説明

銀含有創傷処置デバイス、その構成及び製造方法

局所的に塗布された銀ベース抗菌性仕上げ材料を含む創傷処置デバイスを提供する。仕上げ材料は、少なくとも 1 種の銀イオン含有化合物及び少なくとも 1 種のバインダー化合物を含む。仕上げ材料を、対象基材、例えば繊維製品、布地、フィルム、発泡体、ヒドロゲル又は親水コロイドに塗布して、単層の抗菌性創傷処置デバイスを提供し得る。また、銀含有層を、1 層以上の追加の対象基材層と結合させて、複合抗菌性創傷処置デバイスを提供し得る。デバイスはまた、感染性創傷に本質的に関係する臭気を減少又は消去できる臭気吸着成分を含み得る。更に、創傷処置デバイスの製造方法、及び銀ベース抗菌性仕上げ材料を含む組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所的に塗布された銀ベース抗菌性仕上げ材料を含む創傷処置デバイスに関する。仕上げ材料を、対象基材に塗布して、単層の抗菌性創傷処置デバイスを提供し得る。また、銀含有層を、1 層以上の追加の対象基材層と結合して、複合抗菌性創傷処置デバイスを提供し得る。デバイスはまた、感染性創傷に本質的に関係する臭気を減少又は消去できる臭気吸着成分を含み得る。場合により好ましいある態様では、銀ベース抗菌性仕上げ材料を、少なくとも部分的にマイクロデニール成分に分離する多成分繊維からなる不織布に局所的に塗布する。このような構造は、銀イオンが付着できる広い表面積を提供し、それ故、創傷の治癒促進のために創傷処置デバイス上に存在する、表面で利用可能な銀の量が増加する。また、このような構造により、布地が、合成材料から製造されるにも拘わらず高吸収性となることを可能にし、これは、過剰水分又は創傷からの滲出液を吸収するために望ましい。
【背景技術】
【0002】
銀含有殺菌剤は、創傷処置デバイスに配合され、細菌増殖を抑制するための安全で有効な手段として医療産業において急速に受け入れられるようになっている。創傷の治癒促進及び創傷の感染予防に、銀が重要な役割を果たすことは、以前より認められている。例えば、米国特許第 3,930,000 号明細書は、火傷に関連した菌及び真菌を殺すためのアラントイン酸亜鉛銀クリームの使用を開示しており、特開平 9-078430 号公報は、合成抗菌性繊維を押出すための、銀を担持したリン酸ジルコニウムの熱可塑性オレフィン系ポリマー溶融物への配合を開示している。従って、表面の利用可能な銀を創傷と接触して配置することにより、銀が、創傷に入り、創傷部の暖かく湿った環境で増殖及び繁殖する望ましくない菌及び細菌によって取り込まれることが知られている。取り込みが生じると、銀は菌及び真菌を殺し、創傷の感染予防を助長し、治癒過程を促進する。
【0003】
銀含有に加えて、創傷処置デバイスが、創傷治癒の様々な段階において、湿度管理できることが重要である。例えば、創傷が生じた直後、創傷処置デバイスが、治癒過程を促進し、かつ感染予防を助けるために、創傷部からの滲出液を迅速に吸収することが重要である。特に滲出液がたまってしまうと、創傷部からの過剰な滲出液は、細菌増殖に適した暖かく湿った環境を一般に助長する。治癒の次段階において新規な細胞が生まれるとき、創傷処置デバイスが、バランスのよい湿潤環境を提供することが望ましい。即ち、創傷処置デバイスの創傷部への望ましくない付着を防ぐため、過剰な滲出液を吸収するが、創傷を完全には乾かさない、従ってデバイスを形成されたばかりの新規な細胞層にくっつけないように、デバイスを設計することが有利である。治癒の最終段階は、一般に瘢痕組織の形成を含む。この段階では、創傷処置デバイスにより、創傷に、ある程度の湿度が維持されることが重要である。従って、治癒の様々な段階においてデバイスの滲出液吸収能力のバランスをとるために高度の通気性を有する創傷処置デバイスが望ましい。
【0004】
創傷部での細菌増殖に対する潜在能力と共に、創傷処置デバイスのもう 1 つの望ましい特徴は、創傷から発生する臭気を吸収することである。特に、長期にわたってゆっくり治癒する創傷において、創傷処置デバイスの利用が長期間にわたって必要な場合、創傷部への酸素不足が、更なる菌増殖及び/又は真菌増殖を招き得る。この増殖は、かなり頻繁に、創傷の感染及び望ましくない臭気の形成を招く。また、多くの場合、例えば、治癒過程における新規な細胞の増殖を妨げないために、創傷処置デバイスの交換回数を制限することが望ましい。より少ない交換回数の結果として、創傷処置デバイスは、創傷に関連した望ましくない臭気を発生させ得る。従って、創傷処置デバイス内又は創傷処置デバイス上へ、臭気吸着剤又は臭気吸着層を含有させるのが有利である。
【0005】
更に、銀イオン抗菌剤、例えば、リン酸ジルコニウム、ガラス及び/又はゼオライトのようなイオン交換化合物は、一般に変色しやすく、その固体の性質によって、それらを配合する基材を変色する傾向があることがよく知られている。即ち、過剰な銀イオンが、利用可能なアニオンと結合して、着色した沈澱塩を形成し得る。これらの銀塩の多くは、光への暴露時に、銀イオンの銀金属への光還元の結果として薄黒くなり得る。これは特に、医療産業、なかでも、創傷部及び創傷を覆う包帯又は処置用品の検査が、特定の創傷に施した治療の有効性の重要な指標となる創傷処置デバイスでは、問題である。創傷処置デバイス変色の形跡は、それ自体、創傷部での感染を示し得る。一方、変色の形跡は、創傷部の状態に無関係なこともあり、それどころか、創傷処置デバイス内又は創傷処置デバイス上に含まれる銀イオンの分解副生物として存在することがある。従って、創傷に施した治療の有効性について混同を招き得るので、銀イオンが還元されるという理由だけでは創傷処置デバイス自体が変色しないことが、医療産業関係者にとって重要である。よって、創傷処置デバイス上で安定な銀含有抗菌性仕上げ材料が、最も望ましい。
【0006】
上記した全ての問題点を解決するために、種々の試みが行われてきた。多くの創傷処置デバイスでは、殺菌剤は、デバイスの断面全体にわたって存在する。例えば、このような殺菌剤は、選択的かつ本質的に抗菌特性を示すある種の布地を提供するため、特開平 9-078430 号公報の教示のように、溶融紡糸合成繊維に配合するために適合されていた。しかしながら、このような溶融紡糸繊維は、特に繊維内部から繊維表面への銀ベース化合物の移動特性を考慮すると、十分な抗菌活性を与えるのに多量の銀ベース化合物を要するため、製造コストが高くなる。これらの銀含有繊維を組み合わせて創傷処置デバイスを形成する場合、繊維内部に配置された銀は、それ自体、デバイスの有効期間内に創傷部に到達して、治癒過程に寄与することは決してあり得ない。従って、これは、創傷処置デバイスにおける非効率的かつ高価な銀の使用であり、繊維表面に存在する銀の量は治癒過程を促進するためには不十分な量でさえあり得る。
【0007】
市場で入手可能な更に別の製品は、発泡体の形成前に、銀をポリマー材料に添加することによって製造される銀含有連続気泡フォームである。得られた製品は、構造全体にわたって銀を含む。一般的に言えば、発泡体製品中心部の銀は、創傷に有効な抗菌特性を与えるために創傷部に接触することはない。銀が発泡体表面に移動できる場合でさえ、創傷処置デバイスが交換される頻度により、おそらく、銀の創傷部への抗菌効果実現は妨げられる。従って、銀の多くは、包帯自体内の細菌の増殖を防ぐために単に使用され、創傷の治療には有効ではない。
【0008】
記載した望ましい特性の全てを達成し得る複合多層創傷処置デバイスを提供する試みがなされてきた。一例は、ポリエチレンフィルム層、レーヨン/ポリエステル混合不織布の中間層、第二のフィルム層の三層からなる多層創傷処置デバイスである。抗菌性創傷処置デバイスを提供するために、ナノ結晶銀粒子を一層以上のフィルム層に堆積する。しかしながら、この技術は、一般に、デバイスからの銀の望ましい制御された放出を与えることができず、デバイス自体が望ましくない変色を示す。典型的には、同製品は、初めに多量の銀を創傷処置デバイスから、しばしば銀フレーク状で放出し、銀は、創床に入り、創傷の炎症を招く。
【0009】
消費者が入手可能な別の製品は、220 mg の銀を含む 2 層のナイロン不織布層に挟まれた、高度に多孔質の銀含浸チャコール布である。同製品は、一般に、非常に低い銀放出しか提供せず、デバイス自体は、望ましくない変色を示す。
【0010】
布地及び糸の表面に、このような特殊な殺菌剤を適用することが試みられてきたが、殺菌剤の創傷への制御された放出、創傷処置デバイスの変色防止、及び適当な滲出液吸収能力に関してほとんど成果はない。このデバイスを製造するために、硝酸銀溶液から銀を還元し、無電解析出と称される方法によって、増感ポリマー繊維(典型的にはナイロン)に被覆する。銀含有ポリアミドを、次の繊維層に付着する。この技術の特徴から、繊維上に被覆される銀の量を制御することは困難であり、更に、被覆される銀の量は、繊維の表面積によって制限される。加えて同製品は、基材の変色に関する課題にも直面する。従って、銀ベース抗菌剤による局所処理は、成功裏に発展せず、有効な創傷処置デバイスに望ましいと記載した特性の組み合わせを有する基材に適用されていなかった。
【0011】
その物理的特性を変えることなく対象の糸に広い汎用性を与えるために、織ったり編んだりする前又は後に、布地の各繊維の処理が可能であるので、繊維基材、例えば布地の局所処理は望ましい。抗菌剤が、創傷と接触することがないであろう領域の材料に配合されないので、発泡体への応用にも有利である。しかしながら、このような塗布により、制御された量の銀が創傷へ放出される一方で、機能的に許容できる程度に創傷処置デバイスの変色を防ぐことに成功したことが証明されなければならない。更に、このような金属化処理において、対象である布地、繊維製品、糸、フィルム及び/又は発泡体の表面は非導電性であることが望ましい。金属及び金属イオンの存在により、これまで、創傷処置デバイスに使用するための、このような機能性、非導電性塗膜を得ることは困難であった。
【0012】
銀ベース抗菌性仕上げ材料を布地基材に局所的に塗布した成功例は、同一出願人による米国特許第 6,584,668 号明細書、並びに同一出願人による米国特許出願第 09/586,381 号明細書、同第 09/586,081 号明細書、同第 09/589,179 号明細書、同第 09/585,762 号明細書、同第 10/307,027 号明細書及び同第 10/306,968 号明細書に記載されている。これらの特許及び特許出願の全てを、ここに引用して組み込む。これらの方法の多くの詳細を、以下に記載する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記の問題に取り組み、解決する。これまで、殺菌剤は、創傷処置デバイスに有効な抗菌層を与えるために、繊維、発泡体又は他の布地基材の形成前に、溶融体又はポリマーマトリックスに配合されてきた。本発明は、対象基材に局所的に塗布された銀ベース抗菌性仕上げ材料を有する創傷処置デバイスを実現する方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
得られた創傷処置デバイスは、デバイスの変色なく、創傷部への銀の制御された放出を提供し、更に滲出液の吸収能力を提供する。創傷処置デバイスは、創傷部から放出された望ましくない臭気を除去又は減少するために、所望により、臭気吸着剤又は臭気吸着層を含む。吸収能力増加を助けるために、例えば、1 層以上の発泡体、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロースなどのような付加的な層も、複合構造に含み得る。これらの付加的な層は、抗菌剤を含んでも含まなくてもよい。本明細書に記載された理由などにより、本発明の創傷処置デバイスは、従来技術より有効な利点を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
基材
局所的に塗布される銀ベース抗菌性仕上げ材料を受容するために適当な基材は、限定するわけではないが、繊維製品、布地、フィルム、発泡体、アルギン酸塩、ヒドロゲル及び親水コロイドを含む。布地は、合成繊維、天然繊維又はこれらの組合せといった繊維から形成され得る。合成繊維は、例えば、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアラミド、ポリウレタン、再生セルロース及びこれらの混紡物を含む。より詳細には、ポリエステルは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリフェニレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸及びこれらの組合せを含む。ポリアミドは、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6 及びこれらの組合せを含む。ポリオレフィンは、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン及びこれらの組合せを含む。ポリアラミドは、例えば、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド(即ち、Kevlar(登録商標))、ポリ-m-フェニレンテレフタルアミド(即ち、Nomex(登録商標))及びこれらの組合せを含む。天然繊維は、例えば、ウール、木綿、亜麻及びこれらの混紡物を含む。
【0016】
布地は、マイクロデニールの繊維及び糸(1 デニール/フィラメント未満の繊維又は糸)を含む、如何なるサイズの繊維又は糸からでも形成され得る。繊維又は糸は、約 1 未満〜約 2000 デニール/フィラメント、好ましくは約 1 未満〜約 500 デニール/フィラメント、より好ましくは約 1 未満〜約 300 デニール/フィラメントの範囲のデニールを有し得る。
【0017】
更に、布地は、部分的に又は全体的に、化学的又は物理学的作用によって長さ方向に沿って分離され得る、多成分又は二成分の繊維又は糸からなり得る。布地は、短繊維、フィラメント繊維、スパン繊維及びこれらの組合せといった繊維からなり得る。
【0018】
布地は、限定するわけではないが、織物、編物、不織布又はこれらの組合せを含み得る。布地は、場合により、分散染料による高温ジェット染色、サーモゾル染色、パッド染色、転写捺染、スクリーン捺染のような様々な染色技術、又は匹敵する同等の従来繊維製品のための一般的な技術である他の染色技術のいずれかによって、着色され得る。糸又は繊維を本発明の方法によって処理する場合、糸又は繊維を、布地形成の前又は後に適当な方法(例えば、パッケージ染色又は原液着色)によって染色してもよいし、染色しなくてもよい。
【0019】
フィルムは、熱可塑性材料、熱硬化性材料又はこれらの組合せを含み得る。熱可塑性材料又は熱硬化性材料は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル、シリコーン、メラミン化合物、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ニトリルゴム、イオノマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、クロロイソプレン又はこれらの組合せを含み得る。ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸エチルビニル、酢酸エチルメチル又はこれらの組合せであり得る。ポリエチレンは、低密度又は高密度のポリエチレンを含み得る。フィルムは、約 1〜約 500 ミクロン、好ましくは約 1〜約 250 ミクロン、より好ましくは約 1〜約 100 ミクロンの厚さを有し得る。
【0020】
発泡体は、一般に、多孔性ポリマー構造、好ましくは連続気泡構造を意味する。適当な発泡体は、ポリウレタン、カルボキシル化ブタジエンスチレンゴム、ポリエステル及びポリアクリレートのような合成有機ポリマーを含む。一般に、発泡体が親水性であることが望ましいが、発泡体上に親水性塗膜を有する疎水性発泡体も使用され得る。
【0021】
アルギン酸塩は、多くの褐藻に広範に存在する天然の多糖類である。アルギン酸ナトリウムは、ほとんどの二価カチオンと接触してゲルを形成する能力を有することが、よく知られている。二価の Ca2+ は、構造上、グルロン酸ブロックに適合し、従って、接合域形成によってアルギン酸ポリマーと結合してゲル化を生じる。例えば、血液と接触した場合、アルギン酸ナトリウムは迅速に Ca2+ イオンを交換する。そのために、創傷に接触する処置用品に望ましい。アルギン酸繊維は、水溶液からアルギン酸塩を押出すか又は紡績することによって、アルギン酸塩から形成し得る。次いで、繊維を一般には、創傷処置デバイスに組込み得るウェブマットに固着させる。アルギン酸塩はまた、発泡体又は他の適当な材料に、最終創傷処置デバイスの吸収性を増強するために配合され得る。
【0022】
ヒドロゲルは、膨潤によって水を吸収し、解膨潤によって水を放出する、安定な湿った創傷処置デバイスである。ヒドロゲルは一般に、小さい分子及び水溶液を囲い込むための凝集性マトリックスを形成する高分子からなる。ヒドロゲルは、水及び三次元網状ポリマーの二成分系として記載され得る。ヒドロゲルの例は、デンプン、ペクチン、ゼラチン及びガムを含む。
【0023】
親水コロイドは、植物、動物、微生物又は合成物由来の親水性ポリマーであって、一般に多くのヒドロキシル基を含み、多価電解質であり得る。親水コロイドは、必然的に存在するか、又は粘性及び水結合性のような物質の機能特性を制御するために添加され、これは、増粘及びゲル化を含む。親水コロイドは、その重量の数倍の創傷滲出液を吸収する能力により、創傷処置デバイスとして使用するのに有利である。親水コロイドの例は、カーボワックス、ビニルポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリ酢酸ビニル)、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース)及び天然ガム(例えば、グアー、アカシア及びペクチン)を含む。
【0024】
本発明の 1 つの態様では、不織布を創傷処置デバイス形成のために使用する。
【0025】
不織布は、布地産業において、従来の織物又は編物の代替品として知られる。不織布を製造するために、フィラメントウェブを製造しなければならず、その後、連結(一体化)する。ある方法では、カーディング処理によって短繊維をウェブにするが、この処理は、湿潤条件又は乾燥条件のいずれでも行える。また、押出によって形成された連続フィラメントを、ウェブの製造に使用できる。次いで、ニードルパンチ法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法又は水流交絡法によって、ウェブを連結及び/又は結合する。第二の連結法も、サーマルボンド法を用い得る。
【0026】
本発明の創傷処置デバイスでの使用に好ましい基材は、ウェブとして押し出され、その後、連結された、分離可能な連続フィラメントからなる不織布である。この不織布は、Freudenberg に譲渡された米国特許第 5,899,785 号明細書及び同第 5,970,583 号明細書に記載されており、これら全てを引用してここに組み込む。好ましくは、不織ウェブは、水流交絡法によって、より好ましくは、水流交絡法と続く熱的接着又はポイント接着によって結合される。連続複合フィラメントは、制御された紡績方法によって得られ、水流交絡法は、物理的に複合フィラメントを基本要素に分離させる。
【0027】
連続フィラメントは、以下の特徴を有する:(1)連続フィラメントは、少なくとも 2 つの基本フィラメント、及び少なくとも 2 つの異なった繊維タイプからなる;(2)連続フィラメントは、異なった繊維タイプの基本フィラメント間で、少なくとも分離面に沿って分離できる;(3)連続フィラメントは、0.3〜10 dTex のフィラメント数(繊度又は番手)を有する;(4)連続フィラメントの基本フィラメントは、0.005〜2 dTex のフィラメント数を有する。簡単に言えば、不織布は、連続マイクロフィラメントの不織布として記載され得る。このような布地は、Groten らによる米国特許第 5,899,785 号明細書及び同第 5,970,583 号明細書に記載されており、これら全てを引用してここに組み込む。
【0028】
上記のように、広範な合成材料が、連続複合フィラメントの基本フィラメントを製造するために利用され得る。基本フィラメントを形成するポリマー材料は、下記群の中から選ばれ得る:ポリエステル及びポリアミド;ポリオレフィン及びポリアミド;ポリエステル及びポリオレフィン;ポリウレタン及びポリアミド;ポリエステル、ポリオレフィン及びポリアミド;脂肪族ポリエステル及び芳香族ポリエステル;アクリルポリマー及びポリアミド;並びにこれらの組合せ。
【0029】
用語「ポリアミド」は、ポリマー鎖の骨格部分として、繰り返しアミド基(-NH-CO-)を含む長鎖ポリマーを表すことを意図する。ポリアミドの例は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11 及びナイロン610 を含む。
【0030】
用語「ポリエステルは」、繰り返しエステル基(-C(O)-O-)を含む長鎖ポリマーを表すことを意図する。ポリエステルの例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリトリメチレンテレフタレート(PTT)のような芳香族ポリエステル、並びにポリ乳酸(PLA)のような脂肪族ポリエステルを含む。
【0031】
複合フィラメントは、様々な構造を有し得る。複合フィラメントのコア部は、1 つの繊維タイプからなり得る。また、コア部を有さない繊維(中空コア複合フィラメント)、及び認識できる「コア」がない繊維も同様に、本発明の使用に適している。複合フィラメントは、一般に、中心軸を有する対称断面を有する。しかしながら、複合フィラメントは非対称でもあり得、不規則な断面積の基本フィラメントを含む。複合フィラメントの断面は、実質上、円形であり得、又は中央部と結合した多数の突出部からなり得る。分離可能な複合フィラメント構造のもう 1 つの種類は、リボン又は指状突起、或いはある要素が、リボン間又は指状突起間に第二の異なった要素を配置した断面を有するものである。また、別の種類は、第二の異なった材料の周囲マトリックスに一体化された、ある材料の基本フィラメントを 1 つ又は多数含む。
【0032】
不織布は、約 20〜約 300 g/m2、好ましくは約 50〜約 200 g/m2、より好ましくは約 80〜約 150 g/m2、最も好ましくは約 100〜約 130 g/m2 の布地重量を有し得る。
【0033】
好ましい不織布を記載してきたが、本明細書に記載した銀ベース抗菌性化合物を用いて処理したマイクロデニール不織布のいずれも、上記した基材物質と同様に、本発明の範囲に含まれる。
【0034】
また、基材は、あらゆる種類の着色剤、例えば、顔料、染料、毛染め料などによって、染色又は着色され得る。他の添加剤は、対象の布地又は糸の表面及び/又は内部に存在し得、帯電防止剤、蛍光増白剤、核剤、酸化防止剤、UV 安定剤、充填材、パーマネントプレス加工剤、柔軟剤、滑剤、硬化促進剤などを含む。本発明の布地を、被覆、印刷、着色、染色してもよい。
【0035】
上記したマイクロデニール不織布は、創傷処置デバイスに以前から使用されていた材料と比べて、多くの利点を提供する。第一に、該布地は、その合成物含有量にも拘わらず、意外なことに吸収性であり、綿織物に十分匹敵する吸収性を有する。第二に、該布地は合成物であるので、創傷処置デバイスは、非常に耐久性であり、その天然の同等物より少ない糸くずを生じ、これは、創傷処置デバイス自体からの糸くず及び繊維によって生じる創傷での感染の可能性が低下することを意味する。第三に、該布地の不織構造は、切断の際にほぐれず、その結果、更に、ほぐれた繊維及び糸くずが創傷部に入って、起こり得る感染を招く機会が低下する。加えて、該布地は、従来の綿織物と比較すると、非常に薄くて軽い。本発明の布地が薄いので、デバイスの嵩及び厚さを著しく増加させることなく、複合創傷処置デバイスの一要素として使用でき、従って、デバイスを装着する患者は、より快適かつ気軽に使用できる。最後に、本発明の布地のマイクロデニール構造は、抗菌剤を適用し得る大きな表面積を提供し、従って、表面の利用可能な銀の量が効果的に増加する。これらの利点は、従来技術と比較して有益な進歩である。
【0036】
抗菌剤及び他の添加剤
本発明で用いる特殊な処理剤は、少なくとも 1 つのタイプの銀イオン含有化合物、又はそれと異なったタイプとの混合物を含む。用語「銀イオン含有化合物」は、イオン交換樹脂、ゼオライト、又は場合により、他のアニオン種の存在下で結合していた特定の金属イオンを放出する置換ガラス化合物のいずれかを含む。本発明に好ましい銀イオン含有化合物は、Milliken & Company から AlphaSan(登録商標)の商品名で入手可能な抗菌性銀・ナトリウム水素リン酸ジルコニウムである。本発明における他の潜在的に好ましい銀含有抗菌剤は、銀ゼオライト(例えば、Sinanen から Zeomic(登録商標)AJ の商品名で入手可能)、銀交換リン酸カルシウム(Sangi から Apiscider の商品名で入手可能)及び銀ガラス(例えば、石塚硝子から lonopure(登録商標)の商品名で入手可能)を含み、好ましい種に加えて又は代えて使用することができる。他の銀イオン含有物質も使用し得る。ある時間にわたって銀放出速度を「調節」することが望ましい場合、これらの銀含有物質を多様に組み合わせることもできる。
【0037】
一般に、このような金属化合物は、特定の処理組成物の総重量に基づいて、約 0.01〜約 60 %、より好ましくは約 0.05〜約 40 %、最も好ましくは約 0.1〜約 30 %の量で添加される。好ましくは、金属化合物は、約 0.01〜約 60 %owf、好ましくは約 0.05〜約 30 %owf、より好ましくは約 0.1〜約 10 %owf、最も好ましくは約 0.3〜約 3.0 %owf の量で存在する。必要なバインダー、湿潤剤、臭気吸着剤、レベリング剤、付着剤、増粘剤などを含む処理剤自体は、少なくとも約 0.01 %の量で基材に添加される。
【0038】
バインダー物質は、対象基材に、抗菌性化合物の極めて有益な耐久性を与える。好ましくは、この成分は、ポリウレタンベースの結合剤である。他のバインダー、例えば、パーマネントプレスタイプ樹脂又はアクリルタイプ樹脂も、特に、変色減少のためにハロゲン化物イオン添加剤と組み合わせて使用され得る。本質的に、このような樹脂は、最良総合特性を示すポリウレタンを用いて、対象基材(例えば繊維又は布地)に銀を付着することによって耐久性を与える。
【0039】
臭気受容剤は、臭気吸収剤及び/又は臭気吸着剤であり得る。臭気吸収剤は、臭気を受容し、その臭気を製剤内に閉じ込める。臭気吸着剤は、臭気を受容し、その臭気を製剤外面に保持する。臭気受容剤は、粒状の臭気受容剤、例えば活性炭、チャコール、ゼオライト化合物などであり得る。粒状の臭気受容剤は、臭い物質を受容するための大きい表面積を提供する。本発明の活性炭に転化できる炭素質材料は、例えば、木炭(軟炭)、ヤシガラ炭、コークス、泥炭、石油留分、ウッドチップ(おがくず)などのような材料を含む。あまり一般的ではないが、活性炭を製造するために使用できる他の材料は、自動車タイヤ、ホンビノスガイ、コーヒーかす、トウモロコシの穂軸、プラスチック廃棄物、下水汚泥、藁、スイレンなどを含む。活性炭の特性は、適当な細孔サイズ及び大きい表面積により通常は向上する。一般に、臭気受容剤の粒子サイズが小さい方が、臭気受容能力が優れている。
【0040】
対象基材への銀の総付加濃度は、20 ppm 以上であり得る。より好ましくは、銀の総付加濃度は、200 ppm 以上であり得る。対象基材への銀付加濃度の上限が存在することは、見出されていない。しかしながら、創傷部自体を考慮し、過剰の銀による創傷部又は患者への刺激を回避すべきである。
【0041】
応用方法
好ましい方法では、銀イオン含有化合物、例えば、好ましい化合物として、AlphaSan(登録商標)、Zeomic(登録商標)又は lonopure(登録商標)を利用し(ただし、銀イオン供給化合物の類似タイプも利用できる。)、バインダーと混合して、後に対象基材を浸す溶液を形成する。
【0042】
適当なバインダー樹脂は、非イオン性パーマネントプレスバインダー(即ち、限定するわけではないが、Sequa から Permafresh(登録商標)の商品名で入手可能な架橋イミダゾリジノンを含む架橋接着促進化合物)、又は弱アニオン性バインダー(限定するわけではないが、Rohm & Haas から Rhoplex(登録商標)TR3082 の商品名で入手可能なアクリル樹脂)からなる群から選び得ることが、まず見出された。他の非イオン性及び弱アニオン性のバインダーも適当であり、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ユリア樹脂、エトキシル化ポリエステル(例えば、Rhodia から Lubril QCX(登録商標)として入手可能)を含む。しかしながら、このように処理された基材の耐久性及び制御された銀の放出は制限されることが見出された。
【0043】
銀放出に関する優れた耐久性及び制御が、このタイプの創傷処置デバイスに望ましいことが見出された。従って、これらの従来の比較処理剤を、様々な他のタイプと比較した。最後に、ある種のポリウレタンバインダー(例えば Crompton Corporation 製 Witcobond(登録商標))及びアクリルバインダー(例えば BF Goodrich 製 Hystretch(登録商標))が、銀イオンの最良総合的な耐久性及び制御放出を可能にすることが見出された。
【0044】
このような特定のポリウレタンベースバインダー材料を利用することによって、処理した基材の抗菌特性は、処理した基材の変色なしに、細菌を殺すために制御して放出され得る表面の利用可能な銀の量に関して、著しい有効性を維持した。しかしながら、ポリウレタンベースバインダー樹脂の使用が、その銀放出及びバイオニュートラル特性によって好ましいことが一般に明白であるが、実際には、本質的に創傷に有毒ではないバインダー樹脂を使用し得る。
【0045】
耐久性のある抗菌性金属処理を施した布地表面を提供する許容できる方法は、銀イオン含有化合物及びポリウレタンベースバインダー樹脂の、これらの混合溶液からの塗布である。実際には、この化合物と樹脂との混合物は、噴霧、浸漬、パディング、フォーミングなどによって塗布され得る。
【0046】
上記のように、銀イオン局所処理は、大気条件への暴露後の黄色化、茶色化、灰色化、及び場合により黒色化を生じ得ることが認められている。銀イオンは、一般に、遊離アニオンとの反応性が高く、銀イオンと反応したほとんどのアニオンは色を生じるので、遊離アニオン種と銀イオンとの相互作用による問題のある色の生成を、特に染浴液中で、完全には防げないとしても、削減する方法が要求された。従って、それ自体が変色せず、バインダー及び/又は銀イオン化合物と直接反応せず、特定の化学的理論に縛られるわけではないが明らかに銀イオンとの無色の塩を与えるよう反応する、添加剤の含有が極めて望ましいことが理論付けられた。
【0047】
この結果を実現する種々の方法が、同一出願人による米国特許出願第 10/307,027 号明細書、同第 10/306,968 号明細書及び同第 10/418,019 号明細書に記載されており、これら全てを引用してここに組み込む。これらの特許出願は、銀イオン局所処理において、銀イオンと反応して無色の塩を生じるための、例えば塩化マグネシウムのような金属ハロゲン化物由来のハロゲン化物イオンを含む方法を記載している。
【0048】
ナトリウムイオンは、無色のハロゲン化銀の生成を妨げ、遊離銀イオンに、望ましくないアニオンとその後反応できる能力を与えるので、(銀イオンと等価であり、ハロゲン化物イオンとの反応において銀イオンと競争する)ナトリウムイオンの存在は回避されるべきであることを除いては、例えば、金属ハロゲン化物(例えば塩化マグネシウム)又はハロゲン化水素酸(例えば塩化水素)由来のハロゲン化物イオンの含有は、上記のような結果を与える。従って、一価のナトリウムイオン(及び、時として他の一価のアルカリ金属イオン、例えば、カリウム、セシウム及びリチウム)の存在は、必要水準の変色低減をもたらさない。一般に、仕上げ材組成物中、特に溶媒(例えば水)中の 20 ppm 以上のナトリウムイオン量は、局所的に塗布した抗菌性処理剤の変色防止に有害である。従って、用語「実質上ナトリウムイオン不含有」は、20 ppm の閾値未満、より好ましくは 5 ppm 未満の存在を示すのに用いられる。
【0049】
更に、二価又は三価(及び幾つかの一価)の金属ハロゲン化物は、仕上げ材組成物中に十分な量で存在する場合、ナトリウムイオン汚染の幾つかの影響を打ち消す。従って、多量のナトリウムイオン又は同様のアルカリ金属イオンが、仕上げ材組成物中に存在する場合、多量の金属ハロゲン化物(例えば、塩化マグネシウム)を、例えば、変色が適当に防がれる程度にまで組成物に添加して相殺させ得る。加えて、ハロゲン化物アニオン(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物で、塩化物が最も好ましい)及びハロゲン化物酸(例えば、HCl、HBr など)と組み合わせた、他の金属イオン全て(二価、三価などであって、マグネシウムのような二価が最も好ましい)は、変色防止に可能性のある添加剤である。
【0050】
塩化物イオンの濃度は、銀イオン含有化合物中の利用可能な遊離銀イオンとのモル比に関して調整される。塩化物の銀イオンに対する比の範囲は、適当な変色防止のためには、1:10〜5:1、好ましくは 1:2〜2.5:1 である。また、銀イオンに対するモル比においてより高濃度の金属ハロゲン化物を、仕上げ材組成物自体内で過剰なアルカリ金属イオン量を打ち消すために添加し得る。
【0051】
上記の変色制御技術は、系からの銀イオンの自由な放出を遅延するので、下記に示した「銀溶出試験」を用いて行った測定結果が、塩化物の銀イオンに対する濃度比が増加するにつれて、利用可能な銀の減少を示すことは、意外ではない。当業者に明らかでない結果は、「抑制域」試験が、銀放出の減少により有害な影響を示さなかった(即ち、塩化物の銀イオンに対する比が 10 倍に増加した場合に、抑制域のサイズは小さくならなかった。)ことである。更に意外なことは、塩化物イオンの銀イオンに対する比が増加した時、創傷処置デバイス中での銀放出の寿命が実質上改善されたことを示す、繰返し暴露抑制域試験で観察された結果である。
【0052】
下記実施例は、本発明の抗菌性物品を更に説明するが、記載した請求項により規定される本発明を制限すると解釈すべきではない。下記実施例における全ての部及びパーセントは、特に記載のない限り重量による。
【実施例】
【0053】
実施例 1 及び 2 で使用した布地は、ドイツ国ワインハイム在 Carl Freudenberg から Evolon(登録商標)の商品名で入手可能なポイント接着不織布であり、130 g/m2 の布地重量を有する。布地は、先に引用して組み込んだ 2 つの Freudenberg の特許に記載されている方法に従って物理的又は化学的方法で処理すると多成分繊維が少なくとも部分的に長さ方向に分離して個々のポリエステルとナイロン6,6 繊維になる、スパンボンド連続多成分繊維からなっていた。ポリエステル繊維は布地の約 65 %を構成し、ナイロン6,6 繊維は布地の約 35 %を構成していた。布地は染色されていなかった。
【0054】
実施例 3 で使用した布地は、70 デニール 35 フィラメントの Dacron(登録商標)ポリエステル繊維からなっていた。
【0055】
実施例 4 で使用した発泡体は、現在創傷処置産業で使用されている標準の非抗菌性発泡体であった。
【0056】
AlphaSan(登録商標)銀ベースイオン交換化合物(サウス・カロライナ州スパータンバーグ在 Milliken & Company 製)を含む抗菌性仕上げ材料の様々な溶液を、対象基材を槽で局所塗布するために調製した。抗菌剤 100 部に基づいた(水を除く)配合は、下記の通りである。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

【0062】
【表6】

【0063】
【表7】

【0064】
実施例 1〜5 において、溶液を水中で配合し、不織布にパッド及びニップロールによって塗布した。実施例 1〜5 は、各々、1.7 %owf、2.2 %owf、18.1 %owf、5.1 %owf、18.4 %owf の抗菌剤量を与える。対照布地である未処理の Evolon(登録商標)不織布も、水だけの液中で処理し、比較対照として用いるために、実施例 1〜5 と同じ処理条件に暴露した。
【0065】
実施例 6 では、溶液を水と共に配合し、噴霧によって、発泡体重量に基づいて約 4.2 %の抗菌剤量に達するまで塗布した。
【0066】
実施例 7 では、記載した溶液を水と共に配合し、Atlas Industries 製 Atlab 加工塗布器を用いて、70/34 ポリエステル繊維に、繊維上の抗菌剤量が約 7.5 %に達するまで塗布した。下記の抑制域試験の前に、この繊維 12 房を手で撚って、長さ約 5 cm のより糸にした。
【0067】
上記実施例の試料各々を、下記のような様々な特性について試験した。更に、種々の一般的に入手可能な銀含有創傷処置デバイスも試験した。それらを、下記に比較例 A〜E として記載するが、多層布地、発泡体及び親水コロイドのような広範な種類の創傷処置用品の組合せを含む。
【0068】
比較例 A - Johnson & Johnson 製 Actisorb 220;220 mg の銀を含む 2 層のナイロン不織布に挟まれた多孔質の銀含浸チャコール布からなる、多成分不織布創傷処置デバイス。
比較例 B - Smith and Nephew 製 Acticoat 5;2 層のナノ結晶銀コートポリエチレンフィルムに挟まれたレーヨン/ポリエステル混合層不織布を含む、三層創傷処置デバイス。
比較例 C - Smith and Nephew 製 Acticoat 7;布地及びフィルムの追加層を含む、Acticoat B と同様の五層創傷処置デバイス。
比較例 D - Coloplast A/S 製 Contreet F;13 %の AlphaSan(登録商標)RC 2000 銀をポリマーマトリックスの全体に含むポリウレタン発泡体。
比較例 E - Coloplast A/S 製 Contreet H;チオ硫酸ナトリウム銀をポリマーの全体に含む親水コロイド。
【0069】
抑制域試験
実施例 1〜7 及び比較例の試料は、Kirby-Bauer Agar-Diffusion Assay に基づいた標準の抑制域試験を用いて、Staphylococcus aureus ATCC 6538、Pseudomonas aeruginosa ATCC 12055 及び Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus の 1 つ以上に対して試験した。寒天プレートを 37 ℃で 24 時間培養した。実施例 3 及び 4 の試料は、同じ標準の抑制域試験を用いて、Staphylococcus aureus ATCC 6538 及び Klebsiella pneumoniae ATCC 4362 に対して試験した。抑制域試験(ZOI Assay)は、創傷処置用品に組み込まれた抗菌剤の性能の定性的評価(試料の下での増殖の程度)及び定量的評価(mm 単位での域サイズ)の両方を与える。試料の下での増殖の程度は、密集(不活性)、まだら又は孤立(静菌性)、或いは無し(殺菌性)により評価され得る。未処理の対照処置用品と比較して、特定の微生物について抑制された増殖が試料の下で観察される場合、該微生物は感受性であるとみなされ、抗菌剤は有効である(静菌性)。観察される場合、抑制域の大きさは、製剤の本来の効果及び寒天培地マトリックスの全体にわたる製剤の拡散の両方を測定したことになる。抑制域試験は、7 日間にわたって高濃度バクテリアの複合的な攻撃に処置用品をさらすことによって、模擬的臨床応用における処置用品の有効性を測定するために使用され得る。対照試料は、一般に、Lendell から入手可能な、抗菌剤不含有基材である Medisponge(登録商標)ポリウレタン発泡体であった。
【0070】
正方形試料の四辺からの 4 測定値の平均によって表した下記の表 1A〜1D、及び図 1〜3 に示した結果は、AlphaSan(登録商標)RC 2000 を含む本発明の実施例 1〜11 の試料が、様々な種類の細菌に対して抗菌活性であることを説明する。相対的に、抗菌剤を含まない対照試料は、細菌に対する抗菌活性を示さなかった。更に、比較例は抗菌活性を示したが、ほとんどの場合、本発明の実施例 1〜11 の抑制域の方が大きかった。これは、本発明の実施例 1〜11 の試料が、ほとんどの場合、比較例より優れた抗菌活性を示したことを意味する。
【0071】
また、図 2 及び 3 は、局所的に塗布した抗菌性仕上げ材料の、対象基材の変色を防ぐ有効性を説明する。実施例 1 及び 2 の試料は、初期の白い外観を維持し、一方、比較例の試料は、創傷処置デバイスに含まれる銀及び/又は炭素粒子の存在によって暗い色である。更に、図 1 の試料は、実施例 1 及び 2 が薄黒い外観を有することを示すが、この効果は、写真撮影目的で、プレートの背景色及び抑制域に対して実施例 1 及び 2 のコントラストを増強するために染料を用いて故意に作った。実施例 1 及び 2 の試料は、抗菌性仕上げ材料の局所塗布によって変色しなかった。
【0072】
【表8−A】

【0073】
【表8−B】

【0074】
【表8−C】

【0075】
【表8−D】

【0076】
銀溶出試験
表面の利用可能な銀の制御可能な放出能力を測定するために、試料を試験した。各試料を、血清又は創傷滲出液を模擬するために使用する、100 mL の水性リン酸ナトリウムカリウム抽出溶液の入った容器に浸した。試料を室温で 24 時間振とうした。次いで、試料表面から離脱した利用可能な銀を測定するために、抽出物を誘導結合プラズマ測定によって分析した。対照試料は、未処理の Evolon(登録商標)不織布であった。
【0077】
結果を以下の表 2 に示す。結果は、本発明の実施例 1〜5 の試料が、創傷処置デバイスとして有利である、表面の利用可能な銀の制御された放出を与えることを示す。結果は、比較例 A が非常に僅かな銀しか放出しないことも示し、これは、創傷処置デバイスが創傷部に十分な抗菌特性を提供し得ないことを表す。加えて、比較例 B 及び C は、24 時間にわたって多量の銀を放出し、これは、非常に速く放出された過剰量の銀により創傷部に炎症を起こし得る。
【0078】
このように、結果は、実施例 1 及び 2 の局所的に塗布した抗菌性仕上げ材料が、創傷に銀を過剰供給することなしに、最も望ましい銀の放出速度及び抑制域を実現することを説明する。よって、創傷処置デバイスが、24 時間にわたって約 50 μg/cm2 未満の銀を放出することが望ましい。創傷処置デバイスが、24 時間にわたって約 25 μg/cm2 未満の銀を放出することが、より好ましい。更に、創傷処置デバイスが、24 時間にわたって約 10 μg/cm2 未満の銀を放出することが、最も好ましい。
【0079】
【表9】

【0080】
総 AlphaSan(登録商標)含有量試験
実施例 1〜5 の布地に塗布処理によって移動した活性 AlphaSan(登録商標)化合物の量を、下記の灰化法を用いて測定した。
【0081】
灰化法では、布地試料(重さ約 10 g、4 桁の有効数字で測定)を、清浄な乾燥したるつぼに入れた。布地試料を含むるつぼをマッフル炉に入れ、3 ℃/分で 750 ℃まで温度を上げた。次いで、温度を 750 ℃で 1 時間維持した。その後、この系を冷却し、デシケーターにるつぼを移動して平衡温度に到達させた。続いて、るつぼの重さを測定した。
【0082】
灰化法では、その後、布地試料をるつぼ内ですりつぶし、約 0.1 g 重(再び 4 桁の有効数字で測定)の均一な試料を得た。4 ml の 50 % HNO3、続いて 10 滴の 48 % HF を試料に添加した。試料を、完全に溶解するまで、プラチナ製るつぼ内でホットプレート上で加熱した。次いで、試料溶液を、100 ml の容量フラスコに移した。
【0083】
その後、るつぼを 5 % HNO3 で濯ぎ、濯いだ溶液をフラスコに添加した。溶液を、5 % HNO3 で 100 ml 標線まで希釈した。希釈した溶液を、ポリエチレン製保管容器に移した。所望の活性成分(この場合は銀)の分析を、誘導結合プラズマ装置(例えば、Perkin Elmer Optima 4300DV)を用いて行った。計算方法は当業者に明らかである。実施例 1〜5 では、本発明の布地上の活性 AlphaSan(登録商標)化合物の濃度は、各々、約 1.7 %owf、2.2 %owf、18.1 %owf、5.1 %owf 及び 18.4 %owf と測定された。
【0084】
生物学的試験
実施例 1 及び 2 並びに比較例の試料を、抗菌特性について試験した。細菌に対する効果を、AATCC 法 100〜1999 の変法を用いて試験した。各々の布地又は繊維の試料片(約 0.5 g)をガラス瓶に入れ、2 種の細菌(Staphylococcus aureus ATCC 6538(1.31×10-6 cells/ml を 0.5 ml)及び Pseudomonas aeruginosa ATCC 12055(2.63×10-5 cells/ml を 0.5 ml))に暴露し、各々を、100 mM のリン酸ナトリウムカリウム緩衝液中に 37 ℃で 18〜22 時間懸濁させた。培養後、試料を洗浄し、付着細胞を除去した。洗浄溶液中の生存細胞数を、マイクロタイタープレートベースの「最確数法」を用いて測定した。「対照」は、未処理の Evolon(登録商標)不織布片である。「最大対数減少殺菌値」は、試料に添加した細菌数の対数から、試験で数え得る細菌の最小数の対数を減じた値に基づく。
【0085】
結果を下記の表 3 に示す。対照に見られるような負の値は、細菌が増殖したことを表す。結果は、本発明の実施例 1 及び 2 の試料が、両種の細菌に対して有効な抗菌処理を与えたことを説明する。更に、比較例と同じく、実施例 2 は、Pseudomonas aeruginosa に対する最大対数減少を達成できた。
【0086】
【表10】

【0087】
滲出液/水分吸収試験
試料が吸収し得る滲出液又は水分の量を測定するため、各試料の吸収能力を算出した。39.27 cm2 のバルク表面積を有する各試料片を、100 ml の Na+/Ca2+Cln(aq) 溶液(142 mmol/l の Na+ 及び 2.5 mmol/l の Ca2+ を含む)が入った容器に入れた。この溶液は、血清又は創傷滲出液を模擬するために用いた。24 時間後、試料から溶液を 1 分間したたらせ、その後、試料の重量を再測定した。吸収能力(g/cm2/24 時間)を、24 時間の吸収期間の前後での、各試料の重量の差から算出した。
【0088】
表 4 の結果は、本発明の実施例 1 及び 2 の不織布単層創傷処置デバイスが、多層の比較例より約 20〜約 40 %多く溶液を吸収できたことを示す。結果はまた、局所的に塗布した抗菌性仕上げ材料が、非塗布試料又は対照試料の本来の吸収特性に関して有意な減少を生じないことを示す。このように、本発明の局所的に塗布した抗菌性仕上げ材料は、これらの新規な創傷処置デバイスに、他の多層デバイスと比較して、極めて望ましい滲出液吸収特性を提供する。
【0089】
【表11】

【0090】
水蒸気透過率試験
水蒸気透過率(MVTR)を、試験法 ASTM E96 に従って各試料について算出した。MVTR は、創傷処置デバイスの通気性、又は創傷デバイス真下の創傷部からの水蒸気減損を調節する能力を推定するために使用され得る。一般に、MVTR が高いと、創傷処置デバイスの通気性が良い。各試料を、メーソンジャーに入れ、メーソンジャーの蓋のリング部を用いて固定した。330 ml の水を含むメーソンジャーを、24 時間の試験期間前に計量し、その後、24 時間の試験期間後に再計量した。ジャーの開口部を覆うサイズの布地を組み合わせたジャーの重量との差から、24 時間の試験期間中に、布地を通って移動した水の量を測定した。
【0091】
結果を、以下の表 5 に示す。結果は、抗菌性仕上げ材料の局所塗布が、本発明の創傷処置デバイスの水蒸気透過率を有意に低下させないことを説明する。更に、場合によっては、結果は、本発明の実施例 1 及び 2 は、比較例より高い MVTR を実現できることを説明し、これは、創傷部からの水分減損を調節するために望ましい。よって、少なくとも 500 g/m2/24 時間の MVTR が好ましい。しかしながら、少なくとも 550 g/m2/24 時間の MVTR がより好ましく、少なくとも 600 g/m2/24 時間の MVTR が最も好ましい。
【0092】
【表12】

【0093】
実施例 8A〜8E
更なる研究を、銀溶出及び抗菌有効性について、様々な濃度の銀、バインダー及び他成分の影響を調べるため、実施例 1〜5 と同じ Evolon(登録商標)不織布を用いて行った。異なった量のバインダー、銀、湿潤剤及び色安定剤を含む、様々な 500 g の混合物を用意した。
AlphaSan(登録商標)銀ベースイオン交換化合物含有抗菌性仕上げ材料の 5 種類の 500 g 混合物を、対象基材に槽によって局所塗布するために調製した。配合を以下に示すが、成分量はグラム単位で計量した。
【0094】
【表13】

【0095】
次いで、各溶液を、パッド及びニップロールによって試料布地に塗布した。対照試料も、水だけの液中で処理し、実施例 8A〜8E と同じ処理条件に暴露した。
【0096】
銀放出及び抗菌有効性について、試料を試験した。銀放出は、既に記載した銀溶出試験とは異なる銀溶出試験を用いて測定した。実施例 8A〜8E では、銀溶出は、血清又は創傷滲出液を模擬するために使用される Na+/Ca2+Cln(aq) の静的な溶液に各試料を浸し、37 ℃で 22 時間静置することによって行った。次いで、試料表面から除去された利用可能な銀を測定するために、誘導結合プラズマ測定によって、抽出物を分析した。試料の抗菌有効性を、上記の抑制域試験を用いて測定した。試験結果を、以下の表 6 及び 7 に示す。
【0097】
結果は、配合において特定成分の量を変化させることによって、創傷処置デバイスの銀放出及び抗菌特性を調整できることを説明する。特に、バインダーの量を 20 %から 2.5 %に減少させると、Staphylococcus aureus に対する抑制域が増加し、これは、一般に、抑制域が大きい実施例程、殺菌に関して有効であることを表す。また、銀溶出試験中に多量の銀が放出されたが、22 時間の溶出中、過剰量の銀の即時放出は生じなかったことが概して観察された。これは、全ての配合に添加された成分量が、創傷処置デバイスの最適特性に望ましい範囲を実現し得ることを意味する。
【0098】
実施例 12A〜12E に関して発見された他の特徴は、バインダー量を減少させた場合、試料がほとんど変色しなかったことである。例えば、20 %の Witcobond 293 を含む実施例 12B は、幾分ピンクがかった淡褐色の変色を示した。それに対して、実施例 12A 及び 12E は、全く変色しなかった。よって、全く又はほとんど変色しない創傷処置デバイスを実現するために、創傷処置デバイスのための最終的な組成物を調製するために添加される、ある成分の他成分に対する比を考慮することが非常に重要であり得る。
【0099】
【表14】

【0100】
【表15】

【0101】
上記のように、ここで記載した基材は、単独で創傷処置デバイスとして使用され得、布地、フィルム、発泡体、アルギン酸塩、ヒドロゲル及び親水コロイドを含む。また、これら基材の 1 つ以上を、いかなる組合せでも一緒に連結して、複合多層創傷処置デバイスを形成することもできる。層は、様々な方法、例えば、超音波溶接、熱又は圧力によるラミネート加工、接着剤の使用、ニードルパンチング、水圧ニードリング、裁縫、或いは、当業者に既知の他の繊維及び/又は布地層のラミネート法又は連結法によって一緒に連結できる。層は断続する部分のみを連結することもできるし、完全に連結することもできる。
【0102】
本発明の局所抗菌性仕上げ材料は、複合創傷処置デバイスを構成する 1 層以上の基材層のいずれかに塗布できる。加えて、臭気吸着剤又は臭気吸着層は、複合創傷処置デバイスの 1 層以上の層上又は層内部に含まれ得る。更に、場合によっては、創傷処置デバイスは接着層を有するので、デバイスは創傷部を覆う場所に保持され得る。このような場合は、着脱可能なフィルム層を、使用直前まで接着層を保護するために、創傷処置デバイスの創傷に面する部分に取り付け得る。また、創傷処置デバイスは、長い創傷処置用品、例えばガーゼを、創傷処置デバイスの上又は周りに巻き、自由端を適当な方法(例えば、ピン、クリップ又はホック)で固定することによって保持され得る。
【0103】
このような複合創傷処置デバイスを、図 4 及び 5 に示す。図 4 は、創傷 2 に対する三層創傷処置デバイス 1 を表す。ここで、創傷に面する層 3 は、その表面に局所的に塗布された抗菌性仕上げ材料を有し、所望により、創傷に面する層 3 の外周に接着層 4 を有する。臭気吸着剤又は臭気吸着層を任意に含み、表面に局所的に塗布された抗菌性仕上げ材料も任意に含有する第二層 5 が、層 3 と接着されている。層 5 と同様に、臭気吸着剤又は臭気吸着層を任意に含み、表面に局所的に塗布された抗菌性仕上げ材料も任意に含有する外層 6 が、層 5 と接着されている。図 5 は、接着層 4 を保護するための着脱可能なフィルム 7 を創傷に面する層 3 に貼り付けたことを除くと、図 4 の創傷処置デバイス 1 を表す。創傷に面する層 3、第二層 5 及び外層 6 の各層は、布地、発泡体、フィルム、アルギン酸塩、ヒドロゲル及び親水コロイドを含む、創傷処置デバイスを形成するために使用される上記基材のいずれかを含んでなり得る。
【0104】
従って、上の記述及び実施例は、抗菌有効性を実現するために、局所抗菌性仕上げ材料を様々な基材に塗布することができ、銀含有創傷処置デバイスは、抗菌有効性、銀の制御放出性、臭気吸着性、滲出液吸収性及び変色払底の望ましい特性を有することを示す。
【0105】
本発明のために、これら及び他の修正及び変更が、本発明の意図及び範囲から外れることなく、当業者によって行われ得る。また、当業者は、上記詳細が、例示のみの目的であり、請求項に記載した本発明の範囲を制限するために示すのではないことを、正しく認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】メチシリン耐性 Staphylococcus aureus に対して試験した場合の、対照試料及び本発明の実施例 1 及び 2 の試料の抑制域試験の結果を示す。
【図2】Staphylococcus aureus に対して試験した場合の、対照試料、本発明の実施例 1 及び 2 の試料、並びに比較例 A〜C の試料の抑制域試験の結果を示す。
【図3】Pseudomonas aeruginosa に対して試験した場合の、対照試料、本発明の実施例 1 及び 2 の試料、並びに比較例 A〜C の試料の抑制域試験の結果を示す。
【図4】多層創傷処置デバイスからなる本発明の一態様を示す。
【図5】(原文に記載無し)
【符号の説明】
【0107】
1 三層創傷処置デバイス
2 創傷
3 創傷に面する層
4 接着層
5 第二層
6 外層
7 着脱可能なフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が非導電性仕上げ材料で被覆された表面を有する創傷処置デバイスであって、仕上げ材料が、少なくとも 1 種の銀イオン供給化合物及び少なくとも 1 種のバインダー物質を含み、被覆された創傷処置デバイスが、24 時間にわたって約 50 μg/cm2 未満の制御された銀イオン放出速度を示し、仕上げ材料が抗菌特性を示す、創傷処置デバイス。
【請求項2】
制御された銀イオン放出速度が、24 時間にわたって約 25 μg/cm2 未満である、請求項1に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項3】
制御された銀イオン放出速度が、24 時間にわたって約 10 μg/cm2 未満である、請求項1に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項4】
少なくとも 1 種の銀イオン供給化合物が、イオン交換体、例えば、リン酸ジルコニウム銀、リン酸カルシウム銀、銀ゼオライト、銀ガラス及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項5】
少なくとも 1 種の銀イオン供給化合物がリン酸ジルコニウム銀である、請求項4に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項6】
非導電性仕上げ材料の化学的不安定性による変色を生じない、請求項1に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項7】
臭気吸着剤を含む、請求項1に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項8】
臭気吸着剤が、活性炭、チャコール及びゼオライトからなる群から選ばれる、請求項7に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項9】
被覆された創傷処置デバイスが、繊維製品、布地、フィルム、発泡体、アルギン酸塩、ヒドロゲル及び親水コロイドからなる群から選ばれる 1 種以上の基材を含む、請求項1に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項10】
布地が、織物、不織布及び編物である、請求項9に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項11】
被覆された創傷処置デバイスが連続複合フィラメントからなる不織布であり、複合フィラメントの各々が、第一フィラメント材料及び第二フィラメント材料を少なくとも含み、第一フィラメント材料及び第二フィラメント材料の少なくとも一部分は縦方向に分離してそれらの基本フィラメントになる、請求項10に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項12】
連続複合フィラメントがマイクロデニールである請求項11に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項13】
不織布が水流交絡不織布である請求項11に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項14】
不織布が熱的に結合された水流交絡不織布である、請求項13に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項15】
第一フィラメント材料が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)及びポリ乳酸(PLA)からなる群から選ばれるポリエステル材料である、請求項11に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項16】
第一フィラメント材料が PET である請求項15に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項17】
第二フィラメント材料が、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11 及びナイロン610 からなる群から選ばれるポリアミドである、請求項11に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項18】
第二フィラメント材料がナイロン6 である請求項17に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項19】
第一フィラメント材料が PET であり、第二フィラメント材料がナイロン6 である、請求項11に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項20】
被覆された創傷処置デバイスが、被覆物のない創傷処置デバイスの吸収能力の少なくとも 80 %の吸収能力を有する、請求項19に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項21】
被覆された創傷処置デバイスが、被覆物のない創傷処置デバイスの少なくとも 85 %の水蒸気透過率を有する、請求項19に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項22】
被覆された創傷処置デバイスが、ATCC 試験方法 6538 に従った 22 時間の暴露後、Staphylococcus aureus に関して少なくとも 2.07 の対数殺菌率を示す、請求項19に記載の創傷処置デバイス。
【請求項23】
被覆された創傷処置デバイスが、ATCC 試験方法 12055 に従った 22 時間の暴露後、Pseudomonas aeruginosa に関して少なくとも 1.49 の対数殺菌率を示す、請求項19に記載の創傷処置デバイス。
【請求項24】
被覆された創傷処置デバイスが発泡体である請求項9に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項25】
被覆された創傷処置デバイスが、ポリウレタン、カルボキシル化ブタジエンスチレンゴム、ポリエステル及びポリアクリレートからなる群から選ばれる発泡体である、請求項24に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項26】
被覆された創傷処置デバイスがポリウレタン発泡体である、請求項25に記載の被覆された創傷処置デバイス。
【請求項27】
少なくとも一部が非導電性仕上げ材料で被覆された表面を有する創傷処置デバイスであって、仕上げ材料が、少なくとも 1 種の銀イオン供給化合物及び少なくとも 1 種のバインダー物質を含み、被覆された創傷処置デバイスが、24 時間にわたって約 25 μg/cm2 未満の制御された銀イオン放出速度を示し、仕上げ材料が抗菌特性を示す、創傷処置デバイス。
【請求項28】
少なくとも一部が非導電性仕上げ材料で被覆された表面を有するマイクロデニール不織布創傷処置デバイスであって、仕上げ材料が、少なくとも 1 種の銀イオン供給化合物及び少なくとも 1 種のバインダー物質を含み、被覆された創傷処置デバイスが、24 時間にわたって約 50 μg/cm2 未満の制御された銀イオン放出速度を示し、仕上げ材料が抗菌特性を示す、創傷処置デバイス。
【請求項29】
少なくとも一部が非導電性仕上げ材料で被覆された表面を有する創傷処置デバイスの製造方法であって、仕上げ材料が、少なくとも 1 種の銀イオン供給化合物及び少なくとも 1 種のバインダー物質を含み、被覆された創傷処置デバイスが、24 時間にわたって約 50 μg/cm2 未満の制御された銀イオン放出速度を示し、仕上げ材料が抗菌特性を示し、製造方法が、
(a)創傷処置デバイスを供給する工程、
(b)少なくとも 1 種のバインダー化合物を含む非導電性仕上げ材料を供給する工程、
(c)基材の変色を生じることなく、基材の少なくとも一部に非導電性仕上げ材料を塗布する工程、
を含んでなる方法。
【請求項30】
工程(a)が、創傷処置デバイスを提供するために 1 層以上の基材を結合する工程を含み、基材が、布地、フィルム、発泡体、アルギン酸塩、ヒドロゲル及び親水コロイドからなる群から選ばれる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
1 層以上の基材が、超音波溶接、熱又は圧力によるラミネート加工、接着剤の使用、ニードルパンチング、水圧ニードリング、裁縫などからなる群から選ばれるラミネート技術又は接合技術を用いて結合される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
接着剤又は接着層を創傷処置デバイス表面に塗布する請求項29に記載の方法。
【請求項33】
創傷処置デバイス表面の接着剤又は接着層に着脱可能なフィルムを貼り付ける、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
銀イオン供給化合物が、リン酸ジルコニウム銀、リン酸カルシウム銀、銀ゼオライト、銀ガラス及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
銀イオン供給化合物がリン酸ジルコニウム銀である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも一部が非導電性仕上げ材料で被覆された表面を有する創傷処置デバイスの製造方法であって、仕上げ材料が、少なくとも 1 種の銀イオン供給化合物及び少なくとも 1 種のバインダー物質を含み、被覆された創傷処置デバイスが、24 時間にわたって約 25 μg/cm2 未満の制御された銀イオン放出速度を示し、仕上げ材料が抗菌特性を示し、製造方法が、
(d)創傷処置デバイスを供給する工程、
(e)少なくとも 1 種のバインダー化合物を含む非導電性仕上げ材料を供給する工程、
(f)基材の変色を生じることなく、基材の少なくとも一部に非導電性仕上げ材料を塗布する工程、
を含んでなる方法。
【請求項37】
工程(a)が、創傷処置デバイスを提供するために 1 層以上の基材を結合する工程を含み、基材が、布地、フィルム、発泡体、アルギン酸塩、ヒドロゲル及び親水コロイドからなる群から選ばれる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
1 層以上の基材が、超音波溶接、熱又は圧力によるラミネート加工、接着剤の使用、ニードルパンチング、水圧ニードリング、裁縫などからなる群から選ばれるラミネート技術又は接合技術を用いて結合される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
接着剤又は接着層を創傷処置デバイス表面に塗布する請求項36に記載の方法。
【請求項40】
創傷処置デバイス表面の接着剤又は接着層に着脱可能なフィルムを貼り付ける、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
銀イオン供給化合物が、リン酸ジルコニウム銀、リン酸カルシウム銀、銀ゼオライト、銀ガラス及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
銀イオン供給化合物がリン酸ジルコニウム銀である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
少なくとも一部が非導電性仕上げ材料で被覆された表面を有するマイクロデニール不織布創傷処置デバイスの製造方法であって、仕上げ材料が、少なくとも 1 種の銀イオン供給化合物及び少なくとも 1 種のバインダー物質を含み、被覆された創傷処置デバイスが、24 時間にわたって約 10 μg/cm2 未満の制御された銀イオン放出速度を示し、仕上げ材料が抗菌特性を示し、製造方法が、
(a)創傷処置デバイスを供給する工程、
(b)少なくとも 1 種のバインダー化合物を含む非導電性仕上げ材料を供給する工程、
(c)基材の変色を生じることなく、基材の少なくとも一部に非導電性仕上げ材料を塗布する工程、
を含んでなる方法。
【請求項44】
工程(a)が、創傷処置デバイスを提供するために 1 層以上の基材を結合する工程を含み、基材が、布地、フィルム、発泡体、アルギン酸塩、ヒドロゲル及び親水コロイドからなる群から選ばれる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
1 層以上の基材が、超音波溶接、熱又は圧力によるラミネート加工、接着剤の使用、ニードルパンチング、水圧ニードリング、裁縫などからなる群から選ばれるラミネート技術又は接合技術を用いて結合される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
接着剤又は接着層を創傷処置デバイス表面に塗布する請求項43に記載の方法。
【請求項47】
創傷処置デバイス表面の接着剤又は接着層に着脱可能なフィルムを貼り付ける、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
銀イオン供給化合物が、リン酸ジルコニウム銀、リン酸カルシウム銀、銀ゼオライト、銀ガラス及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項43に記載の方法。
【請求項49】
銀イオン供給化合物がリン酸ジルコニウム銀である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
請求項29に記載の方法による製品。
【請求項51】
請求項36に記載の方法による製品。
【請求項52】
請求項43に記載の方法による製品。
【請求項53】
創傷処置デバイスが、24 時間にわたって約 50 μg/cm2 未満の制御された銀イオン放出を示すことを達成するために、基材の変色を生じることなく基材を化学的に処理するための、少なくとも 1 種の銀イオン供給化合物及び少なくとも 1 種のバインダー物質を含む組成物であって、少なくとも 1 種のバインダー物質が、ポリウレタン、アクリル及びこれらの混合物からなる群から選ばれる組成物。
【請求項54】
少なくとも 1 種の銀イオン供給化合物が、リン酸ジルコニウム銀、リン酸カルシウム銀、銀ゼオライト、銀ガラス及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
銀イオン供給化合物がリン酸ジルコニウム銀である、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
少なくとも 1 種のバインダー物質がポリウレタンバインダーである、請求項53に記載の組成物。
【請求項57】
組成物が更に湿潤剤を含む請求項53に記載の組成物。
【請求項58】
湿潤剤がエトキシル化ポリエステルである請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
組成物が更に多価ハロゲン含有化合物を含む請求項53に記載の組成物。
【請求項60】
ハロゲン含有化合物が塩素含有化合物である請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
ハロゲン含有化合物が塩化マグネシウムである請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
創傷処置デバイスが、24 時間にわたって約 25 μg/cm2 未満の制御された銀イオン放出を示すことを達成するために、基材の変色を生じることなく基材を化学的に処理するための、少なくとも 1 種の銀イオン供給化合物及び少なくとも 1 種のバインダー物質を含む組成物であって、少なくとも 1 種のバインダー物質が、ポリウレタン、アクリル及びこれらの混合物からなる群から選ばれる組成物。
【請求項63】
少なくとも 1 種の銀イオン供給化合物が、リン酸ジルコニウム銀、リン酸カルシウム銀、銀ゼオライト、銀ガラス及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
銀イオン供給化合物がリン酸ジルコニウム銀である、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
少なくとも 1 種のバインダー物質がポリウレタンバインダーである、請求項62に記載の組成物。
【請求項66】
組成物が更に湿潤剤を含む請求項62に記載の組成物。
【請求項67】
湿潤剤がエトキシル化ポリエステルである請求項66に記載の組成物。
【請求項68】
組成物が更に多価ハロゲン含有化合物を含む請求項62に記載の組成物。
【請求項69】
ハロゲン含有化合物が塩素含有化合物である請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
色安定剤が塩化マグネシウムである請求項69に記載の組成物。
【請求項71】
創傷処置デバイスが、24 時間にわたって約 10 μg/cm2 未満の制御された銀イオン放出を示すことを達成するために、基材の変色を生じることなく基材を化学的に処理するための、少なくとも 1 種の銀イオン供給化合物及び少なくとも 1 種のバインダー物質を含む組成物であって、少なくとも 1 種のバインダー物質が、ポリウレタン、アクリル及びこれらの混合物からなる群から選ばれる組成物。
【請求項72】
少なくとも 1 種の銀イオン供給化合物が、リン酸ジルコニウム銀、リン酸カルシウム銀、銀ゼオライト、銀ガラス及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項71に記載の組成物。
【請求項73】
銀イオン供給化合物がリン酸ジルコニウム銀である、請求項72に記載の組成物。
【請求項74】
少なくとも 1 種のバインダー物質がポリウレタンバインダーである、請求項71に記載の組成物。
【請求項75】
組成物が更に湿潤剤を含む請求項71に記載の組成物。
【請求項76】
湿潤剤がエトキシル化ポリエステルである請求項75に記載の組成物。
【請求項77】
組成物が更に多価ハロゲン含有化合物を含む請求項71に記載の組成物。
【請求項78】
ハロゲン含有化合物が塩素含有化合物である請求項77に記載の組成物。
【請求項79】
ハロゲン含有化合物が塩化マグネシウムである請求項78に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−502273(P2007−502273A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523200(P2006−523200)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/022825
【国際公開番号】WO2005/018543
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(500524682)ミリケン・アンド・カンパニー (23)
【Fターム(参考)】