説明

金属錯体およびそれを含む組成物

【課題】良好な発光特性または光電特性を有し且つ寿命特性に優れた素子を得ることができる組成物の提供。
【解決手段】下記式(1):


(式(1)中、Mは遷移金属原子を表し、環Aは5員環、6員環、またはこれらの縮合環を表し、R〜Rはアルキル基、アルコキシ基、等を表す。)で表される部分構造を含有する金属錯体を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピロロキノキサリン骨格を含有する金属錯体、およびこの金属錯体を含む組成物などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光素子などに用いる発光材料や電荷輸送性材料として様々な金属錯体が研究されており、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)発光素子の発光層に用いる発光材料として三重項励起状態からの発光を示す金属錯体が検討されている。APPLIED PHYSICS LETTERS,vol.75,No.1,pp.4−6(1999)(非特許文献1)には、中心金属としてIrを用いたオルトメタル化錯体が高発光効率を示すことが開示されている。
【0003】
また、赤色に発光するイリジウム錯体を共役系高分子にドープしたEL素子として、Thin Solid Films,499,359−363(2006)(非特許文献2)には、フェニルイソキノリンを配位子とするイリジウム錯体をポリフルオレンにドープしたEL発光素子が開示されている。国際公開第03/040256号パンフレット(特許文献1)には、ピロリルピリジン、ピロリルイソキノリンまたはフェニルイソキノリンを配位子とするイリジウム錯体およびこのイリジウム錯体を用いた発光素子が開示されている。特開2005−314414号公報(特許文献2)には、ピラジン骨格を含有する有機金属錯体およびこの有機金属錯体を用いた発光素子が開示されている。
【0004】
しかしながら、未だ、発光効率や光電効率、素子寿命について実用的に満足できる赤色発光素子は得られていなかった。
【特許文献1】国際公開第03/040256号パンフレット
【特許文献2】特開2005−314414号公報
【非特許文献1】APPLIED PHYSICS LETTERS、vol.75,No.1,pp.4−6(1999)
【非特許文献2】Thin Solid Films,499,359−363(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、良好な発光特性または光電特性を有し且つ寿命特性に優れた素子を得ることができる組成物、およびこれに用いる金属錯体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ピロロキノキサリン骨格と環構造とを含む金属錯体を用いることにより良好な発光特性または光電特性を有し且つ寿命特性に優れた素子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の金属錯体は、下記式(1):
【0008】
【化1】

【0009】
(式(1)中、Mは遷移金属原子を表し、環Aは5員環、6員環、またはこれらの縮合環を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、また置換基を有していてもよい。R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、および1価の複素環基からなる群から選択される置換基(該置換基の一部の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。)、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、水素原子、またはハロゲン原子を表す。)
で表される部分構造を含有することを特徴とするものである。
【0010】
前記環Aはピロリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、チエニル基、フリル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ナフチル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、およびインダゾリル基からなる群から選択される環状構造(該環状構造は置換基を有していてもよい。)であることが好ましい。
【0011】
本発明の第一の組成物は、本発明の金属錯体と電荷輸送性材料とを含有することを特徴とするものである。
【0012】
前記電荷輸送性材料は、低分子有機化合物、または高分子もしくはオリゴマーであることであることが好ましい。また、前記高分子またはオリゴマーは共役系のものであることがより好ましい。
【0013】
また、本発明の第二の組成物は、本発明の金属錯体から水素原子を1個以上除いた残基を含有する高分子またはオリゴマーを含むことを特徴とするものであり、前記高分子またはオリゴマーは共役系のものであることが好ましい。本発明の第二の組成物において、前記高分子またはオリゴマーは電荷輸送性材料であることが好ましい。また、本発明の第二の組成物はさらに電荷輸送性材料を含有することが好ましい。
【0014】
本発明の第一および第二の組成物において、前記電荷輸送性材料は、置換基を有していてもよいフェニレン基および/または下記式(2):
【0015】
【化2】

【0016】
(式(2)中、−X−は、−O−、−S−、−Se−、−BR21−、−SiR2122−、−PR21−、−P(=O)R21−、−CR2122−、−CR2122−CR2324−、−O−CR2122−、−S−CR2122−、−NR23−CR2122−、−SiR2122−CR2324−、−SiR2122−SiR2324−、−CR21=CR22−、−NR21−、−N=CR21−、または−SiR21=CR22−を表し、R21〜R24はそれぞれ独立に、他の原子との結合手、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、水素原子、またはハロゲン原子を表す。RおよびRはそれぞれ独立に、他の原子との結合手、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、またはアリール基を表す。mおよびnはそれぞれ独立に0〜4の整数である。RおよびRがそれぞれ複数個存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよい。また、式(2)で表される構造は少なくとも1つの結合手を有する。)
で表される部分構造を含有する高分子またはオリゴマーであることが好ましい。
【0017】
また、前記電荷輸送性材料は、下記式(3):
【0018】
【化3】

【0019】
(式(3)中、−X−は、−O−、−S−、−Se−、−BR31−、−SiR3132−、−PR31−、−P(=O)R31−、−CR3132−、−CR3132−CR3334−、−O−CR3132−、−S−CR3132−、−NR33−CR3132−、−SiR3132−CR3334−、−SiR3132−SiR3334−、−CR31=CR32−、−NR31−、−N=CR31−、または−SiR31=CR32−を表し、R31〜R34はそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、水素原子、またはハロゲン原子を表す。RおよびRはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、またはアリール基を表し、pおよびqはそれぞれ独立に0〜3の整数である。RおよびRがそれぞれ複数個存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよい。*は他の繰り返し単位との結合部位を表す。)
で表される繰り返し単位を含有する共役系高分子または共役系オリゴマーであることがより好ましい。
【0020】
前記電荷輸送性材料は、さらに下記式(4)または(5):
【0021】
【化4】

【0022】
(式(4)および(5)中、Ar、Ar、Ar、Ar、およびArはそれぞれ独立にアリーレン基または2価の複素環基を表し、Ar、Ar、およびArはそれぞれ独立にアリール基または1価の複素環基を表す。Ar、Ar、Ar、およびArは置換基を有していてもよい。sおよびtはそれぞれ独立に0または1であり、0≦s+t≦1の条件を満たす。)
で表される繰り返し単位を含有する共役系高分子または共役系オリゴマーであることが特に好ましい。
【0023】
本発明の液状組成物は、本発明の第一または第二の組成物を含有することを特徴とするものであり、25℃における粘度が0.5〜500mPa・sであるものであることがより好ましい。
【0024】
本発明の発光性薄膜、導電性薄膜、および有機半導体薄膜は、本発明の金属錯体または本発明の第一もしくは第二の組成物を含有することを特徴とするものである。
【0025】
本発明の素子は、本発明の金属錯体または本発明の第一もしくは第二の組成物を含有することを特徴とするものであり、陽極と、前記陽極上に配置された本発明の金属錯体または本発明の第一もしくは第二の組成物を含有する層と、前記層上に配置された陰極とを備えることが好ましく、前記陽極と前記陰極との間に、さらに電荷輸送層または電荷阻止層を備えることがより好ましい。本発明の素子は、発光素子、スイッチング素子、または光電変換素子であることが好ましい。
【0026】
本発明の面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、および照明は、本発明の素子を備えることを特徴とするものである。また、本発明の液晶表示装置は、本発明の素子をバックライトとして備えることを特徴とするものである。
【0027】
本発明の液晶表示装置および発光表示装置は、本発明の素子を備えるアクティブマトリックス駆動回路を有することを特徴とするものである。
【0028】
本発明の太陽電池は、本発明の素子を備えることを特徴とするものである。
【0029】
本発明の高分子およびオリゴマーは、本発明の金属錯体から水素原子を1個以上除いた残基を含有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、良好な発光特性または光電特性を有し且つ寿命特性に優れた素子を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0032】
<金属錯体>
先ず、本発明の金属錯体について説明する。本発明の金属錯体は、下記式(1):
【0033】
【化5】

【0034】
で表される部分構造を含有するものであり、ピロロキノキサリン骨格と環構造とを含有することを特徴とするものである。このようなピロロキノキサリン骨格と環構造とを含有する金属錯体を素子材料に使用すると寿命特性に優れた素子を得ることができる。
【0035】
前記式(1)中、Mは遷移金属原子を表す。具体的には、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、およびランタノイド(La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLu)などが挙げられる。これらの遷移金属原子のうち、発光効率または光電効率が高いという観点から、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、およびAuが好ましく、Re、Os、Ir、およびPtがさらに好ましい。
【0036】
前記式(1)中、環Aは5員環、6員環、またはこれらの縮合環を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、また置換基を有していてもよい。この環Aにおける遷移金属原子Mに対する配位原子は炭素原子である。前記5員環としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、チエニル基、フリル基などが挙げられる。前記6員環としては、フェニル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、チオピラニル基、ピラニル基などが挙げられる。前記縮合環としては、ナフチル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、チオクロメニル基、イソチオクロメニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、イソクロメニル基などが挙げられる。これらの環状構造のうち、高耐久性、発光波長の調整、および高発光効率の観点から、ピロリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、チエニル基、フリル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ナフチル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、およびインダゾリル基が好ましい。特に、遷移金属がイリジウムの場合、環Aとしては、置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。
【0037】
前記環Aが有していてもよい置換基は特に限定されないが、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アシル基、およびアシルオキシ基などの炭化水素系置換基、1価の複素環基、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、およびハロゲン原子などが挙げられる。また、前記置換基が前記炭化水素系置換基の場合、その一部の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0038】
前記式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、および1価の複素環基からなる群から選択される置換基(この置換基の一部の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。)、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、水素原子、またはハロゲン原子を表す。
【0039】
前記環Aが有していてもよい置換基や前記R〜Rとしてのハロゲン原子やアルキル基などの具体例としては以下のものが挙げられる。
【0040】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子などが挙げられる。これらのうち、発光波長の調整の観点からフッ素原子が特に好ましい。
【0041】
前記アルキル基は直鎖状、分岐状または環状のいずれのものでもよい。前記アルキル基の炭素数は通常1〜10程度であり、3〜10であることが好ましい。具体的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、およびパーフルオロオクチル基などが挙げられる。これらのうち、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、および3,7−ジメチルオクチル基が好ましい。
【0042】
前記アルコキシ基は直鎖状、分岐状または環状のいずれのものでもよい。前記アルコキシ基の炭素数は通常1〜10程度であり、3〜10であることが好ましい。具体的なアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基、および2−メトキシエチルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、および3,7−ジメチルオクチルオキシ基が好ましい。
【0043】
前記アルキルチオ基は直鎖状、分岐状または環状のいずれのものでもよい。前記アルキルチオ基の炭素数は通常1〜10程度であり、3〜10であることが好ましい。具体的なアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、ラウリルチオ基、およびトリフルオロメチルチオ基などが挙げられる。これらのうち、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、デシルチオ基、および3,7−ジメチルオクチルチオ基が好ましい。
【0044】
前記アルケニル基は直鎖状、分岐状または環状のいずれのものでもよい。前記アルケニル基の炭素数は通常2〜10程度であり、3〜10であることが好ましい。好ましいアルケニル基としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、およびオクテニル基が挙げられる。
【0045】
前記アルキニル基は直鎖状、分岐状または環状のいずれのものでもよい。前記アルキニル基の炭素数は通常2〜10程度であり、3〜10であることが好ましい。好ましいアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、およびオクチニル基が挙げられる。
【0046】
前記アリール基は芳香族炭化水素から水素原子1個を取り除いた原子団であり、炭素数は通常6〜60程度であり、6〜48であることが好ましい。ここで、前記芳香族炭化水素には、縮合環、および独立した2個以上のベンゼン環または縮合環が直接またはビニレンなどの基を介して結合したものも含むものとする。
【0047】
具体的なアリール基としては、フェニル基、C〜C12アルコキシフェニル基(C〜C12はアルコキシ基の炭素数が1〜12であることを示す。以下、同様。)、C〜C12アルキルフェニル基(C〜C12はアルキル基の炭素数が1〜12であることを示す。以下、同様。)、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、およびペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。これらのうち、C〜C12アルコキシフェニル基およびC〜C12アルキルフェニル基が好ましい。
【0048】
また、独立した2個以上のベンゼン環が直接またはビニレンなどの基を介して結合したアリール基としては、芳香環が樹状に結合したデンドロンの残基が挙げられ、金属錯体の溶解性の観点から置換基を有するデンドロンの残基が好ましい。具体的な置換基を有するデンドロンの残基としては、下記式:
【0049】
【化6】

【0050】
で表されるものが挙げられる。
【0051】
前記式中、*は前記ピロロキノキサリン骨格、または環Aの主骨格である5員環、6員環、もしくはこれらの縮合環との結合部位を表す。Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を表し、これらの置換基の一部の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。複数存在するRは同一であっても異なっていてもよいが、Rのうちの少なくとも1つは炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基である。また、Rは直鎖状または分岐状の炭素数1〜10のアルキル基を表す。複数存在するRは同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
前記アリールオキシ基の炭素数は通常6〜60程度であり、6〜48であることが好ましい。具体的なアリールオキシ基としては、フェノキシ基、C〜C12アルコキシフェノキシ基、C〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、およびペンタフルオロフェニルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、C〜C12アルコキシフェノキシ基およびC〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。
【0053】
前記アリールチオ基の炭素数は通常6〜60程度であり、6〜48であることが好ましい。具体的なアリールチオ基としては、フェニルチオ基、C〜C12アルコキシフェニルチオ基、C〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、およびペンタフルオロフェニルチオ基などが挙げられる。これらのうち、C〜C12アルコキシフェニルチオ基およびC〜C12アルキルフェニルチオ基が好ましい。
【0054】
前記アリールアルキル基の炭素数は通常7〜60程度であり、7〜48であることが好ましい。具体的なアリールアルキル基としては、フェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル基、1−ナフチル−C〜C12アルキル基、および2−ナフチル−C〜C12アルキル基などが挙げられる。これらのうち、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル基およびC〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル基が好ましい。
【0055】
前記アリールアルキルオキシ基の炭素数は通常7〜60程度であり、7〜48であることが好ましい。具体的なアリールアルキルオキシ基としては、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基、フェニルブトキシ基、フェニルペンチロキシ基、フェニルヘキシロキシ基、フェニルヘプチロキシ基、フェニルオクチロキシ基などのフェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C〜C12アルコキシ基、および2−ナフチル−C〜C12アルコキシ基などが挙げられる。これらのうち、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルコキシ基およびC〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルコキシ基が好ましい。
【0056】
前記アリールアルキルチオ基の炭素数は通常7〜60程度であり、7〜48であることが好ましい。具体的なアリールアルキルチオ基としては、フェニル−C〜C12アルキルチオ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルチオ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルチオ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルチオ基、および2−ナフチル−C〜C12アルキルチオ基などが挙げられる。これらのうち、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルチオ基およびC〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルチオ基が好ましい。
【0057】
前記アリールアルケニル基の炭素数は通常8〜60程度であり、8〜48であることが好ましい。具体的なアリールアルケニル基としては、フェニル−C〜C12アルケニル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルケニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルケニル基、1−ナフチル−C〜C12アルケニル基、および2−ナフチル−C〜C12アルケニル基などが挙げられる。これらのうち、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルケニル基およびC〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルケニル基が好ましい。
【0058】
前記アリールアルキニル基の炭素数は通常8〜60程度であり、8〜48であることが好ましい。具体的なアリールアルキニル基としては、フェニル−C〜C12アルキニル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキニル基、1−ナフチル−C〜C12アルキニル基、および2−ナフチル−C〜C12アルキニル基などが挙げられる。これらのうち、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキニル基およびC〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキニル基が好ましい。
【0059】
前記アシル基の炭素数は通常2〜20程度であり、2〜18であることが好ましい。具体的なアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、およびペンタフルオロベンゾイル基などが挙げられる。
【0060】
前記アシルオキシ基の炭素数は通常2〜20程度であり、2〜18であることが好ましい。具体的なアシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、およびペンタフルオロベンゾイルオキシ基などが挙げられる。
【0061】
前記1価の複素環基は複素環式化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団であり、置換基を有していてもよい。前記複素環式化合物は、環状有機化合物のうち、環状構造に炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素などのヘテロ原子も含むものをいう。前記1価の複素環基の炭素数は通常2〜60程度であり、2〜20であることが好ましい。具体的な1価の複素環基としては、ヘテロ5員環基、ヘテロアリール基、ヘテロ5員環−オキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロ5員環−チオ基、およびヘテロアリールチオ基などが挙げられる。
【0062】
前記ヘテロ5員環基の炭素数は通常2〜60であり、2〜48であることが好ましい。具体的なヘテロ5員環基としては、ピロリル基、C〜C12アルコキシピロリル基、C〜C12アルキルピロリル基、イミダゾリル基、C〜C12アルコキシイミダゾリル基、C〜C12アルキルイミダゾリル基、ピラゾリル基、C〜C12アルコキシピラゾリル基、C〜C12アルキルピラゾリル基、トリアゾリル基、C〜C12アルコキシトリアゾリル基、C〜C12アルキルトリアゾリル基、チエニル基、C〜C12アルコキシチエニル基、C〜C12アルキルチエニル基、フリル基、C〜C12アルコキシフリル基、およびC〜C12アルキルフリル基などが挙げられる。これらのうち、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基が好ましい。
【0063】
前記ヘテロアリール基の炭素数は通常3〜60であり、3〜48であることが好ましい。具体的なヘテロアリール基としては、ピリジル基、C〜C12アルコキシピリジル基、C〜C12アルキルピリジル基、キノリル基、イソキノリル基などが挙げられる。これらのうち、ピリジル基およびC〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0064】
前記ヘテロ5員環−オキシ基の炭素数は通常2〜60であり、2〜48であることが好ましい。具体的なヘテロ5員環−オキシ基としては、チエニルオキシ基、C〜C12アルコキシチエニルオキシ基、C〜C12アルキルチエニルオキシ基、ピロリルオキシ基、C〜C12アルコキシピロリルオキシ基、C〜C12アルキルピロリルオキシ基、フリルオキシ基、C〜C12アルコキシフリルオキシ基、およびC〜C12アルキルフリルオキシ基などが挙げられる。
【0065】
前記ヘテロアリールオキシ基の炭素数は通常3〜60であり、3〜48であることが好ましい。具体的なヘテロアリールオキシ基としては、ピリジルオキシ基、C〜C12アルコキシピリジルオキシ基、C〜C12アルキルピリジルオキシ基、ピペリジルオキシ基、C〜C12アルコキシピペリジルオキシ基、C〜C12アルキルピペリジルオキシ基、キノリルオキシ基、イソキノリルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、C〜C12アルコキシピリジルオキシ基およびC〜C12アルキルピリジルオキシ基が好ましい。
【0066】
前記ヘテロ5員環−チオ基の炭素数は通常2〜60であり、2〜48であることが好ましい。具体的なヘテロ5員環−チオ基としては、ピロリルチオ基、C〜C12アルコキシピロリルチオ基、C〜C12アルキルピロリルチオ基、イミダゾリル基、C〜C12アルコキシイミダゾリル基、C〜C12アルキルイミダゾリル基、ピラゾリル基、C〜C12アルコキシピラゾリル基、C〜C12アルキルピラゾリル基、トリアゾリル基、C〜C12アルコキシトリアゾリル基、C〜C12アルキルトリアゾリル基、チエニルチオ基、C〜C12アルコキシチエニルチオ基、C〜C12アルキルチエニルチオ基、フリルチオ基、C〜C12アルコキシフリルチオ基、およびC〜C12アルキルフリルチオ基などが挙げられる。
【0067】
前記ヘテロアリールチオ基の炭素数は通常3〜60であり、3〜48であることが好ましい。具体的なヘテロアリールチオ基としては、ピリジルチオ基、C〜C12アルコキシピリジルチオ基、C〜C12アルキルピリジルチオ基、ピペリジルチオ基、C〜C12アルコキシピペリジルチオ基、C〜C12アルキルピペリジルチオ基、キノリルチオ基、イソキノリルチオ基などが挙げられる。これらのうち、C〜C12アルコキシピリジルチオ基およびC〜C12アルキルピリジルチオ基が好ましい。
【0068】
前記C〜C12アルコキシとしては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、3,7−ジメチルオクチルオキシ、およびラウリルオキシなどが挙げられる。
【0069】
前記C〜C12アルキルとしては、メチル、エチル、ジメチル、プロピル、2,4,6−トリメチル、メチルエチル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、およびドデシルなどが挙げられる。
【0070】
前記C〜C12アルケニルとしては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、およびオクテニルなどが挙げられる。
【0071】
前記C〜C12アルキニルとしては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、およびオクチニルなどが挙げられる。
【0072】
本発明の金属錯体は前記式(1)で表される部分構造を含有するものであれば、他の構造の配位子を1個以上含有していてもよいが、他の構造の配位子は2箇所以上で遷移金属原子に配位する多座配位子であることが好ましい。他の構造の配位子は特に限定されないが、例えば、フェニルピリジン、フェナントロリン、フェニルキノリン、特表2003−515897号公報に記載の2座配位子などが挙げられる。また、これらの配位子の一部の水素原子がアルキル基やハロゲン原子で置換されたものでもよい。
【0073】
また、前記式(1)で表される部分構造を含有する金属錯体のうち、高耐久性や高発光効率の観点から下記式(1a):
【0074】
【化7】

【0075】
で表される、同一の配位子を複数含有する金属錯体が好ましい。
【0076】
前記式(1a)中のM、環AおよびR〜Rはそれぞれ前記式(1)中のM、環AおよびR〜Rと同義である。kは配位子の数を表し、遷移金属Mの価数に等しい。
【0077】
また、高耐久性、高発光効率、および合成の容易さの観点から下記式で表される金属錯体が特に好ましい。
【0078】
【化8】

【0079】
【化9】

【0080】
【化10】

【0081】
【化11】

【0082】
【化12】

【0083】
【化13】

【0084】
【化14】

【0085】
前記式中のRはそれぞれ独立に、前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アルキルチオ基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記アリール基(前記デンドロンの残基を含む。)、前記アリールオキシ基、前記アリールチオ基、前記アリールアルキル基、前記アリールアルキルオキシ基、前記アリールアルキルチオ基、前記アリールアルケニル基、前記アリールアルキニル基、前記アシル基、前記アシルオキシ基、および前記1価の複素環基からなる群から選択される置換基(この置換基の一部の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。)、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、水素原子、またはハロゲン原子を表す。
【0086】
本発明の金属錯体としては、前記式(1a)で表されるものの他、下記式で表されるものも挙げることができる。下記式中のRは前記式中のRと同義である。
【0087】
【化15】

【0088】
本発明の金属錯体において、その発光は特に限定はされないが、MLCT励起状態(Metal to Ligand Charge Transfer励起状態)からの発光が含まれることが、高効率を得る点で好ましい。また、発光色は、遷移金属原子と配位子との組み合わせを適宜選択することにより調整することができ、例えば、イリジウムと、前記式(1)中の環Aの主骨格がフェニル基である配位子とを組み合わせることにより赤色の発光を得ることができる。なお、前記フェニル基は置換基を有していてもよい。
【0089】
本発明の金属錯体は以下の方法により合成することができる。先ず、配位子となる化合物の合成方法を、環Aの主骨格がフェニル基である化合物を例に説明するが、本発明に用いる配位子となる化合物の合成方法はこれに限定されるものではない。
【0090】
例えば、下記式(6):
【0091】
【化16】

【0092】
(式(6)中のR〜Rはそれぞれ前記式(1)中のR〜Rと同義である。)
で表されるアミノフェニルピロール類に塩化ベンゾイル類を反応させてアミド結合を形成させる。次いで、このアミド結合を有する化合物を、塩化ホスホリルを用いて環化することによってピロロキノキサリン骨格が形成される。また、得られた化合物は塩化ベンゾイル類由来のフェニル基を含有する。このフェニル基の水素原子は必要に応じて前記置換基で置換してもよい。
【0093】
次に、得られた配位子となる化合物と遷移金属化合物とを反応させて本発明の金属錯体を合成する。この合成は、例えば、Bulletin of the Chemical Society of Japan,vol.47,pp.767−768(1974)、Journal of Inorganic Chemistry,vol.33,pp.545−550(1994)、またはJ. Am. Chem. Soc.,vol.125,pp.7377−7387(2003)に記載の方法に準じて実施することができる。
【0094】
具体的には、溶媒に金属化合物および前記配位子となる化合物、必要に応じて塩基や銀塩化合物を添加する。前記溶媒は窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを通気して脱気した後、使用することが好ましい。この混合液を不活性ガス雰囲気下で、必要に応じて加熱しながら配位子交換が終了するまで攪拌する。反応の終点は、薄層クロマトグラフィー(TLC)や高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、NMRを用いることで原料物質の減少の停止やいずれかの原料物質の消失を確認することにより決定することができる。反応時間は特に限定されないが、通常30分間から150時間程度である。
【0095】
反応終了後、溶媒を留去したり反応で生じた沈殿を濾別することにより金属錯体を回収する。その後、必要に応じて、回収した金属錯体をカラムクロマトグラフィー、溶媒洗浄、昇華、再結晶などの公知の方法により精製する。金属錯体の回収や精製の条件は金属錯体の種類により適宜設定することができる。
【0096】
このようにして得た金属錯体は、CHN元素分析、質量分析(MS)、NMR測定により同定することができる。
【0097】
<組成物>
次に、本発明の組成物について説明する。なお、この組成物は、通常、材料として用いられる。
【0098】
(第一の組成物)
本発明の第一の組成物は、前記式(1)で表される部分構造を含有する金属錯体を含むことを特徴とするものであり、さらに電荷輸送性材料(以下、「第一の電荷輸送性材料」という。)を含有することが好ましい。前記金属錯体は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記式(1)で表される部分構造を含有する金属錯体を用いることによって、寿命特性に優れた素子を得ることができる。
【0099】
前記第一の組成物中の前記金属錯体の含有量は、前記第一の電荷輸送性材料100質量部に対して0.01〜80質量部であることが好ましく、0.1〜60質量部であることがより好ましい。前記金属錯体の含有量が上記下限未満になると前記金属錯体から十分な強さの発光が得られにくい傾向にあり、他方、上記上限を超えると前記金属錯体からの発光強度が弱くなったり、薄膜形成時に均質な膜を形成しにくい傾向にある。
【0100】
前記第一の電荷輸送性材料としては正孔輸送材料および電子輸送材料が挙げられる。前記正孔輸送材料としては、フルオレンおよびその誘導体、芳香族アミンおよびその誘導体、カルバゾール誘導体、およびポリパラフェニレン誘導体など、有機EL素子の正孔輸送材料として使用される公知のもの使用することができる。また、前記電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、ならびに8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体など、有機EL素子の電子輸送材料として使用される公知のもの使用することができる。
【0101】
このような第一の電荷輸送性材料は、低分子有機化合物、高分子、またはオリゴマーのいずれであってもよい。また、前記第一の電荷輸送性材料が高分子またはオリゴマーの場合には、高分子またはオリゴマーは共役系のものであることが好ましい。
【0102】
前記低分子化合物としては、低分子有機EL素子に用いられるホスト化合物、電荷注入輸送化合物が挙げられ、例えば「有機ELディスプレイ」(時任静士、安達千波矢、村田英幸 共著、オーム社)、107頁、月刊ティスプレイ、vol9、No9、2003年、26−30頁;特開2004−244400号公報;特開2004−277377号公報などに記載の化合物が挙げられる。
【0103】
前記高分子およびオリゴマー(以下、「第一の高分子」および「第一のオリゴマー」という。)のうち、非共役系のものとしてはポリビニルカルバゾールが挙げられる。また、共役系の高分子およびオリゴマー(以下、「第一の共役系高分子」および「第一の共役系オリゴマー」という。)としては、芳香環を主鎖に含むもの、ならびに酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、リン原子、ホウ素原子、硫黄原子、セレン原子、およびテルル原子からなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含有する2価の複素環基を主鎖に含むものが挙げられる。前記第一の共役系高分子およびオリゴマーの繰り返し単位としては、例えば、ベンゼン類、ピリジン類、ピリミジン類、ナフタレン類、カルバゾール類、フルオレン類、ジベンゾチオフェン類、ジベンゾフラン類、またはジベンゾシロール類から誘導される2価の基が挙げられる。
【0104】
前記繰り返し単位は置換基を有していてもよい。前記置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシ基、置換カルボキシ基およびシアノ基などが挙げられる。前記繰り返し単位が複数の置換基を有する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。また、前記第一の高分子およびオリゴマーは単独重合体であっても共重合体であってもよい。
【0105】
これらの第一の高分子およびオリゴマーのうち、本発明の金属錯体と組み合わせることによって適切な電圧および電流で発光素子を駆動でき、また、高発光効率、長寿命を実現できる観点から、置換基を有していてもよいフェニレン基および/または下記式(2):
【0106】
【化17】

【0107】
で表される部分構造を含有するものが好ましい。
【0108】
前記式(2)中、−X−は、−O−、−S−、−Se−、−BR21−、−SiR2122−、−PR21−、−P(=O)R21−、−CR2122−、−CR2122−CR2324−、−O−CR2122−、−S−CR2122−、−NR23−CR2122−、−SiR2122−CR2324−、−SiR2122−SiR2324−、−CR21=CR22−、−NR21−、−N=CR21−、または−SiR21=CR22−を表し、R21〜R24はそれぞれ独立に、他の原子との結合手、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、水素原子、またはハロゲン原子を表す。これらのうち、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、および炭素原子が好ましい。
【0109】
また、前記式(2)中、RおよびRはそれぞれ独立に、他の原子との結合手、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、またはアリール基を表す。mおよびnはそれぞれ独立に0〜4の整数である。RおよびRがそれぞれ複数個存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよい。また、式(2)で表される構造は少なくとも1つの結合手を有する。
【0110】
このような第一の高分子としては、特開2003−231741号公報;特開2004−059899号公報;特開2004−002654号公報;特開2004−292546号公報;米国特許第5708130号明細書;国際公開第99/54385号パンフレット;国際公開第00/46321号パンフレット;国際公開第02/077060号パンフレット;「有機ELディスプレイ」時任静士、安達千波矢、村田英幸 共著,オーム社,111頁;月刊ディスプレイ,vol.9,No.9,2002年47−51頁などに記載のものが挙げられる。また、前記第一のオリゴマーとしては、特開2007−169182号公報、特開2007−145799号公報、特開2007−045719号公報などに記載のものが挙げられる。
【0111】
また、上記観点から、前記第一の高分子およびオリゴマーは、下記式(3):
【0112】
【化18】

【0113】
で表される繰り返し単位を含有する共役系高分子または共役系オリゴマーであることがより好ましい。この繰り返し単位を、前記第一のオリゴマーは2〜10個含み、前記第一の高分子は11個以上含むことが好ましい。
【0114】
前記式(3)中、−X−は、−O−、−S−、−Se−、−BR31−、−SiR3132−、−PR31−、−P(=O)R31−、−CR3132−、−CR3132−CR3334−、−O−CR3132−、−S−CR3132−、−NR33−CR3132−、−SiR3132−CR3334−、−SiR3132−SiR3334−、−CR31=CR32−、−NR31−、−N=CR31−、または−SiR31=CR32−を表す。これらのうち、−O−、−S−、−CR3132−、および−NR31−が好ましい。
【0115】
また、前記R31〜R34はそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、水素原子、またはハロゲン原子を表す。また、前記式(3)中、RおよびRはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、またはアリール基を表す。pおよびqはそれぞれ独立に0〜3の整数である。RおよびRがそれぞれ複数個存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよい。*は他の繰り返し単位との結合部位を表す。
【0116】
前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アルキルチオ基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記アリール基、前記アリールオキシ基、前記アリールチオ基、前記アリールアルキル基、前記アリールアルコキシ基、前記アリールアルキルチオ基、前記アリールアルケニル基、前記アリールアルキニル基、前記1価の複素環基、および前記ハロゲン原子としては、本発明の金属錯体において例示したものと同様のものが挙げられ、好ましい態様についても同様である。
【0117】
さらに、上記観点から、前記第一の共役系高分子および共役系オリゴマーは、さらに下記式(4)または(5):
【0118】
【化19】

【0119】
で表される繰り返し単位を含有するものであることが特に好ましい。
【0120】
前記式(4)および(5)中、Ar、Ar、Ar、Ar、およびArはそれぞれ独立にアリーレン基または2価の複素環基を表し、Ar、Ar、およびArはそれぞれ独立にアリール基または1価の複素環基を表す。Ar、Ar、Ar、およびArは置換基を有していてもよい。sおよびtはそれぞれ独立に0または1であり、0≦s+t≦1の条件を満たす。
【0121】
前記アリーレン基は芳香族炭化水素から水素原子を2個取り除いた原子団であり、炭素数は通常6〜60程度であり、6〜20であることが好ましい。ここで、前記芳香族炭化水素には、縮合環、および独立した2個以上のベンゼン環または縮合環が直接またはビニレンなどの基を介して結合したものも含むものとする。
【0122】
具体的なアリーレン基としては、下記式:
【0123】
【化20】

【0124】
で表されるものが挙げられる。
【0125】
前記式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、またはアリール基を表す。
【0126】
前記2価の複素環基としては、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、リン原子、ホウ素原子、硫黄原子、セレン原子、およびテルル原子からなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含有する2価の複素環基が挙げられる。
【0127】
前記アリール基および前記1価の複素環基としては、本発明の金属錯体において例示したものと同様のものが挙げられ、好ましい態様についても同様である。
【0128】
(第二の組成物)
一方、本発明の第二の組成物は、前記式(1)で表される部分構造を含有する本発明の金属錯体から水素原子を1個以上除いた残基を含有する高分子またはオリゴマー(以下、「第二の高分子」または「第二のオリゴマー」という。)を含むことを特徴とするものである。前記残基は1種単独で含まれていても2種以上が含まれていてもよい。本発明の金属錯体から水素原子を1個以上除いた残基を含有する高分子またはオリゴマーを含む組成物を用いることによって、寿命特性に優れた素子を得ることができる。
【0129】
本発明の金属錯体から水素原子を1個以上除いた残基としては、前記式(1)で表される部分構造から水素原子を1個以上除いた部分構造を含有する残基、および、前記式(1)で表される部分構造と、他の構造の配位子から水素原子を1個以上除いた構造とを含有する残基が挙げられる。前記他の構造の配位子としては、本発明の金属錯体において例示した他の構造の配位子が挙げられる。これらの残基のうち、前記式(1)で表される部分構造から水素原子を1個以上除いた部分構造を含有する残基が好ましい。
【0130】
また、前記式(1)で表される部分構造から水素原子を1個以上除いた部分構造のうち、下記式(1b):
【0131】
【化21】

【0132】
で表される部分構造が好ましい。
【0133】
前記式(1b)中、Mおよび環Aはそれぞれ前記式(1)中のMおよび環Aと同義である。R1b〜R6bのうちの少なくとも1つは他の原子との結合手であり、残りはそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、および1価の複素環基からなる群から選択される置換基(該置換基の一部の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。)、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、水素原子、またはハロゲン原子を表す。前記R1b〜R6bとしてのハロゲン原子やアルキル基などの具体例としては前記式(1)のR〜Rにおいて例示したものが挙げられる。
【0134】
また、前記式(1b)で表される部分構造を含有する残基は、他の構造の配位子を1個以上含有していてもよく、前記他の構造の配位子は他の原子との結合手を有していてもよい。前記他の構造の配位子としては、本発明の金属錯体において例示した他の構造の配位子が挙げられる。
【0135】
さらに、前記式(1b)で表される部分構造を含有する残基のうち、高耐久性や高発光効率の観点から下記式(1c):
【0136】
【化22】

【0137】
で表される金属錯体残基が好ましい。
【0138】
前記式(1c)中、M、環AおよびR〜Rはそれぞれ前記式(1a)中のM、環AおよびR〜Rと同義であり、R1b〜R6bは前記式(1b)中のR1b〜R6bと同義である。kおよびkは配位子の数を表し、kは0ではなく、k+kは遷移金属Mの価数に等しい。
【0139】
また、前記式(1)で表される部分構造から水素原子を1個以上除いた部分構造の別の様態としては、環Aから水素原子を1個以上除いた部分構造が挙げられる。
【0140】
このような第二の高分子およびオリゴマーはそれ自身で金属錯体および電荷輸送性材料としての機能を有する傾向にある。また、このような観点から、本発明の第二の組成物において第二の高分子およびオリゴマーは共役系のものであることが好ましい。
【0141】
また、前記第二の高分子およびオリゴマーがそれ自身で電荷輸送性材料としての機能を有するため、この第二の高分子またはオリゴマー(好ましくは共役系高分子または共役系オリゴマー)を含む第二の組成物を前記第一の組成物の電荷輸送性材料として使用することができる。
【0142】
また、前記第二の組成物には、第一の電荷輸送性材料として例示した正孔輸送材料や前記電子輸送材料などの電荷輸送性材料がさらに含まれていてもよい。
【0143】
本発明の第二の組成物において、本発明の金属錯体から水素原子を1個以上除いた残基は、第二の高分子またはオリゴマーの主鎖、末端、側鎖のいずれに含まれていてもよい。
【0144】
(i)前記残基が主鎖に含まれる場合
前記残基を主鎖に含む第二の高分子およびオリゴマーは、本発明の金属錯体から2個または3個の水素原子を除いた残基を含むものであり、前記残基は、前記水素原子を除いた部分からなる2箇所または3箇所の結合部位において、主鎖を形成する繰り返し単位と結合している。このような高分子およびオリゴマーのうち、前記式(1b)で表される部分構造を含有する残基が2個または3個の結合手を有するものである高分子およびオリゴマーが好ましく、前記式(1c)においてR1b〜R6bのうちの1個が結合手であり、kが2または3である金属錯体残基を含む高分子およびオリゴマーがより好ましい。
【0145】
(ii)前記残基が末端に含まれる場合
前記残基を末端に含む第二の高分子およびオリゴマーは、本発明の金属錯体から1個の水素原子を除いた残基を含むものであり、前記残基は、前記水素原子を除いた部分からなる1箇所の結合部位において、主鎖の末端と、単結合、またはアルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、もしくは2価の複素環基などの2価の基を介して結合している。なお、前記2価の基は置換基を有していてもよい。
【0146】
このような高分子およびオリゴマーのうち、前記式(1b)で表される部分構造を含有する残基が1個の結合手を有するものである高分子およびオリゴマーが好ましく、前記式(1c)においてR1b〜R6bのうちの1個が結合手であり、kが1である金属錯体残基を含む高分子およびオリゴマーがより好ましい。
【0147】
(iii)前記残基が側鎖に含まれる場合
前記残基を側鎖に含む第二の高分子およびオリゴマーは、本発明の金属錯体から1個の水素原子を除いた残基を含むものであり、前記残基は、前記水素原子を除いた部分からなる1箇所の結合部位において主鎖の構成単位と、単結合、−O−、−S−、−CO−、−CO(=O)−、−SO−、−SO−、−SiR−、NR−、−BR−、−PR−、−PR(=O)−、またはアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、もしくは2価の複素環基などの2価の基を介して結合している。
【0148】
前記2価の基は置換基を有していてもよい。また、アルキレン基、アルケニレン基、およびアルキニレン基がメチレン基を含む場合、前記メチレン基の1つ以上がそれぞれ独立に、−O−、−S−、―CO−、−CO(=O)−、−SO−、−SO−、−SiR−、NR−、−BR−、−PR−、および−PR(=O)―からなる群から選ばれる1種以上の基と置換されていてもよい。前記RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、1価の複素環基、またはシアノ基を表す。
【0149】
このような高分子およびオリゴマーのうち、前記式(1b)で表される部分構造を含有する残基が1個の結合手を有するものである高分子およびオリゴマーが好ましく、前記式(1c)においてR1b〜R6bのうちの1個が結合手であり、kが1である金属錯体残基を含む高分子およびオリゴマーがより好ましい。
【0150】
本発明の金属錯体から水素原子を1個以上除いた残基は、前記構成単位1つにつき1〜4個結合していることが好ましい。前記構成単位としては、アリーレン基、ならびに酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、リン原子、ホウ素原子、硫黄原子、セレン原子、およびテルル原子からなる群から選ばれる少なくとも1つの原子を含有する2価の複素環基が挙げられる。
【0151】
前記第二の高分子およびオリゴマーは前記式(1)で表される部分構造を含んでいればよく、このような第二の高分子およびオリゴマーに含まれる繰り返し単位としては、前記第一の高分子およびオリゴマーにおいて例示したものと同様のものが挙げられる。
【0152】
このような第二の高分子およびオリゴマーのうち、適切な電圧および電流で発光素子を駆動でき、また、高発光効率、長寿命を実現できる観点から、置換基を有していてもよいフェニレン基および/または前記式(2)で表される部分構造をさらに含有するものが好ましく、前記式(3)で表される繰り返し単位をさらに含有する共役系高分子または共役系オリゴマーであることがより好ましく、前記式(4)または(5)で表される繰り返し単位をさらに含有する共役系高分子または共役系オリゴマーであることが特に好ましい。
【0153】
このような第二の高分子およびオリゴマーは、本発明の金属錯体にモノマーと反応可能な置換基を導入し、この金属錯体とモノマーとを共重合することによって合成することができる。モノマーと反応可能な置換基を導入する部位は、前記式(1)中のR〜Rのうちの1〜3箇所であることが好ましい。前記共重合において前記金属錯体の量は、前記モノマー100質量部に対して0.01〜80質量部であることが好ましく、0.1〜60質量部であることがより好ましい。前記金属錯体の量が上記範囲であると発光強度に優れた金属錯体が得られやすい。
【0154】
前記第一および第二の高分子およびオリゴマー(共役系のものを含む。)のポリスチレン換算の数平均分子量は、10〜10であることが好ましく、10〜10であることがより好ましい。数平均分子量が上記範囲であるとインクジェット法や印刷法などの塗布方法での成膜性が良好となる。また、ポリスチレン換算の重量平均分子量は、10〜10であることが好ましく、5×10〜5×10であることがより好ましい。重量平均分子量が上記範囲であるとインクジェット法や印刷法などの塗布方法での成膜性が良好となる。
【0155】
本発明の第一および第二の組成物には、さらに従来公知の発光材料(例えば、特開昭57−51781号公報および特開昭59−194393号公報に記載されているもの)が含まれていてもよい。この発光材料としては、ナフタレン誘導体、アントラセンおよびその誘導体、ペリレンおよびその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、およびシアニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエンおよびその誘導体、ならびにテトラフェニルブタジエンおよびその誘導体などが挙げられる。
【0156】
また、前記第一および第二の組成物にはフラーレンやカーボンナノチューブなどが含まれていてもよい。これにより、素子の光電特性を向上させることができる。
【0157】
<液状組成物>
本発明の組成物は、溶媒に添加して液状組成物(一般的には、インク、インク組成物、溶液などともいう。)を調製することによって容易に取り扱うことができ、高分子発光素子などの発光素子や有機トランジスタの作製の際に有用となる。なお、液状とは、常圧(即ち、1気圧)、25℃において液状であることを意味する。
【0158】
前記液状組成物中の溶媒の割合は、液状組成物の全質量に対して1〜99.9質量%であることが好ましく、60〜99.9質量%であることがより好ましく、90〜99.8質量%であることが特に好ましい。
【0159】
前記液状組成物の粘度はその用途によって異なるが、例えば、25℃において0.5〜500mPa・sであることが好ましく、インクジェットプリント法などの吐出装置を使用する方法で使用する場合には、吐出時の目づまりや飛行曲がりを防止するために粘度が25℃において0.5〜20mPa・sであることが好ましい。
【0160】
前記液状組成物において、液状組成物から溶媒を除いた全成分の合計量に対する本発明の組成物の割合は、20〜100質量%であることが好ましく、40〜100質量%であることがより好ましい。
【0161】
前記溶媒としては、前記液状組成物中の溶媒以外の成分を溶解または分散できるものであればよい。例えば、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルベンゾエート、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオールなどの多価アルコールおよびその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、およびN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒が挙げられる。
【0162】
前記溶媒のうち、液状組成物中の溶媒以外の成分の溶解性、成膜時の均一性、粘度特性など観点から、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、およびケトン系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メシチレン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、アニソール、エトキシベンゼン、1−メチルナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシル、シクロヘキセニルシクロヘキサノン、n−ヘプチルシクロヘキサン、n−ヘキシルシクロヘキサン、メチルベンゾエート、2−プロピルシクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、ジシクロヘキシルケトンが好ましく、キシレン、アニソール、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、およびビシクロヘキシルメチルベンゾエートがより好ましい。特に、粘度、成膜性透などの観点から、ベンゼン環を含み、かつ融点が0℃以下、沸点が100℃以上である有機溶媒が好ましい。
【0163】
前記溶媒は、前記液状組成物に含まれる溶媒以外の成分の溶解性の観点から、溶媒の溶解度パラメータと本発明の組成物の溶解度パラメータとの差が10以下であるものが好ましく、7以下であるものがより好ましい。これらの溶解度パラメータは、「溶剤ハンドブック(講談社刊、1976年)」に記載の方法で求めることができる。
【0164】
前記溶媒は、1種単独で用いてもよいが、成膜性や素子特性などの観点から、2種以上を併用することが好ましく、2〜3種類を併用することがより好ましく、2種類を併用することが特に好ましい。
【0165】
2種類の溶媒を使用する場合、一方の溶媒は25℃において固体状態でもよい。また、成膜性の観点から、一方の溶媒の沸点は180℃以上であり、他方の溶媒の沸点は180℃未満であることが好ましく、一方の溶媒の沸点は200℃以上であり、他方の溶媒の沸点は180℃未満であることがより好ましい。また、粘度の観点から、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2質量%以上が60℃において溶媒に溶解することが好ましく、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2質量%以上が25℃において一方の溶媒に溶解することがより好ましい。
【0166】
3種類の溶媒を使用する場合、そのうちの1〜2種類の溶媒は25℃において固体状態でもよい。また、成膜性の観点から、3種類の溶媒のうちの少なくとも1種類の溶媒の沸点は180℃以上であり、少なくとも1種類の溶媒の沸点は180℃未満であることが好ましく、3種類の溶媒のうちの少なくとも1種類の溶媒の沸点は200℃以上300℃以下であり、少なくとも1種類の溶媒の沸点は180℃未満であることがより好ましい。また、粘度の観点から、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2質量%以上が60℃において3種類の溶媒のうちの2種類の溶媒に溶解することが好ましく、液状組成物から溶媒を除いた成分の0.2質量%以上が25℃において3種類の溶媒のうちの1種類の溶媒に溶解することがより好ましい。
【0167】
2種類以上の溶媒を併用する場合、粘度および成膜性の観点から、沸点が最も高い溶媒の割合が、液状組成物に含まれる全溶媒の40〜90質量%であることが好ましく、50〜90質量%であることがより好ましく、65〜85質量%であることが特に好ましい。
【0168】
2種類以上の溶媒を併用する場合の具体的な組み合わせとしては、粘度および成膜性の観点から、アニソールとビシクロヘキシルとの組み合わせ、アニソールとシクロヘキシルベンゼンとの組み合わせ、キシレンとビシクロヘキシルとの組み合わせ、キシレンとシクロヘキシルベンゼンとの組み合わせ、メシチレンとメチルベンゾエートとの組み合わせが好ましい。
【0169】
本発明の液状組成物は、これを用いて成膜する場合に、この液状組成物を基板などの上に塗布した後、乾燥により溶媒を除去するだけで成膜することができ、また、他の電荷輸送性材料や発光材料を混合した場合においても同様の手法が適用できるため、製造上、非常に有利である。また、本発明の組成物が比較的低分子の場合には真空蒸着法により成膜することができる。
【0170】
成膜方法は特に制限されず、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法などの公知の塗布方法を用いることができる。また、乾燥は、50〜150℃程度に加温して実施することができ、また、10−3Pa程度に減圧して真空乾燥することもできる。
【0171】
<薄膜>
次に、本発明の薄膜について説明する。本発明の薄膜は、本発明の金属錯体または本発明の組成物を含有するものであり、例えば、本発明の液状組成物を用いて前記成膜方法により形成することができる。このような薄膜としては、発光性薄膜、導電性薄膜、有機半導体薄膜が挙げられる。薄膜の膜厚は1〜500nmであることが好ましく、5〜200nmであることがより好ましい。
【0172】
発光性薄膜は、素子の輝度や発光電圧などの観点から発光の量子収率が高いものが好ましく、具体的には、金属錯体として前記式(1)においてMがイリジウムである金属錯体を含み、電荷輸送性材料としてフルオレンもしくはその誘導体、芳香族アミンもしくはその誘導体、またはカルバゾール誘導体を含むものが好ましい。
【0173】
導電性薄膜の表面抵抗は1KΩ/sq.以下であることが好ましく、100Ω/sq.以下であることがより好ましく、10Ω/sq.以下であることが特に好ましい。薄膜の電気伝導度は、薄膜にルイス酸やイオン性化合物などをドープすることにより高めることができる。
【0174】
有機半導体薄膜は、電子移動度または正孔移動度のいずれか大きいものが10−5cm/V/秒以上であることが好ましく、10−3cm/V/秒以上であることがより好ましく、10−1cm/V/秒以上であることが特に好ましい。このような有機半導体薄膜を用いることにより有機トランジスタを作製することができる。具体的には、SiOなどの絶縁膜とゲート電極とを形成したSi基板上に本発明の有機半導体薄膜を形成し、Auなどでソース電極とドレイン電極とを形成することにより、有機トランジスタを作製することができる。
【0175】
<素子>
次に、本発明の素子について説明する。本発明の素子は、本発明の金属錯体または本発明の組成物を含有するものであり、例えば、陽極と、この陽極上に配置された本発明の金属錯体または本発明の組成物を含有する層と、この層上に配置された陰極とを備えるものが挙げられる。より具体的には、陽極と、この陽極上に配置された本発明の薄膜と、この薄膜上に配置された陰極とを備えるものが挙げられる。このような素子は発光素子、スイッチング素子、または光電変換素子として使用することができる。これらの素子においては本発明の金属錯体または本発明の組成物を含有する層が光電層となる。なお、光電層とは光電機能を有する層、すなわち発光性、導電性、光電変換機能を有する薄膜である。従って、本発明の素子が発光素子である場合には本発明の金属錯体または本発明の組成物を含有する層が発光層となる。
【0176】
また、本発明の素子は、前記陽極と前記陰極との間に電荷輸送層または電荷阻止層をさらに備えていてもよい。前記電荷輸送層とは正孔輸送層または電子輸送層であり、正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する層であり、電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する層である。また、電荷阻止層とは正孔阻止層または電子阻止層であり、正孔阻止層とは電子を輸送し且つ陽極から輸送された正孔を閉じ込める機能と有する層であり、電子阻止層とは正孔を輸送し且つ陰極から輸送された電子を閉じ込める機能と有する層である。
【0177】
なお、電子輸送層と正孔阻止層は、「有機ELのすべて」162頁(城戸淳二著、日本実業出版)に記載されているように同様の機能を有する。例えば、電子輸送層および正孔阻止層を形成する材料は同じものを用いることができ、材料の特性により、どちらかの機能がより強く反映されることにより電子輸送層または正孔阻止層となる。正孔輸送層と電子阻止層の場合も同様である。
【0178】
本発明の素子として具体的には、陰極と光電層との間に電子輸送層または正孔阻止層を備える素子、陽極と光電層との間に正孔輸送層または電子阻止層を備える素子、陰極と光電層との間に電子輸送層または正孔阻止層を備え、且つ陽極と光電層との間に正孔輸送層または電子阻止層を備える素子などが挙げられる。このような素子構造としては、例えば、Journal of the SID 11/1,161−166,2003に記載の素子構造が挙げられる。
【0179】
本発明の素子の具体的な構造を以下に示す。なお、「/」は各層が隣接して積層されていることを示す。以下、同様である。
a)陽極/光電層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/光電層/陰極
c)陽極/光電層/電子輸送層/陰極
d)陽極/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/陰極
【0180】
また、本発明の素子においては、光電層、正孔輸送層、および電子輸送層をそれぞれ独立に2層以上設けてもよい。
【0181】
電極に隣接して設けた電荷輸送層(正孔輸送層および電子輸送層)のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、一般に電荷注入層(正孔注入層および電子注入層)と呼ばれることがある。電荷注入層を備える素子としては、陰極に隣接して電荷注入層を備える素子、陽極に隣接して電荷注入層を備える素子が挙げられる。
【0182】
電荷注入層を備える本発明の素子の具体的な構造を以下に示す。
e)陽極/電荷注入層/光電層/陰極
f)陽極/光電層/電荷注入層/陰極
g)陽極/電荷注入層/光電層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/光電層/電荷注入層/陰極
j)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/光電層/電荷輸送層/陰極
l)陽極/光電層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
m)陽極/電荷注入層/光電層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/電荷輸送層/陰極
o)陽極/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
p)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
【0183】
本発明の素子では、光電層の陰極側の界面に正孔阻止層を設けてもよい。正孔阻止層を備える本発明の素子の具体的な構造を以下に示す。
ac)陽極/電荷注入層/光電層/正孔阻止層/陰極
ad)陽極/光電層/正孔阻止層/電荷注入層/陰極
ae)陽極/電荷注入層/光電層/正孔阻止層/電荷注入層/陰極
af)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/陰極
ag)陽極/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/電荷注入層/陰極
ah)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/電荷注入層/陰極
ai)陽極/電荷注入層/光電層/正孔阻止層/電荷輸送層/陰極
aj)陽極/光電層/正孔阻止層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
ak)陽極/電荷注入層/光電層/正孔阻止層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
al)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/電荷輸送層/陰極
am)陽極/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
an)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/光電層/正孔阻止層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
【0184】
本発明の素子では、電極との密着性向上や電極からの電荷注入の改善のために電極に隣接して膜厚2nm以下の絶縁層を設けてもよい。前記絶縁層に用いる材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料などが挙げられる。膜厚2nm以下の絶縁層を備える素子としては、陰極に隣接して前記絶縁層を備える素子、陽極に隣接して前記絶縁層を備える素子が挙げられる。
【0185】
膜厚2nm以下の絶縁層を備える本発明の素子の具体的な構造を以下に示す。
q)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/光電層/陰極
r)陽極/光電層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
s)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/光電層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
t)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/光電層/陰極
u)陽極/正孔輸送層/光電層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
v)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/光電層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
w)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/光電層/電子輸送層/陰極
x)陽極/光電層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
y)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/光電層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
z)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/陰極
aa)陽極/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
ab)陽極/膜厚2nm以下の絶縁層/正孔輸送層/光電層/電子輸送層/膜厚2nm以下の絶縁層/陰極
【0186】
本発明の素子では、さらに、界面の密着性向上や混層の防止などのために、電極と光電層との間にこの電極に隣接して、また、電荷輸送層と光電層と界面に、平均膜厚2nm以下のバッファー層を設けてもよい。
【0187】
本発明の素子は上記例示した構造に限定されるものではなく、層の順番、数、および各層の厚さを、発光効率または光電効率や素子寿命を考慮して適宜設定したものも含まれる。
【0188】
以下、本発明の素子の各層について説明する。
【0189】
(光電層)
前記光電層は、本発明の金属錯体または本発明の組成物を含有する層、すなわち本発明の薄膜であり、本発明の液状組成物を用いて前記成膜方法により形成することができる。また、この光電層上には、公知の発光材料からなる発光層が配置されていてもよい。公知の発光材料としては、例えば、特開昭57−51781号公報および特開昭59−194393号公報に記載されているものが挙げられる。具体的には、ナフタレン誘導体、アントラセンおよびその誘導体、ペリレンおよびその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、およびシアニン系などの色素類、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエンおよびその誘導体、ならびにテトラフェニルブタジエンおよびその誘導体などが挙げられる。
【0190】
(正孔輸送層)
前記正孔輸送層に用いる材料としては、例えば、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報に記載されているものが挙げられる。具体的には、ポリビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリシランおよびその誘導体、側鎖または主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリアミノフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびその誘導体、ならびにポリ(2,5−チエニレンビニレン)およびその誘導体などが挙げられる。
【0191】
これらのうち、ポリビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリシランおよびその誘導体、側鎖または主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリアミノフェンおよびその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびその誘導体、ならびにポリ(2,5−チエニレンビニレン)およびその誘導体などの高分子材料が好ましく、ポリビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリシランおよびその誘導体、側鎖または主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体がより好ましい。
【0192】
一方、正孔輸送層に用いる材料が低分子の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。前記高分子バインダーとしては、正孔輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。このような高分子バインダーとしては、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどが挙げられる。
【0193】
前記ポリビニルカルバゾールおよびその誘導体は、例えば、ビニルカルバゾールをカチオン重合またはラジカル重合することによって得られる。
【0194】
前記ポリシランおよびその誘導体は、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)第89巻、1359頁(1989年)、英国特許出願公開第2300196号明細書などに記載の合成方法により得ることができ、特にキッピング法により合成することが好ましい。
【0195】
ポリシロキサン誘導体を正孔輸送層に使用する場合、シロキサン骨格には正孔輸送性がほとんどないため、側鎖または主鎖に正孔輸送性の低分子材料から誘導される構造を導入する。このようなポリシロキサン誘導体としては、正孔輸送性の芳香族アミン化合物基を側鎖または主鎖に有するものが好ましい。
【0196】
正孔輸送層の形成方法は特に制限はない。例えば、正孔輸送層に用いる材料および必要に応じて前記高分子バインダーを含む溶液または分散液を、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法などの公知の塗布方法で基板などの上に塗布し、乾燥することにより正孔輸送層を形成することができる。前記塗布方法のうち、パターン形成が容易である点でスクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法が好ましい。
【0197】
前記溶液または分散液に用いる溶媒としては、正孔輸送層に用いる材料および高分子バインダーを溶解または分散させるものであれば特に制限はない。例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒が挙げられる。
【0198】
正孔輸送層の膜厚は、発光効率または光電効率と駆動電圧とが適度な値となるように適宜設定され、用いる材料によって最適値が異なるが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要である。膜厚が厚すぎる正孔輸送層は素子の駆動電圧が高くなる傾向がある。従って、正孔輸送層の膜厚は1nm〜1μmであることが好ましく、2〜500nmであることがより好ましく、5〜200nmであることが特に好ましい。
【0199】
(電子輸送層)
電子輸送層に用いる材料としては、例えば、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報に記載されているものが挙げられる。具体的には、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体、ポリキノリンおよびその誘導体、ポリキノキサリンおよびその誘導体、ならびにポリフルオレンおよびその誘導体などが挙げられる。
【0200】
これらのうち、アミノキサジアゾール誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体、ポリキノリンおよびその誘導体、ポリキノキサリンおよびその誘導体、ならびにポリフルオレンおよびその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがより好ましい。
【0201】
電子輸送層の形成方法は特に制限はない。例えば、電子輸送層に用いる材料を含む溶液もしくは分散液、または溶融状態の電子輸送層に用いる材料を、正孔輸送層の形成する場合と同様に公知の塗布方法で基板などの上に塗布し、乾燥することにより電子輸送層を形成することができる。また、前記溶液には高分子バインダーを添加してもよい。前記高分子バインダーとしては、電子輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また、可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。このような高分子バインダーとしては、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリアミノフェンおよびその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)およびその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ならびにポリシロキサンなどが挙げられる。また、電子輸送層に用いる材料が低分子の場合には、電子輸送層に用いる材料の粉末を真空蒸着させることにより電子輸送層を形成することもできる。
【0202】
前記溶液または分散液に用いる溶媒としては、電子輸送層に用いる材料および高分子バインダーを溶解または分散させるものであれば特に制限されず、正孔輸送層において例示した溶媒と同様のものを用いることができる。
【0203】
電子輸送層の膜厚は、発光効率または光電効率と駆動電圧とが適度な値となるように適宜設定され、用いる材料によって最適値が異なるが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要である。膜厚が厚すぎる電子輸送層は素子の駆動電圧が高くなる傾向がある。従って、電子輸送層の膜厚は1nm〜1μmであることが好ましく、2〜500nmであることがより好ましく、5〜200nmであることが特に好ましい。
【0204】
(基板)
本発明の素子は、通常、基板を用いて形成される。基板の一方の面には電極が形成され、他方の面に素子の各層を形成する。本発明に用いる基板は電極および素子の各層を形成する際に変化しないものであれば特に制限されず、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコンなどの基板が挙げられる。この基板が不透明のものである場合には反対の電極として透明または半透明のものを形成することが好ましい。
【0205】
(電極)
通常、陽極および陰極のうちの少なくとも一方は透明または半透明のものであり、陽極が透明または半透明のものであることが好ましい。また、本発明の素子が光電変換素子の場合には、陽極および陰極のうちの少なくとも一方の電極を櫛型に形成してもよい。この場合、電極は不透明のものであってもよいが、透明または半透明のものであることが好ましい。
【0206】
陽極に用いる材料としては、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜などが挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、およびそれらの複合体(インジウム・スズ・オキサイド(ITO)およびインジウム・亜鉛・オキサイドなど)、アンチモン・スズ・オキサイド(NESA)、金、白金、銀、銅などが挙げられる。これらのうち、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。また、陽極として、ポリアニリンおよびその誘導体、ならびにポリアミノフェンおよびその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0207】
陽極の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などが挙げられる。
【0208】
陽極の膜厚は、光の透過性と電気伝導度とを考慮して適宜設定することができる。例えば10nm〜10μmであることが好ましく、20nm〜1μmであることがより好ましく、50〜500nmであることが特に好ましい。
【0209】
また、電荷注入を容易にするために、陽極上に、フタロシアニン誘導体、導電性高分子、もしくはカーボンなどからなる層、または金属酸化物、金属フッ化物、もしくは有機絶縁材料などからなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよい。
【0210】
陰極に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、およびイッテルビウムなどの金属;それらのうちの2つ以上の金属の合金;それらのうちの1つ以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1つ以上の金属との合金;グラファイト;ならびにグラファイト層間化合物などが挙げられる。前記合金として具体的には、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などが挙げられる。
【0211】
陰極の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、および金属薄膜を熱圧着するラミネート法などが挙げられる。また、2層以上の積層構造の陰極を形成してもよい。
【0212】
陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して適宜設定することができる。例えば、10nm〜10μmであることが好ましく、20nm〜1μmであることがより好ましく、50〜500nmであることが特に好ましい。
【0213】
また、陰極と有機物層との間に、導電性高分子からなる層、または金属酸化物、金属フッ化物、もしくは有機絶縁材料などからなる平均膜厚2nm以下の層を設けてもよい。
【0214】
(保護層)
本発明の素子では、素子を外部から保護して長期安定的に使用するために、陰極形成後、素子を保護する保護層および/または保護カバーを形成していてもよい。
【0215】
このような保護層に用いる材料としては、高分子化合物、金属酸化物、金属フッ化物、金属ホウ化物などが挙げられる。また、保護カバーとしては、ガラス板、表面に低透水率処理を施したプラスチック板などが挙げられる。これらのうち、保護カバーを熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂を用いて素子と貼り合わせて素子を密閉することが好ましい。
【0216】
また、スペーサーを用いて素子と保護カバーとの間に空間を維持することにより素子の傷付きを容易に防ぐことができる。この空間に窒素やアルゴンなどの不活性なガスを封入することにより陰極の酸化を防止することができ、さらに、酸化バリウムなどの乾燥剤を配置することにより、製造工程で吸着した水分による素子の損傷を容易に抑制することができる。これらのうち、少なくとも1つの方法を採用することが好ましい。
【0217】
(電荷注入層)
電荷注入層としては、導電性高分子を含む層、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層(陽極と正孔輸送層との間に設けられる場合)、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層(陰極と電子輸送層との間に設けられる場合)などが挙げられる。
【0218】
電荷注入層に用いる材料は、電極や隣接する層の材料との関係に応じて適宜選択すればよい。具体的には、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリアミノフェンおよびその誘導体、ポリピロールおよびその誘導体、ポリフェニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体、ポリキノリンおよびその誘導体、ポリキノキサリンおよびその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖または側鎖に含む重合体などの導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニンなど)、カーボンなどが挙げられる。
【0219】
電荷注入層が導電性高分子を含む層の場合、この導電性高分子の電気伝導度は10−5S/cm以上10S/cm以下であることが好ましく、発光画素間のリーク電流を小さくするためには、10−5S/cm以上10S/cm以下であることがより好ましく、10−5S/cm以上10S/cm以下であることが特に好ましい。
【0220】
導電性高分子の電気伝導度を10−5S/cm以上10S/cm以下にするためには、通常、導電性高分子に適量のイオンをドープする。ドープするイオンは、正孔注入層であればアニオン、電子注入層であればカチオンである。アニオンとしては、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオンなどが挙げられる。カチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンなどが挙げられる。
【0221】
電荷注入層の膜厚は1nm〜100nmであることが好ましく、2nm〜50nmであることがより好ましい。
【0222】
(正孔阻止層)
正孔阻止層に用いる材料としては、光電層のイオン化ポテンシャルよりも大きなイオン化ポテンシャルを有する材料、例えば、バソクプロイン、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体などが挙げられる。
【0223】
正孔阻止層の膜厚は1nm〜100nmであることが好ましく、2nm〜50nmであることがより好ましい。
【0224】
本発明の素子が発光素子の場合、この発光素子は面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置のバックライト、または照明に使用することができる。
【0225】
前記発光素子を用いて面状の発光を得るためには、面状の陽極と陰極が重なり合うように配置すればよい。また、パターン状の発光を得るためには、面状の発光素子の表面にパターン状の窓を設けたマスクを設置する方法、有機物層の一部を極端に厚く形成して実質的に非発光部を形成する方法、陽極または陰極のいずれか一方または両方の電極をパターン状に形成する方法がある。これらのいずれかの方法でパターンを形成し、いくつかの電極を独立にON/OFFできるように配置することにより、数字や文字、簡単な記号などを表示できるセグメント表示素子が得られる。さらに、陽極と陰極をともにストライプ状に形成して直交するように配置することによりドットマトリックス表示素子が得られる。
【0226】
このドットマトリックス表示素子において、複数の種類の発光色の異なる発光材料を塗り分けたり、カラーフィルターまたは発光変換フィルターを用いることより、部分カラー表示またはマルチカラー表示が可能となる。また、ドットマトリックス表示素子は、パッシブ駆動も可能でり、TFTなどと組み合わせることによりアクティブ駆動も可能となる。これらの表示素子は、コンピュータ、テレビ、携帯端末、携帯電話、カーナビゲーション、ビデオカメラのビューファインダーなどの表示装置に用いることができる。
【0227】
面状の発光素子は自発光薄型であり、液晶表示装置のバックライト用の面状光源、あるいは面状の照明用光源として好適に用いることができる。また、フレキシブルな基板を用いることにより曲面状の光源や表示装置としても使用できる。
【0228】
本発明の素子がスイッチング素子の場合、このスイッチング素子はアクティブマトリックス駆動回路を有する液晶表示装置に使用することができる。
【0229】
本発明の素子が光電変換素子の場合、この光電変換素子は太陽電池に使用することができる。
【実施例】
【0230】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、高分子(P−1)は以下の方法により合成した。
【0231】
(合成例1)
9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン(439mg)、下記式:
【0232】
【化23】

【0233】
で表される臭素化合物(148mg)、および2,2’−ビピリジン(422mg)を反応容器に仕込んだ後、反応系内を窒素ガスで置換した。これに、脱水溶媒として予めアルゴンガスでバブリングして脱気したテトラヒドロフラン(THF)(72ml)を添加した。次いで、この混合溶液に、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(Ni(COD))(743mg)を添加し、窒素ガス雰囲気下、60℃で3時間攪拌して合成反応を実施した。
【0234】
反応終了後、この溶液を冷却し、次いで、25質量%のアンモニア水(3.6ml)とメタノール(72ml)とイオン交換水(72ml)とからなる混合溶液を注ぎ、約1時間攪拌した。これにより生成した沈殿物をろ過により回収した。この沈殿物を減圧乾燥した後、トルエン(300ml)に溶解した。得られた溶液をろ過して不純物を除去した後、アルミナを充填したカラムに通して精製した。
【0235】
次に、精製した溶液を5.2質量%の塩酸水で洗浄した後、分液して得られたトルエン相を4質量%のアンモニア水で洗浄した。さらに洗浄後の溶液を分液し、得られたトルエン相をイオン交換水で洗浄した後、分液してトルエン相を回収した。このトルエン溶液に攪拌しながらメタノールを注ぎ、再沈精製した。沈殿物を回収し、メタノールで洗浄した後、沈殿物を減圧乾燥して下記式:
【0236】
【化24】

【0237】
(式中、*は結合部位を表す。)
で表される繰り返し単位(p1)および(p2)をp1:p2=80:20のモル比で含有する高分子(P−1)290mgを得た。この高分子(P−1)の標準ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは2.2×10であり、重量平均分子量Mwは2.5×10であった。
【0238】
(実施例1)
(1)配位子(L−1)の合成
先ず、配位子(L−1)を下記反応式に沿って合成した。
【0239】
【化25】

【0240】
(a)化合物(1−1)の合成
反応容器に1−(2−アミノフェニル)ピロール(4.74g(30mmol))および3−ブロモベンゾイルクロライド(7.68g(35mmol))を量り取り、1,4−ジオキサン(30mL)に溶解させた。これに、ピリジン(3.16g(40mmol))を加え、室温で2時間攪拌し、合成反応を実施した。反応終了後、クロロホルム(200mL)と水(200mL)とを加えた後、有機層を抽出した。有機層を10質量%塩酸で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去することにより化合物(1−1)(9.62g、収率94%)を得た。
【0241】
得られた化合物(1−1)をH−NMRおよび13C−NMRにより同定した。その結果を以下に示す。
【0242】
H−NMR(300MHz、CDCl
δ6.48(t,J=2.0Hz,2H)、δ6.85(t,J=2.0Hz,2H)、δ7.19−7.64(m,6H)、δ7.65(m,1H)、δ7.40(t,J=3.0Hz,1H)、δ8.56(d,J=9.5Hz,1H)。
【0243】
13C−NMR(75MHz、CDCl
δ111.1、δ121.3、δ122.5、δ123.3、δ124.7、δ125.4、δ127.1、δ129.4、δ130.7、δ131.2、δ133.7、δ134.3、δ135.2、δ136.4、δ137.9、δ163.7。
【0244】
(b)化合物(1−2)の合成
反応容器に前記化合物(1−1)(8.59g(25mmol))を量り取り、トルエン(200mL)に溶解させた。これに、塩化ホスホリル(11.6mL(125mmol))を加え、5時間還流した。析出した固体を濾別回収し、クロロホルム(200mL)に溶解させた。有機層を水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去することにより化合物(1−2)(5.73g、収率71%)を得た。
【0245】
得られた化合物(1−2)をH−NMR、13C−NMR、およびLC−MSにより同定した。その結果を以下に示す。
【0246】
H−NMR(300MHz、CDCl
δ7.01(m,1H)、δ7.12(m,1H)、δ7.63−7.43(m,4H)、δ7.70(d,J=7.8Hz,1H)、δ7.92(d,J=9.1Hz,1H)、δ8.01(d,J=7.7Hz,1H)、δ8.17(m,2H)。
【0247】
13C−NMR(75MHz、CDCl
、δ114.1、δ115.4、δ116.7、δ123.1、δ125.5、δ126.2,、δ127.1,、δ127.9,、δ128.6、δ129.3、δ129.4、δ130.7、δ132.1、δ133.8、δ137.9、δ138.1、δ152.4。
【0248】
LC−MS(APPI(+))m/z:324([M+H])。
【0249】
(c)配位子(L−1)の合成
窒素気流下、反応容器に前記化合物(1−2)(7.44g(23.0mmol))、3,5−ジ(4−tert−ブチルフェニル)フェニルホウ酸ピナコールエステル(11.85g(25.3mmol))、炭酸ナトリウム(4.88g(46.0mmol))、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(100mL)、エタノール(25mL)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.06g(0.92mmol))を量り取り、11時間撹拌した。得られた反応溶液に水(400mL)と酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒(容積比で1/1,400mL)を加えて抽出した。有機層を水(400mL)、5質量%炭酸ナトリウム水溶液(200mL)、および飽和食塩水(200mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで2回精製(1回目の溶離液:トルエン、2回目の溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=5/1の混合液)し、溶媒を留去して得られる残渣をメタノールで洗浄することにより配位子(L−1)(7.40g(12.7mmol))を得た。なお、前記3,5−ジ(4−tert−ブチルフェニル)フェニルホウ酸ピナコールエステルとしては、国際公開第02/066552号パンフレットに記載の合成法に準じて合成したものを使用した。
【0250】
得られた配位子(L−1)をLC−MSおよびH−NMRにより同定した。その結果を以下に示す。
【0251】
LC−MS(APPI(+))m/z:584([M+H])。
【0252】
H−NMR(300MHz、CDCl
δ1.38(s,18H)、δ6.92(m,1H)、δ7.05(m,1H)、δ7.51(m,6H)、δ7.64(m,5H)、δ7.85(m,5H)、δ8.03(m,3H)、δ8.32(s,1H)。
【0253】
(2)金属錯体(Ir−2)の合成
次に、金属錯体(Ir−2)を下記反応式に沿って合成した。
【0254】
【化26】

【0255】
反応容器に前記配位子(L−1)(1.17g(2.0mmol))、塩化イリジウム三水和物(319mg(0.91mmol))、2−エトキシエタノール(7.5mL)および水(2.5mL)を量り取り、窒素気流下、140℃で9時間加熱した。空冷後、得られた反応物を濾別し、水、メタノール、ヘキサンの順で洗浄することにより、金属錯体(Ir−1)(1.22g(0.44mmol))を得た。
【0256】
反応容器に金属錯体(Ir−1)(837mg(0.30mmol))、前記配位子(L−1)(1.05g(1.8mmol))、トリフルオロメタンスルホン酸銀(154mg(0.60mmol))およびジグライム(6mL)を量り取り、窒素気流下、140℃で20時間撹拌した。反応溶液に水(50mL)を加え、生じた沈殿を濾別回収した。この沈殿をメタノールで洗浄した後、塩化メチレンで抽出した。この抽出液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで2回精製(1回目の溶離液:塩化メチレン、2回目の溶離液:トルエン)した。溶媒を留去し、残渣をトルエン/ジエチルエーテル溶媒を用いて結晶化させた。生じた結晶を濾別回収することにより金属錯体(Ir−2)(185mg(0.095mmol))を得た。
【0257】
得られた金属錯体(Ir−2)をLC−MSおよびH−NMRにより同定した。その結果を以下に示す。
【0258】
LC−MS(APPI(+))m/z:1944([M+H])。
【0259】
H−NMR(300MHz、CDCl
δ1.36(s,54H)、δ6.52(t,J=7.5Hz,3H)、δ6.92(m,6H)、δ7.11(dd,J=7.1,7.9Hz,6H)、δ7.45(d,J=8.2Hz,12H)、δ7.61(m,21H)、δ7.73(s,6H)、δ7.83(s,3H)、δ8.18(d,J=8.4Hz,3H)、δ8.61(s,3H)。
【0260】
(実施例2)
(1)発光材料の調製
キシレンに、合成例1で得た高分子(P−1)と実施例1で得た金属錯体(Ir−2)とを、質量比((P−1):(Ir−2))=95:5で添加し、前記高分子(P−1)と前記金属錯体(Ir−2)とからなる発光材料のキシレン溶液(濃度1.4質量%)を調製した。
【0261】
(2)インターレイヤー材料の調製
キシレンに、9,9−ジオクチルフルオレン単位とN−(4−sec−ブチルフェニル)ジフェニルアミン単位からなる共重合体(サメイション(株)製。以下、「TFB」と略す。)を添加し、インターレイヤー材料TFBのキシレン溶液(濃度0.5質量%)を調製した。
【0262】
(3)EL素子の作製
スパッタ法により厚み150nmのITO膜を形成したガラス基板のITO膜表面に、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸の溶液(バイエル社製、商品名「BaytronP」)を乾燥後の膜厚が50nmとなるようにスピンコーティングして成膜し、ホットプレート上で200℃で10分間乾燥した。次に、この膜の上に、前記TFBのキシレン溶液を回転速度2000rpmでスピンコーティングして成膜し、窒素ガス雰囲気下、180℃で15分間乾燥した。
【0263】
この基板を室温まで冷却したのち、TFB膜上に、前記発光材料のキシレン溶液を回転速度1000rpmでスピンコーティングして成膜した。前記発光材料からなる塗膜の膜厚は約100nmであった。これを窒素ガス雰囲気下、130℃で20分乾燥した後、陰極としてバリウムを約5nmの厚みで蒸着し、次いでアルミニウムを約80nmの厚みで蒸着して、EL素子を作製した。なお、前記蒸着処理の際、真空度が1×10−4Pa以下に到達した時点で金属の蒸着を開始した。得られたEL素子に電圧を印加して645nmにピークを有する赤色のEL発光が得られることを確認した。また、このEL素子の最大輝度は2669cd/mであった。
【0264】
さらに、このEL素子を340cd/mの初期輝度で定電流駆動を一定時間施したところ、輝度が前記初期輝度の80%になるまでの時間は130時間であった。
【0265】
(実施例3)
(1)配位子(L−2)の合成
先ず、配位子(L−2)を下記反応式に沿って合成した。
【0266】
【化27】

【0267】
(a)化合物(2−1)の合成
窒素雰囲気下、反応容器に4−ブロモ−2−ニトロアニリン(10g(46.0mmol))、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン(6.6g(50.0mmol))および酢酸(100mL)を量り取り、2時間還流攪拌した。空冷後、得られた反応溶液に冷水(300mL)を加え、生じた深緑色の油状生成物をクロロホルム(100mL)に溶解させ、有機層を抽出した。有機層を水酸化ナトリウム水溶液でpH=7になるまで中和した後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液から溶媒を留去することにより深緑色オイル状の化合物(2−1)(9.7g(36.3mmol))を得た。
【0268】
得られた化合物(2−1)をH−NMRおよび13C−NMRにより同定した。その結果を以下に示す。
【0269】
H−NMR(300MHz、CDCl
δ6.37(s,2H)、6.75(s,2H)、7.34(d,J=99Hz,1H)、7.75(d,J=9.9Hz,1H)、7.99(s,1H)。
【0270】
13C−NMR(75MHz、CDCl
δ111.7、121.5、128.1、129.3、136.5。
【0271】
(b)化合物(2−2)の合成
窒素雰囲気下、反応容器に前記化合物(2−1)(2.0g(7.5mmol))およびエタノール(100mL)を量り取った。これに、亜ジチオン酸ナトリウム(3.9g(23mmol))を少量の水に溶解して調製した水溶液を加え、4時間還流攪拌した。空冷後、この反応溶液を水(50mL)で希釈した後、10質量%塩酸水溶液(50mL)を加えてpH4〜5にし、さらに、炭酸カリウム水溶液でpH=7になるまで中和した。析出した固体をクロロホルム(100mL)に溶解させ、有機層を抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液から溶媒を留去することにより茶色固体の化合物(2−2)(0.50g(2.1mmol))を得た。
【0272】
得られた化合物(2−2)をH−NMRおよび13C−NMRにより同定した。その結果を以下に示す。
【0273】
H−NMR(300MHz、CDCl
δ3.77(m,2H)、6.34(s,2H)、6.79(s,2H)、6.95(m,2H)、7.25(s,1H)。
【0274】
13C−NMR(75MHz、CDCl
δ110.0、118.8、121.4、121.8、128.6、144.0。
【0275】
(c)化合物(2−3)の合成
窒素雰囲気下、反応容器に前記化合物(2−2)(2.6g(11.0mmol))、ピリジン(0.94g(12mmol))および1,4−ジオキサン(100mL)を量り取り、室温で溶解させた。これに4−フルオロベンゾイルクロライド(1.9g(12mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。この反応溶液にクロロホルム(100mL)、水(50mL)および少量の10質量%塩酸水溶液を加え、有機層を抽出した。有機層を10質量%塩酸水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液から溶媒を留去することにより茶色固体の化合物(2−3)(3.08g(8.6mmol))を得た。
【0276】
得られた化合物(2−3)をH−NMRにより同定した。その結果を以下に示す。
【0277】
H−NMR(300MHz、CDCl
δ6.47(s,2H)、6.82(s,2H)、7.07−7.34(m,3H)、7.60(m,2H)、8.16(m,2H)、8.85(s,1H)。
【0278】
(d)化合物(2−4)の合成
窒素雰囲気下、反応容器に前記化合物(2−3)(10.77g(30mmol))を量り取り、トルエン(100mL)に溶解させた。これに塩化ホスホリル(11.6mL(125mmol))を加え、140℃で5時間攪拌した。この反応溶液を濾過して不溶性黒色固体を除いた後、水酸化ナトリウム水溶液を滴下した。析出した固体を濾別回収し、これをシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム)で精製した。分画した溶液から溶媒を留去することにより黄色固体の化合物(2−4)(4.34g(12.7mmol))を得た。
【0279】
得られた化合物(2−4)をH−NMRにより同定した。その結果を以下に示す。
【0280】
H−NMR(300MHz、CDCl
δ6.92(m,1H)、6.99(m,1H)、7.26(m,3H)、7.60(d,1H)、7.74(d,1H)、8.01(m,2H)、8.18(s,1H)。
【0281】
(e)配位子(L−2)の合成
アルゴン雰囲気下、反応容器に0.5mol/Lの9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9−BBN)−テトラヒドロフラン溶液(60mL(9−BBN含有量:30mmol))とテトラヒドロフラン(THF)(100mL)を量り取り、これに1−オクテン(3.28g(29mmol))を加え、4時間還流攪拌した。空冷後、前記化合物(2−4)(2.00g(5.86mmol))、水酸化ナトリウム(0.23g)を溶解させた水溶液およびビス(ジフェニルホスフィノフェロセン)ジクロロパラジウム/塩化メチレン(1:1)錯体(0.1g(0.12mmol))を加え、8時間還流攪拌した。空冷後、反応溶液に水(50mL)およびクロロホルム(100mL)を加え、有機層を抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した後、得られた濾液の溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで2回精製(1回目の溶離液:クロロホルム、2回目の溶離液:クロロホルム/ヘキサン=1/1の混合液)し、分画した溶液を濃縮した。この濃縮溶液を室温で静置させ、生じた結晶を濾別回収することにより、オフホワイト色結晶の配位子(L−2)(1.20g)を得た。
【0282】
得られた配位子(L−2)をH−NMRおよび13C−NMRにより同定した。その結果を以下に示す。
【0283】
H−NMR(300MHz、CDCl
δ0.86(m,3H)、1.32(m,10H)、1.70(m,2H)、2.75(m,2H)、6.87(t,J=3.3Hz,1H)、6.92(d,J=3.9Hz,1H)、7.22(m,3H)、7.33(m,1H)、7.78(m,2H)、7.99(m,2H)。
【0284】
13C−NMR(75MHz、CDCl
δ14.4、22.9、29.4、29.5、29.7、31.6、32.1、35.7、108.5、113.6、114.0、114.8、115.7、115.9、125.4、128.4、129.6、130.7、136.3、140.5、153.4、162.4、165.7。
【0285】
(2)金属錯体(Ir−4)の合成
次に、金属錯体(Ir−4)を下記反応式に沿って合成した。
【0286】
【化28】

【0287】
反応容器に前記配位子(L−2)(409mg(11mmol))、塩化イリジウム三水和物(177mg(5.0mmol))、2−エトキシエタノール(12mL)および水(4mL)を量り取り、これに窒素バブリングを30分間施した。この混合溶液を窒素気流下、140℃で9時間加熱攪拌した。空冷後、得られた反応物を濾別回収し、残渣をメタノール、水、ヘキサンの順で洗浄した。その後、減圧下で乾燥させることにより茶色固体の金属錯体(Ir−3)(291mg(1.5mmol))を得た。
【0288】
反応容器に前記金属錯体(Ir−3)(291mg(1.5mmol))、前記配位子(L−2)(526mg(14mmol))、トリフルオロメタンスルホン酸銀(77.1mg(3.0mmol))およびジグライム(2.5mL)を量り取り、これに窒素バブリングを20分間施した。この混合溶液を窒素気流下、150℃で18時間加熱攪拌した。反応が完結していなかったため、配位子(L−2)(218mg(7.0mmol))、トリフルオロメタンスルホン酸銀(77mg(3.0mmol))を加えて、さらに150℃で10時間攪拌した。空冷後、赤茶色の上澄み液を取り除き、オイル状残渣をトルエン(20mL)に溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した(溶離液:ヘキサン/トルエン=1/1の混合液)。分画した溶液から溶媒を留去し、残渣を少量のトルエン(約1mL)に加熱溶解させた後、空冷すると微結晶が析出した。この微結晶を濾別回収し、ヘキサン、メタノールの順で洗浄することにより濃オレンジ色固体の金属錯体(Ir−4)(66mg(0.5mmol))を得た。
【0289】
得られた金属錯体(Ir−4)をLC−MSおよびH−NMRにより同定した。その結果を以下に示す。
【0290】
LC−MS(APPI(+))m/z:1313.5([M+H])。
【0291】
H−NMR(300MHz、CDCl
δ0.58−0.77(m,18H)、δ0.87(t,J=7.2Hz,9H)、δ0.97−1.25(m,21H)、δ1.48(m,3H)、δ6.30(dd,3H)、δ6.59(dt,3H)、δ6.91(m,3H)、δ7.00(d,J=8.4Hz,3H)、δ7.51(d,J=4.2Hz,3H)、δ7.61(d,J=8.4Hz,3H)、δ7.83(brs,3H)、δ8.08(s,3H)、δ8.25(dd,3H)。
【0292】
(実施例4)
キシレンに、合成例1で得た高分子(P−1)と実施例3で得た金属錯体(Ir−4)とを、質量比((P−1):(Ir−4))=95:5で添加し、前記高分子(P−1)と前記金属錯体(Ir−4)とからなる発光材料のキシレン溶液(濃度1.4質量%)を調製した。
【0293】
この発光材料のキシレン溶液を回転速度1000rpmでスピンコーティングした以外は実施例2と同様にしてEL素子を作製した。得られたEL素子に電圧を印加して660nmおよび615nmにピークを有する赤色のEL発光が得られることを確認した。また、このEL素子の最大輝度は3922cd/mであった。
【0294】
さらに、このEL素子を340cd/mの初期輝度で定電流駆動を一定時間施したところ、輝度が前記初期輝度の80%になるまでの時間は291時間であった。
【0295】
(比較例1)
国際公開第03/040256号パンフレットに記載の方法に従って、下記式(7):
【0296】
【化29】

【0297】
で表される金属錯体を合成した。この金属錯体を使用し、前記発光材料のキシレン溶液を回転速度1000rpmでスピンコーティングした以外は実施例2と同様にしてEL素子を作製した。得られたEL素子に電圧を印加して620nmにピークを有する赤色のEL発光が得られることを確認した。
【0298】
さらに、このEL素子を実施例2と同様にして340cd/mの初期輝度で定電流駆動を一定時間施したところ、輝度が前記初期輝度の80%になるまでの時間は2.8時間であった。
【0299】
以上に示した結果から明らかなように、本発明の金属錯体を含むEL素子(実施例2、4)は、従来の金属錯体を含むEL素子(比較例1)に比べて長寿命であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0300】
以上説明したように、本発明によると、ピロロキノキサリン骨格と環構造とを含む金属錯体またはそれから導かれる構造を有する組成物を得ることができる。この組成物を含有する素子は良好な発光特性または光電特性を有し且つ寿命特性に優れる。
【0301】
したがって、本発明の組成物を含有する素子は、面状光源などの各種光源、セグメント表示装置およびドットマトリックス表示装置などの各種表示装置、液晶表示装置などのバックライト、各種照明、ならびに太陽電池などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

(式(1)中、Mは遷移金属原子を表し、環Aは5員環、6員環、またはこれらの縮合環を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、また置換基を有していてもよい。R〜Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、および1価の複素環基からなる群から選択される置換基(該置換基の一部の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。)、アミド基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、水素原子、またはハロゲン原子を表す。)
で表される部分構造を含有することを特徴とする金属錯体。
【請求項2】
前記環Aがピロリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、チエニル基、フリル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ナフチル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、およびインダゾリル基からなる群から選択される環状構造(該環状構造は置換基を有していてもよい。)であることを特徴とする請求項1に記載の金属錯体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の金属錯体と電荷輸送性材料とを含有することを特徴とする組成物。
【請求項4】
前記電荷輸送性材料が低分子有機化合物であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記電荷輸送性材料が高分子またはオリゴマーであることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記高分子またはオリゴマーが共役系のものであることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の金属錯体から水素原子を1個以上除いた残基を含有する高分子またはオリゴマーを含むことを特徴とする組成物。
【請求項8】
前記高分子またはオリゴマーが共役系のものであることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記高分子またはオリゴマーが電荷輸送性材料であることを特徴とする請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
さらに電荷輸送性材料を含有することを特徴とする請求項7または8に記載の組成物。
【請求項11】
前記電荷輸送性材料が、置換基を有していてもよいフェニレン基および/または下記式(2):
【化2】

(式(2)中、−X−は、−O−、−S−、−Se−、−BR21−、−SiR2122−、−PR21−、−P(=O)R21−、−CR2122−、−CR2122−CR2324−、−O−CR2122−、−S−CR2122−、−NR23−CR2122−、−SiR2122−CR2324−、−SiR2122−SiR2324−、−CR21=CR22−、−NR21−、−N=CR21−、または−SiR21=CR22−を表し、R21〜R24はそれぞれ独立に、他の原子との結合手、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、水素原子、またはハロゲン原子を表す。RおよびRはそれぞれ独立に、他の原子との結合手、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、またはアリール基を表す。mおよびnはそれぞれ独立に0〜4の整数である。RおよびRがそれぞれ複数個存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよい。また、式(2)で表される構造は少なくとも1つの結合手を有する。)
で表される部分構造を含有する高分子またはオリゴマーであることを特徴とする請求項5、6、9、および10のうちのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記電荷輸送性材料が、下記式(3):
【化3】

(式(3)中、−X−は、−O−、−S−、−Se−、−BR31−、−SiR3132−、−PR31−、−P(=O)R31−、−CR3132−、−CR3132−CR3334−、−O−CR3132−、−S−CR3132−、−NR33−CR3132−、−SiR3132−CR3334−、−SiR3132−SiR3334−、−CR31=CR32−、−NR31−、−N=CR31−、または−SiR31=CR32−を表し、R31〜R34はそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、水素原子、またはハロゲン原子を表す。RおよびRはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、またはアリール基を表し、pおよびqはそれぞれ独立に0〜3の整数である。RおよびRがそれぞれ複数個存在する場合にはそれらは同一であっても異なっていてもよい。*は他の繰り返し単位との結合部位を表す。)
で表される繰り返し単位を含有する共役系高分子または共役系オリゴマーであることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記電荷輸送性材料が、さらに下記式(4)または(5):
【化4】

(式(4)および(5)中、Ar、Ar、Ar、Ar、およびArはそれぞれ独立にアリーレン基または2価の複素環基を表し、Ar、Ar、およびArはそれぞれ独立にアリール基または1価の複素環基を表す。Ar、Ar、Ar、およびArは置換基を有していてもよい。sおよびtはそれぞれ独立に0または1であり、0≦s+t≦1の条件を満たす。)
で表される繰り返し単位を含有する共役系高分子または共役系オリゴマーであることを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項3〜13のうちのいずれか一項に記載の組成物を含有することを特徴とする液状組成物。
【請求項15】
25℃における粘度が0.5〜500mPa・sであることを特徴とする請求項14に記載の液状組成物。
【請求項16】
請求項1もしくは2に記載の金属錯体または請求項3〜13のうちのいずれか一項に記載の組成物を含有することを特徴とする発光性薄膜。
【請求項17】
請求項1もしくは2に記載の金属錯体または請求項3〜13のうちのいずれか一項に記載の組成物を含有することを特徴とする導電性薄膜。
【請求項18】
請求項1もしくは2に記載の金属錯体または請求項3〜13のうちのいずれか一項に記載の組成物を含有することを特徴とする有機半導体薄膜。
【請求項19】
請求項1もしくは2に記載の金属錯体または請求項3〜13のうちのいずれか一項に記載の組成物を含有することを特徴とする素子。
【請求項20】
陽極と、前記陽極上に配置された請求項1もしくは2に記載の金属錯体または請求項3〜13のうちのいずれか一項に記載の組成物を含有する層と、前記層上に配置された陰極とを備えることを特徴とする請求項19に記載の素子。
【請求項21】
前記陽極と前記陰極との間に、さらに電荷輸送層または電荷阻止層を備えることを特徴とする請求項20に記載の素子。
【請求項22】
前記素子が発光素子であることを特徴とする請求項19〜21のうちのいずれか一項に記載の素子。
【請求項23】
前記素子がスイッチング素子であることを特徴とする請求項19〜21のうちのいずれか一項に記載の素子。
【請求項24】
前記素子が光電変換素子であることを特徴とする請求項19〜21のうちのいずれか一項に記載の素子。
【請求項25】
請求項22に記載の素子を備えることを特徴とする面状光源。
【請求項26】
請求項22に記載の素子を備えることを特徴とするセグメント表示装置。
【請求項27】
請求項22に記載の素子を備えることを特徴とするドットマトリックス表示装置。
【請求項28】
請求項22に記載の素子をバックライトとして備えることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項29】
請求項22に記載の素子を備えることを特徴とする照明。
【請求項30】
請求項23に記載の素子を備えるアクティブマトリックス駆動回路を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項31】
請求項23に記載の素子を備えるアクティブマトリックス駆動回路を有することを特徴とする発光表示装置。
【請求項32】
請求項24記載の素子を備えることを特徴とする太陽電池。
【請求項33】
請求項1または2に記載の金属錯体から水素原子を1個以上除いた残基を含有することを特徴とする高分子。
【請求項34】
請求項1または2に記載の金属錯体から水素原子を1個以上除いた残基を含有することを特徴とするオリゴマー。

【公開番号】特開2009−149617(P2009−149617A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298099(P2008−298099)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】