説明

金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法および金属含有硫黄導入酸化チタン

【解決課題】可視光での高い光触媒活性を有する、金属が導入された硫黄含有酸化チタンの製造方法および金属含有硫黄導入酸化チタンを提供すること。
【解決手段】金属含有原料酸化チタンと硫黄化合物との混合物を焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程を有し、該金属含有原料酸化チタン中の金属含有量が、TiO換算したときの該金属含有原料酸化チタン100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部であること、を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光型光触媒や光増感型太陽電池などに用いられる金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン粉末は、白色顔料として古くから利用されており、近年は化粧品などの紫外線遮蔽材料、光触媒、コンデンサ、サーミスタの構成材料あるいはチタン酸バリウムの原料等電子材料に用いられる焼結材料などに広く利用され、また、最近は、色素増感型酸化チタンの電極などへの適用の研究開発がなされている。特にここ数年、光触媒としての利用が盛んに試みられており、光触媒反応の用途開発が盛んに行われている。この酸化チタン光触媒の用途は非常に多岐に亘っており、水の分解による水素の発生、酸化還元反応を利用した有機化合物の合成、排ガス処理、空気清浄、防臭、殺菌、抗菌、水処理、照明機器等の汚れ防止等、数多くの用途開発が行われている。
【0003】
しかしながら、酸化チタンは可視光付近の波長領域において大きな屈折率を示すため、可視光領域では殆ど光吸収は起こらない。屋内での蛍光灯などの下での利用を考えると、蛍光灯のスペクトルは殆どが400nm以上であるため、光触媒として十分な特性を発現することはできない。そこで可視光領域での触媒活性を発現させることができる、より利用性の高い高活性の光触媒の開発が行なわれている。
【0004】
近年、従前の金属を酸化チタンにドープした光触媒の不十分な触媒活性を改善するものとして、金属原子の一部を硫黄で置換した硫黄含有酸化チタン粉末が開示されている(特開2004−143032号公報)。また、硫黄含有酸化チタンのトルエンの分解効率を上げるため、金属陽イオン(Fe、Cu、In、W、Pb、V、Bi、Nb、Ti、Sr、Zn、Ba、Ca、K、Sn、Zrからなる群から選ばれた少なくとも1つの金属原子がイオン化されたもの)を導入した硫黄含有酸化チタンが示されている(特開2006−82071号公報)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−143032号(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2006−82071号(特許請求の範囲)
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特開2006−82071号の実施例に記載の製造方法では、十分な光触媒活性を有する硫黄含有酸化チタンが得られないという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、可視光での高い光触媒活性を有する、金属を含有する硫黄導入酸化チタン(以下、金属を含有する硫黄導入酸化チタンを、金属含有硫黄導入酸化チタンとも記載する。)の製造方法および金属含有硫黄導入酸化チタンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、金属を導入するために用いる金属化合物を、酸化チタンに含有させる時期により、得られる金属含有硫黄導入酸化チタンの光触媒活性に差が出ること、具体的には、チタン塩の加水分解物又はアルカリ中和物と、硫黄化合物との混合物を焼成する前に、該チタン塩の加水分解物又はアルカリ中和物に予め、金属を含有させておくと、高い光触媒活性を有する金属含有硫黄導入酸化チタンが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明(1)は、金属含有原料酸化チタンと硫黄化合物との混合物を焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程を有し、
該金属含有原料酸化チタン中の金属含有量が、TiO換算したときの該金属含有原料酸化チタン100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部であること、
を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明(2)は、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物と硫黄化合物との混合物を得る焼成原料混合物調製工程と、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物と該硫黄化合物との混合物を、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程と、を有し、
該焼成原料混合物調製工程が、チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、チタン塩加水分解/アルカリ中和物含有スラリーを調製する加水分解/アルカリ中和処理と、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物含有スラリーに、金属化合物を加え、撹拌して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物を得る金属化合物撹拌混合処理と、を行う工程であり、
該金属化合物撹拌混合処理で該金属化合物を加える量が、TiO換算したときの該チタン塩加水分解/アルカリ中和物100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理を行う前から該金属化合物撹拌混合処理を行った後までの間に、硫黄化合物を混合すること、
を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明(3)は、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物の加熱処理物と硫黄化合物との混合物を得る焼成原料混合物調製工程と、該加熱処理物と該硫黄化合物との混合物を、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程と、を有し、
該焼成原料混合物調製工程が、チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、チタン塩加水分解/アルカリ中和物含有スラリーを調製する加水分解/アルカリ中和処理と、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物含有スラリーに、金属化合物を加え、撹拌して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物を得る金属化合物撹拌混合処理と、該金属含有チタン塩/アルカリ中和物を加熱処理して、加熱処理物を得る加熱処理と、を行う工程であり、
該金属化合物撹拌混合処理で該金属化合物を加える量が、TiO換算したときの該チタン塩加水分解/アルカリ中和物100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理を行う前から該加熱処理を行った後までの間に、硫黄化合物を混合すること、
を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明(4)は、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物と硫黄化合物との混合物を得る焼成原料混合物調製工程と、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物と該硫黄化合物との混合物を、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程と、を有し、
該焼成原料混合物調製工程が、金属化合物の存在下で、チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物を得る加水分解/アルカリ中和処理を行う工程であり、
該加水分解/アルカリ中和処理で存在させる該金属化合物の量が、TiO換算したときのチタン塩100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理を行う前から該加水分解/アルカリ中和処理を行った後までの間に、硫黄化合物を混合すること、
を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明(5)は、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物の加熱処理物と硫黄化合物との混合物を得る焼成原料混合物調製工程と、該加熱処理物と該硫黄化合物との混合物を、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程と、を有し、
該焼成原料混合物調製工程が、金属化合物の存在下で、チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、チタン塩加水分解/アルカリ中和物を得る加水分解/アルカリ中和処理と、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物を加熱処理して、加熱処理物を得る加熱処理と、を行う工程であり、
該チタン塩加水分解/アルカリ中和処理で存在させる該金属化合物の量が、TiO換算したときのチタン塩100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理を行う前から該加熱処理を行った後までの間に、硫黄化合物を混合すること、
を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明(6)は、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物と硫黄化合物との混合物を得る焼成原料混合物調製工程と、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物と該硫黄化合物との混合物を、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程と、を有し、
該焼成原料混合物調製工程が、金属化合物の存在下で、該チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物含有スラリーを調製する加水分解/アルカリ中和処理と、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物含有スラリーに、金属化合物を加え、撹拌して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物を得る金属化合物撹拌混合処理と、を行う工程であり、
該加水分解/アルカリ中和処理で存在させる該金属化合物及び該金属化合物撹拌混合処理で加える該金属化合物の合計量が、TiO換算したときのチタン塩100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理を行う前から該金属化合物撹拌混合処理を行った後までの間に、硫黄化合物を混合すること、
を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明(7)は、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物の加熱処理物と硫黄化合物との混合物を得る焼成原料混合物調製工程と、該加熱処理物と該硫黄化合物との混合物を、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程と、を有し、
該焼成原料混合物調製工程が、金属化合物の存在下で、該チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物含有スラリーを調製する加水分解/アルカリ中和処理と、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物含有スラリーに、金属化合物を加え、撹拌して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物を得る金属化合物撹拌混合処理と、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物を加熱処理し、加熱処理物を得る加熱処理と、を行う工程であり、
該加水分解/アルカリ中和処理で存在させる該金属化合物及び該金属化合物撹拌混合処理で加える該金属化合物の合計量が、TiO換算したときのチタン塩100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理を行う前から該加熱処理を行った後までの間に、硫黄化合物を混合すること、
を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明(8)は、金属含有量が0.03〜0.15質量%、硫黄含有量が0.02〜0.1質量%、比表面積が60〜120m/g、結晶構造の主体がアナターゼ型である酸化チタンであり、該酸化チタン中の硫黄原子が、酸化チタンのチタンサイトに導入され、金属が酸化チタンの表面および内部に含まれていること、を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンを提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、可視光での高い光触媒活性を有する金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法および金属含有硫黄導入酸化チタンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法は、金属含有原料酸化チタンと硫黄化合物との混合物を焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程を有し、該金属含有原料酸化チタン中の金属含有量が、TiO換算したときの該金属含有原料酸化チタン100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部であること、を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法である。該金属化合物の含有量は、TiO換算したときの100質量部に対する金属原子の質量が、好ましくは0.03〜0.15質量部、特に好ましくは0.05〜0.1質量部となる混合量である。該金属化合物の混合量が、上記範囲内にあることにより、金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる。
【0019】
本発明の第一の形態の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法(以下、本発明の製造方法(1)とも記載)は、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと硫黄化合物との混合物Aを得る焼成原料混合物調製工程Aと、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと該硫黄化合物との混合物Aを、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程Aと、を有し、
該焼成原料混合物調製工程Aが、チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、チタン塩加水分解/アルカリ中和物A含有スラリーを調製する加水分解/アルカリ中和処理Aと、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物A含有スラリーに、金属化合物を加え、撹拌して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aを得る金属化合物撹拌混合処理Aと、を行う工程であり、
該金属化合物撹拌混合処理Aで該金属化合物を加える量が、TiO換算したときの該チタン塩加水分解/アルカリ中和物A 100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理Aを行う前から該金属化合物撹拌混合処理Aを行った後までの間に、硫黄化合物を混合する、
金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法である。なお、本発明では、「加水分解またはアルカリ中和」を、「加水分解/アルカリ中和」とも記載する。
【0020】
該焼成原料混合物調製工程Aでは、該加水分解/アルカリ中和処理Aと、該金属化合物撹拌混合処理Aと、を行うことにより、該チタン塩から該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aを得る。
【0021】
該焼成原料混合物調製工程Aでは、先ず、該加水分解/アルカリ中和処理Aを行う。該加水分解/アルカリ中和処理Aは、該チタン塩を加水分解することにより、または該チタン塩をアルカリ中和することにより、該チタン塩の加水分解物Aまたは該チタン塩のアルカリ中和物Aを含有するスラリー、すなわち、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物A含有スラリーを調製する処理である。
【0022】
該加水分解/アルカリ中和処理Aに係る該チタン塩としては、例えば、チタンアルコキシド等の有機金属化合物、あるいは、四塩化チタン、三塩化チタン等のチタン塩化物、硫酸チタニル、硫酸チタン等の硫酸塩のような無機塩が挙げられる。これらのうち、取り扱い性や経済性から、四塩化チタン、硫酸チタニル、硫酸チタンが好ましい。
【0023】
該加水分解/アルカリ中和処理Aにおいて、該チタン塩の加水分解を行う方法としては、該チタン塩を水に溶解させた水溶液を調製し、該水溶液を撹拌しながら加熱する方法が挙げられる。この方法では、加水分解する際の加水分解温度は、好ましくは20℃〜水溶液の沸点、特に好ましくは40〜80℃である。該加水分解温度が、20℃未満であると、加水分解速度が遅くなり易い。また、加水分解する際の加水分解時間は、通常5分〜10時間、好ましくは10分〜5時間、特に好ましくは10分〜1時間である。なお、上記では、該チタン塩を水に溶解させる旨を記載したが、該チタン塩を溶解させる溶媒としては、該金属化合物を溶解するものであれば、特に制限されず、水の他に、アルコールなどの有機溶媒が挙げられ、これらのうち、水は取り扱いが容易な点、経済性の点から好ましい。また、加水分解する際に、水とともに該硫黄化合物を混合しても構わない。
【0024】
該加水分解/アルカリ中和処理Aにおいて加水分解する際、低pH領域で加水分解を行うことが、粒径が小さい加水分解物を得ることができる点で好ましい。そのため、該加水分解/アルカリ中和処理Aにおいて加水分解をする際、特に、加水分解温度が水溶液の沸点付近である場合においては、反応槽に還流装置等を設置し、発生する塩化水素が塩化水素ガスとして反応系外へ排出されることを抑えることが、反応系のpHを低くできる点で好ましい。
【0025】
そして、該加水分解/アルカリ中和処理Aでは、該チタン塩の加水分解を行なうことにより、該チタン塩加水分解物が生成して、水溶媒に、該チタン塩加水分解物が分散されている該チタン塩加水分解物A含有スラリーが得られる。該チタン塩加水分解物Aは、酸化チタン又は該チタン塩から酸化チタンに変化途中の中間体である。
【0026】
該加水分解/アルカリ中和処理Aにおいて、該チタン塩のアルカリ中和を行なう方法としては、該チタン塩を水に溶解させた水溶液を調製し、該水溶液を撹拌しながら、アルカリを混合して、該チタン塩と該アルカリとを接触させる方法が挙げられ、更に具体的には、例えば、
(i)該チタン塩の水溶液に対して、該アルカリの水溶液を滴下し、両者を接触させる方法、
(ii)該アルカリの水溶液に対して、該チタン塩の水溶液を滴下し、両者を接触させる方法、
(iii)反応容器に水を入れておき、その中に、該チタン塩の水溶液と該アルカリの水溶液とを滴下し、両者を接触させる方法、
が挙げられる。
【0027】
該加水分解/アルカリ中和処理Aに係る該アルカリとしては、特に制限されず、例えば、アンモニア、アンモニア水等が挙げられ、これらのうち、アンモニア又はアンモニア水が、金属含有硫黄導入酸化チタン中にアルカリ由来の金属成分が含有されないので、該金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性の制御上好ましい。上記(i)〜(iii)の方法では、アルカリ中和する際のアルカリ中和温度は、好ましくは10〜80℃、特に好ましくは30〜80℃、更に好ましくは40〜70℃である。該アルカリ中和温度が、10℃未満だと中和反応が起こり難くなり、また、80℃を超えると発熱が激しく、塩化水素の発生が著しくなるため、平均粒径が小さく且つ比表面積が大きいアルカリ中和物が得られ難くなる。また、アルカリ中和する際の該アルカリの添加時間は、通常1分〜10時間、好ましくは3分〜5時間、特に好ましくは5分〜1時間である。
そして、該加水分解/アルカリ中和処理Aでは、該チタン塩のアルカリ中和を行なうことにより、該チタン塩アルカリ中和物が生成し、水溶媒に、該チタン塩アルカリ中和物が分散されている該チタン塩アルカリ中和物A含有スラリーが得られる。該チタン塩アルカリ中和物Aは、酸化チタン又は該チタン塩から酸化チタンに変化途中の中間体である。
【0028】
次いで、該焼成原料混合物調製工程Aでは、該金属化合物撹拌混合処理Aを行う。該金属化合物撹拌混合処理Aは、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物A含有スラリーに、該金属化合物を加え、撹拌混合して、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aを得る処理である。例えば、該金属化合物撹拌混合処理Aでは、該加水分解/アルカリ中和処理Aで調製した該チタン塩加水分解/アルカリ中和物A含有スラリーから、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aを分離することなく、該スラリーに、該金属化合物を加える。
【0029】
該金属化合物撹拌混合処理Aに係る該金属化合物は、スラリーの水溶媒中に均一に溶解するものであれば良く、塩化物、硫酸塩、硝酸塩等の無機金属塩、あるいは有機金属化合物が挙げられる。また、該金属化合物の金属種としては、金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる点で、鉄であることが好ましい。また、該金属化合物は、無機金属塩であることが好ましく、金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる点で、鉄塩であることが好ましい。具体的には、FeCl、FeCl、FeSO、Fe(SO、Fe(NO、FeI、FeI、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸アンモニウム鉄、硫化鉄、リン酸鉄、蓚酸アンモニウム鉄などが挙げられる。
【0030】
該金属化合物撹拌混合処理Aにおいて、該金属化合物の混合量は、金属含有硫黄導入酸化チタンへの金属の導入量により適宜選択できるが、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物AをTiO換算したときの100質量部に対する金属原子の質量が、好ましくは0.03〜0.15質量部、特に好ましくは0.05〜0.1質量部となる混合量である。該金属化合物の混合量が、上記範囲内にあることにより、金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる。
【0031】
該金属化合物撹拌混合処理Aにおいて、撹拌混合する際の撹拌混合温度は、好ましくは20〜80℃、特に好ましくは50〜70℃であり、撹拌混合時間は、好ましくは1〜2時間である。
【0032】
該金属化合物撹拌混合処理Aでは、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物A含有スラリー中で、該金属化合物を、撹拌混合することにより、該金属化合物をスラリー中の溶媒に溶解させ、更に、撹拌を続けることにより、該金属化合物が、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物A含有スラリーの液体分で、加水分解、中和または還元されて、水酸化物または酸化物に変化すると共に、生成した水酸化物または酸化物が、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aの表面に付着しまたは内部に取り込まれる。このことにより、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aが生成する。次いで、ろ過、遠心分離等の方法により、スラリーから、生成した該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aを分離して、あるいは、スラリーの溶媒を蒸発させて溶媒を除去して、固形物を得、必要に応じ洗浄後、乾燥することにより、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aが得られる。該乾燥の際、乾燥温度は、通常90〜150℃であり、乾燥雰囲気は、空気中、酸素ガス中のような酸化性雰囲気下;窒素ガス中、アルゴンガス中のような不活性ガス雰囲気下;真空下等が挙げられる。
【0033】
乾燥後の該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aは、結晶構造の主体がアナターゼ型であり、比表面積が150〜400m/g、好ましくは200〜310m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅が2θ=1.2〜1.5°であることが、金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる点で好ましい。
【0034】
そして、上記のように、該焼成原料混合物調製工程Aで、該チタン塩から該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aを得る際に、つまり、該チタン塩加水分解/アルカリ中和処理Aを行う前から該金属化合物撹拌混合処理Aを行った後までの間に、該硫黄化合物を混合することにより、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと該硫黄化合物との混合物Aを得る。更に具体的には、該焼成原料混合物調製工程Aでは、該硫黄化合物の混合を、例えば、
(A1)該加水分解/アルカリ中和処理Aを行う前、
(A2)該加水分解/アルカリ中和処理Aを行いつつ、
(A3)該金属化合物撹拌混合処理Aの前、
(A4)該金属化合物撹拌混合処理Aを行いつつ、または
(A5)該金属化合物撹拌混合処理Aを行った後、
に行う。
【0035】
該(A1)の場合、例えば、該チタン塩の水溶液を加熱する前に、該チタン塩の水溶液に該硫黄化合物混合することや、該チタン塩の水溶液に該アルカリを滴下する前に、該チタン塩の水溶液に該硫黄化合物を混合することが挙げられる。
該(A2)の場合、例えば、該チタン塩の水溶液に該アルカリの水溶液を滴下する際に、該チタン塩の水溶液に対して、該硫黄化合物を混合した該アルカリの水溶液を滴下することにより、該加水分解/アルカリ中和処理Aを行いつつ、該硫黄化合物を混合することや、該アルカリの水溶液に該チタン塩の水溶液を滴下する際に、該アルカリの水溶液に対して、該硫黄化合物を混合した該チタン塩の水溶液を滴下することにより、該加水分解/アルカリ中和処理Aを行いつつ、該硫黄化合物を混合することが挙げられる。
該(A3)の場合、例えば、該金属化合物撹拌混合処理Aを行う前に、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物A含有スラリーに、該硫黄化合物を混合することが挙げられる。
該(A4)の場合、例えば、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物A含有スラリーに、該金属化合物の水溶液を滴下する際に、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物A含有スラリーに対して、該硫黄化合物を含有する該金属化合物の水溶液を滴下することにより、該金属化合物撹拌混合処理Aを行いつつ、該硫黄化合物を混合することが挙げられる。
該(A5)の場合、例えば、該金属化合物撹拌混合処理Aを行い、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aを得た後、得られた該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと該硫黄化合物とを混合することが挙げられる。該(A5)の場合としては、更に具体的には、例えば、(A5−1)該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aに、該硫黄化合物を溶解させた溶液を添加し、十分混合した後、溶媒を蒸発させる方法や、(A5−2)該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと該硫黄化合物とを、乾式で混合する方法や、(A5−3)該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと該硫黄化合物を、分散媒中で混合する方法などが挙げられ、これらの混合方法のうち、該(A5−2)の方法が、操作性の点から好ましい。
そして、該硫黄化合物の混合を、上記(A1)、(A2)、(A3)、(A4)又は(A5)のいずれかの時期に行うことも、あるいは、これらのうちの2以上の時期に分けて行うこともできる。
【0036】
該焼成原料混合物調製工程Aに係る該硫黄化合物(本発明の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法に係る該硫黄化合物、本発明の第一〜第七の形態の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法に係る該硫黄化合物も同様である。)は、後述する該焼成工程Aにおいて、熱により分解し、その分解過程でSOガスやSOガスが発生する、分子中に硫黄原子を有する化合物であればよく、常温で固体または液体である含硫黄有機化合物、含硫黄無機化合物、金属硫化物、硫黄などが挙げられ、更に具体的には、例えば、チオ尿素、チオ尿素の誘導体、硫酸塩などが挙げられる。これらのうち、特に、チオ尿素が、400〜500℃で完全に分解し、金属含有硫黄導入酸化チタン中に残存しないため好ましい。
【0037】
該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと該硫黄化合物との混合物A中の、該硫黄化合物の混合量は、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物AをTiO換算したときの100質量部に対する硫黄原子の質量が、好ましくは5〜150質量部、特に好ましくは10〜50質量部、更に好ましくは20〜40質量部となる量である。該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと該硫黄化合物との混合物A中の、該硫黄化合物の混合量が上記範囲内にあることにより、硫黄含有量が0.02〜0.1質量%の金属含有硫黄導入酸化チタンが得易くなる。また、該硫黄化合物の混合量は、該硫黄化合物の混合を2以上の時期に分けて行う場合、それらの合計量である。
【0038】
該焼成工程Aでは、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと該硫黄化合物との混合物Aを、焼成する。
【0039】
該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと該硫黄化合物との混合物Aを焼成する方法としては、焼成用容器に該混合物Aを投入し、蓋をする。その際、完全開放系だと、該硫黄化合物から発生するガスが、雰囲気に滞留しないため、若干の隙間を開けておく。そして、該混合物の焼成の際には、熱により該硫黄化合物が分解して、その分解過程でSOガスやSOガスが発生し、これらのガス中の硫黄が、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物A中に取り込まれて、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物A中のチタン原子の一部が硫黄原子で置換される。
【0040】
つまり、該焼成工程Aでは、該硫黄化合物の分解により生じるSOガス及びSOガスを、雰囲気に滞留させつつ、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと該硫黄化合物との混合物の焼成を行う。
【0041】
該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと該硫黄化合物との混合物を焼成する際の焼成温度は、好ましくは350〜800℃、特に好ましくは350〜600℃、更に好ましくは400〜500℃であり、焼成時間は、好ましくは1〜10時間、特に好ましくは1〜5時間、更に好ましくは2〜5時間である。該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと該硫黄化合物との混合物Aを焼成する際の焼成温度及び焼成時間が上記範囲内にあることにより、該金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる。
【0042】
該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと該硫黄化合物との混合物を焼成する際の雰囲気は、特に制限されず、空気中、酸素ガス中のような酸化性雰囲気下;窒素ガス中、アルゴンガス中のような不活性雰囲気下;真空下等が挙げられる。
【0043】
該焼成工程Aでは、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと該硫黄化合物との混合物A中の該硫黄化合物の混合量、及び焼成温度により、該金属含有硫黄導入酸化チタン中の硫黄含有量が異なる。そのため、該焼成工程Aでは、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと該硫黄化合物との混合物A中の該硫黄化合物の混合量、及び焼成温度を適宜選択して、該金属含有硫黄導入酸化チタン中の硫黄含有量を調節することができ、該金属含有硫黄導入酸化チタン中の硫黄含有量が、0.02〜0.1質量%となるように設定することが好ましい。
【0044】
具体的には、該焼成温度が、350〜400℃の場合、該混合物A中の該硫黄化合物の混合量を、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物AをTiO換算したときの100質量部に対する硫黄原子の質量が、5〜20質量部となる混合量とすることが好ましく、特に好ましくは5〜10質量部となる混合量とすることである。また、該焼成温度が、400〜500℃の場合、該混合物A中の該硫黄化合物の混合量を、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物AをTiO換算したときの100質量部に対する硫黄原子の質量が、10〜50質量部となる混合量とすることが好ましく、特に好ましくは20〜40質量部となる混合量とすることである。また、該焼成温度が、500〜800℃の場合、該混合物A中の該硫黄化合物の混合量を、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物AをTiO換算したときの100質量部に対する硫黄原子の質量が、40〜150質量部となる混合量とすることが好ましく、特に好ましくは100〜150質量部となる混合量とすることである。
【0045】
また、該焼成工程Aでは、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと該硫黄化合物との混合物Aを焼成して、得られた金属含有硫黄導入酸化チタンに、合計の混合量が所定の混合量を超えない範囲で、再度該硫黄化合物を混合し、再度焼成を行うこともできる。
【0046】
本発明の第二の形態の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法(以下、本発明の製造方法(2)とも記載する。)は、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bの加熱処理物Bと硫黄化合物との混合物Bを得る焼成原料混合物調製工程Bと、該加熱処理物Bと該硫黄化合物との混合物Bを、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程Bと、を有し、
該焼成原料混合物調製工程Bが、チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、チタン塩加水分解/アルカリ中和物B含有スラリーを調製する加水分解/アルカリ中和処理Bと、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物B含有スラリーに、金属化合物を加え、撹拌して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bを得る金属化合物撹拌混合処理Bと、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bを加熱処理して、加熱処理物Bを得る加熱処理Bと、を行う工程であり、
該金属化合物撹拌混合処理Bで該金属化合物を加える量が、TiO換算したときの該チタン塩加水分解/アルカリ中和物B 100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理Bを行う前から該加熱処理Bを行った後までの間に、硫黄化合物を混合する、
金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法である。
【0047】
該焼成原料混合物調製工程Bでは、該チタン塩加水分解/アルカリ中和処理Bと、該金属化合物撹拌混合処理Bと、を行うことにより、該チタン塩から該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bを得る。
【0048】
該焼成原料混合物調製工程Bに係る該加水分解/アルカリ中和処理B、該チタン塩、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物B、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物B含有スラリー、該金属化合物撹拌混合処理B、該金属化合物、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bは、該焼成原料混合物調製工程Aに係る該加水分解/アルカリ中和処理A、該チタン塩、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物A、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物A含有スラリー、該金属化合物撹拌混合処理A、該金属化合物、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aと同様である。
【0049】
該焼成原料混合物調製工程Bでは、該金属化合物撹拌混合処理Bを行った後に、該加熱処理Bを行う。
【0050】
該加熱処理Bは、該加水分解/アルカリ中和処理B及び該金属化合物撹拌混合処理Bを行い得られる該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bを加熱処理し、加熱処理物Bを得る処理である。そして、該加熱処理Bを行なうことにより、比表面積が150〜400m/g、好ましくは200〜310m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅が2θ=1.2〜1.5°の該加熱処理物が得られる。言い換えると、該加熱処理Bは、該加熱処理物Bの比表面積及び半値幅を、上記範囲に調整する処理である。
【0051】
該加熱処理Bにおいて、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bを加熱処理する際の加熱処理温度は、200〜350℃、好ましくは250〜300℃である。該加熱処理温度が、上記範囲内にあることにより、比表面積が150〜400m/g、アナターゼの(101)ピークの半値幅が2θ=1.2〜1.5°である加熱処理物を得易くなる。一方、該加熱処理温度が、200℃未満だと、加熱処理物の比表面積が400m/gより大きくなり易く、あるいは、アナターゼの(101)ピークの半値幅が2θ=1.5°より広くなり易い。また、該加熱処理温度が、350℃を超えると、加熱処理物の比表面積が150m/gより小さくなり易く、あるいは、アナターゼの(101)ピークの半値幅が2θ=1.2°より狭くなり易い。また、該加熱処理温度が、250℃未満だと、加熱処理物の比表面積が310m/gより大きくなり易く、300℃を超えると、加熱処理物の比表面積が200m/gより小さくなり易い。
【0052】
該加熱処理Bにおいて、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bを加熱処理する際の加熱処理時間は、好ましくは1〜5時間、特に好ましくは2〜3時間である。
【0053】
該加熱処理Bにおいて、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bを加熱処理する際の雰囲気は、特に制限されず、空気中、酸素ガス中のような酸化性雰囲気下;窒素ガス中、アルゴンガス中のような不活性雰囲気下;真空下等が挙げられ、経済的には、空気中が有利である。
【0054】
そして、上記のように、該焼成原料混合物調製工程Bで、該チタン塩から該加熱処理物Bを得る際に、つまり、該チタン塩加水分解/アルカリ中和処理Bを行う前から該加熱処理Bを行った後までの間に、該硫黄化合物を混合することにより、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bの加熱処理物Bと該硫黄化合物との混合物Bを得る。更に具体的には、該焼成原料混合物調製工程Bでは、該硫黄化合物の混合を、例えば、
(B1)該加水分解/アルカリ中和処理Bを行う前、
(B2)該加水分解/アルカリ中和処理Bを行いつつ、
(B3)該金属化合物撹拌混合処理Bの前、
(B4)該金属化合物撹拌混合処理Bを行いつつ、
(B5)該加熱処理Bを行う前、または
(B6)該加熱処理Bを行った後
に行う。
該焼成原料混合物調製工程Bに係る該(B1)、該(B2)、該(B3)、該(B4)は、該焼成原料混合物調製工程Aに係る該(A1)、該(A2)、該(A3)、該(A4)と同様である。
該(B5)の場合、例えば、該金属化合物撹拌混合処理Bを行い、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bを得た後、得られた該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bと該硫黄化合物とを混合することが挙げられる。該(B5)の場合としては、更に具体的には、例えば、(B5−1)該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bに、該硫黄化合物を溶解させた溶液を添加し、十分混合した後、溶媒を蒸発させる方法や、(B5−2)該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bと該硫黄化合物とを、乾式で混合する方法や、(B5−3)該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bと該硫黄化合物を、分散媒中で混合する方法などが挙げられ、これらの混合方法のうち、該(B5−2)の方法が、操作性の点から好ましい。
該(B6)の場合、例えば、該加熱処理Bを行い、該加熱処理物Bを得た後、得られた該加熱処理物Bと該硫黄化合物とを混合することが挙げられる。該(B6)の場合としては、更に具体的には、例えば、(B6−1)該加熱処理物Bに、該硫黄化合物を溶解させた溶液を添加し、十分混合した後、溶媒を蒸発させる方法や、(B6−2)該加熱処理物Bと該硫黄化合物とを、乾式で混合する方法や、(B6−3)該加熱処理物Bと該硫黄化合物を、分散媒中で混合する方法などが挙げられ、これらの混合方法のうち、該(B6−2)の方法が、操作性の点から好ましい。
そして、該硫黄化合物の混合を、上記(B1)、(B2)、(B3)、(B4)、(A5)または(B6)のいずれかの時期に行うことも、あるいは、これらのうちの2以上の時期に分けて行うこともできる。
【0055】
該加熱処理Bと該硫黄化合物との混合物B中の、該硫黄化合物の混合量は、該加熱処理物BをTiO換算したときの100質量部に対する硫黄原子の質量が、好ましくは5〜150質量部、特に好ましくは10〜50質量部、更に好ましくは20〜40質量部となる量である。該加熱処理物Bと該硫黄化合物との混合物B中の、該硫黄化合物の混合量が上記範囲内にあることにより、硫黄含有量が0.02〜0.1質量%の金属含有硫黄導入酸化チタンが得易くなる。また、該硫黄化合物の混合量は、該硫黄化合物の混合を2以上の時期に分けて行う場合、それらの合計量である。
【0056】
また、該加熱処理Bを行う前(B5)に、該硫黄化合物を混合する場合、該硫黄化合物の混合量は、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物BをTiO換算したときの100質量部に対する硫黄原子の質量が、好ましくは5〜20質量部、特に好ましくは5〜10質量部となる量である。該加熱処理Bを行う前に混合する該硫黄化合物の量が、上記範囲内にあることにより、金属含有硫黄導入酸化チタンの触媒活性が高くなる。また、該加熱処理Bを行う前に、該硫黄化合物を混合した場合、該加熱処理Bを行い得られる該加熱処理物Bに、所定の混合量を超えない範囲で、更に該硫黄化合物を混合してもよい。
【0057】
該焼成工程Bでは、該加熱処理物Bと該硫黄化合物との混合物Bを、焼成する。
【0058】
該焼成工程Bは、該焼成工程Aと比べ、該硫黄化合物と混合されるのが、前者は該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bの加熱処理物Bであるのに対し、後者は該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aであること以外は、該焼成工程Aと同様である。よって、該焼成工程Aの説明中の該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aを、該加熱処理物Bと、該混合物Aを該混合物Bと読み替えればよい。
【0059】
そして、本発明の製造方法(2)では、該加熱処理Bを行なうことにより、得られる金属含有硫黄導入酸化チタンの光触媒活性を更に高くすることができる。
【0060】
本発明の第三の形態の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法(以下、本発明の製造方法(3)とも記載する。)は、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cと硫黄化合物との混合物Cを得る焼成原料混合物調製工程Cと、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cと該硫黄化合物との混合物Cを、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程Cと、を有し、
該焼成原料混合物調製工程Cが、金属化合物の存在下で、チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cを得る加水分解/アルカリ中和処理Cを行う工程であり、
該加水分解/アルカリ中和処理Cで存在させる該金属化合物の量が、TiO換算したときのチタン塩100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理Cを行う前から該加水分解/アルカリ中和処理Cを行った後までの間に、硫黄化合物を混合する、
金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法である。
【0061】
該焼成原料調製工程Cでは、該金属化合物の存在下で、該チタン塩を加水分解することにより、または該金属化合物の存在下で、該チタン塩をアルカリ中和することにより、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cを得る。
【0062】
該加水分解/アルカリ中和処理Cに係る該チタン塩は、該チタン塩加水分解/アルカリ中和処理Aに係る該チタン塩と同様である。また、該チタン塩加水分解/アルカリ中和処理Cに係る該金属化合物は、該金属化合物撹拌混合処理Aに係る該金属化合物と同様である。
【0063】
該加水分解/アルカリ中和処理Cにおいて、該チタン塩の加水分解を行う方法としては、該チタン塩及び該金属化合物を水に溶解させた水溶液を調製し、該水溶液を撹拌しながら加熱する方法が挙げられる。この方法では、加水分解する際の加水分解温度は、好ましくは20℃〜水溶液の沸点、特に好ましくは40〜80℃である。該加水分解温度が、20℃未満であると、加水分解速度が遅くなり易い。また、加水分解する際の加水分解時間は、通常5分〜10時間、好ましくは10分〜5時間、特に好ましくは10分〜1時間である。なお、上記では、該チタン塩を水に溶解させる旨を記載したが、該チタン塩を溶解させる溶媒としては、該金属化合物を溶解するものであれば、特に制限されず、水の他に、アルコールなどの有機溶媒が挙げられ、これらのうち、水は取り扱いが容易な点、経済性の点から好ましい。
【0064】
該加水分解/アルカリ中和処理Cにおいて加水分解する際、低pH領域で加水分解を行うことが、粒径が小さい加水分解物を得ることができる点で好ましい。そのため、該加水分解/アルカリ中和処理Cにおいて加水分解をする際、特に、加水分解温度が水溶液の沸点付近である場合においては、反応槽に還流装置等を設置し、発生する塩化水素が塩化水素ガスとして反応系外へ排出されることを抑えることが、反応系のpHを低くできる点で好ましい。
【0065】
そして、該加水分解/アルカリ中和処理Cでは、該チタン塩の加水分解を行なうことにより、該チタン塩加水分解物が生成すると共に、該金属化合物が加水分解または還元されて、水酸化物または酸化物に変化し、該水酸化物または該酸化物が、生成した該チタン塩加水分解物の表面付着または内部に取り込まれて、該金属含有チタン塩加水分解物Cが得られる。該金属含有チタン塩加水分解物は、酸化チタンまたは該チタン塩から酸化チタンに変化途中の中間体である。
【0066】
該加水分解/アルカリ中和処理Cにおいて、該チタン塩のアルカリ中和を行なう方法としては、該チタン塩および該金属化合物を水に溶解させた水溶液を調製し、該水溶液を撹拌しながら、アルカリを混合して、該チタン塩と該アルカリとを接触させる方法が挙げられ、更に具体的には、例えば、
(i)該チタン塩の水溶液に対して、該アルカリの水溶液を滴下し、両者を接触させる方法、
(ii)該アルカリの水溶液に対して、該チタン塩の水溶液を滴下し、両者を接触させる方法、
(iii)反応容器に水を入れておき、その中に、該チタン塩の水溶液と該アルカリの水溶液とを滴下し、両者を接触させる方法、
が挙げられる。このとき、該(i)、(ii)及び(iii)では、該金属化合物を、該チタン塩の水溶液中に存在させても、該アルカリの水溶液中に存在させても、該反応容器に入れた水中に存在させてもよい、つまり、滴下される水溶液中に該金属化合物を存在させてもよいし、滴下する方の水溶液中に該金属化合物を存在させてもよい。
【0067】
該加水分解/アルカリ中和処理Cに係る該アルカリとしては、特に制限されず、例えば、アンモニア、アンモニア水等が挙げられ、これらのうち、アンモニア又はアンモニア水が、金属含有硫黄導入酸化チタン中にアルカリ由来の金属成分が含有されないので、該金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性の制御上好ましい。上記(i)〜(iii)の方法では、アルカリ中和する際のアルカリ中和温度は、好ましくは10〜80℃、特に好ましくは30〜80℃、更に好ましくは40〜70℃である。該アルカリ中和温度が、10℃未満だと中和反応が起こり難くなり、また、80℃を超えると発熱が激しく、塩化水素の発生が著しくなるため、平均粒径が小さく且つ比表面積が大きいアルカリ中和物が得られ難くなる。また、アルカリ中和する際の該アルカリの添加時間は、通常1分〜10時間、好ましくは3分〜5時間、特に好ましくは5分〜1時間である。
そして、該加水分解/アルカリ中和処理Cでは、該チタン塩のアルカリ中和を行なうことにより、該チタン塩アルカリ中和物が生成すると共に、該金属化合物が加水分解または還元されて、水酸化物または酸化物に変化し、該水酸化物または該酸化物が、生成した該チタン塩アルカリ中和物の表面付着または内部に取り込まれて、該金属含有チタン塩アルカリ中和物Cが得られる。該金属含有チタン塩アルカリ中和物Cは、酸化チタンまたは該チタン塩から酸化チタンに変化途中の中間体である。
【0068】
該加水分解/アルカリ中和処理Cにおいて、該金属化合物の混合量は、金属含有硫黄導入酸化チタンへの金属の導入量により適宜選択できるが、該チタン塩をTiO換算したときの100質量部に対する金属原子の質量が、好ましくは0.03〜0.15質量部、特に好ましくは0.05〜0.1質量部となる混合量である。該金属化合物の混合量が、上記範囲内にあることにより、金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる。
【0069】
乾燥後の該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cは、結晶構造の主体がアナターゼ型であり、比表面積が150〜400m/g、好ましくは200〜310m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅が2θ=1.2〜1.5°であることが、金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる点で好ましい。
【0070】
そして、上記のように、該焼成原料混合物調製工程Cで、該チタン塩から該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cを得る際に、つまり、該加水分解/アルカリ中和処理Cを行う前から該加水分解/アルカリ中和処理Cを行った後までの間に、該硫黄化合物を混合することにより、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cと該硫黄化合物との混合物Cを得る。更に具体的には、該焼成原料混合物調製工程Cでは、該硫黄化合物の混合を、例えば、
(C1)該加水分解/アルカリ中和処理Cを行う前、
(C2)該加水分解/アルカリ中和処理Cを行いつつ、または
(C3)該加水分解/アルカリ中和処理Cを行った後
に行う。
該(C1)の場合、例えば、該チタン塩の水溶液を加熱する前に、該チタン塩の水溶液に該硫黄化合物を混合することや、該チタン塩の水溶液に該アルカリを滴下する前に、該チタン塩の水溶液に該硫黄化合物を混合することが挙げられる。
該(C2)の場合、例えば、該チタン塩の水溶液に該アルカリの水溶液を滴下する際に、該チタン塩の水溶液に対して、該硫黄化合物を混合した該アルカリの水溶液を滴下することにより、該加水分解/アルカリ中和処理Cを行いつつ、該硫黄化合物を混合することや、該アルカリの水溶液に該チタン塩の水溶液を滴下する際に、該アルカリの水溶液に対して、該硫黄化合物を混合した該チタン塩の水溶液を滴下することにより、該加水分解/アルカリ中和処理Cを行いつつ、該硫黄化合物を混合することが挙げられる。
該(C3)の場合、例えば、該加水分解/アルカリ中和処理Cを行い、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cを得た後、得られた該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cと該硫黄化合物とを混合することが挙げられる。該(C3)の場合としては、更に具体的には、例えば、(C3−1)該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cに、該硫黄化合物を溶解させた溶液を添加し、十分混合した後、溶媒を蒸発させる方法や、(C3−2)該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cと該硫黄化合物とを、乾式で混合する方法や、(C3−3)該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cと該硫黄化合物を、分散媒中で混合する方法などが挙げられ、これらの混合方法のうち、該(C3−2)の方法が、操作性の点から好ましい。
そして、該硫黄化合物の混合を、上記(C1)、(C2)または(C3)のいずれかの時期に行うことも、あるいは、これらのうちの2以上の時期に分けて行うこともできる。
【0071】
該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cと該硫黄化合物との混合物C中の、該硫黄化合物の混合量は、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物CをTiO換算したときの100質量部に対する硫黄原子の質量が、好ましくは5〜150質量部、特に好ましくは10〜50質量部、更に好ましくは20〜40質量部となる量である。該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cと該硫黄化合物との混合物C中の、該硫黄化合物の混合量が上記範囲内にあることにより、硫黄含有量が0.02〜0.1質量%の金属含有硫黄導入酸化チタンが得易くなる。また、該硫黄化合物の混合量は、該硫黄化合物の混合を2以上の時期に分けて行う場合、それらの合計量である。
【0072】
該焼成工程Cでは、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cと該硫黄化合物との混合物Cを、焼成する。
【0073】
該焼成工程Cは、該焼成工程Aと比べ、該硫黄化合物と混合されるのが、前者は該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cであるのに対し、後者は該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aであること以外は、該焼成工程Aと同様である。よって、該焼成工程Aの説明中の該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aを、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cと、該混合物Aを該混合物Cと読み替えればよい。
【0074】
本発明の第四の形態の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法(以下、本発明の製造方法(4)とも記載する。)は、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dの加熱処理物Dと硫黄化合物との混合物Dを得る焼成原料混合物調製工程Dと、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dの加熱処理物Dと該硫黄化合物との混合物Dを、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程Dと、を有し、
該焼成原料混合物調製工程Dが、金属化合物の存在下で、チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dを得る加水分解/アルカリ中和処理Dと、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dを加熱処理して、加熱処理物Dを得る加熱処理Dと、を行う工程であり、
該加水分解/アルカリ中和処理Dで存在させる該金属化合物の量が、TiO換算したときのチタン塩100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理Dを行う前から該加熱処理Dを行った後までの間に、硫黄化合物を混合する、
金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法である。
【0075】
該焼成原料混合物調製工程Dでは、該チタン塩加水分解/アルカリ中和処理Dと、該加熱処理Dと、を行うことにより、該チタン塩から該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dの加熱処理物Dを得る。
【0076】
該焼成原料混合物調製工程Dに係る該加水分解/アルカリ中和処理D、該チタン塩、該金属化合物、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dは、該焼成原料混合物調製工程Cに係る該加水分解/アルカリ中和処理C、該チタン塩、該金属化合物、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cと同様である。
【0077】
該焼成原料混合物調製工程Dでは、該加水分解/アルカリ中和処理Dを行った後に、該加熱処理Dを行う。
【0078】
該加熱処理Dは、該加水分解/アルカリ中和処理Dを行い得られる該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dを加熱処理し、加熱処理物Dを得る処理である。そして、該加熱処理Dを行なうことにより、比表面積が150〜400m/g、好ましくは200〜310m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅が2θ=1.2〜1.5°の該加熱処理物が得られる。言い換えると、該加熱処理Dは、該加熱処理物Dの比表面積及び半値幅を、上記範囲に調整する処理である。
【0079】
該加熱処理Dは、該加熱処理Bと比べ、加熱処理されるものが、前者は該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dであるのに対し、後者は該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bであること以外は、該加熱処理Bと同様である。よって、該加熱処理Bの説明中の該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bを、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dと、該加熱処理物Bを、該加熱処理物Dと読み替えればよい。
【0080】
そして、上記のように、該焼成原料混合物調製工程Dで、該チタン塩から該加熱処理物Dを得る際に、つまり、該チタン塩加水分解/アルカリ中和処理Dを行う前から該加熱処理Dを行った後までの間に、該硫黄化合物を混合することにより、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dの加熱処理物Dと該硫黄化合物との混合物Dを得る。更に具体的には、該焼成原料混合物調製工程Dでは、該硫黄化合物の混合を、例えば、
(D1)該加水分解/アルカリ中和処理Dを行う前、
(D2)該加水分解/アルカリ中和処理Dを行いつつ、
(D3)該加熱処理Dを行う前、または
(D4)該加熱処理Dを行った後
に行う。
該焼成原料混合物調製工程Dに係る該(D1)、該(D2)は、該焼成原料混合物調製工程Cに係る該(C1)、該(C2)と同様である。
該(D3)の場合、例えば、該加水分解/アルカリ中和処理Dを行い、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dを得た後、得られた該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dと該硫黄化合物とを混合することが挙げられる。該(D3)の場合としては、更に具体的には、例えば、(D3−1)該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dに、該硫黄化合物を溶解させた溶液を添加し、十分混合した後、溶媒を蒸発させる方法や、(D3−2)該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dと該硫黄化合物とを、乾式で混合する方法や、(D3−3)該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dと該硫黄化合物を、分散媒中で混合する方法などが挙げられ、これらの混合方法のうち、該(D3−2)の方法が、操作性の点から好ましい。
該(D4)の場合、例えば、該加熱処理Dを行い、該加熱処理物Dを得た後、得られた該加熱処理物Dと該硫黄化合物とを混合することが挙げられる。該(D4)の場合としては、更に具体的には、例えば、(D4−1)該加熱処理物Dに、該硫黄化合物を溶解させた溶液を添加し、十分混合した後、溶媒を蒸発させる方法や、(D4−2)該加熱処理物Dと該硫黄化合物とを、乾式で混合する方法や、(D4−3)該加熱処理物Dと該硫黄化合物を、分散媒中で混合する方法などが挙げられ、これらの混合方法のうち、該(D4−2)の方法が、操作性の点から好ましい。
そして、該硫黄化合物の混合を、上記(D1)、(D2)、(D3)または、(D4)のいずれかの時期に行うことも、あるいは、これらのうちの2以上の時期に分けて行うこともできる。
【0081】
該加熱処理Dと該硫黄化合物との混合物D中の、該硫黄化合物の混合量は、該加熱処理物DをTiO換算したときの100質量部に対する硫黄原子の質量が、好ましくは5〜150質量部、特に好ましくは10〜50質量部、更に好ましくは20〜40質量部となる量である。該加熱処理物Dと該硫黄化合物との混合物D中の、該硫黄化合物の混合量が上記範囲内にあることにより、硫黄含有量が0.02〜0.1質量%の金属含有硫黄導入酸化チタンが得易くなる。また、該硫黄化合物の混合量は、該硫黄化合物の混合を2以上の時期に分けて行う場合、それらの合計量である。
【0082】
また、該加熱処理Dを行う前(D3)に、該硫黄化合物を混合する場合、該硫黄化合物の混合量は、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物DをTiO換算したときの100質量部に対する硫黄原子の質量が、好ましくは5〜20質量部、特に好ましくは5〜10質量部となる量である。該加熱処理物Dにおいて混合する該硫黄化合物の量が、上記範囲内にあることにより、金属含有硫黄導入酸化チタンの触媒活性が高くなる。
【0083】
該焼成工程Dでは、該加熱処理物Dと該硫黄化合物との混合物Dを、焼成する。
【0084】
該焼成工程Dは、該焼成工程Aと比べ、該硫黄化合物と混合されるのが、前者は該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dの加熱処理物Dであるのに対し、後者は該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aであること以外は、該焼成工程Aと同様である。よって、該焼成工程Aの説明中の該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aを、該加熱処理物Dと、該混合物Aを該混合物Dと読み替えればよい。
【0085】
そして、本発明の製造方法(4)では、該加熱処理Dを行なうことにより、得られる金属含有硫黄導入酸化チタンの光触媒活性を更に高くすることができる。
本発明の第五の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法(以下、本発明の製造方法(5)とも記載する。)は、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)と硫黄化合物との混合物Eを得る焼成原料混合物調製工程Eと、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)と該硫黄化合物との混合物Eを、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程Eと、を有し、
該焼成原料混合物調製工程Eが、金属化合物の存在下で、該チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(1)含有スラリーを調製する加水分解/アルカリ中和処理Eと、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(1)含有スラリーに、金属化合物を加え、撹拌して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)を得る金属化合物撹拌混合処理Eと、を行う工程であり、
該加水分解/アルカリ中和処理Eで存在させる該金属化合物及び該金属化合物撹拌混合処理Eで加える該金属化合物の合計量が、TiO換算したときのチタン塩100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理Eを行う前から該金属化合物撹拌混合処理Eを行った後までの間に、硫黄化合物を混合する、
金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法である。
【0086】
該焼成原料混合物調製工程Eでは、該加水分解/アルカリ中和処理E及び該金属化合物撹拌混合処理Eを行う。
【0087】
該加水分解/アルカリ中和処理Eでは、該金属化合物の存在下で、該チタン塩を加水分解することにより、または該金属化合物の存在下で、該チタン塩をアルカリ中和することにより、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(1)を含有するスラリー、すなわち、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(1)含有スラリーを得る。
【0088】
該加水分解/アルカリ中和処理Eは、該加水分解/アルカリ中和処理Cと同様であり、該加水分解/アルカリ中和処理Eに係る該チタン塩、該金属化合物、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(1) は、該加水分解/アルカリ中和処理Cに係る該チタン塩、該金属化合物、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物Cと同様である。
【0089】
そして、該加水分解/アルカリ中和処理Eでは、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(1)が生成するが、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(1)は、酸化チタン又は該チタン塩から酸化チタンに変化途中の中間体である。
【0090】
次いで、該金属化合物撹拌混合処理Eでは、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(1)含有スラリーに、該金属化合物を加え、撹拌混合して、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(1)に更に該金属が導入された、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)を得る処理である。なお、本発明では、該金属化合物撹拌混合処理Eで処理される前のものを、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(1)と記載し、該金属化合物撹拌混合処理Eで処理された後のものを、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)と記載した。
【0091】
乾燥後の該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)は、結晶構造の主体がアナターゼ型であり、比表面積が150〜400m/g、好ましくは200〜310m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅が2θ=1.2〜1.5°であることが、金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる点で好ましい。
【0092】
該金属化合物撹拌混合処理Eは、該金属化合物撹拌混合処理Aと比べ、スラリーに含有されているものが、前者は該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(1)であるのに対し、後者は該チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aであること以外は、該金属化合物撹拌混合処理Aと同様である。よって、該金属化合物撹拌混合処理Aの説明中の該チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aを、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(1)と、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aを、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)と、読み替えればよい。
【0093】
該加水分解/アルカリ中和処理Eで存在させる該金属化合物及び該金属化合物撹拌混合処理Eで加える該金属化合物の合計量は、金属含有硫黄導入酸化チタンへの金属の導入量により適宜選択できるが、該チタン塩をTiO換算したときの100質量部に対する金属原子の質量が、好ましくは0.03〜0.15質量部、特に好ましくは0.05〜0.1質量部となる混合量である。該金属化合物の混合量が、上記範囲内にあることにより、金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる。
【0094】
そして、上記のように、該焼成原料混合物調製工程Eで、該チタン塩から該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)を得る際に、つまり、該チタン塩加水分解/アルカリ中和処理Eを行う前から該金属化合物撹拌混合処理Eを行った後までの間に、該硫黄化合物を混合することにより、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)と該硫黄化合物との混合物Eを得る。更に具体的には、該焼成原料混合物調製工程Eでは、該硫黄化合物の混合を、例えば、
(E1)該加水分解/アルカリ中和処理Eを行う前、
(E2)該加水分解/アルカリ中和処理Eを行いつつ、
(E3)該金属化合物撹拌混合処理Eの前、
(E4)該金属化合物撹拌混合処理Eを行いつつ、または
(E5)該金属化合物撹拌混合処理Eを行った後
に行う。
該焼成原料混合物調製工程Eに係る該(E1)、該(E2)は、該焼成原料混合物調製工程Cに係る該(C1)、該(C2)と同様であり、また、該焼成原料混合物調製工程Eに係る該(E3)、該(E4)、該(E5)は、該焼成原料混合物調製工程Aに係る該(A3)、該(A4)、該(A5)と同様である。
そして、該硫黄化合物の混合を、上記(E1)、(E2)、(E3)、(E4)または(E5)のいずれかの時期に行うことも、あるいは、これらのうちの2以上の時期に分けて行うこともできる。
【0095】
該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)と該硫黄化合物との混合物E中の、該硫黄化合物の混合量は、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)をTiO換算したときの100質量部に対する硫黄原子の質量が、好ましくは5〜150質量部、特に好ましくは10〜50質量部、更に好ましくは20〜40質量部となる量である。該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)と該硫黄化合物との混合物E中の、該硫黄化合物の混合量が上記範囲内にあることにより、硫黄含有量が0.02〜0.1質量%の金属含有硫黄導入酸化チタンが得易くなる。また、該硫黄化合物の混合量は、該硫黄化合物の混合を2以上の時期に分けて行う場合、それらの合計量である。
【0096】
該焼成工程Eでは、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)と該硫黄化合物との混合物Eを、焼成する。
【0097】
該焼成工程Eは、該焼成工程Aと比べ、該硫黄化合物と混合されるのが、前者は該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)であるのに対し、後者は該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aであること以外は、該焼成工程Aと同様である。よって、該焼成工程Aの説明中の該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aを、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)と、該混合物Aを該混合物Eと読み替えればよい。
【0098】
本発明の第六の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法(以下、本発明の製造方法(6)とも記載する。)は、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物F(2)の加熱処理物Fと硫黄化合物との混合物Fを得る焼成原料混合物調製工程Fと、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物F(2)の加熱処理物Fと該硫黄化合物との混合物Fを、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程Fと、を有し、
該焼成原料混合物調製工程Fが、金属化合物の存在下で、該チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物F(1)含有スラリーを調製する加水分解/アルカリ中和処理Fと、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物F(1)含有スラリーに、金属化合物を加え、撹拌して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物F(2)を得る金属化合物撹拌混合処理Fと、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物F(2)を加熱処理し、加熱処理物Fを得る加熱処理Fと、を行う工程であり、
該加水分解/アルカリ中和処理Fで存在させる該金属化合物及び該金属化合物撹拌混合処理Fで加える該金属化合物の合計量が、TiO換算したときのチタン塩100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理Fを行う前から該加熱処理Fを行った後までの間に、硫黄化合物を混合する、
金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法である。
【0099】
該焼成原料混合物調製工程Fでは、該加水分解/アルカリ中和処理F、該金属化合物撹拌混合処理F及び該加熱処理Fを行う。
【0100】
該焼成原料混合物調製工程Fに係る該加水分解/アルカリ中和処理F、該金属化合物撹拌混合処理F、該チタン塩、該金属化合物、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物F(1)、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物F(2)は、該焼成原料混合物調製工程Eに係る該加水分解/アルカリ中和処理E、該金属化合物撹拌混合処理E、該チタン塩、該金属化合物、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(1)、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)と同様である。
【0101】
そして、該焼成原料混合物調製工程Fでは、該加水分解/アルカリ中和処理Fを行うことにより、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和処理物F(1)含有スラリーを得、次いで、該金属化合物撹拌混合処理Fを行うことにより、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和処理物F(2)を得る。
【0102】
該焼成原料混合物調製工程Fでは、該金属化合物撹拌混合処理Fを行った後に、該加熱処理Fを行う。
【0103】
該加熱処理Fは、該金属化合物撹拌混合処理Fを行い得られる該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物F(2)を加熱処理し、加熱処理物Fを得る処理である。そして、該加熱処理Fを行なうことにより、比表面積が150〜400m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅が2θ=1.2〜1.5°の該加熱処理物が得られる。言い換えると、該加熱処理Fは、該加熱処理物Fの比表面積及び半値幅を、上記範囲に調整する処理である。
【0104】
該加熱処理Fは、該加熱処理Bと比べ、加熱処理されるのが、前者は該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物F(2)であるのに対し、後者は該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bであること以外は、該加熱処理Bと同様である。よって、該加熱処理Bの説明中の該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bを、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物F(2)と、該加熱処理物Bを、該加熱処理物Fと読み替えればよい。
【0105】
そして、上記のように、該焼成原料混合物調製工程Fで、該チタン塩から該加熱処理物Fを得る際に、つまり、該チタン塩加水分解/アルカリ中和処理Fを行う前から該加熱処理Fを行った後までの間に、該硫黄化合物を混合することにより、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物F(2)の加熱処理物Fと該硫黄化合物との混合物Fを得る。更に具体的には、該焼成原料混合物調製工程Fでは、該硫黄化合物の混合を、例えば、
(F1)該加水分解/アルカリ中和処理Fを行う前、
(F2)該加水分解/アルカリ中和処理Fを行いつつ、
(F3)該金属化合物撹拌混合処理Fの前、
(F4)該金属化合物撹拌混合処理Fを行いつつ、
(F5)該加熱処理Fを行う前、または
(F6)該加熱処理Fを行った後
に行う。
該焼成原料混合物調製工程Fに係る(F1)、該(F2)は、該焼成原料混合物調製工程Cに係る該(C1)、該(C2)と同様であり、また、該焼成原料混合物調製工程Fに係る該(F3)、該(F4)は、該焼成原料混合物調製工程Aに係る該(A3)、該(A4)と同様であり、また、焼成原料混合物調製工程該(F5)、該(F6)は、該焼成原料混合物調製工程Bに係る該(B5)、該(B6)と同様である。
そして、該硫黄化合物の混合を、上記(F1)、(F2)、(F3)、(F4)、(F5)または(F6)のいずれかの時期に行うことも、あるいは、これらのうちの2以上の時期に分けて行うこともできる。
【0106】
該加熱処理Fと該硫黄化合物との混合物F中の、該硫黄化合物の混合量は、該加熱処理物FをTiO換算したときの100質量部に対する硫黄原子の質量が、好ましくは5〜150質量部、特に好ましくは10〜50質量部、更に好ましくは20〜40質量部となる量である。該加熱処理物Fと該硫黄化合物との混合物F中の、該硫黄化合物の混合量が上記範囲内にあることにより、硫黄含有量が0.02〜0.1質量%の金属含有硫黄導入酸化チタンが得易くなる。また、該硫黄化合物の混合量は、該硫黄化合物の混合を2以上の時期に分けて行う場合、それらの合計量である。
【0107】
また、該加熱処理Fを行う前(F5)に、該硫黄化合物を混合する場合、該硫黄化合物の混合量は、該加熱処理物FをTiO換算したときの100質量部に対する硫黄原子の質量が、好ましくは5〜20質量部、特に好ましくは5〜10質量部となる量である。該加熱処理物Fにおいて混合する該硫黄化合物の量が、上記範囲内にあることにより、金属含有硫黄導入酸化チタンの触媒活性が高くなる。
【0108】
該焼成工程Fでは、該加熱処理物Fと該硫黄化合物との混合物Fを、焼成する。
【0109】
該焼成工程Fは、該焼成工程Aと比べ、該硫黄化合物と混合されるのが、前者は該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物F(2)の加熱処理物Fであるのに対し、後者は該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aであること以外は、該焼成工程Aと同様である。よって、該焼成工程Aの説明中の該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aを、該加熱処理物Fと、該混合物Aを該混合物Fと読み替えればよい。
【0110】
そして、本発明の製造方法(6)では、該加熱処理Fを行なうことにより、得られる金属含有硫黄導入酸化チタンの光触媒活性を更に高くすることができる。
【0111】
本発明の製造方法(1)〜(6)では、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物A、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bの加熱処理物B、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物C、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dの加熱処理物D、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)、及び該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物F(2)の加熱処理物Fは、結晶構造の主体がアナターゼ型であり、以下の物性(i)、(ii)及び(iii)を有していることが、金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる点で好ましい。
(i)比表面積が150〜400m/g、好ましくは200〜310m/gである。
(ii)X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅が2θ=1.2〜1.5°である。
(iii)金属含有量が、0.03〜0.15質量%である。
【0112】
なお、結晶構造の主体がアナターゼ型であり、該物性(i)〜(iii)を有する該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物A、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Bの加熱処理物B、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物C、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Dの加熱処理物D、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物E(2)、及び該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物F(2)の加熱処理物Fは、金属化合物の混合量、加水分解条件やアルカリ中和条件、スラリーからの固形物の分離、あるいは、固形物を得るために必要に応じて実施する洗浄、乾燥等の条件を適宜選択することにより、あるいは、加熱処理を行うこと、その加熱処理条件を適宜選択することにより得られる。
【0113】
本発明の第七の形態の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法(以下、本発明の製造方法(7)とも記載する。)は、金属含有原料酸化チタンと硫黄化合物との混合物を焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程Gを有し、
該金属含有原料酸化チタン中の金属含有量が、TiO換算したときの該金属含有原料酸化チタン100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部である、
金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法である。
【0114】
本発明の製造方法(7)に係る該金属含有原料酸化チタンは、金属含有量が、TiO換算したときの該金属含有原料酸化チタン100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部である酸化チタンである。そして、本発明の製造方法(7)に係る該金属含有原料酸化チタンは、結晶構造の主体がアナターゼ型であり、以下の物性(i)、(ii)及び(iii)を有している酸化チタンであることが、金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる点で好ましい。
(i)比表面積が150〜400m/g、好ましくは200〜310m/gである。
(ii)X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅が2θ=1.2〜1.5°である。
(iii)金属含有量が、0.03〜0.15質量%である。
【0115】
本発明の製造方法(7)に係る該焼成工程Gでは、該金属含有原料酸化チタンと該硫黄化合物との混合物Gを、焼成する。
【0116】
本発明の製造方法(7)に係る該焼成工程Gは、本発明の製造方法(1)に係る該焼成工程Aと比べ、該硫黄化合物と混合されるのが、前者は該金属含有原料酸化チタンであるのに対し、後者は該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aであること以外は、該焼成工程Aと同様である。よって、該焼成工程Aの説明中の該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物Aを、該金属含有原料酸化チタンと、該混合物Aを該混合物Gと読み替えればよい。
【0117】
本発明の製造方法(1)〜(7)では、得られた金属含有硫黄導入酸化チタンに対して、更に金属導入を行い、金属が再導入された金属含有硫黄導入酸化チタンを得る金属再導入工程を行っても良い。例えば、該焼成工程を行い得られた金属含有硫黄導入酸化チタンを、該金属化合物の溶液に浸漬、加水分解、アルカリ中和、光照射、あるいは溶媒を蒸発させて、その後、必要に応じて加熱処理を行ってもよい。また、該焼成工程を行い得られた金属含有硫黄導入酸化チタンと該金属化合物を、CVD、PVD(スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法など)、めっき法などにより、該金属含有硫黄導入酸化チタン表面に金属を含有させてもよい。また、更に、該金属再導入工程を行って得られる金属が再導入された金属含有硫黄導入酸化チタンと、該硫黄化合物とを混合して、焼成することにより、該金属が再導入された金属含有硫黄導入酸化チタンに、更に硫黄を含有させる、硫黄再導入工程を行っても良い。また、該金属再導入工程と該硫黄再導入工程とを繰り返し行っても良い。
【0118】
本発明の製造方法により得られる金属含有硫黄導入酸化チタンは、酸化チタンの骨格構造中に硫黄原子が導入された化合物であり、アナターゼ型の酸化チタンのチタンサイト(カチオンサイト)の一部が、硫黄原子で置換された構造を有している。すなわち、本発明の製造方法により得られる金属含有硫黄導入酸化チタンは、硫黄カチオン置換型酸化チタンである。
【0119】
本発明の製造方法により得られる金属含有硫黄導入酸化チタンが、チタンサイトの一部が、硫黄原子で置換された構造を有していることの確認は、X線光電子分光法(XPS)分析により行なわれる。硫黄含有酸化チタンが、チタンサイトの一部が硫黄原子で置換された硫黄含有酸化チタンの場合、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが見られる。つまり、169eV付近の特性ピークが見られた場合、チタンサイト(カチオンサイト)の一部が硫黄原子で置換されていると推測される。一方、硫黄含有酸化チタンが、チタンサイトの一部が硫黄原子で置換された硫黄含有酸化チタンではなく、酸素原子の一部が硫黄原子で置換された硫黄含有酸化チタンの場合、S2−に由来する160eV付近の特性ピークが見られ、S4+に由来する169eV付近の特性ピークは見られない。また、硫黄含有酸化チタンが、酸化チタン中の原子の一部が硫黄原子で置換された化合物ではなく、単なる酸化チタンと硫黄との混合物である場合は、169eV付近及び160eV付近のいずれにも特性ピークは見られない。
【0120】
また、本発明の製造方法により得られる金属含有硫黄導入酸化チタンでは、金属化合物は、金属イオン又は酸化物の形態で、該金属含有硫黄導入酸化チタンの粒子表面および内部に存在し、酸化チタンに含まれる全金属量に対する酸化チタン内部に存在する金属量の割合(%)((酸化チタンの内部に存在する金属量/酸化チタンに含まれる全金属量)×100)は、15%以上90%以下、好ましくは20%以上85%以下、特に好ましくは50%以上75%以下である。金属化合物が、硫黄含有酸化チタン表面だけではなく、その内部に存在することで、特に炭酸ガスへの分解性能が良好となる。ここで、表面に存在する金属量は、該金属含有硫黄導入酸化チタンを9%塩酸水溶液で煮沸し、重量組成分析して得られる値である。一方、内部に存在する金属量は、全体の金属量から表面に存在する金属量を差し引いたものである。全体の金属量は、該金属含有硫黄導入酸化チタンをフッ硝酸で煮沸溶解したものから、金属量を分析して得られる値である。該金属種としては、可視光での光触媒活性が高くなる点で、鉄であることが好ましい。
【0121】
また、本発明の製造方法により得られる金属含有硫黄導入酸化チタンは、金属含有量が0.03〜0.15質量%、硫黄含有量が0.02〜0.1質量%、比表面積が60〜120m/gであり、結晶構造の主体がアナターゼ型である。
つまり、本発明の金属含有硫黄導入酸化チタンは、金属含有量が0.03〜0.15質量%、硫黄含有量が0.02〜0.1質量%、比表面積が60〜120m/gであり、
結晶構造の主体がアナターゼ型であり、
酸化チタン中の硫黄原子が、酸化チタンのチタンサイトに導入されており、
金属が酸化チタン表面および内部に含まれている金属含有硫黄導入酸化チタンである。
【0122】
本発明の金属含有硫黄導入酸化チタンの金属含有量は、0.03〜0.15質量%、好ましくは0.05〜0.10質量%である。該金属含有量が、上記範囲内にあることにより、該金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる。
【0123】
本発明の金属含有硫黄導入酸化チタンの硫黄含有量は、0.02〜0.1質量%、好ましくは0.03〜0.1質量%である。該硫黄含有量が、上記範囲内にあることにより、該金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる。
【0124】
本発明の金属含有硫黄導入酸化チタンの比表面積は、60〜120m/g、好ましくは65〜105m/g、特に好ましくは80〜100m/gである。該比表面積が、上記範囲内にあることにより、該金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる。
【0125】
本発明の金属含有硫黄導入酸化チタンの結晶構造は、X線回折分析によるとアナターゼを主体とする相である。そして、本発明において、結晶構造の主体がアナターゼ型であるとは、下記の式で定義されるルチル化率が、1%以下であることを指す(ASTM D 3720−84)。なお、本発明の金属含有硫黄導入酸化チタンは、ブルッカイトを含んでいても構わない。例えば、X線回折パターンにおける「アナターゼ型結晶酸化チタンの101ピーク面積、並びにブルッカイト型結晶酸化チタンの面指数120及び面指数111のピーク面積の合計」に対する「ブルッカイト型結晶酸化チタンの面指数121のピーク面積」の比が、10%以下である。結晶構造の主体がアナターゼ型であることにより、該金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる。
ルチル化率(質量%)=100−100/(1+1.2×Ir/Id)
Ir:X線回折パターンにおけるルチル型結晶酸化チタンの最強干渉線(面指数110)のピーク面積、
Id:X線回折パターンにおけるアナターゼ型酸化チタン粉末の最強干渉線(面指数101)のピーク面積
【0126】
本発明の金属含有硫黄導入酸化チタンは、金属が、金属イオンまたは酸化物の形態で、該金属含有硫黄導入酸化チタンの粒子表面および内部に存在し、酸化チタンに含まれる全金属量に対する酸化チタン内部に存在する金属量の割合(%)((酸化チタンの内部に存在する金属量/酸化チタンに含まれる全金属量)×100)は、15%以上90%以下である。酸化チタンに含まれる全金属量に対する酸化チタン内部に存在する金属量の割合(%)が、上記範囲にあることにより、該金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性、特に炭酸ガスへの分解性能が高くなる。また、酸化チタンに含まれる全金属量に対する酸化チタン内部に存在する金属量の割合(%)は、該金属含有硫黄導入酸化チタンの可視光での光触媒活性、有機物の分解特性と炭酸ガスへの分解性能がより高くなる点で、好ましくは20%以上85%以下、特に好ましくは50%以上75%以下である。
【0127】
本発明の製造方法により得られる金属含有硫黄導入酸化チタン、および本発明の金属含有硫黄導入酸化チタンは、優れた可視光吸収特性および可視光での光触媒活性を有し、従来の製造方法で得られた金属含有硫黄導入酸化チタンに比べ、可視光での光触媒活性が高い。また、金属化合物が、硫黄含有酸化チタン表面だけではなく、その内部にも存在しているので、特に炭酸ガスへの分解性能が良好となる。従って、本発明の製造方法により得られる金属含有硫黄導入酸化チタン、および本発明の金属含有硫黄導入酸化チタンは、可視光照射により触媒活性を発現する光触媒として有用である。
【0128】
また、本発明の製造方法は、金属の導入を、硫黄含有酸化チタンを得る前、つまり、硫黄を導入する前に行なうので、従来の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法に比べ、簡便である。
【0129】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0130】
(1)酸化チタン中の硫黄含有量の測定
酸素気流中燃焼−赤外線吸収法(測定装置:株式会社堀場製作所製 EMIA−520)で測定した。
【0131】
(2)X線回折分析
以下の、X線回折測定条件にて行った。半値幅は、アナターゼ(101)ピークの高さの1/2となる幅(角度)を測定した。
(X線回折測定条件)
回折装置 RAD−1C(株式会社リガク製)
X線管球 Cu
管電圧・管電流 40kV、30mA
スリット DS-SS:1度、RS:0.15mm
モノクロメータ グラファイト
測定間隔 0.002度
計数方法 定時計数法
ルチル化率は、ASTM D 3720−84に従い、X線回折パターンにおけるルチル型結晶酸化チタンの最強干渉線(面指数110)のピーク面積(Ir)と、アナターゼ型酸化チタン粉末の最強干渉線(面指数101)のピーク面積(Id)を求め、以下の算出式より求めた。
ルチル化率(質量%)=100−100/(1+1.2×Ir/Id)
【0132】
(3)比表面積の測定
BET法により測定した。試料の脱気は、110℃にて行った。
【0133】
(4)光触媒性能の測定試験1
イソプロピルアルコール(IPA)の分解性能において評価した。10mlの試験管に、IPAの初期濃度が50mmol/lのアセトニトリル溶液5mlを用意する。これに得られた金属含有硫黄導入酸化チタン粉末を0.10g混合する。このような試験管を2つ用意する(試験管X1及び試験管Y1)。1つの試験管(試験管X1)には、撹拌子で撹拌しながら、350nm以下の波長を除いた光を2時間照射する。他の1つの試験管(試験管Y1)は、光を当てないように暗所で2時間撹拌する。
所定の時間経過後、それぞれの試験管中の溶液を遠心分離機にかけ、上澄みを分取し、ガスクロマトグラフィーを使用してIPAの濃度を測定した。IPA分解性能は以下の式で求めた。
分解性能A(%)=(2時間後のY1のIPA濃度−2時間後のX1のIPA濃度)×100/(2時間後のY1のIPA濃度)
【0134】
(5)光触媒性能の測定試験2
アセトアルデヒドガスの分解とアセトアルデヒドの分解の結果生成する二酸化炭素の濃度を測定した。
金属含有硫黄導入酸化チタン粉末0.10gを60mmのシャーレにのせ、紫外光にて16時間以上照射する。このサンプルを3Lのテドラーバッグに入れ、空気中にアセトアルデヒドガスの初期濃度が100ppmとなるように調整したガス1Lを封入する。これを暗所にて5時間静置し、アセトアルデヒド濃度と二酸化炭素濃度を測定する。
さらに光を18時間照射し、アセトアルデヒド濃度と二酸化炭素濃度をガスモニタ装置(INNOVA社 光音響ガスモニタ)で測定する。光源として蛍光灯を用いる。分解性能は以下の2式により評価した。
分解性能B(ppm)=18時間照射後のCO濃度−照射せずに5時間放置後のCO濃度
分解性能C(%)=(照射せずに5時間放置後のアセトアルデヒド濃度−18時間照射後のアセトアルデヒド濃度)×100/(照射せずに5時間放置後のアセトアルデヒド濃度)
【0135】
(6)XPSの測定
以下の測定条件にて行った。エッチングなどの試料の前処理は特に行わなかった。
(XPSの測定条件)
XPS装置:PHI社製XPS-5700
X線源:単色化 AlKα(1486.6eV) 200W
測定領域:800μm径
検出角:45°(試料法線から)
中和電子銃:使用
【0136】
(7)酸化チタン中の鉄含有量の測定(酸化チタン中の全鉄含有量)
酸化チタン2gを、濃度50%のフッ酸15ml、濃度60%の硝酸10mlの混酸(フッ硝酸)中で煮沸溶解し、その液を純水で全量が250mlとなるように希釈して、ICP発光分光分析(高周波誘導結合プラズマを光源とした発光分析法)により鉄濃度を測定した。
【0137】
(8)酸化チタン表面の鉄含有量の測定
酸化チタン2gを、濃度9%の塩酸水溶液50ml中で煮沸し、全量が100mlとなるように純水で希釈した後、ICP発光分光分析(高周波誘導結合プラズマを光源とした発光分析法)により鉄濃度を測定した。
【0138】
[実施例1]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造)
撹拌機を備えた容量1000mlの丸底フラスコに、四塩化チタン水溶液(チタン濃度:4質量%) 297gを入れ、次いで、60℃に加熱した。次いでアンモニア水を一気に添加して反応系のpHが7.4に維持されるように、60℃で1時間中和処理を行い、スラリーを得た。次いで、このスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中のチタン塩アルカリ中和物をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.05質量部となるように添加し、60℃、1時間撹拌混合を行い、混合液を得た。次いで、この混合液を110℃にて、24時間加熱して水を蒸発除去し、固形物を得、得られた固形物の純水洗浄およびろ過を2回繰り返し、ろ過後の固形物を110℃、24時間で乾燥して、鉄含有チタン塩アルカリ中和物a1を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a1を、250℃で、3時間、大気圧下にて加熱処理し、加熱処理物b1を得た。該加熱処理物b1の比表面積は280m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.42°、鉄含有量は0.05質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b1と、乳鉢で粉砕したチオ尿素とを、該加熱処理物b1をTiO換算したときの100質量部に対し硫黄原子の質量が40質量部となるように、混合し、混合物を得た。次いで、該混合物を焼成炉にて、400℃で2.5時間焼成した。得られた焼成物をボールミルにて粉砕して、純水で洗浄した後、110℃で乾燥して黄色から黄橙色の鉄含有硫黄導入酸化チタンc1を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンc1の特性と、光触媒性能の測定結果を表1に示す。
【0139】
[実施例2]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造)
中和処理後のスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中の酸化チタンをTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.05質量部となるように添加することに代えて、中和処理後のスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中の酸化チタンをTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.03質量部となるように添加すること以外は、実施例1と同様の方法で行い、鉄含有チタン塩アルカリ中和物a2を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a1に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a2とする以外は実施例1と同様の方法で行い、加熱処理物b2を得た。該加熱処理物b2の比表面積は170m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.25°、鉄含有量は0.03質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b1に代えて、該加熱処理物b2とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンc2を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンc2の特性と、光触媒性能の測定結果を表1に示す。
【0140】
[実施例3]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造)
中和処理後のスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中の酸化チタンをTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.05質量部となるように添加することに代えて、中和処理後のスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中の酸化チタンをTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.06質量部となるように添加すること以外は、実施例1と同様の方法で行い、鉄含有チタン塩アルカリ中和物a3を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a1に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a3とする以外は実施例1と同様の方法で行い、加熱処理物b3を得た。該加熱処理物b3の比表面積は270m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.43°、鉄含有量は0.06質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b1に代えて、該加熱処理物b3とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンc3を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンc3の特性と、光触媒性能の測定結果を表1に示す。
【0141】
[実施例4]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造)
中和処理後のスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中の酸化チタンをTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.05質量部となるように添加することに代えて、中和処理後のスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中の酸化チタンをTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.07質量部となるように添加すること以外は、実施例1と同様の方法で行い、鉄含有チタン塩アルカリ中和物a4を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a1に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a4とする以外は実施例1と同様の方法で行い、加熱処理物b4を得た。該加熱処理物b4の比表面積は290m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.40°、鉄含有量は0.07質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b1に代えて、該加熱処理物b4とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンc4を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンc4の特性と、光触媒性能の測定結果を表1に示す。
【0142】
[実施例5]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造)
中和処理後のスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中のチタン塩アルカリ中和物をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.05質量部となるように添加することに代えて、中和処理後のスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中のチタン塩アルカリ中和物をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.1質量部となるように添加すること以外は、実施例1と同様の方法で行い、鉄含有チタン塩アルカリ中和物a5を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a1に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a5とする以外は実施例1と同様の方法で行い、加熱処理物b5を得た。該加熱処理物b5の比表面積は300m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.43°、鉄含有量は0.10質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b1に代えて、該加熱処理物b5とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンc5を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンc5の特性と、光触媒性能の測定結果を表1に示す。
【0143】
[比較例1]
(チタン塩アルカリ中和物の製造)
撹拌機を備えた容量1000mlの丸底フラスコに、四塩化チタン水溶液(チタン濃度:4質量%) 297gを入れ、次いで、60℃に加熱した。次いでアンモニア水を一気に添加して反応系のpHが7.4に維持されるように、60℃で1時間中和処理を行い、スラリーを得た。次いで、このスラリーを110℃にて、45時間加熱して水を蒸発除去し、固形物を得、得られた固形物の純水洗浄及びろ過を2回繰り返し、ろ過後の固形物を110℃、12時間で乾燥し、チタン塩アルカリ中和物d1を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a1に代えて、該チタン塩アルカリ中和物d1とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、加熱処理物e1を得た。該加熱処理物e1の比表面積は300m/g、X線回折によるアナターゼの(101)ピークの半値幅2θ=1.41°、鉄含有量は0質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b1に代えて、該加熱処理物e1とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、硫黄含有酸化チタンf1を得た。この硫黄含有酸化チタンf1の特性と、光触媒性能の測定結果を表1に示す。
【0144】
[比較例2]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造)
中和処理後のスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中のチタン塩アルカリ中和物をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.05質量部となるように添加することに代えて、中和処理後のスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中のチタン塩アルカリ中和物をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.01質量部となるように添加すること以外は、実施例1と同様の方法で行い、鉄含有チタン塩アルカリ中和物d2を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a1に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物d2とする以外は実施例1と同様の方法で行い、加熱処理物e2を得た。該加熱処理物e2の比表面積は135m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.18°、鉄含有量は0.01質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b1に代えて、該加熱処理物e2とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンf2を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンf2の特性と、光触媒性能の測定結果を表1に示す。
【0145】
【表1】

【0146】
実施例1〜5では、原料酸化チタンを製造する際に、チタン塩アルカリ中和物を含有するスラリーに、所定量の鉄化合物を添加することで、鉄含有量が0.03〜0.15質量%の鉄含有硫黄導入酸化チタンが得られており、該鉄含有硫黄導入酸化チタンは、比較例2の鉄含有量が0.01質量%の鉄含有硫黄導入酸化チタンに比べ、比表面積は若干小さいものの、光触媒性能が高かった。また、実施例1〜5および比較例1、比較例2より、鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造において、チタン塩アルカリ中和物を含有するスラリーに添加する鉄化合物の添加量が多くなるに従い、鉄含有チタン塩アルカリ中和物の比表面積は減少していることがわかる。従って、鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造において、チタン塩アルカリ中和物を含有するスラリーに添加する鉄化合物の添加量により、鉄含有チタン塩アルカリ中和物の比表面積を調整できる。
実施例1〜5の鉄含有硫黄導入酸化チタンc1〜c5のXPSスペクトル分析の結果、いずれも、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが見られ、S2−に由来する160eV付近の特性ピークは見られなかった。また、鉄含有硫黄導入酸化チタンc1〜c5のX線回折分析の結果より、ブルッカイト相のピークは観察されなかった。
【0147】
[実施例6]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造)
撹拌機を備えた容量1000mlの丸底フラスコに、四塩化チタン水溶液(チタン濃度:4質量%) 297gと、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液とを、四塩化チタンをTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子0.05質量部となるように入れ、次いで、60℃に加熱した。次いで、アンモニア水を一気に添加して反応系のpHが7.4に維持されるように、60℃で1時間中和し、スラリーを得た。このスラリーを110℃にて、24時間加熱して、水を蒸発除去して、固形物を得、得られた固形物の純水洗浄およびろ過を2回繰り返し、ろ過後の粉末を110℃、24時間で乾燥して、鉄含有チタン塩アルカリ中和物a6を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a1に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a6とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、加熱処理物b6を得た。該加熱処理物b6の比表面積は290m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.44°、鉄含有量は0.05質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b1に代えて、該加熱処理物b6とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンc6を得た。該鉄含有硫黄導入酸化チタンc6の特性、光触媒性能の測定結果を表2に示す。
【0148】
[実施例7]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造)
塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、四塩化チタンをTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子0.05質量部となるように入れることに代えて、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、四塩化チタンをTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子0.1質量部となるように入れること以外は、実施例6と同様の方法で行い、鉄含有チタン塩アルカリ中和物a7を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a1に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a7とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、加熱処理物b7を得た。該加熱処理物b7の比表面積は310m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅2θ=1.48°、鉄含有量は0.10質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b1に代えて、該加熱処理物b7とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンc7を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンc7の特性、光触媒性能の測定結果を表2に示す。
【0149】
[比較例3]
比較例1で得られた硫黄含有酸化チタンf1を純水中に入れ、撹拌し、そこに塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、硫黄含有酸化チタンf1をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子0.05質量部となるように入れ、30分間撹拌し、懸濁液を得た。撹拌後、得られた懸濁液をろ過し、ろ過後の粉末を110℃、12時間乾燥して、赤銅色の硫黄含有酸化チタンg3を得た。この硫黄含有酸化チタン粉末g3の特性、光触媒性能の測定結果を表2に示す。
【0150】
[比較例4]
塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、硫黄含有酸化チタンf1をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子0.05質量部となるように入れることに代えて、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、硫黄含有酸化チタンf1をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子0.1質量部となるように入れること以外は、比較例3と同様の方法で行い、赤銅色の硫黄含有酸化チタンg4を得た。この硫黄含有酸化チタンg4の特性、光触媒性能の測定結果を表2に示す。
【0151】
【表2】

【0152】
実施例6の鉄含有硫黄導入酸化チタンc6及び実施例7の鉄含有硫黄導入酸化チタンc7のXPSスペクトル分析の結果、いずれも、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが見られ、S2−に由来する160eV付近の特性ピークは見られなかった。また、鉄含有硫黄導入酸化チタンc6、c7のX線回折分析の結果より、ブルッカイト相のピークは観察されなかった。
光触媒性能の測定の結果、チタン塩をアルカリ中和して得られたチタン塩アルカリ中和物を含有するスラリーに、鉄化合物を加えて得た、鉄含有チタン塩アルカリ中和物と、該硫黄化合物とを反応させて得た鉄含有硫黄導入酸化チタンが、最も炭酸ガスへの分解性能が良好であり、次いで、鉄化合物を含有するチタン塩溶液中でチタン塩をアルカリ中和して得た、鉄含有チタン塩アルカリ中和物と、該硫黄化合物とを反応させて得た鉄含有硫黄導入酸化チタンが、炭酸ガスへの分解性能が良好であった。一方、これらの方法で得た鉄含有硫黄導入酸化チタンに比べ、先に、チタン塩のアルカリ中和物と硫黄化合物とを焼成して硫黄含有酸化チタンを得、これに、鉄化合物を導入して得た、鉄が導入された硫黄含有酸化チタンは、炭酸ガスへの分解性能が低かった。
【0153】
[実施例8]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造及び加熱処理)
加熱処理での加熱処理温度を、250℃とすることに代えて、350℃とすること以外は、実施例4と同様の方法で行い、加熱処理物b8を得た。該加熱処理物b8の比表面積は180m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.35°、鉄含有量は0.07質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b4に代えて、該加熱処理物b8とする以外は、実施例4と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンc8を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンc8の特性、光触媒性能の測定結果を表3に示す。
【0154】
[実施例9]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造及び加熱処理)
加熱処理での加熱処理温度を、250℃とすることに代えて、300℃とすること以外は、実施例4と同様の方法で行い、加熱処理物b9を得た。該加熱処理物b9の比表面積は220m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.35°、鉄含有量は0.07質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b4に代えて、該加熱処理物b9とする以外は、実施例4と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンc9を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンc9の特性、光触媒性能の測定結果を表3に示す。
【0155】
[実施例10]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造及び加熱処理)
加熱処理での加熱処理温度を、250℃とすることに代えて、200℃とすること以外は、実施例4と同様の方法で行い、加熱処理物b10を得た。該加熱処理物b10の比表面積は340m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.48°、鉄含有量は0.07質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b4に代えて、該加熱処理物b10とする以外は、実施例4と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンc10を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンc10の特性、光触媒性能の測定結果を表3に示す。
【0156】
[実施例11]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造、加熱処理及び焼成)
焼成での焼成温度を、400℃とすることに代えて、450℃とすること以外は、実施例4と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンc11を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンc11の特性、光触媒性能の測定結果を表3に示す。
【0157】
【表3】

【0158】
[実施例12]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造)
実施例4と同様の方法で行い、鉄含有チタン塩アルカリ中和物a12を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a12と、乳鉢で粉砕したチオ尿素を、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a12をTiO換算したときの100質量部に対し硫黄原子の質量が5質量部となるように、混合し、混合物を得た。次いで、該混合物を、300℃で、3時間、大気圧下にて加熱処理し、得られた焼成物をボールミルにて粉砕した後、該加熱処理物b12を得た。該加熱処理物b12の比表面積は220m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.36°、鉄含有量は0.07質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b12と、乳鉢で粉砕したチオ尿素とを、該加熱処理物b12をTiO換算したときの100質量部に対し硫黄原子の質量が40質量部となるように、混合し、混合物を得た。次いで、該混合物を焼成炉にて、400℃で2.5時間焼成した。得られた焼成物をボールミルにて粉砕した後、純水で洗浄した後、110℃で乾燥して黄色から黄橙色の鉄含有硫黄導入酸化チタンc12を得た。
この鉄含有硫黄導入酸化チタンc12の特性、光触媒性能の測定結果を表4に示す。
【0159】
[実施例13]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造)
実施例4と同様の方法で行い、鉄含有チタン塩アルカリ中和物a13を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a12に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a13とした以外は、実施例12と同様な方法で行い、該加熱処理物b13を得た。該加熱処理物b13の比表面積は220m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.36°、鉄含有量は0.07質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b12と、乳鉢で粉砕したチオ尿素とを、該加熱処理物b12をTiO換算したときの100質量部に対し硫黄原子の質量が40質量部となるように、混合することに代えて、該加熱処理物b13と、乳鉢で粉砕したチオ尿素とを、該加熱処理物b13をTiO換算したときの100質量部に対し硫黄原子の質量が20質量部となるように、混合すること以外は、実施例12と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンc13を得た。
この鉄含有硫黄導入酸化チタンc13の特性、光触媒性能の測定結果を表4に示す。
【0160】
[実施例14]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造)
実施例4と同様の方法で行い、鉄含有チタン塩アルカリ中和物a14を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a12に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a14とした以外は、実施例12と同様な方法で行い、該加熱処理物b14を得た。該加熱処理物b14の比表面積は220m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.36°、鉄含有量は0.07質量%であった。
(焼成)
焼成での焼成温度を400℃とすることに代えて、450℃とすること以外は、実施例13と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンc14を得た。
この鉄含有硫黄導入酸化チタンc14の特性、光触媒性能の測定結果を表4に示す。
【0161】
[実施例15]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造)
実施例4と同様の方法で行い、鉄含有チタン塩アルカリ中和物a15を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a12に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a15とし、チオ尿素を、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a12をTiO換算したときの100質量部に対し硫黄原子の質量が5質量部となるように、混合することに代えて、チオ尿素を、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a15をTiO換算したときの100質量部に対し硫黄原子の質量が10質量部となるように、混合すること以外は、実施例12と同様の方法で行い、該加熱処理物b15を得た。該加熱処理物b15の比表面積は220m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.36°、鉄含有量は0.07質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b14に代えて、該加熱処理物b15とした以外は、実施例14と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンc15を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンc15の特性、光触媒性能の測定結果を表4に示す。
【0162】
[比較例5]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造)
中和処理後のスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中のチタン塩アルカリ中和物をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.07質量部となるように添加することに代えて、中和処理後のスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中のチタン塩アルカリ中和物をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.3質量部となるように添加すること以外は、実施例4と同様の方法で行い、鉄含有チタン塩アルカリ中和物d5を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a12に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物d5とした以外は、実施例12と同様に加熱処理を行い、加熱処理物e5を得た。該加熱処理物e5の比表面積は250m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.45°、鉄含有量は0.3質量%であった。
(焼成)
該加熱化合物b14に代えて、該加熱化合物e5とした以外は、実施例14と同様な方法で処理を行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンf5を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンf5の特性、光触媒性能の測定結果を表4に示す。
【0163】
[比較例6]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造)
中和処理後のスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中のチタン塩アルカリ中和物をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.07質量部となるように添加することに代えて、中和処理後のスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中のチタン塩アルカリ中和物をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.5質量部となるように添加すること以外は、実施例4と同様の方法で行い、鉄含有チタン塩アルカリ中和物d6を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a12に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物d6とした以外は、実施例12と同様に行い、該加熱処理物e6を得た。該加熱処理物e6の比表面積は260m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.46°、鉄含有量は0.5質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b14に代えて、該加熱処理物e6とした以外は、実施例14と同様な方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンf6を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンf6の特性、光触媒性能の測定結果を表4に示す。
【0164】
【表4】

【0165】
[実施例16]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造)
実施例1と同様の方法で行い、鉄含有チタン塩アルカリ中和物a16を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a12に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a16とする以外は、実施例12と同様に行い、該加熱処理物b16を得た。該加熱処理物b16の比表面積は220m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.36°、鉄含有量は0.05質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b12に代えて、該加熱処理物b16とした以外は、実施例12と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンh16を得た。得られた該鉄含有硫黄導入酸化チタンh16を純水中に入れ、撹拌し、そこに塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、鉄含有硫黄導入酸化チタンh16をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.05質量部となるように入れ、30分間撹拌し、懸濁液を得た。撹拌後、得られた懸濁液をろ過し、ろ過後の粉末を110℃、12時間乾燥して、赤銅色の鉄含有硫黄導入酸化チタンc16を得た。該鉄含有硫黄導入酸化チタンc16の特性、光触媒性能の測定結果を表5に示す。
【0166】
[実施例17]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造及び加熱処理)
実施例16と同様の方法で行い、加熱処理物b17を得た。
(焼成)
該加熱処理物b13に代えて、該加熱処理物b17とした以外は、実施例13と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンh17を得た。該鉄含有硫黄導入酸化チタンh17を純水中に入れ、撹拌し、そこに塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、該鉄含有硫黄導入酸化チタンh17をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.1質量部となるように入れ、30分間撹拌し、懸濁液を得た。撹拌後、得られた懸濁液をろ過し、ろ過後の粉末を110℃、12時間乾燥して、赤銅色の鉄含有硫黄導入酸化チタンc17を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンc17の特性、光触媒性能の測定結果を表5に示す。
【0167】
[実施例18]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造及び加熱処理)
実施例4と同様の方法で行い、鉄含有チタン塩アルカリ中和物a18を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a12に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a18とする以外は、実施例12と同様に行い、該加熱処理物b18を得た。該加熱処理物b18の比表面積は260m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.40°、鉄含有量は0.07質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b13に代えて、該加熱処理物b18とした以外は、実施例13と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンh18を得た。該鉄含有硫黄導入酸化チタンh18を純水中に入れ、撹拌し、そこに塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、該鉄含有硫黄導入酸化チタンh18をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.03質量部となるように入れ、30分間撹拌し、懸濁液を得た。撹拌後、得られた懸濁液をろ過し、ろ過後の粉末を110℃、12時間乾燥して、赤銅色の鉄含有硫黄導入酸化チタンc18を得た。この鉄導入硫黄含有酸化チタンc18の特性、光触媒性能の測定結果を表5に示す。
【0168】
[実施例19]
(鉄含有チタン塩アルカリ中和物の製造及び加熱処理)
撹拌機を備えた容量1000mlの丸底フラスコに、四塩化チタン水溶液(チタン濃度:4質量%) 297gと、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液とを、四塩化チタンをTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.05質量部となるように入れ、次いで、60℃に加熱した。次いで、アンモニア水を一気に添加して反応系のpHが7.4に維持されるように、60℃で1時間中和し、スラリーを得た。このスラリーを110℃にて、24時間加熱して、水を蒸発除去して、固形物を得、得られた固形物の純水洗浄およびろ過を2回繰り返し、ろ過後の粉末を110℃、24時間で乾燥して、鉄含有チタン塩アルカリ中和物を得た。
次いで、鉄含有チタン塩アルカリ中和物に純水800gを添加してスラリーを作製した。このスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中のチタン塩アルカリ中和物をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.05質量部となるように添加し、60℃、1時間撹拌混合を行い、混合液を得た。次いで、この混合液を110℃にて、24時間加熱して水を蒸発除去し、固形物を得、得られた固形物の純水洗浄およびろ過を2回繰り返し、ろ過後の固形物を110℃、24時間で乾燥して、鉄含有チタン塩アルカリ中和物a19を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a13に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a19とした以外は、実施例13と同様に行い、該加熱処理物b19を得た。該加熱処理物b19の比表面積は270m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.43°、鉄含有量は0.07質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b13に代えて、該加熱処理物b19とした以外は、実施例13と同様の方法でを行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンc19を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンc19の特性と、光触媒性能の測定結果を表5に示す。
【0169】
【表5】

【0170】
[実施例20]
撹拌機を備えた丸底フラスコに、純水1000gを入れ、次いで、60℃に加熱した。四塩化チタン水溶液(チタン濃度:6質量%) 2000gと、アンモニア水(28%)を純水で5倍希釈した液 2057gを、中和等量となるように、両者を3時間かけて、滴下、中和を行った。次いで、このスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中のチタン塩アルカリ中和物をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.07質量部となるように添加し、60℃、1時間撹拌混合を行い、混合液を得た。次いで、この混合液を110℃にて、24時間加熱して水を蒸発除去し、固形物を得、得られた固形物の純水洗浄およびろ過を2回繰り返し、ろ過後の固形物を110℃、24時間で乾燥して、鉄含有チタン塩アルカリ中和物a20を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a1に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a20とする以外は実施例1と同様の方法で行い、加熱処理物b20を得た。該加熱処理物b20の比表面積は300m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.45°、鉄含有量は0.07質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b1に代えて、該加熱処理物b20とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンc20を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンc20の特性と、光触媒性能の測定結果を表6に示す。
【0171】
[実施例21]
撹拌機を備えた丸底フラスコに、純水1000gを入れ、次いで、60℃に加熱した。四塩化チタン水溶液(チタン濃度:6質量%) 2000gと、アンモニア水(28%)を純水で5倍希釈した液 2057gを、中和等量となるように、両者を3時間かけて、滴下、中和を行った。この液を110℃にて、24時間加熱して水を蒸発除去したのち、得られた固形物を、純水で洗浄し、濾過するという操作を2回繰り返した。濾過後の粉末を、110℃、24時間乾燥した。
次いで、この粉末100gを純水5000gに分散させたスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(株式会社和光純薬製))水溶液を、スラリー中のチタン塩アルカリ中和物をTiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として0.07質量部となるように添加し、60℃、1時間撹拌混合を行い、混合液を得た。次いで、この混合液を110℃にて、24時間加熱して水を蒸発除去し、固形物を得、得られた固形物の純水洗浄およびろ過を2回繰り返し、ろ過後の固形物を110℃、24時間で乾燥して、鉄含有チタン塩アルカリ中和物a21を得た。
(加熱処理)
該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a1に代えて、該鉄含有チタン塩アルカリ中和物a21とする以外は実施例1と同様の方法で行い、加熱処理物b21を得た。該加熱処理物b21の比表面積は300m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.42°、鉄含有量は0.07質量%であった。
(焼成)
該加熱処理物b1に代えて、該加熱処理物b21とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、鉄含有硫黄導入酸化チタンc21を得た。この鉄含有硫黄導入酸化チタンc21の特性と、光触媒性能の測定結果を表6に示す。
【0172】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有原料酸化チタンと硫黄化合物との混合物を焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程を有し、
該金属含有原料酸化チタン中の金属含有量が、TiO換算したときの該金属含有原料酸化チタン100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部であること、
を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法。
【請求項2】
金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物と硫黄化合物との混合物を得る焼成原料混合物調製工程と、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物と該硫黄化合物との混合物を、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程と、を有し、
該焼成原料混合物調製工程が、チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、チタン塩加水分解/アルカリ中和物含有スラリーを調製する加水分解/アルカリ中和処理と、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物含有スラリーに、金属化合物を加え、撹拌して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物を得る金属化合物撹拌混合処理と、を行う工程であり、
該金属化合物撹拌混合処理で該金属化合物を加える量が、TiO換算したときの該チタン塩加水分解/アルカリ中和物100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理を行う前から該金属化合物撹拌混合処理を行った後までの間に、硫黄化合物を混合すること、
を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法。
【請求項3】
金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物の加熱処理物と硫黄化合物との混合物を得る焼成原料混合物調製工程と、該加熱処理物と該硫黄化合物との混合物を、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程と、を有し、
該焼成原料混合物調製工程が、チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、チタン塩加水分解/アルカリ中和物含有スラリーを調製する加水分解/アルカリ中和処理と、該チタン塩加水分解/アルカリ中和物含有スラリーに、金属化合物を加え、撹拌して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物を得る金属化合物撹拌混合処理と、該金属含有チタン塩/アルカリ中和物を加熱処理して、加熱処理物を得る加熱処理と、を行う工程であり、
該金属化合物撹拌混合処理で該金属化合物を加える量が、TiO換算したときの該チタン塩加水分解/アルカリ中和物100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理を行う前から該加熱処理を行った後までの間に、硫黄化合物を混合すること、
を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法。
【請求項4】
金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物と硫黄化合物との混合物を得る焼成原料混合物調製工程と、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物と該硫黄化合物との混合物を、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程と、を有し、
該焼成原料混合物調製工程が、金属化合物の存在下で、チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物を得る加水分解/アルカリ中和処理を行う工程であり、
該加水分解/アルカリ中和処理で存在させる該金属化合物の量が、TiO換算したときのチタン塩100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理を行う前から該加水分解/アルカリ中和処理を行った後までの間に、硫黄化合物を混合すること、
を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法。
【請求項5】
金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物の加熱処理物と硫黄化合物との混合物を得る焼成原料混合物調製工程と、該加熱処理物と該硫黄化合物との混合物を、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程と、を有し、
該焼成原料混合物調製工程が、金属化合物の存在下で、チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、チタン塩加水分解/アルカリ中和物を得る加水分解/アルカリ中和処理と、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物を加熱処理して、加熱処理物を得る加熱処理と、を行う工程であり、
該チタン塩加水分解/アルカリ中和処理で存在させる該金属化合物の量が、TiO換算したときのチタン塩100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理を行う前から該加熱処理を行った後までの間に、硫黄化合物を混合すること、
を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法。
【請求項6】
金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物と硫黄化合物との混合物を得る焼成原料混合物調製工程と、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物と該硫黄化合物との混合物を、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程と、を有し、
該焼成原料混合物調製工程が、金属化合物の存在下で、該チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物含有スラリーを調製する加水分解/アルカリ中和処理と、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物含有スラリーに、金属化合物を加え、撹拌して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物を得る金属化合物撹拌混合処理と、を行う工程であり、
該加水分解/アルカリ中和処理で存在させる該金属化合物及び該金属化合物撹拌混合処理で加える該金属化合物の合計量が、TiO換算したときのチタン塩100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理を行う前から該金属化合物撹拌混合処理を行った後までの間に、硫黄化合物を混合すること、
を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法。
【請求項7】
金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物の加熱処理物と硫黄化合物との混合物を得る焼成原料混合物調製工程と、該加熱処理物と該硫黄化合物との混合物を、焼成し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る焼成工程と、を有し、
該焼成原料混合物調製工程が、金属化合物の存在下で、該チタン塩を加水分解またはアルカリ中和して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物含有スラリーを調製する加水分解/アルカリ中和処理と、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物含有スラリーに、金属化合物を加え、撹拌して、金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物を得る金属化合物撹拌混合処理と、該金属含有チタン塩加水分解/アルカリ中和物を加熱処理し、加熱処理物を得る加熱処理と、を行う工程であり、
該加水分解/アルカリ中和処理で存在させる該金属化合物及び該金属化合物撹拌混合処理で加える該金属化合物の合計量が、TiO換算したときのチタン塩100質量部に対して、金属原子として0.03〜0.15質量部となる量であり、
且つ、該加水分解/アルカリ中和処理を行う前から該加熱処理を行った後までの間に、硫黄化合物を混合すること、
を特徴とする金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法。
【請求項8】
前記焼成工程を行った後、更に、前記焼成工程で得られた前記金属含有硫黄導入酸化チタンに、金属を導入して、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る金属再導入工程を行うことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法。
【請求項9】
前記金属再導入工程を行った後、更に、前記金属再導入工程で得られた金属含有硫黄導入酸化チタンと硫黄化合物とを混合し、焼成して、硫黄を導入し、金属含有硫黄導入酸化チタンを得る硫黄再導入工程を行うこと、又は前記金属再導入工程と該硫黄再導入工程とを繰り返すこと、を特徴とする請求項8記載の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法。
【請求項10】
前記加熱処理の加熱処理温度が、200〜350℃であることを特徴とする請求項3、5又は7いずれか1項記載の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法。
【請求項11】
前記チタン塩が、四塩化チタンであることを特徴とする請求項2〜7いずれか1項記載の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法。
【請求項12】
前記金属化合物が、鉄元素を含有する金属化合物であることを特徴とする請求項2〜11いずれか1項記載の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法。
【請求項13】
前記金属含有原料酸化チタン、前記チタン塩加水分解/アルカリ中和物又は前記加熱処理物の鉄含有量が0.03〜0.15質量%、結晶構造の主体がアナターゼ型、比表面積が150〜400m/g、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅が、2θ=1.2〜1.5°であることを特徴とする請求項1〜12いずれか1項記載の金属含有硫黄導入酸化チタンの製造方法。


【公開番号】特開2008−179529(P2008−179529A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326209(P2007−326209)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(390007227)東邦チタニウム株式会社 (191)
【Fターム(参考)】