説明

針カバー付医療用針

【課題】 針カバー付医療用針に関し、当該翼付針を煩わしい操作なしに容易に、かつ、安全、確実に針カバー内に収納することができる医療用針を提供する。
【解決手段】 筒状体の長手方向に順次前方部、略中腹部、及び後方部を有し、その略中腹部の底部に開口を、その後方部にスリット部を形成した筒状の針カバーと、針基の両側部に一対の翼部を装着し、当該針基の前方に針を植設し、当該針基の後方にチューブを装着した翼付針とから構成され、当該翼付針は、当該針カバー内に褶動可能に収納され保護される針カバー付医療用針において、(a)前記チューブに係止部を装着するか、または(b)前記針基の後方に係止部を装着し、当該針カバー内に収納した当該翼付針を固定するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析、輸液及び輸血等に使用される、例えばPSV(Pediatric Scalp Vein)set、AVF(Arteriovenous Fistula)set等の翼付針に関する。より詳しくは針カバー付翼付針の改良に関し、当該針の確実性、安全性を保持しながら、操作性を向上させた発明に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、保菌者の血液や体液により汚染された医療用針を通して感染するウイルス性肝炎やAIDS等の感染症の拡がりとともに、医療施設では、輸血や透析等に従事する医療従事者の誤穿刺による感染が問題となっている。また、汚染した血液が付着した針により、廃棄物処理の作業従事者が作業中に誤って指等を刺してしまう危険性があった。
【0003】
このため、特に、使用後の医療用針を安全に収納する針カバー付翼付針がいくつか提案されている。
本発明者らは、中腹部の両側に、翼状の一対のストッパーを突設した針カバーに収納された新規な針カバー付翼付針を提案した(特許文献1を参照。)。この発明においては、使用後の翼付針は、前記針カバーに収納された後、前記翼付針の両翼部を上側に折り曲げることにより、当該両翼は、当該翼状のストッパーと交差して係止され、かくして、翼状針は針カバーより突出しない。
【0004】
また、本発明者らは、この針カバー付翼付針に関し、この翼付針の針基に接続されているチューブを、針カバーの後方部に形成した溝に狭持して針の固定をより確実に行うことも提案している(特許文献2を参照。)。
【0005】
しかしながらこれら提案されている翼付針においては、両翼部と、翼状のストッパーとの交差のよる係止作業は、煩わしく、またかなりの熟練が要求される。特に手の大きな器用でない作業者にとって、翼状針の両翼部を上側に折り曲げる操作と、さらに当該両翼を針カバーの翼状のストッパーと交差して係止する作業は、容易なものではなかった。
【0006】
またLiuは、シース(sheath)(ガード)側に、翼を形成した翼付きシース内(winged-equipped sheath)に針を引き込み可能に収納した医療用針を提案している(特許文献3を参照。)。具体的には、当該医療用針は、その図3から図5に記載されているように、針基31後方の管状体10に、螺子状の上方接続部11と環状の下方接続部12が形成されている。そして、針32を、翼付シース4内に収納するときに、下方接続部12が、翼付シース4の後方端部411を乗り越えて当該シース外へ移動し、上方接続部11が、この翼付シース4の後方端部411に螺合される。
【0007】
この特許文献3記載の発明においては、針32を翼付シース4内に収納するときは、まず下方接続部12が翼付シース4の後方を乗り越える操作を行い、さらに上方接続部11を翼付シース4の後方に螺合する二重の操作を行わなければならないので、操作が煩わしい。
【0008】
またLiuは、安全スライドスリーブ内に収納可能な医療用針をも提案している(特許文献4を参照。)。具体的には、当該医療用針は、その図1から図5に記載されているように、針基31後方の管状体10に、翼状の複数の案内リブ12が形成されているものである。注射針3を安全スライドスリーブ4内に収納するとき、案内リブ12が安全スライドスリーブ4の後方(底部)の内方延伸ラッチングフランジ411を乗り越えて、安全スライドスリーブ4の後方壁面に係止される。
【0009】
この特許文献4記載の発明においては、そもそもこの針は翼を有するものでなく、また当該スリーブ内に収納されたまま輸液等の操作が行えるものではない。また、使用後の注射針3を安全スライドスリーブ4内に収納するとき、翼状の複数の案内リブ12が安全スライドスリーブ4の後方を乗り越えなければならないので、操作にかなり強い力を必要とするので、操作性に難がある。
【0010】
また同様に翼付針に関するものではないが、針Nと、両斜面太身部6、片斜面太身部4、及びその間に数個の細身部を形成したこの針を保持する針基と、この細身部に係合する内向きフランジを形成してあり、当該針基に係合するキャップ10からなるキャップ一体型使い捨て注射針が提案されている(特許文献5を参照。)。
【0011】
この特許文献5記載の発明においては、針Nを、針キャップ10内に収納するときに、針キャップ10後方を、それぞれ両斜面太身部6と片斜面太身部4が二回にわたって、乗り越えなければならないので、操作が煩わしいという問題がある。
【0012】
【特許文献1】特開2001−327599号公報(特許請求の範囲(請求項1〜8)、図4〜図5)
【特許文献2】特開2003−116996号公報(特許請求の範囲(請求項1〜6)、図3、図6)
【特許文献3】米国特許第5931815号明細書(図3〜図5)
【特許文献4】米国特許第6200294号明細書(図1〜図5)
【特許文献5】特開平3−158171号公報(特許請求の範囲(請求項1〜3)、図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、針カバー付医療用針において、当該翼付針を煩わしい操作なしに容易に、かつ、安全、確実に針カバー内に収納することができる医療用針を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
A 本発明に従えば、以下の針カバー付医療用針が提供される。
〔1〕
筒状体の長手方向に順次前方部(2)、略中腹部(3)、及び後方部(4)を有し、その略中腹部(3)の底部に開口(5)を、その後方部(4)にスリット部( 7)を形成した筒状の針カバー(1)と、
針基(23)の両側部に一対の翼部(24)を装着し、当該針基(23)の前方に針(22)を植設し、当該針基(23)の後方にチューブ(T)を装着した翼付針(21)とから構成され、
当該翼付針(21)は、当該針カバー(1)内に褶動可能に収納され保護される針カバー付医療用針において、
(A)前記チューブ(T)に係止部(27)、(28)を装着するか、または(B)前記針基(23)の後方に係止部(30)を装着し、当該針カバー内に収納した当該翼付針を固定するようにしたことを特徴とする針カバー付医療用針。
【0015】
〔2〕
前記針(22)が、前記針カバー(1)より前方に露出した第一の位置から、前記針(22)が前記針カバー(1)内に収納し隠される第二の位置まで針カバー(1)内を褶動して移動する際に、前記係止部(27)、(28)、(30)は、前記スリット部(7)を形成した後方部(4)を、当該スリット(7)に沿ってこれを外側に押し広げながら、当該後方部(4)を通過し、当該針(22)が前記第二の位置まで移動した後は、当該係止部(27)、(28)、(30)の前面が、当該後方部(4)の背面に係止され、当該翼付針は前記第二の位置において当該針カバー内に固定され、第一の位置方向へ移動するのを阻止するようにしたことを特徴とする〔1〕に記載の針カバー付医療用針。
【0016】
〔3〕
前記翼付針(21)は、前記針(22)が、前記針カバー(1)より前方に露出した前記第一の位置にあるときは、当該針(22)が前記針カバーの前方部(2)から露出した状態で、前記翼部(24)の前面が前記前方部(2)の背面に当接され、前記係止部(27)、(28)、(30)は、前記略中腹部(3)ないし前記後方部(4)内に位置し、
前記翼付針(21)が針カバー(1)内に収納し隠される前記第二の位置にあるときは、前記針(22)が当該前方部(2)ないし前記略中腹部(3)内に配置され、前記係止部(27)、(28)、(30)は、前記後方部(4)から露出して、その前面が当該後方部(4)の背面に係止され、当該翼付針は前記第二の位置において当該針カバー内に固定されるようにしたことを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の針カバー付医療用針。
【0017】
〔4〕
前記係止部(27)、(28)、(30)の外径(D1)、前記チューブ(T)の外径(D2)、前記後方部(4)の開口(4a)の径(D3)、及び前記後方部(4)の内径(D4)のそれぞれの大きさが以下の関係式を満足するものであることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の針カバー付医療用針。

係止部(27)、(28)、(30)の外径(D1)>チューブ(T)の外径(D2) (i)
係止部(27)、(28)、(30)の外径(D1)>後方部(4)の開口(4a)の径(D3) (ii)
係止部(27)、(28)、(30)の外径(D)=<後方部4の内径D4 (iii)
【0018】
〔5〕
前記中腹部(3)の両側部に翼部(24)を係止するための一対のストッパー(8)を突設したことを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の針カバー付医療用針。
【0019】
B また本発明に従えば、以下の針カバー付医療用針が提供される。
〔6〕
筒状体の長手方向に順次前方部(2)、略中腹部(3)、及び後方部(4)を有し、その略中腹部(3)の底部に開口(5)を形成した筒状の針カバー(1’)と、
針基(23)の両側部に一対の翼部(24)を装着し、当該針基(23)の前方に針(22)を植設し、当該針基(23)の後方にチューブ(T)を装着した翼付針(21)とから構成され、
当該翼付針(21)は、当該針カバー(1’)内に褶動可能に収納され保護される針カバー付医療用針において、
当該チューブ(T)または前記針基(23)の後方に複数のフック(41)、(51)、(61)を有する係止部(40)、(50)、(60)を装着し、当該針カバー内に収納した当該翼付針を固定するようにしたことを特徴とする針カバー付医療用針。
【0020】
〔7〕
前記針(22)が、前記針カバー(1’)より前方に露出した第一の位置から、前記針(22)が前記針カバー(1)内に収納し隠される第二の位置まで前記針カバー(1)内を褶動して移動する際に、
前記係止部(40)、(50)、(60)のフック(41)、(51)、(61)は、内側に撓みながら当該後方部(4)内を通過し、前記針(22)が第二の位置まで移動した後は、フック(41)、(51)、(61)の前面が、前記後方部(4)の背面に係止し、かくして、当該翼付針は前記第二の位置において当該針カバー内に固定され、第一の位置方向へ移動するのを阻止するようにしたことを特徴とする〔6〕に記載の針カバー付医療用針。
【0021】
〔8〕
前記翼付針(21)は、前記針(22)が、前記針カバー(1’)より前方に露出した前記第一の位置にあるときは、当該針(22)が前記針カバーの前方部(2)から露出した状態で、前記翼部(24)の前面が前記前方部(2)の背面に当接され、前記係止部(40)、(50)、(60)は、前記略中腹部(3)ないし前記後方部(4)内に位置し、
【0022】
前記翼付針(21)が針カバー(1)内に収納し隠される前記第二の位置にあるときは、前記針(22)が当該前方部(2)ないし前記略中腹部(3)内に配置され、前記係止部(40)、(50)、(60)のフック(41)、(51)、(61)は、前記後方部(4)から露出して、その前面が当該後方部(4)の背面に係止され、当該翼付針は前記第二の位置において当該針カバー内に固定されるようにしたことを特徴とする〔6〕または〔7〕に記載の針カバー付医療用針。
【0023】
〔9〕
前記係止部(40)、(50)、(60)のフック(41)、(51)、(61)の外径(D11)、チューブ(T)の外径(D2)、前記後方部(4)の開口(4a)の径(D3)、及び後方部(4)の内径(D4)のそれぞれの大きさが以下の関係式を満足するものであることを特徴とする〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載の針カバー付医療用針。

フック(41)、(51)、(61)の外径(D11)>チューブ(T)の外径(D2) (i)
フック(41)、(51)、(61)の外径(D11)>後方部(4)の開口(4a)の径(D3) (ii)
フック(41)、(51)、(61)の外径(D11)>後方部(4)の内径(D4) (iii)
【発明の効果】
【0024】
本発明の針カバー付医療用針においては、次のごとき有利な効果を有する。すなわち、針22が針カバー1より前方に露出した第一の位置から、針22が針カバー1内に収納される第二の位置まで移動する際に、係止部27、28、30は、後方部4をスリット7に沿って外側に押し広げながら、当該後方部4を通過し、針22が第二の位置まで移動した後は、係止部27、28、30の前面が、後方部4の背面に係止することにより、第一の位置方向へ移動するのを阻止するので、チューブTを後方に引っ張って、翼付針21を後退させるのみで、係止部27、28、30が、針カバー1の後方部を簡単に乗り越えて、係止できるので、操作性が非常に良い。
【0025】
本発明の針カバー付医療用針においては、また次のような有利な効果をも有する。すなわち、針22が針カバー1より前方に露出した第一の位置から、針22が針カバー1内に収納される第二の位置まで移動する際に、前記係止部40、50、60のフック41、51、61は、内側に撓みながら後方部4内を通過し、針22が第二の位置まで移動した後は、フック41、51、61の前面が、後方部4の背面に係止することにより、第一の位置方向へ移動するのを阻止するので、チューブTを後方に引っ張って、翼付針21を後退させるのみで、係止部40、50、60が、針カバー1の後方部内を簡単に通過して、係止できるので、操作性が非常に良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の針カバー付き医療用針の好適な実施の態様について説明する。
(針カバー付き医療用針)
本発明の針カバー付き医療用針は、基本的に、図3〜図13に示すように、その略中腹部3に開口部5を、その後方部4にスリット部7を形成した針カバー1と、針基23に 翼部24を装着し、当該針基23の前方に針22を植設し、当該針基23の後方にチューブTを装着した翼付針21とから構成される。そして当該翼付針21は、当該針カバー1内に褶動可能に収納(収容)される。
【0027】
針カバー1は、図1(A)〜(B)に示すように、筒状体の長手方向に順次前方部2、略中腹部3、及び後方部4を区画した場合、その略中腹部3の底部には、すなわち略半分(略半円等状に)開口されて開口5を形成し、またその後方部4にスリット部7を形成した筒状の針カバーである。
【0028】
針カバー1は、半硬質の材料、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、四フッ化エチレン樹脂、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等の半硬質熱可塑性樹脂で形成されることが好ましい。
【0029】
針カバー形成材料として半硬質材料が好ましいのは、収容した翼付針を衝撃その他から充分保護するガードの機能を奏する剛性があるとともに、収容した翼付針の針基等をその後方部の開口5を通して引き出す場合に、ある程度変形して開口5が拡張する弾性を備えることが望ましいからである。
【0030】
後方部4に形成するスリット7は、一本でも良いし複数本(二本以上)でも良くその形状も特に限定しない。当該スリットは、後記するように、使用後の針22が針カバー22内に引き込まれ収容される際に、これに応じて、針基23の後部が係止部とともに、針カバーの後方部4の開口4aから外方に突出することになるが、当該スリット部分がこの通過時に、ある程度柔軟性をもって、外側に押し広げられて、当該開口4aを拡張することによって、当該針基の後部の外部への突出を、助長できる機能を奏するものであれば、その形状や数等は特に限定するものではない。
【0031】
また後方部4は、図1(A)、図2(A)に例示するように、外部の形状を後方端部に向けて先細りテーパー状に形成しても良いし、図3(A)、(B)、(C)に例示するように、外部の形状をストレートに形成し、内壁面を後方端部に向けて肉厚にして、先細りテーパー状に形成しても良い。
【0032】
なお、図において、4bは、針カバー後方部4の端面(背面)である。後記するようにこの端面4bが係止部と圧接して固定され、針基が当該開口4から針カバー内に戻るのを防止する。
【0033】
また必要に応じて、図2(A)、図2(B)に例示するように中腹部3の両側部に一対の翼状のストッパー8を形成(装着)しても良い。当該ストッパー8は、すでに述べた本発明者らの出願にかかる特許文献1に記載されているとおり、翼部24と交差して針12を固定するという、機能・役割を果たすものである。ストッパー8は、翼状に形成され、後方部4方向に向けて(若干上方向に)傾斜するように形成されている。なお、ストッパー8についての採用可能の形状等についてのバリエーションは、当該特許文献1に示されている種々の態様も好適に本発明の目的に採用することができる。
【0034】
また、針カバーの前方部2には、突部2aが設けられていることも好ましい。当該突部2aは、発明の針カバー付翼付針を使用する場合、作業者が指で把持する部分である。
【0035】
本発明の翼付針21は、例えば図3(D)の平面図に示すように、針基23の両側部に一対の翼部24を装着し、当該針基23の前方に針22を植設し、また、当該針基23の後方には、チューブTを装着(接続)したものである。この当該翼付針21は、例えば図3(A)〜図3(C)に示すように、前記針カバー1内に褶動可能に収納され保護される。なお、針カバー内に収納された翼付き針の種々の動作または使用方法については、図4〜図13を参照しながら後述する。
【0036】
(係止部27、28、30)
本発明においては、図3〜図12に例示すように、前記チューブTに係止部27、28を装着するか、または図13に示すように、前記針基23の後方に係止部30を装着若しくは形成する。このようにして、当該針カバー内に収容した当該翼付針を固定することができる。
【0037】
チューブTに装着する係止部27の形状は、図3〜図8に示すように、リング状(比較的短い略円筒形状のものを意味する。)であってもよいし、図9〜図12に例示するように、パイプ状(比較的長い略円筒形状のもの、または、チューブ状のものを意味する。)であってもよい。これらのリング状またはパイプ状の係止部は図9から図12等に示すように、ストレート(均一な径)寸胴に形成してもよいし、図3から図8等に示すように、先細りのテーパーを形成してもよい。
【0038】
同様に、針基23の後方部に形成または装着する係止部30は、図13に例示するように、リング状でも良いし、前記したようにパイプ状またはくさび状(フックともいう。)でも良い。
【0039】
針基1や係止部27、28、30は、針カバーを形成する材料と同様のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、四フッ化エチレン樹脂、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等の半硬質熱可塑性樹脂で、射出成形により形成されることが好ましい。形成された係止部27、28、30は、接着等の固着手段によりチューブTまたは針基の外表面(外周)にチューブ状またはリング状に装着する。
【0040】
なお、係止部30の場合は、これを針基23について形成する場合は、当該針基を半硬質プラスチックにより射出成形等で形成する際に、係止部30を針基の後半部に一体成形により形成することができる。もちろん、上記したように、半硬質プラスチック材料で別に形成した係止部30を、針基に接着等の手段で装着してもよい。
【0041】
また、係止部27、28、30は、外周にテーパー状の突起(フックともいう)を、形成しても良い。
【0042】
(係止部による係止作用)
本発明の針カバー付医療用針は、前記針22が、前記針カバー1より前方に露出した第一の位置(例えば図3(A)で示される。)から、前記針22が前記針カバー1内に収納し隠される第二の位置(例えば、図3(C)で示される。)まで針カバー1内を褶動して移動する際に、前記係止部27、28、30は、前記スリット部7を形成した後方部4を、当該スリット7に沿ってこれを外側に押し広げながら、当該後方部4を通過し、当該針22が前記第二の位置まで移動した後は、当該係止部27、28、30の前面が、当該後方部4の背面(より正確には端面4b)に係止され、このようにして、当該翼付針は前記第二の位置において当該針カバー内に固定され、第一の位置方向へ再び移動するのを阻止する。
【0043】
また、本発明の針カバー付医療針は、前記翼付針21が、前記針22が、前記針カバー1より前方に露出した前記第一の位置(例えば、図3(A))にあるときは、当該針22が前記針カバーの前方部2から露出した状態で、前記翼部24の前面が前記前方部2の背面に当接され、前記係止部27、28、30は、前記略中腹部3ないし前記後方部4内に位置し、前記翼付針21が針カバー1内に収容し隠される前記第二の位置(例えば図3(C))にあるときは、前記針22が当該前方部2ないし前記略中腹部(3)内に配置され、前記係止部27、28、30は、前記後方部4から露出して、その前面が当該後方部4の背面に係止され、このようにして、当該翼付針は前記第二の位置において当該針カバー内に固定される。
【0044】
本発明の針カバー付医療用針においては、前記係止部27、28、30の外径D1、前記チューブTの外径D2、前記後方部4の開口4aの径D3、及び前記後方部4の内径D4のそれぞれの大きさが、例えば図5,図8,図13に示したように、以下の関係式(i)−(iii)を満足するものであることが好ましい。すなわち、
【0045】
係止部27、28、30の外径D1>チューブTの外径D2 (i)
係止部27、28、30の外径D1>後方部4の開口4aの径D3 (ii)
係止部27、28、30の外径D=<後方部4の内径D4 (iii)
【0046】
ここで、係止部27、28、30の外径D1は、例えば図5のようにテーパー部分がある場合、径のもっとも大きい部分である。また、後方部4の内径D4も図5のようにテーパー部分がある場合は、径のもっとも大きい部分である。
つぎに本発明の針カバー付医療用針の使用方法の一例について図面を参照しながら説明する。
【0047】
(針カバー付医療用針の使用方法i)(図3〜図6)
図3〜図6において、図3(A)、図4(A)、図5(A)及び図6(A)は、針22が針カバー1より前方に露出した第一の位置(p1)を、図3(C)、図4(C)、図5(C)及び図6(I)は、針22が針カバー1内に収納され、保護されている第二の位置(p2)を示す。そして、図3(B)、図4(B)、図5(B)及び図6(B)〜図6(H)は、針22が第一の位置(p1)から第二の位置(p2)へ移動する途中(pt)をそれぞれ示している。
【0048】
(1)患者に薬液等の注入を終えた状態においては、針22は針カバー1より前方に露出した第一の位置にある。これが図3(A)、図4(A)、図5(A)及び図6(A)に示された状態である。
【0049】
(2)針22を第一の位置から第二の位置まで移動させるため、針カバー1を片方の手で固定し、他方の手でチューブTを後方に引き、当該チューブ部分を針カバー23の後方部の後方開口4aから外へ引き出す。図3(B)、図4(B)、図5(B)はリング状の係止部27が後方開口4aを通過する状態である。
【0050】
図6(B)〜図6(H)は、この過程をさらに詳細に例示するものであって、リング状の係止部27は、順次、後方部4方向へ移動し、当該係止部27が開口4aを通過する際には、後方部4をスリット7に沿って外側に押し広げながら、後方部4を通過する。このように後方部4にスリット7を形成しておくことにより、当該後方部4が、柔軟性をもって、外側に押し広げられて、当該開口4aを拡張することによって、特に係止部27の部分の外部への移動が助長される。
【0051】
(3)係止部27の部分が後方開口4a外へ出た状態、すなわち、針22が針カバー1内に収納される第二の位置まで移動した状態において、当該係止部27の前面27aが、後方部4の背面(より正確には後方開口の端面4b)に圧接することにより係止される。すなわち、係止部27の外径D1は、後方部4開口4aの径D3より大きく形成されているので、係止部27の前面が、後方部4の端面4bに接触し圧接するため後方部4方向へ逆に移動するのを阻止するのである。針22は、針カバー1内に収納された後は、再び針カバー1から第一の位置方向へ移動して、鋭利な針先が露出することはない。
【0052】
(針カバー付医療用針の使用方法ii)(図7〜図8)
図7〜図8は、針カバー1に、翼状ストッパー8を形成した場合の使用法の一例を示すものである。基本的には、上記と同様の操作が行われる。
図7〜図8において、図7(A)及び図8(A)は、針22が針カバー1より前方に露出した第一の位置(p1)を、図7(C)及び図8(C)は、針22が針カバー1内に収納され、保護されている第二の位置(p2)を示す。そして、図7(B)及び図8(B)は、針22が第一の位置(p1)から第二の位置(p2)へ移動する途中の位置(pt)をそれぞれ示している。
【0053】
(1)患者に薬液等の注入を終えた状態においては、針22は針カバー1より前方に露出した第一の位置にある。これが図7(A)及び図8(A)に示された状態である。
【0054】
(2)上記と同様にして針22を第一の位置から第二の位置まで移動させるため、針カバー1を片方の手で固定し、他方の手でチューブTを後方に引いて、当該チューブ部分を針カバー23の後方部の後方開口4aから外へ引き出す。図7(B)及び図8(B)はリング状の係止部27が後方開口4aを通過する状態であり、係止部27は、後方部4をスリット7に沿って外側に押し広げながら、後方部4を通過する。
この場合、翼部24と翼状ストッパー8とは、図7(B)及び図8(B)に示すように、対向しながら相対的に逆方向に移動することになる。
【0055】
(3)係止部27の部分が後方開口4a外へ出た状態(針22が針カバー1内に収納される第二の位置まで移動した状態)においては、上記したように、当該係止部27の前面27aが、後方開口の端面4bに圧接することにより係止される。
【0056】
この第二の位置において、翼状のストッパー8は、後方部4方向に向けて(若干上方向に)傾斜するように形成されているので、チューブTを後方に引くと翼付針21の翼部24がストッパー8の傾斜部を乗り越えて係合し、係止する。このようにして、翼部24と翼状ストッパー8も係止するので、針22は、針カバー内により安定的に固定される。
【0057】
係止部27の外径D1は、後方部4の開口4aの径D3より大きく形成され、翼24はストッパー8に係止されているので、上記したごとく、係止部27は、後方部4方向へ逆に移動するのを阻止される。また、上記したように、翼部24は後方部4とストッパー8の間に前後に移動しないように固定される。かくして、針22は、針カバー1内に収納された後は、二度と針カバー1から第一の位置方向へ移動して、鋭利な針先が露出することはない。
【0058】
(針カバー付医療用針の使用方法iii)(図9〜図10)
図9〜図10は、図3〜図6のリング状係止部27を、より長いパイプ状係止部28に代えた例である。
【0059】
基本的には、上記図3〜図6について説明したものと同様の操作が行われる。ただし、係止部28は係止部27に対し、針22が針カバー1から露出した第一の位置(p1)から、針22が針カバー1内に収納される第二の位置(p2)へ移動する場合、後方部4を通過する場合の移動をよりスムーズに行わせるために、形状が異なっている点に差異がある。
【0060】
すなわち、上記した図3〜図6に例示した比較的短い略円筒形状であるリング状の係止部27の場合は、第一の位置では、係止部27は、図3(A)〜図6(A)に示されているように、図略中腹部3(開口部5)の位置にある。従って、第二の位置へ移動する際には、開口部5から出て後方部4に移動する際に、当該後方部4(の対向する端面)に引っ掛かり易い。そのために、図3A等に示されているように、リング状係止部27のチューブ側(すなわち、後方部4の対向端面に最初に接触する側)をテーパー状(くさび型)に形成して、引っかかりを少なくし、スムーズに移動しうるようにしている。
【0061】
これに対し、図9〜図10に例示した比較的長い略円筒形状であるチューブ状のパイプ状係止部28の場合は、第一の位置で、例えば図10(A)に示したように、すでに当該係止部の後方部(チューブ側の端面)が針カバー1の後方部4の中に位置している。そのため、第二の位置へ移動する際は、そのまま当該後方部4中を後方部開口4aに向かって進行させればよく、開口後方部4(の対向する端面)に引っ掛からずにスムーズに移動することができる。
その他の使用方法は、図3〜図6の場合等と実質的に同じであるから、詳細な説明は省略する。
【0062】
(針カバー付医療用針の使用方法iv)(図11〜図13)
図11〜図12は、針カバー1に、翼状ストッパー8を形成した場合の使用法の例を示す。これはすでに述べた翼状ストッパー8を形成した場合の使用法の例を示す図7〜図8におけるリング状係止部27を、パイプ状係止部28に代えたものに相当するものであり、使用方法は、上記したものと実質的に同じであるから、詳細な説明は省略する。
【0063】
また、図13は、針基23の後方部に装着または形成する係止部30の場合の例を示すものである。すなわち、係止部30は、図3〜図6におけるリング状の係止部27を、チューブTではなく、針基23の後方部に装着等する点が異なるのみであり、実際の使用方法は、図3〜図6と実質的に同じであるから、これについても詳細な説明は省略する。
【0064】
(針カバー付き医療用針の別の実施態様)
本発明の針カバー付き医療用針はまた、その別の実施態様として、図14〜図15に示すものがある。基本的には、当該医療用針は、上記と同様に、その略中腹部3に開口5を形成した針カバー1’と、針基23の 翼部24を装着し、当該針基23の前方に針22を植設し、当該針基23の後方にチューブTを装着した翼付針21とから構成され、当該翼付針21は、当該針カバー1内に褶動可能に収容されるものであるが、この態様においては、当該チューブTまたは前記針基23の後方に複数のフック41、51を有する係止部40、50、60を装着し、このようにして、当該針カバー内に収容した当該翼付針を固定するようにしたものである。
【0065】
針カバー1’は、基本的には図1(A)〜図1(B)に示すものと同じであり、筒状体の長手方向に順次前方部2、略中腹部3、及び後方部4を区画した場合、その略中腹部3の底部には、すなわち略半分(略半円等状に)開口されて開口5を形成してある。ただし、複数のフック41、51を有する係止部を採用しているため、当該後方部4にはテーパーを形成することは必ずしも必要はなく、また、後方部4にスリット部7を形成する必要もない。
【0066】
(係止部40、50、60)
本発明の別の実施態様においては、フック41、51を形成する場合、図14〜図15に例示するように、針基本体42、52の後方に連結部43、53を延設して、当該連結部43、53の後端にフック41、51を形成することができる。当該連結部43、53は針基本体表面に固定されているものであるから、フック41、51は、当該連結部43、53を介して針基本体42、52上に固定される。ここで「フック」とは、鉤部、かえり部、出っ張り部等の形状の係止作用を有する部位を意味する。
【0067】
連結部43、53とフック41、51は、最低一個ないし二個あれば良く、3個以上から10個あっても良い。図14(A)〜図14(F)に例示するように、短いフック41でも良いし、図15(A)〜図15(F)に示したような比較的長いフック51でも良い。また、連結部43、53の部分を実質的に無くして、針基本体42、52の後方に、直接フック41、51を形成するようにしてもよい。
【0068】
また翼付針21の針基23の後方に、係止部40、50(フック41、51)を直接、または一体的に形成しても良い。
さらにまた、図16に例示する係止部60のように、連結部63の後方(チューブT側)を環状の固定部材65で固定し、フック61を当該連結部63の略中央に形成しても良い。
【0069】
上記した係止部40、50,60においては、連結部43、53、63及びフック41、51、フック61が、針カバー1の後方部4を通過する時はチューブと一緒にチューブ内径側に撓む。そして通過後に、再びもとの形状に戻ることにより、フック41、51、61の前面が針カバー後方部4の背面(開口端面4b)に係合してストッパーとなる。
【0070】
基本的には、上記のようにして、係止部40、50、60において、そのフック41、51、61により、係止作用が奏されるが、前記係止部40、50の形状の場合は、次の懸念がある。すなわち、係止部40、50においては、翼付針21の針基23側を42、45で固定しているが、フック41、51側は固定していないのでチューブT側にスライドさせる時、連結部43,53がやや不安定でフック41、51が不規則に撓む可能性がある。さらに、図14に示したような短いフック41の場合は、スムーズに針カバー1の後方部4内を褶動スライドしにくいことが懸念される。係止部40、50に関するこれらの懸念は、環状固定部材62、65を備えた係止部60により解消できる。
【0071】
係止部40、50、60は、係止部27、28、30と同様のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、四フッ化エチレン樹脂、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等の半硬質熱可塑性樹脂で、射出成形により形成されることが好ましい。形成された係止部40、50、60は、同様に接着等の固着手段により針基の外表面(外周)に装着する。
【0072】
なお、係止部40、50、60は、当該針基を半硬質プラスチックにより射出成形等で形成する際に、これら係止部40等を針基の後半部に一体成形により形成することもできる。
【0073】
(係止部30、40、60による係止作用)
本発明の針カバー付医療用針の別の実施態様においては、前記針22が、前記針カバー1より前方に露出した第一の位置(例えば図14(A)で示される。)から、前記針22が前記針カバー1内に収納し隠される第二の位置(例えば図14(C)で示される。)まで前記針カバー1内を褶動して移動する際に、前記係止部40、50、60のフック41、51、61は、内側に撓みながら当該後方部4内を通過し、前記針22が第二の位置まで移動した後は、フック41、51、61の前面が、前記後方部4の背面に(より正確には後方開口4aの端面4bに引っかかり)係止し、このようにして、当該翼付針は前記第二の位置において当該針カバー内に固定され、第一の位置方向へ再び移動するのを阻止する。
【0074】
また、本発明の針カバー付医療用針の別の実施態様においては、前記翼付針21は、前記針22が、前記針カバー1より前方に露出した前記第一の位置(例えば図14(A))にあるときは、当該針22が前記針カバーの前方部2から露出した状態で、前記翼部24の前面が前記前方部2の背面に当接され、前記係止部40、50、60は、前記略中腹部3ないし前記後方部4内に位置し、前記翼付針21が針カバー1内に収納し隠される前記第二の位置(例えば図14(C))にあるときは、前記針22が当該前方部2ないし前記略中腹部3内に配置され、前記係止部40、50、60のフック41、51、61は、前記後方部4から露出して、その前面が当該後方部4の背面に(より正確には後方開口4aの端面4bに引っかかり)係止され、このようにして、当該翼付針は前記第二の位置において当該針カバー内に固定される。
【0075】
本発明の針カバー付医療用針の別の実施態様においては、前記係止部40、50、60のフック41、51、61の外径D11、チューブTの外径D2、前記後方部4の開口4aの径D3、及び後方部4の内径D4のそれぞれの大きさが、例えば図14〜図16に示したように、以下の関係式(i)〜(iii)を満足するものであることが好ましい。すなわち、
【0076】
フック41、51、61の外径D11>チューブTの外径D2 (i)
フック41、51、61の外径D11>後方部4の開口4aの径D3 (ii)
フック41、51、61の外径D11>後方部4の内径D4 (iii)
【0077】
ここで、針カバー1の後方部4は、テーパー状に細くなっていてもよいし、ストレートの寸胴でもよい。またスリット7が形成された形状でもよいしスリットが無い形状でもよい。前記係止部40、50、60を採用する場合は、針カバー1の後方部4は、基本的にスリットが無い寸胴の形状が採用され、これらの背面(後方開口4aの端面4b)に、係止部40、50、60のフック41、51、61の前面が係合する。
【0078】
つぎに本発明の針カバー付医療用針の別の実施態様についてその使用方法の例について図面を参照しながら説明する。
【0079】
(針カバー付医療用針の使用方法i)(図14)
図14(A)は、針22が針カバー1より前方に露出した第一の位置(p1)を、図14(C)は、針22が針カバー1内に収納され、保護されている第二の位置(p2)を示しており、図14(B)は、針22が第一の位置(p1)から第二の位置(p2)へ移動する途中の位置(pt)をそれぞれ示している。
【0080】
(1)患者に薬液等の注入を終えた状態においては、針22は針カバー1より前方に露出した第一の位置にある。これが図14(A)に示された状態である。
【0081】
(2)針22を第一の位置から第二の位置まで移動させるため、針カバー1を片方の手で固定し、他方の手でチューブTを後方に引き、当該チューブ部分を針カバー23の後方部の後方開口4aから外へ引き出す。係止部40のフック41は、図14(B)に例示するように、後方部4方向へ移動し、内側に撓みながら後方部4内を通過する。この場合、図3(B)〜図5(B)等の場合と異なり、後方部4が外側に押し広げられる必要はない。
【0082】
(3)そして、針22が第二の位置まで移動した後は、フック41の前面が、後方部4の背面(後方開口4aの端面4b)に係止される。上記式で表現されているとおり、係止部のフック41の外径D11は、後方部4開口4aの径D3より大きく形成されているので、係止部40は、安定的に、針22が後方部4方向へ逆に移動するのを阻止する。
針22は、針カバー1内に収納された後は、再び針カバー1から第一の位置方向へ移動して、鋭利な針先が露出することはない。
【0083】
(針カバー付医療用針の使用方法ii)(図15)
図15は、図14の係止部40を、係止部50に代えた例で、使用方法は実質的に同じであるから、詳細な説明は省略する。
【0084】
この場合、係止部50のフック51は、係止部40のフック41よりも長く形成されているので、係止部40よりも後方部4内を通過しやすく、より係止しやすい。
【0085】
また、係止部50の場合は、第一の位置で、すでに後方部(チューブ側の端面)が針カバー1の後方部4の中にあるため、第二の位置へ移動する際は後方部4に引っ掛からずにスムーズに移動することができる。
【0086】
(針カバー付医療用針の使用方法iii)(図16)
図16は、上記した図14、図15の係止部40、50を、係止部60に代えた例である。
図16(A)は、針22が針カバー1より前方に露出した第一の位置(p1)、図16(C)は、針22が針カバー1内に収納される第二の位置(p2)、図16(B)は針22が第一の位置から第二の位置へ移動する途中の位置(pt)をそれぞれ示している。
(1)患者に薬液等の注入を終えた状態では、図16(A)に示すように、針22は針カバー1より前方に露出した第一の位置にある。
【0087】
(2)針カバー1を片方の手で固定し、他方の手でチューブTを後方に引くと、係止部60のフック61は、図16(B)に例示するように、後方部4方向へ移動し、内側に撓みながら後方部4内を通過する。
【0088】
(3)そして、針22が第二の位置(p1)まで移動した後は、フック61の前面が、後方部4の背面(後方開口4aの端面4b)に係止される。
【0089】
上記式で表現されているとおり、係止部のフック61の外径D11は、後方部4開口部4aの径D3より大きく形成されているので、係止部60は、後方部4方向へ逆に移動するのを阻止される。針22は、針カバー1内に収納された後は、再び針カバー1から第一の位置方向へ移動して、鋭利な針先が露出することはない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の針カバー付医療用針は、煩わしい操作なしに容易に、しかも安全、確実に針カバー内に収納することができるものであり、操作性と安全性を両立させた医療用針として、輸液及び輸血等に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の針カバーの一例を示す概略図であって、(A)は本発明の針カバー1の正面斜視図、(B)はスリットが開いた状態を示す正面斜視図である。
【図2】本発明の針カバーの一例を示す概略図であって、(A)は本発明の針カバーの正面斜視図、(B)はスリットが開いた状態を示す正面斜視図である。
【図3】針カバー付医療用針の使用方法の一例について示す図であり、(A)〜(C)は、使用時の経過を時系列的に示す断面図であり、(D)は、翼付針の平面図である。
【図4】針カバー付医療用針の使用方法の一例について示す図であり、(A)〜(C)は、使用時の経過を時系列的に示す斜視図である。
【図5】針カバー付医療用針の使用方法の一例について示す図であり、(A1)〜(C1)は、使用時の経過を時系列的に示す断面図であり、(A2)〜(C2)は使用時の経過を時系列的に示す平面図である。
【図6】針カバー付医療用針の使用方法の一例について示す図であり、(A)〜(I)は、使用時の経過を時系列的に示す断面図であり、(J)は、翼付針の平面図である。
【図7】針カバー付医療用針の使用方法の一例について示す図であり、(A)〜(C)は、使用時の経過を時系列的に示す斜視図である。
【図8】針カバー付医療用針の使用方法の一例について示す図であり、(A1)〜(C1)は、使用時の経過を時系列的に示す断面図であり、(A2)〜(C2)は使用時の経過を時系列的に示す平面図である。
【図9】針カバー付医療用針の使用方法の一例について示す図であり、(A)〜(C)は、使用時の経過を時系列的に示す斜視図である。
【図10】針カバー付医療用針の使用方法の一例について示す図であり、(A1)〜(C1)は、使用時の経過を時系列的に示す断面図であり、(A2)〜(C2)は使用時の経過を時系列的に示す平面図である。
【図11】針カバー付医療用針の使用方法の一例について示す図であり、(A)〜(C)は、使用時の経過を時系列的に示す斜視図である。
【図12】針カバー付医療用針の使用方法の一例について示す図であり、(A1)〜(C1)は、使用時の経過を時系列的に示す断面図であり、(A2)〜(C2)は使用時の経過を時系列的に示す平面図である。
【図13】針カバー付医療用針の使用方法の一例について示す図であり、(A)〜(I)は、使用時の経過を時系列的に示す断面図であり、(J)は、翼付針の平面図である。
【図14】針カバー付医療用針の使用方法の他の一例について示す図であり、(A)〜(C)は、使用時の経過を時系列的に示す断面図であり、(D)は、翼付針の平面図であり、(E)は翼付針の斜視図、(F)はその反対側から見た斜視図である。
【図15】針カバー付医療用針の使用方法の他の一例について示す図であり、(A)〜(C)は、使用時の経過を時系列的に示す断面図であり、(D)は、翼付針の平面図であり、(E)は翼付針の斜視図、(F)はその反対側から見た斜視図である。
【図16】針カバー付医療用針の使用方法の他の一例について示す図であり、(A)〜(C)は、使用時の経過を時系列的に示す断面図であり、(D)は、翼付針の平面図であり、(E)は翼付針の斜視図、(F)はその反対側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0092】
1 針カバー
2 前方部
2a 突部
3 中腹部
4 後方部
4a 後方部4の開口
4b 後方部4の開口の端面
5 開口部
7 スリット
8 (翼状)ストッパー
8a 係止部
8b 肉厚部
8c 係止部
21 翼付針
22 針
23 針基
24 翼部
27 係止部(リング状)
27a その前面
28 係止部(パイプ状)
30 針基に装着又は形成される係止部
40 係止部
41 フック
42 本体
43 連結部
50 係止部
51 フック
52 本体
60 係止部
61 フック
62 本体
63 連結部
65 環状の固定部材
D1 係止部の外径
D2 チューブの外径
D3 後方部4の開口4の径
D4 後方部4の内径
T チューブ
p1 第一の位置
p2 第二の位置
pt 第一の位置(p1)から第二の位置(p2)へ移動する途中の位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体の長手方向に順次前方部(2)、略中腹部(3)、及び後方部(4)を有し、その略中腹部(3)の底部に開口(5)を、その後方部(4)にスリット部(7)を形成した筒状の針カバー(1)と、
針基(23)の両側部に一対の翼部(24)を装着し、当該針基(23)の前方に針(22)を植設し、当該針基(23)の後方にチューブ(T)を装着した翼付針(21)とから構成され、
当該翼付針(21)は、当該針カバー(1)内に褶動可能に収納され保護される針カバー付医療用針において、
(A)前記チューブ(T)に係止部(27)、(28)を装着するか、または(B)前記針基(23)の後方に係止部(30)を装着し、当該針カバー内に収納した当該翼付針を固定するようにしたことを特徴とする針カバー付医療用針。
【請求項2】
前記針(22)が、前記針カバー(1)より前方に露出した第一の位置から、前記針(22)が前記針カバー(1)内に収納し隠される第二の位置まで針カバー(1)内を褶動して移動する際に、前記係止部(27)、(28)、(30)は、前記スリット部(7)を形成した後方部(4)を、当該スリット(7)に沿ってこれを外側に押し広げながら、当該後方部(4)を通過し、当該針(22)が前記第二の位置まで移動した後は、当該係止部(27)、(28)、(30)の前面が、当該後方部(4)の背面に係止され、当該翼付針は前記第二の位置において当該針カバー内に固定され、第一の位置方向へ移動するのを阻止するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の針カバー付医療用針。
【請求項3】
前記翼付針(21)は、前記針(22)が、前記針カバー(1)より前方に露出した前記第一の位置にあるときは、当該針(22)が前記針カバーの前方部(2)から露出した状態で、前記翼部(24)の前面が前記前方部(2)の背面に当接され、前記係止部(27)、(28)、(30)は、前記略中腹部(3)ないし前記後方部(4)内に位置し、
前記翼付針(21)が針カバー(1)内に収納し隠される前記第二の位置にあるときは、前記針(22)が当該前方部(2)ないし前記略中腹部(3)内に配置され、前記係止部(27)、(28)、(30)は、前記後方部(4)から露出して、その前面が当該後方部(4)の背面に係止され、当該翼付針は前記第二の位置において当該針カバー内に固定されるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の針カバー付医療用針。
【請求項4】
前記係止部(27)、(28)、(30)の外径(D1)、前記チューブ(T)の外径(D2)、前記後方部(4)の開口(4a)の径(D3)、及び前記後方部(4)の内径(D4)のそれぞれの大きさが以下の関係式を満足するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の針カバー付医療用針。

係止部(27)、(28)、(30)の外径(D1)>チューブ(T)の外径(D2) (i)
係止部(27)、(28)、(30)の外径(D1)>後方部(4)の開口(4a)の径(D3) (ii)
係止部(27)、(28)、(30)の外径(D)=<後方部4の内径D4 (iii)
【請求項5】
前記中腹部(3)の両側部に翼部(24)を係止するための一対のストッパー(8)を突設したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の針カバー付医療用針。
【請求項6】
筒状体の長手方向に順次前方部(2)、略中腹部(3)、及び後方部(4)を有し、その略中腹部(3)の底部に開口(5)を形成した筒状の針カバー(1’)と、
針基(23)の両側部に一対の翼部(24)を装着し、当該針基(23)の前方に針(22)を植設し、当該針基(23)の後方にチューブ(T)を装着した翼付針(21)とから構成され、
当該翼付針(21)は、当該針カバー(1’)内に褶動可能に収納され保護される針カバー付医療用針において、
当該チューブ(T)または前記針基(23)の後方に複数のフック(41)、(51)、(61)を有する係止部(40)、(50)、(60)を装着し、当該針カバー内に収納した当該翼付針を固定するようにしたことを特徴とする針カバー付医療用針。
【請求項7】
前記針(22)が、前記針カバー(1’)より前方に露出した第一の位置から、前記針(22)が前記針カバー(1)内に収納し隠される第二の位置まで前記針カバー(1)内を褶動して移動する際に、
前記係止部(40)、(50)、(60)のフック(41)、(51)、(61)は、内側に撓みながら当該後方部(4)内を通過し、前記針(22)が第二の位置まで移動した後は、フック(41)、(51)、(61)の前面が、前記後方部(4)の背面に係止し、かくして、当該翼付針は前記第二の位置において当該針カバー内に固定され、第一の位置方向へ移動するのを阻止するようにしたことを特徴とする請求項6に記載の針カバー付医療用針。
【請求項8】
前記翼付針(21)は、前記針(22)が、前記針カバー(1’)より前方に露出した前記第一の位置にあるときは、当該針(22)が前記針カバーの前方部(2)から露出した状態で、前記翼部(24)の前面が前記前方部(2)の背面に当接され、前記係止部(40)、(50)、(60)は、前記略中腹部(3)ないし前記後方部(4)内に位置し、
前記翼付針(21)が針カバー(1)内に収納し隠される前記第二の位置にあるときは、前記針(22)が当該前方部(2)ないし前記略中腹部(3)内に配置され、前記係止部(40)、(50)、(60)のフック(41)、(51)、(61)は、前記後方部(4)から露出して、その前面が当該後方部(4)の背面に係止され、当該翼付針は前記第二の位置において当該針カバー内に固定されるようにしたことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の針カバー付医療用針。
【請求項9】
前記係止部(40)、(50)、(60)のフック(41)、(51)、(61)の外径(D11)、チューブ(T)の外径(D2)、前記後方部(4)の開口(4a)の径(D3)、及び後方部(4)の内径(D4)のそれぞれの大きさが以下の関係式を満足するものであることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の針カバー付医療用針。

フック(41)、(51)、(61)の外径(D11)>チューブ(T)の外径(D2) (i)
フック(41)、(51)、(61)の外径(D11)>後方部(4)の開口(4a)の径(D3) (ii)
フック(41)、(51)、(61)の外径(D11)>後方部(4)の内径(D4)
(iii)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−312982(P2007−312982A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145146(P2006−145146)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】