説明

金属酸化物球状粒子の製造方法

【課題】2種以上の金属元素が均一に分散した金属酸化物球状粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】水溶液中に金属酸化物粉体が懸濁しているスラリーに、尿素またはヘキサメチレンテトラミンをあらかじめ添加した分散相を、界面活性剤を含む有機溶媒である連続相中に分散させて油中水型エマルション(W/Oエマルション)を形成させ、加熱することにより熱分解して水中の水素イオン濃度を変化させることによって、分散相中の粉体を凝集・固化させたのち、連続相を除去して乾燥し、焼成して金属酸化物球状粒子を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕用セラミックスビーズ、ベアリング用ビーズ、フィラー用ビーズ、高速液体クロマトグラフィー用カラムの充填剤、トナー又は触媒などの、金属酸化物球状粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
球状の金属酸化物微粒子を製造する方法として、従来、予め大きい粒子を製造して粉砕する製造方法、細かく粉砕した粉をスプレードライで噴霧して凝集・乾燥させた後に焼成して粒子化する方法が知られている。またその他にも、金属酸化物ゾルのW/O型ゾルエマルションを形成させた後、塩基性物質を混合してゾルをゲル化させ、さらに加熱してゲル中の水を系外に除去して無機球状微粒子を製造する方法(特許文献1参照)や金属塩の原料溶液中にヘキサメチレンテトラミンを混合し、加熱したオイル中に放出し、微小な球にすると同時に、ヘキサメチレンテトラミンや尿素の熱分解によるアンモニアの発生により塩基性金属化合物を含んだゲルや結晶を形成させ、その後に洗浄、焼成する方法も知られている(特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2678004号公報
【特許文献2】特開平10−73691号広報
【特許文献3】特開2001−163619号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した金属酸化物球状粒子の製造方法において、粉砕による方法では、製造物は形状及びサイズが不均一であるという課題がある。スプレードライによる方法では、中空の粒子ができやすく、また、焼成時の破壊や他の粒子との「くっつき」により、球状の微粒子は得られるものの、その歩留まりが低いという課題がある。金属酸化物ゾルのW/O型ゾルエマルションを形成させ、塩基性物質を混合してゾルをゲル化させ、加熱してゲル中の水を系外に除去する方法では、粒子サイズが非常に小さく、十ミクロンから数百ミクロンの微粒子を得ることができないという課題がある。そして金属塩の原料溶液中にヘキサメチレンテトラミンを混合し、加熱したオイル中に放出し、微小な球にすると同時に、ヘキサメチレンテトラミンや尿素の熱分解によるアンモニアの発生により塩基性金属化合物を含んだゲルや結晶を形成させ、その後に洗浄、焼成する方法では、溶液中の金属塩はアンモニアの発生により水酸化物となってゲル化するが、2種以上の金属成分が有る場合には金属塩が均一に分散せず、均一に元素が分散した球状粒子を得ることが困難であるという課題がある。
【0005】
そこで本発明の目的は、二種以上の金属が均一に混合した、粒子サイズが十から数百ミクロン酸化物球状粒子を効率よく得る製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するためになされた本発明は、水溶液中に金属酸化物粉体を懸濁したスラリーに、加熱によって水素イオン濃度を変化させるpH調整剤をあらかじめ添加して調製した分散相を、界面活性剤を含む有機溶媒である連続相中に分散させて油中水型エマルションを形成させた後、このエマルション溶液を加熱することにより分散相中で水溶液の水素イオン濃度を変化させることによって、分散相中の金属酸化物粉体を凝集・固化させることを特徴とするセラミック微粒子の製造方法である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明では、製造しようとする金属酸化物球状粒子を構成する二種以上の金属酸化物が均一に固溶した金属酸化物粉体(以下「微粉末」と記載することがある)を用いることが好ましい。特に目的とする酸化物球状微粒子の主なる結晶構造や結晶系が、材料とする微粉末を構成する主なる金属酸化物単体の結晶系や結晶構造の変化によって変化する場合には、あらかじめ添加物を添加して構造を安定化させておくとよい。例えばジルコニア(ZrO)は、室温では単斜晶系であるが、温度を上げていくと正方晶、及び立方晶へと結晶構造が相転移する。この相転移は体積変化を伴うため、焼結体は昇降温を繰り返すことによって破壊に至ることがある。しかし、イットリウムやカルシウム、ハフニウム、マグネシウムなど希土類酸化物を添加することで室温での結晶構造を安定な立方晶とし、温度変化による破壊を抑制することが可能になる。そこで、主なる結晶構造がジルコニアとなる金属酸化物球状粒子を目的とする場合は、酸化イットリウムを添加して、均一にイットリアを分散固溶させることで室温下でのジルコニアの結晶構造を安定化させ、高強度で安定した焼結体することが例示できる。また、結晶成長促進剤となるような金属成分については、固溶微粉末とは別に、分散相中に酸化物や塩として添加してもよい。
【0008】
上記使用する微粉末は、目的とする金属酸化物球状微粒子の粒子径に比較して十分小さいことが好ましい。そのような小さなものを得るためには、例えば、固溶した酸化物結晶を粉砕して使用することが例示できる。
水溶液に金属酸化物微粉末を添加したスラリーの濃度は、ある程度濃いほうが良いが、濃すぎると取り扱いが困難であり、粘度も増加することから、2から20vol%が好ましい。またスラリー濃度が不均一であると、製造される金属酸化物球状粒子の粒径が所望のものとは異なる、不均一な粒子となる、等が生じる可能性が高くなるため、スラリーは、微粉末が均一に分散するように十分に撹拌等することが好ましい。
【0009】
本発明で使用する分散相は、当該スラリーに、加熱によって水素イオン濃度を変化させるpH調整剤を添加したものである。pH調整剤は、例えば尿素やヘキサメチレンテトラミンなど、加熱により分解し、アンモニアを発生することで分散相中のpHを大きくすることができるpH調節剤であることが好ましい。アンモニアは凝集した酸化物球状粒子中に金属不純物として取り込まれることが無く、粉砕や分離剤用途に用いる時、被処理物の汚染を抑制することができるからである。なお、スラリーとは、一般的には液体中に細かな固体粒子が安定的な状態で混合し、濃厚に懸濁した水溶液を示すが、本明細書においてはpH調整剤等を含んだ微粉末含有水溶液もスラリーに含むものとする。
【0010】
pH調整剤は、pHを変化させることで金属酸化物微粉末の凝集を引き起こすものである。pH調整剤の添加量は、調整した水溶液のpHから金属酸化物微粉末の表面電位(ゼータ電位)がゼロになるような等電点にpHに変化させることが可能な量を添加することが好ましい。本発明ではスラリーのpHを上げて凝集を引き起こさせるが、加熱する前(pH調整剤のpH調整機能が働く前)の状態においてスラリーの分散性が損なわれない程度にpHが高いことが好ましい。凝集させるまでのpH変化を小さくすることによって調整剤添加量を低減し結果的にスラリー中の不純物量を抑制して焼成により高強度で安定した焼結体を得るためである。なお、pH調整剤の添加によって油中水型エマルション(W/Oエマルション)を形成する前に分散相中で凝集が起こる可能性がある場合には、酸などを添加することによってpHを低く調整したり、等電点となるようなpHから離れるように調整することが好ましい。スラリーの種類や濃度にもよるが、例えばスラリーのpHを5から7にすることで、わずかな濃度の変化で水素イオン濃度をアルカリ性側であるpH7以上にすることが可能となり、好ましい。
【0011】
以上のようにして調製した分散相を、界面活性剤を含む有機溶媒である連続相中に分散させて油中水型エマルション(W/Oエマルション)を形成させる。ここで使用する有機溶媒は1種の有機溶媒であっても、数種類の有機溶媒を混合した溶媒であっても、水溶液とのエマルションを形成するものであればよく、好ましくはその溶解度(数種類の有機溶媒を混合した溶媒である場合には、当該混合溶媒としての溶解度)が0から10g/1000mlである有機溶媒である。具体的に、オクタン、デカン、ノナン、灯油、キシレン、トルエン、クロロベンゼン等の炭化水素類や、酢酸ブチル等のエステル類、アルコール類、エーテル類等を用いることができる。また有機溶媒は、後に加熱操作を行うことから沸点が高いものが良く、沸点が水より高い100℃以上の溶媒であることが好ましい。
【0012】
界面活性剤は、所望する径のW/Oエマルションを安定して得ることができるものであればよく、単一種類であっても、複数種類のものの混合物であっても良い。具体的には、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類や、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸モノエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル類等を用いることができる。ナトリウム等の、金属酸化物球状粒子に含ませたくない金属元素を含む界面活性剤も使用することができるが、洗浄が不十分であると当該金属元素が残留する可能性が有るため、これらを使用する場合は十分な洗浄を行うことが好ましい。界面活性剤は、分散相を分散させる前に連続相に添加されていれば良く、またその添加量は使用する界面活性剤の種類、分散させる分散相等との関係で、例えば予備的な実験を実施して適宜決定することができる。界面活性剤は、連続相である有機溶媒に添加する。これにより、分散相に添加することに比較して、分散相内部の不純物低減やスラリー濃度の低下の抑制を効果的に行うことができる。なお界面活性剤は有機相に添加することから油溶性であることが好ましく、指標とされるHydrophile−Lipophile Balance(HLB値)は6以下であることが好ましい。
【0013】
本発明により金属酸化物球状粒子を効率良く得るためには、連続相としてポリグリセリンエステル(界面活性剤)を含むエーテル類を使用することが特に好ましい。この組み合わせによれば、ポリグリセリンエステル(界面活性剤)を含むソルビタンエステル類を連続相として使用した場合にに比較して、脱離する微粉末がより少なくなって高い収率を達成できるからである。
【0014】
分散相を移動相に分散させることにより、W/Oエマルションを形成する。その形成に当たっては、ホモジナイザーによるホモジナイズ、攪拌羽根による攪拌、均一径を持った膜の通過、交差する微小流路でのせん断、マイクロチャネルを通過させるなど、公知の方法を使用して、W/Oエマルションの液滴の大きさが10ミクロンから数百ミクロンの所望の粒子径となるように調節すればよい。
【0015】
前記したエマルションの調整方法の中でも、微小流路(以下単に「流路」と記載することがある)を使用する方法は、特に好ましいものとして例示できる。微小流路による調整方法は、ほぼ球状のW/Oエマルションであって、所望の大きさ(粒径)のものを、一定の粒径分散度内に調整することが可能だからである。なお粒径分散度とは、粒径の標準偏差を粒径の平均値(以下、平均粒径という。)で割った値であり、本発明において粒径分散度が良いとは、粒径分散度が15%未満であることをいう。
【0016】
微小流路としては、例えば図1に示すような微小流路構造体(1)に形成された微小流路(2)を例示できる。この例では、図2に示すように、微小流路基板(5)上に微小流路(2)が形成され、微小流路基板の微小流路が形成された面にカバー体(4)を接合して微小流路構造体としている。また、微小流路構造体には流体を導入するための1以上の流体導入口(6)と1以上の流体排出口(3)を配置し、流体導入口と流体排出口は、微小流路構造体内部で微小流路と連通している。なお、流体導入口、流体排出口は、カバー体の対応する位置に設けた直径数mm程度の小穴である。
【0017】
微小流路の幅は、1μm〜500μm、好ましくは5μm〜200μmであり、流路の深さは0.1μm〜200μm、好ましくは1μm〜50μmであり、流路の長さは、1μm〜50cm、好ましくは10μm〜5cmである。微小流路を有する微小流路基板は、例えばガラスや石英、セラミックス、シリコン、あるいは金属や樹脂等の基板材料を、機械加工やレーザー加工、エッチングなどにより直接加工することによって製造することができる。また、基板材料がセラミックスや樹脂の場合は、流路形状を有する金属等の鋳型を用いて成形することで製造することもできる。カバー体と微小流路基板は、基板材料がセラミックスや金属の場合、ハンダ付けや接着剤を用いたり、基板材料がガラスや石英、樹脂の場合、百度〜千数百度の高温下で荷重をかけて熱接合したり、基板材料がシリコンの場合、洗浄により表面を活性化させて常温で接合させるなど、それぞれの基板材料に適した接合方法により接合することができる。なお、本発明を微量流路で実施する場合は、前述したような微小流路構造体を2以上重ねてもよい。このような構成とすることで、金属酸化物球状粒子を大量に製造することができる。
【0018】
本発明において微小流路を使用する場合には、エマルション調整に必要な分散相と連続相を微小流路に供給し、微小流路内で連続相中に分散相を導入してエマルションの調整を行えば良い。
【0019】
エマルション形成後には、エマルションを含む溶液(移動相)を加熱することにより、エマルションを形成した分散相中でpHを変化させて(イオン濃度を変化させて)凝集を生じさせ、金属酸化物球状粒子を得る。加熱は移動相(有機溶媒)に対して行うが、加熱温度としては、反応速度が遅くなるのを避けるため高いほうがよいが、連続相として用いる有機溶媒の沸点以下であることが好ましい。加熱時間は、加熱温度や原料、水素イオン濃度調整剤の濃度により適宜決定すれば良いが、通常、数分から数十日の範囲で決定することができる。加熱方法としては、ヒーター、光、電磁波など、W/Oエマルションである分散相内を加熱出来れば特に制限されるものではない。加熱は、W/Oエマルションを形成した時に用いた槽などの容器を用いれば良いが、凝集した金属酸化物球状粒子を破壊しない範囲で撹拌することが好ましい。なおエマルションの調整を微小流路で行う場合には、微小流路中や微小流路に接続したチューブ内で送液しながら加熱する方法が、比重差の大きな連続相と分散相により形成したエマルションの形状を壊さないようにする上で好ましい。
【0020】
W/Oエマルション中の凝集した金属酸化物粒子を破壊しない撹拌方法としては、容器内で撹拌翼等を回転させて液体に流れを与える機械的撹拌、偏心モーターや打撃等により容器に直接振動を与えて内部の液体に流動を起こさせる直接撹拌、圧電素子等の振動子を用いる音波・超音波撹拌、容器内の液体に磁場あるいは電場又はその両者を印加した場合に発生する電磁力等を利用した電磁撹拌、液体の自由表面、2液相界面に存在する表面張力又は界面張力勾配によって発生するマランゴニ対流を利用したマランゴニ撹拌、槽回転式撹拌等容器をモーター等で回転させる重力撹拌、溶液を容器内に噴射して内部の液体に流動を起こさせる噴出撹拌、ガスを内部の液体に吹き込み、気液混相流の流れの撹乱効果とガスのエアリフト作用による対流循環効果を利用して内部液体に流動を起こさせるガス吹き込み撹拌等を例示できる。特に、W/Oエマルションを形成した時に用いた槽などの容器を、たとえば振動モーター等で容器全体を振動させることが可能な台に乗せ、微小な振動を直接容器全体に加えながら撹拌する方法、直接容器に固定振動数の打撃を加えるような機器を用いて撹拌する方法、例えば回転モーター等で容器全体をゆっくり回転させることで流動を起こさせる重力撹拌方法によれば、W/Oエマルションを加熱してW/Oエマルション中から水分を除去する際に、接触している2以上の凝集した金属酸化物球状粒子同士が合一して1つの凝集体になることを防止する上で好ましい。
【0021】
連続相である有機溶媒の沸点が100℃以上であれば、溶媒の温度を100℃以上にすることで、凝集した金属酸化物球状粒子から更に水分を除去することが可能となる。また有機溶媒に水溶液との相溶性があるとW/Oエマルションの形成が困難であるが、加熱により凝集を生じさせた後は、連続相である有機溶媒に対し、水が溶解するような溶媒を添加して、水を除去することも可能である。またW/Oエマルションを形成した時に用いる槽などの容器として減圧することが可能な容器を使用することで、加熱時に減圧を行ってW/Oエマルション内の水分をより低い温度で除去することが可能となる。
【0022】
以上のようにして製造された金属酸化物球状粒子は、W/Oエマルション中の液滴に含まれる微粉末が凝集したものである。本発明の金属酸化物球状粒子の粒径及びその均一性を制御するためには、前記した水溶液に金属酸化物微粉末を添加したスラリーの濃度とその均一性、更にはエマルション中の水滴の粒径の大きさと均一性の制御が重要である。従って、例えば微小流路を使用する場合であれば、所望の粒径となるようなスラリー濃度と流路の幅等を決定した上で、スラリー濃度が均一となるように十分に撹拌しつつW/Oエマルションを形成してエマルション内の液滴の大きさを揃えることにより、粒径の揃った金属酸化物球状粒子を製造することが可能となる。
【0023】
凝集した金属酸化物球状粒子は、固液分離の後、洗浄し、必要に応じて乾燥する。このようにして金属酸化物球状粒子を製造することができるが、この球状粒子を多孔質又は緻密な金属酸化物球状粒子へと転化させるために、焼成を行うことが好ましい。焼成の具体的な方法について説明すれば、以上のようにして得られた球状粒子を一旦数百度で仮焼きして有機物を除き、続いて焼成して焼結させることで、その形状を保ったままの粒子を得ることができる。急激に焼成すると、内部に水分、有機物、洗浄時に除かれるべき界面活性剤などが僅か残存した場合に内部に亀裂などを発生させる原因となることがあるため、これらは除去しておくことが好ましい。焼成温度や時間は、金属酸化物微粒子の種類や用途、目的とする比表面積、粒子硬度などから適宜決めればよい。
このようにして得られる酸化物球状粒子は主なる金属酸化物単体の結晶系や結晶構造が安定化されているので、粒子によって金属元素の分布などが無く、良好な特性を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、十ミクロンから数百ミクロンの2種以上の金属が均一に混合した、粒子サイズが十から数百ミクロンの酸化物球状粒子を効率よく製造することができる。しかもその製造においては、μリアクター等を利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】微小流路構造体の概念図である。
【図2】微小流路構造体の構成を示す概念図である。
【図3】実施例1で実施の球状微粒子形成方法のスキームの概略である。
【図4】実施例1で得た仮焼後の微粒子の写真である。
【図5】実施例1で得た焼成後の微粒子およびEPMA写真である。
【図6】実施例2で得た仮焼後の微粒子の写真である。
【図7】実施例3で得た仮焼後の微粒子の写真である。
【図8】実施例4で得た仮焼後の微粒子の写真である。
【図9】実施例5で得た仮焼後の微粒子の写真である。
【図10】実施例6及び実施例7における微小流路での実験に用いた実験装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更が可能であることは言うまでもない。
【実施例】
【0027】
実施例 1
ジルコニア粉末TZ−3Y−E(イットリア3%固溶ジルコニア、東ソー(株)製)に純水をて加えてビーズミルで粉砕し、18vol%のスラリーとした。このスラリー5mlにpH調整剤として尿素0.06gを添加し、溶解して分散相とした。この分散相スラリーのpHは6.0であった。この分散相を、トルエンに界面活性剤としてグリセリン脂肪酸エステル(坂本薬品工業製、OE−750(登録商標)、HLB値=3.7)を5wt%となるように添加して調整した連続相中に添加し、容器を振とうさせてW/Oエマルション溶液を調製した。これを油浴を用いて90℃で6時間加熱保持したのち室温まで冷却した。冷却後、アセトンで洗浄、ろ紙(ワットマン製 定性ろ紙 グレードNo.1)を用いてろ過して得た凝集球状微粒子を図3に示す。この凝集粒子を400℃で仮焼し平均粒子径140μmの球状微粒子2.2gを得た。図4に仮焼後の粒子の写真を示す。また、この球状微粒子を1350℃で焼成した。焼成した粒子を研磨し、粒子断面のEPMA写真を図5に示す。球状粒子内で含有する元素であるイットリウムがジルコニウム中に均一に分散していることがわかる。また、この球状粒子を微小硬度計(フィッシャーH−100)を用いて平面圧子で圧縮して破壊強度を評価した。粒子が破壊した加圧力を粒子径で除した圧力は1200MPaと高強度であった。
【0028】
実施例 2
ジルコニア粉末TZ−3Y−E(イットリア3%固溶ジルコニア、東ソー(株)製)に純水をて加えてビーズミルで粉砕し3vol%のスラリーとした。このスラリー5mlにpH調整剤として尿素0.036gを添加し溶解して分散相とした。この分散相を、クロロベンゼンに実施例1と同様な界面活性剤を5wt%となるように添加して調整した連続相中に添加し、実施例1と同様の連続相に添加し、振とう、加温、冷却した。ろ過・洗浄して得た凝集粒子を400℃で仮焼し平均粒子径60μmの球状微粒子0.4gを得た。図6に仮焼後の粒子の写真を示す。
【0029】
実施例 3
実施例1と同様の分散相スラリーを、酢酸ブチルに界面活性剤としてグリセリン脂肪酸エステルの1種である坂本薬品工業製CRS−75(登録商標)を5wt%となるように添加して調整した連続相中に添加し、容器を振とうさせてW/Oエマルション溶液を調製した。これを、油浴を用いて90℃で6時間加熱保持したのち室温まで冷却した。冷却後、アセトンで洗浄、ろ紙(ワットマン製 定性ろ紙 グレードNo.1)を用いてろ過して得た凝集粒子を400℃で仮焼し平均粒子径90μmの球状微粒子2.0gを得た。図7に仮焼後の粒子の写真を示す。
【0030】
実施例 4
ジルコニア粉末TZ−3Y−E(イットリア3%固溶ジルコニア、東ソー(株)製)に純水をて加えてビーズミルで粉砕し18vol%のスラリーとした。このスラリー5mlにpH調整剤としてヘキサメチレンテトラミン0.13gを添加し溶解して分散相とした。この分散相スラリーのpHは6.6であった。
この分散相スラリーを、実施例1と同様の連続相中に添加し、容器を振とうさせてW/Oエマルション溶液を調製した。これを、油浴を用いて80℃で8時間加熱保持したのち室温まで冷却した。冷却後、アセトンで洗浄、ろ紙(ワットマン製 定性ろ紙 グレードNo.1)を用いてろ過して得た凝集粒子を400℃で仮焼し平均粒子径120μmの球状微粒子2.3gを得た。図8に仮焼後の粒子の写真を示す。
【0031】
実施例 5
実施例1と同様の分散相と連続相中を、実施例1と同様に油浴を用いて90℃で6時間加熱保持したのち、連続相に1−ブタノールを50mlを混合して引き続き90℃で18時間加熱保持したのち室温まで冷却した。冷却後、アセトンで洗浄、ろ紙(ワットマン製 定性ろ紙 グレードNo.1)を用いてろ過して得た凝集粒子を400℃で仮焼し平均粒子径130μmの球状微粒子2.3gを得た。図9に仮焼後の粒子の写真を示す。
【0032】
実施例 6
微小流路でのW/Oエマルション調整
本発明における第6の実施例の概念図を図10に示した。微小流路基板(5)とカバー体(4)には、70mm×20mm×1mm(厚さ)のポリエーテルイミド製基板を用いた。また微小流路基板に形成した微小流路は、一般的なドリルによる機械加工により形成し、微小流路基板とカバー体の接合は熱融着により接合した。なお、微小流路基板の微小流路の流体導入口及び流体導入口の貫通穴は機械加工により直径1mmの貫通穴を形成した。
【0033】
微小流路の流路幅と流路深さはそれぞれ110μm、50μmとなるよう加工した。導入流路としてのY字の角度は44度、Y字の合流部から流体排出口までの微小流路の長さは12mmとし、流体排出口から微小流路で製造した微小液滴を含む流体を排出し回収した。
【0034】
本実施例では、第1の流体送液用ポンプ(8)により実施例1で使用した連続相を送液速度60μl/minで微小流路構造体に送液し、第2の流体送液用ポンプ(9)により実施例1で調整したのと同様な方法にて表1に示すように5種類のスラリー濃度の分散相を送液速度6μl/min微小流路構造体に送液し、流体導入/排出チューブ(7)を通じて、各流体導入口(6)に導入した。導入した2種の流体は、微小流路基板に形成したY字状の微小流路のそれぞれの導入流路に導入され、Y字状の微小流路の合流部において微小液滴が製造され、W/Oエマルション溶液が調整された。その後、容器(10)内にちょぞうされた、この微小液滴を顕微鏡により観察し、液滴中心粒径及び液滴分散度を測定した結果を表1に示した。さらにこのW/Oエマルション溶液を油浴を用いて90℃で6時間加熱保持したのち室温まで冷却した。冷却後、アセトンで洗浄、ろ紙(ワットマン製 定性ろ紙 グレードNo.1)を用いてろ過して得た凝集球状微粒子を顕微鏡観察し、凝集粒子径及び粒径分散度を測定した結果を表1に示した。
【0035】
【表1】

表1の結果より、W/Oエマルション内の液滴分散度を制御することで、凝集球状粒子の粒径分散度を制御できることがわかる。また、分散相のスラリー濃度を変化させることで、凝集粒子径を変化させることができることがわかる。
【0036】
実施例 7
振動乾燥機によるW/Oエマルション加熱
本発明における第7の実施例の概念図を図10に示した。微小流路基板(5)とカバー体(4)には、70mm×20mm×1mm(厚さ)のポリエーテルイミド製基板を用いた。また微小流路基板に形成した微小流路は、一般的なドリルによる機械加工により形成し、微小流路基板とカバー体の接合は熱融着により接合した。なお、微小流路基板の微小流路の流体導入口及び流体導入口の貫通穴は機械加工により直径1mmの貫通穴を形成した。
【0037】
微小流路の流路幅と流路深さはそれぞれ110μm、50μmとなるよう加工した。導入流路としてのY字の角度は44度、Y字の合流部から流体排出口までの微小流路の長さは12mmとし、流体排出口から微小流路で製造した微小液滴を含む流体を排出し回収した。
【0038】
本実施例では、第1の流体送液用ポンプ(8)により実施例1で使用した連続相を送液速度60μl/minで微小流路構造体に送液し、第2の流体送液用ポンプ(9)により実施例1で調整したのと同様な方法にて表1に示すように5種類のスラリー濃度の分散相を送液速度6μl/min微小流路構造体に送液し、各流体導入口(6)に導入した。導入した2種の流体は、微小流路基板に形成したY字状の微小流路のそれぞれの導入流路に導入され、Y字状の微小流路の合流部において微小液滴が製造され、W/Oエマルション溶液が調整された。この微小液滴を顕微鏡により観察し、液滴中心粒径及び液滴分散度を測定した結果を表2に示した。
さらにこのW/Oエマルション溶液を振動乾燥機(中央化工機製振動乾燥機 VU−15型)を用いて90℃、真空度250torrで3時間振動減圧加熱保持したのち室温まで冷却した。冷却後、アセトンで洗浄、ろ紙(ワットマン製 定性ろ紙 グレードNo.1)を用いてろ過して得た凝集球状微粒子を顕微鏡観察し、凝集粒子径及び粒径分散度を測定した結果を表2に示した。
【0039】
【表2】

表1のサンプル(3)、表2の結果より、凝集粒子の分散度が凝集工程に振動乾燥機を使用することにより良くなることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液中に金属酸化物粉体が懸濁したスラリーに、加熱によって水素イオン濃度を変化させるpH調整剤をあらかじめ添加して調製した分散相を、界面活性剤を含む有機溶媒である連続相中に分散させて油中水型エマルションを形成させた後、このエマルション溶液を加熱することにより分散相中で水溶液の水素イオン濃度を変化させることによって、分散相中の金属酸化物粉体を凝集・固化させることを特徴とする金属酸化物球状粒子の製造方法。
【請求項2】
分散相中の酸化物の金属成分にイットリウムとジルコニウムを含むことを特徴とする請求項1記載の金属酸化物球状粒子の製造方法。
【請求項3】
分散相スラリーのpHが7以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の金属酸化物球状粒子の製造方法。
【請求項4】
あらかじめ添加した水素イオン濃度調整剤が尿素、またはヘキサメチレンテトラミンであることを特徴とする請求項1〜3記載の金属酸化物球状粒子の製造方法。
【請求項5】
粒子の大きさが10μmから1mmであることを特徴とする請求項1〜4記載の金属酸化物球状粒子の製造方法。
【請求項6】
連続相に添加する界面活性剤がグリセリン脂肪酸エステルおよびエーテルであることを特徴とする請求項1〜5記載の金属酸化物球状粒子の製造方法。
【請求項7】
連続相である有機溶媒の主成分が、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、酢酸ブチルのいずれか1つから選ばれたこととする特徴とする請求項1〜6記載の金属酸化物球状粒子の製造方法。
【請求項8】
油中水型エマルション液を加熱したのち、水を溶解する溶媒を連続相に添加して加熱することを特徴とする請求項1〜7記載の金属酸化物球状粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−148690(P2011−148690A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288874(P2010−288874)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】