金属製平型ガスケット
本発明は、金属製平形ガスケット(1)に関する。ガスケット(1)は、1つ以上のガスケット層(1)を備え、概ね平面的で、第1表面と第2表面(21,22)とを有する。ガスケット(1)の水準面(E)は、表面間の中心を伸長し、キャンバ(3)がガスケット層(2)に形成され、キャンバ(3)は、ガスケット層(2)の第1表面(22)を越えて突出しており、幅(B)よりも長さ(L)の方が大きく、第1のレベル(N1)と第2のレベル(N2)を有しており、第1のレベル(N1)は、ガスケット層(2)の第1表面(21)にあるキャンバ底部(30)を通って、ガスケット層の水準面(E)と平行して走る仮想レベルであり、第2のレベル(N2)は、キャンバ(3)の頂上部(31)を通って、ガスケット層の水準面(E)と平行して走る仮想レベルであり、キャンバ(3)は、2つのレベル(N1, N2)の間を上昇する傾斜エリア(32)を有しており、傾斜エリア(32)は、2つのレベル(N1, N2)の間に、各々が山(41)と谷(42)とを有する2つ以上の波形(40)で構成された波形構造(4)を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製平型ガスケット、とりわけ自動車の内燃機関に用いられる金属製平型ガスケットに係り、特に、シリンダヘッドガスケット、高圧シールガスケット、または、排気処理を含む排気系のガスケット、たとえば排気マニホルドガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼ガス開口部をシールするため、こうしたガスケットは、通常ガスケット層に形成され、燃焼ガス開口部を完全に取り囲むビードを、使用する。作動中にビードが過度に圧縮され、その弾性を失うことを防ぐため、多くの場合、ビートよりも圧縮に強く、作動中にビードが完全に圧縮されるのを防止する、いわゆるストッパがビードと共に用いられる。こうしたストッパは、多くの場合、ビードと燃焼ガス開口部との間に配置されるが、このようなストッパの配置により、高温の燃焼ガスがビードまで流入することを防止できる。ビートとストッパを隣接させるために、設計上かなりのスペースが必要とされる。しかしながら、こうしたスペースが、あらゆる場合に許されるとは限らない。たとえば、シリンダライナーを備えるエンジンブロック用シリンダヘッドガスケットの場合、最適な設計とするためには、弾性エレメントであるビードと非弾性エレメントであるストッパの配置を個々のエンジンに合わせて調整する必要であるが、これらのエレメントの機能を確保するためには、これらの間の距離が最小となるようにする必要がある一方で、前述のように、これらのエレメントのそれぞれが最小限のスペースを必要とする。
【0003】
このようなビードとストッパの配置では、多くの場合に、ストッパが別個のエレメントとして製造されることに起因するさらなる問題がある。たとえば、環状の金属層からなるストッパは、ビードを構成する金属層の上に配置および固定される。この場合、原材料の消費量が増加するだけではなく、製造コストも増加してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第358855号公報
【特許文献2】ドイツ国特許公開第102005003017号公報
【特許文献3】イギリス国特許第2097871号公報
【特許文献4】米国特許第4203608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、たとえばフルビードまたはハーフビードとして金属製ガスケットの中に形成されたキャンバの完全な平坦化を、別個のストッパエレメントを使用することなく防止する、金属製平型ガスケットを開示することである。本発明のさらなる目的は、キャンバ上の圧力分布を、可能な限り均質に保つことである。本発明のもう1つの目的は、多層平型ガスケットのみならず、単層平型ガスケットにも適用可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、本発明の金属製平型ガスケットおよびその使用方法、さらにはこの平形ガスケットのより好ましい実施形態により達成される。
【0007】
第1の態様において、本発明は、少なくとも1つのガスケット層を備え、概ね平面的で、第1表面と第2表面とを有する金属製平型ガスケットに関する。ガスケットの水準面が、ガスケット最大貫通開口部のエッジのレベルに位置するように形成される。すなわち、燃焼室開口部や燃焼ガス開口部などの開口部を直接的に包囲するエリアが、ガスケットの水準面となる。高圧ガスケットなど、いくつかの適用例においては、最大貫通開口部を本発明のシールエレメントで包囲する貫通開口部とする必要はない。なお、平面形状とは、シールすべき面同士の間にガスケットを取り付けていない状態、すなわち、ガスケットが圧迫されていない状態についての表現である。製造条件に由来するガスケットの水準面のばらつきなど、完全な平面状態からの僅かなズレは、平面状態からの偏位とはみなさない。
【0008】
ガスケット層にはキャンバが形成されるが、このキャンバは、ガスケット層の第1表面を越えて突出しており、幅よりも長さの方が大きい。キャンバは、第1のレベルを有して形成される。この第1のレベルは、ガスケット層の第1表面にあるキャンバ底部を通って、各ガスケット層の水準面と平行して走る仮想レベルである。ガスケット層におけるガスケット水準面は、ガスケット層の平らな表面間の中心を走るよう形成される。従って、第1のレベルは、この中心レベルと平行に走る仮想平面であり、ガスケット層の第1表面(この面の上にキャンバは突出する)上に位置し、キャンバ底部を通って広がる。キャンバ底部は、キャンバと隣接するエリアであり、このエリアでは、キャンバはまだ第1のガスケット層の上へと上昇を開始しておらず、傾斜はゼロである。
【0009】
キャンバは、さらに第2のレベルを有して形成される。この第2のレベルは、ガスケット層の水準面と平行して走り、キャンバの頂上部を含む仮想レベルである。このように、第1のレベルと第2のレベルは、キャンバの最高地点および最低地点を、仮想レベルの形で画定する。キャンバは、これらのレベル間を上向きに傾斜する。本発明において、この傾斜エリアは波形の構造になっている。この波形構造は、各々が山および谷を有する2つ以上の波形で構成され、この波形が2つのレベル間を伸長するようになっている。従って、フランジ部分は、第1のレベル方向に2つ以上の振幅、これと交互して、もう一方の第2のレベル方向に2つ以上の振幅を有する。ガスケット層における2つの表面の一方からは、それぞれの傾斜エリアにつき、2つの山と2つの谷が確認できる。傾斜エリアの山および谷の数を定める際、通常、底部および頂上部または頂上平坦部については考慮に入れない。しかしながら、例外が1つだけある。キャンバが、その頂上部に2つの頂点(すなわち、1つの傾斜につき1つ)を有しており、両者の間に、平坦部ではない谷を1つ有する場合である。この場合にのみ、傾斜の両頂上部および、その中間の谷を考慮に入れて山および谷の数を数える。従って、中央の谷は、両傾斜エリアの谷としてカウントされる。
【0010】
キャンバの傾斜エリアにおける創意に富んだ設計に加えて、金属製ガスケット層は、全体としては肉眼視できるが、重畳的な微細構造からなっている。少なくとも2つの連続する波型形状をした微細構造は、効果的にキャンバを肥厚化し、強化する。その結果、こうした微細構造を用いない場合と比べて、キャンバはかなり圧縮に強くなる。このように、自らを強化するよう形成されたキャンバは、付加的手段を用いることなく、非常に信頼性の高い、長寿命のシールエレメントとして作用する。これにより、シールエレメント用のスペースを大幅に削減することが可能となる。一般的に、このシールエレメント用スペースが、通常のビードまたはハーフビードが要するスペースを超えることはない。
【0011】
キャンバの基本的な外形、すなわち傾斜エリアにおける波形構造を考慮しない場合のキャンバの基本的な軌道は、概して、従来のビードまたはハーフビードのいずれかと同様である。幅方向の断面図において、キャンバは一般にアーチ型または台形型であるが、Ω型、三角型またはその他の断面形状とすることも可能である。キャンバ頂部の断面形状は、頂上状であっても平坦状であってもよい。フルビードの場合、キャンバは、両側の立ち上がり点に位置する2つのビード底部と、そこからビートの頂上へと上昇する2つの傾斜エリアを有する。頂部を頂点状とする代わりに、一定の高さのエリアとなる平坦状としてもよい。幅方向の断面は、対称であってもよいし、非対称としてもよい。キャンバがハーフビードの場合、ビード底部も傾斜エリアも1つとなる。この場合、頂上部が、対向する傾斜エリア端部にある第2のビード底部に相当する。従って、幅方向の断面は、フルビードの断面を半分にした形状、すなわち半アーチ型または半台形型となる。上述したように、このような形状は、従来のガスケットにおいて、すでに公知である。キャンバのデザインは、大部分において、最新技術におけるビードまたはハーフビードと変わりない。相違点は、上述したように、傾斜エリアにおける重畳的波形構造にある。
【0012】
フルビードの場合、それぞれの底部から上昇する2つの傾斜エリアが存在する。一方の傾斜のみを波形構造とすることも可能であるが、それぞれ山と谷を備えた2つ以上の波形を、両方の傾斜エリアに配することが好ましい。とりわけ、両傾斜エリアにおいて、波形構造が同一であることが好ましい。しかしながら、両傾斜エリアの波形構造を異なるデザインとすることも可能である。また、波形構造(同一であれ異なるデザインであれ)を、別デザインの傾斜エリアと組み合わせ、全体としてキャンバの断面を非対称とすることも可能である。さらには、キャンバの全体的構造および/またはキャンバの波形構造を、キャンバの長手方向において変化させることも可能である。たとえば、キャンバの高さ、キャンバの幅および/または傾斜エリアの勾配を、長手方向に沿って変化させることができる。同様のことが、傾斜エリアのデザインについても該当する。このような変更により、キャンバを計画的に適合させることが可能となり、シールすべき対向面および金属製平型ガスケットへの組み込み状態における作動条件に合わせて、変形させることが可能となる。
【0013】
一般に、長手方向におけるキャンバの軌道は、幅寸法より長さ寸法が大きくなっている限り、いかなる形状をとってもよい。長手方向において、キャンバは線状でも曲線状でもよく、たとえばアーチ形または蛇行形にすることができ、1回または数回角度をつけてもよいし、その他の同様の形状を採ることもできる。また、軌道を2つに分岐することも可能である。キャンバを円形状とできるが、この場合、閉鎖円としてもよいし、端部の離れた開口円としてもよい。閉鎖軌道の場合、キャンバが、ガスケット層の貫通開口部を包囲することが好ましい。この貫通開口部は、ガスケットにおける様々な貫通開口部であり得る。たとえば、シリンダヘッドガスケットの場合、燃焼室開口部、冷水開口部、オイル開口部、ボルト開口部などである。また、単一のキャンバで、同時に複数の貫通開口部を包囲することも可能である。一般に、動歪みが高い開口端部(たとえば燃焼室開口部)においては、動歪みの低い開口端部(たとえばボルト開口部)よりも広範囲に、エンボス加工を施すことが好ましい。波形構造を重畳させたキャンバは、一般に、従来のシールエレメントまたは支持ビードと同じように、金属製ガスケット層に配置することができる。従って、該キャンバは、本発明の金属製平型ガスケットにおいて、支持エレメントとしても使用可能である。この場合、キャンバが、貫通開口部を完全に包囲する必要はない。ボルト開口部などの場合は、部分的にキャンバを配すれば足りる。さらには、貫通開口部と直接的に関係しないキャンバをガスケット層に設け、支持エレメントとして機能させることも可能である。たとえばキャンバを、いわゆるガスケットの「後背地(バックランド)」、すなわちガスケットの外側エッジに隣接するエリアに設けることができる。こうした支持エレメントの配置例の1つとして、ガスケットの外側エッジの1つから離れた位置に、これと平行に直線的に設けることができる。複数の支持キャンバをガスケットに設けることも可能であり、またガスケット層の大部分をカバーするようキャンバを設けることもできる。1つのガスケット内に、シールエレメントとしてのキャンバと支持エレメントとしてのキャンバの両者を使用する場合、通常、支持エレメントの高さを、シールエレメントの高さよりも低くする。
【0014】
波形構造における波形の長手方向の軌道は、キャンバ全体の長手伸長方向に一致する。波の外形は、正弦曲線であり得る。なお、外形とは、波形構造の幅方向断面の外形を意味する。正弦波形構造における谷および山の各断面は、通常アーチ形であり、とりわけ円弧または楕円のアーチ形である。しかしながら、三角形、台形、その他の形状とすることも可能である。
【0015】
本発明によれば、波形構造は、キャンバの傾斜エリアに存在すれば十分である。しかしながら、波形構造が、キャンバ全幅にわたって伸長すれば、なお一層好ましい。この場合、波形構造は傾斜エリアに存在するだけでなく、キャンバの頂点エリアまたは頂部平坦エリアにも存在する。特に、山および谷が、キャンバの全幅にわたって存在することが好ましい。また、1つの谷から隣の谷へと伸長する、または1つの山から隣の山へと伸長する波形構造の断面が、本質的に同幅であることが好ましい。なお、ここで「断面の幅」という表現は、2つの隣り合う波山の頂点を通り、ガスケットの第1表面および第2表面と交差して走る2本の平行線間の距離を意味する。「谷の幅」という表現も、同様である。
【0016】
キャンバの幅方向断面は、ガスケットの第1表面から第2表面へと徐々に上昇する傾斜エリアによって特徴づけられるが、ハーフビードの場合、傾斜エリアは1つであり、フルビードの場合、傾斜エリアは2つである。キャンバ全体の外形は、すでに述べたように、たとえば台形であってもよいが、好ましくは円弧または楕円のアーチ形である。円弧または楕円のアーチ形である場合、個々の山の頂点を結ぶ包絡線もまた、円弧または楕円のアーチ形となる。同じことが、谷の最低点を結ぶ包絡線にも当てはまる。個々の山の頂点の高さは、徐々に増加していくが、キャンバの頂点方向に向かう角度は変化する。キャンバ幅方向の軌道に沿って隣り合う山または谷の間の個々の段の高さに関しては、これら高さの差は、キャンバの頂上に向かうにつれ減少する。従って、ガスケットの第1表面を越えて突出する各山の頂点の高さを測って、隣接する各ペア頂点の高さの差を計算した場合には、キャンバ底部からキャンバ頂部に向かうにつれ、高さの差は減少することになる。これにより、アーチ型キャンバにおける個々の波の間で、圧力が均等に分配される。この形状は、新品状態においてだけでなく、圧縮状態から戻った解放状態においても、同様に得られる。
【0017】
キャンバ内における波形構造の設計に関しては、底部から頂点へと徐々に伸長する傾斜エリアが、可能な限り規則的で、比較的小さい構造サイズであると有利であることが、数々の実施例により示されている。波形構造とキャンバの全体構造との関係を、以下に記載する。キャンバの幅方向の断面、すなわち、キャンバの長手伸長方向に直交する断面に、仮想センターラインを導入する。このラインは、キャンバに沿って、ガスケット層材料の厚さの半分の位置を伸長する。波形構造エリアにおいて、この中央ラインは、波形構造の軌道をたどる。キャンバのこの断面には、さらに2つのラインが構成される。以下、これらのラインを第1連結ライン、第2連結ラインと呼ぶ。これらの連結ラインは、それぞれ、いくつかの直線部分で構成される。第1の連結ラインの場合、これらの直線部分は、ガスケット層第1表面上において、隣り合う谷の最低点を相互に連結している。第2の連結ラインの場合、上記直線部分は、ガスケット層第2表面上において、隣り合う谷の最低点を相互に連結する。キャンバ内の波形構造は、第1の連結ラインも第2の連結ラインも、中央ラインと交差しないように設計されている。これは、谷の深さが、比較的に浅い場合にのみ可能となる。キャンバが全幅にわたって、均一で効果的な支持を提供できるのは、主として、このような振幅の小ささによっている。
【0018】
波形構造は、キャンバの長手方向の全長にわたって存在してもよいし、長手方向のいくつかのセクションにのみ、存在するようにしてもよいが、キャンバの長手方向の全長にわたって存在する方が、好ましい。さらに、製造を容易にするという観点からは、波形構造のデザインは、該全長にわたって、均一であること好ましい。しかしながら、波形構造の数、形状および/または高さを、キャンバの長手方向において変化させることも可能である。これにより、キャンバの長手方向において、キャンバの剛性を意図的に変更することが可能となる。
【0019】
キャンバおよびキャンバ内に存在する波形構造は、ガスケット層のエンボス加工によって製造することが好ましい。両者の構造は、同一のエンボス加工ステップで製造できる。特に好ましい実施例において、キャンバ内の波形構造は、閉じた状態でオス部とメス部が相補的なダイによって形成される。エンボス加工ダイは、波の山と谷との間の山腹部にあたるガスケット層のエリアにおいて、山の最高点エリアおよび谷の最低点エリアよりも、互いに近接するようになっているため、波の山腹エリアにおける材料の厚さは、波形構造のその他のエリアの厚さよりも薄くなる。波形構造は、ガスケット層の谷または谷エリアにおける材料の厚さについては材料の表面に対して常に垂直に測定されるようになる一方、山腹エリアは、およそ5〜40%、好ましくは10〜35%、最も好ましくは15〜30%のテーパを有するように製造される。波形構造における山および谷のエンボス加工は、ガスケット層の両表面間の振幅で構成されており、キャンバを効果的に肥厚化する。ガスケット層の両面において山を結ぶ包絡線間の距離は、波形構造のエンボス加工を施す前のガスケット層の元の厚さよりも大きい。驚くべきことに、山腹のテーパを有するエリアにおいては、引張強度が増加するだけでなく、せん断応力も増加することが観察されている。このことは、山腹のテーパが結晶粒微細化を伴っていることを示している。結晶粒微細化は、山腹エリアの硬度を高めるだけでなく、延性をも増加させる。山腹エリアの硬度は、山および谷エリアまたは平坦エリアの硬度よりもかなり高くなる場合もある。このような山腹テーパの微視的な効果は、山腹テーパの全体的な効果および肥厚化効果と相まって、波形構造を伴わないキャンバと比較して、キャンバ圧縮率の大幅な減少をもたらす。このようにして、自らを支持し、極めて長寿命のシールエレメントを構成するキャンバが提供される。さらに、波段の高さの増加を抑え、これにより圧力の均一な分散を可能とすることによっても、寿命の長さはサポートされる。それにもかかわらず、所要スペースが、波形構造を伴わない従来のビードの場合よりも大きくなることはない。
【0020】
たとえば、シリンダヘッドガスケットまたは排気マニホルドガスケットの燃焼ガス開口部のような、シールするのが困難な貫通開口部であっても、自らを単独で強化するビードであれば、それだけで十分に優れたシール手段となりうる。そのシール効果は、同じような形の従来のビードをはるかに凌ぐものである。このようなシール効果の向上は、ガスケット層両側の波と山のエリアに形成された多数のシールラインによるものでもある。シールラインを多数設けることにより、シールすべき表面に対する良好な適応性が得られ、卓越したシール効果が得られる。このシール効果は、強く、恒常的な負荷を伴う場合であっても、シールする間隙が絶えず動いている場合であっても、長期間にわたって維持される。その復元力についても、同様の基本形状を有する従来のビードと比較して、はるかに高くなる。
【0021】
波形構造を備えたキャンバは、単独で十分に貫通開口部のシールエレメントとして機能し得る。本発明のシールエレメントは、とりわけ、シールエレメントが主要な荷重接続部に置かれるような場合に好適である。しかしながら、このことは、本発明のシールエレメントを、その他のシールエレメントと共に用いる可能性を排除するものではない。波形構造を備えたキャンバを、ストッパエレメントと共に用いることも、概念的には可能であるが、波形構造を備えたキャンバは、さらなる支持エレメントを何ら必要としないため、一般的には、このことは有利な手段とはいえない。波形構造を備えたキャンバと組み合わせて、従来のビードを付加的シールエレメントとして用いる方が、有利である。必要に応じて、両エレメントの復元力を相対的に調整することも可能である。たとえば、従来のビードの硬度を、隣接する波形構造を備えたキャンバよりも低くし、波形構造を備えたキャンバが、従来のビードの支持エレメントとして機能するようにしてもよい。他方、頑強な用途に耐え得るよう、ビードの形状を適切にデザインすることにより、波形構造を備えたキャンバを、アキシアル荷重接続部に置くことも可能である。
【0022】
すでに述べたように、波形構造を備えたキャンバを、必ずしも環状に閉じたシールエレメントとして用いる必要はない。波形構造を備えたキャンバを、たとえば、ガスケットのエッジ領域で、単なる支持エレメントとして用いることもできるし、同様に、シールリップのような弾性シールエレメントの支持エレメントとして用いることも可能である。
【0023】
また、波形構造を備えたキャンバは、コーティングの受け入れにも適している。波形構造における山は、この際、チャンバとして作用して、コーティングが流れ出すことを防止し、ガスケット層とコーティングとの接着性を改善する。コーティングには、たとえば、マイクロシーリングや滑り摩擦を改善する方法など、最新技術において公知の、あらゆる金属製平型ガスケット用コーティング法を用いることができる。適切な方法でコーティングを行えば、キャンバの凸側にコーティングを凝集させることが可能である。なお、この凸面は、完全にはコーティングで満たさないことが好ましい。好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下とする。
【0024】
本発明の金属製平型ガスケットは、単層ガスケットとして作成できる。波形構造を備えたキャンバを用いることにより、ストッパのような、さらなる支持エレメントの必要はない。また、本発明の金属製平型ガスケットは、2つ以上のガスケット層からなる多層ガスケットであってもよい。そのうちの少なくとも1つの層は、波形構造を備える必要があるが、その他のガスケット層については、任意にデザインすることが可能であり、シールエレメントとして用いるにせよ、支持エレメントとして用いるにせよ、波形構造を備えたキャンバを設けてもよいが、必ずしもその必要があるわけではない。さらなるガスケット層における、波形構造を備えたキャンバは、隣接するガスケット層のもう1つのシール/支持エレメントと向き合うように配置することが好ましい。こうしたシール/支持エレメントとして、たとえば、波形構造を伴うキャンバ、ビードまたはハーフビードビードを使用することができる。互いに向かい合うシール/支持エレメントは、その微細な形状についても、鏡面対称に配置することが好ましい。しかしながら、波形構造を伴うキャンバを、隣接するガスケット層の平坦なエリアと向かい合うようにすることも可能である。この場合、平坦エリアは、波山の座りをよくするための平坦支持部を形成する。さらなるガスケット層におけるキャンバまたはビードは、その頂上部が、第1のガスケット層のキャンバ頂上部に向かう方向に配置してもよいし、代替的に、互いに離れる方向に配置してもよい。多層ガスケットの場合、ガスケット層は、同じ伸長性を有するようにしてもよいし、異なる伸長性を有するようにしてもよい。金属製平型ガスケットにおいて、1つ以上のガスケット層を、少なくとも1つのより大きなガスケット層に対して、短くし、ガスケットのエッジ領域から回避されるようにしてもよい。たとえば、これらのガスケット層を、複数の貫通開口部を迂回する環状またはメガネ状のインレーとして形成することが可能である。また、波形構造を備えたキャンバを有する方のガスケット層を、短縮ガスケット層としてもよい。
【0025】
金属製平型ガスケットは、従来技術による公知のシールエレメントを含むことも可能である。たとえば、さらなるシールエレメントとして、ビードやエラストマーシールリップを設けてもよい。また、ビードやハーフビードのような支持エレメントを設けることも可能であり、エンボス加工による材料の肥厚化を行ってもよい。シールエレメントの実効高を対称的に分配するため、クラッキングを行うことも可能である。すでに述べたように、少なくとも1つのガスケット表面上の少なくとも1つのガスケット層を、全面的または部分的にコーティングすることもできる。本発明の金属製平型ガスケットは、従来の材料、方法、道具を用いて製造できる。少なくとも1つのガスケット層に適した材料は、スチールであり、好ましくはバネ硬鋼またはステンレスバネ鋼である。バネ性で硬質という特質は、キャンバを導入する前に備わっていてもよく、また、熱処理などにより後から付加してもよい。その他のガスケット層は、同じ材料で作ってもよいし、たとえばカーボンスチールなど、その他の材料で製造してもよい。また、平坦なガスケット層の場合は、非弾性スチールを用いることもできる。排ガス処理を含む排ガス系に用いられるガスケットの場合は、800℃に至ることもある高温に直面するため、ニッケルを多量に含有するスチールなど、高温に強いスチールを使用することが望ましい。
【0026】
本発明の金属製平型ガスケットの好ましい応用例として、内部燃焼エンジンの分野におけるガスケット、とりわけシリンダヘッドガスケットまたは排気マニホルドガスケットとしての利用がある。この場合、燃焼ガス開口部のシールエレメントとして、波形構造を備えたキャンバを用いることが特に好ましい。なお、ここで燃焼ガスという用語を使用する場合には、排ガスおよび再循環排ガスも含まれる。最新技術のビードにおいて知られているように、隣接する貫通開口部の波形構造を、これら貫通開口部間の「ウェブ」と呼ぶエリアで連結させて、複数のキャンバで単一のキャンバセクションとすることも可能である。キャンバを連結する場合、貫通開口部から離れた傾斜エリアは、ウェブ部分内には入らずに、ともにウェブ部分の外側を通るようにすることが好ましい。これらと相補的なもう一方の傾斜エリアは、ウェブ部分を通過し、波形構造を備えたキャンバを形成しつつ連結する。そして、ウェブ部分のもう一方の終点で、キャンバは2つの傾斜エリアに分岐し、ウェブ部分を通過していない方の傾斜エリアとそれぞれ連結する。ウェブ部分のスペースは限られているため、波形構造の波の数を減らして、一部の波だけがウェブ部分を通過するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、シリンダヘッドガスケットである場合における、本発明の金属製平型ガスケットの平面図である。
【図2】図2は、排気マニホルドガスケットである場合における、本発明の金属製平型ガスケットの部分平面図である。
【図3】図3は、高圧ポンプ用ガスケットである場合における、本発明の金属製平型ガスケットの平面図である。
【図4】図4は、一実施例における、図1の線X−Xに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図5】図5は、他の実施例における、図1の線X−Xに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図6】図6は、他の実施例における、図1の線X−Xに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図7】図7は、他の実施例における、図1の線X−Xに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図8】図8は、他の実施例における、図1の線X−Xに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図9】図9は、他の実施例における、図1の線X−Xに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図10】図10は、他の実施例における、図1の線X−Xに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図11】図11は、他の実施例における、図1の線X−Xに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図12】図12は、一実施例における、図1の線Y−Yに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図13】図13は、他の実施例における、図1の線Y−Yに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図14】図14は、他の実施例における、図1の線Y−Yに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図15】図15は、他の実施例における、図1の線Y−Yに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図16】図16は、図2の線Z−Zに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図17】図17は、本発明の単層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図18】図18は、一実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図19】図19は、他の実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図20】図20は、他の実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図21】図21は、他の実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図22】図22は、他の実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図23】図23は、他の実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図24】図24は、他の実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図25】図25は、他の実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図26】図26は、他の実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図27】図27は、一実施例における、図18〜図26と同じ部分の三層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図28】図28は、他の実施例における、図18〜図26と同じ部分の三層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図29】図29は、一方のガスケット層よりも他方のガスケットの伸長が短い二層金属製平型ガスケットの、一実施例における部分断面図である。
【図30】図30は、一方のガスケット層よりも他方のガスケットの伸長が短い二層金属製平型ガスケットの、他の実施例における部分断面図である。
【図31】図31は、一方のガスケット層よりも他方のガスケットの伸長が短い二層金属製平型ガスケットの、他の実施例における部分断面図である。
【図32】図32は、図3〜図6の寸法を表す。
【図33】図33は、エンジンをライナーでシールするシリンダヘッドガスケットの場合における、本発明のガスケットの使用例である。
【図34】図34は、さらなる実施例における、図1の線Z′−Z′に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図35】図35は、最新技術における四層ガスケットの一例を示す部分断面図である。
【図36】図36は、最新技術における五層ガスケットの一例を示す部分断面図である。
【図37】図37は、図1の線Y′−Y′に沿った、最新技術における単層金属製平型ガスケットのさらなる例を示す部分断面図である。
【図38】図38は、波形構造を伴ったキャンバ部分を示す、ガスケット層断面の写真である。
【図39】図39は、図38のエリア7におけるガスケット層断面の顕微鏡写真である。
【図40】図40は、図38のエリア41におけるガスケット層断面の顕微鏡写真である。
【図41】図41は、図38のエリア8におけるガスケット層断面の顕微鏡写真である。
【図42】図42は、図38のエリア43におけるガスケット層の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面および写真を参照しながら、本発明を説明するが、これらは例示目的で示されるものである。ここに示す実施例は、好適な例をいくつか示しているに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。図面および写真において、同一要素には同一の参照番号を付す。区別を容易にするため、平面図ではなく断面図において、異なる傾斜エリアに属する要素についてはアスタリスクを付し、異なるガスケット層に属する要素についてはアポストロフィを付し、異なる貫通開口部に属する要素についてはクロスを付す。いくつかの図面において、特に鏡面対称のものにおいては、明白であることから、一方の側の参照番号を省略する。
【0029】
図1は、シリンダヘッドガスケットの例における、金属製平型ガスケットの平面図である。この平面図は、第1表面21および対向する第2表面22を伴ったガスケット層2を示している。燃焼ガス開口部5は、ガスケット層2にエンボス加工されたシールエレメントに包囲されている。このシールエレメントは、第1表面21を越えて突出する環状キャンバ3である。キャンバ3は、燃焼ガス開口部5の周りを円形方向に伸長するが、この長手方向の全長Lは、幅Bよりもはるかに大きい。キャンバ3には肉眼視できる構造が形成されているが、この巨視的構造は、キャンバ3の全幅Bにわたって伸長する複数の波形からなっている。個々の波の長手伸長方向は、キャンバ3の長手伸長方向と一致する。図1における同心性の線は、波形構造4を示している。ガスケット層2は、燃焼ガス開口部5の他、さらなる貫通開口部50(ガスケットの外側エッジ付近に設けられる)、ボルト貫通開口部51、冷水貫通開口部52、オイル貫通開口部53を備える。また、ガスケットの右側エッジ付近には、細長い直線状キャンバ3が設けられているが、このキャンバは、該側エッジ用の支持エレメントとして機能する。D1およびD2に示すような、2つの燃焼室貫通開口部5の間の狭いウェブ部分を通るようにキャンバを導く方法は、数通りある。D1に示す例の場合、移行エリアがかなり短く、キャンバ3の傾斜エリア32は、両者ともにかなりの方向転換を示すが、両傾斜エリア32の転換方向は、それぞれ異なる。D2に示す例の場合、燃焼室貫通開口部から離れた傾斜エリアだけが方向転換して、隣接する燃焼室貫通開口部の対応する傾斜エリアと連結するのに対して、燃焼室貫通開口部に近い傾斜エリアは曲線を変化させずに、徐々に連結していく。
【0030】
図2は、排気マニホルドガスケットの場合における、金属製平型ガスケットのもう1つの実施例を示す部分平面図である。これは、たとえば4つの燃焼ガス開口部5のうちの2つの燃焼ガス開口部周辺を示す部分図である。また、ボルト開口部51も示されている。
【0031】
図3は、本発明のキャンバ3のさらなる応用例であり、高圧開口部105を備えたガスケット1を示す。ガスケット1において最も大きい開口部は、高圧開口部105ではなく、ピストン付きシリンダライナーを高圧ガスポンプのシリンダヘッドにシールする開口部54である。従って、ガスケット水準面Eは、ビード64の貫通開口部へと向かう側の、貫通開口部54を囲むエッジゾーンRによって決定される。ガスケットは、さらに、ビード65にシールされた低圧貫通開口部55、4つのボルト開口部51を備える。この例においては、高圧開口部105が、本発明のキャンバ3に包囲されている。
【0032】
次に、波形構造4を伴ったキャンバ3の詳細な設計について、後続の断面図を考慮しつつ説明する。ここに示す断面図は、すべて、キャンバ幅方向の断面図であり、従ってキャンバの伸長方向と直交する断面である。これら断面図は、シリンダヘッドガスケットや排気マニホルドガスケットに適用されるだけでなく、たとえば高圧ガスケットにも適用される。高圧ガスケットの場合においては、燃焼ガス開口部5についての記述が、高圧用の開口部105の記述としても援用される。
【0033】
図4〜図7は、図1の線X−Xに沿った断面図である。これらの断面図には、キャンバまたは波形構造の寸法などに関して、ほとんど相違はない。図4に示されるように、キャンバ3は、ガスケット2の第1表面21を越えて突出し、2つの底部30および30*の間を伸長する。底部30、30*は、キャンバの平面包囲部からキャンバへの移行ポイントであり、ここでは接線の傾斜はまだゼロである。底部30および30*間を幅Bで伸長するエリアにおいては、傾斜はゼロではなくなる。高さに関しては、キャンバ3は、底部30および30*を含む第1レベルN1と、頂上部31(図8に示すように、31、31*と頂上部が2つの場合もある)を含む第2レベルN2との間を伸長する。N1およびN2の両レベルは、ガスケット層2の水準面Eと平行に走る。この水準面Eは、中間、すなわち材料の厚さ半分の位置を走っており、燃焼ガス開口部を直接包囲するエリアによって決定される。キャンバ3の底部30、30*と頂上部31との間には、2つの傾斜エリア32、32*が存在し、底部から頂上部31へと徐々に上昇している。これら傾斜エリア32、32*のそれぞれに、2つの波形40が形成される。これら波形40の各々は、表面21について見た場合、交互する山41と谷42を2つずつ有する。同様のことが、ガスケット層2の表面22についても当てはまる。キャンバ3の頂上部31が1つである場合においては、山および谷を数える際に、底部30、30*も頂上部31も含めない。従って、各傾斜エリア32、32*は、それぞれ、上レベルN2方向に2つ、下レベルN1方向に2つの振幅を備える。
【0034】
図5は、キャンバ3のアーチ形の軌道全体を示している。個々の山41の頂点、すなわちS1、S2、S3、S4およびS5の各点を、包絡線(H1)により互いに連結すると、円弧の一部を表す曲線が得られる。同様のことが、谷42の最低点M1〜M4を、包絡線(H2)で連結した場合にも当てはまる。こうして、アーチ形の軌道を有する全体構造、すなわちキャンバ3には、微細構造、すなわち波形構造4が、重ね合わされるが、微細構造における複数の波40の幅および高さは、ガスケット層2におけるキャンバ3の幅および高さよりも小さい。
【0035】
図6は、キャンバ3内の波形構造4を詳細に示す。この図形が示しているように、キャンバ内の波形構造における各波の構造的な幅は、ほぼ一定である。ここで構造的な幅とは、隣接する山41間の距離をいう。幅の計測は、山の頂点S1〜S5と交わって伸長し、レベルN1およびN2、さらにガスケット層2のガスケット水準面Eと直交するラインの間を測ることにより行う。一方では、距離b1とb4とが実質的に同一であり、他方では、距離b2とb3が実質的に同一である。各傾斜エリア32、32*において、波形構造は、頂上部31に向かって連続的に上昇する複数のステップで構成される。ステップ間における高さの差(△h1、△h2)は、頂上部31の方向に向かって増加せずに、減少する。山の頂点S1と隣接する山の頂点S2間の高さの差△h1は、山の頂点S2と次の山の頂点S3間の高さの差△h2よりもかなり大きい。ステップの構造的幅および高さは、それぞれの条件について適合させることができる。図4、図5および図6において、これらの数値の差異は、僅かである。
【0036】
キャンバ3における波形構造4のさらなる利点が、図7により明らかになる。ガスケット層2のキャンバ3エリアには、中央ラインMLが付されているが、このラインは、ガスケット層材料の、局部における厚さの半分(d/2)を表している。材料の厚さ、およびその半分の厚さは、ガスケット水準面Eに直交して側定する。従って、波形構造4エリアにおいて、中央ラインMLは、ガスケット層2の軌道をたどる。図7には、さらに2つのラインが示されている。連結ラインV1とV2である。これらの連結ラインは、それぞれ、V11、V12・・・、およびV21、V22・・・という直線部分で構成される。これらの仮想ライン部分は、それぞれ、ガスケット層2の第1表面21または第2表面22において、谷42の最低部M11〜M14およびM21〜M25を互いに連結している。図7から明らかなように、中央ラインMLは、連結ラインV1およびV2と交わることはない。これは、前述したように、波形構造がわずかな高度しか有さないためである。波形構造は、キャンバ内の微細構造にすぎない。この微細構造は、キャンバの全幅にわたって、連続的に形成されることが好ましい。従って、波形構造は、傾斜エリア32および32*のみならず、キャンバ3の頂上部31にも連続して伸長し、キャンバ3のそれぞれの底部30および30*で終了する。
【0037】
山および谷を数える際の例外が1つある。すなわち、キャンバ3が凸面に2つの頂上部31、31*を有し、これらの間に谷422(広い平坦部ではない)が1つ形成される場合である。図8は、この特殊な例における山と谷の数え方を示す。通常は、傾斜エリア32における山411および412の両者を考慮に入れる。この例においては、山412はキャンバの頂上部31に相当する。また、傾斜エリア32は、谷421を1つ備えるだけであるが、頂上部31、31*の間には対称的に位置する谷422が存在し、これを傾斜エリア32および32*両者に共通する谷と考える。従って、谷422は、重複してカウントされる。本発明の文脈において、平坦部とは、山41の幅bb(同一部分における、隣接する谷同士の底部から底部までを計測したもの)の少なくとも2倍の幅を有する場合を意味する。両傾斜エリアにおける山の幅bbおよびbb*が一致しない場合は、両者の平均値を考慮する。通常、山の幅bbおよび谷幅btの同一部分における相違は、15〜20%程度にとどまるが、たとえば、キャンバの剛性などのキャンバ全体としての特性を調整する場合などにおいては、キャンバの中央部において、より大きな相違を持たせることが有利な場合もある。さらに、たとえばウォータージャケットなどのような流体運搬エレメントが、シールすべき部位に位置するケースもあり、このような場合、キャンバ中央の距離btを、距離bbの200%よりも僅かに少なくなる程度として、これ以上の波形は設けない。ここでもう1度強調しておくが、こうした定義は、キャンバ3の凸側に頂点部が2つ存在する場合にのみ、適用される。また、頂上部31、31*の間が平坦部(すなわち、他の山や谷の距離bbの200%以上の距離)である場合には、適用されない。
【0038】
図9は、本発明の金属製平型ガスケットのもう1つの実施例を、キャンバ3エリアの部分断面図で示す。先に示した図とは対照的に、ここにおけるキャンバ3は、ハーフビードにより形成されている。従って、キャンバ3は、底部30から頂上部31へと上昇し、そこからガスケット層2の平面エリアへと続く。この場合、レベルN1とN2の間の波形構造4を備える傾斜エリアは1つだけである。この波形構造は、各々山と谷とを備える2つの波40で構成される。
【0039】
図10は、波形構造がキャンバ底部30、30*を越えて伸長し、ガスケット層2の平面エリア内に達する例を示す。こうした構成も、前述した波形構造4を傾斜エリア32、32*が備える限り、本発明の範囲に入る。
【0040】
図11に示すキャンバ3は、実質的に図4〜図7のキャンバと同様であるが、この例においては、ビード6が連結されている。ビード6は、キャンバ3と隣接して伸長し、同心に閉じた状態で、燃焼ガス開口部5を包囲する。ビード6の位置は、キャンバ3と燃焼ガス開口部5の間でもよいし、燃焼ガス開口部5から離れていてもよい。キャンバ3の高さはビード6よりも高いため、組立状態において、主要な荷重接続部に位置するのはキャンバであり、圧力の大部分はキャンバにかかる。圧縮状態において、波形構造4を備えたキャンバ3のすべての山が、シールすべき対向面と当接し、シールされる面と共にシール線を形成することが好ましい。
【0041】
図面の簡略化のため、以下の図12〜図31および図34〜図37では、ガスケット層2を、エリアではなくラインで示す。個々のシールエレメント間の距離は、概念的なものであって、実際の縮尺や、相互間の距離比を表したものではない。図12〜図15は、燃焼ガス開口部5と金属製平型ガスケット1の端部との間の部分断面図である。各例において、燃焼ガス開口部は、波形構造4を伴ったキャンバ3に包囲されている。図12のガスケットにおいて、キャンバ3は平面部7へとつながり、その後、キャンバ3と同方向に平面部を越えて突出するハーブビード60が続く。ハーフビード60は、通常、ガスケットの外側エッジに沿って伸長するか、または、燃焼ガス開口部5以外の開口部を包囲し、キャンバ3と同心に伸長することはない。図12とは対照的に、図13のキャンバは、その全幅にわたって連続的に波形構造を備えているわけではなく、キャンバ中央の頂上部31、31*の間に、平坦部34を形成している。図には示していないが、代替例として、頂上のレベルにおいて平坦部を形成し、頂上平坦部とすることも可能である。
【0042】
次に示すガスケットにおける相違点は、各図の右側に示されるガスケットの外側エッジのデザインにある。図12および図13における直線部7は、図14においては、キャンバ3と反対方向を向いたビード6に代替されている。図14のビード6は断面形状が台形であるが、図15のビード6は、断面形状が丸みを帯びたアーチ形であり、さらに、キャンバ3と同方向を向いている。前述したように、ここで示される距離は実際の大きさとは異なる。一般に、エレメント3と6とは非常に近接しており、一方、エレメント6と60との間には、その数倍の距離がある。
【0043】
図16は、図2の排気マニホルドガスケットにおける、2つの燃焼ガス開口部5、5+間のエリアを示す断面図である。燃焼ガス開口部は、それぞれ、波形構造を備えたキャンバ3および3+に包囲されている。両キャンバ3、3+の間には、平面部7が位置する。このガスケットにおいては、図2にも示されるように、開口部間のエリアに十分なスペースがあるため、2つのキャンバは、独立してこのスペースを伸長できる。
【0044】
図17は、もう1つの実施例における、燃焼ガス開口部5とガスケット外側エッジの間の部分を示す断面図である。図12のガスケットと比較すると、ここでは、波形構造を伴ったキャンバ3が、ハーフビード60の代わりに用いられている。このキャンバ3は、上昇傾斜32を1つしか有さず、従って、その基本形状はハーフビードである。
【0045】
図18〜図26は、二層金属製平型ガスケットの実施例における、燃焼ガス開口部5とガスケット端部の間のエリアを示す断面図である。図18における下部ガスケット層は、実質的に、図12の単層金属製平型ガスケットに同じものである。下部ガスケット層は、さらにガスケット層2′を伴うが、このガスケット層2′の燃焼ガス開口部周辺エリアは、完全な平面部7′となっている。ガスケット層2のハーフビード60と鏡面対称のハーフビード60′が、ガスケット層2′のエッジ領域にだけ、設けられている。図19のガスケットは、図18のガスケットと鏡面対称の変形例である。シリンダヘッドガスケットの場合、キャンバ3を備えたガスケット層を、エンジンブロックの方に向けてもよいし、その反対にシリンダヘッドの方に向けてもよい。
【0046】
図20および図21は、第1のガスケット層2のキャンバ3が、第2のガスケット層のキャンバ3′と向い合わせになった2層金属製平型ガスケットを示している。両キャンバは、波形構造4を有している。図20において、キャンバ頂上部30、30′は互いに離れ合うよう向いているが、図21では、互いに向かって方向づけられている。
【0047】
図22における上部ガスケット層は、本質的に、図14のガスケット層と同じであるが、方向は逆であり、さらに、エッジ領域が第1ガスケット層と鏡面対称となった第2のガスケット層2′を備えている。第2のガスケット層2′は、キャンバ3のエリアに、平面部7′を有しており、山および谷を備えたキャンバ3を効果的に支持する。
【0048】
図23におけるガスケットにおいて、上部ガスケット層2は、図22の上部ガスケット層を逆にしたものであり、下部ガスケット層2′は、図22の下部ガスケット層を逆にしたものである。
【0049】
図24〜図26に示す金属製平型ガスケットは、第1のガスケット層2のキャンバ3と、第2のガスケット層2′のビード6′とが向かい合わせになっている。これら3つ例において、キャンバ3の頂上部は、ビード6′の頂上部の方に向かっている。図24および図25において、ビード6′の断面は台形状であるのに対し、図26におけるビード6′の断面は、アーチ形に丸みを帯びている。図25のガスケットは、各ガスケット層に、さらなるシールエレメントを備えている。第1のガスケット層2において、キャンバ3は台形状断面のビード6へと続いており、これに対向してキャンバ3′が、その頂上部をビード6へ向けている。
【0050】
図27および図28は、本発明による3層金属製平型ガスケットの実施例を示す。図27における外側の2層は、図26の層のそれぞれ一方と概ね同じであるが、反対向きに配されている。これらのガスケット層の間には、さらに、ガスケット層2″が配される。ガスケット層2″は、概ね平らであるが、外側層2、2′のキャンバ3とビード6′の間の平面部7″に隣接して、クラッキング61′を備える。このクラッキング61′には、より高いキャンバ3と、より小さなビード6′との釣り合いをとる効果がある。
【0051】
図28における2つの外側ガスケットは、鏡面対称になっており、それぞれ、燃焼ガス開口部のシールエレメントとして、キャンバ3(または3′)を備える。これらのガスケット層の間には、さらに、完全に平らなガスケット層2″が積層される。
【0052】
図29〜図31に示す2層金属製平型ガスケットの実施例においては、2つのガスケット層の一方が、他方のガスケット層よりも短くなっている。こうした短縮されたガスケット層は、しばしば「シム」と呼ばれる。このようなシムを伴ったシールエレメントは、多くの場合、主要な荷重接続部に置かれる。短縮ガスケット層は、燃焼ガス開口部5を迂回するリングだけで構成することも可能である。燃焼ガス開口部5を包囲するこれらのリングを、互いに連結させれば、メガネ形の短縮ガスケット層が形成できる。ここに示す3例のすべてにおいて、燃焼ガス開口部5は、波形構造を伴うキャンバ3とアーチ形のビード6′に包囲される。これら両エレメントは、対向するガスケット層において、互いの向かい側に配置されている。図29および図30の実施例において、ビード6′とキャンバ3は互いに離れる方向に向いているのに対して、図31の実施例では、互いに向かった方向に配され、凹側の面がガスケットの外側に位置するようになっている。図29および図31のガスケットの場合、ビード6′を含むガスケット層2′が短縮されており、図30のガスケットでは、キャンバ3を備えたガスケット層2が短縮されている。図29および図30のガスケットは、それぞれ、ガスケット外側エッジに向かって、ガスケットの後背部に、さらなる波形構造8、8′および80、80′を備える。これらエンボス加工の波形構造8、8′および80、80′は、主として、ガスケットのエリアを意図的に厚くするのに役立つ。
【0053】
ここで、キャンバの波形構造につき、寸法例を示す。以下の表における参照符号を、図32に示す。図32は、図4〜図7に相当するものであり、さらなる説明は要さない。また、図6および図7における記述も、参照されたい。表に示す数値は、シリンダヘッドガスケットについてものであるが、ここでは、波形構造を伴うキャンバを、燃焼ガス開口部用のシールエレメントとしてのみ用いている。表には、乗用車(PC)用の数値と、実用車(UV)用の数値を示す。どちらのクラスのエンジンについても、一般的に有効な範囲と好ましい範囲とが示されている。これらの数値は、本発明のその他の応用例において、ガスケットをデザインする際にも考慮される。
【0054】
【表1】
【0055】
「肥厚化」とは、ガスケットの原厚(金属製シートの厚さd)と比較した場合の、波形構造のエンボス加工による材料厚の絶対増加量を意味する。これは、2本の連結ラインの間を計測することにより行う。この2本の連結ラインは、図7における連結ラインV1、V2(谷の最低点を連結する)と同じやり方で構成されるラインであり、ガスケット層の両表面21、22上にある山の最高点を、相互に結ぶ直線部分で構成される。また、「薄層化」とは、谷におけるガスケット層の厚さの減少を意味する。薄層化は、波形構造をエンボス加工する際の伸長に起因しており、図7の連結カーブV1およびV2間の距離cとして測定される。
【0056】
図33は、エンジン用の省スペースシールエレメント3を表している。ここでは、ライナーLBがエンジンブロックMBに挿入されて、シリンダヘッドZKと合わされ、エンジンブロックMBとライナーLBとの間隙を、キャンバ3がブリッジする。両傾斜エリア32、32*は、エンジンブロックMBとライナーLBの相互動作を補完しており、少なくともキャンバの底部が、それぞれ、エンジンブロックおよびライナーの上にくるようになっている。一方、頂上部31は、シリンダヘッドZKと隣接する。
【0057】
図34は、2層シリンダヘッドガスケットの実施例における、隣り合う2つの燃焼室開口部5の間の狭いウェブエリアを表しており、図1のZ′−Z′線に沿った断面図である。隣り合う2つ開口部5、5+の傾斜エリア32、32+は、このウェブエリアを平行に伸長しており、断面図に示されるように、小さなウェブ平坦部35を形成する。傾斜エリア32、32+は、それぞれ、2つの山と2つの谷を備える。
【0058】
図35および図36は、本発明による4層および5層金属製平型ガスケットの実施例を示す。図35は、各々が、貫通開口部5のエリアにキャンバ3、3′を有し、外側エッジ付近にハーフビード60、60′を備えた、2つのガスケット層2、2′を示している。両ガスケット層は、さらなるガスケット層2'''を軸に、鏡面対称となっている。ガスケット層2'''は、厚みのある平らな金属シートで、主として、ガスケットの厚さを適正に調節するのに役立つ。さらに、ガスケットはもう1つの金属シート2″を備えるが、こちらはエンジンブロックの冷水チャネルをシールするのに効果的である。図35の実施例と比較してみると、図36に示す実施例は、貫通開口部5に近接するエリアにビード6''''を備えた、さらなるガスケット層2''''を加えることにより改変されている。先に示した実施例の場合と異なり、ビード6''''の凹側は、キャンバ3′の凹側ではなく、凸側を向いている。このような配置は、直列接続を用いることにより、シールエレメント同士が効果を相互に強化し合う場合に、効果的である。このことは、より少ない層のガスケットの場合にも、当てはまる。
【0059】
図37は、単層ガスケット層の実施例を、図1の線Y′−Y′に沿った断面図で示す。本発明のキャンバが、燃焼室開口部をシールし、平坦部を挟んで、冷水ホール52をシールするハーフビードビード60が、ガスケットの外側エッジに向って設けられている。このハーフビードビード60と外側エッジとの間には、さらに、本発明によるキャンバ3がエンボス加工され、燃焼室と隣接するキャンバ3と同方向に向いている。ハーフビード60により、キャンバ3は、キャンバ3に対してオフセットしている。さらに、キャンバ3の高さは、キャンバ3よりも低い。
【0060】
図38〜図42は、一定した圧力分散が、本発明のガスケットにおいて、いかに微細構造の特性に基づいているかを示す。図38は、顕微鏡写真に写したガスケットの位置を切断面で示す。参照番号200は、切断する前にガスケット層を埋め込んだ樹脂を表す。図39は、ガスケットの平面部7を撮ったものであり、107で示すセクションを示している。このセクション107は、その全体にわたって、オーステナイト系微細構造Aを備える。平面部7は、キャンバのエンボス加工の影響を受けていないため、平面部7、およびセクション107は、エンボス加工を施す前の金属シート材料の状態をも表しているといえる。
【0061】
図40は、波形構造の山腹エリア、すなわち山41と谷42との間の遷移領域を表している。図38から明らかなように、この山腹エリアの厚さは、山41や谷42と比べて、薄くなっている。こうした山腹におけるテーパは、キャンバ3にかかる圧力を均一に分配するための、要因の1つである。もう1つの要因は、図40に示すセクション143の顕微鏡写真から見てとれる。図39と対照をなして、ここては、異なるゾーンが示されている。谷41へと向かう241エリアには、微細構造Aが存するが、これは変態していないエリア7の微細構造である。一方、テーパをつけた山腹領域243および谷の下部表面に隣接する領域244は、変態した微細構造BおよびCを示している。微細構造Cは、歪み誘起によるマルテンサイトを含むが、これはダイを完全に閉じる前の最終段階において、材料を加圧移動することにより得られる。図40に示されるように、この硬化された材料は、極めて少量しか見られない。対照的に、微細構造Bは、山腹エリアの大部分(すなわち243のエリア)に広がっている。オーステナイト微細構造Aが、比較的大きな結晶粒であるのに対し、微細構造Bは、細長い構造の延伸した組織を示す。この微細構造Bは、結晶粒微細化の典型例である。結晶粒微細化は、材料の降伏強度および延性を高めるプロセスであり、これら両特性を強化することにより、波形構造を伴ったキャンバ3において、圧力の分散が極めて均一となる。さらに、結晶粒微細化を行っていない材料と比較して、亀裂に対する強度も大幅に上昇する。微細構造を観察すると、山腹エリア43のエンボス加工は、剪断歪みに支配されていることが分かる。
【0062】
図41は、キャンバ底部の近辺エリアを表している。しかしながら、示されているセクションにおいて、キャンバの傾斜エリアはすでに上昇し始めている。ここでも、異なる3つの微細構造が識別できる。このセクションの大部分は、オーステナイト微細構造Aを示しているが、上昇する傾斜の上部表面には、マルテンサイト領域Cが形成された薄いエリアが見える。キャンバと第1の波山がかなり上昇する(これは、樹脂200との境界線を見れば分かる)右側部分には、結晶粒微細化Bが現れている。図42は、頂上エリア41にわたるセクション141を示しているが、ここにおける微細構造は、平面エリア7におけるオーステナイト微細構造A(原材料または未処理材料)に非常に類似している。このことは、図40における観察と一致する。このように、結晶粒微細化は、波形構造の山腹エリア43においてのみ起こっている。
【0063】
これらの微細構造に関する観察は、ポジション7、8および41、43の中央ラインMLで行われた硬度測定にも明確に示されている。平面エリア7および底部に隣接する領域8におけるビッカーズ硬度は、非常に近似しており、それぞれ465、480であった。頂上領域では、これらより僅かに高く518であったが、波山と波谷の間の山腹エリア43においては、はるかに高くなり、平均硬度609が測定されている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製平型ガスケット、とりわけ自動車の内燃機関に用いられる金属製平型ガスケットに係り、特に、シリンダヘッドガスケット、高圧シールガスケット、または、排気処理を含む排気系のガスケット、たとえば排気マニホルドガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼ガス開口部をシールするため、こうしたガスケットは、通常ガスケット層に形成され、燃焼ガス開口部を完全に取り囲むビードを、使用する。作動中にビードが過度に圧縮され、その弾性を失うことを防ぐため、多くの場合、ビートよりも圧縮に強く、作動中にビードが完全に圧縮されるのを防止する、いわゆるストッパがビードと共に用いられる。こうしたストッパは、多くの場合、ビードと燃焼ガス開口部との間に配置されるが、このようなストッパの配置により、高温の燃焼ガスがビードまで流入することを防止できる。ビートとストッパを隣接させるために、設計上かなりのスペースが必要とされる。しかしながら、こうしたスペースが、あらゆる場合に許されるとは限らない。たとえば、シリンダライナーを備えるエンジンブロック用シリンダヘッドガスケットの場合、最適な設計とするためには、弾性エレメントであるビードと非弾性エレメントであるストッパの配置を個々のエンジンに合わせて調整する必要であるが、これらのエレメントの機能を確保するためには、これらの間の距離が最小となるようにする必要がある一方で、前述のように、これらのエレメントのそれぞれが最小限のスペースを必要とする。
【0003】
このようなビードとストッパの配置では、多くの場合に、ストッパが別個のエレメントとして製造されることに起因するさらなる問題がある。たとえば、環状の金属層からなるストッパは、ビードを構成する金属層の上に配置および固定される。この場合、原材料の消費量が増加するだけではなく、製造コストも増加してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第358855号公報
【特許文献2】ドイツ国特許公開第102005003017号公報
【特許文献3】イギリス国特許第2097871号公報
【特許文献4】米国特許第4203608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、たとえばフルビードまたはハーフビードとして金属製ガスケットの中に形成されたキャンバの完全な平坦化を、別個のストッパエレメントを使用することなく防止する、金属製平型ガスケットを開示することである。本発明のさらなる目的は、キャンバ上の圧力分布を、可能な限り均質に保つことである。本発明のもう1つの目的は、多層平型ガスケットのみならず、単層平型ガスケットにも適用可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、本発明の金属製平型ガスケットおよびその使用方法、さらにはこの平形ガスケットのより好ましい実施形態により達成される。
【0007】
第1の態様において、本発明は、少なくとも1つのガスケット層を備え、概ね平面的で、第1表面と第2表面とを有する金属製平型ガスケットに関する。ガスケットの水準面が、ガスケット最大貫通開口部のエッジのレベルに位置するように形成される。すなわち、燃焼室開口部や燃焼ガス開口部などの開口部を直接的に包囲するエリアが、ガスケットの水準面となる。高圧ガスケットなど、いくつかの適用例においては、最大貫通開口部を本発明のシールエレメントで包囲する貫通開口部とする必要はない。なお、平面形状とは、シールすべき面同士の間にガスケットを取り付けていない状態、すなわち、ガスケットが圧迫されていない状態についての表現である。製造条件に由来するガスケットの水準面のばらつきなど、完全な平面状態からの僅かなズレは、平面状態からの偏位とはみなさない。
【0008】
ガスケット層にはキャンバが形成されるが、このキャンバは、ガスケット層の第1表面を越えて突出しており、幅よりも長さの方が大きい。キャンバは、第1のレベルを有して形成される。この第1のレベルは、ガスケット層の第1表面にあるキャンバ底部を通って、各ガスケット層の水準面と平行して走る仮想レベルである。ガスケット層におけるガスケット水準面は、ガスケット層の平らな表面間の中心を走るよう形成される。従って、第1のレベルは、この中心レベルと平行に走る仮想平面であり、ガスケット層の第1表面(この面の上にキャンバは突出する)上に位置し、キャンバ底部を通って広がる。キャンバ底部は、キャンバと隣接するエリアであり、このエリアでは、キャンバはまだ第1のガスケット層の上へと上昇を開始しておらず、傾斜はゼロである。
【0009】
キャンバは、さらに第2のレベルを有して形成される。この第2のレベルは、ガスケット層の水準面と平行して走り、キャンバの頂上部を含む仮想レベルである。このように、第1のレベルと第2のレベルは、キャンバの最高地点および最低地点を、仮想レベルの形で画定する。キャンバは、これらのレベル間を上向きに傾斜する。本発明において、この傾斜エリアは波形の構造になっている。この波形構造は、各々が山および谷を有する2つ以上の波形で構成され、この波形が2つのレベル間を伸長するようになっている。従って、フランジ部分は、第1のレベル方向に2つ以上の振幅、これと交互して、もう一方の第2のレベル方向に2つ以上の振幅を有する。ガスケット層における2つの表面の一方からは、それぞれの傾斜エリアにつき、2つの山と2つの谷が確認できる。傾斜エリアの山および谷の数を定める際、通常、底部および頂上部または頂上平坦部については考慮に入れない。しかしながら、例外が1つだけある。キャンバが、その頂上部に2つの頂点(すなわち、1つの傾斜につき1つ)を有しており、両者の間に、平坦部ではない谷を1つ有する場合である。この場合にのみ、傾斜の両頂上部および、その中間の谷を考慮に入れて山および谷の数を数える。従って、中央の谷は、両傾斜エリアの谷としてカウントされる。
【0010】
キャンバの傾斜エリアにおける創意に富んだ設計に加えて、金属製ガスケット層は、全体としては肉眼視できるが、重畳的な微細構造からなっている。少なくとも2つの連続する波型形状をした微細構造は、効果的にキャンバを肥厚化し、強化する。その結果、こうした微細構造を用いない場合と比べて、キャンバはかなり圧縮に強くなる。このように、自らを強化するよう形成されたキャンバは、付加的手段を用いることなく、非常に信頼性の高い、長寿命のシールエレメントとして作用する。これにより、シールエレメント用のスペースを大幅に削減することが可能となる。一般的に、このシールエレメント用スペースが、通常のビードまたはハーフビードが要するスペースを超えることはない。
【0011】
キャンバの基本的な外形、すなわち傾斜エリアにおける波形構造を考慮しない場合のキャンバの基本的な軌道は、概して、従来のビードまたはハーフビードのいずれかと同様である。幅方向の断面図において、キャンバは一般にアーチ型または台形型であるが、Ω型、三角型またはその他の断面形状とすることも可能である。キャンバ頂部の断面形状は、頂上状であっても平坦状であってもよい。フルビードの場合、キャンバは、両側の立ち上がり点に位置する2つのビード底部と、そこからビートの頂上へと上昇する2つの傾斜エリアを有する。頂部を頂点状とする代わりに、一定の高さのエリアとなる平坦状としてもよい。幅方向の断面は、対称であってもよいし、非対称としてもよい。キャンバがハーフビードの場合、ビード底部も傾斜エリアも1つとなる。この場合、頂上部が、対向する傾斜エリア端部にある第2のビード底部に相当する。従って、幅方向の断面は、フルビードの断面を半分にした形状、すなわち半アーチ型または半台形型となる。上述したように、このような形状は、従来のガスケットにおいて、すでに公知である。キャンバのデザインは、大部分において、最新技術におけるビードまたはハーフビードと変わりない。相違点は、上述したように、傾斜エリアにおける重畳的波形構造にある。
【0012】
フルビードの場合、それぞれの底部から上昇する2つの傾斜エリアが存在する。一方の傾斜のみを波形構造とすることも可能であるが、それぞれ山と谷を備えた2つ以上の波形を、両方の傾斜エリアに配することが好ましい。とりわけ、両傾斜エリアにおいて、波形構造が同一であることが好ましい。しかしながら、両傾斜エリアの波形構造を異なるデザインとすることも可能である。また、波形構造(同一であれ異なるデザインであれ)を、別デザインの傾斜エリアと組み合わせ、全体としてキャンバの断面を非対称とすることも可能である。さらには、キャンバの全体的構造および/またはキャンバの波形構造を、キャンバの長手方向において変化させることも可能である。たとえば、キャンバの高さ、キャンバの幅および/または傾斜エリアの勾配を、長手方向に沿って変化させることができる。同様のことが、傾斜エリアのデザインについても該当する。このような変更により、キャンバを計画的に適合させることが可能となり、シールすべき対向面および金属製平型ガスケットへの組み込み状態における作動条件に合わせて、変形させることが可能となる。
【0013】
一般に、長手方向におけるキャンバの軌道は、幅寸法より長さ寸法が大きくなっている限り、いかなる形状をとってもよい。長手方向において、キャンバは線状でも曲線状でもよく、たとえばアーチ形または蛇行形にすることができ、1回または数回角度をつけてもよいし、その他の同様の形状を採ることもできる。また、軌道を2つに分岐することも可能である。キャンバを円形状とできるが、この場合、閉鎖円としてもよいし、端部の離れた開口円としてもよい。閉鎖軌道の場合、キャンバが、ガスケット層の貫通開口部を包囲することが好ましい。この貫通開口部は、ガスケットにおける様々な貫通開口部であり得る。たとえば、シリンダヘッドガスケットの場合、燃焼室開口部、冷水開口部、オイル開口部、ボルト開口部などである。また、単一のキャンバで、同時に複数の貫通開口部を包囲することも可能である。一般に、動歪みが高い開口端部(たとえば燃焼室開口部)においては、動歪みの低い開口端部(たとえばボルト開口部)よりも広範囲に、エンボス加工を施すことが好ましい。波形構造を重畳させたキャンバは、一般に、従来のシールエレメントまたは支持ビードと同じように、金属製ガスケット層に配置することができる。従って、該キャンバは、本発明の金属製平型ガスケットにおいて、支持エレメントとしても使用可能である。この場合、キャンバが、貫通開口部を完全に包囲する必要はない。ボルト開口部などの場合は、部分的にキャンバを配すれば足りる。さらには、貫通開口部と直接的に関係しないキャンバをガスケット層に設け、支持エレメントとして機能させることも可能である。たとえばキャンバを、いわゆるガスケットの「後背地(バックランド)」、すなわちガスケットの外側エッジに隣接するエリアに設けることができる。こうした支持エレメントの配置例の1つとして、ガスケットの外側エッジの1つから離れた位置に、これと平行に直線的に設けることができる。複数の支持キャンバをガスケットに設けることも可能であり、またガスケット層の大部分をカバーするようキャンバを設けることもできる。1つのガスケット内に、シールエレメントとしてのキャンバと支持エレメントとしてのキャンバの両者を使用する場合、通常、支持エレメントの高さを、シールエレメントの高さよりも低くする。
【0014】
波形構造における波形の長手方向の軌道は、キャンバ全体の長手伸長方向に一致する。波の外形は、正弦曲線であり得る。なお、外形とは、波形構造の幅方向断面の外形を意味する。正弦波形構造における谷および山の各断面は、通常アーチ形であり、とりわけ円弧または楕円のアーチ形である。しかしながら、三角形、台形、その他の形状とすることも可能である。
【0015】
本発明によれば、波形構造は、キャンバの傾斜エリアに存在すれば十分である。しかしながら、波形構造が、キャンバ全幅にわたって伸長すれば、なお一層好ましい。この場合、波形構造は傾斜エリアに存在するだけでなく、キャンバの頂点エリアまたは頂部平坦エリアにも存在する。特に、山および谷が、キャンバの全幅にわたって存在することが好ましい。また、1つの谷から隣の谷へと伸長する、または1つの山から隣の山へと伸長する波形構造の断面が、本質的に同幅であることが好ましい。なお、ここで「断面の幅」という表現は、2つの隣り合う波山の頂点を通り、ガスケットの第1表面および第2表面と交差して走る2本の平行線間の距離を意味する。「谷の幅」という表現も、同様である。
【0016】
キャンバの幅方向断面は、ガスケットの第1表面から第2表面へと徐々に上昇する傾斜エリアによって特徴づけられるが、ハーフビードの場合、傾斜エリアは1つであり、フルビードの場合、傾斜エリアは2つである。キャンバ全体の外形は、すでに述べたように、たとえば台形であってもよいが、好ましくは円弧または楕円のアーチ形である。円弧または楕円のアーチ形である場合、個々の山の頂点を結ぶ包絡線もまた、円弧または楕円のアーチ形となる。同じことが、谷の最低点を結ぶ包絡線にも当てはまる。個々の山の頂点の高さは、徐々に増加していくが、キャンバの頂点方向に向かう角度は変化する。キャンバ幅方向の軌道に沿って隣り合う山または谷の間の個々の段の高さに関しては、これら高さの差は、キャンバの頂上に向かうにつれ減少する。従って、ガスケットの第1表面を越えて突出する各山の頂点の高さを測って、隣接する各ペア頂点の高さの差を計算した場合には、キャンバ底部からキャンバ頂部に向かうにつれ、高さの差は減少することになる。これにより、アーチ型キャンバにおける個々の波の間で、圧力が均等に分配される。この形状は、新品状態においてだけでなく、圧縮状態から戻った解放状態においても、同様に得られる。
【0017】
キャンバ内における波形構造の設計に関しては、底部から頂点へと徐々に伸長する傾斜エリアが、可能な限り規則的で、比較的小さい構造サイズであると有利であることが、数々の実施例により示されている。波形構造とキャンバの全体構造との関係を、以下に記載する。キャンバの幅方向の断面、すなわち、キャンバの長手伸長方向に直交する断面に、仮想センターラインを導入する。このラインは、キャンバに沿って、ガスケット層材料の厚さの半分の位置を伸長する。波形構造エリアにおいて、この中央ラインは、波形構造の軌道をたどる。キャンバのこの断面には、さらに2つのラインが構成される。以下、これらのラインを第1連結ライン、第2連結ラインと呼ぶ。これらの連結ラインは、それぞれ、いくつかの直線部分で構成される。第1の連結ラインの場合、これらの直線部分は、ガスケット層第1表面上において、隣り合う谷の最低点を相互に連結している。第2の連結ラインの場合、上記直線部分は、ガスケット層第2表面上において、隣り合う谷の最低点を相互に連結する。キャンバ内の波形構造は、第1の連結ラインも第2の連結ラインも、中央ラインと交差しないように設計されている。これは、谷の深さが、比較的に浅い場合にのみ可能となる。キャンバが全幅にわたって、均一で効果的な支持を提供できるのは、主として、このような振幅の小ささによっている。
【0018】
波形構造は、キャンバの長手方向の全長にわたって存在してもよいし、長手方向のいくつかのセクションにのみ、存在するようにしてもよいが、キャンバの長手方向の全長にわたって存在する方が、好ましい。さらに、製造を容易にするという観点からは、波形構造のデザインは、該全長にわたって、均一であること好ましい。しかしながら、波形構造の数、形状および/または高さを、キャンバの長手方向において変化させることも可能である。これにより、キャンバの長手方向において、キャンバの剛性を意図的に変更することが可能となる。
【0019】
キャンバおよびキャンバ内に存在する波形構造は、ガスケット層のエンボス加工によって製造することが好ましい。両者の構造は、同一のエンボス加工ステップで製造できる。特に好ましい実施例において、キャンバ内の波形構造は、閉じた状態でオス部とメス部が相補的なダイによって形成される。エンボス加工ダイは、波の山と谷との間の山腹部にあたるガスケット層のエリアにおいて、山の最高点エリアおよび谷の最低点エリアよりも、互いに近接するようになっているため、波の山腹エリアにおける材料の厚さは、波形構造のその他のエリアの厚さよりも薄くなる。波形構造は、ガスケット層の谷または谷エリアにおける材料の厚さについては材料の表面に対して常に垂直に測定されるようになる一方、山腹エリアは、およそ5〜40%、好ましくは10〜35%、最も好ましくは15〜30%のテーパを有するように製造される。波形構造における山および谷のエンボス加工は、ガスケット層の両表面間の振幅で構成されており、キャンバを効果的に肥厚化する。ガスケット層の両面において山を結ぶ包絡線間の距離は、波形構造のエンボス加工を施す前のガスケット層の元の厚さよりも大きい。驚くべきことに、山腹のテーパを有するエリアにおいては、引張強度が増加するだけでなく、せん断応力も増加することが観察されている。このことは、山腹のテーパが結晶粒微細化を伴っていることを示している。結晶粒微細化は、山腹エリアの硬度を高めるだけでなく、延性をも増加させる。山腹エリアの硬度は、山および谷エリアまたは平坦エリアの硬度よりもかなり高くなる場合もある。このような山腹テーパの微視的な効果は、山腹テーパの全体的な効果および肥厚化効果と相まって、波形構造を伴わないキャンバと比較して、キャンバ圧縮率の大幅な減少をもたらす。このようにして、自らを支持し、極めて長寿命のシールエレメントを構成するキャンバが提供される。さらに、波段の高さの増加を抑え、これにより圧力の均一な分散を可能とすることによっても、寿命の長さはサポートされる。それにもかかわらず、所要スペースが、波形構造を伴わない従来のビードの場合よりも大きくなることはない。
【0020】
たとえば、シリンダヘッドガスケットまたは排気マニホルドガスケットの燃焼ガス開口部のような、シールするのが困難な貫通開口部であっても、自らを単独で強化するビードであれば、それだけで十分に優れたシール手段となりうる。そのシール効果は、同じような形の従来のビードをはるかに凌ぐものである。このようなシール効果の向上は、ガスケット層両側の波と山のエリアに形成された多数のシールラインによるものでもある。シールラインを多数設けることにより、シールすべき表面に対する良好な適応性が得られ、卓越したシール効果が得られる。このシール効果は、強く、恒常的な負荷を伴う場合であっても、シールする間隙が絶えず動いている場合であっても、長期間にわたって維持される。その復元力についても、同様の基本形状を有する従来のビードと比較して、はるかに高くなる。
【0021】
波形構造を備えたキャンバは、単独で十分に貫通開口部のシールエレメントとして機能し得る。本発明のシールエレメントは、とりわけ、シールエレメントが主要な荷重接続部に置かれるような場合に好適である。しかしながら、このことは、本発明のシールエレメントを、その他のシールエレメントと共に用いる可能性を排除するものではない。波形構造を備えたキャンバを、ストッパエレメントと共に用いることも、概念的には可能であるが、波形構造を備えたキャンバは、さらなる支持エレメントを何ら必要としないため、一般的には、このことは有利な手段とはいえない。波形構造を備えたキャンバと組み合わせて、従来のビードを付加的シールエレメントとして用いる方が、有利である。必要に応じて、両エレメントの復元力を相対的に調整することも可能である。たとえば、従来のビードの硬度を、隣接する波形構造を備えたキャンバよりも低くし、波形構造を備えたキャンバが、従来のビードの支持エレメントとして機能するようにしてもよい。他方、頑強な用途に耐え得るよう、ビードの形状を適切にデザインすることにより、波形構造を備えたキャンバを、アキシアル荷重接続部に置くことも可能である。
【0022】
すでに述べたように、波形構造を備えたキャンバを、必ずしも環状に閉じたシールエレメントとして用いる必要はない。波形構造を備えたキャンバを、たとえば、ガスケットのエッジ領域で、単なる支持エレメントとして用いることもできるし、同様に、シールリップのような弾性シールエレメントの支持エレメントとして用いることも可能である。
【0023】
また、波形構造を備えたキャンバは、コーティングの受け入れにも適している。波形構造における山は、この際、チャンバとして作用して、コーティングが流れ出すことを防止し、ガスケット層とコーティングとの接着性を改善する。コーティングには、たとえば、マイクロシーリングや滑り摩擦を改善する方法など、最新技術において公知の、あらゆる金属製平型ガスケット用コーティング法を用いることができる。適切な方法でコーティングを行えば、キャンバの凸側にコーティングを凝集させることが可能である。なお、この凸面は、完全にはコーティングで満たさないことが好ましい。好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下とする。
【0024】
本発明の金属製平型ガスケットは、単層ガスケットとして作成できる。波形構造を備えたキャンバを用いることにより、ストッパのような、さらなる支持エレメントの必要はない。また、本発明の金属製平型ガスケットは、2つ以上のガスケット層からなる多層ガスケットであってもよい。そのうちの少なくとも1つの層は、波形構造を備える必要があるが、その他のガスケット層については、任意にデザインすることが可能であり、シールエレメントとして用いるにせよ、支持エレメントとして用いるにせよ、波形構造を備えたキャンバを設けてもよいが、必ずしもその必要があるわけではない。さらなるガスケット層における、波形構造を備えたキャンバは、隣接するガスケット層のもう1つのシール/支持エレメントと向き合うように配置することが好ましい。こうしたシール/支持エレメントとして、たとえば、波形構造を伴うキャンバ、ビードまたはハーフビードビードを使用することができる。互いに向かい合うシール/支持エレメントは、その微細な形状についても、鏡面対称に配置することが好ましい。しかしながら、波形構造を伴うキャンバを、隣接するガスケット層の平坦なエリアと向かい合うようにすることも可能である。この場合、平坦エリアは、波山の座りをよくするための平坦支持部を形成する。さらなるガスケット層におけるキャンバまたはビードは、その頂上部が、第1のガスケット層のキャンバ頂上部に向かう方向に配置してもよいし、代替的に、互いに離れる方向に配置してもよい。多層ガスケットの場合、ガスケット層は、同じ伸長性を有するようにしてもよいし、異なる伸長性を有するようにしてもよい。金属製平型ガスケットにおいて、1つ以上のガスケット層を、少なくとも1つのより大きなガスケット層に対して、短くし、ガスケットのエッジ領域から回避されるようにしてもよい。たとえば、これらのガスケット層を、複数の貫通開口部を迂回する環状またはメガネ状のインレーとして形成することが可能である。また、波形構造を備えたキャンバを有する方のガスケット層を、短縮ガスケット層としてもよい。
【0025】
金属製平型ガスケットは、従来技術による公知のシールエレメントを含むことも可能である。たとえば、さらなるシールエレメントとして、ビードやエラストマーシールリップを設けてもよい。また、ビードやハーフビードのような支持エレメントを設けることも可能であり、エンボス加工による材料の肥厚化を行ってもよい。シールエレメントの実効高を対称的に分配するため、クラッキングを行うことも可能である。すでに述べたように、少なくとも1つのガスケット表面上の少なくとも1つのガスケット層を、全面的または部分的にコーティングすることもできる。本発明の金属製平型ガスケットは、従来の材料、方法、道具を用いて製造できる。少なくとも1つのガスケット層に適した材料は、スチールであり、好ましくはバネ硬鋼またはステンレスバネ鋼である。バネ性で硬質という特質は、キャンバを導入する前に備わっていてもよく、また、熱処理などにより後から付加してもよい。その他のガスケット層は、同じ材料で作ってもよいし、たとえばカーボンスチールなど、その他の材料で製造してもよい。また、平坦なガスケット層の場合は、非弾性スチールを用いることもできる。排ガス処理を含む排ガス系に用いられるガスケットの場合は、800℃に至ることもある高温に直面するため、ニッケルを多量に含有するスチールなど、高温に強いスチールを使用することが望ましい。
【0026】
本発明の金属製平型ガスケットの好ましい応用例として、内部燃焼エンジンの分野におけるガスケット、とりわけシリンダヘッドガスケットまたは排気マニホルドガスケットとしての利用がある。この場合、燃焼ガス開口部のシールエレメントとして、波形構造を備えたキャンバを用いることが特に好ましい。なお、ここで燃焼ガスという用語を使用する場合には、排ガスおよび再循環排ガスも含まれる。最新技術のビードにおいて知られているように、隣接する貫通開口部の波形構造を、これら貫通開口部間の「ウェブ」と呼ぶエリアで連結させて、複数のキャンバで単一のキャンバセクションとすることも可能である。キャンバを連結する場合、貫通開口部から離れた傾斜エリアは、ウェブ部分内には入らずに、ともにウェブ部分の外側を通るようにすることが好ましい。これらと相補的なもう一方の傾斜エリアは、ウェブ部分を通過し、波形構造を備えたキャンバを形成しつつ連結する。そして、ウェブ部分のもう一方の終点で、キャンバは2つの傾斜エリアに分岐し、ウェブ部分を通過していない方の傾斜エリアとそれぞれ連結する。ウェブ部分のスペースは限られているため、波形構造の波の数を減らして、一部の波だけがウェブ部分を通過するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、シリンダヘッドガスケットである場合における、本発明の金属製平型ガスケットの平面図である。
【図2】図2は、排気マニホルドガスケットである場合における、本発明の金属製平型ガスケットの部分平面図である。
【図3】図3は、高圧ポンプ用ガスケットである場合における、本発明の金属製平型ガスケットの平面図である。
【図4】図4は、一実施例における、図1の線X−Xに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図5】図5は、他の実施例における、図1の線X−Xに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図6】図6は、他の実施例における、図1の線X−Xに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図7】図7は、他の実施例における、図1の線X−Xに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図8】図8は、他の実施例における、図1の線X−Xに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図9】図9は、他の実施例における、図1の線X−Xに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図10】図10は、他の実施例における、図1の線X−Xに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図11】図11は、他の実施例における、図1の線X−Xに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図12】図12は、一実施例における、図1の線Y−Yに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図13】図13は、他の実施例における、図1の線Y−Yに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図14】図14は、他の実施例における、図1の線Y−Yに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図15】図15は、他の実施例における、図1の線Y−Yに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図16】図16は、図2の線Z−Zに沿ったガスケットの部分断面図である。
【図17】図17は、本発明の単層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図18】図18は、一実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図19】図19は、他の実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図20】図20は、他の実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図21】図21は、他の実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図22】図22は、他の実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図23】図23は、他の実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図24】図24は、他の実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図25】図25は、他の実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図26】図26は、他の実施例における、Y−Yと同様の線に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図27】図27は、一実施例における、図18〜図26と同じ部分の三層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図28】図28は、他の実施例における、図18〜図26と同じ部分の三層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図29】図29は、一方のガスケット層よりも他方のガスケットの伸長が短い二層金属製平型ガスケットの、一実施例における部分断面図である。
【図30】図30は、一方のガスケット層よりも他方のガスケットの伸長が短い二層金属製平型ガスケットの、他の実施例における部分断面図である。
【図31】図31は、一方のガスケット層よりも他方のガスケットの伸長が短い二層金属製平型ガスケットの、他の実施例における部分断面図である。
【図32】図32は、図3〜図6の寸法を表す。
【図33】図33は、エンジンをライナーでシールするシリンダヘッドガスケットの場合における、本発明のガスケットの使用例である。
【図34】図34は、さらなる実施例における、図1の線Z′−Z′に沿った二層金属製平型ガスケットの部分断面図である。
【図35】図35は、最新技術における四層ガスケットの一例を示す部分断面図である。
【図36】図36は、最新技術における五層ガスケットの一例を示す部分断面図である。
【図37】図37は、図1の線Y′−Y′に沿った、最新技術における単層金属製平型ガスケットのさらなる例を示す部分断面図である。
【図38】図38は、波形構造を伴ったキャンバ部分を示す、ガスケット層断面の写真である。
【図39】図39は、図38のエリア7におけるガスケット層断面の顕微鏡写真である。
【図40】図40は、図38のエリア41におけるガスケット層断面の顕微鏡写真である。
【図41】図41は、図38のエリア8におけるガスケット層断面の顕微鏡写真である。
【図42】図42は、図38のエリア43におけるガスケット層の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面および写真を参照しながら、本発明を説明するが、これらは例示目的で示されるものである。ここに示す実施例は、好適な例をいくつか示しているに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。図面および写真において、同一要素には同一の参照番号を付す。区別を容易にするため、平面図ではなく断面図において、異なる傾斜エリアに属する要素についてはアスタリスクを付し、異なるガスケット層に属する要素についてはアポストロフィを付し、異なる貫通開口部に属する要素についてはクロスを付す。いくつかの図面において、特に鏡面対称のものにおいては、明白であることから、一方の側の参照番号を省略する。
【0029】
図1は、シリンダヘッドガスケットの例における、金属製平型ガスケットの平面図である。この平面図は、第1表面21および対向する第2表面22を伴ったガスケット層2を示している。燃焼ガス開口部5は、ガスケット層2にエンボス加工されたシールエレメントに包囲されている。このシールエレメントは、第1表面21を越えて突出する環状キャンバ3である。キャンバ3は、燃焼ガス開口部5の周りを円形方向に伸長するが、この長手方向の全長Lは、幅Bよりもはるかに大きい。キャンバ3には肉眼視できる構造が形成されているが、この巨視的構造は、キャンバ3の全幅Bにわたって伸長する複数の波形からなっている。個々の波の長手伸長方向は、キャンバ3の長手伸長方向と一致する。図1における同心性の線は、波形構造4を示している。ガスケット層2は、燃焼ガス開口部5の他、さらなる貫通開口部50(ガスケットの外側エッジ付近に設けられる)、ボルト貫通開口部51、冷水貫通開口部52、オイル貫通開口部53を備える。また、ガスケットの右側エッジ付近には、細長い直線状キャンバ3が設けられているが、このキャンバは、該側エッジ用の支持エレメントとして機能する。D1およびD2に示すような、2つの燃焼室貫通開口部5の間の狭いウェブ部分を通るようにキャンバを導く方法は、数通りある。D1に示す例の場合、移行エリアがかなり短く、キャンバ3の傾斜エリア32は、両者ともにかなりの方向転換を示すが、両傾斜エリア32の転換方向は、それぞれ異なる。D2に示す例の場合、燃焼室貫通開口部から離れた傾斜エリアだけが方向転換して、隣接する燃焼室貫通開口部の対応する傾斜エリアと連結するのに対して、燃焼室貫通開口部に近い傾斜エリアは曲線を変化させずに、徐々に連結していく。
【0030】
図2は、排気マニホルドガスケットの場合における、金属製平型ガスケットのもう1つの実施例を示す部分平面図である。これは、たとえば4つの燃焼ガス開口部5のうちの2つの燃焼ガス開口部周辺を示す部分図である。また、ボルト開口部51も示されている。
【0031】
図3は、本発明のキャンバ3のさらなる応用例であり、高圧開口部105を備えたガスケット1を示す。ガスケット1において最も大きい開口部は、高圧開口部105ではなく、ピストン付きシリンダライナーを高圧ガスポンプのシリンダヘッドにシールする開口部54である。従って、ガスケット水準面Eは、ビード64の貫通開口部へと向かう側の、貫通開口部54を囲むエッジゾーンRによって決定される。ガスケットは、さらに、ビード65にシールされた低圧貫通開口部55、4つのボルト開口部51を備える。この例においては、高圧開口部105が、本発明のキャンバ3に包囲されている。
【0032】
次に、波形構造4を伴ったキャンバ3の詳細な設計について、後続の断面図を考慮しつつ説明する。ここに示す断面図は、すべて、キャンバ幅方向の断面図であり、従ってキャンバの伸長方向と直交する断面である。これら断面図は、シリンダヘッドガスケットや排気マニホルドガスケットに適用されるだけでなく、たとえば高圧ガスケットにも適用される。高圧ガスケットの場合においては、燃焼ガス開口部5についての記述が、高圧用の開口部105の記述としても援用される。
【0033】
図4〜図7は、図1の線X−Xに沿った断面図である。これらの断面図には、キャンバまたは波形構造の寸法などに関して、ほとんど相違はない。図4に示されるように、キャンバ3は、ガスケット2の第1表面21を越えて突出し、2つの底部30および30*の間を伸長する。底部30、30*は、キャンバの平面包囲部からキャンバへの移行ポイントであり、ここでは接線の傾斜はまだゼロである。底部30および30*間を幅Bで伸長するエリアにおいては、傾斜はゼロではなくなる。高さに関しては、キャンバ3は、底部30および30*を含む第1レベルN1と、頂上部31(図8に示すように、31、31*と頂上部が2つの場合もある)を含む第2レベルN2との間を伸長する。N1およびN2の両レベルは、ガスケット層2の水準面Eと平行に走る。この水準面Eは、中間、すなわち材料の厚さ半分の位置を走っており、燃焼ガス開口部を直接包囲するエリアによって決定される。キャンバ3の底部30、30*と頂上部31との間には、2つの傾斜エリア32、32*が存在し、底部から頂上部31へと徐々に上昇している。これら傾斜エリア32、32*のそれぞれに、2つの波形40が形成される。これら波形40の各々は、表面21について見た場合、交互する山41と谷42を2つずつ有する。同様のことが、ガスケット層2の表面22についても当てはまる。キャンバ3の頂上部31が1つである場合においては、山および谷を数える際に、底部30、30*も頂上部31も含めない。従って、各傾斜エリア32、32*は、それぞれ、上レベルN2方向に2つ、下レベルN1方向に2つの振幅を備える。
【0034】
図5は、キャンバ3のアーチ形の軌道全体を示している。個々の山41の頂点、すなわちS1、S2、S3、S4およびS5の各点を、包絡線(H1)により互いに連結すると、円弧の一部を表す曲線が得られる。同様のことが、谷42の最低点M1〜M4を、包絡線(H2)で連結した場合にも当てはまる。こうして、アーチ形の軌道を有する全体構造、すなわちキャンバ3には、微細構造、すなわち波形構造4が、重ね合わされるが、微細構造における複数の波40の幅および高さは、ガスケット層2におけるキャンバ3の幅および高さよりも小さい。
【0035】
図6は、キャンバ3内の波形構造4を詳細に示す。この図形が示しているように、キャンバ内の波形構造における各波の構造的な幅は、ほぼ一定である。ここで構造的な幅とは、隣接する山41間の距離をいう。幅の計測は、山の頂点S1〜S5と交わって伸長し、レベルN1およびN2、さらにガスケット層2のガスケット水準面Eと直交するラインの間を測ることにより行う。一方では、距離b1とb4とが実質的に同一であり、他方では、距離b2とb3が実質的に同一である。各傾斜エリア32、32*において、波形構造は、頂上部31に向かって連続的に上昇する複数のステップで構成される。ステップ間における高さの差(△h1、△h2)は、頂上部31の方向に向かって増加せずに、減少する。山の頂点S1と隣接する山の頂点S2間の高さの差△h1は、山の頂点S2と次の山の頂点S3間の高さの差△h2よりもかなり大きい。ステップの構造的幅および高さは、それぞれの条件について適合させることができる。図4、図5および図6において、これらの数値の差異は、僅かである。
【0036】
キャンバ3における波形構造4のさらなる利点が、図7により明らかになる。ガスケット層2のキャンバ3エリアには、中央ラインMLが付されているが、このラインは、ガスケット層材料の、局部における厚さの半分(d/2)を表している。材料の厚さ、およびその半分の厚さは、ガスケット水準面Eに直交して側定する。従って、波形構造4エリアにおいて、中央ラインMLは、ガスケット層2の軌道をたどる。図7には、さらに2つのラインが示されている。連結ラインV1とV2である。これらの連結ラインは、それぞれ、V11、V12・・・、およびV21、V22・・・という直線部分で構成される。これらの仮想ライン部分は、それぞれ、ガスケット層2の第1表面21または第2表面22において、谷42の最低部M11〜M14およびM21〜M25を互いに連結している。図7から明らかなように、中央ラインMLは、連結ラインV1およびV2と交わることはない。これは、前述したように、波形構造がわずかな高度しか有さないためである。波形構造は、キャンバ内の微細構造にすぎない。この微細構造は、キャンバの全幅にわたって、連続的に形成されることが好ましい。従って、波形構造は、傾斜エリア32および32*のみならず、キャンバ3の頂上部31にも連続して伸長し、キャンバ3のそれぞれの底部30および30*で終了する。
【0037】
山および谷を数える際の例外が1つある。すなわち、キャンバ3が凸面に2つの頂上部31、31*を有し、これらの間に谷422(広い平坦部ではない)が1つ形成される場合である。図8は、この特殊な例における山と谷の数え方を示す。通常は、傾斜エリア32における山411および412の両者を考慮に入れる。この例においては、山412はキャンバの頂上部31に相当する。また、傾斜エリア32は、谷421を1つ備えるだけであるが、頂上部31、31*の間には対称的に位置する谷422が存在し、これを傾斜エリア32および32*両者に共通する谷と考える。従って、谷422は、重複してカウントされる。本発明の文脈において、平坦部とは、山41の幅bb(同一部分における、隣接する谷同士の底部から底部までを計測したもの)の少なくとも2倍の幅を有する場合を意味する。両傾斜エリアにおける山の幅bbおよびbb*が一致しない場合は、両者の平均値を考慮する。通常、山の幅bbおよび谷幅btの同一部分における相違は、15〜20%程度にとどまるが、たとえば、キャンバの剛性などのキャンバ全体としての特性を調整する場合などにおいては、キャンバの中央部において、より大きな相違を持たせることが有利な場合もある。さらに、たとえばウォータージャケットなどのような流体運搬エレメントが、シールすべき部位に位置するケースもあり、このような場合、キャンバ中央の距離btを、距離bbの200%よりも僅かに少なくなる程度として、これ以上の波形は設けない。ここでもう1度強調しておくが、こうした定義は、キャンバ3の凸側に頂点部が2つ存在する場合にのみ、適用される。また、頂上部31、31*の間が平坦部(すなわち、他の山や谷の距離bbの200%以上の距離)である場合には、適用されない。
【0038】
図9は、本発明の金属製平型ガスケットのもう1つの実施例を、キャンバ3エリアの部分断面図で示す。先に示した図とは対照的に、ここにおけるキャンバ3は、ハーフビードにより形成されている。従って、キャンバ3は、底部30から頂上部31へと上昇し、そこからガスケット層2の平面エリアへと続く。この場合、レベルN1とN2の間の波形構造4を備える傾斜エリアは1つだけである。この波形構造は、各々山と谷とを備える2つの波40で構成される。
【0039】
図10は、波形構造がキャンバ底部30、30*を越えて伸長し、ガスケット層2の平面エリア内に達する例を示す。こうした構成も、前述した波形構造4を傾斜エリア32、32*が備える限り、本発明の範囲に入る。
【0040】
図11に示すキャンバ3は、実質的に図4〜図7のキャンバと同様であるが、この例においては、ビード6が連結されている。ビード6は、キャンバ3と隣接して伸長し、同心に閉じた状態で、燃焼ガス開口部5を包囲する。ビード6の位置は、キャンバ3と燃焼ガス開口部5の間でもよいし、燃焼ガス開口部5から離れていてもよい。キャンバ3の高さはビード6よりも高いため、組立状態において、主要な荷重接続部に位置するのはキャンバであり、圧力の大部分はキャンバにかかる。圧縮状態において、波形構造4を備えたキャンバ3のすべての山が、シールすべき対向面と当接し、シールされる面と共にシール線を形成することが好ましい。
【0041】
図面の簡略化のため、以下の図12〜図31および図34〜図37では、ガスケット層2を、エリアではなくラインで示す。個々のシールエレメント間の距離は、概念的なものであって、実際の縮尺や、相互間の距離比を表したものではない。図12〜図15は、燃焼ガス開口部5と金属製平型ガスケット1の端部との間の部分断面図である。各例において、燃焼ガス開口部は、波形構造4を伴ったキャンバ3に包囲されている。図12のガスケットにおいて、キャンバ3は平面部7へとつながり、その後、キャンバ3と同方向に平面部を越えて突出するハーブビード60が続く。ハーフビード60は、通常、ガスケットの外側エッジに沿って伸長するか、または、燃焼ガス開口部5以外の開口部を包囲し、キャンバ3と同心に伸長することはない。図12とは対照的に、図13のキャンバは、その全幅にわたって連続的に波形構造を備えているわけではなく、キャンバ中央の頂上部31、31*の間に、平坦部34を形成している。図には示していないが、代替例として、頂上のレベルにおいて平坦部を形成し、頂上平坦部とすることも可能である。
【0042】
次に示すガスケットにおける相違点は、各図の右側に示されるガスケットの外側エッジのデザインにある。図12および図13における直線部7は、図14においては、キャンバ3と反対方向を向いたビード6に代替されている。図14のビード6は断面形状が台形であるが、図15のビード6は、断面形状が丸みを帯びたアーチ形であり、さらに、キャンバ3と同方向を向いている。前述したように、ここで示される距離は実際の大きさとは異なる。一般に、エレメント3と6とは非常に近接しており、一方、エレメント6と60との間には、その数倍の距離がある。
【0043】
図16は、図2の排気マニホルドガスケットにおける、2つの燃焼ガス開口部5、5+間のエリアを示す断面図である。燃焼ガス開口部は、それぞれ、波形構造を備えたキャンバ3および3+に包囲されている。両キャンバ3、3+の間には、平面部7が位置する。このガスケットにおいては、図2にも示されるように、開口部間のエリアに十分なスペースがあるため、2つのキャンバは、独立してこのスペースを伸長できる。
【0044】
図17は、もう1つの実施例における、燃焼ガス開口部5とガスケット外側エッジの間の部分を示す断面図である。図12のガスケットと比較すると、ここでは、波形構造を伴ったキャンバ3が、ハーフビード60の代わりに用いられている。このキャンバ3は、上昇傾斜32を1つしか有さず、従って、その基本形状はハーフビードである。
【0045】
図18〜図26は、二層金属製平型ガスケットの実施例における、燃焼ガス開口部5とガスケット端部の間のエリアを示す断面図である。図18における下部ガスケット層は、実質的に、図12の単層金属製平型ガスケットに同じものである。下部ガスケット層は、さらにガスケット層2′を伴うが、このガスケット層2′の燃焼ガス開口部周辺エリアは、完全な平面部7′となっている。ガスケット層2のハーフビード60と鏡面対称のハーフビード60′が、ガスケット層2′のエッジ領域にだけ、設けられている。図19のガスケットは、図18のガスケットと鏡面対称の変形例である。シリンダヘッドガスケットの場合、キャンバ3を備えたガスケット層を、エンジンブロックの方に向けてもよいし、その反対にシリンダヘッドの方に向けてもよい。
【0046】
図20および図21は、第1のガスケット層2のキャンバ3が、第2のガスケット層のキャンバ3′と向い合わせになった2層金属製平型ガスケットを示している。両キャンバは、波形構造4を有している。図20において、キャンバ頂上部30、30′は互いに離れ合うよう向いているが、図21では、互いに向かって方向づけられている。
【0047】
図22における上部ガスケット層は、本質的に、図14のガスケット層と同じであるが、方向は逆であり、さらに、エッジ領域が第1ガスケット層と鏡面対称となった第2のガスケット層2′を備えている。第2のガスケット層2′は、キャンバ3のエリアに、平面部7′を有しており、山および谷を備えたキャンバ3を効果的に支持する。
【0048】
図23におけるガスケットにおいて、上部ガスケット層2は、図22の上部ガスケット層を逆にしたものであり、下部ガスケット層2′は、図22の下部ガスケット層を逆にしたものである。
【0049】
図24〜図26に示す金属製平型ガスケットは、第1のガスケット層2のキャンバ3と、第2のガスケット層2′のビード6′とが向かい合わせになっている。これら3つ例において、キャンバ3の頂上部は、ビード6′の頂上部の方に向かっている。図24および図25において、ビード6′の断面は台形状であるのに対し、図26におけるビード6′の断面は、アーチ形に丸みを帯びている。図25のガスケットは、各ガスケット層に、さらなるシールエレメントを備えている。第1のガスケット層2において、キャンバ3は台形状断面のビード6へと続いており、これに対向してキャンバ3′が、その頂上部をビード6へ向けている。
【0050】
図27および図28は、本発明による3層金属製平型ガスケットの実施例を示す。図27における外側の2層は、図26の層のそれぞれ一方と概ね同じであるが、反対向きに配されている。これらのガスケット層の間には、さらに、ガスケット層2″が配される。ガスケット層2″は、概ね平らであるが、外側層2、2′のキャンバ3とビード6′の間の平面部7″に隣接して、クラッキング61′を備える。このクラッキング61′には、より高いキャンバ3と、より小さなビード6′との釣り合いをとる効果がある。
【0051】
図28における2つの外側ガスケットは、鏡面対称になっており、それぞれ、燃焼ガス開口部のシールエレメントとして、キャンバ3(または3′)を備える。これらのガスケット層の間には、さらに、完全に平らなガスケット層2″が積層される。
【0052】
図29〜図31に示す2層金属製平型ガスケットの実施例においては、2つのガスケット層の一方が、他方のガスケット層よりも短くなっている。こうした短縮されたガスケット層は、しばしば「シム」と呼ばれる。このようなシムを伴ったシールエレメントは、多くの場合、主要な荷重接続部に置かれる。短縮ガスケット層は、燃焼ガス開口部5を迂回するリングだけで構成することも可能である。燃焼ガス開口部5を包囲するこれらのリングを、互いに連結させれば、メガネ形の短縮ガスケット層が形成できる。ここに示す3例のすべてにおいて、燃焼ガス開口部5は、波形構造を伴うキャンバ3とアーチ形のビード6′に包囲される。これら両エレメントは、対向するガスケット層において、互いの向かい側に配置されている。図29および図30の実施例において、ビード6′とキャンバ3は互いに離れる方向に向いているのに対して、図31の実施例では、互いに向かった方向に配され、凹側の面がガスケットの外側に位置するようになっている。図29および図31のガスケットの場合、ビード6′を含むガスケット層2′が短縮されており、図30のガスケットでは、キャンバ3を備えたガスケット層2が短縮されている。図29および図30のガスケットは、それぞれ、ガスケット外側エッジに向かって、ガスケットの後背部に、さらなる波形構造8、8′および80、80′を備える。これらエンボス加工の波形構造8、8′および80、80′は、主として、ガスケットのエリアを意図的に厚くするのに役立つ。
【0053】
ここで、キャンバの波形構造につき、寸法例を示す。以下の表における参照符号を、図32に示す。図32は、図4〜図7に相当するものであり、さらなる説明は要さない。また、図6および図7における記述も、参照されたい。表に示す数値は、シリンダヘッドガスケットについてものであるが、ここでは、波形構造を伴うキャンバを、燃焼ガス開口部用のシールエレメントとしてのみ用いている。表には、乗用車(PC)用の数値と、実用車(UV)用の数値を示す。どちらのクラスのエンジンについても、一般的に有効な範囲と好ましい範囲とが示されている。これらの数値は、本発明のその他の応用例において、ガスケットをデザインする際にも考慮される。
【0054】
【表1】
【0055】
「肥厚化」とは、ガスケットの原厚(金属製シートの厚さd)と比較した場合の、波形構造のエンボス加工による材料厚の絶対増加量を意味する。これは、2本の連結ラインの間を計測することにより行う。この2本の連結ラインは、図7における連結ラインV1、V2(谷の最低点を連結する)と同じやり方で構成されるラインであり、ガスケット層の両表面21、22上にある山の最高点を、相互に結ぶ直線部分で構成される。また、「薄層化」とは、谷におけるガスケット層の厚さの減少を意味する。薄層化は、波形構造をエンボス加工する際の伸長に起因しており、図7の連結カーブV1およびV2間の距離cとして測定される。
【0056】
図33は、エンジン用の省スペースシールエレメント3を表している。ここでは、ライナーLBがエンジンブロックMBに挿入されて、シリンダヘッドZKと合わされ、エンジンブロックMBとライナーLBとの間隙を、キャンバ3がブリッジする。両傾斜エリア32、32*は、エンジンブロックMBとライナーLBの相互動作を補完しており、少なくともキャンバの底部が、それぞれ、エンジンブロックおよびライナーの上にくるようになっている。一方、頂上部31は、シリンダヘッドZKと隣接する。
【0057】
図34は、2層シリンダヘッドガスケットの実施例における、隣り合う2つの燃焼室開口部5の間の狭いウェブエリアを表しており、図1のZ′−Z′線に沿った断面図である。隣り合う2つ開口部5、5+の傾斜エリア32、32+は、このウェブエリアを平行に伸長しており、断面図に示されるように、小さなウェブ平坦部35を形成する。傾斜エリア32、32+は、それぞれ、2つの山と2つの谷を備える。
【0058】
図35および図36は、本発明による4層および5層金属製平型ガスケットの実施例を示す。図35は、各々が、貫通開口部5のエリアにキャンバ3、3′を有し、外側エッジ付近にハーフビード60、60′を備えた、2つのガスケット層2、2′を示している。両ガスケット層は、さらなるガスケット層2'''を軸に、鏡面対称となっている。ガスケット層2'''は、厚みのある平らな金属シートで、主として、ガスケットの厚さを適正に調節するのに役立つ。さらに、ガスケットはもう1つの金属シート2″を備えるが、こちらはエンジンブロックの冷水チャネルをシールするのに効果的である。図35の実施例と比較してみると、図36に示す実施例は、貫通開口部5に近接するエリアにビード6''''を備えた、さらなるガスケット層2''''を加えることにより改変されている。先に示した実施例の場合と異なり、ビード6''''の凹側は、キャンバ3′の凹側ではなく、凸側を向いている。このような配置は、直列接続を用いることにより、シールエレメント同士が効果を相互に強化し合う場合に、効果的である。このことは、より少ない層のガスケットの場合にも、当てはまる。
【0059】
図37は、単層ガスケット層の実施例を、図1の線Y′−Y′に沿った断面図で示す。本発明のキャンバが、燃焼室開口部をシールし、平坦部を挟んで、冷水ホール52をシールするハーフビードビード60が、ガスケットの外側エッジに向って設けられている。このハーフビードビード60と外側エッジとの間には、さらに、本発明によるキャンバ3がエンボス加工され、燃焼室と隣接するキャンバ3と同方向に向いている。ハーフビード60により、キャンバ3は、キャンバ3に対してオフセットしている。さらに、キャンバ3の高さは、キャンバ3よりも低い。
【0060】
図38〜図42は、一定した圧力分散が、本発明のガスケットにおいて、いかに微細構造の特性に基づいているかを示す。図38は、顕微鏡写真に写したガスケットの位置を切断面で示す。参照番号200は、切断する前にガスケット層を埋め込んだ樹脂を表す。図39は、ガスケットの平面部7を撮ったものであり、107で示すセクションを示している。このセクション107は、その全体にわたって、オーステナイト系微細構造Aを備える。平面部7は、キャンバのエンボス加工の影響を受けていないため、平面部7、およびセクション107は、エンボス加工を施す前の金属シート材料の状態をも表しているといえる。
【0061】
図40は、波形構造の山腹エリア、すなわち山41と谷42との間の遷移領域を表している。図38から明らかなように、この山腹エリアの厚さは、山41や谷42と比べて、薄くなっている。こうした山腹におけるテーパは、キャンバ3にかかる圧力を均一に分配するための、要因の1つである。もう1つの要因は、図40に示すセクション143の顕微鏡写真から見てとれる。図39と対照をなして、ここては、異なるゾーンが示されている。谷41へと向かう241エリアには、微細構造Aが存するが、これは変態していないエリア7の微細構造である。一方、テーパをつけた山腹領域243および谷の下部表面に隣接する領域244は、変態した微細構造BおよびCを示している。微細構造Cは、歪み誘起によるマルテンサイトを含むが、これはダイを完全に閉じる前の最終段階において、材料を加圧移動することにより得られる。図40に示されるように、この硬化された材料は、極めて少量しか見られない。対照的に、微細構造Bは、山腹エリアの大部分(すなわち243のエリア)に広がっている。オーステナイト微細構造Aが、比較的大きな結晶粒であるのに対し、微細構造Bは、細長い構造の延伸した組織を示す。この微細構造Bは、結晶粒微細化の典型例である。結晶粒微細化は、材料の降伏強度および延性を高めるプロセスであり、これら両特性を強化することにより、波形構造を伴ったキャンバ3において、圧力の分散が極めて均一となる。さらに、結晶粒微細化を行っていない材料と比較して、亀裂に対する強度も大幅に上昇する。微細構造を観察すると、山腹エリア43のエンボス加工は、剪断歪みに支配されていることが分かる。
【0062】
図41は、キャンバ底部の近辺エリアを表している。しかしながら、示されているセクションにおいて、キャンバの傾斜エリアはすでに上昇し始めている。ここでも、異なる3つの微細構造が識別できる。このセクションの大部分は、オーステナイト微細構造Aを示しているが、上昇する傾斜の上部表面には、マルテンサイト領域Cが形成された薄いエリアが見える。キャンバと第1の波山がかなり上昇する(これは、樹脂200との境界線を見れば分かる)右側部分には、結晶粒微細化Bが現れている。図42は、頂上エリア41にわたるセクション141を示しているが、ここにおける微細構造は、平面エリア7におけるオーステナイト微細構造A(原材料または未処理材料)に非常に類似している。このことは、図40における観察と一致する。このように、結晶粒微細化は、波形構造の山腹エリア43においてのみ起こっている。
【0063】
これらの微細構造に関する観察は、ポジション7、8および41、43の中央ラインMLで行われた硬度測定にも明確に示されている。平面エリア7および底部に隣接する領域8におけるビッカーズ硬度は、非常に近似しており、それぞれ465、480であった。頂上領域では、これらより僅かに高く518であったが、波山と波谷の間の山腹エリア43においては、はるかに高くなり、平均硬度609が測定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのガスケット層を備え、概ね平面的で、第1表面と第2表面とを有する金属製平型ガスケットであって、
ガスケットの水準面は、前記表面間の中心を伸長し、キャンバが前記ガスケット層に形成され、該キャンバは、ガスケット層の前記第1表面を越えて突出しており、幅よりも長さの方が大きく、第1のレベルと第2のレベルを有しており、該第1のレベルは、前記ガスケット層の第1表面にあるキャンバ底部を通って、ガスケット層の水準面と平行して走る仮想レベルであり、該第2のレベルは、キャンバの頂上部を通って、ガスケット層の水準面と平行して走る仮想レベルであり、前記キャンバは、これら2つのレベルの間を上昇する傾斜エリアを有しており、該傾斜エリアは、前記2つのレベルの間に、各々が山と谷とを有する2つ以上の波形で構成された波形構造を備えることを特徴とする、金属製平型ガスケット。
【請求項2】
前記キャンバは、前記ガスケット層の貫通開口部の周りを、少なくとも部分的に伸長し、好ましくは、環状に閉じた状態で伸長することを特徴とする、請求項1に記載の金属製平型ガスケット。
【請求項3】
前記キャンバは、a)2つのビード底部および、該ビード底部とビード頂上部との間を上昇する2つの傾斜エリアとを備えたフルビード、または、b)1つのビード底部および1つの傾斜エリアしか備えないハーフビード、のいずれかから選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属製平型ガスケット。
【請求項4】
前記傾斜エリアは、前記第1のレベルから第2のレベルへと徐々に上昇し、前記山の頂点および/または谷の最低点を連結する包絡線が、円弧形または楕円形であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項5】
2つの隣接する山の頂点が前記第1のレベルを超えて突出する高さの階差は、前記キャンバの頂上部に向かうにつれ減少することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項6】
前記山と前記谷の幅方向の断面が、正弦波形状の軌道をとるか、もしくは各々が台形の断面形状を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項7】
前記波形構造エリアにおいて、前記山と谷の間に位置する山腹エリアにおけるガスケット層の厚さは、該谷または谷エリアにおけるガスケット層の厚さと比べて、5〜40%、好ましくは10〜30%減少することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項8】
前記波形構造が、前記キャンバの全幅および/または全長にわたって伸長することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項9】
前記波形構造が、前記キャンバの全幅にわたっては伸長せず、該波形構造を備えた2つの傾斜エリアの間に、平坦部を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項10】
前記キャンバの全体的な断面形状は、アーチ形または台形形であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項11】
前記キャンバの幅方向の断面において、材料の厚さの半分のところを伸長する中央ラインが、前記第1表面上で隣接する谷の最低部を連結する直線部分で構成される第1の連結ラインとも、前記第2表面上で隣接する谷の最低部を連結する直線部分で構成される第2の連結ラインとも、交わらないように、前記キャンバの波形構造が形成されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項12】
前記山腹エリアにおけるビッカーズ硬度は、前記ガスケット層の平面エリアにおけるビッカーズ硬度よりも10%以上、好ましくは15%以上高いことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項13】
前記波形構造の山腹エリアには、結晶粒微細化が存在しており、好ましくは、前記頂上エリアにおいては、表面から材料の厚さの10%までのところを除いて、結晶粒構造が変質していないことを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項14】
貫通開口部を包囲するシールエレメントは、前記キャンバだけであることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項15】
前記キャンバに加えて、貫通開口部を包囲するビード形状のさらなるシールエレメントを、該貫通開口部をシールするために備えることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項16】
少なくとも2つのガスケット層を備え、該2つ以上のガスケット層の少なくとも1つは、前記波形構造を備えた前記キャンバを有することを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項17】
さらなるガスケット層において、前記波形構造を備えた前記キャンバは、a)波形構造を伴うキャンバ、特に、前記第1のガスケット層の前記キャンバと鏡面対称に配されたキャンバ、b)ビードまたはハーフビード、特に、前記第1のガスケット層の前記キャンバと実質的に鏡面対称に向いたビードまたはハーフビードビード、またはc)さらなるガスケット層における平面部、のいずれか1つと向かい合うようになっている、請求項1〜16のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項18】
前記平型ガスケットは、シリンダヘッドガスケット、高圧シールガスケット、または、排気系ガスケット、とりわけ排気マニホルドガスケットまたは排気処理エリアにおけるガスケットであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項19】
前記キャンバが、エンジンブロックとライナとの間の間隙をブリッジすることを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の金属製平型ガスケットの、シリンダヘッドとライナーを伴うエンジンブロックとの間におけるシールとしての使用。
【請求項1】
少なくとも1つのガスケット層を備え、概ね平面的で、第1表面と第2表面とを有する金属製平型ガスケットであって、
ガスケットの水準面は、前記表面間の中心を伸長し、キャンバが前記ガスケット層に形成され、該キャンバは、ガスケット層の前記第1表面を越えて突出しており、幅よりも長さの方が大きく、第1のレベルと第2のレベルを有しており、該第1のレベルは、前記ガスケット層の第1表面にあるキャンバ底部を通って、ガスケット層の水準面と平行して走る仮想レベルであり、該第2のレベルは、キャンバの頂上部を通って、ガスケット層の水準面と平行して走る仮想レベルであり、前記キャンバは、これら2つのレベルの間を上昇する傾斜エリアを有しており、該傾斜エリアは、前記2つのレベルの間に、各々が山と谷とを有する2つ以上の波形で構成された波形構造を備えることを特徴とする、金属製平型ガスケット。
【請求項2】
前記キャンバは、前記ガスケット層の貫通開口部の周りを、少なくとも部分的に伸長し、好ましくは、環状に閉じた状態で伸長することを特徴とする、請求項1に記載の金属製平型ガスケット。
【請求項3】
前記キャンバは、a)2つのビード底部および、該ビード底部とビード頂上部との間を上昇する2つの傾斜エリアとを備えたフルビード、または、b)1つのビード底部および1つの傾斜エリアしか備えないハーフビード、のいずれかから選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属製平型ガスケット。
【請求項4】
前記傾斜エリアは、前記第1のレベルから第2のレベルへと徐々に上昇し、前記山の頂点および/または谷の最低点を連結する包絡線が、円弧形または楕円形であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項5】
2つの隣接する山の頂点が前記第1のレベルを超えて突出する高さの階差は、前記キャンバの頂上部に向かうにつれ減少することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項6】
前記山と前記谷の幅方向の断面が、正弦波形状の軌道をとるか、もしくは各々が台形の断面形状を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項7】
前記波形構造エリアにおいて、前記山と谷の間に位置する山腹エリアにおけるガスケット層の厚さは、該谷または谷エリアにおけるガスケット層の厚さと比べて、5〜40%、好ましくは10〜30%減少することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項8】
前記波形構造が、前記キャンバの全幅および/または全長にわたって伸長することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項9】
前記波形構造が、前記キャンバの全幅にわたっては伸長せず、該波形構造を備えた2つの傾斜エリアの間に、平坦部を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項10】
前記キャンバの全体的な断面形状は、アーチ形または台形形であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項11】
前記キャンバの幅方向の断面において、材料の厚さの半分のところを伸長する中央ラインが、前記第1表面上で隣接する谷の最低部を連結する直線部分で構成される第1の連結ラインとも、前記第2表面上で隣接する谷の最低部を連結する直線部分で構成される第2の連結ラインとも、交わらないように、前記キャンバの波形構造が形成されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項12】
前記山腹エリアにおけるビッカーズ硬度は、前記ガスケット層の平面エリアにおけるビッカーズ硬度よりも10%以上、好ましくは15%以上高いことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項13】
前記波形構造の山腹エリアには、結晶粒微細化が存在しており、好ましくは、前記頂上エリアにおいては、表面から材料の厚さの10%までのところを除いて、結晶粒構造が変質していないことを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項14】
貫通開口部を包囲するシールエレメントは、前記キャンバだけであることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項15】
前記キャンバに加えて、貫通開口部を包囲するビード形状のさらなるシールエレメントを、該貫通開口部をシールするために備えることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項16】
少なくとも2つのガスケット層を備え、該2つ以上のガスケット層の少なくとも1つは、前記波形構造を備えた前記キャンバを有することを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項17】
さらなるガスケット層において、前記波形構造を備えた前記キャンバは、a)波形構造を伴うキャンバ、特に、前記第1のガスケット層の前記キャンバと鏡面対称に配されたキャンバ、b)ビードまたはハーフビード、特に、前記第1のガスケット層の前記キャンバと実質的に鏡面対称に向いたビードまたはハーフビードビード、またはc)さらなるガスケット層における平面部、のいずれか1つと向かい合うようになっている、請求項1〜16のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項18】
前記平型ガスケットは、シリンダヘッドガスケット、高圧シールガスケット、または、排気系ガスケット、とりわけ排気マニホルドガスケットまたは排気処理エリアにおけるガスケットであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の金属製平型ガスケット。
【請求項19】
前記キャンバが、エンジンブロックとライナとの間の間隙をブリッジすることを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の金属製平型ガスケットの、シリンダヘッドとライナーを伴うエンジンブロックとの間におけるシールとしての使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【公表番号】特表2011−511233(P2011−511233A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545405(P2010−545405)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000808
【国際公開番号】WO2009/098063
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(303050078)ラインツーディチュングスーゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000808
【国際公開番号】WO2009/098063
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(303050078)ラインツーディチュングスーゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】
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