金属製平形ガスケット
本発明は、少なくとも1つの貫通開口部(3)が存在する、少なくとも1つのガスケット層(2)を備え、貫通開口部(3)は、弾性変形可能なシールエレメント(5)が存在するシール部(4)によって包囲されている、金属製平形ガスケットであって、ガスケット層(2)は、単一の貫通開口部を個別に包囲しない、少なくとも1つの弾性変形可能なシールまたは支持エレメント(7)を有する任意的な機能部(6)をさらに備えると共に、ガスケット層(2)の少なくとも一方の面(21, 22)で、シール部(4)と機能部(6)のほかに、その厚さがガスケット層(2)の原厚よりも大きくなるように、表面構造化がなされた部分(8)を備え、表面構造化部分(8)は、シール部(4)でも機能部(6)でもない複数の部分を被覆しており、該構造は、表面構造化部分(8)全体にわたって伸長し、1つの群を構成する実質的に平行な仮想直線上に、凹部(9)と凸部(10)を交互に配することにより形成される、金属製平形ガスケットを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部に配された少なくとも1つの弾性シールエレメントにより包囲およびシールされている、少なくとも1つの貫通開口部が存在する、少なくとも1つのシール層を備える、金属製平形ガスケットに関する。さらに、単一の貫通開口部を個別に包囲することはない、少なくとも1つのさらなる弾性シールエレメントが、少なくとも1つの機能部に存在し得る。該ガスケットは、該少なくとも1つのシール部および該任意的に設けられる機能部のほかに、その表面のうち少なくとも1つの面に構造化要素を有する部分を備える。この表面構造化部分の厚さは、該表面構造化要素が形成されたガスケット層の原厚よりも大きい。
【背景技術】
【0002】
シリンダヘッドガスケットなどのガスケット内において、肥厚化されているこのような部分は、通常、支持要素として機能する。たとえば、国際公開第WO2004/076893号公報、または欧州特許出願公開第EP1577589号公報には、エンボス加工により肥厚化され、燃焼室開口部に沿って伸長する肥厚および表面構造化部分により、シリンダヘッドガスケットの燃焼室開口部をシールするビードを支持することが開示されている。また、これらの文献には、燃焼室開口部から遠位にあり、かつガスケットの外縁により近い位置にある、ガスケットの後背部と呼ばれる部分に、類似の支持構造を存在させうることが記載されている。これらの支持手段は、凹部および凸部が交互に配されるように、ガスケット層に波状または格子状にエンボス加工することにより形成されている。前記後背部の支持エレメントは、弾性ビードの完全変形を回避するいわゆるストッパとしてではなく、局部的な高さ調節エレメントとして機能している。好ましくは、かかる高さ調節エレメントは、ガスケットの外縁に沿って、特に短い方の縁部において、延在する。高さ調節エレメントは、シールすべき部分、特にシリンダヘッドの形状歪みを回避することを主目的として設けられる。支持エレメントおよび高さ調節エレメントの両方を燃焼室開口部およびガスケットの後背部に同時に存在させることにより、燃焼室用の弾性ビードに対して、燃焼室側にのみ支持エレメントが設けられているガスケットと比較して、大幅な改善が図られる。しかしながら、支持エレメントおよび高さ調節エレメントの両方を有する場合でも、形状歪みを完全かつ確実には回避できていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2004/076893号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第EP1577589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、ガスケットが間に設置される部分の形状歪みを確実に回避しうる金属製平形ガスケットを提供することを目的としている。前記ガスケットは、多様な種類のシールすべき表面に合わせて、容易かつ安価に製造可能かつ適合可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも1つの貫通開口部が存在する、少なくとも1つのガスケット層を備える、金属製平形ガスケットに関する。該貫通開口部は、弾性変形可能なシールエレメントが存在するシール部によって包囲されている。また、該ガスケット層は、機能部を備えてもよい。該機能部においては、少なくとも1つの弾性変形可能なシールまたは支持エレメントが同様に存在するが、これらは単一の貫通開口部を個別に包囲することはない。通常、該機能部は、ガスケットの外縁に沿って伸長するシールビード、または同様の部分に延在するエラストマーシールリップによって構成される。前記少なくとも1つのシール部および任意的に設けられる前記少なくとも1つの機能部のほかに、該金属製平形ガスケットは、構造化された少なくとも1つの部分を備える。この部分において、該ガスケット層の厚さはその原厚よりも大きい。すなわち、前記層の全体としての厚さは、その部分の材料厚さよりも大きい。前記構造は、交互に設けられた凹部および凸部からなり、該凹部および凸部は、該構造化部分の全体にわたって実質的に平行に伸長し、1つの群(コホート)を構成する複数の仮想直線上にあるように配される。前記構造化要素によって被覆されている部分は、前記シール部でも機能部でもない、少なくとも複数の部分において、該ガスケットの表面を被覆している。好適な実施形態において、該構造化要素によって被覆されている部分は、前記シール部でも機能部でもない部分を実質的に完全に被覆している。
【0006】
前記構造化要素について複数の配置構成を採ることが原則として可能である。第1の実施形態における構造化要素は、ボルト孔をその円周の50%を超えて包囲しており、第2の実施形態においては、ガスケットの主貫通開口部と外縁との間の部分に、ガスケットの外周の少なくとも50%にわたって延在している。該構造化要素が、ガスケットの短い方の縁部全体にわたって、ガスケットの主貫通開口部と外縁との間に延在している場合には、この部分のみにおいて存在していれば十分である。しかしながら、該構造化要素を、前記ボルト孔をその円周の少なくとも50%にわたって包囲するように、ガスケットの主貫通開口部と外縁との間に延在させるようにしてもよい。該構造化要素の幅は、ほとんどの状況において、わずかしか変化しない。該構造化要素が、ガスケットの主貫通開口部と外縁との間に延在する場合には、さらなる開口部および機能部の存在に起因して、その幅が変化するだけである。通常、該構造化要素の長さ/外周の70%以上において、その幅の変化は40%以下となっている。上記の実施形態においては、該構造化要素は、その高さを調節して、形状歪みを完全に回避する目的で、ガスケット表面の所定かつ限定された部分を被覆している。
【0007】
さらなる実施形態においては、シールされる部品の形状歪みも回避するために、前記構造化部分が、前記シール部および任意的に設けられる機能部のほかの部分において、ガスケット表面を実質的に完全に被覆している。本発明において、該構造化要素による実質的に完全な表面の被覆とは、前記少なくとも1つのシール部および前記任意的に設けられる少なくとも1つの機能部を除去した後も残る、ガスケットの少なくとも70%の部分が該構造化要素により被覆されることを意味する。なお、前記シール部は、貫通開口部から、該貫通開口部を包囲するシールエレメントの外縁までの部分と定義される。該貫通開口部を包囲するシールエレメントとしてビードが用いられている場合、該シール部は、貫通開口部の外縁から該ビードの外側端部までの円形部分である。一方、前記機能部の範囲は、この部分に配置されている弾性変形可能なシールまたは支持エレメントによって使用されている部分に相当する。ハーフビードまたはフルビードの場合、これは、該ビードの全長にわたって伸長する該ビードの端部間の部分であり、もしくは、ハーフビードの場合、その傾斜部分である。機能部の一例としてシールビードがあり、該シールビードは、いくつかの貫通開口部を同時に包囲する。このような構造は、シリンダヘッドガスケットにおける油貫通開口部または冷却水貫通開口部のシールのために、一般的に使用される。この変形例では、ガスケット層の外縁に沿って伸長するハーフビードまたはフルビードを被覆して、ガスケット層の内側部分にあるいくつかの貫通開口部も包囲している。機能部のさらなる例として、開放端を有する非円形ビードが配置された部分があるが、該ビードは、シール機能を持たず、ガスケットの隣接部分用の支持エレメントとしてのみ機能する。ガスケットは、ビードの代替として、エラストマーリップをシールまたは支持エレメントとして備えることもできる。好ましい実施形態において、該構造化要素は、前記シール部および任意的に設けられる機能部を除くガスケット層の部分の少なくとも80%、より好ましくは90%以上にわたって延在する。すなわち、該構造化部分は、前記シール部および機能部を含む、ガスケット層の全面積の少なくとも50%、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上を被覆する。なお、上述の部分は、実際に存在のある部分を意味し、貫通開口部がある部分は考慮されない。
【0008】
本発明によれば、前記構造化要素は、弾性変形可能なシールまたは支持エレメントに用いられないガスケット層の部分のうち基幹部分を被覆する。好適には、該構造化要素は、前記少なくとも1つのシール部および前記任意的に設けられる少なくとも1つの機能部に対して直接隣接するか、または、これらに対して、かなり短い間隔、たとえば0.3mm〜3mm、好ましくは0.5〜2mm、さらに好ましくは0.5〜1.5mmを保持する。いくつかのシール部またはいくつかの機能部が存在する場合、該構造化要素をこれらに可能な限り近接させる。ここで「可能な限り近接させる」は、該構造化要素によって前記弾性シールエレメントの機能が影響を受けない程度を意味する。好ましくは、該構造化要素は、ガスケット層の外縁まで、この部分がシール部または機能部でない限り、延在する。
【0009】
本発明による金属製平形ガスケットでは、ガスケット層のうち、そのシール部または機能部以外の少なくとも1つの部分の少なくとも一部、前記構造化要素によって被覆されている。該構造化部分において、ガスケット層の厚さは該ガスケット層の原厚、すなわち該構造化要素を導入する前の平形ガスケット層の厚さよりも大きい。該ガスケット層の厚さは、該ガスケット層の変形していない面に平行に伸長し、かつ該ガスケット層の構造化部分の両面とそれぞれ当接する、2つの接線層間の距離として測定される。よって、該構造化部分の厚さは、表面の凹部からではなく、凸部から測定される。構造化部分において、該構造化要素はガスケット層の断面全体にわたるため、前記厚さは、ガスケット層の両側にある凸部に当接する2つの面間の距離として測定される。しかし、該凸部の高さは、構造化部分の全体にわたって必ずしも一定である必要はない。ただし、いずれの場合でも、該構造化部分の厚さは、成形されていないガスケット層の原厚よりも大きくなる。ここで、凹部は、凸部よりも低い部分として理解されるべきものであり、成形されていないガスケット層の面に対して凹んでいる必要はない。ガスケット層の両面に構造化要素を対称に形成した場合でも、凹部および凸部におけるその部分の材料厚さは、未処理ガスケット層の原厚よりほとんど同じある(実際にはわずかに低減している)が、ガスケット層自体の厚さは増加する。
【0010】
多くのガスケットにおいて、個々の部分について表面構造化要素を伴うように設計すれば十分である。該構造化要素は、たとえば、ガスケットのボルト開口部または外縁部にある構造化要素によってシールされる部品向けにプレテンションを適合させる目的で用いられる。
【0011】
他のケースでは、前記シールおよび任意的に設けられる機能部を除いた部分に、該構造化要素を全面的もしくはほとんど全面的に設けると、効果的である。この場合、該構造化部分は支持部分を構成し、一部に局所的に存在するだけの支持手段と比較して、改善された支持効果を提供できる。その結果、該構造化部分は、シールすべき部分の歪みを効果的に防ぐことができる。該構造化要素における凸部の高さを変更することにより、シールすべき表面の形状やその硬度に対する細やかな対応が可能である。このようにして、金属製平形ガスケットに作用するボルトの力を、より適切に設定して、全体的に低減させることが可能となる。
【0012】
前記構造化要素を形成する凹部および凸部は、1つの群(コホート)を構成する、実質的に平行な直線の上に交互に配置される。これらの直線は、該凹部が伸長する方向に連続的に進んでいく。すなわち、該凹部および凸部は、前記構造化要素によって被覆される部分の全体にわたって、かなり規則的に分布するため、該構造化部分の製造は容易になされる。前記実質的に平行な直線により構成されるコホートにおいて、この直線は仮想線である。これらの線は実際に前記構造化部分の全体にわたって伸長するが、これらの線の各スポットに凹部または凸部が必ずしも存在するわけではない。本発明において、たとえば、該仮想線は、このような構造化要素が存在しないシール部または機能部や、シールすべき部分が特に硬質であって支持を必要としない局所的な部分と、交差する。この場合、凸部(単数または複数)および/または凹部(単数または複数)は、このようなそれぞれの部分まで仮想線上を伸長するが、これらの部分で中断して、同一の仮想直線上であってこれらの部分の反対側において連続する。よって、前記1つの群の実質的に平行な直線は、ガスケット層の全体にわたって与えられるが、該凹部および凸部は、実際にはこれまでに記述したサブ領域内にある線のみに形成される。凹部により、隣接する凸部が相互に分離される。ここで、「実質的に平行な線」は、平行からの偏差が最大5°まで、好ましくは最大2°までであることを意味する。
【0013】
本発明による金属製平形ガスケットの第1の実施形態では、前記凸部は、1つの群の平行線のみに沿って進む。ある線が凸部に対応する場合、この線に隣接する線は凹部に対応し、該構造化要素は、中間に溝を備える、実質的に平行な直線の凸部から形成され、全体的に波状の構造を備えることになる。すべての凸部が同一の幅を有し、相互に同一の距離で配されることが好ましい。前記溝についても同様である。しかし、該凸部間を異なる間隔としたり、該凸部および溝部の幅を異ならせたりすることも可能である。
【0014】
凹部および凸部はまた、その延長方向において、交互に配されてもよい。たとえば、凹部および凸部が伸長する仮想線と交差する非対称シールエレメント(たとえば、ハーフビード)の両側において、該シールエレメントの一方側では凸部が、他方側で凹部が連続するように、あるいはその逆となるように、該凹部と凸部を配してもよい。
【0015】
本発明のさらなる実施形態では、前記凹部が、相互に交差する数個の群(コホート)の仮想直線に沿って配される。該凹部が交差することにより、該凹部の間に凸部が配される。該凸部は、構造化部分の全体にわたって連続的に伸長するのではなく、サブ領域にのみ存在する。これらの線の交差する角度は、好ましくは30〜150°、より好ましくは45〜135°、さらに好ましくは80〜100°、最も好ましくは90°である。角度が90°の場合、構造化要素は格子状パターンとなる。該凸部が2つの群の平行線上を伸長することが好ましい。しかし、該凸部を3つの群の直線上を伸長させることも可能であり、これらを60°の角度で交差させるのが好ましく、その結果、該構造化要素はウェブ状パターンとなる。
【0016】
また、該凹部を、3つ以上の群の仮想直線上を伸長するように配することもできる。これにより、凹部およびその間に配される凸部に、多岐にわたる形状をもたらすことができる。該凹部および凸部の断面についても多種多様に設計にすることができる。前記仮想線の伸長方向に垂直な断面は、台形、三角形、円形または矩形の形状とすることができる。製造を容易にするため、すべての凹部を同一の断面にすることが好ましい。該凹部の深さ(該凸部の高さ)を変化させることもできるが、すべての凹部を同一の深さにすることが好ましい。この深さは、該構造の一方の表面上にある、凸部の最高点と、これに隣接する凹部の最深点との間の距離をガスケット層の平面に対して垂直に測定したものと定義される
該構造化部分における凸部の形状および寸法の設計範囲についても同様である。たとえば、前記凸部の断面は、キャンバー形状、矩形、三角形または台形の形状とすることができる。好適な形態は、多面体の柱形状である。該凸部は、構造化部分の全体にわたって等しい高さとすることができるが、この部分を横断する方向にその高さを変化させることが好ましい。この高さは、ガスケットの用途に応じて設計される。構造化部分のガスケット層の厚さは、該ガスケット層の原厚と比較して大きいため、該構造化部分は、弾性シールエレメントの支持手段として特に適しており、同時に、固定ボルトによる力から生ずる面圧を適切に分散させることができる。該構造化部分は、隣接する弾性シールエレメント、たとえばビードまたはエラストマーリップのための変形リミッタとして機能し、使用時に、該シールエレメントが許容以上に平坦化してしまうことを回避するように設計することができる。該構造化部分は、通常、導入された力の二次的な負荷を伴う用途に適している。該構造化部分は、この力の一部を引き受けて、ガスケット層のほかの部分がこれらの力を過度に受けてしまうことを防止できる。該構造化要素を使用することにより、ガスケット層の当該部分の肥厚化が、さらなる材料を必要とせずに、より薄い材料からの製造で可能となるため、材料を節約できる。また、該構造化部分は、追加的な重層化を図る代わりに、当該部分を肥厚化させるためにも用いることができる。このように、本発明により、ガスケットの製造コストを低減させることができる。該構造化要素による表面の増加に伴い、該構造化された表面による接着特性の向上といった、さらなる利点ももたらされる。これにより、任意的にコーティングを施したり、シールエレメントとしてエラストマーリップを用いたりする場合のいずれにおいても、金属製ガスケット層に対する樹脂の接着性が改善される。
【0017】
上述の使用範囲、およびさらに可能な用途範囲に合わせて、該凸部の高さ(該凹部の深さ)を、該構造化要素で被覆されたガスケットの部分全体にわたって変化させてもよい。この高さは、凸部の製造時に確立させてもよいし、艶出し加工により確立させてもよく、後者の場合、構造化部分の全体または一部のみがその影響を受ける。この高さは、シールされる部品の対応部分の剛性に適合させられる。たとえば、ガスケットの一部がシールする部分が高硬質の場合、該構造の高さは、低軟質の部分をシールする箇所よりも低くなる。同様に、該構造の高さは、ボルト開口部からの距離が離れるにつれて、増加することが多い。この局所的なシール隙間に適合するように、該構造化部分の全体にわたって、該構造化要素の高さを意図的に分散させることにより、形状歪みをほとんど完全に回避することが可能となる。このように、シール隙間に適合するように構造化要素の形状を設計することが可能である。このように適合させることは、かなり小さな構造化部分にも適用可能であるが、より長い表面構造化要素に適用されることが好ましい。先行技術の幅狭円形または直線状の変形リミッタと比較して、該構造化要素を延在させることにより、通常、多様性を大きく高めることができる。しかし、かかる効果は、より広く連続的に適用されることでより発揮される。
【0018】
本発明において、金属製平形ガスケットにエンボス加工により構造化要素を形成することが好ましい。また、かかる構造化には、異なる厚さのガスケット層から、その材料だけを用いることにより、構造化部分の効果的な肥厚化を達成できる、すべての種類の材料変形が含まれる。材料自体の厚さは増加することはなく、伸展によりわずかに低減する。それにもかかわらず、層の厚さは大きくなる。該構造化要素は、たとえばコイニングまたは深絞りによって得ることもでき、これにより、台形、三角形または円形の断面形状の凸部が得られ、あるいは、押出し、その他の方法により、凹部の形成に伴って、該凹部から材料を移動させることにより、凸部を得てもよい。
【0019】
本発明は、単一層ガスケットだけでなく、多層ガスケットにも適用できる。後者の場合、構造化要素を設けるべきではない弾性変形可能なシールエレメントおよび機能部を除けば、複数の層に該構造化要素を設けることができる。構造化部分とシールおよび機能部への部分分けは、異なる構造が異なるガスケット層に構築される場合であっても維持される。すなわち、構造化要素を備えるガスケット層であっても、隣接するガスケット層のシールまたは機能部に当接する部分においては、構造化要素を備えないことになる。複数のガスケット層が実質的に相互に平行に配置されたガスケットにおいて、平行する層に対するシールおよび機能部の平行な突起により、この部分には本発明による構造化要素が備えられてないことになる。
【0020】
特に、一方の面に凹部が、他方の面でその反対側に凸部が形成されるように構造化要素が両面に導入される場合、一方の面の凹部とその同一面上の隣接する凸部との間の移行部(以下、「フランジ」と称する)は、該フランジ部分の材料が、凸部および凹部の部分の厚さよりも小さくなるように設計すると、該構造化部分が補強される。該フランジ部における材料厚さの低減の度合いは、隣接する凸部または凹部の材料厚さと比較して、少なくとも8%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは13%、最も好ましくは15%である。また、該構造化部分におけるテーパの度合いを変更して、ガスケットの弾性を適合させることも可能である。
【0021】
一見したところでは、該構造化エレメントはビードに似ているが、これらのエレメントは、テーパ付けのため、ビードよりも低弾性である。その上、その幅は、ビードのものよりも狭い。これは、たとえばガスケット層の厚さとの対比で理解できる。ガスケット層の面から立ち上がる点からのビードの幅と、構造化されていないガスケット層の厚さとの間の比は、少なくとも6、好ましくは少なくとも7とされている。これに対して、該構造の幅に関する同様の比率は、最大4であり、好ましくは2.5〜3.5である。
【0022】
通常、2つの隣接する層の間に該構造化部分を配することは可能であり、この場合、少なくとも1つの部分および高さに関して、これらの層は相互に補完し合う関係となる。2つの隣接するガスケット層の構造化要素の厚さを追加すると、大幅な肥厚化が要求されているが、この肥厚化に必要な材料を単一の層から得ることができない場合に、特に効果的である。この場合、異なる層における構造化要素の設計は、同じとしても異ならせてもよい。隣接表面において補完し合う構造は、相互に係合させてもよい。また、隣接する層を、複数の非補完的構造または補完的構造からなるものとして、特定の部分においてのみ補完させるように設計してもよい。
【0023】
該ガスケット層は、公知のコーティングにより、コーティング可能である。該構造の導入後に、その一部のみをコーティングすることが好ましいが、事前にコーティングまたはコイルコーティングされた金属シートに該構造をエンボス加工により形成することも可能である。
【0024】
本発明は、多様な単層または多層の金属製平形ガスケットに適用できる。特に、シリンダヘッドガスケット、マニホールドガスケット、およびフランジガスケットに好適である。「平形ガスケット」には、2次元体から形成された、円錐ガスケットのような3次元的に変形されたガスケットも包含される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明によるシリンダヘッドガスケットの部分平面図である。
【図2】図2は、構造化要素の一例についての、図1の線A−Aに沿った断面図である。
【図3】図3は、構造化要素の他の例についての、図1の線A−Aに沿った断面図である。
【図4】図4は、一例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図5】図5は、他の例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図6】図6は、他の例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図7】図7は、他の例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図8】図8は、他の例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図9】図9は、他の例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図10】図10は、他の例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図11】図11は、他の例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図12】図12は、他の例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図13】図13は、図16の線C−Cに沿った断面図である。
【図14】図14は、本発明によるガスケットの製造のためのエンボス加工器具の断面図である。
【図15】図15は、本発明によるガスケットの例としてのシリンダヘッドガスケットの一例を示す平面図である。
【図16】図16は、本発明によるガスケットの例としてのシリンダヘッドガスケットの別例を示す平面図である。
【図17】図17は、表面構造化部分に関する5つの可能な実施形態(a)〜(e)を示す。
【図18】図18は、本発明による平形ガスケットの例としてのシリンダヘッドガスケットの一例を示す部分平面図である。
【図19】図19は、本発明による平形ガスケットの例としてのシリンダヘッドガスケットの他例を示す部分平面図である。
【図20】図20は、本発明による平形ガスケットの例としてのシリンダヘッドガスケットの他例を示す部分平面図である。
【図21】図21は、本発明による平形ガスケットの一例としてのマニホールドガスケットの一例を示す部分平面図である。
【図22】図22は、本発明による平形ガスケットの少なくとも1つの層における、貫通開口部にストッパエレメントが設けられている3例の断面図(a)〜(c)である。
【図23】図23は、空気をガイドするための偏向器を備えた排気ガスケットの断面図である。
【図24】図24は、図2および図3と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について、シリンダヘッドガスケットの例について、図面を参照しながら説明する。図示の例は、単に例示目的のために示されているにすぎず、本発明はこれらに限定されることはない。図面において、同一部分には同一の参照符号を用いている。
【0027】
図1は、単一の金属層2を備えるシリンダヘッドガスケット1の部分平面図である。このガスケット層には、4つの燃焼室開口部が設けられており、左側の1つは、その一部のみが図示されている。それぞれの燃焼室開口部3は、環状ビード5を備える環状シール部によって、包囲される。点線は、ビードのピーク経路のみを示している。燃焼室開口部3間の部において、2つのビード5が結合して、結合ビード部を形成する。したがって、シール部4は、メガネ形状となり、燃焼室開口部3の縁部31からビード5の外側端部(足部)まで延在しており、その位置を線51によって示す。
【0028】
ビードの端部51と外側ガスケット縁部23との間の部分、いわゆるガスケット層2の後背部において、さらなる貫通開口部であるネジ開口部、水開口部および油開口部の形態で存在するが、これらは個々には特定されない。これらの貫通開口部3′のうちのいくつかは、シール部4′によって包囲され、この部分には、弾性変形可能なシールエレメント、たとえば、ビードまたはエラストマーリップ(図示せず)が存在する。シール部4と別に、ガスケット1はハーフビード7を伴う機能部6を備える。詳細は示されていないが、ハーフビード7は、外縁23に向けてステップを形成しており、ガスケット層2の外縁23に沿って延びている。機能部6は、ハーフビード7の内側端部と外側端部の間にあり、ガスケットの外縁23に沿ってストリップ形状に伸長する。この部分を点線61および62によって示す。機能部6は、ガスケットの外縁23上を伸長するのではなく、外縁23から間隔をあけて存在する。外縁23と、ビードの外側端部(点線62)との間には、平坦部24が構成されるが、この部分24と点線61間の内側部分は、機能部6には該当しない。
【0029】
本発明によれば、構造化部分8は、シール部4、4′ならびに機能部6の外側に存在する。図1に、構造化要素をハッチング線によって示す。図1から分かるように、凹部または凸部それぞれの端部間にリンクはない。また、図1から分かるように、この実施形態における構造化部分8は、ガスケット層2のいわゆる後背部の大部分にわたって延在し、この後背部を実質的に完全に被覆している。すなわち、ガスケット層2のうち、シール部4、4′ならびに機能部6を除く部分の少なくとも70%、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上において、構造化される。構造化要素8は、この部分における、表面21から背面22までのこの層の厚さ方向全体にわたって横断している。この実施形態において、ガスケット層2の全体の広がりに対して、すなわちシール部4、4′および機能部6を除去しないとすると、ガスケット層2の表面のうち少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%が、構造化要素8によって被覆される。
【0030】
また、この構造8は左下から右上へと進んでおり、凸部9および凹部10がこの構造化部分8に沿って進むことが理解される。構造化部分8の全体にわたって、凹部9は直線状に延びる溝部からなり、凸部10は直線状に延びるリブからなり、貫通開口部3、3′と、これらを包囲するシールエレメント4、4′が存在する場合にはこれらとによってのみ、遮断される。
【0031】
図2および図3は、図1の線A−Aに沿った断面図における、構造化部分8の凹部および凸部の2つの異なる断面を示す。図2の実施形態において、凸部10および凹部9はどちらとも、本質的に台形状の断面を有している。この台形状断面のフランジは、好ましくは、垂直に延びるのではなく、垂直方向に対して少なくとも10°の角度で延び、移行部を形成するようにする。凸部10のピーク部は実質的に平坦である。図3の実施形態において、凹部9および凸部10の断面は円形である。双方の実施形態において、構造化部分8の線形構造は、上側21に凹部9があるときは、下側22に凸部10が存在するように、またその逆も成り立つように、配置される。これにより、波状構造が得られる。構造化部分8は、ガスケット層2をエンボス加工することにより、形成される。このため、ハッチングが付されている構造化部分8の有効厚さD1は、ガスケット層2の原厚D2と比べて大きくなる。これに対して、材料厚さについてはわずかに変化するのみである。
【0032】
図4および図5は、シリンダヘッドガスケットの例について、単一層の金属製平形ガスケットの断面を示す。これらの断面はそれぞれ、図の右側に位置する燃焼室開口部3と、図の左側に位置するガスケット層の外縁23との間の部分を示している。燃焼室開口部3は、ビード5によって完全に包囲される。ガスケット層2の外縁23は、外縁23と間隔をあけて配置されたハーフビード7、ならびにハーフビード7と外縁23との間の平坦部24によって完全に包囲される。構造化部分8は、ハーフビード7とビード5との間に配置される。構造化部分8は、図2または図3に示すように、凹部9と凸部10が交互に現れるように設計されている。ガスケット層2の部分8における有効厚さは、他の部分の有効厚さよりも大きくなっているため、この構造8は、ビード5およびハーフビード7の双方に対する変形リミッタとしても機能しうる。この実施形態では、構造化要素8をガスケット層2の大部分にわたって延在させているため(図1も参照)、相互に対してシールされるべきエレメントの歪みを、特に、構造8の高さをこの部分におけるエンジンブロックとシリンダヘッドとの間のシール隙間の幅と同じとなるように変更した場合に、効果的に回避することができる。
【0033】
図5に示すガスケットは、図4における1つよりも多い構造化部分8を有する。これらのさらなる構造化部分8は、ビード5と燃焼室開口部3の縁部31との間の部分に配置されると共に、ハーフビード7とガスケット層2の外縁23との間の非構造化部24に代替するように配置される。
【0034】
図6および図7は、図1の線B−Bに沿った断面図であり、2層ガスケットを示している。上側ガスケット層2は、図4の単一のガスケット層と同じであるから、詳細な説明は省略する。図7において、下側層2′は、層2と対称に配置される。対照的に、図6の例に示す層2′は、構造化要素を備えていない。層2の構造化部分8に隣接する層2′の部分は平滑である(符号25を付す)。
【0035】
図8は、図1の線B−Bに沿った断面図であり、3層シリンダヘッドガスケットを示している。下側ガスケット層2′は、図6の下側ガスケット層2′と同じである。上側ガスケット層2は、下側ガスケット層2′と対称である。第3のガスケット層2″は、層2と層2′との間に配置され、隣接する層のビード5、5′とハーフビード7、7′との間の部分で構造化されているが、これ自身はビードを持たない。構造化部分8は、ガスケット層2″の両面を超えて存在し、肥厚部を構成する。これにより、構造化部分8は、ビード5、5′、ハーフビード7、7′のための変形リミッタとして機能する。
【0036】
図9は、図1の線B−Bに沿った部分断面図であり、4層シリンダヘッドガスケットを示す。ガスケットは、図6の2つのガスケットを対称に組み合わせたものである。このような4層ガスケットにより、エンジンブロックとシリンダヘッドとの間における、きわめて幅広のシール隙間もシールすることが可能となる。
【0037】
4層シリンダヘッドガスケットのさらなる例を図10に示す。この実施形態では、ガスケットの合計厚さを増加させる目的のためだけに、それ自身に構造またはシールエレメントを持たない2つのいわゆる間隔用ガスケット層を用いている。第1の間隔用ガスケット層2′は、2つのガスケット層2と2″との間に配置される。これらのガスケット層2および2″は相互に対称に配されている。これらの2つのガスケット層は、図7に記載のガスケット層2、2′と同じである。第2の遠位層2′′′は、層2″の下側に配置される。
【0038】
図11〜図13は、単一層シリンダヘッドガスケットのさらなる断面図を示す。図11および図12は、2つの隣接する貫通開口部の間、または1つの貫通開口部とガスケットの外縁との間におけるガスケット2の断面を示している。双方のガスケット層2は、基本的には、図5に断面を示したものと類似する。しかし、図5のものとは異なり、図11のガスケットは、ビードまたはハーフビードなどのシールエレメントを持たず、単一層ガスケットとしてよりも、単数または複数の別のガスケット層と共に用いられる。構造化部分8は、平坦部25、25′により、相互に分離されている。
【0039】
図12のガスケットは、平坦部25′の代わりに、ビードを備えている。このビードは、たとえば、図のガスケット層2の右側にある貫通開口部を包囲する。
【0040】
図13は、本発明のガスケットにおける、ボルト開口部3′の存在する部分断面図であり、たとえば図16の線C−Cに沿った断面図に相当する。ボルト開口部3′は、構造化部分8によって包囲される。ボルトSのヘッドS1の下側は、ボルトSがボルト孔3′に挿入され締結された場合(図示せず)に、構造化部分8の上に強固に着座する。これにより、その力の一部が、構造化部分8に伝わる。凸部および凹部がある分、構造化部分8は、平形ガスケット層2よりも高い変形性を有する。凹部および凸部の適切に設計することにより、ボルト開口部3′のある部分に負荷される力を規制することが可能となる。
【0041】
好ましくは、構造化部分8は、エンボス加工によりガスケット層2に形成される。適切なエンボス加工ダイPを図14に模式的に示す。この例のエンボス加工ダイPは、図11に示すガスケット層の構造と類似するガスケット層の形成に用いられる。エンボス加工ダイPは、2枚のプレートP1、P2からなり、その構造化された表面は、間隔Hをあけて対向しており、これらの間にガスケット1が配置される。プレートP1、P2は、ダイシューP3、P4ならびにプレスを用いて、ガイドピンP5に沿って、相互に近接かつ離間する方向に移動する。
【0042】
構造化部分8の凹部9をガスケット層2の母材にエンボス加工するために、プレートP1、P2は、それぞれの側面に凸部P6を有しており、ガスケット層2の構造化部分8の凹部および凸部と相補的な関係にある凸部および凹部により、エンボス加工を施しうるようになっている。プレートP1、P2は、ガスケット層2の構造化要素のない部分に対応して、隙間P7を有する。これにより、上記部分にはエンボス加工が施されない。プレートP1、P2が閉じられると、プレートP1、P2の凸部P6は、ガスケット層2に押圧され、構造化部分8が形成される。図14は、エンボス加工後、プレートP1、P2が相互に離間した後の状態における、エンボス加工ダイPを示している。
【0043】
図15および図16は、本発明によるシリンダヘッドガスケットのさらなる例をそれぞれ示す平面図である。双方のガスケットは、図1に示すものに類似する。図15に記載のガスケットでは、ボルト開口部3′は、シールビードを備えるシール部4′によって包囲されている。ボルト開口部3′およびそのシール部4′の全体が、構造化部分8によって包囲される。これらの構造化部分8は、シール部4、4′、機能部6を除く、ガスケット層2のほとんどの部分に延在する。
【0044】
図16に示すシリンダヘッドガスケットは、ボルト孔3′がビードによって包囲されておらず、シール部を備えていない点で、図15に示すものと異なる。したがって、構造化部分8は、ボルト開口部3の外縁にほとんど接しているような状態にある。ただし、図15のガスケットは、1つの群の平行な仮想線のみを有するのに対して、図16のガスケットは、約90°で交差する2つの群の平行仮想線を備えている。
【0045】
図2および図3に追加して、図17に、表面構造化部分8の例示的な斜視図を示す。凸部および凹部のそれぞれは、たとえば(a)台形状断面、(b)三角形状断面、または(c)円形断面を有する。(d)に示すように、円形形状を直線状部で結合するようにしてもよい。(e)には、2つの群の平行仮想線が交差する態様を示している。左下角部から右上角部に走る線が高密度である一方、これらと約90°で交差する線は2本のみである状態が示されている。
【0046】
図18〜図20は、本発明によるシリンダヘッドガスケットのさらなる例についての部分平面図である。図18の構造化部分8は、ガスケット縁部23の短い側の端部26に近い部分に限定的に配置され。この部分は、燃焼室から見ると締結手段用の孔3′の後方に位置する。図19の例では、締結手段用の孔3′のすぐ近くに隣接するガスケットの長手縁部に、小さな構造化部分8をさらに存在させている。これらの仮想直線は、図18では、短い側のガスケット縁部に平行に走っているが、図19の例においては、ガスケット層の外縁に対して約45°の角度で伸長している。仮想直線が図18中のより短いガスケット縁部に対して平行に走る点については、図19と同様の実施形態が図20にも示されているが、この場合、表面構造部8は、燃焼室開口部3から間隔をあけて、かつその周囲に、カラーまたはコロナ状に配置され、締結手段3′のある部分も完全に被覆しているが、流体開口部3″のある部分については被覆していない。表面構造化要素8は、機能部6の境界にまで達するが、ハーフビードのステップを超えることはなく、ガスケットの縁部にまでは到達しない。この点は、図18の例にも該当するが、図19の例には当てはまらない。図19では、構造化要素8は、ガスケット層2の外縁23と、機能部6のハーフビード7との間にも完全に配置される。すべての例において、テーパ状の縁部、たとえば三角形状の縁部から離れて存在する構造化要素では、その進行方向おける構造化部分の長さが、構造化要素の凸部の頂部から隣接する凸部の頂部までの周期の少なくとも3倍、好ましくは少なくとも5倍である。
【0047】
図21に、マニホールドガスケットの例で、構造化要素が存在しない部分のみにおいて仮想直線が交差する場合を示している。詳細図A/BおよびC/Dから分かるように、締結手段3′用の貫通開口部の周囲における構造化要素8の方向を規定する1つの群の仮想直線は、別の締結手段3′用の貫通開口部周囲における構造化要素8の方向を規定する1つの群の仮想直線に対して、実質的に直交方向に走っている。図示の例では、シール部4を除き、構造化要素8は、締結手段3′用の孔の周囲部分に限定して存在する。
【0048】
図22は、表面構造化要素8が、たとえば別個のビードリングのような多岐にわたるシールまたは支持エレメントとの組合せで用いられることを示している。該シールまたは支持エレメントは、使用材料の特性に従って、シールエレメント(弾性材料)、または異なるガスケット層のシールエレメント用のストッパとして用いられる(別のガスケット層は図示していない)。その他の2つのガスケット層は、構造化要素8が標準的なストッパエレメント、すなわち折畳み式ストッパまたは屈曲フランジと組み合わされている状態を示している。これらの折畳み式ストッパまたは屈曲フランジはどちらとも、図示していない別のガスケット層のビード用に対する変形リミッタとして機能する。
【0049】
図23は、本発明の上述の実施形態と2点において異なる金属製平形ガスケットの一実施形態を示す。第1に、3つのガスケット層2、2′および102を備える多層ガスケットからなる。各層内の構造化要素8、8′は、1つの群の仮想直線のみからなる。この仮想直線は、構造化要素8および108とでは同一方向に走るが、構造化要素8’では異なる角度、好ましくは他の2つの構造化要素に対して直角に走る。断面は、ガスケット層2′の構造8′において凸部9が現れる位置のものである。構造8、8′および108を交互に方向付けることにより、中空構造80が、ガスケット層間にだけではなく、外側のガスケット層2、102と、シールすべきパイプ90、91のフランジとの間に形成される。これらの中空構造80は、ガスケット1の断熱作用を改善する。第2に、ガスケット層102は、その他のガスケット層2および2′の外側にも伸長し、延長部112は、ガスケット面から屈曲している。延長部112の形状は、これを偏向器として機能させ、かつガスケット層間の中空構造80に冷気を案内するようになっている。このため、図23の実施形態は、高温ガスを用いる用途に好適である。屈曲延長部112を中空構造80のみと接続して用いるのが好適であるが、後者は、ガスケット層間の接点を減少させるために、前者なしでも用いることができる。
【0050】
図24は、構造化要素8が存在するガスケット層の一部を詳細に示す。凸部9および凹部10は、この部分にエンボス加工により形成される。凸部9は、ガスケット層2の表面から高さHだけ突出する。エンボス加工の結果、斜面19の部分におけるガスケット層2の厚さは、凸部9または凹部10の厚さと比較して小さくなっている。すなわち、この斜面部分の厚さD19は、凸部または凹部の部分のガスケット層2の厚さD9よりも小さい。このような材料の成形および材料厚さの低減により、構造化部分の剛性が上昇する。図示の目的で、この斜面部分のテーパの程度は、図24では誇張してあるが、典型的には10%〜25%であり、好ましくは13%〜19%である。また、図24では、構造化要素の周期Pが、通常、ガスケット層の原厚Hの約2.5〜3.5倍であることを示している。この比率P/Hは、一般的には4を超えることはない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部に配された少なくとも1つの弾性シールエレメントにより包囲およびシールされている、少なくとも1つの貫通開口部が存在する、少なくとも1つのシール層を備える、金属製平形ガスケットに関する。さらに、単一の貫通開口部を個別に包囲することはない、少なくとも1つのさらなる弾性シールエレメントが、少なくとも1つの機能部に存在し得る。該ガスケットは、該少なくとも1つのシール部および該任意的に設けられる機能部のほかに、その表面のうち少なくとも1つの面に構造化要素を有する部分を備える。この表面構造化部分の厚さは、該表面構造化要素が形成されたガスケット層の原厚よりも大きい。
【背景技術】
【0002】
シリンダヘッドガスケットなどのガスケット内において、肥厚化されているこのような部分は、通常、支持要素として機能する。たとえば、国際公開第WO2004/076893号公報、または欧州特許出願公開第EP1577589号公報には、エンボス加工により肥厚化され、燃焼室開口部に沿って伸長する肥厚および表面構造化部分により、シリンダヘッドガスケットの燃焼室開口部をシールするビードを支持することが開示されている。また、これらの文献には、燃焼室開口部から遠位にあり、かつガスケットの外縁により近い位置にある、ガスケットの後背部と呼ばれる部分に、類似の支持構造を存在させうることが記載されている。これらの支持手段は、凹部および凸部が交互に配されるように、ガスケット層に波状または格子状にエンボス加工することにより形成されている。前記後背部の支持エレメントは、弾性ビードの完全変形を回避するいわゆるストッパとしてではなく、局部的な高さ調節エレメントとして機能している。好ましくは、かかる高さ調節エレメントは、ガスケットの外縁に沿って、特に短い方の縁部において、延在する。高さ調節エレメントは、シールすべき部分、特にシリンダヘッドの形状歪みを回避することを主目的として設けられる。支持エレメントおよび高さ調節エレメントの両方を燃焼室開口部およびガスケットの後背部に同時に存在させることにより、燃焼室用の弾性ビードに対して、燃焼室側にのみ支持エレメントが設けられているガスケットと比較して、大幅な改善が図られる。しかしながら、支持エレメントおよび高さ調節エレメントの両方を有する場合でも、形状歪みを完全かつ確実には回避できていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2004/076893号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第EP1577589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、ガスケットが間に設置される部分の形状歪みを確実に回避しうる金属製平形ガスケットを提供することを目的としている。前記ガスケットは、多様な種類のシールすべき表面に合わせて、容易かつ安価に製造可能かつ適合可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも1つの貫通開口部が存在する、少なくとも1つのガスケット層を備える、金属製平形ガスケットに関する。該貫通開口部は、弾性変形可能なシールエレメントが存在するシール部によって包囲されている。また、該ガスケット層は、機能部を備えてもよい。該機能部においては、少なくとも1つの弾性変形可能なシールまたは支持エレメントが同様に存在するが、これらは単一の貫通開口部を個別に包囲することはない。通常、該機能部は、ガスケットの外縁に沿って伸長するシールビード、または同様の部分に延在するエラストマーシールリップによって構成される。前記少なくとも1つのシール部および任意的に設けられる前記少なくとも1つの機能部のほかに、該金属製平形ガスケットは、構造化された少なくとも1つの部分を備える。この部分において、該ガスケット層の厚さはその原厚よりも大きい。すなわち、前記層の全体としての厚さは、その部分の材料厚さよりも大きい。前記構造は、交互に設けられた凹部および凸部からなり、該凹部および凸部は、該構造化部分の全体にわたって実質的に平行に伸長し、1つの群(コホート)を構成する複数の仮想直線上にあるように配される。前記構造化要素によって被覆されている部分は、前記シール部でも機能部でもない、少なくとも複数の部分において、該ガスケットの表面を被覆している。好適な実施形態において、該構造化要素によって被覆されている部分は、前記シール部でも機能部でもない部分を実質的に完全に被覆している。
【0006】
前記構造化要素について複数の配置構成を採ることが原則として可能である。第1の実施形態における構造化要素は、ボルト孔をその円周の50%を超えて包囲しており、第2の実施形態においては、ガスケットの主貫通開口部と外縁との間の部分に、ガスケットの外周の少なくとも50%にわたって延在している。該構造化要素が、ガスケットの短い方の縁部全体にわたって、ガスケットの主貫通開口部と外縁との間に延在している場合には、この部分のみにおいて存在していれば十分である。しかしながら、該構造化要素を、前記ボルト孔をその円周の少なくとも50%にわたって包囲するように、ガスケットの主貫通開口部と外縁との間に延在させるようにしてもよい。該構造化要素の幅は、ほとんどの状況において、わずかしか変化しない。該構造化要素が、ガスケットの主貫通開口部と外縁との間に延在する場合には、さらなる開口部および機能部の存在に起因して、その幅が変化するだけである。通常、該構造化要素の長さ/外周の70%以上において、その幅の変化は40%以下となっている。上記の実施形態においては、該構造化要素は、その高さを調節して、形状歪みを完全に回避する目的で、ガスケット表面の所定かつ限定された部分を被覆している。
【0007】
さらなる実施形態においては、シールされる部品の形状歪みも回避するために、前記構造化部分が、前記シール部および任意的に設けられる機能部のほかの部分において、ガスケット表面を実質的に完全に被覆している。本発明において、該構造化要素による実質的に完全な表面の被覆とは、前記少なくとも1つのシール部および前記任意的に設けられる少なくとも1つの機能部を除去した後も残る、ガスケットの少なくとも70%の部分が該構造化要素により被覆されることを意味する。なお、前記シール部は、貫通開口部から、該貫通開口部を包囲するシールエレメントの外縁までの部分と定義される。該貫通開口部を包囲するシールエレメントとしてビードが用いられている場合、該シール部は、貫通開口部の外縁から該ビードの外側端部までの円形部分である。一方、前記機能部の範囲は、この部分に配置されている弾性変形可能なシールまたは支持エレメントによって使用されている部分に相当する。ハーフビードまたはフルビードの場合、これは、該ビードの全長にわたって伸長する該ビードの端部間の部分であり、もしくは、ハーフビードの場合、その傾斜部分である。機能部の一例としてシールビードがあり、該シールビードは、いくつかの貫通開口部を同時に包囲する。このような構造は、シリンダヘッドガスケットにおける油貫通開口部または冷却水貫通開口部のシールのために、一般的に使用される。この変形例では、ガスケット層の外縁に沿って伸長するハーフビードまたはフルビードを被覆して、ガスケット層の内側部分にあるいくつかの貫通開口部も包囲している。機能部のさらなる例として、開放端を有する非円形ビードが配置された部分があるが、該ビードは、シール機能を持たず、ガスケットの隣接部分用の支持エレメントとしてのみ機能する。ガスケットは、ビードの代替として、エラストマーリップをシールまたは支持エレメントとして備えることもできる。好ましい実施形態において、該構造化要素は、前記シール部および任意的に設けられる機能部を除くガスケット層の部分の少なくとも80%、より好ましくは90%以上にわたって延在する。すなわち、該構造化部分は、前記シール部および機能部を含む、ガスケット層の全面積の少なくとも50%、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上を被覆する。なお、上述の部分は、実際に存在のある部分を意味し、貫通開口部がある部分は考慮されない。
【0008】
本発明によれば、前記構造化要素は、弾性変形可能なシールまたは支持エレメントに用いられないガスケット層の部分のうち基幹部分を被覆する。好適には、該構造化要素は、前記少なくとも1つのシール部および前記任意的に設けられる少なくとも1つの機能部に対して直接隣接するか、または、これらに対して、かなり短い間隔、たとえば0.3mm〜3mm、好ましくは0.5〜2mm、さらに好ましくは0.5〜1.5mmを保持する。いくつかのシール部またはいくつかの機能部が存在する場合、該構造化要素をこれらに可能な限り近接させる。ここで「可能な限り近接させる」は、該構造化要素によって前記弾性シールエレメントの機能が影響を受けない程度を意味する。好ましくは、該構造化要素は、ガスケット層の外縁まで、この部分がシール部または機能部でない限り、延在する。
【0009】
本発明による金属製平形ガスケットでは、ガスケット層のうち、そのシール部または機能部以外の少なくとも1つの部分の少なくとも一部、前記構造化要素によって被覆されている。該構造化部分において、ガスケット層の厚さは該ガスケット層の原厚、すなわち該構造化要素を導入する前の平形ガスケット層の厚さよりも大きい。該ガスケット層の厚さは、該ガスケット層の変形していない面に平行に伸長し、かつ該ガスケット層の構造化部分の両面とそれぞれ当接する、2つの接線層間の距離として測定される。よって、該構造化部分の厚さは、表面の凹部からではなく、凸部から測定される。構造化部分において、該構造化要素はガスケット層の断面全体にわたるため、前記厚さは、ガスケット層の両側にある凸部に当接する2つの面間の距離として測定される。しかし、該凸部の高さは、構造化部分の全体にわたって必ずしも一定である必要はない。ただし、いずれの場合でも、該構造化部分の厚さは、成形されていないガスケット層の原厚よりも大きくなる。ここで、凹部は、凸部よりも低い部分として理解されるべきものであり、成形されていないガスケット層の面に対して凹んでいる必要はない。ガスケット層の両面に構造化要素を対称に形成した場合でも、凹部および凸部におけるその部分の材料厚さは、未処理ガスケット層の原厚よりほとんど同じある(実際にはわずかに低減している)が、ガスケット層自体の厚さは増加する。
【0010】
多くのガスケットにおいて、個々の部分について表面構造化要素を伴うように設計すれば十分である。該構造化要素は、たとえば、ガスケットのボルト開口部または外縁部にある構造化要素によってシールされる部品向けにプレテンションを適合させる目的で用いられる。
【0011】
他のケースでは、前記シールおよび任意的に設けられる機能部を除いた部分に、該構造化要素を全面的もしくはほとんど全面的に設けると、効果的である。この場合、該構造化部分は支持部分を構成し、一部に局所的に存在するだけの支持手段と比較して、改善された支持効果を提供できる。その結果、該構造化部分は、シールすべき部分の歪みを効果的に防ぐことができる。該構造化要素における凸部の高さを変更することにより、シールすべき表面の形状やその硬度に対する細やかな対応が可能である。このようにして、金属製平形ガスケットに作用するボルトの力を、より適切に設定して、全体的に低減させることが可能となる。
【0012】
前記構造化要素を形成する凹部および凸部は、1つの群(コホート)を構成する、実質的に平行な直線の上に交互に配置される。これらの直線は、該凹部が伸長する方向に連続的に進んでいく。すなわち、該凹部および凸部は、前記構造化要素によって被覆される部分の全体にわたって、かなり規則的に分布するため、該構造化部分の製造は容易になされる。前記実質的に平行な直線により構成されるコホートにおいて、この直線は仮想線である。これらの線は実際に前記構造化部分の全体にわたって伸長するが、これらの線の各スポットに凹部または凸部が必ずしも存在するわけではない。本発明において、たとえば、該仮想線は、このような構造化要素が存在しないシール部または機能部や、シールすべき部分が特に硬質であって支持を必要としない局所的な部分と、交差する。この場合、凸部(単数または複数)および/または凹部(単数または複数)は、このようなそれぞれの部分まで仮想線上を伸長するが、これらの部分で中断して、同一の仮想直線上であってこれらの部分の反対側において連続する。よって、前記1つの群の実質的に平行な直線は、ガスケット層の全体にわたって与えられるが、該凹部および凸部は、実際にはこれまでに記述したサブ領域内にある線のみに形成される。凹部により、隣接する凸部が相互に分離される。ここで、「実質的に平行な線」は、平行からの偏差が最大5°まで、好ましくは最大2°までであることを意味する。
【0013】
本発明による金属製平形ガスケットの第1の実施形態では、前記凸部は、1つの群の平行線のみに沿って進む。ある線が凸部に対応する場合、この線に隣接する線は凹部に対応し、該構造化要素は、中間に溝を備える、実質的に平行な直線の凸部から形成され、全体的に波状の構造を備えることになる。すべての凸部が同一の幅を有し、相互に同一の距離で配されることが好ましい。前記溝についても同様である。しかし、該凸部間を異なる間隔としたり、該凸部および溝部の幅を異ならせたりすることも可能である。
【0014】
凹部および凸部はまた、その延長方向において、交互に配されてもよい。たとえば、凹部および凸部が伸長する仮想線と交差する非対称シールエレメント(たとえば、ハーフビード)の両側において、該シールエレメントの一方側では凸部が、他方側で凹部が連続するように、あるいはその逆となるように、該凹部と凸部を配してもよい。
【0015】
本発明のさらなる実施形態では、前記凹部が、相互に交差する数個の群(コホート)の仮想直線に沿って配される。該凹部が交差することにより、該凹部の間に凸部が配される。該凸部は、構造化部分の全体にわたって連続的に伸長するのではなく、サブ領域にのみ存在する。これらの線の交差する角度は、好ましくは30〜150°、より好ましくは45〜135°、さらに好ましくは80〜100°、最も好ましくは90°である。角度が90°の場合、構造化要素は格子状パターンとなる。該凸部が2つの群の平行線上を伸長することが好ましい。しかし、該凸部を3つの群の直線上を伸長させることも可能であり、これらを60°の角度で交差させるのが好ましく、その結果、該構造化要素はウェブ状パターンとなる。
【0016】
また、該凹部を、3つ以上の群の仮想直線上を伸長するように配することもできる。これにより、凹部およびその間に配される凸部に、多岐にわたる形状をもたらすことができる。該凹部および凸部の断面についても多種多様に設計にすることができる。前記仮想線の伸長方向に垂直な断面は、台形、三角形、円形または矩形の形状とすることができる。製造を容易にするため、すべての凹部を同一の断面にすることが好ましい。該凹部の深さ(該凸部の高さ)を変化させることもできるが、すべての凹部を同一の深さにすることが好ましい。この深さは、該構造の一方の表面上にある、凸部の最高点と、これに隣接する凹部の最深点との間の距離をガスケット層の平面に対して垂直に測定したものと定義される
該構造化部分における凸部の形状および寸法の設計範囲についても同様である。たとえば、前記凸部の断面は、キャンバー形状、矩形、三角形または台形の形状とすることができる。好適な形態は、多面体の柱形状である。該凸部は、構造化部分の全体にわたって等しい高さとすることができるが、この部分を横断する方向にその高さを変化させることが好ましい。この高さは、ガスケットの用途に応じて設計される。構造化部分のガスケット層の厚さは、該ガスケット層の原厚と比較して大きいため、該構造化部分は、弾性シールエレメントの支持手段として特に適しており、同時に、固定ボルトによる力から生ずる面圧を適切に分散させることができる。該構造化部分は、隣接する弾性シールエレメント、たとえばビードまたはエラストマーリップのための変形リミッタとして機能し、使用時に、該シールエレメントが許容以上に平坦化してしまうことを回避するように設計することができる。該構造化部分は、通常、導入された力の二次的な負荷を伴う用途に適している。該構造化部分は、この力の一部を引き受けて、ガスケット層のほかの部分がこれらの力を過度に受けてしまうことを防止できる。該構造化要素を使用することにより、ガスケット層の当該部分の肥厚化が、さらなる材料を必要とせずに、より薄い材料からの製造で可能となるため、材料を節約できる。また、該構造化部分は、追加的な重層化を図る代わりに、当該部分を肥厚化させるためにも用いることができる。このように、本発明により、ガスケットの製造コストを低減させることができる。該構造化要素による表面の増加に伴い、該構造化された表面による接着特性の向上といった、さらなる利点ももたらされる。これにより、任意的にコーティングを施したり、シールエレメントとしてエラストマーリップを用いたりする場合のいずれにおいても、金属製ガスケット層に対する樹脂の接着性が改善される。
【0017】
上述の使用範囲、およびさらに可能な用途範囲に合わせて、該凸部の高さ(該凹部の深さ)を、該構造化要素で被覆されたガスケットの部分全体にわたって変化させてもよい。この高さは、凸部の製造時に確立させてもよいし、艶出し加工により確立させてもよく、後者の場合、構造化部分の全体または一部のみがその影響を受ける。この高さは、シールされる部品の対応部分の剛性に適合させられる。たとえば、ガスケットの一部がシールする部分が高硬質の場合、該構造の高さは、低軟質の部分をシールする箇所よりも低くなる。同様に、該構造の高さは、ボルト開口部からの距離が離れるにつれて、増加することが多い。この局所的なシール隙間に適合するように、該構造化部分の全体にわたって、該構造化要素の高さを意図的に分散させることにより、形状歪みをほとんど完全に回避することが可能となる。このように、シール隙間に適合するように構造化要素の形状を設計することが可能である。このように適合させることは、かなり小さな構造化部分にも適用可能であるが、より長い表面構造化要素に適用されることが好ましい。先行技術の幅狭円形または直線状の変形リミッタと比較して、該構造化要素を延在させることにより、通常、多様性を大きく高めることができる。しかし、かかる効果は、より広く連続的に適用されることでより発揮される。
【0018】
本発明において、金属製平形ガスケットにエンボス加工により構造化要素を形成することが好ましい。また、かかる構造化には、異なる厚さのガスケット層から、その材料だけを用いることにより、構造化部分の効果的な肥厚化を達成できる、すべての種類の材料変形が含まれる。材料自体の厚さは増加することはなく、伸展によりわずかに低減する。それにもかかわらず、層の厚さは大きくなる。該構造化要素は、たとえばコイニングまたは深絞りによって得ることもでき、これにより、台形、三角形または円形の断面形状の凸部が得られ、あるいは、押出し、その他の方法により、凹部の形成に伴って、該凹部から材料を移動させることにより、凸部を得てもよい。
【0019】
本発明は、単一層ガスケットだけでなく、多層ガスケットにも適用できる。後者の場合、構造化要素を設けるべきではない弾性変形可能なシールエレメントおよび機能部を除けば、複数の層に該構造化要素を設けることができる。構造化部分とシールおよび機能部への部分分けは、異なる構造が異なるガスケット層に構築される場合であっても維持される。すなわち、構造化要素を備えるガスケット層であっても、隣接するガスケット層のシールまたは機能部に当接する部分においては、構造化要素を備えないことになる。複数のガスケット層が実質的に相互に平行に配置されたガスケットにおいて、平行する層に対するシールおよび機能部の平行な突起により、この部分には本発明による構造化要素が備えられてないことになる。
【0020】
特に、一方の面に凹部が、他方の面でその反対側に凸部が形成されるように構造化要素が両面に導入される場合、一方の面の凹部とその同一面上の隣接する凸部との間の移行部(以下、「フランジ」と称する)は、該フランジ部分の材料が、凸部および凹部の部分の厚さよりも小さくなるように設計すると、該構造化部分が補強される。該フランジ部における材料厚さの低減の度合いは、隣接する凸部または凹部の材料厚さと比較して、少なくとも8%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは13%、最も好ましくは15%である。また、該構造化部分におけるテーパの度合いを変更して、ガスケットの弾性を適合させることも可能である。
【0021】
一見したところでは、該構造化エレメントはビードに似ているが、これらのエレメントは、テーパ付けのため、ビードよりも低弾性である。その上、その幅は、ビードのものよりも狭い。これは、たとえばガスケット層の厚さとの対比で理解できる。ガスケット層の面から立ち上がる点からのビードの幅と、構造化されていないガスケット層の厚さとの間の比は、少なくとも6、好ましくは少なくとも7とされている。これに対して、該構造の幅に関する同様の比率は、最大4であり、好ましくは2.5〜3.5である。
【0022】
通常、2つの隣接する層の間に該構造化部分を配することは可能であり、この場合、少なくとも1つの部分および高さに関して、これらの層は相互に補完し合う関係となる。2つの隣接するガスケット層の構造化要素の厚さを追加すると、大幅な肥厚化が要求されているが、この肥厚化に必要な材料を単一の層から得ることができない場合に、特に効果的である。この場合、異なる層における構造化要素の設計は、同じとしても異ならせてもよい。隣接表面において補完し合う構造は、相互に係合させてもよい。また、隣接する層を、複数の非補完的構造または補完的構造からなるものとして、特定の部分においてのみ補完させるように設計してもよい。
【0023】
該ガスケット層は、公知のコーティングにより、コーティング可能である。該構造の導入後に、その一部のみをコーティングすることが好ましいが、事前にコーティングまたはコイルコーティングされた金属シートに該構造をエンボス加工により形成することも可能である。
【0024】
本発明は、多様な単層または多層の金属製平形ガスケットに適用できる。特に、シリンダヘッドガスケット、マニホールドガスケット、およびフランジガスケットに好適である。「平形ガスケット」には、2次元体から形成された、円錐ガスケットのような3次元的に変形されたガスケットも包含される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明によるシリンダヘッドガスケットの部分平面図である。
【図2】図2は、構造化要素の一例についての、図1の線A−Aに沿った断面図である。
【図3】図3は、構造化要素の他の例についての、図1の線A−Aに沿った断面図である。
【図4】図4は、一例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図5】図5は、他の例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図6】図6は、他の例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図7】図7は、他の例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図8】図8は、他の例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図9】図9は、他の例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図10】図10は、他の例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図11】図11は、他の例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図12】図12は、他の例についての図1の線B−Bに沿った断面図である。
【図13】図13は、図16の線C−Cに沿った断面図である。
【図14】図14は、本発明によるガスケットの製造のためのエンボス加工器具の断面図である。
【図15】図15は、本発明によるガスケットの例としてのシリンダヘッドガスケットの一例を示す平面図である。
【図16】図16は、本発明によるガスケットの例としてのシリンダヘッドガスケットの別例を示す平面図である。
【図17】図17は、表面構造化部分に関する5つの可能な実施形態(a)〜(e)を示す。
【図18】図18は、本発明による平形ガスケットの例としてのシリンダヘッドガスケットの一例を示す部分平面図である。
【図19】図19は、本発明による平形ガスケットの例としてのシリンダヘッドガスケットの他例を示す部分平面図である。
【図20】図20は、本発明による平形ガスケットの例としてのシリンダヘッドガスケットの他例を示す部分平面図である。
【図21】図21は、本発明による平形ガスケットの一例としてのマニホールドガスケットの一例を示す部分平面図である。
【図22】図22は、本発明による平形ガスケットの少なくとも1つの層における、貫通開口部にストッパエレメントが設けられている3例の断面図(a)〜(c)である。
【図23】図23は、空気をガイドするための偏向器を備えた排気ガスケットの断面図である。
【図24】図24は、図2および図3と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について、シリンダヘッドガスケットの例について、図面を参照しながら説明する。図示の例は、単に例示目的のために示されているにすぎず、本発明はこれらに限定されることはない。図面において、同一部分には同一の参照符号を用いている。
【0027】
図1は、単一の金属層2を備えるシリンダヘッドガスケット1の部分平面図である。このガスケット層には、4つの燃焼室開口部が設けられており、左側の1つは、その一部のみが図示されている。それぞれの燃焼室開口部3は、環状ビード5を備える環状シール部によって、包囲される。点線は、ビードのピーク経路のみを示している。燃焼室開口部3間の部において、2つのビード5が結合して、結合ビード部を形成する。したがって、シール部4は、メガネ形状となり、燃焼室開口部3の縁部31からビード5の外側端部(足部)まで延在しており、その位置を線51によって示す。
【0028】
ビードの端部51と外側ガスケット縁部23との間の部分、いわゆるガスケット層2の後背部において、さらなる貫通開口部であるネジ開口部、水開口部および油開口部の形態で存在するが、これらは個々には特定されない。これらの貫通開口部3′のうちのいくつかは、シール部4′によって包囲され、この部分には、弾性変形可能なシールエレメント、たとえば、ビードまたはエラストマーリップ(図示せず)が存在する。シール部4と別に、ガスケット1はハーフビード7を伴う機能部6を備える。詳細は示されていないが、ハーフビード7は、外縁23に向けてステップを形成しており、ガスケット層2の外縁23に沿って延びている。機能部6は、ハーフビード7の内側端部と外側端部の間にあり、ガスケットの外縁23に沿ってストリップ形状に伸長する。この部分を点線61および62によって示す。機能部6は、ガスケットの外縁23上を伸長するのではなく、外縁23から間隔をあけて存在する。外縁23と、ビードの外側端部(点線62)との間には、平坦部24が構成されるが、この部分24と点線61間の内側部分は、機能部6には該当しない。
【0029】
本発明によれば、構造化部分8は、シール部4、4′ならびに機能部6の外側に存在する。図1に、構造化要素をハッチング線によって示す。図1から分かるように、凹部または凸部それぞれの端部間にリンクはない。また、図1から分かるように、この実施形態における構造化部分8は、ガスケット層2のいわゆる後背部の大部分にわたって延在し、この後背部を実質的に完全に被覆している。すなわち、ガスケット層2のうち、シール部4、4′ならびに機能部6を除く部分の少なくとも70%、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上において、構造化される。構造化要素8は、この部分における、表面21から背面22までのこの層の厚さ方向全体にわたって横断している。この実施形態において、ガスケット層2の全体の広がりに対して、すなわちシール部4、4′および機能部6を除去しないとすると、ガスケット層2の表面のうち少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%が、構造化要素8によって被覆される。
【0030】
また、この構造8は左下から右上へと進んでおり、凸部9および凹部10がこの構造化部分8に沿って進むことが理解される。構造化部分8の全体にわたって、凹部9は直線状に延びる溝部からなり、凸部10は直線状に延びるリブからなり、貫通開口部3、3′と、これらを包囲するシールエレメント4、4′が存在する場合にはこれらとによってのみ、遮断される。
【0031】
図2および図3は、図1の線A−Aに沿った断面図における、構造化部分8の凹部および凸部の2つの異なる断面を示す。図2の実施形態において、凸部10および凹部9はどちらとも、本質的に台形状の断面を有している。この台形状断面のフランジは、好ましくは、垂直に延びるのではなく、垂直方向に対して少なくとも10°の角度で延び、移行部を形成するようにする。凸部10のピーク部は実質的に平坦である。図3の実施形態において、凹部9および凸部10の断面は円形である。双方の実施形態において、構造化部分8の線形構造は、上側21に凹部9があるときは、下側22に凸部10が存在するように、またその逆も成り立つように、配置される。これにより、波状構造が得られる。構造化部分8は、ガスケット層2をエンボス加工することにより、形成される。このため、ハッチングが付されている構造化部分8の有効厚さD1は、ガスケット層2の原厚D2と比べて大きくなる。これに対して、材料厚さについてはわずかに変化するのみである。
【0032】
図4および図5は、シリンダヘッドガスケットの例について、単一層の金属製平形ガスケットの断面を示す。これらの断面はそれぞれ、図の右側に位置する燃焼室開口部3と、図の左側に位置するガスケット層の外縁23との間の部分を示している。燃焼室開口部3は、ビード5によって完全に包囲される。ガスケット層2の外縁23は、外縁23と間隔をあけて配置されたハーフビード7、ならびにハーフビード7と外縁23との間の平坦部24によって完全に包囲される。構造化部分8は、ハーフビード7とビード5との間に配置される。構造化部分8は、図2または図3に示すように、凹部9と凸部10が交互に現れるように設計されている。ガスケット層2の部分8における有効厚さは、他の部分の有効厚さよりも大きくなっているため、この構造8は、ビード5およびハーフビード7の双方に対する変形リミッタとしても機能しうる。この実施形態では、構造化要素8をガスケット層2の大部分にわたって延在させているため(図1も参照)、相互に対してシールされるべきエレメントの歪みを、特に、構造8の高さをこの部分におけるエンジンブロックとシリンダヘッドとの間のシール隙間の幅と同じとなるように変更した場合に、効果的に回避することができる。
【0033】
図5に示すガスケットは、図4における1つよりも多い構造化部分8を有する。これらのさらなる構造化部分8は、ビード5と燃焼室開口部3の縁部31との間の部分に配置されると共に、ハーフビード7とガスケット層2の外縁23との間の非構造化部24に代替するように配置される。
【0034】
図6および図7は、図1の線B−Bに沿った断面図であり、2層ガスケットを示している。上側ガスケット層2は、図4の単一のガスケット層と同じであるから、詳細な説明は省略する。図7において、下側層2′は、層2と対称に配置される。対照的に、図6の例に示す層2′は、構造化要素を備えていない。層2の構造化部分8に隣接する層2′の部分は平滑である(符号25を付す)。
【0035】
図8は、図1の線B−Bに沿った断面図であり、3層シリンダヘッドガスケットを示している。下側ガスケット層2′は、図6の下側ガスケット層2′と同じである。上側ガスケット層2は、下側ガスケット層2′と対称である。第3のガスケット層2″は、層2と層2′との間に配置され、隣接する層のビード5、5′とハーフビード7、7′との間の部分で構造化されているが、これ自身はビードを持たない。構造化部分8は、ガスケット層2″の両面を超えて存在し、肥厚部を構成する。これにより、構造化部分8は、ビード5、5′、ハーフビード7、7′のための変形リミッタとして機能する。
【0036】
図9は、図1の線B−Bに沿った部分断面図であり、4層シリンダヘッドガスケットを示す。ガスケットは、図6の2つのガスケットを対称に組み合わせたものである。このような4層ガスケットにより、エンジンブロックとシリンダヘッドとの間における、きわめて幅広のシール隙間もシールすることが可能となる。
【0037】
4層シリンダヘッドガスケットのさらなる例を図10に示す。この実施形態では、ガスケットの合計厚さを増加させる目的のためだけに、それ自身に構造またはシールエレメントを持たない2つのいわゆる間隔用ガスケット層を用いている。第1の間隔用ガスケット層2′は、2つのガスケット層2と2″との間に配置される。これらのガスケット層2および2″は相互に対称に配されている。これらの2つのガスケット層は、図7に記載のガスケット層2、2′と同じである。第2の遠位層2′′′は、層2″の下側に配置される。
【0038】
図11〜図13は、単一層シリンダヘッドガスケットのさらなる断面図を示す。図11および図12は、2つの隣接する貫通開口部の間、または1つの貫通開口部とガスケットの外縁との間におけるガスケット2の断面を示している。双方のガスケット層2は、基本的には、図5に断面を示したものと類似する。しかし、図5のものとは異なり、図11のガスケットは、ビードまたはハーフビードなどのシールエレメントを持たず、単一層ガスケットとしてよりも、単数または複数の別のガスケット層と共に用いられる。構造化部分8は、平坦部25、25′により、相互に分離されている。
【0039】
図12のガスケットは、平坦部25′の代わりに、ビードを備えている。このビードは、たとえば、図のガスケット層2の右側にある貫通開口部を包囲する。
【0040】
図13は、本発明のガスケットにおける、ボルト開口部3′の存在する部分断面図であり、たとえば図16の線C−Cに沿った断面図に相当する。ボルト開口部3′は、構造化部分8によって包囲される。ボルトSのヘッドS1の下側は、ボルトSがボルト孔3′に挿入され締結された場合(図示せず)に、構造化部分8の上に強固に着座する。これにより、その力の一部が、構造化部分8に伝わる。凸部および凹部がある分、構造化部分8は、平形ガスケット層2よりも高い変形性を有する。凹部および凸部の適切に設計することにより、ボルト開口部3′のある部分に負荷される力を規制することが可能となる。
【0041】
好ましくは、構造化部分8は、エンボス加工によりガスケット層2に形成される。適切なエンボス加工ダイPを図14に模式的に示す。この例のエンボス加工ダイPは、図11に示すガスケット層の構造と類似するガスケット層の形成に用いられる。エンボス加工ダイPは、2枚のプレートP1、P2からなり、その構造化された表面は、間隔Hをあけて対向しており、これらの間にガスケット1が配置される。プレートP1、P2は、ダイシューP3、P4ならびにプレスを用いて、ガイドピンP5に沿って、相互に近接かつ離間する方向に移動する。
【0042】
構造化部分8の凹部9をガスケット層2の母材にエンボス加工するために、プレートP1、P2は、それぞれの側面に凸部P6を有しており、ガスケット層2の構造化部分8の凹部および凸部と相補的な関係にある凸部および凹部により、エンボス加工を施しうるようになっている。プレートP1、P2は、ガスケット層2の構造化要素のない部分に対応して、隙間P7を有する。これにより、上記部分にはエンボス加工が施されない。プレートP1、P2が閉じられると、プレートP1、P2の凸部P6は、ガスケット層2に押圧され、構造化部分8が形成される。図14は、エンボス加工後、プレートP1、P2が相互に離間した後の状態における、エンボス加工ダイPを示している。
【0043】
図15および図16は、本発明によるシリンダヘッドガスケットのさらなる例をそれぞれ示す平面図である。双方のガスケットは、図1に示すものに類似する。図15に記載のガスケットでは、ボルト開口部3′は、シールビードを備えるシール部4′によって包囲されている。ボルト開口部3′およびそのシール部4′の全体が、構造化部分8によって包囲される。これらの構造化部分8は、シール部4、4′、機能部6を除く、ガスケット層2のほとんどの部分に延在する。
【0044】
図16に示すシリンダヘッドガスケットは、ボルト孔3′がビードによって包囲されておらず、シール部を備えていない点で、図15に示すものと異なる。したがって、構造化部分8は、ボルト開口部3の外縁にほとんど接しているような状態にある。ただし、図15のガスケットは、1つの群の平行な仮想線のみを有するのに対して、図16のガスケットは、約90°で交差する2つの群の平行仮想線を備えている。
【0045】
図2および図3に追加して、図17に、表面構造化部分8の例示的な斜視図を示す。凸部および凹部のそれぞれは、たとえば(a)台形状断面、(b)三角形状断面、または(c)円形断面を有する。(d)に示すように、円形形状を直線状部で結合するようにしてもよい。(e)には、2つの群の平行仮想線が交差する態様を示している。左下角部から右上角部に走る線が高密度である一方、これらと約90°で交差する線は2本のみである状態が示されている。
【0046】
図18〜図20は、本発明によるシリンダヘッドガスケットのさらなる例についての部分平面図である。図18の構造化部分8は、ガスケット縁部23の短い側の端部26に近い部分に限定的に配置され。この部分は、燃焼室から見ると締結手段用の孔3′の後方に位置する。図19の例では、締結手段用の孔3′のすぐ近くに隣接するガスケットの長手縁部に、小さな構造化部分8をさらに存在させている。これらの仮想直線は、図18では、短い側のガスケット縁部に平行に走っているが、図19の例においては、ガスケット層の外縁に対して約45°の角度で伸長している。仮想直線が図18中のより短いガスケット縁部に対して平行に走る点については、図19と同様の実施形態が図20にも示されているが、この場合、表面構造部8は、燃焼室開口部3から間隔をあけて、かつその周囲に、カラーまたはコロナ状に配置され、締結手段3′のある部分も完全に被覆しているが、流体開口部3″のある部分については被覆していない。表面構造化要素8は、機能部6の境界にまで達するが、ハーフビードのステップを超えることはなく、ガスケットの縁部にまでは到達しない。この点は、図18の例にも該当するが、図19の例には当てはまらない。図19では、構造化要素8は、ガスケット層2の外縁23と、機能部6のハーフビード7との間にも完全に配置される。すべての例において、テーパ状の縁部、たとえば三角形状の縁部から離れて存在する構造化要素では、その進行方向おける構造化部分の長さが、構造化要素の凸部の頂部から隣接する凸部の頂部までの周期の少なくとも3倍、好ましくは少なくとも5倍である。
【0047】
図21に、マニホールドガスケットの例で、構造化要素が存在しない部分のみにおいて仮想直線が交差する場合を示している。詳細図A/BおよびC/Dから分かるように、締結手段3′用の貫通開口部の周囲における構造化要素8の方向を規定する1つの群の仮想直線は、別の締結手段3′用の貫通開口部周囲における構造化要素8の方向を規定する1つの群の仮想直線に対して、実質的に直交方向に走っている。図示の例では、シール部4を除き、構造化要素8は、締結手段3′用の孔の周囲部分に限定して存在する。
【0048】
図22は、表面構造化要素8が、たとえば別個のビードリングのような多岐にわたるシールまたは支持エレメントとの組合せで用いられることを示している。該シールまたは支持エレメントは、使用材料の特性に従って、シールエレメント(弾性材料)、または異なるガスケット層のシールエレメント用のストッパとして用いられる(別のガスケット層は図示していない)。その他の2つのガスケット層は、構造化要素8が標準的なストッパエレメント、すなわち折畳み式ストッパまたは屈曲フランジと組み合わされている状態を示している。これらの折畳み式ストッパまたは屈曲フランジはどちらとも、図示していない別のガスケット層のビード用に対する変形リミッタとして機能する。
【0049】
図23は、本発明の上述の実施形態と2点において異なる金属製平形ガスケットの一実施形態を示す。第1に、3つのガスケット層2、2′および102を備える多層ガスケットからなる。各層内の構造化要素8、8′は、1つの群の仮想直線のみからなる。この仮想直線は、構造化要素8および108とでは同一方向に走るが、構造化要素8’では異なる角度、好ましくは他の2つの構造化要素に対して直角に走る。断面は、ガスケット層2′の構造8′において凸部9が現れる位置のものである。構造8、8′および108を交互に方向付けることにより、中空構造80が、ガスケット層間にだけではなく、外側のガスケット層2、102と、シールすべきパイプ90、91のフランジとの間に形成される。これらの中空構造80は、ガスケット1の断熱作用を改善する。第2に、ガスケット層102は、その他のガスケット層2および2′の外側にも伸長し、延長部112は、ガスケット面から屈曲している。延長部112の形状は、これを偏向器として機能させ、かつガスケット層間の中空構造80に冷気を案内するようになっている。このため、図23の実施形態は、高温ガスを用いる用途に好適である。屈曲延長部112を中空構造80のみと接続して用いるのが好適であるが、後者は、ガスケット層間の接点を減少させるために、前者なしでも用いることができる。
【0050】
図24は、構造化要素8が存在するガスケット層の一部を詳細に示す。凸部9および凹部10は、この部分にエンボス加工により形成される。凸部9は、ガスケット層2の表面から高さHだけ突出する。エンボス加工の結果、斜面19の部分におけるガスケット層2の厚さは、凸部9または凹部10の厚さと比較して小さくなっている。すなわち、この斜面部分の厚さD19は、凸部または凹部の部分のガスケット層2の厚さD9よりも小さい。このような材料の成形および材料厚さの低減により、構造化部分の剛性が上昇する。図示の目的で、この斜面部分のテーパの程度は、図24では誇張してあるが、典型的には10%〜25%であり、好ましくは13%〜19%である。また、図24では、構造化要素の周期Pが、通常、ガスケット層の原厚Hの約2.5〜3.5倍であることを示している。この比率P/Hは、一般的には4を超えることはない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの貫通開口部が存在する、少なくとも1つのガスケット層を備え、該貫通開口部は、弾性変形可能なシールエレメントが存在するシール部によって包囲され、該ガスケット層は、単一の前記貫通開口部を個別に包囲しない、少なくとも1つの弾性変形可能なシールまたは支持エレメントを有する任意的な機能部をさらに備えると共に、該ガスケット層の少なくとも一方の面で、該シール部と該機能部のほかに、その厚さが該ガスケット層の原厚よりも大きくなるように、表面構造化要素を有する部分を備え、該表面構造化部分は、前記シール部でも前記機能部でもない複数の部分を被覆しており、該表面構造化要素は、該表面構造化部分全体にわたって伸長し、1つの群を構成する実質的に平行な仮想直線上に、凹部と凸部を交互に配することにより形成されている、金属製平形ガスケット。
【請求項2】
前記凹部および前記凸部は、隣接する線上に交互に配されている、請求項1に記載の金属製平形ガスケット。
【請求項3】
前記表面構造化要素は、中間に前記凸部を挟んで、前記凹部が相互に平行に伸長することで、波状に形成されている、請求項1または2に記載の金属製平形ガスケット。
【請求項4】
前記仮想直線の伸長方向において、凹部および凸部が交互に設けられている、請求項1または2に記載の金属製平形ガスケット。
【請求項5】
前記表面構造化要素の前記凹部は、少なくとも2つの群の交差する仮想直線に沿って配されている、請求項1〜4のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項6】
前記交差する線の交差角が、30°〜150°の範囲にある、請求項5に記載の金属製平形ガスケット。
【請求項7】
前記凹部は、3つの群の交差する仮想直線に沿って配されている、請求項5に記載の金属製平形ガスケット。
【請求項8】
前記凹部は、台形、三角形、円形または矩形の断面形状を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項9】
前記凸部は、キャップ形状、矩形、三角形または台形の断面形状を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項10】
前記凹部と前記凸部との間のフランジ部における該ガスケット層を構成する材料の厚さは、該凹部または該凸部における材料の厚さよりも少なくとも8%だけ小さくなっている、請求項1〜9のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項11】
前記表面構造化部は、前記貫通開口部のうち、締結手段のための該貫通開口部を、その周囲の50%よりも大きな範囲で包囲している、請求項1〜10のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項12】
前記表面構造化部は、該ガスケット層の外縁のうち、短縁の長さの少なくとも80%にわたり延在する、請求項1〜11のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項13】
前記表面構造化部は、前記貫通開口部と前記ガスケットの外縁との間の部分に、該ガスケットの外周の少なくとも50%にわたって延在する、請求項1〜12のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項14】
前記表面構造化部は、前記少なくとも1つのシール部および前記任意の少なくとも1つの機能部を除く部分の少なくとも70%を被覆している、請求項1〜10のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項15】
前記構造化要素は、該ガスケット層の両面に存在する、請求項1〜14のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項16】
前記凸部の高さおよび/または前記凹部の深さは、前記表面構造化部にわたって交互する、請求項1〜15のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項17】
前記凸部の高さおよび前記凹部の深さは、前記貫通開口部の周囲において交互する、請求項16に記載の金属製平形ガスケット。
【請求項18】
前記凸部の高さおよび前記凹部の深さは、該ガスケット層の前記外縁部分において交互する、請求項16に記載の金属製平形ガスケット。
【請求項19】
前記表面構造化要素は、前記シール部と同一のガスケット層に形成されている、請求項1〜18のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項20】
前記金属製平形ガスケットは、少なくとも2つのガスケット層を備え、前記少なくとも1つのシール部は、前記表面構造化部が存在する層とは異なる層に形成されている、請求項1〜18のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項21】
前記表面構造化部は、0.3mm〜3mmの間隔をあけて、前記シール部に隣接する、請求項1〜20のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項22】
前記構造化要素の周期の、該構造化要素の高さに対する比は最大で4である、請求項1〜21のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項23】
前記表面構造化部分によって形成される中空空間内へ気流を案内する偏向器を備える、請求項1〜22のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項1】
少なくとも1つの貫通開口部が存在する、少なくとも1つのガスケット層を備え、該貫通開口部は、弾性変形可能なシールエレメントが存在するシール部によって包囲され、該ガスケット層は、単一の前記貫通開口部を個別に包囲しない、少なくとも1つの弾性変形可能なシールまたは支持エレメントを有する任意的な機能部をさらに備えると共に、該ガスケット層の少なくとも一方の面で、該シール部と該機能部のほかに、その厚さが該ガスケット層の原厚よりも大きくなるように、表面構造化要素を有する部分を備え、該表面構造化部分は、前記シール部でも前記機能部でもない複数の部分を被覆しており、該表面構造化要素は、該表面構造化部分全体にわたって伸長し、1つの群を構成する実質的に平行な仮想直線上に、凹部と凸部を交互に配することにより形成されている、金属製平形ガスケット。
【請求項2】
前記凹部および前記凸部は、隣接する線上に交互に配されている、請求項1に記載の金属製平形ガスケット。
【請求項3】
前記表面構造化要素は、中間に前記凸部を挟んで、前記凹部が相互に平行に伸長することで、波状に形成されている、請求項1または2に記載の金属製平形ガスケット。
【請求項4】
前記仮想直線の伸長方向において、凹部および凸部が交互に設けられている、請求項1または2に記載の金属製平形ガスケット。
【請求項5】
前記表面構造化要素の前記凹部は、少なくとも2つの群の交差する仮想直線に沿って配されている、請求項1〜4のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項6】
前記交差する線の交差角が、30°〜150°の範囲にある、請求項5に記載の金属製平形ガスケット。
【請求項7】
前記凹部は、3つの群の交差する仮想直線に沿って配されている、請求項5に記載の金属製平形ガスケット。
【請求項8】
前記凹部は、台形、三角形、円形または矩形の断面形状を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項9】
前記凸部は、キャップ形状、矩形、三角形または台形の断面形状を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項10】
前記凹部と前記凸部との間のフランジ部における該ガスケット層を構成する材料の厚さは、該凹部または該凸部における材料の厚さよりも少なくとも8%だけ小さくなっている、請求項1〜9のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項11】
前記表面構造化部は、前記貫通開口部のうち、締結手段のための該貫通開口部を、その周囲の50%よりも大きな範囲で包囲している、請求項1〜10のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項12】
前記表面構造化部は、該ガスケット層の外縁のうち、短縁の長さの少なくとも80%にわたり延在する、請求項1〜11のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項13】
前記表面構造化部は、前記貫通開口部と前記ガスケットの外縁との間の部分に、該ガスケットの外周の少なくとも50%にわたって延在する、請求項1〜12のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項14】
前記表面構造化部は、前記少なくとも1つのシール部および前記任意の少なくとも1つの機能部を除く部分の少なくとも70%を被覆している、請求項1〜10のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項15】
前記構造化要素は、該ガスケット層の両面に存在する、請求項1〜14のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項16】
前記凸部の高さおよび/または前記凹部の深さは、前記表面構造化部にわたって交互する、請求項1〜15のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項17】
前記凸部の高さおよび前記凹部の深さは、前記貫通開口部の周囲において交互する、請求項16に記載の金属製平形ガスケット。
【請求項18】
前記凸部の高さおよび前記凹部の深さは、該ガスケット層の前記外縁部分において交互する、請求項16に記載の金属製平形ガスケット。
【請求項19】
前記表面構造化要素は、前記シール部と同一のガスケット層に形成されている、請求項1〜18のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項20】
前記金属製平形ガスケットは、少なくとも2つのガスケット層を備え、前記少なくとも1つのシール部は、前記表面構造化部が存在する層とは異なる層に形成されている、請求項1〜18のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項21】
前記表面構造化部は、0.3mm〜3mmの間隔をあけて、前記シール部に隣接する、請求項1〜20のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項22】
前記構造化要素の周期の、該構造化要素の高さに対する比は最大で4である、請求項1〜21のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【請求項23】
前記表面構造化部分によって形成される中空空間内へ気流を案内する偏向器を備える、請求項1〜22のいずれかに記載の金属製平形ガスケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17−a】
【図17−b】
【図17−c】
【図17−d】
【図17−e】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22(a)】
【図22(b)】
【図22(c)】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17−a】
【図17−b】
【図17−c】
【図17−d】
【図17−e】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22(a)】
【図22(b)】
【図22(c)】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2010−525271(P2010−525271A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504550(P2010−504550)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003330
【国際公開番号】WO2008/128788
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(303050078)ラインツーディチュングスーゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003330
【国際公開番号】WO2008/128788
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(303050078)ラインツーディチュングスーゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]