説明

鉄道用工事桁の接合構造及び鉄道用工事桁の接合方法

【課題】施工工数を少なくするとともに、確実に該鉄道用工事桁を施工できる鉄道用工事桁の接合構造及び鉄道用工事桁の接合方法を提供する。
【解決手段】鉄道用工事桁の接合構造1は、基台11の上に鉄道用工事桁41を接合する鉄道用工事桁の接合構造1であって、上面が受け面112とされた基台11と、受け面112に第一固定手段51により固定される板状部材21、31と、板状部材21、31に固定される鉄道用工事桁41とを備え、第一固定手段51は、板状部材に形成された第一孔部122と、第一孔部122の径に対して小径とされ第一孔部122に対して基台11から挿入される第一ボルト151と、第一ボルト151を締め付ける第一ナット153と、第一孔部122と第一ボルト151との間に充填され固化された接合材155とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用工事桁の接合構造及び鉄道用工事桁の接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道用のレールを設置する場合には、地中に打ち込んだ仮受杭の上に仮受桁を施工し、該仮受桁の上にH型鋼の主桁(以下、鉄道用工事桁と称する。)をボルト接合する方法が採られている(下記特許文献1参照)。そして、該鉄道用工事桁に架設するように横桁を及び並枕木を設け、該並枕木の上にレールを設けて、鉄道を構成している。
【0003】
ここで、主桁を仮受桁にボルト接合するには、ボルト孔を設けた取付プレートに該鉄道用工事桁を固定する。そして、予め上方に向けてアンカーボルトを突出させた仮受杭の上に、該該鉄道用工事桁を設置し、ボルト接合する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−214405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現場で、仮受杭のアンカーボルトとボルト孔との位置を合わせて、取付プレートに固定された該鉄道用工事桁を設置するのは困難であるという問題点があった。
また、施工精度が悪い場合には、アンカーボルトとボルト孔との位置が合わないため、現場で改めてボルト孔を施す手間が生じ、工数がかかるとう問題点があった。
【0006】
また、ボルト孔へのアンカーボルトの挿入を容易にするために、ボルト孔の径をアンカーボルトの径に対して大きく設けて施工する方法が採られる場合がある。しかし、この場合は、取付プレートと一体となった鉄道用工事桁が、該鉄道用工事桁に直交する方向に、ボルト孔の径とアンカーボルトの径の差分移動する可能性がある。よって、これを防止するために、現場で移動規制部材を取付プレートの端部にボルト接合する必要があった。したがって、結果として、移動規制部材を接合する工数が必要となり、依然として工数がかかるという問題点があった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、施工工数を少なくするとともに、確実に該鉄道用工事桁を施工できる鉄道用工事桁の接合構造及び鉄道用工事桁の接合方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る鉄道用工事桁の接合構造は、上面が受け面とされた基台と、
前記受け面に第一固定手段により固定される板状部材と、該板状部材に固定される鉄道用工事桁とを備え、前記第一固定手段は、前記板状部材に形成された第一孔部と、該第一孔部の径に対して小径とされ該第一孔部に対して前記基台から挿入される第一ボルトと、該第一ボルトを締め付ける第一ナットと、前記第一孔部と前記第一ボルトとの間に充填され固化された接合材とを有することを特徴とする。
【0009】
このような鉄道用工事桁の接合構造では、鉄道用工事桁は、板状部材を介して基台にボルト結合及び接合材という簡易な施工により接合されるため、施工工数を少なくすることができる。
また、第一ボルトは、該径が第一ボルト孔部の径に対して小径であるため、容易に第一ボルト孔部に挿入される。よって、鉄道用工事桁を基台に対して位置を合わせることが容易であるため、施工工数を少なくすることができる。さらに、第一ボルト孔部と第一ボルトの間には接合材が充填されるため、確実に鉄道用工事桁を施工することができる。
【0010】
また、本発明に係る鉄道用工事桁の接合構造は、前記板状部材は、前記受け面に前記第一固定手段により固定される第一板状部材と、該第一板状部材と第二固定手段により固定される第二板状部材とを備え、前記第二固定手段は、前記第一板状部材と前記第二板状部材とをボルト結合するとともに、前記第二板状部材が前記第一板状部材に対して桁方向に移動することを可能とする桁向き移動許容手段を有することを特徴とする。
【0011】
このような鉄道用工事桁の接合構造では、第一板状部材を介して鉄道用工事桁を基台に確実に施工することができる。
また、第二板状部材の桁向き移動許容手段により、施工後の鉄道用工事桁の桁方向のずれを吸収することができる。
【0012】
また、本発明に係る鉄道用工事桁の接合構造は、前記桁向き移動許容手段は、前記第二板状部材に設けられた前記桁方向に長孔である第二孔部と、前記第一板状部材から挿入されるとともに前記第二孔部の前記桁方向の長さより小さい径を有する第二ボルトと、該第二ボルトを締付ける第二ナットとを備えることを特徴とする。
【0013】
このような鉄道用工事桁の接合構造では、第二孔部と桁方向の径と第二ボルトの径との差分が、鉄道用工事桁の桁方向の移動の許容範囲となるため、確実に鉄道用工事桁の桁方向のずれを吸収することができる。
【0014】
また、本発明に係る鉄道用工事桁の接合構造は、前記接合材は、速硬性高強度グラウト材であることを特徴とする。
【0015】
このような鉄道用工事桁の接合構造では、鉄道用工事桁を基台に対して、短時間で高強度に接合することができる。
【0016】
また、本発明に係る鉄道用工事桁の接合構造は、前記板状部材は、前記鉄道用工事桁が延在する方向に向かうにしたがって下方に向かうテーパーが形成されていることを特徴とする。
【0017】
このような鉄道用工事桁の接合構造では、施工後、鉄道用工事桁が桁方向中央部に向かって撓む場合に、板状部材は撓みに対応することができる。
【0018】
また、本発明に係る鉄道用工事桁の接合方法は、前記受け面から突出するように前記第一ボルトを取り付ける第一ボルト取付工程と、前記板状部材に固定された前記鉄道用工事桁を前記受け面に設置し、前記第一孔部と前記第一ボルトとの間に接合材を充填する接合材充填工程と、前記第一ボルトを前記第一ナットで締付ける第一ボルト締付工程とを備えることを特徴とする。
【0019】
このような鉄道用工事桁の接合方法では、鉄道用工事桁は板状部材と一体となっているので、施工工数を少なく、鉄道用工事桁を接合することができる。また、板状部材に第一ボルトが取り付けた後に、第一孔部と第一ボルトとの間に接合材を充填固化することにより、第一ボルトを板状部材に対して固定することができる。さらに、第一ナットで締付けることにより、鉄道用工事桁を確実に接合することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る鉄道用工事桁の接合構造及び鉄道用工事桁の接合方法によれば、施工工数を少なくするとともに、確実に該鉄道用工事桁を施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一実施形態に係る鉄道用工事桁の接合構造を用いた線路の斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る鉄道用工事桁の接合構造を示す要部を分解して見た斜視図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る鉄道用工事桁の接合構造を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第一実施形態の変形例に係る鉄道用工事桁の接合構造を示す要部を分解して見た斜視図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係る鉄道用工事桁の接合方法のフローチャートである。
【図6】本発明の第一実施形態に係る鉄道用工事桁の接合方法を示す要部を分解して見た斜視図である。
【図7】本発明の第一実施形態に係る鉄道用工事桁の接合構造に係る第一孔部及び第二孔部を示す水平断面図である。
【図8】本発明の第一実施形態に係る鉄道用工事桁の接合構造に係る第一ボルト及び第二ボルトを示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態に係る鉄道用工事桁の接合構造について、図面を参照して説明する。
まず、鉄道2について、図1を用いて説明する。
図1に示すように、鉄道2は、基台11と、該基台11が延在する方向と直交する方向に互いに平行に設けられた一対の鉄道用工事桁41と、該の鉄道用工事桁41の内部にフランジ141と平行して設けられた棚板142と、該棚板142の間に所定の間隔を有して複数架設された上向きコの字状に開口する横桁3と、該開口部分に配設された枕木4と、該枕木4の上に鉄道用工事桁41と平行に設けられた一対のレール5とを備える。
ここで、基台11と鉄道用工事桁41とは、該鉄道用工事桁41の端部において、本実施形態に係る鉄道用工事桁41の接合構造1により接合されている。
次に、鉄道用工事桁41の接合構造1について、詳細に説明する。
ここで、基台11が延在する方向である図1の左右方向は枕木4が延在する方向と一致し「枕木方向X」と称し、鉄道用工事桁41が延在する方向である図1の右上から左下に向かう方向はレール5が延在する方向と一致し「レール方向Y」と称する。
【0023】
図2に示すように、鉄道用工事桁41の接合構造1は、上面が受け面112とされた基台11と、該受け面112に第一固定手段51により固定される第一板状部材21と、第一板状部材21に第二固定手段61により固定される第二板状部材31と、該第二板状部材31に固定される鉄道用工事桁41とを備える。
【0024】
基台11は、断面がH形状のH形鋼であり、図示しない地中に打ち込んだ仮受杭の上に設けられている。また、基台11には、レール方向Yに間隔を有して上下方向に貫通した2個のボルト孔である基台孔部111が、枕木方向Xに離間して2箇所の合計4個設けられている。該基台孔部111には詳細については後述する第一固定手段51の第一ボルト151が挿入されている。また、基台11は上面が平面状であり、後述する第一板状部材21の受け台として機能する。
【0025】
第一板状部材21は、該第一板状部材21のレール方向Yの長さを基台11のレール方向Yの長さと略同一として形成されている。また、第一板状部材21の上面におけるレール方向Y端部のうち、鉄道用工事桁41の中央部に向かう側には、中央部に向かうにしたがって下方に向かうようにテーパー121が形成されている。また、第一板状部材21には、詳細については後述する第一固定手段51の第一孔部122と、第二固定手段61の第二ボルト用ザグリ孔部123が形成されている。
【0026】
第一固定手段51は、第一板状部材21に形成された第一孔部122と、該第一孔部122の径に対して小径とされ該第一孔部122に挿入される第一ボルト151と、該第一ボルト151を締付ける第一ナット153と、該第一孔部122と第一ボルト151との間に充填され固化された接合材155とを備える。
【0027】
第一孔部122は、第一板状部材21の枕木方向X両端部に、レール方向Yに間隔を有してそれぞれ2箇所ずつ形成された上下方向の貫通孔である。また、該第一孔部122の径は、第一ボルト151の径に対して大径で形成され、本実施形態では略二倍で形成されている。
【0028】
第一ボルト151は、基台11の受け面112の下方から、第一孔部122に挿入配置されている。また、第一ボルト151の頭部である第一ボルト頭152は受け面112の下面と図3に示す隅肉溶接等の溶接156で固定される場合がある。
【0029】
第一ナット153は、六角ナットであり上下方向に二重に設けられたダブルナットとして設けられ、第一板状部材21の上面に設置された第一座金154を介して、第一ボルト151に螺合されている。まだ、第一座金154は、第一ボルト151の径に対して大きく形成され、本実施形態では略三倍以上で形成されている。
【0030】
図3に示すように、接合材155は、本実施形態では、速硬性及び高強度を有する速硬性高強度グラウト材であり、第一孔部122と第一ボルト151の間に充填されている。また、時間経過にともない固化する。
ここで、接合材155としては、太平洋プレユーロックススーパーTYPE―10が挙げられる。該製品の特徴としては、超速硬性であり短時間で高強度を発揮するとともに、長期的にも安定した強度を発揮する。また、無収縮性を有しており、固化後に空隙が生じることはない。
【0031】
第二板状部材31は、該第二板状部材31のレール方向Yの長さを基台11のレール方向Yの長さと略同一として形成されている。また、第二板状部材31には、詳細については後述する第二固定手段61の第二孔部131と、鉄道用工事桁41取り付け用の桁用ザグリ孔部132が形成されている。
【0032】
第二固定手段61は、第一板状部材21と第二板状部材31とを固定するとともに、第二板状部材31が第一板状部材21に対してレール方向Yに移動することを可能とする桁向き移動許容手段71を有する。
【0033】
桁向き移動許容手段71は、第二板状部材31に形成されたレール方向Yに長い長孔の第二孔部131と、該第二孔部131に挿入され第二孔部131のレール方向Yの長さよりも小さい径の第二ボルト161と、該第二ボルト161を締付ける第二ナット163とを備える。
【0034】
第二孔部131は、第二板状部材31の枕木方向X両端部に、レール方向Yに間隔を有してそれぞれ2箇所ずつ形成された上下方向の貫通孔である。また、該第二孔部131のレール方向Yの長さは、第二ボルト161の径よりも大きく形成されている。
【0035】
第二ボルト161は、第一板状部材21の第二ボルト用ザグリ孔部123から、第二孔部131に挿入配置されている。
【0036】
第二ナット163は、六角ナットであり上下方向に二重に設けられたダブルナットとして設けられ、第二板状部材31の上面に設置された第二座金164を介して、第二ボルト161に螺合されている。
【0037】
鉄道用工事桁41は、断面がH形状のH形鋼であり、レール方向Yに延在し、端部は第二板状部材31の上に設置されている。また、鉄道用工事桁41の下側のフランジ141Aには、桁用ザグリ孔部132に対応する位置に上下方向の貫通孔である第三孔部143が設けられ、桁用ザグリ孔部132に挿入された第三ボルト144、第三座金146及び第三ナット145により第二板状部材31とボルト接合されている。
【0038】
(第一実施形態の変形例)
なお、図4に示すように、第一実施形態に係る鉄道用工事桁41の接合構造1Xとして、基台11Xをコンクリートで構成されるものとしとし、第一ボルトを該基台11Xに予め埋め込まれたアンカーボルト151Xとしてもよい。
【0039】
次に、鉄道用工事桁41の接合構造1を採用した接合方法について説明する。
図5に示すように、鉄道用工事桁41の接合方法は、第二板状部材固定工程S01と、第一板状部材固定工程S02と、鉄道部材取付工程S03と、第一ボルト取付工程S04と、接合材充填工程S05と、第一ボルト締付工程S06とを備える。
【0040】
まず、図2に示すように、第二板状部材固定工程S01においては、第二板状部材31と鉄道用工事桁41とを固定する。
すなわち、第二板状部材31の桁用ザグリ孔部132と鉄道用工事桁41の第三孔部143とを連通させるように、第二板状部材31の上に鉄道用工事桁41を設置する。そして、桁用ザグリ孔部132の下方から第三ボルト144を挿入し、第三孔部143の上方から第三座金146を介して第三ナット145で締付けて、鉄道用工事桁41と第二板状部材31とを固定する。
【0041】
次に、第一板状部材固定工程S02においては、第一板状部材21と第二板状部材31とを第二固定手段61により固定する。
すなわち、テーパー121を鉄道用工事桁41の中央部側に向けて配設するとともに、第一板状部材21の第二ボルト用ザグリ孔部123と第二板状部材31の第二孔部131とを連通させるように、第一板状部材21の上に鉄道用工事桁41に固定された第二板状部材31を設置する。そして、第二ボルト用ザグリ孔部123の下方から第二ボルト161を挿入し、第二孔部131の上方から第二座金164を介して第二ナット163で締付けて、鉄道用工事桁41及び第二板状部材31と第一板状部材21とを固定する。
ここで、図7及び図8に示すように、第二孔部131のレール方向Yの長さは、第二ボルト161の径よりも大きく形成されているため、第二板状部材31と一体となった鉄道用工事桁41は第一板状部材21に対してレール方向Yに移動することができる。
【0042】
次に、図6に示すように、鉄道部材取付工程S03においては、棚板142、横桁3及び枕木4を鉄道用工事桁41に取り付ける。
すなわち、棚板142を、鉄道用工事桁41のウェブ147に対して溶接又はボルト等により固定する。また、横桁3を、棚板142に対して溶接又はボルト等により固定する。また、枕木4を、横桁3に対して上向きコの字状の開口している部分に挿入するとともに、上下方向からボルト等により固定する。
【0043】
次に、図2に示すように、第一ボルト取付工程S04においては、基台11の受け面112から第一ボルト151を突出させる。
すなわち、基台の基台孔部111の下方から第一ボルト151を挿入する。
【0044】
次に、接合材充填工程S05においては、基台11の上に鉄道用工事桁41と一体となった第一板状部材21を設置し、第一孔部122と第一ボルト151との間に接合材155を充填する。
すなわち、基台11の基台孔部111と第一板状部材21の第一孔部122とを連通させるように、基台11の上に鉄道用工事桁41と一体となった第一板状部材21を設置して、第一ボルト151を第一孔部122に挿入する。ここで、図7及び図8に示すように、第一孔部122の径は、第一ボルト151の径に対して大径で形成されているため、第一孔部122と第一ボルト151との間には間隙124が生じている。ここで、該間隙124に、接合材155を充填する。充填された接合材155は、時間経過にともない固化する。
【0045】
次に、第一ボルト締付工程S06においては、第一ボルト151を第一ナット153で締付ける。
すなわち、第一孔部122の上方から第一座金154を介して第一ナット153で締付けて、鉄道用工事桁41及び第二板状部材31と一体となった第一板状部材21と基台11とを固定する。
【0046】
次に、鉄道用工事桁41の接合構造1Xを採用した接合方法では、第一ボルト取付工程S04として、アンカーボルト151Xを基台11Xの受け面112Xから突出するように予め埋め込む。そして、第一板状部材21の第一孔部122に該アンカーボルト151Xを挿入させるようにして、基台11Xの上に第一板状部材21を設置し、第一板状部材21と基台11とを固定する。
【0047】
このように構成された鉄道用工事桁41の接合構造1及び接合方法では、予め鉄道用工事桁41の下部に第一板状部材21及び第二板状部材31を固定することができる。また、第一板状部材21の第一孔部122の径は第一ボルト151の径に対して大径であるため、第一孔部122と第一ボルト151との位置を容易に合わせることができる。よって、現場で第一孔部122と第一ボルト151との位置が合わず孔を開け直す虞がないため、少ない施工工数で、基台11の上に鉄道用工事桁41を接合することができる。
また、第一孔部122と第一ボルト151との間に生じた間隙124には、接合材155が充填され、時間経過とともに固化するため、確実に基台11の上に鉄道用工事桁41を接合することができる。
さらに、接合材155として速硬性高強度グラウト材を使用すれば、短時間で高強度を発揮することができるため、施工時間の短縮が可能となる。例えば、15分から30分程度で所定の強度を発揮することができる。
【0048】
また、第二孔部131のレール方向Yの長さは、第二ボルト161の径に対して大きく形成されているため、第二板状部材31と一体となった鉄道用工事桁41が、第一板状部材21と一体となった基台11に対してレール方向Yに移動することが可能となる。したがって、鉄道用工事桁41の温度変化によるレール方向Yの伸縮やレール方向Yの撓み等を吸収することができ、鉄道用工事桁41の異常変形を防止することができる。
【0049】
また、第一板状部材21には、鉄道用工事桁41の中央部に向かう側にはテーパー121が設けられているため、鉄道用工事桁41のレール方向Yの撓み等に対応することができる。
なお、本実施形態では、テーパー121は、第一板状部材21のレール方向Yの端部のうち一方側にのみ形成されているが、一方側にのみ限られるものではない。例えば、鉄道用工事桁41が連続して複数配設される場合には、連続する箇所の第一板状部材21のレール方向Yの端部の両側に設けることにより、第一板状部材21を挟んで鉄道用工事桁41のレール方向Y両側に生じる撓みと上手く対応することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、基台11と鉄道用工事桁41とは、該鉄道用工事桁41の端部において接合構造1,1Xで接合されているが、端部にのみ適用されるものではない。例えば、鉄道用工事桁41が連続して複数配設される場合には、接合構造1,1Xを該連続する箇所に設けることができる。また、鉄道用工事桁41が基台11に対してレール方向Yに張り出して設けられる場合には、接合構造1,1Xを鉄道用工事桁41の途中部分に設けることができる。
【0051】
なお、第一板状部材21の枕木方向Xの一端又は両端に、例えば板状の部材からなる規制部材を固定しても良い(不図示)。これにより、第一板状部材21と一体となった鉄道用工事桁41が鉄道車両の振動等による枕木方向Xの移動を規制することができる。
さらに、鉄道用工事桁41のレール方向Yの一方側にも、規制部材を固定してもよい(不図示)。これにより、鉄道用工事桁41が鉄道車両の振動等によるレール方向Yの大きく移動するのを規制することができる。
【0052】
なお、第一板状部材21と第二板状部材31とを一体とした板状部材としてもよい(不図示)。
この場合は、該板状部材に第一孔部122及び第二孔部131を設ける構成とする。
または、該板状部材に第一孔部122を設け、鉄道用工事桁41の下側のフランジ141Aに第二孔部131を設ける構成としても良い。この構成では、鉄道用工事桁41自体が桁向き移動許容手段71を有するため、基台11に対してレール方向Yに移動することが可能となる。
【0053】
なお、本実施形態の実施例としては、桁式ホームの基礎部の接合箇所や、橋脚と沓部の接合箇所等にも適用できる。
【0054】
なお、冬期など気温が低い場合には、鉄道用工事桁41、第一板状部材21、第二板状部材31、基台11又は接合材155を加温することにより、接合材155の速硬性の低下を防止することができる。
また、接合材155に、短繊維を混入することにより、接合強度を一層強化することが可能となる。
【0055】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
1、1X…鉄道用工事桁41の接合構造
11、11X…基台
21…第一板状部材(板状部材)
31…第二板状部材(板状部材)
41…鉄道用工事桁
51…第一固定手段
61…第二固定手段
71…桁向き移動許容手段
111…受け面
121…テーパー
122…第一孔部
131…第二孔部
151、151X…第一ボルト
153…第一ナット
155…接合材
161…第二ボルト
163…第二ナット
S03…第一ボルト取付工程
S04…接合材充填工程
S05…第一ボルト締付工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台の上に鉄道用工事桁を接合する鉄道用工事桁の接合構造であって、
上面が受け面とされた基台と、
前記受け面に第一固定手段により固定される板状部材と、
該板状部材に固定される鉄道用工事桁とを備え、
前記第一固定手段は、前記板状部材に形成された第一孔部と、該第一孔部の径に対して小径とされ該第一孔部に対して前記基台から挿入される第一ボルトと、該第一ボルトを締め付ける第一ナットと、前記第一孔部と前記第一ボルトとの間に充填され固化された接合材とを有することを特徴とする鉄道用工事桁の接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道用工事桁の接合構造において、
前記板状部材は、前記受け面に前記第一固定手段により固定される第一板状部材と、該第一板状部材と第二固定手段により固定される第二板状部材とを備え、
前記第二固定手段は、前記第一板状部材と前記第二板状部材とをボルト結合するとともに、前記第二板状部材が前記第一板状部材に対して桁方向に移動することを可能とする桁向き移動許容手段を有することを特徴とする鉄道用工事桁の接合構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鉄道用工事桁の接合構造において、
前記桁向き移動許容手段は、前記第二板状部材に設けられた前記桁方向に長孔である第二孔部と、前記第一板状部材から挿入されるとともに前記第二孔部の前記桁方向の長さより小さい径を有する第二ボルトと、該第二ボルトを締付ける第二ナットとを備えることを特徴とする鉄道用工事桁の接合構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の鉄道用工事桁の接合構造において、
前記接合材は、速硬性高強度グラウト材であることを特徴とする鉄道用工事桁の接合構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の鉄道用工事桁の接合構造において、
前記板状部材は、前記鉄道用工事桁が延在する方向に向かうにしたがって下方に向かうテーパーが形成されていることを特徴とする鉄道用工事桁の接合構造。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の鉄道用工事桁の接合構造により前記基台と前記鉄道用工事桁を接合する鉄道用工事桁の接合方法であって、
前記受け面から突出するように前記第一ボルトを取り付ける第一ボルト取付工程と、
前記板状部材に固定された前記鉄道用工事桁を前記受け面に設置し、前記第一孔部と前記第一ボルトとの間に接合材を充填する接合材充填工程と、
前記第一ボルトを前記第一ナットで締付ける第一ボルト締付工程とを備えることを特徴とする鉄道用工事桁の接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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