説明

金属接合体、金属接合方法、及び、金属接合装置

【課題】電気的特性、信頼性の向上を図った金属接合体、金属接合方法及び金属接合装置を提供する。
【解決手段】突出部12、13が、2つの金属板10、11を重ねた状態で非切断線の一端から非切断線から離れた側を通って非切断線の他端まで延在する切断線に沿って2つの金属板10、11を切断して2つの金属板10、11の切断線及び非切断線に囲まれた部分を押圧することにより押圧方向Y1に突出して設けられる。金属接合部が、押圧方向Y1とは逆側にある金属板10の突出部12の切断外周面、及び、押圧方向Y1側にある金属板11の穴15の切断内周面、の間に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属接合体、金属接合方法、及び、金属接合装置に係り、特に、2つの金属板同士が接合された金属接合体、2つの金属板同士を接合させる金属接合方法及び金属接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属板同士を接合する方法としては、金属板同士を加締めて圧着させる方法が知られている。しかしながら、圧着による接合では、加締めによる残留応力と接触に頼っているため電気的特性が十分ではない。また、接触部には隙間が多く、腐食などの観点から長期的な電気的特性の確保が難しい、という問題があった。
【0003】
また、電気的特性を確保するために例えば、ガス、プラズマなどで金属板を溶かして金属板同士を溶接することも考えられるが、自動化することが難しく、大量生産に向いておらず、コスト的に問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、電気的特性、信頼性の向上を図った金属接合体、金属接合方法及び金属接合装置を低コストで提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、2つの金属板同士が接合された金属接合体において、前記2つの金属板を重ねた状態で非切断線の一端から前記非切断線から離れた側を通って前記非切断線の他端まで延在する切断線に沿って前記2つの金属板を切断して前記2つの金属板の前記切断線及び前記非切断線に囲まれた部分を押圧することにより押圧方向に突出して設けられた突出部と、前記2つの金属板に前記突出部を設けることにより形成された穴と、前記押圧方向とは逆側にある前記金属板の突出部の切断外周面、及び、前記押圧方向側にある前記金属板の前記穴の切断内周面、の間に設けられた金属接合部と、を備えたことを特徴とする金属接合体に存する。なお、本発明において、金属接合部とは、金属板の切断線及び非切断線に囲まれた部分を押圧したときに、押圧方向とは逆側にある金属板の突出部の切断外周面、及び、押圧方向側にある金属板の穴の切断内周面、間に生じる摩擦により、突出部の切断外周面及び穴の切断内周面が溶融して凝着された部分を意味する。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記突出部及び前記穴の非切断線方向の幅が前記非切断線に近づくに従って短くなるように、前記切断線が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の金属接合体に存する。
【0007】
請求項3記載の発明は、前記切断線が、一つの前記非切断線を挟んで2つ設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属接合体に存する。
【0008】
請求項4記載の発明は、2つの金属板同士を重ねる工程と、前記2つの金属板を重ねた状態で非切断線の一端から前記非切断線から離れた側を通って前記非切断線の他端まで延在する切断線に沿って前記2つの金属板を切断して前記2つの金属板の前記切断線及び前記非切断線に囲まれた部分を押圧することにより押圧方向に突出する突出部を設ける工程と、を順次有する2つの金属板同士を接合させる金属接合方法であって、前記2つの金属板の前記切断線及び前記非切断線に囲まれた部分が、前記押圧方向とは逆側にある前記金属板の突出部の切断外周面が前記押圧方向側にある前記金属板の前記突出部を設けることにより形成された穴の切断内周面に達するように、押圧されることを特徴とする金属接合方法に存する。
【0009】
請求項5記載の発明は、金属板同士を接合させる金属接合装置において、前記金属板の非切断線の一端から前記非切断線から離れた側を通って前記非切断線の他端まで延在する切断線、及び、前記非切断線、に囲まれた部分と同形状に形成されていて前記非切断線に近づくに従って深さが浅くなるプレス穴が設けられた第1の型と、前記プレス穴に嵌合する形状に設けられていて前記非切断線に近づくに従って突起高さが低くなるプレス突起が設けられた第2の型と、を備えたことを特徴とする金属接合装置に存する。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように請求項1、4及び5記載の発明によれば、押圧時に、押圧方向とは逆側にある金属板の突出部の切断外周面と押圧方向側にある金属板の穴の切断内周面との間に摩擦が生じて金属接合部が得られるため、電気的特性、信頼性の向上を図ることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、突出部が穴の幅の短い方に向かって押し込まれることにより、切断面に法線荷重が生じこれにより金属接合部の接合が促進されるため、より一層、電気的特性、信頼性の向上を図ることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、一つの非切断線を挟んで2つの金属接合部を得ることができ、より一層、電気的特性、信頼性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の金属接合体1の部分斜視図である。図2は、図1に示す金属接合体1の上面図である。図3は、図2に示す金属接合体1のP1矢視図である。図4は、図2に示す金属接合体1のP2矢視図である。図5は、図2に示す金属接合体1のI−I線断面図である。図6は、図2に示す金属接合体1のII−II線断面図である。
【0014】
同図に示すように、金属接合体1は、2つの金属板10、11から構成されている。図5に示すように、金属接合体1は、突出部12、13と、穴14、15と、金属接合部16(図6)と、を備えている。
【0015】
突出部12は、金属板10に設けられている。突出部13は、金属板11に設けられている。上記突出部12、13は各々、図2に示すように、2つの金属板10、11を重ねた状態で非切断線L1の一端から非切断線L1から離れた側を通って非切断線L1の他端まで延在する切断線L2に沿って2つの金属板を切断すると同時に2つの金属板10、11の切断線L2及び非切断線L1に囲まれた部分をプレス(押圧)することにより押圧方向Y1に突出して設けられたものである。なお、本実施形態では、切断線L2は、一つの非切断線L1を挟んで2つ設けられている。
【0016】
穴14は、金属板10に突出部12を設けることにより形成されるものである。穴15は、金属板11に突出部13を設けることにより形成されるものである。上記押圧方向Y1とは逆側にある金属板10の突出部12は、押圧方向Y1側にある金属板11の穴15まで押し込まれている。これにより、突出部12の切断外周面が穴15の切断内周面に擦られながら押し込まれる。このため摩擦により、酸化皮膜が除去され新生面が露出して突出部12の切断外周面と穴15の切断内周面とが凝着して、図6及び図7に示すような金属接合部16が得られる。また、プレスにより、突出部12の下面、突出部13の上面の形状が変形する。この変形により突出部12、13が重なりあっている部分にも摩擦が生じて金属接合部17(図5)が得られる。
【0017】
上述した金属接合体1によれば、プレス時に、押圧方向Y1とは逆側にある金属板10の突出部12の切断外周面と押圧方向Y1側にある金属板11の穴15の切断内周面との間に摩擦が生じて金属接合部16が得られるため、電気的特性、信頼性の向上を図ることができる。
【0018】
また、上述した金属接合体1によれば、一般的なプレス工程で金属板10、11同士の接合を行うことができるため、金属結合を得るための特殊な設備が不要であり、部品のコストアアップを避けることができる。
【0019】
また、上記切断線L2は、図2に示すように、突出部12、13及び穴14、15の非切断線方向Y2の幅が非切断線L1に近づくに従って短くなるように、設けられている。即ち、非切断線L1及び切断線L2で囲まれた部分が、非切断線L1を上辺とした台形状に形成されている。
【0020】
これにより、突出部12、13が押し下げられるときに上記突出部12が穴15の幅の狭い方に向かって押し込まれるため、上記突出部12の切断外周面及び穴15の切断内周面に法線荷重が生じる。これにより、金属板10、11同士の接合が促進され、金属接合部16の接合強度、向上を図ることができる。
【0021】
また、上述した金属接合体1によれば、切断線L2が、一つの非切断線L1を挟んで2つ設けられている。これにより、一つの非切断線L1を挟んで2つの金属接合部16を得ることができるため、より一層、電気的特性、信頼性の向上を図ることができる。
【0022】
次に、上述した2つの金属板10、11同士を接合させる金属接合装置2について、図8及び図9を参照して以下説明する。図8は、本発明の金属接合装置2の一実施の形態を示す斜視図である。図9は、図8に示す金属接合装置2のIII−III線部分断面図である。同図に示すように、金属接合装置2は、第1の型21と、第2の型22と、ガイド23と、から構成されている。
【0023】
第1の型21は、例えば直方体形状に設けられていて、その上面に2つのプレス穴24が設けられている。このプレス穴24は各々、金属板10、11の非切断線L1及び切断線L2に囲まれた部分と同じ台形状に設けられていて、非切断線L1に近づくに従って深さが浅くなるように設けられている。このプレス穴24の非切断線L1に相当する部分の深さは、0か、金属板10、11の非切断線L1が切断されない程度の深さに設けられている。
【0024】
第2の型22は、棒状に設けられている。第2の型22の上面からみた形状は、2つの台形の短辺同士を連結した、蝶ネクタイ状に形成されている。第2の型22の押圧方向Y1の先端には、2つのプレス突起25が設けられている。2つのプレス突起25はそれぞれ、2つのプレス穴24に嵌合する形状に設けられている。2つのプレス突起25はまた、非切断線L1に近づくに従って押圧方向Y1の突起高さが低くなるように設けられている。
【0025】
ガイド23は、例えば直方体形状に設けられて、押圧方向Y1に貫通するガイド穴26が設けられている。ガイド穴26は、第2の型22を嵌合できるように蝶ネクタイ形状に設けられていて、第2の型22を押圧方向Y1にガイドする。
【0026】
次に、上述した金属接合装置2を用いた金属接合方法について説明する。まず、図9(A)に示すように、最初に2つの金属板10、11を重ねて第1の型21の上におく。その後、第2の型22をガイド23のガイド穴26に沿って押圧方向Y1に移動させて、第1の型21と第2の型22との間に金属板10、11を挟む。
【0027】
さらに、第2の型22を押圧方向Y1に移動させると、プレス突起25の切断線L2に沿ったエッジ、プレス穴24の切断線L2に沿ったエッジによって金属板10、11が切断線L2に沿って切断される。同時に、金属板10、11の切断線L2及び非切断線L1に囲まれた部分が押圧方向Y1にプレスされて、金属板10の突出部12が金属板11の穴15まで押し込まれ、突出部12の切断外周面と穴15の切断内周面とが凝着し金属接合部16が得られる。
【0028】
上述した金属接合装置2によれば、一般的なプレス工程で金属板10、11同士の接合を行うことができるため、金属結合を得るための特殊な設備が不要であり、部品のコストアアップを避けることができる。
【0029】
なお、上述した実施形態によれば、突出部12、13及び穴14、15の非切断線方向Y2の幅が非切断線L1に近づくに従って短くなるように、切断線L2が設けられていたが、本発明はこれに限ったものではない。切断線L2としては、例えば、突出部12、13及び穴14、15の非切断線方向Y2の幅を一定に設けてもよい。
【0030】
また、上述した実施形態によれば、切断線L2が、一つの非切断線L1を挟んで2つ設けられていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、一つの非切断線L1に対して一つの切断線L2を設けるようにしてもよい。
【0031】
また、上述した実施形態によれば、金属板10、11を切断してプレスするだけだったが、例えば、金属板10、11の切断、プレスと同時に、又は、切断、プレス後に熱を加えて金属板10、11の相互拡散を狙っても良い。これにより、金属接合の範囲が拡大し強固な接合を達成することができる。
【0032】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の金属接合体の部分斜視図である。
【図2】図1に示す金属接合体の上面図である。
【図3】図2に示す金属接合体のP1矢視図である。
【図4】図2に示す金属接合体のP2矢視図である。
【図5】図2に示す金属接合体のI−I線断面図である。
【図6】図2に示す金属接合体のII−II線断面図である。
【図7】図6に示す金属接合部の写真である。
【図8】本発明の金属接合装置の一実施の形態を示す斜視図である。
【図9】図8に示す金属接合装置のIII−III線断面図である。
【符号の説明】
【0034】
2 金属接合装置
10 金属板
11 金属板
12 突出部
13 突出部
14 穴
15 穴
16 金属接合部
21 第1の型
22 第2の型
24 プレス穴
25 プレス突起
L1 非切断線
L2 切断線
Y1 押圧方向
Y2 非切断線方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの金属板同士が接合された金属接合体において、
前記2つの金属板を重ねた状態で非切断線の一端から前記非切断線から離れた側を通って前記非切断線の他端まで延在する切断線に沿って前記2つの金属板を切断して前記2つの金属板の前記切断線及び前記非切断線に囲まれた部分を押圧することにより押圧方向に突出して設けられた突出部と、
前記2つの金属板に前記突出部を設けることにより形成された穴と、
前記押圧方向とは逆側にある前記金属板の突出部の切断外周面、及び、前記押圧方向側にある前記金属板の前記穴の切断内周面、の間に設けられた金属接合部と、
を備えたことを特徴とする金属接合体。
【請求項2】
前記突出部及び前記穴の非切断線方向の幅が前記非切断線に近づくに従って短くなるように、前記切断線が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の金属接合体。
【請求項3】
前記切断線が、一つの前記非切断線を挟んで2つ設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属接合体。
【請求項4】
2つの金属板同士を重ねる工程と、前記2つの金属板を重ねた状態で非切断線の一端から前記非切断線から離れた側を通って前記非切断線の他端まで延在する切断線に沿って前記2つの金属板を切断して前記2つの金属板の前記切断線及び前記非切断線に囲まれた部分を押圧することにより押圧方向に突出する突出部を設ける工程と、を順次有する2つの金属板同士を接合させる金属接合方法であって、
前記2つの金属板の前記切断線及び前記非切断線に囲まれた部分が、前記押圧方向とは逆側にある前記金属板の突出部の切断外周面が前記押圧方向側にある前記金属板の前記突出部を設けることにより形成された穴の切断内周面に達するように、押圧される
ことを特徴とする金属接合方法。
【請求項5】
金属板同士を接合させる金属接合装置において、
前記金属板の非切断線の一端から前記非切断線から離れた側を通って前記非切断線の他端まで延在する切断線、及び、前記非切断線、に囲まれた部分と同形状に形成されていて前記非切断線に近づくに従って深さが浅くなるプレス穴が設けられた第1の型と、
前記プレス穴に嵌合する形状に設けられていて前記非切断線に近づくに従って突起高さが低くなるプレス突起が設けられた第2の型と、
を備えたことを特徴とする金属接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7】
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