説明

鉄鋼の製造プロセスの操業方法及びそれに用いられる操業装置

【課題】注湯温度のバラツキを考慮しつつ、当該注湯温度を好ましいとされる温度範囲内とできる鉄鋼の製造プロセスの操業方法を提供する。
【解決手段】取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅ΔTdを予測する。前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅ΔTdu及び低温側最大バラツキ幅ΔTddを予測する。前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度Th1が下記式(1)及び(2)を同時に満足するように溶鋼処理設備を操業する。
Th1≦Tcmax+ΔTd(t)−ΔTdu(t)・・・(1)
Th1≧Tcmin+ΔTd(t)+ΔTdd(t)・・・(2)
ただし、Tcmaxは溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値であり、Tcminは前記注湯温度範囲の下限値である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼処理後の溶鋼を取鍋で搬送し、その溶鋼を直接的に又はタンディッシュを介して鋳型へ注湯し、冷却することで鋳片を鋳造する鉄鋼の製鋼プロセスに係り、具体的には、鉄鋼の製造プロセスの操業方法及びそれに用いられる操業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼の製造プロセスは、一般的に、以下のような方法で操業されている。
【0003】
即ち、溶鋼処理設備に設けられている適宜の溶鋼処理装置(例えばRH型真空脱ガス装置など)により溶鋼処理された溶鋼は、適宜の取鍋搬送手段(例えばクレーンや取鍋台車(専用の鉄道))により取鍋ごとに連続鋳造設備へ順次搬送される。
【0004】
そして、前記連続鋳造設備へ搬送されてきた溶鋼は、当該連続鋳造設備に設けられている連続鋳造機(以下、単に連鋳機とも称する。)が備えるタンディッシュを介して鋳型に注湯される。なお、当該連鋳機がタンディッシュを備えていない場合は、前記溶鋼は鋳型へ直接的に注湯される。以下、特記ない限り、溶鋼はタンディッシュを介して鋳型に注湯されるものとして説明する。
【0005】
そして、前記鋳型へ注湯された溶鋼は、適宜の冷却手段(鋳型を含む。)により冷却されながら引き抜かれることで、所謂スラブやブルーム、ビレットなどの鋳片が連続的に鋳造されるようになっている。
【0006】
上記連続鋳造においては、下記に示す第1〜第3の鋳造条件が重要とされている。
【0007】
第1の鋳造条件は、前記取鍋内の溶鋼の、鋳型へ注湯される際の温度(以下、単に注湯温度とも称する。)を所定の温度に維持することである。
第2は、前記注湯温度が、溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲(以下、単に注湯温度範囲)の上限値を上回らないことである。
第3は、前記注湯温度が、前記注湯温度範囲の下限値を下回らないことである。
なお、前記注湯温度範囲は例えば1550〜1570[℃]とされており、極めて狭小なものとなっている。
【0008】
上記の第2及び第3の鋳造条件が重要とされている理由を以下に説明する。
【0009】
(第2の鋳造条件)
仮に、前記注湯温度が前記注湯温度範囲の上限値を上回ってしまったとする。
この場合、凝固殻(以下、単にシェルとも称する。)が、所定の厚みとなるまで成長する前に鋳型から引き抜かれてしまう恐れがある。これは、例えば鋳片の表面品質の劣化や所謂ブレークアウトなどの種々の不具合の原因となる。なお、ブレークアウトとは、連鋳機が備える鋳片搬送用のロールによる押し付け力などによりシェルが局所的に破け、シェル内の、未だ凝固していない溶鋼が当該シェルの外部へ漏洩してしまう不具合のことである。
上記の事情により、前記注湯温度に対して適宜の上限値が設けられており、当該注湯温度を当該上限値以下とすることが重要とされているのである。
【0010】
(第3の鋳造条件)
一方、仮に、前記注湯温度が前記注湯温度範囲の下限値を下回ってしまったとする。
この場合、連鋳機の備えるタンディッシュ内で、又は、当該タンディッシュから鋳型へ溶鋼をスムーズに注湯する注湯案内手段としての浸漬ノズル内で、溶鋼が凝固し、その凝固物が当該浸漬ノズルに詰まってしまうなどの種々の不具合の原因となる。
上記の事情により、前記注湯温度に対して適宜の下限値が設けられており、当該注湯温度を当該下限値以上とすることが重要とされているのである。
【0011】
そして、上記第1〜第3の鋳造条件を満足するために、従来、下記のような方法で溶鋼処理が行われていた。
即ち、取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅を予測し、前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度(以下、単に処理終了温度とも称する。)が、予測された前記温度降下幅(以下、単に予測温度降下幅とも称する。)に上記第1の鋳造条件に係る所定の温度を加えた温度となるように溶鋼処理が行われていた。
【0012】
前記の温度降下幅は、例えば統計処理・温度計算・ニューロモデルなど種々の方法により、又は、溶鋼処理操業者の勘により予測されるものであって、その際は、下記に示すような極めて多数の要因が考慮される。
・取鍋の及びタンディッシュの耐火物の温度変化、使用に伴い溶損する当該耐火物の形状の変化、及び、当該耐火物の物性値など。
・取鍋の搬送スケジュールや取鍋の及びタンディッシュの処理スケジュールであって、例えば当該取鍋の空状態の時間、適宜の加熱手段による当該空の取鍋の加熱時間、及び、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの時間など。
・取鍋内の溶鋼及びスラグの成分であって、例えば炭素含有量や各種合金含有量など。
・前記溶鋼処理装置による溶鋼の処理条件であって、例えば溶鋼の昇温量、処理時間、攪拌方法、及び、溶鋼に対する冷却効果を有するスクラップの投入量など。
・溶鋼温度の測定値であって、例えば転炉からの出鋼時や溶鋼処理中におけるものなど。
・取鍋内壁に付着している地金の量など。
その他にも、経験上、既に得られた情報に基づいて作成された上記各要因と前記温度降下幅との対応表(所謂テーブル)を参照しながら予測されることもある。
【0013】
また、前記の処理終了温度は、以下の方法により溶鋼処理中に調節されている。
即ち、溶鋼温度を上げるためには、溶鋼処理中の溶鋼にAlを投入する所謂Al昇温が実施される。
一方、溶鋼温度を下げるためには、同じく溶鋼にスクラップを投入する所謂スクラップ冷却が実施される。
【0014】
しかし、実際には、前記処理終了温度を調節し上記第1〜第3の鋳造条件を満足させることは、常にはうまくいっていなかった。
【0015】
なぜなら、特に取鍋やタンディッシュの耐火物の温度を予測したり測定したりすることが極めて困難であり、また、前記温度降下幅を予測した時点で予定されている取鍋の搬送スケジュールと実際の搬送スケジュールが大きく相違する場合もあるので、前記温度降下幅を精確に予測することができなかったからである。
【0016】
勿論、当該予測温度降下幅の精度を向上することを目的とした技術は、従来、何度も検討されてきている。しかし、上記の如く実際の搬送スケジュールが予測した時点におけるそれと大きく相違するようなことがある以上、当該予測温度降下幅の精度には必然的に限界があった。
【0017】
この種の技術として、例えば、特許文献1には、操業スケジュールに基づいて、炉外精錬を開始してから鋳造を開始するまでの溶湯の温度降下量を演算し、これと鋳込要求温度を用いて炉外精錬開始時における溶湯の目標温度を算出し、得られた目標温度と実際に計測された実績温度とを比較して溶湯の温度を調節する点が記載されている。これによれば、吹錬(転炉内処理)終了後に鋳造装置のスケジュールが変更になったとしても、鋳込要求温度を満足する溶湯を鋳造装置に供給できるとされる。
【特許文献1】特開平11−335721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、上記特許文献1は、溶鋼処理終了後に操業スケジュールが変更になった場合、必ずしも鋳込要求温度を満足する溶湯を鋳造装置に供給することができるとは限らない。
【0019】
そこで、従来、連続鋳造設備の操業者としての連鋳操業者は、前記注湯温度を実際に測定し、その測定結果が上記第1〜第3の鋳造条件を満足していない場合には、極力生産上の不具合を軽減できるよう、連鋳機の操業方法を急遽変更することにより対応していた。
具体的には、前記注湯温度が前記注湯温度範囲の上限値を上回っていた場合には、結果的に生産性を悪化させてしまうこととなるが、その上回っていた程度に応じて、鋳造速度を低下させたり、もし連鋳機の運転始動時であればその運転始動を遅らせたりすることにより対応していた。
一方、前記注湯温度が前記注湯温度範囲の下限値を下回っていた場合には、その下回っていた程度に応じて、鋳造速度を上昇させたり、もしタンディッシュに適宜の溶鋼加熱手段があれば当該溶鋼加熱手段により溶鋼を昇温させたりすることにより対応していた。
【0020】
しかし、上記の如く連鋳機の操業方法を急遽変更することで対応できるのは、前記第1〜第3の鋳造条件を僅かに満たせなかった場合に限られ、前述したブレークアウトや浸漬ノズル詰まりが発生するような場合には殆ど対策が講じられず、鋳造を中止し、資材を廃棄するしかなかった。
また、短時間で急遽に鋳造速度などの操業方法を変更すると、鋳片の表面品質に悪い影響を与えてしまうことが知られている。
【0021】
従って、従来より、上記の第1〜第3の鋳造条件を、確実に、満足できる技術が待望されていた。
【0022】
そこで、本発明の発明者は、鋭意試験研究を重ねた結果、以下の事項に着目した。
【0023】
(A)即ち、第1の鋳造条件は、第2及び第3の鋳造条件と比較すると、操業上、及び、鋳片の品質上、それ程重要ではない点である。換言すれば、必ずしも前記注湯温度を、第1の鋳造条件としての所定の温度に維持する必要はなく、第2及び第3の鋳造条件として記載した前記注湯温度範囲内とすれば足りるのである。
【0024】
(B)また、前記予測温度降下幅の精度を向上させるのも確かに重要ではあるが、当該予測温度降下幅のバラツキを的確に把握することがより重要である点である。
【0025】
(C)具体的には、当該予測温度降下幅のバラツキが考慮された上でなお前記注湯温度を前記注湯温度範囲内とすることが重要である点である。
【0026】
(D)また、上記(A)〜(C)を検討した上で、前記注湯温度を前記注湯温度範囲内とすることが困難であると判断された場合には、操業上の側面から前記処理終了温度を決定することが重要である点である。
【0027】
以下、図面を参照しつつ、上記(A)〜(C)の事項を簡単に説明する。
【0028】
図1及び図2は溶鋼の注湯温度の目標値に対するズレと、その頻度を表す。なお、図中において、「所定の温度(1)」は上記第1の鋳造条件としての所定の温度(以下、単に所定温度とも称する。)のことであり、「注湯温度範囲(2・3)」は上記第2及び第3の鋳造条件として記載した注湯温度範囲のことである。
【0029】
図1は従来の方法により決定された処理終了温度を採用した参考例である。本図に示す通り、前記予測温度降下幅は種々の要因によりバラツキを含んでいるので、常には前記注湯温度を所定温度とすることはできない(参考試験1)。また、そのバラツキの程度によっては、前記注湯温度範囲の上限値を上回ってしまったり(参考試験2)、又は、同下限値を下回ってしまったりしてしまう(参考試験3)。
【0030】
本図に上記(A)〜(C)の事項をあてはめると以下のことが言える。
即ち、参考試験1〜3のようにバラツキのある注湯温度が、所定温度(1)において最も高い頻度となることは必ずしも必要ではなく、それよりも、当該注湯温度が常に前記注湯温度範囲内であることが重要であることが言える(観点Aより)。
また、参考試験1のように前記予測温度降下幅の精度を極力良好とする、換言すれば、注湯温度のバラツキを極力狭小とすることも重要ではあるが、当該予測温度降下幅のバラツキを的確に(定量的に)把握することがより重要であることが言える(観点Bより)。
そして、当該予測温度降下幅のバラツキが考慮された上でなお前記注湯温度が前記注湯温度範囲内とすることが重要であると言える(観点Cより)。
【0031】
一方、図2は本発明に係る方法により決定された処理終了温度を採用した例である。本図は、本発明の技術的意義や技術的範囲を一切限定するものではなく、単に説明の便宜上、作成されたに過ぎない図である。
本図に示す通り、バラツキのある前記注湯温度のうち最も頻度の高い注湯温度を必ずしも前記所定温度に合わせることはせずに、適宜に昇降させることで、前記予測温度降下幅の精度は向上することはないが、前記注湯温度をほぼ常に前記注湯温度範囲内とすることができる(試験10〜12)。
【0032】
本発明は係る諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、注湯温度のバラツキを考慮しつつ、当該注湯温度を、好ましいとされる温度範囲内とできる鉄鋼の製造プロセスの操業方法及びそれに用いられる操業装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0033】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0034】
取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd:[℃])を予測する。
前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu:[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd:[℃])を予測する。
前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1:[℃])が下記式(1)及び(2)を同時に満足するように溶鋼処理設備を操業する。
Th1≦Tcmax+ΔTd(t)−ΔTdu(t)・・・(1)
Th1≧Tcmin+ΔTd(t)+ΔTdd(t)・・・(2)
ただし、Tcmax[℃]は溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値であり、Tcmin[℃]は前記注湯温度範囲の下限値であり、tは時刻を表し、そのとり得る範囲は、前記取鍋内の溶鋼が鋳型へ注湯され始めた時点から、注湯され終わる時点までとする。
【0035】
これにより、確実に、前記取鍋内の溶鋼の、鋳型へ注湯される際の温度としての注湯温度を前記注湯温度範囲内とできる。
【0036】
取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd:[℃])を予測する。
前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu:[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd:[℃])を予測する。
下記式(1)及び(2)を同時に満足する、前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1:[℃])が存在しない場合は、前記処理終了温度が下記式(3)を満足するように溶鋼処理設備を操業する。
Th1≦Tcmax+ΔTd(t)−ΔTdu(t)・・・(1)
Th1≧Tcmin+ΔTd(t)+ΔTdd(t)・・・(2)
Th1=Tcmin+ΔTd(t)+ΔTdd(t)・・・(3)
ただし、Tcmax[℃]は溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値であり、Tcmin[℃]は前記注湯温度範囲の下限値であり、tは時刻を表し、そのとり得る範囲は、前記取鍋内の溶鋼が鋳型へ注湯され始めた時点から、注湯され終わる時点までとする。
【0037】
これにより、前記注湯温度が前記注湯温度範囲の上限値を上回る恐れのある最大の温度幅を極力抑えつつ、当該注湯温度が前記注湯温度範囲の下限値を下回ることを確実に回避できる。従って、連続鋳造を問題なく継続できる。
【0038】
取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd:[℃])を予測する。
前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu:[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd:[℃])を予測する。
下記式(1)及び(2)を同時に満足する、前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1:[℃])が存在しない場合であって、取鍋内の溶鋼を、適宜の溶鋼加熱手段を備えるタンディッシュを介して鋳型へ注湯する場合は、前記処理終了温度が下記式(4)を満足するように溶鋼処理設備を操業する。
Th1≦Tcmax+ΔTd(t)−ΔTdu(t)・・・(1)
Th1≧Tcmin+ΔTd(t)+ΔTdd(t)・・・(2)
Th1=Tcmax+ΔTd(t)−ΔTdu(t)・・・(4)
ただし、Tcmax[℃]は溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値であり、Tcmin[℃]は前記注湯温度範囲の下限値であり、tは時刻を表し、そのとり得る範囲は、前記取鍋内の溶鋼が鋳型へ注湯され始めた時点から、注湯され終わる時点までとする。
【0039】
これにより、前記注湯温度が前記注湯温度範囲の上限値を上回ることを確実に回避でき、一方で、当該注湯温度が前記注湯温度範囲の下限値を下回らない点は前記溶鋼加熱手段により補償できる。従って、連続鋳造を問題なく継続できる。
【0040】
取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd:[℃])を予測する。
前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu:[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd:[℃])を予測する。
下記式(1)及び(2)を同時に満足する、前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1[℃])が存在しない場合は、前記処理終了温度が下記式(5)を満足するように溶鋼処理設備を操業する。
Th1≦Tcmax+ΔTd(t)−ΔTdu(t)・・・(1)
Th1≧Tcmin+ΔTd(t)+ΔTdd(t)・・・(2)
MAX(Th1−ΔTd(t)+ΔTdu(t)−Tcmax)−
MAX(Tcmin−(Th1−ΔTd(t)−ΔTdd(t)))=0・・・(5)
ただし、Tcmax[℃]は溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値であり、Tcmin[℃]は前記注湯温度範囲の下限値であり、tは時刻を表し、そのとり得る範囲は、前記取鍋内の溶鋼が鋳型へ注湯され始めた時点から、注湯され終わる時点までとし、MAX(x(t))はx(t)の最大値を表すものとする。
【0041】
これにより、注湯温度が前記注湯温度範囲の上限値を上回る恐れのある最大の温度幅と、同じく下限値を下回る恐れのある最大の温度幅と、が略一致するので、注湯温度が前記注湯温度範囲内となる確率を極力向上できる。
【0042】
溶鋼処理設備の操業者としての溶鋼処理操業者は、連続鋳造設備の操業者としての連鋳操業者に対して、前記処理終了温度と、前記注湯温度範囲の上限値を上回る恐れのある最大の温度幅及び/又は下限値を下回る恐れのある最大の温度幅と、を事前に報知する。
なお、上記「事前に報知する、」の「事前に」とは、具体的には、「少なくとも該当するチャージの溶鋼が鋳型へ注湯される前に」を意味し、特記ない限り、以下本明細書内において同様とする。
【0043】
これにより、連鋳操業者は、溶鋼の温度に関する上記各情報を事前に把握できるので、前記連鋳操業者は、鋳造条件を変更したり注湯開始時刻を前後させたりする必要があると判断した場合に、余裕を持って問題なく対処できる。
なお、「注湯開始時刻」とは、連続鋳造を始動させる際に最初に溶鋼を鋳型に注湯し始める時刻のことである。
【0044】
溶鋼処理設備の操業者としての溶鋼処理操業者は、連続鋳造設備の操業者としての連鋳操業者に対して、連続鋳造速度と、連続鋳造を始動させる際に最初に溶鋼を鋳型に注湯し始める時刻としての注湯開始時刻と、のうち少なくとも何れか一方を事前に指示する。
【0045】
即ち、操業上の事情により、事前に指示がない限り、前記連鋳操業者は連続鋳造速度や注湯開始時刻を短時間で変更ことは困難である。
そこで、上記の如く前記溶鋼処理操業者が前記連鋳操業者に対して事前に適切な連続鋳造速度又は注湯開始時刻を指示することにより、前記連鋳操業者はこれらを余裕を持って変更することができる。
【0046】
溶鋼処理設備の操業者としての溶鋼処理操業者は、連続鋳造設備の操業者としての連鋳操業者に対して、連続鋳造速度と、連続鋳造を始動させる際に最初に溶鋼を鋳型に注湯し始める時刻としての注湯開始時刻と、前記溶鋼加熱手段の溶鋼に対する加熱条件と、のうち少なくとも何れか一を事前に指示する。
【0047】
即ち、操業上の事情により、事前に指示がない限り、前記連鋳操業者は連続鋳造速度や注湯開始時刻、前記溶鋼加熱手段の溶鋼に対する加熱条件を短時間で変更ことは困難である。
そこで、上記の如く前記溶鋼処理操業者が前記連鋳操業者に対して事前に適切な連続鋳造速度又は注湯開始時刻、前記溶鋼加熱手段の溶鋼に対する加熱条件を指示することにより、前記連鋳操業者はこれらを余裕を持って変更することができる。
【0048】
取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1:[℃])を測定する。
前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd:[℃])を予測する。
前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu:[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd:[℃])を予測する。
下記式(6)又は(7)のうち少なくとも何れか一方が満足されない場合は、溶鋼処理設備の操業者としての溶鋼処理操業者は、連続鋳造設備の操業者としての連鋳操業者に対して、前記連続鋳造設備の操業条件を事前に指示する。
Th1−ΔTd(t)+ΔTdu(t)≦Tcmax・・・(6)
Th1−ΔTd(t)−ΔTdu(t)≧Tcmin・・・(7)
ただし、Tcmax[℃]は溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値であり、Tcmin[℃]は前記注湯温度範囲の下限値であり、tは時刻を表し、そのとり得る範囲は、前記取鍋内の溶鋼が鋳型へ注湯され始めた時点から、注湯され終わる時点までとする。
【0049】
即ち、操業上の事情により、事前に指示がない限り、前記連鋳操業者は前記連続鋳造設備の操業条件を短時間で変更ことは困難である。
そこで、上記の如く前記溶鋼処理操業者が前記連鋳操業者に対して事前に適切な前記連続鋳造設備の操業条件を指示することにより、前記連鋳操業者はこれを余裕を持って変更することができる。
【0050】
前記溶鋼処理操業者が前記連鋳操業者に対して事前に指示する前記連続鋳造設備の操業条件は、連続鋳造速度と、連続鋳造を始動させる際に最初に溶鋼を鋳型に注湯し始める時刻としての注湯開始時刻と、のうち少なくとも何れか一方とする。
【0051】
即ち、操業上の事情により、事前に指示がない限り、前記連鋳操業者は連続鋳造速度や注湯開始時刻を短時間で変更ことは困難である。
そこで、上記の如く前記溶鋼処理操業者が前記連鋳操業者に対して事前に適切な連続鋳造速度や注湯開始時刻を指示することにより、前記連鋳操業者はこれらを余裕を持って変更することができる。
【0052】
前記式(7)が満足されない場合であって、前記取鍋内の溶鋼が適宜の溶鋼加熱手段を備えるタンディッシュを介して鋳型へ注湯される場合は、前記溶鋼処理操業者が前記連鋳操業者に対して事前に指示する前記連続鋳造設備の操業条件は、連続鋳造速度と、連続鋳造を始動させる際に最初に溶鋼を鋳型に注湯し始める時刻としての注湯開始時刻と、前記溶鋼加熱手段の溶鋼に対する加熱条件と、のうち少なくとも何れか一とする。
【0053】
即ち、操業上の事情により、事前に指示がない限り、前記連鋳操業者は連続鋳造速度や注湯開始時刻、前記溶鋼加熱手段の溶鋼に対する加熱条件を短時間で変更ことは困難である。
そこで、上記の如く前記溶鋼処理操業者が前記連鋳操業者に対して事前に適切な連続鋳造速度や注湯開始時刻、前記溶鋼加熱手段の溶鋼に対する加熱条件を指示することにより、前記連鋳操業者はこれらを余裕を持って変更することができる。
【0054】
以下のように構成される、鉄鋼の製造プロセスに用いられる操業装置を提供する。
即ち、鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd(t):[℃])を予測可能な第1予測手段を備える。
鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu(t):[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd(t):[℃])を予測可能な第2予測手段を備える。
溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値及び下限値と、
未だ溶鋼処理中の取鍋に関しては、
前記高温側最大バラツキ幅を加味しても、溶鋼の、鋳型へ注湯される際の温度としての注湯温度が前記上限値を上回らない、前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1:[℃])の上限許容値と、
前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、前記処理終了温度を前記上限許容値としたときの前記注湯温度の上限値と、
前記低温側最大バラツキ幅を加味しても、前記注湯温度が前記下限値を下回らない、前記処理終了温度の下限許容値と、
前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、前記処理終了温度を前記下限許容値としたときの前記注湯温度の下限値と、を同一の画面に表示する表示手段を備える。
【0055】
これにより、溶鋼処理操業者は、前記注湯温度が前記注湯温度範囲内に収まるよう、前記表示手段の画面を通じて、前記処理終了温度をどの程度とすべきか、視覚的にすばやく容易に判断できる。
【0056】
鉄鋼の製造プロセスに用いられる操業装置を以下のように構成する。
鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd(t):[℃])を予測可能な第1予測手段を備える。
鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu(t):[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd(t):[℃])を予測可能な第2予測手段を備える。
溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値及び下限値と、
既に搬送中の取鍋に関しては、
測定した、前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1:[℃])に基づいて前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、溶鋼の、鋳型へ注湯される際の温度としての注湯温度の上限値及び下限値と、
を同一の画面に表示する表示手段を備え、当該画面に表示される内容は適宜の時間ごとに更新される。
【0057】
これにより、溶鋼処理終了後に操業スケジュールの変更があった場合、当該操業スケジュールの変更後において前記注湯温度が前記注湯温度範囲内に収まっているか否かを前記表示手段の前記画面から視覚的にすばやく容易に判断できる。
従って、例えば、前記注湯温度が前記注湯温度範囲の上限値を上回ってしまう恐れ及び/又はその下限値を下回ってしまう恐れがあるときは、溶鋼処理設備の操業者としての溶鋼処理操業者は、連続鋳造設備の操業者としての連鋳操業者に対して、その旨及び必要とされる操業条件の変更を事前に報知することができる。
【0058】
鉄鋼の製造プロセスに用いられる操業装置を以下のように構成する。
鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd(t):[℃])を予測可能な第1予測手段を備える。
鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu(t):[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd(t):[℃])とを予測可能な第2予測手段を備える。
溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値及び下限値と、
未だ溶鋼処理中の取鍋に関しては、
前記高温側最大バラツキ幅を加味しても、溶鋼の、鋳型へ注湯される際の温度としての注湯温度が前記上限値を上回らない、前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1:[℃])の上限許容値と、
前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、前記処理終了温度を前記上限許容値としたときの前記注湯温度の上限値と、
前記低温側最大バラツキ幅を加味しても、前記注湯温度が前記下限値を下回らない、前記処理終了温度の下限許容値と、
前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、前記処理終了温度を前記下限許容値としたときの前記注湯温度の下限値と、
前記取鍋に先行して溶鋼処理され、既に搬送中の取鍋に関しては、
測定した、前記処理終了温度(Th1:[℃])に基づいて前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、溶鋼の、鋳型へ注湯される際の温度としての注湯温度の上限値及び下限値と、
を同一の画面に表示する表示手段を備え、当該画面に表示される内容は適宜の時間ごとに更新される。
【0059】
これにより、溶鋼処理設備の操業条件、及び、連続鋳造設備の操業条件を、包括的且つ総合的に検討することができる。
【0060】
前記表示手段は、前記注湯温度の測定値も前記画面に表示することが好ましい。
【0061】
これによれば、前記の第1予測手段及び前記第2予測手段による予測結果の妥当性を容易に判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を説明する。
【0063】
本実施形態において溶鋼処理設備には、鉄鋼の製造プロセスに用いられる操業装置としての操業管理装置が設けられており、当該操業管理装置は、取鍋からの出鋼温度などを予測可能な温度予測機を備えている。
【0064】
前記の操業管理装置は、演算処理部(所謂CPUなど)及び記憶部(所謂ROMやRAMなど)や、数値やグラフなどを表示可能な表示手段としてのディスプレイ、鉄鋼の製造プロセスの操業条件などを前記演算処理部又は前記記憶部に入力可能な入力手段としてのキーボード、加えて、連鋳操業者との連絡手段としてのテレフォンと、を備えている。
【0065】
また、前記の温度予測機も、演算処理部及び記憶部を備えており、前記操業管理装置と電気的に接続されている。これにより、当該温度予測機は、前記操業管理装置と双方向のデータ通信が可能に構成されている。
【0066】
前記の操業管理装置は、前記の温度予測機(第1予測手段)において、鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd(t)、予測温度降下幅とも称する。:[℃])を予測可能に構成されている。
【0067】
また、前記の操業管理装置は、同じく前記の温度予測機(第2予測手段)において、鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu(t):[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd(t):[℃])とを予測可能に構成されている。
なお、本実施形態において前記第1予測手段及び前記第2予測手段は、共に前記の温度予測機のことである。
【0068】
なお、前記の高温側最大バラツキ幅ΔTdu(t)及び低温側最大バラツキ幅ΔTdd(t)の「Δ」は「幅」を意味する記号である。また、「t」は時刻を表し、そのとり得る範囲は、前記取鍋内の溶鋼が鋳型へ注湯され始めた時点から、注湯され終わる時点までである。
なおまた、これら温度降下幅ΔTd(t)などの具体的な予測方法に関しては、後述する。
【0069】
次に、本実施形態において前記ディスプレイに表示される内容を、図3に基づいて説明する。
【0070】
本図に示すように前記ディスプレイには、横軸を時刻とし、縦軸を溶鋼の温度とする座標軸1が表示される。
また、当該座標軸1には、予め前記キーボードなどを介して前記操業管理装置の記憶部に入力/記憶されている前記注湯温度範囲の上限値Tcmax及び下限値Tcminが同時に表示される。
【0071】
また、本図に示す通り当該座標軸1には、以下のデータ等が点や直線、曲線などで表示される。
【0072】
例えば、未だ溶鋼処理中の取鍋A(チャージA)に関しては、前記高温側最大バラツキ幅ΔTdu(t)を加味しても、注湯温度が前記上限値Tcmaxを上回らない処理終了温度Th1の上限許容値が点(図中符号a1)で表示される。
【0073】
なお、当該上限許容値a1は、下記式により求められる値である。
a1=MIN(Tcmax+ΔTd(t)−ΔTdu(t))
ただし、MIN(x)は、xの最小値を表す。
【0074】
当該点で表示される上限許容値a1は、予定されている溶鋼処理終了時点と同一時刻に表示されることが好ましい。なぜなら、前述の通り、当該上限許容値a1は処理終了温度Th1の高温側上限許容値であり、当該処理終了温度Th1は、前記取鍋A内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度を意味するからである。
なお、当該上限許容値a1は、点で表示される代わりに、数値として前記ディスプレイの画面内の任意の場所に表示されてもよい。
【0075】
また、前記の第1予測手段及び第2予測手段によって求められる、前記処理終了温度Th1を前記上限許容値a1としたときの前記注湯温度の上限値が曲線(図中符号a2)で表示される。
【0076】
なお、当該上限値a2は、時刻(t)の関数である下記式により求められる。
a2(t)=Th1−ΔTd(t)+ΔTdu(t)
【0077】
また、前記低温側最大バラツキ幅ΔTdd(t)を加味しても、注湯温度が前記下限値Tcminを下回らない処理終了温度Th1の下限許容値が点(図中符号a3)で表示される。
【0078】
なお、当該下限許容値a3は、下記式により求められる値である。
a3=MAX(Tcmin+ΔTd1(t)+ΔTdd(t))
ただし、MAX(x)は、xの最大値を表す。
【0079】
当該点で表示される下限許容値a3も、予定されている溶鋼処理終了時点と同一時刻に表示されることが好ましい。理由は前述の如くである。
なお、当該下限許容値a3も、点で表示される代わりに、数値として前記ディスプレイの画面内の任意の場所に表示されてもよい。
【0080】
また、前記の第1予測手段及び第2予測手段によって求められる、前記処理終了温度Th1を前記下限許容値a3としたときの前記注湯温度の下限値が曲線(図中符号a4)で表示される。
【0081】
なお、当該下限値a4も、時刻(t)の関数である下記式により求められる。
a4(t)=Th1−ΔTd(t)−ΔTdd(t)
【0082】
加えて、前記取鍋から出鋼される溶鋼の温度の上限及び下限も、前記画面に表示される(図中符号a5・a6)。
【0083】
以上が、未だ溶鋼処理中の取鍋A(チャージA)に関する情報として表示される内容である。
【0084】
前記の操業管理装置を操作している溶鋼処理操業者は、取鍋A内で溶鋼処理されている溶鋼の温度が、溶鋼処理終了時点において前記の下限許容値a3以上かつ上限許容値a1以下となるように、前述した方法(Al昇温やスクラップ冷却)により当該溶鋼の温度を調節する。
換言すれば、前記の温度降下幅ΔTd(t)と、当該温度降下幅ΔTd(t)の高温側最大バラツキ幅ΔTdu及び低温側最大バラツキ幅ΔTddと、を予測し、処理終了温度Th1が下記式(1)及び(2)を同時に満足するように溶鋼処理設備を操業するのである。
Th1≦Tcmax+ΔTd(t)−ΔTdu(t)・・・(1)
Th1≧Tcmin+ΔTd(t)+ΔTdd(t)・・・(2)
【0085】
一方、前記取鍋Aに先行して溶鋼処理され、既に搬送中の取鍋B・C(チャージB・C)に関しては、測定した、当該取鍋B・C内の溶鋼の処理終了温度Th1が点(図中符号b1・c1)で表示される。
【0086】
なお、当該処理終了温度Th1は、点で表示する代わりに、数値としてディスプレイの画面内の任意の場所に表示してもよいし、表示すらされない実施形態も考えられる。
【0087】
また、前記処理終了温度Th1に基づいて、前記の第1予測手段及び第2予測手段によって求められる、前記注湯温度の上限値及び下限値が曲線(図中符号b2・c2・b4・c4)で表示される。
【0088】
なお、当該上限値b2・c2及び下限値b4・c4は、時刻(t)の関数である下記式により求められる。
b2(t)(又はc2(t))=Th1−ΔTd(t)+ΔTdu(t)
b4(t)(又はc4(t))=Th1−ΔTd(t)−ΔTdd(t)
なお、上記2式により求められる上限値b2・c2及び下限値b4・c4は、操業条件の変更に伴って変化するものなので、適宜の時間ごと(例えば、1〜5分ごと)に更新することが好ましい。また、操業を管理するコンピュータが状態の変更を認識した時点、またはコンピュータが操業指令を変更した時点に即座に、このシステムに指令を出して更新するのが望ましい。「更新する」とは、前記第1予測手段及び第2予測手段に、少なくとも前記注湯温度の上限値b2・c2及び下限値b4・c4を再度求めさせ、前記のディスプレイの表示内容に当該演算結果を反映させることである。
勿論、前記の上限値b2・c2及び下限値b4・c4に限らず、前記上限許容値a1などの画面に表示されているすべての内容が適宜の時間ごとに更新されるように構成されていてもよい。
【0089】
以上が、点や直線、曲線などで前記座標軸1に表示されるデータ等であるが、本実施形態では、他にも以下のようなデータ等が点や直線、曲線などで表示される。
【0090】
即ち、注湯温度の実測値が点(図中符号c5)で表示される。
当該点で表示される注湯温度の実測値c5は、勿論、実測時点と同一時刻に表示されることが好ましい。
【0091】
以上説明したように本実施形態において鉄鋼の製造プロセスは、以下のような方法で操業されている。
【0092】
取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd:[℃])を予測する。
また、前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu:[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd:[℃])を予測する。
そして、前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1:[℃])が下記式(1)及び(2)を同時に満足するように溶鋼処理設備を操業する。
Th1≦Tcmax+ΔTd(t)−ΔTdu(t)・・・(1)
Th1≧Tcmin+ΔTd(t)+ΔTdd(t)・・・(2)
【0093】
これにより、確実に、前記注湯温度を前記注湯温度範囲内とできる。
【0094】
また、以上説明したように本実施形態において鉄鋼の製造プロセスに用いられる操業管理装置(操業装置)は、以下のように構成されている。
【0095】
即ち、鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd(t):[℃])を予測可能な第1予測手段(前記温度予測機の演算処理部)を備える。当該温度予測機の演算処理部は、鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu(t):[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd(t):[℃])を予測可能な第2予測手段でもある。
また、適宜の表示手段としてのディスプレイを備える。
当該ディスプレイの画面には、注湯温度範囲の上限値Tcmax及び下限値Tcminが表示される。
また、未だ溶鋼処理中の取鍋Aに関しては、以下の内容が前記画面に表示される。
即ち、前記高温側最大バラツキ幅ΔTdu(t)を加味しても、注湯温度が前記上限値Tcmaxを上回らない、処理終了温度Th1の上限許容値a1が表示される。
また、前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、前記処理終了温度Th1を前記上限許容値a1としたときの前記注湯温度の上限値a2が表示される。
また、前記低温側最大バラツキ幅ΔTdd(t)を加味しても、注湯温度が前記下限値Tcminを下回らない、処理終了温度Th1の下限許容値a3が表示される。
また、前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、前記処理終了温度Th1を前記下限許容値a3としたときの前記注湯温度の下限値a4が表示される。
【0096】
これにより、溶鋼処理操業者は、前記注湯温度が前記注湯温度範囲内に収まるよう、前記表示手段の画面を通じて、前記処理終了温度をどの程度とすべきか、視覚的にすばやく容易に判断できる。
【0097】
また、以上説明したように本実施形態において鉄鋼の製造プロセスに用いられる操業管理装置(操業装置)は、以下のように構成されてもよい。
【0098】
即ち、鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd(t):[℃])を予測可能な第1予測手段(前記温度予測機の演算処理部)を備える。当該温度予測機の演算処理部は、鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu(t):[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd(t):[℃])を予測可能な第2予測手段でもある。
また、適宜の表示手段としてのディスプレイを備える。
当該ディスプレイの画面には、注湯温度範囲の上限値Tcmax及び下限値Tcminが表示される。
また、前記取鍋Aに先行して溶鋼処理され、既に搬送中の取鍋B・Cに関しては、以下の内容が前記画面に表示される。
測定した、前記処理終了温度Th1に基づいて前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、前記注湯温度の上限値b2・c2及び下限値b4・c4が表示される。
当該画面に表示される内容(少なくとも前記の上限値b2・c2及び/又は下限値b4・c4)は、適宜の時間ごとに更新される。
【0099】
これにより、溶鋼処理終了後に操業スケジュールの変更があった場合、当該操業スケジュールの変更後において前記注湯温度が前記注湯温度範囲内に収まっているか否かを前記表示手段の前記画面から視覚的にすばやく容易に判断できる。
従って、例えば、前記注湯温度が前記注湯温度範囲の上限値Tcmaxを上回ってしまう恐れ及び/又はその下限値を下回ってしまう恐れがあるときは、前記溶鋼処理操業者は前記連鋳操業者に対して、その旨及び必要とされる操業条件の変更を事前に報知することができる。
【0100】
また、以上説明したように本実施形態において鉄鋼の製造プロセスに用いられる操業管理装置(操業装置)は、以下のように構成されている。
【0101】
即ち、鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd(t):[℃])を予測可能な第1予測手段(前記温度予測機の演算処理部)を備える。当該温度予測機の演算処理部は、鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu(t):[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd(t):[℃])を予測可能な第2予測手段でもある。
また、適宜の表示手段としてのディスプレイを備える。
当該ディスプレイの画面には、注湯温度範囲の上限値Tcmax及び下限値Tcminが表示される。
また、未だ溶鋼処理中の取鍋Aに関しては、以下の内容が前記画面に表示される。
即ち、前記高温側最大バラツキ幅ΔTdu(t)を加味しても、注湯温度が前記上限値Tcmaxを上回らない、処理終了温度Th1の上限許容値a1が表示される。
また、前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、前記処理終了温度Th1を前記上限許容値a1としたときの前記注湯温度の上限値a2が表示される。
また、前記低温側最大バラツキ幅ΔTdd(t)を加味しても、注湯温度が前記下限値Tcminを下回らない、処理終了温度Th1の下限許容値a3が表示される。
また、前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、前記処理終了温度Th1を前記下限許容値a3としたときの前記注湯温度の下限値a4が表示される。
また、前記取鍋Aに先行して溶鋼処理され、既に搬送中の取鍋B・Cに関しては、以下の内容が前記画面に表示される。
測定した、前記処理終了温度Th1に基づいて前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、前記注湯温度の上限値b2・c2及び下限値b4・c4が表示される。
当該画面に表示される内容(少なくとも前記の上限値b2・c2及び/又は下限値b4・c4)は、適宜の時間ごとに更新される。
【0102】
これにより、溶鋼処理設備の操業条件、及び、連続鋳造設備の操業条件を、包括的且つ総合的に検討することができる。
【0103】
前記表示手段としてのディスプレイの画面には、前記注湯温度の測定値も併せて表示されることが好ましい。これによれば、前記の第1予測手段及び前記第2予測手段による予測結果の妥当性を容易に判断することができる。
【0104】
次に、上記式(1)及び(2)を同時に満足する処理終了温度Th1が存在しない場合における鉄鋼の製造プロセスの操業方法に関して説明する(本発明の観点D)。具体的には、上記式(2)の右辺が、上記式(1)の右辺を上回ってしまう場合である。
【0105】
本実施形態において上記の場合は、前記処理終了温度Th1が下記式(3)を満足するように溶鋼処理設備を操業する。
Th1=Tcmin+ΔTd(t)+ΔTdd(t)・・・(3)
要するに、前記注湯温度が前記注湯温度範囲の上限値Tcmaxを上回ってしまうのは妥協し、一方で、その下限値Tcminを下回ってしまうのは確実に防止するのである。
このように操業すれば、前記注湯温度が前記注湯温度範囲の上限値Tcmaxを上回る恐れのある最大の温度幅を極力抑えつつ、当該注湯温度が前記注湯温度範囲の下限値Tcminを下回ることを確実に回避できる。
従って、連続鋳造を問題なく継続できる。
【0106】
また、上記式(1)及び(2)を同時に満足する処理終了温度Th1が存在しない場合であって、前記タンディッシュが適宜の溶鋼加熱手段を備えている場合は、前記処理終了温度Th1が下記式(4)を満足するように溶鋼処理設備を操業することも考えられる。
Th1=Tcmax+ΔTd(t)−ΔTdu(t)・・・(4)
要するに、前記注湯温度が前記注湯温度範囲の上限値Tcmaxを上回ってしまうのは確実に防止し、一方で、その下限値Tcminを下回ってしまうのは妥協するのである。
このように操業すれば、前記注湯温度が前記注湯温度範囲の上限値Tcmaxを上回ることは確実に回避でき、一方で、当該注湯温度が前記注湯温度範囲の下限値Tcminを下回らない点は前記溶鋼加熱手段により補償できる。
具体的には、注湯温度が当該下限値Tcminを下回りそうになった場合は、前記溶鋼加熱手段を用いて、タンディッシュ内の溶鋼を昇温せしめるのである。
従って、連続鋳造を問題なく継続できる。
【0107】
また、上記式(1)及び(2)を同時に満足する処理終了温度Th1が存在しない場合は、前記処理終了温度Th1が下記式(5)を満足するように溶鋼処理設備を操業することも考えられる。
MAX(Th1−ΔTd(t)+ΔTdu(t)−Tcmax)−
MAX(Tcmin−(Th1−ΔTd(t)−ΔTdd(t)))=0・・・(5)
要するに、注湯温度が前記注湯温度範囲の上限値を上回る恐れのある最大の温度幅と、同じく下限値を下回る恐れのある最大の温度幅と、を略一致するように溶鋼処理設備を操業するのである。
これにより、注湯温度が前記注湯温度範囲内となる確率を極力向上できる。
【0108】
以上、上記式(1)及び(2)を同時に満足する処理終了温度Th1が存在しない場合における好ましい3つの操業方法を説明したが、鉄鋼の製造プロセスは、以下の方法で操業されることが好ましい。
即ち、上記3つの方法(上記式(3)〜(5)参照)によって操業される際には、溶鋼処理操業者は連鋳操業者に対して、前記処理終了温度Th1と、前記注湯温度範囲の上限値Tcmaxを上回る恐れのある最大の温度幅及び/又は下限値Tcminを下回る恐れのある最大の温度幅と、を事前に報知するとよい。
なお、前述した通り、上記「事前に報知する、」の「事前に」とは、具体的には、「該当するチャージの溶鋼が鋳型へ注湯される前に」を意味する。
これによれば、連鋳操業者は、溶鋼の温度に関する上記各情報を事前に把握できるので、前記連鋳操業者は、鋳造条件を変更したり注湯開始時刻を前後させたりする必要があると判断した場合に、余裕を持って問題なく対処できる。
なお、「注湯開始時刻」とは、連続鋳造を始動させる際に最初に溶鋼を鋳型(又はタンディッシュ)に注湯し始める時刻のことである。
なお、本実施形態において溶鋼処理操業者は、例えば、操業管理装置が備えるテレフォンを通じて連鋳操業者と連絡をとりあうとされるが、通信手段は勿論これに限定されない。
【0109】
また、前記注湯温度が前記注湯温度範囲の下限値Tcminを決して下回らないように操業する場合(上記式(3)参照)には、鉄鋼の製造プロセスは、以下の方法により操業されるとよい。
即ち、溶鋼処理操業者は連鋳操業者に対して、連続鋳造速度と、注湯開始時刻と、のうち少なくとも何れか一方を事前に指示するとよい。
要するに、単に処理終了温度Th1などの数値データを報知するのではなく、具体的な連鋳機の操業方法を指示するのである。
前述した通り、操業上の事情により、事前に指示がない限り、前記連鋳操業者は連続鋳造速度や注湯開始時刻を短時間で変更ことは困難である。
そこで、上記の如く前記溶鋼処理操業者が前記連鋳操業者に対して事前に適切な連続鋳造速度又は注湯開始時刻を指示することにより、前記連鋳操業者はこれらを余裕を持って変更することができるのである。
【0110】
また、少なくとも注湯温度が前記注湯温度範囲の上限値Tcmaxを上回らないように操業する場合(上記式(4)参照)には、鉄鋼の製造プロセスは、以下の方法により操業されるとよい。
即ち、溶鋼処理操業者は連鋳操業者に対して、連続鋳造速度と、注湯開始時刻と、タンディッシュの前記溶鋼加熱手段の加熱条件と、のうち少なくとも何れか一を事前に指示するとよい。
要するに、単に処理終了温度Th1などの数値データを報知するのではなく、具体的な連鋳機の操業方法を指示するのである。
前述した通り、操業上の事情により、事前に指示がない限り、前記連鋳操業者は連続鋳造速度や注湯開始時刻、前記溶鋼加熱手段の加熱条件を短時間で変更ことは困難である。
そこで、上記の如く前記溶鋼処理操業者が前記連鋳操業者に対して事前に適切な連続鋳造速度又は注湯開始時刻、前記溶鋼加熱手段の加熱条件を指示することにより、前記連鋳操業者はこれらを余裕を持って変更することができるのである。
なお、前記溶鋼加熱手段とは、例えば、プラズマ加熱装置や誘導加熱装置などであって、前記加熱条件とは、例えば、当該加熱装置において設定する印加電圧などである。
【0111】
次に、前記処理終了温度Th1を測定し、前記温度降下幅ΔTd(t)を予測し、前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅ΔTdu(t)及び低温側最大バラツキ幅ΔTdd(t)を予測したときに、下記式(6)又は(7)のうち少なくとも何れか一方が満足されない場合に関して説明する(図3中符号X・Y)。
Th1−ΔTd(t)+ΔTdu(t)≦Tcmax・・・(6)
Th1−ΔTd(t)−ΔTdu(t)≧Tcmin・・・(7)
【0112】
本実施形態では上記の場合、溶鋼処理操業者は連鋳操業者に対して、前記連続鋳造設備の操業条件を事前に指示する。
【0113】
即ち、操業上の事情により、事前に指示がない限り、前記連鋳操業者は前記連続鋳造設備の操業条件を短時間で変更することは困難である。
そこで、上記の如く前記溶鋼処理操業者が前記連鋳操業者に対して事前に適切な前記連続鋳造設備の操業条件を指示することにより、前記連鋳操業者はこれを余裕を持って変更することができる。
【0114】
また、本実施形態において前記溶鋼処理操業者が前記連鋳操業者に対して事前に指示する前記連続鋳造設備の操業条件は、連続鋳造速度と、連続鋳造を始動させる際に最初に溶鋼を鋳型に注湯し始める時刻としての注湯開始時刻と、のうち少なくとも何れか一方とすることが好ましい。
【0115】
即ち、操業上の事情により、事前に指示がない限り、前記連鋳操業者は連続鋳造速度や注湯開始時刻を短時間で変更ことは困難である。
そこで、上記の如く前記溶鋼処理操業者が前記連鋳操業者に対して事前に適切な連続鋳造速度や注湯開始時刻を指示することにより、前記連鋳操業者はこれらを余裕を持って変更することができる。
【0116】
また、前記式(7)が満足されない場合であって、前記取鍋内の溶鋼が適宜の溶鋼加熱手段を備えるタンディッシュを介して鋳型へ注湯される場合は、前記溶鋼処理操業者が前記連鋳操業者に対して事前に指示する前記連続鋳造設備の操業条件は、連続鋳造速度と、注湯開始時刻と、前記溶鋼加熱手段の溶鋼に対する加熱条件と、のうち少なくとも何れか一とすることが好ましい。
【0117】
即ち、操業上の事情により、事前に指示がない限り、前記連鋳操業者は連続鋳造速度や注湯開始時刻、前記溶鋼加熱手段の溶鋼に対する加熱条件を短時間で変更ことは困難である。
そこで、上記の如く前記溶鋼処理操業者が前記連鋳操業者に対して事前に適切な連続鋳造速度や注湯開始時刻、前記溶鋼加熱手段の溶鋼に対する加熱条件を指示することにより、前記連鋳操業者はこれらを余裕を持って変更することができる。
【0118】
次に、前記の温度降下幅ΔTd(t)及びその高温側最大バラツキ幅ΔTdu(t)、低温側最大バラツキ幅ΔTdd(t)の具体的な予測方法に関して説明する。
ここでは、最初に、『前記取鍋内の溶鋼が、前記連鋳機の備える鋳型に、直接的に注湯される場合』に関して説明し、次に、『前記取鍋内の溶鋼が、前記連鋳機の備える鋳型に、タンディッシュを介して注湯される場合』に関して説明する。
【0119】
◆『前記取鍋内の溶鋼が、前記連鋳機の備える鋳型に、直接的に注湯される場合』
本実施形態において前記の第1予測手段及び第2予測手段としての前記温度予測機は、上記温度降下幅ΔTd(t)及びその高温側最大バラツキ幅ΔTdu(t)、低温側最大バラツキ幅ΔTdd(t)を予測可能に構成されている。
【0120】
より具体的には、前記の温度予測機は、前記取鍋からの出鋼温度の時間変化の標準値及び上限値、下限値を予測可能に構成されている。
ここで、「出鋼温度の時間変化の標準値」とは、下記式の如く、前記処理終了温度Th1から温度降下幅ΔTd(t)を引いたものである。
(出鋼温度の時間変化の標準値)=Th1−ΔTd(t)
また、「出鋼温度の時間変化の上限値」とは、下記式の如く、前記「出鋼温度の時間変化の標準値」へその高温側最大バラツキ幅ΔTdu(t)を加えたものである。
(出鋼温度の時間変化の上限値)=Th1−ΔTd(t)+ΔTdu(t)
また、「出鋼温度の時間変化の下限値」は、下記式の如く、前記「出鋼温度の時間変化の標準値」からその低温側最大バラツキ幅ΔTdd(t)を引いたものである。
(出鋼温度の時間変化の下限値)=Th1−ΔTd(t)−ΔTdd(t)
そして、前記の温度予測機は、前記取鍋からの出鋼温度の時間変化の標準値及び上限値、下限値を予測することによって、前記温度降下幅ΔTd(t)及びその高温側最大バラツキ幅ΔTdu(t)、低温側最大バラツキ幅ΔTdd(t)を併せて予測できるものである。
【0121】
以上の理由から、以下説明の便宜上、前記温度降下幅ΔTd(t)及びその高温側最大バラツキ幅ΔTdu(t)、低温側最大バラツキ幅ΔTdd(t)の具体的な予測方法を説明するのに代えて、前記取鍋からの出鋼温度の時間変化の標準値及び上限値、下限値の具体的な予測方法に関して説明する。
【0122】
前述した操業管理装置は、溶鋼処理設備の溶鋼処理装置や取鍋搬送装置などに設けられている各種制御機器やセンサ機器に電気的に接続されている。これにより、当該溶鋼処理装置や取鍋搬送装置などは、その動作/状態が常に前記操業管理装置に把握されるように構成されており、また、当該操業管理装置からの指令に応じて適宜に運転されるように構成されている。
そして、これにより、前記の操業管理装置は、例えば、前記溶鋼処理装置が備える熱電対(センサ機器)などを介して溶鋼処理終了時点における取鍋内の溶鋼温度を測定/把握できるように構成されている。なお、溶鋼処理終了時点において前記溶鋼温度は、取鍋内において略均一であるとされる。同様に、前記の操業管理装置は、取鍋内のスラグ温度も測定/把握できるように構成されている。
【0123】
前記の温度予測機は、前記操業管理装置から受信される適宜の操業データや、溶鋼処理終了時点における取鍋耐火物の温度としての初期耐火物温度に基づいて、溶鋼処理終了時点から出鋼終了時点までの出鋼温度の時間変化を予測可能な非定常伝熱計算用のプログラムを前記の演算処理部(前記の第1予測手段及び第2予測手段)において実行可能に構成されている。
【0124】
前記のプログラムは、例えば前記温度予測機の記憶部に予め記憶されており、前記演算処理部は、当該プログラムを実行しようとする際に当該プログラムを前記記憶部から随時読込み可能に構成されている。なお、これに代えて、当該プログラムが読み書き可能な他の記録媒体に保存され、前記演算処理部は、当該プログラムを実行しようとする際に当該プログラムを当該記録媒体から随時読込み可能に構成されていてもよい。
【0125】
前記の操業データとは、例えば、溶鋼処理終了時点における取鍋内の溶鋼温度及びスラグ温度や、溶鋼処理及び鋳造処理の操業スケジュール、加えて、後述する種々の操業パラメタなどのことである(表1参照)。
なお、溶鋼処理や鋳造処理の操業スケジュールとは、具体的には、溶鋼処理の終了時刻や、連続鋳造設備が備える連続鋳造機への出鋼開始時刻及び出鋼終了時刻などである。
【0126】
また、前記の初期耐火物温度は、前記の操業管理装置から受信する現在の操業(前記種々の操業パラメタ)及び前記の温度予測機の記憶部に保存されている過去の操業(後記の表1及び表2参照)に基づいて求められるものである。
【0127】
また、本実施形態において前記の初期耐火物温度は、現在の及び過去の操業(鉄鋼の製造プロセスの操業条件)に基づいて求められる初期耐火物温度の標準値と、現在の及び過去の操業に基づいて求められる初期耐火物温度の上限値と、現在の及び過去の操業に基づいて求められる初期耐火物温度の下限値と、を含むものである。
【0128】
そして、前記温度予測機は、上記3つの初期耐火物温度(標準値及び上限値、下限値)夫々の場合において前記の非定常伝熱計算を実行するように構成されている。
【0129】
以下、前記非定常伝熱計算の概略と、上記初期耐火物温度の算出方法を説明する。図4は、前記取鍋の縦断面図の模式図である。
【0130】
≪非定常伝熱計算の概要≫
本実施形態において前記非定常伝熱計算は、図4に示す如く、前記取鍋(取鍋蓋を含む。)の耐火物を以下のように要素(又はブロック)分割して実行される。
・前記取鍋の蓋は、鉛直方向に沿って4つに要素分割される。
・前記取鍋の側壁は、半径方向に沿って7つに要素分割され、かつ、鉛直方向に沿って3つにブロック分割される。
・前記取鍋の底盤は、鉛直方向に沿って8つに要素分割される。
そして、前述した初期耐火物温度の標準値及び上限値、下限値は、上記各要素ごとに個別に算出され、設定されるものとする(後記の図8参照)。
なお、前記取鍋の初期耐火物温度は、現在の操業(種々の操業パラメタ:後記の表1参照)の如何により影響を受けやすいとされる(後記の図6及び図7参照)。
従って、本実施形態において前記取鍋の側壁及び底盤の初期耐火物温度は、適宜の基準初期耐火物温度(表2参照:後記の図5参照)を、現在の及び過去の操業に基づいて適宜に補正する(端的に言えば、図8=図5+図6+図7)ことにより求めるものとする。
【0131】
表1には、前記操業管理装置から受信される種々の操業パラメタに明らかな異常がある場合は適宜に当該操業パラメタを修正するために用いられる操業パラメタ修正テーブルと、必要に応じて修正された現在の操業(種々の操業パラメタ)に基づいて、前記基準初期耐火物温度を補正するための温度補正係数を求めるための温度補正係数算出テーブルと、が示されている。なお、当該表1は、前記温度予測機の記憶部に予め入力/記憶されている。
表2には、溶鋼処理の処理方法ごとに、かつ、前記の取鍋蓋・側壁・底盤の各要素ごとに予め用意されている前記基準初期耐火物温度テーブルが示されている。当該表2も、前記温度予測機の記憶部に予め入力/記憶されている。なお、取鍋の側壁に関する当該基準初期耐火物温度は、例えば図5の如くである。
【0132】
【表1】

【0133】
【表2】

【0134】
図9は、前記取鍋の初期耐火物温度を算出するためのサブルーチンを示す図である。本実施形態において本図のサブルーチンは、溶鋼処理が終了した後に限らず、溶鋼処理中においても随時、前記温度予測機の演算処理部において実行される(S301)。そして、前記温度予測機は、その演算処理部が当該サブルーチンを実行する際に、前記操業管理装置から適宜に前記操業データを受信したり、当該温度予測機の記憶部に予め入力/記憶されている種々のテーブル(表1及び表2参照)を適宜参照したりできるように構成されている。
【0135】
≪定数設定(S302)≫:図10参照
まず、本サブルーチンで使用される各定数を設定する。
・「雰囲気温度」とは、外気温のことである。
・「内面仮想厚み」とは、下記式で定義されるものである。
(内面仮想厚み)=(耐火物の熱伝導率)/(付着物の熱伝導率)×(付着物の厚み)
即ち、耐火物の内側と溶鋼との間には、残存スラグ・地金・変質した耐火物などの付着物が存在するため熱伝導が低下する。そこで、上記内面仮想厚みとは、これら残存スラグなどの付着物による影響を、耐火物の厚みが内面側へ増加したものとして置き換えることにより、考慮しようとするものである。
・「外面仮想厚み」とは、下記式で定義されるものである。
(外側仮想厚み)=(耐火物の熱伝導率)/(鉄皮などの熱伝導率)×(鉄皮などの厚み)
即ち、耐火物の外側と大気との間には、鉄皮や種々の付着物が存在するため熱伝導が低下する。そこで、上記外面仮想厚みとは、これら鉄皮などによる影響を、耐火物の厚みが外面側へ増加したものとして置き換えることにより、考慮しようとするものである。
【0136】
≪初期耐火物温度(蓋)の読込み(S303)≫:図11参照
本実施形態において前記取鍋蓋の各要素の初期耐火物温度は、上記表2の如く予め用意されている前記の基準初期耐火物温度を読み込んでそのまま使用するものとする。なお、当該取鍋蓋の初期耐火物温度の標準値及び上限値、下限値は、計算開始時点に限って言えば、いずれも同一の値とする。
【0137】
≪種々の操業パラメタの取得(S304)≫:図12参照
次に、前記操業管理装置から、現在の操業(種々の操業パラメタ)を取得/受信する。
なお、当該操業管理装置から直接的に取得できない操業パラメタは、取得できる操業パラメタに基づいて温度予測機内で適宜に算出することとする。例えば、本図パラメタ(7)「取鍋の保熱終了時点から、転炉からの出鋼終了時点までの時間」は、前記操業管理装置から保熱終了時刻と転炉出鋼終了時刻とを取得し、これらの差を求めることで算出され得る。
【0138】
≪操業パラメタの修正と温度補正係数の算出(S305)≫:図13参照
次に、上記(S304)で得られた現在の操業パラメタに異常がないか検証する。
具体的には、例えば、パラメタ(1)を前記操業管理装置から何らかの原因で取得/受信できなかった場合は、そのままでは計算上不具合を生じてしまうので、表1に示す操業パラメタ修正テーブルのデフォルト値を代わりに使用することとする。
また、例えば、前記操業管理装置から取得/受信されたパラメタ(2)が何らかの原因で異常に大きな値であった場合は、操業パラメタ修正テーブルの上限値を代わりに使用することとする。
そして、前記温度補正係数(標準値及び上限値、下限値)を、(必要に応じて適宜に修正された)現在の操業(操業パラメタ)と、過去の操業(前記温度補正係数算出テーブルの各係数)と、に基づいて算出する。
【0139】
≪初期耐火物温度(側壁)の計算(S306)≫:図14参照
次に、前記取鍋の側壁の初期耐火物温度(標準値及び上限値、下限値)を計算する。
前述の通り前記取鍋の側壁は、半径方向及び鉛直方向に沿って複数の要素に分割されている。溶鋼処理終了時点では取鍋内の溶鋼の温度は均一とされるので、当該溶鋼処理終了時点において前記初期耐火物温度は、半径方向にのみ温度差を有するものとし、鉛直方向には温度差を有さないものとする。
従って、まず、前記取鍋の側壁の鉛直方向最下端の要素群に関してのみ初期耐火物温度を求め、当該要素群の鉛直方向上方の他の要素群には、当該要素群の初期耐火物温度と同一の値を代入するものとする。
【0140】
具体的には、以下の如くである。
まず、本図に示す如く、前記の雰囲気温度と、側壁基準温度の内面の値と、に基づいて内面補正基準温度を定義する。外面補正基準温度も同様に定義する。なお、これら内面補正基準温度などは、計算において便宜上使用するものである。また、前記「側壁基準温度の内面の値(テーブル値)」とは、側壁耐火物の溶鋼に接する要素の温度であり、表2の要素番号1の耐火物温度を示す。
【0141】
次に、前記要素群の個々の要素における初期耐火物温度を求める。なお、「側壁耐火物座標(テーブル値)(I)」とは、前記要素群のうち、取鍋内面から数えてI番目の要素の座標(代表値)であり、「代表値」とは当該要素の外径と内径との平均値を意味する。また、当該「側壁耐火物座標(テーブル値)(I)」は、予め前記温度予測機の記憶部に入力/記憶されているものである。なおまた、当該「側壁耐火物座標(テーブル値)(I)」に対する前記「内面仮想厚み」を用いた補正は、この段階では行わない。
まず、先に求めた温度補正係数を使用して、内面放熱補正値を求める。なお、前記温度補正係数には前述の如く標準値及び上限値、下限値が含まれているので、当該内面放熱補正値も同様にその標準及び上限、下限が求められる(図6参照)。
同様に、外面放熱補正値も求める(図7参照)。
そして、前記基準初期耐火物温度(図5)と内面放熱補正値(図6)と外面放熱補正値(図7)とを足し合わせることによって、取鍋の側壁の初期耐火物温度(図8参照)を求める。
また、上記の如く求められた初期耐火物温度を、鉛直方向上方の他の要素群の初期耐火物温度に代入する。
【0142】
≪初期耐火物温度(底盤)の計算(S307)≫:図15参照
前記取鍋の底盤の初期耐火物温度の計算方法は、上述した側壁の初期耐火物温度の計算方法と略同様である。
【0143】
以上が、前記取鍋耐火物の各要素における初期耐火物温度の標準値及び上限値、下限値の算出方法である(図8参照:S308)。
【0144】
なお、表1に示される操業パラメタ修正テーブルや温度補正係数算出テーブル、及び表2に示される基準初期耐火物温度テーブルは、種々の方法により求めることができる。
例えば、溶鋼処理の過去の操業を統計処理して求めたり、または、溶鋼処理設備の操業者の経験に基づいて求めたり、または、公知の伝熱計算をして求めたり、あるいは、これらを組み合わせて求めたりすることもできる。
【0145】
次に、以上の如く求められた初期耐火物温度(標準値及び上限値、下限値)に基づいて行われる前記非定常伝熱計算の特徴的な部分に関して説明する。本実施形態において当該非定常伝熱計算は、前記初期耐火物温度としてその標準値を用いる場合、その上限値を用いる場合、そして、その下限値を用いる場合、夫々の場合において実行される。
なお、前記温度予測機は、当該非定常伝熱計算を実行する際に、予め前記操業管理装置から、溶鋼処理終了時点における取鍋内の溶鋼温度及びスラグ温度や、溶鋼処理及び鋳造処理の操業スケジュールを取得/受信する。なぜなら、当該非定常伝熱計算は、初期耐火物温度のみならず、前記溶鋼温度及びスラグ温度、操業スケジュールにも基づいて実行されるものだからである。
【0146】
≪概略≫
本実施形態において前記取鍋から溶鋼が出鋼するための出鋼孔は、図16に示す如く、当該取鍋の底盤の中心から側壁へ向かって所定の距離、離れて設けられている。
そして、図4に示す如く、取鍋内の溶鋼及びスラグは、適宜の大きさのブロックに分割されて取り扱われる。そして、本実施形態において前記非定常伝熱計算は、微視的に見れば、各ブロック間における非定常1次元差分伝熱計算となっている。各ブロック間における熱移動は、後述する熱対流及び/又は溶鋼流動に伴って発生するものとする。
なお、本実施形態における前記非定常伝熱計算は、前記取鍋内の溶鋼の当該取鍋(側壁/底盤)による抜熱量が一定であるとみなして実行される。また、取鍋(側壁/底盤)の形状に関しても同様である。
【0147】
≪溶鋼及びスラグのブロック分割≫
本実施形態において前記溶鋼は、図4に示す如く、鉛直方向に少なくとも2以上(本実施形態では3つ)のブロック群(下部ブロック及び中央ブロック、上部ブロック)に分割される。そして、当該ブロック群のうち、鉛直方向最も下方に位置するブロックとしての下部ブロックは、更に水平方向に、前記出鋼孔側の下部孔ブロックと、他方側の下部滞留ブロックとに分割される。
なお、前記下部滞留ブロックは、図16に示す溶鋼流動の澱みが発生する箇所と対応関係にある。また、本実施形態において当該溶鋼に浮設される(浮いた状態で設けられる)スラグは鉛直方向に2つのブロックに分割される。
【0148】
≪搬送中の熱対流のモデル化≫
図17に示す如く、取鍋の搬送中においては、前記下部滞留ブロック及び下部孔ブロック、前記中央ブロックから前記上部ブロックへ向かって所定の熱量が移動するものとする。これにより、取鍋の搬送中における溶鋼の自然熱対流を、当該非定常伝熱計算に反映することができる。
【0149】
≪出鋼中の溶鋼流動のモデル化≫
前述の如く出鋼中における溶鋼流動には、その出鋼孔から遠い地点において澱みが発生する(図16参照)。そして、この澱んでいる溶鋼は、図16に示すようなシミュレーションによれば、例え取鍋の下部に位置しているとしても、より上部側の溶鋼より先には出鋼しないことが明らかとなっている。
そこで、本実施形態においては、取鍋内の溶鋼の総量が前記下部ブロックで表される溶鋼量を上回っている限り、当該下部滞留ブロック内の溶鋼は、隣接する他のブロックとの境界を越えて溶鋼流動しないものとし(図18(a)参照)、一方、当該取鍋内の溶鋼の総量が、前記下部ブロックで表される溶鋼量を下回ったときに限り、当該下部滞留ブロック内の溶鋼は、隣接する他のブロックとの境界を越えて溶鋼流動するものとする(図18(b)参照)。要するに、取鍋内の総溶鋼量によって各ブロック間の溶鋼流動/熱移動を切り替えるように構成されているのである。
【0150】
≪非定常伝熱計算の計算結果≫
以上説明した非定常伝熱計算により求められた出鋼温度の時間変化を、図19に示す。本図に示す如く、本実施形態における温度予測機によれば、前記出鋼温度の時間変化の標準値及び上限値、下限値を求めることができる。
また、図19に示される前記出鋼温度の時間変化の標準値(予測値)とその実測値とを、図20に併せて示す。本図によれば、上述した非定常伝熱計算が、前記出鋼温度の時間変化を定性的に且つ定量的に良好に再現できることが判る。
【0151】
本実施形態では、上記の如く求められた前記出鋼温度の時間変化の標準値及び上限値、下限値(図19参照)に基づいて、前述したように、前記温度降下幅ΔTd(t)及びその高温側最大バラツキ幅ΔTdu(t)、低温側最大バラツキ幅ΔTdd(t)が求められるのである。
【0152】
◆『前記取鍋内の溶鋼が、前記連鋳機の備える鋳型に、タンディッシュを介して注湯される場合』
次に、前記取鍋内の溶鋼が、前記連鋳機の備える鋳型に、タンディッシュを介して注湯される場合における、前記の温度降下幅ΔTd(t)及びその高温側最大バラツキ幅ΔTdu(t)、低温側最大バラツキ幅ΔTdd(t)の具体的な予測方法に関して説明する。
この場合も、前記の温度予測機は、前記タンディッシュからの出鋼温度の時間変化の標準値及び上限値、下限値を予測可能に構成されている。
ここで、「タンディッシュからの出鋼温度の時間変化の標準値」は、下記式の如く、前記処理終了温度Th1から温度降下幅ΔTd(t)を引いたものとなる。
(タンディッシュからの出鋼温度の時間変化の標準値)=Th1−ΔTd(t)
また、「タンディッシュからの出鋼温度の時間変化の上限値」は、下記式の如く、前記「タンディッシュからの出鋼温度の時間変化の標準値」へその高温側最大バラツキ幅ΔTdu(t)を加えたものとなる。
(タンディッシュからの出鋼温度の時間変化の上限値)=Th1−ΔTd(t)+ΔTdu(t)
また、「タンディッシュからの出鋼温度の時間変化の下限値」は、下記式の如く、前記「タンディッシュからの出鋼温度の時間変化の標準値」からその低温側最大バラツキ幅ΔTdd(t)を引いたものとなる。
(タンディッシュからの出鋼温度の時間変化の下限値)=Th1−ΔTd(t)−ΔTdd(t)
そして、前記の温度予測機は、前記タンディッシュからの出鋼温度の時間変化の標準値及び上限値、下限値を予測することによって、前記温度降下幅ΔTd(t)及びその高温側最大バラツキ幅ΔTdu(t)、低温側最大バラツキ幅ΔTdd(t)を併せて予測できるものである。
【0153】
以上の理由から、以下説明の便宜上、前記温度降下幅ΔTd(t)及びその高温側最大バラツキ幅ΔTdu(t)、低温側最大バラツキ幅ΔTdd(t)の具体的な予測方法を説明するのに代えて、前記タンディッシュからの出鋼温度の時間変化の標準値及び上限値、下限値の具体的な予測方法に関して説明する。
なお、前記取鍋からの出鋼温度の時間変化の標準値及び上限値、下限値の具体的な予測方法は、前述した通りである。
また、前記タンディッシュ内における溶鋼の非定常伝熱計算も前記取鍋内における溶鋼のそれと略同様である。
従って、以下、前記タンディッシュの初期耐火物温度の算出方法を中心に説明することとする。
【0154】
なお、本実施形態において前記タンディッシュの初期耐火物温度も、前述した取鍋のそれと同様に、現在の及び過去の操業に基づいて求められる初期耐火物温度の標準値と、現在の及び過去の操業に基づいて求められる初期耐火物温度の上限値と、現在の及び過去の操業に基づいて求められる初期耐火物温度の下限値と、を含むものである。
【0155】
そして、前記温度予測機は、上記3つの初期耐火物温度(標準値及び上限値、下限値)夫々の場合において前記の非定常伝熱計算を実行するように構成されている。
具体的には、前記取鍋の初期耐火物温度としてその標準値を用いる場合は、前記タンディッシュの初期耐火物温度としてその標準値を用いることとする。
また、前記取鍋の初期耐火物温度としてその上限値を用いる場合は、前記タンディッシュの初期耐火物温度としてその上限値を用いることとする。
また、前記取鍋の初期耐火物温度としてその下限値を用いる場合は、前記タンディッシュの初期耐火物温度としてその下限値を用いることとする。
【0156】
表3には、前記操業管理装置から受信される種々の操業パラメタに明らかな異常がある場合は適宜に当該操業パラメタを修正するために用いられる操業パラメタ修正テーブルと、必要に応じて修正された現在の操業(種々の操業パラメタ)に基づいて、前記タンディッシュの基準初期耐火物温度を補正するための温度補正係数を求めるための温度補正係数算出テーブルと、が示されている。なお、当該表3は、前記温度予測機の記憶部に予め入力/記憶されている。
表4には、処理工程ごとに、かつ、前記のタンディッシュの蓋・側壁(溶鋼面)・側壁(非溶鋼面)・底盤の各要素ごとに予め用意されている前記基準初期耐火物温度テーブルが示されている。当該表4も、前記温度予測機の記憶部に予め入力/記憶されている。
【0157】
【表3】

【0158】
【表4】

【0159】
図21は、前記タンディッシュの初期耐火物温度を算出するためのサブルーチンを示す図である。本実施形態において本図のサブルーチンは、溶鋼処理が終了した後に限らず、溶鋼処理中にも随時、前記温度予測機の演算処理部において実行される(S310)。前記温度予測機は、当該サブルーチンを実行する際に、前記操業管理装置から適宜に前記操業データを受信したり、当該温度予測機の記憶部に予め入力/記憶されている種々のテーブル(表3及び表4参照)を適宜参照したりできるように構成されている。
なお、本図に示されるサブルーチンは、図9に示されるサブルーチン(前記取鍋の初期耐火物温度の算出に係るもの)より前に実行されてもよいし、後に実行されてもよい。
【0160】
≪定数設定(S311)≫:図22参照
まず、本サブルーチンで使用される各定数を設定する。
【0161】
≪処理工程の場合分け(S312)≫
次に、前記操業管理装置から、現在の操業(タンディッシュの使用状態及び溶鋼に対する加熱の有無)を取得/受信する。なお、当該操業管理装置は、前記連続鋳造設備の連鋳機が備えるタンディッシュと電気的に接続されており、操業管理装置は当該タンディッシュから適宜のデータ等を取得できるように構成されている。
そして、処理工程を、下記の如く場合分けする(表4も併せて参照)。
・処理工程が「新品加熱」である、とは、タンディッシュの修理回数が一度以下であって、かつ、前記加熱がある場合である。
・処理工程が「新品無加熱」である、とは、タンディッシュの修理回数が一度以下であって、かつ、前記加熱がない場合である。
・処理工程が「加熱再利用」である、とは、タンディッシュが連続的に再利用されており且つ前記加熱がある場合、または、タンディッシュが連続的ではないが再利用されており且つ前記加熱がある場合である。
・処理工程が「無加熱再利用」である、とは、タンディッシュが連続的に再利用されており且つ前記加熱がない場合、または、タンディッシュが連続的ではないが再利用されており且つ前記加熱がない場合である。
なお、前記加熱がある場合は、図略の変数「加熱フラグ(デフォルトはfalse)」にtrueを代入しておく。
【0162】
≪初期耐火物温度(蓋)の読込み(S313)≫:図23参照
本実施形態において前記タンディッシュ蓋の各要素の初期耐火物温度は、上記表4の如く予め用意されている前記の基準初期耐火物温度を読み込んでそのまま使用するものとする。なお、当該タンディッシュ蓋の初期耐火物温度の標準値及び上限値、下限値は、計算開始時点に限って言えば、いずれも同一の値とする。
【0163】
≪種々の操業パラメタを取得(S314)≫:図24参照
次に、前記操業管理装置から、現在の操業(種々の操業パラメタ)を取得/受信する。
【0164】
≪操業パラメタの修正と温度補正係数の算出(S315)≫:図25参照
次に、上記(S314)で得られた現在の操業パラメタに異常がないか検証する。
【0165】
≪初期耐火物温度(側壁:溶鋼面)の計算(S316)≫:図26参照
次に、前記タンディッシュの側壁(溶鋼面)の初期耐火物温度(標準値及び上限値、下限値)を計算する。
なお、「側壁:溶鋼面」とは、側壁のうち、溶鋼に直接的に接触しているもののことである。
【0166】
≪初期耐火物温度(側壁:非溶鋼面)の計算(S317)≫:図27参照
次に、前記タンディッシュの側壁(非溶鋼面)の初期耐火物温度(標準値及び上限値、下限値)を計算する。
なお、「側壁:非溶鋼面」とは、側壁のうち、溶鋼に接触していないもののことである。
【0167】
≪初期耐火物温度(底盤)の計算(S318)≫:図28参照
次に、前記タンディッシュの底盤の初期耐火物温度(標準値及び上限値、下限値)を計算する。
【0168】
以上が、前記タンディッシュの耐火物の各要素における初期耐火物温度の標準値及び上限値、下限値の算出方法である(S319)。
【0169】
なお、表3に示される操業パラメタ修正テーブルや温度補正係数算出テーブル、及び表4に示される基準初期耐火物温度テーブルは、種々の方法により求めることができる。
例えば、溶鋼処理の過去の操業を統計処理して求めたり、または、溶鋼処理設備の操業者の経験に基づいて求めたり、または、公知の伝熱計算をして求めたり、あるいは、これらを組み合わせて求めたりすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】溶鋼の注湯温度の目標値に対するズレと、その頻度を表す図。
【図2】溶鋼の注湯温度の目標値に対するズレと、その頻度を表す図。
【図3】ディスプレイに表示される内容を示す図。
【図4】取鍋の縦断面図の模式図。
【図5】基準初期耐火物温度を示す図。
【図6】内面放熱補正値を示す図。
【図7】外面放熱補正値を示す図。
【図8】初期耐火物温度を示す図。
【図9】取鍋の初期耐火物温度を算出するためのサブルーチンを示す図。
【図10】図7に示されるサブルーチンの具体的な内容。
【図11】図7に示されるサブルーチンの具体的な内容。
【図12】図7に示されるサブルーチンの具体的な内容。
【図13】図7に示されるサブルーチンの具体的な内容。
【図14】図7に示されるサブルーチンの具体的な内容。
【図15】図7に示されるサブルーチンの具体的な内容。
【図16】出鋼時における取鍋内溶鋼の溶鋼流動のシミュレーション結果を示す図。
【図17】搬送中の熱対流のモデルを示す図。
【図18】出鋼中の溶鋼流動のモデルを示す図。
【図19】本実施形態における非定常伝熱計算の計算結果を示す図。
【図20】本実施形態における非定常伝熱計算の計算結果と実測値とを示す図。
【図21】タンディッシュの初期耐火物温度を算出するためのサブルーチンを示す図。
【図22】図21に示されるサブルーチンの具体的な内容。
【図23】図21に示されるサブルーチンの具体的な内容。
【図24】図21に示されるサブルーチンの具体的な内容。
【図25】図21に示されるサブルーチンの具体的な内容。
【図26】図21に示されるサブルーチンの具体的な内容。
【図27】図21に示されるサブルーチンの具体的な内容。
【図28】図21に示されるサブルーチンの具体的な内容。
【符号の説明】
【0171】
1 座標軸
A チャージ
a1 処理終了温度の上限許容値
a2 注湯温度の上限値
a3 処理終了温度の下限許容値
a4 注湯温度の下限値
Tcmax 注湯温度範囲の上限値
Tcmin 注湯温度範囲の下限値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd:[℃])を予測し、
前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu:[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd:[℃])を予測し、
前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1:[℃])が下記式(1)及び(2)を同時に満足するように溶鋼処理設備を操業する、ことを特徴とする鉄鋼の製造プロセスの操業方法。
Th1≦Tcmax+ΔTd(t)−ΔTdu(t)・・・(1)
Th1≧Tcmin+ΔTd(t)+ΔTdd(t)・・・(2)
ただし、
Tcmax[℃]は溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値であり、
Tcmin[℃]は前記注湯温度範囲の下限値であり、
tは時刻を表し、そのとり得る範囲は、前記取鍋内の溶鋼が鋳型へ注湯され始めた時点から、注湯され終わる時点までとする。
【請求項2】
取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd:[℃])を予測し、
前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu:[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd:[℃])を予測し、
下記式(1)及び(2)を同時に満足する、前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1:[℃])が存在しない場合は、
前記処理終了温度が下記式(3)を満足するように溶鋼処理設備を操業する、ことを特徴とする鉄鋼の製造プロセスの操業方法。
Th1≦Tcmax+ΔTd(t)−ΔTdu(t)・・・(1)
Th1≧Tcmin+ΔTd(t)+ΔTdd(t)・・・(2)
Th1=Tcmin+ΔTd(t)+ΔTdd(t)・・・(3)
ただし、
Tcmax[℃]は溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値であり、
Tcmin[℃]は前記注湯温度範囲の下限値であり、
tは時刻を表し、そのとり得る範囲は、前記取鍋内の溶鋼が鋳型へ注湯され始めた時点から、注湯され終わる時点までとする。
【請求項3】
取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd:[℃])を予測し、
前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu:[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd:[℃])を予測し、
下記式(1)及び(2)を同時に満足する、前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1:[℃])が存在しない場合であって、
取鍋内の溶鋼を、適宜の溶鋼加熱手段を備えるタンディッシュを介して鋳型へ注湯する場合は、
前記処理終了温度が下記式(4)を満足するように溶鋼処理設備を操業する、ことを特徴とする鉄鋼の製造プロセスの操業方法。
Th1≦Tcmax+ΔTd(t)−ΔTdu(t)・・・(1)
Th1≧Tcmin+ΔTd(t)+ΔTdd(t)・・・(2)
Th1=Tcmax+ΔTd(t)−ΔTdu(t)・・・(4)
ただし、
Tcmax[℃]は溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値であり、
Tcmin[℃]は前記注湯温度範囲の下限値であり、
tは時刻を表し、そのとり得る範囲は、前記取鍋内の溶鋼が鋳型へ注湯され始めた時点から、注湯され終わる時点までとする。
【請求項4】
取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd:[℃])を予測し、
前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu:[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd:[℃])を予測し、
下記式(1)及び(2)を同時に満足する、前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1[℃])が存在しない場合は、
前記処理終了温度が下記式(5)を満足するように溶鋼処理設備を操業する、ことを特徴とする鉄鋼の製造プロセスの操業方法。
Th1≦Tcmax+ΔTd(t)−ΔTdu(t)・・・(1)
Th1≧Tcmin+ΔTd(t)+ΔTdd(t)・・・(2)
MAX(Th1−ΔTd(t)+ΔTdu(t)−Tcmax)−
MAX(Tcmin−(Th1−ΔTd(t)−ΔTdd(t)))=0・・・(5)
ただし、
Tcmax[℃]は溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値であり、
Tcmin[℃]は前記注湯温度範囲の下限値であり、
tは時刻を表し、そのとり得る範囲は、前記取鍋内の溶鋼が鋳型へ注湯され始めた時点から、注湯され終わる時点までとし、
MAX(x(t))はx(t)の最大値を表すものとする。
【請求項5】
溶鋼処理設備の操業者としての溶鋼処理操業者は、連続鋳造設備の操業者としての連鋳操業者に対して、前記処理終了温度と、前記注湯温度範囲の上限値を上回る恐れのある最大の温度幅及び/又は下限値を下回る恐れのある最大の温度幅と、を事前に報知する、ことを特徴とする請求項2〜4の何れか記載の鉄鋼の製造プロセスの操業方法。
【請求項6】
溶鋼処理設備の操業者としての溶鋼処理操業者は、連続鋳造設備の操業者としての連鋳操業者に対して、連続鋳造速度と、連続鋳造を始動させる際に最初に溶鋼を鋳型に注湯し始める時刻としての注湯開始時刻と、のうち少なくとも何れか一方を事前に指示する、ことを特徴とする請求項2に記載の鉄鋼の製造プロセスの操業方法。
【請求項7】
溶鋼処理設備の操業者としての溶鋼処理操業者は、連続鋳造設備の操業者としての連鋳操業者に対して、連続鋳造速度と、連続鋳造を始動させる際に最初に溶鋼を鋳型に注湯し始める時刻としての注湯開始時刻と、前記溶鋼加熱手段の溶鋼に対する加熱条件と、のうち少なくとも何れか一を事前に指示する、ことを特徴とする請求項3に記載の鉄鋼の製造プロセスの操業方法。
【請求項8】
取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1:[℃])を測定し、
前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd:[℃])を予測し、
前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu:[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd:[℃])を予測し、
下記式(6)又は(7)のうち少なくとも何れか一方が満足されない場合は、
溶鋼処理設備の操業者としての溶鋼処理操業者は、連続鋳造設備の操業者としての連鋳操業者に対して、前記連続鋳造設備の操業条件を事前に指示する、ことを特徴とする鉄鋼の製造プロセスの操業方法。
Th1−ΔTd(t)+ΔTdu(t)≦Tcmax・・・(6)
Th1−ΔTd(t)−ΔTdu(t)≧Tcmin・・・(7)
ただし、
Tcmax[℃]は溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値であり、
Tcmin[℃]は前記注湯温度範囲の下限値であり、
tは時刻を表し、そのとり得る範囲は、前記取鍋内の溶鋼が鋳型へ注湯され始めた時点から、注湯され終わる時点までとする。
【請求項9】
前記溶鋼処理操業者が前記連鋳操業者に対して事前に指示する前記連続鋳造設備の操業条件は、連続鋳造速度と、連続鋳造を始動させる際に最初に溶鋼を鋳型に注湯し始める時刻としての注湯開始時刻と、のうち少なくとも何れか一方とする、ことを特徴とする請求項8に記載の鉄鋼の製造プロセスの操業方法。
【請求項10】
前記式(7)が満足されない場合であって、
前記取鍋内の溶鋼が適宜の溶鋼加熱手段を備えるタンディッシュを介して鋳型へ注湯される場合は、
前記溶鋼処理操業者が前記連鋳操業者に対して事前に指示する前記連続鋳造設備の操業条件は、連続鋳造速度と、連続鋳造を始動させる際に最初に溶鋼を鋳型に注湯し始める時間としての注湯開始時刻と、前記溶鋼加熱手段の溶鋼に対する加熱条件と、のうち少なくとも何れか一とする、ことを特徴とする請求項8に記載の鉄鋼の製造プロセスの操業方法。
【請求項11】
鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd(t):[℃])を予測可能な第1予測手段を備え、
鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu(t):[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd(t):[℃])を予測可能な第2予測手段を備え、
溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値及び下限値と、
未だ溶鋼処理中の取鍋に関しては、
前記高温側最大バラツキ幅を加味しても、溶鋼の、鋳型へ注湯される際の温度としての注湯温度が前記上限値を上回らない、前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1:[℃])の上限許容値と、
前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、前記処理終了温度を前記上限許容値としたときの前記注湯温度の上限値と、
前記低温側最大バラツキ幅を加味しても、前記注湯温度が前記下限値を下回らない、前記処理終了温度の下限許容値と、
前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、前記処理終了温度を前記下限許容値としたときの前記注湯温度の下限値と、
を同一の画面に表示する表示手段を備える、ことを特徴とする鉄鋼の製造プロセスに用いられる操業装置。
【請求項12】
鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd(t):[℃])を予測可能な第1予測手段を備え、
鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu(t):[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd(t):[℃])を予測可能な第2予測手段を備え、
溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値及び下限値と、
既に搬送中の取鍋に関しては、
測定した、前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1:[℃])に基づいて前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、溶鋼の、鋳型へ注湯される際の温度としての注湯温度の上限値及び下限値と、
を同一の画面に表示する表示手段を備え、
当該画面に表示される内容は適宜の時間ごとに更新される、ことを特徴とする鉄鋼の製造プロセスに用いられる操業装置。
【請求項13】
鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点から鋳型への注湯開始時点までの温度降下幅(ΔTd(t):[℃])を予測可能な第1予測手段を備え、
鉄鋼の製造プロセスの操業条件に基づいて、前記温度降下幅の高温側最大バラツキ幅(ΔTdu(t):[℃])及び低温側最大バラツキ幅(ΔTdd(t):[℃])とを予測可能な第2予測手段を備え、
溶鋼の、鋳型へ注湯される際の好適な温度の範囲としての注湯温度範囲の上限値及び下限値と、
未だ溶鋼処理中の取鍋に関しては、
前記高温側最大バラツキ幅を加味しても、溶鋼の、鋳型へ注湯される際の温度としての注湯温度が前記上限値を上回らない、前記取鍋内の溶鋼の、溶鋼処理終了時点における溶鋼温度としての処理終了温度(Th1:[℃])の上限許容値と、
前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、前記処理終了温度を前記上限許容値としたときの前記注湯温度の上限値と、
前記低温側最大バラツキ幅を加味しても、前記注湯温度が前記下限値を下回らない、前記処理終了温度の下限許容値と、
前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、前記処理終了温度を前記下限許容値としたときの前記注湯温度の下限値と、
前記取鍋に先行して溶鋼処理され、既に搬送中の取鍋に関しては、
測定した、前記処理終了温度(Th1:[℃])に基づいて前記第1予測手段及び前記第2予測手段によって求められる、溶鋼の、鋳型へ注湯される際の温度としての注湯温度の上限値及び下限値と、
を同一の画面に表示する表示手段を備え、
当該画面に表示される内容は適宜の時間ごとに更新される、ことを特徴とする鉄鋼の製造プロセスに用いられる操業装置。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の前記表示手段は、
前記注湯温度の測定値も前記画面に表示する、ことを特徴とする鉄鋼の製造プロセスに用いられる操業装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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