説明

金属加工用途における天然スルホン酸ナトリウムの乳化剤ブレンド代替物

以下のカップリング反応生成物の塩と組み合わせた合成アルキルアレーンスルホン酸塩:(A)(I)少なくとも1個のヒドロカルビル置換基を有し、ヒドロカルビル置換基は、平均して、約20個〜約500個の炭素原子を有する高分子量ポリカルボン酸アシル化剤;(B)(I)必要に応じて、少なくとも1個のヒドロカルビル置換基を有し、ヒドロカルビル置換基は、平均して、約6個〜約19個の炭素原子を有する少なくとも1種の低分子量ポリカルボン酸アシル化剤、これらは、(C)以下を有する少なくとも1種の化合物により、共にカップリングされる:(i)2個以上の第一級アミノ基、(ii)2個以上の第二級アミノ基、(iii)少なくとも1個の第一級アミノ基および少なくとも1個の第二級アミノ基、(iv)少なくとも2個のヒドロキシル基、または(v)少なくとも1個の第一級または第二級アミノ基と少なくとも1個のヒドロキシル基。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、アルキルアレーンスルホン酸塩と、以下のカップリング反応生成物に由来の特定の塩との新規乳化剤ブレンドに関する:高分子量ポリカルボン酸アシル化剤、低分子量ポリカルボン酸アシル化剤およびカップリング剤。この新規乳化剤ブレンドは、他の機能性流体で有用である。これらの機能性流体には、水中油形エマルジョンがあり、これらは、水、油、乳化組成物、およびその用途に適当な機能性成分を含有する。これらの機能性流体は、多くの用途に使用され得、これには、金属加工、金属仕上げ、金属焼き入れ、熱伝達、離型、および油圧用途が挙げられるが、これらに限定されない。その有用性は、加えられる機能性成分により、決定される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
置換基内に少数の炭素原子から少なくとも約30個の脂肪族炭素原子を有するヒドロカルビル置換カルボン酸アシル化剤は、公知である。これらの物質の塩は、潤滑油用の分散剤として、また、水中油形および油中水形エマルジョンを製造するのに使用される。高分子量アシル化剤、低分子量アシル化剤およびカップラーの反応生成物は、金属加工油剤のような機能性流体で使用するために、特許文献1および特許文献2で開示されている。特許文献2の請求項57は、さらに、石油または合成スルホン酸アルキルから選択される機能性成分が、高分子量アシル化剤、低分子量アシル化剤およびカップラーとカップリングされた塩と共に使用され得ることを開示している。
【特許文献1】米国特許第5,422,024号 明細書
【特許文献2】米国特許第5,670,081号 明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
本発明は、アルキルアレーンスルホン酸塩と以下のカップリング反応生成物の特定の塩との乳化剤ブレンドを提供する:(A)(I)少なくとも1種の高分子量ポリカルボン酸アシル化剤であって、該アシル化剤(A)(I)は、少なくとも1個のヒドロカルビル置換基を有し、該ヒドロカルビル置換基は、平均して、約20個〜約500個の炭素原子を有する;(B)(I)少なくとも1種の低分子量ポリカルボン酸アシル化剤であって、該アシル化剤(B)(I)は、必要に応じて、少なくとも1個のヒドロカルビル置換基を有し、該ヒドロカルビル置換基は、平均して、6個〜約19個の炭素原子を有する;そして該成分(A)(I)および(B)(I)は、(C)以下を有する少なくとも1種の化合物により、共にカップリングされる:(i)2個またはそれ以上の第一級アミノ基、(ii)2個またはそれ以上の第二級アミノ基、(iii)少なくとも1個の第一級アミノ基および少なくとも1個の第二級アミノ基、(iv)少なくとも2個のヒドロキシル基、または(v)少なくとも1個の第一級または第二級アミノ基と少なくとも1個のヒドロキシル基。該反応生成物の特定の塩は、成分(A)(II)および(B)(II)を使用して形成され、これらは、この高分子量および低分子量ポリカルボン酸アシル化剤の塩の対イオンを供給する。好ましい実施態様では、(B)(I)と(A)(I)との当量比は、およそ2.5:1または約2:1〜約3:1の範囲である。(B)(I)と(A)(I)とのこの当量比は、多くの異なる様式で、達成できる。最初は、高分子量種と低分子量種との好ましい比は、出発物質の分子量の選択により確立でき、後に、例えば、部分または完全合成後、また、(B)(I)と(A)(I)との他の比から誘導された反応生成物を混合することによる反応生成物を加塩した後に、確立できた。好ましい組成物では、この塩は、その塩の対イオン(カチオン)として、トリエタノールアミンと共に形成される。合成アルキルアレーンスルホン酸塩と特定の塩とのブレンドは、水中油形エマルジョンにおいて、乳化剤として有用であり、また、機能性流体エマルジョンを形成する際に、特に有用である。
【0004】
本発明の新規ブレンドは、それゆえ、機能性流体(金属加工油剤を含めて)の主要な乳化剤の1つである天然石油スルホネートの代替物として、機能する。合成石油スルホネートは、それ単独では、天然石油スルホネートほどの芳香族および環状脂肪族特性を有しないか、または天然スルホネートの同程度に広い組成変化を有しない。理由は十分には理解できないが、合成アルキルアレーンスルホン酸塩は、水中でオイルを効果的に自己乳化(高剪断混合プロセスの要件なしで乳化)する傾向にはない。合成アルキルアレーンスルホン酸塩と、(A)(I)、(B)(I)およびCの反応生成物とのブレンドは、天然石油スルホネートと類似した硬水安定性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
(好ましい実施態様の説明)
合成アルキルアレーンスルホン酸塩と以下のカップリング反応生成物の塩とのブレンドは、機能性流体(金属加工油剤を含めて)に対する有用な乳化剤を形成する:(A)(I)高分子量ポリカルボン酸アシル化剤であって、該アシル化剤(A)(I)は、少なくとも1個のヒドロカルビル置換基を有し、該ヒドロカルビル置換基は、平均して、約20個〜約500個の炭素原子を有する;(B)(I)少なくとも1種の低分子量ポリカルボン酸アシル化剤であって、該アシル化剤(B)(I)は、必要に応じて、少なくとも1個のヒドロカルビル置換基を有し、該ヒドロカルビル置換基は、平均して、6個〜約19個の炭素原子を有する;そして該成分(A)(I)および(B)(I)は、(C)以下を有する少なくとも1種の化合物により、共にカップリングされる:(i)2個またはそれ以上の第一級アミノ基、(ii)2個またはそれ以上の第二級アミノ基、(iii)少なくとも1個の第一級アミノ基および少なくとも1個の第二級アミノ基、(iv)少なくとも2個のヒドロキシル基、または(v)少なくとも1個の第一級または第二級アミノ基と少なくとも1個のヒドロキシル基。
【0006】
このカップリング反応生成物の塩は、以下、ポリオレフィンエステル/塩と呼び、このことは、このアシル化剤の高分子量および低分子量置換基が広義にポリオレフィンであり、そのカップリング成分がアシル化剤と反応してエステル連鎖を形成し、アシル化剤のカルボン酸とカチオン種(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アミン、アミノアルコールまたはアンモニウムカチオン)との反応が塩を形成することを意味する。このカップリング反応生成物は、もしCがアミノアルコールまたはポリアミンであるなら、ポリオレフィンエステルアミド/塩またはポリオレフィンアミド/塩であり得ることが分かる。
【0007】
この合成アルキルアレーンスルホン酸塩は、一般に、芳香族分子(例えば、ベンゼン)のアルキル化により、次いで、その反応生成物のスルホン化により得られた広範囲の反応生成物を含む。その差が認知されていることから、分枝アルキルベンゼンと直鎖アルキルベンゼンとを区別する人もいる。本願の目的のために、合成アルキルアレーンスルホン酸塩は、直鎖または分枝アルキル芳香族化合物またはそれらのブレンドから誘導できる。これらの合成アルキルアレーンスルホン酸塩は、様々な業者から市販されている。このアルキルアリールスルホン酸塩の好ましい亜群には、C〜C40アルキルベンゼンスルホン酸塩、さらに望ましくは、C〜C30アルキルベンゼンスルホン酸塩、好ましくは、C10〜C20アルキルベンゼンスルホン酸塩、好ましくは、直鎖アルキル基がある。指定された炭素原子範囲は、そのアレーンスルホン酸塩に結合したアルキル基のものである。このエマルジョンで使用される特定のオイルまたはオイルブレンドが公知である好ましい実施態様では、特定の合成アルキルアレーンスルホン酸塩は、それが特定のオイルまたはオイルブレンドと水相との間の界面張力を低い値(必要に応じて、ゼロ界面張力)まで低下させる性能に基づいて、選択される。この合成アルキルアレーンスルホン酸塩は、塩であり、それゆえ、対イオンを含む。典型的には、このスルホン酸塩の対イオンは、ナトリウムであるが、他の利用可能な対イオンであり得、または(A)(I)、(B)(I)およびCの塩反応生成物の対イオンで部分的または完全に置き換えることができる。これらの生成物は、業界で周知である。高分子量アシル化剤、低分子量アシル化剤およびカップラーを形成する反応は、後で説明する。
【0008】
好ましい実施態様では、この高分子量アシル化剤は、無水コハク酸またはコハク酸にグラフト化された約500〜約2000の数平均分子量のポリイソブチレンである。これは、種々の対イオンで塩にできる。同じ好ましい実施態様では、この低分子量アシル化剤は、コハク酸または無水コハク酸にグラフト化されたC〜C19アルキルである。これは、ポリアミンまたはポリオール(例えば、エチレングリコール(これは、好ましいポリオールである))とカップリングできる。好ましい実施態様では、この塩のための対イオンの原料は、トリエタノールアミンである。後に説明するように、これらの好ましい実施態様は、同程度または向上した結果を示し得る他の好ましい実施態様に変更できる。
【0009】
本明細書および添付の請求の範囲で使用する「エマルジョン」との用語は、機能性流体として有用な十分な流動性を有する水中油形エマルジョンを包含すると解釈される。
【0010】
本明細書中で使用する「ヒドロカルビル」には、以下が挙げられる:
(1)ヒドロカルビル基、すなわち、脂肪族置換基(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環族置換基(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)、芳香族置換された芳香族置換基、脂肪族置換された芳香族置換基および脂環族置換された芳香族置換基などだけでなく、環状置換基であって、ここで、この環は、分子の他の部分により、完成されている(すなわち、例えば、いずれか2個の指示された置換基は、一緒になって、脂環族基を形成し得る);
(2)置換されたヒドロカルビル基、すなわち、非炭化水素置換基を含有するものであって、この非炭化水素置換基は、本発明の文脈内では、主として、ヒドロカルビル基のヒドロカルビル的性質を変えない;当業者は、このような基を知っており、それらの例には、エーテル、オキソ、ハロ(例えば、クロロおよびフルオロ)、アルコキシル、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルホキシなどが挙げられる。;
(3)ヘテロ基、すなわち、本発明の文脈内では、主として、ヒドロカルビル的性質を有しながら、鎖または環の中に存在する炭素以外のものを有するが、その他は炭素原子で構成されている基である。適当なヘテロ原子は当業者に明らかであり、例えば、イオウ、酸素、窒素、ピリジル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリルなどのような置換基が挙げられる。
【0011】
一般に、このヒドロカルビル基では、各10個の炭素原子に対し、約3個以下の非炭化水素基またはヘテロ原子、好ましくは、1個以下の非炭化水素基またはヘテロ原子が存在する。典型的には、このヒドロカルビル基では、このような非炭化水素基またはヘテロ原子は存在せず、従って、純粋にヒドロカルビルである。
【0012】
これらのヒドロカルビル基は、好ましくは、アセチレン性不飽和を含まない;エチレン性不飽和は、存在するとき、一般に、各10個の炭素−炭素結合に対して、1個以下のエチレン性連鎖が存在するようにされる。このヒドロカルビル基は、しばしば、完全に飽和であり、従って、エチレン性不法補を含有しない。
【0013】
本明細書中で使用する「低級の」との用語は、アルキル、アルケニル、アルコキシなどのような用語と関連して、全体で7個までの炭素原子を有するこのような基を記述するべく意図されている。
【0014】
(ポリオレフィンエステル/塩の成分(A)(I)および(B)(I))
カルボン酸アシル化剤(A)(I)および(B)(I)は、脂肪族または芳香族ポリカルボン酸または酸生成化合物である。本明細書全体を通じて、または添付の請求の範囲において、「カルボン酸アシル化剤」との用語は、特に明記しない限り、カルボン酸だけでなく、それらの酸生成誘導体(例えば、無水物、エステル、ハロゲン化アシルおよびそれらの混合物)を含むと解釈される。アシル化剤(A)(I)および(B)(I)は、そのアシル化剤の炭化水素的性質を著しく変えるのに十分に大きい部分で極性置換基が存在していないという条件で、極性置換基を含有し得る。典型的で適当な極性置換基には、ハロ(例えば、クロロおよびブロモ)、オキソ、オキシ、ホルミル、スルフェニル、スルフィニル、チオ、ニトロなどが挙げられる。このような極性置換基は、もし存在するなら、好ましくは、このアシル化剤のうちカルボキシ基を除いた炭化水素部分の全重量の約10重量%を超えない。
【0015】
低分子量ポリカルボン酸(B)(I)の例には、ジカルボン酸および誘導体(例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸、無水グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルキルコハク酸、テトラプロピレン置換無水コハク酸などが挙げられる。これらの酸の低級アルキルエステルもまた、使用できる。
【0016】
低分子量ヒドロカルビル置換コハク酸および無水物もまた、使用できる。これらのコハク酸および無水物は、次式で表わすことができる:
【0017】
【化1】

ここで、Rは、C〜約C18またはC19ヒドロカルビル基、さらに望ましくは、C〜C18ヒドロカルビル、好ましくは、C10〜C18ヒドロカルビルである。好ましくは、Rは、脂肪族(分枝または直鎖)または脂環族ヒドロカルビル基であり、その炭素−炭素結合の約10%未満は、不飽和である。Rは、2個〜約18個または19個の炭素原子を有するオレフィンから誘導でき、α−オレフィンは、特に有用である。このようなオレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、スチレン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセンなどが挙げられる。市販のα−オレフィン画分(例えば、C12〜18α−オレフィン、C12〜16α−オレフィン、C14〜16α−オレフィン、C14〜18α−オレフィン、C16〜18α−オレフィンなど)は、通常、所定範囲から外れるα−オレフィンを少量で含有する。このような置換コハク酸およびそれらの誘導体の生成は、当業者に周知であり、本明細書中で詳述する必要はない。
【0018】
前述の低分子量ポリカルボン酸のハロゲン化物は、本発明の低分子量アシル化剤(B)(I)として使用できる。これらは、単に、このような酸またはそれらの無水物とハロゲン化剤(例えば、三臭化リン、五塩化リン、オキシ塩化リンまたは塩化チオニル)と反応させることにより、調製できる。このような酸のエステルは、単に、この酸、酸ハロゲン化物または無水物をアルコールまたはフェノール化合物と反応させることにより、調製できる。低級アルキルおよびアルケニルアルコール(例えば、メタノール、エタノール、アリルアルコール、プロパノール、シクロヘキサノールなど)は、特に有用である。エステル化反応は、通常、アルカリ触媒(例えば、硫酸またはトルエンスルホン酸)を使用することにより、促進される。
【0019】
アシル化剤(B)(I)は、脂肪族ポリカルボン酸、さらに好ましくは、ジカルボン酸であることが好ましいものの、カルボン酸アシル化剤(B)(I)はまた、芳香族ポリカルボン酸または酸生成化合物であり得る。これらの芳香族酸は、好ましくは、ジカルボキシ置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレンまたは類似の芳香族炭化水素である。それらには、また、アルキル置換誘導体が挙げられ、そのアルキル基は、約12個までの炭素原子を含有し得る。この芳香族酸はまた、他の置換基(例えば、ハロ、ヒドロキシ、低級アルコキシなど)を含有し得る。アシル化剤(B)(I)として有用な芳香族ポリカルボン酸および酸生成化合物の特定の例には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4−メチル−ベンゼン−1,3−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、3−ドデシル−ベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2,5−ジブチルベンゼン−1,4−ジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸の無水物もまた、カルボン酸アシル化剤(B)(I)として有用である。
【0020】
高分子量ポリカルボン酸アシル化剤(A)(I)は、当該技術分野で周知であり、例えば、以下の米国特許、英国特許およびカナダ特許で詳細に記述されている:米国特許第3,024,237号;第3,087,936号;第3,163,603号;第3,172,892号;第3,215,707号;第3,219,666号;第3,231,587号;第3,245,910号;第3,254,025号;第3,271,310号;第3,272,743号;第3,272,746号;第3,278,550号;第3,288,714号;第3,306,907号;第3,307,928号;第3,312,619号;第3,341,542号;第3,346,354号;第3,367,943号;第3,373,111号;第3,374,174号;第3,381,022号;第3,394,179号;第3,454,607号;第3,346,354号;第3,470,098号;第3,630,902号;第3,652,616号;第3,755,169号;第3,868,330号;第3,912,764号;第4,234,435号;および第4,368,133号;英国特許944,136号;第1,085,903号;第1,162,436号;および第1,440,219号;およびカナダ特許第956,397号。これらの特許の内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0021】
前述の特許で開示されているように、高分子量アシル化剤(A)(I)を調製するいくつかの方法がある。一般に、これらの方法は、約100〜約300℃の範囲内の温度での(1)エチレン性不飽和カルボン酸、酸ハロゲン化物、無水物またはエステルと(2)エチレン性不飽和炭化水素(これは、少なくとも約20個の脂肪族炭素原子を含有する)または塩素化炭化水素(これは、少なくとも約20個の脂肪族炭素原子を含有する)との反応を包含する。この塩素化炭化水素またはエチレン性不飽和炭化水素反応物は、好ましくは、少なくとも約30個の炭素原子、さらに好ましくは、少なくとも約40個の炭素原子、さらに好ましくは、少なくとも約50個の炭素原子を含有し、また、極性置換基、油溶性ペンダント基を含有し得、この上で説明した一般的な限度内で不飽和であり得る。
【0022】
このカルボン酸アシル化剤を調製するとき、そのカルボン酸反応物は、通常、R−(COOH)nに相当しており、ここで、Rは、少なくとも1個のエチレン性不飽和炭素−炭素共有結合の存在により特徴付けられ、そしてnは、2〜約6の整数、好ましくは、2である。この酸性反応物はまた、対応するカルボン酸ハロゲン化物、無水物、エステルまたは他の等価なアシル化剤、およびそれらの2種またはそれ以上の混合物であり得る。通常、この酸性反応物中の全炭素原子数は、そのカルボキシルベースの基を除いて、約20個を超えず、好ましくは、この数は、約10個を変えず、一般に、約6個を超えない。好ましくは、この酸性反応物は、少なくとも1個のカルボキシル官能基に対してα,β−位置にて、少なくとも1個のエチレン連鎖を有する。代表的な酸性反応物には、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、クロロマレイン酸、アコニット酸などがある。好ましい酸反応物には、マレイン酸および無水マレイン酸が挙げられる。
【0023】
高分子量カルボン酸アシル化剤(A)(I)の調製で使用されるエチレン性不飽和炭化水素反応物および塩素化炭化水素反応物は、好ましくは、高分子量で実質的に飽和の石油画分および実質的に飽和のオレフィン重合体および対応する塩素化生成物である。2個〜約30個の炭素原子を有するモノオレフィンから誘導された重合体および塩素化重合体が好ましい。特に有用な重合体には、1−モノオレフィン(例えば、エチレン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、2−メチル−1−ヘプテン、3−シクロヘキシル−1−ブテンおよび2−メチル−5−プロピル−1−ヘキセン)の重合体がある。中間オレフィン(すなわち、オレフィン連鎖が末端位置にないオレフィン)の重合体は、有用である。これらは、2−ブテン、3−ペンテンおよび4−オクテンにより例示される。イソブチレンに由来の重合体が好ましい。
【0024】
1−モノオレフィン(例えば、上で例示したもの)の互いのインターポリマーおよび他のインターポリマー化可能なオレフィン性物質(例えば、芳香族オレフィン、環状オレフィンおよびポリオレフィン)とのインターポリマーもまた、エチレン性不飽和反応物の有用な原料である。このようなインターポリマーには、例えば、イソブテンとスチレン、イソブテンとブタジエン、プロペンとイソプレン、プロペンとイソブテン、エチレンとピペリレン、イソブテンとクロロプレン、イソブテンとp−メチル−スチレン、1−ヘキセンと1,3−ヘキサジエン、1−オクテンと1−ヘキセン、1−ヘプテンと1−ペンテン、3−メチル−1−ブテンと1−オクテン、3,3−ジメチル−1−ペンテンと1−ヘキセン、イソブテンとスチレンおよびピペリレンなどとを重合させることにより調製されるものが挙げられる。
【0025】
炭化水素溶解性の理由のために、本発明のアシル化剤を調製する際に使用が考慮されるインターポリマーは、好ましくは、実質的に脂肪族で実質的に飽和であり、すなわち、それらは、重量基準で、脂肪族モノオレフィンから誘導された単位を、少なくとも約80%、好ましくは、約95%で含有すべきである。好ましくは、それらは、存在している炭素−炭素共有結合連鎖の全数を基準にして、約5%以下のオレフィン連鎖を含有する。
【0026】
本発明の1実施態様では、これらの重合体および塩素化重合体は、ルイス酸触媒(例えば、塩化アルミニウムまたは三フッ化ホウ素)の存在下にて、C精製流(これは、約35重量%〜約75重量%のブテン含量、および約30重量%〜約60重量%のイソブテン含量を有する)の重合により、得られる。これらポリイソブチレン類は、好ましくは、主として(すなわち、全繰り返し単位の約80重量%より多い量で)、次式の立体配置のイソブテン繰り返し単位を含有する:
【0027】
【化2】

この高分子量カルボン酸アシル化剤の調製で使用される塩素化炭化水素およびエチレン性不飽和炭化水素は、好ましくは、1分子あたり、約500個まで炭素原子を有する。好ましいアシル化剤(A)(I)には、約20個〜約500個の炭素原子、さらに好ましくは、約30個〜約500個の炭素原子、さらに好ましくは、約40個〜約500個の炭素原子、さらに好ましくは、約50個〜約500個の炭素原子のヒドロカルビル基を含有するものがある。
【0028】
ポリカルボン酸アシル化剤(A)(I)はまた、米国特許第3,340,281号(この特許の内容は、本明細書中で参考として援用されている)で記述された様式で、塩素化ポリカルボン酸、無水物、ハロゲン化アシルなどとエチレン性不飽和炭化水素またはエチレン性不飽和置換炭化水素(例えば、ポリオレフィンおよび置換ポリオレフィン)とを反応させることにより、得ることができる。
【0029】
高分子量ポリカルボン酸無水物(A)(I)は、対応する酸を脱水することにより、得ることができる。脱水は、脱水剤(例えば、無水酢酸)の存在下にて、この酸を約70℃より高い温度まで加熱することにより、容易に達成される。環状無水物は、通常、酸基が3個以下の炭素原子で分離されたポリカルボン酸(例えば、置換コハク酸またはグルタル酸)から得られるのに対して、直鎖無水物は、通常、酸基が4個以上の炭素原子で分離されたポリカルボン酸から得られる。
【0030】
これらのポリカルボン酸の酸ハロゲン化物は、その酸またはそれらの無水物とハロゲン化剤(例えば、三臭化リン、五塩化リンまたは塩化チオニル)とを反応させることにより、調製できる。
【0031】
ヒドロカルビル置換コハク酸および無水物、それらの酸ハロゲン化物およびエステル誘導体は、特に好ましいアシル化剤(A)(I)である。これらのアシル化剤は、好ましくは、無水マレイン酸と高分子量オレフィンまたは塩素化炭化水素(例えば、塩素化ポリオレフィン)とを反応させることにより、調製される。この反応は、単に、2つの反応物を、約100℃〜約300℃、好ましくは、約100℃〜約200℃の範囲の温度で加熱する工程を包含する。この反応から得られる生成物は、ヒドロカルビル置換無水コハク酸であり、ここで、その置換基は、このオレフィンまたは塩素化炭化水素から誘導される。この生成物は、もし望ましいなら、任意のエチレン性不飽和共有結合の全部または一部を除去するために、標準的な水素化手順により水素化され得る。これらのヒドロカルビル置換無水コハク酸は、水または蒸気で処理することにより、対応する酸に加水分解され得、この無水物または酸のいずれかは、ハロゲン化リン、フェノールまたはアルコールと反応させることにより、対応する酸ハロゲン化物またはエステルに変換され得る。ヒドロカルビル置換コハク酸および無水物(A)(I)は、次式で表わすことができる:
【0032】
【化3】

ここで、Rは、ヒドロカルビル置換基である。好ましくは、Rは、約20個〜約500個の炭素原子、さらに好ましくは、約30個〜約500個の炭素原子、さらに好ましくは、約40個〜約500個の炭素原子、さらに好ましくは、約50個〜約500個の炭素原子を含有する。
【0033】
アシル化剤(A)(I)は、脂肪族ポリカルボン酸(さらに好ましくは、ジカルボン酸)であることが好ましいものの、カルボン酸アシル化剤(A)(I)はまた、芳香族ポリカルボン酸または酸生成化合物であり得る。これらの芳香族酸は、好ましくは、アルキル置換ジカルボキシ置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレンまたは類似の芳香族炭化水素である。そのアルキル基は、約30個までの炭素原子を含有し得る。この芳香族酸はまた、他の置換基(例えば、ハロ、ヒドロキシ、低級アルコキシなど)を含有し得る。
【0034】
(ポリオレフィンエステル/塩の成分(C))
(C)成分は、(B)(I)低分子量コハク酸分子と(A)(I)高分子量コハク酸分子との間の架橋として、作用する。これらの低分子量および高分子量分子は、共に混合され得、そして架橋分子と反応される。この反応は、その反応混合物中の好ましい種が生成物であり、ここで、(C)分子が低分子量(B)種と高分子量(A)種との間または2種の低分子量種(B)の間の架橋として作用する。しかしながら、2種の低分子量コハク酸試薬が連結される形成だけでなく、2種の高分子量コハク酸試薬が連結される形成も存在する。この場合、(B)(I)と(A)(I)との間の当量比は、2.5:1以上である。もし、(B)(I)と(A)(I)との比が2:1で生成物の統計的な分布が形成されるなら、(B)(I)に連結された(A)(I)の分子数は、(B)(I)が(B)(I)に連結される場合の分子数に等しい。(B)(I)と(A)(I)の比が2.5:1以上で、(B)(I)に連結された(B)(I)は、主な種となる。好ましい実施態様では、(B)(I)と(A)(I)の比は、約1:1〜約4:1であり、さらに好ましくは、約2:1〜約3:1である。
【0035】
成分(C)は、(i)2個またはそれ以上の第一級アミノ基、(ii)2個またはそれ以上の第二級アミノ基、(iii)少なくとも1個の第一級アミノ基および少なくとも1個の第二級アミノ基、(iv)少なくとも2個のヒドロキシル基、または(v)少なくとも1個の第一級または第二級アミノ基と少なくとも1個のヒドロキシル基を有する任意の成分であり得る。これらには、ポリアミン、ポリオールおよびヒドロキシアミンが挙げられる。好ましい実施態様では、成分Cは、2個のヒドロキシル基を有する。さらに好ましい実施態様では、成分Cは、エチレングリコールである。
【0036】
((1)ポリオレフィンエステル/塩の成分(C)として有用なポリアミン)
成分(C)として有用なポリアミンは、それらの構造内に、少なくとも2個の−NH基、少なくとも2個の>NH基、または少なくとも1個の−NH基および少なくとも1個の>NH基が存在していることにより、特徴付けられる。
【0037】
これらのポリアミンは、脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミンまたは複素環アミン(脂肪族で置換した芳香族アミン、脂肪族で置換した環状脂肪族アミン、脂肪族で置換した複素環アミン、環状脂肪族で置換した脂肪族アミン、環状脂肪族で置換した芳香族アミン、環状脂肪族で置換した複素環アミン、芳香族で置換した脂肪族アミン、芳香族で置換した環状脂肪族アミン、芳香族で置換した複素環アミン、複素環で置換した脂肪族アミン、複素環で置換した環状脂肪族アミンおよび複素環で置換した芳香族アミンを含めて)であり得る。これらのアミンは、飽和または不飽和であり得る。もし不飽和であるなら、このアミンは、好ましくは、アセチレン性不飽和を含まない。これらのアミンはまた、非炭化水素置換基または基を含有し得る(これらの基が、このようなアミンと反応物(A)(I)および(B)(I)との反応を著しく妨げない限り)。このような非炭化水素置換基または基には、低級アルコキシ、低級アルキル、メルカプト、ニトロ、および妨害基(例えば、−O−および−S−(例えば、−CHCH−X−CHCH−にあるような基であって、ここで、Xは、−O−または−S−である)が挙げられる。
【0038】
これらのポリアミンには、その構造内に少なくとも1個の追加>NH基または−NH基が存在していること以外は、下記の脂肪族、環状脂肪族および芳香族モノアミンと類似の脂肪族、環状脂肪族および芳香族ポリアミンが挙げられる。
【0039】
脂肪族モノアミンには、モノ脂肪族アミンおよびジ脂肪族置換アミンが挙げられ、ここで、その脂肪族基は、飽和または不飽和および直鎖または分枝鎖であり得る。それゆえ、それらは、第一級または第二級脂肪族アミンである。このようなアミンには、例えば、モノ−およびジアルキル置換アミン、モノ−およびジアルケニル置換アミン、および1個のN−アルケニル置換基と1個のN−アルキル置換基とを有するアミンなどが挙げられる。これらの脂肪族モノアミン中の全炭素原子数は、好ましくは、約40個の炭素原子を超えず、通常、約20個の炭素原子を超えない。このようなモノアミンの特定の例には、エチルアミン、ジエチルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、アリルアミン、イソブチルアミン、ココアミン、ステアリルアミン、ラウリルアミン、メチルラウリルアミン、オレイルアミン、N−メチルオクチルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミンなどが挙げられる。環状脂肪族で置換した脂肪族アミン、芳香族で置換した脂肪族アミン、および複素環で置換した脂肪族アミンの例には、2−(シクロヘキシル)エチルアミン、ベンジルアミン、フェニルエチルアミンおよび3−(フリルプロピル)アミンが挙げられる。
【0040】
環状脂肪族モノアミンは、この環状の環構造内の炭素原子を介して、アミノ窒素に直接結合した1個の環状脂肪族置換基を有するモノアミンである。環状脂肪族モノアミンの例には、シクロヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキセニルアミン、シクロペンテニルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどが挙げられる。脂肪族置換、芳香族置換および複素環置換の環状脂肪族モノアミンの例には、プロピル置換シクロヘキシルアミン、フェニル置換シクロペンチルアミンおよびピラニル置換シクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0041】
芳香族アミンには、その芳香環構造の炭素原子がアミノ窒素に直接結合したモノアミンが挙げられる。この芳香環は、通常、一核性(mononuclear)の芳香環(すなわち、ベンゼンから誘導した環)であるが、しかし、縮合芳香環、特にナフタレンから誘導した環が含まれていてもよい。芳香族モノアミンの例には、アニリン、ジ(p−メチルフェニル)アミン、ナフチルアミン、N−(n−ブチル)アニリンなどが挙げられる。脂肪族で置換した芳香族モノアミン、環状脂肪族で置換した芳香族モノアミンおよび複素環で置換した芳香族モノアミンの例には、p−エトキシアニリン、p−ドデシルアニリン、シクロヘキシル置換ナフチルアミンおよびチエニル置換アニリンが挙げられる。
【0042】
複素環ポリアミンもまた使用できる。本明細書中で使用する「複素環ポリアミン」との術語は、複素環内に、少なくとも2個の第一級アミノ基、少なくとも2個の第二級アミノ基、または少なくとも1個の各々と、少なくとも1個の窒素(ヘテロ原子として)とを含有する複素環アミンを記述すると解釈される。複素環ポリアミン内に、少なくとも2個の第一級アミノ基、少なくとも2個の第二級アミノ基、または少なくとも1個の各々が存在している限り、その環内のヘテロ−N原子は、第三級アミノ窒素、すなわち、水素原子が環窒素に直接結合していないものであり得る。このヘテロ−N原子は、この第二級アミノ基の1つであり得る;すなわち、それは、環窒素であり得、水素は、そこに直接結合されている。複素環アミンは、飽和または不飽和であり得、そして種々の置換基(例えば、ニトロ、アルコキシ、アルキルメルカプト、アルキル、アルケニル、アリール、アルカリールまたはアラルキル置換基)を含有できる。一般に、これらの置換基内の全炭素原子数は、約20個を超えない。複素環アミンは、窒素以外のヘテロ原子、特に、酸素およびイオウを含有できる。明らかに、それらは、1個より多い窒素ヘテロ原子を含有できる。5員および6員複素環が好ましい。
【0043】
適当な複素環ポリアミンのうちには、アジリジン、アゼチジン、アゾリジン、テトラ−およびジヒドロピリジン、ピロール、インドール、ピペリジン、イミダゾール、ジ−およびテトラヒドロイミダゾール、ピペラジン、イソインドール、プリン、モルホリン、チオモルホリン、N−アミノアルキルモルホリン、N−アミノアルキルチオモルホリン、N−アミノアルキルピペラジン、N,N’−ジアミノアルキル−ピペラジン、アゼピン、アゾシン、アゾニン、アゼシン、および上記の各々のテトラ−、ジ−およびペルヒドロ誘導体、およびこれらの複素環アミンの2種またはそれ以上の混合物がある。有用な複素環ポリアミンは、複素環内に窒素、酸素および/またはイオウを含有する飽和5員および6員複素環ポリアミン、特に、ピペリジン、ピペラジン、チオモルホリン、モルホリン、ピロリジンなどがある。通常、それらのアミノアルキル置換基は、窒素原子上で置換されて、複素環の一部を形成する。このような複素環アミンの特定の例には、N−アミノエチルピペラジンおよびN,N’−ジアミノエチルピペラジンが挙げられる。
【0044】
ヒドラジンおよび置換ヒドラジンもまた、使用できる。ヒドラジンに存在し得る置換基には、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アルカリールなどが挙げられる。通常、これらの置換基は、アルキル(特に、低級アルキル)、フェニル、および置換フェニル(例えば、低級アルコキシ置換フェニルまたは低級アルキル置換フェニル)である。置換ヒドラジンの特定の例には、メチルヒドラジン、N,N−ジメチルヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、フェニルヒドラジン、N−フェニル−N’−エチルヒドラジン、N−(パラ−トリル)−N’−(n−ブチル)−ヒドラジン、N−(パラニトロフェニル)−ヒドラジン、N−(パラ−ニトロフェニル)−N−メチルヒドラジン、N,N’−ジ−(パラ−クロロフェノール)−ヒドラジン、N−フェニル−N’−シクロヘキシルヒドラジンなどがある。
【0045】
本発明で使用するのに適当なアミンの他の群は、分枝ポリアルキレンポリアミンである。分枝ポリアルキレンポリアミンは、分枝基が主鎖に存在している9個のアミノ単位あたり平均して少なくとも1個の窒素結合アミノアルキレン基を含有する側鎖であるポリアルキレンポリアミンである;
【0046】
【化4】

例えば、この主鎖にある9個の単位あたり、1個〜4個のこのような分枝鎖であるが、好ましくは、9個の主鎖単位あたり、好ましくは、1個の側鎖である。それゆえ、これらのポリアミンは、少なくとも3個の第一級アミノ基および少なくとも1個の第三級アミノ基を含有する。これらのアミンは、次式で表わされ得る:
【0047】
【化5】

ここで、Rは、アルキレン基(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンおよび他の同族体(直鎖および分枝の両方)など)であるが、好ましくは、エチレンである;そしてx、yおよびzは、整数である;xは、約4〜約24の範囲またはそれ以上、好ましくは、約6〜約18の範囲である;yは、1〜約6の範囲またはそれ以上、好ましくは、1〜約3の範囲;そしてzは、0〜約6の範囲、好ましくは、0〜約1の範囲である。x単位およびy単位は、連続的、交互、規則的またはランダムに分布され得る。このようなポリアミンの有用な種類には、次式のものが挙げられる:
【0048】
【化6】

ここで、nは、1〜約20の範囲またはそれ以上、好ましくは、1〜約3の範囲の整数であり、そしてRは、好ましくは、エチレンであるが、プロピレン、ブチレンなど(直鎖および分枝)であり得る。有用な実施態様は、次式で表わされる:
【0049】
【化7】

ここで、nは、1〜約3の範囲の整数である。括弧内の基は、頭−頭様式または頭−尾様式で結合され得る。米国特許第3,200,106号および第3,259,578号の内容は、該ポリアミンに関連して、本明細書中で参考として援用されている。
【0050】
適当なポリアミンには、また、約200〜約4000の範囲、好ましくは、約400〜2000の範囲の平均分子量を有するポリオキシアルキレンポリアミン(例えば、ポリオキシアルキレンジアミンおよびポリオキシアルキレントリアミン)が挙げられる。これらのポリオキシアルキレンポリアミンの例には、次式で表わされるアミンが挙げられる:
NH−アルキレン−(−O−アルキレン−)NH
ここで、mは、約3〜約70の値を有する。
【0051】
R−[アルキレン−(−O−アルキレン−)NH3−6
ここで、nは、1〜約40の範囲の数であるが、但し、nの合計は、約3〜約70、一般に、約6〜約35であり、そしてRは、約3〜約6の原子価を有する約10個までの炭素原子を有する多価飽和ヒドロカルビル基である。このアルキレン基は、直鎖または分枝鎖であり得、そして1個〜約7個の炭素原子、通常、1個〜約4個の炭素原子を含有する。上式内に存在している種々のアルキレン基は、同一または異なり得る。
【0052】
これらのポリアミンのさらに特定の例には、以下が挙げられる:
【0053】
【化8】

ここで、xは、約3〜約70、好ましくは、約10〜35の値である;
【0054】
【化9】

そして、ここで、x+y+zは、約3〜約30、好ましくは、約5〜約10の範囲の全値を有する。
【0055】
有用なポリオキシアルキレンポリアミンには、約200〜約2000の範囲の平均分子量を有するポリオキシエチレンジアミンおよびポリオキシプロピレンジアミンおよびポリオキシプロピレントリアミンが挙げられる。これらのポリオキシアルキレンポリアミンは、Jefferson Chemical Companyから「Jeffamine」の商品名称で市販されている。米国特許第3,804,763号および第3,948,800号の内容は、このようなポリオキシアルキレンポリアミンの開示について、本明細書中で参考として援用されている。
【0056】
有用なポリアミンは、アルキレンポリアミンであり、これには、以下でさらに詳細に記述するように、ポリアルキレンポリアミンが挙げられる。これらのアルキレンポリアミンには、次式に一致するものが挙げられる:
【0057】
【化10】

ここで、nは、1〜約10、好ましくは、1〜約7である;各RおよびR’は、独立して、水素原子、約700個までの炭素原子、好ましくは、約100個までの炭素原子、さらに好ましくは、約30個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基またはヒドロキシ置換ヒドロカルビル基であるが、但し、少なくとも1個のRおよび少なくとも1個のR’は、水素である;そして「Alkylene」基は、約1個〜約18個の炭素原子、好ましくは、1個〜約4個の炭素原子を有し、好ましいアルキレンは、エチレンまたはプロピレンである。有用なアルキレンポリアミンは、各Rおよび各R’が水素であるものであり、エチレンポリアミンおよびエチレンポリアミン混合物は、特に好ましい。このようなアルキレンポリアミンには、メチレンポリアミン、エチレンポリアミン、ブチレンポリアミン、プロピレンポリアミン、ペンチレンポリアミン、ヘキシレンポリアミン、ヘプチレンポリアミンなどが挙げられる。このようなアミンのより高級な同族体および関連したアミノアルキル置換ピペラジンもまた、含まれる。
【0058】
有用なアルキレンポリアミンには、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ジ(ヘプタメチレン)トリアミン、トリプロピレンテトラミン、ジ(トリメチレン)トリアミン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジンなどが挙げられる。2種またはそれ以上の上で例示のアルキレンアミンの縮合により得られる高級な同族体は、上記ポリアミンの2種またはそれ以上の混合物と同様に、本発明のアミンとして有用である。
【0059】
エチレンポリアミン(例えば、上で述べたもの)は、「Diamines and Higher Amines」の表題で、The Encyclopedia of Chemical Technology(3版、Kirk−Othmer,7巻、580〜602ページ、a Wiley−Interscience Publication,John Wiley and Sons,1979年)に詳細に記述され、これらのページ内容は、本明細書中で参考として援用されている。このような化合物は、アルキレンクロライドとアンモニアとの反応により、またはエチレンイミンと開環試薬(例えば、アンモニアなど)との反応により、最も都合よく調製される。これらの反応により、アルキレンポリアミンのある種の錯体混合物(これには、ピペラジンのような環状の縮合生成物が含まれる)が得られる。
【0060】
アルコキシル化アルキレンポリアミン(例えば、N,N(ジエタノール)エチレンジアミン)もまた、使用できる。このようなポリアミンは、アルキレンアミン(例えば、エチレンジアミン)と、2個〜約20個の炭素の1種またはそれ以上のアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、オクタデセンオキシド)とを反応させることにより、製造できる。類似のアルキレンオキシド−アルカノールアミン反応生成物(例えば、上記の第一級、第二級または第三級アルカノールアミンと、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはより高級なエポキシドとを、1.1〜1.2のモル比で反応させることにより製造した生成物)もまた、使用できる。このような反応を行うための反応物比および温度は、当業者に公知である。
【0061】
アルコキシル化カルキレンポリアミンの特定の例には、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、モノ(ヒドロキシプロピル)置換テトラエチレンペンタミン、N−(3−ヒドロキシブチル)テトラメチレンジアミンなどが挙げられる。上で例示のヒドロキシ含有ポリアミンのアミノ基または水酸基を介した縮合により得られる高級な同族体は、同様に、有用である。アミノ基を介した縮合により、アンモニアの除去を伴って、高級なアミンが得られるのに対して、水酸基を介した縮合により、水の除去を伴って、エーテル結合を含有する生成物が得られる。上記ポリアミンのいずれか2種またはそれ以上の混合物もまた、有用である。
【0062】
((2)ポリオレフィンエステル/塩の成分(C)として有用なポリオール)
成分(C)として有用なポリオールまたは多価アルコールには、以下の一般式の化合物が挙げられる:
(OH)
ここで、R1は、炭素−酸素結合を介して−OH基に結合した一価または多価有機基(すなわち、−COHであって、ここで、その炭素は、カルボニル基の一部ではない)であり、そしてmは、2〜約10の整数、好ましくは、2〜約6の整数である。これらのアルコールは、脂肪族、環状脂肪族、芳香族および複素環(脂肪族で置換した環状脂肪族アルコール、脂肪族で置換した芳香族アルコール、脂肪族で置換した複素環アルコール、環状脂肪族で置換した脂肪族アルコール、環状脂肪族で置換した複素環アルコール、複素環で置換した脂肪族アルコール、複素環で置換した環状脂肪族アルコールおよび複素環で置換した芳香族アルコールを含めて)であり得る。ポリオキシアルキレンアルコールを除いて、式R(OH)に対応する多価アルコールは、好ましくは、約40個以下の炭素原子、さらに好ましくは、約20個以下の炭素原子を含有する。これらのアルコールは、それらのアルコールと本発明のヒドロカルビル置換カルボン酸または無水物との反応を妨害しない非炭化水素置換基または基を含有し得る。このような非炭化水素置換基または基には、低級アルコキシ、低級アルキル、メルカプト、ニトロ、および中断基(例えば、−O−および−S−(例えば、−CHCH−XCHCHのような基であって、ここで、Xは、−O−または−S−である))が挙げられる。
【0063】
有用なポリオキシアルキレンアルコールおよびそれらの誘導体には、このアルコールと種々のカルボン酸とを反応させることにより得られるヒドロカルビルエーテルおよびカルボン酸エステルが挙げられる。例証的なヒドロカルビル基には、アルキル、シクロアルキル、アルキルアリール、アラルキル、アルキルアリールアルキルなどが挙げられ、これらは、約40個までの炭素原子を含有する。特定のヒドロカルビル基には、メチル、ブチル、ドデシル、トリル、フェニル、ナフチル、ドデシルフェニル、p−オクチルフェニルエチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。これらのエステル誘導体を調製する際に有用なカルボン酸は、モノ−またはポリカルボン酸(例えば、酢酸、吉草酸(valetic acid)、ラウリン酸(laurie acid)、ステアリン酸、コハク酸、およびアルキルまたはアルケニル置換コハク酸(ここで、このアルキルまたはアルケニル基は、約20個までの炭素原子を含有する))である。この種のアルコールのメンバーは、種々の業者から市販されている;例えば、PLURONICS(Wyandotte Chemicals Corporationから入手できるポリオール);POLYGLYCOL 112−2(Dow Chemical Co.から入手できるエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドから誘導された液状トリオール);およびTERGITOLS(ドデシルフェニルまたはノニルフェニルポリエチレングリコールエーテル)およびUCONS(ポリアルキレングリコールおよびそれらの種々の誘導体)(両方は、Union Carbide Corporationから入手できる)。しかしながら、使用されるアルコールは、ポリオキシアルキレンアルコール1分子あたり、平均して、少なくとも1個の遊離のアルコール性ヒドロキシル基を有しなければならない。これらのポリオキシアルキレンアルコールを記述する目的のためには、アルコール性ヒドロキシル基は、芳香核の一部を形成しない炭素原子に結合したものである。
【0064】
本発明で有用なアルコールには、また、アルキレングリコールおよびポリオキシアルキレンアルコール(例えば、ポリオキシエチレンアルコール、ポリオキシプロピレンアルコール、ポリオキシブチレンアルコールなど)が挙げられる。これらのポリオキシアルキレンアルコール(時には、ポリグリコールと呼ばれている)は、約150個までのオキシアルキレン基を含有でき、そのアルキレン基は、約2個〜約8個の炭素原子を含有する。このようなポリオキシアルキレンアルコールは、一般に、二価アルコールてある。すなわち、その分子の各末端は、OH基で終わっている。このようなポリオキシアルキレンアルコールが有用であるためには、少なくとも2個のOH基が存在しなければならない。
【0065】
本発明で有用な多価アルコールには、ポリヒドロキシ芳香族化合物が挙げられる。多価フェノールおよびナフトールは、有用なヒドロキシ芳香族化合物である。これらのヒドロキシ置換芳香族化合物は、ヒドロキシ置換基に加えて、他の置換基(例えば、ハロ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルメルカプト、ニトロなど)を含有し得る。通常、このヒドロキシ芳香族化合物は、2個〜約4個の水酸基を含有する。この芳香族ヒドロキシ化合物は、以下の特定の例により、例示される:レゾルシノール、カテコール、p,p’−ジヒドロキシ−ビフェニル、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、ヘキシルレゾルシノール、オルシノールなど。
【0066】
これらの多価アルコールは、好ましくは、2個〜約4個または10個の水酸基を含有する。これらは、例えば、上記アルキレングリコールおよびポリオキシアルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール)、および他のアルキレングリコールおよびポリオキシアルキレングリコール(ここで、このアルキレン基は、2個〜約8個の炭素原子を含有する)により例示される。
【0067】
他の有用な多価アルコールには、グリセロール、グリセロールのモノオレエート、グリセロールのモノステアレート、グリセロールのモノメチルエーテル、ペンタエリスリトール、9,10−ジヒドロキシステアリン酸のn−ブチルエステル、9,10−ジヒドロキシステアリン酸のメチルエステル、1,2−ブタンジオール、2,3−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、ピナコール、エリスリトール、アラビトール、ソルビトール、マンニトール、1,2−シクロヘキサンジオール、およびキシレングリコールが挙げられる。炭水化物(例えば、糖類、デンプン、セルロースなど)は、同様に、使用できる。これらの炭水化物は、グルコース、フルクトース、スクロース、ラムノース、マンノース、グリセルアルデヒドおよびガラクトースにより例示され得る。
【0068】
少なくとも3個の水酸基を有する多価アルコールであって、全てではないが一部が約8個〜約30個の炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸(例えば、オクタン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、ドデカン酸またはトール油酸)でエステル化されているものは、有用である。このような部分エステル化多価アルコールのさらに特定の例には、ソルビトールのモノオレエート、ソルビトールのジステアレート、グリセロールのモノオレエート、グリセロールのモノステアレート、エリスリトールのジドデカノエートなどがある。
【0069】
有用なアルコールにはまた、約12個までの炭素原子を含有する多価アルコール、特に、3個〜10個の炭素原子を含有するものが挙げられる。この種類のアルコールには、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グルコン酸、グリセルアルデヒド、グルコース、アラビノース、1,7−ヘプタンジオール、2,4−ヘプタンジオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ヘキサントリオール、1,2,5−ヘキサントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、キナ酸、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、1,10−デカンジオール、ジギタロースなどが挙げられる。少なくとも3個の水酸基および10個までの炭素原子を含有する脂肪族アルコールは、有用である。
【0070】
有用な多価アルコールには、約3個〜約10個の炭素原子を含有する多価アルカノールがあり、特に、約3個〜約6個の炭素原子を含有し少なくとも3個の水酸基を有するものがある。このようなアルコールは、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール(トリメチロールエタン)、2−ヒドロキシメチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(トリメチロールプロパン)、1,2,4−ヘキサントリオールなどにより例示される。
【0071】
((2)ポリオレフィンエステル/塩の成分(C)として有用なヒドロキシアミン)
これらのヒドロキシアミンは、第一級アミンまたは第二級アミンであり得る。それらはまた、第三級アミンであり得るが、但し、該第三級アミンはまた、少なくとも2個のヒドロキシル基を含有する。これらのヒドロキシアミンは、少なくとも2個の>NH基、少なくとも2個の−NH2基、少なくとも1個の−OH基と少なくとも1個の>NHまたは−NH2基、または少なくとも2個の−OH基を含有する。「ヒドロキシアミン」および「アミノアルコール」との用語は、同じ種類の化合物を記述しており、従って、交換可能に使用できる。
【0072】
このヒドロキシアミンは、第一級、第二級または第三級のアルカノールアミンまたはそれらの混合物であり得る。このようなアミンは、それぞれ、次式で表わすことができる:
【0073】
【化11】

ここで、Rは、1個〜約8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、または2個〜約8個の炭素原子を有するヒドロキシル置換ヒドロカルビル基であり、そしてR’は、約2個〜約18個の炭素原子を有する二価ヒドロカルビル基である。このような式の−R’−OH基は、ヒドロキシル置換ヒドロカルビル基を表わす。R’は、非環式基、脂環族基または芳香族基であり得る。典型的には、R’は、非環式の直鎖または分枝鎖アルキレン基(例えば、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,2−オクタデシレン基など)である。典型的には、Rは、7個までの炭素原子を有する低級アルキレン基である。
【0074】
これらのヒドロキシアミンはまた、エーテル含有N−(ヒドロキシヒドロカルビル)アミンであり得る。これらは、上記第一級および第二級アルカノールアミンのヒドロキシル置換ポリ(ヒドロカルビルオキシ)アナログ(これらのアナログには、ヒドロキシル置換オキシアルキレンアナログも含まれる)である。このようなN−(ヒドロキシル置換ヒドロカルビル)アミンは、エポキシドと上記アミンとの反応により、都合よく調製され、そして次式で表わすことができる:
【0075】
【化12】

ここで、xは、約2〜約15の数であり、そしてRおよびR’は、上で記述したとおりである。
【0076】
これらのヒドロキシアミンのポリアミンアナログ、特に、アルコキシル化アルキレンポリアミン(例えば、N,N−(ジエタノール)エチレンジアミン)もまた、使用できる。このようなポリアミンは、アルキレンアミン(例えば、エチレンジアミン)と、2個〜約20個の炭素を有する1種またはそれ以上のアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、オクタデセンオキシド)とを反応させることにより、製造できる。類似のアルキレンオキシド−アルカノールアミン反応生成物(例えば、上記の第一級、第二級または第三級アルカノールアミンと、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはより高級なエポキシドとを、1:1〜1:2のモル比で反応させることにより製造した生成物)もまた、使用できる。このような反応を実行するための反応物比および温度は、当業者に公知である。
【0077】
アルコキシル化アルキレンポリアミンの特定の例には、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、モノ(ヒドロキシプロピル)置換テトラエチレンペンタミン、ジ(ヒドロキシプロピル)置換テトラエチレンペンタミン、N−(3−ヒドロキシブチル)テトラメチレンジアミンなどが挙げられる。上で例示のヒドロキシ含有ポリアミンのアミノ基または水酸基を介した縮合により得られる高級な同族体は、同様に、有用である。アミノ基を介した縮合により、アンモニアの除去を伴って、高級なアミンが得られるのに対して、水酸基を介した縮合により、水の除去を伴って、エーテル結合を含有する生成物が得られる。上記ポリアミンのいずれかの2種またはそれ以上の混合物もまた、有用である。
【0078】
N−(ヒドロキシル置換ヒドロカルビル)アミンの例には、モノ−、ジ−およびトリエタノールアミン(いくつかの実施態様では、非常に好ましい)、ジエチルエタノールアミン、ジ−(3−ヒドロキシルプロピル)アミン、N−(3−ヒドロキシルブチル)アミン、N−(4−ヒドロキシルブチル)アミン、N,N−ジ−(2−ヒドロキシルプロピル)アミン、N−(2−ヒドロキシルエチル)モルホリンおよびそのチオアナログ、N−(2−ヒドロキシルエチル)シクロヘキシルアミン、o−、m−およびp−アミノフェノール、N−(ヒドロキシエチル)ピペラジン、N,N’−ジ(ヒドロキシルエチル)ピペラジンなどが挙げられる。
【0079】
さらに他のヒドロキシアミンには、以下の一般式により米国特許第3,576,743号で記述されたヒドロキシ置換第一級アミンがある:
−NH
ここで、Rは、少なくとも1個のアルコール性水酸基を含有する一価有機基である。R中の炭素原子の全数は、好ましくは、約20個を超えない。全体で約10個までのヒドロキシ置換脂肪族第一級アミンは、有用である。約10個までの炭素原子および約6個までの水酸基を含有する1個のアルキル置換基を有するポリヒドロキシ置換アルカノール第一級アミン(ここで、アミン基は、1個だけしか存在していない(すなわち、第一級アミン基))は、有用である。これらのアルカノール第一級アミンは、R−NHに対応し、ここで、Rは、モノ−Oまたはポリヒドロキシ置換アルキル基である。これらの水酸基の少なくとも1個は、第一級アルコール性水酸基であるのが望ましい。このヒドロキシ置換第一級アミンの特定の例には、2−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、p−(β−ヒドロキシエチル)−アニリン、2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、N−(β−ヒドロキシプロピル)−N’−(β−アミノエチル)−ピペラジン、トリス−(ヒドロキシメチル)アミノメタン(これはまた、トリスメチロールアミノメタンとしても、知られている)、2−アミノ−1−ブタノール、エタノールアミン、β−(β−ヒドロキシエトキシ)−エチルアミン、グルカミン、グルソアミン(glusoamine)、4−アミノ−3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブテン(これは、イソプレンオキシドとアンモニアとを反応させることにより、当該技術分野で公知の手順に従って、調製できる)、N−3(アミノプロピル)−4−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン、2−アミノ−6−メチル−6−ヘプタノール、5−アミノ−1−ペンタノール、N−(β−ヒドロキシエチル)−1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン、N−(β−ヒドロキシエトキシエチル)−エチレンジアミン、トリスメチロールアミノメタンなどが挙げられる。米国特許第3,576,743号の内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0080】
その窒素原子上に1個またはそれ以上のヒドロキシアルキル置換基を有するヒドロキシアルキルアルキレンポリアミンもまた、有用である。有用なヒドロキシアルキル置換アルキレンポリアミンには、そのヒドロキシアルキル基が低級ヒドロキシアルキル基(これは、すなわち、8個未満の炭素原子を有する)であるものが挙げられる。このようなヒドロキシアルキル置換ポリアミンの例には、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン、モノヒドロキシプロピル置換ジエチレントリアミン、ジヒドロキシプロピル置換テトラエチレンペンタミン、N−(3−ヒドロキシブチル)テトラメチレンジアミンなどが挙げられる。上で例示のヒドロキシ含有ポリアミンのアミノ基または水酸基を介した縮合により得られる高級な同族体は、同様に、有用である。アミノ基を介した縮合により、アンモニアの除去を伴って、高級なアミンが得られ、そして水酸基を介した縮合により、水の除去を伴って、エーテル結合を含有する生成物が得られる。
【0081】
(ポリオレフィンエステル/塩の成分(A)(II)および(B)(II)(対イオン源))
成分(A)(II)および(B)(II)は、同一または異なり得るが、好ましくは、同一である。本発明の塩組成物を調製する際に成分(A)(II)および(B)(II)として有用なアミンには、アンモニア、第一級アミン、第二級アミンおよびヒドロキシアミン(これは、成分(C)として有用であると上で述べられている)が挙げられる。上述のアンモニア、第一級アミン、第二級アミンおよびヒドロキシアミンに加えて、成分(A)(II)および(B)(II)として有用なアミンには、また、第一級および第二級モノアミン、および第三級モノ−およびポリアミンが挙げられる。成分(A)(II)および(B)(II)として有用な第一級および第二級モノアミンは、上記ポリアミンのアナログと同様に、「(1)(C)として有用なポリアミン」の副題で、上で記述されている。これらの第一級および第二級モノアミンには、上述の脂肪族、環状脂肪族および芳香族モノアミンが挙げられる。第三級アミンは、モノアミンまたはポリアミンのいずれかであり得ること、また、H−N<または−NH基内の水素原子をヒドロカルビル基で置き換えたこと以外は、上述の第一級アミン、第二級アミンおよびヒドロキシアミンと類似している。
【0082】
これらの第三級アミンは、脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミンまたは複素環アミン(脂肪族で置換した芳香族アミン、脂肪族で置換した環状脂肪族アミン、脂肪族で置換した複素環アミン、環状脂肪族で置換した脂肪族アミン、環状脂肪族で置換した芳香族アミン、環状脂肪族で置換した複素環アミン、芳香族で置換した脂肪族アミン、芳香族で置換した環状脂肪族アミン、芳香族で置換した複素環アミン、複素環で置換した脂肪族アミン、複素環で置換した環状脂肪族アミンおよび複素環で置換した芳香族アミンを含めて)であり得る。これらの第三級アミンは、飽和または不飽和であり得る。もし不飽和であるなら、このアミンは、好ましくは、アセチレン性不飽和を含まない。これらの第三級アミンはまた、非炭化水素置換基または基を含有し得る(これらの基が、このようなアミンと成分(B)および成分(A)との反応を著しく妨げない限り)。このような非炭化水素置換基または基には、低級アルコキシ、低級アルキル、メルカプト、ニトロ、および妨害基(例えば、−O−および−S−(例えば、−CHCH−X−CHCH−にあるような基であって、ここで、Xは、−O−または−S−である)が挙げられる。
【0083】
このモノアミンは、次式で表わすことができる:
【0084】
【化13】

ここで、R’、RおよびRは、同一または異なるヒドロカルビル基である。好ましくは、R’、RおよびRは、別個に、1個〜約20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。
【0085】
有用な第三級アミンの例には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、モノメチルジエチルアミン、モノエチルジメチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルペンチルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルヘプチルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルノニルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルフェニルアミン、N,N−ジオクチル−1−オクタンアミン、N,N−ジドデシル−1−ドデカンアミン、トリココアミン、トリ水素化獣脂アミン、N−メチル−ジ水素化獣脂アミン、N,N−ジメチル−1−ドデカンアミン、N,N−ジメチル−1−テトラデカンアミン、N,N−ジメチル−1−ヘキサデカンアミン、N,N−ジメチル−1−オクタデカンアミン、N,N−ジメチルココアミン、N,N−ジメチルソヤアミン、N,N−ジメチル水素化獣脂アミンなどが挙げられる。
【0086】
有用な第三級アルカノールアミンは、次式で表わされる:
【0087】
【化14】

ここで、Rは、1個〜約8個の炭素原子を有するヒドロカルビル基、または2個〜約8個の炭素原子を有するヒドロキシル置換ヒドロカルビル基であり、そしてR’は、約2個〜約18個の炭素原子を有する二価ヒドロカルビル基である。このような式の−R’−OH基は、ヒドロキシル置換ヒドロカルビル基を表わす。R’は、非環式基、脂環族基または芳香族基であり得る。典型的には、R’は、非環式の直鎖または分枝鎖アルキレン基(例えば、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,2−オクタデシレン基など)である。同じ分子内に2個のR基が存在している場合、それらは、直接の炭素−炭素結合により、またはヘテロ原子(例えば、酸素、窒素またはイオウ)を介して結合されて、5員、6員、7員または8員環構造を形成する。このような複素環アミンの例には、N−(ヒドロキシル低級アルキル)−モルホリン、−チオモルホリン、−ピペリジン、−オキサゾリジン、−チアゾリジンなどが挙げられる。しかしながら、典型的には、各Rは、7個までの炭素原子を有する低級アルキル基である。これらのヒドロキシアミンはまた、エーテル含有N−(ヒドロキシヒドロカルビル)アミンであり得る。これらは、上記ヒドロキシアミンのヒドロキシル置換ポリ(ヒドロカルビルオキシ)アナログ(これらのアナログには、ヒドロキシル置換オキシアルキレンアナログも含まれる)である。このようなN−(ヒドロキシル置換ヒドロカルビル)アミンは、エポキシドと上記アミンとの反応により、都合よく調製され、そして次式で表わすことができる:
【0088】
【化15】

ここで、xは、約2〜約15の数であり、そしてRおよびR’は、上で記述したとおりである。
【0089】
有用なポリアミンには、上述のアルキレンポリアミンだけでなく、1個だけの水素原子が窒素原子に結合したか水素原子が窒素原子に結合していないアルキレンポリアミンが挙げられる。それゆえ、成分(A)(II)および(B)(II)として有用なアルキレンポリアミンには、次式に一致するものが挙げられる:
【0090】
【化16】

ここで、nは、1〜約10、好ましくは、1〜約7である;各Rは、独立して、水素原子、約700個までの炭素原子、好ましくは、約100個までの炭素原子、さらに好ましくは、約30個までの炭素原子を有するヒドロカルビル基またはヒドロキシ置換ヒドロカルビル基である;そして「Alkylene」基は、約1個〜約18個の炭素原子、好ましくは、1個〜約4個の炭素原子を有し、好ましいアルキレンは、エチレンまたはプロピレンである。
【0091】
成分(A)(II)および(B)(II)として有用なアルカリ金属およびアルカリ土類金属は、任意のアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり得る。アルカリ金属が好ましい。ナトリウムおよびカリウムは、特に好ましい。有用なアルカリ金属およびアルカリ土類金属化合物には、例えば、酸化物、水酸化物および炭酸塩が挙げられる。水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムは、特に好ましい。
【0092】
(塩組成物の形成)
本発明の塩組成物は、アシル化剤(A)(I)および(B)(I)と成分(C)とを反応させて中間体を形成することにより、その後、該中間体を成分(A)(II)および(B)(II)と反応させて所望の塩を形成することにより、調製できる。これらの塩組成物を調製する代替方法は、成分(A)(I)と(A)(II)とを互いに反応させて第一塩部分を形成する工程、それとは別に、成分(B)(I)と(B)(II)とを互いに反応させて第二塩部分を形成する工程、次いで、これらの2種の塩部分の混合物を成分(C)と反応させる工程を包含する。
【0093】
本発明の塩組成物の調製で利用される反応物の比は、広範囲にわたって変わり得る。一般に、各当量のアシル化剤(A)(I)および(B)(I)の各々に対して、少なくとも約1当量の成分(C)が使用される。各当量の成分(A)(I)および(B)(I)に対して、それぞれ、約0.1〜約2当量またはそれ以上の成分(A)(II)および(B)(II)が使用される。成分(C)の上限は、各当量の成分(A)(I)に対して、約2当量の成分(C)であり、各当量の成分(B)(I)に対して、約2当量の成分(C)である。好ましい量の反応物は、各当量の成分(A)(I)および(B)(I)の各々に対して、約2当量の成分(C)および約0.1〜約2当量の成分(A)(II)および(B)(II)の各々である。成分(B)(I)と(A)(I)との当量比は、2:1より高い。上で述べたように、この比により、(B)(I)が(B)(I)に結合した分子が多数を占めるようになる。(B)(I)と(A)(I)との比は、2:1〜約10:1;または2.5:1〜10:1の範囲であり得る。好ましい範囲は、2:1〜5:1または2.5:1〜5:1、および2:1〜4:1、または2.5:1〜4:1である。さらに好ましい範囲は、2:1〜3:1または2.5:1〜3:1である。高分子量種と低分子量種との好ましい比は、最初は、出発物質の分子量の選択(例えば、高分子量オレフィンと低分子量オレフィンとのブレンド(例えば、16個〜36個の炭素原子を有するブチレンオリゴマーのブレンドをコハク化すること))により確立でき、またはこの比は、後には、例えば、部分または完全合成後、また、(B)(I)と(A)(I)との他の比から誘導された反応生成物を混合することによる反応生成物を加塩した後(例えば、カップリングした(B)(I)(B)(I)生成物の塩と(B)(I)(A)(I)ブレンドの塩とを特定した比の範囲外でブレンドした後)に、確立できた。
【0094】
アシル化剤(A)(I)および(B)(I)の当量数は、各々に存在しているカルボン酸官能基の全数に依存している。アシル化剤(A)(I)および(B)(I)の各々の当量数を決定する際に、カルボン酸アシル化剤として反応できないカルボキシル官能基は、除外される。しかしながら、一般に、これらのアシル化剤の各カルボキシ基に対して、1当量のアシル化剤(A)(I)および(B)(I)が存在している。例えば、1モルのオレフィン重合体と1モルの無水マレイン酸との反応から誘導された水素化物であれば、2当量存在していることになる。このカルボキシ官能性の数(例えば、酸価、ケン化価)を決定するには、通常の技術が容易に利用でき、それゆえ、アシル化剤(A)(I)および(B)(I)の各々の当量数は、当業者により容易に決定できる。
【0095】
ポリアミンの当量は、そのポリアミンの分子量を分子内に存在している窒素の全数で割った値である。もし、このポリアミンを成分(C)として使用するなら、第三級アミノ基は、数に含めない。他方、もし、このポリアミンを成分(A)(II)または(B)(II)として使用するなら、第三級アミノ基は、数に含める。それゆえ、エチレンジアミンは、その分子量の半分に等しい当量を有する;ジエチレントリアミンは、その分子量の3分の1に等しい当量を有する。ポリアルキレンポリアミンの市販混合物の当量は、窒素の原子量(14)をそのポリアミン中に含有されているN%で割ることにより決定でき、それゆえ、34%のNを有するポリアルキレンポリアミンは、41.2の当量を有する。アンモニアまたはモノアミンの当量は、その分子量である。
【0096】
多価アルコールの当量は、その分子量を分子内に存在している水酸基の全数で割った値である。それゆえ、エチレングリコールの当量は、その分子量の半分である。
【0097】
成分(C)として使用されるヒドロキシアミンの当量は、その分子量を分子内に存在している−OH基、>NH基および−NH基の全数で割った値に等しい。それゆえ、ジメチルエタノールアミンは、成分(C)として使用されるとき、その分子量に等しい当量を有する;エタノールアミンは、その分子量の半分に等しい当量を有する。他方、もし、このヒドロキシアミンが成分(A)(II)または(B)(II)として使用されるなら、その当量は、その分子量を分子内に存在している窒素基の全数で割った値となる。それゆえ、ジメチルエタノールアミンは、成分(A)(II)または(B)(II)として存在しているとき、その分子量に等しい当量を有する;エタノールアミンもまた、その分子量に等しい当量を有する。
【0098】
アルカリ金属の当量は、その原子量である。アルカリ土類金属の当量は、その原子量を原子価で割った値である。
【0099】
アシル化剤(A)(I)および(B)(I)は、通常のエステルおよび/またはアミド形成技術に従って、成分(C)と反応できる。これは、通常、必要に応じて、通常液状で実質的に不活性の有機液体溶媒/希釈剤の存在下にて、アシル化剤(A)(I)および(B)(I)を成分(C)と共に加熱する工程を包含する。少なくとも約30℃から、最も低い分解温度を有する反応成分および/または生成物の分解温度までの温度が使用できる。アシル化剤(A)(I)および(B)(I)が無水物であるとき、この温度は、好ましくは、約50℃〜約130℃、さらに好ましくは、約80℃〜約100℃の範囲である。他方、アシル化剤(A)(I)および(B)(I)が酸であるとき、この温度は、好ましくは、約100℃〜約300℃の範囲であり、約125℃〜約250℃の範囲がしばしば使用される。
【0100】
成分(A)(I)および(B)(I)と成分(A)(II)および(B)(II)との反応は、通常の技術を使用して、塩形成条件下にて、実行される。典型的には、成分(A)(I)および(A)(II)と成分(B)(I)および(B)(II)とは、共に混合され、そして所望生成物が形成されるまで、必要に応じて、通常液状で実質的に不活性の有機液体溶媒/希釈剤の存在下にて、約20℃から、最も低い分解温度を有する反応成分および/または生成物の分解温度まで、好ましくは、約50℃〜約130℃、さらに好ましくは、約80℃〜約110℃の範囲の温度まで加熱される。
【0101】
成分(A)(I)および(B)(I)と成分(A)(II)および(B)(II)との間の反応の生成物は、それぞれ、本発明に従って該生成物が乳化剤として有効にするために、少なくともいくつかの塩連鎖を含有しなければならない。好ましくは、アシル化剤(A)(I)および(B)(I)とそれぞれ反応される成分(A)(II)および(B)(II)の少なくとも約10%、さらに好ましくは、少なくとも約30%、さらに好ましくは、少なくとも約50%、さらに好ましくは、少なくとも約70%は、塩連鎖を形成する。
【0102】
以下の実施例は、本発明の塩組成物の調製を例示している。これらの実施例だけでなく、本明細書全体および請求の範囲を通じて、特に明記しない限り、全ての部およびパーセントは、重量基準であり、そして全ての温度は、摂氏である。
【実施例】
【0103】
(実施例1)
ポリイソブチレン置換無水コハク酸(数平均分子量=1048)1080グラムおよび分枝C16ヒドロカルビル置換無水コハク酸(分子量322)818グラムを、撹拌しながら、92℃と98℃の間の温度まで加熱し、その温度で、45分間維持した。その混合物に、エチレングリコール112グラムを加えた。この混合物を92℃と98℃の間の温度で、3時間維持した。この混合物に、0.5時間にわたって、トリエタノールアミン538グラムを加えた。この混合物を、70〜90℃の間で、1時間維持し、次いで、50℃まで冷却して、所望生成物を得た。低分子量置換無水コハク酸と高分子量無水コハク酸との当量比は、2.5:1であった。
【0104】
(機能性流体組成物)
本発明の機能性流体組成物は、水中油形エマルジョンであり、これは、連続水相、不連続有機相、乳化組成物、および機能性流体が果たす機能に関連した添加剤を含有する。この不連続有機相は、乳化剤の全重量を基準にして、好ましくは、少なくとも約1重量%のレベル、さらに好ましくは、約1重量%〜約50重量%の範囲、さらに好ましくは、約1重量%〜約20重量%の範囲で、存在している。この連続水相は、該乳化剤の全重量を基準にして、好ましくは、約99重量%のレベル、さらに好ましくは、約50重量%〜約99重量%の範囲、さらに好ましくは、約80重量%〜約99重量%の範囲のレベルで、存在している。直鎖合成スルホン酸塩と、高分子量アシル化剤、低分子量アシル化剤およびカップリング剤の反応生成物の塩との乳化剤ブレンドは、その有機相の全重量を基準にして、好ましくは、約1重量%〜約100重量%の範囲、さらに好ましくは、約20重量%〜約80重量%の範囲のレベルで、存在している。この乳化剤は、有機相の100%であるとき、水相において単独でエマルジョンを形成するように作用し、この有機相は、乳化剤となる。望ましくは、この直鎖合成アルキルアレーンスルホン酸塩は、この乳化剤ブレンドの約10〜約90重量%であり、この反応生成物の塩は、それを補う量、すなわち、10〜90重量%である。さらに望ましくは、この直鎖合成アルキルアレーンスルホン酸塩は、約20〜80重量%、好ましくは、約30〜70重量%であるのに対して、この反応生成物は、この乳化剤ブレンドの約20〜80重量%、さらに望ましくは、約30〜約70重量%である。必要に応じて、この乳化剤ブレンドには、2種の乳化剤のブレンドでは容易に達成できない特定の性質を得るために、他の界面活性分子が存在し得る。
【0105】
このオイルは、殆ど液状の炭化水素、例えば、パラフィン性、オレフィン性、ナフタレン性、芳香族の飽和または不飽和炭化水素である。一般に、このオイルは、水混和性で乳化可能な炭化水素であり、これは、室温で液状である。種々の原料に由来のオイルは、天然油および合成油およびそれらの混合物を含めて、使用され得る。
【0106】
天然油には、動物油および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油)だけでなく、パラフィン型、ナフテン型または混合したパラフィン−ナフテン型の溶媒精製または酸精製した鉱油が挙げられる。石炭またはけつ岩から誘導されるオイルもまた、有用である。合成油には、炭化水素油およびハロ置換炭化水素油、例えば、重合されたオレフィンおよびインターポリマー化されたオレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレン共重合体、ポリ(α−オレフィン)、塩素化ポリブチレン);アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン;水素異性化されたフィッシャー−トロプシュ炭化水素などが挙げられる。
【0107】
他の適当な種類の合成油には、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸など)と、種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール、ペンタエリスリトールなど)とのエステルが挙げられる。これらエステルの特定の例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸ダイマーの2−エチルヘキシルジエステル、セバシン酸1モルとテトラエチレングリコール2モルおよび2−エチルヘキサン酸2モルとの反応により形成される複合エステルなどが挙げられる。
【0108】
合成油として有用なエステルには、C〜C12モノカルボン酸と、ポリオールおよびポリオールエーテル(例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなど)とから製造されるエステルも挙げられる。
【0109】
シリコンベース油(例えば、ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、またはポリアリールオキシ−シロキサン油およびシリケート油)は、合成潤滑剤の他の有用なクラスを構成する。これらには、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ(4−メチルヘキシル)シリケート、テトラ(p−第三級ブチルフェニル)シリケート、ヘキシル(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン、ポリ(メチルフェニル)シロキサンなどが挙げられる。他の有用な合成油には、リン含有酸の液状エステル(例えば、リン酸トリクレシル、リン酸トリオクチル、デカンホスホン酸のジエチルエステルなど)、重合したテトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0110】
上で開示の種類の未精製油、精製油および再精製油(および互いの混合物)は、使用できる。未精製油とは、天然原料または合成原料から、さらに精製処理することなく、直接得られるオイルである。例えば、レトルト操作から直接得られるけつ岩油、第1段の蒸留から直接得られる石油オイル、またはエステル化工程から直接得られ、かつさらに処理せずに用いられるエステル油は、未精製油である。精製油は、1種またはそれ以上の特性を改良するべく、1段またはそれ以上の精製段階でさらに処理されたこと以外は、未精製油と類似している。このような精製方法の多くは、当業者には周知である(例えば、溶媒抽出、蒸留、水素化、酸または塩基抽出、濾過、浸透など)。再精製油は、すでに使用された精製油に、精製油を得るのに用いた工程と類似の工程を適用することにより、得られる。このような再精製油もまた、再生された油または再生加工された油として周知であり、そして消費された添加剤および油の分解生成物を除去するべく指示された方法により、しばしばさらに処理される。
【0111】
有用なオイルの例には、KAYDOLの商品名称でWitco Chemical Companyから入手できる白色鉱油;ONDINAの商品名称でShellから入手できる白色鉱油;およびN−750−HTの商品名称でPennzoilから入手できる鉱油が挙げられる。
【0112】
本発明の組成物には、任意の追加物質が組み込まれ得る。典型的な最終組成物は、潤滑性剤、耐摩耗剤、分散剤、腐食防止剤、他の界面活性剤(例えば、石油または合成アルキルスルホン酸塩)、金属不活性化剤などが挙げられ得る。本発明のエマルジョンは、貯蔵安定性であり、このことは、それらが、少なくとも6ヶ月、典型的には、1年以上の貯蔵安定性を示すことを意味する。
【0113】
本発明のエマルジョンを製造する好ましい方法は、(1)乳化剤を油相と混合する工程、(2)この油相に添加剤を混合する工程、(3)この油相を水相と共に撹拌して、水中油形エマルジョンを形成する工程を包含する。このオイルと適当な添加剤との混合は、任意の適当な混合装置にて、行われ得る。この油相と水相とを混合して水中油形エマルジョンを調製するには、低剪断混合または高剪断混合のいずれかができる任意の種類の装置が使用され得る。
【0114】
(機能性流体の例)
実施例Aは、本発明の範囲内の機能性流体水中油形エマルジョンを例示している。この実施例は、例証的であり、本発明の範囲を限定しない。
【0115】
(実施例A)
実施例1の生成物(60.0重量%)を市販の合成アルキルアレーンスルホン酸塩(これは、C14〜C16アルキルに由来しており、ベンゼンにグラフト化してスルホン化した)(40重量%)と混合することにより、乳化剤を調製した。両方の界面活性剤は、受け取ったまま使用したが、100%活性ではなかった。この乳化剤ブレンド20重量%とナフテン性鉱油80重量%とから、乳化剤パッケージを調製した。濃縮した乳化剤パッケード5mLを水95mLと混合して、エマルジョン金属加工油剤を形成した。
【0116】
実施例Aの乳化剤ブレンドは、軟水および硬水の両方において、金属加工調合剤で使用される天然スルホン酸塩標準に匹敵する性能であった。対イオンが他のアルカノールアミンではなくトリエタノールアミンであったとき、僅かに良好な性能が認められた(良好な性能は、一般に、乳化剤パッケージ中の乳化剤の割合が減るにつれて、より多くのオイルが少ないかき混ぜで自然に乳化することにより、示される)。
【0117】
本発明は、その好ましい実施態様に関連して説明しているものの、それらの種々の変更は、本明細書を読めば、当業者に明らかなことが理解されるべきである。従って、本明細書中で開示の発明は、添付の請求の範囲に入るこれらの変更を含むべく意図されていることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化剤組成物であって、該乳化剤組成物は、以下:
10〜90重量部の合成アルキルアレーンスルホン酸塩と10〜90重量部の以下のカップリング反応生成物の塩との乳化剤ブレンド:
(A)(I)高分子量ポリカルボン酸アシル化剤であって、該アシル化剤(A)(I)は、少なくとも1個のヒドロカルビル置換基を有し、該ヒドロカルビル置換基は、平均して、約20個〜約500個の炭素原子を有する、アシル化剤;
(B)(I)少なくとも1種の低分子量ポリカルボン酸アシル化剤であって、該アシル化剤(B)(I)は、必要に応じて、少なくとも1個のヒドロカルビル置換基を有し、該ヒドロカルビル置換基は、平均して、6個〜約19個の炭素原子を有する、アシル化剤;を含み、そして、該成分(A)(I)および(B)(I)は、(C)以下:(i)2個またはそれ以上の第一級アミノ基、(ii)2個またはそれ以上の第二級アミノ基、(iii)少なくとも1個の第一級アミノ基および少なくとも1個の第二級アミノ基、(iv)少なくとも2個のヒドロキシル基、または(v)少なくとも1個の第一級または第二級アミノ基と少なくとも1個のヒドロキシル基、を有する少なくとも1種の化合物により、共にカップリングされる、乳化剤組成物。
【請求項2】
(A)(I)が、少なくとも1種のα,β−オレフィン性不飽和カルボン酸または酸生成化合物から誘導され、該酸または酸生成化合物が、該カルボキシルベース基を除いて、約20個までの炭素原子を含有し、ここで、(A)(I)の該ヒドロカルビル置換基が、平均して、約30個〜約500個の炭素原子を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(A)(I)が、アシル化剤とヒドロカルビル基との反応生成物であり、ここで、該ヒドロカルビル基が、ポリ(イソブチレン)基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
(B)(I)が、アシル化剤とヒドロカルビル基との反応生成物であり、ここで、該ヒドロカルビル基が、平均して、約8個〜約18個の炭素原子を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
(B)(I)の前記ヒドロカルビル基が、平均して、約12個〜約18個の炭素原子を有する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
(B)(I)の前記ヒドロカルビル基が、α−オレフィン画分内の少なくとも1個のメンバーから誘導され、該α−オレフィン画分が、C15−18α−オレフィン、C12−16α−オレフィン、C14−16α−オレフィン、C14−18α−オレフィンおよびC16−18α−オレフィンからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記カップリング生成物中の(B)(I)と(A)(I)とのモル比が、約1:1〜4:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記モル比が、約2:1〜3:1である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
Cが、ジオールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
成分(C)が、エチレングリコールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記塩を形成するのに使用される対イオンが、トリエタノールアミンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
成分(C)が、少なくとも1種のポリオールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
成分(C)が、式R(OH)で表わされる少なくとも1種の化合物を含み、ここで、Rが、炭素−酸素結合を介して該OH基に結合した一価または多価有機基であり、そしてmが、2〜約4の整数である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
(A)(I)が、ポリイソブチレン置換無水コハク酸(数平均分子量=500−2000)であり、(B)(I)が、C〜C19ヒドロカルビル置換無水コハク酸である;(C)が、エチレングリコールである;(A)(II)および(B)(II)が、両方共に、ジメチルエタノールアミンであり、そして(B)(I)と(A)(I)の比が、2:1〜3:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記合成アルキルアレーンスルホン酸塩が、前記ブレンドの約20〜約80重量%で存在しており、そして前記カップリング反応生成物の前記塩が、該ブレンドの約20〜約80重量%で存在している、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
過剰の対イオンが、前記反応生成物の前記塩に必要な量を超えて使用される、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
過剰のトリエタノールアミンが、前記反応生成物の前記塩に必要な量を超えて使用される、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
水性水中油形エマルジョン機能性流体であって、該水性水中油形エマルジョン機能性流体は、以下:水および乳化する量の合成アルキルアレーンスルホン酸塩と以下の反応生成物の塩とのブレンド、
(A)(I)高分子量ポリカルボン酸アシル化剤であって、該アシル化剤(A)(I)は、少なくとも1個のヒドロカルビル置換基を有し、該ヒドロカルビル置換基は、平均して、約20個〜約500個の炭素原子を有する、アシル化剤;および
(B)(I)少なくとも1種の低分子量ポリカルボン酸アシル化剤であって、該アシル化剤(B)(I)は、必要に応じて、少なくとも1個のヒドロカルビル置換基を有し、該ヒドロカルビル置換基は、平均して、6個〜約19個の炭素原子を有する、アシル化剤;
を含み、ここで、該成分(A)(I)および(B)(I)は、(C)以下:(i)2個またはそれ以上の第一級アミノ基、(ii)2個またはそれ以上の第二級アミノ基、(iii)少なくとも1個の第一級アミノ基および少なくとも1個の第二級アミノ基、(iv)少なくとも2個のヒドロキシル基、または(v)少なくとも1個の第一級または第二級アミノ基と少なくとも1個のヒドロキシル基、を有する少なくとも1種の化合物により、共にカップリングされる、水性水中油形エマルジョン機能性流体。

【公表番号】特表2007−511353(P2007−511353A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539972(P2006−539972)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/038108
【国際公開番号】WO2005/046853
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】