説明

鉛の電解方法

【課題】 全てを湿式法により行う鉛の処理ができる方法が要望されている。
【解決手段】スルファミン酸100〜200g/Lの溶液中にPbを20〜120g/Lに溶かし込んだ溶液から電解採取により鉛をアノード側から二酸化鉛、カソード側から鉛メタルとして回収する鉛の電解方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄製錬、基盤や電子部品などリサイクル原料の溶融炉、及び産業廃棄物を溶融処理する乾式炉より発生する乾式煙灰中に含まれているPbを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄製錬、基盤や電子部品などリサイクル原料の溶融炉、及び産業廃棄物を溶融処理する乾式炉より非鉄製錬の乾式煙灰中に含まれているPbを回収するため、煙灰を硫酸浸出し、硫酸鉛にした後、電気炉で溶融還元を行う。溶融還元により分離されたメタルをソーダ処理し、その後、メタルをアノード鋳造した後、珪フッ素酸浴中にて電解精製することでPbを回収している。
また、特許文献1では、鉛を炭酸塩にする手法が開示されているが、後工程において、硝酸を用いている。
【0003】
上記方法では、前処理工程が乾式法であり、排ガス処理設備を設置する必要性がある。
また、更に後工程の電解精製では、珪フッ素酸を用いていることから、排水にフッ素を処理する設備が必要となる。
【0004】
特許文献1では、硝酸を使用していることから、溶液中から鉛を回収するために硫酸を添加し、硫酸鉛として回収している。しかし、本発明では、スルファミン酸で浸出された溶液を電解採取することで、板状の二酸化鉛と電着鉛として回収することができる。
【特許文献1】特開2000−109939 鉛滓からの鉛、錫、ビスマスの分離方法 出願人:日鉱金属株式会社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術に対して、全てを湿式法により行う鉛の処理ができる方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決するため以下の発明を成した。
(1)スルファミン酸100〜200g/Lの溶液中にPbを20〜120g/Lまで溶解させた溶液から電解採取により二酸化鉛と鉛メタルとして、鉛を回収する方法。
【0007】
(2)電流密度を100A/m2以下で電解採取することで、鉛を平滑で良好な二酸化鉛と鉛のメタルとして回収する方法。
【0008】
(3)添加剤として、膠200〜300mg/L、βナフトール100〜200mg/L添加することで、鉛を平滑で良好な二酸化鉛と鉛メタルとして回収する方法。
【0009】
(4)電解液の温度を30度以下にすることでスルファミン酸の劣化を防止し、電解採取としての回収率を99%以上にすることができる方法。
【0010】
(5)電解液の温度を20度以上にすることで、鉛を平滑で良好な二酸化鉛と鉛メタルとして回収する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、
(1)湿式法により、容易に鉛を効率良く回収できる方法を見出した。
(2)スルファミン酸で鉛を浸出した溶液を電解採取することで、鉛を平滑で良好な二酸化鉛と電着鉛として鉛を回収することができる方法を見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
原料は、本発明の鉛含有物は、鉛 45mass%、錫7mass%、ビスマス4mass%、銅1mass%、亜鉛8mass%含有する。
例えば、非鉄製錬、基盤や電子部品などリサイクル原料の溶融炉、及び産業廃棄物を溶融処理する乾式炉より発生する乾式煙灰を湿式処理する工程から産出する鉛滓(主成分:PbSO4)、銅転炉ダスト等がある。
上記鉛含有物を、水によりリパルプし、炭酸ソーダにより脱SO4した炭酸化残渣(主成分:PbCO3)とする。
炭酸ソーダは、鉛含有物中のSに対して、1.25〜1.5倍当量添加する。
鉛含有物を炭酸化した後、スルファミン酸浸出を行い、鉛を浸出後、電解採取することにより鉛を回収する。
該電解採取方法としては、その一例を図1に示す。
【0013】
スルファミン酸100〜200g/Lの溶液に鉛を溶解し、鉛濃度を20〜120g/Lに調整した後、アノードとしてカーボン等の不溶解性アノード、カソードとして、Ti板又は、ステンレス板や鉛板を使用することで、アノード側に二酸化鉛、カソード側に電着鉛として鉛を回収することができることが判明した。
トータルスルファミン酸濃度を上げすぎると温度20度の場合、スルファミン酸濃度:213g/Lで飽和状態となり、アノードにスルファミン酸の結晶が析出し、カソードの電着状態が悪化することから、トータルスルファミン酸濃度として200g/L以下が最適である。
次にトータルスルファミン酸濃度が低いと溶液中に鉛が溶け込み難くなることから、スルファミン酸濃度としては、100〜200g/Lが最適である。
【0014】
次に電流密度と電着状態および電流効率の関係を確認した結果、図2に示す通り、電流密度100A/m2以上では、カソードの電着が荒れると共に電流効率が低下することから、電流密度として100A/m2以下が最適である。
【0015】
電着状態を良好にするために電解液に添加剤として膠およびβナフトールを添加した結果、図3に示す通り、膠:200〜300mg/L、βナフトール:100〜200mg/Lが最も電着が平滑で良好な二酸化鉛と電着鉛として鉛を回収することができた。
【0016】
電解液の温度に関して、液温を30度以上まで上げた結果、電着状態は、良好であったが、電解液であるスルファミン酸溶液が加水分解し、スルファミン酸中の硫酸イオンと溶液中の鉛イオンが化合し、硫酸鉛として電槽内に析出するといった問題点が発生する。 図4で示す通り、温度30℃以上からスルファミン酸劣化率が上昇することから、温度30度以下が最適である。逆に温度を20度以下にした場合、スルファミン酸溶液の劣化は、防止することができるが、図5に示す通り、20℃以下では、カソードの電着が悪化することから、電解液の温度管理として、20〜30℃が最適である。
【実施例】
【0017】
(実施例1) 電着鉛を良好にする方法
スルファミン酸100g/L溶液に炭酸鉛を溶かし込み、鉛濃度80g/L、遊離スルファミン酸濃度20g/Lに調整する。循環液として、鉛濃度40g/L、遊離スルファミン酸濃度60g/Lを作製し、電槽内の滞留時間を1時間になるように給液する。
鉛補充液としては、鉛濃度80g/L、遊離スルファミン酸濃度20g/Lを作製し、電解採取により二酸化鉛と鉛メタルとして抜き出される鉛量分を補充液で補充していく。添加剤としては、膠300mg/L、βナフトール100mg/Lになるように電解液に添加する。
【0018】
電解液の温度管理としては、20〜30℃になるように冷凍機およびヒーターにより調整する。
アノードとしては、不溶性アノードとしてカーボンを使用する。カソードとしては、鉛板でよいが、懸垂性を考慮した場合、ステンレス板のほうが最適である。
【0019】
上記の条件において、電流密度を100A/m2、通電時間96時間で実施することで、平滑で良好な二酸化鉛と電着鉛を回収することができると共に電流効率として、アノード側で40%以上、カソード側で90%以上の鉛を回収することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明におけるPb回収手順の一例である。
【図2】本発明における電流密度と電着状態の関係の一例である。
【図3】本発明における電解液中の添加剤(膠、βナフトール)濃度と電着状態の関係の一例である。
【図4】本発明における電解液の温度とpHを変えたときのスルファミン酸劣化率の関係の一例である。
【図5】本発明における電解液の温度と電着状態の関係の一例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルファミン酸100〜200g/Lの溶液中にPbを20〜120g/Lに溶かし込んだ溶液から電解採取により鉛をアノード側から二酸化鉛、カソード側から鉛メタルとして回収することを特徴とする鉛の電解方法。
【請求項2】
電流密度を100A/m2以下で電解採取することで、平滑で良好な二酸化鉛と鉛メタルが回収することができることを特徴とする鉛の電解方法。
【請求項3】
添加剤として、膠200〜300mg/L、βナフトール100〜200mg/L添加することで、平滑で良好な二酸化鉛と鉛のメタルが回収することができることを特徴とする鉛の電解方法。
【請求項4】
電解液の温度として20℃〜30℃にすることでスルファミン酸の劣化を防止できるとともに平滑で良好な二酸化鉛と鉛のメタルが回収することができることを特徴とする鉛の電解方法。




























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−242845(P2009−242845A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89484(P2008−89484)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】