溶解されることが好ましい。50mmol/l未満であると、固形分中の金属濃度が90質量%以上の金属ナノ粒子溶液を得ることができないことがあり好ましくない。より好ましくは、100mmol/l以上である。また、合金ナノ粒子とする場合には、上記2種金属溶液中の金属モル濃度(金属M及びMの合計量)が0.01mol/l以上となるように用いられることが好ましい。0.01mol/l未満であると、得られる合金ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液の金属モル濃度が低すぎて、効率的でない。好ましくは0.05mol/l以上、より好ましくは0.1mol/l以上である。
【0064】
上記金属イオンを金属に還元する方法としては、例えば、高圧水銀灯により光照射する方法、還元作用を有する化合物を添加する方法等を挙げることができる。このうち、還元作用を有する化合物(還元剤)を添加する方法が、特別な装置を必要とせず、製造上有利である。
【0065】
上記還元剤としては、例えば、アミンを挙げることができる。上記アミンを使用することにより、危険性や有害性の高い還元剤を使用する必要がなく、加熱や特別な光照射装置を使用することなしに、5〜100℃程度、好ましくは20〜80℃程度の反応温度で、金属化合物を還元することができる。
【0066】
上記アミンとしては特に限定されず、例えば、特開平11−80647号公報に例示されているものを使用することができ、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン;ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピペラジン、N,N′−ジメチルピペラジン、ピロリジン、N−メチルピロリジン、モルホリン等の脂環式アミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、アニシジン、フェネチジン等の芳香族アミン;ベンジルアミン、N−メチルベンジルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、フェネチルアミン、キシリレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルキシリレンジアミン等のアラルキルアミン等を挙げることができる。また、上記アミンとして、例えば、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、トリエタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、2−(3−アミノプロピルアミノ)エタノール、ブタノールアミン、ヘキサノールアミン、ジメチルアミノプロパノール等のアルカノールアミンも挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、アルカノールアミンが好ましく、ジメチルアミノエタノールがより好ましい。
【0067】
上記アミンの他に、従来より還元剤として使用されている水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム等のアルカリ金属水素化ホウ素塩;ヒドラジン、炭酸ヒドラジン等のヒドラジン化合物;クエン酸;酒石酸;リンゴ酸;アスコルビン酸;ギ酸;ホルムアルデヒド;亜二チオン酸、亜二チオン酸の誘導体であるホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(ロンガリットと称される)、ホルムアルデヒドスルホキシル酸亜鉛等の亜二チオン酸塩、スルホキシル酸塩誘導体等を使用することができる。また、二酸化チオ尿素、水素化アルミニウムナトリウム、ジメチルアミンボラン、次亜リン酸、ハイドロサルファイトを挙げることもできる。これらは、単独又は上記アミンと組み合わせて使用することが可能であるが、アミンとクエン酸、酒石酸、アスコルビン酸を組み合わせる場合、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸はそれぞれ塩の形のものを用いることが好ましい。また、クエン酸やアスコルビン酸やスルホキシル酸塩誘導体は、鉄(II)イオン、スズ(II)イオン、チタン(III)イオン、セリウム(III)イオンと併用することによって、還元性の向上を図ることができる。上述したアミンの他の還元剤のなかでも、必要に応じてアミンよりも強い還元力有するものであることが好ましい。アミンよりも強い還元力を有するもののなかでも、安全性と反応効率の観点から、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム(ロンガリット)、炭酸ヒドラジンが好ましい。これらの還元剤は適切なものを組み合わせて使用することができる。
【0068】
上記還元剤の添加量は、上記2種金属溶液に含まれる金属Mイオン及び金属Mイオンを還元するのに必要な量以上であることが好ましい。この量未満であると、還元が不充分となるおそれがある。また、上限は特に規定されないが、上記金属化合物中の金属M及びMを還元するのに必要な量の30倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましい。
また、これらの還元剤の添加により化学的に還元する方法以外に、高圧水銀灯を用いて光照射する方法も使用することも可能である。
【0069】
本発明の製造方法の好ましい実施形態の一例を以下に述べる。工程(1)において、金属化合物の水溶液、及び、上記高分子量顔料分散剤を加えた水と非混和性の非水系有機溶媒を混合攪拌して懸濁液となした後、上記還元作用を有する化合物を添加して攪拌下に水相の金属イオンを還元する。これにより、金属の生成とともに、水と雑イオンとを主成分とする上澄み(水相)と、金属ナノ粒子、保護コロイド及び非水系有機溶媒を主成分とするタール状生成物からなる下層(非水系有機溶媒相)とに分離する。上記下層、すなわち非水系有機溶媒相内に安定な金属ナノ粒子を得ることができる。工程(2)において、この状態から、水相(上層)をデカンテーションにより金属ナノ粒子を含有する非水系有機溶媒相(下層)から分離すれば、オルガノゾルの高濃度のものを直ちに得ることができる。
【0070】
本発明の方法においては、工程(1)により得られた水相と非水系有機溶媒相からなる溶液を、例えば、静置しておいて二相に分離させれば、水相は容易に分離除去することができる。こうして得られる非水系有機溶媒溶液中の金属ナノ粒子の濃度は、例えば、2〜80質量%とすることができる。また、得られた金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液は、典型的には、金属ナノ粒子の粒径が1〜50nmであり、粒度分布が狭いものである。
【0071】
本発明の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液の製造方法によれば、非水系有機溶媒相中に得られる金属ナノ粒子濃度を充分高くすることができる。また、本発明の方法は、上記金属化合物を水に溶解し、上記高分子量顔料分散剤を加えた水と非混和性の非水系有機溶媒と混合した後、水相中の金属イオンを還元するという少ない工程で簡便に行うことができ、従来の金属ナノ粒子非水系有機溶媒溶液と比較して10倍以上高濃度の金属ナノ粒子溶液を製造することができる。特に、アルカノールアミンを使用することにより、温和な条件で簡便に製造することができる。
【0072】
本発明の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液は、金属濃度が高いため、従来より加熱温度を低くしたり、加熱時間の短縮を行ったりした場合にも安定して導電性を有する金属被膜を得ることができるものである。また、金属薄膜の形成における焼成において、揮発する成分が少なくなるため、得られる金属薄膜において、膜中のヘコミ、割れ等が生じることを防止することができる。
【0073】
本発明の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液の用途としては特に限定されないが、金属濃度が高く、非水系有機溶媒溶液であることから、例えば、半導体基板、プリント基板、サーマルヘッド、電子部品等の各種電子機器における電極や配線等の導体回路の形成や電磁波シールド等の電子材料;光学材料、触媒、抗体の担体等の製造に用いることができる。なかでも、電極や配線等の導体回路の形成に好適である。
【発明の効果】
【0074】
本発明の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液は、上述の構成よりなるので、金属濃度が高いものであり、光学材料、触媒、抗体の担体、導電性ペースト等の用途や、その他、従来の金属ナノ粒子溶液と異なる用途に適用可能である。また、本発明の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液の製造方法は、上述の構成よりなるので、安定でかつ金属濃度が高い金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液を液相中で効率よく製造することができる。
【実施例】
【0075】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「%」は特に断りのない限り、「質量%」を意味する。
【0076】
実施例1
(非極性有機溶媒系の銀ナノ粒子ペーストの調製)
300mlの反応容器にアントラニル酸メチル20.0g、N−メチルアントラニル酸メチル10.0gとイソプロパノール25.0gを混合した。これにルーブリゾール社製のソルスパース32550(有効成分50%の酢酸ブチル溶液)4.2gを加えて溶解した。
【0077】
更に、2−ジメチルアミノエタノールを加えてよく攪拌し、湯浴中で75℃まで加熱した。別箇の容器に硝酸銀30.0gと脱イオン水50gを採り、50℃の水浴中で硝酸銀を溶解させて硝酸銀水溶液80.0gを調製した。この硝酸銀水溶液を、加熱しているソルスパース32550を含んだ混合溶液中に、攪拌しながら瞬時に加えた。液は速やかに灰褐色を呈した。そのまま液温度を75℃に保持しながら3時間攪拌を続けた。
3時間後攪拌を止めて静置するとタール状の緑褐色油状物が認められた。
【0078】
次に、緑褐色油状物と無色透明の上澄みとからなる生成物のうち、上澄み液をデカンテーションによって取り除いた。これに脱イオン水150gを加え攪拌した。静置して緑褐色油状物と上澄み液とが2層に分離した後に、この上澄みの水をデカンテーションにより取り除いた。更に同様な洗浄操作を、上澄み液の伝導度が30μS/cm以下になるまで行った。
【0079】
続いて、上澄みを取り去った緑褐色油状物に、トルエンを80g加えて緑褐色油状物を溶解した。
更にこのトルエンを加えた銀ナノ粒子溶液を風乾させた。銀ナノ粒子溶液が55g以下となったら、更にトルエン30gを加えて風乾を続けた。この操作を続けて、残存する水が液面に認められなくなったことを確認した後、更にこの操作を2回繰り返し、残存メタノール及び水を除去し、固形分32.3質量%の銀ナノ粒子のトルエン溶液120gを得た。
【0080】
得られた溶液を示差熱天秤「TG−DTA」(セイコーインスツルメンツ社)で測定したところ、金属が30.0質量%、ソルスパース32550が2.3質量%、有機溶媒(アントラニル酸メチル+N−メチルアントラニル酸+トルエン)が67.7質量%の銀ナノ粒子ペーストが得られた。
透過型電子顕微鏡(TEM)観察の結果、この溶液中の銀ナノ粒子の平均粒子径は20nm程度であった。
【0081】
実施例2
(非極性有機溶媒系のニッケルナノ粒子ペーストの調製)
2リットルの反応容器に酢酸ニッケル・4水和物229.0gと脱イオン水600.0gを加えて70℃の湯浴中で攪拌し、酢酸ニッケル・4水和物を溶解した。これに安息香酸メチル118.0g、エタノール42.0g、ルーブリゾール社製のソルスパース32550(有効成分50%の酢酸ブチル溶液)12.0gを加えて、湯浴による加熱を続けて行い、系内の温度を70℃とした。
【0082】
別箇の容器にロンガリット(ホルムアルデヒド・ナトリウムスルホキシラート)162.2gと脱イオン水365gを採り、50℃の湯浴中で加熱しながら、ロンガリットを溶解した。これに2−ジメチルアミノメチルエタノール205.0gを加えて相溶させた。
【0083】
70℃に加熱した酢酸ニッケル・4水和物を含んだ混合溶液を攪拌しながら、これにロンガリットと2−ジメチルアミノメチルエタノールの溶解した水溶液を瞬時に加えた。液は速やかに黒色を呈した。そのまま液温度を70℃に保持しながら2時間攪拌を続けた。
2時間後攪拌を止めて静置するとタール状の黒色油状物が認められた。
【0084】
次に、黒色油状物と無色透明の上澄みとからなる生成物のうち、上澄み液をデカンテーションによって取り除いた。これに脱イオン水1000gを加え攪拌した。静置して黒色油状物と上澄み液とが2層に分離した後に、この上澄みの水をデカンテーションにより取り除いた。更に同様な洗浄操作を、上澄み液の伝導度が30μS/cm以下になるまで行った。
【0085】
続いて、上澄みを取り去った黒色油状物にトルエンを360g加えて黒色油状物を溶解した。
更にこのトルエンを加えたニッケルナノ粒子溶液を風乾させた。ニッケルナノ粒子溶液が180g以下となったら、更にトルエン180gを加えて風乾を続けた。この操作を続けて、残存する水が液面に認められなくなったことを確認した後、更に、この操作を2回繰り返し、残存メタノール及び水を除去し、固形分32.5質量%のニッケルナノ粒子のトルエン溶液120gを得た。
【0086】
TG−DTA測定の結果、金属が30.0質量%、ソルスパース32550が2.5質量%、有機溶媒(安息香酸メチル+トルエン)が67.5質量%のニッケルナノ粒子ペーストを得ることができた。
TEM観察の結果、この溶液中のニッケルナノ粒子の平均粒子径は20nm程度であった。
【0087】
実施例3
(非極性有機溶媒系のニッケル/ビスマス(=50/50)ナノ粒子ペーストの調製)
2リットルの反応容器に塩化ビスマス40.7gと2mol/lの塩酸水溶液646.0gを採って湯浴中で攪拌し、塩化ビスマスを溶解した。別箇の容器に塩化ニッケル・6水和物109.3gと脱イオン水90.0gを採り、湯浴中で攪拌して塩化ニッケル・6水和物を溶解した。この塩化ニッケル水溶液を、塩化ビスマス水溶液の入った反応容器に加えた。更に安息香酸メチル64.0g、アントラニル酸メチル54.0g、エタノール42.0g、ルーブリゾール社製のソルスパース32550(有効成分50%の酢酸ブチル溶液)12.0gを加えて、湯浴による加熱を続けて行い、系内の温度を70℃とした。
別箇の容器にロンガリット(ホルムアルデヒド・ナトリウムスルホキシラート)120.9gと脱イオン水342gを採り、50℃の湯浴中で加熱しながら、ロンガリットを溶解した。これに2−ジメチルアミノメチルエタノール252.2gを加えて相溶させた。
【0088】
70℃に加熱した塩化ビスマスと塩化ニッケル・6水和物を含んだ混合溶液を攪拌しながら、これにロンガリットと2−ジメチルアミノメチルエタノールの溶解した水溶液を瞬時に加えた。液は速やかに黒色を呈した。そのまま液温度を70℃に保持しながら2時間攪拌を続けた。2時間後攪拌を止めて静置するとタール状の黒色油状物が認められた。
【0089】
次に、黒色油状物と無色透明の上澄みとからなる生成物のうち、上澄み液をデカンテーションによって取り除いた。これに脱イオン水1000gを加え攪拌した。静置して黒色油状物と上澄み液とが2層に分離した後に、この上澄みの水をデカンテーションにより取り除いた。更に同様な洗浄操作を、上澄み液の伝導度が30μS/cm以下になるまで行った。
【0090】
続いて、上澄みを取り去った黒色油状物にトルエンを360g加えて黒色油状物を溶解した。
更にこのトルエンを加えたニッケル/ビスマス複合ナノ粒子溶液を風乾させた。ニッケル/ビスマス複合ナノ粒子溶液が180g以下となったら、更にトルエン180gを加えて風乾を続けた。この操作を続けて、残存する水が液面に認められなくなったことを確認した後、更に、この操作を2回繰り返し、残存メタノール及び水を除去し、固形分32.5質量%のニッケル/ビスマス複合ナノ粒子のトルエン溶液120gを得た。
【0091】
TG−DTA測定の結果、金属が30.0質量%、ソルスパース32550が2.5質量%、有機溶媒(安息香酸メチル+アントラニル酸メチル+トルエン)が67.5質量%のニッケル/ビスマス複合ナノ粒子ペーストを得ることができた。
TEM観察の結果、溶液中のニッケル/ビスマス複合ナノ粒子の平均粒子径は30nm程度であった。
【0092】
実施例4
(非極性有機溶媒系の銀ナノ粒子ペーストの調製)
300mlの反応容器に安息香酸メチル25.5gとイソプロパノール17.0gを混合した。これにルーブリゾール社製のソルスパース32550(有効成分50%の酢酸ブチル溶液)2.9gを加えて溶解した。別箇の容器に硝酸銀30.0gと脱イオン水57.5gを採り、50℃の水浴中で硝酸銀を溶解させて硝酸銀水溶液87.5gを調製した。この硝酸銀水溶液を、ソルスパース32550を含んだ混合溶液中に加えて生じた白濁した混合溶液をよく攪拌しながら、湯浴中で75℃まで加熱した。更に、2−ジメチルアミノエタノール78.7gを、硝酸銀を含んだ白濁混合液に、よく攪拌しながら瞬時に加えた。液は速やかに灰褐色を呈した。そのまま液温度を75℃に保持しながら3時間攪拌を続けた。
3時間後攪拌を止めて静置するとタール状の灰色油状物が認められた。
【0093】
次に、灰色油状物と上澄みからなる生成物のうち、上澄み液をデカンテーションによって取り除いた。これに脱イオン水150gを加え攪拌した。静置して灰色油状物を上澄み液とが2層分離した後に、この上澄み液の水を取り除いた。
更に同様な洗浄作業を、上澄み液の伝導度が30μS/cm以下になるまで行った。
【0094】
続いて、上澄みを取り去った灰色油状物にトルエン80gを加えて灰色油状物を溶解した。この銀ナノ粒子のトルエン溶液を風乾した。銀ナノ粒子のトルエン溶液が55g以下となったら、更にトルエンを30g加えて風乾を続けた。この操作を続けて残存する水が液面に認められなくなった事を確認し、更に2回ほどこの操作をくりかえし、固形分31.9質量%の銀ナノ粒子のトルエン溶液55gを得た。
【0095】
TG−DTA測定の結果、金属が30.0質量%、ソルスパース32550が1.9質量%、有機溶媒(安息香酸メチル+トルエン)が68.1質量%の銀ナノ粒子ペーストが得られた。
TEM観察の結果、平均粒子径は20nm程度であった。
【0096】
実施例5
(非極性有機溶媒系の白金ナノ粒子ペーストの調製)
300mlの反応容器にテトラクロロ白金(II)酸カリウム12.8gと脱イオン水150gを採り、室温中で攪拌して溶解させた。別箇の容器にアントラニル酸メチル3.0g、安息香酸メチル3.0g、エタノール2.0gおよびルーブリゾール社製のソルスパース32550(有効成分50%の酢酸ブチル溶液)1.3gを加えて攪拌し、相溶させた。このソルスパース32550を含んだ混合溶液を反応容器に加えてよく攪拌した。更に2−ジメチルアミノエタノール13.7gを加えて攪拌を続けた。
【0097】
別箇の容器にDL−リンゴ酸20.7gと脱イオン水25gを50℃の温浴中で加熱し、DL−リンゴ酸を溶解した。
テトラクロロ白金(II)酸カリウムを含んだ混合溶液を湯浴中で加熱し、40℃になった時点でDL−リンゴ酸水溶液を、反応容器中に攪拌しながら瞬時に加えた。更に攪拌しながら湯浴中で加熱を続け、反応温度が80℃をまで加熱を行った。80℃になった時点で反応液が黒色に変化した。そのまま液温が80℃なるように保持し、2時間攪拌を続けた。
2時間後に攪拌を止めて静置すると黒灰色油状物の生成が認められた。
【0098】
次に、黒色油状物と上澄みからなる生成物のうち、上澄み液をデカンテーションによって取り除いた。これに脱イオン水100gを加え攪拌した。静置して緑褐色油状物を上澄み液とが2層分離した後に、この上澄み液の水を取り除いた。更に同様な洗浄作業を、上澄み液の伝導度が30μS/cm以下になるまで行った。
【0099】
続いて、上澄みを取り去った緑褐色油状物にトルエン40gを加えて緑褐色油状物を溶解した。この白金ナノ粒子のトルエン溶液を風乾した。白金ナノ粒子のトルエン溶液が20g以下となったら、更にトルエンを20g加えて風乾を続けた。この操作を続けて残存する水が液面に認められなくなった事を確認し、更に2回ほどこの操作をくりかえし、固形分33.0質量%の白金ナノ粒子のトルエン溶液20gを得た。
【0100】
TG−DTA測定の結果、金属が30.0質量%、ソルスパース32550が3.0質量%、有機溶媒(アントラニル酸メチル+安息香酸メチル+トルエン)が67.7質量%の白金ナノ粒子ペーストが得られた。
TEM観察の結果、平均粒子径は3nm程度であった。
【0101】
実施例6
(非極性有機溶媒系の銀/スズ(=97/3(質量比))ナノ粒子系ペーストの調製)
300mlの反応容器に安息香酸メチル25gとイソプロパノール17.5gを混合した。これにルーブリゾール社製のソルスパース32550(有効成分50%の酢酸ブチル溶液)3.3gを加えて溶解した。
これとは別箇の容器に塩化スズ(II)2水和物1.09gと水10gを加えた。これに2−ジメチルアミノエタノールを加えて攪拌し、溶解させた。これを、反応容器に加えて混合させた。この反応容器に、更に2−ジメチルアミノエタノール76.4gを加えてよく攪拌しながら、湯浴中で75℃まで加熱した。
【0102】
更に別箇の容器に硝酸銀29.1gと脱イオン水50gを採り、50℃の水浴中で硝酸銀を溶解させて硝酸銀水溶液79.1gを調製した。この硝酸銀水溶液を、加熱しているソルスパース32550を含んだ混合溶液中に、攪拌しながら瞬時に加えた。液は速やかに灰褐色を呈した。そのまま液温度を75℃に保持しながら3時間攪拌を続けた。
【0103】
3時間後攪拌を止めて静置するとタール状の緑灰色油状物が認められた。
次に、緑灰色油状物と上澄みからなる生成物のうち、上澄み液をデカンテーションによって取り除いた。これに脱イオン水150gを加え攪拌した。静置して緑褐色油状物を上澄み液とが2層分離した後に、この上澄み液の水を取り除いた。更に同様な洗浄作業を、上澄み液の伝導度が30μS/cm以下になるまで行った。
【0104】
続いて、上澄みを取り去った緑灰色油状物にトルエン80gを加えて緑灰色油状物を溶解した。この銀/スズ複合ナノ粒子のトルエン溶液を風乾した。銀/スズ複合ナノ粒子のトルエン溶液が55g以下となったら、更にトルエンを30g加えて風乾を続けた。この操作を続けて残存する水が液面に認められなくなった事を確認し、更に2回ほどこの操作をくりかえし、固形分32.4質量%の銀/スズ複合ナノ粒子のトルエン溶液55gを得た。
【0105】
TG−DTA測定の結果、金属が30.0質量%、ソルスパース32550が2.4質量%、有機溶媒(安息香酸メチル+トルエン)が67.6質量%の銀/スズ(=97/3(質量比))ナノ粒子ペーストが得られた。
TEM観察の結果、平均粒子径は20nm程度であった。
【0106】
実施例7
(非極性有機溶媒系のニッケル/スズ(=90/10(質量比))複合ナノ粒子ペーストの調製)
2Lの反応容器に塩化ニッケル・6水和物196.8gと脱イオン水500.0gを採り、湯浴中で攪拌して塩化ニッケル・6水和物を溶解した。
別箇の容器に塩化スズ(II)2水和物10.3gと2mol/lの塩酸水溶液45.65gを採って湯浴中で攪拌し、塩化スズ(II)2水和物を溶解した。この塩化スズ(II)2水和物水溶液を、塩化ニッケル水溶液の入った反応容器に加えた。更に安息香酸メチル64.0g、アントラニル酸メチル54.0g、エタノール42.0g、ルーブリゾール社製のソルスパース32550(有効成分50%の酢酸ブチル溶液)12.0gを加えて、湯浴による加熱を続けて行い、系内の温度を70℃とした。
【0107】
別箇の容器にロンガリット(ホルムアルデヒド・ナトリウムスルホキシラート)160.0gと脱イオン水350gを採り、50℃の湯浴中で加熱しながら、ロンガリットを溶解した。これに2−ジメチルアミノメチルエタノール208.9gを加えて相溶させた。
【0108】
70℃に加熱した塩化ニッケル6水和物と塩化スズ(II)2水和物を含んだ混合溶液を攪拌しながら、これにロンガリットと2−ジメチルアミノメチルエタノールの溶解した水溶液を瞬時に加えた。液は速やかに黒色を呈した。そのまま液温度を70℃に保持しながら2時間攪拌を続けた。
2時間後攪拌を止めて静置するとタール状の黒色油状物が認められた。
【0109】
次に、黒色油状物と上澄みからなる生成物のうち、上澄み液をデカンテーションによって取り除いた。これに脱イオン水1000gを加え攪拌した。静置して緑褐色油状物を上澄み液とが2層分離した後に、この上澄み液の水を取り除いた。更に同様な洗浄作業を、上澄み液の伝導度が30μS/cm以下になるまで行った。
【0110】
続いて、上澄みを取り去った緑褐色油状物にトルエン360gを加えて黒色油状物を溶解した。このニッケル/スズ複合ナノ粒子のトルエン溶液を風乾した。
ニッケル/スズ複合ナノ粒子のトルエン溶液が180g以下となったら、更にトルエンを180g加えて風乾を続けた。この操作を続けて残存する水が液面に認められなくなった事を確認し、更に2回ほどこの操作をくりかえし、固形分32.4質量%のニッケル/スズ複合ナノ粒子のトルエン溶液180gを得た。
【0111】
TG−DTA測定の結果、金属が30.0質量%、ソルスパース32550が2.4質量%、有機溶媒(安息香酸メチル+アントラニル酸メチル+トルエン)が67.5質量%のニッケル/ビスマス複合ナノ粒子ペーストを得ることができた。
TEM観察の給果、平均粒子経は30nm程度であった。
【0112】
実施例8
(非極性有機溶媒系のビスマス/パラジウム(=50/50(質量比))複合ナノ粒子ペーストの調製)
2Lの反応容器に塩化ビスマス40.7gと2mol/lの塩酸水溶液646.0gを採って混浴中で攪拌し、塩化ビスマスを溶解した。これに、液中に15.2質量%のパラジウムを含むテトラクロロパラジウム(II)酸水溶液177.6gを加えてよく攪拌した。これに安息香酸メチル54.0g、アントラニル酸メチル64.0g、エタノール42.0g、ルーブリゾール社製のソルスパース32550(有効成分50%の酢酸ブチル溶液)12.0gを加え、湯浴中で加熱して、系内の温度を60℃とした。
【0113】
別箇の容器にロンガリット(ホルムアルデヒド・ナトリウムスルホキシラート)84.5gと脱イオン水340gを採り、50℃の湯浴中で加熱しながら、ロンガリットを溶解した。これに2−ジメチルアミノメチルエタノール240.0gを加えて相溶させた。
【0114】
60℃に加熱した塩化ニッケル6水和物とテトラクロロパラジウム酸(II)を含んだ混合溶液を攪拌しながら、これにロンガリットと2−ジメチルアミノメチルエタノールの溶解した水溶液を瞬時に加えた。液は速やかに黒色を呈した。そのまま液温度を60℃に保持しながら2時間攪拌を続けた。
2時間後攪拌を止めて静置するとタール状の黒灰色油状物の生成が認められた。
【0115】
次に、黒色油状物と上澄みからなる生成物のうち、上澄み液をデカンテーションによって取り除いた。これに脱イオン水1000gを加え攪拌した。静置して黒色油状物を上澄み液とが2層分離した後に、この上澄み液の水を取り除いた。更に同様な洗浄作業を、上澄み液の伝導度が30μS/cm以下になるまで行った。
【0116】
続いて、上澄みを取り去った黒色油状物にトルエン360gを加えて黒色油状物を溶解した。このビスマス/パラジウム複合ナノ粒子のトルエン溶液を風乾した。ビスマス/パラジウム複合ナノ粒子のトルエン溶液が180g以下となったら、更にトルエンを180g加えて風乾を続けた。この操作を続けて残存する水が液面に認められなくなった事を確認し、更に2回ほどこの操作をくりかえし、固形分32.8質量%のビスマス/パラジウム複合ナノ粒子のトルエン溶液180gを得た。
【0117】
TG−DTA測定の結果、金属が30.0質量%、ソルスパース32550が2.8質量%、有機溶媒(安息香酸メチル+アントラニル酸メチル+トルエン)が67.2質量%のビスマス/パラジウム複合ナノ粒子ペーストを得ることができた。
TEM観察の結果、平均粒子径は30nm程度であった。
【0118】
実施例9
(非極性有機溶媒系の銅/ニッケル(=40/60(質量比))複合ナノ粒子
ペーストの調製)
2Lの反応容器に塩化銅(II)2水和物57.95gと塩化ニッケル6水和物131.2gと脱イオン水600gを採り、湯浴中で攪拌して塩化銅(II)2水和物、及び塩化ニッケル6水和物を溶解した。
これに安息香酸メチル64.0g、アントラニル酸メチル54.0g、エタノール42.0g、ルーブリゾール社製のソルスパース32550(有効成分50%の酢酸ブチル溶液)12.0gを加え、湯浴中で加熱して、系内の温度を70℃とした。
【0119】
別箇の容器にロンガリット(ホルムアルデヒド・ナトリウムスルホキシラート)175.9gと脱イオン水365gを採り、50℃の湯浴中で加熱しながら、ロンガリットを溶解した。これに2−ジメチルアミノメチルエタノール198.8gを加えて相溶させた。
【0120】
70℃に加熱した塩化銅(II)2水和物と塩化ニッケル6水和物を含んだ混合溶液を攪拌しながら、これにロンガリットと2−ジメチルアミノメチルエタノールの溶解した水溶液を瞬時に加えた。液は速やかに赤褐色を呈した。そのまま液温度を70℃に保持しながら2時間攪拌を続けた。
2時間後攪拌を止めて静置するとタール状の赤灰色油状物の生成が認められた。
【0121】
次に、赤灰色油状物と上澄みからなる生成物のうち、上澄み液をデカンテーションによって取り除いた。これに脱イオン水1000gを加え攪拌した。静置して赤灰色油状物を上澄み液とが2層分離した後に、この上澄み液の水を取り除いた。更に同様な洗浄作業を、上澄み液の伝導度が30μS/cm以下になるまで行った。
【0122】
続いて、上澄みを取り去った赤灰色油状物にトルエン360gを加えて赤灰色油状物を溶解した。この銅/ニッケル複合ナノ粒子のトルエン溶液を風乾した。
銅/ニッケル複合ナノ粒子のトルエン溶液が180g以下となったら、更にトルエンを180g加えて風乾を続けた。この操作を続けて残存する水が液面に認められなくなった事を確認し、更に2回ほどこの操作をくりかえし、固形分32.5質量%の銅/ニッケル複合ナノ粒子のトルエン溶液180gを得た。
【0123】
TG−DTA測定の結果、金属が30.0質量%、ソルスパース32550が2.5質量%、有機溶媒(安息香酸メチル十アントラニル酸メチル+トルエン)が67.5質量%の銅/ニッケル複合ナノ粒子ペーストを得ることができた。
TEM観察の結果、平均粒子径は20nm程度であった。
【0124】
実施例10
(非極性有機溶媒系の銅/銀(=75/25(質量比))複合ナノ粒子ペーストの調製)
2Lの反応容器に硝酸銅(II)3水和物154.0gと硝酸銀21.3gと脱イオン水600gを採り、湯浴中で攪拌して塩化銅(II)2水和物、及び硝酸銀を溶解した。これに安息香酸メチル108.0g、エタノール42.0g、ルーブリゾール社製のソルスパース32550(有効成分50%の酢酸ブチル溶液)12.0gを加え、湯浴中で加熱して、系内の温度を70℃とした。
【0125】
別箇の容器にロンガリット(ホルムアルデヒド・ナトリウムスルホキシラート)129.5gと脱イオン水350gを採り、50℃の湯浴中で加熱しながら、ロンガリットを溶解した。これに2−ジメチルアミノメチルエタノール197.9gを加えて相溶させた。
【0126】
70℃に加熱した硝酸銅(II)3水和物と硝酸銀を含んだ混合溶液を攪拌しながら、これにロンガリットと2−ジメチルアミノメチルエタノールの溶解した水溶液を瞬時に加えた。液は速やかに黒褐色を呈した。そのまま液温度を70℃に保持しながら2時間攪拌を続けた。
2時間後攪拌を止めて静置するとタール状の灰褐色油状物の生成が認められた。
【0127】
次に、灰褐色油状物と上澄みからなる生成物のうち、上澄み液をデカンテーションによって取り除いた。これに脱イオン水1000gを加え攪拌した。静置して灰褐色油状物を上澄み液とが2層分離した後に、この上澄み液の水を取り除いた。更に同様な洗浄作業を、上澄み液の伝導度が30μS/cm以下になるまで行った。
【0128】
続いて、上澄みを取り去った灰褐色油状物にトルエン360gを加えて灰褐色油状物を溶解した。この銅/銀複合ナノ粒子のトルエン溶液を風乾した。銅/銀複合ナノ粒子のトルエン溶液が180g以下となったら、更にトルエンを180g加えて風乾を続けた。この操作を続けて残存する水が液面に認められなくなった事を確認し、更に2回ほどこの操作をくりかえし、囲形分32.3質量%の銅/銀複合ナノ粒子のトルエン溶液180gを得た。
TG−DTA測定の結果、金属が30.0質量%、ソルスパース32550が2.3質量%、有機溶媒(安息香酸メチル+トルエン)が67.5質量%の銅/銀複合ナノ粒子ペーストを得ることができた。
TEM観察の結果、平均粒子径は20nm程度であった。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液は、安定で、かつ、金属濃度が高いものであり、光学材料、触媒、抗体の担体、導電性ペースト等の用途や、その他、従来のコロイドと異なる用途に適用可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノ粒子及び非水系有機溶媒を含む金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液であって、
前記金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液は、固形分中の金属濃度が90質量%以上であり、
前記非水系有機溶媒は、水と非混和性であり、かつ、比重が0.9以上のエステル系、ケトン系、アルコール系又は高級カルボン酸系の有機溶媒である
ことを特徴とする金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液。
【請求項2】
前記非水系有機溶媒は、比重が1以上である請求項1記載の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液。
【請求項3】
前記金属ナノ粒子は、2種の金属M及びMからなる合金ナノ粒子である請求項1又は2記載の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液の製造方法であって、
前記金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液の製造方法は、水と、水と非混和性であり、かつ、比重が0.9以上のエステル系、ケトン系、アルコール系又は高級カルボン酸系の非水系有機溶媒とを混合させた懸濁液中、保護コロイドの存在下で金属イオンを還元して、水相と非水系有機溶媒相とからなる溶液を得る工程(1)、及び、工程(1)により得られた溶液の水相と非水系有機溶媒相とを分離する工程(2)を含む
ことを特徴とする金属ナノ粒子の非水系有機溶媒溶液の製造方法。

【公開番号】特開2006−257484(P2006−257484A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75986(P2005−75986)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】