説明

金網・ゴム複合材の製造方法

【課題】加熱・加圧成型時のゴムの流動によっても金網の線材が横ずれすることなく、金網とゴムとが一体化された金網・ゴム複合材を得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】金網シート1と未加硫のゴムシート2とを重ね合わせ、該未加硫のゴムが流動しない程度の温度と圧力で予備的に加熱・加圧し、その後、上記ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型して、金網シート1の網目空間1b内にゴムが浸透・充填された状態で金網シート1とゴムシート2とが一体化された複合材Sを得るようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用エンジンの内燃機関等におけるシリンダブロックと、シリンダヘッドとの間に介装されるシリンダヘッドガスケットや各種ガスケット、シート状防音防振材、動的シール材等に使用される金網・ゴム複合材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上記のようなシリンダヘッドガスケットとして、芯材とゴムとの複合材が多用されている。このような複合材の例としては、特許文献1に開示されたように、表裏両面から多数の孔を形成した金属薄板、金網、或いはエキスパンドメタルを芯材とし、これら芯材の両面にアスベストとゴムとの混和物を圧着被覆したものが挙げられる。本特許文献1では、金属薄板に形成した孔内或いは金網の網目空間内に混和物を完全に充填させることができずに空間部分が残ることがある等の点に鑑み、芯材としてエキスパンドメタルを採用している。
【0003】
然るに、その後の金網を芯材とした複合材の研究の過程で、未加硫のゴムシートと金網シートとを重ね合わせ、両シートをゴムの加硫温度で加熱・加圧成型すると、金網の網目空間内にゴムが浸透・充填された状態で金網シートとゴムシートとが一体化され、上記のようにゴムが完全に充填されずに空間部分が残るような現象はなくなることが判明した。また、平織だけでなく、畳織、平畳織、綾織等の多様且つ緻密な金網が開発され、その強靭性或いは弾性を備えた特性とゴムの弾性特性とが相乗して、上記ガスケット等としての適性が再評価されることになった。
【特許文献1】実開昭54−3564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、未加硫のゴムシートと金網シートとを重ね合わせ、両シートをゴムの加硫温度で加熱・加圧成型すると、未加硫ゴムが加硫される過程での横方向(面域方向)への流動性によって、緻密な金網であってもその網目空間内にゴムが浸透して充填され、空間部分が残るような現象はなくなるが、このゴムの流動性により、金網の線材自体も横ずれし、端部では解れたりする現象も見られ、これが、金網とゴムとの面域方向での均質性が損なわれる原因になることもあった。このように、部分的な金網とゴムとの相互偏析による不均質状態が存在すると、ガスケットに応用した場合、湾曲したり、残留応力を持ったりして、シール性に影響を及ぼすことになる為、ガスケットへの実用化には未だ十分ではなく、その製造上の抜本的な改善が望まれるところであった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、加熱・加圧成型時のゴムの流動によっても金網の線材が横ずれすることなく、金網とゴムとが均質に一体化された金網・ゴム複合材を得ることができる製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る金網・ゴム複合材の製造方法は、金網シートと未加硫のゴムシートとを重ね合わせ、該未加硫のゴムが流動しない程度の温度と圧力で予備的に加熱・加圧し、その後、上記ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型して、金網シートの網目空間内にゴムが浸透・充填された状態で金網シートとゴムシートとが一体化された複合材を得るようにしたことを特徴とする。
【0007】
本発明においては、請求項2の発明のように、前記金網シートに、事前に厚み方向に圧偏化した領域を形成しておくことができる。また、請求項3の発明のように、前記ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型する際に、金網シートに、厚み方向に圧偏化した領域を形成し得るような成型型を用いて加熱・加圧を行うようにすることもできる。
【0008】
請求項4の発明に係る金網・ゴム複合材の製造方法は、事前に厚み方向に圧偏化した領域が形成された金網シートと未加硫のゴムシートとを重ね合わせ、両シートを、上記ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型して、金網シートの網目空間内にゴムが浸透・充填された状態で金網シートとゴムシートとが一体化された複合材を得るようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明に係る金網・ゴム複合材の製造方法は、金網シートと未加硫のゴムシートとを重ね合わせ、金網シートに厚み方向に圧偏化した領域を形成し得るような成型型を用いて、両シートを、上記ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型して、金網シートの網目空間内にゴムが浸透・充填された状態で金網シートとゴムシートとが一体化された複合材を得るようにしたことを特徴とする。
【0010】
そして、上記いずれかの発明においては、請求項6の発明のように、前記ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型する際に、金網シートの一部が成型型の外に露出するようにして加熱・加圧を行うようにすること、或いは、請求項7の発明のように、前記ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型する際の成型型が、上型と下型とよりなり、該上型と下型との割り面が加圧方向と平行な面で形成され、該割り面の間隙が金網シートを構成する金属線材の線径より小とされているものとすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明においては、ゴムシートを構成する未加硫のゴムが流動しない程度の温度と圧力で予備的に加熱・加圧して両シートを貼着した上で、上記ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型するようにしているから、先の予備的な加熱・加圧時にはゴムが粘弾性変形して金網の網目空間内に押入され、この押入部分の楔的作用によってゴムシートと金網シートとが相互に貼着一体とされ、その後のゴムの加硫温度での加熱・加圧成型時には、ゴムの横方向への流動を少なくするよう制御して、金網の網目内にゴムが浸透・充填された状態で金網シートとゴムシートとを一体化させることが可能となる。従って、ゴムの上記流動に伴う金網線材の横ずれも少なくなり、金網とゴムとの相互の偏析のない均質な金網・ゴム複合材が得られる。また、断面上ゴム量の異なる形状(厚さ方向にゴム厚さが異なる形状)のものを製造する場合においても、少々のゴムの横流動が生じても既にゴムが充填された金網シート内を流動する為金網線材の横ずれは小さなものとなる。
【0012】
そして、請求項2の発明のように、金網シートに、事前に厚み方向に圧偏化した領域を形成しておけば、ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型する際において、この圧偏化部分で金網の拘束力が発現されるから、ゴムの横方向への流動が抑えられ、金網シートの金属線材の横ずれも生じ難くなり、金網とゴムとの相互の偏析のない均質な金網・ゴム複合材がより確実に得られる。また、請求項3の発明のように、ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型する際に、金網シートに、厚み方向に圧偏化した領域を形成し得るような成型型を用いて加熱・加圧を行うようにすれば、加熱・加圧成型時に形成される圧偏化部分で、上記と同様に金網の拘束力が発現されることになり、金網とゴムとの相互の偏析のない均質な金網・ゴム複合材がより確実に得られる。
【0013】
請求項4及び請求項5の発明は、上記のような予備的な加熱・加圧工程を経ずに、重ね合わせた金網シートと未加硫のゴムシートとを、直接ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型して金網・ゴムの複合材を得る場合であるが、前者の発明のように、事前に厚み方向に圧偏化した領域が形成された金網シートを用いるようにすれば、上記同様、圧偏化部分で金網の拘束力が発現されるから、ゴムの横方向への流動が抑えられ、金網の金属線材の横ずれも生じ難くなり、金網とゴムとの相互の偏析のない均質な金網・ゴム複合材が得られる。また、後者の発明でも同様に、加熱・加圧成型時に形成される圧偏化部分で、上記と同様に金網の拘束力が発現されることになり、金網とゴムとの相互の偏析のない均質な金網・ゴム複合材が得られる。
【0014】
請求項6の発明のように、前記ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型する際に、金網シートの一部が成型型の外に露出している場合、金網シートはこの露出部分の近傍で成型型によって拘束されることになるから、ゴムの流動が抑えられ、これによって金網の金属線材が横ずれすることも少なくなる。加えて、この拘束部分及び露出部分の網目によって空気の排出通路が形成されることになるから、成型時のキャビティ内の空気溜りが生じ難く、緻密な成型体が得られる。
【0015】
また、請求項7の発明のように、前記成型時の成型型が、上型と下型とよりなり、該上型と下型との割り面が加圧方向と平行な面で形成され、該割り面の間隙が金網シートを構成する金属線材の線径より小とすれば、この割り面の間隙にゴムが流動しても、金網の金属線材はこの間隙に侵入することがなく、従って、成型品の縁部で金網が解れたりするようなことがない。また、間隙に流動侵入したゴムは成型バリとして取り除けば良く、成型品の品質低下の要因となることもない。このように、請求項6或いは請求項7の発明を、上記各発明と併用させることにより、金網とゴムとの相互の偏析のない均質な金網・ゴム複合材がより確実に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は本発明の金網・ゴム複合材の製造方法の一実施形態を示す工程図、図2(a)(b)(c)は同実施形態の要部を説明する図、図3(a)(b)(c)は同変形例を示す図2と同様図、図4(a)(b)(c)〜図6(a)(b)(c)は別変形例を示す図2と同様図である。図7は別実施形態の図1と同様図、図8(a)(b)は同実施形態の要部を説明する図、図9(a)(b)は同変形例を示す図8と同様図、図10(a)(b)及び図11(a)(b)は別変形例を示す図8と同様図である。
【実施例1】
【0017】
図1及び図2において、金網シート1を打抜きしてシリンダヘッドガスケット等に適合するよう所望の形状に加工する(ステップS1)。次いで、メチルエチルケトン等の溶剤により金網シート1の脱脂処理を行った(ステップS2)後、金網シート1を耐熱性接着剤にディッピングし約50℃で乾燥して耐熱性接着剤のコーティング処理を行う(ステップS3)。ここで採用される金網シート1は、線径0.04〜2.0mmの金属線材1aを、編成或いは織成(4〜300メッシュ)したものであり、金属線材1aとしては、ステンレス鋼(SUS301、SUS304、SUS316等)、鉄線、亜鉛鉄線、アルミニウム線、銅線、リン青銅線、ニッケル線、モネルメタル線等が採用される。また、金網シート1の形態としては、これら金属線材1aによる、平織、綾織、畳織、平畳織、筵織、簾織等の織物、或いは結節網、無結節網、本目網、蛙叉網、ラッセル網、綟子網、織網等の編物が採用される。
【0018】
一方、ステップS4で、アクリルゴム、エチレンーアクリルゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンープロピレンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エチレン酢ビゴム、塩化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、天然ゴム等のゴム材に、老化防止剤、加工剤、加硫剤等のゴム薬品、及び、カーボンブラック、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、ゼオライト等の無機充填材を加えたゴムコンパウンド材を所定のシート形状に調製して未加硫のゴムシート2を準備する。
【0019】
ステップS5において、上記金網シート1及び未加硫ゴムシート2を積層し(重ね合わせ)、更に、ステップS6において、両シート1、2を加熱プレス装置3によって予備加熱・加圧する。この予備加熱・加圧時の加熱温度は、未加硫のゴムが流動しない程度の温度、即ち、加硫温度より低い温度であり、ゴムシート2が上記のようなゴム材(加硫温度は170〜230℃)からなる場合、80〜100℃である。この予備加熱・加圧工程においては、図2(b)に示すように、ゴムシート2のゴム材の一部が金網1の網目空間1b内に粘弾性変形を伴い押入され、この押入部分の楔的作用によってゴムシート2と金網シート1とが相互に貼着一体とされる。この貼着一体状態は、図2(b)の破線部2aで示すようなゴム材の一部が金網1の網目空間1b内に完全に浸透していない状態の他、網目空間1b内に完全に浸透している状態もあり得、ゴムシート2は未だ未加硫状態であって復元弾力がなく、金網シート1から剥離し得る状態である。
【0020】
次いで、ステップS7において、図2(c)に示すように、上金型4a及び下金型4bからなる成型装置4のキャビティ4c内に上記金網シート1とゴムシート2との貼着一体物を配置し、加熱・加圧成型する。この時の加熱温度は、上記ゴム材の加硫温度、即ち、170〜230℃であり、この加熱・加圧成型工程で、ゴムシート2のゴムが加硫されながら流動し、金網シート1の網目空間1b内に圧入されるように深く浸透し、該網目空間1b内に充填された状態で加硫される。その後の脱型により、金網シート1及びゴムシート2が一体化した複合材(成型品)Sが得られる。このゴムの流動の際、金網シート1の金属線材1aを横ずれさせるような力が作用するが、上記予備加熱・加圧工程(ステップS6)で、ゴムの一部が金網シート1の網目空間1b内に押入されているから、この横ずれさせる力はステップS6を経ずに加熱・加圧成型する場合に比べ弱く、従って、金網とゴムとの相互の偏析のない均質な金網・ゴム複合材Sが得られる。これをシリンダヘッドガスケット等に応用すれば、シール性、耐久性に優れ、また、ゴム材及び金網の有する特有の弾性が相乗し、その適性が飛躍的に向上する。上記成型装置4におけるキャビティ4cは、図2(c)に示すように金網シート1の縁部が流動したゴムによって覆われるような形状であることが望ましい。
【0021】
尚、ステップS3の接着剤処理・乾燥工程は、金網シート1とゴムシート2との強固な一体化を図る上で望ましく採用されるが、ステップS7の加熱・加圧工程で、ゴムが金網シート1の網目空間1b内に深く浸透し、該網目空間1b内に充填された状態で金網シート1とゴムシート2とが互いに絡み合うよう一体とされるから、その結合強度は大であり、従って、使用目的によっては、この接着剤処理・乾燥工程を割愛することは可能である。また、金網シート1を所望形状に打ち抜いた(ステップS1)上で、その後の工程を実行させるようにしているが、両シート1、2をそのままステップS2〜S7の工程に従い一体化して、複合体Sを得た後、所望形状に打抜き加工することも可能である。このようにした場合、金網シート1は加硫されたゴムによって固定化されているから、打抜き部端面から金属線材がバラバラになることもなく、また、端面に金属線材がむき出しになることがないので、製造時の取り扱いが容易なものとなる。更に、ステップS6とステップS7との間において所望形状に打抜き加工することも可能である。これらの打抜き加工工程は、いずれかを併用することも可能であり、例えば、ステップS1で金網シート1のみに孔を形成し、ステップS6の後及び/若しくはステップS7の後で、別孔や成型品の周縁部分を打抜き、或いは孔周りに段差やビード部の形成と同時に所望形状の孔の打抜き加工を行う等も採用可能である。
【0022】
図3は、事前に厚み方向に圧偏化した領域1cを形成した金網シート1を用いた場合を示している。即ち、この領域1cは適当なプレス装置によって金網シート1の網目構造を押し潰すようにして圧偏化し形成されたものであり、網目構造が他の部位に比べて緻密になっている。このような金網シート1を用いる場合も、図1のステップS1〜S6の工程は同様に実行され、ステップS7の工程においては、上金型4aが、キャビティ4c側の面における上記領域1cに対応する部位に突出部4dを備えた成型装置4によって、上記同様の加熱・加圧成型工程が実行される。この場合、突出部4dの形成部位では、ゴムシート2及び金網シートが強く圧縮されるが、領域1cにおける網目構造が緻密であるから、その拘束力によってゴムの横方向への流動性が抑えられ、ステップS6の予備加熱・加圧工程による上記作用・効果と相俟って、金網シート1の金属線材1aの横ずれ防止機能がより有効に発現される。その他の構成は上記と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
【0023】
図4は、ステップ7における加熱・加圧成型工程において、金網シート1に厚み方向に圧偏化した領域1dを形成するようにした例を示している。即ち、金網シート1として、図2の場合と同様圧偏化加工が施されていないものが用いられ、ステップS1〜S6の工程は上記と同様に実行される。ステップS7の工程においては、上金型4aがキャビティ4c側の面に突出部4eを備えた成型装置4によって上記同様の加熱・加圧成型工程が実行される。この突出部4eにおいては、下金型4bとの間で形成されるキャビティ4cの上下幅が狭くなるので、ゴムシート2と共に金網シート1が強く圧縮され、金網シート1の網目構造が押し潰されるようにして圧偏化され、図のように圧偏化した領域1dが形成される。従って、この領域1dは上記同様網目構造が緻密化し、その拘束力によってゴムの横方向への流動性が抑えられ、上記同様、ステップS6の予備加熱・加圧工程による上記作用・効果と相俟って、金網シート1の金属線材1aの横ずれ防止機能がより有効に発現される。その他の構成は上記と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその説明を割愛する。
【0024】
図5は、ステップS7の加熱・加圧成型工程において、金網シート1の一部が、成型装置4の成型金型4a、4bの外に露出するようにして、加熱・加圧成型を行うようにした例を示している。即ち、図5(a)に示すように、未加硫ゴムシート2は、金網シート1より小さなものが用いられ、また、ステップS7の加熱・加圧成型工程においては、キャビティ4cがゴムシート2を収容し得る大きさで且つ成型金型4a、4bの外に金網シート1の一部が露出するような構造の成型装置4が用いられる。そして、成型金型4a、4bの一側部側の上下に対向する割り面4f、4gは、その間隔が金網シート1の厚みより小とされ、金網シート1の一部が該割り面4f、4g間で挟持されるようになされている。
【0025】
従って、本ステップS7の加熱・加圧成型工程では、キャビティ4c内において、上記同様、ゴムが加硫されながら流動し、金網シート1の網目空間1b内に圧入されるように深く浸透し、該網目空間1b内に充填された状態で、金網シート1及びゴムシート2が一体化した複合材(成型品)Sが得られる。この時、割り面4f、4g間では、金網シート1の一部が挟持され拘束されているから、ゴムの横方向の流動に伴う金網シート1の金属線材1aの横ずれが阻止される。従って、上記同様、ステップS6の予備加熱・加圧工程による上記作用・効果と相俟って、金網シート1の金属線材1aの横ずれ防止機能がより有効に発現される。また、この挟持部分での網目空間1bを通じて、キャビティ4c内の空気が排出されると共に、金網シート1内を流れるゴムの流動圧によってキャビティ4c内が高圧に保持されるから、成型品S内に空気溜りが生じず、ガスケット等に有用な緻密な複合材が得られる。更に、割り面4f、4g間の間隙を、加圧成型時に金属シート1が圧偏化されるような大きさにしておけば、図4の例と同様の効果も付加される。その他の構成は上記と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその説明を割愛する。
【0026】
図6は、ステップS7の加熱・加圧成型工程において用いられる成型装置5の上金型5a及び下金型5bにおけるキャビティ5c周縁の割り面5d、5eが加圧方向と平行な面で形成され、該割り面5d、5eの間隙dが、金網シート1を構成する金属線材1aの線径Dより小とされている例を示すものである。この例の場合も、ステップS1からS6の予備加熱・成型工程は、図2の例の場合と同様に実行されるが、ステップS7の加熱・加圧成型工程においては、上記成型装置5を用いて加熱・加圧成型がなされる。従って、キャビティ5c内でのゴムの横方向の流動によって、金網シート1の金属線材1aを横ずれさせる力が作用しても、該金属線材1aが上記間隙dに侵入することがなく、金属線材1aの解れが阻止され、上記同様、ステップS6の予備加熱・加圧工程による上記作用・効果と相俟って、金網シート1の金属線材1aの横ずれ防止機能がより有効に発現される。その他の構成は上記と同様であるので、ここでも共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
【0027】
尚、図5或いは図6に示す例は、図3或いは図4に示す例と併用することも可能であり、併用による相乗効果から、より特性の優れた金網・ゴム複合材を得ることができる。
【実施例2】
【0028】
図7及び図8に示す例は、本発明の第二実施形態を示すものであり、上記第一実施形態における予備加熱・加圧工程(ステップS6)を経ずに、重ね合わせた金網シート1と未加硫のゴムシート2とを、ステップS7の加熱・加圧成型工程において直接ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型して、金網・ゴムの複合材(成型品)Sを得ることを基本構成とし、上記図3の例と同様に、事前に厚み方向に圧偏化した領域1cを形成した金網シート1を用いたことを特徴としている。この例の場合、第一の実施形態におけるステップS6の予備加熱・加圧工程による作用・効果は付加されないが、圧偏化した領域1cの拘束力によってゴムの横方向への流動性が抑えられ、金網シート1の金属線材1aの横ずれ防止機能が発現される。その他の構成は図3の例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付してその説明を割愛する。
【0029】
図9に示す例は、その基本構成は図8の例と共通するが、ステップ7における加熱・加圧成型工程において、図4の例と同様に金網シート1に厚み方向に圧偏化した領域1dを形成するようにした点に特徴を有するものである。従って、この例の場合も、第一の実施形態におけるステップS6の予備加熱・加圧工程による作用・効果は付加されないが、圧偏化した領域1dの拘束力によってゴムの横方向への流動性が抑えられ、金網シート1の金属線材1aの横ずれ防止機能が発現される。その他の構成は図4の例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付してその説明を割愛する。
【0030】
図10に示す例は、上記同様その基本構成は図8の例と共通するが、ステップ7における加熱・加圧成型工程において、図5の例と同様に、金網シート1の一部が、成型装置4の成型金型4a、4bの外に露出するようにし、且つ上記同様上下に対向する割り面4f、4g間で金網シート1の一部を挟持して、加熱・加圧成型を行うようにした点に特徴を有するものである。従って、この例の場合も、第一の実施形態におけるステップS6の予備加熱・加圧工程による作用・効果は付加されないが、割り面4f、4g間では、金網シート1の一部が挟持され拘束されているから、ゴムの横方向の流動に伴う金網シート1の金属線材1aの横ずれも阻止される。また、この挟持部分での網目空間1bを通じて、キャビティ4c内の空気が排出されると共に、金網シート1内を流れるゴムの流動圧によってキャビティ4c内が高圧に保持されるから、成型品S内に空気溜りが生じず、ガスケット等に有用な緻密な複合材が得られる。その他の構成は図5の例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付してその説明を割愛する。
【0031】
図11に示す例は、上記同様その基本構成は図8の例と共通するが、図6の例と同様に、ステップS7の加熱・加圧成型工程において用いられる成型装置5の上金型5a及び下金型5bにおけるキャビティ5c周縁の割り面5d、5eが、加圧方向と平行な面で形成され、該割り面5d、5eの間隙dが金網シート1を構成する金属線材1aの線径Dより小とされている点に特徴を有するものである。従って、この例の場合も、第一の実施形態におけるステップS6の予備加熱・加圧工程による作用・効果は付加されないが、キャビティ5c内でのゴムの流動によって、金網シート1の金属線材1aを横ずれさせる力が作用しても、該金属線材1aが上記間隙dに侵入することがなく、金属線材1aの解れが阻止される。その他の構成は図6の例と同様であるので、共通部分に同一の符号を付してその説明を割愛する。
【0032】
尚、図10或いは図11の例と図8或いは図9の例とを併用することは可能であることは上記と同様である。また、本発明の製造方法によって得られる金網・ゴム複合材は、シリンダヘッドガスケットに限らず、内燃機関の各種ガスケット、シート状防音防振材、動的シール材等への応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の金網・ゴム複合材の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図2】(a)(b)(c)は同実施形態の要部を説明する図である。
【図3】(a)(b)(c)は同変形例を示す図2と同様図である。
【図4】(a)(b)(c)は別変形例を示す図2と同様図である。
【図5】(a)(b)(c)は別変形例を示す図2と同様図である。
【図6】(a)(b)(c)は別変形例を示す図2と同様図である。
【図7】別実施形態の図1と同様図、である。
【図8】(a)(b)は同実施形態の要部を説明する図である。
【図9】(a)(b)は同変形例を示す図8と同様図である。
【図10】(a)(b)は別変形例を示す図8と同様図である。
【図11】(a)(b)は別変形例を示す図8と同様図である。
【符号の説明】
【0034】
1 金網シート
1a 金属線材
1b 網目空間
1c 圧偏化した領域
1d 圧偏化した領域
2 未加硫のゴムシート
4a 上金型(成型型)
4b 下金型(成型型)
5a 上金型(成型型)
5b 下金型(成型型)
5d 割り面
5e 割り面
d 割り面の間隙
D 金属線材の線径
S 成型品(複合材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金網シートと未加硫のゴムシートとを重ね合わせ、該未加硫のゴムが流動しない程度の温度と圧力で予備的に加熱・加圧し、その後、上記ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型して、金網シートの網目空間内にゴムが浸透・充填された状態で金網シートとゴムシートとが一体化された複合材を得るようにしたことを特徴とする金網・ゴム複合材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金網・ゴム複合材の製造方法において、
前記金網シートに、事前に厚み方向に圧偏化した領域を形成しておくことを特徴とする金網・ゴム複合材の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の金網・ゴム複合材の製造方法において、
前記ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型する際に、金網シートに、厚み方向に圧偏化した領域を形成し得るような成型型を用いて加熱・加圧を行うようにしたことを特徴とする金網・ゴム複合材の製造方法。
【請求項4】
事前に厚み方向に圧偏化した領域が形成された金網シートと未加硫のゴムシートとを重ね合わせ、両シートを、上記ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型して、金網シートの網目空間内にゴムが浸透・充填された状態で金網シートとゴムシートとが一体化された複合材を得るようにしたことを特徴とする金網・ゴム複合材の製造方法。
【請求項5】
金網シートと未加硫のゴムシートとを重ね合わせ、金網シートに厚み方向に圧偏化した領域を形成し得るような成型型を用いて、両シートを、上記ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型して、金網シートの網目空間内にゴムが浸透・充填された状態で金網シートとゴムシートとが一体化された複合材を得るようにしたことを特徴とする金網・ゴム複合材の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の金網・ゴム複合材の製造方法において、
前記ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型する際に、金網シートの一部が成型型の外に露出するようにして加熱・加圧を行うようにしたことを特徴とする金網・ゴム複合材の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の金網・ゴム複合材の製造方法において、
前記ゴムの加硫温度で加熱・加圧成型する際の成型型が、上型と下型とよりなり、該上型と下型との割り面が加圧方向と平行な面で形成され、該割り面の間隙が金網シートを構成する金属線材の線径より小とされていることを特徴とする金網・ゴム複合材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−16861(P2007−16861A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197860(P2005−197860)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】