説明

鉄筋コンクリート梁の曲げ強度の評価方法及び当該評価方法を用いて設計された鉄筋コンクリート梁

【課題】 鉄筋コンクリート梁の下部と上部とで設計基準強度が異なるコンクリートを打設する工法において、簡易かつ正確に鉄筋コンクリート梁の曲げ強度を評価可能な評価方法を提供し、この評価方法を用いて鉄筋コンクリート梁を適切に設計できるようにする。
【解決手段】 鉄筋コンクリート梁のPCa部と後打ち部とで設計基準強度が異なるコンクリートを打設する工法において、下端筋の引張力(Ty2)、梁成(D)、引張鉄筋の面積重心までの最小被り(dt)、コンクリート圧縮力(Cc)、コンクリート強度の低減係数(β)、圧縮縁から中立軸までの距離(Xn)、圧縮鉄筋による圧縮力(Cs1)、圧縮鉄筋の面積重心までの最小被り(dc)に関する下記条件式により、鉄筋コンクリート梁の曲げ耐力(Mu)を評価する。
u=Ty2(D/2−dt)+Cc(D/2−β・Xn/2)+Cs1(D/2−dc

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート梁の曲げ強度の評価方法及び当該評価方法を用いて設計された鉄筋コンクリート梁に関するものであり、特に、曲げの釣り合いだけではなく、せん断力も考慮した鉄筋コンクリート梁の曲げ強度の評価方法及び当該評価方法を用いて設計された鉄筋コンクリート梁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、高層建物では、柱コンクリート、梁コンクリート、床コンクリートの順に強度が低くなる。したがって、コンクリートを打ち分ける必要性が生じる。一般的に、梁と床との境界部分に型枠を設置したのでは手間が掛かるため、梁のコンクリートを打設する際に、床との境界部分でコンクリートを垂れ流しておき、コンクリートが固化しない時間以内に床コンクリートを打設して混ぜ合わせている。
【0003】
この際、「建築工事標準仕様書・同解説、JASS5、鉄筋コンクリート工事」において、コンクリートの練り混ぜ後からコンクリートを打ち重ねるまでの時間を2時間〜2.5時間と規定しているため、コンクリートの運搬時間を差し引くと殆ど時間的余裕がなく、厳密な施工計画を立てなければならない。
【0004】
ところで、柱コンクリートを打設した後に、残りの梁と床の後打ち部分をすべて1種類のコンクリート、しかも柱コンクリートよりも安価な床コンクリートのみで打設できれば、施工の手間及び材料費を大幅に低減することができる。この場合、梁下側がPCaで高強度、梁上側が床コンクリートによる後打ち部で低強度となる。ここで、梁の上側が圧縮になる場合、コンクリートの圧壊に対する検討が必要となるが、一般的に広く用いられている断面力の釣り合いに基づく計算は適用できなくなり、平面保持を仮定した収束計算により圧壊発生の有無を判定することとなる。この場合、すべての梁に対して断面解析を行うには膨大な時間と手間を要することとなる。
【0005】
また、圧壊を抑制する方策として、せん断補強筋の数を増やしてコンクリートの拘束効果を高めることが現実的であるが、その効果を評価する式がないため、実際に設計することができない。
【0006】
そこで、異なる設計基準強度のコンクリートが上下に打ち継がれた鉄筋コンクリート梁の強度を、両コンクリートの設計基準強度を考慮して算定する方法が開示されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載されている技術は、鉄筋コンクリート梁の高さ、下側に位置するコンクリートの設計基準強度、上側に位置するコンクリートの設計基準強度に関する条件式を用いて、鉄筋コンクリート梁のせん断強度を算出するようになっている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−225894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、通常、建物の設計において柱の降伏を許容する最下階と最上階を除いて、梁の軸鉄筋を降伏させて建物に粘りを持たせるように計画するため、層毎の水平耐力は梁の鉄筋降伏による曲げ耐力で決定する。ただし、曲げ耐力を算定する際には、圧縮側のコンクリートが圧壊しないことが前提条件となる。この圧壊が生じるか否かの検討には、釣り合い鉄筋比以下となるようにする方法がある。しかし、釣り合い鉄筋比の計算は弾性理論に基づくものであり、終局状態の圧縮域の挙動を確認するものではないため、簡易ではあるが、かなり安全側の評価となり、結果として軸制約される(梁耐力が小さくなる)か、梁断面積が大きくなるか、コンクリート強度を高くすることが要求される。
【0009】
上述したように、詳細に曲げ耐力を算定するには、コンピュータを用いた断面解析により、鉄筋が降伏するか、コンクリートが圧壊歪みに到達するかを判定する方法がある。しかし、実務では、梁毎に断面解析を行うのは手間と時間を要するため、現実的ではない。また、実際には、梁端部の圧縮域には曲げによる圧縮力だけではなく、せん断力を負担するために生じる圧縮力も発生しており、本来はこれらの複合的な力を同時に評価する必要がある。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、鉄筋コンクリート梁の下部と上部とで設計基準強度が異なるコンクリートを打設する工法において、従来の技術と比較して、より一層簡易かつ正確に鉄筋コンクリート梁の曲げ強度を評価可能な評価方法を提供し、この評価方法を用いて鉄筋コンクリート梁を適切に設計できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の鉄筋コンクリート梁の曲げ強度の評価方法及び当該評価方法を用いて設計された鉄筋コンクリート梁は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。
すなわち、本発明の鉄筋コンクリート梁の曲げ強度の評価方法は、鉄筋コンクリート梁の下部と上部とで設計基準強度が異なるコンクリートを打設する工法において、鉄筋コンクリート梁の曲げ強度を評価するための方法であって、
下記条件式1を用いて鉄筋コンクリート梁の曲げ強度を評価することを特徴とするものである。
【0012】
【数3】

ただし、
u : コンクリート梁の曲げ耐力
y2 : 下端筋の引張力
D : 梁成
t : 引張鉄筋の面積重心までの最小被り
c : コンクリート圧縮力
β : コンクリート強度の低減係数
n : 圧縮縁から中立軸までの距離
s1 : 圧縮鉄筋による圧縮力
c : 圧縮鉄筋の面積重心までの最小被り
【0013】
また、本発明の鉄筋コンクリート梁の曲げ強度の評価方法は、上記条件式1により求めたコンクリート梁の曲げ耐力が、下記条件式2により求めたコンクリート梁の曲げ耐力と比較して小さい場合に、コンクリートの圧壊が生じると判断することを特徴とするものである。
【0014】
【数4】

ただし、
M : 梁主筋の降伏で決まるコンクリート梁の曲げ耐力
y : 引張鉄筋の降伏時引張力
j : 引張鉄筋の面積重心から圧縮縁までの距離
【0015】
また、本発明の鉄筋コンクリート梁は、上記評価方法を用いて設計されたことを特徴とするものである。
【0016】
上記条件式1は、建物水平力により逆対称モーメントが作用したときの梁端部の応力状態に関する仮定に基づき導き出した条件式である。すなわち、地震が発生した際に、梁に対して逆対称のモーメントが作用した場合、曲げによる断面力と、せん断耐荷機構であるトラス機構及びアーチ機構による圧縮力が梁端部の圧縮領域に集中する。これらの力をそれぞれの力成分の大きさの比に応じて抵抗断面積を仮定し、一連の連立方程式を解くことにより条件式1を求めた。また、上記条件式2は、梁主筋の降伏で決まる曲げ耐力に関して一般的に用いられている条件式である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の鉄筋コンクリート梁の曲げ強度の評価方法及び当該評価方法を用いて設計された鉄筋コンクリート梁は、鉄筋コンクリート梁の下部と上部とで設計基準強度が異なるコンクリートを打設する際の曲げ強度の評価方法として、曲げの釣り合いだけではなく、せん断力も考慮しているので、簡易かつ正確に鉄筋コンクリート梁の曲げ強度を評価することができる。また、この評価方法を用いることにより、鉄筋コンクリート梁を適切に設計することができる。
【0018】
具体的には、本発明の鉄筋コンクリート梁の曲げ強度の評価方法を用いることにより、鉄筋コンクリート梁をプレキャストとし、柱以外の後打ち部をすべて床コンクリートで打設する場合に、鉄筋コンクリート梁の上下で強度の異なるコンクリートを用いた断面の曲げ圧壊耐力を、断面解析をすることなく、一般的な表計算ソフトを用いて簡易に計算することができる。また、鉄筋コンクリート梁上のコンクリート圧壊に対して、せん断補強筋を増やして補強した場合の補強効果を圧壊耐力の上昇として数値的に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の鉄筋コンクリート梁の曲げ強度の評価方法及び当該評価方法を用いて設計された鉄筋コンクリート梁の実施形態を説明する。
図1は、鉄筋コンクリート梁におけるPCa部と後打ち部の梁断面を示す模式図、図2は、鉄筋コンクリート梁全体の抵抗機構を示す模式図、図3は、鉄筋コンクリート梁の圧縮端部におけるFanとStrutの負担を示す模式図である。
【0020】
<梁に使用するコンクリートの強度>
本発明の鉄筋コンクリート梁(以下、梁と略記する)の曲げ強度の評価方法は、梁の下部と上部とで設計基準強度が異なるコンクリートを打設する工法において、梁の曲げ強度を評価する際に適用する。この工法では、梁の断面内で垂直方向に異なるコンクリートを用いる。すなわち、図1に示すように、梁10の断面内で下側に位置するPCa部11には強度の高いコンクリートを用い、上側に位置する後打ち部12では強度の低い床コンクリートを用いる。なお、図1において、10は梁、11はPCa部11、12や後打ち部、13はせん断鉄筋、20は床をそれぞれ示す。
【0021】
このとき、梁10の上側が圧縮となる曲げ耐力が、梁10の下側が圧縮となる曲げ耐力と比較して圧壊が先行するために、その強度が低下することが考えられる。このような状態となると、せっかく配置した軸鉄筋が性能を充分に発揮しないため無駄となる。また、破壊モードが、鉄筋降伏に比較して脆弱であり好ましくない。さらに、外観上もコンクリートの損傷が際立つため好ましくない。このような梁端部の圧壊は、ごく端部のみのせん断補強筋の数を若干増やすことで改善することが構造実験から確認されている。本発明の鉄筋コンクリート梁の曲げ強度の評価は、一般的な表計算ソフトで、せん断補強筋の補強効果を組み込んで、簡易に圧壊耐力を算定しようとするものである。
なお、梁端部の応力状態の仮定に用いたStrut & Fan Modeは、「ACI JOURNAL January-February 1985 pp46-56」を参考とした。
【0022】
<建物水平力により逆対称モーメントが作用したときの梁端部の応力状態>
図2に示すように、梁端部の圧縮領域にアーチ機構(Strut)とトラス機構(Fan)とが作用すると仮定する。なお、以下の説明において、Tは引張鉄筋の降伏時引張力、Vは梁内のすべてのせん断補強筋が降伏した時点のFanのせん断力、VはStrutのコンクリート束が圧縮終局強度に達した時点のせん断力とする。
【0023】
図2において、左上から右下に伸びた破線上での水平方向の釣り合いから、下記式(1)が成立する。
【0024】
【数5】

ただし、
y1 : 上端筋の引張力
y2 : 下端筋の引張力
c1 : Strutと釣り合うコンクリート圧縮力
c2 : Fanと釣り合うコンクリート圧縮力
ここで、曲げ降伏が先行する場合には、せん断補強筋が降伏する前に圧壊するので、下記式(2)が成立する。
【0025】
【数6】

ただし、
bu : 梁の保有せん断耐力
f : 梁内のすべてのせん断補強筋が降伏した時点のFanのせん断力
s : Strutのコンクリート束が圧縮終局強度に達した時点のせん断力
ここで、Vsがせん断補強筋による拘束効果を考慮した保有コンクリート強度に達した時点を梁の圧壊点とし、力と幾何学的な釣り合いからV、Vを求めると、下記式(3−1)、式(3−2)、式(3−3)、式(3−4)、式(4)が成立する。
【0026】
【数7】

ただし、
c1 : Strutと釣り合うコンクリート圧縮力
c2 : Fanと釣り合うコンクリート圧縮力
F : 垂直方向単位長さ当たりの拘束効果を考慮したコンクリート強度×梁幅
Y : Strutが負担するy方向の成分
B : Fanが負担するy方向の成分
c : コンクリート圧縮力
s1 : 梁の圧縮鉄筋による圧縮力
y2 : 下端筋の引張力
【0027】
【数8】

ただし、
F : 垂直方向単位長さ当たりの拘束効果を考慮したコンクリート強度×梁幅
β : コンクリート強度の低減係数(0.85)
cσB : 保有コンクリート強度(せん断補強筋の拘束効果を考慮した強度)
B : Fanが負担するy方向の成分
また、図2において、Strutの帯が梁の軸方向となす角をθとすると、下記式(5)が成立する。
【0028】
【数9】

ただし、
θ : Strutの帯が梁の軸方向となす角
X : Strutが負担するx方向の成分
Y : Strutが負担するy方向の成分
D : 梁成
0 : 梁の内法スパン
式(5)から、Yについて連立方程式を解き、幾何学的に正号は棄てて、負号を採ると、下記式(6)となる。
【0029】
【数10】

ただし、
A : Fanが負担するx方向の成分
B : Fanが負担するy方向の成分
D : 梁成
X : Strutが負担するx方向の成分
Y : Strutが負担するy方向の成分
0 : 梁の内法スパン
また、図3に示すように、下記式(7)が成立する。
【0030】
【数11】

ただし、
A : Fanが負担するx方向の成分
B : Fanが負担するy方向の成分
D : 梁成
X : Strutが負担するx方向の成分
Y : Strutが負担するy方向の成分
0 : 梁の内法スパン
【0031】
ここで、図4及び図5を参照して、式(5)、式(6)、式(7)について、さらに詳しく説明する。図4は、式(5)及び式(6)の導き方を説明するための説明図、図5は、式(7)の導き方を説明するための説明図である。
図4に示すように、梁端部の圧縮領域でStrutに注目すると、下記式(5−1)が成立する。また、下記式(5−2)が成立するため、式(5)が導き出される。
【0032】
【数12】

ただし、
θ : Strutの帯が梁の軸方向となす角
X : Strutが負担するx方向の成分
Y : Strutが負担するy方向の成分
【0033】
【数13】

ただし、
θ : Strutの帯が梁の軸方向となす角
X : Strutが負担するx方向の成分
Y : Strutが負担するy方向の成分
D : 梁成
0 : 梁の内法スパン
そして、式(5)から、下記式(6−1)、下記式(6−2)が導き出される。ここで、Yについて解くと、下記式(6−3)となり、Y<Dであるから負号を採ると、式(6)が導き出される。
【0034】
【数14】

ただし、
X : Strutが負担するx方向の成分
Y : Strutが負担するy方向の成分
D : 梁成
0 : 梁の内法スパン
【0035】
【数15】

ただし、
X : Strutが負担するx方向の成分
Y : Strutが負担するy方向の成分
D : 梁成
0 : 梁の内法スパン
【0036】
【数16】

ただし、
X : Strutが負担するx方向の成分
Y : Strutが負担するy方向の成分
D : 梁成
0 : 梁の内法スパン
また、図5に示すように、梁端部の圧縮領域でFanに注目すると、下記式(7−1)が成立する。また、下記式(7−2)が成立するため、式(7)が導き出される。
【0037】
【数17】

ただし、
γ : Fanの帯が梁の軸方向となす角
A : Fanが負担するx方向の成分
B : Fanが負担するy方向の成分
【0038】
【数18】

ただし、
γ : Fanの帯が梁の軸方向となす角
A : Fanが負担するx方向の成分
B : Fanが負担するy方向の成分
X : Strutが負担するx方向の成分
Y : Strutが負担するy方向の成分
D : 梁成
0 : 梁の内法スパン
そして、式(7)から、Bについて連立方程式を解き、幾何学的に正号は棄て、負号を採ると、下記式(8)となる。
【0039】
【数19】

ただし、
A : Fanが負担するx方向の成分
B : Fanが負担するy方向の成分
D : 梁成
X : Strutが負担するx方向の成分
Y : Strutが負担するy方向の成分
0 : 梁の内法スパン
これらの幾何学的な釣り合いから下記式(9−1)、式(9−2)、(9−3)、(9−4)が成立する。
【0040】
【数20】

ただし、
X : Strutが負担するx方向の成分
Y : Strutが負担するy方向の成分
F : 垂直方向単位長さ当たりの拘束効果を考慮したコンクリート強度×梁幅
A : Fanが負担するx方向の成分
B : Fanが負担するy方向の成分
D : 梁成
0 : 梁の内法スパン
s : Strutのコンクリート束が圧縮終局強度に達した時点のせん断力
f : 梁内のすべてのせん断補強筋が降伏した時点のFanのせん断力
【0041】
したがって、曲げ耐力は、下記式(10)となる。この式(10)が、本発明における条件式1である。図6に、断面内での曲げモーメントの釣り合いを示す。図6は、断面内での曲げモーメントの釣り合いを説明するための説明図である。
【0042】
【数21】

ただし、
u : コンクリート梁の曲げ耐力
y2 : 下端筋の引張力
D : 梁成
t : 引張鉄筋の面積重心までの最小被り
c : コンクリート圧縮力
β : コンクリート強度の低減係数(0.85)
n : 圧縮縁から中立軸までの距離
s1 : 圧縮鉄筋による圧縮力
c : 圧縮鉄筋の面積重心までの最小被り
【0043】
<梁端部の圧壊発生の判定>
式(10)により求めた曲げ耐力は、圧壊と梁主筋の降伏が同時に起こると仮定した場合の曲げ耐力である。したがって、この曲げ耐力の計算値が、一般的に用いられている下記式(11)等の梁主筋の降伏で決まる曲げ耐力と比較して小さい場合には、コンクリートの圧壊が起こると判断することができる。この式(11)が、本発明における条件式(2)である。
【0044】
【数22】

ただし、
M : コンクリート梁の曲げ耐力(梁主筋の降伏で決まる場合)
y : 引張鉄筋の降伏時引張力
j : 引張鉄筋の面積重心から圧縮縁までの距離
【0045】
<梁端部のせん断補強筋による拘束効果の評価>
梁端部の拘束効果については、建設省総合技術研究開発プロジェクト「New-RC 高強度鉄筋分科会報告書」の柱軸耐力に対する、帯筋の拘束効果によるコンクリート強度の見かけ上の強度上昇を参考した。
【0046】
なお、式(4)のcσBは、下記式(12)により算出する。
【0047】
【数23】

ただし、
cσcB : コンファインドコンクリートの強度
β : コンクリート強度の低減係数(0.85)
σB : プレーンコンクリートのシリンダー強度
d'' : 横補強筋の公称直径
c : 横補強筋の有効横支持長さ
s : 横補強筋のピッチ
ρn : 横補強筋の体積比
σny : 横補強筋の信頼強度
e : 梁の外周せん断鉄筋の間隔
【0048】
本発明の鉄筋コンクリート梁は、上記評価方法を用いて設計することができる。上記評価方法は、鉄筋コンクリート梁をプレキャストとし、柱以外の後打ち部をすべて床コンクリートで打設し、鉄筋コンクリート梁の上下で強度の異なるコンクリートを用いる工法において、梁の曲げ強度を評価する場合に適用する。本発明の評価方法では、断面解析をすることなく一般的な表計算ソフトを用いて、断面の曲げ圧壊耐力を簡易に計算することができ、1/2縮尺の梁部材模型実験により、その精度を検証したところ、梁の曲げ強度を評価する方法として充分な精度を有していることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】鉄筋コンクリート梁におけるPCa部と後打ち部の梁断面を示す模式図。
【図2】鉄筋コンクリート梁全体の抵抗機構を示す模式図。
【図3】鉄筋コンクリート梁の圧縮端部におけるFanとStrutの負担を示す模式図。
【図4】式(5)及び式(6)の導き方を説明するための説明図。
【図5】式(7)の導き方を説明するための説明図。
【図6】断面内での曲げモーメントの釣り合いを説明するための説明図。
【符号の説明】
【0050】
10 梁
11 PCa部
12 後打ち部
13 せん断鉄筋
20 床
Strut アーチ機構
Fan トラス機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート梁の下部と上部とで設計基準強度が異なるコンクリートを打設する工法において、鉄筋コンクリート梁の曲げ強度を評価するための方法であって、
下記条件式1を用いて鉄筋コンクリート梁の曲げ強度を評価することを特徴とする鉄筋コンクリート梁の曲げ強度の評価方法。
【数1】

ただし、
u : コンクリート梁の曲げ耐力
y2 : 下端筋の引張力
D : 梁成
t : 引張鉄筋の面積重心までの最小被り
c : コンクリート圧縮力
β : コンクリート強度の低減係数
n : 圧縮縁から中立軸までの距離
s1 : 圧縮鉄筋による圧縮力
c : 圧縮鉄筋の面積重心までの最小被り
【請求項2】
請求項1に記載の条件式1により求めたコンクリート梁の曲げ耐力が、下記条件式2により求めたコンクリート梁の曲げ耐力と比較して小さい場合に、コンクリートの圧壊が生じると判断することを特徴とする鉄筋コンクリート梁の曲げ強度の評価方法。
【数2】

ただし、
M : 梁主筋の降伏で決まるコンクリート梁の曲げ耐力
y : 引張鉄筋の降伏時引張力
j : 引張鉄筋の面積重心から圧縮縁までの距離
【請求項3】
請求項2に記載の評価方法を用いて設計されたことを特徴とする鉄筋コンクリート梁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate