説明

金属パターンの形成方法

【課題】電磁波遮断性能に優れ、かつ高い透明性を有し、さらに生産性に優れた電磁波遮断材料の製造に適用する金属パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】支持体上に、金属塩をパターン状に印刷し、該金属塩を還元することによって金属パターンを形成することを特徴とする金属パターンの形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の金属パターンの形成方法に関し、詳しくは、電磁波遮断性能に優れ、かつ高い透明性を有し、さらに生産性に優れた電磁波遮断材料の製造に適用する金属パターンの形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子回路や電気配線を、細密かつ任意に、しかも高速かつ安価に形成できることが求められている。現在、ユビキタスネットワークの進歩に伴い、無線通信でのアンテナの微細化が求められている。オフィスや家庭での無線LAN等の普及に伴い、情報の漏洩防止や外部からの侵入電磁波による誤動作やノイズ防止のために、建造物に電磁波遮蔽材料が用いられるようになった。テレビ電波、携帯電話通信、防災無線など、必要な電磁波は透過させる必要があり、単に電磁波を遮蔽するだけでなく、周波数選択性の電磁波環境の整備が要望されている。
【0003】
また近年、テレビジョン、ゲーム機、コンピューターディスプレイなど、各種ディスプレイパネルから発生する電磁波が他の機器への障害となるため、電磁波を遮蔽する必要があるが、ディスプレイであるために、透光性が高い電磁波遮蔽材料が求められており、このような状況を踏まえ、金属パターンの形成に関する様々な技術が開示されてきている。
【0004】
これら電磁波遮断用材料の中でも、ハロゲン化銀を用いて、露光、現像プロセスを通じて得られる現像銀(金属銀)を利用した導電性メッシュを製造する方法は、メッシュパターンの形成が容易であり、かつ安価に大量の透明電磁波遮断材料を安定して製造できる方法として有用である(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
しかし、上述した現像銀を利用して導電性メッシュを製造する方法においては、高い導電性を得るためには、現像処理によって形成される金属銀同士の接点をできるだけ多く形成する必要があった。そのためには、層内におけるハロゲン化銀密度をできるだけ高めることが好ましいが、支持体上にハロゲン化銀を塗布し、それを担持するためには、一定量のバインダーが必要となり、その結果、バインダーを介して金属銀粒子が存在することとなり、現像銀粒子同士の接点が減少してしまう場合があり、その改良が望まれていた。また、粒径の小さいハロゲン化銀粒子を密に塗布して現像処理を行った場合、表面近傍(支持体から遠い方)のハロゲン化銀は速やかに現像されるのに対し、下層部(支持体に近い側)に位置するハロゲン化銀の現像が抑制され、その結果、導電性が低下しやすくなる場合があり、その改良が望まれていた。
【特許文献1】国際公開第2004/7810号パンフレット
【特許文献2】特開2004−221564号公報
【特許文献3】特開2004−221565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、電磁波遮断性能に優れ、かつ高い透明性を有し、さらに生産性に優れた電磁波遮断材料の製造に適用する金属パターンの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0008】
1.支持体上に、金属塩をパターン状に印刷し、該金属塩を還元することによって金属パターンを形成することを特徴とする金属パターンの形成方法。
【0009】
2.支持体上に、金属塩をパターン状に印刷した後、該金属塩の部位に還元剤を同様のパターン状で付与し、該金属塩を還元することによって金属パターンを形成することを特徴とする金属パターンの形成方法。
【0010】
3.支持体上に、金属塩をパターン状に印刷した後、還元剤とバインダーとの混合物を均一に塗設して、該金属塩を還元することによって金属パターンを形成することを特徴とする金属パターンの形成方法。
【0011】
4.還元剤を含有する支持体上に、金属塩をパターン状に印刷し、該金属塩を還元することによって金属パターンを形成することを特徴とする金属パターンの形成方法。
【0012】
5.支持体上に、金属塩と還元剤の混合物をパターン状に印刷し、エネルギーを付与する還元促進処理を施して、該金属塩を還元することによって金属パターンを形成することを特徴とする金属パターンの形成方法。
【0013】
6.前記支持体が、金属塩受容層を有することを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の金属パターンの形成方法。
【0014】
7.前記金属塩が、ハロゲン化銀であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の金属パターンの形成方法。
【0015】
8.前記金属塩をパターン状に印刷する方法が、インクジェット記録ヘッドを用いたインクジェット方式であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の金属パターンの形成方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、電磁波遮断性能に優れ、かつ高い透明性を有し、さらに生産性に優れた電磁波遮断材料の製造に適用する金属パターンの形成方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、支持体上に、金属塩を含む構成物をパターン状に印刷し、該金属塩を還元することによって金属パターンを形成する方法を用いて電磁波遮断材料を製造することで、電磁波遮断性能に優れ、かつ高い透明性を有し、さらに生産性に優れた電磁波遮断材料を得ることができることを見出したものである。
【0019】
更に、形成した金属塩のパターンを還元する方法として、A)パターン状に形成した金属塩の部位に還元剤を同様のパターン状で付与し、該金属塩を還元する方法、B)金属塩によりパターンを形成した後、全面に還元剤とバインダーを含む混合物を均一に塗設して金属塩を還元する方法、C)予め還元剤を含有する支持体上に、金属塩をパターン状に印刷し、金属塩を還元する方法、あるいはD)支持体上に、金属塩と還元剤の混合物をパターン状に印刷し、エネルギーを付与する還元促進工程を経て、金属塩を還元する方法、から選ばれる少なくとも1つの方法を用いて電磁波遮断材料を製造することで、電磁波遮断性能に優れ、かつ高い透明性を有し、さらに生産性に優れた電磁波遮断材料を得ることができる。
【0020】
以下、本発明の詳細について、図を含めて説明する。
【0021】
本発明の金属パターンの形成方法は、電磁波遮断材料の作製に適用することが極めて有効な金属粒子からする導電性の細線パターンの形成方法に関する物である。
【0022】
請求項1に係る金属パターンの形成方法は、支持体上に、金属塩をパターン状に印刷し、該金属塩を還元することによって、金属粒子から構成される金属パターン(電磁波遮断パターン)を形成することを特徴とする。
【0023】
図1は、請求項1に係る本発明の金属パターンを形成する方法の一例を示す概略断面図である。
【0024】
図1のa)に示すように、支持体1上に、金属塩を含むパターン形成材料、例えば、金属塩を含むインク2を付与して、例えば、細線パターンを印刷する。金属塩を含有するインク2は、印刷後に形成したパターン像を維持するため、バインダー成分を含有することが好ましいが、その添加量が還元した金属粒子同時の接点形成を妨げない範囲で使用することが必要である。
【0025】
金属塩によるパターンを形成した後、金属塩を含むインク2を還元して、金属粒子から構成される導電性パターンを形成する方法としては、1つの方法としては、図1のb)に示すように、還元剤を含有する溶液3を全面均一に塗布したり、還元剤を含有する溶液3中にパターン像を形成した支持体を浸漬したり、他の方法としては、図1のc)に示すように、還元性のガスや還元性蒸気3′の雰囲気下に晒して還元を行っても良い。この様なステップを経ることにより、図1のd)に示すような金属粒子から構成される金属パターン4を形成することができる。
【0026】
本発明において、金属塩を含むインク2を支持体上に所定のパターンで付与する方法としては、特に制限はなく、例えば、インクジェット方式、スクリーン印刷法、オフセット印刷法等を挙げることができるが、本発明においては、インクジェット記録装置を用いたインクジェット方式を適用することが好ましく、更には、線幅が20μm以下の細線パターンを高精度に形成できる観点から、インクジェット記録装置による金属塩を含むインクの吐出方法が、圧力印加手段と電界印加手段とを用いた方法であることが好ましい。
【0027】
以下、圧力印加手段と電界印加手段とを用いたインクジェット記録方法について説明する。
【0028】
一般に、電磁波遮断機能等で要求されている微細な線幅のパターンを高精細に描画するには、インクジェット記録装置から射出する金属塩を含むインク液滴を、より微細化する必要がある。しかしながら、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)や電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)のみの出力手段を用いて、極微小インク液滴を吐出した場合、ノズルから吐出したインク液滴に付与される運動エネルギーは、インク液滴の半径の3乗に比例して小さくなるため、微小液滴は空気抵抗に耐えるほどの十分な運動エネルギーを確保できず、空気対流などによる擾乱を受け、正確な着弾が困難となる。さらに、インク液滴が微細になるほど、表面張力の効果が増すために、液滴の蒸気圧が高くなり蒸発量が激しくなる。このため微細液滴は、飛翔中の著しい質量の消失を招き、着弾時に液滴の形態を保つことすら難しいという問題があった。このように着弾位置の高精度化は、インク液滴の微細化と相反する課題であり、これら2つを同時に実現することに対し、障害を抱えていた。
【0029】
本発明においては、上記課題を解決する方法として、圧力印加手段と電界印加手段とを用いた射出方法を適用することが好ましい。
【0030】
この射出方法は、0.1〜100μmの内径の吐出口を有するノズルを用い、導電性インクに任意波形の電圧を印加して、この導電性インクを帯電させることにより、そのインク液滴を吐出口から、樹脂層を有するインク受容基材に吐出する方法である。
【0031】
すなわち、この射出方法は、ノズルの吐出口の内径が0.1〜100μmであり、電界強度分布が狭くなっているため、ノズル内に供給された導電性インクに任意波形の電圧を印加することにより電界を集中させることができる。その結果、形成されるインク液滴を微小で、かつ形状の安定化したものとすることができる。従って、従来よりも微細な、例えば、1pl(ピコリットル)未満の複数のインク液滴からなるインク液滴パターンを樹脂層表面に形成することができる。また、電界強度分布が狭くなっているため、ノズル内の導電性インクに印加する総印加電圧を低減することができる。また、インク液滴は、ノズルから吐出された直後、電界と電荷の間に働く静電力により加速されるが、ノズルから離れると電界は急激に低下するので、その後は、空気抵抗により減速する。しかしながら、微小液滴でかつ電界が集中したインク液滴は、樹脂層に近づくにつれ、鏡像力により加速される。この空気抵抗による減速と鏡像力による加速とのバランスをとることにより、微小液滴を安定に飛翔させ、着弾精度を向上させることが可能となる。
【0032】
請求項2に係る金属パターンの形成方法は、支持体上に、金属塩をパターン状に印刷した後、該金属塩の部位に還元剤を同様のパターン状で付与し、金属塩を還元することによって、金属粒子から構成される金属パターン(電磁波遮断用パターン)を形成することを特徴とする。
【0033】
図2は、請求項2に係る本発明の金属パターンを形成する方法の一例を示す概略断面図である。
【0034】
図2に記載の金属パターンの形成方法では、支持体1上に、金属塩を含有するインク2をパターン状に印刷し、その後、還元剤を含有する溶液3を、金属塩により形成したパターンと同様のパターンで付与することで、付与した還元剤を含有する溶液3が、金属塩を含有するインク2中に浸透して金属塩と接触、反応することにより、金属塩に還元されて、金属粒子から構成される金属パターン4が形成される。金属塩を含有するインク2のパターンと還元剤を含有する溶液3のパターンをほぼ一致させることによって、還元剤薬液を多量に用いることなく、効率的に還元反応を実施できる。
【0035】
図2においては、第1ステップとして、所定の位置に金属塩を含有するインク2によりパターンAを印刷した後、第2ステップでパターンA上に還元剤を含有する溶液3を付与する方法であるが、微視的領域において、金属塩を含有するインク2を付与した直後、あるいは同時に、還元剤を含有する溶液3を付与する方法であっても良い。
【0036】
図3は、請求項2に係る本発明の金属パターンを形成する方法の他の一例を示す概略断面図である。
【0037】
図3に記載の金属パターンの形成方法では、支持体1上に、1対の溶液付与手段6、例えば、インクジェット記録ヘッドを配置し、各溶液付与手段6より、金属塩を含有するインク2と、還元剤を含有する溶液3とを、近接位置に対してほぼ同じタイミングでパターン状に付与し、それらを支持体上で混合して混合物5によるパターンを形成し、金属塩と還元剤が接触、反応することにより、金属パターン4が形成される方法である。
【0038】
図4は、請求項2に係る本発明の金属パターンを形成する方法の他の一例を示す概略断面図である。
【0039】
図4に記載の金属パターンの形成方法では、支持体1上に金属塩を含有するインク2の吸収能を備えた金属塩受容層7(詳細な内容については後述する)を有し、金属塩を含有するインク2をパターン状に印刷して、金属塩受容層7に浸透させ、次いで、還元剤を含有する溶液3を金属塩を含有するインク2のパターンと同様パターンで付与することにより、還元剤が金属塩受容層中に浸透して金属塩と接触、反応し、金属に還元され、金属パターン4が形成される。このような金属塩受容層を用いる方法は、高い平面性、すなわち凹凸の少ない金属パターンを形成することができる点から好ましい。
【0040】
請求項3に係る金属パターンの形成方法は、支持体上に、金属塩をパターン状に印刷した後、還元剤とバインダーとの混合物を均一に塗設して、該金属塩を還元することによって金属パターンを形成することを特徴とする。
【0041】
図5は、請求項3に係る本発明の金属パターンを形成する方法の一例を示す概略断面図である。
【0042】
図5に記載の金属パターンの形成方法では、支持体1上に、金属塩を含有するインク2をパターン状に印刷した後、還元剤とバインダーとの混合物8を、全面に塗設することにより、還元剤が金属塩を含有するインク2中に浸透して、還元剤と金属塩とが接触、反応し、金属塩が金属に還元され、金属パターン4が形成される。この方法では、バインダーを含む均一な層を塗設することにより、高い平面性、すなわち凹凸の少ない金属パターン面を形成することができる。
【0043】
請求項4に係る金属パターンの形成方法は、還元剤を含有する支持体上に、金属塩をパターン状に印刷し、該金属塩を還元することによって金属パターンを形成することを特徴とする。
【0044】
図6は、請求項4に係る本発明の金属パターンを形成する方法の一例を示す概略断面図である。
【0045】
図6に記載の金属パターンの形成方法では、支持体1上に、予め還元剤を含有する還元剤含有層9を設けた後、該還元剤含有層9上、金属塩を含有するインク2をパターン状に印刷し、該金属塩を還元することによって金属パターンを形成する方法である。
【0046】
この還元剤含有層9を有する支持体1は、支持体1上に、還元剤を含有した溶液を塗布することによって、あるいは、金属塩を含有するインク2の受容層を塗布した支持体上に、還元剤を更に塗布または浸漬することによって得ることができる。
【0047】
本発明に係る還元剤含有層9には、還元剤の他に、バインダーを含有することが好ましく、バインダーを含有させることにより、還元剤含有層9に金属塩を含有するインク2の吸収能を付与できると共に、金属パターン形成後、高い平滑性を得ることができる。
【0048】
請求項5に係る金属パターンの形成方法は、支持体上に、金属塩と還元剤の混合物をパターン状に印刷し、エネルギーを付与する還元促進処理を施して、該金属塩を還元することによって金属パターンを形成することを特徴とする。
【0049】
図7は、請求項5に係る本発明の金属パターンを形成する方法の一例を示す概略断面図である。
【0050】
図7に記載の金属パターンの形成方法では、支持体1上に、金属塩と還元剤とを含む混合物5をパターン状に印刷し、次いで、該混合物5により形成したパターンにエネルギーEを付与する還元促進処理を施すことにより、還元剤と金属塩とが反応し、金属に還元され、金属パターン4が形成される。
【0051】
本発明において、金属塩と還元剤との混合物が混合直後に反応しないように、金属塩、還元剤の少なくとも一方は、常態では不活性なものを選択し、パターン状に印刷したのち、加熱、加圧、電磁波照射などのエネルギーを付与することにより、還元反応が進行することによって還元剤と金属塩とが反応し、金属パターン4が形成されることが好ましい。
【0052】
還元反応を促進するために付与するエネルギーとしては、加熱等の熱エネルギー加熱処理(アニール処理)、光エネルギー照射、例えば、遠赤外線(銀線部だけが主に加熱される)、レーザー加熱、電磁波、マイクロ波等が挙げられる。
【0053】
金属塩や還元剤を常態では不活性なものとするには、溶解度積の小さい塩としたり、保護基を付けた前駆体としたり、反応が起こりにくい溶媒を用いたり、マイクロカプセル化するなどの方法がある。特に有効なものとしては、有機銀塩と還元剤前駆体の組合せによる熱現像システムを利用するものである。
【0054】
次いで、本発明の金属パターンの形成方法に適用する各構成材料、その他の要素について説明する。
【0055】
《支持体》
本発明に係る支持体とは、印刷される基体を示すが、可視光透過性を有する透明な基体が好ましく、さらには可とう性を有する透明プラスチックフィルムが好ましい。また、図4に記載のような金属塩を含有するインクの吸収能を備えた受容層、あるいは、図6に示すような還元剤含有層を有することが好ましい。
【0056】
本発明に適用可能な支持体材料としては、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム、ガラス−エポキシ基板、シリコン基板、セラミックス基板、ガラス基板等が挙げられるが、取り扱い性の観点からシート状の樹脂フィルムを用いることが好ましい。また、最終的な高い透過性、具体的には、可視部における平均透過率が80%以上であるパターンを形成する観点からは、透明樹脂フィルムあるいはガラス基板が好ましい。
【0057】
本発明で用いられる樹脂フィルムの材質としては、特に限定はないが、例えば、ポリエステル系フィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系フィルム、セルロースエステル系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム,ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム(アートン(JSR社製)、ゼオネックス、ゼオネア(以上、日本ゼオン社製))、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリアクリレート系フィルム、ポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。これらの素材を主成分とする異なる材質のフィルムを積層したフィルムであってもよい。本発明においては、透明性、耐熱性、取り扱いやすさ及び経済性の観点から、上記プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、セルロースエステルフィルムであることが好ましいが、透明性、等方性、接着性等の観点から、支持体としてはセルロースエステルフィルムを用いることが特に好ましい。
【0058】
ディスプレイ用の電磁波遮蔽材では透明性が要求されるため、支持体の透明性は高いことが望ましい。この場合におけるプラスチックフィルム又はプラスチック板の全可視光透過率は好ましくは70〜100%であり、より好ましくは80〜100%であり、さらに好ましくは90〜100%である。本発明において、可視光域の平均透過率とは、400〜700nmまでの可視光領域の透過率を、少なくとも5nm毎に測定して求めた可視光域の各透過率を積算し、その平均値として求めたものと定義する。
【0059】
測定においては、測定アパチャーを、前述のメッシュパターンより十分大きくとっておく必要があり、少なくともメッシュの格子面積よ100倍以上大きな面積で測定して求める。
【0060】
本発明においては、可視光域による平均透過率が85%以上であることが好ましく、より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0061】
また、本発明においては、支持体とその上に設ける金属パターンとの密着性を高める観点から、支持体表面に、予め表面をコロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、プライマー処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理を施すことが好ましい。
【0062】
《金属塩》
本発明の金属パターンの形成方法においては、金属塩をパターン状に印刷し、金属塩を還元することによって金属パターンを形成するが、本発明に係る金属塩とは、一般的に金属に分類されている周期表8族〜11族の元素の塩であって、好ましくは、Fe、Ni、Co、Cu、Ag、Au等であり、特に好ましくは銀塩である。金属塩としての銀塩としては、例えば、硝酸銀、アンモニア性硝酸銀、ハロゲン化銀(塩化銀、臭化銀、沃化銀、混合ハロゲン化銀)、有機銀(没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩)が好ましい。
【0063】
塩の場合、塩濃度が高いと、例えば、受容層を用いた金属パターンの形成方法においては、金属塩を含むインクの受容層への吸収能低下するため、受容層の構成材料として、市販のおむつなどに利用されている高分子化合物を利用することで、高濃度の金属塩も受容できる。
【0064】
《金属パターン》
本発明の金属パターンの形成方法においては、金属塩を支持体上にパターン状に印刷するが、本発明でいうパターン状とは、回路、配線、電磁波シールドパターン、アンテナパターン等の導電性パターンを形成することをいい、例えば、電磁波シールドパターンである場合には、線幅は、20μm以下であり、線間隔は50μm以上の格子状パターンを形成することが好ましい。
【0065】
《還元剤》
本発明の金属パターンの形成方法においては、金属塩を還元して金属粒子を形成する還元剤としては、金属塩を金属に変換する能力を有する化合物であれば特に制限はないが、ヒドラジン、ヒドラジン塩、ボロハライド塩、次亜燐酸塩、次亜硫酸塩、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、カルボン酸塩などが適用可能である。なお、これらの還元剤に含有されるボロン、燐、窒素などの元素が、析出する電極に含有されていても構わない。或いはこれらの金属塩の混合物を用いて合金が形成されていても構わない。
【0066】
また、金属塩としてハロゲン化銀を用いる場合には、還元剤として、ハロゲン化銀感光材料分野で周知の現像剤を、還元剤として適用しても良い。
【0067】
銀塩を含むインクに還元剤を供給する方法としては、前図に示すようにパターン状に形成した銀塩を含むインクに、溶液状態の還元剤を噴霧、塗布、浸漬させて付与する方法や、予め支持体上に還元剤を含有する層を形成し、その上に銀塩を含むインクを付与して金属パターンを形成する方法、あるいは還元剤を含む還元性ガスや還元性蒸気中に、パターン状に形成した銀塩を含むインクを晒すことにより金属パターンを形成する方法等を挙げることができる。
【0068】
《金属塩受容層》
本発明の金属パターンの形成方法においては、支持体が、金属塩受容層を有することが好ましく、金属塩受容層を構成する具体的な材料としては、水分等を吸水して膜厚が増大する親水性膨潤層で、親水性のバインダーを主成分とするものであることが好ましい。
【0069】
親水性バインダーとしては、特に制限はないが、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)およびその誘導体、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、ポリアクリル酸等が挙げられる。
【0070】
本発明において、親水性膨潤層は、その膨潤度が1.05以上、2.80未満であることが好ましい。本発明において膨潤度とは、水分等を付与する前の膜厚hdに対する、水分を付与して膨潤した後の膜厚hwの比hW/hdとして定義される。
【0071】
膨潤度が1.05以上、2.80未満であることが好ましいが、より好ましくは1.20以上、2.80未満である。本発明において、所望の膨潤度に調整する手段としては、例えば、親水性バインダーの選択とその架橋処理によって達成できる。
【0072】
一般的な親水性バインダーは、水溶液の塩濃度が高いと、その吸収能が低いが、おむつ用に利用されているの吸水性ポリマーを親水性バインダーとして適用する方法も有用である。吸水性ポリマーは、その原料ポリマーから天然高分子系と合成高分子系に大別される。天然高分子系としては、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体、デンプン−スチレンスルホン酸グラフト重合体、デンプン−ビニルスルホン酸グラフト重合体、デンプン−アクリルアミドグラフト重合体等といったデンプン系;セルロース−アクリロニトリルグラフト重合体、セルロース−スチレンスルホン酸グラフト重合体、カルボキシメチルセルロースの架橋体といったセルロース系;ヒアルロン酸、アガロースといった多糖類系;コラーゲンといったタンパク質等が挙げられる。
【0073】
本発明においては、親水性バインダーとしてゼラチンを用いる場合、その架橋処理としては、ゼラチン硬膜剤を用いることが好ましい。
【0074】
ゼラチンとしては、例えば、石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチン、また、フタル化ゼラチン或いはフェニルカルバモイル化ゼラチン等、各種修飾ゼラチンを用いることができる。これらセラチンの架橋剤としては、実質的に架橋性バインダーのみを架橋して、水溶性化合物と架橋しない剤であれば、特に限定されない。ゼラチンの架橋剤としては、特開昭61−249045号、同61−245153号公報に記載のビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤などを使用することができる。
【0075】
《ハロゲン化銀》
本発明の金属パターンの形成方法においては、金属塩が、ハロゲン化銀であることが好ましい。
【0076】
本発明で用いられるハロゲン化銀の組成は、塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀、塩沃化銀等任意のハロゲン組成を有するものであってもよいが、導電性のよい金属銀を得るためには、感光感度の高い微粒子が好ましく、沃臭化銀粒子が好ましく用いられる。
【0077】
ハロゲン化銀粒子が還元(現像)され金属銀粒子になった後の表面比抵抗を下げ、電磁波を効率的に遮断するためには、現像銀粒子同士の接触面積ができるだけ大きくなる必要がある。そのためには表面積比を高めるためにハロゲン化銀粒子サイズが小さい程よいが、小さすぎる粒子は凝集して大きな塊状になりやすく、その場合接触面積は逆に少なくなってしまうので最適な粒子径が存在する。本発明において、高感度ハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズは、球相当径で0.01〜0.3μmが好ましく、より好ましくは0.03〜0.1μmである。なお、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径を表す。ハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズは、ハロゲン化銀粒子の調製時の温度、pAg、pH、銀イオン溶液とハロゲン溶液の添加速度、粒子径コントロール剤(例えば、1−フェニル−5メルカプトテトラゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズトリアゾール、テトラザインデン化合物類、核酸誘導体類、チオエーテル化合物類等)を適宜組み合わせて制御することができる。
【0078】
本発明において、高感度ハロゲン化銀粒子同士の粒子間距離を適度に保ち、現像銀の接触効率を適切に保つという観点から、高感度ハロゲン化銀粒子の平均粒径(RH)と、低感度ハロゲン化銀粒子の平均粒径(RL)の比(RH/RL)が2.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.5以下である。
【0079】
また、高感度ハロゲン化銀粒子の平均粒径は0.01〜0.3μmであることが好ましい。
【0080】
本発明においては、ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(6角平板状、3角形平板状、4角形平板状等)、8面体状、14面体状等、さまざまな形状であることができる。感度を高くするためにアスペクト比が2以上や4以上、さらに8〜16であるような平板粒子も好ましく使用することができる。粒子サイズの分布には特に限定はないが、露光によるパターン形成時に、パターンの輪郭をシャープに再現させ、高い導電性を維持しながら透明性を高めるという観点からは、狭い分布が好ましい。本発明に係る感光材料に用いられるハロゲン化銀粒子の粒径分布は、好ましくは変動係数が0.22以下、さらに好ましくは0.15以下の単分散ハロゲン化銀粒子である。ここで変動係数は、粒径分布の広さを表す係数であり、次式によって定義される。
【0081】
変動係数=S/R
(式中、Sは粒径分布の標準偏差、Rは平均粒径を表す。)
本発明で用いられるハロゲン化銀粒子は、さらに他の元素を含有していてもよい。例えば、写真乳剤において、硬調な乳剤を得るために用いられる金属イオンをドープすることも有用である。特に鉄イオン、ロジウムイオン、ルテニウムイオンやイリジウムイオン等の第8〜10族金属イオンは、金属銀像の生成の際に露光部と未露光部の差が明確に生じやすくなるため好ましく用いられる。
【0082】
これらの金属イオンは、塩や錯塩の形でハロゲン化銀乳剤に添加することができる。ロジウムイオン、イリジウムイオンに代表される遷移金属イオンは、各種の配位子を有する化合物であることもできる。そのような配位子としては、例えば、シアン化物イオンやハロゲンイオン、チオシアナートイオン、ニトロシルイオン、水、水酸化物イオン等を挙げることができる。具体的な化合物の例としては、臭化ロジウム酸カリウムやイリジウム酸カリウム等が挙げられる。
【0083】
本発明において、ハロゲン化銀に含有される前記金属イオン化合物の含有率は、ハロゲン化銀1モル当たり、10-10〜10-2モル/モルAgであることが好ましく、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。これらの金属イオン量は、低感度ハロゲン化銀粒子の方が高感度ハロゲン化銀粒子に比べて多いことが好ましい。
【0084】
本発明では、さらに感度を向上させるため、写真乳剤で行われる化学増感を施すこともできる。化学増感としては、例えば、金、パラジウム、白金増感等の貴金属増感、無機イオウ、または有機イオウ化合物によるイオウ増感等のカルコゲン増感、塩化錫、ヒドラジン等還元増感等を利用することができる。
【0085】
また、ハロゲン化銀粒子には分光増感を施すことができる。前記感度の異なる少なくとも2種類のハロゲン化銀乳剤の少なくとも一方は分光増感されていることが好ましい。
【0086】
好ましい分光増感色素としては、シアニン、カルボシアニン、ジカルボシアニン、複合シアニン、ヘミシアニン、スチリル色素、メロシアニン、複合メロシアニン、ホロポーラー色素等を挙げることができ、当業界で用いられている分光増感色素を単用あるいは併用して使用することができる。
【0087】
《銀塩の還元処理:現像処理》
本発明の金属パターンの形成方法においては、パターン状に付与した金属塩の還元処理に用いる還元剤を含有する溶液として、写真業界で周知の現像液を用いることができる。
【0088】
適用可能な現像液としては、黒白現像主薬を含む現像液であることが好ましい。
【0089】
現像主薬としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンスルホン酸ナトリウム、クロルハイドロキノン等のハイドロキノン類の他に、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン等のピラゾリドン類及びN−メチルパラアミノフェノール硫酸塩等の超加成性現像主薬と併用することができる。また、ハイドロキノンを使用しないでアスコルビン酸やイソアスコルビン酸等レダクトン類化合物を上記超加成性現像主薬と併用することが好ましい。
【0090】
また、現像液には、保恒剤として亜硫酸ナトリウム塩や亜硫酸カリウム塩、緩衝剤として炭酸ナトリウム塩や炭酸カリウム塩、現像促進剤としてジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミノプロパンジオール等を適宜使用できる。
【0091】
本発明においては、ハロゲン化銀により形成したパターンに所定の露光を施し、現像液による還元処理を行った後、未還元のハロゲン化銀粒子を除去して安定化させる目的で定着処理を行うこともできる。本発明における定着処理は、ハロゲン化銀粒子を用いた写真フィルムや印画紙等で用いられる定着液処方を用いることができる。定着処理で使用する定着液は、定着剤としてチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウム等を使用することができる。定着時の硬膜剤として硫酸アルミウム、硫酸クロミウム等を使用することができる。定着剤の保恒剤としては、現像処理液で述べた亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸等を使用することができ、その他にクエン酸、蓚酸等を使用することができる。
【0092】
また、最終処理工程として、水洗水を用いた洗浄工程を適用しても良い。本発明に使用する水洗水には、防黴剤としてN−メチル−イソチアゾール−3−オン、N−メチル−イソチアゾール−5−クロロ−3−オン、N−メチル−イソチアゾール−4,5−ジクロロ−3−オン、2−ニトロ−2−ブロム−3−ヒドロキシプロパノール、2−メチル−4−クロロフェノール、過酸化水素等を使用することができる。
【0093】
《熱現像処理》
本発明の金属パターンの形成方法においては、金属塩として有機銀塩(非感光性脂肪族カルボン酸銀塩)を用い、更に感光性ハロゲン化銀粒子、銀イオン還元剤及びバインダーを有するインクを用いて、金属塩を含むパターンを形成することができる。
【0094】
非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子としては、例えば、炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩、例えば、リグノセリン酸銀、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、エルカ酸銀およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0095】
本発明に係る金属塩と還元剤とを含むインクには、これらの非感光性脂肪族カルボン酸銀塩粒子と共に、前述の感光性ハロゲン化銀粒子、銀イオン還元剤及び、前述のような親水性バインダーを有する。
【0096】
銀イオン還元剤(単に還元剤ということもある)としては、米国特許第3,589,903号、同第4,021,249号若しくは英国特許第1,486,148号の各明細書及び特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号若しくは特公昭51−35727号等の各公報に記載されたポリフェノール化合物、例えば、2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル等の米国特許第3,672,904号明細書に記載されたビスナフトール類、更に、例えば、4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール等の米国特許第3,801,321号明細書に記載されているようなスルホンアミドフェノール又はスルホンアミドナフトール類を用いることができる。
【0097】
この様な構成からなる金属塩と還元剤とを含むインクを用いて、パターン状の細線を形成した後、例えば、約100〜200℃の温度範囲で熱エネルギーを付与することにより、銀パターンを得ることができる。
【0098】
《メッキ処理》
本発明においては、特には、メッキ触媒として作用する金属微粒子を含有する導電性パターンは、形成後に加熱、焼成処理により良好な導電性を呈するが、特に好ましくは、導電性パターンが含有している金属微粒子をメッキ触媒として作用させてメッキ処理を施すことが、より優れた導電性が得られる観点から好ましい。
【0099】
本発明においては、従来公知のメッキ法を適用できるが、その中でも、低抵抗の導電性パターンを、煩雑な工程なしに簡便、低コストでメッキ処理することができる観点から、無電解メッキ法を適用することが好ましい。
【0100】
無電解メッキ法によるメッキ処理は、上述の方法に従ってメッキ触媒として作用する金属微粒子を含有する導電性パターンに、メッキ剤を接触させる方法である。これにより、メッキ触媒である金属微粒子とメッキ剤とが接触し、導電性パターン部に無電解メッキが施されて、より優れた導電性を得ることができる。
【0101】
本発明に係るメッキ処理で使用できるメッキ剤としては、例えば、メッキ材料として析出させる金属イオンが均一溶解された溶液が用いられ、金属塩とともに還元剤が含有される。ここで、通常は溶液が用いられるが、無電解メッキを生じさせるものであればこれに限らず、ガス状や粉体のメッキ剤を適用することも可能である。
【0102】
具体的に、この金属塩としては、Au、Ag、Cu、Ni、Co、Feから選択される少なくとも1種の金属のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などが適用可能である。また還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン塩、ボロハライド塩、次亜燐酸塩、次亜硫酸塩、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、カルボン酸塩などが適用可能である。なお、これらの還元剤に含有されるボロン、燐、窒素などの元素が、析出する電極に含有されていても構わない。或いはこれらの金属塩の混合物を用いて合金が形成されていても構わない。
【0103】
メッキ剤は、上記金属塩と還元剤とが混合されたものを適用するようにしてもよいし、或いは金属塩と還元剤とを別個に適用するようにしてもよい。ここで、導電性パターンをより鮮明に形成するためには、金属塩と還元剤とが混合されたものを適用することが好ましい。また、金属塩と還元剤とを別個に適用する場合には、導電性パターン部にまず金属塩を配した後、還元剤を配することで、より安定した電極パターンを形成することができる。
【0104】
メッキ剤には、必要があれば、pH調整のための緩衝剤、界面活性剤などの添加物を含有させることができる。また、溶液に用いる溶媒としては、水以外にアルコール、ケトン、エステルなどの有機溶剤を添加するようにしてもかまわない。
【0105】
メッキ剤の組成は、析出させる金属の金属塩、還元剤、および必要に応じて添加物、有機溶媒を添加した組成で構成されるが、析出速度に応じて濃度や組成を調整することができる。また、メッキ剤の温度を調節して析出速度を調整することもできる。この温度調整の方法としては、メッキ剤の温度を調整する方法、また例えばメッキ剤中に浸漬する場合、浸漬前に基板を加熱、冷却して温度調節する方法などが挙げられる。さらに、メッキ剤に浸漬する時間で析出する金属薄膜の膜厚を調整することもできる。
【0106】
《酸化処理》
本発明においては、金属塩の還元を行った後、酸化処理を行うことが好ましい。酸化処理により、不要な金属成分をイオン化して溶解除去することが可能となり、フィルムの透過率をより高めることが可能となる。
【0107】
《黒化処理》
本発明に係る金属パターンを、ディスプレイパネルの電磁波遮蔽用に用いる場合は、金属表面の光の反射を防止して画像のコントラストを向上させるために、表面を黒化処理することが好ましい。
【0108】
具体的には、金属パターンの表面に黒色系塗料を塗布する方法、金属パターン形成原料中に黒色系顔料を混合しておく方法、金属パターン形成後に酸化処理して、黒色系酸化皮膜を形成する方法などが挙げられる。本発明においては、金属パターン形成原料中に黒色系顔料を混合しておく方法が好ましく、特にハロゲン化銀含有分散物中に黒色系顔料を混合しておくと、金属塩であるハロゲン化銀の還元反応が促進される効果が認められるので好ましい。本発明に用いられる黒色系顔料として好ましいものは、カーボンブラック、グラファイト等である。
【0109】
《電磁波遮蔽材料の製造方法》
本発明の金属パターンの形成方法をより具体化するには、以下のような工程を有する製造方法を参考にすることができる。例えば、金属パターン特性の条件を入力する工程、該入力された条件に対応するパターンを選択または算出する工程、該パターンを連続するウェブ上に記録する工程、該ウェブ上に記録されたパターンを金属パターンに変換する工程、形成されたウェブ上の金属パターンをその特性条件ごとに検出する工程、該金属パターンが形成されたウェブを裁断する工程、からなる金属パターンの製造方法である。
【実施例】
【0110】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0111】
《パターンの形成》
〔試料1の作成〕
下塗り用ラテックス層を有する厚さ100μm、光線透過率95%の透明ポリエステルフィルムである支持体1上に、下記の金属塩を含有するインクと還元剤含有液とを用いて、図1のb)に記載の方法に従って、金属銀からなる金属パターンを形成した。
【0112】
硝酸銀水溶液にアンモニア水を加えて、アンモニア性硝酸銀溶液を調製し、これを金属塩を含有するインクとし、上記支持体の金属塩受容層上に、インクジェット記録ヘッドを用いて、線間隔300μmの正方メッシュパターンを描画した。インクジェット記録ヘッドは、ノズル口径10μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpi(本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)のピエゾ型ヘッドを用い、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型インクジェットプリンタを使用した。
【0113】
次いで、ホルムアルデヒドの2.0質量%水溶液に、少量の水酸化ナトリウムを加えた還元剤含有液1を調製し、上記金属塩を含有するインクによりメッシュパターンを描画した支持体全面に、スピンコータを用いて均一に塗布し、3分間放置した結果、線幅12μmの黒みがかった銀メッシュパターンを有する電磁波遮断材料である試料1を作製した。
【0114】
なお、上記支持体1の光線透過率は、分光光度計(日立分光光度計U−3210、日立製作所製)を用いて、400〜700nmにおける透過率を測定し、その平均値を求めた。
【0115】
〔試料2の作製〕
上記試料1の作製において、金属塩を含有するインクにより形成したメッシュパターン上への還元剤含有液1の付与方法を、図1のc)に記載の方法により行った以外は同様にして、電磁波遮断材料である試料2を作製した。
【0116】
具体的な還元剤含有液1の付与方法としては、超音波ミスト発生機にて、還元剤含有液をミスト化して密閉可能な容器内に導入した。次いで、40℃に維持した該容器内に、試料1と同様の金属塩を含有するインクによりメッシュパターンを描画した支持体を3分間放置した結果、線幅12μmの黒みがかった銀メッシュパターンが形成された。
【0117】
〔試料3の作製〕
上記試料2の作製において、支持体1を下記の支持体2に変更した以外は同様にして、電磁波遮断材料である試料3を作製した。
【0118】
(支持体2の作製)
下塗り用ラテックス層を有する厚さ100μm、光線透過率95%の透明ポリエステルフィルムである支持体上に、脱イオン化処理ゼラチン、界面活性剤(S−1:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム)、ゼラチン硬膜剤(H−1:テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン)、増粘剤(V−1:デキストラン硫酸塩)を含有する金属塩受容層塗布液を塗布、乾燥して、図4のa)に記載の様なゼラチン塗布量12g/m2の金属塩受容層7を有する支持体2を作製した。
【0119】
〔試料4の作製〕
(感光性ハロゲン化銀の調製)
〈ハロゲン化銀乳剤の調製〉
35℃に保温した0.5%ゼラチン水溶液1リットル中に下記(A1液)及び(B1液)を銀電位(EAg)=85mV、pH=5.8に制御しつつ同時添加し、さらに下記(C1液)及び(D1液)をEAg=85mV、pH=5.8に制御しつつ同時添加した。この時、銀電位の制御は10%臭化カリウム水溶液を用い、pHの制御は酢酸または水酸化ナトリウム水溶液を用いて行った。
【0120】
(A1液)
臭化カリウム 104g
沃化カリウム 3.0g
水を加えて 1300ml
(B1液)
硝酸銀 150g
水を加えて 1360ml
(C1液)
臭化カリウム 310g
ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム 4×10-8モル
ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム 2×10-5モル
沃化カリウム 10g
水を加えて 4000ml
(D1液)
硝酸銀 480g
水を加えて 4200ml
添加終了後、花王アトラス社製のデモールNの5%水溶液と硫酸マグネシウムの20%水溶液を用いて脱塩を行った後、ゼラチン水溶液と混合して平均粒径0.04μm、粒径分布の変動係数0.13のハロゲン化銀乳剤1を得た。
【0121】
〈ハロゲン化銀乳剤の化学増感処理〉
上記ハロゲン化銀乳剤1に対し、チオ硫酸ナトリウムをハロゲン化銀1モル当たり2.0mg用い40℃にて化学増感を行い、化学増感終了後に4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン(TAI)をハロゲン化銀1モル当たり500mg添加して、感光性ハロゲン化銀乳剤1を得た。
【0122】
(金属パターンの形成)
上記調製した感光性ハロゲン化銀乳剤1に、少量の界面活性剤(S−1:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム)及びゼラチン硬膜剤(H−1:テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン)を添加して、ハロゲン化銀を含有するインクを調製した。次いで、支持体1上に、インクジェット記録ヘッドを用いて、線間隔300μmの正方メッシュパターンを描画した。インクジェット記録ヘッドは、ノズル口径25μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpiのピエゾ型ヘッドを用い、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型インクジェットプリンタを使用した。上記正方メッシュパターンを乾燥した後、光照射して、還元剤含有液2として下記の現像液を用いて、25℃で1分間現像した。
【0123】
〈還元剤含有液2:現像液〉
ハイドロキノン 30g
1−フェニル−3,3−ジメチルピラゾリドン 1.5g
臭化カリウム 3.0g
亜硫酸ナトリウム 50g
水酸化カリウム 30g
硼酸 10g
N−n−ブチルジエタノールアミン 15g
水を加えて1Lとし、pHは10.20に調節した。
【0124】
上記還元処理を行った後、水洗、乾燥して、線幅12μmの黒色の銀メッシュパターンを有する電磁波遮断材料である試料4を作製した。この試料4の作製に適用したパターンの形成方法は、金属パターン形成に必要なハロゲン化銀のみを用いて、パターン像を描画し、そのほとんどが現像されるので、特開2004−221564号公報に記載の方法の様な大がかりなハロゲン化銀乳剤の塗布設備や、メッシュパターンの露光設備、および定着処理が不要であり、コスト、環境上のメリットが大きい。
【0125】
〔試料5の作製〕
上記試料4の作製において、還元剤含有液2の付与方法を、全面に付与する液体現像方法に代えて、還元剤含有液2である現像液を前述のインクジェット記録ヘッドに装填し、ハロゲン化銀を含有するインクにより形成したパターン上に、図2に記載の様に線間隔300μmの正方メッシュパターン状に付与した以外は同様にして、線幅12μmの黒色の銀メッシュパターンを有する電磁波遮断材料である試料5を作製した。
【0126】
〔試料6の作製〕
上記試料5の作製において、支持体1を前記支持体2に変更した以外は同様にして、図4に記載の方法に従って、電磁波遮断材料である試料6を作製した。
【0127】
〔試料7の作製〕
上記試料5の作製において、ハロゲン化銀を含有するインクと還元剤含有液2である現像液を、それぞれ前述のインクジェット記録ヘッドに装填し、図3に記載の方法に従って、同時にインクジェット記録ヘッドのノズルより、同一領域に射出して線間隔300μmの正方メッシュパターンを形成した以外は同様にして、試料7を作製した。
【0128】
〔試料8の作製〕
(支持体3の作製)
下塗り用ラテックス層を有する厚さ100μm、光線透過率95%の透明ポリエステルフィルムである支持体上に、還元剤としてハイドロキノン、脱イオン化処理ゼラチン、界面活性剤(S−1:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム)、ゼラチン硬膜剤(H−1:テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン)、増粘剤(V−1:デキストラン硫酸塩)を含有する金属塩受容層塗布液を塗布、乾燥して、図5のa)に記載の様なゼラチン塗布量12g/m2の金属塩受容層8を有する支持体3を作製した。
【0129】
(金属パターンの形成)
前記感光性ハロゲン化銀乳剤1に、少量の界面活性剤(S−1:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム)及びゼラチン硬膜剤(H−1:テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン)を添加して、ハロゲン化銀を含有するインクを調製した。次いで、支持体3上に、インクジェット記録ヘッドを用いて、線間隔300μmの正方メッシュパターンを描画した。インクジェット記録ヘッドは、ノズル口径10μm、駆動周波数12kHz、ノズル数128、ノズル密度180dpiのピエゾ型ヘッドを用い、最大記録密度720×720dpiのオンデマンド型インクジェットプリンタを使用した。上記正方メッシュパターンを乾燥してハロゲン化銀乳剤を還元し、線幅14μmの黒色の銀メッシュパターンを有する電磁波遮断材料である試料8を作製した。
【0130】
〔試料9の作製〕
前記試料1の作製において、還元剤含有液1を下記の還元剤含有液3に変更した以外は同様にして、試料9を作製した。
【0131】
〈還元剤含有液3〉
脱イオン化処理ゼラチンを2.0質量%、ホルムアルデヒドを2.0質量%含む水溶液に、少量の水酸化ナトリウムを加えて、還元剤含有液2を調製した。
【0132】
〔試料10の作製〕
前記試料4の作製において、還元剤含有液2である現像液を下記の還元剤含有液4に変更し、スピンコート法で全面に付与した以外は同様にして、試料10を作製した。
【0133】
〈還元剤含有液4〉
脱イオン化処理ゼラチン 20g
ハイドロキノン 30g
1−フェニル−3,3−ジメチルピラゾリドン 1.5g
臭化カリウム 3.0g
亜硫酸ナトリウム 50g
水酸化カリウム 30g
硼酸 10g
N−n−ブチルジエタノールアミン 15g
水を加えて1Lとし、pHは10.20に調節した。
【0134】
〔試料11の作製〕
(金属塩を含有するインクの調製)
〈ベヘン酸銀分散物の調製〉
ベヘン酸(ヘンケル社製、EdenorC22−85R)87.6g、蒸留水423リットル、5モル/リットルのNaOH水溶液49.2リットル、tert−ブチルアルコール120リットルを混合し、75℃にて1時間撹拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液を得た。
【0135】
別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2リットルを用意し、10℃に保温した。635リットルの蒸留水と30リットルのtert−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液の全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ62分10秒と60分かけて添加した。その時、硝酸銀水溶液添加開始後、7分20秒間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、その後、ベヘン酸ナトリウム溶液を添加開始し、硝酸銀水溶液添加終了後、9分30秒間はベヘン酸ナトリウム溶液のみが添加されるようにした。ベヘン酸ナトリウム溶液を添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、25℃に降温した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、濾別した固形分を濾水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
【0136】
次に、以下の方法でベヘン酸銀の分散物を作製した。乾燥固形分100g相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−217、平均重合:約1700)7.4g及び水を添加し、全体量を385gとしてからホモミキサーにて予備分散した。次に予備分散済みの原液を分散機(マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、マイクロフルイダイザーM−110S−EH、GIOZインタラクションチャンバー使用)を用いて3回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。
【0137】
〈インクの調製〉
前記調製したベヘン酸銀分散物の銀1モルに対して、ベンゾトリアゾールを1.02g、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、PVA−235)を10.8g、試料4の作製に用いたハロゲン化銀乳剤をAg量として0.06モルと、少量の防腐剤、界面活性剤を添加し、金属塩を含有するインクを調製した。
【0138】
(還元剤含有液5の調製)
還元剤として1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサンを5.0質量%と、適量のサーフィノール104E(日信化学(株)製)とメタノールを含む水溶液を調製し、これを還元剤含有液5とした。
【0139】
(金属パターンの形成)
前記試料5の作製と同様にして、インクとして上記調製したベヘン酸銀を含むインクを用い、また還元剤含有液として上記調製した還元剤含有液5を用いて、前述のインクジェット記録ヘッドにそれぞれ装填し、図2に記載の方法に従って、インクジェット記録ヘッドのノズルより、同一領域に射出して線間隔300μmの正方メッシュパターンを形成した。印字したパターン像を乾燥させた後、120℃で20秒間の加熱処理を行って、線幅13μmの黒色の銀メッシュパターンを有する電磁波遮断材料である試料11を作製した。
【0140】
〔試料12の作製〕
前記試料4の作製に用いたハロゲン化銀を含有するインクを、支持体1全面に均一の塗設した後、ライン幅が28μm、ライン同士の間隔が300μmの格子状のフォトマスクを介して、紫外線ランプを用いて露光を行った後、試料4の作製に用いた現像液で、25℃で60秒間現像処理を行った後、下記定着液を用いて25℃で120秒間の定着処理を行い、ついで水洗処理を行って、線幅13μmの黒色の銀メッシュパターンを有する電磁波遮断材料である試料12を作製した。
【0141】
(定着液)
純水 750ml
チオ硫酸ナトリウム 250g
無水亜硫酸ナトリウム 15g
氷酢酸 15ml
カリミョウバン 15g
水を加えて全量を1リットルとした。
【0142】
〔試料13の作製〕
前記試料5の作製において、ハロゲン化銀を含有するインクを、スピンコート法により支持体1全面に均一の塗設した後、還元剤含有液2である現像液を前述のインクジェット記録ヘッドに装填し、線間隔300μmの正方メッシュパターン状に付与した以外は同様にして、線幅18μmの黒色の銀メッシュパターンを有する電磁波遮断材料である試料13を作製した。
【0143】
〔試料14の作製〕
前記試料1の作製において、金属塩を含有するインクを、スピンコート法により支持体1全面に均一の塗設した後、還元剤を含有する溶液を前述のインクジェット記録ヘッドに装填し、線間隔300μmの正方メッシュパターン状に付与した以外は同様にして、線幅16μmの黒色の銀メッシュパターンを有する電磁波遮断材料である試料14を作製した。
【0144】
なお、表1に略称で記載した事項の詳細は、以下の通りである。
【0145】
〈付与手段〉
IJ:インクジェット方式
C:塗布方式
〈還元剤〉
HA:ホルムアルデヒド
HQ:ハイドロキノン
HQ/Gel:ハイドロキノンとゼラチンを含有
HA/Gel:ホルムアルデヒドとゼラチンを含有
還元剤1:1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン
《試料の評価》
以上のように形成した銀粒子から構成される金属パターンを形成した各試料について、下記の各評価を行った。
【0146】
(表面比抵抗の測定)
各試料について、抵抗率計としてロレスタGP MCP−T610型(ダイヤインスツルメンツ社製)を用いて、表面比抵抗(Ω/□)を測定し、これを電磁波遮断性能の尺度とした。
【0147】
(光線透過率の測定)
各試料について、分光光度計(日立分光光度計U−3210:(株)日立製作所製)を用いて、400〜700nmにおける透過率を測定し、その平均値を求めた。
【0148】
(表面平滑性の評価)
各試料の金属パターン形成面表面の凹凸の有無や膜面の均一性を目視観察し、下記の基準に従って、表面平滑性の評価を行った。
【0149】
◎:パターン部と非パターン領域とで、凹凸差が全く認められず、極めて平面性が高い
○:パターン部と非パターン領域とで、凹凸差がほぼ認められず、平面性が高い
△:パターン部と非パターン領域とで、やや凹凸差が認められる
×:パターン部と非パターン領域とで、明らかな凹凸差が認められる
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0150】
【表1】

【0151】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明の金属パターンの形成方法に従って作製した試料は、比較例に対し、電磁波遮断性能及び透明性に優れ、また、試料12〜14の様に、金属塩を試料全面に付与し、未還元の金属塩を除去するという操作を行う必要がなく、金属塩の使用量を必要最小限に抑え、かつ少ない工程で、簡便に金属パターンを形成することができた。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】請求項1に係る本発明の金属パターンを形成する方法の一例を示す概略断面図である。
【図2】請求項2に係る本発明の金属パターンを形成する方法の一例を示す概略断面図である。
【図3】請求項2に係る本発明の金属パターンを形成する方法の他の一例を示す概略断面図である。
【図4】請求項2に係る本発明の金属パターンを形成する方法の他の一例を示す概略断面図である。
【図5】請求項3に係る本発明の金属パターンを形成する方法の一例を示す概略断面図である。
【図6】請求項4に係る本発明の金属パターンを形成する方法の一例を示す概略断面図である。
【図7】請求項5に係る本発明の金属パターンを形成する方法の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0153】
1 支持体
2 金属塩を含むインク
3 還元剤を含有する溶液
3′ 還元性のガスや還元性蒸気
4 金属パターン
5 混合物
6 溶液付与手段
7 金属塩受容層
8 還元剤とバインダーとの混合物
9 還元剤含有層
E エネルギー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、金属塩をパターン状に印刷し、該金属塩を還元することによって金属パターンを形成することを特徴とする金属パターンの形成方法。
【請求項2】
支持体上に、金属塩をパターン状に印刷した後、該金属塩の部位に還元剤を同様のパターン状で付与し、該金属塩を還元することによって金属パターンを形成することを特徴とする金属パターンの形成方法。
【請求項3】
支持体上に、金属塩をパターン状に印刷した後、還元剤とバインダーとの混合物を均一に塗設して、該金属塩を還元することによって金属パターンを形成することを特徴とする金属パターンの形成方法。
【請求項4】
還元剤を含有する支持体上に、金属塩をパターン状に印刷し、該金属塩を還元することによって金属パターンを形成することを特徴とする金属パターンの形成方法。
【請求項5】
支持体上に、金属塩と還元剤の混合物をパターン状に印刷し、エネルギーを付与する還元促進処理を施して、該金属塩を還元することによって金属パターンを形成することを特徴とする金属パターンの形成方法。
【請求項6】
前記支持体が、金属塩受容層を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属パターンの形成方法。
【請求項7】
前記金属塩が、ハロゲン化銀であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属パターンの形成方法。
【請求項8】
前記金属塩をパターン状に印刷する方法が、インクジェット記録ヘッドを用いたインクジェット方式であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属パターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−47793(P2008−47793A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223953(P2006−223953)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】