説明

銅合金微粒子の製造方法

【課題】液相で還元反応を行うことにより、デンドライト化が抑制されたCu−P合金微粒子、及びCu−Sn−P合金微粒子を製造する方法を提供する。
【解決手段】(i)少なくともシアン化第一銅、水溶性リン酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒、又は
(ii)少なくともリン酸第二銅、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒、
を含有する、pHが9〜14の還元反応溶液において、還元反応により銅−リンからなる合金微粒子を析出させることを特徴とする、銅合金微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅−リン合金微粒子、及び銅−錫リン合金微粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルサイズの微粒子は、比表面積が大きく、粒径が小さくなるにつれて融点が除々に低下する機能を有し、新しい形態の物質として近年注目されつつある。このナノメートルサイズの微粒子は、粒子の種類によって、樹脂との複合化のための微粒子表面修飾、薄膜化技術・粒子の配列、機能素子向けの研究開発が行われ、回路配線、インターコネクター、触媒、電池電極、光機能素子、可視光LED素子などへの応用も検討されている。
これらの微粒子の気相合成法として、熱CVD法、プラズマCVD法、静電噴霧CVD法等が知られており(特許文献1、2)、また液相合成法として、噴霧熱分解法、火炎噴霧熱分解法、液相還元法、連続液相合成、噴霧乾燥法等の方法が知られている(特許文献3、4)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−252627号公報
【特許文献2】特開2006−265094号公報
【特許文献3】特開2006−239959号公報
【特許文献4】特開2006−336060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子部品や半導体などの実装接続に用いられるペーストやインクにおいて、多く用いられる金属粒子は、粒子サイズを小さくすると、低温における加熱でも粒子同士の相互焼結が起こり、金属的な導電性が得られるため、実用的にも金属微粒子が用いられるようになってきているが、より低温でのプロセスに適用するためには、粒子の融点が低くなるような合金化を行うことが必要になる。
上記特許文献1ないし4に記載の微粒子の製造方法においては、未だ汎用の銅合金微粒子について、略球状の微粒子を商業的に製造する技術がいまだ確立されていないのが実情である。
また、実装接続に用いるペーストやインクにおいて、均一な粒子分散により均一な接続状態を得るためには、使用する合金粒子の形状が球状でかつ粒子径が小さいことが望まれる。しかし、粉砕法により製造される合金粒子は粒径が大きくなったり、不定形の形状になることが多く、接続状態にばらつきが生じたり、低温で接続温度できないという問題点があった。
本発明は、電解還元又は無電解還元を行うことにより、デンドライト化が抑制された、球状でかつ粒子径が小さい銅−リン合金微粒子、及び銅−錫リン合金微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、液相において従来行われていた電解還元を行う際に、通常使用される光沢剤や光沢補助剤を用いることなく、特定の分散媒を使用して電解還元を行うとデンドロイト化が抑制された銅合金微粒子が効率よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(10)に記載する、銅−リンからなる銅合金微粒子の製造方法(以下、「銅−リン合金微粒子の製造方法」ということがある。)に関する。
(1)(i)少なくともシアン化第一銅、水溶性リン酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒、又は
(ii)少なくともリン酸第二銅、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒、
を含有する、pHが9〜14の還元反応溶液において、還元反応により銅−リンからなる合金微粒子を析出させることを特徴とする、銅合金微粒子の製造方法。
(2)前記水溶性リン酸塩がリン酸二水素カリウム(KHPO)、ピロリン酸カリウム(K)、リン酸第二銅から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、前記(1)に記載の銅合金微粒子の製造方法。
(3)前記アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物がシアン化カリウム又はシアン化ナトリウムである、前記(1)又は(2)に記載の銅合金微粒子の製造方法。
(4)前記(i)少なくともシアン化第一銅、水溶性リン酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒を含有する還元反応溶液中の銅原子とリン原子の原子数の比(Cu/P)が0.1〜0.6である条件で還元反応を行うことを特徴とする、前記(1)ないし(3)のいずれかに記載の銅合金微粒子の製造方法。
(5)前記(ii)少なくともリン酸第二銅、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒を含有する還元反応溶液中の銅原子とリン原子の原子数の比(Cu/P)が0.1〜0.6である条件で還元反応を行うことを特徴とする、前記(1)ないし(3)のいずれかに記載の銅合金微粒子の製造方法。
【0007】
(6)前記分散媒が水溶性の高分子からなる有機物分散媒であって、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、デンプン、及びゼラチンから選択される1種又は2種以上である、前記(1)ないし(5)のいずれかに記載の銅合金微粒子の製造方法。
(7)前記有機物分散媒の還元反応溶液中における濃度が有機物分散媒と銅原子の質量比(有機物分散媒/銅)で0.01〜30である、前記(6)に記載の銅合金微粒子の製造方法。
(8)前記分散媒がハロゲンイオンからなる無機物分散媒であって、該ハロゲンイオンの供給源が塩化水素、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化水素、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化第一銅、臭化第二銅、沃化水素、沃化カリウム、沃化ナトリウム、沃化第一銅、沃化第二銅、フッ化水素、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化第一銅、フッ化第二銅、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化アンモニウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、臭化アンモニウム、沃化カルシウム、沃化バリウム、沃化アンモニウム、及び弗化アンモニウムから選択される1種又は2種以上である、前記(1)ないし(5)のいずれかに記載の銅合金微粒子の製造方法。
(9)前記ハロゲンイオンからなる無機物分散媒の還元反応溶液中における濃度が銅−リン合金微粒子を析出させる場合にはハロゲンイオンのモル数と銅原子と数の比(ハロゲンイオン/銅)が0.25〜100である、前記(8)に記載の銅合金微粒子の製造方法。
(10)前記還元反応による銅−リンからなる合金微粒子の製造方法が、還元反応溶液中に設けられたアノードとカソード間に電圧を印加して還元反応を行うことによりカソード表面付近に銅−リン合金微粒子を析出させる方法である、前記(1)ないし(9)のいずれかに記載の銅合金微粒子の製造方法。
【0008】
また、本発明は、以下の(11)〜(21)に記載する、銅−錫−リンからなる銅合金微粒子の製造方法(以下、「銅−錫−リン合金微粒子の製造方法」ということがある。)に関する。
(11)(iii)少なくともシアン化第一銅、水溶性錫酸塩、水溶性リン酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒、
又は(iv)少なくともリン酸第二銅、水溶性錫酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒、
を含有する、pHが9〜14の還元反応溶液において、還元反応により銅−錫−リンからなる合金微粒子を析出させることを特徴とする、銅合金微粒子の製造方法。
(12)前記水溶性錫酸塩が錫酸ナトリウム三水和物、錫酸銅、及び塩化第二錫から選択された1種、又は2種以上であることを特徴とする、前記(11)に記載の銅合金微粒子の製造方法。
(13)前記水溶性リン酸塩がリン酸二水素カリウム(KHPO)、ピロリン酸カリウム(K)、リン酸第二銅から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、前記(11)に記載の銅合金微粒子の製造方法。
(14)前記アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物がシアン化カリウム又はシアン化ナトリウムである、前記(11)ないし(13)のいずれかに記載の銅合金微粒子の製造方法。
(15)前記(iii)少なくともシアン化第一銅、水溶性リン酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒を含有する還元反応溶液中の銅原子とリン原子の原子数の比(Cu/P)が0.1〜0.6で、錫原子とリン原子の原子数の比(Sn/P)が0.1〜0.4である条件で還元反応を行うことを特徴とする、前記(11)ないし(14)のいずれかに記載の銅合金微粒子の製造方法。
【0009】
(16)前記(iv)少なくともリン酸第二銅、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒を含有する還元反応溶液中の銅原子とリン原子の原子数の比(Cu/P)が0.1〜0.6で、錫原子とリン原子の原子数の比(Cu/P)が0.1〜0.6である条件で還元反応を行うことを特徴とする、前記(11)ないし(14)のいずれかに記載の銅合金微粒子の製造方法。
(17)前記分散媒が水溶性の高分子からなる有機物分散媒であって、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、デンプン、及びゼラチンから選択される1種又は2種以上である、前記(11)ないし(16)のいずれかに記載の銅合金微粒子の製造方法。
(18)有機物分散媒の還元反応溶液中における濃度が有機物分散媒と、銅原子及び錫原子の質量比(有機物分散媒/(銅+錫))で0.01〜30である、
前記(11)ないし(17)のいずれかに記載の銅合金微粒子の製造方法。
(19)前記分散媒がハロゲンイオンからなる無機物分散媒であって、該ハロゲンイオンの供給源が塩化水素、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化水素、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化第一銅、臭化第二銅、沃化水素、沃化カリウム、沃化ナトリウム、沃化第一銅、沃化第二銅、フッ化水素、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化第一銅、フッ化第二銅、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化アンモニウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、臭化アンモニウム、沃化カルシウム、沃化バリウム、沃化アンモニウム、及び弗化アンモニウムから選択される1種又は2種以上である、前記(11)ないし(16)のいずれかに記載の銅合金微粒子の製造方法。
(20)前記ハロゲンイオンからなる無機物分散媒の還元反応溶液中における濃度がハロゲンイオンと、銅原子及び錫原子とのモル比(ハロゲンイオン/(銅+錫))が0.5〜100である、前記(11)ないし(17)、及び(19)のいずれかに記載の銅合金微粒子の製造方法。
(21)前記還元反応による銅−錫リンからなる合金微粒子の製造方法が、還元反応溶液中に設けられたアノードとカソード間に電圧を印加して還元反応を行うことによりカソード表面付近に銅−錫リン合金微粒子を析出させる方法である、前記(11)ないし(20)のいずれかに記載の銅合金微粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
還元反応溶液に有機物分散媒又は無機物分散媒を存在させて電解還元を行うことにより、デンドライト化が抑制された、アスペクト比が小さくかつ一次粒子の平均粒子径が500nm以下である銅−リン、及び銅−錫リンからなる合金微粒子を容易に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の「銅合金微粒子の製造方法」について詳述する。
以下、銅−リン合金を「Cu−P合金」と、銅−錫リン合金を「Cu−Sn−P合金」と記載することがある。
本発明において、還元反応が行われる溶液を還元反応溶液ということがある。本発明において、還元反応溶液は通常水溶液又は親水性の溶液が好適に使用される。
本発明において、還元反応溶液中における銅原子の質量(又はモル数)、錫原子の質量(又はモル数)、及びPイオンのモル数は、以下の記載に基づき求められる。
(i)銅原子の質量(又はモル数)
銅原子の質量(又はモル数)は、還元反応溶液に配合されたすべての銅化合物中の銅原子の質量(又はモル数)である。
(ii)錫原子の質量(又はモル数)
錫原子の質量(又はモル数)、還元反応溶液に配合されたすべての錫化合物中の錫原子の質量(又はモル数)である。
(iii)PO―3イオンのモル数
PO―3イオンのモル数は、還元反応溶液に配合されたピロリン酸塩のすべてのP基のモル数である。
また、本発明の製造方法により製造される銅合金微粒子について記載するアスペクト比は、平均アスペクト比を意味する。
以下に本発明における〔1〕分散媒、〔2〕銅−リン合金微粒子の製造方法、及び〔3〕銅−錫−リン合金微粒子の製造方法について説明する。
【0012】
〔1〕分散媒
本発明において、還元反応溶液に分散剤を添加することにより、デンドライト化が抑制され、アスペクト比が小さくかつ一次粒子の粒子径が500nm以下である銅−リン、及び銅−錫リンからなる合金微粒子を容易に製造することが可能となる。本発明における分散媒として、有機物分散媒、又は無機物分散媒を使用する。本発明において、かかる分散媒の作用のメカニズムは定かではないが、還元反応溶液中において還元反応による合金微粒子の結晶核の生成を助長し、更に生成した結晶を分散させる作用を有するものと推定される。
以下に、有機物分散媒と無機物分散媒について説明する。
(1)有機物分散媒
本発明において、有機物分散媒として、水溶性の高分子化合物を使用することができる、このような水溶性の高分子化合物としてポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン等のアミン系の高分子;ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等のカルボン酸基を有する炭化水素系高分子;ポリアクリルアミド等のアクリルアミド;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、更にはデンプン、ゼラチン等が例示できる。
【0013】
上記例示した水溶性の高分子化合物の具体例として、ポリエチレンイミン(分子量:100〜100,000)、ポリビニルピロリドン(分子量:1000〜500、000)、カルボキシメチルセルロース(ヒドロキシル基Na塩のカルボキシメチル基への置換度:0.4以上、分子量:1000〜100,000)、ポリアクリルアミド(分子量:100〜6,000,000)、ポリビニルアルコール(分子量:1000〜100,000)、ポリエチレングリコール(分子量:100〜50,000)、ポリエチレンオキシド(分子量:50,000〜900,000)、ゼラチン(平均分子量:61,000〜67,000)、水溶性のデンプン等が挙げられる。上記かっこ内に示す範囲にある数平均分子量の高分子化合物は水溶性を有するので、本発明の有機物分散媒として好適に使用できる。尚、これらの有機物分散媒は、2種以上を混合して使用することもできる。
有機物分散媒の還元反応溶液中における濃度が銅−リン合金微粒子を析出させる場合、有機物分散媒と銅原子との質量比(有機物分散媒/銅)は好ましくは0.01〜30、より好ましくは0.5〜10である。該比が前記0.01未満では、還元反応が著しく遅くなり、前記30を超えると添加効果がかえって減少する。
還元反応溶液中から、銅−リン合金微粒子を析出させる場合、有機物分散媒と、銅原子との質量比(有機物分散媒/銅)は、好ましくは0.01〜30、より好ましくは0.5〜10であり、銅−錫−リン合金微粒子を析出させる場合、有機物分散媒と、銅原子及び錫原子との質量比(有機物分散媒/(銅+錫))は、好ましくは0.01〜30、より好ましくは0.5〜10である。
該比が前記0.01未満では、還元反応が著しく遅くなり、30を超えると添加効果がなくなる。
【0014】
(2)無機物分散媒
本発明において、無機物分散媒として、ハロゲンイオンからなる分散媒が使用できる。分散媒としてのハロゲンイオンの供給源は、塩化水素、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化水素、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化第一銅、臭化第二銅、沃化水素、沃化カリウム、沃化ナトリウム、沃化第一銅、沃化第二銅、フッ化水素、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化第一銅、フッ化第二銅、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化アンモニウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、臭化アンモニウム、沃化カルシウム、沃化バリウム、沃化アンモニウム、及び弗化アンモニウムから選ばれる1種以上が挙げられる。これらは、2種以上を混合して使用することもできる。
【0015】
Cu−P合金微粒子を析出させる場合、前記還元反応溶液中におけるハロゲンイオンのモル数と銅原子数との比([ハロゲンイオン]/銅)は好ましくは0.25〜100、より好ましくは0.5〜20である。該モル比が前記0.25未満では、添加効果が少なく、一方、前記100を超えると還元反応が遅くなり好ましくない。
また、Cu−Sn−P合金微粒子を析出させる場合、前記還元反応溶液中におけるハロゲンイオンのモル数と、銅原子及び錫原子数との比(ハロゲンイオン/(銅+錫))は好ましくは0.5〜100、より好ましくは0.5〜20である。該モル比が前記0.5未満では、添加効果が少なく、前記100を超えると還元反応が遅くなり好ましくない。
尚、ハロゲンイオンの供給源となる化合物は、少なくとも該ハロゲンイオンがイオン結合をしている化合物が好ましく、還元反応溶液中における上記ハロゲンイオン量はイオン結合をしているハロゲンの量である。
【0016】
〔2〕銅−リン合金微粒子の製造方法
本発明の「銅−リン合金微粒子の製造方法」は、
(i)少なくともシアン化第一銅、水溶性リン酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒、又は
(ii)少なくともリン酸第二銅、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒、
を含有する、pHが9〜14の還元反応溶液において、還元反応により銅−リンからなる合金微粒子を析出させることを特徴とする。
以下還元反応により、銅−リン合金微粒子を析出する際の銅の供給源として、(1)シアン化第一銅を用いる場合(以下、第1の態様ということがある)、及び(2)リン酸第二銅をそれぞれ用いる場合(以下、第2の態様ということがある)、及び(3)還元方法について説明する。
【0017】
(1)第1の態様の「銅−リン合金微粒子の製造」にシアン化第一銅を用いる場合
第1の態様における還元反応は、少なくともシアン化第一銅、水溶性リン酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒を含有する、pHが9〜14の還元反応溶液において、還元反応により銅−リンからなる合金微粒子を析出させることを特徴とする。
(i)還元反応溶液の成分
第1の態様における還元反応溶液の必須成分は、シアン化第一銅、水溶性リン酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒である。
シアン化第一銅は、銅−リン合金微粒子中の銅成分の供給源となる材料であり、還元反応溶液中でイオン結合した状態で存在する。又、水溶性リン酸塩は、銅−リン合金微粒子中のリン成分の供給源となる材料であり、還元反応溶液中で解離してイオン結合した状態で存在する。該水溶性リン酸塩としては、還元反応溶液中でイオン結合した状態で存在するものであれば、広く使用でき、リン酸二水素カリウム(KHPO)、ピロリン酸カリウム(K)、リン酸第二銅等が例示できるがこれらを1種又は2種以上混合して使用することもできる。
アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物は、還元反応溶液中で解離しての存在し、pHをアルカリ性に調整する機能を有するものであり、具体例としては、メッキ液等に広く使用されている、シアン化カリウム、シアン化ナトリウム等が例示される。
分散媒は、前述した通り、還元反応溶液中に存在させて還元反応により、銅−リン合金を微粒子として析出させる作用を有するものである。
尚、還元反応溶液中に本発明の分散材を存在させないで、通常メッキ液に添加される光沢剤(アミン誘導体とエピハロヒドリンとのモル比1:1の反応生成物等)や光沢補助剤(パラホルムアルデヒド等のアルデヒド誘導体)を添加すると、銅−リン合金は電極表面に膜状に析出し、微粒子状態では析出しなくなる。
【0018】
(ii)還元反応溶液の組成
第1の態様において、還元反応によりCu−Pからなる合金微粒子を析出するための還元反応溶液には、例えば、シアン化第一銅が5〜40g/L(リットル)(0.055〜0.447モル/L)、水溶性リン酸塩としてリン酸第二銅5〜30g/L(0.013〜0.079モル/L)又はピロリン酸第二銅5〜80g/L(0.017〜0.266モル/L)、pH調整等の機能を有するアルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物が0.5〜2モル/L、それぞれ含有する水溶液を使用することができる。
第1の態様において、還元反応溶液中の銅原子とリン原子の原子数の比(Cu/P)は、好ましくは0.1〜0.6、より好ましくは0.3〜0.5である。
【0019】
(2)第2の態様の「銅−リン合金微粒子の製造」にリン酸第二銅を用いる場合
第1の態様における還元反応は、少なくともリン酸第二銅、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒を含有する、pHが9〜14の還元反応溶液において、還元反応により銅−リンからなる合金微粒子を析出させることを特徴とする。
(i)還元反応溶液の成分
第2の態様における還元反応溶液の必須成分は、リン酸第二銅、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒である。
リン酸第二銅は、銅−リン合金微粒子中の銅成分とリン成分の供給源となる材料であり、還元反応溶液中で解離してイオン結合した状態で存在する。第2の態様において、銅−リン合金のリン原子の供給源のリン化合物として、水溶性リン酸塩、例えば、リン酸二水素カリウム(KHPO)、ピロリン酸カリウム(K)等を添加することができる。
アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、及び分散媒については、第1の態様に記載したと同様である。
(ii)還元反応溶液の組成
第2の態様において、還元反応によりCu−Pからなる合金微粒子を析出するための還元反応溶液には、例えば、リン酸第二銅が5〜30g/L(リットル)(0.013〜0.079モル/L)、pH調整等の機能を有するアルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化が0.5〜2モル/L、それぞれ含有する水溶液を使用することができる。
第2の態様において、還元反応溶液中の銅原子とP原子の原子数の比(Cu/P)は、好ましくは0.1〜0.6、より好ましくは0.3〜0.5である。尚、前記水溶性リン酸塩を添加して、銅原子とリン原子の原子数の比(Cu/P)の調整を行なうことは可能である。
【0020】
(3)還元方法について
第1及び2の態様における「銅−リン合金微粒子の製造」における還元反応は、電解還元反応により行われるのが望ましい。以下に電解還元反応による「銅−リン合金微粒子の製造」について記載する。
(i)電極(陽極と陰極)材料等
陰極は、白金、カーボン等が好ましく、陽極は、Cu、Cu−Sn合金、Cu−Sn―P合金、カーボン、白金等が好ましい。尚、陰極表面付近に析出した粒子を脱離、回収するために陰極に超音波振動等の揺動を与えることが可能な構造とすることもできる。
(ii)電解還元反応
電解還元反応のpHは、好ましくは弱アルカリ性域の9〜14、より好ましくは9.5〜13.5の範囲に調整する。pHが9未満では還元反応による銅−リン合金が析出するのを妨げるなどの悪影響を与える場合があり、pHが14を超えると電流密度範囲が狭くなり、電流効率が低下する場合がある。
電流密度は好ましくは0.3〜10A/dm2 、より好ましくは0.5〜6A/dm2 程度である。還元温度は、10〜70℃が好ましく、高温になるほど還元反応速度は速くなり、低温になるほど析出する粒子の粒径は小さくなる傾向がある。
【0021】
(iii)電解溶液からの銅合金(Cu−P合金)微粒子の回収
電解還元反応終了後に、電極の洗浄等により電極表面に付着したCu−P合金微粒子を回収する。回収方法としては、電極に逆電流を流し、電極表面に付着した微粒子を脱離させ、沈殿物を回収することも可能である。また上記したように、陰極に超音波振動等の揺動を与える回収を行うこともできる。
かくして得られるCu−P合金微粒子は、デンドライト化が抑制される結果、アスペクト比の比較的小さい略球状である。また、得られる粒子には、不純物として含まれる酸化物はCuO及び/又はCuOとして5質量%程度以下である。
【0022】
〔3〕銅−錫−リン合金微粒子の製造方法
本発明の「銅−錫−リン合金微粒子の製造方法」は、
(iii)少なくともシアン化第一銅、水溶性錫酸塩、水溶性リン酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒、
又は(iv)少なくともリン酸第二銅、水溶性錫酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒、
を含有する、pHが9〜14の還元反応溶液において、還元反応により銅−錫−リンからなる合金微粒子を析出させることを特徴とする。
以下還元反応により、銅−錫−リン合金微粒子を析出する際の銅の供給源として、(1)シアン化第一銅を用いる場合(以下、第3の態様ということがある)、及び(2)リン酸第二銅をそれぞれ用いる場合(以下、第4の態様ということがある)、及び(3)還元方法について説明する。
【0023】
(1)第3の態様の「銅−錫−リン合金微粒子の製造」にシアン化第一銅を用いる場合
第3の態様の「銅−錫−リン合金微粒子の製造」は、(iii)少なくともシアン化第一銅、水溶性錫酸塩、水溶性リン酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒を含有する、pHが9〜14の還元反応溶液において、還元反応により銅−錫−リンからなる合金微粒子を析出させることを特徴とする。
(i)還元反応溶液の成分
第3の態様における還元反応溶液の必須成分は、シアン化第一銅、水溶性錫酸塩、水溶性リン酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒である。
該水溶性錫酸塩としては、錫酸ナトリウム三水和物、錫酸銅、塩化第二錫等が例示でき、これらから選択された1種、又は2種以上を使用することができる。
水溶性錫酸塩以外の他の成分であるシアン化第一銅、水溶性リン酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒に付いては、第1の態様における還元反応溶液の必須成分として記載したのと同様であるが(Cu/P)原子数比、及び(Sn/P)原子数比を調整するために、ピロリン酸第2銅、ピロリン酸第1錫、アルカリ金属ピロリン酸塩及び/又はアルカリ土類金属ピロリン酸塩等を添加することができる。
【0024】
(ii)還元反応溶液の組成
第3の態様において、還元反応によりCu−Sn−Pからなる合金微粒子を析出するための還元反応溶液には、例えば、シアン化第一銅が5〜40g/L(0.055〜0.447モル/L)、水溶性錫酸塩5〜30g/L(0.021〜0.128モル/L)、水溶性リン酸塩としてリン酸第二銅5〜30g/L(0.013〜0.079モル/L)又はピロリン酸第二銅5〜80g/L(0.017〜0.266モル/L)、pH調整等の機能を有するアルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物が0.5〜2.0モル/L、それぞれ含有する水溶液を使用することができる。
還元反応溶液の組成は、例えばアルカリ金属等ピロリン酸塩等配合することにより、銅原子とP原子の原子数比(Cu/P)を好ましくは0.1〜0.6、より好ましくは0.1〜0.3に、また錫原子とリン原子の原子数モル比(Sn/P)を好ましくは0.1〜0.6、より好ましくは0.1〜0.4に調整することが望ましい。
【0025】
(2)第4の態様の「銅−錫−リン合金微粒子の製造」にリン酸第二銅を用いる場合
第4の態様の「銅−錫−リン合金微粒子の製造」は、(iv)少なくともリン酸第二銅、水溶性錫酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒を含有する、pHが9〜14の還元反応溶液において、還元反応により銅−錫−リンからなる合金微粒子を析出させることを特徴とする。
(i)還元反応溶液の成分
第4の態様における還元反応溶液の必須成分は、リン酸第二銅、水溶性錫酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒である。
リン酸第二銅は、銅−錫−リン合金微粒子中の銅成分とリン成分の供給源となる材料であり、還元反応溶液中で解離してイオン結合した状態で存在する。水溶性錫酸塩は、銅−錫−リン合金微粒子中の錫成分の供給源となる材料であり、還元反応溶液中で解離してイオン結合した状態で存在する。
また、第2の態様に記載したと同様に銅−リン合金のリン原子の供給源のリン化合物として、水溶性リン酸塩、例えば、リン酸二水素カリウム(KHPO)、ピロリン酸カリウム(K)等を添加することができる。
アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、及び分散媒については、第3の態様に記載したと同様である。
【0026】
(ii)還元反応溶液の組成
第4の態様において、還元反応によりCu−Sn−Pからなる合金微粒子を析出するための還元反応溶液には、例えば、リン酸第二銅が5〜30g/L(0.013〜0.079モル/L)、水溶性錫酸塩が1〜10g/L(0.004〜0.043モル/L)、pH調整等の機能を有するアルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物が0.5〜2.0モル/L、それぞれ含有する水溶液を使用することができる。
第4の態様において、還元反応溶液中の銅原子とリン原子の原子数の比(Cu/P)は、好ましくは0.1〜0.6、より好ましくは0.3〜0.5である。尚、前記水溶性リン酸塩を添加して、銅原子とリン原子の原子数の比(Cu/P)の調整を行なうことは可能である。
また、同様に、錫原子とリン原子の原子数の比(Sn/P)を好ましくは0.1〜0.6、より好ましくは0.1〜0.4に調整することが望ましい。
【0027】
(3)還元方法について
第3及び4の態様における「銅−錫−リン合金微粒子の製造」における還元反応は、電解還元反応により行われるのが望ましい。以下に電解還元反応による「銅−錫−リン合金微粒子の製造」について記載する。
(i)電極(陽極と陰極)材料等
陰極は、白金、カーボン等が好ましく、陽極は、Cu、Cu−Sn―P合金、カーボン、白金等が好ましい。尚、陰極表面付近に析出した粒子を脱離、回収するために陰極に超音波振動等の揺動を与えることが可能な構造とすることもできる。
(ii)電解還元反応
電解還元反応のpHは、好ましくは弱アルカリ性域の9〜14、より好ましくは9.5〜13.5の範囲に調整する。pHが9未満では還元反応による粒子の沈降が進行するのを妨げるなどの悪影響を与える場合があり、pHが14を超えると電流密度範囲が狭くなり、電流効率が低下する場合がある。尚、pHの調整は次亜リン酸アルカリ金属塩等の添加により行うことができる。
電流密度は好ましくは0.3〜10A/dm2 、より好ましくは0.5〜6A/dm2 程度である。還元温度は、10〜70℃が好ましく、高温になるほど還元反応速度は速くなり、低温になるほど析出する粒子の粒径は小さくなる傾向がある。
【0028】
(iii)電解溶液からの銅合金(Cu−Sn−P合金、)微粒子の回収
上記第1の態様に記載したと同様である。
かくして得られるCu−Sn−P合金微粒子は、デンドライト化が抑制されて一次粒子の平均粒径が好ましくは1〜500nmの範囲、より好ましくは1〜80nmの範囲、特に好ましくは1〜50nmの範囲であり、アスペクト比が好ましくは10以下、より好ましくは5以下、特に好ましくは2以下の略球状のものである。
また、得られる粒子には、不純物として含まれる酸化物はCuO及び/又はCuOとして5質量%以下、酸化錫が5質量%以下それぞれ酸化物として含まれる。
【実施例】
【0029】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
電解還元法によりCu−P合金微粒子を調製して、得られた微粒子の評価を行った。
(1)Cu−P合金微粒子の調製
シアン化第一銅0.051モル/L、リン酸二水素カリウム0.123モル/L、シアン化カリウム1.6モル/L、有機物分散媒としてポリビニルピロリドン(数平均分子量:3500)10g/Lを含有する1000mlの還元反応溶液を調製した。
尚、この溶液中の銅原子とP原子の原子数の比(Cu/P)は0.4であり、pHは13であった。
次にこの溶液中で2cm四方の銅シートからなる陽極(アノード電極)と、白金基板からなる陰極(カソード電極)間を浴温65℃で、白金基板からなる陽極(アノード電極)と陰極(カソード電極)を用いて陰極電流密度 5A/dm2 で30分間通電を行った。得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去して、Cu―P合金微粒子を得た。
(2)生成したCu―P合金微粒子の評価
Cu―P合金微粒子について、透過電子顕微鏡(TEM)による観測結果、粒径は5〜50nmの範囲で、アスペクト比は1.5であった。また、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)による分析結果、合金組成は、銅91質量%、燐9質量%の合金(以下、Cu−9%P合金のように表示することがある。)であった。
【0030】
[実施例2]
電解還元法によりCu−Sn−P合金微粒子を調製して、得られた微粒子の評価を行った。
(1)Cu−Sn−P合金微粒子の調製
シアン化第一銅0.051モル/L、リン酸二水素カリウム0.123モル/L、錫酸ナトリウム三水和物0.049モル/L、シアン化カリウム0.160モル/L、有機物分散媒としてポリビニルピロリドン(数平均分子量:3500)10g/Lを含有する1000mlの還元反応溶液を調製した。
尚、この溶液中の銅原子とリン原子の原子数の比(Cu/P)は0.4、錫原子とリン原子の原子数の比(Sn/P)は0.4、pHは13であった。
次にこの溶液中で2cm四方の銅シートからなる陽極(アノード電極)と、白金基板からなる陰極(カソード電極)間を浴温65℃で、白金基板からなる陽極(アノード電極)と陰極(カソード電極)を用いて陰極電流密度3A/dm2 で30分間通電を行った。得られたコロイド溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、溶媒を乾燥除去して、Cu―Sn−P合金微粒子を得た。
(2)生成したCu―Sn−P合金微粒子の評価
Cu―Sn−P合金微粒子について、透過電子顕微鏡(TEM)による観測結果、粒径は5〜50nmの範囲で、アスペクト比は1.5であった。また、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)による分析結果、合金組成は、銅が26%、燐が4%、錫が69%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくともシアン化第一銅、水溶性リン酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒、又は
(ii)少なくともリン酸第二銅、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒、
を含有する、pHが9〜14の還元反応溶液において、還元反応により銅−リンからなる合金微粒子を析出させることを特徴とする、銅合金微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記水溶性リン酸塩がリン酸二水素カリウム(KHPO)、ピロリン酸カリウム(K)、リン酸第二銅から選択される1種又は2種であることを特徴とする、請求項1に記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物がシアン化カリウム又はシアン化ナトリウムである、請求項1又は2に記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記(i)少なくともシアン化第一銅、水溶性リン酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒を含有する還元反応溶液中の銅原子とリン原子の原子数の比(Cu/P)が0.1〜0.6である条件で還元反応を行うことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記(ii)少なくともリン酸第二銅、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒を含有する還元反応溶液中の銅原子とリン原子の原子数の比(Cu/P)が0.1〜0.6である条件で還元反応を行うことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記分散媒が水溶性の高分子からなる有機物分散媒であって、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、デンプン、及びゼラチンから選択される1種又は2種以上である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記有機物分散媒の還元反応溶液中における濃度が有機物分散媒と銅原子の質量比([有機物分散媒/銅])で0.01〜30である、請求項6に記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記分散媒がハロゲンイオンからなる無機物分散媒であって、該ハロゲンイオンの供給源が塩化水素、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化水素、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化第一銅、臭化第二銅、沃化水素、沃化カリウム、沃化ナトリウム、沃化第一銅、沃化第二銅、フッ化水素、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化第一銅、フッ化第二銅、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化アンモニウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、臭化アンモニウム、沃化カルシウム、沃化バリウム、沃化アンモニウム、及び弗化アンモニウムから選択される1種又は2種以上である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記ハロゲンイオンからなる無機物分散媒の還元反応溶液中における濃度が銅−リン合金微粒子を析出させる場合にはハロゲンイオンのモル数と銅原子の比(ハロゲンイオン/銅)が0.25〜100である、請求項8に記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記還元反応による銅−リンからなる銅合金微粒子の製造方法が、還元反応溶液中に設けられたアノードとカソード間に電圧を印加して還元反応を行うことによりカソード表面付近に銅−リン合金微粒子を析出させる方法である、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項11】
(iii)少なくともシアン化第一銅、水溶性錫酸塩、水溶性リン酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒、
又は(iv)少なくともリン酸第二銅、水溶性錫酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒、
を含有する、pHが9〜14の還元反応溶液において、還元反応により銅−錫−リンからなる合金微粒子を析出させることを特徴とする、銅合金微粒子の製造方法。
【請求項12】
前記水溶性錫酸塩が錫酸ナトリウム三水和物、錫酸銅、及び塩化第二錫から選択された1種、又は2種以上であることを特徴とする、請求項11記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項13】
前記水溶性リン酸塩がリン酸二水素カリウム(KHPO)、ピロリン酸カリウム(K)、リン酸第二銅から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項11記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項14】
前記アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物がシアン化カリウム又はシアン化ナトリウムである、請求項11ないし13のいずれか1項に記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項15】
前記(iii)少なくともシアン化第一銅、水溶性リン酸塩、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒を含有する還元反応溶液中の銅原子とリン原子の原子数の比(Cu/P)が0.1〜0.6で、錫原子とリン原子の原子数の比(Sn/P)モル比が0.1〜0.4である条件で還元反応を行うことを特徴とする、請求項11ないし14のいずれか1項に記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項16】
前記(iv)少なくともリン酸第二銅、アルカリ金属シアン化物及び/もしくはアルカリ土類金属シアン化物、並びに分散媒を含有する還元反応溶液中の銅原子とリン原子の原子数の比(Cu/P)が0.1〜0.6で、錫原子とリン原子の原子数の比(Sn/P)が0.1〜0.6である条件で還元反応を行うことを特徴とする、請求項11ないし14のいずれか1項に記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項17】
前記分散媒が水溶性の高分子からなる有機物分散媒であって、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、デンプン、及びゼラチンから選択される1種又は2種以上である、請求項11ないし16のいずれか1項に記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項18】
有機物分散媒の還元反応溶液中における濃度が有機物分散媒と、銅原子及び錫原子の質量比(有機物分散媒/(銅+錫))で0.01〜30である、
請求項11ないし17のいずれか1項に記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項19】
前記分散媒がハロゲンイオンからなる無機物分散媒であって、該ハロゲンイオンの供給源が塩化水素、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化水素、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化第一銅、臭化第二銅、沃化水素、沃化カリウム、沃化ナトリウム、沃化第一銅、沃化第二銅、フッ化水素、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化第一銅、フッ化第二銅、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化アンモニウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、臭化アンモニウム、沃化カルシウム、沃化バリウム、沃化アンモニウム、及び弗化アンモニウムから選択される1種又は2種以上である、請求項11ないし16のいずれか1項に記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項20】
前記ハロゲンイオンからなる無機物分散媒の還元反応溶液中における濃度がハロゲンイオンのモル数と、銅原子及び錫原子の原子数の比(ハロゲンイオン/(銅+錫))が0.5〜100である、請求項11ないし17、及び19のいずれか1項に記載の銅合金微粒子の製造方法。
【請求項21】
前記還元反応による銅−錫リンからなる合金微粒子の製造方法が、還元反応溶液中に設けられたアノードとカソード間に電圧を印加して還元反応を行うことによりカソード表面付近に銅−錫リン合金微粒子を析出させる方法である、請求項11ないし20のいずれか1項に記載の銅合金微粒子の製造方法。

【公開番号】特開2010−90443(P2010−90443A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262281(P2008−262281)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】