説明

針状体チップおよびその製造方法

【課題】針状体の破損や変形を抑制し、安定した薬剤投与が行われるようにした、針状体集合チップおよびその製造方法の提供。
【解決手段】複数の微細な針状体がチップ基板25上に林立している針状体集合チップ14であって、中心部に位置する針状体2aのチップ基材面に垂直な方向における高さが外周部に位置する針状体2bの高さよりも高く設定されていて、さらに、少なくとも最外周部に位置する針状体は平坦な先端部を有していると共に、その内側に位置する針状体は鋭角な尖端部を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の微細な針状体がチップ基板上に林立している針状体集合チップおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の上から薬剤を浸透させて体内に薬剤を投与する方法である経皮吸収法は、人体に痛みを与えることなく簡便に薬剤を投与することが出来る方法として用いられている。しかし、この方法では、薬剤の種類によっては投与が困難なことがある。そこで、経皮吸収法では投与ができないこのような薬剤を効率よく体内に吸収させる方法として、ミクロンオーダーの微細な針状体(マイクロニードル)を用いて皮膚を穿孔し、皮膚内に直接薬剤を投与する方法が注目されている。この方法によれば、投薬用の特別な機器を用いることなく、簡便に薬剤を皮下投薬することが可能となる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この際に用いる微細な針状体の形状は、皮膚を穿孔するための十分な細さと先端角、および皮下に薬剤を浸透させるための十分な長さを有していることが必要とされ、細さは数μmから数百μm程度、長さは皮膚の最外皮層である角質層を貫通し、かつ神経層へ到達しない長さ、具体的には数十μmから数百μm程度のものであることが望ましいとされている。
【0004】
角質層の厚さは部位によっても若干異なるが、平均して20μm程度である。また、角質層の下にはおよそ200μmから350μm程度の厚さの表皮が存在し、さらにその下層には毛細血管が張りめぐる真皮層が存在する。このため、角質層を貫通させて薬剤を浸透させるためには少なくとも20μm以上の長さの針が必要となる。また、採血を目的として使用される針状体は、上記のような皮膚の構成から少なくとも350μm以上の長さが必要となる。
【0005】
また、針状体を構成する材料としては、仮にその一部が破損して体内に残留した場合でも、人体に悪影響を及ぼしにくい材料であることが必要であり、このような材料として医療用シリコーン樹脂や、マルトース、ポリ乳酸、デキストラン等の生体適合性樹脂が有望視されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
また、針状体の形状は、円錐や角錐等であり、その頂部は鋭角な尖端を有するものだけではなく、平坦な先端部を有するものも提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
さらに、針状体の薬剤投与性能を向上させる方法として、薬剤等を含んだ材料で構成された、高さの異なる皮膚用針を備えた針具も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【特許文献1】米国特許第6183434号明細書
【特許文献2】特開2005−21677号公報
【特許文献3】特開2005−533625号公報
【特許文献4】特開2007−37707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した針状体は、微細な構造であるため機械的強度を持たせることが難しく、穿刺に際して、針状体が破損、または変形する恐れがある。また、その穿刺対象が皮膚11であった場合、穿刺時にその伸縮性及び弾力性により皮膚11に変形が生じる
と、針状体集合チップ12の外周部にある針状体10bに於いては、チップ基板の表面に対して水平な方向に過度の圧力が加わり、破損及び変形が顕著となる(図2、図3参照)。
【0009】
針状体が破損しその一部が体内に残留した場合、体内で害を及ぼすことが懸念されるため、破損が発生し易い構造の機器を医療用として用いることは適切ではない。また、針状体の破損や変形は薬剤投与量の減少を引き起こし、結果として十分な医薬品投与効果が期待できない。
【0010】
また、生体への影響を低減するために、針状体の構成材料に生体適合性樹脂を用いる場合、選択できる材料が制限され、材料の改善のみで破損や変形を抑制することは困難である。
【0011】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、穿刺の際に発生する荷重付加に耐えられる構造を針状体に持たせることで、針状体の破損や変形を抑制し、安定した薬剤投与が行われるようにした、複数の微細な針状体が林立している針状体集合チップとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上のような目的を達成するためになされ、請求項1記載の発明は、複数の微細な針状体がチップ基板上に林立している針状体集合チップであって、中心部に位置する針状体のチップ基材面に垂直な方向における高さが外周部に位置する針状体の高さよりも高く設定されていて、さらに、少なくとも最外周部に位置する針状体は平坦な先端部を有していると共に、その内側に位置する針状体は鋭角な尖端部を有していることを特徴とする針状体集合チップである。
【0013】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の針状体集合チップにおいて、前記針状体の高さは、中心部から外周部に向かってその高さが段階的に低くなっていることを特徴とする。
【0014】
さらにまた、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の針状体集合チップにおいて、前記平坦な先端部を有している個々の針状体は、外観が角錐台であることを特徴とする。
【0015】
さらにまた、請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の針状体集合チップにおいて、構成材料が生体適合性材料からなることを特徴とする。
【0016】
さらにまた、請求項5記載の発明は、複数の微細な針状体がチップ基板上に林立している針状体集合チップの製造方法であって、中心部から外周部に向かってその高さが段階的に低くなるように加工して段差を有する基板を得た後、その段差を有する基板に対して高さが最も高い中心部分においては鋭角な尖端部を有する針状体が形成されるように設定してその全域に渡って針状体の形成加工を行うことにより、チップ基材の中心部に位置する針状体は鋭角な尖端部を有し、チップ基材面に垂直な方向における高さは外周部にある針状体の高さよりも高く、さらには、少なくとも最外周部に位置する針状体は平坦な先端部を有するようにチップ基板上に複数の微細な針状体を形成することを特徴とする針状体集合チップの製造方法である。
【0017】
さらにまた、請求項6記載の発明は、請求項5記載の針状体集合チップの製造方法は、得られた針状体集合チップを母型として複製版を作製する複製版作製工程と、この複製版作製工程によって得られた複製版に針状体集合チップの構成材料を充填し、しかる後に剥
離する成形工程とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の針状体集合チップは、その一部を構成するチップ基板の中心部に林立している針状体のチップ基板面に垂直な方向における高さが、外周部に設けられている針状体より高く設定されていて、さらには、少なくとも最外周部に位置する針状体は平坦な先端部を有していると共に、その内側に位置する針状体は鋭角な尖端部を有していることを特徴とする。
【0019】
このような構成であれば、皮膚のように伸縮性や弾性を持つ対象物への穿刺に使用した際には、針状体集合チップの中心部に位置する針状体が、最外周部にある針状体に先んじて皮膚と接触するため、水平成分の応力によって外周部の針状体が破損もしくは変形することを抑制できる。よって、穿刺時に安定した薬剤投与効果を得ることができる。
【0020】
しかも、上述したような補強構造を有する本発明に係る針状体集合チップの製造は、従来の針状体集合チップの製造工程を大きく変更することなく、しかも容易に行えるため、生産効率を大きく低下させることがない。
【0021】
また、これらの構造を持つ針状体集合チップを、生体適合性材料を用いて作製することで、穿刺時に折れや欠けなどが発生したとしても、人体への影響を低減することが可能となる。
【0022】
さらに、上記の構造を持つ針状体集合チップを母型として複製版を得、それにより針状体集合チップを成形加工することで、生産性が向上し、同一形状の針状体集合チップを安価で大量に生産することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の針状体集合チップおよびその製造方法について、図を参照しながら説明を行う。
【0024】
本発明の針状体集合チップは図1に示されるように、複数の微細な針状体2a、2bがチップ基板25上に林立している針状体集合チップ14であって、中心部に位置する針状体2aのチップ基板25面に垂直な方向における高さが外周部に位置する針状体2bの高さよりも高く設定されていて、さらに、少なくとも最外周部に位置する針状体2bは平坦な先端部を有していると共に、その内側に位置する針状体2aは鋭角な尖端部を有している。
【0025】
鋭角な尖端部を有する針状体2aの本数および平坦な先端部を有する針状体2bの本数は特に規定されず、中心の一本のみが鋭角な尖端部を有する針状体でその他が平坦な先端部を有する針状体である針状体集合チップから、最外周のみが平坦な先端部を有する針状体でその他がすべて鋭角な尖端部を有する針状体である針状体集合チップまでをも含む。
【0026】
また、チップ基板25の基板面に垂直な方向における高さは、すべての鋭角な尖端部を有する針状体2aは平坦な先端部を有しているどの柱状体2bよりも高くなっている。そして、鋭角な尖端部を有する針状体2aは平坦な先端部を有している針状体2bと同一の底面積を持った錐台形状の構造を有している。
【0027】
鋭角な尖端部を有する針状体2aの形状は、その頂部が10°から45°程度の鋭角な尖端となっていることが好ましい。このような尖端部の角度によって平坦な先端部を有している針状体2bの好ましい形状も変化する。平坦な先端部を有している針状体2bの形
状は最外周部に位置するものはその頂部の平坦部の面積が100平方マイクロメートル以上であることが好ましく、また、平坦な先端部を有している針状体2bの好ましい高さは鋭角な尖端部を有する針状体2aの先端部の角度によって異なってくる。具体的には、針状体2aの高さをHμm、先端角を2θとした場合、針状体2bの高さhは、h<H−5tan(90°−θ)とすることが好ましい。
【0028】
また、針状体のチップ基板上での林立状態は、鋭角な尖端部を有する針状体および平坦な先端部を有している針状体が一列に並んだ状態のものに限らず、このような列構成のものが複数列連なって矩形状に配列されたもの、もしくは、針状体が円形状、多角形状、あるいはランダムに複数配列された構成のものであってもよい。
【0029】
次に、本発明の針状体集合チップの製造方法について説明する。
【0030】
本発明の針状体集合チップの製造方法は、中心部から外周部に向かってその高さが段階的に低くなるように加工して段差を有する基板15を得た後、その段差を有する基板15に対して高さが最も高い中心部分15aにおいては鋭角な尖端部を有する針状体22aが形成されるように設定して、その状態で段差を有する基板15の全域に渡って針状体の形成加工を行うことにより(図4、図5)、チップ基材25の中心部に位置する針状体2aは鋭角な尖端部を有し、チップ基材面に垂直な方向における高さは外周部にある針状体2bの高さよりも高く、さらには、少なくとも最外周部に位置する針状体は平坦な先端部を有するようにチップ基板25上に複数の微細な針状体を形成することを特徴とするものである(図1)。
【0031】
段差を有する基板15を構成する基板材料としては、その段差の加工方法によって適宜のものを選択して使用することができる。具体的には、セラミックス、結晶性材料、金属、樹脂などを用いることができる。
【0032】
このような構成材料からなる板状の基材に対し、その中心部から外周部に向かってその高さが段階的に低くなるようにして段差を有する基板を作製するには、例えば研削加工や切削加工、もしくは放電加工等の一般的な機械加工技術を用いればよい。このときの段差は一段に限らず、複数段であってもよい。また、各段の表面は水平である必要はなく、任意の傾斜角度で傾斜していてもよい。また各段の段差は同じである必要はなく、各段の段差が異なるようになっていてもよい。因みに、図4に示す段差を有する基材は、各段の表面が水平となっていて、各段の段差が等しくなっている。
【0033】
このような構成の段差を有する基板15が作製されたら、次に、段差を有する基板15に対して針状体の形成加工を施す。具体的には、段差を有する基板15に対して高さが最も高い中心部分15aにおいては鋭角な尖端部を有する針状体22aが形成されるように設定し、その状態で段差を有する基板15の全域に渡って針状体の形成加工を行うことにより(図4、図5)、チップ基材の中心部に位置する針状体2aは鋭角な尖端部を有し、チップ基材面に垂直な方向における高さは外周部にある針状体2bの高さよりも高く、さらには、少なくとも最外周部に位置する針状体2bは平坦な先端部を有するようにチップ基板上に複数の微細な針状体を形成する。
【0034】
段差を有する基板を用いてそこに複数の針状体を形成する方法としては、研削加工や放電加工により針状体の一傾斜面に該当する部分を形成すべく直線状に切削加工を行い、続いてこのような操作を針状体の他の傾斜面に該当する部分に対して複数回行えばよい。
【0035】
この加工における傾斜面のテーパ角及び、前工程における段差を有する基板作製工程における各段の段差の度合いを規定することで、針状体の側面形状及び高さを任意に設定で
きる。
【0036】
また、このときの加工方法は特に限定されないが、好ましくは前処理工程、すなわち段差を有する基板の作製に用いた加工法と同一の手法で行うことが好ましい。これにより工程の一元化が可能となる。
【0037】
上述したような方法により、段差を有する基板の高さが最も高い中央領域では、鋭角な尖端を有する針状体が形成される。また、高さが最も高い中央部分以外の部分では、平坦な先端部を有する針状体が形成される。このとき、低い高さの段においてはそれより高い段の領域で形成される針状体と較べて頂部の平坦な部分における面積が広くなる。したがって、得られる針状体集合チップの周辺部の針状体の先端部が強化されることになり、使用の際に破損が起こり難くなる(図1)。
【0038】
次に、複製版を使用した針状体集合チップの製造方法について説明する。
【0039】
まず、上述の製造方法によって得られた針状体集合チップを母型17として、賦型材18で型取りを行う(図6(A))。続いて、母型(針状体集合チップ)17の形状が賦型された賦型材を母型17から剥離し、複製版19を得る(図6(B))。
【0040】
このとき、賦型材としては、特に制限されるものではないが、複製版として機能するだけの形状追従性、後述する転写加工成形における転写性、耐久性および離型性等が良好な材質のものを選択して用いればよい。より具体的には、ニッケル、熱硬化性のシリコーン等の賦型材を用いればよい。ニッケルを選択した場合の賦型方法としては、メッキ法、PVD法等が挙げられる。
【0041】
また、賦型材と母型の剥離の仕方としては、物理的な剥離力による剥離または選択性エッチング法を用いた剥離等が採用できる。
【0042】
このようにして複製版が得られたら、その凹部に針状体構成材料20を充填し、しかる後に針状体の形状が賦型された成形物を剥離し、所期の針状体集合チップ21を得る(図6(C)、(D))。このような製造方法によれば、同一の複製版から多量の針状体集合チップを製造することが出来るため、生産コストを低くし、生産性を高めることが可能となる。
【0043】
針状体構成材料は特に制限されないが、生体適合性材料である医療用シリコーン樹脂や、マルトース、ポリ乳酸、デキストラン、糖質等を用いることで、生体に対して好適に用いられる針状体集合チップとすることができる。生体適合性材料を用いれば、針状体の一部が折れて体内に取り残されたとしても害を及ぼさない。このときの針状体構成材料の充填方法についての制限は無いが、生産性の観点から、インプリント法、ホットエンボス法、射出成形法、押し出し成形法およびキャスティング法等を用いることが出来る。
【0044】
このとき、複製版から成形物を剥離し易くするために、針状体構成材料の充填前に、複製版の型面上に離型効果を増すための離型層を形成するようにしてもよい(図示せず)。離型層としては、例えば広く知られているフッ素系の樹脂からなる層である。また、離型層の形成方法としては、PVD法、CVD法、スピンコート法、ディップコート法等の薄膜形成手法を用いることができる。
【0045】
以下、本発明の実施例について述べる。
【実施例1】
【0046】
まず、基板として、厚さが5mmの板状のセラミックス基板を用意した。続いて、このセラミックス基板に対して、ダイヤモンドブレードを用いて研削加工を行い、基板の両端部の外周領域のみを200μm階段状に掘り下げる処理を行い、一段の段差を有する基板を得た。段差を測定した結果、その段差は199μmであった。
【0047】
次に、この段差を有する基板の表面に対し70°の傾斜角を持つダイヤモンドブレードで、次のようにして研削加工を行うことで針状体を作製した。
【0048】
作製に当たっては、XYZ軸制御が可能な切削加工装置に、研削刃として前述のダイヤモンドブレードを取り付け、段差を有する基板に溝加工を行うことで、まず直線状の溝を形成した。そして、このような溝加工をブレードをその幅分移動してから計5回行った。このとき、ブレードの送り速度は0.1mm/sとした。また、ブレードの移動は、溝加工によって形成される角錐状の針状体間の形成ピッチが500μmとなるようにし、加工深さは450μmとした。
【0049】
これに続いて、段差を有する基板を前工程の溝加工における溝の形成方向に対し90°回転させ、上記したのと同一の条件で溝加工を実施した。これに引き続き、90°段差を有する基板を回転させて行う溝加工を2回、前記した溝加工とあわせると計4回実施することにより、5×5本の針状体がチップ基板上に形成できた。各針状体は四角錐の形状をしており、中心部に位置する針状体の頂部は鋭角な尖端を有していて、その周辺の針状体は平坦な尖端を有していた。そして最後に、チップ基板の針状体が形成されなかった周縁部を450μmの深さで均一に研削することで、実施例1に係る針状体集合チップを得た。
【0050】
以上のようにして作製した針状体集合チップを走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、中央部分に配列、形成されている、鋭角な尖端を有する針状体は根元幅が330μmで、高さが445μmであり、頂部は40°の鋭角の尖端となっていることを確認した。また、鋭角な尖端を有する針状体の周辺に配列、形成されている、平坦な先端部を有している針状体は、平坦な先端部の幅が185μmで高さが251μmであることを確認した。
【実施例2】
【0051】
実施例1で得られた針状体集合チップを母型とし、以下のようにして複製版を利用した針状体集合チップを製造した。
【0052】
まず、賦型材としてニッケルを用いて針状体集合チップから電鋳法で型取りを行い、複製版を作製した。この時のメッキ処理は、メッキ浴としては60%のスルファミン酸ニッケル溶液を用いた、浴温45℃での5時間のメッキ処理であった。
【0053】
次に、この複製版に対し、インプリント法を用いて針状体の作製を行った。複製版の凹部に充填する針状体構成材料としては、生体適合性材料であるポリ乳酸を用いた。
【0054】
以上のようにして、ポリ乳酸から成り、中心部に位置する針状体のチップ基材面に垂直な方向における高さが外周部にある針状体の高さよりも高く設定されていて、さらに、少なくとも最外周部に位置する針状体は平坦な先端部を有していると共に、その内側に位置する針状体は鋭角な尖端部を有している針状体集合チップを得た。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の針状体集合チップは、医療のみならず、微細な針状体を必要とする様々な分野において適用可能であり、例えばMEMSデバイス、創薬、化粧品などに用いる微細な針状体集合チップとしても有効に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る針状体集合チップの側面における断面状態を示す説明図である。
【図2】針状体集合チップを用いた皮膚への穿刺状態を示す説明図である。
【図3】穿刺に用いた時に周辺部の針状体が破損したときの針状体集合チップの状態を示す説明図である。
【図4】段差を有する基板の側面における断面状態を示す説明図である。
【図5】段差を有する基板に連続的に複数の針状体を作製する工程における段差を有する基板と形成しようとする各針状体の関係を示す説明図である。
【図6】複製版を用いた針状体集合チップの製造工程を経時的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1a、1b、2a、2b・・・針状体
11・・・皮膚
12・・・針状体集合チップ
13・・・破損領域
14・・・針状体集合チップ
15・・・段差を有する基板
15a・・・基板の中心部分
17・・・母型
18・・・賦型材
19・・・複製版
20・・・針状体構成材料
21・・・針状体集合チップ
22a・・・針状体
25、26・・・チップ基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の微細な針状体がチップ基板上に林立している針状体集合チップであって、中心部に位置する針状体のチップ基材面に垂直な方向における高さが外周部に位置する針状体の高さよりも高く設定されていて、さらに、少なくとも最外周部に位置する針状体は平坦な先端部を有していると共に、その内側に位置する針状体は鋭角な尖端部を有していることを特徴とする針状体集合チップ。
【請求項2】
前記針状体の高さは、中心部から外周部に向かってその高さが段階的に低くなっていることを特徴とする請求項1記載の針状体集合チップ。
【請求項3】
前記平坦な先端部を有している個々の針状体は、外観が角錐台であることを特徴とする請求項1または2記載の針状体集合チップ。
【請求項4】
構成材料が生体適合性材料からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の針状体集合チップ。
【請求項5】
複数の微細な針状体がチップ基板上に林立している針状体集合チップの製造方法であって、中心部から外周部に向かってその高さが段階的に低くなるように加工して段差を有する基板を得た後、その段差を有する基板に対して高さが最も高い中心部分においては鋭角な尖端部を有する針状体が形成されるように設定してその全域に渡って針状体の形成加工を行うことにより、チップ基材の中心部に位置する針状体は鋭角な尖端部を有し、チップ基材面に垂直な方向における高さは外周部にある針状体の高さよりも高く、さらには、少なくとも最外周部に位置する針状体は平坦な先端部を有するようにチップ基板上に複数の微細な針状体を形成することを特徴とする針状体集合チップの製造方法。
【請求項6】
得られた針状体集合チップを母型として複製版を作製する複製版作製工程と、この複製版作製工程によって得られた複製版に針状体集合チップの構成材料を充填し、しかる後に剥離する成形工程とを具備することを特徴とする請求項5記載の針状体集合チップの製造方法。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−61144(P2009−61144A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232469(P2007−232469)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】