説明

鉄イオンを放出する内部人工器官

ベース部と、組成がベース部とは異なり生理的条件下で内部人工器官から放出可能なFe(II)イオン供給源と、を備えた内部人工器官。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内部人工器官、特にステントに関する。
【背景技術】
【0002】
身体には、動脈、その他の血管およびその他の体腔のような様々な通路が含まれている。これらの通路は、時には閉塞または脆弱化に至る。例えば、通路は腫瘍によって閉塞する場合もあれば、プラークによって狭窄する場合もあり、動脈瘤によって脆弱化することもありうる。上記が生じた場合は、通路を再開させるか、補強するか、さらには医療用内部人工器官に置換することができる。内部人工器官は一般に、体内の管腔内に配置される管状部材である。内部人工器官の例には、ステント、カバー付きステント、およびステントグラフトが挙げられる。
【0003】
内部人工器官は、該内部人工器官が所望の部位へ輸送される際に圧縮または縮小されたサイズの内部人工器官を支持するカテーテルによって、身体内部へと送達させることが可能である。該部位に到達すると、例えば、内部人工器官が管腔の内壁と接触できるように、内部人工器官を拡張させることができる。
【0004】
拡張機構には、内部人工器官を強制的に径方向に拡張させることが挙げられる。例えば、拡張機構には、バルーン拡張式の内部人工器官を備えたバルーンを担持しているカテーテルが挙げられる。該バルーンを膨張させて変形させ、拡張した内部人工器官を管腔壁に接触した状態の所定位置に固定することができる。その後バルーンを収縮させ、カテーテルを抜去することができる。
【0005】
別の送達技術では、内部人工器官は、例えば弾性により、または材料の相転移により可逆的に圧縮および拡張可能な、弾性材料から形成される。体内への導入中は、該内部人工器官は圧縮状態で拘束される。所望の移植部位に到達すると、例えば外側シースのような拘束用デバイスを後退させて内部人工器官が自身の内的な弾性復元力によって自己拡張できるようにすることにより、拘束が解除される。
【0006】
内部人工器官移植後の再狭窄は、重大な問題を引き起こす可能性がある。細胞外マトリックスの堆積を伴う当初の傷害に応答して移動かつ増殖する平滑筋細胞(SMC)は、再狭窄が引き起こされる際の重要な事象であると思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
内部人工器官であって、ベース部と、組成がベース部とは異なり生理的条件下で内部人工器官から放出可能なFe(II)イオン供給源と、を備えた内部人工器官が開示される。
【0009】
いくつかの実施形態では、Fe(II)イオン供給源はベース部の内部に植設されうる。例えば、Fe(II)イオン供給源は、ベース部の内部に植設されたナノ粒子の形態であってもよい。いくつかの実施形態では、ベース部が細孔を備え、Fe(II)イオン供給源は該細孔内に存在することができる。いくつかの実施形態では、Fe(II)イオン供給源はベース部の上を覆っている層の形態であってもよい。いくつかの実施形態では、Fe(II)イオン供給源はワイヤの形態であってもよい。いくつかの実施形態では、内部人工器官は、ベース部の上を覆っている薬物溶出コーティングをさらに備えることができる。薬物溶出コーティングは、Fe(II)イオン供給源を含むことができる。いくつかの実施形態では、内部人工器官は、Fe(II)イオンの濃度勾配を有することができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、Fe(II)イオン供給源には金属鉄またはその合金を挙げることができる。例えば、Fe(II)イオン供給源として純度が少なくとも99%の鉄が挙げられる。Fe(II)イオン供給源にはさらに、鉄と、Mn、Ca、Siまたはこれらの組み合わせとの合金を挙げることができる。いくつかの実施形態では、Fe(II)イオン供給源は、酸化鉄、炭化鉄、硫化鉄、ホウ化鉄、またはこれらの組み合わせであってもよい。例えば、Fe(II)イオン供給源は磁鉄鉱を含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、ベース部は金属合金を含むことができる。例えば、金属合金には、ステンレス鋼、白金で強化されたステンレス鋼、コバルト−クロム合金、ニッケル−チタン合金、またはこれらの組み合わせが考えられる。
【0012】
いくつかの実施形態では、ベース部は、生体侵食性(bioerodable)材料、例えば生体侵食性の金属(例えばマグネシウムもしくは鉄)または生体侵食性ポリマーを含むことができる。生体侵食性ポリマーの例には、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリグルコン酸(polygluconate)、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシドコポリマー、修飾セルロース、コラーゲン、ポリハイドロキシブチレート、ポリ無水物、ポリリン酸エステル、ポリアミノ酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、ポリグリコリド、およびポリ(α−ヒドロキシ酸)が挙げられる。
【0013】
いくつかの実施形態では、内部人工器官は、ベース部、Fe(II)イオン供給源、またはこれらの組み合わせの上を覆っている多孔性コーティングをさらに含むことができる。例えば、多孔性コーティングは、リン酸カルシウムヒドロキシアパタイトコーティング、スパッタチタンコーティング、多孔性無機炭素コーティング、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、内部人工器官はステントであってよい。
内部人工器官を形成する方法についても記載される。該方法は、内部人工器官の表面にFe(II)イオンを注入することを含み、得られる内部人工器官は生理的条件下でFe(II)イオンを放出するようになされる。例えば、Fe(II)イオンを、金属イオン浸漬注入処理法を使用して注入することが可能である。
【0015】
1以上の実施形態の詳細について、添付の図面および以下の説明において述べる。その他の特徴、目的および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】拡張したステントの例を示す斜視図。
【図2】織り込まれた鉄ワイヤを有する拡張したステントの例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
様々な図面における類似の参照符号は類似の要素を示す。
図1を参照すると、ステント20は、複数のバンド22と、隣接したバンドの間に伸びて該バンドを接続する複数のコネクタ24とによって画成された管状部材の形態を有することができる。例えば、図1のステント20はバルーン拡張式のステントであってよい。使用時には、バンド22を当初の小さな直径からより大きな直径へと拡張させて、ステント20が脈管の内壁に寄せて接触するようにして、該脈管の開通性を維持することが可能である。コネクタ24は、ステント20に、該ステントが脈管の輪郭に適合することを可能にする可撓性および追従性(conformability)を提供することができる。
【0018】
ステント20は、ベース部と、組成がベース部とは異なるFe(II)イオン供給源とを備えることができる。Fe(II)イオン供給源は生理的条件下でステント20から放出可能であってよい。生じるFe(II)イオンは、細胞増殖に関連したプロセスのうちの少なくともいくつかを抑制することができる。従って、生理的条件下でステント20から放出可能なFe(II)イオン供給源を提供することによって、結果として患者の体内に放出されたFe(II)イオンが、平滑筋細胞の増殖を抑制し、かつこの増殖抑制によって再狭窄の可能性を低減することができる。
【0019】
Fe(II)イオン供給源は様々な形をとることができる。例えば、Fe(II)イオン供給源はステント20の一部に注入されたFe(II)イオンであってよい。下記に述べるように、ステント20の一部にFe(II)イオンを注入するための1つの可能な方法は、金属イオン浸漬注入処理(MPIII)によるものである。
【0020】
Fe(II)イオン供給源はさらに、金属鉄またはその合金の形態であってもよい。例えば、鉄は、いずれも生体適合性を有するMn、CaまたはSiのうち少なくともいずれかとの合金とされてもよい。いくつかの適切な鉄合金は、例えばオトタニ(Ototani)の米国特許第2,950,187号明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、Fe(II)イオン供給源は純度が少なくとも99%の鉄であってよい。金属鉄またはその合金は、ステント全体またはステントの選択部分の上を覆っているコーティングの形態であってもよいし、ステント全体またはステントの選択部分に植設されたナノ粒子の形態であってもよいし、さらにはステントと脈管との間に配置されたワイヤの形態であってもよい。極めて高純度(例えば99.999重量%の鉄)の鉄ナノ粒子は、米国カリフォルニア州90024ロサンゼルス、ブロクストン通り1093の200号室(Broxton Ave. Suit 200)のアメリカンエレメンツ(American Elements)から市販で入手可能である。高純度の鉄ワイヤは、グッドフェロー(Goodfellow)からFE005105と指定して購入することができる(鉄ワイヤの直径:0.025mm、高純度:99.99+%調質)。
【0021】
Fe(II)イオン供給源は、生体侵食性の鉄含有セラミックまたは鉄の塩の形態であってよい。例としては、酸化鉄、炭化鉄、硫化鉄、ホウ化鉄、またはこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、Fe(II)イオン供給源は、磁鉄鉱(FeSO)の形態であってよい。磁鉄鉱が分解する際、磁鉄鉱はFe(II)イオン1つあたり2つのFe(III)イオンを供給し、したがってFe(II)イオンの制御放出を提供することができる。磁鉄鉱は、ナノサイズまたはマイクロサイズの粒子の形態であってよい。
【0022】
ステントのベース部は生体侵食性材料であってもよいし、非生体侵食性の材料であってもよい。生体侵食性のベース部は生体侵食性の金属または生体侵食性ポリマーのうち少なくともいずれかであってよい。例えば、ベース部はマグネシウムまたはその合金を含むことができる。ベース部は、純鉄、例えば純度が少なくとも99%の鉄であってもよい。生体侵食性ポリマーのベース部は、例えば、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリグルコン酸(polygluconate)、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシドコポリマー、修飾セルロース、コラーゲン、ポリハイドロキシブチレート、ポリ無水物、ポリリン酸エステル、ポリアミノ酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、ポリグリコリド、およびポリ(α−ヒドロキシ酸)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、生体侵食性のベース部は、鉄をほとんど含まないことも可能である。非生体侵食性のベース部は、例えば、ステンレス鋼、白金で強化されたステンレス鋼、コバルト−クロム合金、ニッケル−チタン合金、またはこれらの組み合わせのような金属合金を含むことができる。
【0023】
Fe(II)イオン供給源は、ベース部の上を覆っている層の形態であってもよい。Fe(II)イオン供給源は、金属鉄であってもよいし、生体侵食性の鉄合金であってもよい。ベース部は生体侵食性材料であってもよいし、非生体侵食性の材料であってもよい。ベース部上に鉄の外側層を生成させる1つの方法として、ベース部の上に鉄をスパッタリングすることが挙げられる。ベース部上に鉄の層を生成させる別の可能な方法として、パルスレーザー堆積法(PLD)または逆PLD法の使用が挙げられる。
【0024】
Fe(II)イオン供給源は、ベース部の上を覆っている別の材料の層の内部に組み込まれてもよい。例えば、Fe(II)イオン供給源は、生体侵食性金属または生体侵食性ポリマーの層の内部に埋設されたナノ粒子の形態であってもよいし、前記層内に注入されたFe(II)イオンであってもよい。Fe(II)イオン供給源はまた、ベース部の上を覆っている層の細孔の内部に存在することもできる。いくつかの実施形態では、層はベース部の上を覆っている薬物溶出コーティングであってもよい。例えば、Fe(II)イオン供給源を、従来のポリマー性(例えばSIBS)の薬物溶出コーティング内に植設することができる。他の実施形態では、Fe(II)イオン供給源は薬物溶出コーティングの内部に植設されたナノ粒子の形態であってもよいし、薬物溶出コーティングがFe(II)イオン供給源で満たされた細孔を備えていてもよい。薬物溶出コーティングからのFe(II)イオンの放出およびFe(II)イオン供給源の侵食が生じると、薬物溶出コーティングはより細孔が多くなり、その結果残りの薬物分子の薬物放出が増大しうる。
【0025】
Fe(II)イオン供給源は、ベース部に注入されたFe(II)イオンの形態であってもよい。例えば、Fe(II)イオンはMPIIIによって注入可能である。MPIIIの使用により、複雑な3D構造の中に鉄イオンを注入することが可能となる。MPIIIを使用することにより、注入されたFe(II)イオンの層、金属鉄の層、またはこれらの組み合わせを得ることが可能である。MPIIIの使用により、ベース部にFe(II)イオンの濃度勾配を作ることもできる。いくつかの実施形態では、Fe(II)イオンを注入するMPIII処理に続いて第2の鉄コーティング工程を行うことができる。
【0026】
マグネシウムまたはマグネシウム合金のベース部の場合、該マグネシウムベース部の上の鉄の層は、生理的条件下でマグネシウムベース部の腐食を遅らせることができる。従って、平滑筋細胞の増殖を抑制するだけでなく所望の時間をかけて侵食するように、マグネシウム−鉄ステントを設計することが可能である。例えば、マグネシウムステントの外側層が、マグネシウムまたはマグネシウム合金の内部に植設された最大94重量%の鉄を有することも考えられる。MPIIIの使用により、鉄からマグネシウムへと段階的に移行させることも可能であり、この段階的移行により、マグネシウム層と鉄の層との間の界面応力をより低くすることができる。
【0027】
マグネシウム−鉄ストラットを、積層(layer−by−layer)法の使用によって形成することも考えられる。MPIIIを使用して鉄イオンをマグネシウムベースに注入し、次いでPLDおよびMPIIIを使用してマグネシウムおよび鉄の追加の層を設けることも考えられる。この積層手法はマグネシウムに追加の腐食保護を提供し、ステントの寿命の全体にわたってFe(II)イオンを供給することができる。
【0028】
Fe(II)イオンを、(例えば金属性ホルダの上でポリマー性ステントを回転させることによる)イオン注入処理によって生体侵食性ポリマーのステントに注入し、Fe(II)イオンが注入されている生体侵食性ポリマーのベース部を得ることもできる。
【0029】
Fe(II)イオン供給源は、ベース部内部に埋設されたナノ粒子またはマイクロ粒子の形態であってもよい。上記に議論されるように、これらのナノ粒子またはマイクロ粒子は、金属鉄もしくはその合金、鉄含有セラミックス、または鉄塩類(例えば磁鉄鉱ナノ粒子または純度99.999%の鉄のナノ粒子)を含むことができる
ナノ粒子またはマイクロ粒子は、数多くの方法でベース部に組み入れることができる。例えば、生分解性ポリマーの溶融物にナノ粒子またはマイクロ粒子を配合することによりステントを形成することができる。別例には、積層法において様々なシェルに粒子を加えることが挙げられる。ナノ粒子またはマイクロ粒子の濃度は、層によって異なっていてもよい。荷電ナノ粒子の流れを発生させて、電極上にベース部を置くことで前記流れの中にベース部を置き、電極には荷電粒子と反対の極性を有するようにエネルギーを与えることにより、Fe(II)イオン供給源のナノ粒子をベース部に埋設することもできる。荷電ナノ粒子の流れは、ナノ粒子を含んでいる溶液を形成し、該溶液を荷電ノズルから噴霧し、溶液を蒸発させることにより形成することができる。ポリマーの医療用デバイスにナノ粒子を埋設するための同様の製法に関するより詳細な記載は、例えばヴェーバー(Weber)の米国特許第6,803,070号明細書に見出すことができる。
【0030】
ベース部は細孔を備えることが可能であり、Fe(II)イオン供給源は該細孔内に存在することができる。ベース部は非生体侵食性の材料であってもよいし、生体侵食性材料であってもよい。ベース部の細孔内にFe(II)イオン供給源を堆積させることによって、Fe(II)イオンの腐食速度を調節することができる。
【0031】
ステントは、Fe(II)イオン供給源の上を覆っているかまたはベース部の上を覆っている多孔性コーティングを備えることができる。多孔性コーティングは、無機物コーティング、例えばリン酸カルシウムヒドロキシアパタイト(CaHA)コーティング、スパッタチタンコーティング、または多孔性無機炭素コーティングであってよい。多孔性コーティングを設けることによって、腐食する鉄とステントを覆う内皮細胞との間の直接の接触を回避することができる。
【0032】
図2は、Fe(II)イオン供給源がワイヤ42の形態である構成を示している。図のように、ワイヤ42はステント40の本体に織り込まれている。ステント40の少なくとも一部はベース部を形成する。鉄が腐食するにつれて鉄分が供給されるように、ワイヤをステントと脈管との間に配置することができる。この構成により、組織中に鉄分をより均等に分布させることができる。例えば、ステント自体よりも高密度のネットワークを形成する極細のワイヤを使用することができる。高純度の鉄ワイヤは、グッドフェロー(Goodfellow)からFE005105と指定して購入することができる(鉄ワイヤの直径:0.025mm、高純度:99.99+%調質)。Fe(II)イオン供給源はまた、生体侵食性の鉄合金であってもよい。
【0033】
ステント20は、所望の形状および大きさのもの(例えば冠動脈ステント、大動脈ステント、末梢血管ステント、胃腸管用ステント、泌尿器科用ステント、および神経科用ステント)であってよい。用途に応じて、ステント20は例えば1mm〜46mmの直径を有することができる。ある実施形態では、冠状動脈ステントは2mm〜6mmの拡張径を有することができる。いくつかの実施形態では、末梢血管ステントは5mm〜24mmの拡張径を有することができる。ある実施形態では、胃腸管用ステントまたは泌尿器科用ステントのうち少なくともいずれかは6mm〜約30mmの拡張径を有することができる。いくつかの実施形態では、神経科用ステントは約1mm〜約12mmの拡張径を有することができる。腹部大動脈瘤(AAA)ステントおよび胸部大動脈瘤(TAA)ステントは、約20mm〜約46mmの直径を有することができる。ステント20は、バルーン拡張式、自己拡張式、またはその両方の組み合わせ(例えば米国特許第5,366,504号明細書)であってよい。
【0034】
使用時には、カテーテル送達システムを使用して、ステント20を使用、例えば送達および拡張することができる。カテーテルシステムについては、例えばワング(Wang)の米国特許第5,195,969号明細書、ハムリン(Hamlin)の米国特許第5,270,086号明細書、およびレーダー−デブンス(Raeder−Devens)の米国特許第6,726,712号明細書に記載されている。ステントおよびステント送達については、米国ミネソタ州メープルグローブ所在のボストン・サイエンティフィック・シメッド(Boston Scientific Scimed)から入手可能なSentinol(登録商標)システムも例示される。
【0035】
ステント20はカバー付きステントまたはステントグラフトの一部であってもよい。他の実施形態では、ステント20は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE、ポリエチレン、ウレタン、またはポリプロピレンで作製された、生体適合性で非多孔性または半多孔性のポリマーマトリックスを含むか、または該ポリマーマトリックスに付着しているかのうち少なくともいずれかであってよい。
【0036】
本明細書中に記載された構成を、他の内部人工器官の形成、例えば、ガイドワイヤまたはハイポチューブの形成のために使用することができる。
本明細書中で引用された出版物、参照文献、特許出願および特許はすべて参照によって全体が本願に組み込まれる。
【0037】
他の実施形態は特許請求の範囲の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部人工器官であって、ベース部と、組成がベース部とは異なり生理的条件下で内部人工器官から放出可能なFe(II)イオン供給源と、を含んでなる、内部人工器官。
【請求項2】
Fe(II)イオン供給源はベース部の内部に植設されている、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項3】
Fe(II)イオン供給源は、ベース部の内部に植設されたナノ粒子の形態である、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項4】
ベース部が細孔を含んでなり、Fe(II)イオン供給源は該細孔内に存在する、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項5】
Fe(II)イオン供給源はベース部の上を覆っている層の形態である、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項6】
Fe(II)イオン供給源はワイヤの形態である、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項7】
ベース部の上を覆っている薬物溶出コーティングをさらに含んでなり、該薬物溶出コーティングはFe(II)イオン供給源を含んでなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項8】
内部人工器官の中にFe(II)イオンの濃度勾配を含んでなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項9】
Fe(II)イオン供給源は金属鉄またはその合金を含んでなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項10】
Fe(II)イオン供給源は純度が少なくとも99%の鉄を含んでなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項11】
Fe(II)イオン供給源は、鉄と、Mn、Ca、Siおよびこれらの組み合わせから成る群から選択された元素との合金を含んでなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項12】
Fe(II)イオン供給源は、酸化鉄、炭化鉄、硫化鉄、ホウ化鉄、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項13】
Fe(II)イオン供給源は磁鉄鉱を含んでなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項14】
ベース部は、ステンレス鋼、白金で強化されたステンレス鋼、コバルト−クロム合金、ニッケル−チタン合金、およびこれらの組み合わせから成る群から選択された金属合金を含んでなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項15】
ベース部は、生体侵食性材料を含んでなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項16】
ベース部はマグネシウムを含んでなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項17】
ベース部は鉄を含んでなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項18】
ベース部は、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリグルコン酸、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシドコポリマー、修飾セルロース、コラーゲン、ポリハイドロキシブチレート、ポリ無水物、ポリリン酸エステル、ポリアミノ酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、ポリグリコリド、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、およびこれらの組み合わせから成る群から選択された生体侵食性ポリマーを含んでなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項19】
ベース部、Fe(II)イオン供給源、またはこれらの組み合わせの上を覆っている多孔性コーティングをさらに含んでなる、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項20】
多孔性コーティングは、リン酸カルシウムヒドロキシアパタイトコーティング、スパッタチタンコーティング、多孔性無機炭素コーティング、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項19に記載の内部人工器官。
【請求項21】
内部人工器官はステントである、請求項1に記載の内部人工器官。
【請求項22】
内部人工器官であって、マグネシウムまたはその合金を含んでなるベース部と、組成がベース部とは異なり生理的条件下で内部人工器官から放出可能なFe(II)イオン供給源とを含んでなり、Fe(II)イオン供給源は金属鉄またはその合金を含んでなる、内部人工器官。
【請求項23】
内部人工器官の中にFe(II)イオンの濃度勾配を含んでなる、請求項22に記載の内部人工器官。
【請求項24】
内部人工器官を形成する方法であって、
内部人工器官またはその前駆体の表面にFe(II)イオンを注入することを含んでなり、得られる内部人工器官が生理的条件下でFe(II)イオンを放出するようになされることを特徴とする方法。
【請求項25】
Fe(II)イオンは、金属イオン浸漬注入処理法を使用して注入される、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−534550(P2010−534550A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520069(P2010−520069)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/070748
【国際公開番号】WO2009/018013
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(506192652)ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド (172)
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
【Fターム(参考)】