説明

鉄筋接続方法及び鉄筋継手

【課題】 鉄筋の接続を効率良く行うことができるようにする。
【解決手段】 2本の鉄筋1a,1bの端部同士を所要長さ重ね合わせて配置して、該鉄筋1a,1bの端部に重ね部2を形成する。次に、鉄筋1aと1bとを、重ね部2の両端部分で連結する。次いで、連結した鉄筋1aと1bとの間に形成される凹部6に、ペースト状の接着剤7を充填する。しかる後、接着剤7を硬化させる。鉄筋1a,1bの連結と接着剤7の充填状態の確認を容易に行えるので、鉄筋1a,1bの接続を効率良く行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、プレキャストコンクリート造等において、鉄筋を接続するために用いられる鉄筋接続方法及び鉄筋継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、プレキャストコンクリート造等において、鉄筋を接続するために用いられる従来の鉄筋接続方法としては、一般的に、重ね継手と呼ばれる方法や機械式継手と呼ばれるものを用いた方法などがある。
【0003】
重ね継手と呼ばれる鉄筋接続方法は、鉄筋の端部同士を、鉄筋の種類、コンクリートの設計基準強度、鉄筋端部形状、鉄筋の直径により建築工事標準仕様書などによって規定された所要長さ重ね合わせた後、該重ね合わせた鉄筋の端部同士を、結束線で結束して連結し、しかる後、該結束線で連結した鉄筋をコンクリートで固めることにより、鉄筋の端部同士を接続するようにする方法である(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、機械式継手を用いた鉄筋接続方法は、鉄筋同士を機械的に接続する方法であり、その鉄筋接続方法としては、たとえば、接続すべき鉄筋の端部にそれぞれ雄ねじ部を形成して鉄筋同士の端部を突き合わせて配置し、該端部の雄ねじ部に、ねじ筒の内側に形成した雌ねじをそれぞれ螺合させることにより、鉄筋の端部同士を接続するようにする方法(たとえば、特許文献2参照)や、直列に配置した鉄筋の外側に、該鉄筋の外形よりも大径とした円筒状のスリーブを同心円状に配置し、該スリーブ内にモルタルを充填して、該モルタルを固化させることにより、鉄筋の端部同士を接続するようにする方法(たとえば、特許文献3参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−249501号公報
【特許文献2】特開2011−1765号公報
【特許文献3】特開昭54−137821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1に記載されたものは、必要な強度を得るために、鉄筋の端部同士を重ね合わせる長さを、建築工事標準仕様書などに規定された規定値以上にする必要がある。このため、プレキャストコンクリート造において、鉄筋を接続するのに重ね継手を用いる場合には、プレキャストコンクリート部材の間に、上記鉄筋の端部同士を重ね合わせる長さ以上の間隔を空けなければならないことから、該間隔を埋めるためのコンクリート打ちに時間がかかってしまう。したがって、鉄筋を接続する作業効率が悪いという問題がある。
【0007】
一方、上記特許文献2に記載されたものは、ねじ筒を鉄筋に対して回転させたり、ねじ筒と鉄筋との位置合わせを行ったりする必要があり、鉄筋同士を接続するのに非常に手間がかる。又、一方の鉄筋の雄ねじ部のねじピッチと、相対する他方の鉄筋の雄ねじ部のねじピッチが合わなければ、ねじ筒を螺合させることができない。したがって、鉄筋を接続する作業効率が悪いという問題がある。
【0008】
又、上記特許文献3に記載されたものは、スリーブ内にモルタルを充填することにより鉄筋同士を接続するものであるため、モルタルがスリーブ内に満遍なく充填できていることを確認する必要がある。しかし、スリーブは円筒状であるため、外部からグラウトがスリーブ内に満遍なく充填できているのかを確認するのは困難である。したがって、モルタルの確認作業に手間がかかり、鉄筋を接続する作業効率が悪いという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、鉄筋の接続を効率良く行うことができるようにする鉄筋接続方法及び鉄筋継手を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、連結すべき鉄筋の端部同士を重ね合わせて重ね部を形成する工程と、該重ね部の両端部分で上記各鉄筋を連結する工程と、該連結した鉄筋の間に形成される凹部に接着剤を充填する工程と、を有する構成とする。
【0011】
又、請求項2に対応して、直列に配置した連結すべき鉄筋の端部に連結部材を重ね合わせて上記各鉄筋の端部に重ね部を形成する工程と、該各重ね部の両端部分で上記連結部材と上記各鉄筋とを連結することにより上記連結部材を介して上記各鉄筋を連結する工程と、連結した上記連結部材と上記各鉄筋との間に形成される凹部に接着剤を充填する工程と、を有する構成とする。
【0012】
更に、請求項3に対応して、上記構成における鉄筋を連結する工程を、重ね部の外形に沿う形状とした鉄筋クランプ部に連続する締付部を、上記重ね部から見てコンクリートのかぶり厚さとなる側の反対側で締め付けることにより行うようにする構成とする。
【0013】
更に又、請求項4に対応して、連結すべき鉄筋の端部同士を重ね合わせて形成される重ね部の両端部分で上記各鉄筋を連結するようにした連結金具と、該連結金具にて連結された鉄筋の間に形成される凹部に充填するようにした接着剤と、を備えるようにした構成とする。
【0014】
又、請求項5に対応して、直列に配置した連結すべき各鉄筋の端部に重ね合わせて該各鉄筋の端部に重ね部を形成するようにした連結部材と、上記各重ね部の両端部分で上記連結部材と上記各鉄筋とを連結するようにした連結金具と、該連結金具にて連結された上記連結部材と上記各鉄筋との間に形成される凹部に充填するようにした接着剤と、を備えるようにした構成とする。
【0015】
更に、請求項6に対応して、上記請求項4、請求項5における連結金具を、重ね部の外形に沿う形状とした鉄筋クランプ部と、該鉄筋クランプ部に連続して設けてあって上記重ね部から見てコンクリートのかぶり厚さとなる側の反対側で締め付けるようにした締付部と、を備えてなる構成とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の鉄筋接続方法及び鉄筋継手によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)連結すべき鉄筋の端部同士を重ね合わせて重ね部を形成する工程と、該重ね部の両端部分で上記各鉄筋を連結する工程と、該連結した鉄筋の間に形成される凹部に接着剤を充填する工程と、を有する鉄筋接続方法、及び、連結すべき鉄筋の端部同士を重ね合わせて形成される重ね部の両端部分で上記各鉄筋を連結するようにした連結金具と、該連結金具にて連結された鉄筋の間に形成される凹部に充填するようにした接着剤と、を備えるようにした鉄筋継手としてあるので、鉄筋の連結を容易に行うことができると共に、接着剤の充填状態を容易に確認することができる。よって、鉄筋の接続を効率良く行うことができる。又、連結した鉄筋同士の間に形成される凹部に、接着剤を充填するようにしてあるので、該接着剤に、鉄筋の長手方向に生じる引張力を圧縮せん断力として受けさせることができる。したがって、鉄筋の端部同士を重ね合わせる長さを、重ね継手を用いる場合に比して短くすることができる。よって、プレキャストコンクリート造において、プレキャストコンクリート部材間の空間を埋めるために行われるコンクリート打ちに要する時間を短縮することができ、又、プレキャストコンクリート部材の構造を有利なものとすることができる。更に、鉄筋同士を、重ね部の両端部分で連結するようにしてあるので、帯筋やあばら筋を、重ね部の連結部分を避けて配置することができる。よって、帯筋やあばら筋の巻き径が小さくなるのを防止することができる。
(2)又、直列に配置した連結すべき鉄筋の端部に連結部材を重ね合わせて上記各鉄筋の端部に重ね部を形成する工程と、該各重ね部の両端部分で上記連結部材と上記各鉄筋とを連結することにより上記連結部材を介して上記各鉄筋を連結する工程と、連結した上記連結部材と上記各鉄筋との間に形成される凹部に接着剤を充填する工程と、を有する鉄筋接続方法、及び、直列に配置した連結すべき各鉄筋の端部に重ね合わせて該各鉄筋の端部に重ね部を形成するようにした連結部材と、上記各重ね部の両端部分で上記連結部材と上記各鉄筋とを連結するようにした連結金具と、該連結金具にて連結された上記連結部材と上記各鉄筋との間に形成される凹部に充填するようにした接着剤と、を備えるようにした鉄筋継手としてあるので、鉄筋の連結を容易に行うことができると共に、接着剤の充填状態を容易に確認することができる。よって、鉄筋の接続を効率良く行うことができる。又、連結した連結部材と各鉄筋との間に形成される凹部に、接着剤を充填するようにしてあるので、該接着剤に、鉄筋の長手方向に生じる引張力を圧縮せん断力として受けさせることができる。したがって、各鉄筋の端部に連結部材を重ね合わせる長さを、重ね継手を用いる場合に比して短くすることができる。よって、プレキャストコンクリート造において、鉄筋を接続した後に、プレキャストコンクリート部材間の空間を埋めるために行われるコンクリート打ちに要する時間を短縮することができ、又、プレキャストコンクリート部材の構造を有利なものとすることができる。更に、各鉄筋と連結部材とを、重ね部の両端部分で連結するようにしてあるので、帯筋やあばら筋を、重ね部の連結部分を避けて配置することができる。よって、帯筋やあばら筋の巻き径が小さくなるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の鉄筋接続方法の実施の一形態を示すフローチャートである。
【図2】図1の実施の形態において、接続すべき2本の鉄筋の端部同士を所要長さ重ね合わせて重ね部を形成した状態を示す概略平面図である。
【図3】図2のように重ね合わせた2本の鉄筋を締め付けて連結するための連結金具の一例を示すもので、(イ)は概略側面図、(ロ)は概略正面図である。
【図4】図3に示す連結金具を用いて2本の鉄筋を重ね部の両端部分で連結した状態を示すもので、(イ)は概略平面図、(ロ)は概略正面図である。
【図5】図4(イ)(ロ)のように連結した2本の鉄筋間の凹部に接着剤を充填した状態を示すもので、(イ)は概略平面図、(ロ)は概略正面図である。
【図6】本発明の鉄筋接続方法の実施の他の形態を示すフローチャートである。
【図7】図6に示す実施の形態において、先端を突き合わせるように直列に配置した2本の鉄筋に、連結部材を重ね合わせて重ね部を形成した状態を示す概略平面図である。
【図8】図7に示した2本の鉄筋と連結部材の各重ね部の両端部分を、連結金具で連結した状態を示すもので、(イ)は概略平面図、(ロ)は概略正面図である。
【図9】図8(イ)(ロ)のように連結した各鉄筋と連結部材との間の凹部に接着剤を充填した状態を示すもので、(イ)は概略平面図、(ロ)は概略正面図である。
【図10】本発明の鉄筋接続方法の実施の更に他の形態を示すもので、(イ)は各鉄筋と各連結部材との間の凹部に接着剤を充填した状態を示す概略平面図、(ロ)は(イ)の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1乃至図5(イ)(ロ)は本発明の実施の一形態を示すもので、まず、接続すべき2本の鉄筋1a,1b同士の端部を所要長さ重ね合わせるようにして、該2本の鉄筋1a,1bの端部に重ね部2を形成するようにする。次に、該重ね部2の両端部分を連結金具3で締め付け、上記鉄筋1aと1bとを、上記重ね部2で連結するようにする。次いで、該連結させた鉄筋1aと1bとの間に形成される凹部6に、全長に亘ってペースト状の接着剤7を充填するようにする。その後、凹部6に充填させた接着剤7を硬化させて、鉄筋1aと1bを接続するようにする。しかる後、該接続した鉄筋1aと1bの周囲にコンクリートを打設するようにする。
【0020】
詳述すると、まず、図2に示す如く、一方の鉄筋1aの一端部と該一方の鉄筋1aに接続する他方の鉄筋1bの他端部とを、重ね継手において建築工事標準仕様書などに規定された鉄筋の端部を重ね合わせる長さよりも短い所要長さ、たとえば、建築工事標準仕様書などに規定された鉄筋の端部を重ね合わせる長さの10%〜80%の長さ、外周面で互いに当接させることにより、上記一方の鉄筋1aと上記他方の鉄筋1bとを、重ね合わせるように鉄筋1a,1bの長手方向に平行に配置して、上記一方の鉄筋1aの一端部と上記他方の鉄筋1bの他端部に重ね部2を形成するようにする。
【0021】
次に、上記一方の鉄筋1aと上記他方の鉄筋1bとを、図4(イ)(ロ)に示す如く、上記重ね部2の両端部分で、連結金具3により連結するようにする。該連結金具3は、図3(イ)(ロ)に示す如く、二点鎖線で示す重ね部2における上記鉄筋1a,1bの外形(重ね部2の外形)に沿う円弧形成部と中央の平板部とを有する形状とした所要幅の鉄筋クランプ部4aと、該鉄筋クランプ部4aの外側に突出させて平行状態に所要間隔を空けて設けた締付部4bとを備えて、該締付部4bに設けたボルト挿通孔に通したボルト5aにナット5bを螺合させることにより、上記締付部4bを介して上記鉄筋クランプ部4aを締め付けることができるようにした構成としてある。なお、図中5cは座金である。
【0022】
上記連結金具3の鉄筋クランプ部4aは、図3(ロ)に示す如く、上記重ね部2における上記鉄筋1a,1bの外形に沿うように略楕円形状としてあり、該鉄筋クランプ部4aの両端部に連続する締付部4bを、ボルト5aとナット5bを取り外した状態で左右に開くことにより、上記鉄筋1a,1bの重ね部2に、上記鉄筋クランプ部4aを嵌合させることができるようにしてある。なお、上記連結金具3の鉄筋クランプ部4aと締付部4bは、帯状金属板を板金加工して製作することにより、製作コストを低減することが望ましい。又、上記連結金具3の鉄筋クランプ部4aと締付部4bには防錆処理を施すようにして、連結金具3部分でのコンクリートのかぶり厚さが、鉄筋1a,1b部分でのコンクリートのかぶり厚さに比して薄くなることによる影響を低減するようにすることが好ましい。
【0023】
かかる構成の連結金具3を用いて、上記一方の鉄筋1aと上記他方の鉄筋1bとを、上記重ね部2の両端部分で連結する場合、まず、上記連結金具3における締付部4bからボルト5aとナット5bを取り外した状態で、上記重ね部2の一端部分に、図4(ロ)に示す如く、上記連結金具3の鉄筋クランプ部4aを嵌合させるようにする。この際、連結金具3の締付部4bが、上記重ね部2から見てコンクリートのかぶり厚さとなる側の反対側(コンクリートの反かぶり厚さ側)に向くようにして、連結金具3部分でのコンクリートのかぶり厚さが、鉄筋1a,1b部分でのコンクリートのかぶり厚さに比して薄くなるのを低減するようにする。次に、上記連結金具3の締付部4bに設けた図示してないボルト挿通孔にボルト5aを挿通させて、図4(ロ)に示す如く、該ボルト5aにナット5bを螺合させるようにする。ボルト5aにナット5bを螺合させて締め付けていくと、締付部4bを介して鉄筋クランプ部4aが内側に引き寄せられて上記一方の鉄筋1aと上記他方の鉄筋1bに締付力が加えられる。これにより、上記一方の鉄筋1aと上記他方の鉄筋1bとを、上記重ね部2の一端部分で連結することができる。同様に、上記重ね部2の他端部分に、上記連結金具3の鉄筋クランプ部4aを嵌合させた後、締付部4bを介して鉄筋クランプ部4aをボルト5aとナット5bにより締め付けることにより、図4(イ)に示す如く、上記一方の鉄筋1aと上記他方の鉄筋1bとを、上記重ね部2の他端部分で連結するようにする。この際、鉄筋クランプ部4aの中央の平板部は、連結された鉄筋1aと1bとの間に形成される凹部6に沿うように変形することはなく、上記凹部6を保持するようにしてある。
【0024】
このように、上記構成の連結金具3を用いて鉄筋1aと1bを連結するようにすれば、端部同士を所要長さ重ね合わせて配置した鉄筋1aと1bの連結を容易に行うことができる。又、各鉄筋1a,1bが該鉄筋1a,1bの直径方向に離反するように移動してしまうのを拘束して、鉄筋1aと1bとの間が開いてしまうのを防止することができる。更に、連結金具3における鉄筋クランプ部4aは、重ね部2における各鉄筋1a,1bの外形に沿った前記の如き形状としてあるので、連結金具3部分でのコンクリートのかぶり厚さが、鉄筋1a,1b部分でのコンクリートのかぶり厚さよりも薄くなるのを、機械式継手を用いる場合に比して低減させることができる。したがって、鉄筋1a,1bを、機械式継手を用いる場合に比してコンクリート構造物の外側に配置することができ、コンクリート構造物のせん断強度や座屈強度の向上を図ることができる。
【0025】
次いで、図4(イ)(ロ)に示したように、上記一方の鉄筋1aと上記他方の鉄筋1bとを、上記重ね部2の両端部分で連結した後、該連結した鉄筋1a,1b同士の間に形成される凹部6に、図5(イ)(ロ)に示す如く、ペースト状の接着剤7を全長に亘って充填するようにする。上記接着剤7には、モルタル系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系などの接着剤を用いるようにしてあり、該接着剤7に、各鉄筋1a,1bの長手方向に生じる引張力を圧縮せん断力として受けさせるようにしてある。なお、上記凹部6における連結金具3の取り付け部分の内側の凹部6に、接着剤7を充填し難い場合には、ガンタイプの接着剤充填装置を用いて接着剤7を充填するようにすればよい。又、連結金具3の鉄筋クランプ部4aの中央部分に孔をあけて、該孔から接着剤7を充填するようにしてもよい。
【0026】
しかる後、上記接着剤7を硬化させて、上記一方の鉄筋1aと他方の鉄筋1bを接続した後、該鉄筋1aと1bの周囲にコンクリートを打設するようにする。
【0027】
このように、図1乃至図5(イ)(ロ)に示した実施の形態における鉄筋接続方法によれば、接続すべき一方の鉄筋1aの一端部と他方の鉄筋1bの他端部とを所要長さ重ね合わせて配置して、該上記一方の鉄筋1aの一端部と上記他方の鉄筋1bの他端部に重ね部2を形成する工程と、該重ね部2の外形に沿う形状とした鉄筋クランプ部4aに連続する端部としての締付部4bを上記重ね部2から見てコンクリートのかぶり厚さとなる側の反対側で締め付けるようにした連結金具3を用いて、上記鉄筋1aと1bとを、上記重ね部2の両端部分で連結する工程と、該連結した鉄筋1aと1bの間に形成される凹部6に、全長に亘ってペースト状の接着剤7を充填する工程と、該接着剤7を硬化させる工程と、を有するようにしてあるので、端部同士を所要長さ重ね合わせて配置した鉄筋1aと1bの連結を容易に行うことができると共に、接着剤7の充填状態を容易に確認することができる。よって、鉄筋1a,1bの接続を効率良く行うことができる。
【0028】
又、連結した鉄筋1a,1b間に形成される凹部6に、接着剤7を充填するようにしてあることから、該接着剤7に、各鉄筋1a,1bの長手方向に生じる引張力を圧縮せん断力として受けさせることができる。したがって、鉄筋1a,1bの端部同士を重ね合わせる長さを、重ね継手を用いる場合に比して短くすることができる。よって、プレキャストコンクリート造において、プレキャストコンクリート部材間の空間を埋めるために行われるコンクリート打ちに要する時間を短縮することができる。又、プレキャストコンクリート部材の構造を有利なものとすることができる。
【0029】
更に、鉄筋1aと1bとを、重ね部2の両端部分で連結するようにしてあるので、帯筋やあばら筋を、重ね部2の連結部分を避けて配置することができる。よって、帯筋やあばら筋の巻き径が小さくなるのを防止することができる。
【0030】
次に、図6乃至図9(イ)(ロ)は本発明の実施の他の形態を示すもので、まず、図7に示す如く、接続すべき2本の鉄筋8a,8bを、端面を突き合わせるように直列に配置して、該2本の鉄筋8a,8bの端部に跨るような長さを有する連結部材9を、上記鉄筋8a,8bの端部に所要長さ重ね合わせて配置し、上記各鉄筋8a,8bの端部に重ね部10a,10bを形成するようにする。次いで、図8(イ)(ロ)に示す如く、上記各鉄筋8a,8bと上記連結部材9とを、上記重ね部10a,10bの両端部分で連結金具3により連結することにより、上記連結部材9を介して上記鉄筋8aと8bとを連結するようにする。その後、該連結した上記連結部材9と上記各鉄筋8a,8bとの間に形成される凹部11に、全長に亘ってペースト状の接着剤12を充填するようにする。その後、該接着剤12を硬化させて、鉄筋8aと8bを接続するようにする。しかる後、該接続した鉄筋8aと8bの周囲にコンクリートを打設するようにする。
【0031】
詳述すると、まず、図7に示す如く、一方の鉄筋8aと該一方の鉄筋8aに接続する他方の鉄筋8bを直列に配置して、該一方の鉄筋8aの一端部外周面と上記他方の鉄筋8bの他端部外周面に、鉄筋8a,8bと同径の鉄筋の如き連結部材9を、重ね継手において建築工事標準仕様書などに規定された鉄筋を重ね合わせる長さよりも短い所要長さ、たとえば、建築工事標準仕様書などに規定された鉄筋の端部を重ね合わせる長さの10%〜80%の長さ、当接させるようにして、該連結部材9を鉄筋8a,8bの長手方向に平行に配置し、上記一方の鉄筋8aの一端部に重ね部10aを、又、上記他方の鉄筋8bの他端部に重ね部10bをそれぞれ形成するようにする。
【0032】
次に、上記一方の鉄筋8aと上記連結部材9、及び、上記他方の鉄筋8bと上記連結部材9とを、図8(イ)(ロ)に示す如く、上記各重ね部10a,10bの両端部分で、図3(イ)(ロ)に示すものと同様な構成としてある連結金具3により、前記した図4(イ)(ロ)に示した場合と同様な方法で締め付けて連結するようにする。この際、連結金具3の締付部4bが、上記重ね部10a,10bから見てコンクリートのかぶり厚さとなる側の反対側(コンクリートの反かぶり厚さ側)に向くようにして、連結金具3部分でのコンクリートのかぶり厚さが、鉄筋8a,8b部分でのコンクリートのかぶり厚さに比して薄くなるのを低減するようにする。
【0033】
次いで、図8(イ)(ロ)に示したように、上記各鉄筋8a,8bと上記連結部材9とを、上記各重ね部10a,10bの両端部分でそれぞれ連結した後、該連結した上記連結部材9と上記各鉄筋8a,8bとの間に形成される凹部11に、図9(イ)(ロ)に示す如く、ペースト状の接着剤12を全長に亘って充填するようにする。これにより、該接着剤12に、鉄筋8a,8bの長手方向に生じる引張力を圧縮せん断力として受けさせるようにする。なお、上記接着剤12は、図1乃至図5(イ)(ロ)に示した実施の形態と同様に、モルタル系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系などの接着剤を用いるようにすればよい。
【0034】
しかる後、上記接着剤12を硬化させて、上記一方の鉄筋8aと他方の鉄筋8bを接続した後、該鉄筋8aと8bの周囲にコンクリートを打設するようにする。
【0035】
このように、図6乃至図9(イ)(ロ)に示した実施の形態における鉄筋接続方法によれば、連結すべき一方の鉄筋8aと他方の鉄筋8bを直列に配置して、該一方の鉄筋8aの一端部から他方の鉄筋8bの他端部に跨るように連結部材9を所要長さ重ね合わせて配置し、上記一方の鉄筋8aの一端部と上記他方の鉄筋8bの他端部に、重ね部10a,10bをそれぞれ形成する工程と、上記各鉄筋8a,8bと上記連結部材9とを、重ね部10a,10bの両端部分でそれぞれ連結金具3により連結することにより、上記連結部材9を介して上記各鉄筋8a,8bを連結する工程と、該連結した上記連結部材9と上記各鉄筋8a,8bとの間に形成される凹部11に、全長に亘ってペースト状の接着剤12を充填する工程と、該接着剤12を硬化させる工程と、を有するようにしてあるので、直列に配置した鉄筋8aと8bの連結を容易に行うことができると共に、接着剤12の充填状態を容易に確認することができる。よって、鉄筋8a,8bの接続を効率良く行うことができる。
【0036】
又、連結した連結部材9と各鉄筋8a,8bとの間に形成される凹部11に、接着剤12を充填するようにしてあることから、該接着剤12に、鉄筋8a,8bの長手方向に生じる引張力を圧縮せん断力として受けさせることができる。したがって、上記各鉄筋8a,8bに連結部材9を重ね合わせる長さを、重ね継手を用いる場合に比して短くすることができる。よって、図1乃至図5(イ)(ロ)に示した実施の形態と同様に、プレキャストコンクリート造において、プレキャストコンクリート部材間の空間を埋めるために行われるコンクリート打ちに要する時間を短縮することができ、又、プレキャストコンクリート部材の構造を有利なものとすることができる。
【0037】
更に、各鉄筋8a,8bと連結部材9とを、各重ね部10a,10bの両端部分で連結するようにしてあるので、帯筋やあばら筋を、重ね部の連結部分を避けて配置することができる。よって、帯筋やあばら筋の巻き径が小さくなるのを防止することができる。
【0038】
なお、本発明は、上記した各実施の形態に限定されるものではなく、たとえば、上記各実施の形態に用いる連結金具3には、たとえば、ステンレス製の結束バンドを用いるようにしてもよい。
【0039】
又、上記した各実施の形態では、接続した各鉄筋1a,1b,8a,8bの周囲にコンクリートを打設する場合について説明したが、これに限られるものではなく、たとえば、モルタルを打設するようにしてもよい。
【0040】
更に、図6乃至図9(イ)(ロ)に示した実施の形態では、一方の鉄筋8aの一端部と他方の鉄筋8bの他端部の一側に、連結部材9を重ね合わせて配置するようにした場合について説明したが、これに限られるものではなく、たとえば、図10(イ)(ロ)に示す如く、一方の鉄筋8aの一端部と他方の鉄筋8bの他端部の両側に、該鉄筋8a,8bの半分程度の断面積とした連結部材9を重ね合わせて配置するようにしてもよい。なお、この場合には、図10(ロ)に示す如く、連結金具3における鉄筋クランプ部4aを、鉄筋8a,8bと各連結部材9の外形(重ね部10a,10bの外形)に沿う円弧形成部と平板部とを有する形状としたものを用いることが好ましい。
【0041】
更に又、図6乃至図9(イ)(ロ)、図10(イ)(ロ)に示した実施の形態における連結部材9は、鉄筋に限定されるものではなく、たとえば、平板などを用いるようにしてもよい。
【0042】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
1a,1b 鉄筋
2 重ね部
3 連結金具
4a 鉄筋クランプ部
4b 締付部
6 凹部
7 接着剤
8a,8b 鉄筋
9 連結部材
10a,10b 重ね部
11 凹部
12 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結すべき鉄筋の端部同士を重ね合わせて重ね部を形成する工程と、該重ね部の両端部分で上記各鉄筋を連結する工程と、該連結した鉄筋の間に形成される凹部に接着剤を充填する工程と、を有することを特徴とする鉄筋接続方法。
【請求項2】
直列に配置した連結すべき鉄筋の端部に連結部材を重ね合わせて上記各鉄筋の端部に重ね部を形成する工程と、該各重ね部の両端部分で上記連結部材と上記各鉄筋とを連結することにより上記連結部材を介して上記各鉄筋を連結する工程と、連結した上記連結部材と上記各鉄筋との間に形成される凹部に接着剤を充填する工程と、を有することを特徴とする鉄筋接続方法。
【請求項3】
鉄筋を連結する工程を、重ね部の外形に沿う形状とした鉄筋クランプ部に連続する締付部を、上記重ね部から見てコンクリートのかぶり厚さとなる側の反対側で締め付けることにより行うようにする請求項1又は2記載の鉄筋接続方法。
【請求項4】
連結すべき鉄筋の端部同士を重ね合わせて形成される重ね部の両端部分で上記各鉄筋を連結するようにした連結金具と、該連結金具にて連結された鉄筋の間に形成される凹部に充填するようにした接着剤と、を備えるようにした構成を有することを特徴とする鉄筋継手。
【請求項5】
直列に配置した連結すべき各鉄筋の端部に重ね合わせて該各鉄筋の端部に重ね部を形成するようにした連結部材と、上記各重ね部の両端部分で上記連結部材と上記各鉄筋とを連結するようにした連結金具と、該連結金具にて連結された上記連結部材と上記各鉄筋との間に形成される凹部に充填するようにした接着剤と、を備えるようにした構成を有することを特徴とする鉄筋継手。
【請求項6】
連結金具を、重ね部の外形に沿う形状とした鉄筋クランプ部と、該鉄筋クランプ部に連続して設けてあって上記重ね部から見てコンクリートのかぶり厚さとなる側の反対側で締め付けるようにした締付部と、を備えてなる構成とした請求項4又は5記載の鉄筋継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−15008(P2013−15008A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−131060(P2012−131060)
【出願日】平成24年6月8日(2012.6.8)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】