説明

鉄道桁移動設置装置、鉄道桁移動設置方法および鉄道桁撤去方法

【課題】 簡単な構造で、かつ短い工期で既設の軌道を撤去して新設の鉄道桁の設置できる鉄道桁移動設置装置、およびこれを用いた鉄道桁移動設置方法、鉄道桁撤去方法を提供する。
【解決手段】 走行台車3上には、アウトリガ7、アーム9が設置される。鉄道桁移動設置装置1は、一対の走行台車3a、3bが互いに向かい合うように設置され、それぞれの走行台車3a、3bにまたがるように吊りフレーム13が載置される。アウトリガ7は走行台車3の両側方に各2つずつ設けられる。それぞれのアウトリガ7の内、1のアウトリガ7に回転可能なアーム9が接合される。アーム9には、アーム9に沿って移動可能なチェーンブロックが設けられ、チェーブロックによって吊りフレーム13を昇降させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道桁移動設置装置、鉄道桁移動設置方法および鉄道桁撤去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道では、砕石等のバラスト材の上に設置した枕木に軌条を敷設したバラスト軌道や、プレキャスト製の軌道スラブ上に軌条を敷設したスラブ軌道などが用いられてきた。老朽化などにより既設の軌道の架け替えが必要な場合には、既設の軌道の構成部材を撤去して、新しい軌道に交換する作業が行われてきた(特許文献1)。
【0003】
また、橋梁の新設時などにおいて、平行して設置された複数の軌条のうち一方の軌条を走行するトロリ上に設置されたカタパルトを、ターンテーブル上で旋回し、カタパルト上を移動する台車によってガータを移動させ、他方の軌条の在来橋梁の撤去及び新橋梁の設置を行う方法がある(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−20205号公報
【特許文献2】特開平11−1910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような方法では、軌道の交換作業は、最終電車と始発電車との間の限られた時間帯に行う必要があるうえ、広い作業空間を確保するためには軌道の上方の架線を切断しなければならず、工期が長期化する問題がある。
【0006】
また、特許文献2のような方法では、橋梁の迅速な交換を行うことが可能であるが、ガータを併設する軌条へ移動させるために、カタパルトとガータ間およびカタパルトとトロリ間にそれぞれターンテーブルを設ける必要があり、また、それらの動作を同期させる必要があり、さらに、ガータを昇降させる必要があるため構造が複雑であるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、簡単な構造で、かつ短い工期で既設の軌道を撤去して新設の鉄道桁の設置できる鉄道桁移動設置装置、およびこれを用いた鉄道桁移動設置方法、鉄道桁撤去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための第1の発明は、軌条に沿って走行し、互いに所定の間隔をあけて設置される一対の走行台車と、前記走行台車の両側方に設けられたアウトリガと、一方の側の前記アウトリガに回転可能に設けられたアームと、鉄道桁を吊下げる吊りフレームと、前記走行台車上に設けられ、前記吊りフレームを載置可能な台座と、前記アームに沿って移動可能であり、前記吊りフレームを昇降可能に保持する保持手段と、を具備することを特徴とする鉄道桁移動設置装置である。
【0009】
一方の側の前記アウトリガには前記アームの旋回装置が設けられ、前記アームは前記旋回装置と接合され、前記アームは前記旋回装置を中心に回転動作が可能であり、前記アームの一方の端部から、前記アームと前記旋回装置との接合部までの距離が、前記走行台車の両側方に設けられた前記アウトリガの間隔の半分よりも大きく、かつ、前記走行台車の両側方に設けられた前記アウトリガの間隔よりも小さいことが望ましい。
【0010】
前記保持手段が、前記アームに沿って移動するトロリと、前記トロリに設けられたチェーンブロックとからなってもよい。
【0011】
第1の発明の鉄道桁移動設置装置によれば、併設する軌条の一方の側から他方の側の軌条の撤去及び設置を容易に行うことができる。また、アウトリガを中心にアームを回転させることができ、また、鉄道桁を吊下げる吊りフレームがアームに沿って移動可能であるため、容易に軌条の設置及び撤去を行うことができる。さらに、軌条を移動中には、吊りフレームは台車上に載置されるのみであり、使用時にも吊りフレームの回転動作を行う必要がないため構造が簡易である。
【0012】
また、アームと旋回装置との接合位置が、走行台車の両側方に設けられたアウトリガの間隔の半分よりも大きく、かつ、走行台車の両側方に設けられたアウトリガの間隔よりも小さいため、アームを収納または回転させた際に、アームの後端部がアウトリガと干渉することがなく、また、アームを回転させた際に、アームの後端部が両側方のアウトリガの間隔の中心位置をまたぐため、吊りフレームの昇降が容易である。
【0013】
第2の発明は、軌条に沿って走行し、互いに所定の間隔をあけて設置される一対の走行台車と、前記走行台車の両側方に設けられたアウトリガと、一方の側の前記アウトリガに回転可能に設けられたアームと、鉄道桁を吊下げる吊りフレームと、前記走行台車上に設けられ、前記吊りフレームを載置可能な台座と、前記アームに沿って移動可能であり、前記吊りフレームを昇降可能に保持する保持手段と、を具備することを特徴とする鉄道桁移動設置装置を用いた鉄道桁移動設置方法であって、一対の前記走行台車の前記台座上に、鉄道桁を吊下げた前記吊りフレームを載せる工程(a)と、前記鉄道桁移動設置装置を軌条に沿って移動させ、前記鉄道桁の設置予定地側方に停止させる工程(b)と、前記アウトリガを伸長させて前記走行台車を固定し、前記アームを前記鉄道桁の方向へ前記軌条に略垂直になるように回転させる工程(c)と、前記保持手段によって前記吊りフレームを吊り上げ、前記アームに沿って前記保持手段を前記鉄道桁の設置予定地上方へ移動させ、前記鉄道桁を吊り降ろし、前記鉄道桁を設置する工程(d)と、前記保持手段を前記走行台車上方へ移動させ、前記吊りフレームの両端を、一対の前記走行台車の前記台座の上に降ろし、前記アームを前記軌条に略平行になるように回転させる工程(e)と、を具備することを特徴とする鉄道桁移動設置方法である。
【0014】
前記工程(a)は、前記鉄道桁移動設置装置を軌条に沿って移動させ、鉄道桁の側方に停止させ、前記アウトリガを伸長させて前記走行台車を固定する工程(f)と、前記アームを前記鉄道桁の方向へ前記軌条に略垂直になるように回転させる工程(g)と、前記アームに沿って前記保持手段を前記鉄道桁の上方へ移動させ、前記吊りフレームと前記鉄道桁を接合する工程と(h)と、前記保持手段により、前記鉄道桁を吊り上げ、前記保持手段を前記走行台車上方へ移動させる工程(i)と、前記鉄道桁を吊下げた状態の前記吊りフレームの両端を、一対の前記走行台車の前記台座の上に降ろす工程(j)と、前記アームを前記軌条に略平行になるように回転させる工程(k)とを具備するのが望ましい。
【0015】
第2の発明では、第1の発明にかかる鉄道桁移動設置装置を用いることにより、架線の下方の限られた作業空間を用いて、簡易な構造で、かつ短い工期で併設する軌条に鉄道桁を設置することができる。
【0016】
第3の発明は、軌条に沿って走行し、互いに所定の間隔をあけて設置される一対の走行台車と、前記走行台車の両側方に設けられたアウトリガと、一方の側の前記アウトリガに回転可能に設けられたアームと、鉄道桁を吊下げる吊りフレームと、前記走行台車上に設けられ、前記吊りフレームを載置可能な台座と、前記アームに沿って移動可能であり、前記吊りフレームを昇降可能に保持する保持手段と、を具備することを特徴とする鉄道桁移動設置装置を用いた鉄道桁撤去方法であって、前記鉄道桁移動設置装置を軌条に沿って移動させ、撤去予定の鉄道桁の側方に停止させ、前記アウトリガを伸長させて前記走行台車を固定する工程(l)と、前記アームを前記鉄道桁の方向へ前記軌条に略垂直になるように回転させる工程(m)と、前記アームに沿って前記保持手段を前記鉄道桁の上方へ移動させ、前記吊りフレームと前記鉄道桁を接合する工程と(n)と、前記保持手段により、前記鉄道桁を吊下げた状態の前記吊りフレームを吊上げ、前記保持手段を前記走行台車上方へ移動させる工程(o)と、前記鉄道桁を吊下げた状態の前記吊りフレームの両端を、一対の前記走行台車の前記台座の上に降ろす工程(p)と、前記アームを前記軌条に略平行になるように回転させる工程(q)と、一対の前記走行台車の前記台座上に、鉄道桁を吊下げた前記吊りフレームを載せた状態で、前記鉄道桁移動設置装置を軌条に沿って移動させる工程(r)と、を具備することを特徴とする鉄道桁撤去方法である。
【0017】
第3の発明では、第1の発明にかかる鉄道桁移動設置装置を用いることにより、架線の下方の限られた作業空間を用いて、簡易な構造で、かつ短い工期で併設する軌条から鉄道桁を撤去することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡単な構造で、かつ短い工期で既設の軌道を撤去して新設の鉄道桁の設置できる鉄道桁移動設置装置、およびこれを用いた鉄道桁移動設置方法、鉄道桁撤去方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、鉄道桁移動設置装置1を示す図で、図1(a)は側面図、図1(b)は平面図である。
【0020】
図1に示すように、鉄道桁移動設置装置1は主に、走行台車3、アウトリガ7、アーム9、吊りフレーム13等からなる。走行台車3は、軌条5上を走行可能である。走行台車3上には、アウトリガ7、アーム9が設置される。鉄道桁移動設置装置1は、一対の走行台車3a、3bが互いに向かい合うように所定の間隔をおいて設置され、それぞれの走行台車3a、3bにまたがるように吊りフレーム13が載置される。すなわち、吊りフレーム13によって走行台車3a、3bが連結される。
【0021】
それぞれの走行台車3の両側方には、アウトリガ7が各2つずつ設けられる。互いに向かい合う走行台車3a、3bのそれぞれのアウトリガ7の内、1のアウトリガ7にアーム9が接合される。アーム9は、走行台車3の前方(走行台車3a、3bの互いに向かい合う側)であり、一方の側方のアウトリガ7にそれぞれ接合される。
【0022】
図1(b)に示すように、走行台車3aは、走行台車3b側のアウトリガ7の内、図中下側のアウトリガ7にアーム9が接合され、走行台車3bは走行台車3a側のアウトリガ7の内、図中下側のアウトリガ7にアーム9が接合され。したがって、走行台車3a、3bそれぞれのアーム9が互いに対向するように設けられる。アーム9の先端にはアウトリガ11が設けられる。
【0023】
図2は一方の側の走行台車3(3a)近傍の拡大図であり、図2(a)は側面図、図2(b)は平面図、図2(c)は図2(b)のA−A線断面図である。なお、図2においては吊りフレーム13の図示は省略した。
【0024】
走行台車3には車輪15が設けられ、軌条を走行可能である。走行台車3上のアウトリガ7は互いに連結され、さらに走行台車3と接合されている。アウトリガ7は走行台車3の両側方に設けられている。走行台車3の前方側には台座23が設けられる。台座23は、アウトリガ7よりも前方側に突出している。台座23は吊りフレーム13が載置される部位である。なお、車輪15は台座23の前方に位置するため、台座23に吊りフレーム13を載置した状態で、吊りフレーム13の重量が走行台車3の前方側の車輪と後方側の車輪の間にかかるため、走行台車3が倒れることはない。
【0025】
走行台車3の前方側で向かって左側のアウトリガ7(図2(b)、図2(c)参照)には、旋回装置21が設けられる。なお、走行台車3の前方側とは、アーム9が伸びている側であり、また、向かって左側とは、走行台車3の前方から見た際(図2(c)参照)の左側を指す。なお、向かい合って対向する走行台車3(3b)側では、走行台車3の前方側で向かって右側のアウトリガ7に旋回装置21が設けられる。
【0026】
アーム9にはトロリ17が設けられる。トロリ17はアーム9に沿って移動可能である。トロリ17にはチェーンブロック19が接合されている。したがって、アーム9下方に配置する吊りフレーム13をチェーンブロック19で昇降させることができる。
【0027】
アーム9は、旋回装置21と接合される。すなわち、アーム9は旋回装置21を介してアウトリガ7と接合される。旋回装置21は、アーム9を旋回させることができる。ここで、アーム9の後端からアーム9と旋回装置21との接合部との距離(図2(b)の矢印B、以後「接合距離」と称する)は、走行台車3の両側方に位置するアウトリガ7の間隔(図2(b)の矢印D、以後「アウトリガ間隔」と称する)よりも小さく、走行台車3の両側方に位置するアウトリガ7の間隔の半分(図2(b)の矢印C、以後「アウトリガ間隔の半分」と称する)よりも大きい。すなわち、C<B<D=2Cの関係が成立する。
【0028】
接合距離Bがアウトリガ間隔Dよりも大きくなると、アーム9を旋回させた際に、アーム9の後端とアウトリガ7とが干渉し、回転動作ができないためである。また、接合距離Bがアウトリガ間隔の半分Cよりも小さくなると、アーム9を回転させた際に、アーム9の後端が台車3の中央をまたがない。このため、チェーンブロック19で吊りフレーム13を昇降させる際に、接合距離が短いため、吊りフレーム13の中心位置の上方にトロリ17を移動させることができず、吊りフレーム13を安全に吊上げることができないためである。
【0029】
次に、吊りフレーム13について説明する。図3は、吊りフレーム13を示す図で、図3(a)は側面図、図3(b)は平面図である。吊りフレーム13は、主に縦梁25、横梁27、吊り部29等から構成される。吊りフレーム13は、一対の縦梁25が、その両端を横梁27で接合されており、縦梁25の長手方向中央近傍に所定の間隔をあけて吊り部29が設けられる。
【0030】
吊り部29にはチェーン33が設けられる。チェーン33は鉄道桁31と接合され、吊りフレーム13下方に鉄道桁31を吊下げることができる。なお、図示を省略したチェーンブロックを用いることで、吊りフレーム13下方に吊下げた鉄道桁31を吊りフレーム13に対して昇降させることができる。
【0031】
なお、図1(a)に示すように、吊りフレーム13が走行台車3上に設置された状態では、吊りフレーム13の横梁27が走行台車3の台座23に載置される部位となり、また、アーム9は、吊り部9上方に位置する。アーム9の重さを吊り部9で支えることにより、アーム9の自重による倒れが防止される。
【0032】
次に、鉄道桁移動設置装置1による鉄道桁の設置方法を説明する。まず、図4(a)に示すように、軌条5a上を走行する鉄道桁移動設置装置1を、これから設置予定の鉄道桁31の側方に停止させる。この状態では、アーム9は軌条5aに略平行な方向に向けられている。なお、鉄道桁31は、あらかじめ軌条5aの側方に併設された軌条5b上に横取り設置される。鉄道桁31は、例えば、枕木が一体化されたプレファブ桁である。
【0033】
次に、図4(b)に示すように、アウトリガ7を伸長する(図中矢印E方向)。アウトリガ7によって、鉄道桁移動設置装置1の位置が固定されるとともに、鉄道桁移動設置装置1の転倒が防止される。
【0034】
次に、図5(a)に示すように、アーム9を回転させる(図中矢印F方向)。アーム9は、接合されている旋回装置21を中心に旋回される。なお、一対の走行台車のそれぞれのアーム9は、鉄道桁31の方向に向けて旋回する。したがって、それぞれのアーム9の旋回方向は互いに逆向きとなる。アーム9が完全に旋回を完了すると、アーム9は軌条5aに略垂直な方向となり、鉄道桁31を超えた位置にアーム9の先端が位置する。
【0035】
次に、図5(b)に示すように、アーム9先端に設けられたアウトリガ11を伸長する(図中矢印G方向)。アウトリガ11によって、アーム9の位置が固定されるとともに、アーム9の自重によって鉄道桁移動設置装置1が転倒することが防止される。なお、アーム9が旋回動作中には、吊りフレーム13がカウンターウェイトの役割を果たし、鉄道桁移動設置装置1の転倒が防止されている。
【0036】
次に、図6(a)に示すように、吊りフレーム13をチェーンブロック19で吊上げる(図中矢印H方向)。アーム9が旋回完了した際には、吊りフレーム13の横梁27上にアーム9が位置するため、吊りフレーム13を安全に吊上げることができる。
【0037】
次に、図6(b)に示すように吊りフレーム13を鉄道桁13上へ移動させる(図中矢印I方向)。吊りフレーム13を吊下げたチェーンブロック19は、トロリ17によってアーム9に沿って移動が可能である。
【0038】
次に、図7(a)に示すように、吊りフレーム13と鉄道桁31とを接合し、鉄道桁31を吊上げる(図中矢印J方向)。鉄道桁31を吊上げるには、吊りフレーム13の吊り部29に設けられたチェーン33と鉄道桁31とを接合した後、吊り部29近傍に設けられた図示を省略したチェーンブロック等により、鉄道桁31を吊り上げればよい。また、チェーン33で鉄道桁31と吊りフレーム13とを接合後、チェーンブロック19によって、吊りフレーム13ごと鉄道桁13を吊り上げてもよい。
【0039】
次に、図7(b)に示すように、鉄道桁31を吊下げた状態の吊りフレーム13をアーム9に沿って軌条5a上方へ移動させる(図中矢印K方向)。この状態では、鉄道桁移動設置装置1(走行台車3)の軸芯(長手方向を軸方向とした際の幅方向の中心)と、吊りフレーム13および鉄道桁31の軸芯とが略一致する。
【0040】
次に、図8(a)に示すように、チェーンブロック19によって、吊りフレーム13を台座23へ吊り降ろす(図中矢印L方向)。なお、吊りフレーム13が台座23に載置された状態でも、鉄道桁31は地面(軌条5a)に接することがなく、吊りフレーム13につりさげられた状態である。
【0041】
次に、図8(b)に示すように、アウトリガ11を縮めて、アーム9を元の状態に回転させる(図中矢印M方向)。アーム9を回転させる際には、吊りフレーム13および鉄道桁31がカウンターウェイトの役割を果たし、鉄道桁移動設置装置1が転倒することが防止される。なお、前述の通り、アーム9を元の状態に回転させた状態では、アーム9は吊りフレーム13の吊り部29上に乗った状態となる。
【0042】
次に、鉄道桁移動設置装置1を軌条5a上で走行させ、鉄道桁設置予定地35の側方に停止する。図9(a)は、鉄道桁31を吊下げた状態の鉄道桁移動設置装置1が、鉄道桁設置予定地35横に停止した状態を示す図である。この状態で、アウトリガ7を伸長させることで、鉄道桁移動設置装置1の位置を固定するとともに、鉄道桁移動設置装置1の転倒が防止される。
【0043】
次に、図9(b)に示すように、アーム9を軌条5aに略垂直になるように、鉄道桁設置予定地35の方向へ回転させる(図中矢印N方向)。アーム9の回転が完了した状態で、アウトリガ11を伸長させることで、アーム9の位置を固定するとともに、鉄道桁移動設置装置1の転倒が防止される。
【0044】
次に、チェーンブロック19によって鉄道桁31を吊下げた状態の吊りフレーム13を吊り上げ、さらに図10(a)に示すように、吊りフレーム13をアーム9に沿って鉄道桁設置予定地35上空に移動させる(図中矢印O方向)。鉄道桁31が設置位置まで移動した後、鉄道桁31を吊り降ろす。鉄道桁31設置後、鉄道桁31と吊りフレーム13との接合を外す。
【0045】
次に、図10(b)に示すように、吊りフレーム13をアーム9に沿って元の鉄道桁移動設置装置1(軌条5a)の方へ移動させる(図中矢印P方向)。吊りフレーム13が元の位置に戻った後、チェーンブロック19によって台座23上へ吊り降ろす。
【0046】
次に、アウトリガ11を縮めて、図11に示すように、アーム9を元の状態(軌条5aに略平行な方向)に回転させる(図中矢印Q方)。さらにアウトリガ7を縮めて、鉄道桁移動設置装置1を軌条5aに沿って必要な位置に移動させる。以上により、鉄道桁31の設置が完了する。
【0047】
次に、同様の鉄道桁移動設置装置1を用いて、既存の鉄道桁を撤去する方法について説明する。鉄道桁の撤去方法は、鉄道桁の設置方法と逆の工程によって行うことができる。以下の説明では、図4〜図8を用いて、鉄道桁31が既設の鉄道桁であるとして説明する。
【0048】
まず、図4(a)に示すように、軌条5a上を走行する鉄道桁移動設置装置1を、撤去予定の既設の鉄道桁31の側方に停止させる。次に、図4(b)に示すように、アウトリガ7を伸長する(図中矢印E方向)。アウトリガ7によって、鉄道桁移動設置装置1の位置が固定されるとともに、鉄道桁移動設置装置1の転倒が防止される。
【0049】
次に、図5(a)に示すように、アーム9を回転させる(図中矢印F方向)。次に、図5(b)に示すように、アーム9先端に設けられたアウトリガ11を伸長する(図中矢印G方向)。アウトリガ11によって、アーム9の位置が固定されるとともに、アーム9の自重によって鉄道桁移動設置装置1が転倒することが防止される。
【0050】
次に、図6(a)に示すように、吊りフレーム13をチェーンブロック19で吊上げる(図中矢印H方向)。次に、図6(b)に示すように吊りフレーム13を鉄道桁13上へ移動させる(図中矢印I方向)。吊りフレーム13を吊下げたチェーンブロック19は、トロリ17によってアーム9に沿って移動が可能である。
【0051】
次に、図7(a)に示すように、吊りフレーム13と撤去予定の鉄道桁31とを接合し、鉄道桁31を吊上げる(図中矢印J方向)。次に、図7(b)に示すように、鉄道桁31を吊下げた状態の吊りフレーム13をアーム9に沿って軌条5a上方へ移動させる(図中矢印K方向)。
【0052】
次に、図8(a)に示すように、チェーンブロック19によって、吊りフレーム13を台座23へ吊り降ろす(図中矢印L方向)。次に、図8(b)に示すように、アウトリガ11を縮めて、アーム9を元の状態に回転させる(図中矢印M方向)。さらにアウトリガ7を縮める。鉄道桁31を遠方に運搬する必要がある場合には、鉄道桁31を吊下げたまま、鉄道桁移動設置装置1を移動させることができる。以上により、既設の鉄道桁31の撤去が完了する。
【0053】
このように、本実施の形態の鉄道桁移動設置装置1は、吊りフレーム13の下方にチェーンブロック19を用いて鉄道桁31を吊下げるため、架線下の限られた作業空間内で鉄道桁の設置作業および撤去作業を行うことができる。また、鉄道桁31を吊りフレーム13上方に積み込む必要がなく、このため、鉄道桁31の吊り上げおよび吊り降ろし作業が迅速かつ容易である。
【0054】
さらに、桁設置予定位置35上方に鉄道桁31を移動させたのち、鉄道桁31を降ろすのみで設置が完了し、その後、鉄道桁移動設置装置1を退避させるのも容易である。また、同様に、吊りフレーム13を鉄道桁31上に配置した状態で鉄道桁31を吊り上げ、その後、鉄道桁移動設置装置1を退避させるだけで、鉄道桁31の撤去が完了するため、鉄道桁31の撤去も容易である。
【0055】
また、アーム9が回転可能であるため、鉄道桁移動設置装置1の移動時には、軌条5aから大きくはみ出すことがなく、また、吊りフレーム13を移動させる際には、アーム9を回転させればよいため、吊りフレーム13の移動が容易である。また、吊りフレーム13がカウンターウェイトの役割を果たすため、アーム9の回転移動の際に、装置が転倒することがない。
【0056】
また、アーム9の接合距離がアウトリガ間隔よりも小さいため、アーム9の回転時にアウトリガ7と干渉することがなく、また、接合距離がアウトリガ間隔の半分よりも大きいため、アーム9を軌条5aに垂直な方向へ回転させた際にも、吊りフレーム13の軸芯上にチェーンブロックを位置させることができるため、吊りフレーム13の吊り上げが安全かつ容易である。
【0057】
なお、本実施の形態では、鉄道桁設置予定地35が軌条5aに併設する軌条上にあることとしたが、鉄道桁設置予定地35はこれに限らない。図12(a)は、橋桁などの工事桁40を、軌条5aが設置された橋梁等の架台41上に設置する工程を示す図である。図12に示す鉄道桁移動設置装置1は、本実施の形態の鉄道桁移動設置装置1と同様の構成である。
【0058】
本実施の形態と同様の工程で、工事桁40を吊下げた状態の鉄道桁移動設置装置1を、架台41上の工事桁40の設置予定地側方へ停止させ、同様の手順でアーム9を回転させる(図中矢印R方向)。この際、アーム9の先端(アウトリガ11)の位置が架台41上に位置する必要がある。
【0059】
次いで、図12(b)に示すように、アーム9に沿って工事桁41を移動させ、架台41上に設置する(図中矢印S方向)。以上により、工事桁40を架台40上に設置することができる。
【0060】
また、図13には別の鉄道桁移動設置装置の構成を示す。図13(a)は正面図、図13(b)は平面図、図13(c)は図13(b)のT−T線断面図である。図13に示す鉄道桁移動設置装置のアウトリガ7同士を接続するフレーム42の下面には、レール43が設けられる。レール43はアーム9の旋回軌道上に沿って円弧上に設けられる。すなわち、レール43は略水平方向に円弧状に設けられ、フレーム42の下面に接合される。
【0061】
アーム9の上面のレール43に対応する部位には車輪部45が設けられる。図13(c)に示すように、車輪部45は、コの字状の上方が開放したガイド51と、ガイド51内面に設けられた一対の上車輪47および一対の下車輪49等から構成される。ガイド51の下面はアーム9の上面と接合される。なお、車輪部45の上車輪47および下車輪49の各車輪軸は、対応する部位のレール43の円弧形状の接線方向に略一致する。
【0062】
レール43はI型断面形状であり、略水平方向のフランジ44を有する。上車輪47と下車輪49はフランジ44を上下から挟みこむように設けられる。上車輪47および下車輪49はフランジ44と接触してレール43に沿って移動可能である。すなわち、車輪部45はレール43のフランジ44を挟み込んだ状態で、アーム9の旋回動作に伴いレール43に沿って移動する。
【0063】
車輪部45およびレール43は以下のように機能する。すなわち、アーム9を旋回させる際、アーム9の自重により、アーム9の後端近傍(アーム9のアウトリガ11とは逆の側の端部から、旋回装置21との接合部までの部位)には、上方向の力が生じる。したがって、旋回装置21には回転方向に垂直な方向に大きなモーメントが生じる。一方、旋回動作終了後、アウトリガ11を伸長させたのち、台座23上の吊りフレーム13等を吊上げる際には、アーム9の後端近傍には下方向の力が生じる。この場合にも旋回装置21には回転方向に垂直な方向に大きなモーメントが生じる。
【0064】
これに対し、レール43を上下方向から挟みこむ車輪部45を設けることで、アーム9の旋回中および旋回後において、アーム9後端部近傍に生じる上下方向への力を、車輪部45を介してレール43のフランジ44に受け持たせることができる。したがって、旋回装置21へ直接アーム9等を支えるモーメントが作用せず、旋回装置21の破損やアーム9の旋回動作の不具合等を解消することができる。
【0065】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】鉄道桁移動設置装置1を示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図。
【図2】走行台車3近傍を示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は(b)のA−A線断面図。
【図3】吊りフレーム13の構成を示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図。
【図4】鉄道桁移動設置装置1を鉄道桁31側方に停止させる際の工程を示す図。
【図5】アーム9を回転させ、アウトリガ11を伸長させる工程を示す図。
【図6】吊りフレーム13を吊り上げ、鉄道桁31上へ移動させる工程を示す図。
【図7】工事桁31を吊上げ、吊りフレーム13を元の位置に戻す工程を示す図。
【図8】吊りフレーム13を台座に載せ、アーム9を元に戻す工程を示す図
【図9】鉄道桁移動設置装置1を鉄道桁設置予定地35側方に停止させ、アーム9を回転させる工程を示す図。
【図10】鉄道桁31を鉄道桁設置予定地35へ設置する工程を示す図。
【図11】アーム9を元に戻す工程を示す図
【図12】工事桁40を架台41上に設置する工程を示す図
【図13】レール43および車輪部45が設けられ他状態を示す図
【符号の説明】
【0067】
1………鉄道桁移動設置装置
3、3a、3b………走行台車
5、5a、5b………軌条アウトリガジャッキ
7………アウトリガ
11………アウトリガ
13………吊りフレーム
15………車輪
17………トロリ
19………チェーンブロック
21………旋回装置
23………台座
25………縦梁
27………横梁
29………吊り部
31………鉄道桁
33………チェーン
35………鉄道桁設置予定地
40………工事桁
41………架台
42………フレーム
43………レール
44………フランジ
45………車輪部
47………上車輪
49………下車輪
51………ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌条に沿って走行し、互いに所定の間隔をあけて設置される一対の走行台車と、
前記走行台車の両側方に設けられたアウトリガと、
一方の側の前記アウトリガに回転可能に設けられたアームと、
鉄道桁を吊下げる吊りフレームと、
前記走行台車上に設けられ、前記吊りフレームを載置可能な台座と、
前記アームに沿って移動可能であり、前記吊りフレームを昇降可能に保持する保持手段と、
を具備することを特徴とする鉄道桁移動設置装置。
【請求項2】
一方の側の前記アウトリガには前記アームの旋回装置が設けられ、
前記アームは前記旋回装置と接合され、
前記アームは前記旋回装置を中心に回転動作が可能であり、
前記アームの一方の端部から、前記アームと前記旋回装置との接合部までの距離が、前記走行台車の両側方に設けられた前記アウトリガの間隔の半分よりも大きく、かつ、前記走行台車の両側方に設けられた前記アウトリガの間隔よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の鉄道桁移動設置装置。
【請求項3】
前記保持手段が、前記アームに沿って移動するトロリと、前記トロリに設けられたチェーンブロックとからなることを特徴とする請求項1記載の鉄道桁移動設置装置。
【請求項4】
軌条に沿って走行し、互いに所定の間隔をあけて設置される一対の走行台車と、前記走行台車の両側方に設けられたアウトリガと、一方の側の前記アウトリガに回転可能に設けられたアームと、鉄道桁を吊下げる吊りフレームと、前記走行台車上に設けられ、前記吊りフレームを載置可能な台座と、前記アームに沿って移動可能であり、前記吊りフレームを昇降可能に保持する保持手段と、を具備することを特徴とする鉄道桁移動設置装置を用いた鉄道桁移動設置方法であって、
一対の前記走行台車の前記台座上に、鉄道桁を吊下げた前記吊りフレームを載せる工程(a)と、
前記鉄道桁移動設置装置を軌条に沿って移動させ、前記鉄道桁の設置予定地側方に停止させる工程(b)と、
前記アウトリガを伸長させて前記走行台車を固定し、前記アームを前記鉄道桁の方向へ前記軌条に略垂直になるように回転させる工程(c)と、
前記保持手段によって前記吊りフレームを吊り上げ、前記アームに沿って前記保持手段を前記鉄道桁の設置予定地上方へ移動させ、前記鉄道桁を吊り降ろし、前記鉄道桁を設置する工程(d)と、
前記保持手段を前記走行台車上方へ移動させ、前記吊りフレームの両端を、一対の前記走行台車の前記台座の上に降ろし、前記アームを前記軌条に略平行になるように回転させる工程(e)と、
を具備することを特徴とする鉄道桁移動設置方法。
【請求項5】
前記工程(a)は、
前記鉄道桁移動設置装置を軌条に沿って移動させ、鉄道桁の側方に停止させ、前記アウトリガを伸長させて前記走行台車を固定する工程(f)と、
前記アームを前記鉄道桁の方向へ前記軌条に略垂直になるように回転させる工程(g)と、
前記アームに沿って前記保持手段を前記鉄道桁の上方へ移動させ、前記吊りフレームと前記鉄道桁を接合する工程と(h)と、
前記保持手段により、前記鉄道桁を吊り上げ、前記保持手段を前記走行台車上方へ移動させる工程(i)と、
前記鉄道桁を吊下げた状態の前記吊りフレームの両端を、一対の前記走行台車の前記台座の上に降ろす工程(j)と、
前記アームを前記軌条に略平行になるように回転させる工程(k)と、
を具備することを特徴とする請求項4記載の鉄道桁移動設置方法。
【請求項6】
軌条に沿って走行し、互いに所定の間隔をあけて設置される一対の走行台車と、前記走行台車の両側方に設けられたアウトリガと、一方の側の前記アウトリガに回転可能に設けられたアームと、鉄道桁を吊下げる吊りフレームと、前記走行台車上に設けられ、前記吊りフレームを載置可能な台座と、前記アームに沿って移動可能であり、前記吊りフレームを昇降可能に保持する保持手段と、を具備することを特徴とする鉄道桁移動設置装置を用いた鉄道桁撤去方法であって、
前記鉄道桁移動設置装置を軌条に沿って移動させ、撤去予定の鉄道桁の側方に停止させ、前記アウトリガを伸長させて前記走行台車を固定する工程(l)と、
前記アームを前記鉄道桁の方向へ前記軌条に略垂直になるように回転させる工程(m)と、
前記アームに沿って前記保持手段を前記鉄道桁の上方へ移動させ、前記吊りフレームと前記鉄道桁を接合する工程と(n)と、
前記保持手段により、前記鉄道桁を吊下げた状態の前記吊りフレームを吊上げ、前記保持手段を前記走行台車上方へ移動させる工程(o)と、
前記鉄道桁を吊下げた状態の前記吊りフレームの両端を、一対の前記走行台車の前記台座の上に降ろす工程(p)と、
前記アームを前記軌条に略平行になるように回転させる工程(q)と、
一対の前記走行台車の前記台座上に、鉄道桁を吊下げた前記吊りフレームを載せた状態で、前記鉄道桁移動設置装置を軌条に沿って移動させる工程(r)と、
を具備することを特徴とする鉄道桁撤去方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−53557(P2010−53557A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217919(P2008−217919)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】