説明

銀鏡層形成方法、及び銀鏡層を有する炭素繊維複合材

【課題】比較的簡易な構成で、炭素繊維複合材の複合材表面に銀鏡反応を利用した銀鏡層を形成可能であり、かつ複合材表面との密着性に優れたレジャー用品に応用可能な銀鏡層形成方法、及び銀鏡層を有する炭素繊維複合材を提供することを課題とする。
【解決手段】銀鏡層形成方法は、アンダーコート層構築工程、第一塩化スズ溶液噴霧工程、第一塩化スズ溶液除去工程、硝酸銀溶液噴霧工程、銀鏡層形成工程、未反応溶液除去工程、銀鏡反応抑制工程、リンス液除去工程、エアーブロー工程、乾燥工程、及びトップコート層構築工程を具備し、これによって形成された複合材2は、アンダーコート層5、銀鏡層3、及びトップコート層7を有し、トップコート層7によって銀鏡層3が強固に密着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀鏡層形成方法、及び銀鏡層を有する炭素繊維複合材に関するものであり、特に、銀鏡反応を利用して、炭素繊維複合材で形成されたゴルフクラブのシャフト等に装飾性を有する銀メッキを施すことが可能な銀鏡層形成方法、及び銀鏡層を有する炭素繊維複合材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、高強度性及び高弾性等を有する優れた力学的特性を備える炭素繊維(カーボンファイバー)が知られ、この炭素繊維とエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、又は不飽和ポリエステル樹脂等を所謂マトリックス(母材)として使用し、軽量性に優れた炭素繊維複合材(カーボンコンポジット)を製造することが行われている。係る炭素繊維複合材は、多くの産業分野に用いられ、例えば、高強度及び軽量性の利点を生かし、航空宇宙産業で航空機の機体の主要構成材(主翼等)の一部、或いは打ち上げ用の推進ロケットのノズル等に使用することが行われている。一方、自動車産業では車体フレームの一部や外装部品の一部として使用することが行われている。
【0003】
係る使用により、従来は鉄やステンレス等の金属製材料を用いて構築されていた部材を炭素繊維複合材で置換することができ、軽量化による燃費向上や性能向上等に寄与することができるようになる。
【0004】
一方、上述した航空宇宙産業や自動車産業等の基幹産業分野以外にも、炭素繊維複合材の優れた力学的特性を活かした製品の開発及び製造がなされている。例えば、ゴルフクラブのシャフト、釣り竿、或いはテニスラケット等の各種のスポーツ、レジャー用品への応用もなされている。ここで、ゴルフクラブやテニスラケット等は、使用者(プレーヤー)が長時間に亘って、これらを手で把持し、スイングやストロークの際にこれを強く振り回す動作を行う必要がある。そのため、長時間の使用でも疲労を感じることが少ないように軽量性が求められ、さらにボールを打った際に飛距離を伸ばしたり、鋭い返球が行えるように高弾性、高反発力を有することが求められていた。そのため、係る炭素繊維複合材は、上記のレジャー用品に対して使用する場合、特に好適な素材の一つであった。
【0005】
しかしながら、炭素繊維複合材は、その全体の色調が炭素繊維に由来する黒一色であることが多く、上記のような趣味性、嗜好性の強いレジャー用品に使用する場合、デザインや製品表面の装飾に一定の制限が課せられてしまうことが多かった。また、ゴルフクラブ等の場合、使用に際しての重量バランスを留意する必要があり、過度な装飾をした場合に係る重量バランスの調製が煩雑になることがあった。そのため、炭素繊維複合材に装飾を施す場合、重量バランスにほとんど影響のないものが望まれていた。
【0006】
そこで、例えば、炭素繊維複合材の複合材表面に合成樹脂からなる合成樹脂被膜層を設け、さらに金属を物理蒸着させた装飾層を形成し、その上に透明または半透明の樹脂製の保護層を設けたゴルフクラブ等のレジャー用の物品が研究開発されている(特許文献1参照)。これにより、物理蒸着(PVD)に含まれる真空蒸着、スパッタリング、又はイオンプレーティング等の周知のメッキ手法または蒸着手法によって薄膜化を行い、数μm以下に均一な厚さの金属の膜(アルミニウムやチタン等)をメッキ膜として形成することを可能としている。これにより、従来から周知のメッキ手法であるクロームメッキ等に比べ、炭素繊維複合材の複合材表面への密着性が強固なものとなる。特に、ゴルフクラブやテニスラケット等は、ボールを打つインパクトの瞬間に強い衝撃が加わり、さらに弾性変形によってシャフト等が弓状に撓むことがある。係る撓みが繰り返されることにより、弾性変形の部分からメッキ層(装飾層)が表面から剥離したり、ヒビ割れ等の不良が生じる可能性が高くなる。したがって、上記のように、合成樹脂被膜層を設け、さらにその上に金属からなる装飾を設けることにより、装飾層及び合成樹脂被膜層の間の密着性が向上し、剥離等の不具合が生じることが少なくなる。さらに、保護層で被覆することにより、炭素繊維複合材に外部から何らかの力(衝撃)を受けた場合でも、キズ付き等を防止することができる。
【0007】
【特許文献1】特開平7−79669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した金属薄膜のメッキにかかる手法は下記に掲げるような問題点を有することがあった。すなわち、物理蒸着(PVD)法を利用して、金属の装飾層(薄膜層)を形成しようとする場合、対象となる物品(シャフト等)を蒸着装置の所定の蒸着部内に収容し、真空下或いは減圧下で金属をイオン化して物品表面に蒸着する必要があり、係る設備を導入するために多大なコストが必要となった。そのため、ゴルフクラブ等の物品自体の製造コストが嵩み、製品単価が高くなるおそれがあった。さらに、イオンプレーティング等の蒸着を行う場合、個々の物品に対する蒸着時間(薄膜形成時間)が多くかかることがあった。そのため、物品一個当たりの蒸着時間が長くなり、多量の生産に向いていないことがあった。
【0009】
そのため、初期の設備投資に多大なコストを要せず、かつメッキ層を形成するための処理時間を比較的短くし、所定時間で多数個のメッキ処理をすることが可能な密着性にすぐれたメッキ層(金属層)の形成方法及びこれらを表面に有する炭素繊維複合材の製造が期待されていた。
【0010】
一方、従来から無電解メッキの一手法として、アルカリ性の銀化合物溶液(例えば、硝酸銀溶液)から還元反応を利用してガラス表面等に銀を析出させる、所謂「銀鏡反応」が知られており、当該反応を利用して銀の鏡層を形成する技術も開発されている。この銀鏡反応は、上述のPVD法に比べ、特殊な設備を必要とすることのない簡易な構成で実行することができ、かつ大気中(常圧)での反応が可能である。
【0011】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、比較的簡易な構成で、炭素繊維複合材の複合材表面に銀鏡反応を利用した銀鏡層を形成可能であり、かつ複合材表面との密着性に優れたレジャー用品に応用可能な銀鏡層形成方法、及び銀鏡層を有する炭素繊維複合材の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の銀鏡層形成方法は、「炭素繊維複合材の複合材表面に樹脂製のアンダーコート成分を噴霧して硬化させることにより、表面平滑性を有するアンダーコート層を構築するアンダーコート層構築工程と、構築された前記アンダーコート層のコート層表面に第一塩化スズ溶液を噴霧し、前記コート層表面上の銀鏡反応を活性化させるための活性化処理を行う第一塩化スズ溶液噴霧工程と、前記コート層表面に純水を噴射し、前記コート層表面の前記第一塩化スズ溶液を洗い流して除去する第一塩化スズ溶液除去工程と、前記第一塩化スズ溶液の洗い流された前記コート層表面に所定濃度に調製された硝酸銀溶液を噴霧する硝酸銀溶液噴霧工程と、前記硝酸銀溶液の噴霧された前記コート層表面に銀化合物及びアンモニア成分を混合してなる銀・アンモニア混合溶液、及び窒素含有化合物を含む窒素含有溶液をそれぞれ独立して噴霧し、前記コート層表面近傍で混合することにより、前記コート層表面に前記銀鏡反応による薄膜状の銀鏡層を形成する銀鏡層形成工程と、形成された前記銀鏡層の銀鏡層表面に純水を噴射し、前記銀鏡層表面の未反応溶液を洗い流して除去する未反応溶液除去工程と、前記銀鏡層表面に無機ナトリウム化合物を含有するリンス液を噴霧し、前記コート層表面上の前記銀鏡反応の進行を抑制する銀鏡反応抑制工程と、前記銀鏡層表面に純水を噴射し、前記銀鏡層表面の前記リンス液を洗い流して除去するリンス液除去工程と、前記リンス液の洗い流された前記銀鏡層表面にエアーを送出し、前記銀鏡層表面上の水滴及び/または不純物を風圧によって飛散させるエアーブロー工程と、前記エアーブロー工程後の前記銀鏡層を所定温度で乾燥させる乾燥工程と、前記銀鏡層表面に樹脂製のトップコート成分を噴霧して硬化させることにより、前記銀鏡層を保護するトップコート層を構築するトップコート層構築工程と」を具備して主に構成されている。
【0013】
ここで、アンダーコート層とは、例えば、一液硬化型或いは二液硬化型のアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、及びウレタン系樹脂を主成分とする樹脂性のアンダーコート成分を用いて、炭素繊維複合材の複合材表面にスプレー等の噴霧手段を利用して液状の状態で吹き付けられるものである。そして、所定温度で硬化処理を行うことにより、表面平滑性を有するアンダーコート層が形成される。なお、プラスチック樹脂等の非導電性素材に対して無電解メッキを行う場合に予め処理される周知の手法であり、既存の技術を応用することが可能である。そのため、ここでは、詳細な説明は省略する。
【0014】
ここで、炭素繊維複合材はカーボンファイバー及びマトリックスによって構成される非導電性素材のものであり、かつ当該複合材表面は比較的大きな凹凸を有することが一般に知られている。そのため、係る状態で銀鏡層を形成したとしても、凹凸に応じて銀鏡層が施され、きれいな銀鏡層を構築することが困難である。そこで、係る凹凸を埋めるようにしてアンダーコート層を構築し、凹凸を小さくした表面平滑性を確保している。なお、アンダーコート層を構築するためには、通常のスプレーガンを利用し、高圧で複合材表面に噴霧することが行われる。
【0015】
一方、第一塩化スズ溶液とは、第一塩化スズを純水に投入した水溶液であり、係る第一塩化スズは、従来から銀鏡反応においてその還元性を高くするために使用される周知の材料である。これにより、表面平滑性を有して構築されたアンダーコート層のコート層表面に第一塩化スズ溶液が付着し、一部に化学的な浸食作用を奏することとなる。係る第一塩化スズ溶液は、銀鏡反応を活性化するために少量必要なものであり、噴霧後は速やかに純水によって洗い流され、極微量の第一塩化スズ溶液のみがコート層表面に残存していることとなる。
【0016】
さらに、硝酸銀溶液とは、硝酸銀を水に溶かした水溶液のことであり、銀鏡反応によって銀を析出して銀鏡層を形成するための主材料を含むものである。そして、コート層表面に予め硝酸銀溶液を噴霧しておくことにより、銀鏡反応による銀の析出を速やかに行うことが可能となる。一方、銀・アンモニア混合溶液とは、硝酸銀等を一部に含む銀化合物の水溶液と、アルカリ性を呈するアンモニア水溶液を所定比率で混合したものである。なお、銀・アンモニア混合溶液は、銀鏡層の形成作業の前まで別離して準備され、スプレーガン等によって噴霧する直前に同一のタンク内に投入して混合するものであってもよい。これにより、アルカリ性状による還元性が銀鏡層の形成直前まで発現しないようにすることができる。ここで、硝酸銀溶液及び銀・アンモニア混合溶液における硝酸銀或いはその他の銀化合物は、それぞれ含有率が1%以下に調製されているものを使用することが好適である。すなわち、溶液中に硝酸銀等が多量に混合している場合、銀鏡反応によって析出する銀粒子の量が過剰となり、銀鏡層がムラになりやすいおそれがある。そのため、コート層表面上に可能な限り薄く銀鏡層を形成することにより、ムラやくもり等のない安定した品質の銀鏡層を形成することが可能となる。
【0017】
一方、窒素含有化合物とは、例えば、窒素原子を分子内に一部含む、含窒素ヘテロ環化合物を想定することができ、さらに具体的に説明すると、ピロール、ピロリン、ピロリジン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリジン、ピラゾリジン、チアゾール、チアゾリン、チアゾリジン、オキサゾール、オキサゾリン、オキサゾリジン、トリアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、テトラゾール、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン等を例示することができる。なお、上記窒素含有化合物はあくまでも一例であり、本発明の銀鏡層を形成するために作用するものであればこれら以外の化合物を用いることももちろん構わない。
【0018】
さらに、リンス液とは、炭酸水素ナトリウム等の無機ナトリウム化合物を含有する水溶液であり、アルカリ還元性のコート層表面での銀鏡反応の進行を停止するためのものである。
【0019】
また、第一塩化スズ溶液除去工程、未反応溶液除去工程、及びリンス液除去工程は、例えば、シャワーヘッドのような無数の孔部が設けられた水噴射機構を用いることができる。これにより、コート層表面或いは銀鏡層表面に付着した残留物或いは不純物を水(純水)で洗い流すものである。そのため、先に述べたアンダーコート成分、第一塩化スズ溶液、銀・アンモニア混合溶液、窒素含有溶液、トップコート成分(詳細は後述)等のように、霧状にして噴出させる必要はない。
【0020】
一方、エアーブロー工程とは、銀鏡層表面にブロア等によって強い風を送り、風圧で水滴或いは不純物等を吹き飛ばすものであり、周知の技術を利用することが可能である。さらに、トップコート層とは、前述のアンダーコート層に使用される成分と略同一のものを利用することが可能であり、かつ形成された銀鏡層の視認性を向上するために、透明性状を呈するものであることが求められる。なお、トップコート層は装飾に応じて無色透明或いは有色透明のいずれであっても構わない。
【0021】
したがって、本発明の銀鏡層形成方法によれば、上記工程を実施することにより、炭素繊維複合材の複合材表面の上に、アンダーコート層、銀鏡層、及びトップコート層が積層した構造を構築し、保護層として機能するトップコート層の下層に銀鏡反応によって銀鏡層を形成することが可能となる。特に、第一塩化スズ溶液で活性化処理を行ったコート層表面に、予め硝酸銀溶液を噴霧して付着し、さらに、銀・アンモニア溶液及び窒素含有溶液を同時に噴霧することにより、三種類の溶液を使用してコート層表面で速やかに銀鏡反応を進行させることができる。その結果、銀鏡層の形成を数秒から数十秒の比較的短時間で完了させることが可能となる。
【0022】
さらに、本発明の銀鏡層形成方法は、上記構成に加え、「前記銀鏡層形成工程は、前記銀・アンモニア混合溶液を噴霧する第一スプレー部、及び、前記窒素含有溶液を噴霧する第二スプレー部が互いに並設され、同一のタイミングで前記銀・アンモニア混合溶液及び前記窒素含有溶液を噴霧可能なダブルスプレーガンを使用し、前記第一スプレー部及び前記第二スプレー部のそれぞれの噴霧口近傍に設定された混合領域で、霧状の前記銀・アンモニア混合溶液及び前記窒素含有溶液を混合し、前記コート層表面に噴霧する」ものであっても構わない。
【0023】
したがって、本発明の銀鏡層形成方法によれば、霧状にした銀・アンモニア混合溶液及び窒素含有溶液をコート層表面に噴霧する直前の混合領域で互いに混合し、硝酸銀溶液の付着したコート層表面に噴霧することが可能となる。これにより、個々のスプレー部の内部で銀鏡反応が進行することがなく、銀化合物が析出するおそれがない。そのため、スプレー部の目詰まり等の不具合が発生することがなく、長時間にわたって銀鏡層の形成処理を継続して実行することが可能となる。
【0024】
さらに、本発明の銀鏡層形成方法は、上記構成に加え、「前記銀鏡層形成工程によって形成される前記銀鏡層は、前記銀鏡層を構成する銀粒子が前記コート層表面に均一に整列して配され、互いの前記銀粒子の間に前記銀鏡層表面及び前記コート層表面の間を連通する粒子間空隙を有して形成され、前記トップコート層構築工程によって構築される前記トップコート層は、樹脂製の前記トップコート成分の少なくとも一部が前記銀鏡層表面から前記粒子間空隙を通過し、前記コート層表面に到達して硬化することにより、前記銀鏡層の前記銀粒子の粒子表面を被覆し、挟み込んで構築される」ものであっても構わない。
【0025】
したがって、本発明の銀鏡層形成方法によれば、硬化前の液状のトップコート成分が粒子間空隙を通過し、コート層表面に到達することにより、銀鏡層を構成する銀粒子を周囲から挟み込んだ状態にすることが可能となる。その結果、コート層表面上の銀鏡層がトップコート層によって強固にアンダーコート層に密着することができ、剥離等の不具合が生じる可能性が低くなる。
【0026】
一方、本発明の銀鏡層を有する炭素繊維複合材は、「上記のいずれか一つに記載の銀鏡層形成方法を利用して形成された銀鏡層を有する炭素繊維複合材であって、炭素繊維複合材の複合材表面に構築され、第一塩化スズ溶液によってコート層表面が活性化処理されたアンダーコート層と、硝酸銀溶液、銀・アンモニア混合溶液、及び窒素含有溶液を利用して前記コート層表面に銀鏡反応によって形成された銀鏡層と、前記銀鏡層の銀鏡層表面に構築され、前記銀鏡層を保護するトップコート層と」を具備して主に構成されている。
【0027】
したがって、本発明の銀鏡層を有する炭素繊維複合材によれば、活性化処理されたアンダーコート層のコート層表面上で硝酸銀溶液、銀・アンモニア混合溶液、窒素含有溶液の三種の溶液を反応させて形成された銀鏡層を有している。これにより、コート層表面に規則正しく配列された銀粒子を均一な厚さの銀鏡層を形成可能となり、くもりやムラのない銀鏡層を構築することができる。
【0028】
さらに、本発明の銀鏡層を有する炭素繊維複合材は、上記構成に加え、「前記銀鏡層は、前記コート層表面上に前記銀鏡層を構成する銀粒子が均一に整列して配され、互いの前記銀粒子の間に銀鏡層表面及び前記コート層表面の間を連通する粒子間空隙をさらに具備し、前記トップコート層は、樹脂製のトップコート成分の少なくとも一部が前記銀鏡層表面から前記粒子間空隙を通過し、前記コート層表面に到達して硬化することにより、前記銀鏡層の前記銀粒子の粒子表面を被覆し、挟み込んだ状態で前記銀粒子を支持する粒子間空隙充填部を」具備するものであっても構わない。
【0029】
したがって、本発明の銀鏡層を有する炭素繊維複合材によれば、トップコート層が銀粒子間の粒子間空隙にも充填されることにより、アンダーコート層のコート層表面から銀鏡層が容易に剥離することを防ぐことができる。その結果、弾性変形や衝撃が繰り返し加わる用途(例えば、ゴルフクラブ等)に使用された場合であっても銀鏡層の剥離やキズ付き等の不具合を解消することができる。
【0030】
さらに、本発明の銀鏡層を有する炭素繊維複合材は、上記構成に加え、「ゴルフクラブ、釣り竿、及びテニスラケットの少なくともいずれか一つのレジャー用品に使用される」ものであっても構わない。
【0031】
したがって、本発明の銀鏡層を有する炭素繊維複合材によれば、銀鏡層によって複合材表面に装飾が施されたゴルフクラブ等を製造することができる。これにより、趣味性及び嗜好性の強いレジャー用品を利用者の好む幅広い色やデザインにすることができ、従来の黒一色による単調な色彩を解消することができる。そのため、利用者の購買意欲を促進することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の効果として、PVD法のような比較的大規模の蒸着装置を使用することなく、簡易な構成で、かつ短時間で美しい仕上がり表面(銀鏡層表面)を有する銀鏡層を炭素繊維複合材の上に形成することができる。さらに、炭素繊維複合材との密着性に優れるため、ゴルフクラブ等の強い衝撃の加わる過酷な使用環境においても、銀鏡層の剥離やキズ付き等が生じる可能性が低くなる。そのため、耐久性に優れた銀鏡層を形成することができる。その結果、デザイン性及び装飾性に一定の制限が課されることがなく、趣味及び嗜好性の強いレジャー用品の素材として使用することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態である銀鏡層形成方法1、及び銀鏡層形成方法を利用した銀鏡層を有する炭素繊維複合材(以下、単に「複合材2」と称す)について、図1乃至図5に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の銀鏡層形成方法を利用した銀鏡層3を有する複合材2の概略構成を示す断面図であり、図2及び図3は銀鏡層形成方法1の各工程の流れを模式的に示す説明図であり、図4は銀鏡層形成方法1の各工程の流れを示すフローチャートであり、図5は複合材2の銀鏡層3の近傍を拡大して示す要部拡大断面図である。ここで、本実施形態において、炭素繊維複合材料として、ゴルフクラブのシャフトを想定し、係るシャフトの表面に銀鏡層3を形成し、装飾性を高めたものについて例示するものとする。
【0034】
本実施形態の銀鏡層形成方法1は、図1乃至図5に示すように、アンダーコート層構築工程S1、第一塩化スズ溶液噴霧工程S2、第一塩化スズ溶液除去工程S3、硝酸銀溶液噴霧工程S4、銀鏡層形成工程S5、未反応溶液除去工程S6、銀鏡反応抑制工程S7、リンス液除去工程S8、エアーブロー工程S9、乾燥工程S10、及びトップコート層構築工程S11によって主に構成されている。
【0035】
そして、上記銀鏡層形成方法1によって形成された銀鏡層3を有する複合材2は、その断面構成として、処理対象の炭素繊維複合材4(以下、「処理前複合材4」の複合材表面4aの上に、樹脂製のアンダーコート層5が形成され、コート層表面5aの上に銀鏡反応によって銀粒子AGが膜状(層状)に析出した銀鏡層3を有し、さらにその銀鏡層表面3aに係る銀鏡層3を保護するための樹脂製のトップコート層7が積層した多層構造を呈して構成されている(図1参照)。
【0036】
ここで、本実施形態の銀鏡層形成方法1の各工程について、図2乃至図4に基づいてさらに詳述する。はじめに、処理前複合材4の複合材表面4aにアクリル系樹脂を主成分とするアンダーコート成分8をスプレーガンG1によって霧状に噴霧し、当該複合材表面4aをアンダーコート成分8によって被覆する(アンダーコート層構築工程S1:図2(a)参照)。ここで、アンダーコート成分8は有機溶剤に溶解した液状のものであり、上述したスプレーガンによって霧状にすることができる。そして、アンダーコート成分8が噴霧された処理前複合材4を所定温度(例えば、60℃前後)に保持した恒温槽内に導入し、保持することにより、含有する有機溶剤を蒸散させ、さらにアンダーコート成分8の硬化処理をすることができる。このとき、アンダーコート成分8として二液硬化型或いは一液硬化型のアクリル系樹脂を用いることにより、上記硬化処理によって複合材表面4aに硬質のアンダーコート層5が構築されることとなる。
【0037】
ここで、構築されるアンダーコート層5は、液状のアンダーコート成分8からの硬化処理によって、徐々にそのアンダーコート層5のコート層表面5aの表面が滑らかとなり、表面平滑性を有するものとすることができる。すなわち、霧状に噴霧された直後のコート層表面5a上のアンダーコート成分8は、硬化過程において徐々にコート層表面5aでレベリングが行われ、最終的に硬化が完了した際には、滑らかな表面を有する所定厚さのアンダーコート層5となる。その結果、比較的大きな凹凸を有する処理前複合材4の複合材表面4aが平滑化して被覆される。アンダーコート層5を平滑化することにより、最終的に形成される銀鏡層3及び複合材2の仕上がり状態を良好なものとすることができ、さらに、銀鏡反応による銀鏡層3のコート層表面5aに対する密着性も良好なものとすることができる。なお、噴霧に使用するスプレーガンG1は、高圧を利用して噴霧する周知のものを利用することができ、以下においても同様である。このとき、各溶液毎にスプレーガンG2,G3,G4等を別途用意する必要がある。
【0038】
その後、構築されたアンダーコート層5のコート層表面5aに、第一塩化スズを水に溶解させた第一塩化スズ溶液10をスプレーガンG2を利用して、高圧でコート層表面5aに噴霧する(第一塩化スズ溶液噴霧工程S2:図2(b)参照))。ここで、第一塩化スズ溶液10は、従来から銀鏡反応を行う際に、その反応を活性化させる目的で使用される周知の薬剤であり、係る第一塩化スズ溶液10の噴霧により、コート層表面5aを活性化することができる。なお、第一塩化スズ溶液10は、銀鏡反応を活性化させるためのものであり、第一塩化スズ溶液10に含まれる第一塩化スズ自体が銀鏡層3に含まれて析出するものではない。そのため、過剰量の第一塩化スズ溶液10がコート層表面5aに付着している必要はない。そこで、コート層表面5aに純水11を噴射し、付着している第一塩化スズ溶液10を洗い流す(第一塩化スズ溶液除去工程S3:図2(b)参照)。ここで、純水11をシャワーヘッドSWを利用してシャワー噴射することができる。これにより、第一塩化スズ溶液10がコート層表面5aから洗い流される。なお、第一塩化スズ溶液噴霧工程S2を行ってから第一塩化スズ溶液10を洗い流す第一塩化スズ溶液除去工程S3を行うまでは、数十秒程度であれば良い。
【0039】
そして、硝酸銀溶液12を活性化処理されたコート層表面5aにスプレーガンを利用して噴霧する(硝酸銀溶液噴霧工程S4:図2(c)参照)。ここで、硝酸銀溶液12は、硝酸銀含有量が全体の1%以下になるように調製されている。すなわち、硝酸銀溶液12が噴霧されたコート層表面5aには、硝酸銀が付着していることとなり、係る硝酸銀は後述の銀鏡反応によってコート層表面5aに析出することとなる。すなわち、銀粒子を析出するための原料となる硝酸銀が予め塗布されている。このとき、硝酸銀溶液12は液状(水溶液状)であり、単にコート層表面5aに存在しているに過ぎず、何ら固定処理等が行われているものではない。
【0040】
その後、予め調製しておいた硝酸銀を含む銀化合物の含有量が1%以下の銀化合物の溶液と、アンモニアを水に溶解したアンモニア溶液とを所定比率で混合してなる銀・アンモニア混合溶液13と、窒素含有溶液14とをダブルスプレーガンDGを利用して、硝酸銀溶液12の噴霧されたコート層表面5aに噴霧する(銀鏡層形成工程S5:図3(a)参照)。このとき、銀・アンモニア混合溶液13と窒素含有溶液14とは、図3(a)に示すように、各々独立した第一スプレー部及び第二スプレー部のノズル口(噴霧口)から霧状に噴出され、互いのノズル口の近傍に設置された空気中の混合領域Mで双方が混合され、その後、硝酸銀溶液12の塗布されたコート層表面5aに噴霧される。これにより、混合領域Mで混合された混合溶液がコート層表面5aと接触することとなる。その結果、アンモニア水によってアルカリ性に調製された銀含有混合液が硝酸銀溶液12の噴霧されたコート層表面5aに噴霧されることにより、硝酸銀溶液12及び銀化合物の溶液に含まれる銀成分が銀鏡反応によって析出し、銀鏡層3が形成される。ここで、窒素含有溶液14は銀鏡反応における還元剤としての機能を果たすこととなる。なお、銀鏡層3の形成は、銀・アンモニア混合溶液13と窒素含有溶液14の混合噴霧が行われると同時にコート層表面5a上で行われる。
【0041】
ここで、ダブルスプレーガンDGは、二つの溶液13,14をそれぞれ独立してノズル口から噴射し、ノズル口の近傍で両者を混合可能なものである。そのため、銀・アンモニア混合溶液13及び窒素含有溶液14が銀鏡反応の直前まで混じり合うことがなく、ダブルスプレーガンDGの溶液供給経路上で互いに反応し、例えば、銀を析出することがない。これにより、ダブルスプレーガンDGの溶液供給経路での目詰まりを防止することができる。
【0042】
その後、上述した第一塩化スズ溶液除去工程S3と同様に、銀鏡層3の銀鏡層表面3aに対し、純水11をシャワーヘッドSWを利用してシャワー噴射する(未反応溶液除去工程S6:図3(a)参照)。これにより、コート層表面5aに存在する硝酸銀溶液12、銀・アンモニア混合溶液13、及び窒素含有溶液14の未反応物が純水11によって洗い流される。その結果、コート層表面5aには銀鏡層3のみが残存する。
【0043】
さらに、銀鏡層表面3aに対し、炭酸水素ナトリウムを所定濃度で調製した無機ナトリウム化合物である炭素水素ナトリウム溶液からなるリンス液15をスプレーガンG3を利用して噴霧する(銀鏡反応抑制工程S7:図3(b)参照)。ここで、リンス液15を噴霧することにより、形成された銀鏡層3でそれ以上の銀鏡反応が進行することを抑制することができる。すなわち、銀鏡層3で銀鏡反応が長時間に亘って進行する場合、形成された層状の銀鏡層3の一部で過度に銀鏡反応が進行し、ムラやくもり等の不具合を生じ、最終的な仕上がりに影響を及ぼすことがある。そのため、銀鏡反応の進行を速やかに停止(抑制)することにより、仕上げが状態を良好に保つことを行う。
【0044】
その後、第一塩化スズ溶液除去工程S3及び未反応溶液除去工程S6と同様に、銀鏡層表面3aに対し、純水11をシャワーヘッドを利用してシャワー噴射する(リンス液除去工程S8:図3(b)参照)。これにより、銀鏡層表面3aに残存する無機ナトリウム化合物からなるリンス液15が洗い流される。その後、銀鏡層表面3aにブロアを利用して風を当て、風圧によって銀鏡層表面3aに付着する主に水滴(不純物を含む)を風圧によって飛散させ(エアーブロー工程S9:図示省略)、所定温度に保持した恒温槽(例えば、60℃前後)に導入する(乾燥工程S10:図示省略)。これにより、各工程によって多量の水溶液で処理した複合材表面4a、コート層表面5a、銀鏡層表面3aに残存する水成分を蒸発乾燥させることができる。
【0045】
そして、十分に乾燥した後、恒温槽から取り出し、銀鏡層表面3aに樹脂製のトップコート成分16をスプレーガンG4を利用して噴霧する(トップコート層構築工程S11:図3(c)参照)。ここで、コート層表面5aの上に形成された銀鏡層3aは該コート層表面5aと強固に密着しているのではなく、ほとんどその上に載っている状態に過ぎない。そこで、その上から樹脂製のトップコート成分16を噴霧し、これを硬化させることにより、銀鏡層3の保護をすることができる。その結果、本実施形態の複合材2に強い衝撃が加わった場合でも銀鏡層3が剥離等をするような不具合を生じることがない。なお、トップコート成分16は上述したアンダーコート成分8と同種のものを利用することも可能であり、その他のエポキシ系樹脂やポリウレタン系樹脂のものを利用しても構わない。さらに、係るトップコート成分16は、一般に無色透明なものが利用されるものの、係るトップコート成分16に所望の着色剤を添加し、有色透明にするものであっても構わない。これにより、形成される複合材2の装飾性をより高めたものとすることができ、ゴルフクラブのシャフト等の特に嗜好性の強い製品に対してデザイン性を付加することができる。なお、アンダーコート層構築工程S1と同様に、トップコート成分16を噴霧後に、これを硬化させるために、所定温度に保持した恒温槽内に導入し、強固なトップコート層7を構築するための処理が行われる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の銀鏡層形成方法1及びこれを利用した銀鏡層3を有する複合材2によれば、コート層表面5aに予め硝酸銀溶液12を塗布し、さらに銀溶液・アンモニア溶液・窒素含有溶液をダブルスプレーガンを利用して噴霧することにより、合計4種の溶液を混合し、銀鏡反応を生じさせることにより、銀鏡層3を形成することが行われる。すなわち、従来の銀鏡反応によって製品表面を所謂「銀めっき」するものに比べ、その処理及び反応の制御を比較的簡易に行うことができる。さらに、スプレー塗布によって必要量以上の銀粒子を析出させることがないため、ムラやくもり等のない仕上がり状態の良好な銀鏡層3を形成することができる。
【0047】
さらに、上記方法により形成された本実施形態の複合材2は、下記に掲げる優れた効果を奏することとなる。すなわち、上述したように4種類の溶液を利用し、コート層表面5aに極微量の銀粒子AGの析出からなる銀鏡層3を構築したものであるため、コート層表面5a上の銀粒子AGは数層程度しか積重していないことが予想される。そのため、係る銀鏡層3の上からトップコート成分16を噴霧した場合、樹脂製の液状のトップコート成分16は、硬化処理の前に各銀粒子AGの間の粒子間空隙を通過し、銀鏡層表面3aからコート層表面5aに到達することがある。その結果、粒子間空隙がトップコート成分16によって充填されることとなる。これにより、係るトップコート成分16による充填状態で硬化処理が進行すると、銀鏡層3の銀粒子AGをコート層表面5a及び銀鏡層表面3a側の双方からトップコート層7が挟み込んだ状態となる。その結果、銀鏡層3の密着度がより向上することとなる(図5参照)。これにより、トップコート層7に保護された銀鏡層3は、ゴルフのスイング等の強い衝撃が加わってもコート層表面5aから剥離したり、或いはヒビ割れを生じる等の不具合の発生する可能性が低くなる。
【0048】
以上、本発明について好適な実施形態の一例を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すような、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。すなわち、本実施形態において、各工程で噴霧する溶液等に含まれる化合物の種類及び濃度、配合比率等については適宜変更し、形成条件において最適なものを選択することができる。
【0049】
さらに本実施形態において、銀鏡層3を形成するための処理を行う際の温度(気温)についての言及は特にしなかったものの、係る処理を行う温度を一定温度に調製したものであっても構わない。すなわち、銀鏡反応の進行は反応時の温度によって大きく依存することがある。そこで、一般的には室温程度(25℃程度)で反応を実施すればよいが、例えば、30℃以上の気温の高い日、或いは10℃以下の気温の低い日等には、処理する際の環境温度を調製するものであってもよい。ここで、室温が高いと銀鏡反応の進行が促進されず、仕上がり表面にムラやくもり等が生じる可能性があり、一方、室温が低いと十分な銀鏡反応の進行が行われず銀鏡層3の形成に支障がでる場合が想定される。そのため、銀鏡反応に最適な温度に調製する必要がある。
【0050】
加えて、本実施形態において、銀鏡層3を形成した複合材2として、ゴルフクラブのシャフトを想定したものを示したが、もちろんこれに限定されるものではなく、例えば、釣り竿、テニスラケット等のその他のレジャー用品の装飾性及びデザイン性を高めるために使用するものであっても構わない。さらに、銀鏡層3を形成したことにより、光反射性の高い素材を構築することができるため、従来のガラス等を利用した鏡の代替用途として用いることが可能である。特に、ガラスに比べて軽量性に富み、さらに取扱時において破損等のおそれがないため、係る用途は特に使用が期待される分野と思われる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態の銀鏡層形成方法を利用した銀鏡層を有する複合材の概略構成を示す断面図である。
【図2】銀鏡層形成方法の各工程の流れを模式的に示す説明図である。
【図3】銀鏡層形成方法の各工程の流れを模式的に示す説明図である。
【図4】銀鏡層形成方法の各工程の流れを示すフローチャートである。
【図5】複合材の銀鏡層の近傍を拡大して示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 銀鏡層形成方法
2 複合材(銀鏡層を有する炭素繊維複合材)
3 銀鏡層
3a 銀鏡層表面
5 アンダーコート層
5a コート層表面
7 トップコート層
8 アンダーコート成分
10 第一塩化スズ溶液
11 純水
12 硝酸銀溶液
13 銀・アンモニア混合溶液
14 窒素含有溶液
15 リンス液
16 トップコート成分
AG 銀粒子
S1 アンダーコート層構築工程
S2 第一塩化スズ溶液噴霧工程
S3 第一塩化スズ溶液除去工程
S4 硝酸銀溶液噴霧工程
S5 銀鏡層形成工程
S6 未反応溶液除去工程
S7 銀鏡反応抑制工程
S8 リンス液除去工程
S9 エアーブロー工程
S10 乾燥工程
S11 トップコート層構築工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維複合材の複合材表面に樹脂製のアンダーコート成分を噴霧して硬化させることにより、表面平滑性を有するアンダーコート層を構築するアンダーコート層構築工程と、
構築された前記アンダーコート層のコート層表面に第一塩化スズ溶液を噴霧し、前記コート層表面上の銀鏡反応を活性化させるための活性化処理を行う第一塩化スズ溶液噴霧工程と、
前記コート層表面に純水を噴射し、前記コート層表面の前記第一塩化スズ溶液を洗い流して除去する第一塩化スズ溶液除去工程と、
前記第一塩化スズ溶液の洗い流された前記コート層表面に所定濃度に調製された硝酸銀溶液を噴霧する硝酸銀溶液噴霧工程と、
前記硝酸銀溶液の噴霧された前記コート層表面に銀化合物及びアンモニア成分を混合してなる銀・アンモニア混合溶液、及び窒素含有化合物を含む窒素含有溶液をそれぞれ独立して噴霧し、前記コート層表面近傍で混合することにより、前記コート層表面に前記銀鏡反応による薄膜状の銀鏡層を形成する銀鏡層形成工程と、
形成された前記銀鏡層の銀鏡層表面に純水を噴射し、前記銀鏡層表面の未反応溶液を洗い流して除去する未反応溶液除去工程と、
前記銀鏡層表面に無機ナトリウム化合物を含有するリンス液を噴霧し、前記コート層表面上の前記銀鏡反応の進行を抑制する銀鏡反応抑制工程と、
前記銀鏡層表面に純水を噴射し、前記銀鏡層表面の前記リンス液を洗い流して除去するリンス液除去工程と、
前記リンス液の洗い流された前記銀鏡層表面にエアーを送出し、前記銀鏡層表面上の水滴及び/または不純物を風圧によって飛散させるエアーブロー工程と、
前記エアーブロー工程後の前記銀鏡層を所定温度で乾燥させる乾燥工程と、
前記銀鏡層表面に樹脂製のトップコート成分を噴霧して硬化させることにより、前記銀鏡層を保護するトップコート層を構築するトップコート層構築工程と
を具備することを特徴とする銀鏡層形成方法。
【請求項2】
前記銀鏡層形成工程は、
前記銀・アンモニア混合溶液を噴霧する第一スプレー部、及び、前記窒素含有溶液を噴霧する第二スプレー部が互いに並設され、同一のタイミングで前記銀・アンモニア混合溶液及び前記窒素含有溶液を噴霧可能なダブルスプレーガンを使用し、
前記第一スプレー部及び前記第二スプレー部のそれぞれの噴霧口近傍に設定された混合領域で、霧状の前記銀・アンモニア混合溶液及び前記窒素含有溶液を混合し、前記コート層表面に噴霧することを特徴とする請求項1に記載の銀鏡層形成方法。
【請求項3】
前記銀鏡層形成工程によって形成される前記銀鏡層は、
前記銀鏡層を構成する銀粒子が前記コート層表面に均一に整列して配され、互いの前記銀粒子の間に前記銀鏡層表面及び前記コート層表面の間を連通する粒子間空隙を有して形成され、
前記トップコート層構築工程によって構築される前記トップコート層は、
樹脂製の前記トップコート成分の少なくとも一部が前記銀鏡層表面から前記粒子間空隙を通過し、前記コート層表面に到達して硬化することにより、前記銀鏡層の前記銀粒子の粒子表面を被覆し、挟み込んで構築されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の銀鏡層形成方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の銀鏡層形成方法を利用して形成された銀鏡層を有する炭素繊維複合材であって、
炭素繊維複合材の複合材表面に構築され、第一塩化スズ溶液によってコート層表面が活性化処理されたアンダーコート層と、
硝酸銀溶液、銀・アンモニア混合溶液、及び窒素含有溶液を利用して前記コート層表面に銀鏡反応によって形成された銀鏡層と、
前記銀鏡層の銀鏡層表面に構築され、前記銀鏡層を保護するトップコート層と
を具備することを特徴とする銀鏡層を有する炭素繊維複合材。
【請求項5】
前記銀鏡層は、
前記コート層表面上に前記銀鏡層を構成する銀粒子が均一に整列して配され、互いの前記銀粒子の間に銀鏡層表面及び前記コート層表面の間を連通する粒子間空隙をさらに具備し、
前記トップコート層は、
樹脂製のトップコート成分の少なくとも一部が前記銀鏡層表面から前記粒子間空隙を通過し、前記コート層表面に到達して硬化することにより、前記銀鏡層の前記銀粒子の粒子表面を被覆し、挟み込んだ状態で前記銀粒子を支持する粒子間空隙充填部をさらに具備することを特徴とする請求項4に記載の銀鏡層を有する炭素繊維複合材。
【請求項6】
ゴルフクラブ、釣り竿、及びテニスラケットの少なくともいずれか一つのレジャー用品に使用されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の銀鏡層を有する炭素繊維複合材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−249671(P2009−249671A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97719(P2008−97719)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(507399276)有限会社レベルコ (1)
【Fターム(参考)】