説明

鉄道プラットフォーム用遮蔽体並びに遮蔽ドア

本発明は、使用時に鉄道軌道に隣接するプラットフォームの縁に取り付けられる鉄道プラットフォーム用遮蔽体1並びに遮蔽ドア2に関する。このプラットフォーム遮蔽体は、概して対向する2つの表面(3,4,13,14)を有する壁を備え、少なくとも一方は、取り付け位置においてプラットフォームの縁によって定義された鉛直から離れて傾斜乃至形作られていて、これにより壁の前端と後端位置の間の距離が頂部5に近接する壁表面の間の距離よりも大きくなされている。このプラットフォーム遮蔽体は、その結果、プラットフォームの縁から離れて乗客を維持し、使用される遮蔽壁の高さを低くすることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に地下鉄に特化しない、鉄道プラットフォーム用遮蔽ドア並びに遮蔽壁に関する。
【背景技術】
【0002】
軌道に隣接して一段高くなったプラットフォームからなる従来の鉄道の駅は、19世紀に鉄道産業が起こって以来、基本的に同様の設計が用いられており、乗客の搭乗手続をできるだけ迅速にするための効果的な解決法である。
【0003】
しかし、基本的なプラットフォームの配置は、故意若しくは無意識のうちにに乗客が列車に飛び降りたり、更に乗客からゴミが軌道上に落とされるいうような、よく知られたいくつかの問題に遭遇している。列車に飛び降りる人々の事故はよく起こるものではないとはいえ、路線網に重大な崩壊をもたらし、現在の誰しもにトラウマとなる出来事である。軌道上のゴミの問題もまた、近年増加しており、ゴミが清掃されるまでゴミがトンネル内に残る地下鉄の健全性と安全度を象徴する。
【0004】
プラットフォーム遮蔽システムや自動プラットフォームゲートは、これらの問題に対応する一つのアプローチとして鉄道産業において良く知られている。プラットフォームと列車のドアを整列させる問題のために、これらのシステムは、いくつかの専用高速システムにも遮蔽体が設けられているが、実際には地下鉄や地下システム上にある鉄道車両の規格ラインに沿って通常取り付けられている。
【0005】
現在使用されている2つのタイプのプラットフォーム遮蔽ドアシステムがある。最も一般的なものはフルハイトシステム(例えば約2m以上の高さの遮蔽体)である。このフルハイトシステム(full height system)は、通常、最近建造された鉄道システムに適合され、実際には本質的に空調システム内にあり、他方で空調システムが軌道トンネルへの空間を失い、全く役に立たない。
【0006】
しかし、多くのシステムにおいて、特に古いシステムでは駅の空気は駅を通過する列車によって調節され、この列車がトンネルにエアを押し込む。このようなシステムにおいて、フルハイト遮蔽ドアの使用は、プラットフォームに対する空気処理能力が耐えられる状態となるのに不十分であるように妨げられる。さらに、古いシステムの多くのプラットフォームはとても狭く、フルハイト遮蔽体は狭い場所に閉じこめられて窮屈なものである。
【0007】
既に用いられている一つの解決手段はハーフハイト遮蔽体若しくはゲートである。これは固定された鉛直遮蔽体とゲートとからなり、通常約1m30の高さを有し、列車の通過によって空調法が用いられることを許容し且つ軌道上にゴミや人が落ちることによって生じる問題を減少させる。しかし、事故や自殺はこれらシステムでも起こり、広く適用されてはいない。このようなシステムの一例は、EP1386813に開示されている。
【特許文献1】EP1386813号公報
【発明の開示】
【0008】
そこで本発明は、これらの問題を解消するプラットフォーム遮蔽壁とプラットフォーム遮蔽ドアを提供しようとするものである。
【0009】
本発明によれば、列車に接近する乗客を統制ためにドアやゲートと協働するのに適した、表面と縁とを有する鉄道プラットフォームのための遮蔽壁であって、プラットフォームの縁から離れて別の方向に面する第1の壁面と、プラットフォームの縁に面する第2の壁面と、第1及び第2の壁面を接続する頂部とを備え、第1及び第2の壁面の少なくとも一つは、取り付け位置において遮蔽壁の最前端を横切る鉛直面と遮蔽壁の最後端を横切る第2の鉛直面との間の距離が頂部に近接する第1及び第2の壁面の間の距離よりも大きくなるように、少なくとも一部が鉛直から離れるように傾斜若しくは形作られている、鉄道プラットフォーム用遮蔽壁が提供される。
【0010】
好ましくは、第1及び/又は第2の壁面は、プラットフォームの縁から離れるよう湾曲されている。好ましくは、それぞれの下端における第1及び第2の壁面の空間的な分離は、遮蔽壁がスライドドア用駆動機構を収容するのに十分なものである。好ましくは、遮蔽壁はスライドドアを収容するのに適合されている。スライドドアは遮蔽壁と実質的に同様の輪郭を有していてよい。好ましくは、第1の壁面の下部は、乗客をプラットフォームの縁から離して維持するように、当該壁の残る部分の表面の平面から離れるように曲げられている。好ましくは、遮蔽壁はプラットフォーム表面から1100〜1500mmの高さを有する。
【0011】
本発明はまた、取り付けられた状態においてプラットフォームの縁から離れるように湾曲されている、鉄道プラットフォーム用遮蔽システム用ドアを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を以下図面を参照しつつより詳細に説明する。
【0013】
図1は、ゲート2を収容する遮蔽壁部1を備えるプラットフォーム遮蔽ドアシステムの側面図を表している。遮蔽壁部1は、使用時にプラットフォームに面する第1の壁3と、使用時にプラットフォームから離れてプラットフォームの縁に向かって面する第2の壁4とを備えている。第1の壁3は鉛直に対してわずかに傾斜されており、第2の壁4は第1の壁3よりも実質的に大きな角度で鉛直に対して傾斜されている。二つの壁3,4は、概して湾曲された頂部5によって接続されている。第1及び第2の壁の異なる角度の効果は、頂部5の頂点が、第2の壁4の下端7の鉛直面よりも第1の壁3の下端6の鉛直面により近く配置されることである。ゲート2は遮蔽壁部1の内部に収容され、第2の壁4と実質的に平行に鉛直に対してある角度で取り付けられており、閉じ位置においてドアの頂部が遮蔽壁の頂部と同様にプラットフォームの縁の鉛直面から離れて実質的に遠くなるようになされている。ドア用駆動機構は、ドア2の下部に隣接する遮蔽壁部の基部内に収容できる。この遮蔽壁とドアは、列車へ及び列車から接近する乗客を統制する。
【0014】
図2は、図1のシステムの代替構成を示し、この場合もまたドア12を収容する遮蔽壁部11を備えている。プラットフォームの縁に面する壁14は、この場合は、プラットフォームの縁から離れるように湾曲されており、ドア12は同様の湾曲形状を共有する。プラットフォームに面する壁13は、段のつけられた下部15と、実質的に湾曲された壁13と同心状に湾曲された上部湾曲部16とを備えており、下部15は壁13に対して反対方向に概して湾曲されている。段付けされた下部15は、遮蔽壁部11内に駆動装置を収容することを可能にする。
【0015】
図3は図1及2のシステムに対する更なる代替構成を示し、この場合もまたドア22を収容する遮蔽壁部21を備えている。この場合において、プラットフォームの縁に面する壁24は、概して平坦であるが、プラットフォームの縁から離れるように鉛直に対して傾斜されており、これにより遮蔽壁部の頂部が、壁24の下端27よりもプラットフォームの縁の鉛直面から空間的により遠くに配置されている。プラットフォームに面する壁23は、この場合には、遮蔽壁の頂部よりもプラットフォームの縁の鉛直面からさらに遠く離れて壁24の下端27が配置されるように湾曲されている。ドア22は湾曲された壁23と実質的に同心状となるように湾曲されている。本実施形態において駆動装置はドア22の下部と下端26との間の空間に配置される。
【0016】
図4は図1〜3のシステムに対する更なる代替構成を示し、この場合もまたドア32を収容する遮蔽壁部31を備えている。図3に示すように、プラットフォームの縁に面する壁34は、概して平坦であるが、壁34の下端36よりもプラットフォームの縁の鉛直面から空間的により離れて遮蔽壁部の頂部が配置されるようにプラットフォームの縁から離れるように鉛直面に対して傾斜されている。プラットフォームに面する壁33はこの場合には遮蔽壁の頂部よりもプラットフォームの縁の鉛直面からさらに離れて壁34の下端37が配置されるように湾曲されている。遮蔽壁31の頂部はこの場合には壁33上に被る小さな突出部を有するように唇状とされている。図4においてドアは、図1〜3のドアよりも複雑な輪郭を有している。プラットフォームに面する側のドアの輪郭は、壁33の曲面とほぼ同心状に概して湾曲されている。しかし、ドアの背面は、輪郭において二つの部分を有している。上部の輪郭38は、概して湾曲され、前面と実質的に同心状であるが、その一方、下部の輪郭39は断面ほぼ三角形状となるようにドアの曲面から離れて概して傾斜されている。
【0017】
図5の実施形態もまたドア42を収容する遮蔽壁部41を備えている。使用時にプラットフォームの縁に面する壁44は実質的に鉛直である。取り付けられた位置においてプラットフォームに面する壁は、実質的に鉛直で壁44に平行な第1の上部45と、壁44から離れるように且つプラットフォーム表面に向けて湾曲された概して凸状の下部46とを備えている。遮蔽壁の頂部は、図1〜3の遮蔽壁と同様に湾曲されている。
【0018】
図6の実施形態は図5の実施形態と実質的に同様とされ、遮蔽壁の頂部が図4における頂部と実質的に同様である。図5と図6の両方の実施形態のために、ドアと壁46の湾曲下部との間の空間に駆動装置が配置される。図1〜6の各実施形態において、遮蔽壁の前端及び後端を横切る鉛直面の間の距離は、第1及び第2の壁面の間の距離よりも大きい。
【0019】
使用時に、ゲートの上端を超えていく乗客の3つの一般的なシナリオがあるということが分かっている。それは、遮蔽壁を越えて腕を伸ばすこと、遮蔽壁に対して寄りかかること、並びに、遮蔽壁を越えて外を見ることである。遮蔽壁上を超えて腕を伸ばす乗客が遮蔽壁から最も遠い地点に達することは容易に理解でき、テストでは、容易に700mmの距離に達している。遮蔽壁に寄りかかることに関し、乗客は遮蔽壁を概して約300mm超えている。しかし、遮蔽壁超しに外を見ることに関し、その距離は乗客の身長と遮蔽壁の高さとに依存するようにより小さく標準化される。仮に1100mmの高さの低い遮蔽壁の場合、600mmの距離は背の高い乗客によって容易に届くことができるが、1300mmの場合はおそらく300mmしか届かないであろう。
【0020】
図1〜6の遮蔽体とドアの設計は、プラットフォームの縁に面する遮蔽体の下端よりもプラットフォームの縁からさらに離れた上端を持つことによってこの問題を解消する。1300mmのドアシステムに関し、ドアと遮蔽体とが鉛直に対してほぼ13°の角度で傾斜していれば、そのとき300mmだけ上端を超えて寄りかかる乗客は、プラットフォームの縁を超えない。図2〜6の実施例において、段付けされた部分若しくは湾曲された部分は、プラットフォームの縁からさらに離れるように乗客を強制する。比較的小さい角度のために低い高さのドアシステムの有利な点が、乗客を閉所恐怖症にさせるリスクを増加させることなく維持され、しかし低い高さの遮蔽壁の使用時に固有の安全問題が大きく減少する。
【0021】
この遮蔽壁とゲートは、アルミニウム押出成形品やプラスチック材料を含む種々の材料から製造することができる。遮蔽壁は、それぞれの第1及び第2の壁が単一構造の部品を形成するように、若しくは、それら壁が分離して形成されて互いに接続されるように製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】プラットフォーム遮蔽ドアシステムの第1の側面図である。
【図2】プラットフォーム遮蔽ドアシステムの第2の側面図である。
【図3】プラットフォーム遮蔽ドアシステムの第3の側面図である。
【図4】プラットフォーム遮蔽ドアシステムの第4の側面図である。
【図5】プラットフォーム遮蔽ドアシステムの第5の側面図である。
【図6】プラットフォーム遮蔽ドアシステムの第6の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に及び列車から接近する乗客を統制ためにドアやゲートと協働するのに適した、表面と縁とを有する鉄道プラットフォームのための遮蔽壁であって、
プラットフォームの縁から離れて別の方向に面する第1の壁面と、プラットフォームの縁に面する第2の壁面と、第1及び第2の壁面を接続する頂部とを備え、
第1及び第2の壁面の少なくとも一つは、取り付け位置において遮蔽壁の最前端を横切る鉛直面と遮蔽壁の最後端を横切る第2の鉛直面との間の距離が、頂部に近接する第1及び第2の壁面の間の距離よりも大きくなるように、少なくとも一部が鉛直から離れるように傾斜若しくは形作られている、鉄道プラットフォーム用遮蔽壁。
【請求項2】
第1及び/又は第2の壁面は、プラットフォームの縁から離れるよう湾曲されている、請求項1に記載の鉄道プラットフォーム用遮蔽壁。
【請求項3】
それぞれの下端における第1及び第2の壁面の空間的な分離は、遮蔽壁がスライドドア用駆動機構を収容するのに十分なものである、請求項1又は2に記載の鉄道プラットフォーム用遮蔽壁。
【請求項4】
遮蔽壁はスライドドアを収容するのに適合されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉄道プラットフォーム用遮蔽壁。
【請求項5】
第1の壁面の下部は、乗客をプラットフォームの縁から離して維持するように、当該壁の残る部分の表面の平面から離れるように曲げられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の鉄道プラットフォーム用遮蔽壁。
【請求項6】
遮蔽壁はプラットフォーム表面から1100〜1500mmの高さを有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の鉄道プラットフォーム用遮蔽壁。
【請求項7】
取り付けられた状態においてプラットフォームの縁から離れるように湾曲されている、鉄道プラットフォーム用遮蔽システム用ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−532400(P2007−532400A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507851(P2007−507851)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001477
【国際公開番号】WO2005/100117
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(506346794)クノール−ブレームス レール システムス (ユーケー) リミテッド (2)
【Fターム(参考)】