説明

金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する方法、及びその方法によって得られた繊維性材料、並びに結合組織修復材料

【課題】繊維性材料に、均一な厚さの金属酸化物の被覆を形成する安価で簡便な方法を提供し、金属酸化物が均一に被覆された繊維性材料を提供する。さらに、生体組織と直接に結合可能な表面構造を有する結合組織修復材料、及びその結合修復材料の簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する方法であって、金属アルコキシドからなるゾルを繊維性材料に吸収させる工程、前記ゾルを吸収させた繊維性材料を前記ゾルの溶媒が揮発しない状態で保持する工程、熱処理する工程、及び酸処理する工程を有することを特徴とする金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する方法、及び前記方法によって得られた繊維性材料に関し、さらにはその繊維性材料を用いた結合組織修復材料に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の表面に金属酸化物の被覆を形成する方法として、一般にゾル-ゲル法が有効である。ゾル-ゲル法による被覆形成は、材料に金属アルコキシドからなるゾルを被覆し、加水分解・重縮合反応させることによって行う。材料への金属アルコキシドの被覆には、ゾルに浸漬した材料を一定速度で引き上げるディップコーティング等の方法が用いられる。しかし、このディップコーティングは、被覆対象物が平坦な表面を有している場合には、その表面に均一な厚さのゲル層を形成させる手段として有効であるが、被覆対象物が繊維性の材料(繊維で構成された織物、編物、不織布等)である場合には、繊維間や繊維が交差する編目等の部分にゾルが液溜まりをつくり、過剰なゲルが対象物に被覆されるため、均一な厚さのゲル層を形成させることが困難である。
【0003】
一方、靭帯、腱等の結合組織を部分的に又は全体的に取り替えて補強するための修復材料として、古くから多くの材料が提案されており、その中の一部は既に臨床で使用されている。代表的な修復材料として、ポリエステル織物からなる人工靭帯(例えば、特許文献1参照)、吸収性高分子からなる靭帯補綴物(例えば、特許文献2参照)、繊維を主体とする結合組織再構成用移植片(例えば、特許文献3参照)、織編物からなる修復材料(例えば、特許文献4参照)、細胞を播種した分解性高分子繊維からなる編物(例えば、特許文献5参照)等が知られている。
【0004】
これら材料は、いずれも生体非吸収性又は吸収性の繊維を用いて織編化された繊維構造体であり、生体組織が織編組織の内部に進入して成長し、繊維構造体を包み込むことによって生体内で固定化されるという機能を有する。また、特許文献5に記載された編物は、あらかじめ培養した宿主細胞を使用することを特徴としており、繊維構造体は培養細胞を移植固定するための骨格体として使われている。
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4に記載の繊維構造体は、いずれも進入した生体組織と直接に結合する表面構造を有していない。これらの繊維構造体と生体組織との接触は線維性組織等の介在組織を介して行われると考えられるため、その結合力はそれほど強いものではなく、繊維構造体の内部に進入した生体組織が成長して、繊維構造体を内外から包み込み、生体内で一体化されるまでには長期間を要する。特許文献1〜4には結合可能な表面構造を形成する方法について記載されていない。また、特許文献3には結合組織再構成用の織編物が記載されているが、編み組織を主たる部分とする複雑な織編様式を有しているため、製造コストがかかると言った問題がある。
【0006】
特開2006-94932号(特許文献6)は、熱可塑性高分子繊維からなる織編物の表面が、アパタイト形成能を有する酸化チタン膜で被覆された結合組織修復材料を記載している。特開2006-94932号(特許文献6)に記載の方法は、ゾル−ゲル法を利用して酸化チタン膜を被覆するものであるが、いわゆるディップコーティング法によってチタニアゾル溶液を繊維性材料に被覆しているため、繊維間や編目に液溜まりができるため酸化チタン膜が均一に形成されないといった問題がある。さらに、ディップコーティング法は1cm/分程度で材料の引き上げを行うため、著しく生産性が悪い。
【特許文献1】特公平5-53499号公報
【特許文献2】特許第2537048号公報
【特許文献3】特表2003-500162号公報
【特許文献4】特公平5-20099号公報
【特許文献5】特表2003-530912号公報
【特許文献6】特開2006-94932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、繊維性材料(繊維で構成された織物、編物、レース、フェルト、不織布等のいわゆる布)に、均一な厚さの金属酸化物の被覆を形成する安価で簡便な方法を提供すること、及びその方法を用いて、金属酸化物が均一に被覆された繊維性材料を提供することにある。本発明のもう一つの目的は、生体組織と直接に結合可能な表面構造を有する結合組織修復材料、及びその結合修復材料の簡便な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、金属アルコキシドを含有する適当量のゾルを繊維性材料に均一に滴下し吸収させた後、前記ゾルを吸収させた繊維性材料をシートで覆い保持することにより、繊維性材料の繊維1本1本の表面に均一なゲル層を形成でき、その結果金属酸化物で均一に被覆された繊維性材料を得ることができること、及び前記方法により繊維性材料の表面を酸化チタン膜で均一に被覆することによって、体内で結合組織と直接結合可能なアパタイトを形成し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する本発明の方法は、金属アルコキシドからなるゾルを繊維性材料に吸収させる工程、前記ゾルを吸収させた繊維性材料を前記ゾルの溶媒が揮発しない状態で保持する工程、熱処理する工程、及び酸処理する工程を有することを特徴とする。
【0010】
金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する本発明のもう一つの方法は、金属アルコキシドからなるゾルを繊維性材料に吸収させる工程、前記ゾルを吸収させた繊維性材料をシートで覆い保持する工程、熱処理する工程、及び酸処理する工程を有することを特徴とする。
【0011】
前記繊維性材料に吸収させるゾルの量は、前記繊維性材料の最大吸収量以下であるのが好ましい。前記吸収させる工程は、ゾルを滴下又は散布することによって行うのが好ましい。
【0012】
前記ゾルは、金属アルコキシド、アルコール、水及び酸からなるのが好ましい。
【0013】
前記シートは、テフロン(登録商標)シート、ポリエチレンシート又はポリエステルシートであるのが好ましい。前記シートで覆い保持する工程は、前記ゾルを吸収させた繊維性材料を、その両面から前記シートで挟み込むように覆うのが好ましい。
【0014】
前記繊維性材料は、模紗組織構造を有する織物であるのが好ましい。
【0015】
前記金属酸化物は、酸化チタンであるのが好ましい。
【0016】
本発明の金属酸化物で被覆された繊維性材料は、前記方法により製造されることを特徴とする。
【0017】
本発明の結合組織修復材料は、前記酸化チタン膜で被覆された繊維性材料からなるのが好ましい。本発明の結合組織修復材料は、酸化チタン膜の表面にさらにアパタイト層が形成されてなるのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
ゾルを繊維性材料に滴下し吸収させることにより、繊維間や編目に液溜まりができず、繊維1本1本の表面に、均一にゾルを被覆することができるとともに、使用するゾルの液量が最低限で済むため、ゾルをほとんど無駄にすることなく利用でき、省資源化や製造コストの削減に寄与できる。また均一な被覆層が形成されるため、繊維表面から被覆層が剥がれ難くなる。また繊維性材料の上からゾルを滴下するだけで被覆が可能なため、工程が非常に簡便であり生産性が高い。
【0019】
本発明の結合組織修復材料は、生体組織と直接に結合可能な表面構造を有することで、生体組織との結合力が強く、また繊維構造体の内部に進入した生体組織が成長して一体化するまでの時間が短くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
[1] 金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する方法
(1) 繊維性材料
繊維性材料とは、繊維で構成された織物、編物、レース、フェルト、不織布等のいわゆる布のことである。繊維としては、天然繊維(綿、絹、麻、ウール等)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル等)又は再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン等)を用いることができる。繊維性材料は目的によって繊維性材料の形態は任意に選択でき、生体組織の浸潤を重視するのであれば模紗組織構造を有する織物(模紗織り)、強度を重視するのであれば平織り、伸縮性を重視するのであれば編物を選択するのが好ましい。特に、結合組織修復材料としては模紗織りであるのが好ましい。
【0022】
繊維性材料は、使用時の力学特性等の基本物性に実質的に影響を与えない程度であれば、被覆する金属酸化物との結合を強くするために、あらかじめ酸素プラズマ、UV照射、放射線の照射、酸又はアルカリによるエッチング、シランカップリング剤による化学的処理、イオン注入等の手段によって、表面の活性化処理を施すのが好ましい。
【0023】
酸素プラズマによる表面処理は、例えば、サムコインターナショナル製plasma polymerization system PD-10Sを使用し、酸素分圧0.2 Torr、ガス流量30 cm/分、陽電極から基材までの距離8〜20 mm、処理時間5〜60秒間の条件で行うのが好ましい。UV照射による表面処理は、例えば、フィルジェン株式会社製UVオゾンクリーナーUV253に付属のUV光源(波長:185 nm+254 nm)を約30分間照射することにより行うのが好ましい。
【0024】
エッチングに使用する酸としては塩酸、硝酸等、アルカリとしてはアルカリ金属イオンを含有する溶液(水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等)が好ましく、濃度は0.1〜5 N、温度は10〜100℃、処理時間は数秒〜数日間の範囲で行うことができる。
【0025】
シランカップリング剤による化学的表面処理は、例えば、0.1〜15重量%の濃度に調節したシランカップリング剤(ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン等)の溶液に基材を浸漬し、基材の物性に悪影響を及ぼさない範囲で乾燥及び熱処理をして行うことができる。
【0026】
(2) 金属酸化物
繊維性材料を被覆する金属酸化物は、ゾル-ゲル法によって形成するのが好ましい。金属酸化物としては、ゾル-ゲル法によるコーティングが適用可能なもの(金属アルコキシドを形成する金属の酸化物)であるのが好ましく、具体的には酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等が好ましく、特に結合組織修復材料としては酸化チタンが最も好ましい。被覆を形成後120℃以下で焼成するのが好ましい。被覆の厚さは2〜10,000 nmであるのが好ましく、4〜5,000 nmであるのがさらに好ましく、5〜1,000 nmであるのが最も好ましい。
【0027】
(3) 金属アルコキシドからなるゾル
金属アルコキシドからなるゾルを繊維性材料に塗布し、金属アルコキシドを加水分解及び重縮合することにより繊維性材料に金属酸化物を形成することができる。金属アルコキシドとしては、2〜4官能性の化合物が使用できるが、4官能性の化合物が高反応性であるため好ましい。金属アルコキシドとしては、アルコキシチタン(例えばテトライソプロポキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソブトキシチタン)、アルコキシ亜鉛(例えばジエトキシ亜鉛、ジ-t-ブトキシ亜鉛)、アルコキシジルコニウム(例えばテトライソプロポキシジルコニウム、テトラ-tert-ブトキシジルコニウム、テトラ-n-ブトキシジルコニウム)、アルコキシタングステン(例えばペンタエトキシタングステン)、アルコキシニオブ(例えばペンタエトキシニオブ)、アルコキシストロンチウム(例えばジイソプロポキシストロンチウム)、アルコキシタンタル(例えばペンタエトキシタンタル)等が挙げられる。特に好ましいのはアルコキシチタンである。
【0028】
金属アルコキシドの加水分解及び重縮合に用いる溶媒は、水及びアルコールの混合溶媒が好ましい。アルコールとしては炭素数1〜6のアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、n-プロパノール、及びイソプロパノールが特に好ましく、メタノールが最も好ましい。水/アルコールのモル比は0.01〜2であるのが好ましく、0.1〜2であるのがより好ましい。水/アルコールのモル比が2超であると加水分解反応が速く進行し過ぎてしまうため好ましくない。0.01未満であると金属アルコキシドの加水分解が十分に起こらない。溶媒/金属アルコキシドのモル比を変化させることにより、金属アルコキシドの重縮合物の重合度を調節することができる。溶媒/金属アルコキシドのモル比は3〜500が好ましく、3〜100がより好ましい。モル比が3未満では重合度が高くなり過ぎて、500超では重合度が低くなり過ぎるため好ましくない。
【0029】
金属アルコキシドの水溶液に、加水分解反応及び重縮合反応を促進するため触媒を添加するのが好ましい。触媒として酸系触媒及び/又は塩基系触媒を用いることができる。酸系触媒は、加水分解反応及び金属アルコキシドが重縮合しオリゴマーが形成される反応を主に促進する。塩基系触媒は、オリゴマー同士がさらに重縮合し架橋度を増加させる反応を主に促進する。酸系触媒としては、塩酸、硝酸及び酢酸が好ましい。塩基系触媒としては、アンモニア、アミン化合物、NaOH及びKOHが好ましい。アミン化合物としては、アルコールアミン、アルキルアミン(メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、n-ブチルアミン、n-プロピルアミン等)が好ましい。触媒/金属アルコキシド等のモル比は1×10-4〜3×10-2が好ましく、3×10-4〜1×10-2がより好ましい。モル比が1×10-4未満では金属アルコキシド等の加水分解反応が十分に起こらず、3×10-2超では触媒効果が飽和してしまう。
【0030】
(4) ゾルを繊維性材料に吸収させる工程
金属アルコキシドからなるゾルを繊維性材料に吸収させることにより、繊維性材料の1本1本の繊維に均一に前記ゾルを被覆することができる。ゾルは滴下又は散布によって繊維性材料に吸収させるのが好ましい。吸収させるゾルの量は繊維性材料の最大吸収量以下であるのが好ましく、繊維性材料1 gあたり0.2〜1 mlであるのが好ましい。ゾルを繊維性の材料に滴下又は散布し自然に浸透させることにより、繊維性材料を構成する繊維間や編目に液溜まりを形成させることなく、繊維1本1本の表面に、均一にゾルを被覆することができる。
【0031】
前記繊維性材料の最大吸収量は、繊維性材料がゾルを保持することのできる最大量のことであり、ゾルを浸透させた直後の繊維性材料を持ち上げたときに繊維性材料からゾルが滴り落ちることのない液量の限界量をゾルの最大吸収量とする。
【0032】
このような方法によりゾルを繊維性材料に吸収させることにより、使用するゾルは最低限の液量で済むため、ゾルを全く無駄にすることなく利用でき、省資源化や製造コストの削減に寄与できる。(例えば、ディップコーティングでは大部分のゾルは利用されない。)また、繊維性材料の上からゾルを滴下するだけで被覆が可能なため、操作が非常に簡便であり、生産性が非常に高い(例えば、ディップコーティングの場合、低速(1cm/分程度)で材料の引き上げを行う必要があるため、著しく生産性が悪い。)。また、ゾルを連続的に調製しながら供給し滴下することができるため、いつも一定のゾル条件で被覆することができ、製品の品質が向上する。
【0033】
さらに、コーティングの密着度を向上させるために表面改質処理を施した材料を用いた場合、ディップコーティングのように材料をゾルに浸漬する方法では、材料表面に生じた活性基等の影響で容器に収容されるゾルが酸化し変質してしまう。特に繊維性の材料はその表面積が大きいため顕著である。従って、コーティングの品質をある一定の水準に保つためには、ゾルを繰り返し使用することができないので、ディップコーティングのような方法では無駄が多く、生産性が著しく低下する。材料にゾルを滴下し浸透させる本願の方法では、常に新しい、一定の品質のゾルを材料に供給するため、ゾルの変質の問題が生じない。
【0034】
(5) ゾルの溶媒が揮発しない状態で保持する工程
ゾルを吸収させた後の繊維性材料は、ゾルの溶媒が揮発しない状態で保持する。ゾルの溶媒を揮発させないことにより、繊維表面の活性基と金属アルコキシドが加水分解して生成した水酸化物とが反応し、金属酸化物が繊維表面に固定される。繊維に吸収させたゾルの溶媒が速やかに揮発してしまった場合、このような固定化反応が十分に進行しない。さらに急激に乾燥することで、金属酸化物層にひび割れが生じる。ゾルの溶媒は、完全に揮発しない状態にする必要はなく、溶媒の揮発を遅らせることができ、前記金属酸化物の繊維表面への固定化が促進する効果が得られればよい。
【0035】
ゾルの溶媒が揮発しない状態で保持するには、繊維性材料を、溶媒を揮発させたときと同じ雰囲気に置くことにより可能である。例えば、ゾルの溶媒と同じ組成の液の蒸気で満たした密閉できる箱内に、前記ゾルを吸収させた後の繊維性材料を置くことによりゾルの溶媒を揮発させない状態にすることができる。ゾルの溶媒が揮発しない状態で保持する時間は、1分〜24時間が好ましく、5分〜1時間がより好ましく、約10分が最も好ましい。保持する温度は、4〜40℃であるのが好ましく、10〜30℃であるのがより好ましい。
【0036】
簡易的な方法として、繊維性材料をシートで覆うことも金属酸化物を繊維表面に固定させるのに有効である。この場合、溶媒を揮発しにくくすることができ、前記の反応が速やかに進行するようになる。ゾルを吸収させた後の繊維性材料を、速やかにテフロンシート、ポリエチレンシート、ポリエステルシート等のゾルの溶媒を透過させないシートで覆い保持する。シートとしては、テフロンシートが最も好ましい。シートの大きさは、ゾルを吸収させた繊維性材料よりも大きい必要がある。繊維性材料を、その両面から前記シートで挟み込むように覆うのが好ましい。シートで覆い保持する時間は、1分〜24時間が好ましく、5分〜1時間がより好ましく、約10分が最も好ましい。保持する温度は、4〜40℃であるのが好ましく、10〜30℃であるのがより好ましい。
【0037】
(6) 加熱処理工程
ゾルを吸収させた繊維性材料は、熱処理を行うことでゾルの残存溶媒や金属アルコキシド加水分解物の水酸基等が除去され、金属酸化物同士又は金属酸化物と繊維との間の結合が強くなり密着強度が高まる。加熱処理温度は50℃以上、繊維の融点未満が好ましい。加熱処理温度が繊維の融点以上であると、繊維が融解し繊維同士が融着する。加熱処理温度が50℃を下回ると、充分な密着強度の向上効果が得られない。加熱処理温度は60〜100℃がより好ましく、約80℃が最も好ましい。加熱温度が高温になり過ぎると、その後の酸処理での結晶化が十分起こらなくなり、さらに高温にするとゲルの炭化(含有するアルキル基の炭化)が起こる。加熱処理時間は、加熱処理温度にもよるが、10分〜24時間が好ましい。時間が短すぎるとゲルの密着度が不十分になる。
【0038】
(7) 酸処理工程
酸処理は、熱処理後の繊維性材料を酸水溶液に浸漬することによって行う。酸処理をすることにより被覆された金属酸化物(酸化チタン等)の結晶化が進む。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等が好ましく、塩酸が最も好ましい。酸の濃度は、0.001〜10 Nが好ましく、0.002〜5 Nがより好ましく、0.01〜2 Nがさらに好ましい。酸処理は10〜30℃の温度で行うのが好ましいが、処理時間を短縮したい場合は40〜100℃に加熱しても良い。処理時間は、1時間〜1ヶ月が好ましい。最適な酸処理条件は、0.1 N塩酸で80℃、24時間の処理である。
【0039】
[2] 結合組織修復材料
(1) 繊維性材料
結合組織修復材料に用いられる繊維性材料は、熱可塑性高分子繊維からなるものが好ましく、融点60℃以上、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上の合成高分子で繊維化されたものが好ましい、合成高分子としては、ポリエステル系高分子、ポリオレフィン系高分子、ポリアミド系高分子、脂肪族ポリエステルアミド系高分子、エチレン-酢酸ビニル系高分子等の高分子、またこれらを混合した高分子が挙げられる。特に繊維化した場合の物性(強度、伸縮性、寸法安定性等)、製造コスト等の面からポリエステル系高分子が好ましい。ポリエステル系高分子としては、芳香族ポリエステル系重合体、脂肪族ポリエステル系重合体等を用いるのが好ましく、ポリエチレンテレフタレートを主たる成分とする重合体が好ましい。
【0040】
結合組織修復材料に用いられる熱可塑性高分子繊維は、前記繊維で形成された繊維性材料に体の動きに追随できる柔軟性が必要とされるため、マルチフィラメントが好ましく、単繊維繊度が0.5〜20デシテックスが好ましく、2〜15デシテックスがさらに好ましい。引張強度は3 cN/デシテックス以上が好ましく、さらには5 cN/デシテックス以上のものが好ましい。単繊維繊度が0.5デシテックス未満であると得られる繊維性材料の機械的特性が低下したり、溶融紡糸時に紡糸ノズル面で吐出されたフィラメントが糸曲がりを生じる等繊維の製糸性が低下したりする。一方、単繊維繊度が20デシテックスを超えると、得られる繊維性材料が粗硬な地合いのものとなる。マルチフィラメントは必要により撚りがかかっていてもよい。
【0041】
結合組織修復材料に用いられる繊維性材料は、前述の熱可塑性高分子繊維を経糸と緯糸に使用して織編したものが好ましい。織編物としては、例えば、平織り、多軸織り、もじり織り、絡み織り、ラッセル編等、様々な織編組織で織編されたもの等が挙げられる。特に、織編物の長軸方向の引張に対して織編組織の目崩れが少なく、伸張時に大きな形状変化がなく、生体組織に近い伸びと柔軟性をも併せ持つものが好ましい。このような織編組織を有する織編物として、模紗組織構造が挙げられる。特に、6本模紗組織、8本模紗組織の織物が好ましい。このような模紗組織構造を有する織物は、生体組織が進入しやすく、かつ進入した生体組織の成長を促進することが期待される。模紗組織織物の縦密度及び緯密度は、模紗組織内部にまで生体組織の進入が容易な密度であればよく、それぞれ5〜100本/吋が好ましく、10〜90本/吋がさらに好ましく、15〜70本/吋が最も好ましい。
【0042】
(2) 酸化チタン膜
結合組織修復材料は、生体活性なアパタイト形成能を有する酸化チタン膜を、本発明の方法により前記織編物の表面に被覆してなる。生体活性なアパタイトとは、生体骨のアパタイトと構造及び組成が類似で、サイズがミクロンオーダー又はそれ以下であるアパタイトのことである。アパタイト形成能を有する酸化チタン膜とは、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含有する水溶液を接触させることによって、酸化チタン膜の表面に生体活性なアパタイトを形成することが可能な膜のことである。なお、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含有する水溶液としては、各イオンの濃度がアパタイトに対して過飽和であり、体液に類似したpHであるのが好ましく、例えば、J.Biomed.Mater.Res.24、721−734(1990)に示されているものが挙げられる。
【0043】
酸化チタン膜は、本発明の方法によって織編物の表面に形成する。つまり、金属アルコキシドとしてアルコキシチタンを使用したゾルを調製し、織編物に滴下又は散布して吸収させ、シートで保持した後、加熱及び酸処理することにより酸化チタン膜を形成する。アルコキシチタンは、化学式TiR'n(OR)4-n[式中のR及びR'はアルキル基、nは0〜3の整数である。RとR'とは同一であってもよい。RとR'とがそれぞれ複数の場合、それぞれが同一であっても異なっていてもよい。]で表される化合物である。R及びR'であらわされるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。さらに、式中のRの一部が水素又は炭素数2〜10のアルケニル基であってもよく、アルケニル基の例としては、ビニル基、イソプロペニル基、ブタジエニル基、2−メチルアリル基等が挙げられる。式中のR'は、エポキシ基又はグリシジル基を含んだ置換基であってもよい。
【0044】
アルコキシチタンの好ましい具体例としては、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン等が挙げられる。これらアルコキシチタンは単独で使用しても良いが、2種類以上を混合して用いても良い。
【0045】
溶媒としては、アルコキシチタンを溶解しうる溶媒であればいずれでもよく、水とアルコールの混合溶媒が取り扱う上で好ましい。アルコールとしては、乾燥による除去が容易な比較的低沸点のものが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられ、メタノールが最も好ましい。また溶媒には、加水分解及び重縮合を促進するために塩酸、硝酸等の酸を添加してもよい。
【0046】
アルコキシチタンを含有する溶液(ゾル)中の水の量は、アルコキシチタン1モルに対して1〜4.5モル、アルコールの量は5〜40モルの範囲が好ましい。アルコキシチタンの含有量が多くなると溶液が粘稠となり、織編物の組織構造内部への浸透が難しくなると同時に、表面に形成される酸化チタン膜に厚み斑が生じる。またアルコキシチタンの含有量が少なすぎると、酸化チタン膜は希薄で緻密性に乏しくなる。
【0047】
織編物は、ゾルを吸収させた後できるだけすぐにテフロン等のシートで覆い保持する。保持は、10〜30℃で5分〜1時間行うのが好ましい。保持後の織編物は、50〜120℃で10分〜24時間熱処理した後、酸水溶液に浸漬することによって酸処理する。酸水溶液の温度は、生体活性なアパタイト形成能を有する酸化チタン膜への変換効率を向上させるため、生体活性材料に実質的な悪影響がない範囲で高いのが好ましい。具体的には、40℃〜100℃、好ましくは55℃〜100℃、さらに好ましくは60℃〜100℃である。酸水溶液としては、0.01〜2Nの塩酸、硝酸等の水溶液が好ましい。酸処理は、織編物を酸水溶液に浸漬して行い、浸漬期間は1時間〜1ヶ月の範囲で適宜選択する。
【0048】
以上のような方法により作製された結合組織修復材料は、生体内で体液と接触して材料表面に生体活性なアパタイトを早期に形成し、これらアパタイトからなる層が材料の織物組織内部に進入する生体組織と直接結合することで、移植部位の組織と早期に一体化する。
【0049】
上記のような酸化チタン膜を被覆した結合組織修復材料の表面に、さらにアパタイト層を形成するのが好ましい。酸化チタン膜を被覆した織編物を、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含有する水溶液に接触させることにより、繊維表面に生体活性なアパタイト層を形成することができる。織編物を前記水溶液に接触させる方法としては、例えば、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含有する水溶液に酸化チタン膜が被覆された織編物を浸漬する方法で行うことができる。浸漬時間は6時間から1週間、浸漬温度は生体温度に近い36.5℃前後が好ましい。
【0050】
カルシウムイオン及びリン酸イオンを含有する水溶液中の各イオン濃度は、アパタイトに対して過飽和な濃度であることがアパタイトの形成を促進する上で好ましく、水溶液のpHは、生体活性なアパタイトを形成するために体液に近いpHが好ましい。このようなカルシウムイオン及びリン酸イオンを含有する水溶液としては、ヒトの体液にほぼ等しい無機イオン濃度とpHとを有する擬似体液が好ましく、例えば、J. Biomed. Mater. Res. 24、721-734(1990)に記載されているものが挙げられる。
【0051】
織編物表面に形成される生体活性なアパタイト層の形成は、薄膜X線回折(TF-XRD)及び電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)によって確認することができる。
【実施例】
【0052】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0053】
実施例1
日本エステル社製のポリエチレンテレフタレート系長繊維1100デシテックス200フィラメントを経糸及び緯糸として用い、筬密度12.5羽/吋の筬に1羽3本通しと5羽空羽の繰り返しで通し、緯密度を42本/吋として、図1に示す6本模紗組織で製織した。得られた織物は、無水エタノール100 mlに50℃の条件で30分間浸漬し、さらに同温度条件で0.4N水酸化ナトリウム溶液40 mlに30分間浸漬した後、洗浄水が中性になるまで蒸留水で洗浄を行い、再度無水エタノール100 mlに5分間浸漬して織物表面の水分をできるだけ除き、真空乾燥を行った。この織物にフィルジェン株式会社製UVオゾンクリーナーUV253に付属のUV光源を用いて、UV光(波長:185 nm+254 nm)を30分間照射し表面改質処理を行った。
【0054】
5 cm×20 cm(=100 cm2)に裁断した前記洗浄及び表面改質処理済みの織物をテフロンシート(300×300 mm、厚さ2 mm)上に置き、織物を100の領域(等面積)に分け、それぞれの領域にチタニアゾル10μlずつ滴下(合計で1 ml)した。チタニアゾルは毛管現象により、前記織物の全体に均一に広がった。チタニアゾルの組成は、Ti(OC3H7)4:H2O:C2H5OH:HNO3=1:4:100:0.1(モル比)であった。チタニアゾルは、前記組成に調液した後すぐに密閉容器に保管し、24時間以内に使用した。
【0055】
ゾルを十分に浸透させ繊維表面に固着させるために、図2に示すように、ゾルを滴下した直後に織物1の上にテフロンシート2(300×300 mm、厚さ2 mm)で覆いをし、織物1を上下からテフロンシート2,2で挟み込んだ状態で、10分間室温(25℃)で保持した。なおテフロンシート2が織物1に密着しないように、厚さ1 mmのテフロン製のスペーサー3を2枚のテフロンシート2,2間に入れた。ゾルは織物にほとんど全てが吸収され、織物を引き上げた後のテフロンシートには、液状のゾルはほとんど残らなかった。この織物を80℃で24時間熱処理した後のSEM写真から、織物の繊維1本1本に均一にチタニアゲルが被覆されているのが分かる(図3を参照)。さらにこの織物を80℃の0.1 N塩酸に24時間浸漬し酸処理を施すことにより、繊維表面が均一に酸化チタン粒子で被覆された材料を得た。この材料のSEM写真(図4)から明らかなように、本発明の方法によって得られた金属酸化物で被覆された繊維性材料は、繊維の1本1本に酸化チタン粒子が均一に被覆されており、ひび割れ等は観察されなかった。
【0056】
実施例2
チタニアゾルの組成を、Ti(OC3H7)4:H2O:C2H5OH:HNO3=1:1:50:0.1(モル比)とした以外は実施例1と同様にして、繊維表面が均一に酸化チタン粒子で被覆された材料を得た。
【0057】
実施例3
チタニアゾルの組成を、Ti(OC3H7)4:H2O:C2H5OH:HNO3=1:1:100:0.1(モル比)とし、織物を100の領域(等面積)に分け、それぞれの領域にチタニアゾル5μlずつ滴下(合計で0.5 ml)した以外は実施例1と同様にして、繊維表面が均一に酸化チタン粒子で被覆された材料を得た。
【0058】
実施例4
チタニアゾルの組成を、Ti(OC3H7)4:H2O:C2H5OH:HNO3=1:1:100:0.1(モル比)とした以外は実施例1と同様にして、繊維表面が均一に酸化チタン粒子で被覆された材料を得た。
【0059】
実施例5〜7
織物を挟み込む素材として、テフロンシートの代わりに、ポリエチレンシート(実施例5)、ポリエステルシート(実施例6)又はポリ塩化ビニリデンシート(旭化成ライフ&リビング株式会社製「サランラップ(登録商標)」)(実施例7)を使用した以外は実施例1と同様にして、繊維表面が均一に酸化チタン粒子で被覆された材料を得た。なお、これらの実施例では、実施例1で使用したようなスペーサーは使用しなかった。ポリエチレンシート、ポリエステルシート又はポリ塩化ビニリデンシートを使用した場合も、実施例1と同様にゾルはほとんど全てが織物に吸収され、織物を引き上げた後の各シートには、液状のゾルはほとんど残らなかった。また、繊維表面は均一に酸化チタン粒子で被覆されていた。
【0060】
実施例8
実施例1で作製した酸化チタン粒子で被覆された織物を、表1に示した組成の擬似体液(pH7.40)120 mlに36.5℃で3日間浸漬し、アパタイト形成試験を行った。その後、織物を擬似体液から取り出して蒸留水で洗浄後、乾燥し、織物の表面構造をSEM観察、TF-XRD解析及びラマン分光解析を行った。
【0061】
【表1】

【0062】
織物表面のSEM観察結果(図5)、TF-XRD解析結果(図6)及びラマン分光解析結果(図7)から、生体活性なアパタイトが酸化チタン粒子で被覆された織物表面に形成されていることが確認された。本願発明の酸化チタン粒子で被覆された織物(繊維性材料)は、結合組織修復材料として有効であることが確認できた。
【0063】
比較例1
実施例1と同様にして得られた、5 cm×20 cm(=100 cm2)に裁断した表面改質処理済みの織物を、チタニアゾル[Ti(OC3H7)4:H2O:C2H5OH:HNO3=1:1:100:0.1(モル比)]に25℃で24時間浸漬し、1.2 cm/分の速度で引き上げて、ディップコーティングにより織物にゾルを塗布した。引き上げた織物は室温(25℃)で乾燥させた後、80℃で24時間熱処理し(SEM写真図8)、さらに80℃の0.1 N塩酸に24時間浸漬し酸処理を施すことにより、繊維表面が酸化チタン粒子で被覆された材料を得た。図8から明らかなように、ディップコーティングによってゾルを塗布した場合、繊維間に過剰なゲルが存在するのが分かる。
【0064】
比較例2
実施例1において、チタニアゾル滴下した後の織物を、テフロンシートで覆いをしないで室温(25℃)で乾燥させた後、80℃で24時間熱処理し(SEM写真図9)、さらに80℃の0.1 N塩酸に24時間浸漬し酸処理を施すことにより、繊維表面が酸化チタン粒子で被覆された材料を得た。図9から明らかなように、ゾルを吸収させた繊維をシートで覆わずに乾燥させた場合、ゾルが急速に乾燥するためゲル化が急激に起こり、ゲルの収縮が不十分で亀裂が生じることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施例1で用いた織物の模紗組織を示す図である。
【図2】本発明の実施例1でチタニアゾルを吸収させた繊維をテフロンシートで挟んでいる様子を示す(a)正面図及び(b)断面図である。
【図3】本発明の実施例1でチタニアゾルを吸収させた織物表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図4】本発明の実施例1で得られた酸化チタン粒子で被覆された織物表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】本発明の実施例8で得られた、酸化チタン粒子で被覆された織物表面に形成されたアパタイト層の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真である。
【図6】本発明の実施例8で得られた、酸化チタン粒子で被覆された織物、及びその表面に形成されたアパタイト層(HA)の薄膜X線回折パターン(TF-XRD)を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例8で得られた、酸化チタン粒子で被覆された織物、及びその表面に形成されたアパタイト層(HA)のラマン分光スペクトルを示すグラフである。
【図8】比較例1において、チタニアゾルをディップコートし、熱処理を施した後の織物表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図9】比較例2において、チタニアゾル滴下し、熱処理を施した後の織物表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する方法であって、金属アルコキシドからなるゾルを繊維性材料に吸収させる工程、前記ゾルを吸収させた繊維性材料を前記ゾルの溶媒が揮発しない状態で保持する工程、熱処理する工程、及び酸処理する工程を有することを特徴とする金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する方法。
【請求項2】
金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する方法であって、金属アルコキシドからなるゾルを繊維性材料に吸収させる工程、前記ゾルを吸収させた繊維性材料をシートで覆い保持する工程、熱処理する工程、及び酸処理する工程を有することを特徴とする金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記繊維性材料に吸収させるゾルの量は、前記繊維性材料の最大吸収量以下であることを特徴とする金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法において、前記吸収させる工程は、ゾルを滴下又は散布することによって行うことを特徴とする金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法において、前記ゾルは金属アルコキシド、アルコール、水及び酸からなることを特徴とする金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する方法。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれかに記載の方法において、前記シートがテフロン(登録商標)シート、ポリエチレンシート又はポリエステルシートであることを特徴とする金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する方法。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれかに記載の方法において、前記シートで覆い保持する工程は、前記ゾルを吸収させた繊維性材料を、その両面から前記シートで挟み込むように覆うことを特徴とする金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法において、前記繊維性材料が模紗組織構造を有する織物であることを特徴とする金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法において、前記金属酸化物が酸化チタンであることを特徴とする金属酸化物で被覆された繊維性材料を製造する方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法によって得られた、金属酸化物で被覆された繊維性材料。
【請求項11】
請求項9に記載の方法によって得られた、酸化チタン膜で被覆された繊維性材料からなる結合組織修復材料。
【請求項12】
請求項11に記載の結合組織修復材料において、酸化チタン膜の表面にさらにアパタイト層が形成されてなる結合組織修復材料。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−95812(P2010−95812A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266197(P2008−266197)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(591227516)
【Fターム(参考)】