説明

金属化フィルムコンデンサ

【課題】金属化フィルムコンデンサの自己発熱を低減し、耐電圧性能の向上および長寿命化を図る。
【解決手段】金属化フィルムは、フィルムの幅方向中央部に配置され、フィルム長手方向に間隔をあけて配列した絶縁スリット35a、35bにより複数の第1の分割電極39に分割された第1の分割電極部と、該第1の分割電極部のフィルム幅方向外側に、フィルム長手方向に間隔をあけて配列した絶縁スリット35aにより複数の第2の分割電極40に分割された第2の分割電極部とを有する。第1の分割電極39と第2の分割電極40とはヒューズ18にて接続され、第1の分割電極39の電極面積は、第2の分割電極40の電極面積に比べて小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機器および自動車用等のインバータ回路の平滑用、フィルタ用に使用する金属化フィルムコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の金属化フィルムコンデンサは、図1に示すポリプロピレンフィルム1のメタリコン近傍蒸着電極2を厚く、非メタリコン近傍蒸着電極3を薄く蒸着し、メタリコンと対向する端部に絶縁マージン4を形成した金属化フィルムが使用されている。この金属化フィルムコンデンサではポリプロピレンフィルムの絶縁破壊時、その放電エネルギーにより絶縁破壊部周辺の蒸着電極が飛散し、これにより絶縁破壊部の絶縁を回復させる自己回復機能を有する。しかし、高温・高電圧では絶縁破壊数が増えるために自己回復機能が充分に得られず、コンデンサがショートモードに到ることがある。
【0003】
インバータ回路の平滑用コンデンサは高温・高電圧で使用されると共に、安全性の要求が強く、蒸着電極を複数に分割した金属化フィルムが採用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。このような分割電極が形成された金属化フィルムの例を[図2−A]〜[図2−C]に示す。
【0004】
[図2−A]では、金属化フィルムのメタリコン接続部10と幅方向において対向する端部には絶縁マージン12が形成され、幅方向絶縁スリット5と、長手方向絶縁スリット6とにより分割電極7が形成されている。これら分割電極7同士はヒューズ8で並列に接続されている。さらに、メタリコン近傍蒸着電極は長手方向の絶縁スリット9によりメタリコン接続部10と分割電極7とを分離した構成とし、メタリコン接続部10と分割電極7とはヒューズ11で接続されている。
【0005】
[図2−B]では、金属化フィルムのメタリコン接続部10aと幅方向において対向する端部には絶縁マージン12aが形成され、Y字形絶縁スリット13aによりハニカム状の分割電極7aが形成されている。これら分割電極7a同士はヒューズ8aで並列に接続されている。
【0006】
[図2−C]では、金属化フィルムのメタリコン接続部10bと幅方向において対向する端部には絶縁マージン12bが形成され、ミュラー・リヤー形絶縁スリット14aによりハニカム状の分割電極7bが形成されている。これら分割電極7b同士はヒューズ8bで並列に接続されている。
【0007】
このような分割電極を有する金属化フィルムを用いた金属化フィルムコンデンサに誘電体の絶縁破壊が生じた場合、上記した自己回復機能を有する。同時に、金属化フィルムの自己回復機能を超えた絶縁破壊が生じた場合でも、周囲の分割電極から絶縁破壊の生じた分割電極に電流が流れ込み、ヒューズ部の蒸着電極を飛散させ、ヒューズ動作により絶縁破壊が生じた分割電極が、他の分割電極と切り離されて絶縁を回復させる機能を有し、高い安全性が確保されている。
【0008】
さらに、分割電極面積を小さくするとヒューズ動作による容量減少を抑制することができ、コンデンサの長寿命化が可能になる。しかしながら、細分化し過ぎると、分割電極のエネルギーが小さくなり、絶縁破壊が生じた場合、ヒューズ動作がしにくくなって、コンデンサの安全性が低下する。この現象は温度が高くなるほど顕著になる。
【0009】
また、分割電極面積を小さくすると、ヒューズの数が増加することになるが、ヒューズは分割電極と比較して高抵抗であるため、コンデンサの発熱が大きくなることが報告されている(例えば、特許文献4参照)。このような金属化フィルムコンデンサにおける雰囲気温度の上昇や自己発熱の増加は、耐電圧性能や保安性能が低下する原因となる。
【0010】
そこで、上記した不具合を改善するために、分割電極部と、分割されていない面積の大きな電極(非分割電極部)を集約配置する手段が考案されている(例えば、特許文献5参照)。この特許文献5記載の金属化フィルムコンデンサでは、絶縁マージン側にスリットによって区画された複数の分割小電極が設けられ、端子接続部側(メタリコン接続部側)に非分割電極部が設けられている。そして、複数の分割小電極は、絶縁マージンに近づくにつれて、ヒューズ部の横断面積が小さくなるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平08−250367号公報
【特許文献2】特開平11−26281号公報
【特許文献3】特開平11−26280号公報
【特許文献4】特開2003−338422号公報
【特許文献5】特開2005−12082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、自動車用としてインバータ回路の平滑用などに使用されるコンデンサは高温、高周波、高電圧で使用され、小形化と高度な安全性が要求されている。このため、誘電体フィルムの厚さを薄くしてコンデンサを小形化し、かつ高温領域での耐電圧性能の向上および安全性を実現しなければならない。
【0013】
しかしながら、上記特許文献5記載の金属化フィルムコンデンサでは、金属化フィルムの容量を形成する有効電極部を流れる電流を絶縁マージンに近づくにつれて小さくして、発熱を低減しているが、高温領域での耐電圧性能が必ずしも十分に確保されている状況にはなっていなかった。すなわち、コンデンサ素子の中心部は自己発熱により最も温度が上昇し、他の部分よりも耐電圧性能や保安性能が劣化することが知られているが、上記特許文献5記載の金属化フィルムコンデンサでは、コンデンサ素子の中心部の自己発熱を十分に抑制することができず、耐電圧性能が低下するおそれがあった。
【0014】
これを受けて本発明が解決しようとする課題は、金属化フィルムコンデンサの自己発熱を低減し、耐電圧性能の向上および長寿命化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記の課題を解決するものであり、誘電体フィルムの少なくとも片面に蒸着電極を設けた金属化フィルムを巻回、または積層してコンデンサ素子を形成し、該コンデンサ素子の両端面に電極引き出し用のメタリコンを接続した金属化フィルムコンデンサにおいて、金属化フィルムの長手方向に間隔をあけて配列した絶縁スリットにより蒸着電極が複数の分割電極に分割された分割電極部を幅方向に沿って3列以上配置し、各分割電極部を構成する複数の分割電極の各々は、当該分割電極を長手方向に挟む絶縁スリット間に形成されたヒューズにて幅方向に隣接する分割電極と接続され、幅方向中央部に配置された中央側分割電極部を形成する各分割電極の面積が、中央側分割電極部に対し幅方向外側に配置された外側分割電極部を形成する各分割電極の面積に比べて小さいことを特徴とする。
【0016】
このように構成された発明によれば、幅方向中央部に配置された中央側分割電極部を形成する各分割電極の面積が、中央側分割電極部に対し幅方向外側に配置された外側分割電極部を形成する各分割電極の面積に比べて小さくなっているので、金属化フィルムを巻回、または積層して形成されたコンデンサ素子の中心部における分割電極数が増加する。その結果、コンデンサ素子の中心部における電流経路が増え、素子中心部の電気抵抗が低下する。このため、コンデンサ素子の中心部の自己発熱による温度上昇を抑制することができる。よって、金属化フィルムコンデンサの耐電圧性能の向上および長寿命化を図ることができる。
【0017】
ここで、中央側分割電極部に配列した絶縁スリット同士の間隔を外側分割電極部に配列した絶縁スリット同士の間隔に比べて狭くすることにより、フィルムが幅方向に長くなるのを抑えながら、中央側分割電極部を形成する各分割電極の面積を外側分割電極部を形成する各分割電極の面積に比べて小さくすることができる。
【0018】
また、コンデンサ素子が金属化フィルムを2枚重ね合わせてなる一対の金属化フィルムにより形成される金属化フィルムコンデンサにおいては、一対の金属化フィルムの各々に形成された中央側分割電極部同士が重なり合うように構成することが好ましい。この構成によれば、金属化フィルムを2枚重ね合わせた場合でも、一対の金属化フィルムの各々に形成された中央側分割電極部同士が重なり合うことで、コンデンサ素子の中心部の自己発熱による温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0019】
さらに、中央側分割電極部に配列した各絶縁スリットを長手方向に挟んで隣接する分割電極同士をヒューズで接続し、中央側分割電極部を形成する各分割電極と外側分割電極部を形成する各分割電極とを接続するヒューズの幅を、中央側分割電極部を形成する各分割電極同士を接続するヒューズの幅よりも大きくしてもよい。この構成によれば、コンデンサ素子の中心部における電流経路をさらに増加させ、さらなる自己発熱の抑制を図ることができる。また、中央側分割電極部を形成する各分割電極と外側分割電極部を形成する各分割電極を接続するヒューズの幅が、中央側分割電極部を形成する各分割電極同士を接続するヒューズの幅よりも大きくすることで、分割電極面積が小さくヒューズを動作させるために有するエネルギーが小さい中央側分割電極においても充分なヒューズの動作性を確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、金属化フィルムコンデンサの自己発熱を低減し、耐電圧性能の向上および長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の金属化フィルムコンデンサに使用されている金属化フィルムの断面図である。
【図2】分割電極が設けられた従来の金属化フィルムの平面図である。[図2−A]は矩形状の分割電極が形成された金属化フィルムの平面図、[図2−B]はY字形絶縁スリットにより形成されたハニカム状の分割電極が形成された金属化フィルムの平面図、[図2−C]はミュラー・リヤー形絶縁スリットにより形成されたハニカム状の分割電極が形成された金属化フィルムの平面図である。
【図3】本発明の金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルムの第1実施形態を示す図である。
【図4】本発明の金属化フィルムコンデンサの内部構造を示す図である。
【図5】本発明の金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルムの第2実施形態を示す図である。
【図6】本発明の金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルムの変形形態を示す図である。
【図7】本発明の金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルムの変形形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
図3は本発明の金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルムの第1実施形態を示す図である。この金属化フィルムでは、メタリコン接続部10を除く金属化フィルムのほぼ全幅にわたって形成された絶縁スリット35a(T字形)と、金属化フィルムの幅方向中央部において絶縁スリット35aと平行に形成された絶縁スリット35b(I字形)とが金属フィルムの長手方向に沿って交互に配列している。
【0023】
この絶縁スリット35aと絶縁スリット35bにより蒸着電極が複数の分割電極39(以下「第1の分割電極」という)に分割された第1の分割電極部(本発明の「中央側分割電極部」に相当)が形成されている。また、第1の分割電極部に対し幅方向外側(メタリコン接続部側と絶縁マージン側の両側)には、一対の絶縁スリット35aにより蒸着電極が複数の分割電極40(以下「第2の分割電極」という)に分割された第2の分割電極部(本発明の「外側分割電極部」に相当)が形成されている。つまり、第1の分割電極部を中心に分割電極部が幅方向に3列配置されている。
【0024】
ここで、各第1の分割電極39は、当該分割電極を長手方向に挟む絶縁スリット35aと絶縁スリット35bとの間に形成されたヒューズ18にて幅方向に隣接する分割電極、すなわち第2の分割電極40に接続されている。換言すれば、各第2の分割電極40は、ヒューズ18にて幅方向に隣接する第1の分割電極39に接続されている。また、メタリコン接続部近傍の蒸着電極においては、フィルム長手方向に沿って伸びる絶縁スリット9によりメタリコン接続部10と第2の分割電極40が分離され、メタリコン接続部10と第2の分割電極40とは絶縁スリット9間に形成されたヒューズ18aで接続されている。
【0025】
第1の分割電極部に配列した絶縁スリット同士の間隔、すなわち絶縁スリット35aと絶縁スリット35bとの間隔は、第2の分割電極部に配列した絶縁スリット35a同士の間隔に比べて狭く、第1の分割電極部を構成する各第1の分割電極39の面積は、第2の分割電極部を構成する各第2の分割電極40の面積に比べて小さい。
【0026】
図4は本発明の金属化フィルムコンデンサの内部構造を示す図である。上記のように形成された金属化フィルムをメタリコン接続部と絶縁マージンが対向するように2枚重ねて巻回する。2枚の金属化フィルムは蒸着電極が形成された電極形成面を同一方向に向けて重ね合わされる。すなわち、蒸着電極間に誘電体フィルムが挟み込まれるように蒸着電極と誘電体フィルムが積層方向に交互に配置される。そして、巻回された金属化フィルムを小判形に成形した後、両端部(重ね合わされた金属化フィルムの一方端部と他方端部)に電極引き出し用のメタリコンを形成してコンデンサ素子25とする。その後、複数個のコンデンサ素子25を電極板26で結線して引き出し端子27を接続する。結線されたコンデンサ素子25をケース28に収納し、ケース28内に樹脂29を充填することで金属化フィルムコンデンサが得られる。
【0027】
以上のように本実施形態によれば、フィルム幅方向中央部に配置された第1の分割電極部を形成する第1の分割電極39の各々の電極面積が、第1の分割電極部に対し幅方向外側に配置された第2の分割電極部を形成する第2の分割電極40の各々の電極面積に比べて小さくなっている。このため、第1の分割電極39の個数が第2の分割電極40の個数に比べて相対的に多くなり、コンデンサ素子の中心部における分割電極数が増加する。その結果、コンデンサ素子の中心部における電流経路が増え、素子中心部の電気抵抗が相対的に低下する。素子の発熱量は電気抵抗に比例することから、素子中心部の電気抵抗を小さくすることでコンデンサ素子の中心部の自己発熱による温度上昇を抑制することができる。よって、金属化フィルムコンデンサの耐電圧性能の向上および長寿命化を図ることができる。
【0028】
また、第1の分割電極部に配列した絶縁スリット同士の間隔、すなわち絶縁スリット35aと絶縁スリット35bとの間隔は、第2の分割電極部に配列した絶縁スリット35a同士の間隔に比べて狭くすることにより、フィルムが幅方向に長くなるのを抑えながら、第1の分割電極39の面積を第2の分割電極40の面積に比べて小さくすることができる。
【0029】
さらに、金属化フィルムを2枚重ね合わせてなる一対の金属化フィルムにより金属化フィルムコンデンサを形成する際に、一対の金属化フィルムの各々に形成された第1の分割電極部同士が重なり合うように構成することが好ましい。この構成によれば、第1の分割電極部同士が重なり合うことで、対向する金属化フィルムの幅方向中央部にも電極面積の小さな第1の分割電極39が配置されることとなり、コンデンサ素子の中心部の自己発熱による温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0030】
<実施例>
以下に金属化フィルムコンデンサの実施例について説明する。図3において、金属化フィルムの幅方向中央付近に設けた第1の分割電極39の長手方向寸法39aを5.0mm、幅方向の他の部分に設けた第2の分割電極40の長手方向寸法40aを10.0mmとし、フィルム幅方向の寸法を、第1の分割電極39については15mm、第2の分割電極40については20mmとし、第1、第2の分割電極を接続しているヒューズ18、18aの寸法を0.2mmとした。誘電体は2.5μmのポリプロピレンフィルムを用い、非メタリコン近傍蒸着電極膜抵抗値を10Ω/□、メタリコン接続部蒸着電極膜抵抗値を4Ω/□とした。
【0031】
上記のように形成された金属化フィルムをメタリコン接続部と絶縁マージンが対向するように2枚重ねて巻回し、小判形に成形した後、両端部に電極引き出しとしてメタリコンを形成してコンデンサ素子とした。さらに、図4に示すように5個のコンデンサ素子25を電極板26で結線して引き出し端子27を接続し、ケース28に収納してエポキシ樹脂29を充填、硬化して800μFの金属化フィルムコンデンサを作製した。
【0032】
<比較例>
次に金属化フィルムコンデンサの比較例について説明する。図2([図2−A])に示す金属化フィルムの分割電極7をフィルム長手方向に分割する絶縁スリット5のピッチを10.0mmとし、フィルム幅方向に分割する絶縁スリット6のピッチを18mmとし、分割電極7を接続しているヒューズ8、11の幅を0.2mmとした。誘電体は2.5μmのポリプロピレンフィルム、非メタリコン近傍蒸着電極膜抵抗値を10Ω/□、メタリコン接続部膜抵抗値を4Ω/□とした。
【0033】
該分割電極金属化フィルムをメタリコン接続部と絶縁マージンが対向するように2枚重ねて巻回し、小判型に成形した後、両端部に電極引き出しとしてメタリコンを形成してコンデンサ素子とした。さらに、図4に示すように5個の該コンデンサ素子25を電極板26で結線して引き出し端子27を接続し、ケース28に収納してエポキシ樹脂29を充填、硬化して800μFの金属化フィルムコンデンサを製作した。
【0034】
実施例および比較例について各々、試料を5個用意して、温度上昇試験(温度100℃、10kHz、100A通電)、および耐用性試験(温度110℃、750VDC、1000時間印加)を実施した。試験終了後、試料の静電容量変化率を測定した。その試験結果を表1に示す。
【0035】
表1より明らかなように、実施例と比較例とを比較すると、実施例の方が電流印加時の温度上昇値が低い。これは、実施例では、金属化フィルム幅方向中央部に第1の分割電極(小面積分割電極)を配置することにより、コンデンサ素子の中心部の自己発熱による温度上昇を抑制できたことによる。具体的には、フィルム幅方向中央部に比較的電極面積の小さな分割電極が配置されることにより、コンデンサ素子の中心部における電流経路が増え、素子中心部の電気抵抗が相対的に低下する。これにより、コンデンサ素子の中心部において電流に起因する発熱を低減することができる。その結果、実施例は比較例に対し、相対的に温度上昇を抑制することができる。
【0036】
また、表1の試験結果より、実施例と比較例とを比較すると、実施例の方が耐用性試験後の静電容量減少値が小さいことが分かる。これは上記のようにコンデンサの自己発熱が低減されたことにより、コンデンサの耐電圧性能が向上したことによる。
【0037】
【表1】

【0038】
<第2実施形態>
図5は本発明の金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルムの第2実施形態を示す図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく異なる点は、フィルム幅方向中央部に配置された第1の分割電極部を構成する第1の分割電極39の各々がヒューズ18bで接続されている点である。なお、その他の構成は基本的に第1実施形態と同様であるため、共通点については説明を省略し、相違点について説明する。
【0039】
第1の分割電極部(中央側分割電極部)に配列した各絶縁スリット35cを長手方向に挟んで隣接する第1の分割電極39同士がヒューズ18bで接続されている。第1の分割電極部を形成する第1の分割電極39と第2の分割電極部を形成する第2の分割電極40とを接続するヒューズの幅Aが、第1の分割電極39同士を接続するヒューズ18bの幅Bよりも大きい。
【0040】
以上のような構成によれば、ヒューズ18bを介して電流が流れ、コンデンサ素子の中心部における電流経路をさらに増加させ、さらなる自己発熱の抑制を図ることができる。また、ヒューズ18の幅が、ヒューズ18bの幅よりも大きくすることで、分割電極面積が小さくヒューズを動作させるために有するエネルギーが小さい中央側分割電極においても充分なヒューズの動作性を確保することができる。
【0041】
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、第1の分割電極39の各々の電極面積を同一としているが、相違させてもよい。同様に、第2の分割電極40(メタリコン接続部側と絶縁マージン側)の各々の電極面積を同一としているが、相違させてもよい。要は、幅方向中央部に配置された中央側分割電極部を形成する各分割電極の面積が、中央側分割電極部に対し幅方向外側に配置された外側分割電極部を形成する各分割電極の面積に比べて小さければよい。
【0042】
また、金属化フィルムを2枚重ね合わせる際には、同一の電極パターンを有する金属化フィルム同士を重ね合わせるほか、互いに異なる電極パターンを有する金属化フィルム同士を重ね合わせてもよい。この場合でも、電極面積が最も小さい分割電極から構成された中央側分割電極部同士が対向するように金属化フィルムを重なり合わせることが好ましい。これにより、コンデンサ素子の中心部の自己発熱による温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、金属化フィルムの長手方向に間隔をあけて配列した絶縁スリットにより蒸着電極が複数の分割電極に分割された分割電極部を幅方向に沿って3列配置しているが、分割電極部の配列数はこれに限定されない。例えば、図6に示すように金属化フィルムを形成してもよい。
【0044】
図6は本発明の金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルムの変形形態を示す図である。図6では、分割電極部を幅方向に沿って5列配置している。具体的には、幅方向中央部に配置され、複数の分割電極41から構成される中央側分割電極部、該中央側分割電極部の幅方向外側に複数の分割電極42から構成される第1の外側分割電極部、および該第1の外側分割電極部の幅方向外側に複数の分割電極43から構成される第2の外側分割電極部が幅方向に配列している。分割電極部を構成する各分割電極は互いにヒューズ(図示せず)で接続されている。分割電極41の電極面積は分割電極42の電極面積に比べて小さく、分割電極42の電極面積は分割電極43の電極面積に比べて小さい。
【0045】
このような構成でも、幅方向中央部に配置された中央側分割電極部を形成する各分割電極の面積が、中央側分割電極部に対し幅方向外側に配置された外側分割電極部を形成する各分割電極の面積に比べて小さくなっているので、コンデンサ素子の中心部における電流経路が増え、素子中心部の電気抵抗が低下する。このため、コンデンサ素子の中心部の自己発熱による温度上昇を抑制することができる。
【0046】
なお、図6において、複数の分割電極43から構成され、フィルム幅方向において最も外側に配置される第2の外側分割電極部については、絶縁スリットにより蒸着電極を分割することなく、非分割電極部としてもよい。
【0047】
また、分割電極部を幅方向に奇数列配置する場合に限らず、偶数列配置するように構成してもよい。図7は、分割電極部を幅方向に4列配置した例を示している。図7に示す金属化フィルムでは、幅方向中央部に、幅方向外側に配置された外側分割電極部を形成する各分割電極部44よりも電極面積が小さい分割電極45から構成された中央側分割電極部を幅方向に2列配置している。このような構成でも、フィルム幅方向中心を挟んで中央側分割電極部が配置されることにより、コンデンサ素子の中心部における電流経路が増え、素子中心部の電気抵抗が低下する。このため、コンデンサ素子の中心部の自己発熱による温度上昇を抑制することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ポリプロピレンフィルム
2 メタリコン近傍蒸着電極
3 非メタリコン近傍蒸着電極
4 絶縁マージン
5 幅方向絶縁スリット
6 長手方向絶縁スリット
7 分割電極
8 ヒューズ
9 メタリコン近傍長手方向絶縁スリット
10 メタリコン接続部
11 メタリコン近傍ヒューズ
12、12a、12b 絶縁マージン
13、13a Y字形絶縁スリット
14、14a ミュラー・リヤー形絶縁スリット
18、18a、18b ヒューズ
25 コンデンサ素子
26 電極板
27 引き出し端子
28 ケース
29 エポキシ樹脂
35、35a、35b、35c 絶縁スリット
39 第1の分割電極(中央側分割電極部を形成する分割電極)
40 第2の分割電極(外側分割電極部を形成する分割電極)
41 分割電極(中央側分割電極部を形成する分割電極)
42 分割電極(外側分割電極部を形成する分割電極)
43 分割電極(外側分割電極部を形成する分割電極)
44 分割電極(外側分割電極部を形成する分割電極)
45 分割電極(中央側分割電極部を形成する分割電極)
39a 第1の分割電極のフィルム長手方向寸法
40a 第2の分割電極のフィルム長手方向寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルムの少なくとも片面に蒸着電極を設けた金属化フィルムを巻回、または積層してコンデンサ素子を形成し、該コンデンサ素子の両端面に電極引き出し用のメタリコンを接続した金属化フィルムコンデンサにおいて、
前記金属化フィルムの長手方向に間隔をあけて配列した絶縁スリットにより前記蒸着電極が複数の分割電極に分割された分割電極部を幅方向に沿って3列以上配置し、
各分割電極部を構成する複数の分割電極の各々は、当該分割電極を長手方向に挟む絶縁スリット間に形成されたヒューズにて幅方向に隣接する分割電極と接続され、
幅方向中央部に配置された中央側分割電極部を形成する各分割電極の面積が、前記中央側分割電極部に対し幅方向外側に配置された外側分割電極部を形成する各分割電極の面積に比べて小さいことを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記中央側分割電極部に配列した絶縁スリット同士の間隔が前記外側分割電極部に配列した絶縁スリット同士の間隔に比べて狭いことを特徴とする請求項1記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記コンデンサ素子が前記金属化フィルムを2枚重ね合わせてなる一対の金属化フィルムにより形成される請求項1または2に記載の金属化フィルムコンデンサであって、
前記一対の金属化フィルムの各々に形成された中央側分割電極部同士が重なり合うことを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記中央側分割電極部に配列した各絶縁スリットを長手方向に挟んで隣接する分割電極同士がヒューズで接続され、
前記中央側分割電極部を形成する各分割電極と前記外側分割電極部を形成する各分割電極とを接続するヒューズの幅が、前記中央側分割電極部を形成する各分割電極同士を接続するヒューズの幅よりも大きいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の金属化フィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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