説明

金属加工油及び金属加工方法

【課題】硫黄系極圧剤を添加した加工油でプレス加工等を行った金属部品における変色や臭気の発生を、簡易かつ低コストな手段で防止する。
【解決手段】硫黄系極圧剤を含有する加工油であって、更に1種又は2種以上の界面活性剤、及び/又は、1種又は2種以上の酸化防止剤を含有する金属加工油、及び、この金属加工油を用いて行う金属加工方法。界面活性剤の含有量が0.1〜50重量%の範囲内であり、酸化防止剤の含有量が0.1〜30重量%の範囲内であることが、特に好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工油及び金属加工方法に関し、更に詳しくは、硫黄系極圧剤を含有する金属加工油の使用後に発現する一定の問題を解消した金属加工油及び金属加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属加工油には種々な潤滑剤が添加されている。潤滑剤としては油性剤や極圧剤がある。
【0003】
一般的に、油性剤はパラフィン鎖の末端に活性基を持つ化学構造を備えており、これらの活性基が金属と反応して金属表面に化学的/物理的に吸着し、吸着膜(境界潤滑膜)を形成する。
【0004】
潤滑剤の中でも、極圧剤は、金属が加工される際に発生した熱により金属表面と反応し、極めて薄い個体潤滑膜を形成して、これが金属同士の焼き付きを防いで潤滑効果を示す。即ち、極圧剤は、一般に難加工と呼ばれる、特に高い加工圧(高い摩擦熱)を伴う金属加工に好適な潤滑剤である。
【0005】
極圧剤の中でも最も頻繁に使用されているものに、塩素系極圧剤がある。塩素系極圧剤は一般に、特に難加工において優れた潤滑性を発揮することが知られているが、反面、錆の原因になったり、プレス加工等の金属加工後の廃油を焼却する際に塩素系の有害物質が発生すると言われている。そのため、塩素を含まない非塩素タイプの加工油への切り替えが進んでいる。
【0006】
非塩素タイプの加工油において、代表的な極圧剤として硫黄系極圧剤を挙げることができる。硫黄系極圧剤は、塩素タイプの加工油と同等の潤滑性能を出すために必要不可欠な添加剤であり、難加工では殆どの場合に添加されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、プレス加工を行った部品にはバリが発生する場合があるが、寸法精度が要求される部品においてはバリを除去する必要がある。そのために、大抵の場合、水溶性の研磨剤を使用して研磨を行うことで、バリを除去している。
【0008】
従来、硫黄系極圧剤を添加した加工油でプレス加工した部品を、そのバリ取りの後に積み重ねておくと、部品の重なり部分の表面が黒く変色して不良品となったり、臭気が発生したりすると言う問題を生じていた。
【0009】
本願発明者の研究によれば、このような現象はプレス加工の工程自体に起因するものではない。即ち、前記の部品の重なり部分では、研磨剤の溶媒である水が蒸発し難い。そして加工部品の重なり部分が、水との接触により、黒変や臭気の発生を来すのである。従って、硫黄系極圧剤を添加した加工油でプレス加工した部品においては、上記以外のケースでも、一般的に、水(又は湿気)と接触している部分において同様の問題を生じ得る。
【0010】
このような観点からは、加工部品を良く乾燥させ、かつ、乾燥した雰囲気下に保管すれば問題を生じないとも考えられる。しかし、部品のプレス加工の現場における設備環境上のコスト面の制約や、加工効率上の時間的制約を考慮すると、このような面倒な保管方法に期待することは、現実的ではない。
【0011】
そこで本発明は、簡易で低コストな手段により上記の問題を解消することを、解決すべき技術的課題とする。本願発明者は、課題解決手段を鋭意研究する過程で、硫黄系極圧剤を含有する加工油に対して界面活性剤と酸化防止剤を添加することが問題解決に有効であることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、硫黄系極圧剤を含有する加工油であって、更に、1種又は2種以上の界面活性剤、及び/又は、1種又は2種以上の酸化防止剤を含有する、金属加工油である。
【0013】
第1発明においては、硫黄系極圧剤を含有する加工油が、更に界面活性剤及び/又は酸化防止剤を含有するので、このような加工油を用いてプレス加工等を行った部品において、加工後に水溶性の研磨剤を使用して研磨を行っても、あるいは加工部品を水や湿気と接触する環境下に保管しても、水や湿気と接触している部分が黒く変色したり、臭気を発生すると言う問題を生じない。
【0014】
第1発明における効果発現のメカニズムは、以下のように推定される。即ち、変色や臭気の発生は、加工部品に残留・付着している加工油に水が接触することにより、加工油の酸化劣化が進み、黒い硫黄化合物が生成することに起因する。これに対して界面活性剤は、加工部品に残留・付着する加工油を良好に洗い流すことにより変色や臭気発生の原因物質を除去すると考えられる。酸化防止剤は、加工部品に残留・付着している加工油が水と接触した際の酸化劣化を良好に抑制すると考えられる。
【0015】
とりわけ、界面活性剤と酸化防止剤が同時に存在すると、両者の効果が相乗し、変色や臭気の発生に対して極めて優れた効果が確保される。
【0016】
(第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る界面活性剤の含有量が0.1〜50重量%の範囲内であり、及び/又は、前記酸化防止剤の含有量が0.1〜30重量%の範囲内である、金属加工油である。
【0017】
上記の第1発明における界面活性剤及び/又は酸化防止剤の含有量は限定されないが、好ましくは、第2発明で規定する重量%の範囲内である。これらの含有量が過少であると、本発明の効果を確保し難い場合があり、これらの含有量が過多であると、金属加工油の性状が悪化する恐れがある。
【0018】
(第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る界面活性剤の含有量が5〜20重量%の範囲内であり、及び/又は、酸化防止剤の含有量が1〜10重量%の範囲内である、金属加工油である。
【0019】
界面活性剤及び/又は酸化防止剤の含有量は、特に好ましくは、実施例で効果が確認されているように、第3発明に規定する範囲内である。
【0020】
(第4発明)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る界面活性剤が、少なくともエステル型非イオン界面活性剤、エーテル型非イオン界面活性剤、エステル・エーテル型非イオン界面活性剤及び含窒素型非イオン界面活性剤を包含する群から選ばれる非イオン界面活性剤である、金属加工油である。
【0021】
本発明で用いる界面活性剤の種類は必ずしも限定されないが、第4発明に規定する各種の非イオン界面活性剤が好ましく例示される。
【0022】
(第5発明)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤又はアミン系酸化防止剤である、金属加工油である。
【0023】
本発明で用いる酸化防止剤の種類は必ずしも限定されないが、第5発明に規定する各種の酸化防止剤が好ましく例示される。
【0024】
(第6発明)
上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、前記第1発明〜第5発明のいずれかに係る金属加工油が、更に1種又は2種以上の基油成分を含有する、金属加工油である。
【0025】
本発明に係る金属加工油においては、通常は更に1種又は2種以上の基油成分を含有する。但し、本発明の効果を得る上で、基油成分は不可欠ではない。
【0026】
(第7発明)
上記課題を解決するための本願第7発明の構成は、前記第1発明〜第6発明のいずれかに係る金属加工油が、更に硫黄系極圧剤以外の1種又は2種以上の潤滑剤を含有する、金属加工油である。
【0027】
本発明に係る金属加工油においては、更に、硫黄系極圧剤以外の1種又は2種以上の基油成分を含有することもできる。
【0028】
(第8発明)
上記課題を解決するための本願第8発明の構成は、前記第1発明〜第7発明のいずれかに係る金属加工油が金属難加工用の加工油である、金属加工油である。ここにおいて、「金属難加工用の加工油」とは、高圧プレス加工等の、高圧を伴って行う金属加工に用いる加工油を言う。高圧プレス加工は、例えば、厚さの大きい金属材に対するプレス加工、金属材に対する屈曲度の大きなプレス加工、硬質の金属材に対するプレス加工等の際に要求される。
【0029】
(第9発明)
上記課題を解決するための本願第9発明の構成は、硫黄系極圧剤を含有する加工油を用いて金属部品又は金属部材に加工を行うに当たり、界面活性剤及び/又は酸化防止剤を含有する前記加工油を用いることにより、加工後の部品あるいは部材における水又は湿気との接触に起因する変色や臭気の発生を予防する、金属加工方法である。
【0030】
この加工方法を実施することにより、従来から問題であった、硫黄系極圧剤を含有する加工油を用いての金属部品又は金属部材の加工後のバリ取り工程に伴う変色や臭気の発生の問題が解消される。
【0031】
(第10発明)
上記課題を解決するための本願第10発明の構成は、前記第9発明に係る加工油が、第1発明〜第8発明のいずれかに係る金属加工油である、金属加工方法である。
【0032】
第10発明に規定するように、上記の第9発明において用いる加工油としては、第1発明〜第8発明のいずれかに係る金属加工油を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、硫黄系極圧剤を添加した加工油を用いてプレス加工等の金属加工を行い、バリ取り工程を行った場合等における、加工部品の重なり部分での変色や臭気の発生を有効に防止することができる。それ以外の場合における加工部品の水との接触による変色や臭気の発生も、同様に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、第1発明〜第10発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。以下において「本発明」と言うときは、本願の各発明を全体として指している。
【0035】
〔金属加工油〕
本発明の金属加工油は、少なくとも、硫黄系極圧剤を含有する加工油であって、更に界面活性剤及び/又は酸化防止剤を含有する。
【0036】
硫黄系極圧剤を含有するが界面活性剤及び/又は酸化防止剤を含有しない金属加工油に対して、使用の直前に界面活性剤及び/又は酸化防止剤を添加する場合、及び、界面活性剤及び/又は酸化防止剤を含有するが硫黄系極圧剤を含有しない金属加工油に対して、使用の直前に硫黄系極圧剤を添加する場合も、本発明の金属加工油に該当する。
【0037】
界面活性剤と酸化防止剤とは、いずれか一方のみが金属加工油に含有されていても良いが、両方が金属加工油に含有されていることが、より好ましい。硫黄系極圧剤、界面活性剤、酸化防止剤は、それぞれ、1種類のみが含有されていても良く、2種類以上が含有されていても良い。
【0038】
〔硫黄系極圧剤〕
硫黄系極圧剤としては、ポリスルフィド、硫化油脂、硫化鉱油(鉱物油の硫化物)、硫化オレフィン等が例示される。但し、これらに限定されない。
【0039】
ポリスルフィドは、通常、一般式「R1 −Sx−R2 」で表される。この一般式において、R1 及びR2 はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基及びアルキルアリール基の中から任意に選ばれる。
【0040】
硫化油脂は動植物油の硫化物であって、硫化ラード、硫化鯨油、硫化魚油、硫化菜種油、硫化ひまし油、硫化大豆油、硫化綿実油等が例示される。硫化油脂には、硫化オレイン酸等の二硫化脂肪酸、硫化オレイン酸メチル等の硫化エステルも含まれる。
【0041】
〔界面活性剤〕
界面活性剤としては、水に溶解した際に電離せずイオンにならない非イオン(ノニオン)界面活性剤が好ましいが、これに限定されない。非イオン界面活性剤の好ましい具体例として、以下のものを列挙することができる。
【0042】
1)エステル型非イオン界面活性剤:グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等。
【0043】
2)エーテル型非イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等。
【0044】
3)エステル・エーテル型非イオン界面活性剤:ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等。
【0045】
4)含窒素型非イオン界面活性剤:脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等。
【0046】
本発明の金属加工油において界面活性剤の含有量は必ずしも限定されないが、0.1〜50重量%の範囲内の含有量であることが好ましい。界面活性剤の含有量が0.1重量%未満であると、前記した変色・臭気に対する十分な防止効果を期待できず、50重量%を超えると、効果が飽和すると共に金属加工油の性状が悪化する恐れが大きい。界面活性剤の含有量は、5〜20重量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0047】
〔酸化防止剤〕
酸化防止剤の種類は特段に限定されないが、フェノール系やアミン系の酸化防止剤を好ましく例示できる。フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールや、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が好ましく例示される。アミン系酸化防止剤の具体例としては、スチレン化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン等が好ましく例示される。
【0048】
本発明の金属加工油において、酸化防止剤の含有量は必ずしも限定されないが、0.1〜30重量%の範囲内の含有量であることが好ましい。酸化防止剤の含有量が0.1重量%未満であると、前記した変色・臭気に対する防止効果を余り期待できず、30重量%を超えると、効果が飽和すると共に金属加工油の性状が悪化する恐れが大きい。酸化防止剤の含有量は、1〜10重量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0049】
〔潤滑剤〕
本発明の金属加工油においては、硫黄系極圧剤以外に適宜な潤滑剤を配合することもできる。このような潤滑剤の種類は限定されないが、過塩基性金属スルフォネート(ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等)、ジンクジチオホスフェート、油脂(牛脂、ラード、大豆油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油等)、エステル類(ヒンダード脂肪酸メチルエステル、多価アルコールエステル、多価アルコール部分エステル等)等が好ましく例示される。
【0050】
〔基油〕
本発明の金属加工油は、多くの場合、樹迂闊性や粘度の調整のために基油成分を含有する。基油は、極圧剤も含めた潤滑剤の溶媒であって、金属加工油の粘度(潤滑油膜厚)の調整等に有効な成分である。基油成分の種類は限定されないが、鉱油、流動パラフィン、ポリオレフィン、ポリブテン、ポリフルオロカーボン、ポリアルキルベンゼン、軽油、灯油等の石油蒸留精製物等が好ましく例示される。とりわけ、鉱油が好ましい。これらの各種の基油成分は、その1種類を単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0051】
〔金属加工方法〕
本発明に係る金属加工方法は、硫黄系極圧剤を含有する加工油を用いて金属部品又は金属部材に加工を行うに当たり、界面活性剤及び/又は酸化防止剤を含有する加工油を用いることを要点とする。この加工油としては、前記第1発明〜第8発明に係る金属加工油が、特に好ましい。
【0052】
このことにより、第1発明に関して推定したメカニズムにより、上記加工油を用いてプレス加工等を行った金属部品において、加工後に水溶性の研磨剤を使用して研磨を行っても、あるいは加工部品を水や湿気と接触する環境下に保管しても、水や湿気と接触している部分が黒く変色したり、臭気を発生すると言う問題を生じない。
【実施例】
【0053】
〔実施例の方法〕
実施例用の試料として、プレス加工される金属部品に代えて、JIS G 3141に規定する試験片SPCC−SD材(0.8×70×150mm)を使用し、バリ取り工程で加工油が水溶性研磨液に洗われる状況をビーカー中で再現した。
【0054】
水溶性研磨液に関しては、発明の技術的課題から見て本質的に同等であると考えられる水道水で代用した。バリ取り工程後に金属部品が積み重ねて置かれる状況は、促進試験として変色の発生を生じ易いように、上記の試験片を、水浴後に水切りすることなく、100°Cの恒温槽に入れて再現を行った。
【0055】
〔実施例の内容〕
上記の試験片にそれぞれ、表1の試験例1〜10及び表2の試験例11〜19に示す組成の試料油の各1gを満遍なく塗布した。表1及び表2において、組成を示す数値は「重量%」単位である。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

なお、上記の試験例において試料油に添加した2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(フェノール系酸化防止剤)、スチレン化ジフェニルアミン(アミン系酸化防止剤)、ポリエチレングリコールモノラウレート及びポリエチレングリコールモノオレエート(共にエステル・エーテル型界面活性剤)の化学構造を、図1に示す。
【0058】
次に、3L容のビーカーに水道水を入れ、攪拌機(マグネチックスターラー)を使用して500r.p.m.で攪拌しつつ、上記の各試験例に係る試料油を塗布した試験片2枚ずつ(同一の試験例に係る試料油を塗布した試験片を各2枚)を縦向き(150mmの長辺が上下に向く)にしてビーカーに入れた。その際、試験片における1対の150mm長辺がビーカーの円形周壁面に触れる状態として定置することにより、攪拌により流動する水道水に対して、試験片の片側の面(この面を、以下、「試験面」と言う)が十分に晒されるようにした。
【0059】
試験片をビーカーに入れた後、攪拌を5分間継続してから、各2枚の試験片をそれぞれのビーカーから取り出し、その2枚の試験片における試験面同士を重ね合わせて100°Cの恒温槽に入れ、そのまま24時間加熱した。
【0060】
〔評価の方法及び評価基準〕
上記の加熱終了後の試験片について、試験面の変色及び臭気の有無を、下記の評価基準によって評価した。評価の結果を、表1及び表2の「変色」、「臭気」の欄にそれぞれ示した。
【0061】
(変色の評価基準)
○:変色なし
△:やや変色があるが、除去可能(コスリ取れば、除去できる)
×:変色があり、除去できない
(臭気の評価基準)
○:臭気はない
△:少し臭気を感じる
×:明瞭に臭気を感じる
〔評価の結果〕
表1及び表2に示した評価結果から、次の1)〜4)の各事項を指摘することができる。
【0062】
1)試験例1〜8は、試料油に対して酸化防止剤(1〜10重量%)と界面活性剤(5〜20重量%)を共に添加したものであり、変色及び臭気に関して、共に「○」の評価である。即ち、本発明の効果が十分に達成されている。
【0063】
2)試験例9〜12は、試料油に対して酸化防止剤(1重量%)と界面活性剤(5重量%)とのいずれか一方を添加したものであり、変色及び臭気に関して、共に「△」の評価である。即ち、除去可能な程度に変色があり、臭気も少なく抑えられている。
【0064】
3)試験例13〜18は、試料油に対して酸化防止剤(0.05重量%)と界面活性剤(0.05重量%)とのいずれか一方、又は両方を添加したものであるが、これらの添加量が0.05重量%と言う少量であるため、変色及び臭気に関して、共に「×」の評価である。即ち、変色や臭気発生に対する防止効果は得られていない。
【0065】
4)試験例19は、試料油に対して酸化防止剤も界面活性剤も添加していない、従来技術そのものの内容であり、当然ながら変色と臭気に関して共に「×」の評価である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、硫黄系極圧剤含有加工油に対して界面活性剤と酸化防止剤を添加すると言う簡易で低コストな手段により、硫黄系極圧剤を添加した加工油でプレス加工した金属部品における変色や臭気の発生を有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例で用いた組成物を構成する化合物の化学構造を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄系極圧剤を含有する加工油であって、更に、1種又は2種以上の界面活性剤、及び/又は、1種又は2種以上の酸化防止剤を含有することを特徴とする金属加工油。
【請求項2】
前記界面活性剤の含有量が0.1〜50重量%の範囲内であり、及び/又は、前記酸化防止剤の含有量が0.1〜30重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の金属加工油。
【請求項3】
前記界面活性剤の含有量が5〜20重量%の範囲内であり、及び/又は、前記酸化防止剤の含有量が1〜10重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属加工油。
【請求項4】
前記界面活性剤が、少なくともエステル型非イオン界面活性剤、エーテル型非イオン界面活性剤、エステル・エーテル型非イオン界面活性剤及び含窒素型非イオン界面活性剤を包含する群から選ばれる非イオン界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の金属加工油。
【請求項5】
前記酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤又はアミン系酸化防止剤であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の金属加工油。
【請求項6】
前記金属加工油が、更に1種又は2種以上の基油成分を含有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の金属加工油。
【請求項7】
前記金属加工油が、更に硫黄系極圧剤以外の1種又は2種以上の潤滑剤を含有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の金属加工油。
【請求項8】
前記金属加工油が金属難加工用の加工油であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の金属加工油。
【請求項9】
硫黄系極圧剤を含有する加工油を用いて金属部品又は金属部材に加工を行うに当たり、界面活性剤及び/又は酸化防止剤を含有する前記加工油を用いることにより、加工後の部品あるいは部材における水又は湿気との接触に起因する変色や臭気の発生を予防することを特徴とする金属加工方法。
【請求項10】
前記加工油が請求項1〜請求項8のいずれかに記載の金属加工油であることを特徴とする請求項9に記載の金属加工方法。


【図1】
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【公開番号】特開2007−262371(P2007−262371A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93176(P2006−93176)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(591019782)スギムラ化学工業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】