説明

金属粉末を処理する方法

本発明は、多数の金属粉末小球から成る金属粉末を処理する方法であって、以下のステップ;S1:金属粉末小球を、該金属粉末小球がペースト状の状態になるまで加熱し、S2:変形された金属粉末粒子を形成するために、ペースト状の状態の金属粉末小球と、衝突体との衝突を生ぜしめ、S3:変形された金属粉末粒子を集合容器内に集める、を有する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の金属粉末小球から成る金属粉末を処理する方法に関する。
【0002】
多数の鋼粉末小球から成る鋼粉末を製造する方法は既に公知である。この公知の方法では、鋼溶融物が製造される。鋼溶融物は容器内に移送されて、この容器内で、鋼溶融物にNガスが供給される。これによって、溶融された鋼の噴霧化を、窒素ガスを使用しながら実施することができる。保護ガス雰囲気内で実施されるこの公知の方法により、多数の鋼粉末小球から成る鋼粉末が製造される。鋼粉末小球の直径は、100μm〜500μmの範囲である。
【0003】
特定の産業利用のためには、球形ではない金属粉末粒子を備えた金属粉末を使用可能であることが有利である、ましては必要であることが明らかとなった。
【0004】
本発明の課題は、多数の金属粉末小球から成る金属粉末を加工する方法であって、球形ではない金属粉末粒子を備えた金属粉末を製造することができる方法を提供することである。
【0005】
この課題は、請求項1に記載された特徴を有する方法、すなわち、多数の金属粉末小球から成る金属粉末を処理する方法であって、以下のステップ、S1:金属粉末小球を、該金属粉末小球がペースト状の状態になるまで加熱し、S2:変形された金属粉末粒子を形成するために、ペースト状の状態の金属粉末小球の、衝突体との衝突を生ぜしめ、S3:変形された金属粉末粒子を集合容器内に集める、を有する方法により解決される。
【0006】
本発明の有利な実施形態および変化形を、以下に、図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のための第1の実施態様による、金属粉末を処理する方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明のための第2の実施態様による、金属粉末を処理する方法を説明するためのフローチャートである。
【0008】
本発明による方法には、出発材料として、100μm〜500μmの範囲の直径を備えた多数の金属粉末小球から成る金属粉末が準備される。このような種類の金属粉末は、たとえば、上述の方法を用いて製造され得る。
【0009】
本発明による方法によれば、図1から判るように、第1のステップS1で、所定の温度にまで金属粉末小球が加熱される。この温度では、金属粉末粒子はペースト状(teigig)の状態にある。金属粉末小球の加熱は、誘導プロセスを使用しながら、または放射熱の利用により、または高温の保護ガス流内で実施され得る。
【0010】
第1のステップに続く第2のステップS2では、ペースト状の状態にある金属粉末小球の、衝突体(Prallkoerper)との衝突が生ぜしめられる。これによって、変形された金属粉末粒子を得ることができる。この衝突体は、金属粉末小球の流れに対して直角または別の角度で延びている衝突プレートであってよい。この衝突プレートは、プロペラ形に形成されていてよい。さらに、この衝突プレートは、可動に形成されていてよく、たとえば回転されるか、不断に旋回され得る。
【0011】
衝突プレートとの衝突により変形された金属粉末粒子は、後続のステップS3により、集合容器内に集められる。有利な実施形態は、変形された金属粉末粒子を、搬送ベルトにより集合容器内へ搬送することにある。この場合、搬送ベルトは、衝突プレートと集合容器との間に配置されているか、または搬送ベルト自体が衝突プレートとして働く。
【0012】
択一的な実施形態は、ペースト状の状態にある金属粉末小球を、互いに衝突させることにある。これにより、球形ではない表面を備えた、変形された金属粉末粒子を得ることができる。
【0013】
変形された金属粉末粒子を集合容器内に集合させた後に、ステップS4で、金属粉末粒子が再び固い状態になるまで、変形された金属粉末粒子の冷却が行われる。これに対して択一的には、ステップS2から提供された金属粉末粒子が、ステップS3により集合させられる集合容器内で、別の処理を受けることもできる。
【0014】
得られた金属粉末粒子は、出発材料とは異なり、突起、縁部、および角を有している。このことは、たとえば、このように変形された多数の金属粉末粒子から成る金属粉末が、たとえば鋼から成る、内側に位置する螺旋状に延びる冷却通路を備えたドリル工具の製造に使用されると有利である。この場合、鋼粉末が、結合剤と共に練られ、結合剤と共に練られた鋼粉末は、プレス工具を通って案内される。これによって、内側に位置する直線状の冷却通路を備えたストランドもしくはロッドを製造することができる。このプレス工具を出たストランドは、それぞれ所望の長さに短く切断される。この場合に生じた中間製品(Rohling)は、その全長にわたって支持されながら転がり運動させられる。転がり運動の速度は、ボディの長さにわたって線状に連続的に変化するので、中間製品が捻られる。この場合、捻られた中間製品は焼結されて、次いでその外周面に螺旋状に延びる切り屑排出溝(Spannut)が備えられる。
【0015】
内側に位置する螺旋状に延びる冷却通路を備えた、鋼から成るこのようなドリル工具を、本発明のための出発材料として使用されるような鋼粉末を使用し、かつ前段落で説明した方法を用いて製造することは、不可能であるということが実験から判った。なぜならば、製造された捻られた中間製品は、形状不安定であるからである。これに対して、本発明による方法を用いて製造された、変形された鋼粉末粒子を備えた鋼粉末を、前段落で説明した方法を用いて、内側に位置する螺旋状に延びる冷却通路を備えた、鋼から成るドリル工具を製造するために使用すると、所望の最終製品を製造することができる。なぜならば、形成され捻られた中間製品は形状安定的であり、焼結プロセスを用いて、所望の形式でさらに処理され得るからである。このことは、捻られた中間製品内で、変形された鋼粉末粒子が互いに内外にかつ互いに接して引っかかることができるので、中間製品の形状が維持されることに帰する。
【0016】
金属粒子を処理するための改良された方法を、以下に図2に示したフローチャートを用いて詳しく説明する。
【0017】
出発材料として図1につき説明した方法と同じ金属粉末が使用される改善された方法でも、第1のステップS1で、所定の温度までの金属粉末粒子の加熱が行われる。この温度では、金属粉末粒子はペースト状の状態にある。
【0018】
ステップ1に続くステップS1/2で、ペースト状の状態にある金属粉末粒子が、加速させられる。この加速は、磁界を用いて、または遠心プロセスにより、または保護ガス流を用いて実施され得る。
【0019】
ペースト状の状態にある、加速させられた金属粒子粉末は、続くステップS2で、衝突体と衝突させられる。これにより、図1につき説明した方法と同様に、金属粉末粒子を変形させることができる。
【0020】
衝突により変形された金属粉末粒子は、続くステップS3により、集合容器内に集合させられる。この集合容器内で、金属粉末粒子は、ステップ4により冷却されるので、金属粉末粒子は、最終的に固い状態にある。
【0021】
ペースト状の状態にある金属粉末小球の上記の加速によって、金属粉末小球の運動エネルギが増大する。これによって、金属粉末小球は、衝突体への衝突時に、図1につき説明した実施形態におけるよりも強く変形させられる。
【0022】
このことは、金属粉末粒子の上記の引っ掛かりを改善し、同様に、中間製品の形状安定性を有利な形で向上させるという利点を有している。
【0023】
本発明によれば、多数の金属粉末小球から成る金属粉末であるにもかかわらず、球形に形成されているのではなく、突起、エッジおよび角を備えた多数の金属粉末粒子から成る金属粉末が提供されるように処理される。特に、ペースト状の状態にある金属粉末小球が、衝突プロセス前に加速させられると、金属粉末小球が衝突時に粉砕されて、これにより金属粉末小球から、より小さな、変形された多数の金属粉末粒子が形成されるようにすることができる。このことは、中間製品内の金属粉末粒子の上記の所望の引っかかりの別の改善と、ひいては中間製品のさらに改善された形状安定性につながる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の金属粉末小球から成る金属粉末を処理する方法であって、以下のステップ;すなわち、
S1:金属粉末小球を、該金属粉末小球がペースト状の状態になるまで加熱し、
S2:変形された金属粉末粒子を形成するために、ペースト状の状態の金属粉末小球の、衝突体との衝突を生ぜしめ、
S3:変形された金属粉末粒子を集合容器内に集める、
ステップを有することを特徴とする、多数の金属粉末小球から成る金属粉末を処理する方法。
【請求項2】
S4:集合された変形された金属粉末粒子を、該金属粉末粒子が固い状態になるまで冷却する別のステップを有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
金属粉末小球の加熱と、衝突の実施との間に、ペースト状の状態にある金属粉末小球の加速を行う、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
金属粉末小球の加熱を、誘導プロセスを使用しながら、または放射熱により、または高温の保護ガス流内で行う、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
金属粉末小球の加速を、磁界により、または遠心プロセスを用いて、または保護ガス流を用いて行う、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
ペースト状の状態にある金属粉末小球を衝突プレートと衝突させる、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記衝突プレートが、プロペラ形に形成されている、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記衝突プレートが可動に形成されている、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
変形された金属粉末粒子を、衝突プレートを用いて集合容器内に搬送する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ペースト状の状態の金属粉末小球を互いに衝突させ、これにより変形された金属粉末粒子を形成する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−529560(P2012−529560A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513553(P2012−513553)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057383
【国際公開番号】WO2010/139614
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(502088157)
【氏名又は名称原語表記】Arno Friedrichs
【住所又は居所原語表記】Gruenbaum3,D−95326 Kulmbach,Germany
【Fターム(参考)】