説明

鉄道工事用仮設道路とその施工方法

【課題】鉄道レールの敷設面に合成樹脂発泡体ブロックを積み重ねて作られる鉄道工事用仮設道路において、上載荷重によって合成樹脂発泡体ブロックに破損が生じるのを大きく回避できるようにする。
【解決手段】鉄道レール3間の載置面上に設置した第1の合成樹脂発泡体ブロック10と、鉄道レール3間外側の載置面上に設置した第2の合成樹脂発泡体ブロック20と、載置面上に設置された第1と第2の合成樹脂発泡体ブロックの上に設置した第3の合成樹脂発泡体ブロック30と、設置した第3の合成樹脂発泡体ブロックの上面における少なくとも重機が通る箇所に設置された補強板とで構成される鉄道工事用仮設道路Aにおいて、第1と第2の合成樹脂発泡体ブロック10、20の上面はほぼ平坦面でありかつ鉄道レール3の上面高さと等しいかそれよりも高くされている。仮設道路Aの路面を移動する重機の荷重は第1と第2の合成樹脂発泡体ブロック10、20にほぼ垂直な荷重として作用するので、ブロックが破損するのを回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道工事用仮設道路とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駅のホームあるいは鉄道レールの補修や改良工事等は、通常、終電から始発までの短時間で行われる。その際、工事用の重機を駅のホーム等に乗り入れるために、線路上に仮設道路を構築することがなされている。そのような仮設道路として、特許文献1には、直方体の底面に鉄道レールを跨ぐ凹溝を有する形状に形成された熱可塑性樹脂発泡体製の脚部ブロックと、その上に積層された方形ブロックまたは傾斜ブロックと、その上面を覆う保護板とで構成された鉄道工事用仮設道路が記載されている。
【0003】
一方、鉄道の補修などに使用される工事用車両がレール上を通過し易くするための踏切板として、工事用車両を載置しうる強度を備える発泡樹脂成形体であって、鉄道レールの高さに応じた略直方体形状に成形され、その底面に支え板が貼り付けた踏切板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−97180号公報
【特許文献2】実開平05−22603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された鉄道工事用仮設道路は、多数個の合成樹脂発泡体ブロックを、鉄道レール間および鉄道レール間外側の載置面上に必要数積み重ねることで構築することができ、短時間での施工が可能であることから、駅ホームの上まで重機を持ち込むための仮設道路として有効性が高い。図5はそのような施工方法で構築した鉄道工事用仮設道路の一例を示している。通常、レール敷設面はバラスト(砂利)1が敷き詰められた面であって、その上に、路線方向に所定間隔で枕木2が配置され、その上にレール3、3が敷設されている。施工に当たっては、レール3を跨ぐ凹溝4を有する直方体状の熱可塑性樹脂発泡体製の脚部ブロック5が、該凹溝4内にレール3を収容するようにして敷き詰められ、その上に、熱可塑性樹脂発泡体製の方形ブロック6がホーム7の高さとなるまで積み上げられる。
【0006】
ところで、鉄道レールが敷かれている領域でのブロック載置面、すなわちバラスト(砂利)1が敷き詰められた面は平坦面ではなく、図5に例示するように、枕木2の上面よりも、その両側のバラスト(砂利)面は高く、また、枕木2の上に敷設したレール3の上面はそのバラスト(砂利)面よりもさらに高くなっているのが普通である。そのために、レール3を跨ぐ凹溝4を有する直方体状の熱可塑性樹脂発泡体製の脚部ブロック5を、該凹溝4内にレール3を収容するようにして載置面の上に敷き詰めたとき、脚部ブロック5は図示のように水平面に対して傾斜した姿勢となりやすい。その上に方形ブロック6を積み上げたときに、その上面も水平面とはなりにくい。そして、そのようにわずかとはいえ傾斜した状態で置かれている脚部ブロック5に、仮設道路上を走行する重機の荷重が上載荷重として作用すると、脚部ブロック5の裏面に形成した凹溝4の角部に応力集中が生じて割れが生じやすく、上載荷重が反覆して作用すると、形成されている凹溝4の角部に破断が生じる恐れがある。このような破断は、脚部ブロック5の破損につながる恐れがあり、回避することが求められる。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、鉄道レールの敷設面に合成樹脂発泡体ブロックを積み重ねて作られる鉄道工事用仮設道路において、上載荷重によって合成樹脂発泡体ブロックに部分的な破損が生じるのを回避できるようにした、より実効性の高い鉄道工事用仮設道路およびその施工方法を開示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく多くの実験と研究を行うことにより、前記した特許文献2に記載されている技術、すなわち工事用車両がレール上を通過し易くするために、工事用車両を載置しうる強度を備える発泡樹脂成形体を、鉄道レール間および鉄道レール間外側に配置する技術を利用することで、上記課題を解決できることを知見し、本発明をなすにいたった。
【0009】
すなわち、本発明による鉄道工事用仮設道路は、鉄道レールが敷設された領域に合成樹脂発泡体ブロックを積み上げてなる鉄道工事用仮設道路であって、鉄道レール間の載置面上に設置した第1の合成樹脂発泡体ブロックと、鉄道レール間外側の載置面上に設置した第2の合成樹脂発泡体ブロックと、前記載置面上に設置された第1と第2の合成樹脂発泡体ブロックの上に設置した第3の合成樹脂発泡体ブロックと、設置した第3の合成樹脂発泡体ブロックの上面における少なくとも重機が通る箇所に設置された補強板とを少なくとも有しており、前記設置された第1と第2の合成樹脂発泡体ブロックの上面高さはほぼ平坦面でありかつ鉄道レールの上面高さと等しいかそれよりも高くなっていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明による鉄道工事用仮設道路の施工方法は、鉄道レールが敷設された領域に合成樹脂発泡体ブロックを積み上げてなる鉄道工事用仮設道路の施工方法であって、鉄道レール間の載置面上に第1の合成樹脂発泡体ブロックを、鉄道レール間外側に第2の合成樹脂発泡体ブロックを、設置後のすべての合成樹脂発泡体ブロックの表面高さが鉄道レールの上面と高さと等しいかそれよりも高くかつ設置したすべての合成樹脂発泡体ブロックの表面高さが略等しくなるように設置する工程と、設置した前記第1と第2の合成樹脂発泡体ブロックの上面に所定高さまで第3の合成樹脂発泡体ブロックを積み上げる工程と、積み上げた前記第3の合成樹脂発泡体ブロックの上面における少なくとも重機が通る箇所に設置する工程とを少なくとも備えることを特徴とする。
【0011】
本発明による鉄道工事用仮設道路では、鉄道レール間には第1の合成樹脂発泡体ブロックが、また鉄道レール間外側には第2の合成樹脂発泡体ブロックが、双方の合成樹脂発泡体ブロックの上面が鉄道レールの上面高さと等しいかそれよりも高く位置し、かつ双方の合成樹脂発泡体ブロックの上面が略同じ高さ、すなわち略同一の水平面をなすようにして設置されており、その上に第3の合成樹脂発泡体ブロックが設置されている。したがって、鉄道工事用仮設道路の路面上を重機が走行したときに、その上載荷重は、第3の合成樹脂発泡体ブロックを介して第1およびまたは第2の合成樹脂発泡体ブロックの上面にほぼ垂直な方向に作用することとなり、第1およびまたは第2の合成樹脂発泡体ブロックに割れのような破損が生じる可能性は大きく低減する。また、第3の合成樹脂発泡体ブロックの上面における少なくとも重機が通る箇所には補強板が設置されており、補強板によって加重の分散が図られるので、第3の合成樹脂発泡体ブロックが破損するのも回避される。結果として、高い安定性を備えた仮設道路が得られる。
【0012】
好ましくは、前記第1と第2の合成樹脂発泡体ブロックとして、鉄道レールを支持する枕木の路線方向における少なくとも2本以上を跨ぐ長さを備えるものを用いる。この形態では、2本以上の枕木が支えとなることで、上載荷重によって第1と第2の合成樹脂発泡体ブロックが不均一に変形したり破損するのを効果的に回避することができる。また、第1、第2の合成樹脂発泡体ブロックを長くすることで、仮設道路の部材点数を減らすことができるため、設置、撤去も容易になる。
【0013】
好ましくは、前記第1と第2の合成樹脂発泡体ブロックとして、その圧縮強さが前記第3の合成樹脂発泡体ブロックの圧縮強さよりも小さいものが用いられる。この態様では、仮設道路面を走行する重機等によって上載加重が、第3の合成樹脂発泡体ブロックおよび第1と第2の合成樹脂発泡体ブロックに作用したときに、第1と第2の合成樹脂発泡体ブロックが先行的に変形する。その変形によって、枕木上面の凹凸、枕木とバラスト(砂利)との間の高低差、バラスト(砂利)間の高低差、バラスト(砂利)表面の凹凸、等の不陸が吸収されることとなり、仮設道路面の平坦性に影響を与えることなく、より安定した構造の鉄道工事用仮設道路が得られる。
【0014】
本発明において、第1から第3の合成樹脂発泡体ブロックは、同じ樹脂種の合成樹脂発泡体ブロックであってもよく、異なった樹脂種の合成樹脂発泡体ブロックであってもよい。同じ樹脂種の場合には、好ましくは、第1の第2の合成樹脂発泡体ブロックには、第3の合成樹脂発泡体ブロックよりも発泡倍率の高いものが用いられる。また、使用後の廃棄処理の観点から、すべてのブロックに同じ樹脂種の合成樹脂発泡体を用いることが好ましい。また、第1から第3の合成樹脂発泡体ブロックには、従来の軽量盛土工法において用いられている合成樹脂発泡体ブロックを適宜用いることができる。具体例として、ポリスチレン系樹脂の型内発泡成形体ブロック、ポリオレフィン系樹脂の型内発泡成形体ブロック、ポリスチレン系樹脂の押出発泡成形体ブロック、あるいはポリオレフィン系樹脂の押出発泡成形体ブロック等が挙げられる。
【0015】
本発明において、前記補強板には、重機の荷重によって大きな変形や破損が生じない材料を適宜選択して用いることができる。例として、鋼板、木質系合板、繊維強化樹脂板、あるいはゴム系樹脂板等が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、鉄道レールの敷設面に合成樹脂発泡体ブロックを積み重ねて作られる鉄道工事用仮設道路であって、上載荷重によって合成樹脂発泡体ブロックに破損が生じるのを大きく回避できる、より実効性に富んだ鉄道工事用仮設道路が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による鉄道工事用仮設道路の実施の形態をその施工方法とともに示す図。
【図2】図1(b)での路線方向での断面図。
【図3】本発明による鉄道工事用仮設道路の他の実施の形態を示す図。
【図4】本発明による鉄道工事用仮設道路のさらに他の実施の形態を示す図。
【図5】従来の鉄道工事用仮設道路の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明による鉄道工事用仮設道路の第1の実施の形態Aをその施工方法とともに示している。
【0019】
図1は、敷設された鉄道レールを横断する方向の断面図であり、左右のホーム7a,7bの間に、複線の鉄道レールが敷設されている。図において、1はバラスト(砂利)であり、レール敷設面を形成している。バラスト1の上には、左側の線路のための多数本の枕木2aが路線方向に所定間隔で配置され、その右側には右側の線路のための多数本の枕木2bがやはり路線方向に所定間隔で配置されている。枕木2aの上にはレール3a,3bが敷設され、枕木2bの上にはレール3c,3dが敷設されている。
【0020】
このような路線において、バラスト1の上面は平坦面ではなく、図1(a)に示すように、通常、ホーム7aと枕木2aの間、枕木2aと枕木2bの間、枕木2bとホーム7bの間では、バラスト1の上面の高さは、枕木2a,2bの上面の高さよりも幾分高くなっている。また、枕木2a,2bの上に敷設されたレール3a〜3dの上面の高さは、バラスト上面の高さよりもさらに高くなっている。また、図示のものでは、枕木2a,2bには、レール3a、3bおよびレール3c、3dが配置される側方側の高さよりも中央部分の高さが低くされている。
【0021】
上記のような断面形状を持つ鉄道線路上に、左右のホーム7a,7bとほぼ同じ高さとなるように、鉄道工事用仮設道路を施工する。資材としては、レール3a,3b間およびレール3c,3d間において載置面(枕木2a,2b)上に設置する第1の合成樹脂発泡体ブロック10と、レー3a,3b間外側およびレー3c,3d間外側おいて載置面(バラスト面)上に設置する第2の合成樹脂発泡体ブロック20と、設置した第1の合成樹脂発泡体ブロック10と第2の合成樹脂発泡体ブロック20との上に設置する第3の合成樹脂発泡体ブロック30とが用いられる。
【0022】
図示の例では、図1(b)に示すように、第1の合成樹脂発泡体ブロック10は、左側の線路を構成するレール3aとレール3bの内側間の横幅とほぼ同じ横幅を持つ第1の合成樹脂発泡体ブロック10aと、右側の線路を構成するレール3cとレール3dの内側間の横幅とほぼ同じ横幅を持つ第1の合成樹脂発泡体ブロック10bとで構成される。また、第2の合成樹脂発泡体ブロック20は、左側ホーム7aの側壁と最も左側のレール3aの外側間の横幅とほぼ同じ横幅を持つ第2の合成樹脂発泡体ブロック20aと、レール3bの外側とレール3cの外側間の横幅とほぼ同じ横幅を持つ第2の合成樹脂発泡体ブロック20bと、最も右側のレール3dの外側と右側ホーム7bの側壁と間の横幅とほぼ同じ横幅を持つ第2の合成樹脂発泡体ブロック20cとで構成される。好ましくは、すべての第1の合成樹脂発泡体ブロック10a、10bおよび第2の合成樹脂発泡体ブロック20a〜20cの路線方向の長さは、図2に示すように、少なくとも路線方向に間隔をおいて配置される枕木2の2本以上に跨る長さとされる。
【0023】
各合成樹脂発泡体ブロックの厚さについて説明する。前記したように、各合成樹脂発泡体ブロックが設置される載置面は線路を横断する方向で高さが異なっているので、同じ厚さの合成樹脂発泡体ブロックを用いると、設置面は平坦面とはならない。そのために、第1の合成樹脂発泡体ブロック10a、10bおよび第2の合成樹脂発泡体ブロック20a〜20cを所定位置に設置したときに、設置したすべての合成樹脂発泡体ブロックの上面側がほぼ等しい高さの平坦面となるように、厚さの異なる合成樹脂発泡体ブロックを用いる。また、図1に示す例では、設置したすべての合成樹脂発泡体ブロックの上面高さが、レール3a〜3dの上面高さとほぼ同じ高さとなるように、各合成樹脂発泡体ブロックの厚さが設定されている。
【0024】
すなわち、第1の合成樹脂発泡体ブロック10a、10bの厚さは第2の合成樹脂発泡体ブロック20a〜20cの厚さよりも大きく、枕木2a,2bの上に設置したときに、その上面高さはレール3a〜3dの上面高さとほぼ同じ高さとなっている。また、第2の合成樹脂発泡体ブロック20a〜20cの厚さは、枕木2a,2bの上面よりも高さの高いバラスト1の上面に設置したときに、その上面高さはレール3a〜3dの上面高さとほぼ同じ高さとされている。図示の例では、第2の合成樹脂発泡体ブロック20a〜20cが設置される3か所のバラスト面は同じ高さであり、結果として同じ厚さの第2の合成樹脂発泡体ブロック20a〜20cが図示されているが、施工現場において3か所のバラスト面の高さが異なる場合には、それに応じて異なる厚さの第2の合成樹脂発泡体ブロックが用いられる。
【0025】
図2(b)に示すように、第1の合成樹脂発泡体ブロック10a、10bおよび第2の合成樹脂発泡体ブロック20a〜20cを所定位置にかつ路線方向に所定の長さに設置した後、そのほぼ平坦面となった第1の合成樹脂発泡体ブロック10および第2の合成樹脂発泡体ブロック20の上面に、適宜形状(図では立方体状)の第3の合成樹脂発泡体ブロック30をホーム7a,7bの上面と同じ高さまで積み上げる。そして、設置した第3の合成樹脂発泡体ブロック30の上面における少なくとも重機が通る箇所に補強板(不図示)を配置することにより、図1(c)に示す鉄道工事用仮設道路Aが完成する。必要な場合には、設置する各ブロックの姿勢を安定させるために、隣接する合成樹脂発泡体ブロック同士を適宜の係止金具を用いて連結する。また、仮設道路を撤去した後、翌晩再設置しやすいように、ブロック10、ブロック20をテープで連結しても良い。
【0026】
上記の鉄道工事用仮設道路Aでは、補強版上を重機が移動するときの荷重は、第1の合成樹脂発泡体ブロック10および第2の合成樹脂発泡体ブロック20に対してほぼ垂直荷重として作用するので、これらの合成樹脂発泡体ブロックに偏った集中荷重が作用して部分的に破損が生じるのを効果的に回避することができる。
【0027】
図3は、本発明による鉄道工事用仮設道路Aの他の形態であり、ここではホーム7は鉄道路線の一方側にのみ形成されている。この場合には、道路面あるいはバラスト面からホーム7の上面まで連続した斜面が形成されるように、上面側が傾斜面となっている第3の合成樹脂発泡体ブロック30aを立方体状の第3の合成樹脂発泡体ブロック30とともに用いている。さらに、図示されるように、ホーム7と最も離れた位置に設置される第2の合成樹脂発泡体ブロック20には、上面側が傾斜面となっている第2の合成樹脂発泡体ブロック20dを用いている。
【0028】
図4は、本発明による鉄道工事用仮設道路Aのさらに他の形態を示している。この鉄道工事用仮設道路A1は、第1の合成樹脂発泡体ブロック10および第2の合成樹脂発泡体ブロック20として、それぞれの載置面上に設置したときの上面高さが、レール3a〜3dの上面高さよりも高い位置となり、かつ設置後のすべての合成樹脂発泡体ブロックの上面はほぼ平坦面を形成できるような厚みのものを用いている。さらに、第1の合成樹脂発泡体ブロック10および第2の合成樹脂発泡体ブロック20として、その圧縮強さが前記第3の合成樹脂発泡体ブロック30の圧縮強さよりも小さいものを用いている。一例として、すべての合成樹脂発泡体ブロックがEPS(発泡ポリスチレン)ブロックの場合、第1の合成樹脂発泡体ブロック10および第2の合成樹脂発泡体ブロック20としては発泡倍率が65程度のものを用い、第3の合成樹脂発泡体ブロック30としては発泡倍率が60程度のものを用いる。これらの点を除き、他の構成は、図1〜図3に基づき説明した鉄道工事用仮設道路Aと同じであってよく、図4では同じ符号を付すことで説明は省略する。
【0029】
図4において、図4(a)は図1(b)の部分図に、また図4(b)は図1(c)の部分図に相当する。図4(a)に示されるように、鉄道工事用仮設道路A1では、第1の合成樹脂発泡体ブロック10a、10bおよび第2の合成樹脂発泡体ブロック20a〜20cをそれぞれの設置面上に設置したときに、それらの上面とレール3a〜3dの上面との間には、隙間Pが形成される。そして、設置された第1の合成樹脂発泡体ブロック10a、10bおよび第2の合成樹脂発泡体ブロック20a〜20cの上に、第3の合成樹脂発泡体ブロック30を積み上げ、設置した第3の合成樹脂発泡体ブロック30の上面における少なくとも重機が通る箇所に補強板(不図示)を配置することにより、図4(b)に示される鉄道工事用仮設道路A1とされる。
【0030】
鉄道工事用仮設道路A1においては、前記したように、第1の合成樹脂発泡体ブロック10および第2の合成樹脂発泡体ブロック20として、その圧縮強さが前記第3の合成樹脂発泡体ブロック30の圧縮強さよりも小さいものを用いており、第1の合成樹脂発泡体ブロック10および第2の合成樹脂発泡体ブロック20にかかる上載荷重によって、それらのブロックは、図4(b)に示すように、その上面高さがレール3a〜3dの上面高さと同じ高さとなるまで先行的に変形する。さらに、各ブロックは、図4(a)に示すように、各ブロックと枕木2との間に形成されるスペースSやブロック裏面と砂利であるバラスト表面との間に存在するスペースにも入り込むように変形する。
【0031】
その第1の合成樹脂発泡体ブロック10および第2の合成樹脂発泡体ブロック20の変形によって、第1の合成樹脂発泡体ブロック10および第2の合成樹脂発泡体ブロック20の裏面とそれぞれの載置面との間の存在するスペースが埋められることとなり、実質的に、ブロック載置面の不陸が解消とされる。そのために、図4に示す鉄道工事用仮設道路A1では、一層安定した第3の合成樹脂発泡体ブロック30の積み上げ状態および仮設道路面表面の安定性が得られる。
【0032】
いずれの形態の鉄道工事用仮設道路A,A1においても、仮設道路としての所期の目的が達成された後に、現場から撤去する作業は容易であり、撤去後には、施工前の状態がそのまま復元する。
【符号の説明】
【0033】
A,A1…鉄道工事用仮設道路、
1…バラスト(砂利)、
2…枕木、
3…レール、
7…ホーム、
10…第1の合成樹脂発泡体ブロック、
20…第2の合成樹脂発泡体ブロック、
30…第3の合成樹脂発泡体ブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道レールが敷設された領域に合成樹脂発泡体ブロックを積み上げてなる鉄道工事用仮設道路であって、
該仮設道路は、鉄道レール間の載置面上に設置した第1の合成樹脂発泡体ブロックと、鉄道レール間外側の載置面上に設置した第2の合成樹脂発泡体ブロックと、前記載置面上に設置された第1と第2の合成樹脂発泡体ブロックの上に設置した第3の合成樹脂発泡体ブロックと、設置した第3の合成樹脂発泡体ブロックの上面における少なくとも重機が通る箇所に設置された補強板とを少なくとも有しており、
前記設置された第1と第2の合成樹脂発泡体ブロックの上面高さはほぼ平坦面でありかつ鉄道レールの上面高さと等しいかそれよりも高くなっていることを特徴とする鉄道工事用仮設道路。
【請求項2】
前記第1と第2の合成樹脂発泡体ブロックは、鉄道レールを支持する枕木の路線方向における少なくとも2本以上を跨ぐ長さを備えることを特徴とする請求項1に記載の鉄道工事用仮設道路。
【請求項3】
前記第1と第2の合成樹脂発泡体ブロックとして、その圧縮強さが前記第3の合成樹脂発泡体ブロックの圧縮強さよりも小さいものが用いられていることを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道工事用仮設道路。
【請求項4】
鉄道レールが敷設された領域に合成樹脂発泡体ブロックを積み上げてなる鉄道工事用仮設道路の施工方法であって、
鉄道レール間の載置面上に第1の合成樹脂発泡体ブロックを、鉄道レール間外側に第2の合成樹脂発泡体ブロックを、設置後のすべての合成樹脂発泡体ブロックの表面高さが鉄道レールの上面と高さと等しいかそれよりも高くかつ設置したすべての合成樹脂発泡体ブロックの表面高さが略等しくなるように設置する工程と、
設置した前記第1と第2の合成樹脂発泡体ブロックの上面に所定高さまで第3の合成樹脂発泡体ブロックを積み上げる工程と、
積み上げた前記第3の合成樹脂発泡体ブロックの上面における少なくとも重機が通る箇所に補強板を設置する工程と、
を少なくとも備えることを特徴とする鉄道工事用仮設道路の施工方法。
【請求項5】
前記第1と第2の合成樹脂発泡体ブロックとして、鉄道レールを支持する枕木の少なくとも2本以上を跨ぐ長さを備える合成樹脂発泡体ブロックを用いることを特徴とする請求項4に記載の鉄道工事用仮設道路の施工方法。
【請求項6】
前記第1と第2の合成樹脂発泡体ブロックとして、その圧縮強さが前記第3の合成樹脂発泡体ブロックの圧縮強さよりも小さいものを用いることを特徴とする請求項4または5に記載の鉄道工事用仮設道路の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−172494(P2012−172494A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38761(P2011−38761)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】