説明

金属線供給装置

【課題】 ボビンに巻かれた金属線が解舒される際に金属線に働く張力の変動が小さく、品質のばらつきが小さい金網を簡単に製造することができる金属線供給装置を提供する。
【解決手段】 ボビン軸3の周りに回動自在に装着されたフランジ付きボビン2に巻かれた金属線巻体6からボビンを回動させながら金属線5を解舒して供給する金属線供給装置であり、揺動自在の検出部アーム11の端に設けた検出ローラー13を金属線巻体6の表面に当接させ、揺動自在の制動部アーム8の端に設けた制動部シュー10をボビンのフランジ1に圧接させ、検出部アーム11と制動部アーム8とに引っ張りバネ17の両端を係合させ、金属線5の解舒に伴って減少する金属線巻体6の直径の減少に応じて減少する押圧力をボビンのフランジに圧接することにより金属線が解舒される際に金属線に働く張力の変動を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属線供給装置、特に多数の金属線をその交差点で溶接して正方形または菱形の網目形状を有する金属網を製造する際などに用いられるに適した金属線供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平行に多数本配列させた金属線を互いに交叉させてその交差点を溶接して正方形または菱形の網目形状を有する金属網を製造することが例えば特許文献1で知られている。この金属網の製造のために、ボビンに巻かれた金属線を解舒して連続的に供給することが行われている。
【0003】
ボビン軸の周りに回動自在に装着されたボビンに巻かれた金属線巻体からボビンを回動させながら金属線を一定の速度で引き出して解舒するたときに金属線に働く張力を決定する要素の一つにボビンとボビン軸機構との間の摩擦力がある。金属線を引き出していくと金属線巻体の直径は次第に減少するが、それに伴って金属線に働く張力は次第に増大する。この金属線に働く張力の変動により、製造される金網の品質にばらつき、例えば網目形状の変動などが生じやすくなる。
【0004】
特に上記溶接の際には溶接機に上記金属線を送り込み金属線の交差点が溶接機の位置に達したときに金属線を一時的に停止させて溶接機を作動させ、ついで次の交差点まで送り込むという間欠的な動きをさせる必要がある。このような場合に金属線の解舒に伴って金属線に働く張力の変化により金網の品質にばらつきが特に生じやすくなる。
【0005】
金属線の解舒に伴って金属線に働く張力の変化を少なくする方法として特許文献2にはテンションコントロール方式、すなわち金属線にかかる張力を検出し、張力がかかり過ぎるとボビンのブレーキを強くして金属線の張力を一定範囲に保たれるようにブレーキに強弱をつける方式が記載されている。しかしこのための装置は複雑となりがちでコスト高になりやすい。
【特許文献1】国際公開WO03/028919号公報
【特許文献2】特開2001−341126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ボビンに巻かれた金属線が解舒される際に金属線に働く張力の変動が小さく、品質のばらつきが小さい金網を簡単に製造することができる金属線供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、ボビン軸の周りに回動自在に装着されたフランジ付きボビンに巻かれた金属線巻体からボビンを回動させながら金属線を解舒して供給する金属線供給装置であって、ボビンのフランジに圧接する制動手段、金属線の解舒に伴って減少する金属線巻体の直径を検出する検出手段、および上記検出手段で検出した値の減少に応じて減少する押圧力を前記制動手段に付勢する付勢手段を有する金属線供給装置である。
【0008】
以下本発明について一例を挙げて詳しく説明する。
図1、図2および図3に示すように、フランジ1、1’を有するボビン2はボビン軸3に回動自在に支えられており、ボビン2の巻き取り面4に金属線5が巻かれて金属線巻体6が形成されている。金属線5は金属線巻体6の金属線の接線方向に引っ張られて解舒され(いわゆる横取り)、これによりボビン2は図の矢印方向に回動する。制動手段は制動部軸、制動部アームおよび制動部シューからなる。ボビン軸3とほぼ平行に制動部軸7が配置されている。制動部アーム8の一端9に設けた孔に制動部軸7が嵌っており、制動部アーム8が制動部軸7の周りに揺動自在に制動部アーム8の一端9で制動部軸7に支えられている。制動部アーム8の他端には棒状の制動部シュー10が設けられ、制動部シュー10はボビン2のフランジ1および1’の外周面に圧接するようになっている。なお、もしボビンがボビン軸に直接に支えられずに、ボビン軸3に回動自在に支えられたボビン受け体にボビンが載置される場合、本発明において「ボビン」とはボビン受け体およびボビンを指すものとする。
【0009】
検出手段は検出部アームおよび検出部ローラーからなる。検出部アーム11の一端12に設けた孔に制動部軸7が嵌っており、検出部アーム11が制動部軸7の周りに揺動自在に検出部アーム11の一端12でで制動部軸7に支えられている。検出部アーム11の他端には検出部ローラー13がローラー軸14の周りに回動自在に設けられ、金属線巻体6の表面に検出部ローラー13が接触するようになっている。検出部アーム11の一端12と制動部アーム8の一端9とは制動部軸7上で互いに隣接した状態で2個のスラストカラー15および16に挟持されている。
【0010】
前記付勢手段は引っ張りバネからなる。引っ張りバネ17の一端は制動部アーム8にそして他端は検出部アーム11にそれぞれ係合されている。前記制動部シュー10と前記検出部ローラー13とは前記制動部軸7とボビン軸3とを含む仮想面(図2で一点鎖線で示す)に対して互いに反対側に位置している。引っ張りバネ17は制動部アーム8と検出部アーム11の間の角度を狭めるように働き、制動部シュー10と検出部ローラー13とでボビン2を挟む形となる。検出部ローラー13は引っ張りバネ17の力により金属線巻体6の表面に当接し、金属線巻体6の回転に伴って回転するので金属線を傷つけることない。金属線の解舒に伴って金属線巻体6の直径が減少しても検出部ローラー13は常に金属線巻体6の表面に当接しているので検出部ローラー13の位置により金属線巻体の直径値が検出される。
【0011】
金属線の解舒の当初すなわち金属線巻体6の直径(巻き層の厚み)が大きいときは、検出部ローラー13と制動部シュー10との間の距離は相対的に大きく、検出部アームと制動部アームとの間の角度が相対的に広いので引っ張りバネ16が大きく引き延ばされてバネの引っ張り力が大となり、制動部シュー10はフランジ1、1’に強く圧接された状態で摺動して大きな摩擦力がフランジに働き、この摩擦力は引き出される金属線に働く張力を相対的に大きく増大させる。金属線の解舒に伴って金属線巻体直径(巻き層の厚み)が次第に小さくなると、検出部ローラー13が移動し(金属線の解舒の最終段階における検出部ローラーを図2で13’に示す)、検出部アームと制動部アームとの間の角度が狭くなり引っ張りバネの長さが短くなる。そのためバネの引っ張り力は減少して、制動部シュー10のフランジ1への圧接力は減少して摩擦力も減少し、この摩擦力による引き出される金属線に働く張力の増大は相対的に小さくなる。なおバネの引っ張り力の方向も変化するがこの変化による制動部シューの圧接力の変化は比較的に小さいので無視しても差し支えない。
【0012】
もし制動部シュー10がフランジ1、1’に圧接されていない状態で金属線巻体6から金属線を所定の速度で連続的に引き出した場合に金属線にかかる張力はボビン軸3とボビン2との間の摩擦力によって発生するが、この張力は金属線の解舒に伴って金属線巻体直径が小さくなるに従って増大する。もし一定の圧接力で制動部シューを作動させている場合でも同様に金属線に働く張力は金属線巻体の直径が小さくなるに従って増大する。本発明においては、金属線の解舒に伴う金属線巻体の直径の減少に応じて検知部ロールが移動し、引っ張りバネの長さが短くなってバネの引っ張り力は減少し、制動部シューのフランジへの圧接力は減少してフランジが受ける摩擦力も減少するので、金属線の解舒に伴う金属線張力の増大は抑制される。このように本発明により金属線の張力を所定の範囲の値に維持することができる。従って金属線の解舒に伴って金属線に働く張力の変動を従来に比して小さくすることができる。
【0013】
ボビンの取り替えの際には、ボビンの取り外しの邪魔にならないように検出部アームおよび制動部シューを外側に移動させた状態で、金属線が無くなった空ボビンを持ち上げてボビン軸から取り外した後、金属線が巻かれたボビンをボビン軸に差し込むことにより行う。
【0014】
引っ張りバネの寸法、弾性係数、引っ張りバネの両アームへの取り付け位置、両アームの長さ、ボビンの寸法、フランジおよび制動部シューの接触面積、材質等を予め調節しておくことにより金属線の解舒に伴う金属線の張力を所定範囲内に維持して張力変動を最小にすることができる。
【0015】
本発明で使用する金属線としては、鉄、ステンレス、銅、アルミニウムその他の金属製であって必要に応じて表面を金属メッキした線材であって直径が0.3〜1.2mmのものが用いられる。また上記制動部シューの材料としては金属、プラスチック製などのものが使用され、上記ボビンのフランジの材料としては木材、金属製などのものが用いられ、厚みが5〜20mmのものが用いられる。
【0016】
本発明の他の実施態様は以下の通りである。
(1)金属線巻体の直径を検出する検出手段としては上述の機械的に接触させる方式以外に、光学的、電磁的方式を用いた検出手段を使用することができる。
(2)付勢手段としては、上述の引っ張りコイルバネの代わりに圧縮コイルバネ、ねじりバネなどのバネを使用することができる。例えば図4に示すように検出部アームの一部分を延伸させてボビン軸から見て制動部アームよりも外側に位置するようにして検出部アームの延伸部分と制動部アームとの間に圧縮コイルバネを設けることができる。
【0017】
(3)上述のように制動部アーム8の一端9と検出部アーム11の一端とを同一の軸(制動部軸)に支えられるようにする代わりに別々の軸を設けてそれぞれ制動部アームおよび検出部アームの一端を支えるようにしてもよい。
(4)制動部シューはボビンの両フランジに圧接させる代わりに、ボビンの一つのフランジだけに圧接させてもよく、また制動部シューをボビンのフランジの外周面に圧接させる代わりにフランジの側面に圧接させてもよい。もし前記のボビン受け体を使用している場合は制動部シューをボビン受け体のフランジ部分に圧接させてもよい。
(5)上述のように制動部軸とボビン軸を平行に配置する代わりに、両軸を非平行に例えば直交するように配置してもよい。特に制動部シューをボビンのフランジの側面に圧接させる場合にはこの配置が好ましい。
【0018】
本発明の金属線供給装置は、金属網製造装置、金属線入りガラス板の製造装置
、金属繊維ハイブリッドプリプレグの製造装置などに用いられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の金属線供給装置によれば、金属線の解舒に伴って金属線に働く張力の変動を従来に比して小さくすることができる。従って平行に多数本配列させた金属線を互いに交叉させてその交差点を溶接して正方形または菱形の網目形状を有する金属網を製造する金属網製造装置に本発明の金属線供給装置を適用することにより、ばらつきの少ない品質の金網を効率的に製造することができる。
また従来のいわゆるテンションコントロール方式、すなわち金属線にかかる張力を検出し、張力がかかり過ぎるとボビンのブレーキを強くして金属線の張力を一定範囲に保たれるようにブレーキに強弱をつける方式に比して本発明の金属線供給装置では簡単にしかも安定して金属線の張力を一定にさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に実施例をあげて本発明の実施の形態を具体的に説明する。
木製でフランジ直径110mm、フランジ巾10mm、巻き芯部直径45mm、高さ150mmのボビンに、直径0.5mmの軟鋼線を、巻き外径約100mmまで巻き、このボビンから軟鋼線を解舒して編網機へ供給し、軟鋼線を使い切るまで編網したところ、軟鋼線に働く張力の変動を小さくすることができ、実用上支障のない網目の揃った金網を編網することができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例を示す斜視図。
【図2】本発明の実施例を示す正面図。
【図3】本発明の実施例を示す平面図。
【図4】本発明の他の実施例を示す平面図。
【符号の説明】
【0022】
1・・ボビンのフランジ
2・・ボビン
3・・ボビン軸
4・・ボビンの巻き取り面
5・・金属線
6・・金属線巻体
7・・制動部軸
8・・制動部アーム
9・・制動部アームの一端
10・・制動部シュー
11・・検出部アーム
12・・検出部アームの一端
13・・検出部ローラー
14・・ローラー軸
15・・スラストカラー
16・・スラストカラー
17・・引っ張りバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビン軸の周りに回動自在に装着されたフランジ付きボビンに巻かれた金属線巻体からボビンを回動させながら金属線を解舒して供給する金属線供給装置であって、ボビンのフランジに圧接する制動手段、金属線の解舒に伴って減少する金属線巻体の直径を検出する検出手段、および上記検出手段で検出した値の減少に応じて減少する押圧力を前記制動手段に付勢する付勢手段を有する金属線供給装置。
【請求項2】
前記制動手段は前記ボビン軸に平行に設けた制動部軸、制動部アームおよび制動部シューからなり、制動部アームは制動部軸にその周りに揺動自在にその一端で支持され、制動部アームの他端に制動部シューが設けられており、制動部シューが前記フランジに圧接している請求項1記載の金属線供給装置。
【請求項3】
前記検出手段は検出部アームおよび検出部ローラーからなり、検出部アームは前記制動部軸にその周りに揺動自在にその一端で支持され、検出部アームの他端に前記検出部ローラーが設けられており、検出部ローラーが金属線巻体の表面に当接することができるようになっている請求項2記載の金属線供給装置。
【請求項4】
前記付勢手段は一端が前記制動部アームにそして他端が前記検出部アームにそれぞれ係合された引っ張りバネであり、そして前記制動部シューと前記検出部ローラーとが前記制動部軸とボビン軸とを結ぶ仮想面に対して互いに反対側に位置するようにした請求項3記載の金属線供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−137512(P2006−137512A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327136(P2004−327136)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(501381697)松井金網工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】