説明

金属材の超音波検査法及び鋼管の製造方法

【課題】 貫通状欠陥や肉中の未圧着をも探傷可能とすること。
【解決手段】 アレイセンサー7を用いた超音波検査法である。アレイセンサー7のブロック5ごとに超音波2を発振し、鋼管1からの反射波を受信して、前記ブロック5ごとに分割動作させたときの感度を校正する。その後、全てのアレイセンサー7の振動子4から超音波2を発振し、鋼管1からの反射波を受信して、その感度を前記校正の際に得られた基準欠陥に対するエコー高さに基づき校正する。これらの校正後、ブロック5ごとに超音波2を発振したときの反射波Aと、全てのアレイセンサー7の振動子4から超音波2を発振したときの反射波Bを受信する。その後、反射波Aのエコー高さEHAと、反射波Bのエコー高さEHBの比EHB/EHAによって欠陥の種類を識別する。
【効果】 微細な貫通状欠陥や、肉中の未圧着も検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェイズドアレイセンサー(以下、単に「アレイセンサー」という。)を用いた金属材の超音波検査法及びこの超音波検査法を製造工程に含む鋼管の製造方法に関するもので、従来法では検出できなかった微細な貫通状欠陥や肉厚の中央部に存在する縦方向の未圧着(以下、「肉中の未圧着」と言う。)を内外面欠陥と識別して検出することを可能としたものである。
【背景技術】
【0002】
例えば鋼管の超音波検査では、図3(a)に示すように、鋼管1の表面に対して超音波2を斜めに入射させ、鋼管1もしくはセンサー3を傾斜させて全断面を検査する斜角探傷法が一般的に用いられている。なお、図3(a)中のθ1は入射角度、θ2は屈折角度を示す。
【0003】
この超音波斜角探傷法で得られる信号波形(−般に「Aスコープ」と称す)は、例えばカップリングに水を用いる水浸法では、図3(b)に示すように、時間軸上で、外表面で反射する表面エコーS、欠陥で反射する内面欠陥エコーF1と外面欠陥エコーF2の順に現れるが、これらの表面エコーSと内面欠陥エコーF1、外面欠陥エコーF2を識別するために、欠陥検出ゲ−トG1,G2を用いて選択的に信号を抽出している。
【0004】
また、鋼管の斜角探傷法では、鋼管の肉厚tと外径Dの比率t/Dの影響を受け、t/Dが大きくなるにつれて内面欠陥に対する超音波の入射角度θ3が小さくなり、超音波の反射率が低下する。しかしながら、入射角度θ1を微調整すれば、内外面欠陥の信号の大きさを近づけることができる。
【0005】
また、近年、超音波ビームの制御技術として、複数の振動子からなるアレイセンサーを用いて振動子の発振タイミングを遅延制御することで任意の角度に超音波を発振したり、多チャンネルのアレイセンサー中の特定のアレイセンサーを選択的に使用して機械的な段取り替えを自動化したり、電気的な走査を加えて検査領域の広い超音波ビームを作り、高能率もしくは高範囲の検査を可能としたりするものが採用されるようになってきている。このうちの一例として、ブロック選択法により超音波の伝播角度を電気的に調整する際の原理を図4に示す。
【0006】
複数の振動子4を選択してその発振タイミングを遅延制御すれば、超音波の斜め発振が可能になる。図4では、4つの振動子4で形成したブロック5を2つ選択し、それぞれのブロック5ごとに振動子4の発振タイミングを遅延制御することで、ブロック5ごとに被検査材であるたとえば鋼管1に対して超音波2を斜めに発振し、たとえば外面欠陥6を検出するものを示している。
【0007】
下記表1に、前記図4の場合における屈折角度θ2の影響の具体例を示すが、この表1の場合は、内外面の欠陥信号の差が最も小さい、屈折角度θ2が45°の場合が最適である。
【0008】
【表1】

【0009】
この表1の探傷を行う際に校正に用いた人工欠陥は、軸方向の内外表面に加工された深さ0.2mmの軸方向欠陥であり、内外欠陥エコーともほぼ同等の信号の大きさが得られた。
【0010】
ところで、前記人工欠陥は反射面積が比較的大きいので、超音波の反射率が大きく、図5に示した波形例のように、比較的容易に内外面の欠陥を検出することができるが、電縫鋼管の溶接不良による微細な未溶着(貫通欠陥)やシームレス鋼管の微細な貫通割れ等の貫通状欠陥では、反射面積が微細で超音波の反射率が小さいので、図6に示した波形例のように、その検出が難しくなる。なお、図6中のF3は貫通孔エコーを示す。
【0011】
また、肉中の未圧着は、斜角探傷法では、その原理上、反射エコーを受信することができないので、前記未圧着を検出することができない。
【0012】
そこで、微細な貫通状欠陥を検出する手法として、図7に示すような、被検査材であるたとえば鋼管1の肉厚に比べて長さの長いアレイセンサー7を用いて肉厚内の多重反射を利用して検出するアレイ探傷法(以下、「多重反射法」と言う。)がある。
【0013】
しかしながら、この多重反射法では、貫通孔エコーF3は、図8に示したような多重波形となるので、時間軸の情報からだけでは内外面欠陥もしくは貫通状欠陥といった欠陥の種類の識別ができない点や、入射角度を調整して内外面欠陥の信号高さを調整することが難しいといった点が問題となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
つまり、多重反射法では、多重反射に伴う積算効果によって従来法では検出が困難であった微細な貫通状欠陥や肉中の未圧着等を検出することは可能であるが、内面欠陥エコーに比べて貫通状欠陥エコーの大きさが小さくなり、また、外面欠陥エコーでは図1(a)の2abの如く、欠陥で直接反射したエコーが存在するために、内面欠陥エコーに比べて外面欠陥エコー高さが大きくなる。したがって、微細な貫通状欠陥を検出しようとすると、内外面欠陥、特に外面欠陥の過検出が問題となる。たとえば、内面軸方向欠陥の信号を50%CRT、外面軸方向欠陥の信号を115%CRTに調整し、欠陥の検出レベルを25%CRTに調整した内面欠陥では深さ0.1mm以上の欠陥を、外面欠陥では深さ0.05mm以上の欠陥を大部分検出する可能性が極めて高くなる。従って、従来検査法における過検出を防止しつつ微細な貫通状欠陥等を検出する手法の確立が望まれている。
【0015】
なお、本発明と関連する技術として、アレイセンサーを溶接管の円周方向に並べて、このアレイセンサーから平面波を形成するように超音波を送信し、被検査材から受信した反射波のうち、所定数の隣接した振動子群からの反射波を出力し、かつ、振動子群を順次シフトさせて、それぞれ異なった深さの測定部位を同時に探傷するようにして、ブローホール状の欠陥の検出性能を向上させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開平9−133657号公報
【0016】
また、管の円周方向に並べたアレイセンサーから送信する超音波の屈折角度を設定して、溶接部の底面から表面までをセクタ走査することで、溶接部の深さ方向の全域を見逃しがないようにして、特に微小なブローホール状の欠陥を精度良く検出する技術が開示されている。
【特許文献2】特開平11−183446号公報
【0017】
また、管の円周方向に並べたアレイセンサーから送信する超音波を所定の屈折角度で集束させ、その集束位置をセクタ走査により厚さ方向および円周方向に変えながら探傷することで、溶接線が蛇行しても焦点位置を溶接線に合致させ、微細な欠陥を検出可能とする技術が開示されている。
【特許文献3】特開2000−221171号公報
【0018】
これら特許文献で開示された技術では、たとえば特許文献2では肉厚方向に超音波ビームを走査することで不惑帯の発生防止を、また特許文献3では焦点ビームを用いることで微細な球形ブローホール状の欠陥の検出性能を向上できるとしている。
【0019】
しかしながら、前記貫通状欠陥の検出が難しいこと、また、原理上、肉中の未圧着を検出することができないことに変わりはない。
【0020】
本発明が解決しようとする問題点は、従来の超音波探傷法では、貫通状欠陥は、超音波の反射面積が小さいのでその検出が難しく、また、肉中の未圧着は、その原理上、反射信号を検出できないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の金属材の超音波検査法は、
貫通状欠陥や肉中の未圧着をも精度良く検出できるようにするために、
複数の振動子を配列したアレイセンサーを用いて、被検査材に存在する欠陥を斜角探傷法を用いて検査する超音波検査法であって、
まず、全てのアレイセンサーをブロックに分割して、ブロックの振動子からブロックごとに超音波を発振し、内外面に欠陥を有する試験材からの反射波を受信して、前記ブロックごとに分割動作させたときの感度を校正した後、
次に、全てのアレイセンサーの振動子から超音波を発振し、前記試験材からの反射波を受信して、全てのアレイセンサーを動作させたときの感度を、前記校正の際に得られた基準欠陥に対する欠陥エコー高さに基づき校正し、
これらの校正後、前記分割したブロックの振動子からブロックごとに超音波を発振したときの被検査材からの反射波Aと、前記全てのアレイセンサーの振動子から超音波を発振したときの被検査材からの反射波Bを受信し、
その後、前記反射波Aのエコー高さEHAと、前記反射波Bのエコー高さEHBの比EHB/EHA、すなわち、EHB/EHAが1.5未満のときは内面欠陥と、1.5以上、2.5以下のときは外面欠陥と、2.5を超えるときは貫通状欠陥或いは肉中の未圧着と識別することによって欠陥の種類を識別する点を最も主要な特徴としている。
【0022】
前記の本発明方法において、被検査材からの反射波Aを受信する際に、内面欠陥を識別する欠陥検出ゲートおよび外面欠陥を識別する欠陥検出ゲートを用いて、内面欠陥または外面欠陥を検出し、
前記EHB/EHAの値と併せて欠陥の種類を識別するようにすれば、内面欠陥か外面欠陥かの識別を、より容易に、より確実に行えるようになる。
【0023】
また、被検査材が鋼管である場合に、鋼管の製造工程に前記の本発明方法を含めた場合には、鋼管の製造ラインで、内外面欠陥のみならず貫通状欠陥や肉中の未圧着をも精度良く検出できるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、欠陥の識別に、分割したブロックの振動子から超音波を発振したときの被検査材からの反射波Aと、全てのアレイセンサーの振動子から超音波を発振したときの被検査材からの反射波Bを使用するので、内外面欠陥への過検出を引き起こすことなく、従来法では検出が不可能であった微細な貫通状欠陥や、肉中の未圧着も検出できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図1及び図2を用いて説明する。
本発明の金属管の超音波検査方法は、校正を行う第1工程、測定を行う第2工程、判定を行う第3工程の3つの工程を順に実施するもので、以下、これらの各工程について説明する。
【0026】
〔第1工程〕
1.ブロック選択法による屈折角度の選定、欠陥検出ゲートの設定、検査感度の設定
屈折角度は、屈折角度を変化させて内外面人工欠陥から得られる信号の高さの差異が最も小さくなる屈折角度を選択する。鋼板の場合、この屈折角度は通常45°になる。しかしながら、鋼管の場合は内外面が湾曲しているために45°にはならない。
【0027】
また、欠陥検出ゲートは、たとえば2個の欠陥検出ゲートを用い、人工欠陥信号の振幅最大位置が、欠陥検出ゲートの中心となるようにゲート位置を検出する。また、検査感度は、内面欠陥エコー高さがCRT50%になるようにゲインを調整する。
【0028】
2.多重反射法による屈折角度の選定、欠陥検出ゲートの設定、検査感度の設定
以上のブロック選択法による屈折角度の選定、欠陥検出ゲートの設定、検査感度の設定終了後、次に、全てのアレイセンサーから超音波を発振して超音波検査する多重反射法を実施する場合の屈折角度の選定、欠陥検出ゲートの設定、検査感度の設定を行う。
【0029】
この場合の屈折角度は、前記ブロック選択法で得られた屈折角度となるように遅延パラメータを調整する。また、欠陥検出ゲートは、1個の欠陥検出ゲートを用い、人工欠陥信号が発生する位置に欠陥検出ゲートを調整する。また、検査感度は、内面欠陥エコー高さがCRT50%になるようにゲインを調整する。
【0030】
以上の校正によってブロック選択法と多重反射法によって得られる反射波のエコー高さを比較できるようになる。
【0031】
〔第2工程〕
1.ブロック選択法による欠陥の測定
前記の校正後は、まず、分割したブロックの振動子から超音波を発振して、例えば鋼管などの被検査材の内外面欠陥および貫通状欠陥或いは肉中の未圧着からの反射波Aのエコー高さEHAを測定する。下記表2は、屈折角度が45度の場合、軸方向の内表面に加工された深さが0.2mmの人工欠陥の信号を、内面欠陥エコー高さを50%CRTに調整したときに、外面欠陥エコー高さは67.5%CRT、φ0.3mmの貫通状欠陥を測定した場合のもので、そのエコー高さEHAは10%CRTであった。
【0032】
【表2】

【0033】
このブロック選択法では、センサーがブロックに分割されており、後述する多重反射法のような積算効果はないので、反射波は単純な形であり、欠陥検出ゲートを用いることで、内面欠陥による反射波なのか、外面欠陥による反射波なのかを容易に判別することができる。しかしながら、このブロック選択法では、貫通状欠陥や肉中の未圧着などの検出能が良くないことは先に説明した通りである。
【0034】
2.多重反射法による欠陥の測定
次に、全てのアレイセンサーの振動子から超音波を発振して、前記被検査材の内外面欠陥および貫通状欠陥や肉中の未圧着からの反射波Bのエコー高さEHBを測定する。上記表2に示した例では、屈折角度が45度の場合、軸方向の内表面に加工された深さが0.2mmの人工欠陥の信号を、内面欠陥エコー高さを50%CRTに調整したときに、外面欠陥エコー高さは115%CRT、φ0.3mmの貫通状欠陥のエコー高さEHBは、前記ブロック選択法の場合よりも大きな29.5%CRTであった。
【0035】
つまり、この多重反射法を使用すると、欠陥の種類により、反射波Bのエコー高さEHB に違いが現れることになる。これを模式的に示したものが図1である。
貫通状欠陥8の場合、振動子4a〜4cから発振され、被検査材であるたとえば鋼管1に入射した超音波が全ての場合において貫通状欠陥8で反射することになる。
【0036】
すなわち、振動子4aから発振された超音波は、貫通状欠陥8の外面近傍に当たり、そのまま反射してきた経路を逆進してセンサー3に捕らえられる反射波(以下、この反射波を「逆進波2aa」という)と、鋼管1から直接、外に出る反射波2abの2つの反射波がセンサー3で感知される。
【0037】
また、振動子4bから発振された超音波は、逆進波2baと貫通状欠陥8で反射した後しばらく鋼管1中を通って外に出る反射波2bbの2つの反射波がセンサー3で感知される。
【0038】
また、振動子4cから発振された超音波は、逆進波2caのみがセンサー3で感知される。
結果として、多重反射法を使用すると、5つの反射波2aa,2ab,2ba,2bb,2caがセンサー3で受信されることになる(図1(a)参照)。
【0039】
一方、外面欠陥6の場合には、振動子4aから発振された超音波のみが外面欠陥6で反射する。この場合、上記の貫通状欠陥8の場合における振動子4aから発振された超音波と同じく、逆進波2aaと反射波2abがセンサー3で感知され、結果として2つの反射波が受信されることになる(図1(b)参照)。
【0040】
また、内面欠陥9の場合には、振動子4cから発振された超音波のみが内面欠陥9で反射する。この場合、上記の貫通状欠陥8の場合における振動子4cから発振された超音波と同じく、逆進波2caのみが感知され、結果として1つの反射波がセンサー3で受信されることになる(図1(b)参照)。
【0041】
以上から、得られる多重反射による積算効果の大きさは貫通状欠陥>外面欠陥>内面欠陥の順に大きくなる。つまり、内面欠陥を基準とすると、貫通状欠陥では295%、外面欠陥では170%の効果が得られたこととなる。
【0042】
ただし、積算効果が大きくなるだけで、貫通状欠陥の場合、受信する反射波の大きさが外面欠陥や内面欠陥より大きくなるとは限らない。すなわち、上述の積算効果のため、貫通状欠陥に対しては、ブロック選択法に比べて感度が良くなるに過ぎない。これを示したのが図2である。
【0043】
また、積算効果は大きいものの、受信する反射波(上記で言う逆進波を含む反射波)は、反射経路によって若干受信する時間がずれるので、受信した反射波は、前述の図8のようにある時間の幅の中で複数回検出されることになる。よって、従来からのブロック選択法のように、時間軸の情報が適切に得られず、また、検出した反射波の位置により欠陥の種類が判別できないことになる。
【0044】
〔第3工程〕
先に述べたように、多重反射法では、微細な貫通状欠陥8を検出しようとすると外面欠陥6および内面欠陥9への過検出が避けられず、また、反射波の大きさだけで欠陥の種類を判断することは困難である。一方、ブロック選択法では、貫通状欠陥などは精度良く検出することができない。
【0045】
よって、本発明では、これらの欠点を相互に補って、欠陥の種類を判定するのである。
すなわち、前記ブロック選択法によって得られた反射波Aのエコー高さをEHA、前記多重反射法によった得られた反射波Bのエコー高さをEHBとした場合、貫通状欠陥8では高い積算効果が期待できるので、EHB≫EHAとなる。また、外面欠陥6では少し積算効果が期待できるので、EHB>EHAとなる。これに対して、内面欠陥9では積算効果が期待できないので、EHB≒EHAとなる。したがって、本発明ではこの差を利用して、欠陥の種類を判別するのである。
【0046】
すなわち、前記エコー高さの比EHB/EHAが1.5未満のときは内面欠陥と、1.5以上、2.5以下のときは外面欠陥と、2.5を超えるときは貫通状欠陥あるいは肉中の未圧着と識別するのである。つまり、多重反射法の欠陥判定レベルを25%CRTに設定し、これを超えるエコーを検出した場合、ブロック選択法の検出エコー高さの比を用いて欠陥の種類を判定し、内外面欠陥と判定した場合はブロック選択法の評価結果を用い、貫通状欠陥と判定した場合は貫通状欠陥ありと判定すれば、欠陥種別の判定と共に内外面欠陥への過検出は防止される。なお、本判定基準は0.2mm深さの内外面欠陥とφ0.3mmの貫通状欠陥を検出する際のものであって、適宜、数値は変更すれば良い。
【0047】
以上が請求項1又は請求項2に係る本発明の金属材の超音波検査方法であるが、前記の第3工程での判定に代えて、選択ブロック法によって内面欠陥や外面欠陥を検出するような欠陥検出ゲートを用いれば、検出した欠陥が内面欠陥か外面欠陥かを、より容易に、より確実に判別することができる。これが請求項3に係る本発明の金属材の超音波検査方法である。
【0048】
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範囲内で、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。たとえば本発明の検査方法を鋼管の製造工程に含めた場合には、製造ライン中で、内外面欠陥のみならず貫通状欠陥や肉中の未圧着をも精度良く検出できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、鋼管に限らず、他の金属管でも、また、金属板の超音波検査等にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に使用する多重反射法を説明する図である。
【図2】本発明に使用する多重反射法とブロック選択法で得られる欠陥信号の大きさの関係を説明する図である。
【図3】(a)は鋼管の超音波斜角探傷法を説明する図、(b)はその信号波形を説明する図である。
【図4】ブロック選択法を説明する図である。
【図5】ブロック選択法で内外面欠陥を探傷した場合の信号波形を説明する図である。
【図6】ブロック選択法で貫通状欠陥を探傷した場合の信号波形を説明する図である。
【図7】多重反射法を説明する図である。
【図8】多重反射法で貫通状欠陥を探傷した場合の信号波形を説明する図である。
【符号の説明】
【0051】
1 鋼管
2 超音波
3 センサー
4 振動子
5 ブロック
6 外面欠陥
7 アレイセンサー
8 貫通状欠陥
9 内面欠陥


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の振動子を配列したフェイズドアレイセンサーを用いて、被検査材に存在する欠陥を斜角探傷法を用いて検査する超音波検査法であって、
まず、全てのフェイズドアレイセンサーをブロックに分割して、ブロックの振動子からブロックごとに超音波を発振し、内外面に欠陥を有する試験材からの反射波を受信して、前記ブロックごとに分割動作させたときの感度を校正した後、
次に、全てのフェイズドアレイセンサーの振動子から超音波を発振し、前記試験材からの反射波を受信して、全てのフェイズドアレイセンサーを動作させたときの感度を、前記校正の際に得られた基準欠陥に対する欠陥エコー高さに基づき校正し、
これらの校正後、前記分割したブロックの振動子からブロックごとに超音波を発振したときの被検査材からの反射波Aと、前記全てのフェイズドアレイセンサーの振動子から超音波を発振したときの被検査材からの反射波Bを受信し、
その後、前記反射波Aのエコー高さEHAと、前記反射波Bのエコー高さEHBの比EHB/EHAによって欠陥の種類を識別することを特徴とする金属材の超音波検査法。
【請求項2】
前記EHB/EHAが1.5未満のときは内面欠陥と、1.5以上、2.5以下のときは外面欠陥と、2.5を超えるときは貫通状欠陥或いは肉厚の中央部に存在する縦方向の未圧着と識別することを特徴とする請求項1に記載の金属材の超音波検査法。
【請求項3】
前記被検査材からの反射波Aを受信する際に、内面欠陥を識別する欠陥検出ゲートおよび外面欠陥を識別する欠陥検出ゲートを用いて、内面欠陥または外面欠陥を検出し、
前記EHB/EHAの値と併せて欠陥の種頼を識別することを特徴とする請求項1又は2に記載の金属材の超音波検査法。
【請求項4】
被検査材が鋼管であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の金属材の超音波検査法。
【請求項5】
請求項4に記載の金属材の超音波検査法を製造工程に含むことを特徴とする鋼管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−71420(P2006−71420A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254420(P2004−254420)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000229612)住友鋼管株式会社 (26)
【Fターム(参考)】