説明

金属部材の接合方法およびその接合構造

【課題】鋼部材と鉄系焼結部材との接合部に空孔が存在しない固相接合部を形成し、安定した高い接合強度を得る金属部材の接合方法およびその接合構造を提供する。
【解決手段】第1、第2の両被金属部材W1,W2の一方を鋼部材で構成し、他方を鉄系焼結部材で構成し、両被金属部材W1,W2を上部電極7と下部電極6で加圧した状態で通電することで、接合部位である開口部15と外形部を軟化嵌合して、空孔の存在しない固相接合部を形成して、両被金属部材W1,W2を接合することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、開口部を備えた第1被金属部材に、該開口部よりも僅かに大きい外形部を備えた第2被金属部材を、所定の重ね合わせ代で位置合わせをし、加圧、通電によりリングマッシュ接合するような金属部材の接合方法およびその接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の金属部材の接合方法としては、特許文献1に開示されたものがある。
すなわち、環状の開口部を備えた第1被金属部材(例えば、自動変速機のクラッチドラムのドラム部)に、該開口部よりも僅かに大きい外形部を備えた第2被金属部材(例えば、自動変速機のクラッチドラムのボス部)を、所定の重ね合わせ代で位置合わせをし、これら第1および第2の両被金属部材を上部電極と下部電極とで加圧した状態で通電し、接合部位である上記開口部と上記外形部とを軟化嵌合してリングマッシュ接合(ring mash Welding)する方法である。
【0003】
上記特許文献1には具体的材質の開示はないものの、クラッチドラムのドラム部には鋼部材が用いられ、クラッチドラムのボス部には、鋼部材を熱間鍛造したものが用いられるのが一般的である。
このように、第1被金属部材、第2被金属部材の一方に、鋼部材を熱間鍛造したものを用いると、熱間鍛造後においてスプライン孔の加工等を施す必要があり、製造工程が多くなるので、コストアップを招く問題点があった。
【0004】
そこで、第1被金属部材、第2被金属部材の何れか一方に鉄系焼結部材を用いることが考えられるが、焼結部材は粉末から成形される関係上、内部に多くの空孔をもつため、この空孔に影響されることなく、信頼性の高い接合強度を得ることができる金属部材の接合方法が求められている現状である。
【0005】
一方、特許文献2には、鉄系溶製部材(冷間圧延鋼板)から成るタービンシェルと、鉄系焼結部材から成るタービンハブとを環状突起を用いてプロジェクション溶接する接合方法が開示されているが、プロジェクション溶接は、周知のように溶接箇所に予め形成された突起を利用して、溶接部の電流集中を実現する抵抗溶接であって、所定の重ね合わせ代をもって加圧、通電により接合させるものではない。
【特許文献1】特開2006−898号公報
【特許文献2】特開2000−210776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、第1および第2の両被金属部材の一方を鋼部材で構成し、他方を鉄系焼結部材で構成し、上記両被金属部材を上部電極と下部電極で加圧した状態で通電することで、接合部位である上記開口部と上記外形部を軟化嵌合して、空孔の存在しない固相接合部を形成して、両被金属部材を接合することにより、鋼部材と鉄系焼結部材との接合部に空孔が存在しない固相接合部を形成することができ、安定した高い接合強度を得ることができる金属部材の接合方法およびその接合構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による金属部材の接合方法は、開口部を備えた第1被金属部材に、該開口部より僅かに大きい外形部を備えた第2被金属部材を、所定の重ね合わせ代で位置合わせをし、両被金属部材を上部電極と下部電極で加圧した状態で通電することで、接合部位である上記開口部と上記外形部を軟化嵌合して接合する金属部材の接合方法において、上記両被金属部材の一方を鋼部材で構成し、他方を鉄系焼結部材で構成し、上記両被金属部材を上部電極と下部電極で加圧した状態で通電することで、接合部位である上記開口部と上記外形部を軟化嵌合して、空孔の存在しない固相接合部を形成して、両被金属部材を接合するものである。
【0008】
上記構成によれば、第1および第2の両被金属部材を上部電極と下部電極で加圧した状態で通電することにより、接合部は溶融することなく、固相状態で接合するため、鉄系焼結部材に内在する空孔がブローホール(気ほう、blow hole)を形成することなく、塑性流動の過程で該焼結部材の空孔が押しつぶされるため、空孔のない健全な接合界面を形成することができる。
【0009】
したがって、鋼部材と鉄系焼結部材との接合部に空孔が存在しない固相接合部を形成することができ、安定した高い接合強度を得ることができる。また、塑性流動により派生する盛上り(はみ出し)量も、空孔が押しつぶされる分だけ、少なくてすむ。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記第1被金属部材が鋼部材であり、上記第2被金属部材が鉄系焼結部材であることを特徴とする。
上記構成によれば、次の如き効果がある。
すなわち、接合時において第1被金属部材の開口部周辺には引っ張り応力が作用し、第2被金属部材の外形部周辺には圧縮応力が作用するが鉄系焼結部材は引っ張り応力に対して弱い反面、圧縮応力に対しては強いので、第2被金属部材を鉄系焼結部材とすることにより、接合時に鉄系焼結部材にクラックが生じない。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記鉄系焼結部材は炭素を0.4重量%以上含有し、密度が6.7g/cm以上であり、
上記両被金属部材の片側の重ね合わせ代が0.3〜0.45mmであることを特徴とする。
上記構成によれば、鉄系焼結部材の炭素量、密度を上記のように設定すると共に、両被金属部材の片側の重ね合わせ代により、安定した高い接合強度を得ることができる。
【0012】
さらに詳しくは、炭素量が0.4重量%未満の場合には、母材(鉄系焼結部材)の剛性が低く、充分な接合強度が確保できない。
また、密度が6.7g/cm未満の場合にも、母材(鉄系焼結部材)の剛性が低く、充分な接合強度が得られない。
【0013】
さらに重ね合わせ代が0.3mm未満の場合には、充分な接合強度が確保できず、過小な場合には接合それ自体が不可となる。逆に、重ね合わせ代が0.45mmを超過すると、片側タイト量(重ね合わせ代と同意)の過大により、塑性流動しにくくなると共に、接合時に発生するバリ量も多くなる。
以上の理由により、上記範囲内に設定するものである。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記両被金属部材を接合した後に、上記上下の両電極を用いて上記固相接合部にテンパリング電流を流して、該固相接合部を焼戻しするものである。
上記構成によれば、次の如き効果がある。
【0015】
すなわち、接合時において第1および第2の両被金属部材は急加熱され、接合後において上下の両電極を冷却する、例えば、電極内部に形成された冷却通路を流れる水により急冷されるので、特に上記固相接合部が焼入れされて(炭素量0.35重量%以上で焼入れされる)、その靭性が低下するが、テンパリング電流を流して、該固相接合部を焼戻しすることにより、接合部の靭性を大幅に改善することができる。
【0016】
この発明による金属部材の接合構造は、開口部を備えた第1被金属部材に、該開口部より僅かに大きい外形部を備えた第2被金属部材を、所定の重ね合わせ代で位置合わせをし、両被金属部材を上部電極と下部電極で加圧した状態で通電することで、接合部位である上記開口部と上記外形部を軟化嵌合して接合した金属部材の接合構造において、上記両被金属部材の一方を鋼部材で構成し、他方を鉄系焼結部材で構成し、上記両被金属部材を上部電極と下部電極で加圧した状態で通電することで、接合部位である上記開口部と上記外形部を軟化嵌合して、空孔の存在しない固相接合部を形成したものである。
上記構成によれば、第1および第2の両被金属部材を上部電極と下部電極で加圧した状態で通電することにより、接合部は溶融することなく、固相状態で接合するため、鉄系焼結部材に内在する空孔がブローホールを形成することなく、塑性流動の過程で該焼結部材の空孔が押しつぶされるため、空孔のない健全な接合界面を形成することができる。
【0017】
したがって、鋼部材と鉄系焼結部材との接合部に空孔が存在しない固相接合部を形成することができ、安定した高い接合強度を得ることができる。また、塑性流動により派生する盛上り(はみ出し)量も、空孔が押しつぶされる分だけ、少なくてすむ。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記第1被金属部材が鋼部材であり、上記第2被金属部材が鉄系焼結部材であることを特徴とする。
上記構成によれば、次の如き効果がある。
すなわち、接合時において第1被金属部材の開口部周辺には引っ張り応力が作用し、第2被金属部材の外形部周辺には圧縮応力が作用するが鉄系焼結部材は引っ張り応力に対して弱い反面、圧縮応力に対しては強いので、第2被金属部材を鉄系焼結部材とすることにより、接合時に鉄系焼結部材にクラックが生じない。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記鉄系焼結部材は炭素を0.4重量%以上含有し、密度が6.7g/cm以上であることを特徴とする。
上記構成によれば、鉄系焼結部材の炭素量および密度を上記のように設定したので、安定した高い接合強度を得ることができる。
詳しくは、炭素量が0.4重量%未満の場合には、母材(鉄系焼結部材)の剛性が低く、充分な接合強度が確保できない。
【0020】
また、密度が6.7g/cm未満の場合にも、母材(鉄系焼結部材)の剛性が低く、充分な接合強度が得られない。
以上の理由により、上記範囲内に設定するものである。
【0021】
この発明の一実施態様においては、上記鉄系焼結部材が自動変速機のクラッチドラムのボス部であり、上記鋼部材が該クラッチドラムのドラム部であることを特徴とする。
上記構成によれば、クラッチドラムのボス部を鉄系焼結部材にて構成するので、従来の熱間鍛造品と比較して、製造工程が少なくなり、そのコストダウンを図ることができる。なお、上記ボス部の内周にスプライン孔を形成する場合には、リングマッシュ接合前、接合後の何れであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、両被金属部材の一方を鋼部材で構成し、他方を鉄系焼結部材で構成し、上記両被金属部材を上部電極と下部電極で加圧した状態で通電することで、接合部位である上記開口部と上記外形部を軟化嵌合して、空孔の存在しない固相接合部を形成して、両被金属部材を接合するので、鋼部材と鉄系焼結部材との接合部に空孔が存在しない固相接合部を形成することができ、安定した高い接合強度を得ることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
鋼部材と鉄系焼結部材との接合部に空孔が存在しない固相接合部を形成し、安定した高い接合強度を得るという目的を、開口部を備えた第1被金属部材に、該開口部より僅かに大きい外形部を備えた第2被金属部材を、所定の重ね合わせ代で位置合わせをし、両被金属部材を上部電極と下部電極で加圧した状態で通電することで、接合部位である上記開口部と上記外形部を軟化嵌合して接合する金属部材の接合方法およびその接合構造において、上記両被金属部材の一方を鋼部材で構成し、他方を鉄系焼結部材で構成し、上記両被金属部材を上部電極と下部電極で加圧した状態で通電することで、接合部位である上記開口部と上記外形部を軟化嵌合して、空孔の存在しない固相接合部を形成して、両被金属部材を接合するという構成にて実現した。
【実施例】
【0024】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は金属部材の接合方法およびその接合構造を示すが、まず、図1を参照して、この接合方法に用いる接合装置の構成について説明する。
【0025】
図1は、リングマッシュ接合装置1の全体を該略的に示す正面図であって、このリングマッシュ接合装置1は、設置台2上に装置前部で上下方向に延びる左右一対のフレーム体3,3と、装置内部に設けられた接合台4と、この接合台4上で左右方向に延びるスライドレール5と、このスライドレール5上でそれぞれ左右に移動する2つの下部電極6,6と、その上方に設けられ上下方向に移動可能な上部電極7と、この上部電極7に対して加圧力を付勢する加圧シリンダ8と、上記上部電極7に対して電流を供給する配線ケーブル9と、上記下部電極6の周囲に隣接して配置され、後述する第1ワークに当接して該第1ワークを位置決めすると共に、接合電流をリークさせる導電性位置決め部材としてのストッパ電極10と、このストッパ電極10を下部電極6に対して移動させるアクチュエータ11(図2参照)と、上部電極7の変位波形をモニタリングおよび判定する波形判定装置12と、接合装置1の操作を行う操作盤13とを備えている。
【0026】
なお、下部電極6は1つのみであってもよいが、図1に示すこの実施例では、作業性向上のため2つの下部電極6,6を交互に使用できるようにしている。すなわち、左右何れか一方の下部電極6を用い、これに後述のワークW1,W2をセットしておいてその下部電極6を中央に位置させた状態で、その下部電極6と上部電極7とを用いて後に詳述する接合と、その後の焼戻しの処理とを行なう一方、その処理中に他方の下部電極6から処理後のワークW1,W2の取り外し及び新たなワークW1,W2のセットを行なうようにして、交互に各下部電極6,6を用いるように構成している。
【0027】
図2はリングマッシュ接合装置の系統図であって、同図に示すように、下部電極6および上部電極7は共に、円筒形状の導電体で形成されており、下部電極6の上方に上部電極7が位置する状態で、上部電極7が下降、上昇することにより下部電極6に対して接近、離間するようになっている。
【0028】
上記各電極6,7により接合される両ワークW1,W2のうちの第1ワーク(第1被金属部材)W1は予め鋼部材をプレス成形して構成されたもので、この第1ワークW1は、例えば自動変速機部品である円筒状のクラッチドラムのドラム部であって、その一端部内周側にフランジ部14を備え、このフランジ部14の内側に開口部15を有している。また、第2ワーク(第2被金属部材)W2は、予め鉄系焼結部材で筒状に構成されたもので、この第2ワークW2は、例えば自動変速機部品である円筒状のクラッチドラムのボス部であって、その一端部外周側にフランジ部16を備え、予めフランジ部16の外形部17(図3参照)が第1ワークW1のフランジ部14の開口部15よりも僅かに大きく形成されている。
【0029】
上記第1ワークW1のフランジ部14の内周端つまり開口部15と第2ワークW2のフランジ部16の外周端つまり外形部17とが接合部位とされる。そして、接合に際しては、下部電極6の上面に第2ワークW2のフランジ部16か載置されるとともに、上記接合部位に所定の重ね合わせ代OL(図3参照)を有して第2ワークW2に第1ワークW1が重ね合わされた状態で、位置合わせをし、両ワークW1,W2が下部電極6上にセットされる。
このように下部電極6上に両ワークW1,W2がセットされた状態で、下部電極6の上面が第2ワークW2の接合部位近傍に当接し、また、上部電極7が下降した時に、上部電極7の下面が第1ワークW1の接合部位近傍に当接するように構成されている。
【0030】
また、上記ストッパ電極10は、クロム銅、ベリリウム銅等の導電体からなり、下部電極6を囲う円筒状で、かつ、下部電極6に対して径方向外方の離間位置へ移動し得るように複数に分割形成され、この実施例では半筒状の2つの部分10a,10bに分割されている。
このストッパ電極10は、リングマッシュ接合時にはその内周面および下面が下部電極6に接する状態となる接合位置とされ、この状態において、ストッパ電極10の上面は下部電極6の上面より僅かに上方に位置して、第1ワークW1のフランジ部14に対面するようになっている。
【0031】
このストッパ電極10の各部分10a,10bは、それぞれ、駆動手段としてのアクチュエータ11,11に接続されている。この実施例においてアクチュエータ11は、エアシリンダからなり、シリンダ本体から前後進可能なピストンロッド18の先端に絶縁用兼フローティング支持用のラバー19を介して上記各部分10a,10bが取付けられている。
また上記下部電極6の内周面には、第2ワークW2の位置決めを行う位置決め部20が設けられている。
【0032】
さらに、上述のリングマッシュ接合装置1は、図2に示すように、該接合装置1を起動させる起動スイッチ21と、加圧シリンダ8を駆動するアクチュエータ駆動部22と、アクチュエータ11としてのエアシリンダを駆動するアクチュエータ駆動部23と、上下の両電極7,6に対する通電回路24とを備えている。
【0033】
制御装置としてのCPU30は、起動スイッチ21の信号入力に基づいて、ROM(図示せず)に格納されたプログラムに従って、アクチュエータ駆動部22,23を介して加圧シリンダ8、アクチュエータ11を駆動し、また、通電回路24を介して上下の両電極7,6に大電流を供給制御(この実施例では上部電極7側から通電)する。
【0034】
ところで、上述のフランジ部14、開口部15を備えた第1ワークW1は鋼部材であり、一方、上述のフランジ部16、外形部17(図3参照)を備えた第2ワークW2は鉄系焼結部材である。
しかも、鉄系焼結部材から成る第2ワークW2の炭素含有量は0.4%以上とし、その密度(詳しくは焼結密度)は6.7g/cm以上に設定し、第1ワークW1と第2ワークW2との片側の重ね合わせ代OL(図3参照)は0.3〜0.45mmに設定している。
【0035】
また図3に示す第1ワークW1の開口部14と、第2ワークW2の外形部17との該重ね合わせ代OLに対応して、各ワークW1,W2には両者の軟化嵌合(塑性流動)を容易にする目的で、それぞれテーパ面が形成されているが、これらの各テーパ面の角度Θは塑性流動を考慮して、約30〜45度の範囲に設定されている。
【0036】
次に、図4に示すフローチャートを参照して金属部材の接合方法について説明する。
【0037】
図4のフローチャートによる処理が開始される以前の準備段階で、まず、下部電極6に第2ワークW2がセットされ、さらに、この第2ワークW2上に第1ワークW1がセットされる。この場合、第2ワークW2に対して第1ワークW1は図3に示す重ね合わせ代OL(片側の重ね合わせ代が0.3〜0.45mmの範囲)で位置合わせされる。この位置合わせは作業者の手作業にて実行される。
【0038】
ステップS1で、操作盤13(図1参照)の起動スイッチ21(図2参照)がON操作されると、次のステップS2で、CPU30は油圧シリンダで構成された加圧シリンダ8を駆動して、上部電極7を降下させ、次のステップS3で、一旦、上部電極7が第1ワークW1に当接した状態で待機させる(図5参照)。この待機期間を設けることで、第1ワークW1に当接する際の上部電極7の衝撃による電極のへたり、変形を抑えることができる。
【0039】
次にステップS4で、CPU30は上部電極7の加圧を開始する。加圧シリンダ8による加圧力は4〜5トンと高いので、各ワークW1,W2はその材料が圧縮されて弾性変形する。なお、この時点では未だ接合は行なわれていない。
【0040】
次にステップS5で、CPU30は通電を開始し、この通電により、リングマッシュ接合を行なう。
【0041】
ステップS5において高加圧(4〜5トン)条件下で図1に示す配線ケーブル9から上部電極7に大電流が通電されると、この電流は、図5に示す上部電極7、第1ワークW1、第1ワークW1と第2ワークW2との重ね合わせ代OL(図3参照)に相当する部位、第2ワークW2、下部電極6の順に流れるので、両ワークW1,W2の接合部U(図7参照)が抵抗発熱により軟化し、塑性流動しながら接合が行なわれ、表面の酸化被膜が流れて材料の新生面同士が軟化嵌合して、空孔の存在しない固相接合部を形成すべく固相拡散接合され、図3、図5に示す状態から図6、図7に示す状態となる。つまり、第2ワークW2の外形部17に対して第1ワークW1の開口部15が押し込められて、拡散接合が行なわれ、空孔の存在しない固相接合部Uが形成される。
【0042】
この接合時に、図6、図7に示すように、第1ワークW1が上部電極7で押下げられて、両ワークW1,W2が相対移動し、適正な接合状態に達すると、下部電極6に隣接して位置するストッパ電極10の上面に第1ワークW1が当接し、これにより、両ワークW1,W2の相対移動方向の位置決めが成されると共に、接合用の電流は第1ワークW1からストッパ電極10へリークされ、両ワークW1,W2の接合部Uに流れる電流が減少する。このため、接合部Uに過大電流が流れることが回避され、過大電流に起因するスパッタリングの発生等による接合品質の悪化が防止される。
【0043】
このようにしてリングマッシュ接合が終了すると、次のステップS6で、上部電極7に対する加圧および通電が解除され、上部電極7は図8に示すように上昇して各ワークW1,W2から離間する。一方、電極6,7内に設けられた冷却通路(図示せず)には冷却水が供給されて急冷される。
【0044】
この場合、ワークW1,W2のうちの少なくとも一方、例えば第2ワークW2の炭素量が0.35重量%以上の場合には、接合時の大電流で第2ワークW2は急加熱された後において急冷されることになり、第2ワークW2の所定部(接合部U参照)が焼入れされ、靭性が低下する。そこで、以下の処理において接合部Uに焼戻し用の電流テンパリング電流を流して、焼戻しを行ない、接合部Uの靭性向上を図るものである。
【0045】
各ワークW1,W2の接合部Uに対する焼戻し用の電流の通電に先立って、ステップS7で、該焼戻し用の電流がストッパ電極10にリークするのを防止する目的で、図8の状態から図9に示すように、ストッパ電極10を下部電極6および第1ワークW1から径方向外方の離間位置へ後退すべくアクチュエータ11を駆動する。
【0046】
次に、図10、図11に示すように、ストッパ電極10の後退位置(離間位置)を保持した状態で、ステップS8で、上部電極7を降下させてワークW1,W2に押し当て、次のステップS9で、焼戻し用のテンパリング通電を行なうと、焼戻し用電流が上下の両電極7,6間のワークW1,W2の接合部Uに流される。
ここで、上記テンパリング通電時のテンパリング電流は140〜180KAの範囲内とする。つまり、電流値が140KA未満の場合には発熱量不足により焼戻しが不充分となり、逆に電流値が180KAを超過すると、発熱量が過大となって再焼入れされ、何れも脆い界面が生成されるので、適正に焼戻しを行なうために、140〜180KAとするものである。
【0047】
上述のテンパリング通電が所定時間行なわれて焼戻しが完了すると、ステップS10で、上部電極7に対する加圧およびテンパリング電流の通電がOFFとされ、次のステップS11で、上部電極7が上昇し、さらに次のステップS12で、ストッパ電極10は下部電極6に隣接する元の位置まで前進するようにアクチュエータ11が駆動されて、リングマッシュ接合装置1の各要素は接合以前のノーマル状態に復帰され、上記各ステップS1〜S12の一連の処理終了後に、ワークW1,W2は下部電極6から取外される。
なお、図7、図11においてΔHは第1ワークW1のフランジ部14下面と、第2ワークW2のフランジ部16下面との間の接合寸法としてのアッシー段差である。
【0048】
図12は上記接合部Uの金属組織を示す説明図で、該接合部Uはリングマッシュ接合時における塑性流動の過程で鉄系焼結部材(第2ワークW2参照)の空孔が押しつぶされるため、同図に示すように、空孔が存在しない健全な接合界面を形成することができる。
【0049】
図13は鉄系焼結部材で形成された第2ワークW2の炭素含有量をそれぞれ異ならせて、両ワークW1,W2をリングマッシュ接合した後に、両ワークW1,W2の捩り強度を実測した結果を示す特性図であって、炭素含有量が0.4重量%以上の場合には、充分な接合強度が得られる一方で、炭素含有量が0.4重量%未満の場合には、第2ワークW2の母材剛性が低くなることに起因して、接合強度不足または接合不良となる。
【0050】
なお、第2ワークW2の炭素含有量を0.35重量%という低い値に設定すると共に、焼結密度を6.65g/cmという低密度に設定して、リングマッシュ接合を試みたが、この場合には第2ワークW2の母材剛性が低く、接合そのものが不可能であった。
【0051】
図14は鉄系焼結部材で形成された第2ワークW2の焼結密度を6.66g/cm、6.8g/cm、6.85g/cmとそれぞれ異ならせて、両ワークW1,W2をリングマッシュ接合した後に、両ワークW1,W2の抜き強度を実測した結果を示す特性図(但し、片側の重ね合わせ代OLは0.375mm、炭素含有量は0.45重量%と同一の条件とした)であって、焼結密度が6.8g/cm、6.85g/cmのものは充分な抜き強度が確保される一方で、焼結密度が6.66g/cmのものでは、第2ワークW2の母材剛性の低下に起因して、充分な抜き強度が得られなかった。
【0052】
図15は鉄系焼結部材で形成された第2ワークW2の焼結密度を6.66g/cm、6.8g/cm、6.85g/cmとそれぞれ異ならせて、両ワークW1,W2をリングマッシュ接合した後に、両ワークW1,W2の捩り強度を実測した結果を示す特性図(但し、片側の重ね合わせ代OLは0.375mm、炭素含有量は0.45重量%と同一の条件とした)であって、焼結密度が6.8g/cm、6.85g/cmのものは充分な捩り強度が確保される一方で、焼結密度が6.66g/cmのものでは、第2ワークW2の母材剛性の低下に起因して、充分な捩り強度が得られなかった。
【0053】
図16は鉄系焼結部材で形成された第2ワークW2の焼結密度を6.66g/cm、6.8g/cm、6.85g/cmとそれぞれ異ならせて、両ワークW1,W2をリングマッシュ接合した後に、図4で示したステップS9でのテンパリング通電時のアッシー段差ΔH(図11参照)を実測した結果を示す特性図(但し、片側の重ね合わせ代OLは0.375mm、炭素含有量は0.45重量%と同一の条件とした)であって、焼結密度が6.8g/cm、6.85g/cmのものは適正なアッシー段差ΔHが確保できる一方で、焼結密度が6.66g/cmのものは、第2ワークW2の母材剛性が低いので、テンパリング通電時に第1ワークW1が不所望に下動して、適正なアッシー段差ΔHが確保できなかった。
【0054】
図17は、図3で示した両ワークW1,W2の片側の重ね合わせ代OLをそれぞれ異ならせて、両ワークW1,W2をリングマッシュ接合した後に、両ワークW1,W2の抜き強度を実測した結果を示す特性図であって、重ね合わせ代OLが0.3mm以上の場合には、充分な抜き強度が確保できる一方で、重ね合わせ代OLが0.3mm未満の場合には、接合強度の不足または接合不良に起因して、充分な抜き強度を確保することができなかった。なお、重ね合わせ代OLが0.45mmを超過すると、片側タイト量(重ね合わせ代OLと同意)の過大により、塑性流動しにくくなると共に、接合時に発生するバリ量も多くなるので望ましくない。
【0055】
図18はリングマッシュ接合後に焼戻しを行なわなかったもの(図18のa参照)と、焼戻しを行なったもの(図18のb参照)とのそれぞれに対し耐衝撃性を実測した結果を示す特性図で、横軸に変位をとり、縦軸に静的捩り強度(捩りトルク)をとっている。特性イ,ハは衝撃を与えずに測定したものであり、特性ロ,ニは重りを自由落下させて衝撃を与えた後に、捩りトルクを測定した結果を示している。
【0056】
図18のaで示す焼戻しを行なわないものは、接合部Uに焼きが入って脆くなっている関係上、衝撃に弱く、脆い部分が衝撃により破壊されるので、衝撃付加前の特性イに対して、衝撃付加後の特性ロが大幅に低下し、捩りトルクが不充分であった。
【0057】
図18のbで示す焼戻しを行なったものは、接合部Uの靭性が大幅に向上するので、衝撃付加前の特性ハに対して、衝撃付加後の特性ニに大差がなく、充分な捩りトルクが得られた。
【0058】
図19は、図4に示すステップS9のテンパリング通電時における第1ワークW1の変位波形を実測した特性図である。ここで、上記第1ワークW1の変位は、上部電極7の変位を、非接触レーザ変位計などの上部電極変位検出手段で検出し、この検出出力を図1で示した波形判定装置12にてモニタリングおよび判定することにより実測することができる。
【0059】
特性aは、第2ワークW2の焼結密度を6.8g/cmとし、両ワークW1,W2の片側の重ね合わせ代OLを0.375mmとした場合の変位波形を示し、特性bは、第2ワークW2の焼結密度を6.65g/cmとし、両ワークW1,W2の片側の重ね合わせ代OLを0.375mmとした場合の変位波形を示し、特性cは、第2ワークW2の焼結密度を6.8g/cmとし、両ワークW1,W2の片側の重ね合わせ代OLを0.30mmとした場合の変位波形を示し、特性dは、第2ワークW2の焼結密度を6.65g/cmとし、両ワークW1,W2の片側の重ね合わせ代OLを0.30mmとした場合の変位波形を示している。
【0060】
特性aと特性bとの比較、並びに特性cと特性dとの比較から明らかなように、片側の重ね合わせ代OLが同一であっても、第2ワークW2の焼結密度が所定の6.7g/cm未満の場合(図19の6.65g/cm参照)には、焼結密度が所定以上の6.8g/cmのものに対して、テンパリング通電時における第1ワークW1の変位量が大きくなる。第1ワークW1の時間に対する変位量が大きいということは、図11で示したアッシー段差ΔHが大きく変動して、適正値から外れることを意味する。特に、図19の特性dのものはアッシー段差ΔHが大きく変動して、接合寸法精度が不充分となる。
ところで、前述のストッパ電極10の形状は、図5、図6、図8〜図10で示した形状に代えて、図20で示す形状を採用してもよい。
【0061】
図20に示すストッパ電極10は第1ワークW1の外周部を位置決めするリング状の位置決め部10cを、該ストッパ電極10に一体または一体的に形成したものであって、ワークセット時の作業性向上を図るように構成したものである。
【0062】
このように、上記実施例の金属部材の接合方法は、開口部15を備えた第1ワークW1に、該開口部15より僅かに大きい外形部17を備えた第2ワークW2を、所定の重ね合わせ代OLで位置合わせをし、両ワークW1,W2を上部電極7と下部電極6で加圧した状態で通電することで、接合部位である上記開口部15と上記外形部17を軟化嵌合して接合する金属部材の接合方法において、上記両ワークW1,W2の一方を鋼部材で構成し、他方を鉄系焼結部材で構成し、上記両ワークW1,W2を上部電極7と下部電極6で加圧した状態で通電することで、接合部位である上記開口部15と上記外形部17を軟化嵌合して、空孔の存在しない固相接合部U(図7、図12参照)を形成して、両ワークW1,W2を接合するものである(図2、図3、図7、図12)。
【0063】
この構成によれば、第1および第2の両ワークW1,W2を上部電極7と下部電極6で加圧した状態で通電することにより、接合部Uは溶融することなく、固相状態で接合するため、鉄系焼結部材に内在する空孔がブローホールを形成することなく、塑性流動の過程で該焼結部材の空孔が押しつぶされるため、空孔のない健全な接合界面を形成することができる(図12参照)。
【0064】
したがって、鋼部材と鉄系焼結部材との接合部Uに空孔が存在しない固相接合部を形成することができ、安定した高い接合強度を得ることができる。また、塑性流動により派生する盛上り(はみ出し)量も、空孔が押しつぶされる分だけ、少なくてすむ。
【0065】
また、上記第1ワークW1を鋼部材とし、上記第2ワークW2を鉄系焼結部材としたものである。
この構成によれば、次の如き効果がある。
すなわち、接合時において第1ワークW1の開口部15周辺には引っ張り応力が作用し、第2ワークW2の外形部17周辺には圧縮応力が作用するが鉄系焼結部材は引っ張り応力に対して弱い反面、圧縮応力に対しては強いので、第2ワークW2を鉄系焼結部材とすることにより、接合時に鉄系焼結部材にクラックが生じない。
【0066】
しかも、上記鉄系焼結部材は炭素を0.4重量%以上含有し、密度が6.7g/cm以上であり、上記両ワークW1,W2の片側の重ね合わせ代OLを0.3〜0.45mmの範囲内としたものである。
【0067】
この構成によれば、鉄系焼結部材の炭素量、密度を上記のように設定すると共に、両ワークW1,W2の片側の重ね合わせ代OLにより、安定した高い接合強度を得ることができる。
【0068】
さらに詳しくは、炭素量が0.4重量%未満の場合には、母材(鉄系焼結部材)の剛性が低く、充分な接合強度が確保できない(図13参照)。
また、密度が6.7g/cm未満の場合にも、母材(鉄系焼結部材)の剛性が低く、充分な接合強度が得られない(図14、図15、図16参照)。この密度は高いほど鉄系焼結部材の剛性は高まるものの、鉄系焼結部材の圧粉金型の耐久性および寿命の関係から上限を7g/cm程度にするのが好ましい。
【0069】
さらに重ね合わせ代が0.3mm未満の場合には、充分な接合強度が確保できず、逆に、重ね合わせ代が0.45mmを超過すると、片側タイト量(重ね合わせ代と同意)の過大により、塑性流動しにくくなると共に、接合時に発生するバリ量も多くなる(図17参照)。
【0070】
以上の理由により、上記範囲内に設定するものである。
さらに、上記両ワークW1,W2を接合した後に、上記上下の両電極7,6を用いて上記固相接合部Uにテンパリング電流を流して、該固相接合部Uを焼戻しするものである。
【0071】
この構成によれば、次の如き効果がある。
すなわち、接合時において第1および第2の両ワークW1,W2は急加熱され、接合後において上下の両電極7,6を冷却する、例えば、電極内部に形成された冷却通路を流れる水により急冷されるので、特に上記固相接合部Uが焼入れされて(炭素量0.35重量%以上で焼入れされる)、その靭性が低下するが、テンパリング電流を流して、該固相接合部Uを焼戻しすることにより、接合部の靭性を大幅に改善することができる(図18参照)。
【0072】
また、上記実施例の金属部材の接合構造は、開口部15を備えた第1ワークW1に、該開口部15より僅かに大きい外形部17を備えた第2ワークW2を、所定の重ね合わせ代OLで位置合わせをし、両ワークW1,W2を上部電極7と下部電極6で加圧した状態で通電することで、接合部位である上記開口部15と上記外形部17を軟化嵌合して接合した金属部材の接合構造において、上記両ワークW1,W2の一方を鋼部材で構成し、他方を鉄系焼結部材で構成し、上記両ワークW1,W2を上部電極7と下部電極6で加圧した状態で通電することで、接合部位である上記開口部15と上記外形部17を軟化嵌合して、空孔の存在しない固相接合部Uを形成したものである(図2、図3、図7、図12参照)。
【0073】
この構成によれば、第1および第2の両ワークW1,W2を上部電極7と下部電極6で加圧した状態で通電することにより、接合部Uは溶融することなく、固相状態で接合するため、鉄系焼結部材に内在する空孔がブローホールを形成することなく、塑性流動の過程で該焼結部材の空孔が押しつぶされるため、空孔のない健全な接合界面を形成することができる(図12参照)。
【0074】
したがって、鋼部材と鉄系焼結部材との接合部Uに空孔が存在しない固相接合部を形成することができ、安定した高い接合強度を得ることができる。また、塑性流動により派生する盛上り(はみ出し)量も、空孔が押しつぶされる分だけ、少なくてすむ。
さらに、上記第1ワークW1を鋼部材とし、上記第2ワークW2を鉄系焼結部材としたものである。
【0075】
この構成によれば、次の如き効果がある。
すなわち、接合時において第1ワークW1の開口部15周辺には引っ張り応力が作用し、第2ワークW2の外形部17周辺には圧縮応力が作用するが鉄系焼結部材は引っ張り応力に対して弱い反面、圧縮応力に対しては強いので、第2ワークW2を鉄系焼結部材とすることにより、接合時に鉄系焼結部材にクラックが生じない。
しかも、上記鉄系焼結部材は炭素を0.4重量%以上含有し、密度を6.7g/cm以上の範囲としたものである。
【0076】
この構成によれば、鉄系焼結部材の炭素量および密度を上記のように設定したので、安定した高い接合強度を得ることができる。
詳しくは、炭素量が0.4重量%未満の場合には、母材(鉄系焼結部材)の剛性が低く、充分な接合強度が確保できない(図13参照)。
【0077】
また、密度が6.7g/cm未満の場合にも、母材(鉄系焼結部材)の剛性が低く、充分な接合強度が得られない(図14、図15、図16参照)。この密度は高いほど鉄系焼結部材の剛性は高まるものの、鉄系焼結部材の圧粉金型の耐久性および寿命の関係から上限を7g/cm程度にするのが好ましい。
【0078】
以上の理由により、上記範囲内に設定するものである。
加えて、上記鉄系焼結部材が自動変速機のクラッチドラムのボス部(第2ワークW2参照)であり、上記鋼部材が該クラッチドラムのドラム部(第1ワークW1参照)であることを特徴とする。
【0079】
この構成によれば、クラッチドラムのボス部(第2ワークW2参照)を鉄系焼結部材にて構成するので、従来の熱間鍛造品と比較して、製造工程が少なくなり、そのコストダウンを図ることができる。なお、上記ボス部の内周にスプライン孔を形成する場合には、リングマッシュ接合前、接合後の何れであってもよい。
【0080】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の第1被金属部材は、実施例の鋼部材(自動変速機のクラッチドラムのドラム部)である第1ワークW1も対応し、
以下同様に、
第2被金属部材(自動変速機のクラッチドラムのボス部)である第2ワークW2に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の金属部材の接合方法に用いるリングマッシュ接合装置の概略正面図
【図2】リングマッシュ接合装置の系統図
【図3】両被金属部材の重ね合わせ代を示す断面図
【図4】金属部材の接合方法を示すフローチャート
【図5】上部電極待機時の説明図
【図6】加圧、通電時の説明図
【図7】図6の要部の拡大断面図
【図8】加圧解除時の説明図
【図9】ストッパ電極後退時の説明図
【図10】テンパリング通電時の説明図
【図11】図10の要部の拡大断面図
【図12】空孔の存在しない固相接合部の金属組織を示す説明図
【図13】炭素含有量の差異による捩り強度特性を示す特性図
【図14】焼結密度の差異による抜き強度特性を示す特性図
【図15】焼結密度の差異による捩り強度特性を示す特性図
【図16】焼結密度の差異によるアッシー段差特性を示す特性図
【図17】重ね合わせ代の差異による抜き強度特性を示す特性図
【図18】焼戻しの有無による耐衝撃特性を示す特性図
【図19】焼結密度および重ね合わせ代の差異によるテンパリング通電時の第1ワーク変位波形を示す特性図
【図20】ストッパ電極の他の実施例を示す断面図
【符号の説明】
【0082】
6…下部電極
7…上部電極
15…開口部
17…外形部
W1…第1ワーク(第1被金属部材)
W2…第2ワーク(第2被金属部材)
U…接合部
OL…重ね合わせ代

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を備えた第1被金属部材に、該開口部より僅かに大きい外形部を備えた第2被金属部材を、所定の重ね合わせ代で位置合わせをし、両被金属部材を上部電極と下部電極で加圧した状態で通電することで、接合部位である上記開口部と上記外形部を軟化嵌合して接合する金属部材の接合方法において、
上記両被金属部材の一方を鋼部材で構成し、他方を鉄系焼結部材で構成し、
上記両被金属部材を上部電極と下部電極で加圧した状態で通電することで、接合部位である上記開口部と上記外形部を軟化嵌合して、空孔の存在しない固相接合部を形成して、両被金属部材を接合する
金属部材の接合方法。
【請求項2】
上記第1被金属部材が鋼部材であり、上記第2被金属部材が鉄系焼結部材である
請求項1記載の金属部材の接合方法。
【請求項3】
上記鉄系焼結部材は炭素を0.4重量%以上含有し、密度が6.7g/cm以上であり、
上記両被金属部材の片側の重ね合わせ代が0.3〜0.45mmである
請求項1または2記載の金属部材の接合方法。
【請求項4】
上記両被金属部材を接合した後に、上記上下の両電極を用いて上記固相接合部にテンパリング電流を流して、該固相接合部を焼戻しする
請求項3記載の金属部材の接合方法。
【請求項5】
開口部を備えた第1被金属部材に、該開口部より僅かに大きい外形部を備えた第2被金属部材を、所定の重ね合わせ代で位置合わせをし、両被金属部材を上部電極と下部電極で加圧した状態で通電することで、接合部位である上記開口部と上記外形部を軟化嵌合して接合した金属部材の接合構造において、
上記両被金属部材の一方を鋼部材で構成し、他方を鉄系焼結部材で構成し、
上記両被金属部材を上部電極と下部電極で加圧した状態で通電することで、接合部位である上記開口部と上記外形部を軟化嵌合して、空孔の存在しない固相接合部を形成した
金属部材の接合構造。
【請求項6】
上記第1被金属部材が鋼部材であり、上記第2被金属部材が鉄系焼結部材である
請求項5記載の金属部材の接合構造。
【請求項7】
上記鉄系焼結部材は炭素を0.4重量%以上含有し、密度が6.7g/cm以上である
請求項5または6記載の金属部材の接合構造。
【請求項8】
上記鉄系焼結部材が自動変速機のクラッチドラムのボス部であり、上記鋼部材が該クラッチドラムのドラム部である
請求項7記載の金属部材の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図12】
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