説明

銀塩熱現像感光材料および銀塩熱現像感光材料の画像形成方法

【課題】本発明の目的は、高感度で低カブリ、且つ照度不軌特性、画像耐光性、銀色調に優れた銀塩熱現像感光材料を提供すること、及び該銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法を提供することにある。
【解決手段】支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤及びバインダーを含む画像形成層を有する銀塩熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀は露光時に表面潜像型で、熱現像後に内部潜像型へ変換し、かつ、該画像形成層が下記一般式(I)で表される銀イオンのための還元剤、該還元剤の酸化生成物と反応して色素を形成し得るカプラーを含有することを特徴とする銀塩熱現像感光材料。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、銀塩熱現像感光材料及びそれを用いた画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療、印刷製版の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が作業性の上で問題となっており、近年では環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザ・イメージャーにより効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像を形成することができる銀塩熱現像感光材料に関する技術が注目されている。
【0003】
この技術として、支持体上に有機銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤及びバインダーを含有する銀塩熱現像感光材料(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【0004】
しかし、銀塩熱現像感光材料は現像に関わる素材がすべて銀塩熱現像感光材料に内蔵されているため、湿式処理用感光材料に比べて銀塩熱現像感光材料の現像前の保存性が著しくという悪い欠点があった。
【0005】
銀塩熱現像感光材料の感光性ハロゲン化銀粒子は、熱現像後も残留するので熱現像後の耐光性(画像保存)が必要とされる。また、熱現像前の露光では現像反応(銀イオン還元剤による銀イオンの還元反応)の触媒として機能し得る潜像を該ハロゲン化銀粒子の表面に形成し、熱現像過程経過後の露光では該ハロゲン化銀粒子の表面より内部に多くの潜像を形成するようになることにより、表面における潜像形成が抑制されるハロゲン化銀粒子であることが好ましい。なお、このように熱現像処理前後で潜像形成機能が変化するハロゲン化銀粒子(熱変換内部潜像型ハロゲン化銀粒子)は従来知られていなかった。
【0006】
一般に、感光性ハロゲン化銀粒子が露光されるとハロゲン化銀粒子自身、または感光性ハロゲン化銀粒子表面上に吸着している分光増感色素が光励起されて、自由に移動できる電子を生じるが、この電子はハロゲン化銀粒子表面に存在する電子トラップ(感光中心)または当該粒子の内部にある電子トラップに競争的にトラップ(捕獲)される。従って、電子トラップとして有効な化学増感中心(化学増感核)やドーパント等がハロゲン化銀粒子内部より表面に多く、且つ適当数ある場合には表面に優先的に潜像が形成され、現像可能となる。逆に、電子トラップとして有効な化学増感中心(化学増感核)やドーパント等がハロゲン化銀粒子表面より内部に多く、且つ適当数ある場合には内部に優先的に潜像が形成され、現像が困難となる。換言すると、前者の場合は内部より表面の感度が高く、後者の場合は内部より表面の感度が低いと言える(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、これら多くの文献に開示されてはいるが、いずれも銀塩熱現像感光材料に適したものではなかった。
【0007】
一方、発色現像薬とカプラーを含有した、臭化銀あるいはヨウ塩臭化銀を銀源とする、熱現像感光材料も知られている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、ハロゲン化銀による光散乱と吸収のために膜の濁りおよび不透明性が増加するため、実施例に記載されているようにかぶりが0.58〜1.2と極めて高くなってしまう。従って、得られる画像は一次原稿であって、直接観察し得る画像ではなく、これをもとにデジタル化して、さらに画像処理を施してかぶりを低減しかつ階調と色調を調整した再処理画像を得て始めて観察し得る画像となるのである(例えば、特許文献6参照)。
【0008】
また、還元可能な銀塩を利用した熱画像形成システムが記載されている(例えば、特許文献1参照)。特に、銀塩熱現像感光材料は、一般に触媒活性量の光触媒(例えば、ハロゲン化銀)、還元剤、還元可能な銀塩(例えば、還元可能な有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤をバインダーのマトリックス中に分散した画像形成層を有している。銀塩熱現像感光材料は画像露光後、高温(例えば、80℃以上)に加熱し、還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。そのため、黒色の銀画像は露光領域に形成されることが多くの文献に開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
これらの銀塩熱現像感光材料に用いる還元可能な銀塩としては、光に対して比較的安定であるが、露光された光触媒(感光性ハロゲン化銀の潜像など)及び還元剤の存在下で、80℃あるいはそれ以上に加熱された場合に銀画像を形成する銀塩が従来用いられている。このような非感光性の還元可能な銀塩については、多数記載されている(例えば、特許文献3参照)。有機酸の銀塩、特に(炭素数が10〜30、好ましくは15〜28の)長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩が用いられ、例としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、これらの混合物などを挙げることができる。また、スルホン酸の銀塩、テトラゾール誘導体の銀錯体、トリアゾール誘導体の銀錯体、メタクリル酸/スチレン共重合ポリマーの銀塩が開示されている。ジカルボン酸化合直鎖アルキルモノカルボン酸銀と直鎖アルキルジカルボン酸とを併用する例が開示されている。しかしながら、これらの従来技術においては、ジカルボン酸などの多価カルボン酸を画質や保存性を改良するための添加剤として使用しており、銀イオン供給源としてジカルボン酸などの多価カルボン酸を使用した銀塩熱現像感光材料は従来知られていない。
【0010】
また、露光後高温(例えば、80℃以上)に加熱した場合に、還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光で発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の還元可能な銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。また、現像後の画像耐光性改良のために、沃化銀(AgI)を用いた銀塩熱現像感光材料が開示されているが(例えば、特許文献4参照)、しかしながら、いずれも十分な感度・カブリレベルを達成できているものではない。
【0011】
そこで、高感度で、カブリが低く、現像後の耐光性(濃度変動、色調変動)、且つ露光前保存性(カブリの上昇、感度変動)に優れ、環境面・省エネ面で有利な銀塩熱現像感光材料を提供する技術が望まれていた。
【0012】
また、これらの銀塩熱現像感光材料の設計には、従来の現像液により現像する感光材料とは異なる熱現像特有の配慮が必要である。特に熱現像時には、通常80〜140℃の熱がかかるため、従来とは異なった設計が必要となる。
【0013】
熱現像処理時の条件によっては、銀塩熱現像感光材料と熱現像処理装置の搬送ローラーや処理部材との間の滑り性が変化し、搬送不良や濃度むらが発生していたため、これらを解決するための技術が切望されていた。特に医療用感光材料において、濃度むらは生体各部位の撮影にて病巣の誤診につながるため、画像の欠陥、すり傷や付着物等がない銀塩熱現像感光材料が強く求められていた。しかしながら、マット剤に係る問題、擦り傷、感材どうしの接着等について、その改良を意図した技術が知られているが十分とは言えない。
【特許文献1】米国特許第3,152,904号明細書
【特許文献2】米国特許第2,910,377号明細書
【特許文献3】特開平6−130543号公報
【特許文献4】特開2003−091052号公報
【特許文献5】特開2001−312026号公報
【特許文献6】特開2003−215764号公報
【非特許文献1】日本写真学会編、写真工学の基礎(銀塩写真編)、コロナ社(1979)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、高感度で低カブリ、且つ照度不軌特性、画像耐光性、銀色調に優れた銀塩熱現像感光材料を提供すること、及び該銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0016】
1.支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤及びバインダーを含む画像形成層を有する銀塩熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀は露光時に表面潜像型で、熱現像後に内部潜像型へ変換し、かつ、該画像形成層が下記一般式(I)で表される銀イオンのための還元剤、該還元剤の酸化生成物と反応して色素を形成し得るカプラーを含有することを特徴とする銀塩熱現像感光材料。
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R5及びR6はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、又はスルホニル基を表し、R1とR2、R3とR4、R5とR6、R2とR5、及びR4とR6から選ばれる少なくとも1組は互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。R7はR11−O−CO−、R12−CO−CO−、R13−NH−CO−、R14−SO2−、R15−W−C(R16)(R17)(R18)−、R19−SO2NHCO−、R20−CONHCO−、R21−SO2NHSO2−、R22−CONHSO2−又は(M)1/nOSO2−を表し、R11、R12、R13、R14、R19、R20、R21及びR22はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R15は水素原子又はブロック基を表し、Wは酸素原子、イオウ原子又は>N−R18を表し、R16、R17、及びR18は水素原子又はアルキル基を表し、Mはn価のカチオンを表す。)。
【0019】
2.前記一般式(I)で表される還元剤のR7がR11−O−CO−またはR19−SO2NHCO−で表される化合物であることを特徴とする1に記載の銀塩熱現像感光材料。
【0020】
3.前記還元剤が、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする1または2に記載の銀塩熱現像感光材料。
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、R101及びR102はそれぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表し、R103、R104、R105、R106及びR107はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R101とR102、R103とR104、R105とR106、及びR107とXから選ばれる少なくとも一組は互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。Xはハロゲン原子、又はヘテロ原子を有する置換基(前記ヘテロ原子を介してベンゼン環に結合する)を表す。nは0〜4の整数を表す。nが2以の場合、R107は同じであっても異なっていても良く、また互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。)。
【0023】
4.前記還元剤が、下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料:
【0024】
【化3】

【0025】
(式中、R201、R202、及びR203はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R204はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R201とR202、及びR202とR204から選ばれる少なくとも1組は互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。Zは窒素原子及びベンゼン環中の2個の炭素原子とともに5員、6員又は7員の環を形成する非金属原子群を表す。R205はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。ただし、R201〜R204の各々にヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基のいずれをも含まない。)。
【0026】
5.前記一般式(III)におけるR205が下記一般式(IV)で表される基であることを特徴とする4に記載の銀塩熱現像感光材料:
【0027】
【化4】

【0028】
(式中、Xは、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を介してベンゼン環に置換する基を表し、R206は置換基を表し、nは0〜4の整数を表す。nが2以上の場合、2個以上のR206は同じでも、異なっていてもよく、隣り合った位置に結合した基が互いに結合して5員〜7員の、炭素環又はヘテロ環を形成してもよい。)。
【0029】
6.前記カプラーとして下記一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(M−1)、(M−2)、(M−3)、(Y−1)、(Y−2)および(Y−3)よりなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする1〜5のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料。
【0030】
【化5】

【0031】
(式中、X1は水素原子または離脱基を表し、Y1およびY2は電子求引性の置換基を表し、R1はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。)
【0032】
【化6】

【0033】
(式中、X2は水素原子または離脱基を表し、R2はアシルアミノ基、ウレイド基またはウレタン基を表し、R3は水素原子、アルキル基またはアシルアミノ基を表し、R4は水素原子、または置換基を表す。R3とR4が互いに連結して環を形成してもよい。)
【0034】
【化7】

【0035】
(式中、X3は水素原子または離脱基を表し、R5はカルバモイル基またはスルファモイル基を表し、R6は水素原子または置換基を表す。)
【0036】
【化8】

【0037】
(式中、X4は水素原子または離脱基を表し、R7はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R8は置換基を表す。)
【0038】
【化9】

【0039】
(式中、X5は水素原子または離脱基を表し、R9はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R10は置換基を表す。)
【0040】
【化10】

【0041】
(式中、X6は水素原子または離脱基を表し、R11はアルキル基、アリール基、アシルアミノ基またはアニリノ基を表し、R12はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。)
【0042】
【化11】

【0043】
(式中、X7は水素原子または離脱基を表し、R13はアルキル基、アリール基、インドレニル基を表し、R14はアリール基またはヘテロ環基を表す。)
【0044】
【化12】

【0045】
(式中、X8は水素原子または離脱基を表し、Zは5員ないし7員の環を形成するのに必要な2価の基を表し、R15はアリール基またはヘテロ環基を表す。)
【0046】
【化13】

【0047】
(式中、X9は水素原子または離脱基を表し、R16、R17およびR18はそれぞれ置換基を表し、nは0ないし4の、mは0ないし5のいずれかの整数を表す。nまたはmが2以上のとき、複数のR16およびR17はそれぞれ同一の基であってもよいし、別々の基であってもよい。)。
【0048】
7.前記カプラーとして一般式(C−1)、(C−2)、及び(C−3)から選ばれる1種、(M−1)、(M−2)、及び(M−3)から選ばれる1種、(Y−1)、(Y−2)、及び(Y−3)から選ばれる1種、を含む3種のうちの2種以上を含有することを特徴とする1〜6のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料。
【0049】
8.前記感光性ハロゲン化銀の全投影面積の10%以上100%以下がアスペクト比2以上100以下の平板状粒子であることを特徴とする1〜7のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料。
【0050】
9.前記画像形成層が支持体に対し一方の面側にのみ設けられていることを特徴とする1〜8のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料。
【0051】
10.前記画像形成層が支持体に対し両方の面側に設けられていることを特徴とする1〜9のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料。
【0052】
11.1〜10のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料を、25mm/秒以上120mm/秒以下で搬送しながら熱現像することを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【0053】
12.前記銀塩熱現像感光材料をレーザ光で露光することを特徴とする11に記載の銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【0054】
13.1〜10のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料について画像形成をする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法であって、(a)該銀塩熱現像感光材料を1対のX線増感スクリーンの間に設置することにより像形成用組立体を得る工程、(b)該組立体とX線源との間に被検体を配置する工程、(c)該被検体にエネルギーレベルが25〜125kVpの範囲にあるX線を照射する工程、(d)該銀塩熱現像感光材料を該組立体から取り出す工程、(e)取り出した該銀塩熱現像感光材料を80〜150℃の範囲の温度で加熱する工程を含んでなることを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、高感度で低カブリ、且つ照度不軌特性、画像耐光性、銀色調に優れた銀塩熱現像感光材料を提供すること、及び該銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0057】
以下、本発明を実施するための最良の形態である、銀塩熱現像感光材料で用いる感光性ハロゲン化銀、有機脂肪酸銀塩、バインダー、架橋剤を初めとする各種添加剤、塗布技術、露光・現像条件について順次、詳細に説明する。
【0058】
(還元剤:一般式(I)で表される化合物)
本発明に係る一般式(I)で表される化合物について詳しく説明する。
【0059】
前記一般式(I)において、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R1、R2、R3及びR4で表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、及びシリル基が挙げられる。
【0060】
更に詳しくは、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、又は2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、又は4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含する。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。〕、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、又はオレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基、又はアリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、又はo−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、又は2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、又はアルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、又は2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、又は2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、又は2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、又はp−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、又はN−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、又はn−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、又はp−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、又はジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、又は3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、又はモルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、又はN−メチル−メトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、又はm−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、又はN−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、又はp−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、又はn−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、又はm−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N′−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、又はp−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、又はp−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、又はp−n−オクチルオキシフェニルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、又はp−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、又はn−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、又は5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、又はメチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、又はジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、又はジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、又はフェニルジメチルシリル)が挙げられる。
【0061】
1〜R4で表される基が更に置換可能な基である場合、R1〜R4で表される基は更に置換基を有してもよく、その場合の好ましい置換基はR1〜R4で説明した置換基と同じ意味の基を表す。2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0062】
5及びR6はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表し、そのアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基の好ましい範囲については、前記のR1〜R4で表される置換基で説明したアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基と同じ意味の基を表す。R5及びR6で表される基が更に置換可能な基である場合、R5及びR6で表される基は更に置換基を有してもよく、その場合の好ましい置換基はR1〜R4で説明した置換基と同じ意味の基を表す。2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0063】
1とR2、R3とR4、R5とR6、R2とR5、及びR4とR6から選ばれる少なくとも1組は互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。
【0064】
一般式(I)におけるR7はR11−O−CO−、R12−CO−CO−、R13−NH−CO−、R14−SO2−、R15−W−C(R16)(R17)(R18)−、R19−SO2NHCO−、R20−CONHCO−、R21−SO2NHSO2−、R22−CONHSO2−、又は(M)1/nOSO2−を表し、R11、R12、R13、R14、R19、R20、R21、及びR22はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R15は水素原子又はブロック基を表し、Wは酸素原子、イオウ原子又は>N−R18を表し、R16、R17、及びR18は水素原子又はアルキル基を表す。R11、R12、R13、R14、R19、R20、R21、及びR22で表されるアルキル基、アリール基、及びヘテロ環基は前記のR1〜R4で表される置換基で説明したアルキル基、アリール基、及びヘテロ環基と同じ意味の基を表し、Mはn価のカチオンを表す。R11、R12、R13、R14、R19、R20、R21、及びR22で表される基が更に置換可能な基である場合、R11、R12、R13、R14、R19、R20、R21、及びR22で表される基は更に置換基を有してもよく、その場合の好ましい置換基はR1〜R4で説明した置換基と同じ意味の基を表す。2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0065】
16、R17、及びR18がアルキル基を表す場合、R1〜R4で表される置換基で説明したアルキル基と同じ意味の基を表す。R15がブロック基を表す場合のブロック基としては、後述のBLKで表されるブロック基と同じ意味の基を表す。
【0066】
以下に、一般式(I)で表される化合物の好ましい範囲について説明する。
【0067】
1〜R4は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、及びアシルオキシ基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基が更に好ましい。特に好ましくは、R1〜R4の中で、R1又はR3のいずれか一方が水素原子である。
【0068】
5及びR6はアルキル基、アリール基、及びヘテロ環基が好ましく、アルキル基が最も好ましい。
【0069】
一般式(I)で表される化合物のR7を水素原子にしたp−フェニレンジアミン誘導体のpH10の水中における酸化電位が5mV以下(vsSCE)であることが発色性と保存性を両立できる点で好ましい。
【0070】
7はR11−O−CO−及びR14−SO2−、R19−SO2−NH−CO−及びR15−W−C(R16)(R17)(R18)が好ましく、R11−O−CO−、R19−SO2−NH−CO−がより好ましく、R19−SO2−NH−CO−が最も好ましい。R11はアルキル基が好ましく、米国特許第4,409,323号もしくは同4,421,845号に記載のある電子移動反応を利用して開裂反応を起こさせるタイミング基を含む基であることが好ましく、タイミング基の電子移動反応を引き起こす末端がブロックされた下記一般式(T−1)で表される基であることが好ましい。一般式(T−1)BLK−W−(X=Y)j−C(R21)R22−**式中、BLKはブロック基を表し、**は−O−CO−と結合する位置を表し、Wは酸素原子、イオウ原子又は>N−R23を表し、X及びYは各々メチン又は窒素原子を表し、jは0、1又は2を表し、R21、R22及びR23は各々水素原子又はR1〜R4で説明した置換基と同じ意味の基を表す。ここで、X及びYが置換メチンを表すときその置換基、R21、R22及びR23の各々の任意の2つの置換基が連結し環状構造(例えばベンゼン環、ピラゾール環)を形成する場合、もしくは形成しない場合のいずれであっても良い。
【0071】
BLKで表されるブロック基としては公知のものが使用できる。すなわち、特公昭48−9968号、特開昭52−8828号、同57−82834号、米国特許第3,311,476号、及び特公昭47−44805号(米国特許第3,615,617号)等に記載されているアシル基、スルホニル基等のブロック基、特公昭55−17369号(米国特許第3,888,677号)、同55−9696号(米国特許第3,791,830号)、同55−34927号(米国特許第4,009,029号)、特開昭56−77842号(米国特許第4,307,175号)、同59−105640号、同59−105641号、及び同59−105642号等に記載されている逆マイケル反応を利用するブロック基、特公昭54−39727号、米国特許第3,674,478号、同3,932,480号、同3,993,661号、特開昭57−135944号、同57−135945号(米国特許第4,420,554号)、同57−136640号、同61−196239号、同61−196240号(米国特許第4,702,999号)、同61−185743号、同61−124941号(米国特許第4,639,408号)、及び特開平2−280140号等に記載されている分子内電子移動によりキノンメチド又はキノンメチド類似の化合物の生成を利用するブロック基、米国特許第4,358,525号、同4,330,617号、特開昭55−53330号(米国特許第4,310,612号)、同59−121328号、同59−218439号、及び同63−318555号(欧州公開特許第0295729号)等に記載されている分子内求核置換反応を利用するブロック基、特開昭57−76541号(米国特許第4,335,200号)、同57−135949号(米国特許第4,350,752号)、同57−179842号、同59−137945号、同59−140445号、同59−219741号、同59−202459号、同60−41034号(米国特許第4,618,563号)、同62−59945号(米国特許第4,888,268号)、同62−65039号(米国特許第4,772,537号)、同62−80647号、特開平3−236047号、及び同3−238445号等に記載されている、5員又は6員環の環解裂反応を利用するブロック基、特開昭59−201057号(米国特許第4,518,685号)、同61−43739号(米国特許第4,659,651号)、同61−95346号(米国特許第4,690,885号)、同61−95347号(米国特許第4,892,811号)、特開昭64−7035号、同4−42650号(米国特許第5,066,573号)、特開平1−245255号、同2−207249号、同2−235055号(米国特許第5,118,596号)、及び同4−186344号等に記載されている共役不飽和結合への求核剤の付加反応を利用するブロック基、特開昭59−93442号、同61−32839号、同62−163051号及び特公平5−37299号等に記載されているβ−脱離反応を利用するブロック基、特開昭61−188540号に記載されているジアリールメタン類の求核置換反応を利用したブロック基、特開昭62−187850号に記載されているロッセン転位反応を利用したブロック基、特開昭62−80646号、同62−144163号、及び同62−147457号等に記載されているチアゾリジン−2−チオンのN−アシル体とアミン類との反応を利用したブロック基、特開平2−296240号(米国特許第5,019,492号)、同4−177243号、同4−177244号、同4−177245号、同4−177246号、同4−177247号、同4−177248号、同4−177249号、同4−179948号、同4−184337号、同4−184338号、国際公開特許92/21064号、特開平4−330438号、国際公開特許93/03419号、及び特開平5−45816号等に記載されている、2個の求電子基を有して二求核剤と反応するブロック基、特開平3−236047号及び同3−238445号を挙げることができる。
【0072】
これらのブロック基のうち、特に好ましいものは特開平2−296240号(米国特許第5,019,492号)、同4−177243号、同4−177244号、同4−177245号、同4−177246号、同4−177247号、同4−177248号、同4−177249号、同4−179948号、同4−184337号、同4−184338号、国際公開特許92/21064号、特開平4−330438号、国際公開特許93/03419号、及び特開平5−45816号等に記載されている、2個の求電子基を有して二求核剤と反応するブロック基である。
【0073】
一般式(T−1)で示される基からBLKを除いたタイミング基部分の具体例として例えば以下のものが挙げられる。下記において、*はBLKと結合する位置を表し、**は−O−CO−と結合する位置をあらわす。
【0074】
【化14】

【0075】
12及びR13はアルキル基及びアリール基が好ましく、R14はアリール基が好ましい。R15はブロック基が好ましく、好ましいブロック基は前記の式(T−1)で表される基中の好ましいBLKと同じである。R16、R17、及びR18は水素原子が好ましい。以下に、本発明の式(I)で表される化合物の具体的化合物例を示すが、本発明はこれらによって限定されない。
【0076】
【化15】

【0077】
【化16】

【0078】
【化17】

【0079】
【化18】

【0080】
【化19】

【0081】
【化20】

【0082】
【化21】

【0083】
【化22】

【0084】
【化23】

【0085】
本発明に用いる式(I)で表される化合物として、米国特許第5,242,783号、同4,426,441号、特開昭62−227141号、特開平5−257225号、同5−249602号、同6−43607号、及び同7−333780号に記載された化合物も好ましい。
【0086】
(還元剤:一般式(II)で表される化合物)
一般式(II)中、R103、R104、R105、R106及びR107はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R103、R104、R105、R106及びR107で表される好ましい置換基としては、以下のものが挙げられる。
【0087】
(1)ハロゲン原子
例えば塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子等。
【0088】
(2)アルキル基
直鎖、分岐、環状の置換又は無置換のアルキル基。
【0089】
〈直鎖又は分岐の置換又は無置換のアルキル基〉
好ましくは炭素数1〜30であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、又は2−エチルヘキシル基等。
【0090】
〈環状の置換又は無置換のアルキル基〉
シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルキル基であり、例えばシクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)。ビシクロアルキル基(好ましくは炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルキル基、即ち、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基であり、例えばビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基等)。さらに環構造が多いトリシクロ構造や、以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基等)等。
【0091】
(3)アルケニル基
直鎖、分岐、環状の置換又は無置換のアルケニル基。
【0092】
〈直鎖又は分岐のアルケニル基〉
好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルケニル基であり、例えばビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、又はオレイル基等。
【0093】
〈シクロアルケニル基〉
好ましくは炭素数3〜30の置換又は無置換のシクロアルケニル基、即ち、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基であり、例えば2−シクロペンテン−1−イル基、又は2−シクロヘキセン−1−イル基等。
【0094】
〈ビシクロアルケニル基〉
置換又は無置換のビシクロアルケニル基であり、好ましくは炭素数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルケニル基、即ち二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基であり、例えばビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基等)等。
【0095】
(4)アルキニル基
好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキニル基であり、例えばエチニル基、プロパルギル基、又はトリメチルシリルエチニル基等。
【0096】
(5)アリール基
好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリール基であり、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、又はo−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等。
【0097】
(6)ヘテロ環基
好ましくは5員又は6員の置換又は無置換の芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基、さらに好ましくは炭素数3〜30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基であり、例えば2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、又は2−ベンゾチアゾリル基等。
【0098】
(7)シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はカルボキシル基
(8)アルコキシ基
好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、又は2−メトキシエトキシ基等。
【0099】
(9)アリールオキシ基
好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールオキシ基であり、例えばフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、又は2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等。
【0100】
(10)シリルオキシ基
好ましくは炭素数3〜20のシリルオキシ基であり、例えばトリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基等。
【0101】
(11)ヘテロ環オキシ基
好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環オキシ基であり、例えば1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基等。
【0102】
(12)アシルオキシ基
好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基等であり、例えばアセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、又はp−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等。
【0103】
(13)カルバモイルオキシ基
好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイルオキシ基であり、例えばN,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、又はN−n−オクチルカルバモイルオキシ基等。
【0104】
(14)アルコキシカルボニルオキシ基
好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルコキシカルボニルオキシ基であり、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、又はn−オクチルカルボニルオキシ基等。
【0105】
(15)アリールオキシカルボニルオキシ基
好ましくは炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基であり、例えばフェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、又はp−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等。
【0106】
(16)アミノ基
好ましくはアミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアニリノ基等であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、又はジフェニルアミノ基等。
【0107】
(17)アシルアミノ基
好ましくはホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルアミノ基等であり、例えばホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、又は3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等。
【0108】
(18)アミノカルボニルアミノ基
好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基であり、例えばカルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、又はモルホリノカルボニルアミノ基等。
【0109】
(19)アルコキシカルボニルアミノ基
好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、又はN−メチルメトキシカルボニルアミノ基等。
【0110】
(20)アリールオキシカルボニルアミノ基
好ましくは炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えばフェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、又はm−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等。
【0111】
(21)スルファモイルアミノ基
好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基であり、例えばスルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、又はN−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等。
【0112】
(22)アルキル及びアリールスルホニルアミノ基
好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基等であり、例えばメチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、又はp−メチルフェニルスルホニルアミノ基等。
【0113】
(23)メルカプト基
(24)アルキルチオ基
好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルチオ基であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、又はn−ヘキサデシルチオ基等。
【0114】
(25)アリールチオ基
好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールチオ基、例えばフェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、又はm−メトキシフェニルチオ基等。
【0115】
(26)ヘテロ環チオ基
好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基であり、例えば2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基等。
【0116】
(27)スルファモイル基
好ましくは炭素数0〜30の置換又は無置換のスルファモイル基であり、例えばN−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル、又はN−(N′−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等。
【0117】
(28)スルホ基
(29)アルキル及びアリールスルフィニル基
好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基等であり、例えばメチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、又はp−メチルフェニルスルフィニル基等。
【0118】
(30)アルキル及びアリールスルホニル基
好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基及び6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニル基であり、例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、又はp−メチルフェニルスルホニル基等。
【0119】
(31)アシル基
好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールカルボニル基等であり、例えばアセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、又はp−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基等。
【0120】
(32)アルコキシカルボニル基
好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、又はn−オクタデシルオキシカルボニル基等。
【0121】
(33)アリールオキシカルボニル基
好ましくは炭素数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基であり、例えばフェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、又はp−t−ブチルフェノキシカルボニル基等。
【0122】
(34)カルバモイル基
好ましくは炭素数1〜30の置換又は無置換のカルバモイル基であり、例えばカルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、又はN−(メチルスルホニル)カルバモイル基等。
【0123】
(35)アリール及びヘテロ環アゾ基
好ましくは炭素数6〜30の置換又は無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換又は無置換のヘテロ環アゾ基等であり、例えばフェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、又は5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基等。
【0124】
(36)イミド基
好ましくはN−スクシニルイミド、N−フタルイミド基等。
【0125】
(37)ホスフィノ基
好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィノ基であり、例えばジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、又はメチルフェノキシホスフィノ基等。
【0126】
(38)ホスフィニル基
好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニル基であり、例えばホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、又はジエトキシホスフィニル基等。
【0127】
(39)ホスフィニルオキシ基
好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルオキシ基であり、例えばジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等。
【0128】
(40)ホスフィニルアミノ基
好ましくは炭素数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルアミノ基であり、例えばジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基等。
【0129】
(41)シリル基
好ましくは炭素数3〜30の置換又は無置換のシリル基であり、例えばトリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、又はフェニルジメチルシリル基等。
【0130】
これらの中で、R103、R104、R105、R106及びR107は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、スルホ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基がより好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基がさらに好ましい。特に好ましくは、R103、R104、R105、R106及びR107の中で、R104又はR106のいずれか一方が水素原子である。
【0131】
103、R104、R105、R106及びR107で表される基がさらに置換可能な基である場合、R103、R104、R105、R106及びR107で表される基はさらに置換基を有してもよく、その場合の好ましい置換基はR103、R104、R105、R106及びR107の欄で説明した置換基と同じでよい。2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0132】
101及びR102はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基又はアリールスルホニル基を表し、これらの基の好ましい範囲については、上記のR103、R104、R105、R106及びR107で表される置換基で説明したアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基及びアリールスルホニル基と同じである。R101及びR102はアルキル基、アリール基及びヘテロ環基が好ましく、アルキル基が最も好ましい。R101及びR102で表される基がさらに置換可能な基である場合、R101及びR102で表される基はさらに置換基を有してもよく、その場合の好ましい置換基はR103、R104、R105、R106及びR107で説明した置換基と同様である。2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0133】
101とR102、R103とR104、R105とR106、及びR107とXの少なくとも一組は互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。
【0134】
Xはハロゲン原子、又はヘテロ原子を有する置換基(上記ヘテロ原子を介してベンゼン環に結合する)を表す。ここでヘテロ原子は炭素以外の原子であり、例えば酸素、窒素、硫黄等である。Xは好ましくは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、又はシリル基等である。これらの基の好ましい範囲については、上記のR103、R104、R105、R106及びR107で表される置換基の欄で説明したハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、又はシリル基等と同じである。
【0135】
Xはより好ましくは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルホニル基、及びシリル基であり、さらに好ましくはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基である。
【0136】
nは0〜4の整数を表す。nが2以上の場合、複数のR107は同じであっても異なっていても良く、また互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。
【0137】
以下に、一般式(II)で表される発色現像主薬の具体的化合物例を示すが、本発明はこれらによって限定されない。
【0138】
【化24】

【0139】
【化25】

【0140】
【化26】

【0141】
【化27】

【0142】
(還元剤:一般式(III)で表される化合物)
本発明の熱現像感光材料が含有する一般式(III)の化合物は可視領域には吸収をほとんど有しない化合物であるが、熱現像すると還元剤を放出して銀画像を形成するのに寄与し、放出された還元剤の酸化体が生成する。これらの酸化体がカプラー化合物と反応すると色素を生成し、銀画像に応じたイメージワイズな色素画像が得られる。本発明においては、色素供与性カプラー及び一般式(III)で表される化合物は感光層に含まれていても良いが、反応可能な状態であれば別層に分割して添加することもできる。
【0143】
以下に、本発明の一般式(III)で表される化合物について詳しく説明する。R201、R202、及びR203はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R201、R202、及びR203で表される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、及びシリル基が挙げられる。
【0144】
更に詳しくは、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、
アルキル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、又は2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、又は4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含する。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。]、
アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、又はシクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)]、
アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、
又はアリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、又はo−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、
ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、
シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、
アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、
シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、
ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、
アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、又はp−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、
カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、又はN−n−オクチルカルバモイルオキシ)、
アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、
アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、又はジフェニルアミノ)、
アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、又は3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、
アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、又はモルホリノカルボニルアミノ)、
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、又はN−メチル−メトキシカルボニルアミノ)、
アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、又はm−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、
スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、又はN−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、
アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、又はp−メチルフェニルスルホニルアミノ)、
メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、又はn−ヘキサデシルチオ)、
アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、
スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N′−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、
アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、又はp−メチルフェニルスルフィニル)、
アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、
アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、又はp−n−オクチルオキシフェニルカルボニル)、
アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、又はp−t−ブチルフェノキシカルボニル)、
アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、又はn−オクタデシルオキシカルボニル)、
カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、
アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、
イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、又はメチルフェノキシホスフィノ)、
ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、
ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、
ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、
シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、又はフェニルジメチルシリル)が挙げられる。
【0145】
201〜R203で表される基が更に置換可能な基である場合、R201〜R203で表される基は更に置換基を有してもよく、その場合の好ましい置換基はR201〜R203で説明した置換基と同じ意味の基を表す。2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0146】
204とR205は、それぞれアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、そのアルキル基、アリール基、及びヘテロ環基の好ましい範囲については、前記のR201〜R203で表される置換基で説明したアルキル基、アリール基、及びヘテロ環基と同じ意味の基を表す。R204又はR205で表される基が更に置換可能な基である場合、R204又はR205で表される基は更に置換基を有してもよく、その場合の好ましい置換基はR201〜R203で説明した置換基と同じ意味の基を表す。2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0147】
201とR202、又は/及びR202とR204は互いに結合して5員、6員又は7員の、炭素環又はヘテロ環を形成してもよい。
【0148】
以下に、一般式(III)で表される化合物の好ましい範囲について説明する。R201〜R203は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、及びアシルオキシ基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アシルアミノ基、アルキル、及びアリールスルホニルアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基が更に好ましい。特に好ましくは、R201又はR203のいずれか一方が水素原子である。R202はアルキル基又はアルコキシ基であることがより好ましい。
【0149】
204はアルキル基が好ましい。
【0150】
Zは隣接する窒素原子とともに1,2,3,4−テトラヒドロキノン骨格又はインドリン骨格を形成するのが好ましく、Zを構成する炭化水素の水素原子は置換基によって置換されていてもよい。
【0151】
205はアルキル基又はアリール基が好ましく、下記一般式(IV)で表される置換フェニル基であることがさらに好ましい。
【0152】
【化28】

【0153】
式中、Xは、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を介してベンゼン環に置換する基を表し、R206は水素原子又は置換基を表し、nは0〜4の整数を表す。nが2以上の場合、2個以上のR206は同じでも、異なっていてもよく、隣り合った位置に結合した基が互いに結合して5員〜7員の、炭素環又はヘテロ環を形成してもよい。
【0154】
Xとしては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、及びシリル基が挙げられる。これらの基の好ましい範囲については、前記のR201〜R203で表される置換基で説明したものと同じである。
【0155】
Xとしては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、及びシリル基がより好ましく、さらに好ましくはハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、及びアリールスルホニルアミノ基が挙げられる。
【0156】
206は置換基を表し、R206で表される置換基は、R201〜R203で説明した置換基と同じ意味の基を表す。
【0157】
206はハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、又はアルキルチオ基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアシルアミノ基がさらに好ましい。nは0〜3の整数が好ましい。
【0158】
一般式(III)で表される化合物においては、R205−SO2−NH−CO−を水素原子に置き換えた化合物のClogP値が3.0以上であることが好ましい。ClogP値は化合物の水/オクタノール分配係数の計算値であり、本発明者らはCambridge Soft Corporation製のChem Draw Ultra Ver.5.0を用いて計算した。
【0159】
以下に、本発明の一般式(III)で表される化合物の具体的化合物例を示すが、本発明はこれらによって限定されない。
【0160】
【化29】

【0161】
【化30】

【0162】
【化31】

【0163】
【化32】

【0164】
【化33】

【0165】
【化34】

【0166】
【化35】

【0167】
【化36】

【0168】
【化37】

【0169】
【化38】

【0170】
本発明の一般式(I)〜(III)で表される還元剤は、同一感光層(画像形成層ともいう。)中又は異なる画像形成層中に2種以上を併用してもよく、本発明以外の発色還元剤と併用してもよい。本発明以外の発色還元剤としては、ヨーロッパ公開特許1113322号、同1113323号、同1113324号、同1113325号、同1113326号、同1158358号、同1158359号、同1160621号、同1164417号、同1164418号、同1168071号、米国特許6,319,640B1号、国際公開特許01/96946号、及び同01/96954号に記載された化合物が挙げられる。具体的には、例えば、下記還元剤が挙げられる。
【0171】
【化39】

【0172】
【化40】

【0173】
【化41】

【0174】
【化42】

【0175】
(還元剤の添加方法)
本発明においては、還元剤を微結晶性粒子分散物として熱現像感光材料中に含有する。
【0176】
これら素材の微結晶粒子のコロイド分散体は、当該技術分野でよく知られている機械的剪断を付与するいずれの方法によっても得ることができる。その方法の例が、米国特許第2,581,414号及び同第2,855,156号並びにカナダ国特許第1,105,761号に記載されており、これら方法を使用することができる。例えば、固体粒子微粉砕法(ボールミル法、ペブルミル法、ローラーミル法、サンドミル法、ビーズミル法、ディノミル法、マサップミル法及びメディアミル法)が含まれる。さらにこれらの方法には、コロイドミル法、アトリッターによる微粉砕法、超音波エネルギーによる分散法及び高速攪拌法(Onishiらの米国特許第4,474,872号に記載されている)が含まれる。操作し易いことや、洗浄し易いこと、及び再現性がよいことから、ボールミル法、ローラーミル法、メディアミル法及びアトリッターによる微粉砕法が好ましい。
【0177】
別法として、該化合物が非晶質物理状態で存在する分散体は、コロイドミル法、均質化法、高速攪拌法、音波処理法をはじめとするよく知られている方法によって調製することができる。次いで、該化合物の非晶質物理状態を、熱アニール法や化学アニール法などの方法によって微結晶物理状態へと転換することができる。熱アニール法には、非晶質化合物のガラス転移温度よりも高い温度へ循環させる温度プログラム法が含まれる。好ましい熱アニール法は、該分散体を17℃〜90℃の温度範囲にわたり循環させる工程を含む。この循環工程は、残存する非晶質物理状態から微結晶相の形成を促進する任意の温度変化順序を含むことができる。典型的には、該相形成を活性化すると同時に熟成及び衝突過程による粒子成長を最小限に抑えるよう、高温インターバルの期間を選定する。化学アニール法には、該分散体の連続相と不連続相との間の化合物と界面活性剤の分配を変更する化学剤によるインキュベーション法が含まれる。このような化学剤には、炭化水素類(ヘキサデカン等)、界面活性剤、アルコール類(ブタノール、ペンタノール、ウンデカノール等)及び高沸点有機溶剤が含まれる。これらの化学剤は、粒子形成中に、あるいは粒子形成後に分散体に添加することができる。この化学アニール法は、上記化学剤の存在下で該分散体を17℃〜90℃でインキュベーションする方法、上記化学剤の存在下で該分散体を攪拌する方法、上記化学剤を添加してからそれをダイアフィルトレーション(diafiltration)法でゆっくりと除去する方法等を含む。
【0178】
水性媒体中でのコロイド分散体の形成は、界面活性剤、界面活性ポリマー及び親水性ポリマーといった分散助剤の存在を通常必要とする。このような分散助剤は、Chariらの米国特許第5,008,179号(第13〜14欄)及びBagchiとSargeantの米国特許第5,104,776号(第7〜13欄)に記載されており、これらを適宜使用することができる。
【0179】
本発明において、微結晶性粒子分散物の数平均粒子サイズは、0.001μm〜5μmであることが好ましく、0.001μm〜0.5μmであることが更に好ましい。
【0180】
本発明の熱現像感光材料は、支持体上、感光性ハロゲン化銀及び還元可能な銀塩と同一の面に、還元剤を有する。本発明の還元剤の添加量は広い範囲で良く、好ましくはカプラー化合物1モルに対して0.01モル〜100モルが好ましく、より好ましくは0.1モル〜10モルで、さらに好ましくは0.5モル〜3.0モルである。
【0181】
本発明の還元剤は、微結晶分散物の分散安定性を高めるために、好ましくは1g/m3以下、より好ましくは10-3g/m3以下の水溶性を有する。また本発明の還元剤の融点は80℃〜300℃であるのが好ましい。
【0182】
(カプラー)
以下、本発明のカプラーについて詳細に説明する。
【0183】
本発明のカプラーは本発明の還元剤の酸化体とカップリングして可視部に吸収を持つ色素を形成できる化合物であればいかなる構造をしていてもよい。このような化合物はカラー写真系ではよく知られた化合物であり、その代表例としてピロロトリアゾール型カプラー、フェノール型カプラー、ナフトール型カプラー、ピラゾロトリアゾール型カプラー、ピラゾロン型カプラー、及びアシルアセトアニリド型カプラーなどが挙げられる。カラー写真感光材料では重層構成の感光層中にカプラーを固定することが必要で、上記カプラー骨格に大きな油溶化基をつけた分子量の比較的大きなカプラーが使用されていた。本発明においてはカプラーの固定化はさほど重要ではなく、より低分子のカプラーの方が画像濃度をかせぐという観点で有利であるという特徴がある。特に、固体分散状態で使用する場合には大きな油溶化基がついていると反応効率が著しく阻害される。母核に置換される置換基としては水溶性を低減できる範囲で小さめの基であることが特に好ましい。
【0184】
本発明において好ましいカプラーは一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(M−1)、(M−2)、(M−3)、(Y−1)、(Y−2)、または(Y−3)で表される構造を有するカプラーである。
【0185】
一般式(C−1)において、X1は水素原子または離脱基を表し、Y1およびY2は電子求引性の置換基を表し、R1はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0186】
1は水素原子または離脱基で、好ましくは離脱基である。
【0187】
本発明で言う離脱基とは、還元剤の酸化体とカップリングし、色素を形成する際に母核から離脱可能な基を意味する。離脱基としてはハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、イミド基、メチロール基、及びヘテロ環基等が挙げられる。X1としてはカルバモイルオキシ基またはベンゾイルオキシ基がより好ましい。Y1およびY2は電子求引性基を表す。具体的には、シアノ基、ニトロ基、アシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニル基、スルホキシド基、オキシスルホニル基、スルファモイル基、ヘテロ環基、トリフルオロメチル基、及びハロゲン原子が挙げられる。その中でも好ましくはシアノ基、オキシカルボニル基、スルホニル基で、より好ましくはシアノ基、オキシカルボニル基である。Y1とY2のいずれか一方がシアノ基であることがさらに好ましく、Y1がシアノ基であることが特に好ましい。Y2はオキシカルボニル基であることが好ましく、かさ高い基で置換されたオキシカルボニル基(例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルピペラジニルオキシカルボニル基)が特に好ましい。R1は好ましくはアルキル基またはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。アルキル基としては2級または3級のアルキル基が好ましく、より好ましくは3級のアルキル基である。アルキル基としては炭素数の和が3〜12の範囲であることが好ましく4〜8の範囲であることがより好ましい。アリール基としてはフェニル基が好ましく、置換基を有していてもよいが、炭素数の和が6〜16の範囲であることが好ましく、6〜12の範囲であることがより好ましい。一般式(C−1)のカプラーは分子量が700以下であることが好ましく、650以下であることがより好ましく、600以下であることがさらに好ましい。
【0188】
一般式(C−2)において、X2は水素原子または離脱基を表し、R2はアシルアミノ基、ウレイド基またはウレタン基を表し、R3は水素原子、アルキル基またはアシルアミノ基を表し、R4は水素原子、または置換基を表す。R3とR4が互いに連結して環を形成してもよい。
【0189】
2は水素原子もしくはX1と同様の離脱基であるが、X2として好ましいのはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシ基、アリールチオ基またはアルキルチオ基で、ハロゲン原子またはアリールオキシ基がより好ましい。R2は好ましくはアシルアミノ基またはウレイド基である。R2としては炭素数の総和が2〜12の範囲が好ましく、より好ましくは2〜8の範囲である。R3は好ましくは炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜12のアシルアミノ基であり、より好ましくは炭素数2〜4のアルキル基または炭素数2〜8のアシルアミノ基である。R4は好ましくはハロゲン原子、アルコキシ基、アシルアミノ基、アルキル基であり、より好ましくはハロゲン原子またはアシルアミノ基で、特に塩素原子が好ましい。一般式(C−2)のカプラーは分子量が500以下であることが好ましく、450以下であることがより好ましく、400以下であることがさらに好ましい。
【0190】
一般式(C−3)において、X3は水素原子もしくはX1と同様の離脱基であるが、X3として好ましいのはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシ基、アリールチオ基またはアルキルチオ基で、アルコキシ基またはアルキルチオ基がより好ましい。R5はアシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基またはスルファモイル基が好ましく、カルバモイル基またはスルファモイル基がより好ましい。R5として炭素数の和が1〜12の基が好ましく、より好ましくは炭素数が2〜10である。R6は水素原子もしくは置換基であるが、置換基としては好ましくはアミド基、スルホンアミド基、ウレタン基またはウレイド基であり、アミド基またはウレタン基がより好ましい。置換位置としてはナフトール環の5位または8位が好ましく、5位がより好ましい。R6として炭素数の和が2〜10の基が好ましく、より好ましくは炭素数が2〜6である。一般式(C−3)のカプラーは分子量が550以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、450以下であることがさらに好ましい。
【0191】
一般式(M−1)においてX4は水素原子もしくはX1と同様の離脱基あるが、X4として好ましいのはハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシ基、アリールチオ基、アルキルチオ基またはヘテロ環基で、ハロゲン原子、アリールオキシ基、アリールチオ基またはヘテロ環基がより好ましい。ヘテロ環基としてはピラゾール基、イミダゾール基、トリアゾール基、テトラゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾトリアゾール基等のアゾール基が好ましく、ピラゾール基がより好ましい。R7はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基で、これらの基は置換基を有していてもよい。好ましくは2級もしくは3級のアルキル基またはアリール基である。アルキル基としては炭素数が2〜14の基が好ましく、より好ましくは炭素数3〜10の基である。アリール基としては好ましくは炭素数が6〜18の基で、より好ましくは6〜14の基である。R8は好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基またはヘテロ環であり、これらの基は置換基を有していてもよい。アルキル基としては2級または3級のアルキル基が好ましく、より好ましくは3級のアルキル基である。アルキル基としては炭素数の和が3〜12の範囲であることが好ましく4〜8の範囲であることがより好ましい。アリール基としてはフェニル基が好ましく、置換基を有していてもよいが、炭素数の和が6〜16の範囲であることが好ましく、6〜12の範囲であることがより好ましい。アルコキシ基としては炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基である。アリールオキシ基としては炭素数6〜14のアリールオキシ基が好ましく炭素数6〜10の基がより好ましい。アルキルチオ基、アリールチオ基もそれぞれアルコキシ基、アリールオキシ基と同様の炭素数の基が好ましい。一般式(M−1)のカプラーは分子量が600以下であることが好ましく、550以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましい。
【0192】
一般式(M−2)のカプラーのX5、R9およびR10で表される基はそれぞれ一般式(M−1)のカプラーのX4、R7およびR8で表される基と同様の基で、それぞれの基の好ましい範囲も一般式(M−1)のカプラーと同様である。
【0193】
一般式(M−3)において、X6は水素原子もしくはX1と同様の離脱基あるが、X6として好ましいのはアルキルチオ基、アリールチオ基またはヘテロ環基で、より好ましくはアリールチオ基またはヘテロ環基である。アリールチオ基としてはフェニル基が好ましく、特に2位にアルコキシ基、アミド基が置換したアリールチオ基が好ましい。アリールチオ基の炭素数の和は6〜16の範囲が好ましく、7〜12の範囲がより好ましい。ヘテロ環基としてはピラゾール基、イミダゾール基、トリアゾール基、テトラゾール基、ベンゾイミダゾール基、又はベンゾトリアゾール基等のアゾール基が好ましく、ピラゾール基がより好ましい。R11としてはアルキル基、アリール基、アシルアミノ基またはアニリノ基が好ましく、アシルアミノ基またはアニリノ基がより好ましい。最も好ましいのはアニリノ基である。アルキル基としては炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、アリール基としては炭素数6〜14のアリール基が好ましい。アシルアミノ基としては炭素数2〜14の基が好ましく2〜10の基がより好ましい。アニリノ基としては炭素数6〜16の基が好ましく6〜12の基がより好ましい。アニリノ基の置換基としてはハロゲン原子、アシルアミノ基が好ましい。一般式(M−3)のカプラーは分子量が700以下であることが好ましく、650以下であることがより好ましく、600以下であることがさらに好ましい。
【0194】
一般式(Y−1)において、X7は水素原子もしくはX1と同様の離脱基あるが、X7として好ましいのはアリールオキシ基、イミド基またはヘテロ環基である。アリールオキシ基としては電子求引性基で置換されたアリールオキシ基が好ましい。イミド基としては環状のイミド基が好ましく、ヒダントイン基、1,3−オキサゾリジン−2,5−ジオン基およびコハクイミド基が特に好ましい。イミド基の炭素数の総和は3〜15の範囲が好ましく、より好ましくは4〜11の範囲で、さらに好ましくは5〜9の範囲である。ヘテロ環基としてはピラゾール基、イミダゾール基、トリアゾール基、ベンゾイミダゾール基、又はベンゾトリアゾール基が好ましく、イミダゾール基がより好ましい。アゾール基の炭素数の総和は3〜12の範囲が好ましく、より好ましくは3〜10の範囲で、さらに好ましくは3〜8の範囲である。R13は好ましくは2級もしくは3級のアルキル基、アリール基またはヘテロ環基である。アルキル基はシクロアルキル基、ビシクロアルキル基であってもよく3級アルキル基がより好ましい。1−アルキルシクロプロピル基、ビシクロアルキル基、又はアダマンチル基は特に好ましい。R14はアリール基もしくはヘテロ環基で、アリール基がより好ましい。そのなかでも2位にハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基またはアリールチオ基が置換したフェニル基が特に好ましい。R14の炭素数の総和は6〜18の範囲が好ましく、より好ましくは7〜16の範囲、さらに好ましくは8〜14の範囲である。一般式(Y−1)のカプラーは分子量が700以下であることが好ましく、650以下であることがより好ましく、600以下であることがさらに好ましい。
【0195】
一般式(Y−2)のカプラーのX8およびR15で表される基はそれぞれ一般式(Y−1)のカプラーのX7、R14で表される基と同様の基で、それぞれの基の好ましい範囲も一般式(Y−1)のカプラーと同様である。Zは5員ないし7員の環を形成するために必要な2価の基を表し、この環には置換基があってもよいし、別の環が縮環していてもよい。
【0196】
一般式(Y−2)のなかでも好ましいのは一般式(Y−3)で表されるカプラーである。
【0197】
一般式(Y−3)のカプラーにおいて、X9は一般式(Y−1)のX7と同義で、好ましい範囲も同じである。R16は好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基、スルホンアミド基、シアノ基、スルホニル基、スルファモイル基、カルバモイル基またはアルキルチオ基で炭素数1〜4の置換基であることがより好ましい。nは好ましくは0〜3の整数で、より好ましくは0〜2、さらに好ましくは0〜1、最も好ましくは0である。R17は好ましくはR16と同様の基で、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、スルファモイル基、又はスルホニル基である。特にNH基に対してオルト位にハロゲン原子、アルコキシ基またはアルキルチオ基であるR17が置換されていることがより好ましい。最も好ましいのはアルキルチオ基である。一般式(Y−3)のカプラーは分子量が750以下であることが好ましく、700以下であることがより好ましく、650以下であることがさらに好ましい。
【0198】
以下に本発明のカプラーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0199】
【化43】

【0200】
【化44】

【0201】
【化45】

【0202】
【化46】

【0203】
【化47】

【0204】
【化48】

【0205】
【化49】

【0206】
【化50】

【0207】
【化51】

【0208】
【化52】

【0209】
【化53】

【0210】
【化54】

【0211】
【化55】

【0212】
【化56】

【0213】
本発明のカプラーは高沸点溶剤を使用していないオイルレス乳化物、ポリマーと共乳化したポリマー分散物または固体微粒子分散物として添加することができるが、還元剤と同様に固体微粒子分散物として添加することが好ましい。固体微粒子分散物の分散方法、カプラーの好ましい融点も還元剤と同様である。
【0214】
本発明のカプラーは0.1mmol/m2〜5.0mmol/m2の範囲で使用でき、好ましくは0.2mmol/m2〜3.0mmol/m2の範囲、さらに好ましくは0.5mmol/m2〜2.0mmol/m2の範囲で使用することである。本発明のカプラーは一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)から選ばれる1種、(M−1)、(M−2)、及び(M−3)から選ばれる1種、(Y−1)、(Y−2)、及び(Y−3)から選ばれる1種のうち2種以上を併用することが好ましく、3種併用することがより好ましい。一般式(C−1)、(C−2)、及び(C−3)から選ばれるカプラーの使用量は0.05mmol/m2〜2.0mmol/m2の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0の範囲、さらに好ましくは0.15mmol/m2〜0.6mmol/m2の範囲である。一般式(M−1)、(M−2)、及び(M−3)から選ばれるカプラーの使用量は0.1mmol/m2〜2.0mmol/m2の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.15〜1.5の範囲、さらに好ましくは0.2mmol/m2〜0.8mmol/m2の範囲である。一般式(Y−1)、(Y−2)、及び(Y−3)から選ばれるカプラーの使用量は0.2mmol/m2〜4.0mmol/m2の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.3〜3.0の範囲、さらに好ましくは0.4mmol/m2〜2.0mmol/m2の範囲である。
【0215】
《感光性ハロゲン化銀》
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、露光時に表面潜像型で、熱現像後に内部潜像型へ変換されることが好ましい。
【0216】
(熱変換内部潜像型ハロゲン化銀粒子)
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、熱現像前は表面潜像型で、熱現像後に内部潜像型へ変換するハロゲン化銀粒子である。該ハロゲン化銀粒子は、粒子成長時にホールトラップ効果の微小な硫化銀や銀核や金属などを内部にドープすることで得られる。該ハロゲン化銀粒子が現像熱により、内部にドープされた微小核が凝集して、強い電子トラップ効果へ変換する。
【0217】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀粒子は、還元増感、カルコゲン増感、貴金属増感、所謂化学増感をハロゲン化銀粒子成長時に施して得ることができる。特に好ましくはハロゲン化銀粒子のコア部分に施すことである。本発明においては、粒子のコア部分とは、粒子1つの銀量の0〜99%までのところを指す。好ましくは0〜50%である。
【0218】
一般的に還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に、例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、粒子形成中のpHを6.5以上、10.0以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。
【0219】
本発明においては、下記一般式(S−1)または(S−2)で表されるカルコゲン放出化合物を使用することが好ましい。本発明に係るハロゲン化銀粒子のコア部分を成長するときのpHは4.0〜10.0である。好ましくはpH5.5〜8.0下でカルコゲン化銀の生成を施すことである。一般式(S−1)または(S−2)のカルコゲン放出化合物が、pHによってカルコゲン化銀の生成をコントロールができるため、ハロゲン化銀粒子の表面に大きいかぶり核の生成が抑制される。
【0220】
【化57】

【0221】
一般式(S−1)において、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−OR7、−NR8(R9)、−SR10、−SeR11、ハロゲン原子、水素原子を表す。R7、R10及びR11はそれぞれ脂肪族基、芳香族基、複素環基、水素原子またはカチオンを表し、R8及びR9はそれぞれ脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表す。また、Z1とZ2、Z2とZ3、Z3とZ1が環を形成してもよい。Chalcogenは硫黄、セレン、テルルを表す。
【0222】
一般式(S−2)において、Z4及びZ5はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、−NR1(R2)、−OR3または−SR4を表す。R1、R2、R3及びR4はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アルキル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。但し、R1及びR2は水素原子またはアシル基であってもよい。また、Z4とZ5が環を形成してもよい。Chalcogenは硫黄、セレン、テルルを表す。
【0223】
以下に、一般式(S−1)または(S−2)で表される化合物の具体例を示す。
【0224】
【化58】

【0225】
【化59】

【0226】
【化60】

【0227】
【化61】

【0228】
一般式(S−1)または(S−2)で表されるカルコゲン化合物は、水あるいは適当な有機溶媒、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
【0229】
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。更に固体分散法として知られている方法によって、一般式(S−1)または(S−2)で表されるカルコゲン化合物の粉末を水または有機溶媒の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることもできる。
【0230】
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、平板状粒子、八面体、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては、特に平板状粒子、立方体状粒子、八面体が好ましい。平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比(AR=主平面の円相当直径/厚み)は好ましくは100/1〜2/1、より好ましくは50/1〜3/1がよい。
【0231】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀の全投影面積の10%以上(即ち、10%以上100%以下)がアスペクト比2以上の平板状粒子であることが好ましい。このことにより、高感度、高CP化、鮮鋭性が優れる効果が奏されて好ましい。より好ましくは感光性ハロゲン化銀粒子の全投影面積の50%以上、さらに好ましくは全投影面積の70%以上、最も好ましくは全投影面積の80%以上が、アスペクト比2以上の平板状粒子である。
【0232】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子においては、電子トラップ性ドーパントをハロゲン化銀粒子の内部に含有させることが感度及び画像保存性上好ましい。なお、熱現像前の画像形成のための露光の際には、正孔(ホール)トラップとして機能し、熱現像時に変質し、熱現像後においては電子トラップとして機能することができるドーパントハロゲン化銀粒子が特に好ましい。
【0233】
感光性ハロゲン化銀粒子乳剤の塗布試料を光導電測定する際、本発明に係る熱変換内部潜像型ハロゲン化銀粒子乳剤の熱現像後の光導電度(信号の大きさ)が、熱現像前の80%以下に低下する。好ましくは50%以下に低下する。更に好ましくは25%以下に低下することである。光導電度が低下する現象は電子トラップ効果へ変換したことを示す意味である。
【0234】
ここで用いられる電子トラップ性ドーパントとは、ハロゲン化銀を構成する銀及びハロゲン以外の元素または化合物であって、当該ドーパント自身が自由電子をトラップ(捕獲)できる性質を有するまたは当該ドーパントがハロゲン化銀粒子内に含有されることで電子トラップ性の格子欠陥等の部位が生じるものをいう。例えば、銀以外の金属イオンまたは硫黄、セレン、テルルのようなカルコゲン(酸素族元素)または窒素原子などを含む無機化合物または有機化合物、またはその錯体等が挙げられる。
【0235】
金属イオンまたはその塩もしくは錯体としては、鉛イオン、ビスマスイオン、金イオン等または臭化鉛、硝酸鉛、炭酸鉛、硫酸鉛、硝酸ビスマス、塩化ビスマス、三塩化ビスマス、炭酸ビスマス、ビスマス酸ナトリウム、塩化金酸、酢酸鉛、ステアリン酸鉛、酢酸ビスマス等を挙げることができる。
【0236】
硫黄、セレン、テルルのようなカルコゲンを含む化合物としては、写真業界において、一般にカルコゲン増感剤として知られているカルコゲン放出性の種々の化合物を使用することができる。また、カルコゲンまたは窒素を含有する有機物としては、ヘテロ環式化合物が好ましい。例えば、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、テトラザインデンである。
【0237】
なお、上記のヘテロ環式化合物は置換基を有していてもよく、置換基として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基である。
【0238】
なお、本発明に用いられるハロゲン化銀粒子には、上記のドーパントのように電子トラップ性ドーパントとして機能するように、あるいはホールトラップ性ドーパントとして機能するように18族周期表の6族から11族に属する遷移金属のイオンを当該金属の酸化状態を配位子(リガンド)等により化学的に調整して含有させてもよい。上記の遷移金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Ptが更に好ましい。
【0239】
本発明において、上記の各種ドーパントについては、1種類でも同種あるいは異種の化合物もしくは錯体を2種以上併用してもよい。但し、少なくとも1種は、熱現像後の露光の際に、電子トラップ性ドーパントとして機能することが必要である。これらのドーパントはどのような化学的形態でもハロゲン化銀粒子内に導入してもよい。
【0240】
ドーパントの好ましい含有率は、銀1モルに対し1×10-9〜1×10モルの範囲が好ましく、1×10-8〜1×10-1モルの範囲がより好ましい。更に、1×10-6〜1×10-1モルが好ましい。但し、最適量はドーパントの種類、ハロゲン化銀粒子の粒径、形状等、その他環境条件等に依存するのでこれらの条件に応じてドーパント添加条件の最適化の検討をすることが好ましい。
【0241】
本発明においては、遷移金属錯体または錯体イオンとしては、下記一般式で表されるものが好ましい。
【0242】
一般式〔ML6m
式中、Mは18族元素周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子を表し、mは0、1−、2−、3−または4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲンイオン(例えば、弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン)、シアナイド、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つまたは二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
【0243】
これらの金属のイオンまたは錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に亘って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、例えば、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等の各公報に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。
【0244】
これらの金属化合物は、水あるいは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば、金属化合物粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、あるいは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、あるいはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオンまたは錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。
【0245】
特に、金属化合物の粉末の水溶液、もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後、物理熟成時途中、もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0246】
なお、非金属性ドーパントも上記の金属性ドーパントと同様の方法によってハロゲン化銀内部に導入することができる。
【0247】
本発明の銀塩熱現像感光材料において、上記のドーパントが電子トラップ性を有するか否かについては、次のように写真業界において従来一般的に用いられている方法で評価することができる。即ち、上記のドーパントまたはその分解物がハロゲン化銀粒子内にドープされたハロゲン化銀粒子からなるハロゲン化銀乳剤を、マイクロ波光伝導測定法等による光伝導測定により、ドーパントを含有していないハロゲン化銀粒子乳剤を基準として光伝導の減少度を測定することにより評価できる。または、当該ハロゲン化銀粒子の内部感度と表面感度の比較実験によってもできる。
【0248】
または、銀塩熱現像感光材料とした後に、本発明に係る電子トラップ性ドーパントの効果を評価する場合の方法は、例えば、当該銀塩熱現像感光材料を露光前に通常の実用的熱現像条件と同じ条件で加熱して、その後に一定時間(例えば、30秒間)、紫外〜可視光または分光増感した範囲の光で光学楔を通して露光し、更に同一の熱現像条件で熱現像して得られる特性曲線(センシトメトリーカーブ)に基づき得られる感度を当該電子トラップ性ドーパント含まないハロゲン化銀粒子乳剤を使用した銀塩熱現像感光材料の感度と比較することにより評価できる。
【0249】
即ち、本発明に係るドーパントを含有するハロゲン化銀粒子乳剤を含む前者の試料の感度は、当該ドーパントを含まない後者の試料の感度に比較して低くなっていることの確認が必要である。
【0250】
なお、当該材料に一定時間(例えば、30秒間)、紫外〜可視光または分光増感した範囲の光で光学楔を通して露光した後に、通常の熱現像条件で熱現像をしたときに得られる特性曲線に基づき得られる当該試料の感度に対して露光前に通常の熱現像条件と同じ条件で加熱して、その後に上記と同一の一定時間、及び一定の露光を施し、更に通常の熱現像条件で熱現像して得られる特性曲線に基づき得られる感度が1/5以下、好ましくは1/10以下、更に好ましくは、1/20以下であることが好ましい。
【0251】
感光性ハロゲン化銀は光センサーとして機能するものであり、画像形成後の白濁を低く抑える為、また良好な画質を得るために粒子サイズが小さいことが好ましい。平均粒子サイズで0.08μm以下、好ましくは0.01〜0.08μm、特に0.02〜0.06μmが好ましい。この小サイズの粒子の含有率は70%以上であることが好ましい。一方、感度や階調調整のためには、やや大きい粒子が好ましい。平均粒子サイズは0.1μm以下、好ましくは0.04〜0.1μm、特に0.05〜0.08μmが好ましい。この大サイズの粒子の含有率は30%以下であることが好ましい。
【0252】
感光性ハロゲン化銀の量は、銀塩熱現像感光材料としては後述の非感光性脂肪族カルボン酸銀に対して銀比率で2〜20%が好ましく、更に好ましくは3〜10%の間である。
【0253】
本発明の銀塩熱現像感光材料中のハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上、例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるものを併用してもよい。
【0254】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀の使用量としては、有機銀塩1モルに対して感光性ハロゲン化銀0.01モル以上、0.5モル以下が好ましく、0.02モル以上、0.3モル以下がより好ましく、0.03モル以上、0.25モル以下が特に好ましい。別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機銀塩の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機銀塩を高速攪拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
【0255】
上記した各種の方法によって調製される感光性ハロゲン化銀は、また粒子の表面に化学増感ができる。例えば、含硫黄化合物、金化合物、白金化合物、パラジウム化合物、銀化合物、錫化合物、クロム化合物またはこれらの組合せによって化学増感することができる。この化学増感の方法及び手順については、例えば、米国特許第4,036,650号、英国特許第1,518,850号の各明細書、特開昭51−22430号、同51−78319号、同51−81124号等の各公報に記載されている。また、ハロゲン化銀形成成分により有機銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換する際に、米国特許第3,980,482号明細書に記載されるように、増感を達成するために低分子量のアミド化合物を共存させてもよい。
【0256】
英国特許第1,447,454号明細書に記載されているように、脂肪族カルボン酸銀塩粒子を調製する際に、ハライドイオン等のハロゲン成分を脂肪族カルボン酸銀塩形成成分と共存させ、これに銀イオンを注入することで脂肪族カルボン酸銀塩粒子の生成とほぼ同時に生成させたハロゲン化銀粒子を併用することもできる。また、脂肪族カルボン酸銀塩にハロゲン含有化合物を作用させ、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによりハロゲン化銀粒子を調製し、当該粒子を併用することも可能である。即ち、予め調製された脂肪族カルボン酸銀塩の溶液もしくは分散液、または脂肪族カルボン酸銀塩を含むシート材料にハロゲン化銀形成成分を作用させて、脂肪族カルボン酸銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換することもできる。本発明に係るハロゲン化銀粒子は、いかなる方法で画像形成層に添加されてもよく、このときハロゲン化銀粒子は還元可能な銀源(脂肪族カルボン酸銀塩)に近接するように配置するのができるが、本発明に係るハロゲン化銀粒子は予め調製しておき、これを脂肪族カルボン酸銀塩粒子調製時に添加することが、ハロゲン化銀粒子調製工程と脂肪族カルボン酸銀塩粒子調製工程を分離して扱え、製造コントロール上は好ましい。また、本発明に係るハロゲン化銀を水溶性溶媒から有機溶媒に分散して、塗布直前に脂肪族カルボン酸銀塩の塗布液に添加、分散することもできる。または、本発明に係るハロゲン化銀は有機溶媒中調製することも可能である。
【0257】
ハロゲン化銀粒子形成成分としては、無機ハロゲン化合物、オニウムハライド類、ハロゲン化炭化水素類、N−ハロゲン化合物、その他の含ハロゲン化合物があり、その具体例は、米国特許第4,009,039号、同3,457,075号、同4,003,749号、英国特許第1,498,956号の各明細書、及び特開昭53−27027号、同53−25420号等の各公報に開示されている。
【0258】
上述のように別途調製したハロゲン化銀粒子に脂肪族カルボン酸銀塩の一部をコンバージョンすることで製造したハロゲン化銀粒子を併用してもよい。これらのハロゲン化銀粒子は、別途調製したハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによるハロゲン化銀粒子とも、脂肪族カルボン酸銀塩1モルに対し0.001〜0.7モル、好ましくは0.03〜0.5モルで使用するのが好ましい。
【0259】
別途調製した感光性ハロゲン化銀粒子は、脱塩工程により不要な塩類等を、例えば、ヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により脱塩することができるが、脱塩しないで用いることもできる。
【0260】
(非感光性有機銀塩)
本発明において、非感光性有機銀塩(以下、有機銀塩ともいう。)は還元可能な銀源であり、有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特に、この中でも長鎖の(炭素数10〜30、好ましくは15〜25)脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環化合物の銀塩が好ましい。配位子が銀イオンに対する総安定度常数として4.0〜10.0の値を持つようなリサーチ・ディスクロージャー(以下、RDともいう)17029及び29963に記載された有機または無機の錯体も好ましい。これら、好適な銀塩の例としては以下のものが挙げられる。
【0261】
有機酸の銀塩:没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩。銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩:1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等の銀塩。アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀塩または錯体:アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)とヒドロキシ置換酸類(サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸等)の反応生成物の銀塩または錯体。チオン類の銀塩または錯体:3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン、3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン等の銀塩または錯体。イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンズトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体または塩。サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩、及びメルカプチド類の銀塩。
【0262】
これらの中、好ましい銀塩としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀及びステアリン酸銀が挙げられる。本発明においては、有機銀塩が2種以上混合されることが現像性を上げ、高濃度、高コントラストの銀画像を形成する上で好ましく、例えば、2種以上の有機酸混合物に銀イオン溶液を混合して調製することが好ましい。
【0263】
有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号公報に記載される様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウム等)を調製した後に、コントロールドダブルジェット法により、前記ソープと硝酸銀などを混合して有機銀塩の結晶を調製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0264】
本発明に係る有機銀塩は種々の形状において使用できるが、平板状の粒子が好ましい。特に、アスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子であり、且つ最大面積を有する2枚のほぼ平行に相対する面(主平面)の形状異方性を小さくして、画像形成層中での充填を行うため、主平面方向から計測される該平板状有機銀塩粒子の針状比率の平均値が、1.1以上、10.0未満である粒子が好ましい。更に好ましい針状比率は1.1以上、5.0未満である。
【0265】
本発明において、アスペクト比3以上の平板状有機銀塩粒子であるとは、前記平板状有機銀塩粒子が全有機銀塩粒子の50個数%以上を占めることを言う。更に、本発明に係る有機銀塩はアスペクト比3以上の平板状粒子が全粒子の個数の60%以上を占めることが好ましく、更に好ましくは70%以上(個数)であり、特に好ましくは80%以上(個数)である。
【0266】
アスペクト比(ARと略す)は、下記式で表される。
【0267】
AR=平均粒径(μm)/平均厚さ(μm)
本発明に係る平板状有機銀塩粒子のアスペクト比は、好ましくは3〜20であり、更に好ましくは3〜10である。その理由としては、アスペクト比が低すぎると有機銀塩粒子が最密化され易くなり、またアスペクト比が余りに高い場合には有機銀塩粒子同士が重なり易く、またくっついた状態で分散され易くなるので光散乱等が起き易くなり、その結果として銀塩熱現像感光材料の透明感の低下をもたらすので、上記範囲が好ましいと考えている。
【0268】
上記の平均粒径を求めるには、分散後の有機銀塩を希釈して、カーボン支持膜付きグリッド上に分散し、透過型電子顕微鏡(日本電子製:2000FX型)を用いて、直接倍率5000倍にて撮影を行う。撮影したネガをスキャナでデジタル画像として取り込み、適当な画像処理ソフトを用いて粒径(円相当径)を300個以上測定し、平均粒径を算出する。
【0269】
また、平均厚さを求めるには、以下に示すような透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた方法により算出する。
【0270】
まず、支持体上に塗布された画像形成層を接着剤により適当なホルダーに貼り付け、支持体面と垂直な方向にダイヤモンドナイフを用いて厚さ0.1〜0.2μmの超薄切片を作製する。この超薄切片を、銅メッシュに支持させ、グロー放電により親水化されたカーボン膜上に移し液体窒素により−130℃以下に冷却しながらTEMを用いて、倍率5,000〜40,000倍にて明視野像を観察し、画像はフィルム、イメージングプレート、CCDカメラ等に素早く記録する。この際、観察される視野としては、切片に破れや弛みがない部分を適宜選択することが好ましい。
【0271】
カーボン膜としては、極薄いコロジオン、ホルムバールなど有機膜に支持されたものを使用することが好ましく、更に好ましくは岩塩基板上に形成し基板を溶解除去して得るか、または上記有機膜を有機溶媒、イオンエッチングにより除去して得られたカーボン単独の膜である。TEMの加速電圧としては80〜400kVが好ましく、特に好ましくは80〜200kVである。
【0272】
その他、電子顕微鏡観察技法及び試料作製技法の詳細については、「日本電子顕微鏡学会関東支部編/医学・生物学電子顕微鏡観察法」(丸善)、「日本電子顕微鏡学会関東支部編/電子顕微鏡生物試料作製法」(丸善)を、それぞれ参考にすることができる。
【0273】
適当な媒体に記録されたTEM画像は、画像1枚を少なくとも1024×1024画素、好ましくは2048×2048画素以上に分解し、コンピュータによる画像処理を行うことが好ましい。画像処理を行うためには、フィルムに記録されたアナログ画像はスキャナ等でデジタル画像に変換し、シェーディング補正、コントラスト・エッジ強調などを必要に応じて施すことが好ましい。その後、ヒストグラムを作製し、2値化処理によって有機銀に相当する箇所を抽出する。抽出した300個以上の有機銀塩粒子の厚さを適当なソフトでマニュアル測定し、平均値を求める。
【0274】
また、平板状有機銀塩粒子の針状比率の平均値は、下記の方法により求められる。まず、平板状有機銀塩粒子を含む画像形成層のバインダーを溶解可能な有機溶媒にて膨潤させて支持体上から剥離し、上記溶媒を用いた超音波洗浄、遠心分離、上澄み除去を5回繰り返す。なお、上記工程はセーフライト下で実施する。
【0275】
続いて、有機銀固形分濃度が0.01%になるようにメチルエチルケトン(MEK)にて希釈し、超音波分散した後、グロー放電により親水化されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に滴下し乾燥させる。
【0276】
粒子が搭載されたフィルムは、真空蒸着装置にてフィルム面に対して30°の角度から、厚さとして3nmのPt−Cを電子ビームにより斜め蒸着した後、観察に使用することが好ましい。
【0277】
作製された試料は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて加速電圧2〜4kVにて倍率として5000〜20000倍にて2次電子像を観察し、適当な記録媒体への画像保存を行う。
【0278】
上記処理のためには、電子顕微鏡本体からの画像信号をAD変換し、直接メモリ上にデジタル情報として記録可能な装置を用いるのが便利であるが、ポラロイドフィルム等に記録されたアナログ画像もスキャナなどでデジタル画像に変換し、シェーディング補正、コントラスト・エッジ強調などを必要に応じ施すことにより使用できる。
【0279】
上記の画像処理の手順としては、まずヒストグラムを作製し2値化処理によって、アスペクト比3以上の有機銀塩粒子に相当する箇所を抽出する。止むを得ず凝集した粒子は、適当なアルゴリズムまたはマニュアル操作にて切断し輪郭抽出を行う。その後、各粒子の最大長(MX LNG)及び粒子の最小幅(WIDTH)を少なくとも1000個の粒子に関して各々測定し、粒子毎に下記式にて針状比率を求める。粒子の最大長とは、粒子内の2点を直線で結んだ時の最大値を言う。また、粒子の最小幅とは粒子に外接する2本の平行線を引いた時、平行線の距離が最小値になる時の値を言う。
【0280】
針状比率=(MX LNG)÷(WIDTH)
その後、計測された全粒子に関する針状比率の平均値を算出する。上記手順で計測を行う際には、予め標準試料を用いて、1画素当たりの長さ補正(スケール補正)及び計測系の2次元歪みの補正を十分に行うことが好ましい。標準試料としては、米国ダウケミカル社より市販されるユニフォーム・ラテックス・パーティクルス(DULP)が適当であり、0.1〜0.3μmの粒径に対して10%未満の変動係数を有するポリスチレン粒子が好ましく、具体的には粒径0.212μm、標準偏差0.0029μmというロットが入手可能である。
【0281】
画像処理技術の詳細は、「田中弘編 画像処理応用技術(工業調査会)」を参考にすることができ、画像処理プログラムまたは装置としては、上記操作が可能であれば特に限定はされないが、一例としてニレコ社製Luzex−IIIが挙げられる。
【0282】
前記の形状を有する有機銀塩粒子を得る方法としては特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態、及び前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態などを良好に保つことや、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすることなどが有効である。
【0283】
平板状有機銀塩粒子は、必要に応じてバインダーや界面活性剤等と共に予備分散した後、メディア分散機または高圧ホモジナイザー等で分散粉砕することが好ましい。上記予備分散には、アンカー型、プロペラ型等の一般的攪拌機や高速回転遠心放射型攪拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。
【0284】
また、上記メディア分散機としては、ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミルなどの転動ミルや、媒体攪拌ミルであるビーズミル、アトライター、その他バスケットミル等を用いることが可能であり、高圧ホモジナイザーとしては、壁、プラグなどに衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプ等、様々なタイプを用いることができる。
【0285】
メディア分散時に使用されるセラミックスビーズに用いられるセラミックスとしては、例えば、Al23、BaTiO3、SrTiO3、MgO、ZrO、BeO、Cr23、SiO2、SiO2−Al23、Cr23−MgO、MgO−CaO、MgO−C、MgO−Al23(スピネル)、SiC、TiO2、K2O、Na2O、BaO、PbO、B23、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、BeAl24、Y3Al512、ZrO2−Y23(立方晶ジルコニア)、3BeO−Al23−6SiO2(合成エメラルド)、C(合成ダイヤモンド)、Si2O−nH2O、チッカ珪素、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ等が好ましい。分散時におけるビーズや分散機との摩擦による不純物生成が少ない等の理由から、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ(これらジルコニアを含有するセラミックスを、以下ジルコニアと略す)が特に好ましく用いられる。
【0286】
平板状有機銀塩粒子を分散する際に用いられる装置類において、該有機銀塩粒子が接触する部材の材質としてジルコニア、アルミナ、窒化珪素、窒化硼素などのセラミックス類またはダイヤモンドを用いることが好ましく、中でもジルコニアを用いることが好ましい。
【0287】
上記分散を行う際、バインダー濃度は有機銀質量の0.1〜10%添加することが好ましく、予備分散から本分散を通して液温が45℃を上回らないことが好ましい。また、本分散の好ましい運転条件としては、例えば高圧ホモジナイザーを分散手段として用いる場合には、29.42〜98.06MPa、運転回数は2回以上が好ましい条件として挙げられる。また、メディア分散機を分散手段として用いる場合は、周速が6〜13m/秒が好ましい条件として挙げられる。
【0288】
また、ビーズや部材の一部にジルコニアを使用し、分散時に分散乳剤中に混入させることができる。これが写真性能上好ましく有効である。ジルコニアの破片を分散乳剤中に後添加したり、予備分散時に予め添加したりしてもよい。具体的な方法としては特に限定されないが、一例としてジルコニアビーズを充填したビーズミルにMEKを循環させれば、高濃度のジルコニア溶液を得ることができる。これを好ましい時期に、好ましい濃度で添加してやればよい。
【0289】
感光性ハロゲン化銀と有機銀塩を含有する感光性乳剤中においては、銀1g当たり0.01〜0.5mgのジルコニウムを含有することが好ましく、更に好ましいジルコニウム含有量は、0.01〜0.3mgである。また好ましい含有形態としては、粒径0.02μm以下の微粒子であることが好ましい。
【0290】
このような特徴を有する感光性乳剤を調製する条件としては、特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態及び/または前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態などを良好に保つことや、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすること、分散粉砕にはメディア分散機または高圧ホモジナイザーなどで分散すること、その際バインダー濃度は有機銀塩量の0.1〜10質量%添加すること、乾燥から本分散終了までの温度が45℃を上回らないこと等に加えて、調液時にはディゾルバーを使用し周速2.0m/秒以上で攪拌することなどが好ましい条件として挙げられる。
【0291】
上記のような特定の投影面積値を有する有機銀粒子の投影面積や全投影面積にしめる割合などは、上記アスペクト比3以上の平板状粒子の平均厚さを求める個所で記載したと同様に、TEMを用いた方法により有機銀に相当する個所を抽出する。この際に、凝集した有機銀は一つの粒子と見なして処理し、各粒子の面積を求める。同様にして、少なくとも1,000個、好ましくは2,000個の粒子について面積を求め、それぞれについて、A:0.025μm2未満、B:0.025μm2以上、0.2μm2未満、C:0.2μm2以上の3群に分類する。
【0292】
本発明の銀塩熱現像感光材料は、A群に属する粒子の面積の合計が測定された全粒子の面積の70%以上であり、且つC群に属する粒子の面積の合計が測定された全粒子の面積の10%以下を満たすものが好ましい。
【0293】
上記手順で計測を行う際には、予め標準試料を用いて、1画素当たりの長さ補正(スケール補正)及び計測系の2次元歪みの補正を十分に行うことが好ましい。
【0294】
有機銀塩粒子は単分散粒子であることが好ましく、好ましい単分散度としては1〜30%であり、この範囲の単分散粒子にすることにより、濃度の高い画像が得られる。ここでいう単分散度とは下記式で定義される。
【0295】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
有機銀塩の平均粒径は0.01〜0.2μmが好ましく、更に好ましくは0.02〜0.15μmであり、平均粒径(円相当径)とは電子顕微鏡で観察される個々の粒子像と等しい面積を有する円の直径を表す。
【0296】
銀塩熱現像感光材料の失透を防ぐためには、ハロゲン化銀及び有機銀塩の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.5〜2.2gであることが好ましい。この範囲にすることで硬調な画像が得られる。
【0297】
(バインダー)
本発明の銀塩熱現像感光材料に使用するバインダーは透明または半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、澱粉、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリビニルアセタール類(ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等)、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエポキシド類、ポリカーボネート類、ポリビニルアセテート、セルロースエステル類、ポリアミド類がある。これらは親水性でも非親水性でもよい。またはSBRラテックス、NBRラテックスなどを加えてもよい。
【0298】
本発明に係るバインダーのガラス転移温度は70℃以上90℃以下であることが好ましい。
【0299】
銀塩熱現像感光材料の画像形成層に好ましいバインダーは、ポリビニルアセタール類であり、特に好ましいバインダーはポリビニルブチラールである。また、上塗り層や下塗り層、特に保護層やバックコート層等の非画像形成層においては、よりガラス転移温度(Tg)の高いポリマーであるセルロースエステル類、特にトリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが好ましい。なお、必要に応じて上記バインダーは2種以上を組み合わせて用い得る。
【0300】
本発明に好ましく用いられるバインダーとして、下記ポリビニルアセタールが挙げられる。
【0301】
【表1】

【0302】
このようなバインダーは、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で用いられる。効果的な範囲は当業者が容易に決定し得る。例えば、画像形成層において少なくとも有機銀塩を保持する場合の指標としては、バインダーと有機銀塩との割合は15:1〜1:2、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。即ち、画像形成層のバインダー量が1.5〜6g/m2であることが好ましく、更に好ましくは1.7〜5g/m2である。1.5g/m2未満では未露光部の濃度が大幅に上昇し、使用に耐えない場合がある。
【0303】
(架橋剤)
架橋剤としては、従来、通常の写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば、特開昭50−96216号公報に記載されているアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン化合物系架橋剤を用い得るが、好ましいのはイソシアネート系化合物、シラン化合物、エポキシ化合物または酸無水物である。これらの化合物については、特開2001−249428号公報に詳述される。
【0304】
本発明の銀塩熱現像感光材料には、色調剤を添加することが好ましい。好適な色調剤の例はRD17029号に開示されており、具体的には以下のものを挙げることができる。
【0305】
イミド類(フタルイミド等);環状イミド類、ピラゾリン−5−オン類及びキナゾリノン類(スクシンイミド、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリン及び2,4−チアゾリジンジオン等);ナフタールイミド類(N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド等);コバルト錯体(コバルトのヘキサミントリフルオロアセテート等);メルカプタン類(3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール等);N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類(N−(ジメチルアミノメチル)フタルイミド等);ブロックされたピラゾール類、イソチウロニウム誘導体、及びある種の光漂白剤の組合せ(N,N′−ヘキサメチレン(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジオキサオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)と2−(トリブロモメチルスルホニル)ベンゾチアゾールの組合せ);メロシアニン染料(3−エチル−5−((3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン(ベンゾチアゾリニリデン))−1−メチルエチリデン)−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン等);フタラジノン、フタラジノン誘導体またはこれらの誘導体の金属塩(4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノンとスルフィン酸誘導体の組合せ(6−クロロフタラジノン+ベンゼンスルフィン酸ナトリウムまたは8−メチルフタラジノン+p−トリスルホン酸ナトリウム);フタラジン+フタル酸の組合せ;フタラジン(フタラジンの付加物を含む)とマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸またはo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも一つ化合物との組合せ;キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナルトキサジン誘導体;ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン等);ピリミジン類及び不斉−トリアジン類(2,4−ジヒドロキシピリミジン等)、及びテトラアザペンタレン誘導体(3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン等)等を挙げることができ、特に好ましい色調剤はフタラゾンまたはフタラジンである。
【0306】
(層構成)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、支持体上に少なくとも1層の画像形成層を有している。支持体の上に画像形成層のみを形成してもよいが、画像形成層の上に少なくとも1層の非画像形成層を形成することが好ましい。画像形成層を通過する光の量、または波長分布を制御するため、画像形成層と同一側または反対側にフィルター層を形成してもよいし、画像形成層に直接、本発明に係る染料や公知の顔料等を含有させてもよい。画像形成層は複数層にしてもよく、階調の調節のため感度の異なる構成、例えば、高感層/低感層または低感層/高感層にしてもよい。
【0307】
各種の添加剤は、画像形成層、非画像形成層またはその他の形成層のいずれに添加してもよい。本発明の銀塩熱現像感光材料には、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いてもよい。
【0308】
(塗布方法)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解または分散させた塗布液を調製し、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えば画像形成層、保護層)の塗布液を調製し、これを支持体へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成しうることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が70質量%以下となる前に、上層を設けることである。
【0309】
各構成層を複数同時に重層塗布する方法には特に制限はなく、例えば、バーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストルージョン塗布法などの公知の方法を用いることができる。これらの内、より好ましくはエクストルージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。該エクストルージョン塗布法は、スライド塗布方式のようにスライド面での揮発がないため、精密塗布、有機溶剤塗布に適している。この塗布方法は画像形成層を有する側について述べたが、バックコート層を設ける際、下引きとともに塗布する場合についても同様である。
【0310】
(包装材料)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、使用される前の保存時に写真性能の変質を防ぐため、あるいはロール状態の製品形態の場合にはカール状の巻き癖が付くのを防ぐために、酸素透過率及び/または水分透過率の低い包装材料で密閉包装するのが好ましい。
【0311】
酸素透過率は25℃で50ml/(atm・m2・day)以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/(atm・m2・day)以下であり、更に好ましくは1.0ml/(atm・m2・day)以下である(但し、1atmは1.01325Paである。)。水分透過率は10g/(atm・m2・day)以下であることが好ましく、より好ましくは5g/(atm・m2・day)以下であり、更に好ましくは1g/(atm・m2・day)以下である(但し、1atmは1.01325Paである。)。酸素透過率及び/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、例えば、特開平8−254793号、特開2000−206653号の各公報に記載されているものを利用することができる。
【0312】
(その他の利用できる技術)
本発明の銀塩熱現像感光材料に用いることのできる技術としては、欧州特許第803,764A1号、同883,022A1号の各明細書、国際公開第98/36322号パンフレット、特開昭56−62648号、同58−62644号、特開平9−43766、同9−281637、同9−297367号、同9−304869号、同9−311405号、同9−329865号、同10−10669号、同10−62899号、同10−69023号、同10−186568号、同10−90823号、同10−171063号、同10−186565号、同10−186567号、同10−186569号〜同10−186572号、同10−197974号、同10−197982号、同10−197983号、同10−197985号〜同10−197987号、同10−207001号、同10−207004号、同10−221807号、同10−282601号、同10−288823号、同10−288824号、同10−307365号、同10−312038号、同10−339934号、同11−7100号、同11−15105号、同11−24200号、同11−24201号、同11−30832号、同11−84574号、同11−65021号、同11−109547号、同11−125880号、同11−129629号、同11−133536号〜同11−133539号、同11−133542号、同11−133543号、同11−223898号、同11−352627号、同11−305377号、同11−305378号、同11−305384号、同11−305380号、同11−316435号、同11−327076号、同11−338096号、同11−338098号、同11−338099号、同11−343420号、特開2001−200414号、同2001−234635号、同2002−20699号、同2001−275471号、同2001−275461号、2000−313204号、同2001−292844号、同2000−324888号、同2001−293864号、同2001−348546号の各公報が挙げられる。
【0313】
多色カラー銀塩熱現像感光材料の構成は、各色についてこれらの二層の組合せを含んでよく、また米国特許第4,708,928号明細書に記載されているように単一層内に全ての成分を含んでいてもよい。
【0314】
多色カラー銀塩熱現像感光材料の場合、各画像形成層は、一般に米国特許第4,460,681号明細書に記載されているように、各画像形成層の間に官能性もしくは非官能性のバリアー層を使用することにより互いに区別されて保持される。
【0315】
《画像形成方法》
本発明の銀塩熱現像感光材料は、支持体の片面にのみ画像形成層を有する片面型であっても、両面に画像形成層を有する両面型であってもよい。
【0316】
(両面型銀塩熱現像感光材料)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、X線増感スクリーンを用いてX線画像を記録する画像形成方法に好ましく用いることができる。
【0317】
これらの銀塩熱現像感光材料を用いて画像形成する工程は以下の工程よりなる。
【0318】
(a)該銀塩熱現像感光材料を1対のX線増感スクリーンの間に設置することにより像形成用組立体を得る工程
(b)該組立体とX線源との間に被検体を配置する工程
(c)該被検体にエネルギーレベルが25〜125kVpの範囲にあるX線を照射する工程
(d)該銀塩熱現像感光材料を該組立体から取り出す工程
(e)取り出した該銀塩熱現像感光材料を80〜150℃の範囲の温度で加熱する工程。
【0319】
本発明における組立体において使用する銀塩熱現像感光材料は、X線によって階段露光し、熱現像して得られる画像が光学濃度(D)及び露光量(logE)の座標軸単位長の等しい直交座標上の特性曲線において、最小濃度(Dmin)+濃度0.25の点と最小濃度(Dmin)+濃度2.0の点とで作る平均ガンマ(γ)が3.0〜4.0である特性曲線を有するように調整されていることが好ましい。
【0320】
本発明に係るX線撮影系において、このような特性曲線を有する銀塩熱現像感光材料を用いると脚部が非常に延びていて、且つ中濃度部ではガンマの高いといった優れた写真特性のX線画像が得られる。この写真特性により、X線透過量の少ない縦隔部、心陰影等の低濃度域の描写性が良好になり、且つX線透過量の多い肺野部の画像においても視覚し易い濃度となり、またコントラストも良好になるとの利点がある。
【0321】
上記のような好ましい特性曲線を有する銀塩熱現像感光材料は、例えば、両側の画像形成層のそれぞれを互いに異なった感度を持つ二層以上のハロゲン化銀乳剤層から構成するような方法で容易に製造することができる。特に、上層には高感度の乳剤を用い、下層には低感度で硬調な写真特性を有する乳剤を用いて、画像形成層を形成することが好ましい。このような二層からなる画像形成層を用いる場合における各層間のハロゲン化銀乳剤の感度差は1.5倍以上20倍以下、好ましくは2倍以上15倍以下である。なお、それぞれの層の形成に用いられる乳剤の量の比率は、用いられる乳剤の感度差及びカバリングパワーにより異なる。一般には、感度差が大きい程高感度側の乳剤の使用比率を下げる。例えば、感度差が2倍であるときの好ましい各乳剤の使用比率は、カバリングパワーがほぼ等しい場合には、銀量換算で高感度乳剤対低感度乳剤として1:20以上1:50以下の範囲の値となるように調整される。
【0322】
クロスオーバーカット(両面感光材料)とアンチハレーション(片面感光材料)の技術としては、特開平2−68539号公報、第13頁左下欄1行目から同第14頁左下欄9行目に記載の染料もしくは染料と媒染剤を用いることができる。
【0323】
次に、本発明に係る蛍光増感紙(X線増感スクリーン、放射線増感スクリーン)について説明する。放射線増感スクリーンは、基本構造として、支持体とその片面に形成された蛍光体層とからなる。蛍光体層は、蛍光体が結合剤(バインダー)中に分散されてなる層である。なお、この蛍光体層の支持体とは反対側の表面(支持体に面していない側の表面)には、一般に透明な保護膜が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
【0324】
本発明において、好ましい蛍光体としては以下に示すものが挙げられる。タングステン酸塩系蛍光体(CaWO4、MgWO4、CaWO4:Pb等)、テルビウム賦活希土類酸硫化物系蛍光体(Y22S:Tb、Gd22S:Tb、La22S:Tb、(Y、Gd)22S:Tb、(Y、Gd)O2S:Tb、Tm等)、テルビウム賦活希土類燐酸塩系蛍光体(YPO4:Tb、GdPO4:Tb、LaPO4:Tb等)、テルビウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tb、LaOBr:Tb、Tm、LaOCl:Tb、LaOCl:Tb、Tm、LaOBr:Tb、GdOBr:Tb、GdOCl:Tb等)、ツリウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tm、LaOCl:Tm等)、硫酸バリウム系蛍光体〔BaSO4:Pb、BaSO4:Eu2+、(Ba、Sr)SO4:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属燐酸塩系蛍光体〔(Ba2PO42:Eu2+、(Ba2PO42:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体(BaFCl:Eu2+、BaFBr:Eu2+、BaFCl:Eu2+、Tb、BaFBr:Eu2+、Tb、BaF2・BaCl・KCl:Eu2+、(Ba、Mg)F2・BaCl・KCl:Eu2+等)、沃化物系蛍光体(CsI:Na、CsI:Tl、NaI、KI:Tl等)、硫化物系蛍光体(ZnS:Ag(Zn、Cd)S:Ag、(Zn、Cd)S:Cu、(Zn、Cd)S:Cu、Al等)、燐酸ハフニウム系蛍光体(HfP27:Cu等)、YTaO4及びそれに発光中心として各種賦活剤を加えたもの。但し、本発明に用いられる蛍光体はこれらに限定されるものではなく、放射線の照射によって可視または近紫外領域の発光を示す蛍光体であれば使用できる。
【0325】
本発明で用いる蛍光増感紙は、傾斜粒径構造で蛍光体を充填することが好ましい。特に表面保護層側に大粒径の蛍光体粒子を塗布し、支持体側に小粒径の蛍光体粒子を塗布することが好ましく、小粒径のものは0.5〜2.0μmで、大粒径のものは10〜30μmの範囲が好ましい。
【0326】
(片面型銀塩熱現像感光材料)
本発明における片面型銀塩熱現像感光材料は、特に乳房撮影用X線感光材料として用いるのが好ましい。本目的に用いられる片面型銀塩熱現像感光材料は、得られる画像のコントラストを適切な範囲に設計することが重要である。
【0327】
乳房撮影用X線感光材料としての好ましい構成要件に関しては、特開平5−45807号、同10−62881号、同10−54900号、同11−109564号の各公報記載を参考にすることができる。
【0328】
(紫外蛍光スクリーンとの組合せ)
本発明の銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法としては、好ましくは400nm以下に主ピークを持つ蛍光体との組み合わせで画像形成する方法を用いることができる。更に好ましくは380nm以下に主ピークを持つ蛍光体と組み合わせて画像形成する方法が良い。両面感材、片面感材のいずれでも組立体として用いることができる。400nm以下に主発光ピークであるスクリーンは特開平6−11804号公報、国際公開第93/01521号パンフレットに記載のスクリーンなどが使われるがこれに限られるものではない。紫外線のクロスオーバーカット(両面感光材料)とアンチハレーション(片面感光材料)の技術としては、特開平8−76307号公報に記載の技術を用いることができる。紫外線吸収染料としては、特開2001−144030号公報に記載の染料は特に好ましい。
【0329】
《レーザ露光条件》
銀塩熱現像感光材料の露光は、該写真材料に付与した感色性に対し適切な光源を用いることが望ましい。例えば、該写真材料を赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならば如何なる光源にも適用可能であるが、レーザパワーがハイパワーであることや、写真材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザ(780〜820nm)または青レーザ(400nm付近)がより好ましく用いられる。
【0330】
露光はレーザ走査露光により行うことが好ましいが、その露光方法には種々の方法が採用できる。例えば、第1の好ましい方法として、写真材料の露光面と走査レーザ光の為す角が実質的に垂直になることがないレーザ走査露光機を用いる方法が挙げられる。ここで、「実質的に垂直になることがない」とは、レーザ走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55〜88度、より好ましくは60〜86度、更に好ましくは65〜84度、最も好ましくは70〜82度であることを言う。
【0331】
レーザ光が、写真材料に走査される時の露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザ入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。なお、ビームスポット直径の下限は10μmである。このようなレーザ走査露光を行うことにより、干渉縞様ムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減少できる。
【0332】
また、第2の方法として、露光は縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞様ムラの発生等の画質劣化が減少する。縦マルチ化するには、合波による、戻り光を利用する、高周波重畳をかける、等の方法がよい。
【0333】
なお、縦マルチとは露光波長が単一でないことを意味し、通常、露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常、60nm程度である。
【0334】
更に、第3の態様としては2本以上のレーザを用いて、走査露光により画像を形成することも好ましい。
【0335】
このような複数本のレーザを利用した画像記録方法としては、高解像度化、高速化の要求から1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むレーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段で使用されている技術であり、例えば、特開昭60−166916号公報等により知られている。これは、光源ユニットから放射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、fθレンズ等を介して感光体上に結像する方法であり、レーザ・イメージャー等と原理的に同じレーザ走査光学装置である。
【0336】
レーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段における感光体上へのレーザ光の結像は、1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むという用途から、一つのレーザ光の結像位置から1ライン分ずらして次のレーザ光が結像されている。具体的には、二つの光ビームは互いに副走査方向に像面上で数10μmオーダーの間隔で近接しており、印字密度が400dpi(dpiとは1インチ、即ち2.54cm当たりのドット数を表す)で2ビームの副走査方向ピッチは63.5μm、600dpiで42.3μmである。
【0337】
このような、副走査方向に解像度分ずらした方法とは異なり、本発明では同一の場所に2本以上のレーザで入射角を変え露光面に集光させ画像形成することも好ましい。この際の、通常の1本のレーザ(波長λnm)で書き込む場合の露光面での露光エネルギーがEである場合に、露光に使用するN本のレーザが同一波長(波長λnm)、同一露光エネルギー(En)とした場合、0.9×E≦En×N≦1.1×Eの範囲にするのが好ましい。このようにすることにより、露光面ではエネルギーは確保されるが、それぞれのレーザ光の画像形成層への反射は、レーザの露光エネルギーが低いため低減され、ひいては干渉縞の発生が抑えられる。
【0338】
なお、上述では複数本のレーザの波長をλと同一のものを使用したが、波長の異なるものを用いてもよい。この場合、λnmに対して(λ−30)<λ1、λ2、・・・・・λn≦(λ+30)の範囲にするのが好ましい。
【0339】
なお、上述した第1、第2、第3の態様の画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている。ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを用いるのが好ましい。なお、レーザ・イメージャーやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザにおいて、銀塩熱現像感光材料に走査される時の該材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は銀塩熱現像感光材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、写真材料毎に最適な値に設定することができる。
【0340】
《現像条件》
銀塩熱現像感光材料の現像条件は使用する機器、装置、あるいは手段に依存して変化するが、典型的には適した高温において像様に露光した写材料を加熱することを伴う。露光後に得られた潜像は、中程度の高温(約80〜150℃、好ましくは約100〜130℃)で十分な時間(本発明は、5〜20秒の速さの迅速現像処理が好ましい)、写真材料を加熱することにより現像する。
【0341】
加熱温度が80℃未満では短時間に十分な画像濃度が得られず、また150℃を超えるような高温ではバインダーが溶融し、ローラへの転写など画像そのものだけでなく搬送性や、現像機等へも悪影響を及ぼす。加熱することで有機銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。この反応過程は外部からの水等、処理液の一切の供給なしに進行する。
【0342】
加熱する機器、装置、手段は、ホットプレート、アイロン、ホットローラ、炭素または白色チタン等を用いた熱発生器として典型的な加熱手段で行ってよい。より好ましくは、保護層の設けられた銀塩熱現像感光材料は保護層を有する側の面を加熱手段と接触させ加熱処理するのが均一な加熱を行う上で、また熱効率、作業性の点などから好ましく、該面をヒートローラに接触させながら搬送し加熱処理して現像することが好ましい。
【0343】
なお、現像時の本発明の銀塩熱現像感光材料の搬送速度は25mm/秒以上であることが好ましい。好ましくは25〜120mm/秒、更に好ましくは50〜100mm/秒である。搬送速度が上記範囲内であることにより本発明の試料は迅速処理ができながら、低かぶり高感度を得られ、かつ現像ムラのない高画質の画像を得られて好ましい。
【実施例】
【0344】
以下に示す方法に従い、銀塩熱現像感光材料を作製した。
【0345】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を示す。
【0346】
実施例1
《感光性ハロゲン化銀乳剤の調製》
(A1)
フタル化ゼラチン(平均分子量10万) 66.23g
化合物(A)(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
(B1)
0.67モル/L硝酸銀水溶液 2635ml
(C1)
臭化カリウム 52.1g
沃化カリウム 1.485g
水で660mlに仕上げる
(D1)
臭化カリウム 151.1g
沃化カリウム 7.645g
ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム(1%水溶液) 0.925ml
ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム 0.075g
水で1982mlに仕上げる
(E1)
0.4モル/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
(F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
(G1)
56%酢酸水溶液 20.0ml
(H1)
水酸化カリウム 1.72g
化合物(B):FC−4防腐剤(5%水溶液) 10ml
水で151mlに仕上げる
化合物(A):
HO(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)17(CH2CH2O)mH (m+n=5〜7)
【0347】
【化62】

【0348】
(比較の感光性ハロゲン化銀乳剤Em−Aの調製)
特公昭58−58288号公報に示される混合撹拌機を用いて溶液(A1)に溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を温度35℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し核形成を行った。7分間経過後、溶液(B1)の3/4量及び溶液(D1)の液を全量、14分15秒かけて同時混合法により添加した。5分間撹拌した後、溶液(G1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。脱塩、水洗する。この操作3回を繰り返した後、溶液(H1)を加え、60℃に昇温し、更に120分撹拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり652gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤Em−Aを得た。
【0349】
この乳剤は平均粒子サイズ43nm(円相当径)、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。(粒子表面のAgIの含有率は3.5モル%)
(本発明の感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B〜Em−Mの調製)
比較の感光性ハロゲン化銀乳剤Em−Aと同様な方法で核形成を行った。3分後、pH10に合わせた。一般式(S−1)または(S−2)で表される化合物(表3記載の種類)の固体分散微粒子の水溶液を表3記載の量のように添加した。30分間経過後、クエン酸溶液でpH5.8にした。その後、比較の感光性ハロゲン化銀乳剤Em−Aの場合と同じように調製し、本発明の感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B〜Em−Mを得た。
【0350】
(本発明のハロゲン化銀乳剤の化学増感)
上記の感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B〜Em−Mをそれぞれ47℃に恒温し、乳剤pHを6.5にして、トリフェニルホスフィンスルフィドを固体分散水溶液として、1×10-4モル/Agモル添加して60分攪拌した。その後、pHを5.8に調整し、安定剤−Aを3×10-4モル/Agモル相当添加した後、省銀化剤SE−1を1×10-5モル/Agモル添加した。
【0351】
【化63】

【0352】
(ポリマーB溶液の合成)
0.3Lの四つ口セパラブルフラスコに滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置及び還流冷却管を付し、メチルエチルケトン20gを仕込み、50℃に加熱した。更に表2に記載の組成割合のモノマー(単位g)の表2に記載の量(単位g)を秤量し、更にN,N′−アゾビスイソバレロニトリル2gを前記モノマーに加えた混合液を、フラスコ中に2時間かけて滴下し、同温度にて5時間反応させた。その後メチルエチルケトン80gを添加し冷却、ポリマー50質量%のポリマーB溶液を得た。分子量はGPCでポリスチレン換算の重量平均分子量として、5〜6万であった。
【0353】
【表2】

【0354】
DAAM:ダイサセトンアクリルアミド(協和発酵製)
Aam:アクリルアミド
ブレンマーPSE−400:−(EO)m−C1837(m≒9)を有するメタアクリレート
ブレンマーPME−400:−(EO)m−CH3(m≒9)を有するメタアクリレート(EO;エチレンオキシ基、上記はすべて日本油脂製)。
【0355】
《有機溶媒液中の感光性ハロゲン化銀分散液の調製》
ポリマーB溶液20gにメタノール60gを添加し、40℃30分攪拌した。そこに40℃に溶解した上記の化学増感済み感光性ハロゲン化銀乳剤(Em−B〜Em−M)それぞれを59.2gゆっくり滴下し、更に48℃60分攪拌した。各々のハロゲン化銀液をMEKで2倍に希釈を行い、ロータリーエバポレーターにて減圧蒸留で水分を除去し、それぞれ容量を1/3に濃縮した。この操作を2回繰り返した。有機溶媒液中の感光性ハロゲン化銀分散液(Em−B′〜Em−M′)を得た。
【0356】
《比較の粉末有機銀塩の調製》
5470mlの純水に、ベヘン酸52.3g、アラキジン酸27.1g、ステアリン酸17.45g及びパルミチン酸0.9gを80℃で溶解した。次いで、高速で攪拌しながら1.5モル/Lの水酸化カリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して有機酸カリウム溶液を得た。該有機酸カリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、銀として0.038モル相当の上記比較の感光性ハロゲン化銀乳剤Em−Aと純水450mlを添加し、5分間高速で攪拌した。次に1モル/Lの硝酸銀溶液760.6mlを2分間かけて添加し、さらに10分間高速で攪拌した後、濾過により水溶性塩類を除去した。その後、濾液の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、濾過を繰り返し、遠心脱水を行った後、質量の減少がなくなるまで窒素気流下で加熱乾燥を行った。比較の粉末有機銀塩を得た。
【0357】
《本発明の粉末有機銀塩の調製》
上記比較の粉末有機銀塩と同じ方法で調製するが、ただし、ハロゲン化銀を添加しないで、本発明の粉末有機銀塩を得た。
【0358】
《有機銀塩分散液の調製》
ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社:Butvar B−79)14.57gをメチルエチルケトン(MEK)1457gに溶解し、ディゾルバー型ホモジナイザーにて攪拌しながら、500gの上記の各々の粉末有機銀塩を徐々に添加して十分に混合した。その後、1mm径のジルコニウムビーズ(東レ社製)を80%充填したメディア型分散機(Gettzmann社製)にて周速13m、ミル内滞留時間0.5分間にて分散を行って、比較の有機銀塩分散液と本発明の有機銀塩分散液を各々調製した。
【0359】
〔感光層塗布液の調製〕
(色素安定剤液の調製)
1.0gの色素安定剤−1、0.31gの酢酸カリウムをメタノール14.35gに溶解し、色素安定剤液とした。
【0360】
(赤外増感色素液の調製)
0.090gの赤外増感色素−1、1.9gの2−クロロ安息香酸、10.8gの色素安定剤−2、0.1gの5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、240gのMEKに溶解し、赤外増感色素液とした。
【0361】
(比較の感光層塗布液の調製)
前記比較の有機銀塩分散液を、50g及びMEK15.11gを攪拌しながら18℃に保温し、かぶり抑制剤−1の1%メタノール溶液を1.4g添加した。30分後、赤外増感色素液を1.2×10-4モル/Agモル相当添加して1時間攪拌した。その後、13℃に降温し、バインダー樹脂としてポリビニルアセタール樹脂(化合物P−1、Tg=75℃)を12.45g添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(13%MEK溶液)1.1g添加して15分間攪拌した。塗布直前にデスモジュールN3300(モーベイ社製:脂肪酸イソシアネート)の22%MEK溶液2.23g、補助還元剤(1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル))を一般式(I)〜(IV)の還元剤と同じ質量を添加した。一般式(I)〜(IV)の還元剤およびカプラーを表3に記載したように添加した。かぶり抑制剤−2の7%MEK溶液を6.5g、フタラジンの12.74%MEK溶液を3.34g、添加した。攪拌することにより比較の感光層塗布液(A)を得た。
【0362】
(本発明の感光層塗布液の調製)
比較の感光層塗布液の調製の場合について、比較の有機銀塩分散液の代わりに同量の前記本発明の有機銀塩分散液を用い、かぶり抑制剤−1を添加する前20分に前記有機溶媒液中の感光性ハロゲン化銀分散液(Em−B′〜Em−M′)を7.2g添加した。他は比較の感光層塗布液の調製と同様にして本発明の感光層塗布液(B′〜M′)を得た。
【0363】
〔表面保護層塗布液の調製〕
MEKを865g攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製、CAB171−15)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製、パラロイドA−21)を4.5g、ベンゾトリアゾールを1.5g、F系活性剤(旭硝子社製、サーフロンKH40)を1.0g添加し溶解した。次に、下記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、酸化防止剤の化合物Oを0.045g/m2になるように添加し、表面保護層塗布液を調製した。
【0364】
〔マット剤分散液の調製〕
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:CAB171−15)7.5gをMEK42.5gに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社製:Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバー型ホモジナイザーにて8000rpmで30分間分散し、マット剤分散液を得た。
【0365】
〔バック面塗布液の調製〕
MEK830gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社製、CAB381−20)84.2g、ポリエステル樹脂(Bostic社製、VitelPE2200B)4.5gを添加し溶解した。溶解した液に、バック面の塗布試料における赤外染料1の吸収極大の吸光度(abs)が0.3となるように赤外染料1を添加し、さらにメタノール43.2gに溶解したフッ素系活性剤(旭硝子社製、サーフロンKH40)4.5gとフッ素系活性剤(大日本インキ社製、メガファックF120K)2.3gを添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、MEKに1質量%の濃度でディゾルバー型ホモジナイザーにて分散したシリカ(W.R.Grace社製、シロイド64X6000)を75g添加、攪拌し、バック面塗布液を調製した。
【0366】
《支持体の作製》
濃度0.170に青色着色したポリエチレンテレフタレートフィルムベース(厚み175μm)の両面に、0.15kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した。その一方の面に、下記の下引塗布液Aを用いて下引層aを乾燥膜厚が0.2μmになるように塗設した。更に、もう一方の面に下記の下引塗布液Bを用いて下引層bを乾燥膜厚が0.1μmとなるように塗設した。その後、複数のロール群から成るフィルム搬送装置を有する熱処理式オーブンの中で、130℃で15分の熱処理を行った。
【0367】
[下引塗布液A]
ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(30/20/25/25%比)の共重合体ラテックス液(固形分30%)270g、界面活性剤(UL−1)0.6g及びメチルセルロース0.5gを混合した。更に、シリカ粒子(富士シリシア社製:サイロイド350)1.3gを水100gに添加し、超音波分散機(ALEX Corporation社製:Ultrasonic Generator、周波数25kHz、600W)にて30分間分散処理した分散液を加え、最後に水で1000mlに仕上げて下引塗布液Aとした。
【0368】
[下引塗布液B]
下記コロイド状酸化錫分散液37.5g、ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(20/30/25/25%比)の共重合体ラテックス液(固形分30%)3.7g、ブチルアクリレート/スチレン/グリシジルメタクリレート(40/20/40%比)の共重合体ラテックス液(固形分30%)14.8gと界面活性剤(UL−1)0.1gを混合し、水で1000mlに仕上げて下引塗布液Bとした。
【0369】
[コロイド状酸化錫分散液の調製]
塩化第2錫水和物65gを、水/エタノール混合溶液2000mlに溶解して均一溶液を調製した。次いで、これを煮沸し、共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸留水にて数回水洗した。沈殿物を洗浄した蒸留水中に硝酸銀を滴下し、塩素イオンの反応がないことを確認後、洗浄した沈殿物に蒸留水を添加して全量を2000mlとした。更に、30%アンモニア水を40ml添加し、水溶液を加温して容量が470mlになるまで濃縮し、コロイド状酸化錫分散液を調製した。
【0370】
上記にて用いた化合物の構造を以下にまとめて示す。
【0371】
【化64】

【0372】
《銀塩熱現像感光材料の作製》
上記下引き済み支持体の両面に、表3に記載の組み合わせで感光層面側、及びバック層面側を塗布・乾燥して銀塩熱現像感光材料(試料1〜15)を作製した。
【0373】
[感光層面側の塗布]
前記調製した各感光層塗布液及び各表面保護層塗布液を用いて、支持体側から感光層及び表面保護層を、それぞれ押出しコーターを用いて同時重層塗布・乾燥を行った。乾燥温度は100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。表面保護層は乾燥膜厚として1.5μmになる様に行った。
【0374】
[バック面側の塗布]
上記調製したバック面塗布液を、それぞれ乾燥膜厚が3μmになるように、押出しコーターを用いて塗布・乾燥を行った。乾燥温度は100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0375】
《試料の包装》
外側〜ナイロン15μm/AL7μm(防湿層)/ポリエチレン20μm/カーボンブラック+ポリエチレン30μm(遮光層)〜内側・感剤側
〔評価〕
上記作製した銀塩熱現像感光材料(試料1〜15)について、以下の方法にて特性評価を行った。
【0376】
(Dmin及び感度の測定)
各試料を半切サイズに加工した後、コニカミノルタエムジー社製レーザ・イメージャーDRYPRO752を用いて、試料の一部が露光されながら、同時に既に露光がなされた試料の一部分が現像開始されるように改造した。露光は785nmの半導体レーザで像様露光を施した。なお、露光においては試料の露光面と露光レーザ光の角度は80度とした。また、試料毎条件A:レーザ強度16mWで30.64mm/秒で搬送し露光した。なお、高周波重畳を縦マルチモードで出力した。熱現像処理はヒートドラムを用いて均一加熱を行い、熱現像処理条件126℃、8秒で行った。このようにして得られた熱現像処理済み試料の濃度を、光学濃度計(コニカミノルタフォトイメージング社製:PD−82)で測定し、濃度Dと露光量Log(1/E)からなる特性曲線を作成し、最小濃度(Dmin=カブリ濃度)、最大濃度(Dmax)感度を測定した。なお、感度は最小濃度より1.0高い濃度を与える露光量の逆数の対数と定義した。なお、試料1の感度を100とする相対感度を表4に示した。
【0377】
(照度不軌の評価)
前記条件Aの代わりに条件B:レーザ強度30mWで57.45mm/秒で搬送し露光した他は上記条件Aの感度を求める場合と同様にして条件Bの感度を求めた。条件Aと条件Bの感度差を下式から求めた。なお、試料1の感度差を100とする相対感度差を表4に示した。この感度差が小さいほど照度不軌の問題がなく良好である。
【0378】
条件Aと条件Bの感度差=(条件Aの感度差)−(条件Bの感度差)
(画像耐光性)
上記の方法で熱現像処理をした各試料を、更に37℃、55%RHの室内で、3日間光源台上、蛍光灯下に放置した前後での最小濃度部分(Dmin部)の光学濃度を測定し、下式に従い最小濃度(Dmin)の変動(ΔDmin)を求め、これを画像耐光性の尺度とし、試料1のそれを100とした相対値で表示した。
【0379】
ΔDmin=(蛍光灯曝射後のDmin)−(蛍光灯曝射前のDmin)
なお、使用した光源台上の温度、照度、は45℃、8000ルックス、であった。
【0380】
(銀色調)
作製した銀画像について目視評価を行い、下記の基準に従って銀色調の判定を行った。
【0381】
◎:最適な銀色調である
○:支障のない銀色調である
△:診断に問題ない程度である
×:実用上許容範囲外である
(生保存性)
試料を40℃、相対湿度80%RHで1週間レーザ・イメージャーの機内に保存した後、露光・現像して得られた感度を評価した。試料1の感度差を100とする相対感度差を表4に示した。この感度を未処理の試料と比べ、感度の低下幅が小さいものが生保存性に優れる。
【0382】
【表3】

【0383】
【化65】

【0384】
【表4】

【0385】
表4より、本発明に係る試料は、高感度、低カブリであり、且つ照度不軌、銀色調や耐光性に優れていることが分かった。なお、本発明の試料の階調γが2.5〜4.0の範囲にあり、医療用銀塩熱現像感光材料として適性を有していることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機銀塩、還元剤及びバインダーを含む画像形成層を有する銀塩熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀は露光時に表面潜像型で、熱現像後に内部潜像型へ変換し、かつ、該画像形成層が下記一般式(I)で表される銀イオンのための還元剤、該還元剤の酸化生成物と反応して色素を形成し得るカプラーを含有することを特徴とする銀塩熱現像感光材料。
【化1】

(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R5及びR6はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、又はスルホニル基を表し、R1とR2、R3とR4、R5とR6、R2とR5、及びR4とR6から選ばれる少なくとも1組は互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。R7はR11−O−CO−、R12−CO−CO−、R13−NH−CO−、R14−SO2−、R15−W−C(R16)(R17)(R18)−、R19−SO2NHCO−、R20−CONHCO−、R21−SO2NHSO2−、R22−CONHSO2−又は(M)1/nOSO2−を表し、R11、R12、R13、R14、R19、R20、R21及びR22はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R15は水素原子又はブロック基を表し、Wは酸素原子、イオウ原子又は>N−R18を表し、R16、R17、及びR18は水素原子又はアルキル基を表し、Mはn価のカチオンを表す。)。
【請求項2】
前記一般式(I)で表される還元剤のR7がR11−O−CO−またはR19−SO2NHCO−で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の銀塩熱現像感光材料。
【請求項3】
前記還元剤が、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の銀塩熱現像感光材料。
【化2】

(式中、R101及びR102はそれぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表し、R103、R104、R105、R106及びR107はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。R101とR102、R103とR104、R105とR106、及びR107とXから選ばれる少なくとも一組は互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。Xはハロゲン原子、又はヘテロ原子を有する置換基(前記ヘテロ原子を介してベンゼン環に結合する)を表す。nは0〜4の整数を表す。nが2以の場合、R107は同じであっても異なっていても良く、また互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。)。
【請求項4】
前記還元剤が、下記一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料:
【化3】

(式中、R201、R202、及びR203はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R204はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表し、R201とR202、及びR202とR204から選ばれる少なくとも1組は互いに結合して5員、6員又は7員の環を形成してもよい。Zは窒素原子及びベンゼン環中の2個の炭素原子とともに5員、6員又は7員の環を形成する非金属原子群を表す。R205はアルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。ただし、R201〜R204の各々にヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホ基のいずれをも含まない。)。
【請求項5】
前記一般式(III)におけるR205が下記一般式(IV)で表される基であることを特徴とする請求項4に記載の銀塩熱現像感光材料:
【化4】

(式中、Xは、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を介してベンゼン環に置換する基を表し、R206は置換基を表し、nは0〜4の整数を表す。nが2以上の場合、2個以上のR206は同じでも、異なっていてもよく、隣り合った位置に結合した基が互いに結合して5員〜7員の、炭素環又はヘテロ環を形成してもよい。)。
【請求項6】
前記カプラーとして下記一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(M−1)、(M−2)、(M−3)、(Y−1)、(Y−2)および(Y−3)よりなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料。
【化5】

(式中、X1は水素原子または離脱基を表し、Y1およびY2は電子求引性の置換基を表し、R1はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。)
【化6】

(式中、X2は水素原子または離脱基を表し、R2はアシルアミノ基、ウレイド基またはウレタン基を表し、R3は水素原子、アルキル基またはアシルアミノ基を表し、R4は水素原子、または置換基を表す。R3とR4が互いに連結して環を形成してもよい。)
【化7】

(式中、X3は水素原子または離脱基を表し、R5はカルバモイル基またはスルファモイル基を表し、R6は水素原子または置換基を表す。)
【化8】

(式中、X4は水素原子または離脱基を表し、R7はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R8は置換基を表す。)
【化9】

(式中、X5は水素原子または離脱基を表し、R9はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R10は置換基を表す。)
【化10】

(式中、X6は水素原子または離脱基を表し、R11はアルキル基、アリール基、アシルアミノ基またはアニリノ基を表し、R12はアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。)
【化11】

(式中、X7は水素原子または離脱基を表し、R13はアルキル基、アリール基、インドレニル基を表し、R14はアリール基またはヘテロ環基を表す。)
【化12】

(式中、X8は水素原子または離脱基を表し、Zは5員ないし7員の環を形成するのに必要な2価の基を表し、R15はアリール基またはヘテロ環基を表す。)
【化13】

(式中、X9は水素原子または離脱基を表し、R16、R17およびR18はそれぞれ置換基を表し、nは0ないし4の、mは0ないし5のいずれかの整数を表す。nまたはmが2以上のとき、複数のR16およびR17はそれぞれ同一の基であってもよいし、別々の基であってもよい。)。
【請求項7】
前記カプラーとして一般式(C−1)、(C−2)、及び(C−3)から選ばれる1種、(M−1)、(M−2)、及び(M−3)から選ばれる1種、(Y−1)、(Y−2)、及び(Y−3)から選ばれる1種、を含む3種のうちの2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料。
【請求項8】
前記感光性ハロゲン化銀の全投影面積の10%以上100%以下がアスペクト比2以上100以下の平板状粒子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料。
【請求項9】
前記画像形成層が支持体に対し一方の面側にのみ設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料。
【請求項10】
前記画像形成層が支持体に対し両方の面側に設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料を、25mm/秒以上120mm/秒以下で搬送しながら熱現像することを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【請求項12】
前記銀塩熱現像感光材料をレーザ光で露光することを特徴とする請求項11に記載の銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料について画像形成をする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法であって、(a)該銀塩熱現像感光材料を1対のX線増感スクリーンの間に設置することにより像形成用組立体を得る工程、(b)該組立体とX線源との間に被検体を配置する工程、(c)該被検体にエネルギーレベルが25〜125kVpの範囲にあるX線を照射する工程、(d)該銀塩熱現像感光材料を該組立体から取り出す工程、(e)取り出した該銀塩熱現像感光材料を80〜150℃の範囲の温度で加熱する工程を含んでなることを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。

【公開番号】特開2008−158290(P2008−158290A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347394(P2006−347394)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポラロイド
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】