説明

銅含有材料用エッチング剤組成物及び銅含有材料のエッチング方法

【課題】形状不良なしに微細なパターンを形成し得る含有材料用エッチング剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、(A)第二銅イオン及び第二鉄イオンから選択される少なくとも1つの酸化剤成分0.1〜15質量%、(B)塩化水素0.1〜20質量%、及び(C)下記一般式:
R−O−X−H (1)
(式中、Rは炭素数8〜18のアルキル基を表し、Xはエチレンオキサイドユニット及びプロピレンオキサイドユニットがランダム又はブロック状に重合したポリアルキレンオキサイド基を表す)で表され、且つ数平均分子量が500〜1,500であるノニオン性界面活性剤0.001〜5質量%を含む水溶液からなることを特徴とする銅含有材料用エッチング剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅含有材料用エッチング剤組成物及び銅含有材料のエッチング方法に関し、詳細には、微細な回路パターン(回路配線)を形状不良なく形成し得る銅含有材料用エッチング剤組成物及び銅含有材料のエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に回路配線を形成したプリント配線板(或いはフィルム)が、電子部品や半導体素子等を実装するために広く用いられている。そして、近年の電子機器の小型化及び高機能化の要求に伴い、プリント配線板(或いはフィルム)の回路配線についても高密度化及び薄型化が望まれている。
高密度の回路配線を製造する方法としては、サブトラクティブ法、セミアディティブ法と呼ばれる方法が知られている。一般的にサブトラクティブ法は、ウエットエッチングによる回路形成方法であるため、工程が少なく低コストであるが、微細な回路パターンの形成には不向きと言われている。
【0003】
微細な回路配線を形成するためには、エッチング部分の残膜がないこと、上部からみた配線の側面が直線となること(直線性)、回路配線の断面が矩形となること、高いエッチングファクターを示す(回路配線上部幅と配線下部幅の差が小さい)ことが理想であるが、実際には、残膜、直線性の乱れ、サイドエッチング、アンダーカット、及び配線上部幅の細り等の形状不良が起こる。そのため、ウエットエッチングにおいて、生産性を維持しつつ、これらの形状不良を抑制することが望まれている。
【0004】
上記のような回路配線の形状不良については、エッチング剤組成物の成分を工夫することで改良する技術が種々報告されている。
例えば、特許文献1には、銅の酸化剤、塩酸及び有機酸塩からなる群より選ばれる酸、ポリアルキレングリコール及びポリアミンとポリアルキレングリコールとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体を含有する水溶液からなり、サイドエッチ、回路配線上部が細くなることを抑制した銅又は銅合金のエッチング液が開示されている。ここで、銅の酸化剤としては第二銅イオン及び第二鉄イオンが開示されており、第二銅イオンを生じさせる化合物としては塩化銅(II)、臭化銅(II)及び水酸化銅(II)、第二鉄イオンを発生させる化合物としては塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、ヨウ化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)及び酢酸鉄(III)が開示されている。また、ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体が開示されており、ポリアミンとポリアルキレングリコールとの共重合体としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N−エチルエチレンジアミンのポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、酸化性金属イオン源、無機酸又は有機酸から選ばれる酸、環内にある異原子として窒素原子のみを有するアゾール、グリコール及びグリコールエーテルから選ばれる少なくとも1つを含有する水溶液からなり、アンダーカットを抑制したエッチング剤が開示されている。ここで、酸化性金属イオン源としては第二銅イオンや第二鉄イオンが開示されており、酸としては塩酸が開示されている。また、エッチング剤に添加し得る界面活性剤として、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩及びアルキルリン酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックポリマー等のノニオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン及びラウリルヒドロキシスルホベタイン等のベタイン、アミノカルボン酸等の両性界面活性剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−256901号公報
【特許文献2】特開2005−330572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に開示されたエッチング剤組成物は、微細な回路パターンに充分に対応できるエッチング性能が得られないという問題がある。特に、除去される銅のエッチングスペース(線間、ギャップ)が狭いパターン(例えば、10μm〜60μm)を形成する場合に、回路パターンの形状不良が生じてしまう。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、形状不良なしに微細なパターンを形成し得る含有材料用エッチング剤組成物及び銅含有材料のエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、エッチング剤組成物の組成が微細な回路パターンの形成と密接に関連しており、特定の組成を有するエッチング剤組成物及びこれを用いてエッチングすることで、上記問題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、(A)第二銅イオン及び第二鉄イオンから選択される少なくとも1つの酸化剤成分0.1〜15質量%、(B)塩化水素0.1〜20質量%、及び(C)下記一般式:
R−O−X−H (1)
(式中、Rは炭素数8〜18のアルキル基を表し、Xはエチレンオキサイドユニット及びプロピレンオキサイドユニットがランダム又はブロック状に重合したポリアルキレンオキサイド基を表す)で表され、且つ数平均分子量が500〜1,500であるノニオン性界面活性剤0.001〜5質量%を含む水溶液からなることを特徴とする銅含有材料用エッチング剤組成物である。
また、本発明は、厚さ10〜40μm及びエッチングスペース10〜60μmの銅含有材料のパターニングにおいて、上記のエッチング剤組成物を使用することを特徴とする銅含有材料のエッチング方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、形状不良なしに微細なパターンを形成し得る含有材料用エッチング剤組成物及び銅含有材料のエッチング方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の銅含有材料用エッチング剤組成物(以下、エッチング剤組成物という)は、(A)第二銅イオン及び第二鉄イオンから選択される少なくとも1つの酸化剤成分(以下、(A)成分という)、(B)塩化水素(以下、(B)成分という)、及び(C)特定のノニオン性界面活性剤(以下、(C)成分という)を含む水溶液からなる。
(A)成分は、銅含有材料を酸化させてエッチングを行う機能を有する成分であり、第二銅イオン、第二鉄イオン、又は第二銅イオンと第二鉄イオンとの混合物を用いることができる。これらは、通常、銅や銅(II)化合物及び/又は鉄(III)化合物を供給源として配合することができる。銅(II)化合物としては、塩化第二銅、臭化第二銅、硫酸第二銅、水酸化第二銅及び酢酸第二銅が挙げられ、鉄(III)化合物としては、塩化第二鉄、臭化第二鉄、ヨウ化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄及び酢酸第二鉄等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、コスト、エッチング剤組成物の安定性、エッチング速度の制御性の面において、銅、塩化第二銅、硫酸第二銅及び塩化第二鉄が好ましく、塩化第二鉄がより好ましい。
【0013】
エッチング剤組成物における(A)成分の含有量は、第二銅イオン及び/又は第二鉄イオン換算で0.1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%である。(A)成分の含有量が0.1質量%よりも少ないと、エッチング時間が長くなり、レジストが劣化したり、生産性が低下する。また、サブトラクティブ法においては、銅裏面のNi−Crシード層のエッチング効果が低下するため、銅の残膜除去性が悪くなる。一方、(A)成分の含有量が15質量%よりも多いと、エッチング速度を制御できなくなり、エッチングファクターが悪化する。
【0014】
また、第二鉄イオンと共に第二銅イオンを用いれば、エッチング剤組成物の酸化還元電位、比重、酸濃度、銅濃度等を制御し、エッチング剤組成物のエッチング能力を自動制御することができる。この場合の第二銅イオンの含有量は、銅イオン換算で0.5〜10質量%、好ましくは1〜10質量%である。第二銅イオンの含有量が0.5質量%よりも少ないと充分な使用効果が得られないことがある。一方、第二銅イオンの含有量が10質量%よりも多いと、エッチング剤組成物中にスラッジが発生してしまうことがある。
【0015】
(B)成分は、エッチングされる銅含有材料表面の銅酸化膜や銅塩化物を除去する機能、酸化剤を安定化させる機能、及び銅含有材料に対するレベリング性を向上させる機能を有し、エッチングを促進する成分である。
エッチング剤組成物における(B)成分の含有量は、0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。(B)成分の含有量が0.1質量%よりも少ないと、充分な使用効果を得ることができない。一方、(B)成分の含有量が20質量%よりも多いと、エッチングが過剰となって、エッチング速度の制御ができなくなったり、回路配線の形状不良が生じてしまう。
【0016】
(C)成分は、エッチング剤組成物の回路パターンへの浸透性を向上させ、回路パターンの周りのエッチング剤組成物の滞留を低減させることにより、良好な回路形状を付与する効果を有する成分である。また、(C)成分は、銅含有材料に対して錯体化や配位等の過度の親和性を示さないので、エッチングの速度低下等の生産性の悪化をもたらさない。
【0017】
(C)成分は、下記の一般式(1)により表される。
R−O−X−H (1)
上記式(1)中、Rは、炭素数8〜18のアルキル基であり、直鎖でもよく、分岐鎖を有していてもよい。また、Xは、エチレンオキサイドユニット(−CH−CH−O−)及びプロピレンオキサイドユニット(−CRH−CRH−O−(RとRは、一方が水素原子で他方がメチル基))がランダム又はブロック状に重合したポリアルキレンオキサイド基である。ここで、ポリアルキレンオキサイド基中のエチレンオキサイドユニットに対するプロピレンオキサイドユニットの数の比は、0.1〜1であることが好ましい。当該比が1よりも大きいと、充分な直線性及びエッチングファクターが得られないことがある。一方、当該比が0.1よりも小さいと、充分なエッチングファクターが得られないことがある。当該比の好ましい範囲は0.25〜0.5であり、この範囲であれば、配線上部幅の細りを抑制する効果が顕著となり、配線上部幅と配線下部幅の差が小さなエッチングを与えることができる。
【0018】
(C)成分のノニオン性界面活性剤は、通常、天然又は合成アルコール、エチレンオキサイド、及びプロピレンオキサイドを原料として製造することができる。上記式(1)中のRは、天然又は合成アルコールから導入される基である。当該アルコールとしては、オクタノール、2−エチルヘキサノール、2級オクタノール、イソオクタノール、第三オクタノール、ノナノール、イソノナノール、2級ノナノール、デカノール、2級デカノール、ウンデカノール、2級ウンデカノール、ドデカノール、2級ドデカノール、トリデカノール、イソトリデカノール、2級トリデカノール、テトラデカノール、2級テトラデカノール、ヘキサデカノール、2級ヘキサデカノール、ステアリルアルコール及びイソステアリルアルコール等が挙げられる。Rは一種類でもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
(C)成分のノニオン性界面活性剤の製造方法は、当該技術分野において公知であり、公知の方法に準じて製造することができ、市販のものを用いてもよい。
【0019】
(C)成分の数平均分子量は、500〜1,500である。数平均分子量が500よりも少ないと、充分な直線性及びエッチングファクターが得られない。一方、数平均分子量が1,500よりも多いと、充分なエッチングファクターが得られない。数平均分子量の好ましい範囲は700〜1,000であり、この範囲であれば、配線上部幅の細りを抑制する効果が顕著となり、配線上部幅と配線下部幅との差が小さなエッチングを与えることができる。
【0020】
(C)成分は、エッチング剤組成物中の含有量を多くすると、エッチングファクターの向上や直線性の向上等によって回路形状が良化する傾向にある反面、エッチングの速度が低下し、生産性が低下する傾向にある。そのため、エッチング剤組成物における(C)成分の含有量は、0.001〜5質量%、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.05〜1質量%である。(C)成分の含有量が5質量%よりも多いと、回路形状の良化の大幅な向上は得られず、生産性低下のデメリットが大きくなる。一方、(C)成分の含有量が0.001質量%よりも少ないと、充分な使用効果が得られない。
【0021】
本発明のエッチング剤組成物には、本発明の効果を阻害することのない範囲で、上記で説明した必須成分(A)〜(C)以外に当該用途に使用される周知の任意成分を配合することができる。任意成分としては、(B)成分以外の無機酸、有機酸、グリコールエーテル類化合物、(C)成分以外の界面活性剤、アミノ酸類化合物、アゾール類化合物、ピリミジン類化合物、チオ尿素類化合物、アミン類化合物、アルキルピロリドン類化合物、有機キレート剤化合物、ポリアクリルアミド類化合物、過酸化水素、過酸塩、無機塩、第一銅イオン、及び第一鉄イオンが挙げられる。これらの任意成分を使用する場合の濃度は、一般的に0.001質量%〜10質量%の範囲である。
【0022】
(B)成分以外の無機酸としては、例えば、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、スルファミン酸、ニコチン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシピバリン酸、レブリン酸及びβ−クロロプロピオン酸等のカルボン酸類、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸等の有機スルホン酸類が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
グリコールエーテル類化合物としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、及び3−メチル−3−メトキシ−3−メトキシブタノール等の低分子グリコールエーテル化合物、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、及びポリエチレングリコールモノブチルエーテル等の高分子グリコールエーテル化合物が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
(C)成分以外の界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、上記一般式(1)で表されるノニオン性界面活性剤以外のノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、硫化オレフィン塩、高級アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、硫酸化脂肪酸塩、スルホン化脂肪酸塩、リン酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、グリセライド硫酸エステル塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩、スルホコハク酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸塩、N−アシル−N−メチルタウリンの塩、N−アシルグルタミン酸又はその塩、アシルオキシエタンスルホン酸塩、アルコキシエタンスルホン酸塩、N−アシル−β−アラニン又はその塩、N−アシル−N−カルボキシエチルタウリン又はその塩、N−アシル−N−カルボキシメチルグリシン又はその塩、アシル乳酸塩、N−アシルサルコシン塩、及びアルキル又はアルケニルアミノカルボキシメチル硫酸塩等の1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。
【0026】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加形態は、ランダム状、ブロック状の何れでもよい)、ポリエチレングリコールプロピレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、アルキレンジアミンのエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム又はブロック付加物、グリセリン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキサイド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸モノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸−N−メチルモノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸ジエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリセリンエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、及びN−長鎖アルキルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0027】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル(アルケニル)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(アルケニル)ジメチルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、エーテル基或いはエステル基或いはアミド基を含有するモノ或いはジアルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、アルキル(アルケニル)ピリジニウム塩、アルキル(アルケニル)ジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)イソキノリニウム塩、ジアルキル(アルケニル)モルホニウム塩、ポリオキシエチレンアルキル(アルケニル)アミン、アルキル(アルケニル)アミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン、スルホベタイン、ホスホベタイン、アミドアミノ酸、及びイミダゾリニウムベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
上記の界面活性剤は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
アミノ酸類化合物としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、フェニルアラニン、トリプトファン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リシン、アルギニン及びヒスチジン等のアミノ酸、並びにこれらのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
アゾール類化合物としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−メチルベンゾイミダゾール等のアルキルイミダゾール類;ベンゾイミダゾール、2−メチルベンゾイミダゾール、2−ウンデシルベンゾイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール類;1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−1,2,4−トリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−アミノベンゾトリアゾール、4−アミノベンゾトリアゾール、1−ビスアミノメチルベンゾトリアゾール、1−メチル−ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−クロロベンゾトリアゾール等のトリアゾール類;1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−シクロヘキシル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、5,5'−ビス−1H−テトラゾール等のテトラゾール類;ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−フェニルチアゾール、2−アミノベンゾチアゾール、2−アミノ−6−ニトロベンゾチアゾール、2−アミノ−6−メトキシベンゾチアゾール、2−アミノ−6−クロロベンゾチアゾール等のチアゾール類が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
ピリミジン類化合物としては、例えば、ジアミノピリミジン、トリアミノピリミジン、テトラアミノピリミジン、及びメルカプトピリミジン等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
チオ尿素類化合物としては、例えば、チオ尿素、エチレンチオ尿素、チオジグリコール、及びメルカプタン等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
アミン類化合物としては、例えば、ジアミルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、トリアミルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、エタノールジイソプロパノールアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、及びこれらの塩酸塩等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
アルキルピロリドン類化合物としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、N−アミル−2−ピロリドン、N−ヘキシル−2−ピロリドン、N−ヘプチル−2−ピロリドン、及びN−オクチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
有機キレート剤化合物としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、テトラエチレンペンタミン七酢酸、ペンタエチレンヘキサミン八酢酸、ニトリロ三酢酸、並びにそれらのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
ポリアクリルアミド類化合物としては、例えば、ポリアクリルアミド及びt−ブチルアクリルアミドスルホン酸等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0036】
過酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、及び過塩素酸カリウム等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0037】
無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、及び塩素酸カリウム等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0038】
第一銅イオンを与える化合物としては、例えば、塩化銅(I)、臭化銅(I)、硫酸銅(I)、及び水酸化銅(I)が挙げられる。また、第一鉄イオンを与える化合物としては、例えば、塩化鉄(II)、臭化鉄(II)、ヨウ化鉄(II)、硫酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、及び酢酸鉄(II)等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
本発明のエッチング剤組成物は、上記の成分と水とを混合することにより調製することができる。混合方法は特に限定されず、周知の混合装置を用いて混合すればよい。
このようにして得られる本発明のエッチング剤組成物の比重は、1.050〜1.200であることが好ましい。比重が1.050よりも小さいと、充分なエッチング速度が得られないことがある。一方、比重が1.200よりも大きいと、直線性が低下することがある。
【0040】
本発明のエッチング剤組成物は、銅含有材料において微細なパターンを形成することができるが、特に、形状不良抑制効果及びエッチング速度の観点から、厚さ5〜40μm、エッチングスペース4〜60μmの銅含有材料のパターニングに適しており、厚さ10〜40μm、エッチングスペース10〜60μmの銅含有材料のパターニングに最も適している。
【0041】
本発明のエッチング剤組成物を用いた銅含有材料のエッチングは、周知一般の方法により行うことができる。被エッチング材料である銅含有材料としては、銀銅合金、アルミニウム銅合金等の銅合金及び銅が挙げられ、特に銅が好適である。また、エッチング方法についても特に限定されず、浸漬法やスプレー法等を用いることができ、エッチングの条件についても、使用するエッチング剤組成物やエッチング方法に応じて適宜調整すればよい。加えて、バッチ式、フロー式、エッチャントの酸化還元電位や比重、酸濃度によるオートコントロール式等の周知の様々な方式を用いてもよい。
【0042】
本発明のエッチング剤組成物をスプレー法で用いる場合、処理温度は30〜50℃、処理圧力は0.05〜0.2MPa、処理時間は20〜300秒であることが好ましい。
また、本発明のエッチング剤組成物を用いたエッチング方法では、エッチングを繰り返すことによる液の劣化を回復させるために補給液を加えてもよい。特に、上記のオートコントロール式のエッチング方法では、補給液がエッチング装置に予めセットされ、液が劣化した段階でエッチング剤組成物に添加される。当該補給液は、例えば、(A)成分、(B)成分及び水であり、(A)成分及び(B)の濃度は、エッチング剤組成物の1〜20倍程度である。また、当該補給液には、本発明のエッチング剤組成物の(C)成分又は任意成分を必要に応じて添加してもよい。
【0043】
本発明エッチング剤組成物は、形状不良なしに微細なパターンを形成し得るので、プリント配線基板の他、微細なピッチが要求されるパッケージ用基板、COF、TAB用途のサブトラクティブ法に好適に使用することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
下記の実施例及び比較例で使用したノニオン性界面活性剤を表1及び2に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
(実施例1及び比較例1)
表1及び表2に示したノニオン性界面活性剤、塩化第二鉄(第二鉄イオン)、塩化水素、銅(第二銅イオン)及び水を表3の組成で混合してエッチング剤組成物を得た。なお、表3の含有量の残部は水である。
【0048】
【表3】

【0049】
(実施例2及び比較例2)
厚さ20μmの銅箔を有する樹脂基体上に、線幅100μm、所定の線間(エッチングスペース)のパターンのドライフィルムレジストを形成した試験基板において、上記の実施例及び比較例で得られたエッチング剤組成物を用い、所定の条件下でスプレイエッチングを行なった。その後、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液(50℃)に1分間浸漬させてドライフィルムレジストを除去した。得られた銅回路の形状について下記の評価を行なった。
(1)配線上部幅(トップ幅)
光学顕微鏡によるクロスセクション(断面観察)にて測定した。単位はμmである。
(2)配線下部幅(ボトム幅)
光学顕微鏡によるクロスセクション(断面観察)にて測定した。単位はμmである。
(3)ボトム幅とトップ幅との差
次の式により求めた。単位はμmである。
ボトム幅とトップ幅との差=ボトム幅の測定値−トップ幅の測定値
(4)残膜
キーエンス社製レーザー顕微鏡を用いた観察によって、エッチング部分の残りが観察されたものを「あり」、観察されなかったものを「なし」とした。
上記評価の結果を表4〜5に示す。
【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
表4及び5の結果に示されているように、所定のノニオン性界面活性剤を含有するエッチング組成物No.1〜10を用いてエッチングを行なった実施例2−1〜2〜20では、所定のノニオン性界面活性剤を含有しないエッチング組成物No.11〜14を用いてエッチングを行なった比較例2−1〜2−9に比べて、トップ幅の維持に優れており、トップ幅とボトム幅との差が小さかった。特に、エッチング剤組成物No.4〜6を用いてエッチングを行なった実施例2−7〜2−12では、その効果が顕著であった。
【0053】
(実施例3及び比較例3)
表1及び表2に示したノニオン性界面活性剤、塩化第二鉄、塩化水素、銅及び水を表6の組成で混合してエッチング剤組成物を得た。なお、表6の含有量の残部は水である。
【0054】
【表6】

【0055】
(実施例4及び比較例4)
上記の実施例3及び比較例3で得られたエッチング剤組成物を用いてスプレイエッチングを行なったこと以外は、実施例2及び比較例2と同様にして得られた銅回路の形状について、上記(1)〜(4)の評価を行なった。その結果を表7に示す。
【0056】
【表7】

【0057】
表7の結果に示されているように、所定のノニオン性界面活性剤を含有するエッチング組成物No.15〜18を用いてエッチングを行なった実施例4−1〜4〜9では、所定のノニオン性界面活性剤を含有しないエッチング組成物No.19〜21を用いてエッチングを行なった比較例4−1〜4−3に比べて、トップ幅の維持に優れており、トップ幅とボトム幅との差が小さかった。
【0058】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、形状不良なしに微細なパターンを形成し得る含有材料用エッチング剤組成物及び銅含有材料のエッチング方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第二銅イオン及び第二鉄イオンから選択される少なくとも1つの酸化剤成分0.1〜15質量%、
(B)塩化水素0.1〜20質量%、及び
(C)下記一般式:
R−O−X−H (1)
(式中、Rは炭素数8〜18のアルキル基を表し、Xはエチレンオキサイドユニット及びプロピレンオキサイドユニットがランダム又はブロック状に重合したポリアルキレンオキサイド基を表す)で表され、且つ数平均分子量が500〜1,500であるノニオン性界面活性剤0.001〜5質量%
を含む水溶液からなることを特徴とする銅含有材料用エッチング剤組成物。
【請求項2】
前記一般式(1)のXで表されるポリアルキレンオキサイド基中のエチレンオキサイドユニットに対するプロピレンオキサイドユニットの数の比が0.25〜0.5であることを特徴とする請求項1に記載の銅含有材料用エッチング剤組成物。
【請求項3】
厚さ10〜40μm及びエッチングスペース10〜60μmの銅含有材料のパターニングにおいて、請求項1又は2に記載のエッチング剤組成物を使用することを特徴とする銅含有材料のエッチング方法。

【公開番号】特開2011−17053(P2011−17053A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162717(P2009−162717)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】