説明

金属ペーストおよびインク

溶媒とそこに分散された複数の金属ナノ粒子とを含む金属組成物は、基板上の金属組成物の硬化によって約5×10−4Ω・cm以下の抵抗率を有する金属導体が得られるように、配合される。アセンブリの電気構成要素は、基板上で金属組成物を硬化することによって形成された金属導体によって、相互接続することができる。金属ナノ粒子を含む金属組成物は、基板上に堆積し、固化することができる。金属組成物は、金属組成物の固化の前または後に金属線に接触させ、固化した金属組成物に固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれているRoundhillらの米国仮出願第61/077,711号およびRoundhillらの同第61/081,539号の優先権を主張するものである。
【0002】
この文書は、導電率が改善された金属導体を形成するのに使用することができる、金属ペーストおよびインクに関する。
【背景技術】
【0003】
金属インクのような金属ペーストは、金属ナノ粒子、液体ビヒクル、分散剤、およびその他の添加剤と共に配合することができる。添加剤は、粘度、ぬれ性、および選択された基板に対する接触角などの物理的性質を変化させるために含めることができる。インク(例えば、約5000cP未満)に比べてより高い粘度のペースト(例えば、約10,000cPから約60,000cP)は、金属ナノ粒子の持続的分散を容易にする。金属インクまたはペーストの使用は、印刷法および基板を含めたいくつかの因子をベースにすることができる。低粘度のインク(例えば、約20cP未満、または約10cPから約20cPの間)は、インクジェット印刷またはエアロゾル印刷することができる。ペーストは、インクジェット印刷するには粘度が高すぎ、スクリーン印刷またはより高い粘度に適したその他の方法によって付着させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国仮出願第61/077,711号
【特許文献2】米国仮出願第61/081,539号
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/0286488号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、一部の金属ペーストまたはインクは、不活性雰囲気中で高温で、即ち、フレキシブルエレクトロニクス(例えば、ポリマー基板を有する)などのある特定の適用例で不適切となり得る状態に、加熱する必要があると考えられる。さらに、一部の金属ペーストまたはインクは、高沸点を有する1種または複数の液体成分を含む。高沸点成分を有する金属ペーストまたはインクを、空気中で低速熱焼結プロセスによって硬化した場合、高沸点成分は不揮発性生成物を形成し、それが硬化した導体中に残る可能性がある。不揮発性生成物への熱分解は、不活性雰囲気における熱焼結中でも可能性があり、汚染された導体および比較的高い抵抗率をもたらす可能性がある。場合によっては、液体ビヒクルからの有機残留物が、導体と基板との間の接着を劣化させ、金属導体の品質を低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】金属組成物の調製を示すフローチャートである。
【図2】光焼結を含むプロセスによって金属導体を形成するためのプロセスを示す、フローチャートである。
【図3】熱焼結および光焼結によって形成された銅導体に関する、抵抗率対プロセス温度をプロットした図である。
【図4】金属組成物から作製された印刷導体によって相互接続されたチップを有する、アセンブリを示す図である。
【図5】金属組成物から作製された印刷導体によって、ビアを通して相互接続されたチップを有する、アセンブリを示す図である。
【図6】光焼結済み金属バンプに固定された、線を示す図である。
【図7】光焼結済み金属バンプの形成におけるステップを示す図である。
【図8】光焼結済み金属バンプ同士の間に固定された、金属線を示す図である。
【図9A】光焼結済み銅バンプに銅線を固定する様々な段階を示す写真である。
【図9B】光焼結済み銅バンプに銅線を固定する様々な段階を示す写真である。
【図9C】光焼結済み銅バンプに銅線を固定する様々な段階を示す写真である。
【図9D】光焼結済み銅バンプに銅線を固定する様々な段階を示す写真である。
【図9E】光焼結済み銅バンプに銅線を固定する様々な段階を示す写真である。
【図9F】光焼結済み銅バンプに銅線を固定する様々な段階を示す写真である。
【図10】コンプライアントな光焼結済み金属バンプを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
低温加工向けに配合された金属組成物(例えば、インクおよびペースト)は、導電性接着剤としてプリンテッドエレクトロニクスの製造で使用するのに、または、電極や相互接続などの様々な電気部品および回路の製造およびアセンブリを含むその他の用途で使用するのに適している。金属組成物は、光焼結に適切な光学的に透明なビヒクル中に、金属ナノ粒子(例えば、銅、ニッケル、銀、金、アルミニウム、コバルト、モリブデン、および亜鉛など)を含む。これら組成物中のナノ粒子は、サイズおよびパッシベーションコーティングに応じて選択してもよく、この組成物は、精密な印刷が可能になるよう配合してもよい。印刷された組成物中のナノ粒子は、プラスチック基板に適合する温度で、バルク金属膜またはラインに硬化してもよい(例えば、光焼結、熱焼結、またはその両方)。
【0008】
本明細書に記述される金属組成物は、液体ビヒクルからの有機残留物の量が少ない硬化済みの導体が得られるように、配合される。金属組成物は、光焼結プロセスを使用して金属導体が生成されるように、焼結してもよい(例えば、約5ミリ秒未満、約2ミリ秒未満、または約1ミリ秒未満)。この光焼結プロセスでは、高強度光パルス(例えば、約50,000、100,000、または150,000ルクス、またはそれ以上)が、組成物中の金属ナノ粒子によって吸収され、次いで熱に変換される。その結果、金属組成物は、有機成分が熱酸化しまたは分解する前にこの成分を素早く蒸発させる、短い高熱パルスに曝すことができる。金属組成物(例えば、ペーストおよびインク)のこの光焼結は、より低い温度で形成されてよい高い導電率と、一部の熱焼結プロセスのみよりも低い抵抗率とを有する導体をもたらす。
【0009】
いくつかの実施形態では、本明細書に記述される金属組成物は、ポリマー基板上の組成物の光焼結および/または熱焼結(例えば、空気中またはフォーミングガス中)によってより低い抵抗率を有する導体が得られるように、配合してもよい。例えば、本明細書に記述される銅ペーストから作製された銅導体は、約1×10−3Ω・cmから約1×10−6Ω・cmの間の抵抗率を有していてもよい。即ち、銅導体は、約1×10−3Ω・cm未満、約1×10−4Ω・cm未満、約1×10−5Ω・cm未満、または約1×10−6Ω・cmよりも大きい抵抗率を有していてもよい。
【0010】
高導電率(低抵抗率)を有する導体の形成に使用される、金属組成物を調製する実施形態を、図1に示す。調製100は、不活性雰囲気中で行ってもよい。ステップ102では、所望の量(例えば、体積)の液体ビヒクルを調製する。液体ビヒクルは、例えば、芳香族、脂肪族ケトンおよびアルコール、エステル、およびこれらの任意の組合せを含んでいてもよい。ビヒクルが複数の成分を含む場合、これらの成分を、一緒に混合してもよい。ステップ104では、1種または複数の分散剤をビヒクルに添加し、その混合物を撹拌して(例えば、攪拌、振盪、混合、または超音波処理など)、均質性を実現してもよい。分散剤は、例えば、短鎖ポリマーアミン、アルコール、スルホネート、ホスフェート、およびこれらの任意の組合せを含んでいてもよい。ステップ106では、ある量の金属ナノ粒子(例えば、ナノ粉末の形をとる)をビヒクルに添加して、所望の銅負荷を実現してもよい。いくつかの実施形態では、ナノ粉末は、組成物の約30重量%から約70重量%の間、または約50重量%から約80重量%の間であってもよい。次いでこの不均質混合物を撹拌して、ペーストを形成する。ステップ108では、ペーストを超音波処理して均質分散系を形成してもよい。超音波処理は、低エネルギーおよび短時間(例えば、約10分未満、約2から8分、または約5分)で実現されてよい。超音波処理浴の液体は、冷却してもよい(例えば、約0℃に)。超音波処理時間が長すぎる場合、または超音波処理エネルギーが高すぎる場合、キャビテーションによって、許容されないほど高い温度にまで局所的な加熱が引き起こされ、金属ナノ粒子の凝集または集塊形成をもたらす可能性がある。金属ナノ粒子の凝集または凝塊形成の阻害は、超音波処理手順中に金属ペーストを冷却することにより(例えば、約0℃まで)、促進させることができる。金属ナノ粒子の凝集または凝塊形成は、焼結ステップでより大きな粒子サイズおよびより低い性能をもたらす可能性がある。凝集は、銅−銅化学結合形成を引き起こす可能性があるので、銅ナノ粒子にとっては問題になる可能性がある。これらの銅−銅結合は、それに続く機械的作用により破壊することができない場合がある。ステップ110では、粘度、ぬれ性、または接触角などの性質を調節するよう選択された添加剤を添加し、ペーストと混合してもよい。添加剤は、共有結合化合物、イオン化合物、またはこれらの任意の組合せであってもよい。
【0011】
図1に示されるように調製された金属ペーストは、光焼結プロセスによって導体(例えば、導電性膜)に形成してもよい。例えば、金属ペーストは、ドローダウンプロセスによって基板(例えば、DuPontから入手可能なKAPTON(登録商標)ポリイミド膜)上にコーティングしてもよい。光焼結プロセスは、金属ナノ粒子を例えば金属膜に光焼結する光照射の前に、予備乾燥ステップを含んでいてもよい。例えばコーティングは、空気中、約100℃で、約60分間乾燥させてもよい。このステップは、印刷されたペーストからの揮発性成分の除去を促進させる。揮発性成分がペースト中に残される場合、光焼結ステップ中の素早い気化によって、金属ナノ粒子は基板から吹き飛ばされる可能性がある。乾燥後、乾燥したペーストの抵抗率は、例えば100Ω・cm程度に高くなる可能性がある。いくつかの実施形態では、乾燥時間は、より高い温度を使用し、真空中で乾燥ステップを実施し、または赤外線もしくはマイクロ波放射線の下で加熱することによって、短縮してもよい。揮発性液体成分を含有しない銅ペーストでは、乾燥ステップを排除して加工時間を短縮することができる。
【0012】
乾燥ペーストは、フォーミングガス中または空気中で硬化してもよい。例えば、乾燥ペーストは、窒素中に約10体積%までの水素が存在する(例えば、窒素中に約3〜5体積%の水素が存在する)混合物中で約60分間、約350℃で熱焼結してもよい。約20nmから約200nmの範囲のナノ粒子を有する銅ペーストの場合、熱焼結した膜の抵抗率は、約3×10−4Ω・cmであってもよい。フォーミングガスは、乾燥ペースト中の酸化銅を、銅に還元することができる。例えば、フォーミングガス中の水素成分は、以下に示すように、酸化銅と反応して銅および水を形成する:
CuO+H→Cu+H
および
CuO+H→2Cu+H
水蒸気は、フォーミングガス中に持ち去ることができる。
【0013】
熱焼結した金属組成物は、フォーミングガス中または空気中で光焼結することにより、その抵抗率を低下させてもよい。光焼結は、金属組成物を光の照射に曝すステップを含む。光照射の強度(電圧によって測定されたもの)および持続時間(パルス幅によって測定されたもの)は、基板から金属粒子が吹き飛ばされるのを少なくするために、得られる導体の抵抗率を低下させるために、および得られる導体と基板との接着を増大させるために、選択してもよい。ある実施例では、空気中で熱焼結した銅導体を光焼結した後、導体の厚さは約1μmであってもよく、導体の抵抗率は約2×10−5Ω・cmであってもよい。
【0014】
金属ペーストは、空気中でまたは不活性雰囲気中で乾燥してもよい。金属ペーストまたは乾燥金属ペーストは、金属導体が形成されるように熱硬化してもよい。熱焼結した導体は、導体の抵抗率が低下するように光焼結してもよい。ある場合には、乾燥金属ペーストは、熱焼結を行うことなく光焼結することができる。図2は、金属組成物から低抵抗率の導体を形成するためのプロセス200を示す。ステップ202では、金属ペーストを基板に付着させる。ステップ204では、基板を加熱して(例えば、炉内で約60分間、約100℃で)、ペーストを乾燥させてもよい。ステップ206では、乾燥ペーストを熱焼結してもよい。
【0015】
ある実施例では、熱焼結は、下記のステップを含んでいてもよい。乾燥金属ペーストを有する基板を、室温で石英管内に投入する。石英管を排気する(例えば、約100mTorrに)。石英管を加熱し(例えば、約350℃まで)、温度が安定するまでフォーミングガス(例えば、約4体積%の水素を窒素と混合したもの)でパージしてもよい。コーティング付き基板は、約60分間、350℃で加熱してもよい。フォーミングガスおよびヒータを停止させた後、石英管を不活性ガス(例えば、窒素)でパージして、基板を冷却(例えば、100℃よりも低く)してもよい。熱焼結した導体を有する基板は、石英管から取り出すことができる。
【0016】
ステップ208では、乾燥しまたは熱焼結した金属ペーストを、光焼結する。高電圧フラッシュキセノンランプを、光焼結に使用してもよい。光焼結は、電気抵抗率が低く基板との接着が増大した導体を得るために、約100℃未満の温度(例えば、周囲温度、または約20℃)で実現してもよい。参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2008/0286488号は、光焼結プロセスについて記述している。
【0017】
光焼結と熱焼結との間の比較を、表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
銅ペーストANI−1およびANI−2に関する配合を、表2に示す。
【0020】
【表2】

【0021】
図3は、表1の銅導体に関する抵抗率(Ω・cm)対焼結温度を示す。ポイント300は、フォーミングガス環境で銅ペーストANI−1を熱焼結することによって形成された導体の、抵抗率約3×10−4Ω・cmを示す。ポイント302は、フォーミングガス環境で銅ペーストANI−1を熱焼結し(ポイント300)、その後、約20℃の空気中で光焼結して形成された(1.2ミリ秒、1200V)導電性膜の、抵抗率約2×10−5Ω・cmを示す。このように光焼結ステップは、抵抗率を約1桁低下させる。
【0022】
ポイント304、306、および308は、約100℃、約200℃、および約300℃の空気中で銅ペーストANI−1を熱焼結することによって形成された導電性膜の、抵抗率約4.5×10Ω・cmを示す。ポイント310は、空気中で銅ペーストANI−1を熱焼結し(ポイント304、306、および308)、その後、約20℃の空気中で光焼結する(1.2ミリ秒、1200V)ことによって形成された導電性膜の、抵抗率約2×10−4Ω・cmを示す。このように光焼結ステップは、抵抗率を7桁以上低下させる。
【0023】
ポイント312、314、および316は、それぞれ300℃、350℃、500℃のフォーミングガス(N中4体積%H)中でANI−2ペースト(ナノ粒子のサイズ200nm、添加剤または分散剤なし)を熱焼結することによって形成された導電性膜の、抵抗率約4×10Ω・cm、約2×10Ω・cm、および約2×10−4Ω・cmを示す。このように図3は、ある温度(例えば、場合によっては約400℃)よりも低いと、光焼結を使用することによって、熱焼結のみで実現できるよりも低い抵抗率を実現できることを示す。
【0024】
いくつかの実施形態では、乾燥金属ペーストを、中間の熱焼結ステップなしに光焼結してもよい。これは、高い熱焼結温度によって損傷を受ける基板にとって、有利と考えられる。光焼結プロセスでは低温であるので(例えば、100℃よりも低い)、光焼結は、基板に損傷を与えることなくポリエチレンやポリエステル、難燃剤4などのポリマーを含む基板上の金属ペーストおよびインクから、10−5Ω・cm程度またはそれ以下の抵抗率を有する導体を形成するのに(フォーミングガス環境を用いてまたは用いないで)使用することができる。
【0025】
金属組成物(例えば、ペーストまたはインク)は、プリント基板上に相互接続を形成するのに使用してもよい。図4は、光焼結済み金属ペーストで形成された、印刷された金属相互接続402を有するアセンブリ400を示す。アセンブリ400は、2個以上のチップ406を備えた基板404(例えば、シリコン、セラミック、またはポリイミドやポリエステル、液晶ポリマーなどのフレキシブル有機基板)を含んでいてもよい。各チップ406は、その他のチップリード408に接続されていてもよい1つまたは複数の金属リード408を有していてもよい。光焼結ステップは、低温で実施することができるので、金属相互接続402は、基板404上でアセンブルされたチップ406同士の相互接続が得られるように、チップリード408に直接結合させることができる。
【0026】
図5は、チップの金属リード408と金属相互接続402との間のビア502を充填するのに、光焼結済み金属組成物(例えば、ペーストまたはインク)から形成された相互接続402が使用される、アセンブリ500を示す。基板404(例えば、シリコン、セラミック、またはポリイミドやポリエステル、液晶ポリマーなどのフレキシブル有機基板)は、その表面に配置された2個以上のチップ406であって、それぞれが1個または複数の金属リード408を有しているチップ406を含んでいてもよい。コンフォーマルコーティング506を、チップ406が覆われるように基板404上に印刷してもよい。金属チップリード408へのビア502の穴を開け、導電性銅ペーストで充填してもよい。次いで銅相互接続402をビア502の最上部に印刷し、それによってチップリード408を接続してもよい。このプロセスは、多層回路を製作するために繰り返すことができる。
【0027】
高粘度銅ペースト(例えば、約10,000cPから約60,000cP)は、太いラインの印刷が可能になるように、高い銅負荷(例えば、約50重量%から約80重量%)で調製してもよい。低抵抗率の太いラインは、多くの電子デバイスに必要とされる可能性がある高い電流密度を、保有することができる。銅ペーストは、図4および5の相互接続フィーチャ402の所望の形に印刷してもよく、または図5のビア502を充填するのに使用してもよい。銅ペーストの粘度およびぬれ特性は、種々の相互接続の寸法または種々のビアの直径および深さに合わせて、修正することができる。
【0028】
本明細書に記述される金属ペーストは、相互接続の長さおよび電気抵抗を低下させるための、多層相互接続を作製するのに使用してもよい。その結果、より軽い重量であり、より小さい所有面積(real estate)であり、ノイズが少なく、かつ電気シグナルの損失が少ない高密度相互接続を形成して、チップ間接続の改善をもたらすことができる。本明細書に記述される金属ペーストは、チップと基板の相互接続に関する回路設計の性能および信頼性が高まるよう、並びに鉛フリーはんだの使用によって引き起こされる可能性があるスズウィスカの成長リスク(およびその後の短絡)の危険性が除去されるよう、ワイヤボンディングプロセスをなくすのに使用してもよい。直接堆積することができ(例えば、スクリーン印刷)かつ光焼結することができる金属ペーストを使用することによって、多層基板の製造はより簡単になり、コストが少なくなる。
【0029】
ある場合には、金属ペーストまたはインクから形成される導電性バンプは、集積回路とその他の電子回路構成との間のインターフェースを生成するのに使用することができる。図6は、基板404が集積回路406を支持する電子デバイス600を示す。集積回路406は、基板404上に形成された金属バンプ602に電気接続される。金属バンプ602は、線604で集積回路406に接続される。いくつかの実施形態では、金属バンプ602は、銅ペーストまたはインクから形成され、線604は銅線である。
【0030】
図7は、図6のアセンブリを形成するためのプロセス700を示す。ステップ702では、金属インクまたはペーストの液滴を、このインクまたはペーストの性質(例えば、粘度)に応じて選択された方法により、基板上に堆積させる。基板は、例えばポリイミドなどのポリマーであってもよい。ステップ704では、線の一部(例えば、線の一端)をこの液滴に挿入する。ステップ706では、液滴602を硬化する(例えば、熱焼結または光焼結など)。線の別の部分(例えば、他端)は、例えば集積回路に固定してもよい。光焼結は、金属バルク膜への金属ナノ粒子の融合と共に、金属酸化物の除去を促進させる(例えば、酸化銅から銅への還元によって)。焼結ステップ後、線を固体金属バンプに固定し、その結果、線と、金属バンプが接着される基板との間の電気接続が得られる。
【0031】
図8は、基板404上に堆積し光焼結した金属インクまたはペーストから形成された導電性ラインまたはパッド802を含む、デバイス800を示す。導電性ラインまたはパッドは、例えば、約0.1μmの厚さであってもよい。基板404は、KAPTON(登録商標)などのポリマー材料を含んでいてもよい。ボンディングワイヤ804は、光焼結させた銅パッド802の最上部に位置決めされている。ボンディングワイヤ804は、例えば、直径が約25μmであってもよい。金属インクまたはペーストの液滴(例えば、直径が約40〜60μm)806は、導電性パッド/ボンディングワイヤ接合808に堆積され、液滴が乾燥するようにベークされる(例えば、100℃で30分)。次いで液滴を光焼結し、その抵抗を、ワイヤ接合808を通して測定する。
【0032】
図9A〜9Fは、図8に関して記述されたプロセスにおける、様々な段階の写真である。図9Aおよび9Cは、光焼結前に銅の液滴806に挿入された銅線804を示す。図9Bおよび9D〜Fは、光焼結後の銅バンプ900を示す。
【0033】
ある場合には、図10に示されるように、金属バンプはコンプライアント性を有していてもよい。コンプライアントバンプ1000は、コンプライアントポリマー材料1002を基板404上に堆積することによって形成してもよい。次いで金属インクまたはペースト1004を、ポリマー材料1002上に堆積する。線を金属インクまたはペースト1004に挿入し、液滴を硬化(例えば、光焼結)することにより、この線を硬化済みの金属導体に固定することができる。このプロセスは、100℃未満の温度で行うことができる。
【0034】
製造コストは、いくつかの理由で、金ではなく例えば銅で金属バンプを形成した場合に削減することができる。第1に、銅の液滴は、選択された印刷技法により精密に位置決めすることができる(例えば、銅インクは、インクジェット印刷することができる。)。第2に、銅バンプは100℃未満で硬化(例えば、光焼結)することができるので、より広いアレイの基板材料を、高温プロセスによる損傷なしに使用することができる。第3に、銅バンプを低温で硬化することができるので、焼結は、チップパッドと導電性バンプとの間の結合中に生じる金属酸化を最小限に抑えた状態で、空気環境(不活性環境ではない)で引き起こすことができる。
【0035】
本発明について、その詳細な記述と併せて述べてきたが、先の記述は例示であって本発明の範囲を限定するものではなく、その範囲は添付される特許請求の範囲によって定義されることを理解されたい。その他の態様、利点、および修正例は、以下の特許請求の範囲内にある。
【符号の説明】
【0036】
400 アセンブリ
402 金属相互接続
404 基板
406 チップ
408 チップリード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒と、その内部に分散された複数の金属ナノ粒子とを含む、金属ペーストであって、前記金属ペーストの硬化によって約5×10−4Ω・cm以下の抵抗率を有する金属導体が得られるように配合される、金属ペースト。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子が銅を含む、請求項1に記載の金属ペースト。
【請求項3】
前記硬化が熱焼結を含む、請求項1に記載の金属ペースト。
【請求項4】
前記硬化が、水素および窒素を含むフォーミングガス中での熱焼結を含む、請求項3に記載の金属ペースト。
【請求項5】
前記硬化が光焼結を含む、請求項1に記載の金属ペースト。
【請求項6】
前記硬化が、周囲温度の空気中での光焼結を含む、請求項5に記載の金属ペースト。
【請求項7】
前記光焼結に先行して前記金属ペーストの熱焼結が行われる、請求項5に記載の金属ペースト。
【請求項8】
前記金属ペーストの熱焼結が、フォーミングガス中で実施される、請求項7に記載の金属ペースト。
【請求項9】
前記硬化が約350℃以下の温度で生ずる、請求項1に記載の金属ペースト。
【請求項10】
ポリマー基板上で硬化される、請求項1に記載の金属ペースト。
【請求項11】
前記金属ナノ粒子が、約50nmから約200nmの平均直径を有する、請求項1に記載の金属ペースト。
【請求項12】
約5×10−4Ω・cm以下の抵抗率を有する金属導体が得られるように金属ペーストを硬化するステップを含む、金属導体を作製する方法。
【請求項13】
前記金属ペーストが銅ナノ粒子を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記硬化するステップが、フォーミングガス中での熱焼結を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記フォーミングガスが、水素および窒素を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記硬化するステップが光焼結を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記硬化するステップが、周囲温度の空気中での光焼結を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記光焼結の前に、前記金属ペーストを熱焼結するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記光焼結の前に、フォーミングガス中で前記金属ペーストを熱焼結するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記硬化するステップが、約350°以下の温度で引き起こされる、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
硬化した金属ペーストまたはインクを含む金属導体によって相互接続された、第1および第2の電気構成要素を含む、電気アセンブリであって、前記金属導体は、約5×10−4Ω・cm以下の抵抗率を有する電気アセンブリ。
【請求項22】
前記金属ペーストまたはインクが銅ナノ粒子を含む、請求項21に記載の電気アセンブリ。
【請求項23】
前記硬化した金属ペーストまたはインクが、熱焼結した金属ペーストまたはインクを含む、請求項21に記載の電気アセンブリ。
【請求項24】
前記硬化した金属ペーストまたはインクが、光焼結した金属ペーストまたはインクを含む、請求項21に記載の電気アセンブリ。
【請求項25】
前記金属導体が、約2×10−5Ω・cm以下の抵抗率を有する、請求項21に記載の電気アセンブリ。
【請求項26】
前記金属導体が、前記第1および第2の電気構成要素と直接接触する、請求項21に記載の電気アセンブリ。
【請求項27】
前記金属導体が、熱焼結または光焼結された金属ペーストで充填されたビアを通して前記第1および第2の電気構成要素に接続される、請求項21に記載の電気アセンブリ。
【請求項28】
金属ナノ粒子を含む金属組成物の液滴を基板上に堆積するステップと;
前記液滴に金属線の一部を挿入するステップと;
前記金属組成物を焼結するステップと;
固化した金属組成物に前記線を固定するステップと
を含む、線を導体に固定する方法。
【請求項29】
前記金属組成物を焼結した後に、前記金属線の一部を前記金属組成物に挿入する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記金属ナノ粒子が銅を含む、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−527089(P2011−527089A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516873(P2011−516873)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/049510
【国際公開番号】WO2010/003056
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(505131522)アプライド・ナノテック・ホールディングス・インコーポレーテッド (27)
【出願人】(000197975)石原薬品株式会社 (83)
【Fターム(参考)】