説明

金黄色の藻類及びその製造方法

本発明は、培養の間、培地中の窒素に対する炭素の含有量の割合を変化させ、かつ周期的にクエン酸塩及び酢酸塩により培地を助成することによりカロチノイドの生成を高め、かつ藍藻類を金黄色に変化させるカロチノイドに富んだ金黄色の藻類を培養方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カロチノイドに富んだ藻類及び藻類バイオマス(biomass)の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
藻類(algae)は単純な植物に似た生物体である。それは、単細胞又は多細胞の生物体である。藻類は天然に見出され、種々のクラスに分類され、また、種々の色や形態で見出される。栄養価が高いことや、食料源が減少し、人口が常に増加し、かつ農業地が減少する理由から、藻類は、将来の潜在的な食料と考えられている。栄養的成分のほかに、藻類、特に、微細藻類(microalgae)は、貴重な添加剤、治療用、化学−予防性や工業的用途を有する他の化合物や色素材の主要な原料でもある。
【0003】
カロチノイドは、種々の用途を有する色素(pigments)類である。その用途としては、健康食品、化粧品、家禽、家畜、魚、甲殻類の餌添加物、医薬品における治療用、化学−予防用の補助材、さらに、種々の産業における着色剤がある。栄養補助食品ブームは、主に、それらについて明らかにされた抗酸化性や治療性のために混合カロチノイドの需要を増大させている。近年になって発見されたその健康上の利点はさらにカロチノイドの市場におけるポテンシャルを増大させている。カロチノイドの成長する世界的な市場価値は、近い将来10億米ドル(約1000億円)以上に達するものと予想されている。天然品に対する消費者の要求は、有害性の問題から、合成物よりはむしろ、生物原料からのカロチノイドの生産を有利にしている。
【0004】
多くの研究により、天然の混合カロチノイドは、良好な相乗的な効果を有し、個々のカロチノイドの成分よりも大きな抗酸化性を有することを明らかになった。これは、個々のカロチノイドの成分よりも天然の混合カロチノイドを取得することにより大きな利益をもたらす。天然の混合カロチノイドは、植物材料又は微細藻類を含む生物源から取得することができる。しかし、植物におけるカロチノイドの合成の生産性や割合は、比較的小さく、結果として植物から生産されるカロチノイドは、高価である。藍(blue‐green)類を含む幾つかの微細藻類がカロチノイドを含むことが発見され、天然の混合カロチノイドを生産するために微細藻類を利用する利点が増大している。
【0005】
スピルリナ(spirulina)は、シアノバクテリア門(phylum)に属する原核性の藍微細藻類の原始的な形態である。スピルリナ種は、光合成性、フィラメント状の、棒〜螺旋状の形態を有する。最も重要な種は、スピルリナ マキシマ(maxima)、スピルリナ フシフォルミス(fusiformis)、スピルリナ パシフィカ(pacifica)、スピルリナ プラテンシス(platensis) 及び他の多くのものである。スピルリナは、種々の生物的活性及び栄養的重要性を有する天然の生物活性や栄養成分の貴重な原料である。最近の研究によると、スピルリナの抗酸化性や免疫刺激性は、その混合カロチノイドやポリサッカライド成分によることも明らかにされている。
【0006】
スピルリナの化学組成は、蛋白質を55000−72000mg/100g、炭水化物を15000―25000mg/100g、脂肪(リピッド)を6000−8000mg/100g、加えて、ビタミンを350−650mg/100g、ミネラルを5000−7000mg/100g、色素に似た天然混合カロチノイドを370mg/100g、クロロフィル−aを1000mg/100g、及びサイコシアニンを14000mg/100gである。スピルリナの天然の混合カロチノイド成分は、ベータ−カロチン、ゼアキサンテン(zeaxanthene)、エキネノン(echinenone)、ベータ−クリプトザンテン(beta-cryptoxanthene)、ヒドロキシエキネノン(hydroxyechinenone)及び他のカロチノイドからなることが報告されている。食料や餌の補助剤、栄養補助食品、及び化粧品における最終用途に対し、スピルリナの需要が世界的に増加している。しかし、その濃い藍色や、味および香りなどの他の感覚的特性はそれほど良いものではないために、その大きな商業的使用を制限している。
【0007】
これまで、利用できるスピルリナを生産するために提案されている多くの培養手順(protocol)がある。
特許文献1は、藍色の藻類の成長及び増殖に関する。該特許は、スピルリナを培養する場合の炭素源やpH値を制御し、コントロールする方法を開示している。NaHCO又は二酸化炭素を培養媒地に添加してpHを精密に制御し、藍色の藻類の成長及び繁殖を促進させている。
【0008】
特許文献2は、NaHCOを含有するpHが8〜11、水温25〜40℃の無機化合物中での食用の新鮮なスピルリナの培養に関する。
特許文献3は、NaHCO、NaNO及び他の無機栄養分を含む媒地を使用した連続フロー培養にて成長したスピルリナ プレテンシスの変異体を開示する。
特許文献4は、培養溶液に特定量の縮合リン酸塩、充分な鉄イオンを解離させ、解離状態を維持してその成長を促進する海の藍色の藻類の培養方法を開示する。上記したように、NaCO、NaHCO、NaHPO及び他の無機塩が栄養分として添加されている。pH調整剤若しくは緩衝剤が藻類の成長にとって適切なpHレベルを得るために添加されている。
【0009】
特許文献5は、海水をベースとする媒体中で、重炭酸ナトリウム塩を1.2〜3.0%w/vの範囲、窒素含有量を0.1〜0.3%w/vの範囲、リンを0.1〜0.3%w/vの範囲、及びカリを0.1〜0.3%w/vの範囲で、pHを6.5及び8.0にしてスピルリナをバイオマス生成させるプロセスを開示している。
上記した特許文献は、より高いスピルリナを得るための栄養分の添加及び方法を主に開示している。
【0010】
さらに、幾つかの栄養成分である鉄、セレニウム、ゲラニウムなどを選択的に増大するプロトコールが提案されている。
特許文献6は、メチオニン第一鉄(ferrous)を使用し、鉄分に富んだスピルリナを生産に関する。
特許文献7は、ゲラニウム及びセレニウムを含有するスピルリナを生産するために二酸化ゲラニウム及びセレン酸ナトリウム中におけるスピルリナの培養を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】CN121883
【特許文献2】CN1254012
【特許文献3】RO117388
【特許文献4】JP1037281(特開昭64−37281号)
【特許文献5】AU2004322412
【特許文献6】CN1144844
【特許文献7】CN1092104
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、これまで、かなり多量の天然の混合カロチノイドを含有する藍色の藻類などのスピルリナ又は他の微細藻類を成長させることには成功していない。加えて、良好な外観や改善した感覚特性を有するスピルリナの製造に着目した大きな努力はされてこなかった。
したがって、天然の混合カロチノイドを増大した量で含有し、かつ良好な外観や改善した感覚特性を有する、スピルリナ及び他の藍細藻類などの微細藻類を培養する要求は満たされていなかった。
【0013】
本発明は、カロチノイド及びバイオマスに富んだ藻類を培養する方法を提供することを目的とする。
本発明は、カロチノイド及び炭水化物に富んだ藻バイオマスを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一つの態様によれば、以下の過程を含む。カロチノイドに富んだ金黄色の(goluden yellow)藻類を培養する方法が提供される。低炭素濃度及び中程度の窒素濃度を有する培地中で、藻類を始めの5〜7日間培養する過程;次いで、炭素の濃度を増大させ、かつ窒素の濃度を減少させて、その藻類を5〜7日間培養する過程;炭素源の濃度を増加させた後、培地を周期的に高炭素の有機栄養剤を補充する過程;その後に、金黄色のカロチノイドに富んだ藻類を収集する過程。
培養に使用される藻類は、藍色の藻類の属(genus)から選択される。培養する間の培地中の窒素に対する炭素の割合を変え、また、培地を周期的にクエン酸塩や酢酸塩を補充することにより、カロチノイドの生産を高め、かつ、藍の藻類の色を金黄色に変えることになる。
【0015】
本発明の別の態様は、以下の過程で培養されたカロチノイドに富んだ金黄色の藻類を提供する。低炭素及び高窒素を含む培地中で始めの5〜7日間藻類を培養する;次いで、炭素の濃度を増大させ、かつ窒素の濃度を減少させて、藻類を5〜7日間培養する;炭素源の濃度を増加させた後、培地を高炭素有機栄養剤を周期的に補充する;その後に、藻類のカロチノイド含有量が乾燥セルの100gmあたり少なくとも600mgである金黄色のカロチノイドに富んだ藻類を収集して得る。本発明の別の態様によれば、得られた藻類は、乾燥セルの100gmあたり600mg〜1200mgを含有する。
【0016】
本発明の別の態様は、以下の過程を含むカロチノイドに富んだ藻類バイオマスを製造する方法を提供する。低炭素濃度及び適度の窒素濃度を有する培地中で始めの5〜7日間、藻類を培養し、次いで、炭素の濃度及び還元性窒素の濃度を増加させて、藻類を5〜7日間培養し、炭素源の濃度を増加させた後、周期的に培地に高炭素有機栄養剤を補充し、その後に、金黄色のカロチノイドに富んだ藻類を収集する過程を含む。
【0017】
本発明の別の態様は、以下の過程で製造された金黄色のカロチノイドに富んだ藻類を提供する。低炭素及び高窒素を含む培地中で始めの5〜7日間藻類を培養する;次いで、炭素の濃度を増大させ、かつ窒素の濃度を減少させて、藻類を5〜7日間培養する;炭素源の濃度を増加させた後、周期的に培地に高炭素有機栄養剤を補充する;その後に、藻類のカロチノイド含有量が乾燥セルの100gmあたり少なくとも600mgである金黄色のカロチノイドに富んだ藻類のバイオマスを収集して得る。本発明の別の態様によれば、得られた藻類は、乾燥セルの100gmあたり600mg〜1200mgのカロチノイドを含有する。
【0018】
本発明において、「低炭素および中程度の窒素媒地」という用語は、0.1〜0.15g/L(リットル)の濃度の炭素源、0.06〜0.35g/Lの窒素源、及び他の栄養成分を含む液状、又は半固体状のいずれかの栄養性培養地を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一態様の方法により製造された金黄色の藻類を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、その種々の例示の態様について説明されるが、本発明は、その技術思想から離れることなく、その範囲内で、多くの変形、改良、種々の態様の下位態様、最適化、及びバリエーションが可能である。
【0021】
本発明の一つの態様によれば、以下のカロチノイドに富んだ金黄色の藻類を培養する方法が提供される。0.1〜0.15g/Lの炭素源及び0.06〜0.35g/Lの窒素源を含む媒地で5〜7日間、又は藻類が黄色に着色するまで藻類を培養する。これは、藻類を所望の段階まで成長させることになる。クロロフィル及びサイコシアニンの濃度は低下する。低炭素及び適度の培地中で最初に藻類を成長させた後、培地中の炭素源の濃度は、0.2〜1.5g/Lまで増大させ、一方、窒素源の濃度は、0.005〜0.03g/Lまで低下させる。そこで、藻類は続く5〜7日間成長させる。この間、培地は、周期的にクエン酸塩又は酢酸塩又はその組み合わせの形態の高炭素有機栄養剤を助成し、カロチノイドの生成を高め、かつバイオマスを増大させる。12〜15日後に藻類培養物が収集され、藻類バイオマスの形態でカロチノイドに富んだ金黄色の藻類が得られる。
【0022】
本発明のカロチノイドに富んだ金黄色の藻類は、カロチノイドを生成しうる藻類であればいかなる藻類でも培養することにより得られる。本発明のカロチノイドに富んだ金黄色の藻類は、好ましくは、オシラトリア属(Oscillatoria)、スピルリナ属(Spirulina)、ノストック属(Nostoc)、フォルミジウム属(Phormidium)、アフィノゼマノンーフロスアクア属(Aphinozemanon-flosaquae)及びアナベナ属(anabaena)のような藍藻類を培養することにより生産される。一つの態様では、使用される藻類は、スピルリナ属から選ばれる。別の態様では、使用されるスピルリナは、S.プラテンシスである。
【0023】
本発明者によると、培養する間、培地における窒素含有量に対する炭素の割合を変え、また、高炭素有機物を周期的に補充することにより、カロチノイドの生産を2〜3倍高められることが見出された。また、そうすることにより、クロロフィル及びサイコシアニンのレベルの低下をもたらし、藍藻類の色を金黄色に変えることになる。
【0024】
本発明でカロチノイドに富んだ藻類を製造するために使用しうる藍藻類は、シアノフィイタ(cyanophyta)門に属する、事実上、顕微鏡レベルのものである。好ましい態様では、本発明で使用される微小な藍藻類は、それらに限定さることはないが、スピルリナ属(Arthrospira)、オシラトリア属、ノストック属、フォルミジウム属、アフィノゼマノンーフロスアクア属、及びアナベナ属に属するものから選ばれる。
【0025】
本発明における一つの実施態様では、製造されるカロチノイドに富んだ藻類は、スピルリナである、本発明で培養されたスピルリナは、S.プラテンシス(platensis)、S.マキシマ(maxima)、S.フシフォルミス(fusiformis)、S.パシフィカ(pacifica)、S.インジカ(indica)、S.マサルテイ(Massartii)、S.ジェネリ(jenneri)、及びS.サブサラ(Subsala)などのスピルリナ種から選ばれる。本発明で培養されたカロチノイドに富んだスピルリナは、スピルリナ プラテンシスである。
【0026】
天然の生育地、又は保管若しくは種子バンク施設のいずれかから所望の種の藍藻類を入手し、それを適宜の基礎となる栄養媒地中で、本発明の培養方法を使用する所望のバイオマスを得るための適切な培養条件にて培養することにより種菌(inoculum)が生成する。
【0027】
一つの実施態様では、種菌は、スピルリナ種のS. プラテンシスから調製される。上記藻類の培養物は、約8.60〜10.60のpHの範囲、0.2〜10Kluxの光強度の光相及び暗相の各12時間で、また、光合成を高めかつ藻類の培養成長を促進するために2時間毎の撹拌を行う、250mLの培養容器中で、1.5%の寒天(agar)の存在又は存在なしに、50%希釈した既存のザロウク(Zarrouk's )培地中で成長させられる。
【0028】
次いで、種菌は、大規模で藍藻類を生産するために通常使用される媒地に移される。媒地中の炭素及び窒素の濃度は、それぞれ、0.1〜0.15g/Lの炭素源及び0.06〜0.35g/Lに調整され、藻類は、5〜7日間成長し、藻類が黄色に着色し始める。大規模で藻類を培養する分野の当業者には自明であるが、培地は、新鮮な水又は塩水中で調製される。
【0029】
5〜7日間後、培地中の炭素及び窒素の濃度は、それぞれ、0.2〜1.5g/Lの炭素源及び0.005〜0.03g/Lに調整され、藻類は、さらに5〜7日間成長する。この間、培地は、周期的に、クエン酸塩、酢酸塩、又はその組み合わせの形態の高炭素有機栄養剤を補充することにより、藻類セル中のバイオマス及びカロチノイドの生成を促進させる。
【0030】
一つの態様では、培地は、クエン酸第二鉄(ferric)又はクエン酸ナトリウムから選ばれるクエン酸塩化合物が補充される。別の態様では、培地は、酢酸カリウム若しくはナトリウムから選ばれる酢酸塩化合物が補充される。本発明で使用されるクエン酸塩化合物及び酢酸塩化合物の濃度は、表1に示される。
【0031】
【表1】

【0032】
発明において、カロチノイドに富んだ藻類を生成させるために使用される培養装置(system)は、藻類の成長や光合成効率を役立つ限り特に限定されるものではない。培養装置は、小さい規模では、管、瓶、フラスコ、カーボイ、バケット、タブ、タンク、種々のタイプの生物反応器、開放若しくは温室、又はガラスハウス(raceway ponds)からなることができ、50mL(リットル)〜1000Lの大きさである。大規模では、培養装置は、開放若しくは閉鎖の円筒型容器、タンク、種々のタイプの生物反応器、開放若しくは温室、又はガラスハウスから選ばれる。上記した培養装置には、エアーレーション、撹拌機、光及び温度制御機器を備えることができる。
【0033】
さらに、培地には、これらに限定されないが、リン酸水素ニカリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸第一鉄、Mn、Zn、Co、Cu、Moなどの周期表のA5族元素、及び塩化ナトリウムなどから選ばれる栄養剤が供給される。これらの物質は、当業者に知られているように、藻類の成長にとって必要とされるものである。
【0034】
本発明の好ましい態様によると、低炭素で中程度の窒素を含有する培地が表2にしめされる。
【0035】
【表2】

【0036】
本発明における媒地は、新鮮な水又は塩水又はその組み合わせを使用することにより調製される。
本発明の一態様では、使用される炭素源は、重炭酸ナトリウム、又は炭酸ナトリウム、又はその組み合わせから選ばれる。
本発明の一態様では、使用される窒素源は、硝酸ナトリウム又は硫酸アンモニウムから選ばれる。しかし、藍藻類の成長を助ける他の窒素源も本発明の目的に使用できる。
【0037】
本発明の一つの好ましい態様によると、高炭素で中程度の窒素含有の媒地が表3に示される。
【0038】
【表3】

【0039】
全体にわたる培養プロセスの間、藻類の培養温度は、6〜36℃の範囲に保持される。好ましい態様では、該温度は、26〜30℃の範囲に保持するのが好ましい。培養は、約1〜100Klux、好ましくは40〜60Kluxの範囲の光照射される。培養のpHは、7.8〜10.8の範囲に維持されるが、COでエアレーションをしながら、9.2〜9.6の範囲に維持するのが好ましい。発生する酸素を開放し、適切な栄養の摂取を促進し、かつ培養に適切な光を与えるために、培養は、手動又は機械により5rpm若しくはそれ以上、好ましくは12〜16rpmで撹拌される。培養装置の深さは、5cm若しくはそれ以上、好ましくは12〜16cmに保つことにより、藻類バイオマスの成長に良い影響をもたらし、より高いカロチノイドの収率を得られる。
【0040】
低炭素―中窒素の媒地、次いで、高炭素―低窒素の培地で培養し、更に、クエン酸塩及び酢酸塩で周期的に助成するという、上記したパターンを繰り返しは、バッチで、又は連続方式で実施される。
【0041】
カロチノイドに富んだ藻類は、既存の方法により、好ましくは、100〜150メッシュのナイロン製スクリーン又は布を通過させることにより収集される。収集されたカロチノイドに富んだスピルリナ バイオマスのpHは、9.6〜10.8である。カロチノイドに富んだ藻類のpHを低下させるために、バイオマスは、十分な水、好ましくは酸性水で洗浄し、付着した塩を洗い出し、pHを中性か又は約7.0にさせられる。
【0042】
最終的な用途により、藻類は、湿ったバイオマスを天日乾燥、スプレー乾燥、オーブン乾燥、ドラム乾燥、熱気乾燥又は凍結乾燥など適宜の手段により乾燥形態にせしめることができる。
【0043】
本発明により得られるカロチノイドに富んだ藻類又はバイオマスは、湿った形態でも乾燥形態でも、好ましくは、光や空気や湿気を通さない適宜の包装材料中に真空又は窒素で吹き込んで包装し、約4〜28℃の温度で保存することができる。
【0044】
本発明により得られる藻類は、100gmの乾燥セルのバイオマスあたり、少なくとも600mgの混合カロチノイドを含んでいる。さらに、混合カロチノイド量を増大させた本発明のカロチノイドに富んだ藻類は、炭水化物の含有量も100gmの乾燥セルのバイオマスあたり、40000〜60000mgの範囲という顕著に増大している。
【0045】
本発明の方法を使用して培養された藻類は、天然に産出する藻類や従来の培養された藻類よりも2〜3倍高い混合カロチノイドを有し、天然の混合カロチノイドの効率的な資源として利用される。クロロフィルやサイコシアニン量の低下は、良くない外観や感覚的特性を有する天然に産出する藻類や従来の培養された藍藻類に比べて、藻類の見た目の良好さや感覚的特性を改善する。さらに、この点は、食品や餌の補助剤、栄養補助食品、化粧品、及び他の商業的利用分野において藻類の利用範囲を広げることになる。
【0046】
上記において、本発明は、種々の例示の態様について説明したが、本発明は、その技術思想から離れることなく、その範囲内で、多くの変形、改良、種々の態様の下位の態様、最適化、及びバリエーションが可能であることは、本発明の分野の当業者にとって明らかである。
【実施例】
【0047】
実施例1:カロチノイドに富んだ金黄色のスピルリナ プラテンシス;
カロチノイドに富んだ金黄色のスピルリナ プラテンシスを得るために種菌(inoculum)調製液を使用した。pH9.5を有する0.75〜1.5%の寒天(agar)を含有する濃度50%のザロウク(Zarrouk)培地中で12:12時間の光:闇の処方により、2〜10Kluxの光強度で温度28〜32℃において、スピルリナ プラテンシス
トリコマス(trichomes) を培養することにより、無菌状態で種菌を調製した。
得られた種菌は、次いで、pH9〜9.5を有する濃度50%のザロウク培地中で12時間の光と闇の相で、2〜10Kluxの光強度でさらに成長させた。その間、培養栄養分を均一に混合するため、培地をしばしば攪拌して、良好な光合成効率、及び種菌の十分なビルトアップを達成せしめた。
【0048】
上記したスピルリナを本発明の種菌として使用した。20リットルのスピルリナ プラテンシス種菌を、12〜16cmの深さで2×2の池中において、以下に記載する成分を含む低炭素―中窒素の培地中で約5〜7間培養した。
【0049】
【表4】

【0050】
低炭素―中窒素の培地は、約2〜3日の間隔を補充した。培養は、26〜36℃の範囲の温度、10〜80Kluxの光強度、及び攪拌下に、光相の間が約1〜2時間の規則正しい間隔で行った。5〜7日間の培養の終わりに、スピルリナ トリコメスは、目に見える粘性分泌をもつ細長い半浮揚性に見え、また、黄色味をおびたくすんだ茶色がかった緑であった。
【0051】
次いで、炭素―窒素の濃度を増加させた以下の成分を含む高炭素―低窒素培地中で、上記で成長させたスピルリナ プラテンシスを培養した。
【0052】
【表5】

【0053】
培地の温度を16〜36℃の範囲に保持した。培養は、1〜100Kluxの光強度で成長させた。高炭素―低窒素培地中で成長させた後、スピルリナ プラテンシス トリコメスは、目に見える粘性の分泌性で長くふわふわ性のないように見え、かつ金黄色であった。
【0054】
上記のスピルリナ培養物は、さらに、下記するクエン酸塩及び酢酸塩により周期的に助成した。
【0055】
【表6】

【0056】
培養物のpHを、バブルの空気中に5%のレベルでCOを通過させることにより調整した。温度を16〜36℃の範囲に保持した。光強度は10〜80Klux であった。藻の培養物はしばしば攪拌した。スピルリナ トリコメスは、粘液分泌性で長くふわふわ性のないように見えた。類の培養物は濃い金黄色に達した。
【0057】
得られた金黄色のスピルリナの培養物は、約0.75g/Lであった。このスピルリナは、100gmの乾燥セルのバイオマスあたり880mgの天然の混合カロチノイドを含有していた。
混合カロチノイドの増大に加えて、上記カロチノイドに富んだ金黄色のスピルリナは、100gmの乾燥セルのバイオマスあたり43600mgの炭水化物の顕著な増大も示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含むことを特徴とするカロチノイドに富んだ金黄色の藻類の培養方法。
(a)0.1〜0.15g/Lの炭素源及び0.06〜0.35g/Lの窒素源を含む培地中で5〜7日間、藻類を培養する;
(b)上記(a)工程を終了後、培地中の炭素源の濃度を0.2〜1.5g/Lに増大させ、かつ窒素源の濃度を0.005〜0.03g/Lに低下させて藻類を5〜7日間培養する;
(c)上記(b)工程の間、培地を高炭素栄養剤により周期的に助成する;
(d)上記(c)工程の後に生成した藻類を収集する。
【請求項2】
前記培養される藻類が、スピルリナ(Spirulina)属、オシアトリア属(Oscillatoria)、ノストック(Nostoc)、フォルミジウム(Phormidium)、アフィノゼマノンーフロスアクア属(Aphinozemanon-flosaquae)及びアナベナ属(anabaena)から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記培養に使用されるスピルリナ属が、S.プラテンシス(platensis)、S.マキシマ(maxima)、S.フシフォルミス(fusiformis)、S.パシフィカ(pacifica)、S.インジカ(indica)、S.マサルテイ(Massartii)、S.ジェネリ(jenneri)、及びS.サブサラ(Subsala)から選ばれる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スピルリナ属がS.プラテンシスである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記炭素源が、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及びその組み合わせから選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記窒素源が、硝酸ナトリウム、硫酸アンモニム、及びその組み合わせから選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記高炭素有機栄養剤が、クエン酸塩化合物、酢酸塩化合物クエン酸塩化合物クエン酸塩化合物、及びその組み合わせから選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記クエン酸塩化合物が、5mg/L〜10mg/Lのクエン酸第二鉄である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記クエン酸塩化合物が、5mg/L〜10mg/Lのクエン酸ナトリウムである請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記酢酸塩化合物が、75mg/L〜250mg/Lの酢酸カリウムである請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記酢酸塩化合物が、75mg/L〜250mg/Lの酢酸ナトリウムである請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記培地が、さらに、リン酸水素ニカリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸第一鉄、Mn、Zn、Co、Cu、Moなどの周期表のA5族元素、又は塩化ナトリウムを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(a)、(b)、及び(c)を6〜36℃の範囲の温度で行う請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(a)、(b)、及び(c)を1〜100Kluxの範囲の光強度で行う請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記工程(a)、(b)、及び(c)を8.2〜10.8の範囲のpHで行う請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記培地の深さが少なくとも5cmである請求項1に記載の方法。
【請求項17】
乾燥セルあたり、少なくとも600mg/gmの混合カロチノイドを含んでいる請求項1〜16の方法を使用して生産されたカロチノイドに富んだ金黄色の藻類。
【請求項18】
100gmの乾燥セルあたり、600mg〜1200mgの範囲の混合カルチノイドを含んでいる請求項17に記載のカロチノイドに富んだ金黄色の藻類。
【請求項19】
さらに、100gmの乾燥セルあたり、40000mg〜60000mgの範囲の炭水化物を含んでいる請求項17に記載のカロチノイドに富んだ金黄色の藻類。
【請求項20】
前記藻類が、混合カロチノイドを生成できる藻類から培養される請求項17に記載に富んだ金黄色の藻類。
【請求項21】
前記藻類が、スピルリナ属、オシアトリア属、ノストック、フォルミジウム、アフィノゼマノンーフロスアクア属及びアナベナ属から選ばれる藍藻類から培養される請求項17に記載に富んだ金黄色の藻類。
【請求項22】
前記スピルリナ属が、S.プラテンシス、S.マキシマ、S.フシフォルミス、S.パシフィカ、S.インジカ、S.マサルテイ、S.ジェネリ、及びS.サブサラから選ばれる請求項21に記載に富んだ金黄色の藻類。
【請求項23】
前記スピルリナ属から選ばれた藻が、好ましくはS.プラテンシスである請求項22に記載に富んだ金黄色の藻類。
【請求項24】
下記の工程を含むことを特徴とするカロチノイドに富んだ藻類バイオマスの生産方法。
(a)0.1〜0.15g/Lの炭素源及び0.06〜0.35g/Lの窒素源を含む培地中で5〜7日間、藻類を培養する;
(b)上記(a)工程を終了後、培地中の炭素源の濃度を0.2〜1.5g/Lに増大させ、かつ窒素源の濃度を0.005〜0.03g/Lに低下させて藻類を5〜7日間培養する;
(c)上記(b)工程の間、培地を高炭素栄養剤により周期的に助成する;
(d)上記(c)工程の後に生成した藻類を収集する。
【請求項25】
前記培養される藻類が、スピルリナ属、オシアトリア属、ノストック、フォルミジウム、アフィノゼマノンーフロスアクア属及びアナベナ属から選ばれる請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記培養に使用されるスピルリナ属が、S.プラテンシス、S.マキシマ、S.フシフォルミス)、S.パシフィカ、S.インジカ、S.マサルテイ、S.ジェネリ、及びS.サブサラから選ばれる請求項25に記載の培養方法。
【請求項27】
前記スピルリナ属がS.プラテンシスである請求項26に記載の培養方法。
【請求項28】
前記炭素源が、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及びその組み合わせから選ばれる請求項24に記載の培養方法。
【請求項29】
前記窒素源が、硝酸ナトリウム、硫酸アンモニム、及びその組み合わせから選ばれる請求項24に記載の培養方法。
【請求項30】
前記高炭素有機栄養剤が、クエン酸塩化合物、酢酸塩化合物クエン酸塩化合物クエン酸塩化合物、及びその組み合わせから選ばれる請求項24に記載の培養方法。
【請求項31】
前記クエン酸塩化合物が、5mg/L〜10mg/Lのクエン酸第二鉄である請求項30に記載の培養方法。
【請求項32】
前記クエン酸塩化合物が、5mg/L〜10mg/Lのクエン酸ナトリウムである請求項30に記載の培養方法。
【請求項33】
前記酢酸塩化合物が、75mg/L〜250mg/Lの酢酸カリウムである請求項30に記載の培養方法。
【請求項34】
前記酢酸塩化合物が、75mg/L〜250mg/Lの酢酸ナトリウムである請求項30に記載の培養方法。
【請求項35】
前記培地が、さらに、リン酸水素ニカリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸第一鉄、Mn、Zn、Co、Cu、Moなどの周期表のA5族元素、又は塩化ナトリウムを含む請求項24に記載の培養方法。
【請求項36】
前記工程(a)、(b)、及び(c)を6〜36℃の範囲の温度で行う請求項24に記載の培養方法。
【請求項37】
前記工程(a)、(b)、及び(c)を1〜100Kluxの範囲の光強度で行う請求項24に記載の培養方法。
【請求項38】
前記工程(a)、(b)、及び(c)を8.2〜10.8の範囲のpHで行う請求項24に記載の培養方法。
【請求項39】
前記培地の深さが少なくとも5cmである請求項24に記載の方法。
【請求項40】
請求項24〜39の方法を使用して生産されたカロチノイドに富んだ藻類バイオマス。
【請求項41】
前記藻類バイオマスが、100gmの乾燥セルあたり、600mg〜1200mgの範囲の混合カロチノイドを含んでいる請求項40に記載のカロチノイドに富んだ藻類バイマス。
【請求項42】
さらに、100gmno乾燥セルあたり、40000mg〜60000mgの範囲の炭水化物を含んでいる請求項26に記載のカロチノイドに富んだ藻類バイマス。
【請求項43】
前記藻類が、混合カロチノイドを生成できる藻類から培養される請求項40に記載の藻類バイマス。
【請求項44】
前記藻類が、スピルリナ属、オシアトリア属、ノストック、フォルミジウム、アフィノゼマノンーフロスアクア属及びアナベナ属から選ばれる藍藻類から培養される請求項40に記載に富んだ藻類バイマス。
【請求項45】
前記スピルリナ属から選ばれた藻が、S.プラテンシス、S.マキシマ、S.フシフォルミス、S.パシフィカ、S.インジカ、S.マサルテイ、S.ジェネリ、及びS.サブサラである請求項44に記載に富んだ藻類バイオマス。
【請求項46】
前記スピルリナ属から選ばれた藻がS.プラテンシスである請求項45に記載に藻類バイオマス。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2010−530241(P2010−530241A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512842(P2010−512842)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【国際出願番号】PCT/IN2008/000394
【国際公開番号】WO2008/155781
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(509347631)
【Fターム(参考)】