説明

鉄道車両の消火システム

【課題】従来技術の問題を低減させるか、少なくともかなり改善すべく、消火剤供給容器(またはポンプ)を消火剤分配装置に連結するパイプを、加圧ガスまたは空気で充填することにある。
【解決手段】本発明は、消火剤供給容器と、パイプのシステムと、消火剤分配手段と、圧力発生手段とを備えた消火システムを有する鉄道車両に関する。消火システムの信頼性を向上させるため、圧力発生手段を、鉄道車両に属する圧縮空気供給源に連結すること、休止圧力は、圧力発生手段の補助によりパイプのシステム内で発生できるようにすること、およびパイプのシステム内の圧力降下により火災を検出できるようにすることを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両およびその消火システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会では、乗客輸送の分野での公共事業を遂行するのに、鉄道車両の使用が増大している。関連する客車には、特に厳格な防火条件を設けなくてはならないことはもちろんである。これまで、このことは、列車に使用される材料および機器には厳格な条件が反映されてきた。新しいプロジェクトが遂行されるとき、列車の設計、列車の構造および選択される材料および機器に関する対応標準規格および他の条件は、列車の製造業者および作業者にかなりの制限を与える。旧式の鉄道車両に属する車両を、条件を満たす状態にする場合には、当局により課される条件に適合することは困難であるか、全く不可能である。
【0003】
これから数年以内でも、鉄道システムは、全体的または部分的に地下に敷設される傾向が増大するであろう。トンネル内の防火には特別な問題があるので、鉄道車両が満たすべき条件は確実に増大し続けている。
【0004】
これ以外に、鉄道車両自体は、火災時に、車両の設計および選択される材料および機器により影響を受ける挙動をするというのが事実である。他方では、乗客が持込む衣類および手荷物等の火災負荷(fire load)が影響を受けるということはない。放火犯による材料の放火に注意を払っても、これを防止することは殆ど不可能である。
【0005】
これまで鉄道車両に設けられておりかつ例外的な場合にのみ乗客が使用するスペースのための消火システムは、大部分が「オープンシステム」形式または「ウェットシステム」形式である。
【0006】
オープンシステムの場合には、更に、火災を検出しかつ次に影響を受ける領域の消火システムに付勢信号を付与する火災検出/アラームシステムを設置する必要がある。影響を受ける領域を制御する弁に関するシステムコストを低減させるため、消化剤を分配する特定装置は個々に付勢されるのではなく、群として付勢される。この結果、使用される消火剤の量は、個々の選択的付勢の場合におけるよりも多くなる。このことは、消火剤の供給量従って搬送すべき消火剤の重量が増大することを意味する。
【0007】
ウェットシステムの場合には、消火剤分配装置は、個々の装置のサーマルトリガ要素により付勢される。これは、個々の付勢を行うものである。しかしながら、この場合には、消火剤分配装置までの全パイプネットワークを、予め消火剤で充填しておかなくてはならない。これにはその問題がない訳ではない。なぜならば、或る状況では、鉄道車両ではよくある振動によりパイピングネットワークが切断されることによる消火剤の漏洩を引起こし、この結果、量は非常に少ないとはいえ、無視できないダメージが生じる虞れがある。
【0008】
防火を向上させる上記手段は、いわゆる受動的手段である。前述のように、上記手段は、製造業者および作業者にかなりの制限を課すものである。受動的防火手段では全く遂行できない重大な課題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は、上記問題を低減させるか、少なくともかなり改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に説明するスキームは、消火剤供給容器(またはポンプ)を消火剤分配装置に連結するパイプを加圧ガスまたは空気で充填することにある。
【0011】
本発明の一態様は、請求項1に記載の鉄道車両であり、他の態様は請求項12に記載の消火装置である。
【0012】
温度で作動された結果として消火剤分配装置の1つが開くと、パイプのシステム内の圧力が降下し、かつ消火剤からパイプを遮断する機構が、適当な装置を介して開かれる。この後、パイプのネットワークが消火剤で充填され、次に、消火剤が、これ以前に付勢されている消火剤分配装置(単一または複数)から放出される。
【0013】
しかしながら、ガス/空気が、消火剤分配装置を付勢した結果としてではなく、(かなり小さい)漏洩により放出された場合には、パイプのネットワークが消火剤で充填されておらず、パイプのネットワーク内の圧力が再び通常の試験圧力に到達するまで、更にガス/空気が供給される。
【0014】
「スタンバイモード」にあるときにパイプシステムが空気で充填されており、かつこの空気が車両の圧縮空気システムから得られたものであれば特に有利である。この場合には、圧力容器の付加を省略できる。
【0015】
システムの特別な他の実施形態は、消火剤容器からパイプのネットワークに消火剤を送出するのに、車両からの圧縮空気も使用できるものである。
【0016】
システムの他の実施形態は、(簡単な)火災アラームを付加したものである。火災アラームからの火災信号が得られた場合、および同時に大きい圧力降下があった場合にのみ、パイプのネットワークに消火剤が充填される。「圧力降下」信号が発生されただけの場合には、これは、漏洩についてのアラームメッセージとして機能する。漏洩についてパイプのネットワークを連続的にモニタして、緊急時の作動能力を確保しておくのが重要である。これにより、パイプのネットワークが充填されないようにしておき、スタンバイモードにおいていかなるガス/空気も使用しないでおくオプションが省略される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、消火システムを備えた鉄道車両2を示すものである。ワゴン4には圧縮空気供給源6が設けられている。圧縮空気供給源6は、ワゴン4および機関車の両方に設けることができる。鉄道車両2の空気圧作動形機能設備は、圧縮空気供給源6により駆動される。これらの設備として、例えばブレーキがある。圧縮空気供給源6とともに、ワゴン4には、圧力発生手段8、および消火剤供給容器10が設けられている。消火の目的で、消火剤供給容器10にはパイプ12のシステムが連結されている。パイプ12のシステムには、ノズル14a、14bが配置されている。上記装置は次のように作動する。
【0018】
休止状態では、圧縮空気が、圧縮空気供給源6からパイプ7を介して圧力発生手段8に供給される。圧縮空気供給源6から取出される圧縮空気の補助により、パイプ12のシステム内には休止圧力が発生される。この目的のため、パイプ12のシステムと圧力発生手段8との間には連結部11が設けられている。休止圧力は、数バールにすることができる。パイプ12のシステムの漏洩により、ミリバール範囲内の僅かな圧力降下が生じ、この圧力降下は緩慢、すなわち長時間に亘って行われる。休止圧力は、圧縮空気供給源6から取出される圧縮空気により補正される。この手段により達成されることは、一定の休止圧力がパイプ12のシステムを支配することである。
【0019】
火災の場合、火災は、霧ノズル14内のバースト作動形ピストンにより検出される。検出は、パイプ12のシステム内の温度上昇および圧縮空気の増大により、バースト作動形ピストンの破片が飛散するという事実の結果として行われる。他の検出手段も可能である。圧縮空気は火災の検出に使用され、これは、火災の場合に特に、温度上昇の結果として、パイプ12のシステムが開かれかつ圧縮空気が逃散できることを意味する。これとともに、火災を手動で知らせることができる別の火災アラーム(図示せず)を設けることができる。
【0020】
ここで、火災の場合、すなわちパイプ12のシステム内に少なくとも圧力降下があるとき(但し、好ましくは、パイプ12のシステム内の圧力降下および火災アラームによりなされた火災の報告の両方があるとき)に、圧力発生手段8からの圧縮空気を、連結部9を介して消火剤供給容器10に送出することを提案する。圧縮空気は、消火液を、消火剤供給容器10からパイプ12のシステム内に流出させ、この直後に霧ノズル14に供給する。圧力発生手段8は、例えば80〜200バールの高圧を発生するのが好ましい。この手段により、霧ノズル14で消火剤の霧が作られる。
【0021】
火災が検出されると(検出は、パイプ12のシステム内の圧力降下の結果として、連結部11を介して圧力発生手段8内で行われる)、消火剤供給容器10内で高圧が発生される。これにより、最初は閉じられている連結部を、消火剤供給容器10とパイプ12のシステムとの間で開くことができる。この連結部は、例えば、上昇圧力により破裂されるバーストディスクにより閉じることができ、また弁によっても閉じることができる。火災の場合には、パイプ12のシステムへの連結部11は圧力発生手段8内で遮断され、空気圧は、連結部9を介して消火剤供給容器10内に取入れられる。
【0022】
パイプ12のシステム内に高圧を発生させるのに、空気はもちろん、他の任意のガスを使用することもできる。
【0023】
本発明による圧縮空気供給源6と圧力発生手段8との間の連結の結果として、ワゴン4内の既存のポンプを更に使用することができる。鉄道車両用の消火システムを設置するコストおよび努力が低減される。資本投資コストは低く維持されかつメインテナンスのコストおよび努力も最小にできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】消火システムを備えた鉄道車両を示す図面である。
【符号の説明】
【0025】
2 鉄道車両
4 ワゴン
6 圧縮空気供給源
7 パイプ
8 圧力発生手段
9 連結部
10 消火剤供給容器
11 連結部
12 パイプ
14a、14b ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤供給容器と、
パイプのシステムと、
消火剤分配手段と、
圧力発生手段とを備えた消火システムを有する鉄道車両において、
圧力発生手段は鉄道車両に属する圧縮空気供給源に連結され、
休止圧力は、圧力発生手段の補助によりパイプのシステム内に発生され、
パイプのシステム内の圧力降下により火災を検出できることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
火災の場合には、消火剤分配手段の圧力が降下することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
【請求項3】
火災の場合の圧力降下は、パイプのシステム内の漏洩による圧力降下より大きいことを特徴とする請求項1または2記載の鉄道車両。
【請求項4】
火災は、消火剤分配手段内のバースト作動形ピストンにより検出されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の鉄道車両。
【請求項5】
火災は、火災アラームにより検出されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の鉄道車両。
【請求項6】
圧力降下の場合には、消火剤供給容器とパイプのシステムとの間の流体連結が確立されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の鉄道車両。
【請求項7】
バーストディスクまたは弁が流体連結を確立することを特徴とする請求項6記載の鉄道車両。
【請求項8】
火災の場合には、鉄道車両に属する圧縮空気供給源が、空気圧により消火液を放出することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の鉄道車両。
【請求項9】
火災の場合には、80〜200バールの高圧で消火剤を分配する手段から消火液が分配されることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の鉄道車両。
【請求項10】
火災の場合には、消火剤分配手段が消火剤の霧を作ることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の鉄道車両。
【請求項11】
消火剤分配手段が少なくとも1つの霧ノズルを有していることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の鉄道車両。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項記載の鉄道車両に使用することを特徴とする消火システム。


【図1】
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【公表番号】特表2009−504360(P2009−504360A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527458(P2008−527458)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065516
【国際公開番号】WO2007/023150
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508056394)フォグテック ブランドシューツ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー カー・ゲー (3)
【氏名又は名称原語表記】FOGTEC Brandschutz GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Schanzenstr. 19A 51063 Koln Germany
【Fターム(参考)】