説明

鉛蓄電池とアイドリングストップ車

【構成】
負極板と正極板と、負極板と正極板とを浸す電解液とを備える鉛蓄電池。鉛蓄電池の負極板の格子骨部は表面の少なくとも一部に鉛−アンチモン系合金層を備え、電解液はリチウムイオンとアルミニウムイオンとを含有する。
【効果】
高温と常温の双方でのアイドリングストップ寿命性能を改善できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は鉛蓄電池及びこれを用いたアイドリングストップ車に関し、特にアイドリングストップ寿命性能の改善に用いた鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2009-266514)は、鉛蓄電池の負極格子骨部の表面に鉛−錫−アンチモン系合金層を設けることにより、アイドリングストップモードでの負極の耳痩せを抑制することを開示している。そして特許文献1は、耳痩せ抑制の機構を、合金層中の錫及びアンチモンにより負極の電位が高まったためであるとしている。発明者らも、負極格子骨部の表面に鉛−アンチモン系合金層を設けると、アイドリングストップモードでの負極の耳痩せを抑制できることを、独自に確認している。
【0003】
特許文献2(特開2008-243489)は、鉛蓄電池の電解液に0.01mol/L〜0.3mol/Lのアルミニウムイオンを含有させると共に、ナトリウムイオンの含有量を0.002mol/L〜0.05mol/Lに制限することを開示している。また特許文献3(特開2008-243487)は、鉛蓄電池の電解液に0.01mol/L〜0.3mol/Lのアルミニウムイオンと0.14mol/L以下のリチウムイオンとを含有させることを開示している。特許文献2,3はこれらの構成によりサルフェーションを抑制できるとしている。
【0004】
アイドリングストップ寿命性能は、電池工業会規格(SBA S 0101:2006)により、25℃で測定することが定められている。しかしながら夏期の自動車の走行、気温の高い地方での自動車の走行を考えると、25℃よりも高い温度でのアイドリングストップ寿命性能が問題になる。60℃等の高温では、負極の耳痩せよりも、負極のサルフェーションにより、アイドリングストップモードでの寿命に達することが多い。ここにサルフェーションは、負極の活物質が還元困難な硫酸鉛の粗大結晶に変化する現象である。そこで発明者は、アイドリングストップ寿命性能を改善するため、常温での負極の耳痩せと、高温でのサルフェーションとを抑制することを検討し、この発明に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-266514
【特許文献2】特開2008-243489
【特許文献3】特開2008-243487
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の基本的課題は、高温と常温の双方でのアイドリングストップ寿命性能を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、負極板と正極板と、負極板と正極板とを浸す電解液とを備える鉛蓄電池であって、
前記負極板の格子骨部は表面の少なくとも一部に鉛−アンチモン系合金層を備え、
前記電解液はリチウムイオンとアルミニウムイオンとを含有する、鉛蓄電池にある。
【0008】
またこの発明は、負極板と正極板と、負極板と正極板とを浸す電解液とを備える鉛蓄電池であって、
前記負極板の格子骨部は表面の少なくとも一部に鉛−アンチモン系合金層を備え、
前記電解液はリチウムイオンとアルミニウムイオンとを含有し、かつナトリウムイオンの含有量が0.04mol/L以下であることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記電解液は、0.02mol/L以上0.2mol/L以下のリチウムイオンと、0.02mol/L以上0.2mol/L以下のアルミニウムイオンとを含有する。
また好ましくは、鉛−アンチモン系合金層のアンチモン含有量が1質量%以上10質量%以下である。
【0010】
さらにこの発明は上記の鉛蓄電池を搭載しているアイドリングストップ車にある。
【0011】
この発明の鉛蓄電池は、充電状態が100%未満の状態を中心に動作するPSOC(Partial State of Charge)下で高い寿命性能を発揮し、特に常温から高温までの広い温度範囲で高い寿命性能を発揮する。鉛蓄電池の用途は任意であるが、アイドリングストップ車の始動用蓄電池とすると、常温でも高温でも長寿命な蓄電池となる。なおこの明細書で、アルミニウムイオンの1molは、硫酸アルミニウムの171.05gに相当する。
【0012】
アイドリングストップモードの常温での寿命性能を改善するには、特許文献1で指摘されているように、負極格子骨部の表面に鉛−アンチモンの合金層を設けることが有効であった。しかしながら常温でも高温でも寿命性能を改善するには、
・ 負極格子骨部表面の、アンチモン含有量が1質量%以上10質量%以下の鉛−アンチモンの合金層と、
・ 電解液中のナトリウムイオンの含有量を0.04mol/L以下、好ましくは0.02mol/L以下、とすることと、
・ 電解液中のリチウムイオンの含有量を0.02mol/L以上0.2mol/L以下、好ましくは0.1mol/L以上0.2mol/L以下、とすることと、
・ 電解液中のアルミニウムイオンの含有量を0.02mol/L以上0.2mol/L以下、好ましくは0.1mol/L以上0.2mol/L以下、とすることと、
の組み合わせが必要で、この組み合わせで特異的に常温でも高温でも寿命性能を改善することができた(表1)。
【0013】
次に合金層中のアンチモン含有量の影響を調べたところ、アンチモンが1質量%以上で常温でも高温でも高い寿命性能が得られることが判明し(図2)、アンチモン含有量が10質量%を超える合金層は製造が困難なので、アンチモン含有量を1質量%以上10質量%以下とした。電解液中のナトリウムイオン含有量の影響を調べたところ、ナトリウムイオン含有量が0.04mol/Lを超えると、高温での寿命性能が低下することが判明した(図3)ので、ナトリウムイオン含有量を0.04mol/L以下とした。ナトリウムイオン含有量を小さくすることによって耐短絡性能・過放電性能が悪化するが、後述のリチウムイオンを含有させることで回避できる。なおナトリウムイオン含有量の下限は0である。
【0014】
電解液中のリチウムイオン含有量の影響を調べたところ、0.02mol/L以上で高温での寿命性能が改善し、0.2mol/Lを超えると高温寿命性と常温寿命性能とが低下し始める(図4)ので、リチウムイオン含有量を0.02mol/L以上0.2mol/L以下とした。電解液中のアルミニウムイオン含有量の影響を調べたところ、0.02mol/L以上で常温、高温共に寿命性能が改善し、0.2mol/L付近から高温、常温共に寿命性能が低下し始める(図5)ので、アルミニウムイオン含有量を0.02mol/L以上0.2mol/L以下とした。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例での負極格子の断面図
【図2】負極格子骨部に設けた鉛-アンチモン系合金層中のアンチモン含有量が寿命性能にどのように影響するかを示す特性図で、電解液のナトリウムイオン含有量は0.005mol/Lに、リチウムイオン含有量は0.1mol/Lに、アルミニウムイオン含有量は0.05mol/Lに固定。
【図3】電解液のナトリウムイオン含有量が寿命性能にどのように影響するかを示す特性図で、鉛-アンチモン系合金層中のアンチモン含有量は5質量%に固定し、リチウムイオン含有量は0.1mol/Lに、アルミニウムイオン含有量は0.05mol/Lに固定。
【図4】電解液のリチウムイオン含有量が寿命性能にどのように影響するかを示す特性図で、鉛-アンチモン系合金層中のアンチモン含有量は5質量%に固定し、ナトリウムイオン含有量は0.005mol/Lに、アルミニウムイオン含有量は0.05mol/Lに固定。
【図5】電解液のアルミニウムイオン含有量が寿命性能にどのように影響するかを示す特性図で、鉛-アンチモン系合金層中のアンチモン含有量は5質量%に固定し、ナトリウムイオン含有量は0.005mol/Lに、リチウムイオン含有量は0.1mol/Lに固定。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本願発明の実施形態について説明する。本発明の実施に際しては、当業者の常識及び先行技術の開示に従い適宜に変更できる。
【0017】
本発明にかかる鉛蓄電池は、負極格子骨部に負極活物質を保持させた負極板と、正極格子骨部に正極活物質を保持させた正極板と、負極板と正極板とを浸す電解液とを備える鉛蓄電池であって、前記負極格子骨部は表面の一部(or少なくとも一部)に鉛−アンチモン系合金層を備え、前記電解液は、リチウムイオンと、アルミニウムイオンとを含有することを特徴とする。
鉛−アンチモン系合金層はアンチモン含有量が1質量%以上10質量%以下であり、電解液は、0.02mol/L以上0.2mol/L以下のリチウムイオンと、0.02mol/L以上0.2mol/L以下のアルミニウムイオンとを含有し、ナトリウムイオンの含有量は0.04mol/L以下であることを特徴とする。
正極格子及び負極格子としては、エキスパンド格子が広く用いられているが、打ち抜き格子や鋳造格子でも構わない。
【0018】
負極格子骨部表面の鉛−アンチモン系合金層は、全面に設ける必要はなく、後述の実施例に記載のように、圧延シートの片面にだけ設けてエキスパンド加工して、格子骨部4面のうちの1面にだけ設けても良い。また、鉛−アンチモン系合金層は負極格子骨部のみに設けても、あるいは上下の縁部にも設けても良い。エキスパンド加工により作製した場合の負極格子の骨部断面を図1に示す。2は負極格子骨部基材部で、4は負極格子骨部表面の鉛−アンチモン系合金層である。なお、合金層の厚さは任意であり、格子合金スラブの厚さ、スラブに貼り付ける鉛−アンチモン系合金層の厚さ、圧延後のシート厚さによって決まる。一般的には、10〜50μm程度である。鉛−アンチモン系合金層はアンチモンを1質量%以上10質量%以下含有し、アンチモン含有量が1質量%未満では常温でも高温でもアイドリングストップ寿命性能が僅かしか改善しない。またアンチモン含有量が10質量%超では、鉛−アンチモン系合金箔の製造が困難になる。鉛−アンチモン系合金層は、錫等の第3成分を例えば10質量%以下の範囲で含んでいても良い。
【0019】
正負極格子に、各々活物質ペーストを充填し、熟成することによって未化成の正負極板を得る。正負極活物質ペーストは、鉛粉、添加剤、水及び希硫酸を混合したものであり、鉛粉とはボールミル法やバートン法によって作製された酸化鉛を主成分とした原料である。正極添加剤としてはアクリルなどの短繊維や鉛丹があり、負極の添加剤としてはリグニン、カーボン(カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、膨張化黒鉛など)、硫酸バリウム、短繊維などがあるが、添加の有無・添加量は任意である。
【0020】
正極板と負極板とは、セパレータを介して交互に配列されている。セパレータは、微孔性のポリエチレンセパレータが主流であるが、それ以外に、ポリプロピレン等の他の微孔性の合成樹脂フィルムでも良く、合成繊維の不織布のシートでも良い。
【0021】
正極板及び負極板は、キャストオンストラップ法(COS法)やバーナー溶接法などによって、各々の耳部で接続しており、接続に用いる合金としては、強度、耐振性、加工性などの観点から、鉛−アンチモン系合金が主に用いられているが、鉛−錫系合金や鉛−カルシウム系合金などでも良い。
【0022】
電解液にアルミニウムイオン、リチウムイオンを含有させる方法については、特に制限はなく、電槽化成する際に添加しても、電槽化成後に添加しても良く、アルミニウムイオン源とリチウムイオン源も、例えば、アルミン酸リチウムであったり、硫酸アルミニウムと硫酸リチウム、炭酸リチウム又は水酸化リチウム等とを組み合わせて添加しても良い。
【実施例】
【0023】
鉛蓄電池の製造
SBA S 0101に準拠したN-55形のアイドリングストップ車用鉛蓄電池(公称電圧12V、5時間率定格容量48Ah)を製造した。正極格子は0.07質量%のカルシウムと1.5質量%の錫と不可避不純物とを含み残余が鉛の合金圧延シート(厚さ1.0mm)をロータリエキスパンド法により加工して作製した。正極格子のサイズは、高さが115mm、幅が100mm、厚さが1.3mmである。負極格子は0.05質量%のカルシウムと0.5質量%の錫と不可避不純物とを含み残余が鉛の、鉛−カルシウム−錫系合金のスラブ(厚さ13mm)の格子骨部に対応する位置の片面に、鉛−5質量%アンチモン系合金の箔(厚さ0.25mm)を重ね、0.8mmまで圧延・一体化したシートを、ロータリエキスパンド法により加工して作製した。負極格子のサイズは、高さが115mm、幅が100mm、厚さが1.0mmであり、鉛−アンチモン系合金層の厚さは約15μmである。
【0024】
正極活物質ペーストは、ボールミル法の鉛粉99.9質量%に0.1質量%のアクリル繊維を加えた混合物100質量%に、水13質量%と20℃で比重が1.40の希硫酸6質量%とを混合して作製した。負極活物質ペーストは、ボールミル法の鉛粉98.8質量%に、0.2質量%のリグニン、0.3質量%のカーボンブラック、0.6質量%の硫酸バリウム、0.1質量%のアクリル繊維を加えた混合物100質量%に、水11質量%と20℃で比重1.40の希硫酸7質量%とを混合し、負極活物質ペーストとした。正極格子1枚当たり55g、負極格子1枚当たり52gの活物質ペーストを充填し、各々50℃相対湿度50%で48時間熟成し、次いで50℃の乾燥雰囲気で24時間乾燥させて、未化成の正負極板を得た。
【0025】
微孔性のポリエチレンシートを2つ折りにして両側端をメカニカルシールした袋からなるセパレータに、負極板を収容した。正極板7枚とセパレータに収容した負極板8枚とを交互に積層し、COS法により同極性の格子耳部を溶接し、極板群とした。得られた極板群6個をポリプロピレンの電槽に収納して直列に接続するように溶接した後、電槽と蓋とを熱溶着して、未化成鉛蓄電池を作製した。20℃で比重が1.230の希硫酸に所定量の硫酸アルミニウムと硫酸リチウムとを添加した電解液を注入し、25℃の水槽内で電槽化成を行って、N-55形の鉛蓄電池とした。なお、アンチモンを負極格子骨部の表面ではなく、負極活物質に含有させた比較例(試料A12)も作製した。負極活物質へのアンチモン添加量は300質量ppmであり、負極格子骨部の表面に厚さ15μmの鉛−5質量%アンチモン系合金層を設けたものと、負極当たりのアンチモン含有量がほぼ同じになるようにした。
【0026】
試験法
実施例の鉛蓄電池及び比較例の鉛蓄電池に対し、アイドリングストップ寿命試験(SBA S 0101:2006の9.4.5)を規定通りに常温の25℃で実施すると共に、夏期及び気温が高い地域で長時間自動車を運転した際のエンジンルーム内の雰囲気に対応して、高温の60℃でも実施した。
【0027】
結果
表1〜表3と図2〜図5に結果を示す。結果は鉛−5質量%アンチモンの鉛−アンチモン系合金層を備え、ナトリウムイオンを0.1mol/L含有し、リチウムイオンとアルミニウムイオンとを含有しない、比較例A6の結果を100とする相対値で表示した。アイドリングストップ寿命性能は、鉛蓄電池が寿命に至るまでのサイクル数の相対値で表し、常温寿命サイクル数及び高温寿命サイクル数として表す。この比較例は、特許文献1の鉛蓄電池に対応する。なお結果は一の位を四捨五入し、試料数は各3で、結果は平均値で示す。
【0028】
表1は、負極格子骨部表面の鉛−アンチモン系合金層の有無と、電解液中のナトリウムイオン、リチウムイオン、及びアルミニウムイオンの影響を示す。負極格子骨部の鉛−アンチモン系合金層を欠く場合、電解液の組成を変化させても、高い寿命性能は得られなかった。これに対して、負極格子骨部の表面に鉛−アンチモン系合金層を設けると、常温寿命性能は実用的なレベルに達した(試料A6)。ただし高温での寿命性能は不足しており、相対値で150以上まで改善する必要がある。そこで試料A6を出発点として、高温寿命性能を改善した。
【0029】
【表1】

【0030】
電解液にナトリウムイオンを添加せず、代わってリチウムイオン(試料A7)あるいはアルミニウムイオンを添加すると(試料A8)、常温寿命性能も高温寿命性能も改善した。さらにリチウムイオンとアルミニウムイオンの双方を添加すると(試料A9)、特に高温寿命性能が著しく改善し、アイドリングストップ車用として実用的な性能の鉛蓄電池が得られた。
【0031】
電解液が0.1mol/Lのナトリウムイオンを含む場合、試料A9と同量のリチウムイオン及びアルミニウムイオンを含んでも、不満足な高温寿命性能しか得られなかった(試料A11)。また0.1mol/Lのナトリウムイオンと0.05mol/Lのアルミニウムイオンを含む場合も、不満足な高温寿命性能しか得られなかった(試料A10)。
【0032】
アンチモンを鉛−アンチモン系合金層ではなく、負極活物質に含有させると(試料A12)、サルフェーションの進行が早く、高温での寿命サイクル数が不足した。このことは、負極活物質中のアンチモンと、負極格子骨部の表面のアンチモンとは挙動が異なることを示し、これは負極格子骨部の表面のアンチモンは負極活物質の充電効率を悪化させることなく充電受入性を改善することによりサルフェーションを抑制するが、負極活物質中のアンチモンでは充電受入性は改善されるものの負極活物質の充電効率が悪化してサルフェーションが起こりやすくなると推定できる。
【0033】
ナトリウムイオンが高温寿命性能の改善を妨げる理由は不明であるが、負極格子骨部の表面のアンチモンとの相互作用を持ち、アンチモンを負極活物質中へ拡散・析出させる性質があることを示唆している。アルミニウムイオンはサルフェーションを抑制することが知られている。また発明者は、リチウムイオンが高率放電性能を改善することを別に行った試験で確認している。表1で特徴的なのは、アルミニウムイオンとリチウムイオンの双方を含有させることにより、高温での寿命性能が改善する点である。
【0034】
表1から、負極格子骨部表面に鉛−アンチモンの合金層を設けることと、電解液に関して、ナトリウムイオン含有量を小さくすること、リチウムイオンとアルミニウムイオンとを含有させることにより、常温でも高温でもアイドリングストップ寿命性能を改善できることが分かる。これらの各要素の影響を表2,表3に示し、同じデータを図2〜図5に示す。
【0035】
表2及び図2は鉛−アンチモン系合金層中のアンチモン含有量の影響を示し、アンチモン含有量が1質量%以上で寿命性能、特に高温での寿命性能が改善することが分かる。またアンチモン含有量を10質量%超とすることは合金箔の製造上困難なので、アンチモン含有量の上限は10質量%とした。
【0036】
【表2】

【0037】
表3の上段と図3は電解液中のナトリウムイオン含有量の影響を示し、ナトリウムイオンの含有量が0.04mol/Lを超えると、寿命性能、特に高温での寿命性能が顕著に低下し、0.02mol/L以下でナトリウムイオンの影響は一定になることが分かる。
【0038】
【表3】

【0039】
表3の中段と図4は電解液中のリチウムイオン含有量の影響を示し、0.02mol/L以上で高温での寿命性能が改善し、0.05mol/L以上で改善が著しく、0.2mol/Lを超えると高温寿命性能が低下することが分かる。
【0040】
表3の下段と図5は電解液中のアルミニウムイオン含有量の影響を示し、0.02mol/L以上で高温と常温での寿命性能が改善し、0.05mol /L以上0.2mol/L以下で高温寿命性能が特に改善することが分かる。

【符号の説明】
【0041】
2 負極格子骨部基材部
4 鉛−アンチモン系合金層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極板と正極板と、負極板と正極板とを浸す電解液とを備える鉛蓄電池であって、
前記負極板の格子骨部は表面の少なくとも一部に鉛−アンチモン系合金層を備え、
前記電解液はリチウムイオンとアルミニウムイオンとを含有する、鉛蓄電池。
【請求項2】
負極板と正極板と、負極板と正極板とを浸す電解液とを備える鉛蓄電池であって、
前記負極板の格子骨部は表面の少なくとも一部に鉛−アンチモン系合金層を備え、
前記電解液はリチウムイオンとアルミニウムイオンとを含有し、かつナトリウムイオンの含有量が0.04mol/L以下であることを特徴とする、鉛蓄電池。
【請求項3】
前記電解液は、0.02mol/L以上0.2mol/L以下のリチウムイオンと、0.02mol/L以上0.2mol/L以下のアルミニウムイオンとを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の鉛蓄電池。
【請求項4】
前記、鉛−アンチモン系合金層のアンチモン含有量が1質量%以上10質量%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鉛蓄電池。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの鉛蓄電池を搭載していることを特徴とするアイドリングストップ車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−142185(P2012−142185A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294041(P2010−294041)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】