説明

金属有機混合層アノードを有する表示素子

【課題】熱蒸着などの攻撃性の弱い蒸着法に修正可能なアノード構成および材料を提供するとともに、アノードの透過度または不透過度を調整してアノードおよび/またはOLEDが実質的に反射性に作られるように制御できるようなアノード構成も提供する。
【解決手段】表示素子はアノードと、カソードと、該アノードと該カソードとの間に配設されたルミネセンス領域とを含み、該アノードは電子受容材料に動作可能に組み合わされた金属有機混合層を含む。アノードは金属有機混合層と電子受容材料との混合物をアノードの単層中に含み得る。あるいは、該アノードは金属有機混合層と該金属有機混合層に隣接するバッファ層とを含む多層構成を有し得、該バッファ層は電子受容材料と任意には正孔輸送材料とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
同時係属出願第11/133,752号[A3623−US−NP]は電子受容材料と組み合わせた金属有機混合層を中間電極として含み得る積層OLEDを記載している。
【0002】
本発明は種々の実施形態では、アノード構成の一部として金属有機混合層を含む表示素子に関する。特に、本開示はアノードの一部でありかつ電子受容材料に動作可能に組み合わされた金属有機混合層を含む表示素子に関する。該アノード構成を特に有機発光素子(OLED)に関連して記載するが、該アノードは他の類似する用途および表示素子に修正可能であることを理解されたい。
【背景技術】
【0003】
有機発光素子(OLED)はディスプレイ用途に有望な技術の代表である。典型的な有機発光素子には、第1の電極、1つまたは複数のエレクトロルミネセンス有機材料を含むルミネセンス領域、および第2の電極を含み、ここで第1の電極および第2の電極の一方は正孔注入アノードとして働き、他方は電子注入カソードとして働き、第1の電極および第2の電極の一方は前部電極であり、他方は裏電極である。前部電極は透明(または少なくとも部分的に透明)であるが、裏電極は通常は光に対して反射率が非常に高い。電圧が第1の電極および第2の電極にわたって印加されると、光がルミネセンス領域から透明な前部電極を通して放出される。高い周囲光の下で観察すると、反射性の裏電極は相当な量の周囲光を観察者に反射し、その結果、その素子自身の発光と比較して反射される照明の割合が高くなるために表示された像の「ウォッシュアウト」が生じる。
【0004】
一般にエレクトロルミネセンス・ディスプレイのコントラストを改善するために、例えば米国特許第4287449号に記載されたような光吸収層、または例えば米国特許第5049780号に記載されたような光学干渉材料を用いて周囲照明の反射が低減されてきた。
【0005】
表示素子における周囲光の反射を抑えるための近年の他の開発は、例えば、現在は米国特許第6841932号である米国特許出願第10/117812号、および米国特許公報第2003/0234609号として発行されている米国特許出願第10/401238号に記載されているような金属−有機物混合層に向けられている。光の反射を低減するその他の方法は、米国特許第6750609号に取り上げられている。これらの特許および特許出願の全体を本願明細書に援用する。
【0006】
OLEDなどの表示素子におけるアノードは典型的にはITOなどの材料から形成される。しかし、ITOの使用には、OLEDの他の構成要素を作成または形成するために一般に用いられる熱蒸着法によって簡単に作成することができないという点で不利がある。ITOアノードは一般にはスパッタリングなどのより攻撃的な作成技術を必要とするために、隣接する層の比較的脆い有機積層体および構成要素を損傷させないようにOLEDの残りの部分とは別に作成される。この結果、OLED構造体を製造または形成するのに要する時間とコストの両方が増大することになる。したがって、OLEDの他の層を形成するのに使用される蒸着技術を用いてアノードを形成することを可能にするアノード用の材料または構成を提供する必要がある。
【0007】
また、駆動電子回路が規則的な底部発光OLEDの場合のような表示素子のカソード側ではなくアノード側に位置する上部発光素子にとっては、非反射性アノード(黒色アノード)が重要である。上記特許および特許出願に記載されたような金属有機混合層はカソードに適していることが実証されているが、材料の不適合性の問題が非反射性アノードまたは黒色アノードとしての金属有機混合層の使用に問題となっている。
【0008】
【特許文献1】米国特許第4287449号
【特許文献2】米国特許第5049780号
【特許文献3】米国特許第6841932号
【特許文献4】米国特許出願第10/117812号
【特許文献5】米国特許公報第2003/0234609号
【特許文献6】米国特許出願第10/401238号
【特許文献7】米国特許第6750609号
【特許文献8】米国特許第4539507号
【特許文献9】米国特許第5151629号
【特許文献10】米国特許第5150006号
【特許文献11】米国特許第5141671号
【特許文献12】米国特許第5846666号
【特許文献13】米国特許第6423429号
【特許文献14】米国特許第4885211号
【特許文献15】米国特許第4720432号
【特許文献16】米国特許第5703436号
【特許文献17】米国特許第5429884号
【特許文献18】米国特許第6765348号
【特許文献19】米国特許第5247190号
【非特許文献1】Bemiusらの「Developmental Progress of Electroluminescent Polymeric Materials and Devices」、SPIE Conference on Organic Light Emitting Materials and Devices IIIの会報、コロラド州デンバー、1999年7月、第3797号、129頁
【特許文献20】米国特許第5516577号
【特許文献21】米国特許第646511号
【特許文献22】米国特許出願整理番号第09/208172号
【特許文献23】欧州特許出願第1009044A2号
【特許文献24】米国特許第5972247号
【特許文献25】米国特許第6479172号
【特許文献26】米国特許出願整理番号第09/771311号
【特許文献27】米国特許第5935721号
【特許文献28】米国特許第5925472号
【特許文献29】米国特許第6057048号
【特許文献30】米国特許第6821643号
【特許文献31】米国特許第5227252号
【特許文献32】米国特許第5276381号
【特許文献33】米国特許第5593788号
【特許文献34】米国特許第3172862号
【特許文献35】米国特許第4356429号
【特許文献36】米国特許第5516577号
【特許文献37】米国特許第5601903号
【特許文献38】米国特許第5935720号
【非特許文献2】Kidoらの「White light emitting organic electroluminescent device using lanthanide complexes」、Jpn.J.Appl.Phys.,第35巻、L394〜L396頁(1996年)
【非特許文献3】Baldoらの「Highly efficient organic phosphorescent emission from organic electroluminescent devices」、Nature誌、第395巻、151〜154頁(1998年)
【特許文献39】米国特許第5728801号
【特許文献40】米国特許第5942340号
【特許文献41】米国特許第5952115号
【特許文献42】米国特許第4539507号
【特許文献43】米国特許第4720432号
【特許文献44】米国特許第4769292号
【特許文献45】米国特許第6130001号
【特許文献46】米国特許第6392339号
【特許文献47】米国特許第6392250号
【特許文献48】米国特許第6614175号
【特許文献49】米国特許出願第2003/0234609号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、新しいアノード材料および/または構成を提供する必要がある。例えば熱蒸着などの攻撃性の弱い蒸着法に修正可能なアノード構成および材料の必要性がある。アノードの透過度または不透過度を調整してアノードおよび/またはOLEDが実質的に反射性、実質的に光吸収性(例えば黒色)、または実質的に伝達性(例えば透明または半透明)に望むように作られるように制御できるようにするアノード構成の必要性もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、そのいくつかの実施形態では、アノードと、カソードと、該アノードと該カソードとの間に配設されたルミネセンス領域を含む表示素子に関し、該アノードは電子受容材料に動作可能に組み合わされた金属有機混合層を含む。
【0011】
本開示はまた、その種々の実施形態では、アノードと、カソードと、該アノードと該カソードとの間に配設されたルミネセンス領域とを含む表示素子に関し、該アノードは金属有機混合層と電子受容材料との混合物を含み、該金属有機混合層はi)金属材料とii)有機材料とを含んでいる。
【0012】
さらに、本開示は、そのいくつかの実施形態では、アノードと、カソードと、該アノードと該カソードとの間に配設されたルミネセンス領域とを含む表示素子に関し、該アノードは金属有機混合層とバッファ層とを含み、該金属有機混合層はi)金属材料とii)有機材料とを含み、該バッファ層は電子受容材料を含む。
【0013】
本開示はまた、そのさらに他の実施形態では、アノードと、カソードと、該アノードと該カソードとの間に配設されたルミネセンス領域とを含む表示素子に関し、該アノードは金属有機混合層とバッファ層とを含み、該バッファ層は電子受容材料と任意には正孔輸送材料とを含む。
【0014】
これらおよび他の非限定的なフィーチャおよび特徴を本願明細書でさらに開示する。
本開示は、例えばOLEDなどの表示素子に関する。本開示の表示素子はアノード、カソード、および該アノードと該カソードとの間に配設されたルミネセンス領域を含む。本開示のアノードは電子受容材料に動作可能に組み合わされた金属有機混合層(MOML)を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1を参照すると、OLED10はアノード12と、カソード16と、アノード12とカソード16との間に配設されたルミネセンス領域14とを含んでいる。アノード12はMOMLと電子受容材料との混合物を含む。
【0016】
図2を参照すると、OLED20はアノード22と、ルミネセンス領域26と、カソード28とを含んでいる。アノード22はMOML24とバッファ層または領域25を含む。バッファ層または領域25は電子受容材料を含み、MOML24はバッファ層25の電子受容材料と動作可能に組み合わされていると考えられる。
【0017】
本開示の範囲を理解する上で混乱を避けるために、以下のガイドラインを用いてよい:(1)「層」という用語は隣接する層の組成とは異なる組成を一般に有する単一のコーティングを示す。(2)「領域」という用語は単層、2層、3層以上の層などの複数の層、および/または1層以上の「ゾーン」を指す。(3)例えば電荷輸送ゾーン(すなわち、正孔輸送ゾーンおよび電子輸送ゾーン)または発光ゾーンの文脈で用いられる「ゾーン」という用語は単層、複数の層、ある層の単一の機能的領域、またはある層の複数の機能的領域を指す。(4)一般に、2つの電極の間にあるか、または表示素子を動作させるのに必要な電荷伝導プロセスに関与する表示素子のすべての領域または層は、カソード、ルミネセンス領域、またはアノードのいずれかであると考えられる。(5)一般に、表示素子の電荷伝導プロセスに関与せず、かつ2つの電極の外部にあるとみなすことのできる層(例えば基体)は、電極の一部であると考えてはならない。しかし、そのような層(例えば、基体)はそれでも表示素子の一部とみなすこともできる。(6)しかし、(周囲環境から電極を保護する)キャップ領域はキャップ領域が表示素子の電荷伝導プロセスに関与しているか否かに関わらず電極の一部であると考えられる。(7)ルミネセンス領域に電荷を注入するどのような領域または層(例えば、電子注入領域および正孔注入領域)は電極の一部であると考えられることである。(8)MOMLが電極の一部であると同等にみなすことができる場合、慣例はMOMLが電極の一部であることである。複数の隣接する(すなわち接触する)MOMLを含む実施形態では、MOMLの一部または全部を電極またはルミネセンス領域の一部であるとみなすことができる場合、慣例はMOMLが電極の一部であると考えられることである。(10)(MOMLを構成する2種、3種、4種以上の材料成分中で少量で存在し得る)不純物は一般にはMOMLの指定成分であるとは考えられない。例えば、無機金属含有材料および有機化合物の2種の指定成分から成る「二元MOML」中に不純物が存在していることは、「二元MOML」であるというMOMLの呼称を変えるものではない。(11)「発光領域」及び「ルミネセンス領域」は同義的に用いられる。
【0018】
アノードは電子受容材料に動作可能に組み合わされたMOMLを含む。MOMLは電子受容材料に動作可能に組み合わされており、ここで(i)MOMLは単一の層または組成において電子受容材料と混合されているか、または(ii)MOMLおよび電子受容材料は物理的には混合されていないが、別個の隣接する層に存在する。
【0019】
MOMLは金属材料と有機材料とを含む。本願明細書で用いられる金属材料には、例えば無機化合物(例えば、酸化金属、金属ハロゲン化物等)などの元素金属および金属化合物が挙げられるがこれに限定されるものではない。MOMLの態様を以下に記載するが、MOMLは米国特許公報2003/0234609号として発行されている米国特許第6841932号および米国特許出願第10/401238号にさらに記載されており、その開示を全体として本願明細書に援用する。本開示の表示素子中のアノードはそれら参照物の実施形態の任意のものから選択したMOMLを含んでよいことを理解されたい。
【0020】
MOMLに適した金属材料には、例えば、金属および無機金属化合物が挙げられる。本願明細書で用いられるように、「金属材料の金属」(このような用語は特定の元素金属のリストの前に置かれる)という言葉は元素金属および無機金属化合物の金属成分の両方を指す。金属には、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Sn、Pb、Sb、Bi、Se、Te、Ce、Nd、Sm、Eu、およびこれらを組み合わせたものが挙げられるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、「金属」という用語はSb、Se、およびTeを含む。いくつかの実施形態では、金属合金を用いてMOMLを形成することができる。金属合金の1種の金属は金属材料と考えられる。金属合金の他の金属または複数の金属はMOMLの付加的な成分または複数の成分と考えられる。例えば、有機材料と組み合わせた二元金属合金は三元MOMLと考えられるであろう。
【0021】
MOML用の無機金属化合物は、金属ハロゲン化物(例えば、弗化物、塩化物、臭化物、沃化物)、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属炭化物、金属臭化物等であってよい。適した金属ハロゲン化物は、例えば、LiF、LiCl、LiBr、LiI、NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、RbF、RbCl、CsF、CsCl、MgF2、CaF2、SrF2、AlF3、AgCl、AgFおよびCuCl2であり得るが、これに限定されるものではない。適した金属酸化物は、LiO2、Ca2O、Cs2O、In23、SnO2、ZnO、ITO、Cu2O、CuO、Ag2O、NiO、TiO、Y23、ZrO2、Cr23であり得るが、これに限定されるものではない。適した金属水酸化物は、例えばAgOHであり得るが、これに限定されるものではない。適した金属窒化物の例は、LaN、YNおよびGaNであり得るが、これに限定されるものではない。適した金属硫化物は、ZnS、Sb23、Sb25およびCdSであり得るが、これに限定されるものではない。適した金属炭化物は、Li2C、FeCおよびNiCであり得るが、これに限定されるものではない。適した金属臭化物は、CaB6であり得るが、これに限定されるものではない。
【0022】
MOML用の無機材料には、例えば、(i)C、Si、およびGeなどの非金属元素材料、(ii)SiC、SiO、SiO2、Si34などのこれらの非金属元素材料の無機化合物、および(iii)本願明細書で記載されたものなどの無機金属化合物が挙げられる。
【0023】
(MOML用の成分のリストには)金属のための別個の成分範疇があるので、金属は無機材料として分類されていない。
【0024】
本願明細書に記載されたように、いくつかの金属化合物は、導電性で光吸収性であることが知られている。したがって、実施形態における有機化合物とこれらの金属化合物の混合物は、例えば素子の反射率を低減させるなどの本開示の表示素子のある所望の機能を実現することが可能である場合がある。いくつかの実施形態では、MOML中で使用するための無機金属含有材料は、金属化合物、特にAgO、CuO、CuO、FeO、Fe、Fe、NiO、V、ZnS、ZnO、In、SnO、等の導電性と光吸収性の両方を有する金属化合物であってよい。
【0025】
MOML用の適した有機材料は、例えば、表示素子のルミネセンス領域を組み立てる際に用いられるエレクトロルミネセンス材料であることが可能であり、こうしたエレクトロルミネセンス材料は本願明細書に記載されている。例えば、MOML用に適した有機材料には、金属オキシノイド、金属キレート、第三級芳香族アミン、インドロカルバゾール、ポルフィリン、フタロシアニン、トリアジン、アントラセンおよびオキサジアゾールなどの分子(小分子)有機化合物、並びにポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリアニレンおよびポリフェニレンビニレンなどの高分子化合物を挙げることが可能である。MOML中で使用してもよい他の有機化合物には、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリスチレン、有機染料および顔料(例えば、ペリノン、クマリンおよび他の縮合芳香族環化合物)が挙げられる。
【0026】
MOMLに使用することのできるあるクラスの有機材料には、その全体を各々本願明細書に援用した米国特許第4539507号、第5151629号、第5150006号、第5141671号、および5846666号に開示されたような金属オキシノイド化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。例示的な例には、トリス(8−ヒドロキシキノリネート)アルミニウム(AlQ3)およびビス(8−ヒドロキシキノリネート)−(4−フェニルフェノラート)アルミニウム(BAlq)が挙げられる。このクラスの材料の他の例には、トリス(8−ヒドロキシキノリネート)ガリウム、ビス(8−ヒドロキシキノリネート)マグネシウム、ビス(8−ヒドロキシキノリネート)亜鉛、トリス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリネート)アルミニウム、トリス(7−プロピル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス[ベンゾ{f}−8−キノリネート]亜鉛、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリネート)ベリリウム等、およびビス(8−キノリンチオラート)亜鉛、ビス(8−キノリンチオラート)カドミウム、トリス(8−キノリンチオラート)ガリウム、トリス(8−キノリンチオラート)インジウム、ビス(5−メチルキノリンチオラート)亜鉛、トリス(5−メチルキノリンチオラート)ガリウム、トリス(5−メチルキノリンチオラート)インジウム、ビス(5−メチルキノリンチオラート)カドミウム、ビス(3−メチルキノリンチオラート)カドミウム、ビス(5−メチルキノリンチオラート)亜鉛、ビス[ベンゾ{f}−8−キノリンチオラート]亜鉛、ビス[3−メチルベンゾ{f}−8−キノリンチオラート]亜鉛、ビス[3,7−ジメチルベンゾ{f}−8−キノリンチオラート]亜鉛、等の金属チオキシノイド化合物などの(その全体を本願明細書に援用した)米国特許第5846666号に開示された金属チオキシノイド化合物が挙げられる。例示的な材料には、ビス(8−キノリンチオラート)亜鉛、ビス(8−キノリンチオラート)カドミウム、トリス(8−キノリンチオラート)ガリウム、トリス(8−キノリンチオラート)インジウム、およびビス[ベンゾ{f}−8−キノリンチオラート]亜鉛がある。
【0027】
本明細書で論じたように、MOMLは、「二元MOML」(2成分入り)、「三元MOML(3成分入り)、「四元MOML」(4成分入り)または5種以上の成分入りの他のMOMLであり得る。これらの実施形態では、無機金属含有材料、有機化合物および他のあらゆる付加的な成分の選択は、MOMLが所望の特性または複数の特性を有するようになされる。光反射低減性に加えて、MOMLは、例えば、導電性を含む1つ以上の所望の付加的特性および表示素子中でMOMLの位置によって必要とされ得るような他の機能(MOMLがルミネセンス領域に隣接する電極の一部である場合に電荷を効率的に注入もできる必要性など)を果たすためにMOMLが有する必要があり得る他のあらゆる特性を任意に有することが可能である。表示素子が複数のMOMLを含む場合、MOMLは(成分およびその濃度に関して)同じかまたは異なる材料組成のMOMLであってよい。
【0028】
特定のMOMLタイプ中の成分に適する材料のリストが重なる場合があることに留意されたい。例えば、「三元MOML」において、第2の成分(すなわち、有機材料)のために適する材料は第3の成分のための「有機材料」の選択と同じである。さらに、「三元MOML」において、第1の成分(すなわち、金属材料)のために適する材料は第3の成分のための「金属」および「無機材料」の選択と重なる。しかし、MOMLタイプの選択された成分が互いに異なっている、すなわち、選択された各成分が特有である限り、特定のMOMLタイプ中の成分のために適する材料のリストがたとえ重なるとしても矛盾は存在しない。
【0029】
一実施形態では、MOMLは二元MOMLであってよいであってよい。「二元MOML」という言葉は、(i)金属材料および(ii)有機材料という二成分から成る金属有機 混合層を意味する。このような二元MOMLの例示的実施形態は、Agまたはその無機化合物(例えば、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硫化物、窒化物、炭化物および臭化物など)および有機化合物から成るMOML、第11族金属(Cu、AgまたはAuなど)またはその無機化合物(例えば、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硫化物、窒化物、炭化物および臭化物など)および有機化合物から成るMOML、第10族金属(Ni、PdまたはPtなど)またはその無機化合物(例えば、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硫化物、窒化物、炭化物および臭化物など)および有機化合物から成るMOML、第13族金属(Inなど)またはその無機化合物(例えば、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硫化物、窒化物、炭化物および臭化物など)および有機化合物から成るMOML、第4族金属(Tiなど)またはその無機化合物(例えば、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硫化物、窒化物、炭化物および臭化物など)および有機化合物から成るMOML、金属またはその無機化合物(例えば、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硫化物、窒化物、炭化物および臭化物など)およびスペクトルの400〜700nm波長範囲で著しい光学的吸収を有する有機化合物(例えば、有機染料化合物)から成るMOML、第16族金属(SeおよびTeなど)またはその無機化合物(例えば、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硫化物、窒化物、炭化物および臭化物など)および有機化合物から成るMOML、等を含むことが可能であるが、これに限定されるものではない。
【0030】
他の実施形態では、MOMLは三元MOMLであってよい。「三元MOML」という言葉は、(i)金属材料、(ii)有機化合物および(iii)金属、有機材料または無機材料である付加的な第3の成分(他の二成分とは異なる)という三成分から成る金属有機混合層を意味する。三元MOMLの例示的実施形態には、例えば上の実施形態などの二元MOMLおよびLi、Na、K、RbまたはCsなどの第1族金属(時にアルカリ金属とも呼ばれる)または第1族金属ハロゲン化物(例えば、弗化物、塩化物、臭化物、沃化物)、酸化物、水酸化物、窒化物または硫化物などのその化合物をさらに含むMOML、上の二元MOML実施形態およびBe、Mg、Ca、SrまたはBaなどの第2族金属(時にアルカリ土類金属とも呼ばれる)または第2族金属ハロゲン化物(例えば、弗化物、塩化物、臭化物、沃化物)、酸化物、水酸化物、窒化物または硫化物などの、その化合物をさらに含むMOML、少なくとも金属材料、有機化合物およびAgまたはAg化合物(例えば、酸化銀、水酸化銀、ハロゲン化銀、硫化銀、窒化銀、炭化銀および臭化銀など)から成るMOML、(i)金属材料、(ii)有機化合物および(iii)Zn、InまたはSnあるいはそれらの化合物(例えば、ZnO、ZnS、In23、SnO2)から成るMOML、少なくとも有機化合物および例えばINCONEL(商標)などの複数の金属から成る合金から成るMOML、少なくともAlまたはその無機化合物(例えば、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硫化物、窒化物、炭化物および臭化物など)、有機化合物およびもう1種の金属(例えば、Ag、第1族金属または第2族金属)またはその化合物である第3のあらゆる成分から成るMOML、(i)ポルフィリン、第三級芳香族アミン、インドロカルバゾール、ポリチオフェン、PEDOT(商標)(特定のポリチオフェンである)、(ii)Agまたはその化合物および(iii)Au、Cr、Cu、Pt、In、Ni、SnまたはIn23、SnO2などのそれらの化合物から成るMOMLが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0031】
さらに他の実施形態では、MOMLは四元MOMLであってよい。「四元MOML」という言葉は、(i)金属材料、(ii)有機材料、(iii)付加的な第3の成分および(iv)付加的な第4の成分という四成分から成る金属有機混合層を意味する。追加の第3および第4の成分(互いに異なり、第1および第2の成分とは異なる)は、金属、有機材料または無機材料であることが可能である。四元MOMLの例示的実施形態には、有機化合物、Ag、Mgおよび第1族金属(例えば、Li)またはその化合物(例えば、LiF)から成るMOML、有機化合物、Ag、Caおよび第1族金属(例えば、Li)またはその化合物(例えば、LiF)から成るMOML、有機化合物、Ag、Caおよび別の第2族金属(例えば、Mg)またはその化合物(例えば、MgFまたはMgO)から成るMOML、有機化合物、Ag、Alおよび第1族金属(例えば、Li)またはその化合物(例えば、LiF)または第2族金属(例えば、CaまたはMg)またはその化合物から成るMOML、等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0032】
いくつかの実施形態では、MOMLは、全MOML厚さを横切って一般に均一組成を有する。一般に均一組成を達成するために、MOMLは、「制御された混合比法」(例えば、スピン・コーティングおよび共蒸着)を用いることにより調製することが可能である。したがって、いくつかの実施形態において、MOMLは、例えば別個の蒸発源から同時に蒸発される異なる成分の各々の蒸発速度を制御することにより異なる成分の混合比を特定のレベルに制御するという意味で制御された組成の混合物である。いくつかの実施形態では、MOML中の異なる成分の比は、一般に同じままであり、経時的に変化しない(すなわち、MOML中の成分の比は、組み立て直後に測定されたものと、数日後およびそれ以上後で測定されたものとで等しい)。
【0033】
他の実施形態において、MOMLは、全MOML厚さを横切って不均一組成を有する場合がある。共蒸着を用いてMOMLの不均一組成をもたらすことができる(例えば、MOMLの形成中にMOML材料の共蒸着速度を変えることにより)。層内拡散または層間拡散に起因して、MOMLの特定の実施形態において一般的均一組成(「制御された混合比法」によって調整された時)から不均一組成への長期間にわたる変化が起きうる。さらに、材料の層間拡散はMOMLを調製するために用いることが可能である。拡散は以下の理由でMOMLを組み立てるためにはあまり好ましくないアプローチである。(a)拡散は大幅な時間を必要としうる(数日、数週間、数ヶ月もしくはそれ以上)、(b)混合比は経時的に変化する、および(c)MOML材料の所望の比について、わずかな制御しかできない。
【0034】
いくつかの実施形態では、同じ成分ではあるが異なる濃度から成る隣接するMOMLは、成分の1つの濃度がMOML製造中または直後に測定したMOMLの厚さに平行に僅か5nmの距離にわたって少なくとも5%だけ変化する場合、不均一な組成を有する単一のMOMLというよりは明確に区別できるMOMLであると考えられる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態において、MOMLは、一般に導電性である。導電性MOMLは、例えば約100,000Ω以下、特に約5,000Ω以下の断面(すなわち、MOML厚さを横切る)オーム抵抗を有することが可能である。しかし、他の実施形態では、MOMLは非導電性と考えてよい。例えば、本願明細書で記載した例示的範囲より高いオーム抵抗値を有する。
【0036】
この点で、このMOMLは部分的または完全に光吸収性であり得るか、部分的又は完全に光透過性であり得るか、あるいは部分的または完全に光反射性であり得る。部分的または完全に光吸収性のMOMLは、例えば、その光学密度は可視光範囲(すなわち、400〜700nmの電磁放射線)の少なくとも一部にわたって、少なくとも0.1の光学密度を有し得、典型的には、その光学密度は少なくとも0.5であり、より一般的には、少なくとも1.0である。一般に、部分的または完全に透過性(透明)なMOMLは、例えば、可視光範囲(すなわち、400〜700nmの電磁放射線)の少なくとも一部にわたって、少なくとも50%の透過率および典型的には少なくとも75%の透過率を有し得る。部分的または完全に光反射性のMOMLは、例えば、可視光範囲(すなわち、400〜700nmの電磁放射線)の少なくとも一部にわたって、少なくとも50%の反射率、および典型的には、少なくとも75%の反射率を有し得る。
【0037】
MOMLは一般にMOMLの約5〜約95容量%の量の金属材料を含み、MOMLの約5〜約95容量%の量の有機化合物を含む。他の実施形態では、MOMLは約20〜約80容量%の量の金属材料を含み、MOMLの約20〜約80容量%の量の有機化合物を含む。
【0038】
本開示のアノード構成に用いられる電子受容材料は一般に、表示素子のルミネセンス領域に用いられる有機化合物を酸化させることのできる酸化剤である。適した電子受容材料の一例はルイス酸化合物である。電子受容材料として適したルイス酸化合物の例には、例えばFeCl、AlCl、InCl、GlCl、SbCl、等などのKidoらに付与された米国特許第6423429号に開示されたものが挙げられる。他の適した電子受容材料には例えば2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F−TCNQ)などの有機化合物が挙げられる。
【0039】
先に記載したように、アノードは電子受容材料に動作可能に接続されたMOMLを含む。MOMLはMOML混合物の一部として電子受容材料を含むことによって、または別個の隣接する層にMOMLおよび電子受容材料を提供することによって、電子受容材料に動作可能に組み合わされ得る。
【0040】
アノードがMOMLと電子受容材料との混合物を含むいくつかの実施形態では、MOMLはアノード層の約5〜約95容量%の量で存在し、電子受容材料はアノードの約5〜約95容量%の量で存在する。
【0041】
一実施形態では、本開示の表示素子のアノードのバッファ層は、電子受容材料または複数の電子受容材料の組み合わせから成る。他の実施形態では、バッファ層には正孔輸送材料などの、電子受容材料と有機材料との混合物を含んでよい。電子受容材料を有するバッファ層に使用するのに適した正孔輸送材料の例には本願明細書に記載の正孔輸送材料が挙げられる。アノードバッファ層に使用するのに適した正孔輸送材料のいくつかの具体的な例には、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(mTDATA)、2,5ジ−tert−ブチルフェニル−N,N’−ジフェニル− N,N’ビス(3−メチルフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4、4’−ジアミン(BP−TPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3)メチルフェニル−(1、1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、銅フタロシアニン(CuPc)、バナジル−フタロシアニン(VOPc)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリアニリン(PAni)、等、およびこれらを組み合わせたものが挙げられるが、これに限定されるものではない。バッファ層が電子受容材料と正孔輸送材料との混合物を含む場合、電子受容材料は約1〜約99容量%の量で存在し、正孔輸送材料は約99〜約1容量%の量で存在し、典型的には、電子受容材料は約5〜約50容量%の量で存在し、正孔輸送材料は約95〜約50容量%の量で存在する。
【0042】
アノードバッファ層または領域(例えば、図2のバッファ層25)は2層、3層以上の層を含む単層または多層であり得る。多層構成では、少なくともMOMLに隣接するバッファ層は電子受容材料を含む。このバッファ層の組成は特定の目的または用途に応じて選択することができる。例えば、MOMLと第1のバッファ層および第2のバッファ層を有するバッファ層とを含むアノードでは、第1および第2のバッファ層の各々は電子受容材料から構成され得る。別の実施形態では、第1のバッファ層は電子受容材料から構成され、第2のバッファ層は電子受容材料および正孔輸送材料を含み得る。さらに他の実施形態では、第1のバッファ層は電子受容材料および正孔輸送材料を含み得る。さらに別の実施形態では、第1および第2のバッファ層の各々は電子受容材料および正孔輸送材料を含む。他の実施形態および構成が可能であり、それは本開示のアノードの範囲にある。
【0043】
アノードの厚さは約100〜約5000Åであり得る。いくつかの実施形態では、アノードは約150〜約2,000Åの厚さを有する。アノードがMOMLおよび別個のバッファ層を含むか、または電子受容材料を含むいくつかの実施形態では、バッファ層は約10〜約500Åの総厚を有し得る。多層バッファ層構成の個々の層は約1〜約9nmの厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、バッファ層は約50〜約300Åの総厚を有する。
【0044】
アノードおよび/または表示素子の特性を必要に応じて調整または調節して、特定の目的または用途のために所望の特性を有する表示素子を形成することができる。例えば、表示素子の電気特性は、MOMLの組成の1つ、またはMOML中の金属材料および有機材料の濃度および/または電子受容材料の濃度を変えることによって、選択することができるか、または変えることができる。さらに、アノードおよび/または表示素子の光吸収性、透過性、または反射性の能力は、MOMLの厚さおよびMOMLの金属濃度の一方または両方を変えることによって調節することができる。一般に、厚さおよび/または金属濃度が大きくなると、MOMLの透過性は弱くなり、吸収性または反射性は大きくなる。一実施形態では、アノードおよび表示素子は実質的には透明である。別の実施形態では、本開示の表示素子は、MOMLを含まない表示素子に比して少なくとも約30%光反射を低減させる。別の実施形態では、本開示の素子はMOMLを含まない表示素子に比して少なくとも約50%光反射を低減させる。他の実施形態では、本開示の表示素子は75%未満のSun/Eye−weighted Integrated Reflectivity(SEIR)を有する。さらに他の実施形態では、表示素子は約50%未満のSEIRを有する。さらに別の実施形態では、表示素子は約20%未満のSEIRを呈する。
【0045】
本表示素子の実施形態は、分子(小分子)系OLED、ポリマー系OLEDまたは発光領域に分子材料と高分子材料の両方を含む混成OLEDを含むあらゆる種類のOLED中の1層以上のMOMLの使用を包含する。MOMLは、発光領域中の有機材料と無機材料の両方からなる混成OLEDに適用することも可能である。さらに、本開示内に包含される表示素子のタイプには、OLED、無機エレクトロルミネセンス素子または燐光素子、液晶ディスプレイおよびプラズマ・ディスプレイなどが挙げられる。
【0046】
アノードおよび/またはMOMLおよびバッファ層の残りを形成するために、適するあらゆる技術および装置を用いることが可能である。例えば、熱蒸着(すなわち、物理蒸着法−「PVD」)、スピン被覆、スパッタリング、電子ビーム、電気アークおよび化学蒸着法(「CVD」)などを用いてよい。最初の二つの技術、特にPVDは、より望ましいアプローチである。PVDの場合、MOMLは、材料の各々の蒸着速度を独立して制御して所望の混合比を達成しつつ、MOMLの成分を例えば共蒸発させることによって形成することが可能である。本発明者らの検討によると、異なる成分の混合比の特定の範囲がMOMLの所望特性をもたらす際により効果的であることが示されている。これらの好ましい混合比は、特定の材料の組み合わせについて試行錯誤で決定してよい。一般的に言うと、MOMLは、約5体積%〜約95体積%のMOMLおよび約95体積%〜約5体積%の無機金属含有材料を含むことが可能である。より好ましい範囲は、選択された特定の材料に応じて異なる。「制御された混合比法」という言葉はスピン被覆および共蒸着を意味する。共蒸着は、熱蒸着(すなわち、物理蒸着法−「PVD」)、スパッタリング、電子ビーム、電気アークおよび化学蒸着法(「CVD」)などを意味する。
【0047】
さらに、(例えば、図2のような)MOMLおよび電子受容材料がアノードの別個の隣接する層に存在する実施形態では、紙蒸着を含むこれらの手法も電子受容材料および正孔輸送材料を含むバッファ層を形成するのに適している。
【0048】
混合物または別個の隣接する層で組み合わされているかどうかに関わらず、MOMLと電子受容材料を組み合わせたものは、アノードとしてMOMLを用いることに関連する問題のいくつかを克服する。アノードとしてMOMLを用いることができることによって、ITOなどの従来のアノード材料に関しては利用不可能な蒸着法の使用も可能にする。アノードにMOMLを使用することは、表示素子の反射率を低減させ、黒色アノードを黒色電極として製造することも可能にする。
【0049】
図面には示していないが、図1〜2のOLEDなどの表示素子は電極の1つに隣接する基体、すなわちアノードまたはカソードの隣接する一方を含み得ることも理解されよう。実質的に透明な基体は、例えば、ポリマー成分、ガラス、石英、等などの種々の適した材料を含むことが可能である。適したポリマー成分には、MYLAR(登録商標)などのポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスルホン類が挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば材料が他層を効果的に支持し、素子の機能上の性能に干渉しない物質であれば、他の基体材料も選択してよい。
【0050】
不透明な基体の材料には、例えば、MYLAR(登録商標)などのポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスルホン等のポリマー成分を含む種々の適した材料を含むことができる。これらの物質は、カーボン・ブラックなどの着色剤もしくは染料を含有する。また、アモルファス・シリコン、多結晶シリコン、単結晶ケイ素等のケイ素から基体を構成してもよい。基体材料として使用できる物質の別のクラスとして、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属水酸化物、金属硫化物等の金属化合物のようなセラミック類が挙げられる。
【0051】
いくつかの実施形態では、基体は、例えば、約10〜約5,000μmの厚さを有し得る。他の実施形態では、基体は約25〜約1,000μmの厚さを有し得る。
【0052】
カソードは、例えば仕事関数が約4eV〜約6eVの金属などの高仕事関数の成分、あるいは例えば仕事関数が約2eV〜4eVの金属などの低仕事関数の成分を含む金属などの適した電子注入材料を含み得る。このカソードは(約4eV未満の)低仕事関数の金属と少なくとも1つの他の金属とを組み合わせたものを含み得る。低仕事関数の金属と第2または他の金属との効果的な比率は約0.1重量%〜約99.9重量%未満である。低仕事関数の金属の実例にはリチウムまたはナトリウムなどのアルカリ金属、ベリリウム、マグネシウム、カルシウムまたはバリウムなどの2A族すなわちアルカリ土類金属、および希土類金属を含むIII族金属およびスカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、ユーロピウム、テルビウム、またはアクチニウムなどのアクチニド族金属があるが、これに限定されるものではない。リチウム、マグネシウム、およびカルシウムは好適な低仕事関数の金属である。カソードを形成するのに適した材料には、その全体を本願明細書に援用した米国特許第4885211号、第4720432号、および第5703436号に記載されたMg−Ag合金カソードがあるが、これに限定されるものではない。他の適したカソードは、その全体を本願明細書に援用した米国特許第6841932号およびその開示の全体を本願明細書に援用した米国特許第5429884号に開示されたような金属−有機物混合層(MOML)を含む。カソードはアルミニウムおよびインジウムなどの他の高仕事関数の金属のリチウム合金から形成することができる。
【0053】
実質的に透明なカソードは、例えば約10Å〜約200Å、いくつかの実施形態では約30Å〜約100Åの厚さを有する、Mg、Ag、Al、Ca、In、Li、および例えば約80〜95容量%のMgおよび約20〜約5容量%のAgから成るMg:Ag合金、例えば約90〜99容量%のAlおよび約10〜約1容量%のLiから成るLi:Al合金、等などのそれらの合金のような仕事関数が約2eV〜約4eVの金属から成る非常に薄い実質的に透明な金属層を含み得る。当然、この範囲外の厚さを用いることもできる。
【0054】
カソードがMOMLであるいくつかの実施形態では、カソードは1つまたは複数の付加層を含んでよい。カソードの1つまたは複数の付加層は少なくとも1つの金属および/または少なくとも1つの無機材料を含み得る。付加層に使用することのできる例示的な適した金属には、Mg、Ag、Al、In、Ca、Sr、Au、Li、Cr、およびこれらの混合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。付加層に使用することのできる例示的な適した無機材料にはSiO、SiO、LiF、MgF、およびこれらの混合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0055】
1つまたは複数の付加層は互いに同じ機能かまたは異なる機能を有し得る。例えば、カソードの1つまたは複数の付加層は金属を含むかまたは金属から本質的に構成されて、シート抵抗の低い(例えば、<10Ω/平方)導電層を形成する。また、カソードの1つまたは複数の付加層はMOML、ルミネセンス領域、およびアノードへ周囲の湿気が透過するのを防ぐかまたは少なくとも低減させるパッシベーション層(例えば、防湿バリアなど)を形成することによって、金属−有機物混合層を周囲から保護することができる。また、カソードの1つまたは複数の付加層は防熱層として働いて、素子が高温で短絡するのを防ぐことができる。例えば、そのような保護は、その全体を本願明細書に援用した米国特許第6765348号にさらに詳細に考察されているように、約60℃〜約110℃の温度で提供することができる。
【0056】
カソードの厚さは、例えば、約10ナノメートル(nm)〜約1,000nmの範囲であり得る。この範囲外の厚さを用いることもできる。
【0057】
カソードは単層であってよいか、または2層、3層以上の層を含んでよい。例えば、電極は電荷注入層(すなわち、電子注入層または正孔注入層)およびキャップ層から構成され得る。しかし、いくつかの実施形態では、電荷注入層は、電極と異なっていると考えられ得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、本開示の表示素子のルミネセンス領域は、少なくとも1つのエレクトロルミネセンス有機材料を含む。このエレクトロルミネセンス材料は重要ではなく、表示素子においてエレクトロルミネセンス材料として使用するのに適した任意の材料であってよい。適した有機エレクトロルミネセンス材料には、例えば、ポリ(p−フェニレンビニレン)PPV、ポリ(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)1,4−フェニレンビニレン)(MEHPPV)およびポリ(2,5−ジアルコキシフェニレンビニレン)(PDMeOPV)、およびその全体を本願明細書に援用した米国特許第5247190号に開示された他の適した材料などのポリフェニレンビニレン、ポリ(p−フェニレン)(PPP)、ラダー−ポリ−パラ−フェニレン(LPPP)、およびポリ(テトラヒドロピレン)(PTHP)などのポリフェニレン、およびポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジイル)、ポリ(2,8−(6,7,12,12−テトラアルキルインデノフルオレン)およびフルオレン−アミンコポリマーなどのフルオレンを含むコポリマーなどのポリフルオレンが挙げられる(Bemiusらの「Developmental Progress of Electroluminescent Polymeric Materials and Devices」、SPIE Conference on Organic Light Emitting Materials and Devices IIIの会報、コロラド州デンバー、1999年7月、第3797巻、129頁を参照すること)。
【0059】
ルミネセンス領域に使用することのできる別のクラスの有機エレクトロルミネセンス材料には、その全体を各々本願明細書に援用した米国特許第4539507号、第5151629号、第5150006号、第5141671号、および5846666号に開示されたような金属オキシノイド化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。例示的な例には、トリス(8−ヒドロキシキノリネート)アルミニウム(AlQ3)およびビス(8−ヒドロキシキノリネート)−(4−フェニルフェノラート)アルミニウム(BAlq)が挙げられる。このクラスの材料の他の例には、トリス(8−ヒドロキシキノリネート)ガリウム、ビス(8−ヒドロキシキノリネート)マグネシウム、ビス(8−ヒドロキシキノリネート)亜鉛、トリス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリネート)アルミニウム、トリス(7−プロピル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス[ベンゾ{f}−8−キノリネート]亜鉛、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリネート)ベリリウム等、およびビス(8−キノリンチオラート)亜鉛、ビス(8−キノリンチオラート)カドミウム、トリス(8−キノリンチオラート)ガリウム、トリス(8−キノリンチオラート)インジウム、ビス(5−メチルキノリンチオラート)亜鉛、トリス(5−メチルキノリンチオラート)ガリウム、トリス(5−メチルキノリンチオラート)インジウム、ビス(5−メチルキノリンチオラート)カドミウム、ビス(3−メチルキノリンチオラート)カドミウム、ビス(5−メチルキノリンチオラート)亜鉛、ビス[ベンゾ{f}−8−キノリンチオラート]亜鉛、ビス[3−メチルベンゾ{f}−8−キノリンチオラート]亜鉛、ビス[3,7−ジメチルベンゾ{f}−8−キノリンチオラート]亜鉛、等の金属チオキシノイド化合物などの(その全体を本願明細書に援用した)米国特許第5846666号に開示された金属チオキシノイド化合物が挙げられる。ルミネセンス領域に使用することのできる別のクラスの有機エレクトロルミネセンス材料は、その全体を本願明細書に援用した米国特許第5516577号に開示されたものなどのスチルベン誘導体を含む。適したスチルベン誘導体の非限定的な例は4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニルである。ルミネセンス領域に使用することのできる別のクラスの有機エレクトロルミネセンス材料には、例えば、2−t−ブチル−9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン、9,10−ジ−フェニルアントラセン、9,9−ビス[4−(9−アントリル)フェニル]フッ素、および9,9−ビス[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]フッ素などのアントラセンを含む。他の適したアントラセンは、現在米国特許第6465115号である米国特許出願シリアル番号第09/208172号(欧州特許出願第1009044A2号に相当)に開示されており、米国特許第5972247号に開示されたもの、現在米国特許第6479172号である米国特許出願シリアル番号09/771311号に開示されたもの、米国特許第5935721号に開示されたものがあり、これら全体を本願明細書に援用する。
【0060】
ルミネセンス領域に使用するのに適した別のクラスの適した有機エレクトロルミネセンス材料には、その全体を本願明細書に援用した米国特許第5925472号に開示されたオキサジアゾール金属キレートがある。これらの材料には、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラート]ベリリウム、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾラート]ベリリウム、ビス[5−ビフェニル−2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[5−ビフェニル−2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]ベリリウム、ビス(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラート]リチウム、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−p−トリル−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−p−トリル−1,3,4−オキサジアゾラート]ベリリウム、ビス[5−(p−t−ブチルフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[5−(p−t−ブチルフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]ベリリウム、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(3−フルオロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]ベリリウム、ビス[5−(4−クロロフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−オキサジザゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシナフチル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−p−ピリジル−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−p−ピリジル−1,3,4−オキサジアゾラート]ベリリウム、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(2−チオフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾラート]ベリリウム、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾラート]亜鉛、およびビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾラート]ベリリウム、等;各々その全体を本願明細書に援用した、米国特許第6057048号および米国特許第6821643号に開示されたものを含むトリアジンがある。
【0061】
このルミネセンス領域はドーパントとして約0.01重量%〜約25重量%のルミネセンス材料をさらに含み得る。ルミネセンス領域に使用することのできるドーパント材料の例には、例えばクマリン、ジシアノメチレンピラン、ポリメチン、オキサベンザントレン(oxabenzanthrane)、キサンテン、ピリリウム、カルボスチル、ペリレン等などの蛍光物質がある。別の適したクラスの蛍光物質はキナクリドン色素である。キナクリドン色素の例示的な例には、各々その全体を本願明細書に援用した米国特許第5227252号、第5276381号、および第5593788号に開示されたような、キナクリドン、2−メチルキナクリドン、2,9−ジメチルキナクリドン、2−クロロキナクリドン、2−フルオロキナクリドン、1,2−ベンゾキナクリドン、N,N’−ジメチルキナクリドン、N,N’−ジメチル−2−メチルキナクリドン、N,N’−ジメチル−2,9−ジメチルキナクリドン、N,N’−ジメチル−2−クロロキナクリドン、N,N’−ジメチル−2−フルオロキナクリドン、N,N’−ジメチル−1,2−ベンゾキナクリドン、等が挙げられる。使用してよい別のクラスの蛍光物質には縮合環蛍光色素がある。例示的な適した縮合環蛍光色素には、その全体を本願明細書に援用した米国特許第3172862号に開示されたような、ペリレン、ルブレン、アントラセン、コロネン、フェナントレセン、ピレン等が挙げられる。また、蛍光物質には、その全体を本願明細書に援用した米国特許第4356429号および第5516577号に開示されたような、1,4−ジフェニルブタジエンおよびテトラフェニルブタジエンなどのブタジエン、スチルベン、等が挙げられる。使用することのできる蛍光物質の他の例には、その全体を本願明細書に援用した米国特許第5601903号に開示されたものがある。
【0062】
さらに、発光領域に使用することのできる発光ドーパントには、例えば、4−(ジシアノメチレン)−2−1−プロピル−6−(1,1,7,7−テトラメチルユロリジル−9−エニル)−4H−ピラン(DCJTB)などの(その全体を本願明細書に援用した)米国特許第5935720号に開示された蛍光色素、例えば、トリス(アセチルアセトナート)(フェナントロリン)テルビウム、トリス(アセチルアセトナート)(フェナントロリン)テルビウム、およびトリス(テノイルトリスフルオロアセトナート)(ファナントロリン)ユーロピウム、およびその全体を本願明細書に援用したKidoらの「White light emitting organic electroluminescent device using lanthanide complexes」、Jpn.J.Appl.Phys.,第35巻、L394〜L396頁(1996年)に開示されたものなどのランタニド金属キレート錯体、ならびに例えばその全体を本願明細書に援用したBaldoらの「Highly efficient organic phosphorescent emission from organic electroluminescent devices」、Nature誌への投稿、第395巻、151〜154頁(1998年)に開示されたものなどの強力なスピン軌道結合をもたらす重金属原子を含む有機金属化合物などの燐光物質がある。好適な例には、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H23H−phorpine platinum(II)(PtOEP)およびfac−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))3)が挙げられる。
【0063】
ルミネセンス領域には正孔輸送特性を有する1つまたは複数の材料を含むこともできる。ルミネセンス領域に使用することのできる正孔輸送材料の例には、その全体を本願明細書に援用した米国特許第5728801号に開示されたような、ポリピロール、ポリアニリン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリチオフェン、ポリアリルアミン、およびそれらの誘導体;その全体を本願明細書に援用した米国特許第4356429号に開示された1,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン銅(II)などのポルフィリン誘導体;銅フタロシアニン;銅テトラメチルフタロシアニン;亜鉛フタロシアニン;酸化チタンフタロシアニン;マグネシウムフタロシアニン;等が挙げられる。
【0064】
ルミネセンス領域に用いることのできる特定のクラスの正孔輸送材料には、その全体を本願明細書に援用した米国特許第4539507号に開示されたもののような芳香族第3級アミンがある。適した例示的な芳香族第3級アミンには、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ−1−ナフチル−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(「NPB」)、これらの混合物、等が挙げられるが、これに限定されるものではない。別のクラスの芳香族第3級アミンは多核芳香族アミンである。これらの多核芳香族アミンの例には、N,N’−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)−4−ビフェニルイル]アニリン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)−4−ビフェニルイル]−m−トルイジン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)−4−ビフェニルイル]−p−トルイジン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−p−トリルアミノ)−4−ビフェニルイル]アニリン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−p−トリルアミノ)−4−ビフェニルイル]−m−トルイジン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−p−トリルアミノ)−4−ビフェニルイル]−p−トルイジン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−p−クロロフェニルアミノ)−4−ビフェニルイル]−m−トルイジン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−クロロフェニルアミノ)−4−ビフェニルイル]−m−トルイジン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−クロロフェニルアミノ)−4−ビフェニルイル]−p−トルイジン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)−4−ビフェニルイル]−p−クロロアニリン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−p−トリルアミノ)−4−ビフェニルイル]−m−クロロアニリン;N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)−4−ビフェニルイル]−1−アミノナフタレン、これらの混合物等、ならびに4,4’−ビス(9−カルバゾールイル)−1,1’−ビフェニルおよび4,4’−ビス(3−メチル−9−カルバゾールイル)−1,1’−ビフェニル等などの4,4’−ビス(9−カルバゾールイル)−1,1’−ビフェニル化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0065】
ルミネセンス領域に使用することのできる特定のクラスの正孔輸送材料には、例えば5,11−ジ−ナフチル−5,11−ジヒドロインドロ[3,2−b]カルバゾールおよび2,8−ジメチル−5,11−ジ−ナフチル−5,11−ジヒドロインドロ[3,2−b]カルバゾールなどの各々その全体を本願明細書に援用した米国特許第5942340号および第5952115号に開示されたものなどのインドロカルバゾール;N,N,N’,N’−テトラアリルベンジジン(アリルはフェニル、m−トリル、p−トリル、m−メトキシフェニル、p−メトキシフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等から選択されてよい)がある。N,N,N’,N’−テトラアリルベンジジンの例示的な例には、N,N−ジ−1−ナフチル−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’―ジアミン;N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’―ジアミン;N,N’−ビス(3−メトキシフェニル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4、4’―ジアミン、等がある。ルミネセンス領域に使用することのできる適した正孔輸送材料はナフチル置換ベンジジン誘導体である。
【0066】
ルミネセンス領域には電子輸送特性を有する1つまたは複数の材料を含むこともできる。ルミネセンス領域に使用することのできる電子輸送材料の例には、BemiusらのSPIE Conference on Organic Light Emitting Materials and Devices IIIの会報、コロラド州デンバー、1999年7月、第3797巻、129頁に開示されたような、ポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジイル),ポリ(2,8−(6,7,12,12−テトラアルキルインデノフルオレン)などのポリフルオレン、およびフルオレン−アミンコポリマーなどのフルオレンを含むコポリマーがある。
【0067】
ルミネセンス領域に使用することのできる電子輸送材料の他の例は、その例を上に詳細に記載した、金属オキシノイド化合物、オキサドラゾール金属キレート化合物、トリアジン化合物およびスチルベン化合物から選択することができる。
【0068】
ルミネセンス領域が有機エレクトロルミネセンス材料に加えて、1つまたは複数の正孔輸送材料および/または1つまたは複数の電子輸送材料を含む実施形態では、有機エレクトロルミネセンス材料、正孔輸送材料、および/または電子輸送材料を、例えば米国特許第4539507号、第4720432号、および第4769292号に開示されたOLEDなどの別個の層に形成することができるか、あるいは同じ層に形成して、例えば米国特許第6130001号、第6392339号、第6392250号、および第6614175号に開示されたOLEDなどの2つ以上の材料の混合ゾーンを形成することができる。これら特許および特許出願の開示の全体を本願明細書に援用する。
【0069】
さらにルミネセンス領域は、参照として全体を本願明細書に援用した、米国特許第6841932号および米国特許出願第2003/0234609号として公開された米国特許出願第10/401238号に記載されたようなMOMLを含み得る。
【0070】
ルミネセンス領域の厚さは、例えば、約1nm〜約1000nmに変動し得る。いくつかの実施形態では、ルミネセンス領域の厚さは約20nm〜約200nmであり、他の実施形態では約50nm〜約150nmである。
【0071】
本開示のアノードを含む表示素子を以下の実施例に関してさらに記載する。以下の実施例は本開示のアノード構成をさらに説明するためのものであるに過ぎず、その実施形態を限定することを意図したものではない。
【0072】
[実施例1〜16]
以下の表1は実施されたOLED素子をまとめたものである。素子はすべて真空(5×10−6トール)で物理的蒸着法を用いて作成した。表1は、それぞれのOLED素子で用いられたアノード構成を示す。素子のルミネセンス領域は2つの層、すなわち(i)正孔輸送ゾーンとして機能する600ÅのNPB層および(ii)発光および電子輸送の2つの機能を提供する750ÅのAlQ3層から構成した。カソードはMg:Agで形成された。NPB、AlQ3、およびカソード層はアノード層の蒸着後に順番に蒸着させた。実施例1〜5では、アノードはMOMLと該MOML上に蒸着されたバッファ層とを含む構成を有するし、バッファ層は全体的に電子受容材料から成る単層である。実施例6から8では、アノードはMOMLと該MOML上に配設された単層のバッファ層とを含み該バッファ層構成は電子受容材料と正孔輸送材料とを含む。実施例9〜11では、アノードはMOMLと該MOMLの上に配設された多層バッファ構成とを含む。電子受容材料は多層バッファ層構成の複数の層の1つまたは両方に存在し得る。実施例12では、アノードはMOMLと電子受容材料との混合物を含む、すなわちどのような追加のバッファ層も含まない単層を含む。実施例13〜16は従来のアノード材料(すなわち、ITO)を用いた比較実施例であるか、どのような電子受容材料も含まないMOMLまたはMOML/バッファ構成を含む。
【0073】
表1は25mA/cmにおけるOLED駆動電圧を示し、本開示のアノードが従来のアノードに匹敵する適した正孔注入特性を提供することができることを証明している。
【0074】
【表1】

【0075】
[実施例17〜21]
実施例17〜21を実施例1〜16に関して記載したものと同様に調整し、これは表2に記載のアノード構成を含む。実施例18〜21は本開示のアノード構成を含み、実施例17は従来のITOアノードを含む比較実施例である。このMOMLの成分の濃度を個々の成分の隣に括弧で示しており、括弧内の数は層厚をÅで示している。表2に示すように、MOMLの厚さまたは組成を変えるだけで、(大きなSEIR値で示されたように)実質的に透明から(小さなSEIR値で示されたように)光吸収性または暗いものまでの異なる光学特性を得ることができる。
【0076】
【表2】

【0077】
特定の実施形態を示してきたが、現在予見されていないか、または現在予見されていないかもしれない代替例、変形例、変更例、改善例、および実質的な均等物が出願人または当業者に想起されよう。したがって、出願されたようなかつ修正されるかもしれないような添付の特許請求の範囲は、そのような代替例、変形例、変更例、改善例、および実質的な均等物すべてを包含するものと意図されることを理解されたい。
【0078】
以下は図面の簡単な説明であり、本願明細書に開示の例示的実施形態を説明するためのものであって、実施形態を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本開示の表示素子の一実施形態の略断面図である。
【図2】本開示の表示素子の別の実施形態の略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に配設された有機エレクトロルミネセンス材料を含むルミネセンス領域とを含む有機発光素子であって、
前記アノードはi)金属材料とii)有機材料とを含む金属有機混合層を含み、かつ前記金属有機混合層は電子受容材料に動作可能に組み合わされた有機発光素子。
【請求項2】
前記電子受容材料はFeCl、AlCl、InCl、GaCl、SbCl、トリニトロフルオレン、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシクロキノジメタン、およびこれらを組み合わせたものから成る群から選択された請求項1に記載の素子。
【請求項3】
前記アノードは金属有機混合層と電子受容材料との混合物を含む請求項1に記載の素子。
【請求項4】
前記アノードは金属有機混合層を含む第1の層と、該第1の層に隣接する第2の層とを含み、該第2の層は電子受容材料と任意には正孔輸送材料とを含む請求項1に記載の素子。
【請求項5】
前記第2の層は、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(mTDATA)、2,5−ジ−tert−ブチルフェニル−N,N’−ジフェニル−N,N’ビス(3−メチルフェニル−1(1,1’−ビフェニル)−4、4’−ジアミン(BP−TPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3)メチルフェニル−(1、1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、銅フタロシアニン(CuPc)、バナジル−フタロシアニン(VOPc)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリアニリン(PAni)、およびこれらを組み合わせたものから成る群から選択された正孔輸送材料を含む請求項4に記載の素子。
【請求項6】
前記金属材料は、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Sn、Pb、Sb、Bi、Se、Te、Ce、Nd、Sm、Eu、およびこれらを組み合わせたものから成る群から選択された請求項1に記載の素子。
【請求項7】
前記金属有機混合層は前記アノードの約5〜約95容量%の量で存在し、前記電子受容材料は前記アノードの約95〜約5容量%の量で存在する請求項3に記載の素子。
【請求項8】
前記アノードは約100〜5,000Åの厚さを有する請求項1に記載の素子。
【請求項9】
前記アノードは光吸収性であり、前記金属有機混合層は前記素子は少なくとも約30%だけ光反射を低減させるように選択された請求項1に記載の素子。
【請求項10】
前記アノードは実質的に透明であり、前記金属有機混合層は可視範囲の前記アノードの光透過率が少なくとも50%になるように選択された請求項1に記載の素子。
【請求項11】
前記アノードは実質的に反射性であり、前記金属有機混合層は可視範囲の前記アノードの反射率が少なくとも50%になるように選択された請求項1に記載の素子。
【請求項12】
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に配設された有機エレクトロルミネセンス材料を含むルミネセンス領域とを含む有機発光素子であって、
前記アノードは金属有機混合層とバッファ層とを含み、該金属有機混合層はi)金属材料とii)有機材料とを含み、かつ前記バッファ層は電子受容材料を含む有機発光素子。
【請求項13】
前記電子受容材料はFeCl、AlCl、InCl、GaCl、SbCl、トリニトロフルオレン、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシクロキノジメタン、およびこれらを組み合わせたものから成る群から選択された請求項12に記載の素子。
【請求項14】
前記バッファ層は約10〜約500Åの厚さを有する請求項12に記載の素子。
【請求項15】
前記バッファ層は正孔輸送材料をさらに含む請求項12に記載の素子。
【請求項16】
前記第2の層は、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(mTDATA)、2,5−ジ−tert−ブチルフェニル−N,N’−ジフェニル− N,N’ビス(3−メチルフェニル−1(1,1’−ビフェニル)−4、4’−ジアミン(BP−TPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3)メチルフェニル−(1、1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、銅フタロシアニン(CuPc)、バナジル−フタロシアニン(VOPc)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリアニリン(PAni)、およびこれらを組み合わせたものからなる群から選択された請求項15に記載の素子。
【請求項17】
前記電子受容材料は、前記バッファ層の約1〜約99容量%の量で存在し、前記正孔輸送材料は前記バッファ層の約99〜約1容量%の量で存在する請求項16に記載の素子。
【請求項18】
前記電子受容材料は、前記バッファ層の約5〜約50容量%の量で存在し、前記正孔輸送材料は前記バッファ層の約95〜約50容量%の量で存在する請求項17に記載の素子。
【請求項19】
前記バッファ層は電子受容材料から成る請求項12に記載の素子。
【請求項20】
前記バッファ層は複数のバッファ層を含み、該バッファ層の各々は電子受容材料と任意には正孔輸送材料を独立して含んでいる請求項12に記載の素子。
【請求項21】
前記バッファ層の複数のバッファ層の各々は独立して、約1〜約499Åの厚さを有する請求項12に記載の素子。
【請求項22】
前記複数のバッファ層の少なくとも1つは電子受容材料から成る請求項12に記載の素子。
【請求項23】
前記金属有機混合層は前記素子が少なくとも約30%だけ光反射を低減させるように選択された請求項12に記載の素子。
【請求項24】
前記アノードは実質的に透明であり、前記金属有機混合層は可視範囲の前記アノードの光透過率が少なくとも50%になるように選択された請求項12に記載の素子。
【請求項25】
前記アノードは実質的に反射性があり、前記金属有機混合層は可視範囲の前記アノードの反射率が少なくとも50%になるように選択された請求項12に記載の素子。
【請求項26】
各バッファ層は独立して、約1〜約100容量%の量の電子輸送材料と、約0〜約99容量%の量の正孔輸送材料とを含む請求項20に記載の素子。
【請求項27】
請求項1の素子を含む表示素子。
【請求項28】
請求項12の素子を含む表示素子。
【請求項29】
アノードと、
カソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に配設されたルミネセンス領域とを含む表示素子であって、
前記アノードは電子受容材料に動作可能に組み合わされた金属有機混合層を含む表示素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−332047(P2006−332047A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−138555(P2006−138555)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(501426046)エルジー.フィリップス エルシーデー カンパニー,リミテッド (732)
【Fターム(参考)】